JP2019065126A - エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物及び複合材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性と弾性率に優れる硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物を用いて得られるエポキシ樹脂硬化物及び複合材料が提供される。【解決手段】エポキシ樹脂としてメソゲン構造を有するエポキシ化合物と、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンと、を含むエポキシ樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物及び複合材料に関する。
エポキシ樹脂は、その優れた耐熱性を活かして種々の用途に用いられている。近年では、エポキシ樹脂を用いたパワーデバイスの実使用温度の高温化等を受けて、熱伝導性に優れるエポキシ樹脂の検討が進められている。
分子内にメソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂(以下、メソゲン含有エポキシ樹脂ともいう)は、熱伝導性と破壊じん性に優れることが知られている。一方、エポキシ樹脂の破壊じん性は一般に耐熱性と背反する関係にある。このため、優れた耐熱性と破壊じん性を併せ持つメソゲン含有エポキシ樹脂の検討が進められている。
メソゲン含有エポキシ樹脂の耐熱性を向上する方法としては、芳香環を有するジアミン化合物(芳香族ジアミン化合物)を硬化剤として用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
メソゲン含有エポキシ樹脂の硬化剤として、特許文献1に記載の実施例で用いられている芳香族ジアミン化合物(4,4−ジアミノジフェニルスルホン)を用いた場合、得られる硬化物はガラス転移温度が高く耐熱性に優れるものの、弾性率に向上の余地があることが本発明者らの検討により明らかとなった。
本発明は上記事情にかんがみ、耐熱性と弾性率に優れる硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物を用いて得られるエポキシ樹脂硬化物及び複合材料を提供することを課題とする。
本発明は上記事情にかんがみ、耐熱性と弾性率に優れる硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物を用いて得られるエポキシ樹脂硬化物及び複合材料を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>エポキシ樹脂としてメソゲン構造を有するエポキシ化合物と、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンと、を含むエポキシ樹脂組成物。
<2>前記エポキシ化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有するエポキシ化合物を含む、<1>に記載のエポキシ樹脂組成物。
<1>エポキシ樹脂としてメソゲン構造を有するエポキシ化合物と、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンと、を含むエポキシ樹脂組成物。
<2>前記エポキシ化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有するエポキシ化合物を含む、<1>に記載のエポキシ樹脂組成物。
[一般式(I)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。]
<3>前記エポキシ化合物が、2つの前記一般式(I)で表される構造の間に1つの2価のビフェニル基が配置された状態の構造を有する、<1>又は<2>に記載のエポキシ樹脂組成物。
<4>前記エポキシ化合物が、下記一般式(II−A)及び(II−B)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを有するエポキシ化合物を含む、<1>〜<3>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<3>前記エポキシ化合物が、2つの前記一般式(I)で表される構造の間に1つの2価のビフェニル基が配置された状態の構造を有する、<1>又は<2>に記載のエポキシ樹脂組成物。
<4>前記エポキシ化合物が、下記一般式(II−A)及び(II−B)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを有するエポキシ化合物を含む、<1>〜<3>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
[一般式(II−A)及び(II−B)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R5及びR6はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を示す。n及びmはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示す。Xはそれぞれ独立に、−0−又は−NH−を表す。]
<5>硬化物としたときの50℃時点での貯蔵弾性率が2.0GPa以上である、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<6>硬化物としたときのガラス転移温度が180℃以上である、<1>〜<5>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<7>硬化物としたときにスメクチック構造が形成される、<1>〜<6>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<8><1>〜<7>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物である、エポキシ樹脂硬化物。
<9><8>に記載のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む複合材料。
<5>硬化物としたときの50℃時点での貯蔵弾性率が2.0GPa以上である、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<6>硬化物としたときのガラス転移温度が180℃以上である、<1>〜<5>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<7>硬化物としたときにスメクチック構造が形成される、<1>〜<6>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<8><1>〜<7>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物である、エポキシ樹脂硬化物。
<9><8>に記載のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む複合材料。
本発明によれば、耐熱性と弾性率に優れる硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物を用いて得られるエポキシ樹脂硬化物及び複合材料が提供される。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「エポキシ化合物」とは、分子中にエポキシ基を有する化合物を意味する。「エポキシ樹脂」とは、複数のエポキシ化合物を集合体として捉える概念であって硬化していない状態のものを意味する。「エポキシ樹脂組成物」とは、エポキシ樹脂と硬化剤とを少なくとも含むものであって硬化していない状態のものを意味する。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「エポキシ化合物」とは、分子中にエポキシ基を有する化合物を意味する。「エポキシ樹脂」とは、複数のエポキシ化合物を集合体として捉える概念であって硬化していない状態のものを意味する。「エポキシ樹脂組成物」とは、エポキシ樹脂と硬化剤とを少なくとも含むものであって硬化していない状態のものを意味する。
<エポキシ樹脂組成物>
本開示のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂としてメソゲン構造を有するエポキシ化合物と、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンと、を含む。
本開示のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂としてメソゲン構造を有するエポキシ化合物と、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンと、を含む。
上記構成を有するエポキシ樹脂組成物から得られる硬化物は、耐熱性と弾性率とに優れている。この理由は必ずしも明らかではないが、硬化剤として2種の芳香族ジアミン化合物を用いることで、それぞれの芳香族ジアミン化合物を単独で用いた場合に得られる硬化物の特性を併せ持つ硬化物が得られると考えられる。
具体的には、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを硬化剤として用いて得られる硬化物は耐熱性に優れる傾向にあり、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンを硬化剤として用いて得られる硬化物は弾性率に優れる傾向にあるため、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホンと4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを併用することで、耐熱性と弾性率の向上の両立が達成されると考えられる。
さらに、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホンのみを用いる場合に比べ、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンの一部を4,4’−ジアミノジフェニルスルホンに置き換えた場合は得られる硬化物の弾性率がある程度低下することが上記の傾向より予測されたが、これに反して後者の弾性率は前者と同等の水準が維持され、かつ耐熱性が向上するという結果が後述する実施例に示された。このような結果となった理由は明らかではないが、硬化剤の有する特定の構造がエポキシ化合物と反応して形成されるスメクチック構造の状態に何らかの影響を与え、優れた弾性率と耐熱性の両立に寄与していると推測される。
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂としてメソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物を含んでもよく、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホン以外の化合物を含んでもよい。得られる硬化物の弾性率と耐熱性の向上の観点からは、エポキシ樹脂全体に占めるメソゲン構造を有するエポキシ化合物の割合が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。また、硬化剤全体に占める3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンの割合が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
硬化剤として含まれる3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンの割合は、特に制限されない。得られる硬化物の弾性率と耐熱性の向上の観点からは、両者の質量基準の割合(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン:4,4’−ジアミノジフェニルスルホン)が5:95〜95:5であることが好ましく、20:80〜80:20であることがより好ましく、35:65〜65:35であることがさらに好ましい。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂組成物がエポキシ樹脂として含むメソゲン構造を有するエポキシ化合物(以下、メソゲン含有エポキシ化合物とも称する)が有するメソゲン構造とは、これを有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂の硬化物が液晶性を発現する可能性のある構造を意味する。具体的には、ビフェニル構造、フェニルベンゾエート構造、シクロヘキシルベンゾエート構造、アゾベンゼン構造、スチルベン構造、ターフェニル構造、アントラセン構造、これらの誘導体、これらのメソゲン構造の2つ以上が結合基を介して結合した構造などが挙げられる。
エポキシ樹脂組成物がエポキシ樹脂として含むメソゲン構造を有するエポキシ化合物(以下、メソゲン含有エポキシ化合物とも称する)が有するメソゲン構造とは、これを有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂の硬化物が液晶性を発現する可能性のある構造を意味する。具体的には、ビフェニル構造、フェニルベンゾエート構造、シクロヘキシルベンゾエート構造、アゾベンゼン構造、スチルベン構造、ターフェニル構造、アントラセン構造、これらの誘導体、これらのメソゲン構造の2つ以上が結合基を介して結合した構造などが挙げられる。
メソゲン含有エポキシ化合物は、エポキシ樹脂組成物の硬化物中に高次構造を形成する。ここで、高次構造とは、その構成要素が配列してミクロな秩序構造を形成した高次構造体を含む構造を意味し、例えば結晶相及び液晶相が相当する。このような高次構造体の存在の有無は、偏光顕微鏡によって判断することができる。すなわち、クロスニコル状態での観察において、偏光解消による干渉縞が見られることで判別可能である。この高次構造体は、通常はエポキシ樹脂組成物の硬化物中に島状に存在してドメイン構造を形成しており、その島の一つが一つの高次構造体に対応する。この高次構造体の構成要素自体は、一般には共有結合により形成されている。
硬化した状態で形成される高次構造としては、ネマチック構造とスメクチック構造とが挙げられる。ネマチック構造とスメクチック構造は、それぞれ液晶構造の一種である。ネマチック構造は分子長軸が一様な方向を向いており、配向秩序のみをもつ液晶構造である。これに対し、スメクチック構造は配向秩序に加えて一次元の位置の秩序を持ち、層構造を有する液晶構造である。秩序性はネマチック構造よりもスメクチック構造の方が高い。従って、硬化物の熱伝導性及び破壊靭性の観点からは、スメクチック構造が形成されることがより好ましい。
硬化物中にスメクチック構造が形成されているか否かは、硬化物のX線回折測定により判断できる。X線回折測定は、例えば、株式会社リガク製のX線回折装置を用いて行うことができる。CuKα1線を用い、管電圧40kV、管電流20mA、2θ=2°〜30°の範囲で測定すると、スメクチック構造を有している硬化物であれば、2θ=2°〜10°の範囲に回折ピークが現れる。
硬化物中にスメクチックを形成する観点からは、メソゲン含有エポキシ化合物は、下記一般式(I)で表される構造を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。
一般式(I)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。
R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であることが好
ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。また、R1〜R4のうちの2個〜4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個すべてが水素原子であることがさらに好ましい。R1〜R4のいずれかが炭素数1〜3のアルキル基である場合、R1及びR4の少なくとも一方が炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であることが好
ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。また、R1〜R4のうちの2個〜4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個すべてが水素原子であることがさらに好ましい。R1〜R4のいずれかが炭素数1〜3のアルキル基である場合、R1及びR4の少なくとも一方が炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
一般式(I)で表される構造を有するメソゲン含有エポキシ化合物はメソゲン構造を有するため、硬化剤と反応して得られる硬化物中に高次構造が形成される。また、形成される高次構造はスメクチック構造となる。
一般式(I)で表される構造を有するメソゲン含有エポキシ化合物は、2つ以上の一般式(I)で表される構造と、1つ以上の2価のビフェニル基と、を有するエポキシ化合物(以下、特定エポキシ化合物ともいう)であることがより好ましい。
エポキシ樹脂組成物に含まれるメソゲン含有エポキシ化合物が特定エポキシ化合物の状態であると、作業時の温度条件下で結晶化しにくく粘度が低いため、取り扱い性に優れる傾向にある。
エポキシ樹脂組成物に含まれるメソゲン含有エポキシ化合物が特定エポキシ化合物の状態であると、作業時の温度条件下で結晶化しにくく粘度が低いため、取り扱い性に優れる傾向にある。
特定エポキシ化合物は、2つ以上の一般式(I)で表される構造と、1つ以上の2価のビフェニル基と、を有するものであれば、その構造は特に制限されない。
好ましくは、特定エポキシ化合物は、2つの一般式(I)で表される構造の間に1つの2価のビフェニル基が配置された状態の構造を有する。
2価のビフェニル基としては、下記一般式(A)で表される構造が挙げられる。
好ましくは、特定エポキシ化合物は、2つの一般式(I)で表される構造の間に1つの2価のビフェニル基が配置された状態の構造を有する。
2価のビフェニル基としては、下記一般式(A)で表される構造が挙げられる。
一般式(A)において、*は隣接する原子との結合位置を表す。隣接する原子としては酸素原子及び窒素原子が挙げられる。R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を表す。n及びmはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
n及びmはそれぞれ独立に、0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
n及びmはそれぞれ独立に、0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
一般式(A)で表される構造の中でも、下記一般式(a)で表される構造が好ましい。このような構造を有する特定エポキシ化合物は、分子構造が直線的になりやすい。このため、分子のスタッキング性が高く、高次構造をより形成し易いと考えられる。
一般式(a)において、*、R1、R2、n及びmの定義及び好ましい例は一般式(A)の*、R1、R2、n及びmの定義及び好ましい例と同様である。
特定エポキシ化合物は、下記一般式(II−A)及び(II−B)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを有するエポキシ化合物であってもよい。
一般式(II−A)及び(II−B)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R5及びR6はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を示す。n及びmはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示す。Xはそれぞれ独立に、−0−又は−NH−を表す。
一般式(II−A)及び(II−B)におけるR1〜R4の具体例は、一般式(I)におけるR1〜R4の具体例と同様であり、その好ましい範囲も同様である。
一般式(II−A)及び(II−B)中、R5及びR6はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を表し、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
一般式(II−A)及び(II−B)中、n及びmはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示し、0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。つまり、一般式(II−A)及び(II−B)においてR5又はR6を付されたベンゼン環は、2個〜4個の水素原子を有することが好ましく、3個又は4個の水素原子を有することがより好ましく、4個の水素原子を有することがさらに好ましい。
高次構造形成の観点からは、一般式(II−A)及び(II−B)で表される構造を有するエポキシ化合物は、下記一般式(II−a)及び(II−b)で表される構造を有するエポキシ化合物であることが好ましい。
一般式(II−a)及び(II−b)において、R1〜R6、n、m及びXの定義及び好ましい例は一般式(II−A)及び(II−B)におけるR1〜R6、n、m及びXの定義及び好ましい例と同様である。
特定エポキシ化合物における一般式(I)で表される構造の数は、2以上であれば特に制限されない。低粘度化の観点からは、特定エポキシ化合物の少なくとも一部が一般式(I)で表される構造を2つ含む化合物(二量体化合物)であることが好ましい。
特定エポキシ化合物が二量体化合物である場合の構造としては、下記一般式(III−A)〜(III〜C)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
特定エポキシ化合物が二量体化合物である場合の構造としては、下記一般式(III−A)〜(III〜C)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
一般式(III−A)〜(III〜C)におけるR1〜R6、n、m及びXの定義は、一般式(II−A)及び(II−B)におけるR1〜R6、n、m及びXの定義と同様であり、その好ましい範囲も同様である。
高次構造形成の観点からは、一般式(III−A)〜(III〜C)で表されるエポキシ化合物は、下記一般式(III−a)〜(III〜b)で表されるエポキシ化合物であることが好ましい。
一般式(III−a)〜(III−c)において、R1〜R6、n、m及びXの定義及び好ましい例は一般式(III−A)〜(III−C)におけるR1〜R6、n、m及びXの定義及び好ましい例と同様である。
特定エポキシ化合物を合成する方法は、特に制限されない。例えば、下記一般式(M)で表されるエポキシ化合物(以下、特定エポキシモノマーと称する)と、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有するビフェニル化合物とを反応させて得てもよい。
一般式(M)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。また、R1〜R4のうちの2個〜4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個すべてが水素原子であることがさらに好ましい。R1〜R4のいずれかが炭素数1〜3のアルキル基である場合、R1及びR4の少なくとも一方が炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
一般式(M)で表される化合物としては、特開2011−74366号公報に記載されている化合物が挙げられる。具体的には、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート及び4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエートからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有するビフェニル化合物とを反応させて特定エポキシ化合物を合成する方法は、特に制限されない。具体的には、例えば、特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有するビフェニル化合物と、必要に応じて用いる反応触媒とを溶媒中に溶解し、加熱しながら撹拌することで、特定エポキシ化合物を合成することができる。
あるいは、例えば、特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有するビフェニル化合物を、必要に応じて用いる反応触媒と溶媒を用いずに混合し、加熱しながら撹拌することで、特定エポキシ化合物を合成することができる。
あるいは、例えば、特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有するビフェニル化合物を、必要に応じて用いる反応触媒と溶媒を用いずに混合し、加熱しながら撹拌することで、特定エポキシ化合物を合成することができる。
溶媒は、特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有するビフェニル化合物とを溶解でき、かつ両化合物が反応するのに必要な温度にまで加温できる溶媒であれば、特に制限されない。具体的には、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
溶媒の量は、特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有するビフェニル化合物と、必要に応じて用いる反応触媒とを反応温度において溶解できる量であれば特に制限されない。反応前の原料の種類、溶媒の種類等によって溶解性が異なるものの、例えば、仕込み固形分濃度が20質量%〜60質量%となる量であれば、反応後の溶液の粘度が好ましい範囲となる傾向にある。
特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有するビフェニル化合物は、特に制限されない。硬化物中にスメクチック構造を形成する観点からは、ビフェニル構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つの水酸基が結合した構造を有するジヒドロキシビフェニル化合物及びビフェニル構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つのアミノ基が結合した構造を有するジアミノビフェニル化合物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、特定ビフェニル化合物とも称する)であることが好ましい。
特定エポキシモノマーのエポキシ基と特定ビフェニル化合物の水酸基又はアミノ基とを反応させることで、一般式(II−A)及び(II−B)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを有する特定エポキシ化合物を合成することができる。
ジヒドロキシビフェニル化合物としては、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、これらの誘導体等が挙げられる。
ジアミノビフェニル化合物としては、3,3’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、これらの誘導体等が挙げられる。
特定ビフェニル化合物の誘導体としては、特定ビフェニル化合物のベンゼン環に炭素数1〜8のアルキル基等の置換基が結合した化合物が挙げられる。特定ビフェニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ジアミノビフェニル化合物としては、3,3’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、これらの誘導体等が挙げられる。
特定ビフェニル化合物の誘導体としては、特定ビフェニル化合物のベンゼン環に炭素数1〜8のアルキル基等の置換基が結合した化合物が挙げられる。特定ビフェニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂の硬化物中におけるスメクチック構造の形成し易さの観点からは、特定ビフェニル化合物は4,4’−ビフェノール又は4,4’−ジアミノビフェニルであることが好ましい。これらの化合物は、ベンゼン環上の2つの水酸基又はアミノ基がパラ位の位置関係となっているため、これをエポキシモノマーと反応させて得られる特定エポキシ化合物は直線構造となり易い。このため、分子のスタッキング性が高く、硬化物中にスメクチック構造を形成し易いと考えられる。
反応触媒の種類は特に限定されず、反応速度、反応温度、貯蔵安定性等の観点から適切なものを選択できる。具体的には、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。反応触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化物の耐熱性の観点からは、反応触媒としては有機リン化合物が好ましい。
有機リン化合物の好ましい例としては、有機ホスフィン化合物、有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物との錯体などが挙げられる。
有機リン化合物の好ましい例としては、有機ホスフィン化合物、有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物との錯体などが挙げられる。
有機ホスフィン化合物として具体的には、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等が挙げられる。
キノン化合物として具体的には、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等が挙げられる。
有機ボロン化合物として具体的には、テトラフェニルボレート、テトラ−p−トリルボレート、テトラ−n−ブチルボレート等が挙げられる。
反応触媒の量は特に制限されない。反応速度及び貯蔵安定性の観点からは、特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有するビフェニル化合物との合計質量100質量部に対し、0.1質量部〜1.5質量部であることが好ましく、0.2質量部〜1質量部であることがより好ましい。
特定エポキシモノマーを用いて特定エポキシ化合物を合成する場合、特定エポキシモノマーのすべてが反応して特定エポキシ化合物の状態になっていても、特定エポキシモノマーの一部が反応せずにモノマーの状態で残存していてもよい。
特定エポキシ化合物の合成は、少量スケールであればフラスコ、大量スケールであれば合成釜等の反応容器を使用して行うことができる。具体的な合成方法は、例えば以下の通りである。
まず、特定エポキシモノマーを反応容器に投入し、必要に応じて溶媒を入れ、オイルバス又は熱媒により反応温度まで加温し、特定エポキシモノマーを溶解する。そこに特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有するビフェニル化合物を投入し、次いで必要に応じて反応触媒を投入し、反応を開始させる。次いで、必要に応じて減圧下で溶媒を留去することで、特定エポキシ化合物が得られる。
まず、特定エポキシモノマーを反応容器に投入し、必要に応じて溶媒を入れ、オイルバス又は熱媒により反応温度まで加温し、特定エポキシモノマーを溶解する。そこに特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有するビフェニル化合物を投入し、次いで必要に応じて反応触媒を投入し、反応を開始させる。次いで、必要に応じて減圧下で溶媒を留去することで、特定エポキシ化合物が得られる。
反応温度は、特定エポキシモノマーのエポキシ基と、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基との反応が進行する温度であれば特に制限されず、例えば100℃〜180℃の範囲であることが好ましく、100℃〜150℃の範囲であることがより好ましい。反応温度を100℃以上とすることで、反応が完結するまでの時間をより短くできる傾向にある。一方、反応温度を180℃以下とすることで、ゲル化する可能性を低減できる傾向にある。
特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有するビフェニル化合物の配合比は、特に制限されない。例えば、エポキシ基の当量数(A)と、エポキシ基と反応しうる官能基の当量数(B)との比(A:B)が10:10〜10:0.01の範囲となる配合比としてもよい。硬化物の破壊じん性及び耐熱性の観点からは、A:Bが10:5〜10:0.1の範囲となる配合比が好ましい。
エポキシ樹脂の取り扱い性の観点からは、エポキシ基の当量数(A)と、エポキシ基と反応しうる官能基の当量数(B)との比(A:B)が10:1.6〜10:3.0の範囲となる配合比が好ましく、10:1.8〜10:2.9の範囲となる配合比がより好ましく、10:2.0〜10:2.8の範囲となる配合比がさらに好ましい。
エポキシ樹脂の取り扱い性の観点からは、エポキシ基の当量数(A)と、エポキシ基と反応しうる官能基の当量数(B)との比(A:B)が10:1.6〜10:3.0の範囲となる配合比が好ましく、10:1.8〜10:2.9の範囲となる配合比がより好ましく、10:2.0〜10:2.8の範囲となる配合比がさらに好ましい。
特定エポキシ化合物の構造は、例えば、合成に使用した特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有するビフェニル化合物との反応より得られると推定される特定エポキシ化合物の分子量と、UV及びマススペクトル検出器を備える液体クロマトグラフを用いて実施される液体クロマトグラフィーにより求めた目的化合物の分子量とを照合させることで決定することができる。
液体クロマトグラフィーは、例えば、株式会社日立製作所製の「LaChrom II C18」を分析用カラムとして使用し、グラジエント法を用いて、溶離液の混合比(体積基準)をアセトニトリル/テトラヒドロフラン/10mmol/l酢酸アンモニウム水溶液=20/5/75からアセトニトリル/テトラヒドロフラン=80/20(開始から20分)を経てアセトニトリル/テトラヒドロフラン=50/50(開始から35分)と連続的に変化させて測定を行う。また、流速を1.0ml/minとして行う。UVスペクトル検出器では280nmの波長における吸光度を検出し、マススペクトル検出器ではイオン化電圧を2700Vとして検出する。
取り扱い性の観点からは、特定エポキシ化合物の含有率は、エポキシ樹脂全体の40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。耐熱性の観点からは、エポキシ樹脂全体の80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂が、特定エポキシ化合物として二量体化合物を含む場合、その含有率は特に制限されない。取り扱い性の観点からは、二量体化合物の含有率は、エポキシ樹脂全体の10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。耐熱性の観点からは、二量体化合物の含有率は、エポキシ樹脂全体の60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂が特定エポキシモノマーを含む場合、その含有率は特に制限されない。耐熱性の観点からは、特定エポキシモノマーの含有率は、エポキシ樹脂全体の30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。取り扱い性の観点からは、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されない。低粘度化の観点からは、エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は800〜1300の範囲から選択されることが好ましい。
本実施形態において、エポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)は液体クロマトグラフィーにより得られる値とする。
液体クロマトグラフィーは、試料濃度を0.5質量%とし、移動相にテトラヒドロフランを用い、流速を1.0ml/minとして行う。検量線はポリスチレン標準サンプルを用いて作製し、それを用いてポリスチレン換算値でMn及びMwを測定する。
測定は、例えば、株式会社日立製作所製の高速液体クロマトグラフ「L6000」と、株式会社島津製作所製のデータ解析装置「C−R4A」を用いて行うことができる。カラムとしては、例えば、東ソー株式会社製のGPCカラムである「G2000HXL」及び「G3000HXL」を用いることができる。
液体クロマトグラフィーは、試料濃度を0.5質量%とし、移動相にテトラヒドロフランを用い、流速を1.0ml/minとして行う。検量線はポリスチレン標準サンプルを用いて作製し、それを用いてポリスチレン換算値でMn及びMwを測定する。
測定は、例えば、株式会社日立製作所製の高速液体クロマトグラフ「L6000」と、株式会社島津製作所製のデータ解析装置「C−R4A」を用いて行うことができる。カラムとしては、例えば、東ソー株式会社製のGPCカラムである「G2000HXL」及び「G3000HXL」を用いることができる。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に制限されない。エポキシ樹脂の流動性と硬化物の熱伝導率を両立する観点からは、245g/eq〜360g/eqであることが好ましく、250g/eq〜355g/eqであることがより好ましく、260g/eq〜350g/eqであることがさらに好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量が245g/eq以上であれば、エポキシ樹脂の結晶性が高くなりすぎないためエポキシ樹脂の流動性が低下しにくい傾向にある。本実施形態において、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、過塩素酸滴定法により測定する。
(硬化剤)
エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤は、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンのみであって、これらと他の硬化剤を併用してもよい。例えば、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホン以外のアミン硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤などを併用してもよい。
エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤は、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンのみであって、これらと他の硬化剤を併用してもよい。例えば、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホン以外のアミン硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤などを併用してもよい。
エポキシ樹脂組成物の硬化物中に高次構造を形成する観点からは、その他の硬化剤としてはアミン硬化剤又はフェノール硬化剤が好ましく、高次構造形成性の観点からはアミン硬化剤がより好ましく、芳香環に直接結合しているアミノ基を2つ以上有する化合物がさらに好ましい。
アミン硬化剤として具体的には、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、1,5−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、トリメチレン−ビス−4−アミノベンゾアート等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物の硬化物中にスメクチック構造を形成する観点からは、その他の硬化剤としては1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及びトリメチレン−ビス−4−アミノベンゾアートが好ましく、耐熱性に優れる硬化物を得る観点からは1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及び4,4’−ジアミノベンズアニリドがより好ましい。
エポキシ樹脂組成物における硬化剤の含有量、は特に制限されない。硬化反応の効率性の観点からは、エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤の官能基(アミン硬化剤の場合は活性水素)の当量数Aと、エポキシ樹脂のエポキシ当量数Bとの比(A/B)が0.3〜3.0となる量であることが好ましく、0.5〜2.0となる量であることがより好ましい。
(その他の成分)
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じてエポキシ樹脂と硬化剤以外の成分を含んでもよい。例えば、硬化触媒、フィラー等を含んでもよい。硬化触媒の具体例としては、多量体の合成に使用しうる反応触媒として例示した化合物が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じてエポキシ樹脂と硬化剤以外の成分を含んでもよい。例えば、硬化触媒、フィラー等を含んでもよい。硬化触媒の具体例としては、多量体の合成に使用しうる反応触媒として例示した化合物が挙げられる。
(エポキシ樹脂組成物の特性)
エポキシ樹脂組成物を構造材料として使用する観点からは、エポキシ樹脂組成物は、硬化物としたときの50℃時点での貯蔵弾性率が2.0GPa以上であることが好ましい。硬化物の貯蔵弾性率は、後述する実施例に記載した方法で測定される。
エポキシ樹脂組成物を構造材料として使用する観点からは、エポキシ樹脂組成物は、硬化物としたときの50℃時点での貯蔵弾性率が2.0GPa以上であることが好ましい。硬化物の貯蔵弾性率は、後述する実施例に記載した方法で測定される。
硬化物及び複合材料とした際の耐熱性の観点からは、エポキシ樹脂組成物は、硬化物としたときのガラス転移温度が180℃以上であることが好ましい。硬化物のガラス転移温度は、後述する実施例に記載した方法で測定される。
硬化物及び複合材料とした際の破壊じん性の観点からは、エポキシ樹脂組成物は、硬化物としたときの架橋密度が2mmol/cm3〜10mmol/cm3であることが好ましく、耐熱性と破壊じん性の両立の観点から3mmol/cm3〜8mmol/cm3であることがより好ましい。硬化物の架橋密度は、後述する実施例に記載した方法で測定される。
硬化物及び複合材料とした際の耐衝撃性の観点からは、エポキシ樹脂組成物は、硬化物としたときの破壊じん性値が1.2MPa・m1/2以上であることが好ましい。硬化物の破壊じん性値は、後述する実施例に記載した方法で測定される。
(硬化条件)
エポキシ樹脂組成物の硬化条件は、特に制限されない。例えば、100℃〜230℃の温度で硬化させることが好ましく、高次構造形成の観点から140℃〜190℃の温度で硬化させることがより好ましい。必要に応じて硬化後に170℃〜230℃の温度で後硬化させてもよい。
エポキシ樹脂組成物の硬化条件は、特に制限されない。例えば、100℃〜230℃の温度で硬化させることが好ましく、高次構造形成の観点から140℃〜190℃の温度で硬化させることがより好ましい。必要に応じて硬化後に170℃〜230℃の温度で後硬化させてもよい。
(エポキシ樹脂組成物の用途)
エポキシ樹脂組成物の用途は特に制限されないが、耐熱性、弾性率及びじん性に優れていることが要求される用途として好適に用いることができる。例えば、過酷条件下で使用されることが想定される航空機、宇宙船等に用いるFRPの材料として好適に用いることができる。
エポキシ樹脂組成物の用途は特に制限されないが、耐熱性、弾性率及びじん性に優れていることが要求される用途として好適に用いることができる。例えば、過酷条件下で使用されることが想定される航空機、宇宙船等に用いるFRPの材料として好適に用いることができる。
<エポキシ樹脂硬化物及び複合材料>
本開示のエポキシ樹脂硬化物は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の硬化物である。本開示の複合材料は、本開示のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む。
本開示のエポキシ樹脂硬化物は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の硬化物である。本開示の複合材料は、本開示のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む。
複合材料に含まれる強化材の材質は特に制限されず、複合材料の用途等に応じて選択できる。強化材として具体的には、炭素材料、ガラス、芳香族ポリアミド系樹脂(例えば、ケブラー(登録商標))、超高分子量ポリエチレン、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、マイカ、シリコン等が挙げられる。強化材の形状は特に制限されず、繊維状、粒子状(フィラー)等が挙げられる。複合材料の強度の観点からは、強化材は炭素材料であることが好ましく、炭素繊維であることがより好ましい。複合材料に含まれる強化材は、1種でも2種以上であってもよい。
以下、本発明の実施例を示し具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
500mLの三口フラスコに、エポキシモノマーとして(4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、下記構造)を50g量り取り、そこにプロピレングリコールモノメチルエーテルを80g添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを120℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。エポキシモノマーが溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、特定ビフェニル化合物として4,4’−ジヒドロキシビフェニルをエポキシモノマーのエポキシ基(A)と4,4’−ビフェノールの水酸基(B)の当量数の比(A:B)が10:2.5となるように添加し、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.5g添加し、120℃のオイルバス温度で加熱を継続した。3時間加熱を継続した後に、反応溶液からプロピレングリコールモノメチルエーテルを減圧留去し、残渣を室温(25℃)まで冷却することにより、エポキシモノマーの一部が4,4’−ジヒドロキシビフェニルと反応して多量体を形成した状態のエポキシ樹脂Aを得た。
500mLの三口フラスコに、エポキシモノマーとして(4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、下記構造)を50g量り取り、そこにプロピレングリコールモノメチルエーテルを80g添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを120℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。エポキシモノマーが溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、特定ビフェニル化合物として4,4’−ジヒドロキシビフェニルをエポキシモノマーのエポキシ基(A)と4,4’−ビフェノールの水酸基(B)の当量数の比(A:B)が10:2.5となるように添加し、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.5g添加し、120℃のオイルバス温度で加熱を継続した。3時間加熱を継続した後に、反応溶液からプロピレングリコールモノメチルエーテルを減圧留去し、残渣を室温(25℃)まで冷却することにより、エポキシモノマーの一部が4,4’−ジヒドロキシビフェニルと反応して多量体を形成した状態のエポキシ樹脂Aを得た。
エポキシ樹脂A:84.2質量部(不揮発分)に硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬工業株式会社製):7.9質量部と3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬工業株式会社製):7.9質量部を加えて、エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物をステンレスシャーレに入れ、ホットプレートで180℃に加熱した。ステンレスシャーレ内のエポキシ樹脂組成物が溶解した後に、減圧状態にして溶解した樹脂組成物を脱泡した。脱泡後の樹脂をオーブンにて180℃で2時間加熱してエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。
得られた硬化物を40mm×7.5mm×3.75mmの直方体に切出し、破壊じん性の評価用の試験片を作製した。さらに、硬化物を50mm×3.75mm×0.6mmの短冊状に切出し、ガラス転移温度の評価用の試験片を作製した。
[実施例2]
実施例1で合成したエポキシ樹脂A:84.1質量部(不揮発分)に硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬工業株式会社製):10.6質量部と3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬工業株式会社製):5.3質量部を加えて、エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
実施例1で合成したエポキシ樹脂A:84.1質量部(不揮発分)に硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬工業株式会社製):10.6質量部と3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬工業株式会社製):5.3質量部を加えて、エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
[比較例1]
実施例1で合成したエポキシ樹脂A:84.1質量部(不揮発分)に硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬工業株式会社製):15.9質量部を加えて、エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
実施例1で合成したエポキシ樹脂A:84.1質量部(不揮発分)に硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬工業株式会社製):15.9質量部を加えて、エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
[比較例2]
実施例1で合成したエポキシ樹脂A:84.1質量部(不揮発分)に硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬工業株式会社製):15.9質量部を加えて、エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
実施例1で合成したエポキシ樹脂A:84.1質量部(不揮発分)に硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和光純薬工業株式会社製):15.9質量部を加えて、エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして試験片を作製した。
<高次構造の有無及び状態>
実施例1、2及び比較例1、2で作製した試験片について、X線回折装置(株式会社リガク製))を用いて分析することにより、高次構造の有無と状態(スメクチック構造であるか否か)を確認した。X線回折測定は、CuKα1線を用い、管電圧:40kV、管電流:20mA、測定範囲:2θ=2°〜30°の条件で行った。
実施例1、2及び比較例1、2で作製した試験片について、X線回折装置(株式会社リガク製))を用いて分析することにより、高次構造の有無と状態(スメクチック構造であるか否か)を確認した。X線回折測定は、CuKα1線を用い、管電圧:40kV、管電流:20mA、測定範囲:2θ=2°〜30°の条件で行った。
<貯蔵弾性率>
実施例1、2及び比較例1、2で作製した試験片について、引張りモードによる動的粘弾性測定を行ってガラス転移温度(℃)を算出した。試験片の寸法は50mm×3.75mm×0.6mmとし、測定条件は、振動数:10Hz、昇温速度:5℃/min、歪み:0.1%とした。得られた貯蔵弾性率チャートの50℃時点での値を貯蔵弾性率として評価した。評価装置としては、RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いた。
実施例1、2及び比較例1、2で作製した試験片について、引張りモードによる動的粘弾性測定を行ってガラス転移温度(℃)を算出した。試験片の寸法は50mm×3.75mm×0.6mmとし、測定条件は、振動数:10Hz、昇温速度:5℃/min、歪み:0.1%とした。得られた貯蔵弾性率チャートの50℃時点での値を貯蔵弾性率として評価した。評価装置としては、RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いた。
<ガラス転移温度>
実施例1、2及び比較例1、2で作製した試験片について、引張りモードによる動的粘弾性測定を行ってガラス転移温度(℃)を算出した。試験片の寸法は50mm×3.75mm×0.6mmとし、測定条件は、振動数:10Hz、昇温速度:5℃/min、歪み:0.1%とした。得られたtanδチャートのピークをガラス転移温度とみなした。評価装置としては、RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いた。
実施例1、2及び比較例1、2で作製した試験片について、引張りモードによる動的粘弾性測定を行ってガラス転移温度(℃)を算出した。試験片の寸法は50mm×3.75mm×0.6mmとし、測定条件は、振動数:10Hz、昇温速度:5℃/min、歪み:0.1%とした。得られたtanδチャートのピークをガラス転移温度とみなした。評価装置としては、RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いた。
<架橋密度>
実施例1、2及び比較例1、2で作製した試験片について、引っ張りモードによる動的粘弾性測定を行って280℃における貯蔵弾性率を測定し、得られた測定値から下記式により架橋密度(mmol/cm3)を算出した。試験片の寸法は50mm×3.75mm×0.6mmとし、測定条件は、振動数:10Hz、昇温速度:5℃/min、歪み:0.1%とした。下記式において、フロント定数は1とし、気体定数は8.31とし、絶対温度は273.15℃とした。
実施例1、2及び比較例1、2で作製した試験片について、引っ張りモードによる動的粘弾性測定を行って280℃における貯蔵弾性率を測定し、得られた測定値から下記式により架橋密度(mmol/cm3)を算出した。試験片の寸法は50mm×3.75mm×0.6mmとし、測定条件は、振動数:10Hz、昇温速度:5℃/min、歪み:0.1%とした。下記式において、フロント定数は1とし、気体定数は8.31とし、絶対温度は273.15℃とした。
式:架橋密度=貯蔵弾性率/(3×フロント定数×気体定数×絶対温度)
<破壊じん性値>
実施例1、2及び比較例1、2で作製した試験片について、ASTM D5045に基づいて3点曲げ測定を行って破壊じん性値(MPa・m1/2)を算出した。試験片の寸法は40mm×7.5mm×3.75mm、2点間距離は30mm、クロスヘッド速度は10mm/minとした。評価装置としては、インストロン5948(インストロン社製)を用いた。
実施例1、2及び比較例1、2で作製した試験片について、ASTM D5045に基づいて3点曲げ測定を行って破壊じん性値(MPa・m1/2)を算出した。試験片の寸法は40mm×7.5mm×3.75mm、2点間距離は30mm、クロスヘッド速度は10mm/minとした。評価装置としては、インストロン5948(インストロン社製)を用いた。
実施例1、2及び比較例1、2における試験片の高次構造の有無と状態、50℃時点での貯蔵弾性率、ガラス転移温度、架橋密度及び破壊じん性値を表1に示す。
表1に示すように、硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルスルホンと3,3’−ジアミノジフェニルスルホンを併用した実施例1、2のエポキシ樹脂組成物を用いて作製した硬化物は、高次構造としてスメクチック構造が形成され、破壊じん性値も良好であった。
実施例1、2で作製した硬化物は、硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルスルホンのみを用いた比較例1で作製した硬化物に比べて貯蔵弾性率が高かった。ガラス転移温度は比較例1よりも低かったが、実用上充分な水準であった。
実施例1、2で作製した硬化物は、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホンのみを用いた比較例2に比べてガラス転移温度が高かった。さらに、貯蔵弾性率は比較例2と同等の水準であった。
実施例1、2で作製した硬化物は、硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルスルホンのみを用いた比較例1で作製した硬化物に比べて貯蔵弾性率が高かった。ガラス転移温度は比較例1よりも低かったが、実用上充分な水準であった。
実施例1、2で作製した硬化物は、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホンのみを用いた比較例2に比べてガラス転移温度が高かった。さらに、貯蔵弾性率は比較例2と同等の水準であった。
以上の結果から、本開示のエポキシ樹脂組成物を用いることで耐熱性と弾性率とに優れる硬化物が得られることがわかった。
Claims (9)
- エポキシ樹脂としてメソゲン構造を有するエポキシ化合物と、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンと、を含むエポキシ樹脂組成物。
- 前記エポキシ化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有するエポキシ化合物を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
[一般式(I)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。] - 前記エポキシ化合物が、2つの前記一般式(I)で表される構造の間に1つの2価のビフェニル基が配置された状態の構造を有する、請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記エポキシ化合物が、下記一般式(II−A)及び(II−B)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを有するエポキシ化合物を含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
[一般式(II−A)及び(II−B)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R5及びR6はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を示す。n及びmはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示す。Xはそれぞれ独立に、−0−又は−NH−を表す。] - 硬化物としたときの50℃時点での貯蔵弾性率が2.0GPa以上である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 硬化物としたときのガラス転移温度が180℃以上である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 硬化物としたときにスメクチック構造が形成される、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物である、エポキシ樹脂硬化物。
- 請求項8に記載のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む複合材料。
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