JP7243093B2 - エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物及び複合材料 - Google Patents

エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物及び複合材料 Download PDF

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Description

本発明は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物及び複合材料に関する。
エポキシ樹脂は、繊維強化プラスチック(FRP)のマトリックス樹脂として広く利用されている。最近では、破壊靱性、弾性、耐熱性等の諸物性に高い水準が要求される航空宇宙用途で使用するFRPのマトリックス樹脂としてもエポキシ樹脂が使用されている。しかしながら、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂に比べて耐熱性に優れる一方、破壊靱性に劣る傾向にある。
エポキシ樹脂の破壊靱性を向上させる手法としては、例えば、分子中にメソゲン構造を導入して硬化物中における分子の配向性を高めることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2014-122337号公報
特許文献1に記載されたメソゲン含有エポキシ樹脂を用いて硬化物を形成した場合、高い靱性は得られる一方、高い弾性を得ることは困難である。また、硬化物について、耐熱性を向上させることが望まれている。
本発明は上記状況に鑑み、弾性、靱性及び耐熱性が良好なエポキシ樹脂硬化物が得られるエポキシ樹脂並びにエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、弾性、靱性及び耐熱性が良好なエポキシ樹脂硬化物並びにこれを含む複合材料を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造を有する第一のエポキシ化合物と、三つの環を含む縮合環構造を有する第二のエポキシ化合物とを含むエポキシ樹脂。
<2> 前記第一のエポキシ化合物が下記一般式(1-m)で表されるエポキシ化合物を含む<1>に記載のエポキシ樹脂。
Figure 0007243093000001
[一般式(1-m)において、Xは下記2価の基からなる群(I)より選択される少なくとも1種を含む連結基を示す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基、炭素数1~8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nはそれぞれ独立に0~4の整数を示す。]
Figure 0007243093000002
[2価の基からなる群(I)において、Yはそれぞれ独立に、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基、炭素数1~8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nは各々独立に0~4の整数を示し、kは0~7の整数を示し、mは0~8の整数を示し、lは0~12の整数を示す。]
<3> 前記第一のエポキシ化合物と前記第二のエポキシ化合物との質量比(第一のエポキシ化合物:第二のエポキシ化合物)が10:1~1:1である<1>又は<2>に記載のエポキシ樹脂。
<4> 前記第二のエポキシ化合物は、2つのエポキシ基を有する化合物である<1>~<3>のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂。
<5> 前記第一のエポキシ化合物は、三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル及びジヒドロキシナフタレンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物とが反応してなる化合物を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂。
<6> 前記第一のエポキシ化合物は、三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物と、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル及びジヒドロキシナフタレンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物とが反応してなる化合物を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂。
<7> 三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物と、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル及びジヒドロキシナフタレンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物とが反応してなる化合物を含むエポキシ樹脂。
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂と、硬化剤をさらに含むエポキシ樹脂組成物。
<9> 前記硬化剤は、芳香環及びアミノ基を有するアミン硬化剤を含む<8>に記載のエポキシ樹脂組成物。
<10> 前記硬化剤は、アミノ基が芳香環に直接結合しているアミン硬化剤を含む<8>に記載のエポキシ樹脂組成物。
<11> <8>~<10>のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物である、エポキシ樹脂硬化物。
<12> <11>に記載のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む複合材料。
本発明によれば、弾性、靱性及び耐熱性が良好なエポキシ樹脂硬化物が得られるエポキシ樹脂並びにエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、弾性、靱性及び耐熱性が良好なエポキシ樹脂硬化物並びにこれを含む複合材料を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「エポキシ化合物」とは、分子中にエポキシ基を有する化合物を意味する。「エポキシ樹脂」とは、複数のエポキシ化合物を集合体として捉える概念であって硬化していない状態のものを意味する。
なお、本開示において、「三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造及び三つの環を含む縮合環構造を有するエポキシ化合物」は、「第一のエポキシ化合物」に分類するものとする。すなわち、本開示において、「第二のエポキシ化合物」は、「三つの環を含む縮合環構造を有し、三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造を有さないエポキシ化合物」を意味する。
〔第一実施形態〕
<エポキシ樹脂>
まず、第一実施形態のエポキシ樹脂について説明する。本開示のエポキシ樹脂は、三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造(以下、単に「メソゲン構造」とも称する)を有する第一のエポキシ化合物と、三つの環を含む縮合環構造を有する第二のエポキシ化合物とを含む。本開示のエポキシ樹脂を用いることで弾性、靱性及び耐熱性が良好なエポキシ樹脂硬化物が得られる。この理由としては、メソゲン構造を有する第一のエポキシ化合物が分子配向性に優れることにより、硬化物にて優れた靱性が得られ、三つの環を含む縮合環構造を有する第二のエポキシ化合物は、縮合環構造による嵩高い分子構造を有し、硬化物への荷重付加時の分子鎖の振動を抑制できるため、硬化物の高弾性化を図ることができると推測される。また、三つの環を含む縮合環構造を有する第二のエポキシ化合物を用いることにより、硬化物のガラス転移温度を向上させることが可能であり、耐熱性に優れる硬化物が得られる。
(第一のエポキシ化合物)
第一のエポキシ化合物は、1つ以上のメソゲン構造及び1つ以上のエポキシ基を有する化合物である。
第一のエポキシ化合物は、1種を単独であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
第一のエポキシ化合物は、1つのメソゲン構造を有する化合物と2つ以上のメソゲン構造を有する化合物との混合物であってもよい。なお、2つ以上のメソゲン構造を有する化合物における2つ以上のメソゲン構造は、異なっていても同じであってもよい。
第一のエポキシ化合物が有するメソゲン構造とは、これを有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂が液晶性を発現する可能性のある構造を意味する。具体的には、ビフェニル構造、フェニルベンゾエート構造、シクロヘキシルベンゾエート構造、アゾベンゼン構造、スチルベン構造、ターフェニル構造、これらの誘導体、これらのメソゲン構造の2つ以上が結合基を介して結合した構造等が挙げられる。
メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物を含むエポキシ樹脂は、この樹脂を含むエポキシ樹脂組成物の硬化物中に高次構造を形成する。ここで、高次構造とは、その構成要素が配列してミクロな秩序構造を形成した高次構造体を含む構造を意味し、例えば結晶相及び液晶相が相当する。このような高次構造体の存在の有無は、偏光顕微鏡によって判断することができる。すなわち、クロスニコル状態での観察において、偏光解消による干渉縞が見られることで判別可能である。この高次構造体は、通常はエポキシ樹脂組成物の硬化物中に島状に存在してドメイン構造を形成しており、その島の一つが一つの高次構造体に対応する。この高次構造体の構成要素自体は、一般には共有結合により形成されている。
硬化した状態で形成される高次構造としては、ネマチック構造とスメクチック構造とが挙げられる。ネマチック構造とスメクチック構造は、それぞれ液晶構造の一種である。ネマチック構造は分子長軸が一様な方向を向いており、配向秩序のみをもつ液晶構造である。これに対し、スメクチック構造は配向秩序に加えて一次元の位置の秩序を持ち、層構造を有する液晶構造である。秩序性はネマチック構造よりもスメクチック構造の方が高い。従って、硬化物の熱伝導性及び破壊靱性の観点からは、スメクチック構造の高次構造を形成することがより好ましい。
硬化物中にスメクチック構造が形成されているか否かは、硬化物のX線回折測定により判断できる。X線回折測定は、例えば、株式会社リガクのX線回折装置を用いて行うことができる。本開示では、CuKα1線を用い、管電圧40kV、管電流20mA、2θ=1°~30°の範囲でX線回折測定を行ったとき、2θ=2°~10°の範囲に回折ピークが現れる場合に、硬化物中にスメクチック構造が形成されていると判断する。
第一のエポキシ化合物が有するメソゲン構造は、下記一般式(1)で表される構造であってもよい。
Figure 0007243093000003
一般式(1)中、Xは下記2価の基からなる群(I)より選択される少なくとも1種の連結基を示す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基、炭素数1~8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nは各々独立に0~4の整数を示す。*は隣接する原子との結合部位を表す。
Figure 0007243093000004
群(I)中、Yはそれぞれ独立に、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基、炭素数1~8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nは各々独立に0~4の整数を示し、kは0~7の整数を示し、mは0~8の整数を示し、lは0~12の整数を示す。
一般式(1)で表されるメソゲン構造において、Xは、下記2価の基からなる群(Ia)より選択される少なくとも1種の連結基であることが好ましく、群(Ia)より選択される少なくとも1種の連結基であって少なくとも1つの環状構造を含む連結基であることがより好ましい。
Figure 0007243093000005
群(Ia)中、Yはそれぞれ独立に、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基、炭素数1~8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nは各々独立に0~4の整数を示し、kは0~7の整数を示し、mは0~8の整数を示し、lは0~12の整数を示す。
第一のエポキシ化合物が有するメソゲン構造は、下記一般式(2)で表されるメソゲン構造であることが好ましい。
Figure 0007243093000006
一般式(2)において、X、Y、nの定義及び好ましい例は、一般式(1)のX、Y、nの定義及び好ましい例と同様である。*は隣接する原子との結合部位を表す。
さらに、第一のエポキシ化合物が有するメソゲン構造は、下記一般式(3)で表されるメソゲン構造であることが好ましい。
Figure 0007243093000007
一般式(3)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示す。*は隣接する原子との結合部位を表す。
~Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。また、R~Rのうちの2個~4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個すべてが水素原子であることがさらに好ましい。R~Rのいずれかが炭素数1~3のアルキル基である場合、R及びRの少なくとも一方が炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。
第一のエポキシ化合物は、メソゲン構造を有するエポキシ化合物の単量体を含んでいてもよく、例えば、下記一般式(1-m)で表されるエポキシ化合物を含んでいてもよい。
Figure 0007243093000008
一般式(1-m)において、X、Y、nの定義及び好ましい例は、一般式(1)のX、Y、nの定義及び好ましい例と同様である。
高次構造形成の観点からは、一般式(1-m)で表されるエポキシ化合物は、下記一般式(2-m)で表されるエポキシ化合物であることが好ましい。
Figure 0007243093000009
一般式(2-m)において、X、Y及びnの定義及び好ましい例は、一般式(1-m)におけるX、Y及びnの定義及び好ましい例と同様である。
一般式(1-m)で表されるエポキシ化合物は、下記一般式(3-m)で表されるエポキシ化合物であることがより好ましい。
Figure 0007243093000010
一般式(3-m)において、R~Rの定義及び好ましい例は、一般式(3)のR~Rの定義及び好ましい例と同様である。
第一のエポキシ化合物は、三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物(以下、「メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物」とも称する)と、この化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物とを反応してなる化合物(以下、「特定エポキシ化合物(A)」とも称する)を含んでいてもよい。これにより、エポキシ樹脂の流動性が向上する傾向にある。
メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、この化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物とを反応させる方法は、特に制限されない。具体的には、例えば、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、この化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物と、必要に応じて用いる反応触媒とを溶媒中に溶解し、加熱しながら撹拌して特定エポキシ化合物(A)を合成してもよい。
あるいは、例えば、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、この化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物とを、反応触媒と溶媒を用いずに混合し、加熱しながら撹拌して特定エポキシ化合物(A)を合成してもよい。
溶媒は、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、この化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物とを溶解でき、かつ両化合物が反応するのに必要な温度にまで加温できる溶媒であれば、特に制限されない。具体的には、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチルピロリドン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
溶媒の量は、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、この化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物と、必要に応じて用いる反応触媒とを反応温度において溶解できる量であれば特に制限されない。反応前の原料の種類、溶媒の種類等によって溶解性が異なるものの、例えば、仕込み固形分濃度が20質量%~60質量%となる量であれば、反応後の溶液の粘度が好ましい範囲となる傾向にある。
前述の芳香族化合物と反応するメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物としては、前述の一般式(1-m)で表される化合物、一般式(2-m)で表される化合物、一般式(3-m)で表される化合物等であってもよい。
メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物の種類は、特に制限されない。硬化物中にスメクチック構造を形成する観点からは、1つのベンゼン環に2つの水酸基が結合した構造を有するジヒドロキシベンゼン化合物、1つのベンゼン環に2つのアミノ基が結合した構造を有するジアミノベンゼン化合物、ビフェニル構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つの水酸基が結合した構造を有するジヒドロキシビフェニル化合物、ビフェニル構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つのアミノ基が結合した構造を有するジアミノビフェニル化合物、1つのナフタレン環に2つの水酸基が結合した構造を有するジヒドロキシナフタレン化合物及び1つのナフタレン環に2つのアミノ基が結合した構造を有するジアミノナフタレン化合物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、特定芳香族化合物とも称する)であることが好ましい。
ジヒドロキシベンゼン化合物としては、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、これらの誘導体等が挙げられる。
ジアミノベンゼン化合物としては、1,2-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、これらの誘導体等が挙げられる。
ジヒドロキシビフェニル化合物としては、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、2,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、これらの誘導体等が挙げられる。
ジアミノビフェニル化合物としては、2,2’-ジアミノビフェニル、2,3’-ジアミノビフェニル、2,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノビフェニル、これらの誘導体等が挙げられる。
ジヒドロキシナフタレン化合物としては、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、これらの誘導体等が挙げられる。
ジアミノナフタレン化合物としては、1,2-ジアミノナフタレン、1,3-ジアミノナフタレン、1,4-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、1,6-ジアミノナフタレン、1,7-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,7-ジアミノナフタレン、これらの誘導体等が挙げられる。
特定芳香族化合物の誘導体としては、特定芳香族化合物のベンゼン環又はナフタレン環に炭素数1~8のアルキル基等の置換基が結合した化合物が挙げられる。特定芳香族化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
反応触媒の種類は特に限定されず、反応速度、反応温度、貯蔵安定性等の観点から適切なものを選択できる。具体的には、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。反応触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化物の耐熱性の観点からは、反応触媒としては有機リン化合物が好ましい。
有機リン化合物の好ましい例としては、有機ホスフィン化合物、有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物との錯体などが挙げられる。
有機ホスフィン化合物として具体的には、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等が挙げられる。
キノン化合物として具体的には、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等が挙げられる。
有機ボロン化合物として具体的には、テトラフェニルボレート、テトラ-p-トリルボレート、テトラ-n-ブチルボレート等が挙げられる。
反応触媒の量は、特に制限されない。反応速度及び貯蔵安定性の観点からは、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、この化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物との合計質量100質量部に対し、0.1質量部~1.5質量部であることが好ましく、0.2質量部~1質量部であることがより好ましい。
メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、この化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物とを反応させる場合、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物が全て反応していてもよく、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物の一部が反応せずに残存していてもよい。メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物の一部が反応せずに残存している場合、第一のエポキシ化合物が、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物及び特定エポキシ化合物(A)を含むことになる。
メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、この化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物とを反応させる場合、少量スケールであればフラスコ、大量スケールであれば合成釜等の反応容器を使用して行うことができる。具体的な合成方法は、例えば以下の通りである。
まず、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物を反応容器に投入し、必要に応じて溶媒を入れ、オイルバス又は熱媒により反応温度まで加温し、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物を溶解する。そこにメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物を投入し、次いで必要に応じて反応触媒を投入し、反応を開始させる。次いで、必要に応じて減圧下で溶媒を留去することで、特定エポキシ化合物(A)を含むエポキシ樹脂が得られる。
反応温度は、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物のエポキシ基と、この化合物のエポキシ基と反応しうる官能基との反応が進行する温度であれば特に制限されず、例えば100℃~180℃の範囲であることが好ましく、100℃~150℃の範囲であることがより好ましい。反応温度を100℃以上とすることで、反応が完結するまでの時間をより短くできる傾向にある。一方、反応温度を180℃以下とすることで、ゲル化する可能性を低減できる傾向にある。
特定エポキシ化合物(A)を合成する場合、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、この化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物の配合比は、特に制限されない。例えば、エポキシ基の当量数(A)と、エポキシ基と反応しうる官能基の当量数(B)との比(A:B)が10:10~10:0.01の範囲となる配合比としてもよい。硬化物の破壊靱性及び耐熱性の観点からは、A:Bが10:5~10:0.1の範囲となる配合比が好ましい。
エポキシ樹脂の取り扱い性の観点からは、エポキシ基の当量数(A)と、エポキシ基と反応しうる官能基の当量数(B)との比(A:B)が10:1.0~10:3.0の範囲となる配合比が好ましく、10:1.2~10:2.5の範囲となる配合比がより好ましく、10:1.3~10:1.8の範囲となる配合比がさらに好ましい。
特定エポキシ化合物(A)の構造は、例えば、合成に使用したメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、この化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物との反応より得られると推定される特定エポキシ化合物(A)の分子量と、UV及びマススペクトル検出器を備える液体クロマトグラフを用いて実施される液体クロマトグラフィーにより求めた目的化合物の分子量とを照合させることで決定することができる。
液体クロマトグラフィーは、例えば、株式会社日立製作所の「LaChrom II C18」を分析用カラムとして使用し、グラジエント法を用いて、溶離液の混合比(体積基準)をアセトニトリル/テトラヒドロフラン/10mmol/l酢酸アンモニウム水溶液=20/5/75からアセトニトリル/テトラヒドロフラン=80/20(開始から20分)を経てアセトニトリル/テトラヒドロフラン=50/50(開始から35分)と連続的に変化させて測定を行う。また、流速を1.0ml/minとして行う。UVスペクトル検出器では280nmの波長における吸光度を検出し、マススペクトル検出器ではイオン化電圧を2700Vとして検出する。
第一のエポキシ化合物は、三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物と、これらの化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物とを反応してなる化合物(以下、「特定エポキシ化合物(B)」とも称する)を含んでいてもよい。これにより、エポキシ樹脂の流動性が向上する傾向にある。
なお、特定エポキシ化合物(B)の合成に用いる、三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物並びに前述の芳香族化合物は、前述の特定エポキシ化合物(A)の合成に用いる、三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物並びに前述の芳香族化合物と同様であるため、その説明を省略する。また、特定エポキシ化合物(B)の好ましい合成条件は、特定エポキシ化合物(A)の好ましい合成条件と同様であるため、その説明を省略する。
三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物が有する三つの環を含む縮合環構造としては、アントラセン構造、フェナントレン構造、アセナフテン構造等が挙げられる。中でも、アントラセン構造が好ましい。
アントラセン構造としては、下記の一般式(4)で表される構造であることが好ましい。
Figure 0007243093000011
一般式(4)中、Zはそれぞれ独立に、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基、炭素数1~8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。pは0~8の整数を示す。*は隣接する原子との結合部位を表す。
一般式(4)中に示されている2つのエーテル基(「-O-」の部分、Zは除く)は、それぞれ異なるベンゼン環に結合していてもよく、同じベンゼン環に結合していてもよい。また、pは0~3であることが好ましく、0であることがより好ましい。
アントラセン構造としては、下記の一般式(5)で表される構造であることがより好ましい。
Figure 0007243093000012
一般式(5)において、Z、pの定義及び好ましい例は、一般式(4)のZ、pの定義及び好ましい例と同様である。*は隣接する原子との結合部位を表す。
アントラセン構造及びエポキシ基を有する化合物としては、下記一般式(4-A)で表されるエポキシ化合物であることが好ましい。
Figure 0007243093000013
一般式(4-A)において、Z、pの定義及び好ましい例は、一般式(4)のZ、pの定義及び好ましい例と同様である。
アントラセン構造及びエポキシ基を有する化合物としては、下記一般式(4-B)で表されるエポキシ化合物であることがより好ましい。
Figure 0007243093000014
一般式(4-B)において、Z、pの定義及び好ましい例は、一般式(4)のZ、pの定義及び好ましい例と同様である。
特定エポキシ化合物(B)を合成する場合、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物並びに三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物の合計と、これらの化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物の配合比は、特に制限されない。例えば、エポキシ基の合計当量数(A’)と、エポキシ基と反応しうる官能基の当量数(B)との比(A’:B)が10:10~10:0.01の範囲となる配合比としてもよい。硬化物の破壊靱性及び耐熱性の観点からは、A’:Bが10:5~10:0.1の範囲となる配合比が好ましい。
エポキシ樹脂の取り扱い性の観点からは、エポキシ基の合計当量数(A’)と、エポキシ基と反応しうる官能基の当量数(B)との比(A’:B)が10:1.0~10:3.0の範囲となる配合比が好ましく、10:1.2~10:2.5の範囲となる配合比がより好ましく、10:1.3~10:1.8の範囲となる配合比がさらに好ましい。
特定エポキシ化合物(B)を合成する場合、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物の質量比は特に制限されない。弾性、靱性及び耐熱性のバランスをとる観点から、質量比(メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物:三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物)は、10:1~1:1であることが好ましく、8:1~1:1であることがより好ましく、5:1~1:1であることがさらに好ましい。
メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物と、これらの化合物のエポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物とを反応させる場合、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物及び三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物が全て反応していてもよく、これらの一部が反応せずに残存していてもよい。メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物の一部が反応せずに残存している場合、第一のエポキシ化合物が、メソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物及び特定エポキシ化合物(B)を含むことになる。三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物の一部が反応せずに残存している場合、三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物は後述する第二のエポキシ化合物としてエポキシ樹脂中に含まれていることになる。なお、三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物と、前述の芳香族化合物とが反応し、かつメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物は反応せずに合成された化合物は、後述する第二のエポキシ化合物としてエポキシ樹脂中に含まれていることになる。
本開示のエポキシ樹脂に含まれ得る、特定エポキシ化合物(A)及び特定エポキシ化合物(B)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されない。低粘度化の観点からは、特定エポキシ化合物(A)及び特定エポキシ化合物(B)の重量平均分子量(Mw)は、それぞれ500~5000の範囲から選択されることが好ましく、700~3000の範囲から選択されることがより好ましく、800~1300の範囲から選択されることがさらに好ましい。
本開示において、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)は液体クロマトグラフィーにより得られる値とする。
液体クロマトグラフィーは、試料濃度を0.5質量%とし、移動相にテトラヒドロフランを用い、流速を1.0ml/minとして行う。検量線はポリスチレン標準サンプルを用いて作成し、それを用いてポリスチレン換算値でMn及びMwを測定する。
測定は、例えば、株式会社日立製作所の高速液体クロマトグラフ「L6000」と、株式会社島津製作所のデータ解析装置「C-R4A」を用いて行うことができる。カラムとしては、例えば、東ソー株式会社のGPCカラムである「G2000HXL」及び「G3000HXL」を用いることができる。
(第二のエポキシ化合物)
第二のエポキシ化合物は、三つの環を含む縮合環構造及び1つ以上のエポキシ基を有する化合物である。第二のエポキシ化合物は、この縮合環構造を1つ含んでいてもよく、2つ以上含んでいてもよい。
第二のエポキシ化合物は、1種を単独であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
第二のエポキシ化合物は、ゲル化する可能性を低減する観点から、2つのエポキシ基を有する化合物であることが好ましい。
第二のエポキシ化合物のエポキシ当量は、特に制限されない。第二のエポキシ化合物(好ましくは三つの環を含む縮合環構造を1つ有する第二のエポキシ化合物)のエポキシ当量は、架橋密度向上による硬化物の高弾性化を図る観点から、140g/eq~200g/eqであることが好ましく、150g/eq~190g/eqであることがより好ましい。本開示において、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、過塩素酸滴定法により測定する。
第二のエポキシ化合物としては、前述の一般式(4-A)で表される化合物を含むことが好ましく、前述の一般式(4-B)で表される化合物を含むことがより好ましい。
第一のエポキシ化合物と第二のエポキシ化合物との質量比は特に制限されない。弾性、靱性及び耐熱性のバランスをとる観点から、(第一のエポキシ化合物:第二のエポキシ化合物)は、10:1~1:1であることが好ましく、8:1~1:1であることがより好ましく、5:1~1:1であることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂が第一のエポキシ化合物及び第二のエポキシ化合物以外のエポキシ化合物を含む場合、第一のエポキシ化合物と第二のエポキシ化合物の合計含有率は、特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂全体の70質量%~99質量%であることが好ましく、80質量%~99質量%であることがより好ましく、90質量%~99質量%であることがさらに好ましい。
(エポキシ樹脂の物性)
以下、本開示のエポキシ樹脂の物性について説明する。
[重量平均分子量]
本開示のエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されない。低粘度化の観点からは、エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は500~5000の範囲から選択されることが好ましく、700~3000の範囲から選択されることがより好ましい。
[エポキシ当量]
本開示のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に制限されない。エポキシ樹脂の流動性と硬化物の熱伝導性を両立する観点からは、245g/eq~360g/eqであることが好ましく、250g/eq~355g/eqであることがより好ましく、260g/eq~350g/eqであることがさらに好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量が245g/eq以上であれば、エポキシ樹脂の結晶性が高くなりすぎないためエポキシ樹脂の流動性が低下しにくい傾向にある。一方、エポキシ樹脂のエポキシ当量が360g/eq以下であれば、エポキシ樹脂の架橋密度が低下しにくいため、硬化物の熱伝導率が高くなる傾向にある。
[粘度]
本開示のエポキシ樹脂の粘度は、特に制限されず、エポキシ樹脂の用途に応じて選択できる。取り扱い性の観点から、エポキシ樹脂の60℃における粘度が200Pa・s未満であることが好ましい。
エポキシ樹脂の60℃における粘度は、動的粘弾性測定装置(例えば、アントンパール社のレオメータMCR301)を用い、エポキシ樹脂の温度を150℃から30℃まで降下させる降温過程と、エポキシ樹脂混合物の温度を30℃から150℃まで上昇させる昇温過程をこの順に実施し、昇温過程での60℃における粘度をエポキシ樹脂の60℃における粘度(Pa・s)とすればよい。測定条件は、振動数:1Hz、プレート:φ12mm、ギャップ:0.2mm、降温過程における降温速度:2℃/min、昇温過程における昇温速度:2℃/minとする。
[GPCピーク面積比]
本開示のエポキシ樹脂において、液体クロマトグラフィーにより得られる特定エポキシ化合物(A)及び特定エポキシ化合物(B)の合計割合(以下、「GPCピーク面積比」とも称する)は、第一のエポキシ化合物全体の50%以上であってもよい。これにより、昇温時に粘度が下がりやすく、エポキシ樹脂の取り扱い性に優れる傾向にある。
GPCピーク面積比は、液体クロマトグラフにより得られるチャートにおける、第一のエポキシ化合物に由来するピークの合計面積に占める特定エポキシ化合物(A)及び特定エポキシ化合物(B)に由来するピークの合計面積の割合(%)である。具体的には、測定対象のエポキシ樹脂の280nmの波長における吸光度を検出し、第一のエポキシ化合物に相当するピークの合計面積と、特定エポキシ化合物(A)及び特定エポキシ化合物(B)に相当するピークの合計面積とから、下記式により算出する。
特定エポキシ化合物(A)及び特定エポキシ化合物(B)に由来するピークの合計面積の割合(%)=(特定エポキシ化合物(A)及び特定エポキシ化合物(B)に由来するピークの合計面積/第一のエポキシ化合物に由来するピークの合計面積)×100
液体クロマトグラフィーは、試料濃度を0.5質量%とし、移動相にテトラヒドロフランを用い、流速を1.0ml/minとして行う。測定は、例えば、株式会社日立製作所の高速液体クロマトグラフ「L6000」と、株式会社島津製作所のデータ解析装置「C-R4A」を用いて行うことができる。カラムとしては、例えば、東ソー株式会社のGPCカラムである「G2000HXL」及び「G3000HXL」を用いることができる。
取り扱い性向上の観点からは、GPCピーク面積比は、第一のエポキシ化合物全体の51%以上であってもよく、52%以上であってもよい。
本開示のエポキシ樹脂において、液体クロマトグラフィーにより得られるメソゲン構造を有するエポキシ化合物の単量体の割合は、第一のエポキシ化合物全体の50%以下であってもよく、49%以下であってもよく、48%以下であってもよい。この割合は、前述のGPCピーク面積比と同様の方法で求めることができる。
〔第二実施形態〕
次に、第二実施形態のエポキシ樹脂について説明する。本開示のエポキシ樹脂は、三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物と、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル及びジヒドロキシナフタレンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物とが反応してなる化合物(前述の特定エポキシ樹脂(B)と同様の構成)を含む。本開示のエポキシ樹脂を用いることで弾性、靱性及び耐熱性が良好なエポキシ樹脂硬化物が得られる。なお、第二実施形態にて用いる三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物は、第一実施形態にて用いる三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と同様であり、前述の一般式(1-m)で表される化合物、一般式(2-m)で表される化合物、一般式(3-m)で表される化合物等であってもよい。また、第二実施形態にて用いる三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物としては、第一実施形態にて用いる三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物と同様であり、アントラセン構造及びエポキシ基を有する化合物として前述の一般式(4-A)で表される化合物、一般式(4-B)で表される化合物等を用いてもよい。
<エポキシ樹脂組成物>
本開示のエポキシ樹脂組成物は、上述したエポキシ樹脂と、硬化剤と、を含む。
(硬化剤)
硬化剤は、エポキシ樹脂と硬化反応を生じることができる化合物であれば、特に制限されない。硬化剤の具体例としては、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂組成物の硬化物中に高次構造を形成する観点からは、硬化剤としては、アミン硬化剤又はフェノール硬化剤が好ましく、アミン硬化剤がより好ましい。アミン硬化剤としては、芳香環及びアミノ基を有するアミン硬化剤が好ましく、アミノ基が芳香環に直接結合しているアミン硬化剤がより好ましく、2つ以上のアミノ基が芳香環に直接結合しているアミン硬化剤がさらに好ましい。芳香環としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。
アミン硬化剤として具体的には、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメトキシビフェニル、4,4’-ジアミノフェニルベンゾエート、1,5-ジアミノナフタレン、1,3-ジアミノナフタレン、1,4-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、1,3-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、トリメチレン-ビス-4-アミノベンゾアート等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物の硬化物中にスメクチック構造を形成する観点からは3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,3-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びトリメチレン-ビス-4-アミノベンゾアートが好ましく、低吸水率及び高破壊靱性の硬化物を得る観点からは3,3’-ジアミノジフェニルスルホンがより好ましい。
フェノール硬化剤としては、低分子フェノール化合物、及び低分子フェノール化合物をメチレン鎖等で連結してノボラック化したフェノールノボラック樹脂が挙げられる。低分子フェノール化合物としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等の単官能フェノール化合物、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の2官能フェノール化合物、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン等の3官能フェノール化合物などが挙げられる。
エポキシ樹脂組成物における硬化剤の含有量は特に制限されない。硬化反応の効率性の観点からは、エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤の官能基の当量数(アミン硬化剤の場合は活性水素の当量数)と、エポキシ樹脂のエポキシ基の当量数との比(官能基の当量数/エポキシ基の当量数)が0.3~3.0となる量であることが好ましく、0.5~2.0となる量であることがより好ましい。
(その他の成分)
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じてエポキシ樹脂と硬化剤以外のその他の成分を含んでもよい。例えば、硬化触媒、フィラー等を含んでもよい。硬化触媒の具体例としては、多量体の合成に使用しうる反応触媒として例示した化合物が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物は、硬化物としたときの破壊靱性値が0.8MPa・m1/2以上であることが好ましく、0.9MPa・m1/2以上であることがより好ましく、1.0MPa・m1/2以上であることがさらに好ましい。
硬化物の破壊靱性値は、後述する実施例に記載された方法で測定される。
エポキシ樹脂組成物は、硬化物としたときの曲げ弾性率が2.7GPa以上であることが好ましく、2.8GPa以上であることがより好ましく、2.9GPa以上であることがさらに好ましい。
硬化物の曲げ弾性率は、後述する実施例に記載された方法で測定される。
エポキシ樹脂組成物は、硬化物としたときのガラス転移温度が160℃以上であることが好ましく、165℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることがさらに好ましい。
硬化物のガラス転移温度は、後述する実施例に記載された方法で測定される。
(用途)
エポキシ樹脂組成物の用途は特に制限されず、粘度が低く、流動性に優れていることが要求される加工方法にも好適に用いることができる。例えば、繊維間の空隙にエポキシ樹脂組成物を加温しながら含浸する工程を伴うFRPの製造、エポキシ樹脂組成物を加温しながらスキージ等で広げる工程を伴うシート状物の製造などにも好適に用いることができる。
本開示のエポキシ樹脂組成物は、硬化物中のボイドの発生を抑制する観点から粘度低下のための溶剤の添加を省略又は低減することが望まれる加工方法(例えば、航空機、宇宙船等に用いるFRPの製造)にも好適に用いることができる。
<エポキシ樹脂硬化物及び複合材料>
本開示のエポキシ樹脂硬化物は、本開示のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物である。本開示の複合材料は、本開示のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む。
複合材料に含まれる強化材の材質は特に制限されず、複合材料の用途等に応じて選択できる。強化材として具体的には、炭素材料、ガラス、芳香族ポリアミド系樹脂(例えば、ケブラー(登録商標))、超高分子量ポリエチレン、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、マイカ、シリコン等が挙げられる。強化材の形状は特に制限されず、繊維状、粒子状(フィラー)等が挙げられる。複合材料の強度の観点からは、強化材は炭素材料であることが好ましく、炭素繊維であることがより好ましい。複合材料に含まれる強化材は、1種でも2種以上であってもよい。
複合材料の形態は、特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂硬化物を含む少なくとも1つの硬化物含有層と、強化材を含む少なくとも1つの強化材含有層とが積層された構造を有するものであってもよい。
以下、実施例にもとづいて上記実施形態をさらに具体的に説明するが、上記実施形態はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
〔実施例1〕
(エポキシ樹脂1の合成)
500mlの三口フラスコに、第一のエポキシ化合物として(4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4-(2,3-エポキシプロポキシ)ベンゾエート、下記構造式(1)の化合物)を50質量部加え、かつ三つの環を含む縮合環構造を有するエポキシ化合物としてYX8800(三菱ケミカル株式会社)を64質量部加えた。さらに、三口フラスコに合成溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を80質量部添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを120℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。エポキシ化合物が溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、4,4-ビフェノールを8質量部、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.5質量部添加し、120℃のオイルバスで加熱を継続した。3時間加熱を継続した後に、反応溶液からプロピレングリコールモノメチルエーテルを減圧留去し、残渣を室温(25℃)まで冷却することにより、エポキシ樹脂1を得た。
Figure 0007243093000015
次いで、得られたエポキシ樹脂1を50質量部、硬化剤として3,3’-ジアミノジフェニルスルホンを22質量部、ステンレスシャーレにそれぞれ量り取り、ホットプレートで180℃に加熱し、ステンレスシャーレ内のエポキシ樹脂組成物が溶融した後に、スパチュラで撹拌した。180℃で1時間加熱し、次いで常温(25℃)まで冷却した後にステンレスシャーレからエポキシ樹脂組成物を取り出し、恒温槽にて230℃で1時間加熱して硬化を完了させて、エポキシ樹脂硬化物を得た。このエポキシ樹脂硬化物を3.75mm×7.5mm×33mmの直方体に切り出し、破壊靱性評価用の試験片を作製した。さらに、エポキシ樹脂硬化物を2mm×0.5mm×40mmの短冊状に切り出し、ガラス転移温度評価用の試験片を作製し、エポキシ樹脂硬化物を2mm×5mm×40mmの短冊状に切り出し、曲げ弾性率評価用の試験片を作製した。
〔比較例1〕
500mlの三口フラスコに、上記構造式(1)の化合物を50質量部加え、そこに合成溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を80質量部添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを120℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。エポキシ化合物が溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、4,4-ビフェノールを10質量部、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.5質量部添加し、120℃のオイルバスで加熱を継続した。3時間加熱を継続した後に、反応溶液からプロピレングリコールモノメチルエーテルを減圧留去し、残渣を室温(25℃)まで冷却することにより、エポキシ樹脂2を得た。
次いで、得られたエポキシ樹脂2を50質量部、硬化剤として3,3’-ジアミノジフェニルスルホンを10質量部、ステンレスシャーレにそれぞれ量り取った。その後、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物を得て、各試験片を作製した。
〔比較例2〕
500mlの三口フラスコに、(4-{4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4-(2,3-エポキシプロポキシ)ベンゾエート、下記構造式(1)の化合物)を50質量部加え、さらに、三口フラスコに合成溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を80質量部添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを120℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。エポキシ化合物が溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、1,5-ジヒドロキシナフタレンを8質量部、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.5質量部添加し、120℃のオイルバスで加熱を継続した。3時間加熱を継続した後に、反応溶液からプロピレングリコールモノメチルエーテルを減圧留去し、残渣を室温(25℃)まで冷却することにより、エポキシ樹脂3を得た。
次いで、得られたエポキシ樹脂3を50質量部、硬化剤として3,3’-ジアミノジフェニルスルホンを10質量部、ステンレスシャーレにそれぞれ量り取った。その後、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物を得て、各試験片を作製した。
〔比較例3〕
500mlの三口フラスコに、上記構造式(1)の化合物を50質量部加え、かつエポキシ化合物としてjER630(三菱ケミカル株式会社、トリグリシジルアミノフェノール)を21質量部加えた。さらに、三口フラスコに合成溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を80質量部添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを120℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。エポキシ化合物が溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、4,4-ビフェノールを10質量部、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.5質量部添加し、120℃のオイルバスで加熱を継続した。しかし、得られたエポキシ樹脂はゲル化していたため、各物性の評価ができなかった。
[破壊靱性値の測定]
エポキシ樹脂硬化物の破壊靱性の指標として、破壊靱性値(MPa・m1/2)を用いた。試験片の破壊靱性値は、ASTM D5045に基づいて3点曲げ測定を行って算出した。評価装置には、インストロン5948(インストロン社)を用いた。
[ガラス転移温度の測定]
エポキシ樹脂硬化物の耐熱性の指標として、ガラス転移温度(Tg)を用いた。試験片のガラス転移温度は、引張りモードによる動的粘弾性測定を行って算出した。測定条件は、周波数10Hz、昇温速度5℃/分、ひずみ0.1%とした。得られた温度‐tanδ関係図において、tanδが最大となる温度を、ガラス転移温度とみなした。評価装置には、RSA-G2(ティー・エイ・インスツルメント社)を用いた。
[曲げ弾性率の測定]
エポキシ樹脂硬化物の弾性の指標として、25℃での曲げ弾性率(GPa)を求めた。試験片の曲げ弾性率は、JIS K 7171(2016)に基づいて3点曲げ測定を行って算出した。評価装置には、テンシロン(株式会社エー・アンド・デイ)を用いた。
実施例1、比較例1及び2のエポキシ樹脂硬化物の破壊靱性値、ガラス転移温度(Tg)及び曲げ弾性率を表1に示す。
Figure 0007243093000016
表1に示すように、実施例1のエポキシ樹脂硬化物は曲げ弾性率、破壊靱性値及びガラス転移温度がいずれも比較的高く、弾性、靱性及び耐熱性に優れていた。

Claims (10)

  1. 三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造を有する第一のエポキシ化合物と、三つの環を含む縮合環構造を有する第二のエポキシ化合物とを含み、
    前記第一のエポキシ化合物は、三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル及びジヒドロキシナフタレンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物を含む前記エポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物と、を含む組成物(但し、前記芳香族化合物以外に、前記エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物を含まない)が反応してなる化合物を含み、
    前記ジヒドロキシベンゼンはカテコール、レゾルシノール及びヒドロキノンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物であり、
    前記ジヒドロキシビフェニルは2,2’-ジヒドロキシビフェニル、2,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル及び4,4’-ジヒドロキシビフェニルからなる群より選択される少なくとも一つの化合物であり、
    前記三つの環を含む縮合環構造は、アントラセン構造、フェナントレン構造又はアセナフテン構造であり、
    硬化していない状態であるエポキシ樹脂。
  2. 三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造を有する第一のエポキシ化合物と、三つの環を含む縮合環構造を有する第二のエポキシ化合物とを含み、
    前記第一のエポキシ化合物は、三つの環を含む縮合環構造以外のメソゲン構造及びエポキシ基を有する化合物と、三つの環を含む縮合環構造及びエポキシ基を有する化合物と、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル及びジヒドロキシナフタレンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物を含む前記エポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物と、を含む組成物(但し、前記芳香族化合物以外に、前記エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物を含まない)が反応してなる化合物を含み、
    前記ジヒドロキシベンゼンはカテコール、レゾルシノール及びヒドロキノンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物であり、
    前記ジヒドロキシビフェニルは2,2’-ジヒドロキシビフェニル、2,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル及び4,4’-ジヒドロキシビフェニルからなる群より選択される少なくとも一つの化合物であり、
    前記三つの環を含む縮合環構造は、アントラセン構造、フェナントレン構造又はアセナフテン構造であり、
    硬化していない状態であるエポキシ樹脂。
  3. 前記第一のエポキシ化合物が下記一般式(1-m)で表されるエポキシ化合物を含む請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂。
    Figure 0007243093000017

    [一般式(1-m)において、Xは下記2価の基からなる群(I)より選択される少なくとも1種を含む連結基を示す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基、炭素数1~8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nはそれぞれ独立に0~4の整数を示す。]
    Figure 0007243093000018

    [2価の基からなる群(I)において、Yはそれぞれ独立に、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基、炭素数1~8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nは各々独立に0~4の整数を示し、kは0~7の整数を示し、mは0~8の整数を示し、lは0~12の整数を示す。]
  4. 前記第一のエポキシ化合物と前記第二のエポキシ化合物との質量比(第一のエポキシ化合物:第二のエポキシ化合物)が10:1~1:1である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂。
  5. 前記第二のエポキシ化合物は、2つのエポキシ基を有する化合物である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂。
  6. 請求項1~請求項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂と、硬化剤をさらに含むエポキシ樹脂組成物。
  7. 前記硬化剤は、芳香環及びアミノ基を有するアミン硬化剤を含む請求項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  8. 前記硬化剤は、アミノ基が芳香環に直接結合しているアミン硬化剤を含む請求項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. 請求項~請求項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物である、エポキシ樹脂硬化物。
  10. 請求項に記載のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む複合材料。
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