JP4908184B2 - 地盤注入用グラウト材及び地盤注入工法 - Google Patents

地盤注入用グラウト材及び地盤注入工法 Download PDF

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Description

本発明は、シリカ粒子のゾルを含有する地盤注入用グラウト材及び地盤注入工法に関するものであり、より詳しくは軟弱地盤や地盤の液状化防止、基礎地盤の補強工事等に使用される地盤改良のための地盤注入用グラウト材及び地盤注入工法に関するものである。
軟弱地盤等に注入して該地盤を固結する地盤注入材として、従来、水ガラスを主材とした注入材、水ガラスと酸とからなる酸性活性珪酸水溶液を主材とした注入材、あるいは中性コロイダルシリカを主材とした注入材等が知られている(特開昭54−73407号公報、特開平3−66794号公報等)。しかし、これらの注入材はいずれも、アルカリあるいは塩類を多く含有する。アルカリあるいは塩類の含有量が多いと、長期間のうちに固結体からアルカリあるいは塩類が遊離逸脱して固結体の収縮破壊が起こり、固結体の強度低下などの耐久性劣化を生じる。このような欠点を改良するため、近年、水ガラスを陽イオン交換樹脂やイオン交換膜で処理することによって、水ガラス中のアルカリを除去した酸性活性珪酸水溶液の薬液や、さらにコロイダルシリカも併用した地盤注入材が提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。酸性活性珪酸水溶液は、数パーセントのシリカ濃度であるため製造場所(工場)から施工場所までの輸送費が高額となり、また数日でゲル化するため施工場所での大量貯蔵ができない。酸性活性珪酸水溶液にアルカリを添加してアルカリ性活性珪酸水溶液としたものは、ゲル化しないため施工場所での貯蔵は容易であるが、輸送費が高額となる問題は解決しない。
上記のコロイダルシリカは、一般的にシリカゾルと称して市販されている商品であり、通常イオン交換樹脂に珪酸ソーダを通して得た活性珪酸を加熱等により安定化し濃縮したシリカ濃度20〜50パーセントの製品であって、平均粒子径が10〜20nm程度である。これらコロイダルシリカを主材とした地盤注入材は、浸透性の高い注入材で、耐久性などにも優れているが、必要強度を得るためには高濃度で使用しなければならず、薬剤費用が極めて高価になるという問題があった。
一方、本件出願とは異なる製紙分野であるが、10〜45%のS値、5〜40cPの粘度及び10:1〜40:1の範囲内のSiO2対M2Oのモル比を有するシリカをベースとする粒子を含む水性ゾルが知られている(例えば、特許文献4を参照)。しかし、特許文献4に記載の水性ゾルを地盤注入材として用いても、浸透性が悪く広範囲の地盤に均一に浸透させることができないため、施工作業上支障が生じる。
特開平4−136088号公報 特開平11−181425号公報 特開2000−109835号公報 特表2002−543303号公報の請求項1
従って、本発明は、地盤への浸透性に優れ且つ耐久性や固結強度が高い地盤注入用グラウト材及びそれを用いた地盤注入工法を提供することを目的とする。
本発明者らはこのような問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の比表面積を有するシリカ微粒子のゾルであって、特定のS値、粘度及びSiO2/M2O(式中、Mはアルカリ金属である)のモル比を有するゾルを含有し、かつpHが3.0〜4.2である地盤注入用グラウト材が地盤への浸透性に優れ且つ耐久性や固結強度が高いことを見出した。
即ち、本発明は、350〜750m2/gの範囲内の比表面積を有するシリカ粒子のゾルであって、50〜100%の範囲内のS値、5〜40cPの範囲内の粘度及びシリカとアルカリ金属とのモル比がSiO2/M2Oとして10〜80の範囲内であるゾルを含有し、かつpHが3.0〜4.2である地盤注入用グラウト材である。
ゾルは、少なくとも10重量%のシリカ粒子を含有することが好ましい。また、このゾルは、30〜65℃に加熱したアルカリ剤に活性珪酸水溶液を添加して粒子成長させ、30〜65℃の温度を保ったまま、溶液中のアルカリ金属の30〜70モル%がアルカリ金属塩となる量の無機酸を添加して得られるものであることが好ましい。
地盤注入用グラウト材は、水溶性高分子を更に含むことが好ましく、この水溶性高分子は、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロックポリマー、ポリエチレンイミン及びスチレン−マレイン酸共重合体からなる群から選択されることが更に好ましく、重合度1,000〜20,000のポリアクリル酸であることが最も好ましい。地盤注入用グラウト材におけるポリアクリル酸の添加量は、ゾルに対して5〜30重量%であることが望ましい。また、シリカ粒子及び水溶性高分子は、地盤注入用グラウト材の総重量に対して、少なくとも10重量%含まれることが好ましい。
また、本発明は、上記地盤注入用グラウト材を地盤に注入する地盤注入工法である。
本発明によれば、地盤への浸透性に優れ且つ耐久性や固結強度が高い地盤注入用グラウト材を提供することができる。本発明の地盤注入用グラウト材を地盤に注入することにより地盤の安定性を著しく向上させることができる。また、水溶性高分子を配合した本発明の地盤注入用グラウト材は、弾性と耐久性に富んだ有機高分子質ゲルを生成させて、止水と地盤強化が可能となり、トンネル用コンクリートパネル裏面と接する地盤との充填や地下または地中下のコンクリート構造物の強化安定と止水を兼ねた裏込充填する用途として有用である。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の地盤注入用グラウト材に含有されるゾルは50〜100%、好適には70〜100%、望ましくは80〜100%の範囲内のS値を有し得るものがよい。このS値はIler & DaltonによりJ. Phys. Chem. 60(1956), 955-957に記載されており、以下の式に従って計算される。
S=P/{(0.00566P+C(1−0.00566P)}
P:シリカゾル100g当たりのSiO2含量(g)
C:分散相の容積率、無水SiO2粒子とその表面に固定された水の合計
なお、分散相の容積率(C)は以下の式に従いオストワルドピペットで測定した比粘度(Nr)を用いて計算される。
lnNr=2.5C/(1−1.43C)
Nr=d×t/(dw×tw)
(Nr:オストワルドピペットを用い25℃で測定した比粘度、d:コロイドの密度、t:コロイドの流出時間、dw:水の密度、tw:水の流出時間)
このS値は凝集物又はミクロゲルの存在の程度を示し、高いS値はシリカ粒子の分散がよいことを示し、低いS値は凝集物の存在を示し、ゲル状のシリカが存在する場合には極めて低いS値となる。粒子径が10nm以上の市販のコロイダルシリカでは80〜100%の範囲内のS値を示す。粒子径が小さくなるほどS値は低くなる。また、シリカ濃度が高くなるほどS値は低くなる。凝集したシリカ粒子や、ゲル状のシリカが存在すると地盤注入用グラウト材の浸透性が悪くなり、広範囲の地盤に均一に浸透させることができなくなり、注入箇所を変えて何回も注入作業を繰り返すことになり、施工作業を迅速に進めることができなくなる。したがって、高いS値を有するゾルであることが本発明の必須条件である。
このゾルに存在するシリカ粒子の比表面積は350〜750m2/gの範囲内である。350m2/gより小さいと、必要とする固結強度が得られず、750m2/gより大きいと、高いS値を保ったままシリカ濃度を高くすることができないためである。コロイダルシリカのシリカ粒子の比表面積測定法は、窒素吸着BET法とアルカリ吸着量を測定するシアーズ(Sears)法があるが、本発明における比表面積はシアーズ法により測定した値である。500m2/gくらいより大きな比表面積の測定には窒素吸着BET法は適せず、実際より小さめの値を示すためである。
本発明におけるシリカ粒子のゾルの粘度は5〜40cPの範囲である。本発明における粘度は、ロータ回転式のB型粘度計(ロータNo.1)を使用して、25℃、60rpmにおいて測定した値である。シリカ粒子のゾルの粘度は、例えば、ゾルのシリカ濃度に応じて変化し得る。高濃度で5cPよりも低い粘度の製品は得ることができず、40cPより高い粘度では取り扱いに不具合を生じる恐れがある。よってこの範囲内であることが好ましい。
350〜750m2/gの範囲内の比表面積を有するシリカ粒子のゾルは安定性があり、このゾルは1ヶ月にわたって常温での貯蔵でも、粘度はごく小さい上昇を示すだけである。
このシリカ粒子のゾルは、シリカとアルカリ金属とのモル比がSiO2/M2O(式中、Mはアルカリ金属)として10〜80、好適には30〜60、好ましくは40〜60の範囲内であるものがよく、高モル比になるほど更によい。このM2O量は、原子吸光法で測定されるゾル中の全アルカリ金属イオンから換算したものであり、滴定法のアルカリ量ではない。通常、Mはナトリウムである。このシリカ粒子のゾルのpHは9.0〜10.5の範囲が好ましい。
このゾルは、少なくとも10重量%のシリカ粒子を含有することが好ましい。更には、シリカ粒子の含有量が10〜30重量%の範囲内であることが好ましい。輸送を簡素化し、輸送コストを低減するために、高濃度のシリカ含有量とすることが好ましい。一方、地盤注入用グラウト材としての使用時には、水で希釈して、シリカ粒子の含有量を好ましくは5〜25重量%、更に好ましくは5〜15重量%の範囲内に調整する。
上記ゾルと水溶性高分子とを含む地盤注入用グラウト材も好ましい。亀裂や隙間がある地盤では、シリカ粒子のゾルだけを含有する地盤注入用グラウト材では止水性や固結性に問題を生じることがあるが、シリカ粒子のゾルと水溶性高分子とを組み合わせた地盤注入用グラウト材を使用することで細かな隙間に対しても充填性に優れ、優れた止水性能や固結性能を発現することができる。該水溶性高分子としては、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロックポリマー、ポリエチレンイミン、スチレン−マレイン酸共重合体などが挙げられ、これらを1種単独で添加してもよいし、2種以上を組み合わせて添加してもよい。
これらの水溶性高分子の中でも、低重合度のものは配合量のバラツキによる粘度の変化が少なく、またゾルとの相溶性が良好であるという理由から、重合度1,000〜20,000のポリアクリル酸が好ましく、ゾルに対するポリアクリル酸の添加量は5〜30重量%であることが好ましい。
このようなゾルと水溶性高分子とを含む地盤注入用グラウト材においては、シリカ粒子及び水溶性高分子の合計含有量が、地盤注入用グラウト材の総重量に基づいて少なくとも10重量%であることが好ましい。さらには、合計含有量が10〜30重量%の範囲内であることがより好ましい。一方、地盤注入用グラウト材としての使用時には、水で希釈して、合計含有量を好ましくは5〜25重量%、更に好ましくは5〜15重量%の範囲内に調整する。
(使用するシリカ粒子のゾルの形態)
本発明に使われるシリカ粒子のゾルは、ナトリウム水ガラス、すなわち珪酸ソーダのような通常のケイ酸塩水溶液を原料として製造される。珪酸ソーダは予めシリカ濃度3〜7重量%に希釈して、強酸性カチオン交換樹脂に接触させてナトリウムを除去して活性珪酸水溶液とする。活性珪酸水溶液はpH約2〜4であり、活性珪酸水溶液にアルカリ剤を添加してpH9〜10.5とし、30〜65℃に加熱して粒子成長(熟成)を行うか、又は、30〜65℃に加熱したアルカリ剤に活性珪酸水溶液を添加してpH9〜10.5とし、30〜65℃の温度を保持して粒子成長(熟成)を行う。アルカリ剤に活性珪酸水溶液を添加する場合は、活性珪酸水溶液の添加は1〜10時間かけてゆっくり行い、添加終了後も1時間以内の30〜65℃の加熱を続けて粒子成長(熟成)を行うことが好ましい。また、活性珪酸水溶液の添加によりpHが9〜10.5の範囲を外れることのないよう、活性珪酸水溶液の添加と並行してアルカリ剤をさらに添加することもできる。熟成終了後に30〜65℃の温度を保ったまま無機酸を添加して溶液を中和する工程を行う。この工程では、溶液中のアルカリ金属の30〜70モル%がアルカリ金属塩を生成するような量の無機酸を添加することが好ましい。無機酸添加後、1時間以内の30〜65℃の加熱を更に続けて熟成を行うことが好ましい。最後に限外ろ過を行って、ゾルの粘度が5〜40cPの範囲となるように濃縮を行い、シリカ濃度を10〜30重量%の範囲内で、本発明で使用するゾルを得る。ここで、アルカリ剤としては水酸化ナトリウム、珪酸ソーダあるいはアルミン酸ソーダが使用でき、無機酸としては硫酸、塩酸、硝酸等が使用できる。
安定性のより高いゾルが得られるという理由から、30〜65℃に加熱したアルカリ剤に活性珪酸水溶液を添加して粒子成長させ、30〜65℃の温度を保ったまま、溶液中のアルカリ金属の30〜70モル%がアルカリ金属塩となる量の無機酸を添加する製法が好ましい。
本発明の地盤注入用グラウト材の形態のひとつは、シリカ粒子のゾルと水溶性高分子の水系組成物とから構成される。シリカ粒子のゾルと水溶性高分子の水系組成物とは別々に地盤へ注入してもよいし、混合してから地盤へ注入してもよいが、ゾルと水溶性高分子の両方の特性を生かした弾性のある硬化体を得るという理由から、混合してから地盤へ注入することが望ましい。シリカ粒子のゾルと水溶性高分子の水系組成物との混合順序は特に限定されるものではないが、より均一な混合液を得るという理由から、水溶性高分子の水系組成物へシリカ粒子のゾルを添加するのが好ましい。
上記したシリカ粒子のゾルを主材として、更に別の添加剤、例えば、ゲル化時間調整剤を組み合わせて使用することもできる。例えば、ゲル化時間を長くするものとしては、重炭酸塩、炭酸塩、リン酸、硫酸水素アルカリ金属塩類等が用いられ、ゲル化時間を短くするものとしては、消石灰、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム等が用いられる。あるいは、水ガラス、セメント(ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント)及びスラグを併用してゲル化時間や初期のゲル強度を調整することができる。
また、シリカ粒子のゾルを主材とする地盤注入用グラウト材及びゾルと水溶性高分子とを組み合わせた地盤注入用グラウト材では、反応剤として、水ガラス、リン酸、硫酸水素アルカリ金属塩、炭酸水素アルカリ金属塩、セメント、スラグなどを添加することができる。
以下では、本発明のシリカ粒子のゾルを主材とする地盤注入用グラウト材及びゾルと水溶性高分子とを含む地盤注入用グラウト材を用いた地盤注入工法について説明する。その地盤注入工法の1つとしては、不安定地盤(改良地盤)に対し、薬液注入管を介して、本発明の地盤注入用グラウト材を加圧注入し、固結させて該地盤を強化または止水させ地盤を安定化する方法である。また、その地盤改良工法としては、本発明の地盤注入用グラウト材の2種以上、例えば、ゾルの粒径や反応剤が異なる地盤注入用グラウト材を用いて複相注入し、固結させて該地盤を強化または止水させ安定化する方法である。
なお、本発明の地盤注入用グラウト材のゲルタイム調整は任意であってもよく、好ましくはその目的から数秒〜数十時間の範囲とすることがよい。地下水の有無、土質の種類、土砂堆積構造、注入箇所周辺の状態に応じて任意なゲルタイムとすることがよく、特に制約はない。また、1ショット方式、1.5ショット方式、2ショット方式などを使用してよい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(使用材料)
*1.ゾル1;品名:シリカドール30、日本化学工業株式会社製、
*2.ゾル2;品名:シリカドール30S、日本化学工業株式会社製、
*3.ゾル3;高いS値を有するシリカ粒子ゾル
*4.ゾル4;低いS値を有するシリカ粒子ゾル
*5.水溶性高分子;試薬:ポリアクリル酸ナトリウム、和光純薬工業株式会社製
*6.リン酸;品名:75%リン酸、日本化学工業株式会社製
*7.水ガラス;品名:N特殊珪酸ソーダ、シリカ濃度23.6重量%、比重1.28、日本化学工業株式会社製
ゾル3及び4については以下のようにして調製した。また、用いたゾル1〜4の性状を表1に記載した。
(ゾル3の調製)
水ガラス(SiO2/Na2Oのモル比3.23、シリカ濃度は27.1重量%)を水で希釈して、シリカ濃度3.5重量%の水ガラス希釈溶液600gを作製した。この水ガラス希釈溶液を攪拌下に加熱して50℃に保った。別途、上記と同様にしてシリカ濃度3.5重量%の水ガラス希釈溶液を作成し、予め水素型にしたカチオン交換樹脂(オルガノ株式会社製アンバーライトIR120B)を充填したカラムに流下させて、シリカ濃度3.0重量%でpH2.9の活性珪酸水溶液4400gを作成した。この活性珪酸水溶液を上記の水ガラス希釈溶液へ50℃を保ちつつ、一定流量で6時間を掛けて添加した。添加終了後、50℃を1時間保って熟成を行った。次いで、50℃を保ちつつ、5.0重量%の硫酸86.6gを一定流量で1時間を掛けて添加した。添加終了後、50℃を1時間保って熟成を行った。室温まで放冷後、ポンプ循環によりポリスルフォン製中空糸限外ろ過モジュール(旭化成株式会社製マイクローザUF SLP−1053型)に通過させて濃縮を行い、シリカ濃度20.0重量%のシリカ粒子のゾル3を作製した。
このゾル3は、原子吸光法でNa2Oを測定し、SiO2/Na2Oのモル比は45であり、B型粘度計による25℃の粘度は6.5cPであり、シアーズ法による比表面積は716m2/gであった。S値計算のため、pH2にした試料の粘度をオストワルドピペットを用いて測定し比粘度1.596という値を得た。比粘度とシリカ濃度よりS値を算出し、81.9%となった。
(ゾル4の調製)
ゾル3の調製工程における、「5.0重量%の硫酸86.6gを一定流量で1時間を掛けて添加し、添加終了後、50℃を1時間保って熟成を行う」工程を行わずにシリカ粒子のゾルを作製した。
このゾル4は、原子吸光法でNa2Oを測定し、SiO2/Na2Oのモル比は45であり、B型粘度計による25℃の粘度は6.0cPであり、シアーズ法による比表面積は430m2/gであった。また、S値は30.9%となった。
Figure 0004908184
表1に記載してある4種類のゾルを水で希釈し、シリカ濃度12重量%に調整したゾルを用いて、表2の配合のA液200mlを調製した。また、表2の配合のB液200mlを調製した。ただし、A液とB液とを混合して得られる薬液のpHが3前後となるように、リン酸及び水ガラスの添加量は調整されている。A液とB液とを混合して得られた薬液は、pH及びB型粘度計での粘性、ゲルタイムの各測定と豊浦標準砂を用いて試料を作製し、圧縮強度の測定を行なった。結果を表4に示した。
Figure 0004908184
表1に記載してある4種類のゾルを水で希釈し、シリカ濃度12重量%に調整したゾルを用いて、表3の配合のA液200mlを調製した。また、表3の配合のB液200mlを調製した。ただし、水溶性高分子を添加する実施例3〜6の配合は、細かな空隙へ充填し使用するので、なるべく早いゲルタイムとするため、A液とB液とを混合して得られる薬液のpHが約4、ゲルタイムが3時間以内となるように、リン酸及び水ガラスの添加量は調整されている。A液とB液とを混合して得られた薬液は、pH及びB型粘度計による粘性、ゲルタイムの各測定と豊浦標準砂を用いて試料を作製し、圧縮強度の測定を行なった。結果を表5に示した。
Figure 0004908184
ゲルタイムの測定は、一定の温度下で、A液とB液とを混合した時点から薬液の流動性がなくなるまでの時間を測定した。
圧縮強度の測定は、JIS−A−1216に準じた方法による一軸圧縮試験を行い、試料の作製は、薬液注入材の38.5〜40.5vol%と豊浦標準砂の59.5〜61.5vol%を均一混合させ、気泡が入らないようにしてモールド成型容器に詰めて固結させた後、養生し、脱型して半径50mm、高さ100mmの円柱状のサンドゲル硬化体を得る。そのサンドゲル硬化体の一軸圧縮強度の値を圧縮強度とし、材令7日で測定した。
Figure 0004908184
Figure 0004908184
表4の結果から、4種類のゾルを使用した薬液でのサンドゲルとゲルタイムを比較すると、ゾル3を使用した薬液は他のゾルを使用した薬液に比べ圧縮強度が高く、ゲルタイムは早い傾向であった。
表5の結果から、ゾルと水溶性高分子とを使用した薬液において、同じ量のポリマーを添加した比較例及び実施例の圧縮強度を比較すると、表4の結果と同じようにゾル3を使用した薬液は圧縮強度が高い傾向となった。
以上のことから、350〜750m2/gの範囲内の比表面積を有するシリカ粒子のゾルであって、50〜100%の範囲内のS値、5〜40cPの範囲内の粘度及びシリカとアルカリ金属のモル比がSiO2/M2O(式中、Mはアルカリ金属である)として10〜80の範囲内であるゾルを用いることにより、高い圧縮強度のグラウト材となる。このことは、止水性や固結性に優れた地盤注入用グラウト材であることが言える。
シリカ粒子のゾルと水溶性高分子とを含む薬液では、ゾルの単分子をゆるやかに高分子化するのと高分子である水溶性高分子とを使用することによって、ゾルと水溶性高分子とのコロイドが複合的に造粒し、そこへ水ガラスを加えることにより水ガラスのシリカ分をコロイドに吸着させて、ゲル化の時間を保持しながら固結を行い、安定化するものと思われる。

Claims (8)

  1. 350〜750m2/gの範囲内の比表面積を有するシリカ粒子のゾルであって、50〜100%の範囲内のS値、5〜40cPの範囲内の粘度及びシリカとアルカリ金属とのモル比がSiO2/M2O(式中、Mはアルカリ金属である)として10〜80の範囲内であるゾルを含有し、かつpHが3.0〜4.2であることを特徴とする地盤注入用グラウト材。
  2. 前記ゾルが、少なくとも10重量%のシリカ粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載の地盤注入用グラウト材。
  3. 前記ゾルが、30〜65℃に加熱したアルカリ剤に活性珪酸水溶液を添加して粒子成長させ、30〜65℃の温度を保ったまま、溶液中のアルカリ金属の30〜70モル%がアルカリ金属塩となる量の無機酸を添加して得られるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤注入用グラウト材。
  4. 水溶性高分子を更に含む請求項1〜3の何れか一項に記載の地盤注入用グラウト材。
  5. 前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロックポリマー、ポリエチレンイミン及びスチレン−マレイン酸共重合体からなる群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の地盤注入用グラウト材。
  6. 前記シリカ粒子及び前記水溶性高分子の合計含有量が、前記地盤注入用グラウト材の総重量に対して、少なくとも10重量%であることを特徴とする請求項4又は5に記載の地盤注入用グラウト材。
  7. 前記水溶性高分子が、重合度1,000〜20,000のポリアクリル酸であり、前記ポリアクリル酸の添加量が、前記ゾルに対して5〜30重量%であることを特徴とする請求項4〜6の何れか一項に記載の地盤注入用グラウト材。
  8. 請求項1〜7の何れか一項に記載の地盤注入用グラウト材を地盤に注入することを特徴とする地盤注入工法。
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