JP7246640B2 - グラウト材および地盤改良工法 - Google Patents
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Description
ナノサイズのシリカ粒子が水中に分散したコロイダルシリカを主成分とするシリカ系グラウト材は、浸透性、耐久性に優れているため、細粒分の多い砂地盤の止水材として使用され、さらに岩盤の微細な亀裂に注入するグラウト材としての利用が期待されている。
シリカ系グラウト材は、例えば、コロイダルシリカに硬化促進剤を添加することで、所定時間(ゲルタイム)経過後にゲル化して止水材となる。硬化促進剤は、施工現場にて、無機塩の粉末を水道水(練り混ぜ水)に溶解して調製することが多い。
また、砂地盤の間隙や岩盤亀裂の内部が海水環境の場合、シリカ系グラウト材を注入する過程で、グラウト材が内部の海水と触れると瞬時に局所的なゲル化(白濁現象)が起こる場合がある。かかるゲル化(白濁現象)が生じるとグラウト材の浸透性が低下するという問題がある。また海水だけでなく、マグネシウムやカルシウム等を含む地下水や湧水(以下、海水等という)との接触によっても同様のゲル化(白濁現象)が生じる場合がある。
本発明は、海水を用いて簡便に調製でき、実用的なゲルタイムを有し、海水等との接触による白濁が生じ難いグラウト材、および該グラウト材を用いた地盤改良工法の提供を目的とする。
[1] 下記(A)液と下記(B)液と下記(C)液との混合物であり、前記混合物の1Lに対する前記(A)液の含有量が400~700mL/Lであり、かつ前記混合物のpHが5~8.3であることを特徴とするグラウト材。
(A)液:SiO2含有量が10~41質量%であるコロイダルシリカ。
(B)液:pH調整剤。
(C)液:海水。
[2] 前記(A)液のpHが9~11であり、前記(B)液が酸性液である、[1]のグラウト材。
[3] 前記グラウト材の総体積に対して、SiO2含有量が10~38質量/体積%である、[1]または[2]のグラウト材。
[4] 前記[1]~[3]のいずれかのグラウト材を地盤に注入することを特徴とする地盤改良工法。
本発明のグラウト材は、海水を用いて、従来の硬化促進剤を使用することなく、簡便に調製できる。
本発明の地盤改良工法によれば、従来の硬化促進剤を使用することなく、海水を用いて、地盤改良を行うことができる。
本実施形態のグラウト材は(A)液と(B)液と(C)液との混合物である。
本明細書において「pH」は特に断りのない限り25℃におけるpHの値である。
本明細書において「比重」は特に断りのない限り25℃における比重の値である。
(A)液は、SiO2含有量が10~41質量%のコロイダルシリカである。分散媒は水である。SiO2のほかに、Na2Oを含んでもよい。Naイオンはコロイド粒子の安定化に寄与する。
(A)液のSiO2含有量が前記範囲の下限値以上であるとゲル化後の強度が充分に高くなりやすく、上限値以下であると(A)液の安定性が充分に高くなりやすい。(A)液のSiO2含有量は20~41質量%が好ましく、25~35質量%がより好ましい。
(A)液中に存在するコロイド粒子の平均粒径は4~100nmが好ましく、10~80nmがより好ましく、10~20nmがさらに好ましい。コロイド粒子の平均粒径が前記範囲の下限値以上であると実用的なゲルタイムが得られやすい。上限値以下であると浸透性に優れる。
(A)液のpHは9~11が好ましく、9~10がより好ましい。(A)液のpHが前記の範囲内であると(A)液の安定性が充分に高くなりやすい。
(A)液の総質量に対する、Na2Oの含有量は、1.0質量%以下が好ましく、0.6質量%未満がより好ましい。
(A)液として好適なコロイダルシリカの具体例としては、強化土エンジニヤリング社製のパーマロックHiシリカ(商品名)等が挙げられる。
(B)液はpH調整剤である。pH調整剤の種類及び(B)液の添加量は、(A)液のpH及び得ようとするグラウト材のpHに応じて選択できる。
例えば、(A)液のpHが9~11であり、(B)液が酸性液であってもよい。酸性液のpHは1以下が好ましい。
酸性液としては無機酸又は無機塩の水溶液が好ましい。無機酸としては、リン酸、硫酸、硝酸、スルファミン酸、塩酸、および無機酸を2種以上用いた混酸等が挙げられる。無機塩としては前記無機酸の金属塩、重硫酸ソーダ(硫酸水素ナトリウム)等が挙げられる。また、アルカリ金属酸性塩の水溶液も使用できる。pHを管理しやすい点でリン酸水溶液がより好ましい。
(C)液は海水である。天然の海水でもよく、人工海水でもよい。海水の塩分濃度は一般的に3.3~3.5質量%である。塩分の主要元素のおおよその組成としては以下が挙げられる。以下の数値は、海水1kg当たりの含有量(単位:mg/kg)と、塩分の元素合計に対する含有率(単位:質量%)である。
塩素:19350±500mg/kg(約58.21±2質量%)、
ナトリウム:10780±500mg/kg(約32.43±2質量%)、
マグネシウム:1280±50mg/kg(約3.85±0.2質量%)、
硫黄:898±5mg/kg(約2.70±0.02質量%)、
カルシウム:412±5mg/kg(約1.24±0.02質量%)、
カリウム:399±5mg/kg(約1.20±0.02質量%)。
グラウト材は(A)液と(B)液と(C)液とを混合して得られる。まず、(A)液と(B)液とを混合し、ここに(C)液を加えて混合する方法が好ましい。
(A)液の配合量は、(A)液と(B)液と(C)液の混合物の1L、すなわちグラウト材の1Lに対する(A)液の含有量が400~700mL/Lとなるように設定する。
前記(A)液の含有量が前記範囲内であると実用的なゲルタイムが得られやすい。また前記範囲の上限値以下であると海水等との接触による白濁が生じ難い。
前記(A)液の含有量は400~600mL/Lであることが好ましく、450~600mL/Lがより好ましい。
グラウト材のpHが前記範囲の下限値以上であると実用的なゲルタイムが得られやすく、上限値以下であると海水等との接触による白濁が生じ難い。
例えば、ゲルタイムが比較的長い方が好適である場合(例えば、ゲルタイムが120~300分)、グラウト材のpHは5~7.5未満が好ましく、6~7未満がより好ましい。
一方、ゲルタイムが比較的短い方が好適である場合(例えば、ゲルタイムが30~200分)、グラウト材のpHは7~8.3が好ましく、7.5~8.3がより好ましい。
前記SiO2含有量が前記範囲内であると実用的なゲルタイムが得られやすい。また前記範囲の上限値以下であると海水等との接触による白濁が生じ難い。
例えば、地盤の空隙の奥深くまでグラウト材を注入する場合など、グラウト材の浸透距離が長い場合は、ゲルタイムが長い方が好ましい。また、グラウト材の調製槽と地盤への注入装置との間でグラウト材を循環させながら、グラウト材の一部を注入し残ったグラウト材に新しいグラウト材を追加する方法で連続運転する場合や、グラウト材の調製場所と地盤への注入場所とが離れている場合など、グラウト材の調製から注入までの時間が長い場合は、ゲルタイムが比較的長い方が好ましい。例えば、ゲルタイムは120~300分が好ましく、150~300分がより好ましい。
一方、グラウト材の浸透距離が比較的短い場合や、グラウト材の調製から注入までの時間が短い場合は、ゲルタイムは上記範囲より短くてもよい。例えば、ゲルタイムは30~200分が好ましく、30~150分がより好ましく、30~120分がさらに好ましい。
本実施形態のグラウト材は、海水等との接触による白濁(ゲル化)が生じ難いため、Ca、Mg、Na、K等の金属イオンが存在する地盤に注入しても良好な浸透性が得られる。
本実施形態のグラウト材は、コロイダルシリカ(A液)と少量のpH調整剤(B液)と海水(C液)とを混合するだけで得られるため、海岸付近等の水道水が得られにくい現場でも、簡便にグラウト材を調製できる。
本実施形態の地盤改良工法は、本実施形態のグラウト材を地盤に注入する方法である。
施工現場において、(A)液と(B)液と(C)液を混合してグラウト材を製造し、得られたグラウト材を地盤に注入する方法が好ましい。
地盤に注入する方法は公知の方法を適宜用いることができる。
本実施形態の地盤改良工法は、塩分が含まれる岩盤や、内部に海水等が存在する岩盤への注入を伴う地盤改良に好適である。
以下の材料を用いた。
(A1)液:コロイダルシリカ(パーマロックHiシリカ(商品名)、強化土エンジニヤリング社製、SiO2含有量30.6質量%、Na2O含有量0.6質量%未満、pH9~10、コロイド粒子の平均粒径14nm、比重1.20~1.22)。
(B1)液:75%リン酸水溶液(pH1未満、比重1.55~1.60)。
(C1)液:人工海水(アクアマリン(商品名)、八洲薬品社製、比重1.02~1.03)。具体的には、塩化ナトリウム490.68g、塩化マグネシウム(6水塩)222.23g、硫酸ナトリウム(無水)81.88g、塩化カルシウム(2水塩)30.70g、塩化カリウム13.89g、炭酸水素ナトリウム4.02g、臭化カリウム2.01g、塩化ストロンチウム(6水塩)0.85g、ホウ酸0.54g、及びフッ化ナトリウム0.06gを純水に溶解して全量を20Lとし、0.13Nの水酸化ナトリウムを添加してpHを8.2に調整したものを(C1)液として使用した。
(グラウト材のpH)
pHメーター(HORIBA社製:ガラス電極型)によりグラウト材のpHを測定した。
各例の配合でグラウト材を製造した直後からゲル化が完了するまでの時間を測定した。
具体的には、容量133mLのボトルに(A)液を入れ、(B)液を添加して混合し、さらに(C)液を添加して混合してグラウト材を製造した。製造直後にボトルを静置し、1分毎に振盪してグラウト材の内部に発生する気泡が上昇しなくなった時点をゲル化完了と判定した。(C)液の添加直後からゲル化完了までの時間をゲルタイムとして計測した。
容量100mLのシャーレに、前記(C1)液と同じ人工海水を約100mL入れ、ここに製造直後のグラウト材の約1mLを注射器で垂らした。グラウト材が人工海水に接触した直後の状態を目視で観察し、白濁の有無を判定した。
表1~3に示す配合で、(A)液と(B)液を混合した後、全量が1000mLになるように(C)液を加えて混合し、グラウト材を得た。表中のグラウト材の「SiO2含有量」は、(A1)液の比重を1.21とした計算値である。
得られたグラウト材のpH、ゲルタイムを前記の方法で測定した。また前記の方法で白濁の有無を評価した。結果を表1~3に示す。図1のグラフはグラウト材のpHの測定結果であり、図2のグラフはゲルタイムの測定結果である。
Claims (4)
- 下記(A)液と下記(B)液と下記(C)液との混合物であり、
前記混合物の1Lに対する前記(A)液の含有量が400~700mL/Lであり、かつ前記混合物のpHが5~8.3であることを特徴とするグラウト材。
(A)液:SiO2含有量が10~41質量%であるコロイダルシリカ。
(B)液:pH調整剤。
(C)液:海水。 - 前記(A)液のpHが9~11であり、前記(B)液が酸性液である、請求項1に記載のグラウト材。
- 前記グラウト材の総体積に対する、SiO2含有量が10~38質量/体積%である、請求項1または2に記載のグラウト材。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載のグラウト材を地盤に注入することを特徴とする地盤改良工法。
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