JP2020132717A - エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物及び複合材料 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物及び複合材料 Download PDF

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Tomohiro Ikeda
智博 池田
丸山 直樹
Naoki Maruyama
直樹 丸山
福田 和真
Kazumasa Fukuda
和真 福田
片木 秀行
Hideyuki Kataki
秀行 片木
林 田
Lin Tian
林 田
優希 中村
Yuki Nakamura
優希 中村
慶 東ヶ崎
Kei Togasaki
慶 東ヶ崎
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Abstract

【課題】曲げ弾性率及び破壊じん性に優れる硬化物を形成可能なエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物を用いて得られるエポキシ樹脂硬化物及び複合材料の提供。【解決手段】硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粒子とを含み、下記(1)〜(3)の少なくともいずれかを満たすエポキシ樹脂組成物。(1)前記無機粒子の平均粒子径が1nm〜5000nmである(2)無機粒子の含有率が不揮発分全体の30質量%以下である(3)エポキシ樹脂が、2つのメソゲン構造と、前記2つのメソゲン構造の間に配置される芳香環を含む構造と、を有するエポキシ化合物を含む【選択図】なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物及び複合材料に関する。
近年、航空機の軽量化のために、構造材の樹脂材料への置き換えが進められている。このような樹脂材料としては、カーボン等の繊維に樹脂を含浸して得られる繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics、FRP)が挙げられる。
現行の航空機構造材用のFRPは、優れた曲げ弾性率を示す一方で、中央翼及び主翼のような機体から突出している部材に単独で適用した場合、破壊じん性不足により付け根部分が損傷するおそれがある。このため、チタン合金による補強が必要であり、高コスト化、工程の煩雑化等の解決が課題となっている。そこで、FRP用途として、高い曲げ弾性率と高い破壊じん性を兼ね備えた樹脂が求められている。
FRP用の樹脂として広く利用されているエポキシ樹脂は、曲げ弾性率が高い反面で破壊じん性に劣る傾向にあるが、硬化物中に液晶相のような高次構造を形成可能なエポキシ樹脂は、破壊じん性に優れるエポキシ樹脂として知られている(例えば、特許文献1参照)。そこで、樹脂の曲げ弾性率及び破壊じん性を両立させる手法としては、高次構造を形成可能なエポキシ樹脂に弾性率に優れる樹脂を添加して両立を図ることが考えられる。
国際公開第2018/070052号
しかしながら、一般に樹脂の曲げ弾性率と破壊じん性とはトレードオフの関係になっており、双方の特性を高い水準で両立させることは困難である。また、高次構造を形成可能なエポキシ樹脂に異なる樹脂を添加すると、高次構造の形成が阻害されて破壊じん性が低下する場合も想定される。
本発明は上記状況に鑑み、曲げ弾性率及び破壊じん性に優れる硬化物を形成可能なエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物を用いて得られるエポキシ樹脂硬化物及び複合材料を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段には以下の実施様態が含まれる。
<1>硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粒子とを含み、前記無機粒子の平均粒子径が1nm〜5000nmである、エポキシ樹脂組成物。
<2>硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粒子とを含み、前記無機粒子の含有率が不揮発分全体の30質量%以下である、エポキシ樹脂組成物。
<3>前記エポキシ樹脂がメソゲン構造を有するエポキシ化合物を含む、<1>又は<2>に記載のエポキシ樹脂組成物。
<4>前記エポキシ樹脂が下記一般式(I)で表される構造単位を有するエポキシ化合物を含む、<1>〜<3>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。

〔一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。〕
<5>前記エポキシ樹脂が、2つのメソゲン構造と、前記2つのメソゲン構造の間に配置される芳香環を含む構造と、を有するエポキシ化合物を含む、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<6>前記芳香環を含む構造がビフェニル構造又はナフタレン構造である、<5>に記載のエポキシ樹脂組成物。
<7>硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粒子とを含み、前記エポキシ樹脂は、2つのメソゲン構造と、前記2つのメソゲン構造の間に配置される芳香環を含む構造と、を有するエポキシ化合物を含む、エポキシ樹脂組成物。
<8>前記無機粒子がシリカ粒子を含む、<1>〜<7>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<9>前記硬化剤がアミノ基を有する、<1>〜<8>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<10>前記硬化剤がスルホニル基を有する、<1>〜<9>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<11>前記硬化剤が芳香族化合物である、<9>又は<10>に記載のエポキシ樹脂組成物。
<12><1>〜<11>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物である、エポキシ樹脂硬化物。
<13><12>に記載のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む複合材料。
本発明によれば、曲げ弾性率及び破壊じん性に優れる硬化物を形成可能なエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物を用いて得られるエポキシ樹脂硬化物及び複合材料が提供される。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「エポキシ化合物」とは、分子中にエポキシ基を有する化合物を意味する。「エポキシ樹脂」とは、複数のエポキシ化合物を集合体として捉える概念であって硬化していない状態のものを意味する。
<エポキシ樹脂組成物>
本開示のエポキシ樹脂組成物は、硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粒子とを含む。本開示のエポキシ樹脂組成物には、下記の第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態のエポキシ樹脂組成物が含まれる。
第1実施形態のエポキシ樹脂組成物は、硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粒子とを含み、前記無機粒子の平均粒子径が1nm〜5000nmである、エポキシ樹脂組成物である。
第2実施形態のエポキシ樹脂組成物は、硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粒子とを含み、前記無機粒子の含有率が不揮発分全体の30質量%以下である、エポキシ樹脂組成物である。
第3実施形態のエポキシ樹脂組成物は、硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粒子とを含み、前記エポキシ樹脂は、2つのメソゲン構造と、前記2つのメソゲン構造の間に配置される芳香環を含む構造と、を有するエポキシ化合物を含む、エポキシ樹脂組成物である。
上記実施形態のエポキシ樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、曲げ弾性率及び破壊じん性に優れている。その理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。
まず、エポキシ樹脂として硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂を用いることで、硬化物の破壊じん性が向上することが考えられる。また、無機粒子を含むことで硬化物の曲げ弾性率が向上するとともに、無機粒子が核となって液晶構造の成長が促進されることが考えられる。その結果、破壊じん性の低下を抑制されて曲げ弾性率との高い水準での両立が達成されると考えられる。
さらに、上記エポキシ樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、曲げ弾性率及び破壊じん性に加えてガラス転移温度が高く、耐熱性にも優れている。エポキシ樹脂組成物の硬化物は一般にガラス転移温度が高いほど破壊じん性は低いと考えられるが、本開示のエポキシ樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、破壊じん性の低下を抑制しながら耐熱性の向上が達成されている。
(エポキシ樹脂)
本開示のエポキシ樹脂組成物は、硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂を含む。硬化物中に形成される液晶構造としては、ネマチック構造とスメクチック構造とが挙げられる。ネマチック構造は分子長軸が一様な方向を向いており、配向秩序のみをもつ液晶構造である。これに対し、スメクチック構造は配向秩序に加えて一次元の位置の秩序を持ち、層構造を有する液晶構造である。秩序性はネマチック構造よりもスメクチック構造の方が高い。従って、硬化物の破壊じん性の観点からは、スメクチック構造が形成されることがより好ましい。
硬化物中に液晶構造が形成されているか否かは、例えば、偏光顕微鏡によって確認することができる。すなわち、クロスニコル状態での観察において、偏光解消による干渉縞が見られるか否かによって確認することができる。
硬化物中に液晶構造としてスメクチック構造が形成されているか否かは、硬化物のX線回折測定により判断できる。X線回折測定は、例えば、株式会社リガク製のX線回折装置を用いて行うことができる。CuKα1線を用い、管電圧40kV、管電流20mA、2θ°=2〜30°の範囲で測定すると、スメクチック構造を有している硬化物であれば、2°=2〜10°の範囲に回折ピークが現れる。
本開示のエポキシ樹脂組成物は、反応誘起型であることが好ましい。本開示において「反応誘起型のエポキシ樹脂組成物」とは、硬化反応が開始する以前には液晶構造が形成されていない(等方構造(等方相)である)が、硬化反応の進行とともに液晶構造を形成する性質を有するエポキシ樹脂組成物のことを意味する。反応誘起型でないエポキシ樹脂組成物としては、硬化反応が開始する以前に液晶構造がすでに形成され、液晶構造の状態で硬化反応が進行するエポキシ樹脂組成物が挙げられる。エポキシ樹脂組成物が反応誘起型であるか否かは、これに含まれるエポキシ樹脂(エポキシ化合物)の分子構造及び硬化剤の分子構造に依存して定まる。
硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂としては、メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂が挙げられる。
メソゲン構造として具体的には、ビフェニル構造、フェニルベンゾエート構造、シクロヘキシルベンゾエート構造、アゾベンゼン構造、スチルベン構造、ターフェニル構造、アントラセン構造、これらの誘導体、これらのメソゲン構造の2つ以上が結合基を介して結合した構造等が挙げられる。
メソゲン構造を有するエポキシ化合物としては、下記一般式(I)で表される構造を有するエポキシ化合物(以下、特定エポキシ化合物ともいう)が好ましい例として挙げられる。エポキシ樹脂が特定エポキシ化合物を含んでいると、硬化物中に形成される液晶構造がスメクチック構造となりやすい傾向にある。
〔一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。〕
〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。また、R〜Rのうちの2個〜4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個すべてが水素原子であることがさらに好ましい。R〜Rのいずれかが炭素数1〜3のアルキル基である場合、R及びRの少なくとも一方が炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
メソゲン構造を有するエポキシ化合物が1分子中に有するメソゲン構造の数は、1つであっても2つ以上であってもよい。2つ以上のメソゲン構造を有するエポキシ化合物における当該2つ以上のメソゲン構造は異なっていても同じであってもよい。
メソゲン構造を有するエポキシ化合物は、2つのメソゲン構造(好ましくは、一般式(I)で表される構造)と、これら2つのメソゲン構造の間に配置される芳香環を含む構造と、を有するものであってもよい。硬化物の曲げ弾性率と破壊じん性の観点からは、芳香環を含む構造としては、ビフェニル構造又はナフタレン構造が好ましい。
ビフェニル構造としては、下記一般式(A)で表される構造が挙げられる。
一般式(A)において、*は隣接する原子との結合位置を表す。隣接する原子としては酸素原子及び窒素原子が挙げられる。R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を表す。n及びmはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
一般式(A)において、n及びmはそれぞれ独立に、0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。R及びRで表される炭素数1〜8のアルキル基はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
一般式(A)で表される構造の中でも、下記一般式(a)で表される構造が好ましい。
一般式(a)における符号の定義及び好ましい例は、一般式(A)における対応する符号の定義及び好ましい例と同様である。
ナフタレン構造としては、下記一般式(B)で表される構造が挙げられる。
一般式(B)において、*は隣接する原子との結合位置を表す。隣接する原子としては酸素原子及び窒素原子が挙げられる。Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を表す。pはそれぞれ独立に、0〜6の整数を表す。
一般式(B)において、pはそれぞれ独立に、0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。Rで表される炭素数1〜8のアルキル基はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
一般式(B)で表される構造の中でも、下記一般式(b)で表される構造が好ましい。
一般式(b)における符号の定義及び好ましい例は、一般式(B)における対応する符号の定義及び好ましい例と同様である。
特定エポキシ化合物は、下記一般式(II−A)〜(II−D)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを有するエポキシ化合物であってもよい。

一般式(II−A)〜(II−D)において、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を示す。n及びmはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示す。pは0〜6の整数を示す。Xはそれぞれ独立に、−O−又は−NH−を表す。
一般式(II−A)〜(II−D)におけるR〜Rの具体例は、一般式(I)におけるR〜Rの具体例と同様であり、その好ましい範囲も同様である。
一般式(II−A)〜(II−D)におけるR〜Rで表される炭素数1〜8のアルキル基はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
一般式(II−A)〜(II−D)中、n、m及びpはそれぞれ独立に、0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
硬化物中に液晶構造を形成する観点からは、一般式(II−A)〜(II−D)で表される構造を有するエポキシ化合物は、下記一般式(II−a)〜(II−d)で表される構造を有するエポキシ化合物であることが好ましい。

一般式(II−a)〜(II−d)において、符号の定義及び好ましい例は一般式(II−A)〜(II−D)における対応する符号の定義及び好ましい例と同様である。
特定エポキシ化合物における一般式(I)で表される構造の数は、2以上であれば特に制限されない。低粘度化の観点からは、特定エポキシ化合物の少なくとも一部が一般式(I)で表される構造を2つのみ含む化合物(二量体化合物)であることが好ましい。
特定エポキシ化合物が二量体化合物である場合の構造としては、下記一般式(III−A)〜(III〜F)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
一般式(III−A)〜(III〜F)における符号の定義及び好ましい例は、一般式(II−A)〜(II−D)における対応する符号の定義及び好ましい例と同様である。
硬化物中に液晶構造を形成する観点からは、一般式(III−A)〜(III〜F)で表されるエポキシ化合物は、下記一般式(III−a)〜(III〜f)で表されるエポキシ化合物であることが好ましい。
一般式(III−a)〜(III〜f)における符号の定義及び好ましい例は、一般式(III−A)〜(III〜F)における符号の定義及び好ましい例と同様である。
特定エポキシ化合物を合成する方法は、特に制限されない。例えば、下記一般式(M)で表されるエポキシ化合物(以下、特定エポキシモノマーと称する)と、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物とを反応させて得てもよい。
一般式(M)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。また、R〜Rのうちの2個〜4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個すべてが水素原子であることがさらに好ましい。R〜Rのいずれかが炭素数1〜3のアルキル基である場合、R及びRの少なくとも一方が炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
一般式(M)で表される化合物としては、特開2011−74366号公報に記載されている化合物が挙げられる。具体的には、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート及び4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエートからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物とを反応させて特定エポキシ化合物を合成する方法は、特に制限されない。具体的には、例えば、特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物と、必要に応じて用いる反応触媒とを溶媒中に溶解し、加熱しながら撹拌することで、特定エポキシ化合物を合成することができる。
あるいは、例えば、特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物を、必要に応じて用いる反応触媒と溶媒を用いずに混合し、加熱しながら撹拌することで、特定エポキシ化合物を合成することができる。
溶媒は、特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物とを溶解でき、かつ両化合物が反応するのに必要な温度にまで加温できる溶媒であれば、特に制限されない。具体的には、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
溶媒の量は、特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物と、必要に応じて用いる反応触媒とを反応温度において溶解できる量であれば特に制限されない。反応前の原料の種類、溶媒の種類等によって溶解性が異なるものの、例えば、仕込み固形分濃度が20質量%〜60質量%となる量であれば、反応後の溶液の粘度が好ましい範囲となる傾向にある。
特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物は、特に制限されない。硬化物中にスメクチック構造を形成する観点からは、ビフェニル構造又はナフタレン構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つの水酸基が結合した構造を有するジヒドロキシビフェニル化合物又はジヒドロキシナフタレン化合物、並びにビフェニル構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つのアミノ基が結合した構造を有するジアミノビフェニル化合物及びジアミノナフタレン化合物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、特定芳香族化合物とも称する)であることが好ましい。
特定エポキシモノマーのエポキシ基と特定芳香族化合物の水酸基又はアミノ基とを反応させることで、一般式(II−A)〜(II−D)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを有する特定エポキシ化合物を合成することができる。
ビフェニル構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つの水酸基が結合した構造を有するジヒドロキシビフェニル化合物としては、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、これらの誘導体等が挙げられる。
ビフェニル構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つのアミノ基が結合した構造を有するジアミノビフェニル化合物としては、3,3’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、これらの誘導体等が挙げられる。
ナフタレン構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つの水酸基が結合した構造を有するジヒドロキシナフタレン化合物としては、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、これらの誘導体等が挙げられる。
ナフタレン構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つのアミノ基が結合した構造を有するジアミノナフタレン化合物としては、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノシナフタレン、これらの誘導体等が挙げられる。
特定芳香族化合物の誘導体としては、特定芳香族化合物のベンゼン環に炭素数1〜8のアルキル基等の置換基が結合した化合物が挙げられる。特定芳香族化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂の硬化物中におけるスメクチック構造の形成し易さの観点からは、特定芳香族化合物は4,4’−ビフェノール又は4,4’−ジアミノビフェニルであることが好ましい。これらの化合物は分子のスタッキング性が高く、硬化物中にスメクチック構造を形成し易いと考えられる。
反応触媒の種類は特に限定されず、反応速度、反応温度、貯蔵安定性等の観点から適切なものを選択できる。具体的には、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。反応触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化物の耐熱性の観点からは、反応触媒としては有機リン化合物が好ましい。
有機リン化合物の好ましい例としては、有機ホスフィン化合物、有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物との錯体などが挙げられる。
有機ホスフィン化合物として具体的には、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等が挙げられる。
キノン化合物として具体的には、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等が挙げられる。
有機ボロン化合物として具体的には、テトラフェニルボレート、テトラ−p−トリルボレート、テトラ−n−ブチルボレート等が挙げられる。
反応触媒の量は特に制限されない。反応速度及び貯蔵安定性の観点からは、特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物との合計質量100質量部に対し、0.1質量部〜1.5質量部であることが好ましく、0.2質量部〜1質量部であることがより好ましい。
特定エポキシモノマーを用いて特定エポキシ化合物を合成する場合、特定エポキシモノマーのすべてが反応して特定エポキシ化合物の状態になっていても、特定エポキシモノマーの一部が反応せずにモノマーの状態で残存していてもよい。
特定エポキシ化合物の合成は、少量スケールであればフラスコ、大量スケールであれば合成釜等の反応容器を使用して行うことができる。具体的な合成方法は、例えば以下の通りである。
まず、特定エポキシモノマーを反応容器に投入し、必要に応じて溶媒を入れ、オイルバス又は熱媒により反応温度まで加温し、特定エポキシモノマーを溶解する。そこに特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物を投入し、次いで必要に応じて反応触媒を投入し、反応を開始させる。次いで、必要に応じて減圧下で溶媒を留去することで、特定エポキシ化合物が得られる。
反応温度は、特定エポキシモノマーのエポキシ基と、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基との反応が進行する温度であれば特に制限されず、例えば100℃〜180℃の範囲であることが好ましく、100℃〜150℃の範囲であることがより好ましい。反応温度を100℃以上とすることで、反応が完結するまでの時間をより短くできる傾向にある。一方、反応温度を180℃以下とすることで、ゲル化する可能性を低減できる傾向にある。
特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物の配合比は、特に制限されない。例えば、エポキシ基の当量数(A)と、エポキシ基と反応しうる官能基の当量数(B)との比(A:B)が10:10〜10:0.01の範囲となる配合比としてもよい。硬化物の破壊じん性及び耐熱性の観点からは、A:Bが10:5〜10:0.1の範囲となる配合比が好ましい。
エポキシ樹脂の取り扱い性の観点からは、エポキシ基の当量数(A)と、エポキシ基と反応しうる官能基の当量数(B)との比(A:B)が10:1.6〜10:3.0の範囲となる配合比が好ましく、10:1.8〜10:2.9の範囲となる配合比がより好ましく、10:2.0〜10:2.8の範囲となる配合比がさらに好ましい。
特定エポキシ化合物の構造は、例えば、合成に使用した特定エポキシモノマーと、特定エポキシモノマーのエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物との反応より得られると推定される特定エポキシ化合物の分子量と、UV及びマススペクトル検出器を備える液体クロマトグラフを用いて実施される液体クロマトグラフィーにより求めた目的化合物の分子量とを照合させることで決定することができる。
液体クロマトグラフィーは、例えば、株式会社日立製作所製の「LaChrom II C18」を分析用カラムとして使用し、グラジエント法を用いて、溶離液の混合比(体積基準)をアセトニトリル/テトラヒドロフラン/10mmol/l酢酸アンモニウム水溶液=20/5/75からアセトニトリル/テトラヒドロフラン=80/20(開始から20分)を経てアセトニトリル/テトラヒドロフラン=50/50(開始から35分)と連続的に変化させて測定を行う。また、流速を1.0ml/minとして行う。UVスペクトル検出器では280nmの波長における吸光度を検出し、マススペクトル検出器ではイオン化電圧を2700Vとして検出する。
取り扱い性の観点からは、特定エポキシ化合物の含有率は、エポキシ樹脂全体の40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。耐熱性の観点からは、エポキシ樹脂全体の80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂が、特定エポキシ化合物として二量体化合物を含む場合、その含有率は特に制限されない。取り扱い性の観点からは、二量体化合物の含有率は、エポキシ樹脂全体の10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。耐熱性の観点からは、二量体化合物の含有率は、エポキシ樹脂全体の60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂が特定エポキシモノマーを含む場合、その含有率は特に制限されない。耐熱性の観点からは、特定エポキシモノマーの含有率は、エポキシ樹脂全体の30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。取り扱い性の観点からは、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以下であることがさらにより好ましい。
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されない。低粘度化の観点からは、エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は800〜1300の範囲から選択されることが好ましい。
本実施形態において、エポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)は液体クロマトグラフィーにより得られる値とする。
エポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の測定は、例えば、株式会社日立製作所製の高速液体クロマトグラフ「L6000」と、株式会社島津製作所製のデータ解析装置「C−R4A」を用いて行うことができる。カラムとしては、例えば、東ソー株式会社製のGPCカラムである「G2000HXL」及び「G3000HXL」を用いることができる。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に制限されない。エポキシ樹脂の流動性と硬化物の熱伝導率を両立する観点からは、245g/eq〜360g/eqであることが好ましく、250g/eq〜355g/eqであることがより好ましく、260g/eq〜350g/eqであることがさらに好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量が245g/eq以上であれば、エポキシ樹脂の結晶性が高くなりすぎないためエポキシ樹脂の流動性が低下しにくい傾向にある。一方、エポキシ樹脂のエポキシ当量が360g/eq以下であれば、エポキシ樹脂の架橋密度が低下しにくいため、成形物の熱伝導率が高くなる傾向にある。本開示において、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、過塩素酸滴定法により測定される値とする。
(硬化剤)
硬化剤は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂と硬化反応を生じることができる化合物であれば、特に制限されない。硬化剤の具体例としては、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂組成物の硬化物中に液晶構造を形成する観点からは、硬化剤としてはアミン硬化剤(アミノ基を有する硬化剤)又はフェノール硬化剤(フェノール性水酸基を有する硬化剤)が好ましく、アミン硬化剤がより好ましく、芳香環に直接結合しているアミノ基を2つ以上有する化合物であることがさらに好ましい。
硬化剤はスルホニル基(−SO−)を有する化合物であることが好ましく、アミノ基とスルホニル基とを有する化合物であることがより好ましく、2つの芳香環と、当該2つの芳香環のそれぞれに直接結合しているアミノ基と、当該2つの芳香環の間に配置されるスルホニル基と、を有する化合物であることがさらに好ましい。
アミン硬化剤として具体的には、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、1,5−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン4,4’−ジアミノベンズアニリド、トリメチレン−ビス−4−アミノベンゾアート等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物の硬化物中にスメクチック構造を形成する観点からは3,3−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及びトリメチレン−ビス−4−アミノベンゾアートが好ましく、高Tgの硬化物を得る観点からは4,4’−ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’−ジアミノベンズアニリドがより好ましい。
フェノール硬化剤としては、低分子フェノール化合物、及び低分子フェノール化合物をメチレン鎖等で連結してノボラック化したフェノールノボラック樹脂が挙げられる。低分子フェノール化合物としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等の単官能フェノール化合物、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等の2官能フェノール化合物、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等の3官能フェノール化合物などが挙げられる。
エポキシ樹脂組成物における硬化剤の含有量は特に制限されない。硬化反応の効率性の観点からは、エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤の活性水素の当量数(アミン当量数)と、エポキシ樹脂のエポキシ当量数との比(アミン当量数/エポキシ当量数)が0.3〜3.0となる量であることが好ましく、0.5〜2.0となる量であることがより好ましい。
(無機粒子)
無機粒子の種類は、特に制限されない。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子及び酸化マグネシウム粒子が挙げられる。無機粒子は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
硬化物の曲げ弾性率向上の観点からは、無機粒子は弾性率が高い材質からなることが好ましい。弾性率が高い材質からなる無機粒子としては、シリカ粒子が挙げられる。
良好な破壊じん性を維持する観点からは、エポキシ樹脂組成物の硬化物中に形成される液晶構造は、その周期構造が無機粒子の表面に対して垂直な方向に沿って形成されていることが好ましく、スメクチック構造の周期構造が無機粒子の表面に対して垂直な方向に沿って形成されていることがより好ましい。液晶構造の周期構造が無機粒子の表面に対して垂直な方向に沿って形成されているか否かは、例えば、硬化物の断面を偏光顕微鏡により観察することで確認できる。
無機粒子の平均粒子径は、特に制限されない。例えば、1nm〜5000nmの範囲であってもよく、1nm〜1000nmであってもよく、300nm〜500nmであってもよい。エポキシ樹脂組成物に含まれる無機粒子の平均粒子径が上記範囲であると、硬化物中における液晶構造の形成が阻害されにくくなると考えられる。また、無機粒子が核となって液晶構造(好ましくは、スメクチック液晶構造)の成長がより促進される等の効果が期待できる。
本開示において無機粒子の平均粒子径は、エポキシ樹脂組成物に含まれる無機粒子全体の平均粒子径である。
無機粒子の平均粒子径は、ゼータ電位測定システムを用いて動的光散乱法により測定される。ゼータ電位測定システムを用いた測定は、例えば、ELSZ−2000(大塚電子株式会社製)を用いて行うことができる。具体的には、ゼータ電位測定システムで測定した後のキュムラント解析から算出される平均粒子径を無機粒子の平均粒子径とする。
エポキシ樹脂組成物における無機粒子の含有率は、特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂組成物に含まれる不揮発分全体の30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
エポキシ樹脂組成物における無機粒子の含有量の下限値は特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂組成物全体の0.1質量%以上であってもよく、0.5質量%以上であってもよい。
(その他の成分)
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じてエポキシ樹脂、硬化剤及び無機粒子以外のその他の成分を含んでもよい。例えば、硬化触媒等を含んでもよい。硬化触媒の具体例としては、多量体の合成に使用しうる反応触媒として例示した化合物が挙げられる。
(用途)
本開示のエポキシ樹脂組成物の用途は特に制限されないが、粘度が低く、流動性に優れていることが要求される加工方法にも好適に用いることができる。例えば、繊維間の空隙にエポキシ樹脂組成物を加温しながら含浸する工程を伴うFRPの製造、エポキシ樹脂組成物を加温しながらスキージ等で広げる工程を伴うシート状物の製造などにも好適に用いることができる。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、硬化物中のボイドの発生を抑制する観点から粘度低下のための溶剤の添加を省略又は低減することが望まれる加工方法にも好適に用いることができる。
<エポキシ樹脂硬化物及び複合材料>
本開示のエポキシ樹脂硬化物は、本開示のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる。本開示の複合材料は、本開示のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む。
複合材料に含まれる強化材の材質は特に制限されず、複合材料の用途等に応じて選択できる。強化材として具体的には、炭素材料、ガラス、芳香族ポリアミド系樹脂(例えば、ケブラー(登録商標))、超高分子量ポリエチレン、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、マイカ、シリコン等が挙げられる。強化材の形状は特に制限されず、繊維状、粒子状(フィラー)等が挙げられる。複合材料に含まれる強化材は、1種でも2種以上であってもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
500mLの三口フラスコに、エポキシモノマーとして(4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、下記構造)を50g量り取り、そこにシクロヘキサノンを80g添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを180℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。エポキシモノマーが溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、4,4’−ジヒドロキシビフェニルをエポキシモノマーのエポキシ基(A)と4,4’−ジヒドロキシビフェニルの水酸基(B)の当量比(A:B)が10:2.5となるように添加し、反応触媒としてテトラブチルホスホニウムドデカノエートを0.5g添加し、180℃のオイルバス温度で加熱を継続した。3時間加熱を継続した後に、反応溶液からシクロヘキサノンを減圧留去し、残渣を室温(25℃)まで冷却することにより、エポキシモノマーの一部が4,4’−ジヒドロキシビフェニルと反応して多量体を形成した状態のエポキシ樹脂を得た。
次いで、得られたエポキシ樹脂を50g、シリカ粒子(平均粒子径:394nm)とメチルイソブチルケトンの比(質量比)が3:7となるように分散させた分散溶液(以下、シリカ分散液ともいう)10gをプラスチック容器に量りとり、100℃の恒温槽で1時間加熱してメチルイソブチルケトンを脱溶し、撹拌した。その後、混合物が溶融している間に硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン9.4g(当量比1:1)を加え、真空撹拌脱泡装置で分散撹拌してエポキシ樹脂組成物を調製した。
エポキシ樹脂組成物をステンレスシャーレに12g量り取り、恒温槽にて100℃で10分加熱してエポキシ樹脂組成物を溶融させ、表面を平らにならした。ステンレスシャーレを恒温槽から取り出し、常温(25℃)まで冷却した後に再度、恒温槽にて1.7℃/minの昇温速度で150℃まで温度を上げた後、150℃で4時間加熱して硬化を完了させて、エポキシ樹脂硬化物を得た。このエポキシ樹脂硬化物の表面を厚み3.75mmになるように研磨し、3.75mm×7.5mm×33mmの直方体に切り出して破壊じん性評価用の試験片を作製した。さらに、エポキシ樹脂硬化物の表面を厚み2mmになるように研磨し、2mm×0.5mm×40mmの短冊状に切り出してガラス転移温度評価用の試験片を作製した。また、エポキシ樹脂硬化物の表面を厚み2mmになるように研磨し、2mm×5mm×33mmの直方体に切り出して曲げ弾性率評価用の試験片を得た。
<実施例2>
シリカ分散液5.0gをプラスチック容器に量りとる以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物の試験片を作製した。
<実施例3>
シリカ分散液1.5gをプラスチック容器に量りとる以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物の試験片を作製した。
<実施例4>
4,4’−ジヒドロキシビフェニルの代わりに1,5’−ジヒドロキシナフタレンを、エポキシモノマーのエポキシ基(A)と1,5’−ジヒドロキシナフタレンの水酸基(B)の当量比(A:B)が10:2.15となるように添加した以外は実施例1と同様にして、エポキシモノマーの一部が1,5’−ジヒドロキシナフタレンと反応して多量体を形成した状態のエポキシ樹脂を得た。次いで、得られたエポキシ樹脂50gと、硬化剤として3,3−ジアミノジフェニルスルホン10g(当量比1:1)とを用いて、シリカ分散液2.5gをプラスチック容器に量りとる以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物の試験片を作製した。
<実施例5>
実施例4と同様にして、エポキシモノマーの一部が1,5’−ジヒドロキシナフタレンと反応して多量体を形成した状態のエポキシ樹脂を得た。次いで、得られたエポキシ樹脂50gと、硬化剤として3,3’−ジアミノジフェニルスルホン10g(当量比1:1)とを用いて、シリカ分散液1.5gをプラスチック容器に量りとる以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物の試験片を作製した。
<比較例1>
シリカ分散液を加えないこと以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物の試験片を作製した。
[スメクチック構造の形成の有無]
実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂硬化物に対し、X線回折測定を上述した条件で行った。その結果、いずれの場合も硬化物中に硬化物中に液晶構造としてスメクチック構造が形成されていた。
[破壊じん性の評価]
エポキシ樹脂硬化物の破壊じん性の評価の指標として、破壊じん性値(MPa・m1/2)を測定した。試験片の破壊じん性値は、ASTM D5045に基づいて3点曲げ測定を行って算出した。評価装置には、インストロン5948(インストロン社製)を用いた。結果を表1に示す。
[曲げ弾性率の評価]
エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率の評価の指標として、曲げ弾性率値(GPa)を測定した。試験片の曲げ弾性率値は、JIS K7171(2016)に基づいて3点曲げ測定を行って算出した。評価装置には、インストロン5948(インストロン社製)を用いた。結果を表1に示す。
[耐熱性の評価]
エポキシ樹脂硬化物の耐熱性の評価の指標として、ガラス転移温度(Tg、℃)を測定した。試験片のガラス転移温度は、引張りモードによる動的粘弾性測定を行って算出した。測定条件は、周波数10Hz、昇温速度5℃/分、ひずみ0.1%とした。得られた温度−tanδ関係図において、tanδが最大となる温度を、ガラス転移温度とみなした。評価装置には、RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いた。結果を表1に示す。
表1に示すように、無機粒子を含むエポキシ樹脂組成物を用いて作製した実施例1〜5のエポキシ樹脂硬化物は、無機粒子を含まないエポキシ樹脂組成物を用いて作製した比較例1のエポキシ樹脂硬化物に比べ、曲げ弾性率が向上している。一方、実施例1〜5では破壊じん性値が比較例1に比べて低下しているが、実用上充分な水準が維持されている。さらに、実施例1〜5のエポキシ樹脂硬化物は高いガラス転移温度を示している。

Claims (13)

  1. 硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粒子とを含み、前記無機粒子の平均粒子径が1nm〜5000nmである、エポキシ樹脂組成物。
  2. 硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粒子とを含み、前記無機粒子の含有率が不揮発分全体の30質量%以下である、エポキシ樹脂組成物。
  3. 前記エポキシ樹脂がメソゲン構造を有するエポキシ化合物を含む、請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記エポキシ樹脂が下記一般式(I)で表される構造単位を有するエポキシ化合物を含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。

    〔一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。〕
  5. 前記エポキシ樹脂が、2つのメソゲン構造と、前記2つのメソゲン構造の間に配置される芳香環を含む構造と、を有するエポキシ化合物を含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 前記芳香環を含む構造がビフェニル構造又はナフタレン構造である、請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 硬化物中に液晶構造を形成可能なエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粒子とを含み、前記エポキシ樹脂は、2つのメソゲン構造と、前記2つのメソゲン構造の間に配置される芳香環を含む構造と、を有するエポキシ化合物を含む、エポキシ樹脂組成物。
  8. 前記無機粒子がシリカ粒子を含む、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. 前記硬化剤がアミノ基を有する、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  10. 前記硬化剤がスルホニル基を有する、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  11. 前記硬化剤が芳香族化合物である、請求項9又は10に記載のエポキシ樹脂組成物。
  12. 請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物である、エポキシ樹脂硬化物。
  13. 請求項12に記載のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む複合材料。
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