JP2020200355A - エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、及び複合材料 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、及び複合材料 Download PDF

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和真 福田
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直樹 丸山
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秀行 片木
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優希 中村
慶 東ヶ崎
Kei Togasaki
慶 東ヶ崎
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Abstract

【課題】破壊靭性と曲げ弾性率のバランスに優れる硬化物を作製可能なエポキシ樹脂組成物、当該エポキシ樹脂組成物の硬化物であるエポキシ樹脂硬化物、及び当該硬化物を用いた複合材料を提供する。【解決手段】エポキシ樹脂組成物は、メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル化合物と、を含有する。【選択図】なし

Description

本開示は、エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、及び複合材料に関する。
近年、省エネルギー化の流れから、電子材料、産業機器、航空宇宙等の分野で使用される材料において、セラミック、金属等からより軽量な樹脂材料への変換が進んでいる。
樹脂材料を金属の代替材として適用するうえでは、樹脂材料単体では耐熱性及び強度に対する要求を満足できないことが多いため、フィラー、繊維等の無機材料と樹脂材料とを組み合わせた複合材料を用いることが一般的である。特に、炭素繊維を樹脂と組み合わせた複合材料である炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic、CFRP)は、軽量化と高強度化の両立を図ることができる有望な材料として着目されており、近年では航空機の駆体にも採用されている。
航空機等へCFRPの適用を拡大するにあたってはさらなる高強度化、特に開口モード破壊靭性(Gic)の向上が望まれている。そこで、熱可塑性樹脂に比べて強度及び耐熱性の面で優れるエポキシ樹脂等の反応硬化系の樹脂の利用が検討されている。
開口モード破壊靭性は、例えばメソゲン構造を有するエポキシ樹脂を使用することで飛躍的に増大する(例えば、特許文献1参照)。これは破壊時の分子間凝集力に起因すると考えられ、応力緩和が働くことにより亀裂の進展を抑制することが可能となると考えられる。
特開2014−122337号公報
しかしながら、これまで、メソゲン構造を有するエポキシ樹脂を用いた場合、優れた破壊靭性は得られるものの、十分な曲げ弾性率を得ることが困難であった。そこで、弾性率の向上を図って、メソゲン構造を有するエポキシ樹脂にメソゲン構造を有しないエポキシ樹脂等を混合すると、十分な破壊靭性が得られにくいという問題があった。このように、航空機等へのCFRPの適用において望まれる破壊靭性と曲げ弾性率とを高いレベルで両立させることは困難であった。
上記事情に鑑み、本開示は、破壊靭性と曲げ弾性率のバランスに優れる硬化物を作製可能なエポキシ樹脂組成物、当該エポキシ樹脂組成物の硬化物であるエポキシ樹脂硬化物、及び当該硬化物を用いた複合材料の提供を課題とする。
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル化合物と、を含有するエポキシ樹脂組成物。
<2> 前記メソゲン構造が下記一般式(1)で表されるメソゲン構造を含む、<1>に記載のエポキシ樹脂組成物。
一般式(1)中、Xは単結合、又は下記群(A)より選択される少なくとも1種の2価の基を有する連結基を表す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を表す。nはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。*は隣接する原子との結合部位を表す。
群(A)中、Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を表す。nはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、kは0〜7の整数を示し、mは0〜8の整数を示し、lは0〜12の整数を表す。
<3> 前記一般式(1)で表される構造が、下記一般式(3)及び一般式(4)からなる群より選択される少なくとも1つである、<2>に記載のエポキシ樹脂組成物。
一般式(3)及び一般式(4)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。*は隣接する原子との結合部位を表す。
<4> 前記メソゲン構造を有するエポキシ化合物が、少なくとも2つのメソゲン構造と、前記少なくとも2つのメソゲン構造の間に配置される芳香環を含む2価の基と、を有するエポキシ化合物を含む、<1>〜<3>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<5> 前記(メタ)アクリル化合物が、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<6> 前記(メタ)アクリル化合物が、環状構造を有する、<1>〜<5>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<7> 前記環状構造が、トリオン構造又はトリアジン構造である、<6>記載のエポキシ樹脂組成物。
<8> 前記(メタ)アクリル化合物の含有量が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して、10質量部〜60質量部である、<1>〜<7>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<9> さらに硬化剤を含有する、<1>〜<8>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<10> <9>に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物である、エポキシ樹脂硬化物。
<11> <10>に記載のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む複合材料。
<12> 前記強化材が炭素材料を含む、<11>に記載の複合材料。
本開示によれば、破壊靭性と曲げ弾性率のバランスに優れる硬化物を作製可能なエポキシ樹脂組成物、当該エポキシ樹脂組成物の硬化物であるエポキシ樹脂硬化物、及び当該硬化物を用いた複合材料が提供される。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
本開示において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリロイル基」はアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を意味する。
本開示において「エポキシ化合物」とは、分子中にエポキシ基を有する化合物を意味する。「エポキシ樹脂」とは、複数のエポキシ化合物を集合体として捉える概念であって硬化していない状態のものを意味する。
≪エポキシ樹脂組成物≫
本開示のエポキシ樹脂組成物は、メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル化合物と、を含有する。本開示のエポキシ樹脂組成物によれば、破壊靭性と曲げ弾性率のバランスに優れる硬化物を作製可能である。この理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。
メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂を、弾性率を高めるために他のエポキシ樹脂と混合すると、硬化させるときにこれらのエポキシ樹脂がランダムに共重合することで配向性が低下してしまい、破壊靭性が大幅に低下しやすいと考えられる。一方、本開示のエポキシ樹脂組成物は、メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂と、当該エポキシ樹脂とは非相溶の(メタ)アクリル化合物と、を含有する。当該(メタ)アクリル化合物が曲げ弾性率の向上に寄与しているものと考えられる。また、本開示のエポキシ樹脂組成物は、硬化するときに、メソゲン構造を有するエポキシ化合物が(メタ)アクリル化合物と非相溶であるため、分子の配向性が維持されやすいと考えられる。その結果、破壊靭性の低下が好適に抑制されると考えられる。また、上記エポキシ樹脂を含有する部分と(メタ)アクリル化合物を含有する部分とが、硬化したときにそれぞれ異なるドメインを形成し、ポリドメイン構造が形成される。これにより応力が好適に緩和されることも、良好な破壊靭性に寄与していると推察される。
さらに、本開示のエポキシ樹脂組成物によれば、複合材料に使用する場合に、強化材と樹脂との界面強度にも優れる傾向にある。これは、上述のように硬化物がポリドメイン化されているため、強化材と樹脂が一軸配向することが抑制され、強化材と樹脂の相互作用が促進されることが一因と推測される。
以下、本開示のエポキシ樹脂組成物の各成分について詳述する。
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂は、メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含む。なお、エポキシ樹脂は、メソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物を含んでいてもいなくてもよい。
メソゲン構造とは、これを有するエポキシ化合物の反応物であるエポキシ樹脂が液晶性を発現する可能性のある構造を意味する。メソゲン構造は、具体的には、ビフェニル構造、フェニルベンゾエート構造、シクロヘキシルベンゾエート構造、アゾベンゼン構造、スチルベン構造、ターフェニル構造、アントラセン構造、これらの誘導体、これらのメソゲン構造の2つ以上が結合基を介して結合した構造等が挙げられる。
メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂は、このエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物中に高次構造を形成することができる。ここで、高次構造とは、その構成要素が配列してミクロな秩序構造を形成した高次構造体を含む構造を意味し、例えば結晶相及び液晶相が相当する。このような高次構造体の存在の有無は、偏光顕微鏡によって判断することができる。すなわち、高次構造体の存在の有無は、クロスニコル状態での観察において、偏光解消による干渉縞が見られることで判別可能である。この高次構造体は、通常はエポキシ樹脂組成物の硬化物中に島状に存在してドメイン構造を形成しており、その島の一つが一つの高次構造体に対応する。この高次構造体の構成要素自体は、一般には共有結合により形成されている。
硬化した状態で形成される高次構造としては、ネマチック構造とスメクチック構造とが挙げられる。ネマチック構造とスメクチック構造は、それぞれ液晶構造の一種である。ネマチック構造は分子長軸が一様な方向を向いており、配向秩序のみをもつ液晶構造である。これに対し、スメクチック構造は配向秩序に加えて一次元の位置の秩序を持ち、層構造を有する液晶構造である。秩序性はネマチック構造よりもスメクチック構造の方が高い。従って、硬化物の熱伝導性及び破壊靭性の観点からは、スメクチック構造の高次構造を形成することがより好ましい。
硬化物中にスメクチック構造が形成されているか否かは、硬化物のX線回折測定により判断できる。X線回折測定は、例えば、株式会社Malvern PanalyticalのX線回折装置(商品名:Empyrean)を用いて行うことができる。本開示では、CuKα1線を用い、管電圧40kV、管電流20mA、2θ=1°〜30°の範囲でX線回折測定を行ったとき、2θ=2°〜10°の範囲に回折ピークが現れる場合に、硬化物中にスメクチック構造が形成されていると判断する。
メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂は、硬化したときに高次構造を形成し易い。このため、メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂は、メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含まないエポキシ樹脂と比べ、硬化物の破壊靭性により優れる傾向にある。
メソゲン構造は、下記一般式(1)で表される構造であってもよい。
一般式(1)中、Xは単結合、又は下記群(A)より選択される少なくとも1種の2価の基を有する連結基を表す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を表す。nはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。*は隣接する原子との結合部位を表す。
群(A)中、Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を表す。nはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、kは0〜7の整数を示し、mは0〜8の整数を示し、lは0〜12の整数を表す。
一般式(1)で表されるメソゲン構造において、Xが上記群(A)より選択される少なくとも1種の2価の基を有する連結基である場合、当該連結基は、下記群(Aa)より選択される少なくとも1種の2価の基を有する連結基であることが好ましく、群(Aa)より選択される少なくとも1種の2価の基を有する連結基を有し、かつ少なくとも1つの環状構造を有する連結基であることがより好ましい。
群(Aa)中、Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を表す。nはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、kは0〜7の整数を示し、mは0〜8の整数を示し、lは0〜12の整数を表す。
硬化物中に高次構造を形成し易い観点からは、一般式(1)で表されるメソゲン構造は、下記一般式(2)で表されるメソゲン構造を含むことが好ましい。
一般式(2)中、Xは単結合、又は前記群(A)より選択される少なくとも1種の2価の基を有する連結基を表す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を表す。nはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。*は隣接する原子との結合部位を表す。
一般式(2)で表されるメソゲン構造の好ましい例としては、下記一般式(3)又は一般式(4)で表されるメソゲン構造が挙げられる。
一般式(3)又は一般式(4)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。*は隣接する原子との結合部位を表す。
〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。また、R〜Rのうちの2個〜4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個すべてが水素原子であることがさらに好ましい。R〜Rのいずれかが炭素数1〜3のアルキル基である場合、R及びRの少なくとも一方が炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
メソゲン構造を有するエポキシ化合物は、下記一般式(1−m)で表される構造を有するエポキシ化合物であってもよい。
一般式(1−m)において、X、Y及びnの定義及び好ましい例は、上述した一般式(1)におけるX、Y及びnの定義及び好ましい例と同様である。
硬化物中に高次構造を形成する観点からは、一般式(1−m)で表されるエポキシ化合物は、下記一般式(2−m)で表される構造を有するエポキシ化合物であることが好ましい。
一般式(2−m)において、X、Y及びnの定義及び好ましい例は、一般式(1−m)におけるX、Y及びnの定義及び好ましい例と同様である。
一般式(1−m)で表されるエポキシ化合物は、下記一般式(3−m)又は一般式(4−m)で表される構造を有するエポキシ化合物であることがより好ましい。
一般式(3−m)及び一般式(4−m)において、R〜Rの定義及び好ましい例は、一般式(3)及び一般式(4)のR〜Rの定義及び好ましい例と同様である。
メソゲン構造を有するエポキシ化合物は、1つのメソゲン構造を有するエポキシ化合物であってもよく、2つ以上のメソゲン構造を有するエポキシ化合物(以下、2つ以上のメソゲン構造を有するエポキシ化合物を「特定エポキシ化合物」ともいう)であってもよい。2つ以上のメソゲン構造を有するエポキシ化合物は、1つのメソゲン構造を有するエポキシ化合物と比べて硬化前の粘度が低く、取扱い性に優れる傾向にあるため、好ましい。
−2つ以上のメソゲン構造を有するエポキシ化合物(特定エポキシ化合物)−
特定エポキシ化合物は、2つ以上のメソゲン構造を有するエポキシ化合物であれば、その構造は特に制限されない。特定エポキシ化合物は、メソゲン構造を1つとエポキシ基とを有する化合物(以下、メソゲンエポキシモノマーともいう)の二量体であってもよく、三量体以上の多量体であってもよい。特定エポキシ化合物中の2つ以上のメソゲン構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。
特定エポキシ化合物は、少なくとも2つのメソゲン構造と、前記少なくとも2つのメソゲン構造の間に配置される芳香環を含む2価の基と、を有するエポキシ化合物であることが好ましい。この場合、当該少なくとも2つのメソゲン構造と当該芳香環を含む2価の基とは直接連結していてもよく、連結基を介して連結していてもよい。
2つのメソゲン構造の間に配置される2価の芳香族基としては、例えば、フェニレン基、2価のビフェニル基、及びナフチレン基が挙げられる。フェニレン基としては下記一般式(5A)で表される構造が挙げられ、2価のビフェニル基としては下記一般式(5B)で表される構造が挙げられ、ナフチレン基としては下記一般式(5C)で表される構造が挙げられる。

一般式(5A)、一般式(5B)、及び一般式(5C)において、*は隣接する原子との結合位置を表す。隣接する原子としては酸素原子、窒素原子等が挙げられる。R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を表す。mはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。pはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。
及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
mはそれぞれ独立に、0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。pはそれぞれ独立に、0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましい。
一般式(5A)で表される構造の中でも、下記一般式(5a)で表される構造が好ましく、一般式(5B)で表される構造の中でも、下記一般式(5b)で表される構造が好ましい。一般式(5C)で表される構造の中でも、下記一般式(5c−1)及び一般式(5c−2)で表される構造が好ましい。このような構造を有する特定エポキシ化合物は、分子のスタッキング性が高く、高次構造をより形成し易いと考えられる。
一般式(5a)、一般式(5b)、一般式(5c−1)、及び一般式(5c−2)において、R、R、m、及びpの定義及び好ましい例は、一般式(5A)、一般式(5B)、及び一般式(5C)のR、R及びm、及びpの定義及び好ましい例と同様である。*は隣接する原子との結合位置を表す。
特定エポキシ化合物は、下記一般式(1−A)一般式(1−B)、又は一般式(1−C)で表される構造を有するエポキシ化合物であってもよい。


一般式(1−A)、一般式(1−B)、及び一般式(1−C)において、X、Y及びnの定義及び好ましい例は、一般式(1)のX、Y及びnの定義及び好ましい例と同様である。また、R、R、m、及びpの定義及び好ましい例は、一般式(5A)、一般式(5B)、及び一般式(5C)のR、R、m、及びpの定義及び好ましい例と同様である。Zはそれぞれ独立に、−O−又は−NH−を表す。*は隣接する原子との結合部位を表す。
硬化物中に高次構造を形成する観点からは、一般式(1−A)で表される構造を有するエポキシ化合物は、下記一般式(2−A)で表される構造を有するエポキシ化合物であることが好ましく、一般式(1−B)で表される構造を有するエポキシ化合物は、下記一般式(2−B)で表される構造を有するエポキシ化合物であることが好ましく、一般式(1−C)で表される構造を有するエポキシ化合物は、下記一般式(2−C)で表される構造を有するエポキシ化合物であることが好ましい。

一般式(2−A)、一般式(2−B)、及び一般式(2−C)において、X、Y、n、m、p、R、R、及びZの定義及び好ましい例は、一般式(1−A)、一般式(1−B)、及び一般式(1−C)のX、Y、n、m、p、R、R及びZの定義及び好ましい例と同様である。*は隣接する原子との結合部位を表す。
一般式(1−A)で表される構造を有するエポキシ化合物としては、下記一般式(3−A−1)〜一般式(3−A−4)からなる群より選択される少なくとも一つの構造を有するエポキシ化合物が挙げられる。
一般式(1−B)で表される構造を有するエポキシ化合物としては、下記一般式(3−B−1)〜一般式(3−B−4)からなる群より選択される少なくとも一つの構造を有するエポキシ化合物が挙げられる。
一般式(1−C)で表される構造を有するエポキシ化合物としては、下記一般式(3−C−1)〜一般式(3−C−4)からなる群より選択される少なくとも一つの構造を有するエポキシ化合物が挙げられる。

一般式(3−A−1)〜(3−A−4)、一般式(3−B−1)〜(3−B−4)、及び一般式(3−C−1)〜(3−C−4)において、R、R、m、p、及びZの定義及び好ましい例は、一般式(1−A)、一般式(1−B)、及び一般式(1−C)のR、R、m、p及びZの定義及び好ましい例と同様である。R〜Rの定義及び好ましい例は、一般式(3)又は一般式(4)のR〜Rの定義及び好ましい例と同様である。*は隣接する原子との結合部位を表す。
特定エポキシ化合物は、メソゲン構造を有するエポキシ化合物と、エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物との反応生成物であってもよい。また、特定エポキシ化合物は、メソゲン構造を有するエポキシ化合物と、メソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物と、エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物との反応生成物であってもよい。
〔特定エポキシ化合物の合成方法〕
特定エポキシ化合物を合成する方法は、特に制限されない。特定エポキシ化合物を合成する方法としては、例えば、メソゲン構造を1つとエポキシ基とを有する化合物(すなわちメソゲンエポキシモノマー)と、エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物と、必要に応じてメソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物と、を反応させる方法が挙げられる。
メソゲンエポキシモノマーの構造は特に制限されず、例えば上述した一般式(1−m)で表される構造を有するエポキシ化合物であってもよい。メソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物としては、例えば、「他のエポキシ化合物」として後述する化合物が挙げられる。
エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物は特に制限されず、エポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物であることが好ましい。
エポキシ基と反応しうる官能基としては、水酸基、アミノ基、イソシアネート基等が挙げられる。エポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物中の、当該エポキシ基と反応しうる官能基の数は1つであっても2つ以上であってもよく、2つであることが好ましい。また、官能基は芳香環に直結していても直結していなくてもよく、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖等のアルキレンオキサイド鎖、アルキル鎖などを介して芳香環に連結されていてもよい。
硬化物中にスメクチック構造を形成する観点からは、エポキシ基と反応しうる官能基を有する芳香族化合物は、1つのベンゼン環に2つの水酸基が結合した構造を有するジヒドロキシベンゼン化合物、1つのベンゼン環に2つのアミノ基が結合した構造を有するジアミノベンゼン化合物、ビフェニル構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つの水酸基が結合した構造を有するジヒドロキシビフェニル化合物、ビフェニル構造を形成する2つのベンゼン環にそれぞれ1つのアミノ基が結合した構造を有するジアミノビフェニル化合物、1つのナフタレン環に2つの水酸基が結合した構造を有するジヒドロキシナフタレン化合物及び1つのナフタレン環に2つのアミノ基が結合した構造を有するジアミノナフタレン化合物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、特定芳香族化合物とも称する)であることが好ましい。
ジヒドロキシベンゼン化合物としては、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、これらの誘導体等が挙げられる。
ジアミノベンゼン化合物としては、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、これらの誘導体等が挙げられる。
ジヒドロキシビフェニル化合物としては、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、2,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、これらの誘導体等が挙げられる。
ジアミノビフェニル化合物としては、2,2’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジアミノビフェニル、2,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、これらの誘導体等が挙げられる。
ジヒドロキシナフタレン化合物としては、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、これらの誘導体等が挙げられる。
ジアミノナフタレン化合物としては、1,2−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、これらの誘導体等が挙げられる。
特定芳香族化合物の誘導体としては、特定芳香族化合物のベンゼン環又はナフタレン環に炭素数1〜8のアルキル基等の置換基が結合した化合物が挙げられる。特定芳香族化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物の官能基当量は特に制限されない。反応の効率性の観点からは、エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物の官能基当量(官能基がアミノ基である場合は活性水素の当量)は65g/eq〜200g/eqであることが好ましく、70g/eq〜150g/eqであることがより好ましく、75g/eq〜100g/eqであることがさらに好ましい。
メソゲンエポキシモノマーと、エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物と、必要に応じてメソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物と、を反応させて特定エポキシ化合物を合成する方法は、特に制限されない。具体的には、例えば、メソゲンエポキシモノマーと、エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物と、必要に応じて用いるメソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物と、必要に応じて用いる反応触媒とを溶媒中に溶解し、加熱しながら撹拌することで、特定エポキシ化合物を合成することができる。
または、例えば、メソゲンエポキシモノマーと、エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物と、必要に応じて用いるメソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物と、必要に応じて用いる反応触媒と、を溶媒を用いずに混合し、加熱しながら撹拌することで、特定エポキシ化合物を合成することができる。
溶媒は、メソゲンエポキシモノマーと、エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物と、必要に応じて用いるメソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物と、を溶解でき、かつこれらの化合物が反応するのに必要な温度にまで加温できる溶媒であれば、特に制限されない。具体的には、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
溶媒の量は、メソゲンエポキシモノマーと、エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物と、必要に応じて用いるメソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物と、必要に応じて用いる反応触媒と、を反応温度において溶解できる量であれば特に制限されない。反応前の原料の種類、溶媒の種類等によって溶解性が異なるものの、例えば、仕込み固形分濃度が20質量%〜60質量%となる量であれば、反応後の溶液の粘度が好ましい範囲となる傾向にある。
反応触媒の種類は特に限定されず、反応速度、反応温度、貯蔵安定性等の観点から適切なものを選択できる。具体的には、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。反応触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化物の耐熱性の観点からは、反応触媒としては有機リン化合物が好ましい。
有機リン化合物の好ましい例としては、有機ホスフィン化合物、有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物との錯体などが挙げられる。なかでも、有機ホスフィン化合物とキノン化合物とを付加してなる化合物が好ましい。
有機ホスフィン化合物として具体的には、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等が挙げられる。
キノン化合物として具体的には、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等が挙げられる。
有機ボロン化合物として具体的には、テトラフェニルボレート、テトラ−p−トリルボレート、テトラ−n−ブチルボレート等が挙げられる。
反応触媒の量は、特に制限されない。反応速度及び貯蔵安定性の観点からは、メソゲンエポキシモノマーと、必要に応じて用いるメソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物と、エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物と、の合計質量100質量部に対し、0.1質量部〜1.5質量部であることが好ましく、0.2質量部〜1質量部であることがより好ましい。
特定エポキシ化合物の合成は、少量スケールであればフラスコ、大量スケールであれば合成釜等の反応容器を使用して行うことができる。具体的な合成方法は、例えば以下の通りである。まず、メソゲンエポキシモノマー、及び必要に応じて用いるメソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物を反応容器に投入し、必要に応じて溶媒を入れ、オイルバス又は熱媒により反応温度まで加温し、メソゲンエポキシモノマー及び必要に応じて用いるメソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物を溶解する。そこにエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物を投入し、次いで必要に応じて反応触媒を投入し、反応を開始させる。次いで、必要に応じて減圧下で溶媒を留去することで、特定エポキシ化合物が得られる。
反応温度は、メソゲンエポキシモノマー及び必要に応じて用いるメソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物のエポキシ基と、エポキシ基と反応しうる官能基と、の反応が進行する温度であれば特に制限されない。反応温度は例えば100℃〜180℃の範囲であることが好ましく、100℃〜150℃の範囲であることがより好ましい。反応温度を100℃以上とすることで、反応が完結するまでの時間をより短くできる傾向にある。一方、反応温度を180℃以下とすることで、ゲル化する可能性を低減できる傾向にある。
特定エポキシ化合物を合成する場合、原料となるエポキシ化合物(すなわち、メソゲンエポキシモノマー、及び必要に応じて用いるメソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物)と、エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物の配合比は、特に制限されない。例えば、エポキシ基の当量数(A)と、エポキシ基と反応しうる官能基の当量数(B)との比(A:B)が10:10〜10:0.01の範囲となる配合比としてもよい。硬化物の破壊靭性及び耐熱性の観点からは、比(A:B)が10:5〜10:0.1の範囲となる配合比が好ましい。
特定エポキシ化合物の取り扱い性の観点からは、エポキシ基の当量数(A)と、エポキシ基と反応しうる官能基の当量数(B)との比(A:B)は10:1.6〜10:3.0の範囲となる配合比が好ましく、10:1.8〜10:2.9の範囲となる配合比がより好ましく、10:2.0〜10:2.8の範囲となる配合比がさらに好ましい。
曲げ弾性率と破壊靭性を効果的に両立する観点からは、エポキシ基の当量数(A)と、エポキシ基と反応しうる官能基の当量数(B)との比(A:B)は10:1.0〜10:3.0の範囲となる配合比が好ましく、10:1.4〜10:2.6の範囲となる配合比がより好ましく、10:1.6〜10:2.4の範囲となる配合比がさらに好ましい。
合成により得られた特定エポキシ化合物の構造は、例えば、合成に使用したメソゲンエポキシモノマーと、必要に応じて用いるメソゲン構造を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物と、エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物との反応より得られると推定される特定エポキシ化合物の分子量と、UV及びマススペクトル検出器を備える液体クロマトグラフを用いて実施される液体クロマトグラフィーにより求めた目的化合物の分子量とを照合させることで決定することができる。
液体クロマトグラフィーは、例えば、株式会社日立製作所製の「LaChrom II C18」を分析用カラムとして使用し、グラジエント法を用いて、溶離液の混合比(体積基準)をアセトニトリル/テトラヒドロフラン/(10mmol/l酢酸アンモニウム水溶液)=20/5/75からアセトニトリル/テトラヒドロフラン=80/20(開始から20分)を経てアセトニトリル/テトラヒドロフラン=50/50(開始から35分)と連続的に変化させて測定を行う。また、流速を1.0ml/minとして行う。UVスペクトル検出器では280nmの波長における吸光度を検出し、マススペクトル検出器ではイオン化電圧を2700Vとして検出する。
エポキシ樹脂は、特定エポキシ化合物とメソゲンエポキシモノマーの両方を含んでいることが好ましい。エポキシ樹脂中に特定エポキシ化合物とメソゲンエポキシモノマーが適切な割合で存在していると、硬化前の取扱い性により優れる傾向にある。また、硬化する際の架橋密度をより高い状態にすることができ、耐熱性により優れるエポキシ樹脂硬化物が得られる傾向にある。エポキシ樹脂中に存在する特定エポキシ化合物とメソゲンエポキシモノマーの割合は、メソゲンエポキシモノマーと、エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物の配合比その他の反応条件によって調節することができる。
エポキシ樹脂に含まれるメソゲンエポキシモノマーの含有割合は、エポキシ樹脂全体の50%以下であることが好ましい。メソゲンエポキシモノマーの含有割合が50%以下であるエポキシ樹脂は、メソゲンエポキシモノマーの含有割合が50%を超えるエポキシ樹脂に比べて昇温時に粘度が下がりやすく、取り扱い性に優れる傾向にある。その理由は明らかではないが、メソゲンエポキシモノマーの割合がエポキシ樹脂全体の50%以下であると、メソゲンエポキシモノマーの含有割合が50%を超える場合に比べ、エポキシ樹脂の溶融温度以下の温度での結晶の析出がより抑制されるためと推測される。
本開示において、エポキシ樹脂中のメソゲンエポキシモノマーの含有割合は、例えば、液体クロマトグラフにより得られるチャートから算出することができる。
より具体的には、液体クロマトグラフにより得られるチャートにおける、エポキシ樹脂を構成する全ての成分に由来するピークの合計面積に占めるメソゲンエポキシモノマーに由来するピークの面積の割合(%)として求める。具体的には、測定対象のエポキシ樹脂の280nmの波長における吸光度を検出し、検出された全てのピークの合計面積と、メソゲンエポキシモノマーに相当するピークの面積とから、下記式により算出する。
メソゲンエポキシモノマーに由来するピークの面積の割合(%)=(メソゲンエポキシモノマーに由来するピークの面積/エポキシ樹脂を構成する全ての成分に由来するピークの合計面積)×100
液体クロマトグラフィーは、試料濃度を0.5質量%とし、移動相にテトラヒドロフランを用い、流速を1.0ml/minとして行う。測定は、例えば、株式会社日立製作所製の高速液体クロマトグラフ「L6000」と、株式会社島津製作所のデータ解析装置「C−R4A」を用いて行うことができる。カラムとしては、例えば、東ソー株式会社製のGPCカラムである「G2000HXL」及び「G3000HXL」を用いることができる。
取り扱い性向上の観点からは、メソゲンエポキシモノマーの割合は、エポキシ樹脂全体の50%以下であることが好ましく、49%以下であることがより好ましく、48%以下であることがさらに好ましい。
固有粘度(溶融時の粘度)の低減の観点からは、メソゲンエポキシモノマーの割合は、エポキシ樹脂全体の35%以上であることが好ましく、37%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。
−他のエポキシ化合物−
本開示のエポキシ樹脂組成物におけるエポキシ樹脂は、メソゲン構造を有するエポキシ化合物に加えて、その他のエポキシ化合物を含んでいてもいなくてもよい。その他のエポキシ化合物としては、例えば、置換又は非置換のベンゼン環及び2つ以上のグリシジルオキシ基を有するエポキシ化合物、並びに置換又は非置換のナフタレン環及び2つ以上のグリシジルオキシ基を有するエポキシ化合物が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物が、メソゲン構造を有するエポキシ化合物に加えて、その他のエポキシ化合物を含有する場合、エポキシ樹脂組成物の全量中の全エポキシ樹脂中の、「その他のエポキシ化合物」の含有割合は、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
〔重量平均分子量〕
エポキシ樹脂全体の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されない。低粘度化の観点からは、エポキシ樹脂全体の重量平均分子量(Mw)は500〜3000であることが好ましく、700〜2500であることがより好ましく、800〜2000であることがさらに好ましい。
本開示において、重量平均分子量(Mw)は液体クロマトグラフィーにより得られる値とする。
液体クロマトグラフィーは、試料濃度を0.5質量%とし、移動相にテトラヒドロフランを用い、流速を1.0ml/minとして行う。検量線はポリスチレン標準サンプルを用いて作成し、それを用いてポリスチレン換算値で重量平均分子量(Mw)を測定する。
測定は、例えば、株式会社日立製作所の高速液体クロマトグラフ「L6000」と、株式会社島津製作所のデータ解析装置「C−R4A」を用いて行うことができる。カラムとしては、例えば、東ソー株式会社のGPCカラムである「G2000HXL」及び「G3000HXL」を用いることができる。
〔エポキシ当量〕
エポキシ樹脂全体のエポキシ当量は、特に制限されない。エポキシ樹脂の流動性、硬化物の熱伝導性、破壊靭性と曲げ弾性率の両立等の観点からは、当該エポキシ当量は、245g/eq〜500g/eqであることが好ましく、250g/eq〜450g/eqであることがより好ましく、260g/eq〜400g/eqであることがさらに好ましい。本開示において、エポキシ当量は、過塩素酸滴定法により測定する。
<(メタ)アクリル化合物>
本開示のエポキシ樹脂組成物は、(メタ)アクリル化合物を含有する。本開示において、(メタ)アクリル化合物とは、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1つを表す。
(メタ)アクリル化合物の種類は特に制限されず、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する(メタ)アクリル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する(メタ)アクリル化合物であることがより好ましい。(メタ)アクリル化合物が(メタ)アクリロイル基を2つ以上有すると、エポキシ樹脂組成物を硬化物としたときにエポキシ樹脂と(メタ)アクリル化合物のポリドメインが好適に形成される傾向にある。(メタ)アクリル化合物が(メタ)アクリロイル基を3つ以上有すると、エポキシ樹脂組成物を硬化物としたときに架橋が形成され、硬化物の曲げ弾性率がより向上する傾向にある。
(メタ)アクリル化合物は、環状構造を有する(メタ)アクリル化合物であることが好ましい。環状構造としては、ベンゼン環、ナフタレン環、トリオン構造、トリアジン構造、ペンタゾール構造、シクロアルカン構造等が挙げられる。これらの環状構造を有する(メタ)アクリル化合物を用いると、硬化物の曲げ弾性率がより向上する傾向にある。この理由は、これらの環状構造は比較的剛直な構造であるためと推測される。なかでも、(メタ)アクリル化合物の有する環状構造としては、トリオン構造及びトリアジン構造が好ましい。
本開示のエポキシ樹脂組成物は、環状構造を有する(メタ)アクリル化合物と、環状構造を有さない(メタ)アクリル化合物と、をいずれも含有していてもよい。エポキシ樹脂組成物が環状構造を有する(メタ)アクリル化合物と、環状構造を有さない(メタ)アクリル化合物と、をいずれも含有する場合、(メタ)アクリル化合物の全量に対する、環状構造を有する(メタ)アクリル化合物の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
硬化物の破壊靭性の向上の観点からは、(メタ)アクリル化合物は、メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂と混合して硬化したときに、エポキシ樹脂を含有するドメインがスメクチック構造を形成しうるものであることが好ましい。
好ましい(メタ)アクリル化合物としては、具体的には、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
エポキシ樹脂と(メタ)アクリル化合物との配合割合は特に制限されない。例えば、(メタ)アクリル化合物の含有量はエポキシ樹脂100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル化合物の含有量がエポキシ樹脂100質量部に対して10質量部以上であると、曲げ弾性率向上の効果が好適に得られる傾向にある。また、(メタ)アクリル化合物の含有量はエポキシ樹脂100質量部に対して60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル化合物の含有量がエポキシ樹脂100質量部に対して60質量部以下であると、硬化したときに、アクリル樹脂を含有するドメインと、エポキシ樹脂を含有するドメインと、の間で比較的均一にミクロな相分離が得られることによって、破壊靭性と曲げ弾性率を好適に両立できる傾向にある。また、硬化物におけるエポキシ樹脂を含有するドメインにおいて、好適にスメクチック構造が形成される傾向にある。上記のバランスの観点からは、(メタ)アクリル化合物の含有量はエポキシ樹脂100質量部に対して、10質量部〜60質量部であることが好ましく、15質量部〜50質量部であることがより好ましく、20質量部〜40質量部であることがさらに好ましい。
<硬化剤>
エポキシ樹脂組成物は、メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル化合物と、に加えて、硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、エポキシ樹脂と硬化反応を生じることができる化合物であれば、特に制限されない。硬化剤の具体例としては、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂組成物の硬化物中に高次構造を形成する観点からは、硬化剤としては、アミン硬化剤又はフェノール硬化剤が好ましく、アミン硬化剤がより好ましい。アミン硬化剤としては、芳香環及びアミノ基を有するアミン硬化剤が好ましく、アミノ基が芳香環に直接結合しているアミン硬化剤がより好ましく、芳香環に直接結合しているアミノ基を2つ以上有するアミン硬化剤がさらに好ましい。芳香環としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。
アミン硬化剤として具体的には、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、1,5−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、トリメチレン−ビス−4−アミノベンゾアート等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物の硬化物中にスメクチック構造を形成する観点からは3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及びトリメチレン−ビス−4−アミノベンゾアートが好ましく、低吸水率及び高破壊靭性の硬化物を得る観点からは3,3’−ジアミノジフェニルスルホンがより好ましい。
フェノール硬化剤としては、低分子フェノール化合物、及び低分子フェノール化合物をメチレン鎖等で連結してノボラック化したフェノールノボラック樹脂が挙げられる。低分子フェノール化合物としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等の単官能フェノール化合物、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の2官能フェノール化合物、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等の3官能フェノール化合物などが挙げられる。
エポキシ樹脂組成物における硬化剤の含有量は特に制限されない。硬化反応の効率性の観点からは、エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤の官能基の当量数(アミン硬化剤の場合は活性水素の当量数)と、エポキシ樹脂のエポキシ基の当量数との比(官能基の当量数/エポキシ基の当量数)が0.3〜3.0となる量であることが好ましく、0.5〜2.0となる量であることがより好ましく、0.8〜1.3となる量であることがさらに好ましい。
<その他の成分>
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じてエポキシ樹脂と硬化剤以外のその他の成分を含んでもよい。例えば、エポキシ樹脂組成物は、硬化触媒、フィラー等を含んでもよい。硬化触媒の具体例としては、特定エポキシ化合物の合成に使用しうる反応触媒として例示した化合物が挙げられる。
〔エポキシ樹脂組成物の粘度〕
エポキシ樹脂組成物の粘度は、特に制限されず、エポキシ樹脂組成物の用途に応じて選択できる。取り扱い性の観点から、エポキシ樹脂組成物の100℃における粘度は200Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましく、50Pa・s以下であることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂組成物の100℃における粘度は、レオメータ(例えば、MCR−301、アントンパール社製)により振動モードで測定することができる。例えば、直径12mmの平行平板部レートを用い、周波数1kHz、ギャップ0.2mm、ひずみ2%の条件で測定することができる。
〔エポキシ樹脂組成物の用途〕
エポキシ樹脂組成物の用途は特に制限されず、例えば、航空機、宇宙船等に用いる繊維強化複合材料(FRP)の製造に好適に用いることができる。
また、本開示のエポキシ樹脂組成物は、繊維強化複合材料の製造において、熱可塑性樹脂の粒子をプリプレグの表面領域に局在させる等の工程を省略した製造方法にも好適に用いることができる。
≪エポキシ樹脂硬化物≫
本開示のエポキシ樹脂硬化物は、前述の本開示のエポキシ樹脂組成物の硬化物である。エポキシ樹脂組成物を硬化させるときの条件は特に制限されず、含有するエポキシ樹脂、(メタ)アクリル化合物、硬化剤等の各成分の種類、配合割合等に応じて適宜調整することができる。例えば、エポキシ樹脂組成物を硬化させるときの条件は、100℃〜200℃において、1時間〜5時間の条件としてもよい。
〔高次構造〕
エポキシ樹脂硬化物は、破壊靭性の観点から、エポキシ樹脂を含有するドメインにおいて、スメクチック構造又はネマチック構造を形成していることが好ましく、スメクチック構造を形成していることが好ましい。
〔ガラス転移温度〕
エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は130℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。ガラス転移温度の上限は特に制限されず、例えば180℃であってもよい。
硬化物のガラス転移温度は、例えば、以下のように測定することができる。硬化物を短冊状に切り出して試験片を作製し、引張りモードによる動的粘弾性測定を行う。測定条件は、周波数10Hz、昇温速度5℃/分、ひずみ0.1%とし、得られた温度‐tanδ関係図において、tanδが最大となる温度を、ガラス転移温度とみなせばよい。評価装置には、例えば、RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント社)を用いることができる。
〔曲げ弾性率〕
エポキシ樹脂硬化物の23℃における曲げ弾性率は3.0GPa以上であることが好ましく、3.1GPa以上であることがより好ましく、3.2GPa以上であることがさらに好ましい。上記曲げ弾性率の上限は特に制限されず、例えば5.0GPaであってもよい。
硬化物の曲げ弾性率は、JIS K7171(2016)に基づいて3点曲げ測定によって測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載された方法で測定することができる。
〔曲げ強度〕
エポキシ樹脂硬化物の曲げ強度は、120MPa以上であることが好ましく、125MPa以上であることがより好ましく、130MPa以上であることがさらに好ましい。上記曲げ強度の上限は特に制限されない。
エポキシ樹脂硬化物の曲げ強度は、JIS K6911(2006)に記載された3点曲げ試験により測定することができる。
〔破壊靭性〕
エポキシ樹脂硬化物の破壊靭性値は1.0MPa・m1/2以上であることが好ましく、1.2MPa・m1/2以上であることがより好ましく、1.3MPa・m1/2以上であることがさらに好ましく、1.4MPa・m1/2以上であることが特に好ましい。上記破壊靭性の上限は特に制限されず、例えば3.0MPa・m1/2であってもよい。
硬化物の破壊靭性値は、ASTM D5045に基づいて3点曲げ測定を行うことで測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載された方法で測定することができる。
≪複合材料≫
本開示の複合材料は、本開示のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む。
<強化材>
複合材料に含まれる強化材の材質は特に制限されず、複合材料の用途等に応じて選択できる。強化材として具体的には、炭素材料、ガラス、芳香族ポリアミド系樹脂(例えば、ケブラー(登録商標))、超高分子量ポリエチレン、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、マイカ、シリコン等が挙げられる。強化材の形状は特に制限されず、繊維状、粒子状(フィラー)等が挙げられる。複合材料の強度の観点からは、強化材は炭素材料であることが好ましく、炭素繊維であることがより好ましい。複合材料に含まれる強化材は、1種でも2種以上であってもよい。
複合材料の形態は、特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂硬化物を含む少なくとも1つの硬化物含有層と、強化材を含む少なくとも1つの強化材含有層とが積層された構造を有するものであってもよい。
次に本開示の実施形態を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
〔エポキシ樹脂1の合成〕
500mlの三口フラスコに、(4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、下記構造式(1)の化合物)を50質量部加えた。さらに、三口フラスコに合成溶媒(シクロヘキサノン)を80質量部添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを120℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。エポキシ化合物が溶解し、透明な溶液になったことを確認した後、1,5−ジヒドロキシナフタレンを3.8質量部、反応触媒(トリn−ブチルホスフィンの1,4−ベンゾキノン誘導体(TBP2))を0.5質量部添加し、120℃のオイルバスで加熱を継続した。3時間加熱を継続した後に、反応溶液からシクロヘキサノンを減圧留去し、残渣を室温(25℃)まで冷却することにより、エポキシ樹脂1を得た。
〔エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物の作製〕
得られたエポキシ樹脂1を100質量部と、(メタ)アクリル化合物1(エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、商品名:A−9300、新中村化学工業株式会社)を20質量部と、硬化剤1(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン)を20.0質量部(エポキシ樹脂1との当量比が1:1)と、をステンレスシャーレにそれぞれ量り取り、エポキシ樹脂組成物を一旦ホットプレートで180℃に加熱し、ステンレスシャーレ内のエポキシ樹脂組成物が溶融した後に、スパチュラで撹拌し、室温に冷却した。次いで、エポキシ樹脂組成物を、常温から180℃まで昇温速度毎分2℃で昇温させた後、180℃で4時間加熱して硬化を完了させて、エポキシ樹脂硬化物を得た。また、前記の溶融したエポキシ樹脂組成物をスライドガラス上に塗布し、ホットプレートで180℃で4時間加熱して硬化を完了させて、偏光顕微鏡観察用サンプルを作製した。作製した硬化物について、以下の方法により、周期構造の観察を行った。また、以下の方法により、ガラス転移温度、曲げ弾性率、曲げ強度、及び破壊靭性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
[高次構造の観察]
株式会社Malvern PanalyticalのX線回折装置(商品名:Empyrean)を用いて、エポキシ樹脂硬化物の高次構造を観察した。CuKα1線を用い、管電圧40kV、管電流20mA、2θ=1°〜30°の範囲でX線回折測定を行ったとき、2θ=2°〜10°の範囲に回折ピークが現れる場合に、硬化物中にスメクチック構造が形成されていると判断した。また、前記偏光顕微鏡観察用サンプルを偏光顕微鏡(株式会社ニコン製ECLIPSE LV100POL)クロスニコルで観察し、干渉像が確認できない場合に、硬化物中に等方相が形成されていると判断した。
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
試験片のガラス転移温度は、引張りモードによる動的粘弾性測定を行って算出した。測定条件は、周波数10Hz、昇温速度5℃/分、ひずみ0.1%とした。得られた温度‐tanδ関係図において、tanδが最大となる温度を、ガラス転移温度とみなした。評価装置には、RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント社)を用いた。
[破壊靭性値の測定]
作成したエポキシ樹脂硬化物を3.75mm×7.5mm×33mmの直方体に切り出し、破壊靭性評価用の試験片を作製した。エポキシ樹脂硬化物の破壊靭性の指標として、破壊靭性値(MPa・m1/2)を用いた。試験片の破壊靭性値は、ASTM D5045に基づいて3点曲げ測定を行って算出した。評価装置には、インストロン5948(インストロン社)を用いた。
[曲げ強度及び曲げ弾性率の測定]
実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂硬化物を2.0mm×5.0mm×40mmの直方体に切り出し、曲げ弾性率及び曲げ強度評価用の試験片を作製した。この試験片を用いて、テンシロン万能材料試験機(インストロン5948、インストロン社)で支点間距離32mm・クロスヘッド速度1mm/minの条件で曲げ試験を行った。測定した結果を用いて、下記式(A)から曲げ応力−変位カーブを作成し、その最大応力を曲げ強度とした。また下記式(B)から曲げ歪みを算出し、曲げ歪み0.25%の時の曲げ応力と曲げ歪み0.45%のときの曲げ応力を用いて、式(C)によって曲げ弾性率を算出した。
<実施例2〜実施例5、比較例1>
エポキシ樹脂1に対する(メタ)アクリル化合物1の添加量、及びエポキシ樹脂1に対する硬化剤1の当量比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
表1中、「(メタ)アクリル化合物1の添加量」とは、エポキシ樹脂1に対する(メタ)アクリル化合物1の含有率(質量%)を表す。また、「硬化剤1当量比」とは、エポキシ樹脂1の当量数に対する硬化剤1の活性水素の当量数の比を表す。「−」は成分を配合しないことを意味する。「Sm」はエポキシ樹脂硬化物中にスメクチック構造が形成されていることを表す。「Iso」はエポキシ樹脂硬化物中に異方性のない等方相が形成されていたことを表す。
<比較例2>
エポキシ樹脂1を100質量部と、エポキシ樹脂2(3官能液状エポキシ樹脂、商品名:jER630、三菱ケミカル株式会社)を30質量部と、硬化剤1を39.4質量部と、をステンレスシャーレにそれぞれ量り取り、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を作製し、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
表1からわかるように、実施例で作製したエポキシ樹脂硬化物では、曲げ弾性率が3.0GPa以上、かつ破壊靭性値は1.3MPa・m1/2以上であり、曲げ弾性率及び破壊靭性のいずれも良好であった。

Claims (12)

  1. メソゲン構造を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル化合物と、を含有するエポキシ樹脂組成物。
  2. 前記メソゲン構造が下記一般式(1)で表されるメソゲン構造を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。

    一般式(1)中、Xは単結合、又は下記群(A)より選択される少なくとも1種の2価の基を有する連結基を表す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を表す。nはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。*は隣接する原子との結合部位を表す。

    群(A)中、Yはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を表す。nはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、kは0〜7の整数を示し、mは0〜8の整数を示し、lは0〜12の整数を表す。
  3. 前記一般式(1)で表される構造が、下記一般式(3)及び一般式(4)からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。

    一般式(3)及び一般式(4)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。*は隣接する原子との結合部位を表す。
  4. 前記メソゲン構造を有するエポキシ化合物が、少なくとも2つのメソゲン構造と、前記少なくとも2つのメソゲン構造の間に配置される芳香環を含む2価の基と、を有するエポキシ化合物を含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 前記(メタ)アクリル化合物が、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 前記(メタ)アクリル化合物が、環状構造を有する、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 前記環状構造が、トリオン構造又はトリアジン構造である、請求項6記載のエポキシ樹脂組成物。
  8. 前記(メタ)アクリル化合物の含有量が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して、10質量部〜60質量部である、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. さらに硬化剤を含有する、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  10. 請求項9に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物である、エポキシ樹脂硬化物。
  11. 請求項10に記載のエポキシ樹脂硬化物と、強化材と、を含む複合材料。
  12. 前記強化材が炭素材料を含む、請求項11に記載の複合材料。
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