交流機駆動システムの実施形態について、図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、交流機駆動システム100は、第1交流機1及び第2交流機2を駆動制御するシステムである。第1交流機1及び第2交流機2は、交流電力の供給を受けて動作する機器である。図3に一例を示すように、本実施形態では、第1交流機1は、車両4の車輪5を駆動するための回転電機であり、第2交流機2は、車両4に設けられた補機6を駆動するための回転電機である。ここで、補機6は、車両4に搭載される機器(付属機器、車載機器)であり、例えば、電動オイルポンプや、エアコンディショナ用のコンプレッサ等とされる。第1交流機1は、車輪5に駆動力を伝達するための動力伝達経路に配置されているのに対して、第2交流機2は、当該動力伝達経路から独立して配置されている。本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
図3に示す例では、第1交流機1は、差動歯車装置7を介して左右2つの車輪5に駆動連結されている。第1交流機1と車輪5との間の動力伝達経路(例えば、第1交流機1と差動歯車装置7との間の動力伝達経路)に、変速機等の他の装置が配置されていてもよい。また、動力伝達経路における第1交流機1よりも上流側(車輪5側とは反対側)に、内燃機関等の他の駆動力源(車輪5の駆動力源)が設けられていてもよい。なお、図3に示す例とは異なり、第1交流機1が差動歯車装置7を介さずに車輪5に駆動連結される構成、すなわち、第1交流機1が1つの車輪5にのみ駆動連結される構成とすることもできる。
図1に示すように、交流機駆動システム100は、第1インバータ21と、第2インバータ22と、駆動制御回路40と、電源回路50と、第2インバータ22、駆動制御回路40、及び電源回路50が配置された制御基板3と、を備えている。本実施形態では、第1インバータ21は、制御基板3上には配置されておらず、制御基板3とは別の基板上に配置されている。第1インバータ21と第2インバータ22とは、共通の直流電源である第1直流電源61に並列接続される。第1直流電源61は、第1インバータ21の直流側に直流電力を供給すると共に、第2インバータ22の直流側に直流電力を供給する。第1直流電源61の電源電圧(正極Pと負極Nとの電位差)は、例えば200~400[V]とされる。図示は省略するが、第1直流電源61と2つのインバータ(21,22)との間には、2つのインバータ(21,22)を第1直流電源61から切り離すためのコンタクタ(例えば、システムメインリレー)が設けられている。第1直流電源61と2つのインバータ(21,22)との間に昇圧回路が設けられ、第1直流電源61の電圧が昇圧されて2つのインバータ(21,22)の直流側に供給される構成としてもよい。本実施形態では、第1直流電源61が「直流電源」に相当する。
第1インバータ21は、直流と交流との間で電力を変換して第1交流機1に交流電力を供給する。本実施形態では、第1交流機1は3相(複数相の一例)の交流電力で駆動される交流回転電機であり、第1インバータ21は3相の交流電力を第1交流機1に供給する。具体的には、第1インバータ21は、第1直流電源61に接続されると共に第1交流機1に接続されている。そして、第1交流機1がモータとして機能する場合には、第1インバータ21は、第1直流電源61から供給される直流電力を交流電力に変換して第1交流機1に供給する。また、第1交流機1がジェネレータとして機能する場合には、第1インバータ21は、第1交流機1から供給される交流電力を直流電力に変換して第1直流電源61に供給する。図1では省略しているが、図2に示すように、第1直流電源61と第1インバータ21との間には、正負極間の電圧を平滑化する第1コンデンサ31が設けられている。
第2インバータ22は、直流と交流との間で電力を変換して第2交流機2に交流電力を供給する。本実施形態では、第2交流機2は3相(複数相の一例)の交流電力で駆動される交流回転電機であり、第2インバータ22は3相の交流電力を第2交流機2に供給する。具体的には、第2インバータ22は、第1直流電源61に接続されると共に第2交流機2に接続されている。そして、第2交流機2がモータとして機能する場合には、第2インバータ22は、第1直流電源61から供給される直流電力を交流電力に変換して第2交流機2に供給する。また、第2交流機2がジェネレータとして機能する場合には、第2インバータ22は、第2交流機2から供給される交流電力を直流電力に変換して第1直流電源61に供給する。図1では省略しているが、図2に示すように、第1直流電源61と第2インバータ22との間には、正負極間の電圧を平滑化する第2コンデンサ32が設けられている。なお、2つのインバータ(21,22)に対応して2つの平滑コンデンサ(31,32)が設けられる構成に代えて、例えば、2つのインバータ(21,22)に対して共通の平滑コンデンサが設けられる構成とすることもできる。
図2に示すように、第1インバータ21及び第2インバータ22は、複数のスイッチング素子30を用いて構成されている。スイッチング素子30として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、SiC-MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide Semiconductor FET)、SiC-SIT(SiC - Static Induction Transistor)、GaN-MOSFET(Gallium Nitride - MOSFET)等のパワー半導体素子を用いると好適である。図2には、スイッチング素子30としてIGBTを用いる場合を例示している。スイッチング素子30のそれぞれにはフリーホイールダイオード36が並列接続されている。
第1インバータ21及び第2インバータ22のそれぞれは、上段側スイッチング素子34と下段側スイッチング素子35とが直列接続されたアーム33を複数備えている。複数のアーム33は、互いに並列接続されてブリッジ回路を構成している。ここで、上段側スイッチング素子34は、第1直流電源61の正極P側に接続されるスイッチング素子30であり、下段側スイッチング素子35は、第1直流電源61の負極N側に接続されるスイッチング素子30である。第1インバータ21は、第1交流機1に供給する交流電力の相数に対応する数(ここでは、相数に等しい数)のアーム33を備えており、各アーム33の中間点(上段側スイッチング素子34と下段側スイッチング素子35との接続点)が、第1交流機1における対応する相のコイル(ここでは、ステータコイル)に接続されている。また、第2インバータ22は、第2交流機2に供給する交流電力の相数に対応する数(ここでは、相数に等しい数)のアーム33を備えており、各アーム33の中間点が、第2交流機2における対応する相のコイル(ここでは、ステータコイル)に接続されている。
駆動制御回路40は、第1インバータ21及び第2インバータ22を駆動制御する。駆動制御回路40は、スイッチング素子30をスイッチング制御するスイッチング制御信号(ここでは、ゲート駆動信号)を生成する。そして、駆動制御回路40が生成したスイッチング制御信号は、制御対象となるスイッチング素子30の制御端子(ここでは、ゲート端子)に入力される。第1インバータ21が備える複数のスイッチング素子30は、駆動制御回路40が生成するスイッチング制御信号により個別にスイッチング制御され、第2インバータ22が備える複数のスイッチング素子30は、駆動制御回路40が生成するスイッチング制御信号により個別にスイッチング制御される。このように、駆動制御回路40は、第1インバータ21を介して第1交流機1を制御すると共に、第2インバータ22を介して第2交流機2を制御する。なお、駆動制御回路40の各機能は、マイクロコンピュータ等のハードウェアとソフトウェア(プログラム)との協働により実現される。
図1に示すように、本実施形態では、駆動制御回路40は、第1インバータ21を駆動制御する第1駆動制御回路41と、第2インバータ22を駆動制御する第2駆動制御回路42と、を備えている。第1駆動制御回路41は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核として構成される第1制御部41aを備え、第2駆動制御回路42は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核として構成される第2制御部42aを備えている。第1制御部41aは、第1インバータ21が備えるスイッチング素子30をスイッチング制御するスイッチング制御信号を生成し、第2制御部42aは、第2インバータ22が備えるスイッチング素子30をスイッチング制御するスイッチング制御信号を生成する。第1制御部41aと第2制御部42aとは、互いに通信可能に構成されている。
本実施形態では、駆動制御回路40は、制御装置8(図3参照)からの指令に基づき、第1インバータ21及び第2インバータ22を駆動制御する。制御装置8は、例えば、車両4の全体を統合して制御する車両制御装置とされる。第1制御部41aは、例えばベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、制御装置8から指令されたトルクを第1交流機1が出力するように、第1インバータ21を介して第1交流機1を制御する。また、第2制御部42aは、例えばベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、制御装置8から指令されたトルクを第2交流機2が出力するように、第2インバータ22を介して第2交流機2を制御する。
図示は省略するが、交流機駆動システム100は、第1制御部41aが生成したスイッチング制御信号の駆動能力(例えば電圧振幅や出力電流等、後段の回路を動作させる能力)を高めて第1インバータ21(具体的には、第1インバータ21が備えるスイッチング素子30の制御端子)に供給する第1ドライブ回路を備えている。本実施形態では、第1ドライブ回路は、制御基板3上に配置されている。また、図示は省略するが、交流機駆動システム100は、第2制御部42aが生成したスイッチング制御信号の駆動能力を高めて第2インバータ22(具体的には、第2インバータ22が備えるスイッチング素子30の制御端子)に供給する第2ドライブ回路を備えている。本実施形態では、第2ドライブ回路は、制御基板3上に配置されている。第2ドライブ回路は、例えば、第2インバータ22が備えるスイッチング素子30と共に、IPM(Intelligent Power Module)等のユニットに内蔵される。
電源回路50は、駆動制御回路40に電力(動作電力)を供給する。本実施形態では、駆動制御回路40は、第1直流電源61とは別の直流電源である第2直流電源62に接続される。第2直流電源62は、第1直流電源61よりも電源電圧の低い直流電源である。第2直流電源62の電源電圧(B)は、例えば12~24[V]とされる。第1直流電源61と第2直流電源62とは、互いに絶縁されており、互いにフローティングの関係にある。そして、制御基板3上には、第1直流電源61から電力を供給される高圧系回路(ここでは、第2インバータ22)と、第2直流電源62から電力を供給される低圧系回路(ここでは、駆動制御回路40及び電源回路50)とが形成されている。
電源回路50は、第2直流電源62から供給される直流電力に基づき駆動制御回路40の動作電圧(例えば、5[V],3.3[V],2.5[V]等)を生成して、駆動制御回路40に供給する。電源回路50は、例えば、第2直流電源62に接続される電源入力回路と、第2直流電源62から電源入力回路に入力された電圧を調整する電圧調整回路と、を備える。電源入力回路は、例えば、ノイズフィルタ、平滑コンデンサ、及びレギュレータ回路を用いて構成され、電圧調整回路は、例えば、レギュレータ素子を用いて構成される。
図1に示すように、本実施形態では、電源回路50は、第1駆動制御回路41に電力(動作電力)を供給する第1電源回路51と、第2駆動制御回路42に電力(動作電力)を供給する第2電源回路52と、を備えている。第1電源回路51は、第2直流電源62から供給される直流電力に基づき第1駆動制御回路41の動作電圧を生成して、第1駆動制御回路41に供給する。また、第2電源回路52は、第2直流電源62から供給される直流電力に基づき第2駆動制御回路42の動作電圧を生成して、第2駆動制御回路42に供給する。
上述したように、この交流機駆動システム100では、第1交流機1は車輪5を駆動するための回転電機であり、第2交流機2は補機6を駆動するための回転電機である。このような交流機駆動システム100では、例えば第2インバータ22において短絡故障が発生して補機6が駆動できない状況においても、第1交流機1により車輪5を駆動して車両4の走行が継続可能であることが望ましい。この交流機駆動システム100では、以下に述べる第1ヒューズ71を設けることで、第2インバータ22において短絡故障が発生した場合であっても、第1インバータ21の駆動を継続することを可能としている。
ここで、図1及び図2に示すように、第1直流電源61と第1インバータ21とを接続する電力経路を第1電力経路91とし、第1直流電源61と第2インバータ22とを接続する電力経路を第2電力経路92とする。第1インバータ21と第2インバータ22とは第1直流電源61に並列接続されるため、第1電力経路91における第1直流電源61側の部分と、第2電力経路92における第1直流電源61側の部分とは、共通の電力経路とされる。一方、第1電力経路91と第2電力経路92との分岐点90よりも第1直流電源61側とは反対側では、第1電力経路91と第2電力経路92とは、互いに異なる電力経路とされる。
第2電力経路92における分岐点90よりも第2インバータ22側の部分に、規定値以上の電流(定格電流を超える電流)が流れた場合に切断される第1ヒューズ71設けられている。第1ヒューズ71は、規定値以上の電流が流れた場合に自己発熱により溶断する、熱溶断式のヒューズである。第1ヒューズ71は、制御基板3上に配置されている。本実施形態では、第1ヒューズ71が「ヒューズ」に相当する。
このように第1ヒューズ71を第2電力経路92に設けることで、第2インバータ22において短絡故障(アーム33が短絡する故障)が発生した場合には、第2電力経路92を流れる短絡電流によって第1ヒューズ71を切断させることで第2電力経路92を遮断して、第2インバータ22を第1直流電源61から切り離すことができる。なお、アーム33が短絡する故障は、当該アーム33における上段側スイッチング素子34及び下段側スイッチング素子35の少なくとも一方が短絡故障した場合に発生し得る。そして、第1ヒューズ71は、第2電力経路92における分岐点90よりも第2インバータ22側の部分に配置されているため、第1ヒューズ71が切断された後も、第1電力経路91による第1直流電源61と第1インバータ21との接続を維持して、第1インバータ21の駆動を継続することが可能となっている。
図2に示すように、本実施形態では、第2電力経路92における第1直流電源61と分岐点90との間に、規定値以上の電流が流れた場合に切断される第2ヒューズ72(例えば、バッテリヒューズ)が設けられている。この第2ヒューズ72が切断された場合或いは上述したコンタクタを開いた場合には、第2インバータ22だけでなく第1インバータ21も第1直流電源61から切り離される。これに対して、この交流機駆動システム100では、第2インバータ22において短絡故障が発生した場合には第1ヒューズ71が切断されるため、第2ヒューズ72を切断したりコンタクタを開いたりすることなく、第2インバータ22のみを第1直流電源61から切り離すことが可能となっている。なお、第1ヒューズ71及び第2ヒューズ72のそれぞれの定格電流は、第2インバータ22において短絡故障が発生した場合に第1ヒューズ71のみが切断されるように設定されている。
第2インバータ22において発生し得る故障として、短絡故障による過電流によってスイッチング素子30に接続された金属細線(ボンディングワイヤ)が溶断することによるオープン故障がある。仮に第1ヒューズ71が設けられない場合、第2インバータ22においてこのようなオープン故障が発生した場合に、故障箇所が第2インバータ22であることの特定が困難となるおそれがある。これに対して、上記のように第1ヒューズ71を設け、第1ヒューズ71の定格電流を、オープン故障を誘発する短絡故障が第2インバータ22において発生した場合に第1ヒューズ71が切断されるように設定することで、故障箇所が第2インバータ22であることを特定することが可能となる。
本実施形態では、図1及び図2に示すように、第1電力経路91は、第1直流電源61の正極Pと第1インバータ21とを接続する電力経路であり、第2電力経路92は、第1直流電源61の正極Pと第2インバータ22とを接続する電力経路である。よって、本実施形態では、第1ヒューズ71は、第1直流電源61の正極Pに接続される正極電源ラインに配置されている。そして、交流機駆動システム100は、第2電力経路92における第1ヒューズ71と第1直流電源61との間の部分の電圧(負極Nに対する電位)を検出する第1電圧検出部81と、第2電力経路92における第1ヒューズ71と第2インバータ22との間の部分の電圧(負極Nに対する電位)を検出する第2電圧検出部82とを備えている。本実施形態では、第1電圧検出部81は、第2電力経路92における第1ヒューズ71と分岐点90との間の部分の電圧を検出するように設けられている。
このように第1電圧検出部81及び第2電圧検出部82を用いて第1ヒューズ71に対して両側(第2電力経路92に沿った両側)の電圧を検出することで、第1ヒューズ71の切断を比較的精度良く且つ比較的迅速に検出することが可能となっている。例えば、第1電圧検出部81により検出される電圧と第2電圧検出部82により検出される電圧との差が規定値以上となった場合に、第1ヒューズ71が切断されたと判定することができる。第1電圧検出部81及び第2電圧検出部82の検出精度が高い場合には、第1ヒューズ71の劣化を検出することも可能となる。
図1に示すように、本実施形態では、第1電圧検出部81と第2電圧検出部82とは、制御基板3上に配置されている。具体的には、第1電圧検出部81が備える電圧検出回路と、第2電圧検出部82が備える電圧検出回路とが、制御基板3上に配置されている。電圧検出回路(高圧検出回路)は、例えば、抵抗素子や電圧センサを用いて構成される。なお、図1では、第1電圧検出部81が第1駆動制御回路41に含まれる構成としているが、第1電圧検出部81が、第1駆動制御回路41とは別の回路により構成されてもよい。同様に、図1では、第2電圧検出部82が第2駆動制御回路42に含まれる構成としているが、第2電圧検出部82が、第2駆動制御回路42とは別の回路により構成されてもよい。
図1に示すように、本実施形態では、第1電圧検出部81による電圧の検出結果は、第1制御部41aに入力され、第2電圧検出部82による電圧の検出結果は、第2制御部42aに入力される。第1制御部41aと第2制御部42aとは互いに通信可能に構成されているため、例えば、第1制御部41a及び第2制御部42aのいずれか一方が、第1電圧検出部81及び第2電圧検出部82のそれぞれの検出結果に基づき、第1ヒューズ71が切断されているか否かを判定する構成とすることができる。或いは、駆動制御回路40と通信可能な他の制御装置(例えば、図3に示す制御装置8)が、第1電圧検出部81及び第2電圧検出部82のそれぞれの検出結果に基づき、第1ヒューズ71が切断されているか否かを判定する構成としてもよい。第1ヒューズ71が切断されていると判定された場合、第2制御部42aは、例えば、第2インバータ22が備える全てのスイッチング素子30がオフ状態となるように制御する。
なお、第1電圧検出部81による電圧の検出結果は、第1制御部41aにおける各種制御に用いられ、第2電圧検出部82による電圧の検出結果は、第2制御部42aにおける各種制御に用いられる。第1電圧検出部81や第2電圧検出部82による電圧の検出結果は、例えば、パルス幅変調制御によりスイッチング制御信号を生成する場合のキャリアの振幅の設定や、フェールセーフ制御を実行するか否かの判定に用いられる。第1ヒューズ71が切断された状態においても、第1制御部41aは、第1電圧検出部81による電圧の検出結果を取得して、第1インバータ21の駆動制御を継続することができる。
図2に示すように、本実施形態では、第2インバータ22が備える複数のアーム33のそれぞれに、各アーム33を流れる電流を検出する電流検出部80が設けられている。電流検出部80による電流の検出結果は、駆動制御回路40(本実施形態では、第2制御部42a)に入力される。電流検出部80の検出結果に基づき、第2インバータ22が備える各アーム33における過電流の発生を検出することができる。図示は省略するが、電流検出部80は、制御基板3上に配置されている。
本実施形態では、電流検出部80は、アーム33に直列接続されるシャント抵抗80aと、シャント抵抗80aの両端電圧(端子間電圧)を検出する演算増幅器80bと、を備えている。演算増幅器80bの出力信号は、第2制御部42aに入力される。第2制御部42aは、シャント抵抗80aの抵抗値と、演算増幅器80bの出力信号とに基づいて、アーム33に流れる電流(具体的には、アーム33におけるシャント抵抗80aが配置された部分を流れる電流)を検出する。このように、本実施形態では、電流検出部80は、アーム33に直列接続されるシャント抵抗80aの両端電圧に基づき、当該アーム33に流れる電流を検出するように構成されている。図2に示す例では、シャント抵抗80aは、下段側スイッチング素子35と負極電源ライン(第1直流電源61の負極Nに接続される電源ライン)との間に配置されているため、電流検出部80により検出されるアーム33を流れる電流は、当該アーム33における下段側スイッチング素子35を流れる電流である。このような構成に代えて、シャント抵抗80aが、上段側スイッチング素子34と正極電源ライン(第1直流電源61の正極Pに接続される電源ライン)との間に配置される構成とすることもできる。
本実施形態では、交流機駆動システム100は、第2インバータ22の少なくともいずれかのアーム33における電流検出部80による電流の検出値が、正常値より大きい場合(すなわち、正常時に想定される電流の最大値より大きい場合)であって、第1ヒューズ71が切断されていない場合に、第1ヒューズ71を強制的に切断するための強制切断制御を実行するように構成されている。具体的には、図4に示すように、第2インバータ22の少なくともいずれかのアーム33において過電流が検出されたか否かが判定される(ステップ#01)。なお、電流検出部80によるアーム33を流れる電流の検出値が正常値より大きい場合に、当該アーム33において過電流が検出されたと判定される。正常値と比較される電流の検出値は、特定の状態での電流の検出値とすることができ、この場合、正常値は、当該特定の状態において正常時に想定される電流の最大値とされる。特定の状態は、例えば、アーム33における上段側スイッチング素子34と下段側スイッチング素子35との双方をオフ状態とするように駆動制御回路40(本実施形態では、第2制御部42a)が制御している状態とすることができる。
第2インバータ22の少なくともいずれかのアーム33において過電流が検出されると(ステップ#01:Yes)、第1ヒューズ71が切断されているか否かが判定される(ステップ#02)。そして、第1ヒューズ71が切断されていない場合には(ステップ#02:No)、強制切断制御が実行される(ステップ#03)。なお、ステップ#01やステップ#02の判定は、例えば、駆動制御回路40(例えば、第2制御部42a)において実行され、又は、駆動制御回路40と通信可能な他の制御装置(例えば、図3に示す制御装置8)において実行される。
第1ヒューズ71が切断されていない場合であっても、第2インバータ22のいずれかのアーム33に正常値より大きい電流が流れている場合には、当該アーム33に、第1ヒューズ71が切断されない程度の短絡故障(レアショート)が発生していることが予想される。この交流機駆動システム100では、このような場合に強制切断制御を実行することで、第2インバータ22を第1直流電源61から切り離して、第2インバータ22のアーム33に正常値より大きい電流が流れている状態を比較的早期に解消することが可能となっている。
本実施形態では、強制切断制御は、規定値以上の電流が第1ヒューズ71に流れるように第2インバータ22を駆動する制御とされる。第2インバータ22において過電流が検出されていないアーム33を正常アームとして、強制切断制御では、例えば、規定値以上の電流が第1ヒューズ71に流れるように、第2インバータ22の正常アームに設けられたスイッチング素子30が制御される。強制切断制御は、駆動制御回路40により実行され、本実施形態では、第2制御部42aにより実行される。
〔その他の実施形態〕
次に、交流機駆動システムのその他の実施形態について説明する。
(1)上記の実施形態では、電流検出部80が、アーム33に直列接続されるシャント抵抗80aの両端電圧に基づき、当該アーム33に流れる電流を検出する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、電流検出部80が、アーム33に設けられたスイッチング素子30の端子間電圧(例えば、コレクタ-エミッタ間電圧)に基づき、当該アーム33に流れる電流を検出する(過電流の有無を検出する)構成とすることができる。また、スイッチング素子30として、素子電流に比例した微小な電流が流れるセンス端子を備えるスイッチング素子を用いる場合には、電流検出部80が、アーム33に設けられたスイッチング素子30のセンス端子に直列接続された抵抗の両端電圧に基づき、当該アーム33に流れる電流を検出する構成とすることができる。
(2)上記の実施形態では、第2インバータ22が備える複数のアーム33のそれぞれに、各アーム33を流れる電流を検出する電流検出部80が設けられる構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第2インバータ22が備えるアーム33に電流検出部80が設けられない構成とすることもできる。
(3)上記の実施形態では、交流機駆動システム100が、第2インバータ22の少なくともいずれかのアーム33における電流検出部80による電流の検出値が、正常値より大きい場合であって、第1ヒューズ71が切断されていない場合に、第1ヒューズ71を強制的に切断するための強制切断制御を実行する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、強制切断制御を実行する条件に、これら2つの条件に加えて更に別の条件を加えることも可能である。また、交流機駆動システム100が、強制切断制御を実行しない構成とすることもできる。
(4)上記の実施形態では、第1電力経路91が、第1直流電源61の正極Pと第1インバータ21とを接続する電力経路であり、第2電力経路92が、第1直流電源61の正極Pと第2インバータ22とを接続する電力経路である構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1直流電源61の負極Nと第1インバータ21とを接続する電力経路を第1電力経路91とし、第1直流電源61の負極Nと第2インバータ22とを接続する電力経路を第2電力経路92として、第1ヒューズ71が、第2電力経路92における分岐点90よりも第2インバータ22側の部分に設けられる構成とすることもできる。この場合、第1ヒューズ71は、第1直流電源61の負極Nに接続される負極電源ラインに配置される。
(5)上記の実施形態では、第1交流機1が、車輪5を駆動するための回転電機であり、第2交流機2が、補機6を駆動するための回転電機である構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1交流機1を車輪5以外の装置を駆動するための回転電機とすることや、第1交流機1を回転電機以外の交流機とすることもできる。また、第2交流機2を補機6以外の装置を駆動するための回転電機とすることや、第2交流機2を回転電機以外の交流機とすることもできる。
(6)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した交流機駆動システムの概要について説明する。
交流電力の供給を受けて動作する機器である第1交流機(1)及び第2交流機(2)を駆動制御する交流機駆動システム(100)であって、直流と交流との間で電力を変換して前記第1交流機(1)に交流電力を供給する第1インバータ(21)と、直流と交流との間で電力を変換して前記第2交流機(2)に交流電力を供給する第2インバータ(22)と、前記第1インバータ(21)及び前記第2インバータ(22)を駆動制御する駆動制御回路(40)と、前記駆動制御回路(40)に電力を供給する電源回路(50)と、前記第2インバータ(22)、前記駆動制御回路(40)、及び前記電源回路(50)が配置された制御基板(3)と、を備え、前記第1インバータ(21)と前記第2インバータ(22)とは、共通の直流電源(61)に並列接続され、前記直流電源(61)と前記第1インバータ(21)とを接続する電力経路を第1電力経路(91)とし、前記直流電源(61)と前記第2インバータ(22)とを接続する電力経路を第2電力経路(92)として、前記第2電力経路(92)における、前記第1電力経路(91)と前記第2電力経路(92)との分岐点(90)よりも前記第2インバータ(22)側の部分に、規定値以上の電流が流れた場合に切断されるヒューズ(71)が設けられ、前記ヒューズ(71)が、前記制御基板(3)上に配置されている。
この構成では、第2電力経路(92)にヒューズ(71)が設けられるため、第2インバータ(22)において短絡故障が発生した場合には、第2電力経路(92)を流れる短絡電流によってヒューズ(71)を切断させることで第2電力経路(92)を遮断して、第2インバータ(22)を直流電源(61)から切り離すことができる。そして、上記の構成では、ヒューズ(71)が、第2電力経路(92)における、第1電力経路(91)と第2電力経路(92)との分岐点(90)よりも第2インバータ(22)側の部分に配置されているため、ヒューズ(71)が切断された後も、第1電力経路(91)による直流電源(61)と第1インバータ(21)との接続を維持して、第1インバータ(21)の直流側の電圧が低下することを抑制できる。この結果、第2インバータ(22)において短絡故障が発生した場合であっても、第1インバータ(21)の駆動を継続することが可能となっている。
更に、上記の構成では、第2インバータ(22)が配置される制御基板(3)上にヒューズ(71)が配置されるため、ヒューズ(71)が制御基板(3)上に配置されない場合に比べて、ヒューズ(71)の配設位置を経由するように第2電力経路(92)を配置(配策)しやすくなっている。また、ヒューズ(71)が制御基板(3)上に配置されるため、第2インバータ(22)、駆動制御回路(40)、及び電源回路(50)と共にヒューズ(71)を制御基板(3)上にまとめて配置することができる。従って、これらの組み付け作業や交換作業を行う際の工数の低減を図ることもできる。
ここで、前記第1電力経路(91)は、前記直流電源(61)の正極(P)と前記第1インバータ(21)とを接続する電力経路であり、前記第2電力経路(92)は、前記直流電源(61)の正極(P)と前記第2インバータ(22)とを接続する電力経路であり、前記第2電力経路(92)における前記ヒューズ(71)と前記直流電源(61)との間の部分の電圧を検出する第1電圧検出部(81)と、前記第2電力経路(92)における前記ヒューズ(71)と前記第2インバータ(22)との間の部分の電圧を検出する第2電圧検出部(82)とを備えていると好適である。
この構成によれば、第1電圧検出部(81)の検出結果と第2電圧検出部(82)の検出結果とに基づき、ヒューズ(71)に対して両側(第2電力経路(92)に沿った両側)の電圧を取得することができるため、ヒューズ(71)の切断を比較的精度良く検出することができる。そして、ヒューズ(71)の切断が検出された場合には、第2インバータ(22)において短絡故障が発生した可能性があると判定することができる。
上記のように前記第1電圧検出部(81)と前記第2電圧検出部(82)とを備える構成において、前記第1電圧検出部(81)と前記第2電圧検出部(82)とが、前記制御基板(3)上に配置されていると好適である。
この構成によれば、第1電圧検出部(81)及び第2電圧検出部(82)による電圧の検出対象部分を、第2電力経路(92)における制御基板(3)上に配置される部分とする場合に、制御基板(3)上に配置される配線のみで、第1電圧検出部(81)及び第2電圧検出部(82)をそれぞれの電圧の検出対象部分に接続することができる。よって、第1電圧検出部(81)による電圧の検出対象部分と第1電圧検出部(81)とを接続する配線の簡素化(全長の短縮や構造の簡素化等、以下同様)や、第2電圧検出部(82)による電圧の検出対象部分と第2電圧検出部(82)とを接続する配線の簡素化を図ることができる。また、第1電圧検出部(81)及び第2電圧検出部(82)のそれぞれの検出結果を、制御基板(3)上に配置された駆動制御回路(40)に入力する場合には、制御基板(3)上に配置される配線のみで、第1電圧検出部(81)及び第2電圧検出部(82)を駆動制御回路(40)に接続することができるため、当該配線の簡素化も図ることができる。
また、上記の構成によれば、第1電圧検出部(81)及び第2電圧検出部(82)が制御基板(3)上に配置されるため、他の部品と共に第1電圧検出部(81)及び第2電圧検出部(82)を制御基板(3)上にまとめて配置することができる。従って、これらの組み付け作業や交換作業を行う際の工数の低減を図ることもできる。
上記の各構成の交流機駆動システム(100)において、前記第2インバータ(22)は、前記直流電源(61)の正極(P)側に接続される上段側スイッチング素子(34)と前記直流電源(61)の負極(N)側に接続される下段側スイッチング素子(35)とが直列接続されたアーム(33)を複数備え、複数の前記アーム(33)のそれぞれに、各アーム(33)を流れる電流を検出する電流検出部(80)が設けられていると好適である。
この構成によれば、第2インバータ(22)が備える各アーム(33)における過電流の発生を、電流検出部(80)の検出結果に基づき検出することができる。そして、ヒューズ(71)の切断とアーム(33)における過電流の発生との双方が検出された場合には、ヒューズ(71)の切断の要因が、アーム(33)における短絡故障であると判定することができ、ヒューズ(71)の切断のみが検出された場合には、ヒューズ(71)の切断の要因が、アーム(33)における短絡故障以外の要因であると判定することができる。このように、上記の構成によれば、電流検出部(80)の検出結果に基づき、ヒューズ(71)の切断の要因の切り分けを行うことができる。
上記のように複数の前記アーム(33)のそれぞれに前記電流検出部(80)が設けられる構成において、少なくともいずれかの前記アーム(33)における前記電流検出部(80)による電流の検出値が、正常値より大きい場合であって、前記ヒューズ(71)が切断されていない場合に、前記ヒューズ(71)を強制的に切断するための強制切断制御を実行する構成とすると好適である。
ヒューズ(71)が切断されていない場合であっても、第2インバータ(22)のいずれかのアーム(33)に正常値より大きい電流が流れている場合には、当該アーム(33)に、ヒューズ(71)が切断されない程度の短絡故障(レアショート)が発生していることが予想される。この場合、アーム(33)における短絡故障が更に進行したり当該短絡故障の影響が広がったりしないように、アーム(33)に正常値より大きい電流が流れている状態は早く解消されることが望ましい。上記の構成によれば、このような場合に強制切断制御を実行してヒューズ(71)を切断することができるため、第2インバータ(22)を直流電源(61)から切り離して、第2インバータ(22)のアーム(33)に正常値より大きい電流が流れている状態を比較的早期に解消することができる。
上記の各構成の交流機駆動システム(100)において、前記第1交流機(1)は、車両(4)の車輪(5)を駆動するための回転電機であり、前記第2交流機(2)は、前記車両(4)に設けられた補機(6)を駆動するための回転電機であると好適である。
上述したように、本開示の交流機駆動システム(100)では、第2インバータ(22)において短絡故障が発生した場合であっても、第1インバータ(21)の駆動を継続することが可能となっている。よって、この構成では、第2インバータ(22)において短絡故障が発生して補機(6)が駆動できない状況においても、第1交流機(1)により車輪(5)を駆動して、車両(4)の走行を継続することができる。
本開示に係る交流機駆動システムは、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。