JP3714586B2 - 地盤注入用固結材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はコロイダルシリカおよび水ガラス、さらには活性珪酸を含む高モル比のシリカ溶液を基盤とし、低シリカ濃度で広範囲のゲル化時間を保持する地盤注入用固結材に係り、特に、地盤の液状化防止注入工事に際して、長時間にわたる連続注入による大容土地盤改良を可能にし、しかも高固結強度で、固結体の耐久性に優れ、さらに、水質保全性にも優れた地盤注入用固結材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、水ガラスにコロイダルシリカを混合してなる地盤注入材は固結体の耐久性に優れた特性を持つことで知られているが、3号水ガラスをコロイダルシリカに大量に混合すると瞬時にゲル化してしまう。
【0003】
従来、このような瞬時のゲル化を避けつつ、例えば、高モル比水ガラスとコロイダルシリカを混合して自硬性のある地盤注入液とすることが知られている。
【0004】
【発明が解決すべき課題】
しかし、この注入液はシリカ濃度が高いわりには高固結強度を呈し得ない。しかも、これを1.5ショット、あるいは2.0ショットの片側液(A液)として使用する場合、それ自体ゲル化するものであるため、このような使用には限界がある。
【0005】
本発明者等は水ガラスとコロイダルシリカ、あるいは水ガラスと、コロイダルシリカと、活性珪酸を配合成分として特定し、これらの配合に際して、地盤への注入前ではそれ自体でゲル化しない特定の配合比率やSiO2 濃度を選定し、しかも土中では広範囲のゲル化時間、特に長時間のゲル化時間を保持し、かつ、土粒子間に長時間連続注入する際に起こりやすい土粒子間のゲル沈積による浸透性の低下を少なくして優れた地盤の液状化防止用地盤注入固結材を開発し、本発明を完成するに至った。このような本発明固結材はさらに、低いSiO2 濃度にしては高い固結強度を示し、しかも、未反応水ガラスや反応生成物が少なく、水質保全にも優れたものである。
【0006】
そこで、本発明の目的はコロイダルシリカおよび水ガラス、さらには活性珪酸を含む高モル比のシリカ溶液を基盤とし、低シリカ濃度で広範囲のゲル化時間を保持するとともに地盤の液状化防止注入工事の際に、長時間にわたる連続注入による大容土地盤改良を可能にし、しかも高固結強度で耐久性に優れ、さらに水質保全性にも優れ、上述の公知技術に存する欠点を改良した地盤注入用固結材を提供することにある。
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明によれば、コロイダルシリカと水ガラスを含むアルカリ性シリカ溶液、またはコロイダルシリカと、水ガラスと、活性珪酸を含むアルカリ性シリカ溶液であって、以下の条件(1)、(2)および(3)を満たすことを特徴とする。
(1)溶液中のSiO 2 濃度が3〜13重量パーセントである。
(2)このうち、コロイダルシリカ、またはコロイダルシリカと活性珪酸に由来するSiO 2 量が1〜50重量パーセントである。
(3)それ自体でゲル化しないアルカリ性シリカ溶液である。
【0008】
さらに、上述の目的を達成するため、本発明によれば、コロイダルシリカと、水ガラスを含むアルカリ性シリカ溶液、またはコロイダルシリカと、水ガラスと、活性珪酸を含むアルカリ性シリカ溶液を脱アルカリ処理し、次の条件(1)および(2)を満たす脱アルカリシリカ溶液としたことを特徴とする。
(1)溶液中のSiO 2 濃度が3〜13重量パーセントである。
(2)このうち、コロイダルシリカ、またはコロイダルシリカと活性珪酸に由来するSiO 2 量が1〜50重量パーセントである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に詳述する。
【0010】
本発明にかかる地盤注入用固結材は上述のとおり、配合成分としてコロイダルシリカと水ガラス、あるいはさらにこれらと活性珪酸とを含むアルカリ性シリカ溶液である。
【0011】
上述コロイダルシリカはコロイド状の性状を呈し、単独では半永久的にゲル化しない安定な物質である。この製造法の一例を示せば、次のとおりである。
【0012】
まず、水ガラスの水希釈液をイオン交換樹脂またはイオン交換膜で脱アルカリ処理してpH2〜4の活性珪酸を得る。
【0013】
次いで、得られた活性珪酸に水ガラス、苛性ソーダ等のアルカリ剤を添加してpH値を8.5〜10程度のアルカリ性に調整し、かつSiO2 濃度を3〜5%程度に調整した後、70〜95℃の温度で1〜5時間程度加熱、造粒し、コロイダルシリカ母液を得る。通常はこの母液をSiO2 濃度20〜30%になるまで濃縮し、最終のコロイダルシリカとするが、本発明では、この母液そのものをコロイダルシリカとして使用することもできる。
【0014】
本発明に用いられる水ガラスはアルカリ金属珪酸塩の水溶液であって、SiO2 /Na2 Oで表されるモル比が3.4以上の比較的高モル比のものが好ましいが、コロイダルシリカや活性珪酸との混合によってゲル化しない範囲であれば、任意のモル比であることができる。
【0015】
さらに、本発明に用いられる活性珪酸は水ガラスをイオン交換樹脂処理、あるいはイオン交換膜処理により水ガラス中のアルカリ分を除去し、pH値を水ガラスよりも低く調整することにより得られる。
【0016】
通常、上述水ガラスとコロイダルシリカの混合系、あるいは、これらと活性珪酸との混合系では、シリカ濃度(SiO2 濃度)が濃いと電気的に不安定な状態になりやすく、このため、シリカが電気的に不均質に集合して弱い部分が局部的に生じ、均質な強度を有するゲルが形成されにくくなる。
【0017】
このような上述混合系では、地盤への注入前の配合時におけるゲル化時間を長く調整しても、注入後、地盤中では不均質に析出したシリカが土粒子間に沈積し、目づまりを起こして浸透性を低下させ、このため、注入圧が過大になり、あるいは亀裂をつくって逸脱し、広範囲を均質に、設計通りに固結することができなくなる。
【0018】
特に、地盤の液状化防止工事に際しては、大容量土を経済的に改良することが必要であり、このためには、注入孔の間隔を広くとって一注入ステージ当り数時間ないし数十時間の連続注入を必要とする。
【0019】
本発明は上述の不合理を是正し、水ガラスとコロイダルシリカの混合系、あるいはこれらと活性珪酸との混合系において、混合液が地盤への注入前にはそれ自体でゲル化しない安定なものとし、かつ、このような安定な状態を維持する条件を定めたものである。
【0020】
すなわち、本発明は上述のコロイダルシリカと、水ガラスを含むアルカリ性シリカ溶液において、この溶液中のSiO2 濃度を3〜13重量%に希釈し、かつ、このうち、コロイダルシリカに由来するSiO2 量を1〜50重量%、好ましくは3〜50重量%に定め、これにより地盤への注入前にはそれ自体でほとんど半永久的にゲル化しない安定な固結材となる。なお、水ガラス量に対してコロイダルシリカ量が多量の場合も安定化した領域がある。この領域は水ガラス、コロイダルシリカの種類によって左右されるので、一義的に決めることは難しいが、全SiO2 量中のコロイダルシリカに由来するSiO2 量が略90%以上程度であるように思われる。
【0021】
さらに、本発明は上述のコロイダルシリカと、水ガラスと、活性珪酸とを含むアルカリ性シリカ溶液において、この溶液中のSiO2 濃度を3〜13重量%に希釈し、かつこのうち、コロイダルシリカおよび活性珪酸に由来するSiO2 量を1〜50重量%、好ましくは3〜50重量%に定め、これにより地盤への注入前にはそれ自体でほとんど半永久的にゲル化しない安定な固結材となる。
【0022】
上述において、コロイダルシリカと活性珪酸の比率はこれらの種類によって左右されるが、活性珪酸に由来するSiO2 量が略50重量%以下を保持するような比率であることが望ましい。
【0023】
上述のアルカリ性シリカ溶液はコロイダルシリカや活性珪酸の一部が水ガラスのアルカリによって溶解され、この結果、この溶液を構成するシリカの粒径がコロイダルシリカの保持する粒径から、水ガラスのシリカに見られるような珪酸分子の粒径までに分布された高モル比のシリカ溶液である。このモル比は水ガラスのモル比よりも高く、コロイダルシリカや活性珪酸のモル比よりも低いものである。
【0024】
上述アルカリ性シリカ溶液のSiO2 濃度が3〜13重量%の範囲外、すなわち、3重量%よりも小さいときには、SiO2 量が少なすぎて固結強度が小さくなり、また13重量%よりも大きいときには、SiO2 量が多すぎてそれ自体でゲル化してしまい、安定性を維持することができない。
【0025】
また、コロイダルシリカに由来するSiO2量、あるいはコロイダルシリカと活性珪酸に由来するSiO2量が1〜50重量%の範囲外、すなわち、1重量%よりも小さいときには、ゲル化したときの固結物の初期強度は大きくなるが、長期強度が低く、耐久性が悪くなり、土中ゲル化時間の短縮も徐々に多くなってくる。また、50重量%よりも大きいときには、固結物の初期強度が小さくなる。
【0026】
また、水ガラス量に対してコロイダルシリカ量を多くして安定化を図った場合には、固結物は初期強度が非常に低く、通常のグラウトとしては好ましくないが、土中ゲル化時間は長く維持することができ、地盤の液状化防止用固結材としては充分に使用できる。
【0027】
なお、本発明のアルカリ性シリカ溶液はナトリウムの含有量が比較的少なく、このため、イオン交換樹脂やイオン交換膜のカートリッジ等、小規模な装置を用いて、現場で比較的容易に脱アルカリ処理し、活性の大きな脱アルカリシリカ溶液とすることもできる。この脱アルカリシリカ溶液としては、それ自体ではゲル化しない系のもの、あるいは長時間後にゲル化する系のものが得られる。長時間後にゲル化する系はそれ自体単独で液状化防止用の注入材として優れたものである。
【0028】
さらに、本発明では、上述のアルカリ性シリカ溶液、あるいは脱アルカリシリカ溶液に反応剤を添加混合することができる。この反応剤としては、硫酸、リン酸、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、有機酸(クエン酸、コハク酸、酢酸等)等、水溶液中で酸性を呈する各種酸性反応剤、アルカリ金属塩、アルカリ土金属塩等の無機塩類、セメント、スラグ、石灰類、石膏等が挙げられる。
【0029】
例えば、アルカリ性シリカ溶液に酸性反応剤を添加して該溶液を酸性〜中性領域に調整して所定のゲル化時間を有するグラウトとすることができる。この場合、酸性反応剤として硫酸のような強酸を使わなくてもリン酸、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、有機酸等を用いて土中におけるゲル化時間の短縮も非常に小さく、かつ強度的にも優れ、このため、広範囲にわたる地盤注入用固結材として、特に、液状化防止用固結材として優れたものを得ることができる。
【0030】
さらに、アルカリ性シリカ溶液、あるいは脱アルカリシリカ溶液に比較的少量の各種反応剤を添加することにより、広範囲にわたるゲル化時間、特にゲル化時間が長く、しかも土中でゲル化時間の短縮が少ない固結材とすることができる。この場合、得られる固結材は浸透性に優れ、固結物の耐久性にも優れ、シリカ濃度が稀薄な割に強度が高く、かつ強度発現が早い。
【0031】
【発明の実施例】
以下、本発明を実施例によって詳述するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0032】
1.使用材料
(1)活性珪酸
水ガラスJIS3号品(旭電化工業(株)製品、SiO2 29.0%、Na2 O 9.0%)を水で希釈し、SiO2 5.8%、Na2 O1.8%の希釈品を得、これを水素型陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製品、アンバーライトIR−120B)塔に通液して脱アルカリして得られた、SiO2 5.8%、pH3.0の活性珪酸を使用。(この活性珪酸は脱アルカリの程度によって広範囲のpHのものが得られる。)
【0033】
(2)コロイダルシリカ
上記活性珪酸をアルカリ水中に投入し、SiO2 濃度4%、pH9とした後、90℃まで加熱し、2時間攪拌してコロイダルシリカ母液を得る。この母液を濃縮して得られたSiO2 の含量が20%と30.1%のコロイダルシリカを使用。このコロイダルシリカの平均粒径は4ミリミクロンと15ミリミクロンである。その性状を表1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
(3)水ガラス
通常の水ガラスとして次の(a)に示されるJIS3号水ガラス、高モル比水ガラスとして次の(b)に示される5号水ガラスを使用。
(a)3号水ガラス 比重(20℃)1.39、SiO2 29.2%、Na2 O9.5%、モル比3.17のJIS3号水ガラス
(b)5号水ガラス 比重(20℃)1.32、SiO2 25.5%、Na2 O7.03%、モル比3.75の5号水ガラス
【0036】
【0037】
(5)セメント
表2に示す組成および粉砕度の異なるポルトランドセメントと高炉セメントを
使用。
【0038】
【表2】
【0039】
表2中、セメントの種類No.2の高炉セメントの平均粒径は約3ミクロンである。
【0040】
(6)スラグ
表3に示す組成のスラグを使用。
【0041】
【表3】
【0042】
(7)砂
細砂として豊浦標準砂、シルト質砂として千葉県産海砂を使用。
【0043】
2.測定法
(1)サンドゲル一軸圧縮強度
豊浦標準砂によるサンドゲルをポリ塩化ビニリデン密閉養生(20℃)して土
質工学会基準「土の一軸圧縮試験方法」により測定。
【0044】
(2)ゲル化時間
(a)ホモゲルのゲル化時間
20℃においてカップ倒立法により測定。
(b)土中ゲル化時間
20℃においてグラウト液を砂と混合・静止し、上澄を捨て、砂に竹串
を刺して引き抜き、跡が残ったときを土中ゲル化時間として測定。
【0045】
(3)pH
ガラス電極pH計にて測定。
【0046】
3.アルカリ性シリカ溶液
コロイダルシリカと水ガラス、あるいはコロイダルシリカと活性珪酸と水ガラスを混合してアルカリ性シリカ溶液を得る。これらの混合割合と混合液のSiO2 濃度、およびコロイダルシリカあるいはコロイダルシリカと活性珪酸に由来するSiO2 量(%)と安定性を表4に示した。
【0047】
【表4】
【0048】
表4から、アルカリ性シリカ溶液中のSiO2 濃度が約13%を境として、これ以下ではゲル化せず、半永久的に安定である。したがって、これらのアルカリ性シリカ溶液は長期間保存が可能で、グラウト原料と同様に取り扱うことができ、工場から注入現場へ搬入することも可能である。13%以上の比較例3では、4〜5ケ月後には半ゲル化状態を呈するようになる。
【0049】
また、比較例3ではコロイダルシリカに由来するSiO2 量も本発明の範囲を越えており、反応剤によってゲル化させた場合、強度発現が遅いという欠点が表れる。
【0050】
したがって、SiO2 濃度が略13%以下であれば殆どの場合、安定したアルカリ性シリカ溶液を得ることができる。
【0051】
比較例1、2ではコロイダルシリカに由来するSiO2 濃度が1%以下、また比較例1では、さらに全SiO2 量も3%以下で本発明の範囲外の値となっている。これらはもちろんゲル化することなく安定である。しかし、後述する如く、反応剤の添加によって得られる固結物は極めて軟弱となり、SiO2 濃度が3%近辺を境として、それ以下では著しく強度が低下する。
【0052】
実施例7は活性珪酸を少量混入せしめて安定化している例である。この場合、コロイダルシリカと活性珪酸のSiO2 量中の活性珪酸に由来するSiO2 量は27.8%で、50%以下となっている。
【0053】
4.脱アルカリシリカ溶液
上記のアルカリ性シリカ溶液をイオン交換樹脂処理またはイオン交換膜処理により脱アルカリして脱アルカリシリカ溶液を得る。
【0054】
表4の実施例4で得たアルカリ性シリカ溶液5,000mlを陽イオン交換樹脂900mlで混合処理してpH3.5の脱アルカリシリカ溶液を得た。この脱アルカリシリカ溶液はSiO2 濃度7.1%で、約30〜35時間でゲル化した。
【0055】
また、陽イオン交換樹脂処理に代えて陰・陽イオン交換膜を用いて電流密度3A/dm2 で電解透析を行い、pH3.5に達したところで透析を中止し、上記陽イオン交換樹脂処理の場合と略同じような脱アルカリシリカ溶液を得た。
【0056】
略同一のSiO2 濃度をもつ単なる水ガラス水溶液を直接陽イオン交換樹脂によりpHを3.5程度まで下げるには上記の約数倍量の陽イオン交換樹脂を要する。また、イオン交換膜法ではイオン交換膜数を多くし、透析時間は長時間を要する。
【0057】
SiO2 濃度がさらに濃厚な実施例6のアルカリ性シリカ溶液を同じような処理によりpHを3.5程度にまで低下せしめるとゲル化時間は早くなり20〜24時間程度となる。これら脱アルカリシリカ溶液はそれ自体浸透性に優れた地盤注入用固結材となり得る。また、Naイオンがさらに除去されているため環境保全面からも一層好ましい。
【0058】
5.アルカリ性シリカ溶液−酸性反応剤系
表4の実施例2のアルカリ性シリカ溶液と酸性反応剤としてリン酸を混合して中性〜酸性領域に調整した結果を一例として表5に示した。
【0059】
【表5】
【0060】
表5から、本発明固結材では、ゲル化時間、特に長時間でのゲル化時間の調整が可能なことがわかる。同じ3号水ガラスを用い、SiO2 濃度、pHを略同一にした実施例11、12と、比較例4(3号水ガラス−リン酸系)を比べてみると、実施例ではリン酸量は非常に少なく、約半量で足りている。また、ゲル化時間は非常に長くなっているにもかかわらず、強度的には全く遜色のない固結体が得られている。
【0061】
6.アルカリ性シリカ溶液−反応剤系、脱アルカリシリカ溶液−反応剤系
表4のアルカリ性シリカ溶液は、比較例3を除いては全くゲル化することなく安定である。これに反応剤を添加してゲル化せしめることができる。また、脱アルカリシリカ溶液に反応剤を添加してゲル化を調整することもできる。アルカリ性シリカ溶液−反応剤系および脱アルカリシリカ溶液−反応剤系のゲル化時間と固結強度を表6に一括して示す。
【0062】
【表6】
【0063】
表6全般を観察してゲル化時間は短時間から長時間に及んでおり、特に長いゲル化時間の調整が容易である。また、コロイダルシリカ由来のSiO2 量が比較的多い実施例14、15では2日強度は低いが28日強度はかなり上昇している。
【0064】
SiO2 濃度が本発明の範囲以下の比較例5では固結強度が極めて低い。本発明の範囲以上にある比較例6ではSiO2 が濃厚であるにもかかわらず、固結強度の増加はみられず、むしろ低下気味にある。
【0065】
実施例21の脱アルカリシリカ溶液の場合は、同程度のSiO2 をもつ実施例17と比較すると、ゲル化時間は著しく長びくが、強度は殆ど差はみられない。
【0066】
セメントやスラグを混入した懸濁型の実施例(実施例16、18、20) では、従来の水ガラス−セメント系の比較例8に比べて初期強度は若干劣るものの、長期強度では格段に強化されている。
【0067】
また、SiO2 の濃厚な比較例7ではゲル化が瞬時に起こって不均一な固結体になりやすい欠点がある。
【0068】
7.ゲル化時間
ホモゲルのゲル化時間はもちろん、さらに液状化防止には土中におけるゲル化時間が長く保持できることが望ましい。上記表5、6のゲル化時間の長い配合液の一部について、豊浦標準砂と千葉県産海砂中におけるゲル化時間(土中ゲル化時間)を測定した。併せて対象として従来から長いゲル化時間を示す酸性シリカゾルと比較した。結果を表7に示す。
【0069】
【表7】
【0070】
表7から従来の酸性シリカゾル(比較例9)のホモゲルは非常に長いゲル化時間を示すが、土中では著しく短縮される。特に、千葉県産海砂では甚だしい。
【0071】
これに対して、本発明の実施例24〜31では土中におけるゲル化時間の短縮は非常に少なく、依然としてかなりのゲル化時間を保持していることがわかる。このことは液状化防止用注入材として広範囲への浸透を可能にする。
【0072】
8.浸透試験
上記試験の結果から明らかなように、本発明の地盤注入用固結材は広範囲のゲル化時間、特に長時間のゲル化時間の調整が容易で、しかも土中においてもゲル化時間の短縮が少ないことから優れた浸透性が期待できるが、念のため図1に示す実験室での浸透注入試験装置を用いて浸透試験を行った。
【0073】
図1において、圧力計2、3を介して、コンプレッサー1に連結された攪拌器4を備えた水槽5の中に注入材6を充填する。7は内径50mm、高さ1.5mのアクリル製パイプであって、この中に標準砂8を九層に分けて詰め、各層毎に水平打撃により60%の相対密度になるように締め固める。
【0074】
次いで、水槽5の中に充填された注入材6はコンプレッサー1の注入圧0.5kgf/cm2 でパイプ7中の標準砂8に圧入される。注入材は標準砂8中に浸透され、浸透距離を観察した。図1中、9、10は切換コック、11、12は金網、13はメスシリンダーである。
【0075】
試験に使用した固結材および試験結果を表8に示す。表8において、浸透試験No.1〜7は本発明にかかる固結材であり、浸透試験No.8、9は比較例としてあげた固結材でNo.8は本発明の範囲外の系であり、No.9は従来の酸性シリカゾルである。
【0076】
【表8】
【0077】
表8より浸透試験No.1〜6の本発明にかかる系では、アクリル製パイプ7の標準砂8の全長によく浸透して全体が均一に固結した。浸透試験No.7は本発明にかかる系であるが水ガラスの含有量が非常に多い系で、上記の浸透試験No.1〜6に比べると若干見劣りがあった。
【0078】
これに対して、比較例の浸透試験No.8はかなりの浸透を示したが、1.5mの全長にまでは浸透できなかった。すなわち、本発明にかかる浸透試験No.2と比較例の浸透試験No8を比べてみるとホモゲルのゲル化時間は後者の方が長いにもかかわらず浸透性は逆に劣っている。
【0079】
また、比較例の浸透試験No.9はホモゲルのゲル化時間は著しく長いが浸透性には極めて劣る。
【0080】
このように本発明の固結材は浸透性に極めて優れていることが実証された。
【0081】
【発明の効果】
以上のとおり、コロイダルシリカと水ガラスあるいはさらに活性珪酸をある特定の割合で混合したアルカリ性シリカ溶液および該アルカリ性シリカ溶液を脱アルカリした脱アルカリシリカ溶液を基盤とする地盤注入用固結材は次の効果を奏し得るものである。
【0082】
1.広範囲のゲル化時間、特に長時間のゲル化時間が調整でき、かつ土中においてもゲル化時間の短縮が少ない。したがって、浸透性もよく、地盤の液状化防止用の注入用固結材として極めて優れている。
【0083】
2.低シリカ濃度の割には高い固結強度を示す。
【0084】
3.アルカリ含量が少なく、水質保全性に優れる。
【0085】
4.アルカリ性シリカ溶液は自硬性がないため、保存あるいは工場から注入現場へ搬入が可能である。
【0086】
5.脱アルカリシリカ溶液はイオン交換樹脂やイオン交換膜のカートリッジ等の小規模な装置で容易に得ることができる。
【0087】
6.セメントやスラグ等を使用しても均質にゲル化し、高強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実験室用注入試験装置の略図である。
【符号の説明】
1 コンプレッサー
2 圧力計
3 圧力計
4 攪拌器
5 水槽
6 固結材
7 アクリル製パイプ
8 豊浦標準砂
9 切換コック
10 切換コック
11 金網
12 金網
13 メスシリンダー
Claims (2)
- コロイダルシリカおよび水ガラスを含むアルカリ性シリカ溶液、またはコロイダルシリカ、水ガラスおよび活性珪酸を含むアルカリ性シリカ溶液に酸性反応剤を添加して該アルカリ性シリカ溶液を酸性〜中性領域に調整しかつ、前記アルカリ性シリカ溶液中のSiO 2 濃度が3〜13重量パーセントであり、このうち、コロイダルシリカまたはコロイダルシリカと活性珪酸に由来するSiO 2 量が1〜50重量パーセントであることを特徴とする地盤注入用固結材。
- コロイダルシリカおよび水ガラスを含むアルカリ性シリカ溶液、またはコロイダルシリカ、水ガラスおよび活性珪酸を含むアルカリ性シリカ溶液をイオン交換樹脂またはイオン交換膜で脱アルカリ処理して活性の大きな脱アルカリシリカ溶液とし、この溶液に酸性反応剤を添加して該溶液を酸性〜中性領域に調整しかつ、前記アルカリ性シリカ溶液中のSiO 2 濃度が3〜13重量パーセントであり、このうち、コロイダルシリカまたはコロイダルシリカと活性珪酸に由来するSiO 2 量が1〜50重量パーセントであることを特徴とする地盤注入用固結材。
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