JP6712828B1 - 地盤注入材および地盤注入工法 - Google Patents
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Abstract
Description
従来より、軟弱地盤等の地盤改良などに用いられるグラウトとして、水ガラスを主成分とする種々の溶液型グラウトが知られている。中でも、シリカゾルを酸性または中性領域でゲル化させる地盤注入工法においては、従来は、酸性液と水ガラスとを用い、酸性液に水ガラスを添加して、酸過剰の状態を保持するように両液を混合しながらpHが1〜3付近の強酸性珪酸水溶液を作製し、そのまま注入するか、或いは、さらに、この酸性珪酸水溶液に水ガラスまたはpH調整剤を加えてpHを中性方向に移行して注入を行うという、二工程の方法が採られていた。
本発明は、シリカ溶液を用いた地盤注入材であって、該シリカ溶液が、シリカコロイドと、水ガラスと、水酸化マグネシウムと、酸性剤と、を有効成分とする酸性シリカ溶液であり、該シリカ溶液が、以下の2),3)の条件を満足することを特徴とする地盤注入材である(請求項1)。
2)前記シリカ溶液中の全シリカ量が1〜50質量%であって、前記シリカコロイドに起因するシリカ量が該全シリカ量の1〜100質量%である。
3)前記水酸化マグネシウムの配合量が、以下のi)〜ii)のうちのいずれかの条件を満足する。
i)前記シリカ溶液100ml当たり0.025〜10g。
ii)α=水酸化マグネシウム(g)/硫酸純分(g)=0.011〜0.306。
(1)水ガラスと水酸化マグネシウム(または酸化マグネシウム、または炭酸マグネシウム)を用いた酸性シリカゾルグラウトは、
i)難溶性アルカリ剤が、シリカゾル溶液中で沈殿分離しやすい。
ii)ゲルの収縮が大きいので、固結地盤の所定の強度の持続性が難しい。
このため、注入地盤で水酸化マグネシウムが沈殿しやすく、注入範囲に広く浸透しきれない点と、ゲルの収縮が大きく固結砂の長期耐久性が得られない点が問題であった。
(2)水ガラスとコロイドと酸とからなる酸性複合シリカは、ゲルの収縮が少なく長期耐久性に優れている。このため、液状化対策工のように、長いゲル化時間で広範囲浸透固結させ、長期にわたって所定の強度以上を維持する固結体を形成するのに適している。しかし、長いゲル化時間の酸性複合シリカは、地盤中で中性方向に移行するが地盤が豊浦砂のように反応性の少ない地盤や酸性土の場合、ゲル化時間が短縮せず逸脱しやすい。また、中性方向に移行する程度は地盤任せで、人為的にコントロールできない(図3、図4)。このため、長いゲル化時間の注入液がそのまま用水中に流入した場合、水質基準(pHが6.5〜8.5または6.0〜8.5)に適合させるのが難しい。また、酸性シリカ溶液は、注入液自体では酸性剤のわずかな違いで直ちにpHが変化してゲル化時間が大幅に変わるので、ゲル化時間の調整が難しい(図1)。このため、地盤条件に関わらず注入液それ自体で緩やかに中性方向に移行することによって、逸脱しやすい地盤においても、或いは用水に近い施工においても、pHまたはゲル化時間を所定の値にコントロールすることにより逸脱を防ぎ、地盤に注入液を密実に充填するのが望ましい。したがって、地盤条件や土質条件のいかんに関わらず、地下水のpHが水質基準の範囲内におさまるようにpHを中性方向に移行し、ゲル化時間を緩やかに調整して、広範囲を逸脱することなく、所定の領域を確実に固結できることが望ましい。
図1に、本出願人の研究によるシリカ溶液のpHとゲルタイムと豊浦砂の固結強度の試験例を示す。
図2に、本出願人によるシリカコロイド系、複合シリカ系、シリカゾル系、有機水ガラス系のシリカグラウトのゲルからのシリカの溶出、ゲルの収縮、サンドゲルの長期強度の変化に関する研究例を示す。この図より、酸性シリカ溶液を用いた地盤注入に関して、以下の特性が判った。
(2)ゲルの収縮は長期耐久性に影響し、過大なゲルの収縮は長期的な強度の低下をもたらす。
(3)コロイドのゲルの収縮はきわめて少ない。また、強度の低下は認められない。
コロイドとゾルとを含有する複合シリカのゲルの収縮はきわめて少ない。また、強度の低下は認められない。ここで、複合シリカ溶液とは、水ガラスをイオン交換法で脱アルカリして増粒(粒径:0.5〜100nm)したシリカと、水ガラスのアルカリを酸で中和した酸性シリカゾル(シリカ粒子(粒径:1nm程度))との混合液をいう。なお、混合液の粒径は1〜100nmの範囲にあると考えられる。
(4)コロイドを含有しないシリカゾル液はゲルの収縮は大きく、固結砂の長期強度は低下する傾向がある。
(5)水ガラスとコロイドと酸性剤とからなる酸性複合シリカグラウトは、シリカの溶脱は無視できるほど小さく、ゲルの収縮が少なく、その固結土は所定の強度の長期持続性に優れており、液状化対策工等の本設注入に多く用いられている(図2(b),(c))。
本出願人の研究による図3、図4より、以下のことが判った。
酸性複合シリカ溶液の土中ゲルタイムは、注入地盤によって大きく変わる。そして、pHが1〜3付近のゲル化時間の安定したシリカ溶液(シリカ濃度が4〜20%、ゲル化時間が40〜8000分,図1参照)は、注入地盤によっては、土中ゲル化時間が十分短縮する場合もあるが、ゲル化時間が短縮するにしても長いままの場合があることが判る(図3、図4(a),(b))。この場合、注入液は注入範囲外へ逸脱しやすいことになる。本発明は、このような問題に対して、必要な浸透性を確保しながらゲル化時間を調整することを可能にしたものである。また、施工条件および水質保全の点からのpHの水質基準を満たす注入を可能にしたものである。
図13は、液状化の可能性のある土の粒径分布を示す。液状化は粒径の細かい土質のみならず粒径の大きい土質を含めて広範囲な土質条件下で起こり、しかも液状化対策工では経済性を考慮して大きな注入孔間隔で広範囲の改良効果が永続することが要求される。このため、注入液のゲル化時間を長くとることができ、しかも所定範囲から注入液が逸脱して地下水の水質が規準を超えることがない浸透並びにゲル化の挙動を示す注入材および注入工法が要求される。
1.シリカグラウトの耐久性の付与のためには、水ガラスの劣化要因であるアルカリを酸で中和除去しなくてはならない。
2.不均質なシリカゲルを析出することなく長いゲル化時間のシリカグラウトを得るには、酸性液に水ガラスを加えることによって、酸性シリカゾルを作らなくてはならない。
3.所定の強度を長期間持続する固結地盤を得るには、コロイド粒子とシリカゾルとからなる酸性複合シリカ溶液が優れている。
4.ゲル化時間が安定した酸性シリカ溶液は、pHが1〜3付近である。
5.pHが1〜3付近の酸性シリカ溶液はゲル化時間が過大であるため、注入対象領域や地表面に逸脱しやすい。また、pHが1〜3のシリカ溶液は過剰の酸を含むため、注入範囲外へ逸脱すると水質保全の点から好ましくない。
6.しかし、注入にあたってゲル化時間を短縮するためには、pHが2〜8の中間領域でのゲル化時間で注入するのが望ましい。しかし、この領域では、わずかなpHの変化でゲル化時間が大幅に変動するので、実質的に不可能である。
7.酸性シリカ溶液は、それより中性側の地盤中に注入すると注入液の酸が地盤中で中和消費されてpHが中性側に移行し、ゲル化時間が短縮する傾向がある。しかし、そのような現象は地盤の状況や土性によって異なるため、人為的に調整できない。
8.このような課題を解決するために、
1)安定した酸性シリカ溶液に難溶性アルカリ剤を加えて地盤に注入することによって、アルカリ剤の酸との中和反応が不十分な初期の段階では長いゲル化時間を保持して広範囲に浸透し、その間、中和反応が進み、注入液のpHが中性方向に近づくにつれ、ゲル化に至り、ゲル化後もゲルの内部で中和反応が完了して、ほぼ中性付近の固結体が形成される。
2)水ガラスと酸性液とからなる酸性シリカ溶液に難溶性の難溶性アルカリ剤を加える技術は、すでに本出願人によって提示され、公知である(引用文献1)。難溶性アルカリ剤は、マグネシウムやカルシウムの水酸化物、酸化物、炭酸塩等、難溶性アルカリ剤である。その他、例としてはCaSO4、BaSO4、CaCO3、MgSO4、Fe(OH)2、Al(OH)3等の難溶性塩が挙げられ、水に難溶性であれば酸性シリカ溶液中でpHが徐々に中性方向に移行し、効果が上げられる。これらは難溶性であるため、酸性シリカ溶液中で直ちに酸の全量を中和することなく、時間の経過と共に中和する。
しかし、これらは難溶性であるため、水ガラスと酸とからなる酸性シリカ溶液中で沈殿を生じやすい。このため、注入孔付近の土粒子間に目詰まりを生じ、酸性シリカ溶液と共に広範囲に浸透するのが困難である(実験3)。
3)以上の問題を解決するために、本出願人は、水酸化マグネシウムと水ガラスの混合液と酸性液とを混合した非アルカリ性シリカグラウトを発明している(引用文献2)。
この発明は、水酸化マグネシウムを粘性のある水ガラスと予め混合することにより、水酸化マグネシウムが浮遊しやすいことに着目したものである。
しかし、この発明は水酸化マグネシウムを水に混合して酸性シリカ溶液に加えるよりもシリカ溶液中で沈殿しにくい利点はあったが、水ガラスと水酸化マグネシウムとは、水ガラスのシリカと多価金属が反応するため、シリカの固形分が生じやすい傾向があることが判った(実験3)。
4)本発明者らが以上の課題を解決するために検討した結果、コロイド液に上記難溶性アルカリ剤を混合した結果、沈殿しにくいことが判った(実験3)。その理由は不明確であるが、コロイドの粘性が水ガラスに比べて高いことや、水ガラスのシリカ分子が粒径0.1nm、シリカゾルの分子が粒径1nmであるのに比べて、コロイドのシリカ分子は粒径5〜100nm、一般に10〜20nmであることから、シリカゾルに比べて比表面積が小さく反応性が低いこと等や、コロイドが構造的に粉体の沈殿を阻害しやすいため、コロイド溶液中で難溶性アルカリ剤が浮遊分散して地盤中に注入され、その間、酸性シリカ溶液中で溶解して緩やかにアルカリ剤と酸との中和反応が進行するためと思われる。
以上の結果に基づき、シリカコロイドとシリカゾルと酸とを有効成分とする酸性複合シリカと難溶性アルカリ剤を用いて、注入初期には十分浸透性を保ちながら注入中に過剰の酸を中和して、或いは更に地盤中で過剰の酸が消費されてpHが中性方向に移行し、注入液が逸脱しても或いは固結土のpHが水質基準の範囲内におさまるように難溶性アルカリ剤の添加量の範囲を設定することができる(実験4)。
注入液の均質性、水酸化マグネシウムの分散、沈降状況の試験を行った。
本発明における水ガラス、シリカコロイド、水酸化マグネシウムおよび酸性剤を有効成分とする酸性シリカ溶液を実施例1、水ガラス、シリカコロイドおよび酸性剤を有効成分とする酸性シリカ溶液を比較例1、水ガラス、水酸化マグネシウムおよび酸性剤を有効成分とする酸性シリカ溶液を比較例2、水ガラスおよび酸性剤を有効成分とする酸性シリカ溶液を比較例3、シリカコロイドおよび水酸化マグネシウムの混合液であるシリカ溶液を参考例1、水ガラスおよび水酸化マグネシウムを有効成分とするシリカ溶液を比較例4、水ガラス、シリカコロイドおよび水酸化マグネシウムを有効成分とするシリカ溶液を参考例2とする。
以上のシリカ溶液について、水酸化マグネシウムの沈殿の有無について試験した。その結果を、表1に示す。
使用材料として以下を用いた。
(1)コロイダルシリカ
水ガラスJIS 3号品(旭電化工業(株)製品、SiO2:29.0%、Na2O:9.0%)を水で希釈し、SiO2:5.8%、Na2O:1.8%の希釈品を得、これを水素型陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製品、アンバーライトIR−120B)塔に通液して脱アルカリして得られた、SiO2:5.8%、pH3.0の活性珪酸をアルカリ水中に投入して、SiO2濃度4%、pH9とした後、90℃まで加熱し、2時間攪拌してコロイダルシリカ母液を得た。この母液を濃縮して得られたSiO2の含量が30.1%、pHがほぼ10であるコロイダルシリカを使用した。粒径は10〜20nmであった。
(2)水ガラス
5号水ガラスは比重(20℃):1.32、SiO2:25.5%、Na2O:7.03%、モル比:3.75のものを使用した。
(3)酸:75%硫酸
(4)添加剤A:市販の水酸化マグネシウム
配合液の配合濃度、pH、ゲル化時間、1日後のゲルのpHの試験例を表2に示す。
実施例3、4は、水酸化マグネシウムの添加量の違いによりpHとGTが変わり、多ければpHが高くなりゲルタイムが短くなった。
○は、水酸化マグネシウムの量とシリカ溶液のゲル化時間の関係を示す。
●は、比較例5のゲル化時間を示す(pH=2.4)。
△は、配合直後のシリカ溶液のpHと水酸化マグネシウムの量の関係を示す。
▲は、ゲル化後のゲルのpHと水酸化マグネシウムの量の関係を示す。
図1は、シリカグラウトのpHとゲル化時間の関係を示す。
図6(a)は、pHとゲル化時間の関係、図6(b)はpHと酸(硫酸)の関係を示す。ここで、図6(b)は、表3に示す配合に対応する。
また、酸性シリカグラウトは、酸の量によるpHの調整でゲル化時間の調整はほとんど不可能であることも判る。
すなわち、図5では、ゲル化時間を2880分から2分まで調整できることが判る。しかも注入後、ゲルはそれ自体で中性方向に移行するので、水質保全に優れている。それに対して、水酸化マグネシウムを含まない場合は、図3、図4に示すようにゲル化時間が短縮するものの、地盤が粗い場合や酸性領域にある場合、或いは豊浦砂のように反応性の少ない砂質土の場合は、ゲル化の短縮が困難か或いはどの程度か不明確で地盤によっては大きくばらつき予測がつかないため、酸性の注入液は注入範囲外へ逸脱しやすくなる。これに対して、本発明は地盤のいかんに関わらず注入液自体でシリカ溶液のpHとゲル化時間を人為的にコントロールして、所定領域に密実に充填することができる。本発明は、このように前記課題を解決したものである。
実験4における添加剤Aの代わりに、添加剤B:炭酸マグネシウムを用いた例を、図7および表4に示す。水酸化マグネシウムと類似の特性を示す。但し、配合にあたって炭酸ガスを発生する。
本発明者らは更に研究を進めた結果、必要とするシリカ濃度とゲル化時間と地盤条件に関わらず、それ自体で水質基準を満たす難溶性アルカリ剤を添加した複合シリカグラウトを可能にした。
ゲル化後のゲル化物のpHが6.5〜8.5であるためには、添加剤Aは0.5〜0.75g/400mlであればよい。
しかるに実際は、酸性シリカ注入液は、地盤に注入中に土によって酸分が消費されて中性方向に移行する。
一方、地盤が酸性地盤の場合、或いは反応性の少ない砂層の場合は、注入液のpHは地盤中で変動しにくく、注入液のゲル化時間はそのままで短縮しないことが生ずる。この場合は、難溶性アルカリ剤の量を増やすことによって、ゲル化時間を短縮することができる。
γ1=0.70/0.75〜0.9/0.75 =0.93〜1.2
従って、γ1=0〜1.2;用水への流入の恐れがある場合である。
γ2=0.50/0.55〜0.75/0.55=0.9〜1.4
したがって、γ2=0〜1.4;用水に近くて地下水のpHが水質基準を満たしていない懸念がある場合である。
1)シリカ溶液のpHは、1〜10である。
2)シリカ溶液中の全シリカ量は1〜50質量%であって、このうちシリカコロイドに起因するシリカ量は全シリカ量の1〜100質量%である。
3)難溶性アルカリ剤の配合量は、以下のi)〜iii)のうちのいずれかの条件を満足する。
i)シリカ溶液100ml当たり0〜10g。10gを超えると難溶性アルカリ剤が配合液中で過剰酸の中和以上に過大となり、注入液中で沈殿して浸透を阻害する。
ii)コロイドに起因するアルカリはほとんど無視してよいので、水ガラスに起因するアルカリとそれを中和する酸の量を考慮する。水ガラスの濃度が高ければ酸の量も多くなり、それを中和する難溶性アルカリ剤も多くなる。表2、表4〜7に硫酸量に対して用いた難溶性アルカリ剤の例を示した。
α=難溶性アルカリ剤(g)/硫酸純分(g)=0.011〜0.306
従って、純酸量(純分)に対する難溶性アルカリ剤の比率の最大値を0.3としてα=0〜0.3の範囲で設定をすればよい。
iii)シリカ溶液の過剰の酸の量に対する難溶性アルカリ剤の配合量の割合の最大値をγ=1.4と設定する。
この場合、難溶性アルカリ剤を少量にして、pH緩衝材と併用してゲル化時間の変動を緩やかにすることができる。
A液およびB液として表5〜表7に示す配合のものを用いた。また、その結果を、図8〜図10に示す。
(2)A液およびB液として表7に示す配合のものを用いた。A液には2.5gのMg(OH)2の他に、pH緩衝剤としてヘキサメタリン酸ソーダを、図10のグラフの横軸に示す各量で添加した。A液の水ガラス濃度ならびにB液の酸濃度はそれぞれ(1)のものよりも濃厚である。実験1と同様の方法でA液およびB液を合流し、得られた合流液のゲル化時間ならびにpHの挙動を測定し、結果を図10に示した。
(3)A液およびB液として表4に示す配合のものを用いた。A液には難溶性アルカリ剤としてMgCO3を添加した。実験1と同様の方法でA液およびB液を合流し、得られた合流液のゲル化時間ならびにpHの挙動を測定し、図7に示した。
(4)A液およびB液として表5に示す配合のものを用いた。A液には難溶性アルカリ剤として2.5gのMgCO3を添加し、pH緩衝剤としてAl2(SO4)3を添加した。前述のA液およびB液を実験1と同様の方法で合流し、得られた合流液のゲル化時間ならびにpHの挙動を測定し、結果を図8に示した。
図11に示す装置を用いて、試料砂(豊浦砂)を長さ1000mm、内径約50mmのアクリルモールド10の上部より自由落下させて充填し(相対密度Dr=60%)、注入材の注入に先立って、脱気水で飽和させた。
(1)難溶性アルカリ剤はコロイドを含む酸性シリカ溶液中で均等に浮遊分散して沈下しにくいシリカ溶液を形成する。
(2)注入材が注入口付近で難溶性アルカリ剤を分離することなく地盤中に広範囲に浸透して、注入材全体を中性方向に移行させることができる。
(3)酸性シリカ溶液の過剰の酸の中和が緩やかに行われ、しかもゲル化後も中性化が進行するため、ゲル化時間の調整が容易で所定の注入量に対応した所定の固結体が形成される。
(4)注入材における注入中の先端部に難溶性アルカリ剤が含まれているため、注入中でもゲル化を生じつつ、先端の注入材が乗り越えながら注入領域を広げていくので、先端の注入材が地下水で薄まることを低減して地盤中でゲル化することができる。その結果、注入領域に加圧注入してゲルを脱水して実質的にゲルのシリカ濃度を濃くしたゲル化物で地盤を固結して、耐久性の優れた地盤注入が可能になる。
(5)ゲルの収縮が少なく、所定の強度を長期にわたって持続することができる。
なお、本発明において注入方法はA液とB液に分けて、二重管を使用して先端部で合流させて地盤中に注入してもよく、また、注入管に送流する前に混合してもよく、また、ミキサー中で混合して1液にして地盤中に注入してもよい。
本発明は、以下に示す手法によって、液状化対策工等(図13)、経済的に注入孔間隔を広くとり広範囲に所定の注入効果が永続する地盤改良に適している。
2)本発明の地盤注入材の注入にあたって、1ステージ当たりの所定の注入対象土量に対応する注入量を注入するための時間をH、土中ゲル化時間をGTSとすると、H≧GTSとすることにより、地盤中でゲル化を進行させながら、注入範囲を拡大することができる。
地盤の土質や空隙状況のいかんに関わらず、pHおよびゲル化時間の調整が可能であるので、注入中にゲル化しつつあるゲルを乗り越えながら注入液が圧入されて注入領域を拡大するため、土粒子の間隙にシリカゲルが密実に注入されて広範囲の地盤改良が可能になる(請求項11)。
3)本発明の地盤注入材を用いて、注入孔間隔1.0〜3.0mと注入孔間を広範囲にとっても、上記の地盤中における、ゲル化の特性があるため、確実な注入効果を得るので液状化対策工等(図13)で経済的地盤注入が可能である。確実な注入効果を得ることができる(請求項12、請求項14)。
4)シリカ溶液に対する難溶性アルカリ剤の添加は、地盤への注入直前か、所定の混合時間を経過した時点とするか、または、地盤に注入の過程中に行うことにより、ゲル化時間や注入中の注入液のpHを調整することができる(請求項13)。
5)本発明の地盤注入材は、上記浸透性とゲル化の特性があるため、点注入、柱状注入、二重管複合注入工法、二重管ダブルパッカ工法、多点注入のいずれの工法にも適用できる(請求項15)。
酸性塩、中性塩、塩基性塩など。
塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリ、塩化アルミニウムなどの塩化物、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウムなどの硫酸塩、アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリウムなどのアルミン酸塩、塩化アルミニウム等のアルミニウム塩、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどの塩酸塩、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウムなどの塩素酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、重硫酸ナトリウム、重硫酸カリウム、重硫酸アンモニウムなどの重硫酸塩、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウムなどの重亜硫酸塩、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウムなどのケイフッ酸塩、珪酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩等の珪酸塩、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウムなどのホウ酸塩、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素アンモニウムなどのリン酸水素塩、ピロ硫酸ナトリウム、ピロ硫酸カリウム、ピロ硫酸アンモニウムなどのピロ硫酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸アンモニウムなどのピロリン酸塩、重クロム酸ナトリウム、重クロム酸カリウム、重クロム酸アンモニウムなどの重クロム酸塩、過マンガン酸カリ、過マンガン酸ナトリウムなどの過マンガン酸塩等。
苛性ソーダ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の一価アルカリ金属または多価金属の水酸化物、或いは酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物。
酢酸ソーダ、コハク酸ソーダ、ギ酸カリ、ギ酸ソーダ等。
3 ポンプ
4 混合槽
5 流量計
6 攪拌機
7 コンプレッサー
10 アクリルモールド
Claims (15)
- シリカ溶液を用いた地盤注入材であって、該シリカ溶液が、シリカコロイドと、水ガラスと、水酸化マグネシウムと、酸性剤と、を有効成分とする酸性シリカ溶液であり、該シリカ溶液が、以下の2),3)の条件を満足することを特徴とする地盤注入材。
2)前記シリカ溶液中の全シリカ量が1〜50質量%であって、前記シリカコロイドに起因するシリカ量が該全シリカ量の1〜100質量%である。
3)前記水酸化マグネシウムの配合量が、以下のi)〜ii)のうちのいずれかの条件を満足する。
i)前記シリカ溶液100ml当たり0.025〜10g。
ii)α=水酸化マグネシウム(g)/硫酸純分(g)=0.011〜0.306。 - 前記水酸化マグネシウムが、前記シリカコロイドを含む溶液中に含まれる請求項1記載の地盤注入材。
- 前記水酸化マグネシウムと前記シリカコロイドとからなる混合液が、他の成分と混合されてなる請求項2記載の地盤注入材。
- 前記シリカ溶液のpHが1〜3の酸性値であって、地盤に注入中にゲル化に到るまでにpH2〜10の範囲に移行する請求項1〜3のうちいずれか一項記載の地盤注入材。
- 前記水酸化マグネシウムの添加量が、前記シリカ溶液またはゲルの過剰の酸を中和する量である請求項1〜4のうちいずれか一項記載の地盤注入材(但し、ここで過剰の酸とはpH7または水質基準のpHの範囲を基準とする)。
- 前記水酸化マグネシウムの添加量が、前記シリカ溶液の過剰の酸を中和するか該シリカ溶液またはゲルのpHが水質基準の6.0〜8.5の範囲内になる量である請求項1〜5のうちいずれか一項記載の地盤注入材。
- 前記水酸化マグネシウムの添加量が、注入地盤による酸の中和を加味して注入液の過剰の酸を中和するか注入液またはゲルのpHが水質基準の6.0〜8.5の範囲内になる量である請求項1〜6のうちいずれか一項記載の地盤注入材。
- 前記水酸化マグネシウムの添加量が、注入地盤の観測井における地下水のpH値が6.0〜8.5の範囲内になる量である請求項1〜7のうちいずれか一項記載の地盤注入材。
- さらに、ゲル化時間を調整するためのpH緩衝材を含む請求項1〜8のうちいずれか一項記載の地盤注入材。
- 地盤に対し、二次注入の注入液よりゲル化時間の短い注入液または懸濁型の注入液を一次注入した後、請求項1〜9のうちいずれか一項記載の地盤注入材を二次注入することを特徴とする地盤注入工法。
- 請求項1〜9のうちいずれか一項記載の地盤注入材の注入にあたって、1ステージ当たりの所定の注入対象土量に対応する注入量を注入するための時間をH、土中ゲル化時間をGTSとしたとき、H≧GTSを満足することにより、地盤中でゲル化を進行させながら注入範囲を拡大することを特徴とする地盤注入工法。
- 請求項1〜9のうちいずれか一項記載の地盤注入材を用いて、注入孔間隔1.0〜3.0mで注入を行うことを特徴とする地盤注入工法。
- 前記シリカ溶液に対する前記水酸化マグネシウムの添加を、地盤への注入直前か、所定の混合時間を経過した時点か、または、地盤に対する注入の過程中に行うことによりゲル化時間を調整する請求項12記載の地盤注入工法。
- 前記地盤注入液を液状化対策工に用いる請求項10〜13のうちいずれか一項記載の地盤注入工法。
- 前記地盤注入液の注入において、点注入、柱状注入、二重管複合注入工法、二重管ダブルパッカ工法および多点注入のうちのいずれかの工法を用いる請求項10〜14のうちいずれか一項記載の地盤注入工法。
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---|---|---|---|
JP2019136299A JP6712828B1 (ja) | 2019-07-24 | 2019-07-24 | 地盤注入材および地盤注入工法 |
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