JP2012077309A - 地盤注入材および地盤注入工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高浸透水圧に対して亀裂を有する岩盤注入において、優れた耐久性と環境保全性を有し、高い浸透性および止水効果が得られる地盤注入材および地盤注入工法を提供する。
【解決手段】地盤中の地下水が海水、カルシウムおよびマグネシウムよりなる群から選ばれる1種以上を含有する当該地盤中に注入する地盤注入材であって、シリカ溶液を含有し、かつ、シリカ溶液が、金属珪素から製造されたシリカゾルを有効成分とし、さらに、pHが1〜11であり、かつ、シリカ濃度が1〜75w/v%である地盤注入材である。シリカ溶液が、有効成分として、シリカゾル以外に、水ガラス、活性シリカ、水ガラスと酸を混合して得られる酸性水ガラス、酸および塩よりなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。該地盤注入材を地盤に注入する地盤注入工法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、地盤注入材および地盤注入工法に関し、詳しくは、金属珪素から製造されたシリカゾルを有効成分とするシリカ溶液を用い、地盤あるいは岩盤中に注入して該地盤を恒久固結し、液状化対策工法や岩盤注入工法に用いることで高浸透水圧に対して優れた恒久性と環境保全性を有し、高い浸透性および止水効果が得られる地盤注入材および地盤注入工法である。この結果、地盤注入材の適用分野を飛躍的に拡大することが可能になった。
従来、シリカ溶液を用いた地盤注入材は耐久性が得られないところから仮設用に用いられてきた。しかし、近年、本出願人等によって水ガラスをイオン交換樹脂やイオン交換膜等を用いてイオン交換処理を行って得られた活性シリカ、あるいはこれを濃縮したシリカコロイドを用いた恒久グラウト材が開発された。このため恒久地盤改良が注入という手法によって地盤そのものを素材として地盤改良が可能になり、今後、地盤注入工法における適用分野の拡大が要望されている。
一方、近年、護岸の吸い出し防止や海岸付近の液状化対策、ダム、地下ダム、トンネル等の岩盤亀裂注入はもとより、放射性廃棄物の地下空洞内の封じ込め、LPG等の地下空洞内の貯溜等の岩盤の微細な亀裂の充填、あるいは居住地の直下のトンネル掘削、建造物直下の液状化対策等において高い浸透性と止水性、並びに環境保全性をもつグラウトによる強度地盤改良が求められている。
従来、一般に軟弱砂地盤等の地盤改良に用いられるグラウトとして、水ガラスを原料とした種々の溶液型シリカグラウトが知られている。例えば、水ガラス系アルカリ性グラウト、酸性水ガラスを主成分としたグラウト、水ガラスを陽イオン交換樹脂またはイオン交換膜で処理して得られる活性シリカを主成分としたグラウト、活性シリカを濃縮増粒してpHが9〜10の弱アルカリ性で安定したシリカゾル等である(特許文献1および2)。
しかしながら、LPG等の岩盤空洞貯留、原子力発電等の廃棄物処理のための岩盤空洞貯蔵、COの岩盤空洞貯留、あるいは有害金属塩を含む有害物の封じ込め等において、上述の溶液型シリカグラウトでは、細い亀裂への浸透固結に改良の余地があり、注入後土粒子間のゲルまたは岩盤の亀裂中のシリカゲルが、水圧で押し出されてしまい、止水性や長期耐久性が低減するため掘削によって構築した空洞が浸透水で埋まってしまう、あるいは貯蔵した有害物が外部へ溶出してしまう等のおそれがあった。また、岩盤等の空洞貯蔵等は岩盤の地下水中に含まれるCa2+、Mg2+、あるいは海水中のNa、KやCl、SO 2−等の各種イオンの存在により注入したシリカが反応して不均質なシリカを析出して、岩盤亀裂や土粒子間に詰まりやすく注入液の浸透を阻害するおそれがあった。
そこで、このような点を改良した技術として、超微粒子セメントを用いたり、あるいは特許文献3に記載のようにシリカグラウトが6〜50nmの粒径のシリカコロイドと微粒子セメントを有効成分として含有することが提案されている。これらにより、上記シリカグラウトによる固結地盤が浸透水圧下であっても、長期に亘り止水性と強度を保持する地盤注入工法が、本出願人により開示されている。
特許第3205900号公報 特開2004−35584号公報 特開2006−226014号公報
しかしながら、近年、原子力廃棄物、LPG、炭酸ガス等の空洞貯留において、または土壌汚染物の土中固定においては、貯留物や有害物の地下水への溶出を防ぐための恒久的止水機能が求められる。そのため、特許文献3記載の方法等の微粒子セメント等を用いた場合でもセメント等を用いたものであるため、岩盤亀裂注入において、ある程度の止水はできるものの微細な空隙には浸透しにくく、改良の余地があった。
また、シリカ溶液を主剤とした地盤注入材を用いることが提案されているが、海岸付近の地盤や花崗岩等の岩盤地帯等、地下水に塩や金属イオン等を含有する場合、アルカリ領域のシリカ溶液では部分的なゲル化が起り、あるいはゲル化時間が短縮し微細な亀裂を有する地盤へのグラウトの浸透性が低下し、期待した止水効果が得られない場合がある。そのため、セメントを併用することで強度を保持し、止水性を高めることが提案されているが、セメントのカルシウムやマグネシウム等の塩により、注入材の急速な部分ゲルが生成してしまい浸透性が阻害され、またセメント中のアルカリ成分にて一度形成したゲルが溶解してしまう問題がある。
また、従来のシリカゾルは、水ガラスを主原料とし、それをイオン交換樹脂やイオン交換膜等でイオン交換処理してNaOの除去し低分子の活性シリカを生成し、さらに、増粒させることでコロイド化して得られるものであるため、上記課題に対して十分な効果が得られるものではなかった。
そこで本発明の目的は、金属珪素から製造されるシリカゾルを用いることで、上記従来技術における問題を解消して、高浸透水圧に対して亀裂を有する岩盤注入において、優れた耐久性と環境保全性を有し、高い浸透性および止水効果が得られる地盤注入材および地盤注入工法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、地盤の土粒子そのものを動かすことなくそのままの位置で恒久性のある地盤改良を行うための地盤注入材およびそれを用いた地盤注入工法を得るためには、以下の要件(1)〜(8)が必要であることを見出した。
(1)ゲル化物からのシリカの溶出が長年にわたって少ないこと。
(2)注入したゲルが岩盤の亀裂や土粒子間にあって、水圧下においても高い押し出し抵抗を持つこと。
(3)併用するセメントグラウト等のアルカリに対して固結したゲル化物が劣化しないこと。
(4)低粘性でかつゲル化時間が長く、さらに細かい粒子に浸透し、大きな固結体を形成しうること。
(5)海水や岩盤からの地下水中において、Ca2+,Mg2+,Na,K等のイオンの存在下で注入しても細かい岩盤の亀裂や土粒子間に浸透して、そのゲル化物は水圧で押し出されることなく高い水密性を得ること。
(6)ほぼ中性領域でゲル化し、地下水を汚染しないこと。
(7)少ない反応剤の使用量で正常にゲル化し、耐久性に優れたゲル化物を形成することにより反応生成物が少なく、地下水を汚染しないこと。
(8)コンクリートや金属等の地下埋設物に悪影響を及ぼさないこと。
上記条件において、(1)〜(3)は長期耐久性(恒久性)、(4)〜(5)は浸透固結性、(6)〜(8)は環境保全性にかかわる。
本発明者らは、従来用いられてきたイオン交換樹脂やイオン交換膜を用いたイオン交換処理によるシリカゾル(コロイダルシリカ)に比べて、金属珪素から製造されたシリカゾルが、上記条件において、いずれも優れた効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の地盤注入材は、地盤中の地下水が海水、カルシウムおよびマグネシウムよりなる群から選ばれる1種以上を含有する当該地盤中に注入する地盤注入材であって、
シリカ溶液を含有し、かつ、
前記シリカ溶液が、金属珪素から製造されたシリカゾルを有効成分とし、さらに、pHが1〜11であり、かつ、シリカ濃度が1〜75w/v%であることを特徴とする。また、前記シリカゾルは増粒することによってシリカが重合して粒径が大きなコロイド状を呈し、該コロイドの粒径が1〜100nm、特に5〜100nmのシリカ溶液となるものである。
また、本発明の地盤注入材は、前記シリカ溶液が、有効成分として、前記シリカゾル以外に、水ガラス、水ガラスと酸を混合して得られる酸性水ガラス、水ガラス並びに活性シリカを増粒した増粒シリカコロイド、酸および塩よりなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。さらに、前記シリカ溶液が、水ガラスと、酸および/または塩とを含むことが好ましい。さらに、施工後に要求される一軸圧縮強度に応じてシリカゾルのシリカ濃度を1〜75w/v%とし或いは水ガラスを併用した場合、水ガラス由来のシリカ濃度が、全シリカ濃度の0〜95%を有効成分とすることもできる。
また、本発明の地盤注入材は、前記シリカ溶液をイオン交換処理することで、前記シリカ溶液のpHが4〜9を呈することが好ましい。
さらに、本発明の地盤注入材は、塩、酸、セメント、スラグ、多価金属化合物、アルカリ金属塩、アルカリ性化合物、金属イオン封鎖剤、有機化合物、活性シリカおよび水ガラスよりなる添加剤から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
本発明の地盤注入工法は、地盤中に、前記地盤注入材を注入する地盤注入工法において、
前記地盤中の地下水が、海水、カルシウムおよびマグネシウムよりなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする。本発明の地盤注入工法は、地盤中の地下水が、海水やカルシウム、マグネシウムを含有しても確実に固結しうる。
本発明の地盤注入工法は、前記地盤注入材を前記地下水の水位以下の地盤中に注入して止水層を形成し、廃棄物または土壌汚染物を封じ込める、あるいはガスや液体燃料や廃棄物を貯蔵する空洞やトンネルを構築することが好ましい。本発明の地盤注入工法は、ガスや液体燃料を貯蔵しても空洞中に水圧によりゲルが押し出されることなく、空間を形成すると共に空洞中に貯蔵した貯留物の成分が周辺に溶出することなく、空洞内に密封される。また、前記廃棄物または前記土壌汚染物を地盤中に固定し、かつ、これらがベントナイトで覆われている場合にベントナイトを劣化させることなくベントナイトの密封効果を持続させるのに適している。
また、本発明の他の地盤注入工法は、地盤中に、前記地盤注入材を注入する地盤注入工法において、
前記地盤注入材を前記地盤に注入する前または後に、セメントまたはスラグを有効成分とする地盤注入材を、前記地盤に注入することを特徴とする。
さらに、本発明の他の地盤注入工法は、地盤中に、前記地盤注入材を注入する地盤注入工法において、
前記地盤注入材を高水圧下の地盤中に注入することを特徴とする。
さらにまた、本発明の他の地盤注入工法は、地盤中に、前記地盤注入材を注入する地盤注入工法において、
前記地盤注入材を前記地盤に注入して、恒久地盤改良、あるいは液状化防止を行うことを特徴とする。
本発明の地盤注入工法は、施工後に要求される一軸圧縮強度に応じてシリカ濃度とゲル化時間を調整してなる地盤注入材を、地盤に注入して低粘度で長いゲル化時間で恒久性に優れた固結径の大きな改良体をつくることにより、経済的に恒久地盤改良したり、液状化を防止することが可能である。
本発明により、金属珪素から製造されるコロイダルシリカを注入材に用いることで、地盤の液状化、地盤および岩盤の止水や吸い出し、および高浸透水圧に対して、特に亀裂を有する岩盤注入において、優れた耐久性を有し、塩や金属イオンを含む地下水中であっても、かつ、ほぼ中性領域の地盤であっても、長いゲル化時間と低粘性を保持し、少量の添加材で正常に耐久性のあるゲル化物を形成し、高い浸透性および止水効果と、環境保全性とが得られる地盤注入材および地盤注入工法を提供することが可能となった。
以下、本発明の実施の形態につき具体的に説明する。
本発明の地盤注入材(以下、「注入材」とも称する)は、金属珪素(シリコン)から製造されたシリカゾル(シリカコロイドも含む)を有効成分とすることを特徴とする。
(金属珪素から製造されたシリカゾルについて)
本発明において、金属珪素からシリカゾルを製造する方法は、特に限定されない。例えば、金属珪素からシリカゾルを製造する方法を開示する米国特許第2614995号明細書、金属珪素からテトラメチルシリケートを製造する方法を開示する米国特許第2473260号明細書、およびテトラメチルシリケートからシリカゾル(シリカコロイド)を製造する方法を開示する特開平6−316407号公報などを参考に製造することもできる。
本発明は、このような金属珪素から製造されたシリカゾル(以下、「金属珪素シリカゾル」とも称する)を有効成分とするシリカ溶液を含有する地盤注入剤を地盤に注入することで、従来の水ガラスをイオン交換処理して得られたシリカゾル(シリカコロイド)に比べて、極めて優れた特徴を発現することが判った。その理由は明確ではないが、金属珪素シリカゾルは、従来の水ガラスをイオン交換処理して得られるシリカゾルに比べてアルカリが少なく、コロイド粒子自体が密実で反応性が少ないためと思われる。このため、強度が高く中性領域でも長いゲル化時間を得るものと思われる。
このように金属珪素からシリカゾルを製造する場合、最小限のNaOを添加することで安定化するため、従来のイオン交換処理によるシリカゾルに比べNaOの含有量が少なく、酸性調整材の使用量が少なくてもpH調整が可能である。また、さらに金属珪素シリカゾルをイオン交換樹脂によりNaOを除去することで、数日〜数か月間安定化した、pH4〜9付近のシリカゾルが得られる。これにより少量の反応剤添加量で、中性領域で長いゲル化時間が得られ、注入材による大きな固結径で恒久性と経済性に優れた地盤改良が可能となり、不溶性シリカコロイド以外の水溶性反応生成物が少なく、地下水を汚染することなく環境保全性の高い地盤改良を行うことができる。
本発明に用いられる金属珪素シリカゾルは、粒径が1〜100nmの粒径の弱酸性から弱アルカリ性のシリカコロイドである。また、上記金属珪素シリカゾルをイオン交換樹脂やイオン交換膜で処理して得られるpH4〜9、あるいは上記金属珪素シリカゾルに、水ガラス、活性シリカ、酸あるいは塩や、水ガラスと酸を混合して得られる酸性水ガラス、水ガラスをイオン交換処理によって製造したイオン交換処理水ガラス(活性シリカ、活性ケイ酸)やそれを更に増粒して弱アルカリ領域で安定化したシリカゾルを加えてなるシリカコゾル等である。
本発明におけるシリカ溶液は、弱アルカリで安定化しNaをほとんど含まないため、通常pHが11以下の弱アルカリ性で1〜11を示しており、NaOは0.1w/w%〜4.0w/w%の範囲にある。NaOは4.0w/w%を超えるとシリカコロイドは溶けてしまい、ケイ酸塩の水溶液となってしまう。一方、NaOが0.1w/w%より少なくなるとシリカコロイドは不安定で、凝集しやすい。すなわち、NaOが0.1w/w%〜4.0w/w%の範囲で、Naイオンがシリカコロイドの表面に分布して安定したコロイド状を保ち得る。また、本発明によるシリカ溶液は、一度NaOが0.1w/w%〜4.0w/w%の範囲で安定化した後、さらに、イオン交換処理により、NaOを除去し、NaOが0.1w/w%以下で、安定なシリカコロイド溶液をつくることができる。
このようにして調製された金属珪素シリカゾルは、ほとんど中性に近く、かつ、半永久的に安定しており、これを注入液として用いる場合、工場から現場への搬入ならびに注入操作の際にゲル化する心配がない。この金属珪素シリカゾルを含有するシリカ溶液をそのまま地盤中に注入してもそれ自体実用時間内にゲル化することはないので実用上の固結効果は得られない。
また、本発明のシリカゾルを有効成分とするシリカ溶液を含有する地盤注入材は、さらに水ガラスのシリカ分(SiO)1〜75w/v%含有することもできる。水ガラスはシラノール基を多く含み、反応性が早いため、初期の強度発現が早い。しかし、シリカゾルに比べNaを多く含み、ゲル化後、ゲル化物の収縮が起こるため、上記の量にとどめる必要がある。
また、本発明の注入材は、塩、酸、セメント、スラグ、多価金属化合物、アルカリ金属塩、アルカリ性化合物、金属イオン封鎖剤、有機化合物、活性シリカ(活性ケイ酸)及び水ガラスからなる群から選択される1種以上を含有することが好ましい。これにより、ゲル化時間を調節し、かつ浸透性を高めることができる。
(浸透固結性について)
すでに知られていることではあるがセメントでは粒径が大きいため、岩盤の微細な亀裂に浸透し得ない。また、アルカリ領域のシリカ系グラウトでも岩盤の細かい亀裂への浸透固結性が不十分であるし、ゲル化後の収縮が大きく、長期的止水が不可能である。本発明者の研究によれば、従来のシリカゾルが岩盤へのシリカ溶液の浸透性が不十分である理由は、岩盤浸透水や海水中に含まれるCa2+、Mg2+や、Na、Kが、シリカ系グラウトのシリカ分と反応して、直ちに不均一なシリカ凝集物を形成し、これが岩盤の亀裂や土粒子間につまってその後のシリカ溶液の浸透と阻害することが判った。本発明の地盤注入材は、このような条件下でも沈殿を生成することなく低粘性で優れた浸透個結性をうることが判った。特にシリカゾルを含有する地盤注入材であって、地盤注入材のpHが、非アルカリ性(pH1〜11)であり、かつ、シリカ濃度が1〜75w/v%、好ましくはシリカ濃度が6〜40w/v%であり、さらに好ましくは、1〜100nm、特に5〜100nmで、浸透性と止水性を高めることができることがわかった。
(耐久性について)
従来のシリカ系注入材によるゲル化物はアルカリに弱く、特に微粒子セメントを一次注入し、大きな亀裂を填充した後シリカ系注入材を二次注入して細かい亀裂を填充する場合、セメントからのアルカリの溶出液がシリカのゲル化物を溶解する問題があった。この問題は金属珪素シリカゾルを用いることにより防ぐことができることが判った。その理由として、コロイドによるゲルが密実でゲル化の過程で大きな粒径に成長することによるものと思われる。このため、ゲル化物の安定性にこれらが悪影響を与えないためと思われる。
また、本発明の地盤注入工法は、本発明の地盤注入材を注入することで地盤を固結し、長期にわたり強度を持つことができる。さらに、かかる地盤注入材を注入することで、地下における浸透水圧下において長期にわたり止水性と強度を持つことができる。
さらに、本発明の地盤注入工法は、地盤が透水圧下の亀裂を有する岩盤を主とする地盤であって、該岩盤に本発明の地盤注入材を注入し、亀裂をゲルで充填し、高い浸透水圧下でも、ゲルが押し出されることなく長期の止水性を持つことができる。また、本発明の地盤注入工法は、本発明の地盤注入材を注入することにより、浸透水下における地盤中や岩盤内や海底下に廃棄物や炭酸ガス等を封じ込め、あるいはガスや液体燃料を貯蔵し、あるいは有害物が外部に溶出しない空洞の止水層を形成することができる。
(添加剤について)
金属珪素シリカゾルは、酸や塩のいずれか、あるいは併用することによりpHをアルカリ性または酸性に調整してゲル化時間を調整できる。また、金属イオン封鎖剤はキレート効果を有し、地下水に岩盤から溶解する金属イオンや岩盤の亀裂から溶出する金属イオンを不動態化する。地下水に存在するあるいは一次注入材のアルカリ性懸濁液のブリージング水中に存在する金属イオンとして、Ca2+、Mg2+、鉄イオン等が挙げられ、リン酸、リン酸系化合物をはじめとする金属イオン封鎖剤(キレート剤等)はシリカと共に地中の金属イオンをマスキング作用によって被覆膜を形成し、地下水の微量金属や貝殻などのカルシウムやマグネシウム分と反応して不溶性あるいは難溶性の化合物をつくるものと推測される。このため地盤中のCa2+、Mg2+によって本発明の地盤注入材の浸透が阻害されない効果を生ずる。
リン酸系化合物のうちヘキサメタリン酸ソーダのような縮合リン酸塩は、コンクリート表面上では非アルカリ性シリカと共に最も強固な被覆層を形成するが、リン酸も優れた効果を示すのは、シリカ溶液中で徐々に縮合系を形成して、縮合リン酸塩と同じような作用を示すようになるためと思われる。リン酸化合物は後述した例があり、いずれも上記と同様な効果をもつので、本発明においては、リン酸化合物を、キレート効果を有する金属イオン封鎖剤として扱う。金属イオン封鎖剤としてはリン酸化合物以外に後述した化合物があるが、シリカと共存下ではリン酸化合物がコンクリート表面に強固な被覆を形成しやすい。
リン酸以外のリン酸化合物や金属イオン封鎖剤を用いる場合には、他の酸、例えば、硫酸や硫酸塩のように酸性を呈する化合物を併用することができる。
リン酸は、水ガラスと混合するとそれ自体で水ガラスのアルカリを中和して酸性シリカ溶液をつくると共に、シリカ分とコンクリート表面のCa2+、Mg2+と共にコンクリート被覆膜を形成し、地下水中に存在するSO 2−やClからコンクリートを守ることができる。また、リン酸およびリン酸化合物は、硫酸イオンの共存下において、上述のようにコンクリート表面に保護膜をつくる。
本発明に用いられるリン酸系化合物および/またはキレート剤は、キレート効果を有するものであり、例えば、リン酸、各種の酸性リン酸塩、中性リン酸塩、塩基性リン酸塩が挙げられ、テトラポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、酸性ヘキサメタリン酸塩、酸性ピロリン酸塩等の縮合リン酸塩類等を挙げることができ、縮合リン酸塩類がナトリウム塩であることが好ましく、非アルカリ性シリカ溶液を形成するリン酸化合物としては、ヘキサメタリン酸ソーダが特にコンクリート表面に強固なマスキングシリカを形成するため、好ましい。また、キレート剤としては、上記リン酸化合物の他に、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸、グルコン酸、酒石酸またはこれらの塩類等を挙げることができ、本発明においては、リン酸化合物がシリカ溶液の存在下でコンクリート表面に最も効果的な被覆(マスキングシリカ)を形成する。
さらに、本発明において、塩としては、NaClやKCl等一価のアルカリ金属塩や、Al、Ca、Mg等の多価金属塩やこれらの水酸化物やその他の塩等のゲル化材を加えて混合物として地盤中に注入すると、本発明の地盤注入材は地盤中で上記ゲル化材により不安定化されたコロイド粒子同士が結合し、強固な固結体を形成して地盤を固結する。
本発明において、地下水面下の岩盤注入であって、岩盤亀裂を填充する方法は、以下の要件を満たすことが好ましい。以下のいずれの場合も金属珪素シリカゾルを有効成分とするシリカ溶液は従来のイオン交換処理によるシリカコロイドよりも優れた特性を発現する。
1.本発明において、金属珪素シリカゾルは、弱アルカリ性を呈するシリカゾルを、リン酸または硫酸等の酸で調整し、あるいは酸、塩、水ガラスと酸を混合した酸性水ガラス、活性珪酸のいずれかまたは複数を加えた非アルカリ性酸性シリカゾルを用いることができる。トンネル工事において、高浸透圧水がトンネル内部に漏水する可能性がある。そこで、高被圧水下のトンネル掘削工事や大深度地下開発を目的とした恒久的地盤改良の際、掘削地盤には大きな土圧と水圧がかかり、かつ掘削工事は長期に及ぶため、できるだけ地盤を均一に高強度化して、かつ長期にわたって止水効果と固結効果も得られることが必要である。また、耐久性に優れていることは注入後掘削工事までの長期化にも耐えることと工事完成後のメンテナンス、充填周辺地下水の低下を防ぐためにも必要である。本発明の地盤注入材および地盤注入工法は、このような用途に使用される。
2.本発明において、金属珪素シリカゾルは、微粒子セメントと併用して注入して、セメントのアルカリに強い押し出し抵抗の大きい耐久性の優れたゲルを形成する。
3.本発明において、地下水は、Ca2+、Mg2+、Na、Kのいずれかまたは複数を含有しても均質に固結する。
4.本発明の地盤注入材は、ダムやトンネルの岩盤注入や、岩盤空洞止水注入に用いて恒久的止水層を形成しうる。
5.本発明において、岩盤空洞を形成するに当って止水層を形成し地下水が空洞内に漏出しにくい。このため、廃棄物貯蔵用空洞、LPG等の燃料貯蔵用空洞、CO貯蔵用空洞、土壌汚染物貯蔵用空洞を形成する。
本発明においては、上述の金属珪素シリカゾルを有効成分とする地盤注入材と、懸濁型注入材とを併用して地盤中に注入することができる。この懸濁型注入材としては、微粒子セメントや微粒子スラグあるいはこれらの混合物を有効成分とする懸濁型注入材等がある。これらの懸濁型注入材(懸濁溶液)をあらかじめ地盤に注入して、粗い割れ目を充填しておくことにより、地下における浸透水圧下であっても、長期に亘り止水性と強度を保持し、地盤を改良することができる。
上記において、あらかじめ微粒子スラグを有効成分とする懸濁型注入材を地盤中に注入し、次いで、この注入された地盤に本発明の金属珪素シリカゾルを主材とする地盤注入材を注入し、地盤中で併用することもできる。また、該地盤注入材を注入の後、該懸濁型注入材グラウトを注入する。該懸濁型注入材と該地盤注入材を交互に複数回にわたり注入する、等により両者を地盤中で併用することもできる。
また、本発明の地盤注入材は、特に液状化防止注入やダム、岩盤等の水圧のかかった地盤の止水やトンネルの止水固結等の耐久性に優れた地盤改良工法に用いて、施工後に要求される透水係数および一軸圧縮強度に応じて、本発明のシリカゾルと共に水ガラス由来のシリカ溶液を用いることができる。金属珪素シリカゾルと水ガラス由来のシリカ濃度を調整することで、透水係数および一軸圧縮強度を好適に調整できる。
水ガラスを用いた液状化対策用、または恒久止水用注入材として効果的な地盤注入材とするには、水ガラスとシリカコロイドの配合液を下記の範囲内に設定することが好ましい。
pH : 2〜7
シリカ濃度 : 1〜75w/v%
以上のシリカを含む非アルカリ性シリカ溶液は、シリカゾル、水ガラス、酸を有効成分とし、これらの三成分を同時に配合してもよいし、酸をいずれかのシリカ混合した上で配合してもよいし、酸の中に上記シリカをそれぞれ、あるいは同時に混合してもよいし、あらかじめ酸と水ガラスを混合して酸性水ガラスをつくっておき、金属珪素シリカゾルと混合してもよい。また、金属珪素シリカゾルと酸を混合して酸性シリカゾルを作りそれと水ガラスを混合してもよい。
上記シリカ濃度での配合の場合のシリカゾル(コロイダルシリカ)と、水ガラスのシリカ濃度の比率は(A)体積変化、(B)透水係数、(C)一軸圧縮強度の経時変化に関係がある。金属珪素シリカゾルによるゲル化物は、体積変化がほとんど無く、透水係数の増加が無いことから、止水性は高いが一軸圧縮強度の増加はゆるやかである。一方、水ガラスは、金属珪素シリカゾルに比べ一軸圧縮強度は大きいが体積変化でのゲルの収縮が見られ、これにより透水係数の増加がみられる。以上より、シリカゾルに対する水ガラスの比が小さいほど強度は小さいが、収縮率は小さく、強度低下が少ない。しかし、長期的に強度が増大するには水ガラスの比が大きいほど強度は大きいが、収縮率が大きく、強度低下があるので、金属珪素シリカゾルを含有することで強度は一定の値に収斂する。
さらに、本発明において、上述したように金属珪素シリカゾルに水ガラスと酸を加える場合には、水ガラスと酸を混合して酸性水ガラスとして金属珪素シリカゾルに加えるか、あるいは金属珪素シリカゾルと酸を含む酸性シリカゾルと水ガラスを混合することによって、金属珪素シリカゾルに酸性水ガラスの1nm以下の小さなコロイドが加わった複合シリカゾルが形成される。従って、3つの異なる粒径からなる複合シリカコロイドが形成される。
本発明では、粒径が大きいシリカは、シリカ濃度の高い割には強度が低く、かつ、強度発現が遅いが、高浸透水圧下でも長期間の耐水圧効果を有する。一方、粒径が小さいシリカは、シリカ濃度が薄くても強度発現と固結性に優れる。また、本発明は、これらの混合物からなる複合シリカゾルであるため、特に、高浸透水圧下において、初期のうちに優れた止水性と強固な固結効果を確実に達成することができる。このため、本発明では、セメントを配合せずに、所望の効果を得ることができる。
本発明にかかる上述の複合シリカゾルは、反応性が高く、アルカリ性を呈する微粒子の懸濁液が注入された地盤に、これを注入しても、アルカリ性の影響を受けにくく、高水圧下において、大きな固結性と止水性を同時に発現する。特に、本発明にかかる複合シリカコロイドは高浸透水圧下の岩盤亀裂注入に用いて、長期耐久性に優れた止水性と強固な固結性を達成し、注入対象地盤を確実に固結止水する。
以下、本発明を実施例によって詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下に金属珪素シリカゾルを用いたシリカ溶液と従来のイオン交換処理によるシリカゾルを地盤注入材として用いた場合の特性を比較する。
(実験例1)金属珪素から製造されたシリカゾルの配合試験
本発明の金属珪素から製造されたシリカゾルを用いて、下記表1に示す1000Lあたりの配合条件で配合試験を行った。実験例1に用いた金属珪素から製造されたシリカゾルとしては、済南銀豊硅制品公司製(SiO:30.3w/w%、NaO:0.35w/w%、比重1.21)を用いた。水ガラスにはJIS3号水ガラスを用いた。pHおよびゲルタイム(時間)を測定した。また、イオン交換樹脂を通した金属珪素シリカゾルを用いて、同様の試験を行った。結果を下記表2に示す。
Figure 2012077309
Figure 2012077309
実施例1と比較例2から、アルカリ領域において、金属珪素シリカゾルを用いることで、同じ塩化カリウム添加量で短いゲル化時間を得ることができた。また、実施例2と比較例3から、中性領域において、金属珪素シリカゾルを用いることで少量の酸の添加量で長いゲル化時間を得ることができた。さらに、実施例3と比較例4から、酸性領域において、金属珪素シリカゾルを用いることで少ない添加量で長いゲル化時間を得ることができた。さらにまた、実施例5と比較例1から、金属珪素シリカゾルを用いることで酸性水ガラスに比べ少量の酸で長いゲル化時間を得ることができた。
実施例6から、イオン交換しpHが中性の金属珪素シリカゾルは製造後半年以上安定した。また、実施例7から、弱アルカリ性の金属珪素シリカゾルをイオン交換処理して得られたpHが中性付近のシリカゾルは長いゲルタイムを得ることができた。さらに、表1、2より、実施例8および実施例4を比較すると、シリカ化合物が同じ配合量で、ほぼ同じpHであってもイオン交換した金属珪素シリカゾルを用いることで酸添加量が少なくてすむことがわかる。以上より、本発明にかかる金属珪素シリカゾルを用いたシリカ溶液は中性領域で長いゲル化時間を得るため、浸透性がよく、かつ少量の反応剤でゲル化時間を調整でき、その結果、水溶性反応生成物が少なく、水質を汚染しなかった。
(実験例2)
岩盤の割れ目を模したスチール製パイプを用いて、注入材の水圧に対する抵抗を測定した。スチール製パイプは長さ50cm、孔径を1、3、5mmとし、上記表1の配合で作製した注入材を3パイプの一方より注入し、室温にて28日間養生した。地盤深約500mに相当する水圧5MPaを装置側面よりゲル断面に掛け水圧への抵抗を測定した。結果を下記表3に示す。
Figure 2012077309
上記表3より、以下のことが分かった。上記表1の配合の実施例1〜4、7および比較例2において、1、3、5mmのそれぞれにおいて水に対する抵抗性を示し、水を止水した。これに対し、実施例8では1、3mmでは抵抗性を示したものの、5mmでは通水した。従来の水ガラス系注入材である比較例1は全て通水した。これらのことから、金属珪素シリカゾルは、従来のシリカゾルに比べて構造的に密実なコロイドから形成しているため水圧にも体積減少を生じず、スチール板との間に隙間ができにくく、通水しにくいためと考えられ、金属珪素シリカゾルは水圧に対する抵抗力に優れていることが判った。
(実験例3)
一次注入材のブリージング水存在下や、カルシウムやマグネシウムを多く含む地下水存在下での止水性を確認するため、下記表4の組み合わせになるように初期注入にブリージング水、または海水をスチール製パイプ内に充填後、後期注入材として300mLの注入材を変えて注入を行い、実験例2と同様の実験を行なった。用いられた配合を下記表4に示す。水に対する抵抗性は1、3、5mmまで行った。なお、ブリージング水としては、ポルトランドセメントを水粉体比6:1で混合し、1日静置後の上澄み水を用いた。海水は熱帯魚飼育用の人工海水を用いた。
Figure 2012077309
ブリージング水存在下において、実験3−1の金属珪素シリカゾルのアルカリ領域での配合である実施例1は、1mmおよび3mmまでの抵抗性がみられたのに対し、実験3−5において従来のシリカゾルである比較例2の配合はブリージング水と接触した際にゲル化してしまい通水しなかった。これより、実施例1の配合の場合は、比較例2の配合の場合と比較して、アルカリ領域であっても金属珪素シリカゾルがブリージング水の影響を受けにくいことがわかった。実験3−2、3−3、3−4で作製したものは5mmまで抵抗性が得られたことから、金属珪素シリカゾルが、中〜酸性領域では安定なため一次注入のブリージング水の影響を受けにくく、その結果、浸透性が高く、止水強度が得られることが判った。
海水存在下において、実験3−6の金属珪素シリカゾルのアルカリ領域での配合は、3mmまでの抵抗性がみられたのに対し、実験3−10の従来のシリカコロイドのアルカリ領域での配合は、海水と接触した際にゲル化してしまい通水しなかった。これより、実施例1の配合の場合は、比較例2の配合の場合と比較して、アルカリ領域であっても金属珪素シリカゾルが海水の影響を受けにくいことがわかった。実験3−7、3−8、3−9で作製したものは5mmまでの抵抗性が得られたことから、金属珪素シリカゾルは、実験例1に示すように中〜酸性領域では安定なため海水の影響を受けにくく、その結果、浸透性が高く、止水強度が得られることが判った。また、海水、岩盤の浸透水、およびセメントグラウトに起因するK、Na、Mg2+、Ca2+等の金属イオンの存在下でもこれらと反応して地盤中の目詰まりを起こすことなく浸透性を阻害されにくく、かつ細かい岩盤の亀裂や細粒土にも浸透しやすいことが判った。
(実験例4)
金属珪素シリカゾルと、水ガラスや、活性シリカ、水ガラスをイオン交換処理によって製造したイオン交換処理水ガラス、水ガラスと酸を混合して得られる酸性水ガラス、水ガラス並びに活性シリカを増粒した増粒シリカコロイド等のシリカ化合物とを混合することで、コロイドの大きなシリカ分子と水ガラス等の小さなシリカ分子が結合することで、初期の強度発現を大きくすることができる。しかし、これらを混合する際シリカ化合物中に含まれるシリカ以外のNaO等の混合物により、白濁し沈澱することがある。これは、金属珪素シリカゾル中のコロイドが、水ガラスのナトリウムによって吸着、増粒することでシリカが溶液中に分散せず沈降してしまうものと考える。地盤改良用の地盤注入材としては、沈殿を生じても止水効果が得られるが、コロイドの粒径が増粒し白濁しても沈澱せず地盤に浸透することがより好ましく、コロイドの粒径が大きくなることで、より良好な止水効果が得られるものと考えられる。そこで、本発明者らにより配合の検討を行った結果、以下のことを見出した。
配合方法として弱酸性〜酸性側に調整した金属珪素シリカゾルにシリカ化合物加えるか、あるいはアルカリ側では金属珪素シリカゾルとシリカ化合物の混合比をモル比n(=質量比(SiOw/v%/NaOw/w%)×1.032)を4以上とし、さらに、シリカ濃度20w/v%以上75w/v%以下の場合は、モル比nは15以上であり、シリカ濃度15w/v%以上20w/v%未満の場合は、モル比nは10以上であることが好ましく、シリカ濃度10w/v%以上15w/v%未満の場合は、モル比nは8以上であることが好ましく、シリカ濃度1w/v%以上10w/v%未満の場合は、モル比nは4以上であることが好ましく、金属珪素シリカゾルとシリカ化合物の混合液が注入時間においては沈澱しないものがよい。このとき用いる金属珪素シリカゾルのシリカ濃度はw/w%で表記し、配合後のシリカ溶液のシリカ濃度はw/v%で表記する。
例として、本発明における金属珪素シリカゾルに3号水ガラス、または高モル比水ガラスを用いた場合を示す。シリカ濃度を20、15、10、5w/v%、モル比が15、10、8、6、5または4になるように測りとり、混合した。高モル比水ガラスを混合した場合の結果を下記表5、3号水ガラスを混合した場合の結果を下記6に示す。白濁は吸光度計による660nmで0.1の吸光度があったものを白濁したと判断し、以下の基準で評価した。
○透明:配合液が透明で沈澱が見られない
△白濁:白濁したものの、24時間以内であれば分離や多量の沈殿はみられない。
×分離沈殿:配合直後〜24時間以内に粘度上昇・分離・多量の沈殿がみられる。
Figure 2012077309
Figure 2012077309
以上の実施例の結果から、
1.金属珪素から製造したシリカゾルを用いた場合、従来使用されている水ガラスをイオン交換処理してえられたシリカゾル等のシリカ化合物と比べ中性付近で長期において強度がえられ、体積収縮も少ないことがわかった。
2.金属珪素から製造したシリカゾルを用いた場合、従来使用されているシリカコロイドと同程度の強度や懸濁グラウトにたいするゲルの維持ができ、さらに少量の硬化剤や酸で長期のゲル化時間を得ることができた。
3.金属珪素から製造したシリカゾルをさらにイオン交換してNaOを除くことにより、中性でも長時間のゲル化時間を得ることができた。
4.金属珪素から製造したシリカゾルをさらにイオン交換してNaOを除くことにより、さらに少量の硬化剤や酸で長期のゲル化時間をえることができた。また、この酸として硫酸を使用した場合でも少量で済むため、コンクリートへの硫酸イオンの影響が少なかった。
以上により、本発明の、シリカ溶液を用いた地盤注入材は、高水圧下においても恒久性(耐久性)、浸透固結性、環境保全性からもきわめて優れた特性を有し、広範囲な適用性が得られることが判った。

Claims (10)

  1. 地盤中の地下水が海水、カルシウムおよびマグネシウムよりなる群から選ばれる1種以上を含有する当該地盤中に注入する地盤注入材であって、
    シリカ溶液を含有し、かつ、
    前記シリカ溶液が、金属珪素から製造されたシリカゾルを有効成分とし、さらに、pHが1〜11であり、かつ、シリカ濃度が1〜75w/v%であることを特徴とする地盤注入材。
  2. 前記シリカ溶液が、有効成分として、前記シリカゾル以外に、水ガラス、活性シリカ、水ガラスと酸を混合して得られる酸性水ガラス、水ガラス並びに活性シリカを増粒した増粒シリカコロイド、酸および塩よりなる群から選ばれる1種以上を含む請求項1記載の地盤注入材。
  3. 前記シリカ溶液が、有効成分として、水ガラスと、酸および/または塩とを含む請求項1または2記載の地盤注入材
  4. 前記シリカ溶液をイオン交換処理することで、前記シリカ溶液のpHが4〜9を呈する請求項1〜3のうちいずれか一項記載の地盤注入材。
  5. 塩、酸、セメント、スラグ、多価金属化合物、アルカリ金属塩、アルカリ性化合物、金属イオン封鎖剤、有機化合物、活性シリカおよび水ガラスよりなる添加剤から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜4のうちいずれか一項記載の地盤注入材。
  6. 地盤中に、請求項1〜5のうちいずれか一項記載の地盤注入材を注入する地盤注入工法において、
    前記地盤中の地下水が、海水、カルシウムおよびマグネシウムよりなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする地盤注入工法。
  7. 前記地盤注入材を前記地下水の水位以下の地盤中に注入して止水層を形成し、廃棄物または土壌汚染物を封じ込める、あるいはガスや液体燃料や廃棄物を貯蔵する空洞やトンネルを構築する請求項6記載の地盤注入工法。
  8. 地盤中に、請求項1〜5のうちいずれか一項記載の地盤注入材を注入する地盤注入工法において、
    前記地盤注入材を前記地盤に注入する前または後に、セメントまたはスラグを有効成分とする地盤注入材を、前記地盤に注入することを特徴とする地盤注入工法。
  9. 地盤中に、請求項1〜5のうちいずれか一項記載の地盤注入材を注入する地盤注入工法において、
    前記地盤注入材を高水圧下の地盤中に注入することを特徴とする地盤注入工法。
  10. 地盤中に、請求項1〜5のうちいずれか一項記載の地盤注入材を注入する地盤注入工法において、
    前記地盤注入材を前記地盤に注入して、恒久地盤改良、あるいは液状化防止を行うことを特徴とする地盤注入工法。
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