JP5578642B2 - 地盤注入剤および地盤注入工法 - Google Patents

地盤注入剤および地盤注入工法 Download PDF

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Description

本発明は、地盤注入剤および地盤注入工法に関し、詳しくは、高浸透水圧に対して優れた耐久性を有し、高い浸透性および止水効果が得られる複合シリカコロイドを主材とする地盤注入剤および地盤注入工法に関する。特に、高浸透水圧下の亀裂のある岩盤の止水や岩盤掘削によって形成された空洞周辺部の止水において、岩盤の亀裂へのゲルの充填性に優れ、かつ、高浸透水圧が作用してもゲルが押し出されることなく長期止水性を維持することができる地盤注入工法にかかわるものであって、上記効果を得られるものである。
近年、ダム、地下ダム、トンネル等の岩盤亀裂注入はもとより、放射性廃棄物の地下空洞内の封じ込め、LPG等の地空洞内の貯溜等において岩盤の微細な亀裂の充填が重要な国家的課題になっている。
また、高浸透水圧下におけるトンネル掘削工事、大深度地下開発、あるいはダムや地下ダムの止水層の構築、また、近年は放射性廃棄物の岩盤空洞封じ込め、液化プロパンガスの岩盤空洞貯溜のための水封式地下岩盤タンク等の構築における、グラウト注入での強度と止水効果に優れた地盤注入が求められている。特に、高水圧下における掘削工事や大深度地下開発が長期間にわたる場合、あるいは岩盤空洞の構築や空洞周辺の止水層の形成においては、特に岩盤の微細な亀裂に広範囲にゲル化物を充填して、長期の止水性および長期の強度耐久性が要求されている。これらの問題が解決されれば、被圧下における掘削工事の安全性のみならず、また、止水層の形成、有害物の周辺への漏出、外部から空洞への浸透を防ぎ、周辺地盤の地下水位の低下や地盤変異が抑えられ、さらに、本設後の漏水等の補修費が低減される。
従来、一般に軟弱砂地盤等の地盤改良に用いられるグラウトとして、水ガラスを原料とした種々の溶液型シリカグラウトが知られている。例えば、水ガラス系アルカリ性グラウト、酸性シリカゾルを主成分としたグラウト、水ガラスを陽イオン交換樹脂またはイオン交換膜で処理して得られる活性シリカを主成分としたグラウト、活性シリカを濃縮増粒してpHが9〜10の弱アルカリ性で安定したシリカコロイド等である(特許文献1および2)。
しかし、高浸透水圧下の砂地盤の注入や岩盤注入においては、上述の溶液型シリカグラウトでは、注入後土粒子間のゲル、または岩盤の亀裂中のシリカゲルが水圧で押し出されてしまい、止水性や長期耐久性が低減する。このため、溶液型シリカグラウトに代えて、セメント系の懸濁型注入剤が用いられているが、懸濁型注入剤では粒子径が大きく、透水性の小さい地盤、あるいは微細な亀裂を持つ岩盤には不向きであった。特に、高浸透水圧下の亀裂を有する岩盤注入の場合、注入液は岩盤そのものには浸透せず亀裂の中のみに填充してゲル化することになるため、ゲルの収縮やブリージングやシリカの溶脱があると止水効果が不充分となり耐久性が期待できない。また、粘性が大きかったり、粒子径が大きかったりして浸透性が悪くて大きな空隙にのみにしか填充しない場合、あるいは固結距離が短い場合ゲルの強度が低かったり、収縮したりするとゲルが水圧で押し出されてしまう。
そこで、このような点を改良した技術として、超微粒子セメントを用いたり、あるいは特許文献3のようにシリカグラウトが6〜50nmの粒径のシリカコロイドと微粒子セメントを有効成分として含有してなり、これにより、前記シリカグラウトによる固結地盤が浸透水圧下であっても、長期に亘り止水性と強度を保持する地盤注入工法が、本出願人により開示されている。
特許第3205900号公報 特開2004−35584号公報 特開2006−226014号公報
しかしながら、上記特許文献3記載の方法は、長期に亘り止水性と強度を保持することはできるものの、高浸透水圧に対しては、なお十分ではなく、今日、より優れた耐久性、浸透性および止水効果が求められている。
そこで本発明の目的は、上記従来技術における問題を解消して、高浸透水圧に対して、
特に亀裂を有する岩盤注入において、優れた耐久性を有し、高い浸透性および止水効果が
得られる地盤注入剤および地盤注入工法を提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、上記課題を解決するには、以下の要件(1)および(2)を必要とすることを見出した。
(1)超粒子セメントは平均粒経が約5〜10μmであって、これでは微細な岩盤の亀裂を填充することは不可能である。高水圧下の岩盤亀裂の止水はもっと粒径が小さいことが必要である。
(2)シリカコロイドは通常6〜50nmの粒経の範囲にあり、浸透性にすぐれているがそれ単独では岩盤中の亀裂にゲルのみを填充した場合、高水圧下ではゲルの強度が不充分となる。このため、超微粒子セメントをシリカコロイド液に混合して注入する方法があるが、この場合セメントがシリカコロイドと直ちに反応して浸透性が悪くなる。また、超微粒子セメント自体がブリージンしてしまい、あるいは亀裂表面でフィルタリングし、微細な亀裂に浸透しない。したがって、シリカコロイドに加えて強度を上げるためには微粒子セメントよりも粒径が小さく、シリカコロイドよりも粒径が大きく、かつ、それ自体反応性がなく、シリカコロイドと直ちに反応しない材料であることが好ましい。
平均粒径および比表面積が異なるシリカを含有する複合シリカコロイドを用いることにより、高浸透水圧に対して優れた耐久性を有し、高い浸透性および止水効果が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
本発明は、シリカコロイドに微粒子球状シリカを加えてなる複合シリカコロイドであって、該微粒子球状シリカはシリカコロイドよりも粒径が大きく、超微粒子セメントよりも粒径が小さくそれ自体では反応性がなく、また、純粋なシリカ粒子であるシリカコロイドとも直ちに反応せずシリカコロイドに加えて微粒子の骨材としての効果があると共に、時間が経てばシリカコロイドと互いのシリカ表面のシラノール基(−OH)同志が結合して、大きなコロイド粒子に成長して大きなコロイド間に小さなコロイドが填充されてお互いにシラノール基が反応して一体となった強固なシリカゲルを形成することを見出し、上記課題を解決して本発明を完成が完成されたものである。
すなわち、本発明の地盤注入剤は、シリカグラウトを地盤中に注入する地盤注入剤であって、該シリカグラウトがシリカコロイドと微粒子球状シリカを含有する複合シリカコロイドを主材とすることを特徴とするものである。
また、本発明の地盤注入工法は、前記地盤注入剤を注入することで地盤を固結し、長期にわたり強度を持つことを特徴とするものである。
さらに、本発明の他の地盤注入工法は、前記地盤注入剤を注入することで、地下における浸透水圧下において長期にわたり止水性と強度を持つことを特徴とするものである。
さらにまた、本発明の他の地盤注入工法は、地盤が透水圧下の亀裂を有する岩盤を主とする地盤に対し、該岩盤に前記地盤注入剤を注入し、亀裂をゲルで充填し、浸透水圧下でも、ゲルが押し出されることなく長期の止水性を持つことを特徴とするものである。
さらにまた、本発明の他の地盤注入工法は、前記地盤注入剤を注入することにより、浸透水下における岩盤内に廃棄物を封じ込め、あるいはガスや液体燃料を貯蔵する空洞の止水層を形成することを特徴とするものである。
本発明により、高浸透水圧に対して、特に亀裂を有する岩盤注入において、優れた耐久性を有し、高い浸透性および止水効果が得られる地盤注入剤および地盤注入工法を提供することが可能となった。
以下、本発明の実施の形態につき具体的に説明する。
本発明に用いられるシリカコロイドは、活性シリカを濃縮増粒して弱アルカリ性に安定させてなるコロイドである。また、水ガラス、あるいは水ガラスと酸を混合してなる酸性水ガラスをイオン交換樹脂やイオン交換膜で処理して得られる活性シリカの重合体である活性シリカコロイド、この活性シリカコロイドに水ガラス、酸あるいは塩を加えてなるシリカコロイド等である。本発明の主材である複合シリカコロイドは、上記シリカコロイドに、平均粒径が0.10〜1.0μmで比表面積が5〜40m/gである微粒子球状シリカを含有する。弱酸性に調整された微粒子球状シリカを用い、コロイダルシリカが弱アルカリ性である場合、それらを混合することによりPHが中性化しゲル化することもできる。さらに、本発明に用いられる複合シリカコロイドは、水ガラスや、酸や、塩や金属イオン封鎖材等を混合したものでもよい。
本発明に用いられる複合シリカコロイドを構成する微粒子球状シリカは、所望の効果が得られれば特に限定されないが、平均粒径が0.10〜1.0μmで比表面積が5〜40m/gであることが好ましい。かかる微粒子球状シリカとしては、この条件を満たすものであれば限定されないが、例えば、可燃ガスと助燃ガスとによって形成される高温火炎中にシリカ質原料粉末を噴射して溶融球状化し、冷却しながら球状シリカ粉末を捕集する方法において、炉体から捕集器までのガス湿度の露点を30〜75℃に維持し、これによって最適なシラノール基濃度を有する球状シリカ粉末を製造し、さらに分級処理によって、流動性の助長効果に優れた平均粒子径と比表面積とを有する微細球状シリカ粉末を捕集する方法で得られる。
また、かかる微粒子球状シリカは、球形度の平均値が0.90以上、特に0.95以上であることが好ましい。球形度は、走査型電子顕微鏡(日本電子社製「JSM−T200型」)と画像解析装置(日本アビオニクス社製)を用いて測定することができる。例えば、先ず、粉末のSEM写真から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定する。周囲長(PM)に対応する真円の面積を(B)とすると、その粒子の球形度はA/Bとして表示できる。そこで、試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、PM=2πr、B=πrであるから、B=π×(PM/2π) となり、個々の粒子の球形度は、球形度=A/B=A×4π/(PM)として算出することができるので、任意の粒子200個の平均値を粉末の球形度として求めることができる。
さらに、微粒子球状シリカの非晶質化率は、95%以上特に98%以上であることが好ましい。非晶質化率は、粉末X線回折装置(例えば、RIGAKU社製「Mini Flex」)を用い、CuKα線の2θが26°〜27.5°の範囲において試料のX線回折分析を行い、特定回折ピークの強度比から測定することができる。
さらにまた、微粒子球状シリカのシラノール基濃度が0.5〜5.0個/nmであることが好ましい。シラノール基濃度は、カールフィッシャ法によってそれぞれ測定することができる。
かかる微粒子球状シリカとしては、例えば、電気化学工業(株)社製のSFP−30M等が挙げられる。
本発明の複合シリカコロイドを主材とする地盤注入剤は、上記シリカコロイドを、1〜50質量%含有することが好ましく、微粒子球状シリカを1〜50質量%含有することによって、高浸透水圧に対する優れた耐久性等の本発明の所望の効果を良好に得ることができる。シリカコロイドは現在、30〜50%の濃度のものが地盤注入剤に使用されており、それ以上の濃度ではコロイド同士が吸着し部分的にゲル化してしまうため、均一なゲルを得ることができない。また、地盤注入剤に微粒子球状シリカの添加量が50質量%より多くなると粘性が高くなり、浸透しにくくなる。
また、本発明の地盤注入剤は、さらに水ガラスを1〜20質量%含有することもできる。水ガラスはシラノール基を多く含み、反応性が早いため、初期の強度発現が早い。しかし、コロイダルシリカに比べNaを多く含み、ゲル化後、ゲル化物の収縮が起こるため、上記の量にとどめる必要がある。
水ガラスを加える場合には、水ガラスと酸を混合して酸性水ガラスとして加えるか、あるいは水ガラスと酸を含む酸性複合シリカコロイドとすることによって、酸性水ガラスの1nm以下の小さなコロイドが加わった複合シリカコロイドが形成される。従って、3つの異なる粒径からなる複合シリカコロイドが形成される。
本発明では、粒径が大きいシリカは、シリカ濃度の高い割には強度が低く、かつ、強度発現が遅いが、高浸透水圧下でも長期間の耐水圧効果を有する。一方、粒径が小さいシリカは、シリカ濃度が薄くても強度発現と固結性に優れる。また、本発明は、これらの混合物からなる複合シリカコロイドであるため、特に、高浸透水圧下において、初期のうちに優れた止水性と強固な固結効果を確実に達成することができる。このため、本発明では、セメントを配合せずに、所望の効果を得ることができる。
本発明にかかる上述の複合シリカコロイドは、反応性が高く、これをアルカリ性を呈する微粒子の懸濁液が注入された地盤に注入しても、アルカリ性の影響を受けにくく、高水圧下において、大きな固結性と止水性を同時に発現する。特に、本発明にかかる複合シリカコロイドは高浸透水圧下の岩盤亀裂注入に用いて、長期耐久性に優れた止水性と強固な固結性を達成し、注入対象地盤を確実に固結止水する。
また、本発明におけるシリカコロイドは、液状のアルカリ金属シリカ塩水溶液(水ガラス)からアルカリ金属イオンのほとんどを除去して得られるものであって、例えば、ゼオライト系陽イオン交換体、アンモニウム系イオン交換体のイオン交換樹脂に水ガラスを通過させ、生成したシリカコロイドを80℃〜90℃の温度でさらに水ガラスに加え、再び前記イオン交換樹脂に通過してイオン交換を行って得られるものであり、比較的純粋な(希薄な)シリカコロイド(活性シリカコロイド)が得られる。
さらに、純粋なシリカコロイドを得るには、前述の希薄なシリカコロイドを微アルカリ性に調製し、これにさらに前述のシリカコロイドを加えながら蒸発し、安定化と濃縮を同時に行う方法、あるいはイオン交換後の活性シリカコロイドを適当なアルカリの下に加熱し、これにさらに活性シリカコロイドを加えて安定化する方法が用いられる。
本発明におけるシリカコロイド溶液は、Naイオンがほとんど分離除去されているため、通常pHが10以下の弱アルカリ性を示しており、NaOは0.2%〜4%の範囲にある。NaOは4%以上になるとシリカコロイドは溶けてしまい、ケイ酸塩の水溶液となってしまう。一方、NaOが0.2%以下になるとシリカコロイドは安定して存在し得ず、凝集してしまう。すなわち、NaOが0.2%〜4%の範囲で、Naイオンがシリカコロイドの表面に分布して安定したコロイド状に保ち得る。
このようにして調製されたシリカコロイドは、ほとんど中性に近く、かつ、半永久的に安定しており、これを注入液として用いる場合、工場から現場への搬入ならびに注入操作の際にゲル化する心配がない。このシリカのコロイド溶液をそのまま地盤中に注入してもそれ自体実用時間内にゲル化することはないので実用上の固結効果は得られない。
しかし、このシリカコロイドに上記超微粒子球状シリカを加えた複合シリカコロイド溶液に酸やNaClやKCl等一価のアルカリ金属塩や、Al、Ca、Mg等の多価金属塩やこれらの水酸化物やその他の塩等のゲル化材を加えて混合物として地盤中に注入すると、本発明の複合シリカのコロイドシリカ溶液は地盤中で前記ゲル化材により不安定化されたコロイド粒子同士が結合し、強固な固結体を形成して地盤を固結する。さらに、このシリカコロイドに活性シリカや水ガラスを加えたり、さらにリン酸、硫酸、その他の酸や塩や金属イオン封鎖剤を加えてもよい。本発明において、複合シリカコロイドは、酸や塩のいずれか、あるいは併用することによりpHをアルカリ性または酸性に調整してゲル化時間を調整できる。金属イオン封鎖剤はキレート効果を有し、地下水に岩盤から溶解する金属イオンや岩盤の亀裂から溶出する金属イオンを不動態化する。地下水に存在する金属イオンとして、Ca2+、Mg2+、鉄イオン等が挙げられ、リン酸、リン酸系化合物をはじめとする金属イオン封鎖剤、キレート剤等はシリカと共に地中の金属イオンをマスキング作用によって被覆膜を形成し、地下水の微量金属や貝殻などのカルシウムやマグネシウム分と反応して不溶性あるいは難溶性の化合物をつくるものと推測される。このため地盤中のCa、Mgによって複合シリカコロイドの浸透が阻害されない効果を生ずる。
さらに、本発明において、金属イオン封鎖剤は、リン酸やヘキサメタリン酸ソーダ等のリン酸化合物が優れているが、それ以外のリン酸化合物以外の金属イオン封鎖剤を使用し、金属イオンのマスキングを期待せしめることもできる。このような金属封鎖剤としてテトラポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩(特にナトリウム塩が良い)、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、酸性ヘキサメタリン酸塩、酸性ピロリン酸塩等の縮合リン酸塩類、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸、グルコン酸、酒石酸またはこれらの塩類等を挙げることができる。
本発明においては、上述のシリカコロイドを有効成分とする地盤注入剤と、懸濁型注入剤とを併用して地盤中に注入することができる。この懸濁型注入剤としては、微粒子セメントや微粒子スラグあるいはこれらの混合物を有効成分とする注入剤等がある。これらの懸濁溶液をあらかじめ地盤に注入して、粗い割れ目を充填しておくことにより、地下における浸透水圧下であっても、長期に亘り止水性と強度を保持し、地盤を改良することができる。
上記において、あらかじめ微粒子スラグを有効成分とする懸濁型注入剤を地盤中に注入し、次いで、この注入された地盤に本発明の複合シリカコロイドを主材とする地盤注入剤を注入し、地盤中で併用することもできる。また、該地盤注入剤を注入の後、該懸濁型注入剤グラウトを注入する。該懸濁型注入剤と該地盤注入剤を交互に複数回にわたり注入する、等により両者を地盤中で併用することもできる。
本発明の地盤注入工法は、地盤を固結する地盤注入工法において、上記地盤注入剤を用いることを特徴とするものである。
一般に、大深度地下開発は、用地取得費が不要であり、さらに、既存構造物に左右されずに開発できるという経済面・計画面でのメリットが大きいため、シールド技術を活用した様々な構造物の開発が見込まれている。とりわけ、長距離かつ多方向への建設が不可欠となるライフラインには40m〜100m下の大深度地下が最適とみられており、当面、電力・ガス用のライフラインの建設が先行すると予想される。
また、数100mから1000m級の大深度のたて坑を掘削して、大空洞を形成し、そこに放射性廃棄物を封じこみ、或いはLPGを貯蔵することができる。この場合の高水圧にも耐える止水層を形成して、かつ空洞を保持する強度と止水性を維持できる。
さらに、海底トンネルや火山堆積物中のトンネル掘削には100m〜200mの水圧に相当する被圧水下の掘削工事になることもある。これらは掘削工事に長期間かかるのみならず、工事完成後も高い水圧下にあり、高浸透圧水がトンネル内部に漏水する可能性がある。そこで、高被圧水下のトンネル掘削工事や大深度地下開発を目的とした恒久的地盤改良の際、掘削地盤には大きな土圧と水圧がかかり、かつ掘削工事は長期に及ぶため、できるだけ地盤を均一に高強度化してかつ長期にわたって止水効果と固結効果も得られることが必要である。また、耐久性に優れていることは注入後掘削工事までの長期化にも耐えることと工事完成後のメンテナンス、充填周辺地下水の低下を防ぐためにも必要である。本発明の地盤注入剤および地盤注入工法は、このような用途に使用される。
以下、本発明を実施例によって陳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実験−1)
本発明が浸透水圧下にて強度と固結強度の長期耐久性の効果を確かめるために一例として本発明の複合シリカコロイドを浸透水圧下にて養生したものの強度変化を観察した。
使用材料
1.砂
6,7号混合珪砂を使用。砂の密度(ρs)は2.667g/cm
2.注入剤:下記表1(注入液1000L当たりの配合)のものを使用した。
3.注入供試体
内径5cm×高さ10cm 透明アクリルモールド使用
実験方法
コロイダルシリカを30質量%含むシリカコロイドに、微粒子球状シリカ、水ガラスと塩化カリウムを反応させ、透明アクリル円筒モールドに砂の密度が1.5g/cmとなるように砂をいれ、注入方式で作製した。
その後、2日間20℃の室内養生をした。養生後供試体をアクリルモールドから外し、浸透水養生のできるモールドの中央に置きその周りにはベントナイトを隙間や空洞がないように詰めた。これによって供試体以外からの浸透水を完全に遮断できた。モールドを組み立てた後、図1および2に示す養生水槽に設置した。この水槽は浸透水圧がかけられるようになっており、浸透水圧は注入供試体の下方から作用させた。水圧は動水勾配が10となるようにした。また、同様に作成した供試体を静水圧下にて養生し、比較した。
また、別の実験より55℃、65℃養生強度の促進倍率は標準養生20℃に対し約30倍、約50倍が得られることが判っていることから、促進養生を行った。養生温度は20℃、55℃、65℃の3通りであった。
供試体を静水圧下にて養生させたものと、水中にて水圧は動水勾配10をかけ、長期養生させたものの強度変化を測定した。結果を図3および4に示す。
これより、微粒子球状シリカを配合したもの(実施例1、2、3)は、微粒子球状シリカを配合しないもの(比較例1、2)に比べて強度が大きいことがわかる。また、長期間浸透水圧の影響を受けず、静水圧状態と同じ強度増加を得ることができることがわかった。尚、比較例2では静水養生で0.5MN/cmを示し、その後強度増加がないので以後のテストは割合した。この測定値より、注入改良範囲が10mの場合、100mの水頭(H)が作用した状態で、少なくとも30日において強度が発現し、その後も浸透水圧の影響を受けず静水圧状態と同じ強度増加を得ることが推測できた。
(実験−2)
実験−1の実施例1の体積変化を測定した。ホモゲルの体積変化試験は,メスフラスコ法により実施した。栓付200mLメスフラスコに注入剤100mLを入れ,24時間静置しゲル化させる。イオン交換水を標線まで入れ,室温20℃で養生した.養生日数0、7、14、28日経過時にゲルの体積を測定し,変化を観察した.なお,ホモゲルの体積変化率(%)は次式により算出した。
結果を図5に示す。これより、実施例1の配合はゲルの収縮や膨張がないことより、亀裂中での収縮により通水が起こらないものと考えられる。
(実験−3)
図6に示す岩盤の割れ目を模した長さ50cmのスチール製パイプを用いて、注入剤の水圧に対する抵抗を測定した。パイプの孔径を1、3、5mmとし、表1の注入剤を3パイプの一方より注入し、室温にて28日間養生した。地盤深約500mに相当する水圧5MPaを装置側面よりゲル断面に掛け水圧への抵抗を測定した。結果を表2に示す。
これより、以下のことが分かった。表1の配合の実施例1〜3において、1、3、5mmのそれぞれにおいて水に対する抵抗性を示し、水を止水した。これに対し、比較例1では1、3mmでは抵抗性を示したものの、5mmでは通水した。比較例2では全て通水した。比較例2は収縮がおこり、スチール板との間に隙間ができ、通水してしまったものと思われる。以上により、超微粒子球状シリカを含む複合シリカコロイドは水圧に対する抵抗力に優れていることが判った。
原油やLPガスの貯蔵方式に地下に掘った岩盤空洞内に封じ込める「水封式地下岩盤タンク方式」がある。水封式地下岩盤タンク方式は、岩盤タンクの位置を地下水位より深い位置に設け、周りにある地下水の持つ圧力が、タンク内の原油やLPガスの圧力より常に高くなる状態に保つ。このとき本発明の注入剤をタンク周辺の地盤や地盤の亀裂に注入し固結することで、本発明の地盤注入剤による長期の強度と止水性よりタンク内への止水をおこなうことができ、原油やガスの封じ込めを行うことができる。
養生水槽を示す図である。 養生水槽の断面を示す図である。 静水圧下での強度変化を示す図である。 浸透水圧下の強度変化を示す図である。 ホモゲルの体積変化を示す図である。 岩盤の割れ目を模したスチールパイプ装置を示す図である。
符号の説明
1 スチールパイプ
2 水圧
11 養生タンク
12 表面の水
13 モールド
14 ウォーターヒーター
15 試料
16 水圧
21 上蓋
22 砂利
23 ベントナイト
24 ゴム
25 注入供試
26 金網
27 下蓋

Claims (7)

  1. シリカグラウトを地盤中に注入する地盤注入剤であって、該シリカグラウトがシリカコロイドと微粒子球状シリカとを含有する複合シリカコロイドを主材とし、該シリカコロイドが平均粒径6〜50nmであり、かつ、該微粒子球状シリカが平均粒径0.1〜1.0μm、比表面積5〜40m/gであって、該微粒子球状シリカの地盤注入剤中の含有量が1〜50質量%であり、超微粒子セメント及び微粒子セメントを含有しないことを特徴とする地盤注入剤。
  2. 水ガラスを1〜20質量%含有する請求項1記載の地盤注入剤。
  3. 塩、酸および金属イオン封鎖剤からなる群から選択される1種以上を含有する請求項1または2記載の地盤注入剤。
  4. 請求項1〜3のうちいずれか一項記載の地盤注入剤を注入することで地盤を固結し、長期にわたり強度を持つことを特徴とする地盤注入工法。
  5. 請求項1〜3のうちいずれか一項記載の地盤注入剤を注入することで、地下における浸透水圧下において長期にわたり止水性と強度を持つことを特徴とする地盤注入工法。
  6. 地盤が透水圧下の亀裂を有する岩盤を主とする地盤に対し、該岩盤に請求項1〜3のうちいずれか一項記載の地盤注入剤を注入し、亀裂をゲルで充填し、浸透水圧下でも、ゲルが押し出されることなく長期の止水性を持つことを特徴とする地盤注入工法。
  7. 請求項1〜3のうちいずれか一項記載の地盤注入剤を注入することにより、浸透水下における岩盤内に廃棄物を封じ込め、あるいはガスや液体燃料を貯蔵する空洞の止水層を形成することを特徴とする地盤注入工法。
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