以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
また、本明細書において、「(共)重合体」とは、単独重合体および共重合体の総称である。
<粘着剤組成物>
本発明の一形態は、
(A)成分:ポリエーテル骨格および2個以上の水酸基を有するウレタンプレポリマー、
(B)成分:多官能(メタ)アクリレート、
(C)成分:架橋剤、
(D)成分:光ラジカル開始剤、ならびに
(E)成分:帯電防止剤、
を含有することを特徴とする、熱硬化型粘着剤組成物に関する。
本発明者らは、上記構成によって課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。
ウレタン系粘着剤組成物は、一般的に、組成物に含まれるウレタン系化合物と、例えば、イソシアネート化合物等の架橋剤とが熱重合、架橋反応によって硬化することで、粘着剤層を形成する。特許文献1から3までのような従来のウレタン系粘着剤組成物では、ウレタン系化合物もしくは架橋剤の種類、これらの含有量比、または反応条件等を調節することによって、粘着性およびリワーク性を制御することを試みている。しかしながら、粘着性と、リワーク性とは、共に粘着剤層の粘着力に依存することからトレードオフの関係となり、高いレベルでの粘着性およびリワーク性の両立は困難であるという問題を有していた。
一方、本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、(A)成分:ポリエーテル骨格および2個以上の水酸基を有するウレタンプレポリマーおよび(C)成分:架橋剤を含有する。そして、本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、これらに加えて、(B)成分:多官能(メタ)アクリレートおよび(D)成分:光ラジカル開始剤をさらに含有する。このため、リワークの際に光照射が行われることで、(B)成分:多官能(メタ)アクリレートや、これに由来する(メタ)アクリル(共)重合体の光重合、架橋反応が進行し、粘着剤の粘着力が大幅に低下する。その結果、本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物の熱硬化物から構成される粘着剤層は、光照射前には良好な接着力を有しつつも、極めて良好なリワーク性を有することとなる。このように、本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、従来のウレタン系粘着剤組成物における粘着性と、リワーク性とがトレードオフの関係にあるとの技術的課題を乗り越えてなされたものである。すなわち、本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、従来のウレタン系粘着剤組成物とは全く異なる設計思想によって、粘着状態の粘着力とリワーク時の粘着力とを別途に制御することを可能にするものである。
また、本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、ウレタン系化合物として、(A)成分:ポリエーテル骨格および2個以上の水酸基を有するウレタンプレポリマーを含有する。ここで、ポリエーテル骨格は、その分子構造から、ガラス等の種々の被着体に対して高い濡れ性を付与しうることから、粘着剤層の被着体に対する濡れ性が向上する。
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、熱硬化されて粘着剤層を形成する。すなわち、当該粘着剤層は、本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物の熱硬化物から構成される。なお、本明細書において、熱硬化物とは、熱により架橋反応が進行することで形成される硬化物である。熱硬化物は、必ずしも加熱を必要とするものではなく、室温(20℃以上25℃以下)にて硬化された硬化物も含むものとする。
また、本発明の好ましい一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、光照射によって、熱硬化型粘着剤組成物の熱硬化物の粘着力が低下する、熱硬化型粘着剤組成物に関する。ここで、「光照射によって、熱硬化型粘着剤組成物の粘着力が低下する」とは、光照射によって、熱硬化型粘着剤組成物自体およびその熱硬化物の粘着力が低下することを意味する。このため、当該熱硬化型粘着剤組成物は、粘着状態では極めて良好な粘着性を示しつつ、リワークの際に光照射処理を行うことによって、顕著に優れたリワーク性を示す。ここで、当該熱硬化型粘着剤組成物の熱硬化物の光照射処理前の粘着力に対する、光照射後の粘着力の割合や、その光照射前後の粘着力は、後述する粘着剤層や粘着フィルムと同様の範囲であることが好ましい。
以下、本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物を構成する各成分について、詳細に説明する。
[(A)成分:ポリエーテル骨格および2個以上の水酸基を有するウレタンプレポリマー]
本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、(A)成分:ポリエーテル骨格および2個以上の水酸基を有するウレタンプレポリマーを含有する。(A)成分は、熱硬化型粘着剤組成物の熱硬化物から構成される粘着剤層に粘着性を付与する機能を有する。かような(A)成分は、熱重合、架橋が進行されることで、粘着剤層の形成に寄与しうる。また、ポリエーテル骨格は、その分子構造から、ガラス等の種々の被着体に対する高い濡れ性を付与する機能を有する。よって、(A)成分は、他のウレタンプレポリマーを使用した場合と比較して、粘着剤層の被着体に対するより高い濡れ性の実現に寄与しうる。また、(A)成分は、より低い剥離帯電圧の実現にも寄与しうる。
(A)成分は、より詳細には、ポリエーテル構造を主鎖の一部として有する、1分子中に2個以上の水酸基を含有するウレタンオリゴマーまたはポリウレタンである。ポリエーテル構造とは、例えば、メチレンオキサイド鎖、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、ブチレンオキサイド鎖等のアルキレンオキサイド鎖等の繰り返し構造を表す。なお、(A)成分の分子内の水酸基の位置としては、特に制限されないが、少なくとも両末端に水酸基を有することが好ましい。(A)成分は、これらを満たすウレタンプレポリマーであれば、特に制限されず、公知のものを使用することができる。
ウレタンプレポリマーは、2個以上の水酸基を有する成分(例えば、ポリオール成分)と、多官能イソシアネート成分とを反応させて得ることができることが広く知られている。ここで、(A)成分としては、例えば、(a1)成分:ポリエーテルポリオールと、(a2)成分:多官能イソシアネートとを反応させて得られるもの等が挙げられる。
(a1)成分としては、特に制限されず、公知のポリエーテルポリオールを使用することができる。ポリエーテルポリオールの水酸基数は、特に制限されないが、1分子中に2個以上4個以下の範囲であることが好ましい。
(a1)成分としては、例えば、メチレンオキサイド鎖、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、ブチレンオキサイド鎖等のアルキレンオキサイド鎖の繰り返し構造を有するポリエーテルポリオールが挙げられる。アルキレンオキサイド鎖は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でもイソシアネート基との反応性が優れる点から第1級炭素原子に結合する水酸基を有するものが好ましい。具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、末端ポリエチレングリコールキャップのポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されない。
(a1)成分の数平均分子量は、特に限定されないが、700以上5,000以下であることが好ましい。また、(a1)成分の数平均分子量は、1,000以上4,000以下であることがより好ましい。上記範囲であると、合成時の反応制御がより容易となる。なお、(a1)成分の数平均分子量は、ゲルパーミーションクロマトグラフ(GPC)法によるポリスチレン換算値として求めることができる。
(a2)成分としては、特に制限されず、公知の多官能イソシアネートを使用することができる。例えば、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。また、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアナートメチルシクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。さらに、これらジイソシアネートのアダクト体、ビュウレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、変色を抑制できる点から、脂肪族または脂環式ジイソシアネートが好ましく、合成時の反応制御がより容易になる点で脂肪族ジイソシアネートがより好ましい。
(A)成分は、ポリエーテル骨格、ならびに2個以上の水酸基および(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタンプレポリマーを含有することが好ましい。当該ウレタンプレポリマーによれば、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムのリワーク性がより向上する。後述する(D)成分により、(A)成分の、または(A)成分と、後述する(B)成分もしくはその(共)重合体との光重合、架橋反応が進行するからであると推測している。また、当該ウレタンプレポリマー分子内の(メタ)アクリロイルオキシ基の位置としては、特に制限されないが、側鎖として(メタ)アクリロイルオキシ基を有することが好ましい。当該ウレタンプレポリマーによれば、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムのリワーク性の向上効果がより高まる。
ポリエーテル骨格、ならびに2個以上の水酸基および(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタンプレポリマーとしては、特に制限されず、公知のものを使用することができる。例えば、(a1)成分と、(a2)成分と、(a3)成分:水酸基またはイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物((メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物)とを反応させて得られるもの等が挙げられる。ここで、(a3)成分は、(A)成分中に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入する目的で用いるものである。
(a3)成分としては、特に制限されず、公知の水酸基またはイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。これらのなかでも、原料入手の容易性、硬化性および粘着物性の点から、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
また、ポリエーテル骨格、ならびに2個以上の水酸基および(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタンプレポリマーとしては、他にも、以下のものを使用してもよい。例えば、(a1)成分と、3官能以上の多官能イソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応生成物である、2個以上のイソシアネート基を有する化合物とを反応させて得られるものが挙げられる。ここで、3官能以上の多官能イソシアネートは、特に制限されず、例えば、後述する(C)成分の項で示している化合物と同様のものを用いることができる。また、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、特に制限されず、例えば、上記(a3)成分と同様のものをも用いることができる。また、例えば、上記(a2)成分と、3官能以上のポリオールと、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応生成物である、2個以上の水酸基を有する化合物とを反応させて得られるものが挙げられる。ここで、3官能以上のポリオールは、特に制限されず、例えば、上記(a1)成分の項で示している化合物と同様のものを用いることができる。また、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物は、特に制限されず、例えば、上記(a3)成分と同様のものを用いることができる。
また、(A)成分は、シロキサン骨格およびポリエーテル骨格、ならびに2個以上の水酸基を有するウレタンプレポリマーを含有することが好ましい。すなわち、当該ウレタンプレポリマーは、より詳細には、ポリエーテル構造に加えてポリシロキサン構造を主鎖の一部として有する、1分子中に2個以上の水酸基を含有するウレタンオリゴマーまたはポリウレタンである。ここで、ポリシロキサン構造とは、-Si(R)2-O-Si(R)2-(ここで、Rは、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基を表す)で表されるシロキサン結合を有する構造を表す。当該ウレタンプレポリマーによれば、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの被着体に対する濡れ性がより向上する。ポリシロキサン骨格は、その分子構造から、ガラス等の種々の被着体に対して高い濡れ性を付与する機能を有するからであると推測している。
当該ウレタンプレポリマーとしては、例えば、(a1)成分と、(a2)成分と、(a4)成分:水酸基またはイソシアネート基を有するポリシロキサン化合物(シロキサン結合を有する化合物)とを反応させて得られるもの等が挙げられる。ここで、(a4)成分は、(A)成分中にポリシロキサン骨格を導入する目的で用いるものである。
(a4)成分としては、特に制限されず、公知の水酸基またはイソシアネート基を有するポリシロキサン化合物を使用することができる。これらのなかでも、原料入手の容易性、硬化性および粘着物性の点から、水酸基を有するポリシロキサン化合物が好ましい。
水酸基を有するポリシロキサン化合物としては、例えば、信越化学工業株式会社製 KF-6000、KF-6001、KF-6002、KF-6003等のカルビノール変性シリコーンオイル等が挙げられる。
また、例えば、下記化学式で表される化合物が挙げられる。
ここで、Raは、それぞれ独立して、2価の有機基を表し、Rbは、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基を表し、nは、1以上の整数を表す。
イソシアネート基を有するポリシロキサン化合物としては、例えば、上記化学式中の水酸基の位置に、水酸基に代えてイソシアネート基が配置された構造を有する化合物等が挙げられる。
ポリエーテル骨格および2個以上の水酸基を有するウレタンプレポリマーがポリシロキサン骨格を有する場合、ポリシロキサン骨格からなる部分構造の含有割合は、ポリエーテル骨格からなる部分構造およびシロキサン骨格からなる部分構造の総質量に対して、3質量%以上70質量%以下であることが好ましく、5質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの粘着性とリワーク性とがより高いレベルで両立される。熱硬化型粘着剤組成物中のウレタン化合物の量がより適切となり、より適切な粘着力が得られるからと推測している。また、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの被着体に対する濡れ性がより向上する。種々の被着体に対する高い濡れ性を付与する機能を有するシロキサン骨格の含有量がより十分となるからであると推測している。なお、ポリシロキサン骨格の含有割合は、ポリエーテル骨格を構成するポリエーテルポリオールおよびシロキサン骨格を構成する水酸基を有するポリシロキサン化合物の総質量に対する、当該ポリシロキサン化合物の混合割合と実質的に同様である。
以上より、(A)成分は、シロキサン骨格およびポリエーテル骨格、ならびに2個以上の水酸基を有するおよび(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタンプレポリマーを含有することが特に好ましい。各構造の好ましい態様は上記説明したものと同様である。
ここで、シロキサン骨格およびポリエーテル骨格、ならびに2個以上の水酸基を有するおよび(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタンプレポリマーの好ましい具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシ基を含有するポリエーテル、ポリシロキサン変性両末端水酸基ポリウレタン、すなわち、両末端が水酸基であり、側鎖にアクリロイルオキシ基を有し、かつポリエーテル骨格を有するウレタンプレポリマー等が挙げられる。
かような(A)成分としては、(a1)成分と、(a2)成分と、(a3)成分と、(a4)成分とを反応させて得られるものを好ましく用いることができる。
なお、(A)成分は、ポリエーテル骨格、ポリシロキサン骨格以外の他の骨格構造を有していてもよい。かような骨格構造は、特に制限されない。例えば、(A)成分の製造において、原料として、ポリエーテルポリオールに加えて、低分子ポリオール類、ポリエーテルポリオール以外のオリゴマー・高分子ポリオール類、または多価アミン類等をさらに添加することで得ることができる骨格構造等が挙げられる。
低分子ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ダイマージオール、ヒマシ油ポリオール等が挙げられる。
オリゴマー・高分子ポリオール類としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。これらは公知のものを使用することができる。
多価アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等が挙げられる。
(A)成分の数平均分子量は、特に制限されないが、1,000以上であることが好ましい。また、(A)成分の数平均分子量は、20,000以上500,000以下であることがより好ましく、50,000以上200,000以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、熱硬化型粘着剤組成物の粘度がより適度な範囲となり、より作業性が向上する。
(A)成分の数平均分子量は、例えば、以下の方法で算出することができる。サンプル瓶へ(A)成分10mgとTHF10mlとを添加し、1終夜静置することで溶解し、PTFEカードリッジフィルター(0.5μm)でろ過することでサンプルを得る。検出器としてRI検出器RI8020(東ソー株式会社製)、測定用カラムとしてTSKgelGMR-HHRL(東ソー株式会社製)×2本直列、HLC-8020GPC(東ソー株式会社製)を用いる。測定条件は、カラム温度40℃、流速1.0ml/min、溶媒THFの条件で測定を行い、東ソー株式会社製標準ポリスチレンを用いた3次近似曲線検量線として数平均分子量の解析を行う。
(A)成分の水酸基価は、特に制限されないが、1mg・KOH/g以上230mg・KOH/g以下であることが好ましい。また、(A)成分の水酸基価は、3mg・KOH/g以上150mg・KOH/g以下であることがより好ましく、4mg・KOH/g以上100mg・KOH/g以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの粘着力がより適切な範囲となり、粘着剤層の脱落の発生の低減効果がより向上する。(A)成分と後述する(C)成分との熱重合、架橋反応の進行がより適切となるからであると推測している。なお、水酸基価は、JIS K0070:1992に準拠した測定より求めることができる。ここで、(A)成分の水酸基価は、水酸基の含有量の一つの指標となりうる。
(A)成分の二重結合当量(二重結合1molあたりのポリマー質量(g))は、特に制限されないが、30,000g/mol以下であることが好ましい。また、(A)成分の二重結合当量は、20,000g/mol以下であることがより好ましく、10,000g/mol以下であることがさらに好ましい。また、(A)成分の二重結合当量は、特に制限されないが、1,000g/mol以上であることが好ましい。上記範囲であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの粘着力がより適切な範囲となり、粘着剤層の脱落の発生がより低減される。後述する(D)成分による、(A)成分の、または(A)成分と(B)成分もしくはその(共)重合体との光重合、架橋反応の進行がより適切となるからであると推測している。ここで、(A)成分が(メタ)アクリロイルオキシ基を有する場合、(A)成分の二重結合当量は、(メタ)アクリロイルオキシ基の含有量の一つの指標となりうる。
(A)成分は、合成品であっても市販品であってもよい。
(A)成分の製造方法としては、特に制限されず、公知のウレタン化合物の合成方法を使用することができる。これらの中でも、公知のウレタン化反応を使用し、水酸基が過剰となる条件を適用することが好ましい。(A)成分およびその製造方法としては、特開2005-169377号公報、特開2007-168377号公報等に記載の公知の化合物および公知の製造方法を用いてもよい。また、(A)成分を製造する際には、必要に応じて公知の重合禁止剤、公知のウレタン化触媒等を用いてもよい。
市販品としては、例えば、根上工業株式会社製 アートレジン(登録商標)UN5500P、UN5500PSi、UN5500PSi5等を用いることができる。
(A)成分を構成するウレタンプレポリマーは、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
[(B)成分:多官能(メタ)アクリレート]
本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、(B)成分:多官能(メタ)アクリレート(B)を含む。(B)成分は、光照射によって光重合し、架橋反応をする機能を有することから、光照射後の粘着力の低下によるリワーク性の向上に寄与しうる。(B)成分を含有しない場合、光照射により粘着力が低下せず、リワーク性が不十分となる。
なお、本明細書において、(B)成分には、後述する(F)成分:反応性表面改質剤は含まれないものとする。すなわち、(B)成分には、(メタ)アクリロイルオキシ基と、種々の被着体に対する滑り性を向上させる部分構造とを有する化合物は含まれないものとする。
(B)成分は、後述する(F)成分としての機能を有さないものであって、一分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を含有する化合物であれば特に制限されない。これらの中でも、2官能以上10官能以下の(メタ)アクリレート等が好ましい例として挙げられる。また、(B)成分は、例えば、11官能以上のポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等、11官能以上の(メタ)アクリレートであってもよい。
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジベンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
4官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
5官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
6官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
7官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
8官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
9官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
10官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、3官能(メタ)アクリレートが好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートがより好ましく、トリメチロールプロパントリアクリレートがさらに好ましい。
また、一分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を含有する化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等を用いてもよい。
ウレタン(メタ)アクリレートは、特に制限されない。例えば、ジイソシアネートと、ポリオールと、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるモノマー、オリゴマー等が挙げられる。また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、特開2002-265650公報や、特開2002-355936号公報、特開2002-067238号公報等に記載のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ジイソシアネートとしては、例えば、TDI、MDI、HDI、IPDI、HMDI等が挙げられる。
ポリオールとしては、例えば、ポリ(プロピレンオキサイド)ジオール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)ジオール、エトキシ化ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールSスピログリコール、カプロラクトン変性ジオール、カーボネートジオール等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。
具体的なウレタン(メタ)アクリレートは、特に制限されない。例えば、TDIとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物、IPDIとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物、HDIとペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)との付加物、TDIとPETAとの付加物を作り、残ったイソシアナートとドデシルオキシヒドロキシプロピルアクリレートとを反応させた化合物、6,6ナイロンとTDIとの付加物、ペンタエリスリトールとTDIとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物等が挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートは、ポリオールと二塩基酸より合成したポリエステル骨格に残ったヒドロキシ基に、(メタ)アクリル酸を縮合してアクリレートにしたものである。
具体的なポリエスエルアクリレートは、特に制限されない。例えば、無水フタル酸/プロピオンオキサイド/アクリル酸の反応物、アジピン酸/1,6-ヘキサンジオール/アクリル酸の反応物、トリメリット酸/ジエチレングリコール/アクリル酸の反応物等が挙げられる。
また、(B)成分は、水酸基をさらに含有することが好ましい。当該構造を有することで、粘着剤層の脱落の発生がより低減する。(A)成分と、(C)成分との熱重合、架橋反応の際に、(A)成分と、(B)成分またはその(共)重合体と、(C)成分との熱重合、架橋反応が進行するからであると推測している。
(B)成分の水酸基価は、特に制限されないが、100mg・KOH/g以下であることが好ましい。また、(B)成分の水酸基価は、50mg・KOH/g以下であることがより好ましく、30mg・KOH/g以下であることがさらに好ましい。(下限0mg・KOH/g)上記範囲であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの粘着力がより適切な範囲となり、粘着剤層の脱落の発生がより低減する。(B)成分またはその(共)重合体と、(C)成分との熱重合、架橋反応の進行が適度な範囲となり、(A)成分と、(C)成分との熱重合、架橋反応がより良好に進行するからであると推測している。なお、水酸基価は、JIS K0070:1992に準拠した測定により求めることができる。
(B)成分は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、例えば、新中村化学工業株式会社製のA-TMPT、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、ATM-35E、A-TMMT、A-9550、A-DPH、東亞合成株式会社製のアロニックス(登録商標) M-305、M-402、M-405、大阪有機化学工業株式会社製のビスコート(登録商標)#295、TMPTA、#802,TriPEA等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートは、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱硬化型粘着剤組成物における(B)成分の含有量(二種以上含む場合はその合計量)は、特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して、1質量部以上500質量部以下であることが好ましい。また、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、5質量部以上250質量部以下であることがより好ましい。そして、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、10質量部以上150質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの粘着力がより適切な範囲となる。(A)成分と(B)成分との含有量比が適切な範囲となることで、粘着力がより良好な範囲となるからであると推測している。また、上記範囲であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムのリワーク性がより向上する。リワークの際の光照射による(B)成分の光重合、架橋反応がより進行するからであると推測している。さらに、上記範囲であると、(B)成分がさらに水酸基を有する場合、粘着剤層の脱落の発生がより低減する。(A)成分と、(C)成分との熱重合、架橋反応の際に、(A)成分と、(B)成分またはその(共)重合体と、(C)成分との熱重合、架橋反応が進行するからであると推測している。
このことから、(B)成分に関する好ましい一例として、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量は、10質量部以上150質量部以下であり、(B)成分の水酸基価は、100mg・KOH/g以下であることが挙げられる。
[(C)成分:架橋剤]
本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、(C)成分:架橋剤を含む。(C)成分は、(A)成分との間での熱重合、架橋を進行させる機能を有する。このため、熱硬化型粘着剤組成物の粘着力および光照射後の粘着力を適切な範囲とし、粘着性およびリワーク性の両立に寄与しうる。(C)成分を含有しない場合、粘着力が過剰となり、リワーク性も不十分となる。
(C)成分としては、(A)成分との間での熱重合、架橋反応を進行させることができるものであれば特に制限されない。例えば、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、およびアジリジン系架橋剤、過酸化物等が挙げられる。ここで、過酸化物とは、分子構造内にパーオキサイド構造「-O-O-」を有する化合物を意味する。これらは単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を用いる場合は、同じ系統のものを2種以上組み合わせてもよいし、異なる系統のものをそれぞれ1種以上組み合わせても構わない。
イソシアネート系架橋剤は、特に制限されず、公知のイソシアネート基を有する化合物(イソシアネート化合物)を使用することができる。イソシアネート基を有する化合物としては、単官能イソシアネートと、多官能イソシアネートとが挙げられる。これらの中でも、多官能イソシアネートが好ましい。多官能イソシアネートとしては、2官能イソシアネート(2個のイソシアネート基を有する化合物)と、3官能以上のイソシアネート(3個以上のイソシアネート基を有する化合物)とが挙げられる。
2官能イソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類、芳香族ジイソシアネート類、これらジイソシアネート類のカルボジイミド変性ジイソシアネート類、またはこれらジイソシアネート類を主鎖末端、側鎖、もしくは側鎖末端に有する高分子化合物等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネート類としては、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)等が挙げられる。
脂環式ジイソシアネート類としては、例えば、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6-XDI(水添XDI)、H12-MDI(水添MDI)等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネート類としては、例えば、ダイマー酸ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリデンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)等が挙げられる。
3官能以上のイソシアネートとしては、上記2官能イソシアネートを重縮合してイソシアヌレート変性させたイソシアヌレート体、上記2官能イソシアネートをアダクト変性させたアダクト体、上記2官能イソシアネートとグリセリンやトリメチロールプロパンなどの三価アルコールをビウレット変性させたビウレット体、上記2官能イソシアネート、またはそのアダクト体、ビウレット体もしくはイソシアヌレート体を主鎖末端、側鎖、もしくは側鎖末端に有する高分子化合物等が挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤は、特に制限されず、公知のカルボジイミド化合物を使用することができる。カルボジイミド化合物は、例えば、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミド等が挙げられる。脱炭酸縮合反応に供されるジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、脱炭酸縮合反応に用いられるカルボジイミド化触媒としては、例えば、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、これらの3-ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等が挙げられる。
オキサゾリン系架橋剤は、特に制限されず、公知のオキサゾリン化合物を使用することができる。オキサゾリン化合物としては、例えば、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。オキサゾリン化合物としては、具体的には、オキサゾリン基含有アクリル系ポリマー、オキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマー等が挙げられる。ここで、オキサゾリン基含有アクリル系ポリマーとしては、例えば、アクリル骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているオキサゾリン基含有アクリル系ポリマー等が挙げられる。また、オキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマーとしては、例えば、アクリル骨格またはスチレン骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているオキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマー等が挙げられる。
なお、オキサゾリン基としては、例えば、2-オキサゾリン基、3-オキサゾリン基、4-オキサゾリン基等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤は、特に制限されず、公知のエポキシ化合物を使用することができる。エポキシ化合物としては、例えば、液状エポキシ化合物等が挙げられる。液状エポキシ化合物は、粘着剤組成物を製造する際の混合操作が容易になる点で好ましい。
アジリジン系架橋剤は、特に制限されず、公知のアジリジン化合物を使用することができる。アジリジン化合物としては、例えば、アジリジン環を複数有する多官能アジリジン化合物が挙げられる。多官能アジリジン化合物としては、例えば、米国特許第3,225,013号明細書、米国特許第4,490,505号明細書、及び米国特許第5,534,391号明細書、特開2003-104970号公報に開示された化合物等が挙げられる。多官能アジリジン化合物としては、三官能アジリジン化合物(アジリジン環を3つ有する化合物)を好適に用いることができる。三官能アジリジン化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス[3-アジリジニルプロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(2-メチル-アジリジニル)-プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[2-アジリジニルブチレート]、ペンタエリスリトールトリス-3-(1-アジリジニルプロピオネート)、及びペンタエリスリトールテトラキス-3-(1-アジリジニルプロピオネート)等が挙げられる。
過酸化物としては、特に制限されず、公知のものを使用することができる。過酸化物は、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(別名:ペルオキシ二炭酸ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)、ビス-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ビス-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ビス(4-メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド(過酸化ベンゾイル)、t-ブチルパーオキシブチレート等が挙げられる。
これらの中でも、イソシアネート系架橋剤または過酸化物が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。そして、イソシアネート系架橋剤を単独で使用すること、またはイソシアネート系架橋剤と過酸化物とを併用することがさらに好ましい。
イソシアネート系架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)もしくはペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、これらのアダクト体、ビウレット体もしくはイソシアヌレート体、またはこれらを主鎖末端、側鎖、もしくは側鎖末端に有する高分子化合物が好ましい。また、イソシアネート系架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)もしくはペンタメチレンジイソシアネート(PDI)のアダクト体もしくはイソシアヌレート体がより好ましい。または、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)もしくはペンタメチレンジイソシアネート(PDI)とジオールとの縮合反応で得られた高分子化合物がより好ましい。ここで、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の好ましい例としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)の好ましい例としては、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのイソシアネート架橋剤によれば、(A)成分との間での熱重合、架橋反応の進行をより効率的に行うことができる。
過酸化物としては、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートが好ましい。当該過酸化物によれば、(A)成分との間での熱重合、架橋反応の進行をより効率的に行うことができる。
(C)成分は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、イソシアネート系架橋剤では、例えば、東ソー株式会社製のコロネート(登録商標)L(例えば、L-45E等)、HL、HX、2030、2031、三井化学株式会社製のタケネート(登録商標)D-102、D-110N、D-200、D-202、旭化成ケミカルズ株式会社製のデュラネート(登録商標)24A-100、TPA-100、TKA-100、P301-75E、E402-80B、E402-90T、E405-80T、TSE-100、D-101、D-201、住化バイエルウレタン株式会社のスミジュール(登録商標)N-75、N-3200、N-3300、三井化学株式会社製のスタビオ(登録商標)D-370N、D-376N、日本曹達株式会社製のNISSO-PB(登録商標)TP1001等が挙げられる。カルボジイミド系架橋剤では、例えば、日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライト(登録商標)V-01、V-03、V-05、V-07、V-09等が挙げられる。オキサゾリン系架橋剤では、例えば、株式会社日本触媒製のエポクロス(登録商標)WS-300、WS-500、WS-700、K-1000シリーズ、K-2000シリーズ等が挙げられる。エポキシ系架橋剤では、例えば、三菱ガス化学株式会社製のTETRAD-C、TETRAD-X、株式会社ADEKA製のアデカレジンEPUシリーズ、EPRシリーズ、株式会社ダイセル製のセロキサイドシリーズ等が挙げられる。アジリジン系架橋剤では、例えば、株式会社日本触媒製のケミタイト(登録商標)PZ-33、DZ-22E等が挙げられる。過酸化物では、例えば、日油株式会社製のパークミル(登録商標)ND、パーロイル(登録商標)IB、NPP、IPP、SBP、TCP、OPP、355、L、SA、パーオクタ(登録商標)ND、O、パーヘキシル(登録商標)ND、PV、O、I、パーブチル(登録商標)ND、NHP、PV、O、L、I、A、パーヘキサ(登録商標)25O、MC、TMH、HC、C、25Z、22、ナイパー(登録商標)PMB、BMT、BW、BMT-K40、BMT-M、パーテトラ(登録商標)A等が挙げられる。
熱硬化型粘着剤組成物における(C)成分の添加量は、(A)成分との間での熱重合、架橋反応を進行させることができる量であれば特に制限されない。
(C)成分がイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する化合物)を含む場合、熱硬化型粘着剤組成物中の(A)成分の水酸基総量に対する、イソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基総量の当量比(NCO(total)(モル)/OH(モル))は、0.2以上10以下であることが好ましい。また、当該当量比は、0.4以上10以下であることがより好ましく、0.5以上6以下であることがさらに好ましい。そして、当該当量比は、1以上3.5以下であることが特に好ましい。
上記範囲であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの粘着力がより適切な範囲となり、粘着剤層の脱落の発生がより低減する。(A)成分との間での熱重合、架橋反応の進行がより適切となるからであると推測している。
(C)成分は、2官能イソシアネートまたは3官能以上のイソシアネートを含有することが好ましい。
(C)成分がイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する化合物)を含む場合、熱硬化型粘着剤組成物中のイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基総量に対する、2官能イソシアネートのイソシアネート基量の当量比(NCO(2官能)(モル)/NCO(total)(モル))は、0以上1以下であることが好ましい。また、(C)成分がイソシアネート基を有する化合物が2官能イソシアネートを含むことが好ましいことから、当該当量比は、0超過1以下であることがより好ましい。そして、当該当量比は、0超過1未満であることがさらに好ましく、0.25以上1未満であることがよりさらに好ましい。また、当該当量比は、0.5以上0.9以下であることが特に好ましく、0.7以上0.85以下であることがさらに特に好ましい。上記範囲であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの粘着力がより適切な範囲となる。特に、上記下限値以上であると、粘着剤層の脱落の発生がより低減する。(A)成分との間での熱重合、架橋反応の進行がより適切となるからであると推測している。また、上記上限値以下であると、後述する(E)成分等の添加成分の粘着剤層からのブリードアウトをより確実に抑制することができる。架橋密度がより高くなり、粘着剤層内におけるこれらの成分の拡散がより生じ難くなるからであると推測している。
(C)成分は、3官能以上のイソシアネートを含有することが好ましい。当該イソシアネートによれば、後述する(E)成分等の添加成分の粘着剤層からのブリードアウトをより確実に抑制することができ、基板汚染性がより改善する。粘着剤層中の(A)成分間の架橋密度がより高くなり、粘着剤層内におけるこれらの成分の拡散がより生じ難くなるからであると推測している。
(C)成分がイソシアネート系架橋剤以外の架橋剤を含む場合、当該架橋剤の含有量(二種以上含む場合はその合計量)は、(A)成分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましい。また、当該架橋剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。そして、当該架橋剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの粘着力がより適切な範囲となり、粘着剤層の脱落の発生がより低減する。(A)成分、または(B)成分もしくはその(共)重合体の間での熱重合、架橋反応の進行がより適切となるからであると推測している。
[(D)成分:光ラジカル開始剤]
本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、(D)成分:光ラジカル開始剤を含む。(D)成分は、光照射によってラジカルを発生する機能を有し、(B)成分の光重合、架橋を進行させることで、光照射後の粘着力の低下によるリワーク性の向上に寄与しうる。これより、(D)成分を含有しない場合、光照射により粘着力が低下せずリワーク性が不十分となる。
(D)成分としては、特に制限されず、公知のものを使用できる。例えば、アセトフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物、アンスラキノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。また、その他、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルオパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン等も挙げられる。
アセトフェノン化合物としては、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等が挙げられる。
ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物等が挙げられる。
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
チオキサントン化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
アンスラキノン化合物としては、例えば、4,4’-ジメチルアミノチオキサントン(別名=ミネラーズケトン)、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、α-アシロキシムエステル、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート、2-エチルアンスラキノン等が挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
アクリル化ベンゾフェノンとしては、例えば、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルオパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン等が挙げられる。
これらの中でも、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムのリワーク性をより向上できるとの観点から、アシルホスフィンオキサイド化合物が好ましく、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドがより好ましい。
(D)成分は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、例えば、IGM RESINS社製のOmnirad(登録商標)184、369、651、819、907、1173、TPO H、DKSHジャパン株式会社製のエザキュア(登録商標)KIP150、TZT、日本化薬株式会社製のKAYACURE(登録商標)BMS、DMBI等が挙げられる。
光ラジカル開始剤は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱硬化型粘着剤組成物における(D)成分の含有量(二種以上含む場合はその合計量)は、特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましい。また、(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。そして、(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、1質量部以上2質量部以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムのリワーク性がより向上する。リワークの際の光照射による(B)成分の光重合、架橋反応がより進行するからであると推測している。
[(E)成分:帯電防止剤]
本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、(E)成分:帯電防止剤を含むことが好ましい。(E)成分は、導電性を向上させる機能を有し、粘着剤層の表面抵抗値の低下に寄与しうる。このため、特に被着体である液晶セル等に貼合した後、貼りミス等により剥離する(リワークする)必要が生じた際に、静電気の発生を効果的に抑制することができる。その結果、偏光板等の表面にゴミが付着し易くなったり、液晶配向に乱れが生じやすくなったり、周辺回路素子の静電破壊が生じ易くなったりすることを、安定的に防止することができる。これより、(E)成分を含有しないと、剥離帯電圧が過大となる。
(E)成分は、特に制限されず、公知のものを使用することができる。例えば、イオン液体やビス(フルオロスルホニル)イミド塩類等のイオン導電剤や、界面活性剤等が挙げられる。
イオン液体としては、例えば、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、グアニジニウムイオン、アンモニウムイオン、イソウロニウムイオン、チオウロニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、スルホニウムイオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム等のカチオン成分と、ハロゲンイオン、硝酸イオン、硫酸イオン、燐酸イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、チオ硫酸イオン、亜硫酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスファートイオン、蟻酸イオン、蓚酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等のアニオン成分と、を有する物質が挙げられる。
イオン液体の具体例としては、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1,3-ジメチルイミダゾリウムクロリド、1,3-ジメチルイミダゾリウムジメチルホスファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオジド、1-エチル-3-メタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-p-トルエンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-メチル-1-プロピル-ピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-メチルピロリジニウムブロミド、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムブロミド、1-エチルピリジニウムクロリド、1-エチルピリジニウムブロミド、1-ブチルピリジニウムクロリド、1-ブチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムクロリド、1-エチル-3-メチルピリジニウムエチルサルフェート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムクロリド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(別名:トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド)、テトラブチルアンモニムクロリド、テトラブチルアンモニムブロミド、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラブチルホスホニウムブロミド等が挙げられる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤またはイオン性界面活性剤等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられる。
イオン性界面活性剤としては、炭素数8個以上22個以下のアルキルトリメチルアンモニウムハライド等の陽イオン性界面活性剤、アルキルサルフェート等の陰イオン性界面活性剤等が挙げられる。
これらの中でも、イオン液体であることが好ましく、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであることがより好ましい。
(E)成分は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、例えば、イオン液体では、3Mジャパン株式会社製 3M(商標)イオン液体型帯電防止剤FC-4400等が挙げられる。
帯電防止剤は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱硬化型粘着剤組成物における(E)成分の含有量(二種以上含む場合はその合計量)は、特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して、0.01質量部以上30質量部以下であることが好ましい。また、(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。そして、(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、2質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。上記下限値以上であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの剥離帯電圧がより低減する。また、上記上限値以下であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの基板汚染性がより改善する。
[(F)成分:反応性表面改質剤]
本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない限り、(F)成分:反応性表面改質剤をさらに含有していてもよい。本明細書において、反応性表面改質剤とは、反応性を有する官能基(反応性官能基)および種々の被着体に対する滑り性を向上させる部分構造(低極性部位)を有する化合物を表す。(F)成分は、その分子構造から、粘着剤層の、ガラス等の種々の被着体に対する滑り性を向上させる機能を有する。これにより、(F)成分は、その滑り性向上効果、低極性効果などによって、リワークの際の粘着剤層の粘着力を低下させ、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムのリワーク性の向上に寄与しうる。また、(F)成分は、反応性官能基を有する。よって、熱硬化型粘着剤組成物を構成する(A)成分、(B)成分またはこれらの(共)重合体との間で反応を生じさせ、これらに結合し、少なくともリワークの際には粘着剤層中に固定される。これにより、粘着剤層からの(F)成分のブロードアウトが抑制され、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの基材汚染性の改善に寄与しうる。
なお、本明細書において、(F)成分には、水酸基を有するウレタンプレポリマーは含まれないものとする。すなわち、(F)成分には、水酸基と、種々の被着体に対する滑り性を向上させる部分構造とを有するウレタンプレポリマーは含まれないものとする。
反応性官能基としては、特に制限されず、熱反応性官能基または光反応性官能基のいずれであってもよい。光反応性官能基としては、紫外線反応性官能基が好ましい。これらの反応性官能基としては、例えば、水酸基、不飽和二重結合を有する基、環状エーテル基、酸性基またはその塩の基、塩基性基またはその塩の基、酸ハライド基、酸無水物基、アルデヒド基等が挙げられる。
不飽和二重結合を有する基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基((メタ)アクリロイルオキシ基も含む))、アリル基等が挙げられる。
環状エーテル基としては、例えば、エポキシ基、グリシジル基、オキセタニル基、オキセタン基等が挙げられる。
酸性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシル基、スルホ基[-SO3H]、リン酸基、ホスホン酸基[-PO(OH)2]等が挙げられる。
酸ハライド基としては、例えば、上記酸性基のハロゲン化物基が挙げられる。
酸無水物基としては、例えば、上記酸性基の無水物基が挙げられる。
塩基性基としては、例えば、第1級から第3級までのアミノ基等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリロイル基または水酸基が好ましい。すなわち、(F)成分は、(メタ)アクリロイル基または水酸基を有する反応性表面改質剤を含むことが好ましい。
反応性官能基は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を用いる場合は、同じ系統のものを2種以上組み合わせてもよいし、異なる系統のものをそれぞれ1種以上組み合わせても構わない。
種々の被着体に対する滑り性を向上させる部分構造は、特に制限されず、当該効果を奏する公知の構造を使用することができる。例えば、ポリシロキサン構造、含フッ素基(フルオロ基や、フルオロ基で置換された有機基)等が挙げられる。
(F)成分は、低分子化合物であっても、オリゴマーまたは高分子化合物であってもよい。(F)成分がオリゴマーまたは高分子化合物である場合、(F)成分の骨格構造は、特に制限されない。ポリシロキサン構造からなる骨格を有していてもよい。また、ポリシロキサン構造からなる骨格以外の(共)重合体からなる骨格を、単独で有していてもよく、またポリシロキサン骨格に加えてさらに有していてもよい。(共)重合体からなる骨格としては、ポリエステル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリブタジエン骨格、ポリイソプレン骨格、ポリエーテル骨格、ポリ(メタ)アクリレート骨格等が挙げられる。これらの中でも、ポリエーテル骨格またはポリ(メタ)アクリレート骨格をさらに有することがより好ましい。(F)成分は、より詳細には、ポリエーテル構造を主鎖の一部としてさらに有するか、またはポリ(メタ)アクリレート構造を主鎖の一部としてさらに有することがより好ましい。
(F)成分としては、特に制限されないが、例えば、含フッ素基、親水性基、親油性基および紫外線反応性基含有オリゴマーや、(メタ)アクリル官能基((メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基含む)を有する、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、水酸基含有シリコーン変性(メタ)アクリルポリマー((メタ)アクリロイル基((メタ)アクリロイルオキシ基含む)含有ポリマー)等が挙げられる。
(F)成分は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、含フッ素基含有を有するものは、例えば、DIC株式会社製 メガファック(登録商標)RS-56、RS-56、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-76-NS、RS-78、RS-90等が挙げられる。また、ポリシロキサン構造を有するものは、例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社製 BYK(登録商標)-UV3500、UV-3505、UV-3530、UV-3570、UV-3575、BYK(登録商標)-SILCLEAN3700、SILCLEAN3701、SILCLEAN3720等が挙げられる。
反応性表面改質剤は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱硬化型粘着剤組成物における(F)成分の含有量(二種以上含む場合はその合計量)は、特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して、0.01質量部以上30質量部以下であることが好ましい。また、(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。そして、(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムのリワーク性がより向上する。粘着剤層中における(F)成分の含有量がより十分となることから、滑り性が向上するからであると推測している。また、上記範囲であると、粘着剤層やこれを有する粘着フィルムの基材汚染性がより改善する。粘着剤層中の(F)成分の含有量がより適切な範囲に抑えられ、未反応の(F)成分が減少し、粘着剤層からの(F)成分のブリードアウトがより生じ難くなるからであると推測している。
[(G)成分:安定剤]
本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない限り、(G)成分:安定剤をさらに含有していてもよい。(G)成分は、照明程度の微弱な光(例えば紫外線)により発生するラジカルを安定化させることで、光照射処理前の熱硬化型粘着剤組成物やその硬化物、粘着剤層の光硬化反応の進行を抑制する機能を有する。これより、(G)成分を添加することで、熱硬化型粘着剤組成物やその硬化物、粘着剤層を微弱な光(例えば、紫外線)が照射される環境下、例えばLED照明下での保管を可能とし、保管性を向上させることができる。一方、光照射時の照射光は多量であることから、光照射時にはラジカルが多量に発生することとなり、(G)成分による安定化効果が追い付かない。これより、(G)成分の存在下でも光照射時の光硬化反応が進行することとなり、粘着剤層の粘着力を低下させることができる。本願明細書において、安定剤とは、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤または紫外線吸収剤のいずれかを表すものとする。
(G)成分は、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤または紫外線吸収剤であれば特に制限されず、公知のものを使用することができる。これらの中でも、酸化防止剤、光安定剤であることが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に制限されないが、例えば、立体障害ヒドロキシフェニル基を有する化合物等が挙げられる。ここで、立体障害ヒドロキシフェニル基は、嵩高い、置換されたヒドロキシフェニル基であれば特に制限されない。例えば、ヒドロキシフェニル基の2位と6位に、それぞれ置換されたまたは無置換のアルキル基を有するもの等が挙げられるが、これに限定されるものではない。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトール-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレン-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ベンゼンプロピオン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチル)-4-ヒドロキシ-C7~C9分岐アルキルエステル、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-t-ブチル-α,α’,α”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-t-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ヘキサメチレン-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9-ビス〔2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、N,N’-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、ジエチル〔(3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)メチル〕ホスフェート、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-t-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(4-sec-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(4-ネオペンチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル)イソシアヌル酸、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、p-クロロメチルスチレンとp-クレゾールの重縮合物、p-クロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの重縮合物、p-クレゾールとジビニルベンゼン重縮合物のイソブチレン反応物等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4′-ビフェニレンフォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)(1,1-ビフェニル)-4,4’-ジイルビスホスホナイト、ジ-t-ブチル-m-クレジル-ホスホナイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-ペンタエリスリールジホスファイト、ジ(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)-ペンタエリスリールジホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライル(オクタデシルホスファイト)、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトール ホスファイトポリマー、水添ビスフェノールAホスファイトポリマー、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等が挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)としては、特に制限されないが、例えば、立体障害ピペリジル基を有する化合物等が挙げられる。ここで、立体障害ピペリジル基は、嵩高い、置換されたピペリジル基であれば特に制限されない。例えば、ピペリジル基の2位と6位にそれぞれ1個以上2個以下のアルキル基を有するもの等が挙げられるが、これに限定されるものではない。ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチロキシ)-4-ピペリジニル)エステル、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-2-ブチル-2-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルベンジル)プロパンジオエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、p-t-ブチルカテコール、2,6-ジブチル-4-メチルフェノール等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤が挙げられる。また、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。また、例えば、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらの中でも、酸化防止剤または光安定剤が好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤またはヒンダードアミン系光安定剤(HALS)がより好ましい。そして、ペンタエリスリトール-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケートがさらに好ましい。
(G)成分は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、例えば、BASFジャパン株式会社社製 Irganox(登録商標)1010、1010FF、1035、1035FF(W&C)、1076、1076FD、1098、1135、1330、1530L、1726、245、245FF、259、3114、565等が挙げられる。また、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は、例えば、BASFジャパン株式会社社製 Tinuvin(登録商標)111 FDL、123、144、292、5100、123-DW、622 SF、PA 144、765、770DE、XT 55 FB、783 FDL、791 FB、Chimassorb(登録商標) 2020 FDL、944 FDL、944 LD等が挙げられる。
酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤または紫外線吸収剤は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を用いる場合は、同じ系統のものを2種以上組み合わせてもよいし、異なる系統のものをそれぞれ1種以上組み合わせても構わない。
異なる系統のものの組み合わせに係る市販品としては、例えば、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤(HALS)とのブレンドは、例えば、BASFジャパン株式会社製 Tinuvin(登録商標)5050、5060、5151、5333-DW等が挙げられる。
熱硬化型粘着剤組成物における(G)成分の含有量(二種以上含む場合はその合計量)は、特に制限されない。しかしながら、上記の(G)成分の効果をより良好に得るためには、(G)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5質量部超過として含有しないこと、すなわち(G)成分の含有量が5質量部以下であることが好ましい。(G)成分の含有量が5質量部超過になると、(G)成分によって安定化されるラジカルの量が多くなり、光照射時の光硬化反応の進行が抑制される場合があるからである。また、(G)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して3質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、粘着剤層の光照射処理後における粘着力の低下効果に影響を与えない。また、熱硬化型粘着剤組成物は(G)成分を含有すること、すなわち、熱硬化型粘着剤組成物における(G)成分の含有量(二種以上含む場合はその合計量)は、(A)成分100質量部に対して0質量部超過であることが好ましい。粘着剤層の微弱な光(例えば、紫外線)が照射される環境下、例えばLED照明下で発生するラジカルを安定化させることができるからである。また、(G)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01質量部以上であることがより好ましく、0.05質量部以上であることがさらに好ましい。上記範囲であると、微弱な光(例えば、紫外線)が照射される環境下、例えばLED照明下での保管性がより向上する。これより、熱硬化型粘着剤組成物が(G)成分を含有する場合、その含有量の好ましい範囲の一例としては、(A)成分100質量部に対して、0質量部超5質量部以下が挙げられる。
[その他の成分]
本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない限り、公知の添加剤をさらに含有していてもよい。添加剤としては、特に制限されない。例えば、硬化促進剤、リチウム塩、充填剤、軟化剤、老化防止剤、粘着付与樹脂、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、染料、顔料、処理剤、蛍光増白剤、分散剤、滑剤等が挙げられる。
[熱硬化型粘着剤組成物の調製方法]
本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物の調製方法(製造方法)は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物は、通常、上述した各成分を混合することにより得ることができる。混合方法にも特に制限はない。混合方法としては、成分を一括に混合するか、各成分を順次添加して混合するか、または任意の複数の成分を混合した後に残りの成分を混合する方法等が挙げられる。混合後、均一な混合物となるよう攪拌を行うことが好ましい。攪拌は、必要に応じて、特定波長の光を遮光した場所で、スターラーなどで均一になるまで攪拌を行ってもよい。また、必要に応じて、加温し、スターラーなどで均一になるまで攪拌してもよい。ここで、攪拌時間は、特に制限されないが、例えば、10分以上5時間以下が挙げられる。また、加温をする場合、加温後の温度は、特に制限されないが、例えば、30℃以上40℃以下が挙げられる。
本発明の他の一形態は、上記の熱硬化型粘着剤組成物と、溶剤とを含む、粘着剤組成物溶液に関する。本明細書では、上記の熱硬化型粘着剤組成物と、溶剤とを含む溶液または分散液を、「粘着剤組成物溶液」と称する。ここで、粘着剤組成物溶液は、混合による熱硬化型粘着剤組成物の均一化の向上に用いてもよいし、後述する粘着剤層を形成するための塗布液として用いてもよい。
熱硬化型粘着剤組成物の調製の際、または塗布液の調製の際に、溶剤(溶媒、分散媒)を使用することが好ましい。溶剤は、特に制限されないが、有機溶剤であることが好ましい。有機溶剤としては、特に制限されない。例えば、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン、3-ペンタノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの中でも、メチルエチルケトンまたは酢酸エチルが好ましい。有機溶剤は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
粘着剤組成物溶液中における熱硬化型粘着剤組成物の濃度は、特に制限されないが、粘着剤組成物溶液の総質量に対して、20質量%以上99質量%以下であることが好ましい。また、熱硬化型粘着剤組成物の濃度は、粘着剤組成物溶液の総質量に対して、30質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。上記範囲であると、熱硬化型粘着剤組成物から構成される粘着剤層の乾燥性がより向上し、また塗布液として用いる際の塗工性がより向上する。
なお、熱硬化型粘着剤組成物および粘着剤組成物溶液の調製、ならびにこれらの保管は、遮光環境下で行うことが好ましい。例えば、紫外線照射により熱硬化型粘着剤組成物の粘着力が低下する場合、紫外線蔽環境下、例えばイエロールーム内で調製および保管を行うことが好ましい。熱硬化型粘着剤組成物の光硬化反応の進行をより抑制し、光照射後における粘着剤層の粘着力の低下効果をより向上させることができるからである。
<粘着剤層およびその製造方法>
本発明のその他の一形態は、上記の熱硬化型粘着剤組成物の熱硬化物に関する。本発明のさらに他の一形態は、上記の熱硬化型粘着剤組成物の熱硬化物から構成される粘着剤層にも関する。
なお、上述したように、熱硬化物とは、熱により架橋反応が進行することで形成される硬化物である。熱硬化物は、必ずしも加熱を必要とするものではなく、室温(20℃以上25℃以下)にて硬化された硬化物も含むものとする。
本発明の一形態に係る熱硬化型粘着剤組成物の熱硬化物は、光照射によって粘着力が低下する。このため、本発明の一形態に係る粘着剤層は、粘着状態では極めて良好な粘着性を示しつつ、光照射処理を行うことによって、顕著に優れたリワーク性を示す。ここで、本発明の一形態に係る粘着フィルムの光照射処理前の粘着力に対する、光照射後の粘着力の割合は、後述する粘着フィルムの光照射処理後の粘着力の割合と同様の範囲であることが好ましい。
本発明の一形態に係る粘着剤層の粘着力は、粘着性とリワーク性との両立の観点から、後述する粘着フィルムの粘着力と同様の範囲であることが好ましい。なお、粘着力は、引張試験機を用いて測定することができ、測定方法の詳細は実施例に記載する。
また、本発明の一形態に係る粘着剤層の光照射処理後の粘着力は、リワーク性の観点から、後述する粘着フィルムの光照射処理後の粘着力と同様の範囲であることが好ましい。なお、光照射処理後の粘着力は、引張試験機を用いて測定することができ、測定方法の詳細は実施例に記載する。粘着剤層の光照射処理における好ましい照射光、照射エネルギーの好ましい範囲についても、それぞれ、後述する粘着フィルムの光照射処理の好ましい条件と同様である。
粘着剤層の形成方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。熱硬化型粘着剤組成物自体、または粘着剤組成物溶液を支持体上に塗工し、形成される塗膜に対し、必要に応じて加熱乾燥処理または加熱処理を行う方法であることが好ましい。
また、熱硬化型粘着剤組成物の塗布厚さ(乾燥後の厚さ、粘着剤層の厚さ)は、特に制限されない。当該厚さは、粘着剤層の用途や、粘着フィルムとして使用する場合はその基材の種類等に応じて選択すればよい。当該厚さは、1μm以上500μm以下であることが好ましい。また、当該厚さは、10μm以上300μm以下であることがより好ましく、20μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
塗工方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ナチュラルコーター、ナイフベルトコーター、フローティングナイフ、ナイフオーバーロール、ナイフオンブランケット、スプレー、ディップ、キスロール、スクイーズロール、リバースロール、エアブレード、カーテンフローコーター、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、ベーカーアプリケーターおよびグラビアコーター等の装置を用いる方法等が挙げられる。
粘着剤層の形成に熱硬化型粘着剤組成物自体を用いる場合、熱硬化型粘着剤組成物の加熱処理温度は、架橋反応の進行が十分にできる温度であれば特に制限されない。加熱処理温度は、20℃以上150℃以下であることが好ましく、40℃以上150℃以下であることがより好ましい。また、加熱処理温度は、50℃以上140℃以下であることがさらに好ましく、80℃以上130℃以下であることが特に好ましい。また、この場合、熱硬化型粘着剤組成物の加熱処理時間は、架橋反応の進行が十分にできる時間であれば特に制限されない。加熱処理時間は、5秒以上20分以下であることが好ましく、30秒以上10分以下であることがより好ましく、1分以上7分以下であることがさらに好ましい。加熱条件を上記範囲とすることで、熱硬化型粘着剤組成物の架橋反応をより適切に進行させることができ、より良好な粘着力を有する粘着剤層を得ることができる。
また、粘着剤層の形成に粘着剤組成物溶液を用いる場合、粘着剤組成物溶液の加熱乾燥処理温度は、架橋反応の進行が十分にできる温度であれば特に制限されない。加熱乾燥処理温度は、40℃以上150℃以下であることが好ましく、50℃以上140℃以下であることがより好ましく、80℃以上130℃以下であることがさらに好ましい。また、この場合、加熱乾燥処理時間は、架橋反応の進行が十分にできる時間であれば特に制限されない。加熱乾燥処理時間は、5秒以上20分以下であることが好ましく、30秒以上10分以下であることがより好ましく、1分以上7分以下であることがさらに好ましい。加熱乾燥処理条件を上記範囲とすることで、溶剤を十分に除去することができる。また、熱硬化型粘着剤組成物の架橋反応をより適切に進行させ、より良好な粘着力を有する粘着剤層を得ることができる。
また、粘着剤層の形成に際しては、塗工および加熱処理または加熱乾燥処理の後、エージング処理をさらに行うことが好ましい。エージング処理を行うことで、熱硬化型粘着剤組成物の架橋反応をより適切に進行させ、より良好な粘着力を有する粘着剤層を得ることができる。エージング処理条件は、特に制限されず、粘着剤層の製造方法における公知の条件を採用することができる。エージング処理温度は、10℃以上40℃以下であることが好ましく、室温(20℃以上25℃以下)であることがより好ましい。エージング処理湿度は、相対湿度10%RH以上80%RH以下であることが好ましく、40%RH以上50%RH以下であることが好ましい。エージング処理時間は、1日以上7日以下であることが好ましい。これより、好ましいエージング処理条件の一例としては、23℃50%RHの環境下、エージング処理を7日行うことが挙げられる。エージング処理条件を上記の範囲とすることによって、熱硬化型粘着剤組成物の架橋反応をより適切に進行させ、より良好な粘着力を有する粘着剤層を得ることができる。
なお、エージング処理は、支持体、加熱乾燥および加熱後の塗膜、および後述する剥離フィルムをこの順に積層させた状態で行うことが好ましい。
なお、粘着剤層の形成および保管は、遮光環境下で行うことが好ましい。例えば、紫外線照射により熱硬化型粘着剤組成物およびその硬化物の粘着力が低下する場合、紫外線蔽環境下、例えばイエロールーム内で形成および保管を行うことが好ましい。熱硬化型粘着剤組成物およびその硬化物の光硬化反応の進行をより抑制し、光照射後における粘着剤層の粘着力の低下効果をより向上させることができるからである。
<粘着フィルム>
本発明の他の一形態は、基材と、上記の熱硬化型粘着剤組成物の熱硬化物から構成される粘着剤層(すなわち、上述した粘着剤層)と、を含む、粘着フィルムに関する。すなわち、当該形態は、基材と、上記の熱硬化型粘着剤組成物の熱硬化物から構成される粘着剤層と、を含む、粘着フィルムであるともいえる。なお、粘着剤層の詳細は、上述した通りである。
粘着フィルムは、表面保護フィルムであることが好ましい。表面保護フィルムとは、製品の製造過程、または最終製品が使用されるまでの間、各種光学部品、各種基板等の部材表面に、表面保護の目的で貼合されるフィルムである。
粘着剤層は、基材の少なくとも一方の表面上に、直接、または他の部材を介して配置される。これらの中でも、粘着剤層は、基材の一方の表面上のみに、直接、または他の部材を介して配置されることが好ましい。
基材は、特に制限されず、公知のものを使用することができる。これらの中でも樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムは、高い表面保護性、良好な取り扱い性、高い透明性等、粘着フィルム用途、特に表面保護フィルム用途において必要とされる特性に優れるからである。樹脂フィルムを構成する樹脂は、特に制限されず、公知のものを使用することができる。ここで、「樹脂を主成分とするフィルム」とは、樹脂フィルムの総質量に対して、注目する樹脂の含有量が50質量%以上であることを表す。ここで、注目する樹脂の含有量は、樹脂フィルムの総質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。また、注目する樹脂の含有量は、樹脂フィルムの総質量に対して、90質量%以上であることさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい(上限100質量%)。
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の樹脂を主成分とするフィルム等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。セルロース系樹脂としては、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体等が挙げられる。オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状構造(好ましくはノルボルネン構造)を有するポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル系樹脂を主成分とするフィルム(ポリエステル系樹脂フィルム)であることが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、PETフィルム)であることがより好ましい。樹脂フィルムを構成する樹脂材料は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
基材の膜厚は、特に制限されないが、10μm以上500μm以下であることが好ましい。また、基材の膜厚は、20μm以上200μm以下であることがより好ましく、40μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
基材は、表面処理をされていてもよい。表面処理としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
粘着フィルムは、基材および粘着剤層の他に、他の部材をさらに有していてもよい。他の部材としては、特に制限されず、公知の粘着剤層が有する各種部材が挙げられる。例えば、基材と粘着剤層との間に設置される中間層や、粘着剤層の基材側とは反対側の表面に貼合される剥離フィルム等が挙げられる。これらの中でも剥離フィルムが好ましい。なお、中間層や、剥離フィルムは、特に制限されず、粘着フィルム分野で用いられる公知のものを用いることができる。
剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面をシリコーン剥離剤で処理したもの等が挙げられる。剥離フィルムの市販品としては、例えば、三菱樹脂株式会社製のダイヤホイル(登録商標)MRF38等が挙げられる。
本発明の一形態に係る粘着フィルムの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。上記の熱硬化型粘着剤組成物自体、または上記の粘着剤組成物溶液を基材上に塗工し、形成される塗膜に対し、必要に応じて加熱乾燥処理または加熱処理を行う方法であることが好ましい。
これより、本発明の一形態に係る粘着フィルムの好ましい一例は、樹脂フィルムと、樹脂フィルムの片面上に配置される、上記の熱硬化型粘着剤組成物の熱硬化物から構成される粘着剤層とを有する、表面保護フィルムである。
なお、粘着フィルムの製造および保管は、遮光環境下で行うことが好ましい。例えば、紫外線照射により熱硬化型粘着剤組成物およびその硬化物の粘着力が低下する場合、紫外線遮蔽環境下、例えばイエロールーム内で製造および保管を行うことが好ましい。熱硬化型粘着剤組成物およびその硬化物の光硬化反応の進行をより抑制し、光照射後における粘着剤層の粘着力の低下効果をより向上させることができるからである。
また、本発明の一形態に係る粘着フィルムの粘着剤層は、光照射処理によって粘着力が低下する。このため、本発明の一形態に係る粘着フィルムは、粘着状態では極めて良好な粘着性を示しつつ、リワークの際に光照射処理を行うことによって、顕著に優れたリワーク性を示す。本発明の一形態に係る粘着フィルムの光照射処理前の粘着力に対する、光照射処理後の粘着力の割合は、100%未満であれば特に制限されない。当該割合は、リワーク性の観点から、値が小さいほど好ましい。被着体をガラスとした場合、本発明の一形態に係る粘着フィルム、特に表面保護フィルムの当該割合は、0%以上75%以下であることが好ましい。また、当該割合は、0%以上50%以下であることがより好ましく、0%以上30%以下であることがさらに好ましい。また、当該割合は、0%以上25%以下であることがよりさらに好ましい。そして、当該割合は、0%以上20%以下であることが特に好ましい。
本発明の一形態に係る粘着フィルムの光照射処理前の粘着力は、特に制限されない。被着体をガラスとした場合、本発明の一形態に係る粘着フィルム、特に表面保護フィルムの当該粘着力は、5g/25mm以上20g/25mm以下であることが好ましい。また当該粘着力は、6g/25mm以上15g/25mm以下であることがより好ましく、8g/25mm以上14g/25mm以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、粘着フィルムの粘着性とリワーク性とがより高いレベルで両立される。なお、粘着力は、引張試験機を用いて測定することができ、測定方法の詳細は実施例に記載する。
本発明の一形態に係る粘着フィルムの光照射処理後の粘着力は、光照射処理前よりも小さい値であれば特に制限されない。当該粘着力は、リワーク性の観点から、値が小さいほど好ましい。被着体をガラスとした場合、本発明の一形態に係る粘着フィルム、特に表面保護フィルムの当該粘着力は、上記の粘着フィルムの光照射前の粘着力よりも低い値であれば、特に制限されないが、5g/25mm未満であることが好ましい。また、当該粘着力は、3g/25mm以下であることがより好ましく、2.5g/25mm以下であることがさらに好ましい(下限0g/25mm)。なお、光照射処理後の粘着力は、引張試験機を用いて測定することができ、測定方法の詳細は実施例に記載する。
光照射処理における照射光としては、(D)成分による(B)成分の光重合、架橋を進行させることができれば特に制限されない。当該照射光は、(D)成分および(B)成分の種類等によって適宜選択されうる。これらの中でも、制御性および取り扱い性の良さ、コストの点から紫外線であることが好ましく、波長200nm以上400nm以下の紫外線であることがさらに好ましい。
光照射装置は、特に制限されず、公知の装置を用いることができる。紫外線照射処理の場合、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、UV-LEDランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ、UV光レーザー等の光源が例として挙げられる。
光照射エネルギー量は、特に制限されない。紫外線照射処理の場合、紫外線照射エネルギー量は、50mJ/cm2以上5000mJ/cm2以下であることが好ましい。また、この場合、紫外線照射エネルギー量は、100mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下であることがより好ましく、300mJ/cm2以上1500mJ/cm2以下であることがさらに好ましい。
本発明の一形態に係る粘着フィルムにおいて、LED安定性試験後の紫外線照射前の粘着力(LED安定性試験後粘着力)は、紫外線遮蔽環境下で製造および保管した場合の紫外線線照射前の粘着力から変化しないことが好ましい。ここで、LED安定性試験は、紫外線遮蔽環境下で製造および保管した粘着フィルムを、23℃×50%RH、LED照明下(500Lux)の試験環境下で15日(360時間)放置することで行う。LED安定性試験後粘着力の値を、紫外線遮蔽環境下で製造および保管した場合の紫外線照射前の粘着力の値で割った値を、粘着力比とする。被着体をガラスとした場合、本発明の一形態に係る粘着フィルム、特に表面保護フィルムの粘着力比(ガラス粘着力比)は、特に制限されないが、0.8以上1.2以下であることが好ましい。
本発明の一形態に係る粘着フィルムにおいて、LED安定性試験後の紫外線照射後の粘着力(LED安定性試験後のUV処理後粘着力)は、紫外線遮蔽環境下で製造および保管した後、紫外線照射処理を行った場合の紫外線照射後の粘着力から変化しないことが好ましい。ここで、LED安定性試験は、紫外線遮蔽環境下で製造および保管した粘着フィルムを、23℃×50%RH、LED照明下(500Lux)の試験環境下で15日(360時間)放置することで行う。LED安定性試験後のUV処理後粘着力の値を、紫外線遮蔽環境下で製造および保管した後、紫外線照射処理を行った場合の紫外線照射後の粘着力の値で割った値を、紫外線照射後の粘着力比とする。被着体をガラスとした場合、本発明の一形態に係る粘着フィルム、特に表面保護フィルムの紫外線照射後の粘着力比(紫外線照射後のガラス粘着力比)は、特に制限されないが、1.2以下であることが好ましい(下限0)。
本発明の一形態に係る粘着フィルムの剥離帯電圧は、特に制限されない。剥離耐電圧の絶対値は、剥離後の粘着フィルムが帯電せず作業性に優れるとの観点から、値が小さいほど好ましい。本発明の一形態に係る粘着フィルム、特に表面保護フィルムの剥離帯電圧の絶対値は、10kV以下であることが好ましい。また、当該絶対値は、2kV以下であることがより好ましく、0.5kV以下であることがさらに好ましい。そして、当該絶対値は、0.3kV以下であることがよりさらに好ましく、0.2kV以下であることが特に好ましい(下限0kV)。なお、剥離帯電圧は、電位測定機を用いて測定することができ、測定方法の詳細は実施例に記載する。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
以下の手順に従って、熱硬化型粘着剤組成物を調製した。以下、熱硬化型粘着剤組成物の調製および保管、ならびに表面保護フィルムの製造および評価は、全て、紫外線を遮蔽するイエロールーム内にて実施した。すなわち、熱硬化型粘着剤組成物および表面保護フィルムは、下記評価で意図的に紫外線にさられる場合を除き、その調製から評価が完了するまでの間、紫外線遮蔽環境下に存在していた。
<熱硬化型粘着剤組成物の調製>
[熱硬化型粘着剤組成物1の調製]
(A)成分である根上工業株式会社製 商品名:アートレジン(登録商標)UN5500P 100質量部に対して、(B)成分としてTMPTA 35質量部、(C)成分として旭化成株式会社製 商品名:デュラネート(登録商標)D101 5.3質量部、および旭化成株式会社製 商品名:デュラネート(登録商標)E402-80B 3.9質量部、(D)成分としてIGM Resins社製 商品名:Omnirad(登録商標)TPO H 1質量部、(E)成分として3Mジャパン株式会社製 商品名:3M(商標)イオン液体型帯電防止剤FC4400 2質量部、(F)成分としてDIC株式会社製 商品名:メガファック(登録商標)RS56 0.3質量部、を混合して熱硬化型粘着剤組成物1を調製した。そして、当該熱硬化型粘着剤組成物の濃度(各成分の合計量の濃度)が50質量%となるように酢酸エチルを加えて、粘着剤組成物溶液1を調製した。
[熱硬化型粘着剤組成物2~27の調製]
上記熱硬化型粘着剤組成物1の調製において、各成分の種類、添加量を下記表1~3に記載のように変更して、各熱硬化型粘着剤組成物を調製した。そして、上記熱硬化型粘着剤組成物1の調製と同様にして、各粘着剤組成物溶液を調製した。
各熱硬化型粘着剤組成物の処方を下記表1~3に示す。表中において、NCO基とはイソシアネート基を表す。なお、下記表1~3において、各成分の詳細を以下に示す。ここで、シロキサン骨格の後ろに記載した括弧内には、ポリエーテル骨格からなる部分構造およびシロキサン骨格からなる部分構造の総質量に対する、シロキサン骨格からなる部分構造の含有割合(質量%)を示す。また、表3に記載のない成分は、表3に記載の各熱硬化型粘着剤組成物の調製には使用しなかった。
[(A)成分:ポリエーテル骨格および2個以上の水酸基を有するウレタンプレポリマー]
A1:アートレジン(登録商標)UN5500P(両末端が水酸基であり、側鎖にアクリロイルオキシ基を有し、かつポリエーテル骨格を有するウレタンプレポリマー)、根上工業株式会社製;
A2:アートレジン(登録商標)UN5500PSi(両末端が水酸基であり、側鎖にアクリロイルオキシ基を有し、かつポリエーテル骨格およびシロキサン骨格(10質量%)を有するウレタンプレポリマー)、根上工業株式会社製;
A3:アートレジン(登録商標)UN5500PSi5(両末端が水酸基であり、側鎖にアクリロイルオキシ基を有し、かつポリエーテル骨格およびシロキサン骨格(30質量%)を有するウレタンプレポリマー)、根上工業株式会社製;
[(A’)成分:ポリエーテル骨格を有さない水酸基含有ウレタンプレポリマー]
A4:アートレジン(登録商標)UN5500(両末端が水酸基であり、側鎖にアクリロイルオキシ基を有し、かつポリカーボネート骨格を有するウレタンプレポリマー)、根上工業株式会社製。
[(B)成分:多官能(メタ)アクリレート]
B1:TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート、水酸基価0mgKOH/g)。
[(C)成分:架橋剤]
C1:デュラネート(登録商標)D101(2官能イソシアネート(HDI))、旭化成株式会社製;
C2:デュラネート(登録商標)E402-80B(弾性型3官能イソシアネート)、旭化成株式会社製;
C3:パーロイル(登録商標)TCP(ペルオキシ二炭酸ビス(4-t-ブチルシクロ
ヘキシル))、日油株式会社製。
[(D)成分:光ラジカル開始剤]
D1:Omnirad(登録商標)TPO H(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド)、IGM Resins社製。
[(E)成分:帯電防止剤]
E1:3M(商標)イオン液体型帯電防止剤FC4400(トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド)、3Mジャパン株式会社製。
[(F)成分:反応性表面改質剤]
F1:メガファック(登録商標)RS56(含フッ素基、親水性基、親油性基および紫外線反応性基含有オリゴマー)、DIC株式会社製;
F2:BYK(登録商標)-UV3500(アクリル官能基を有する、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)、ビックケミー・ジャパン株式会社製。
[(G)成分:安定剤]
G1:Irganox(登録商標)1010(ペンタエリスリトール-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)、BASFジャパン株式会社製;
G2:Tinuvin(登録商標)292(ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケートと、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケートとの混合物、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS))、BASFジャパン株式会社製。
<表面保護フィルム(粘着フィルム)の製造>
[表面保護フィルム1の製造]
片面にAS処理(帯電防止処理)を施した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを準備した。当該PETフィルムのAS処理面側とは反対側の面に、上記作製した粘着剤組成物溶液を、乾燥後の厚さが75μmとなるよう塗布した。次いで、PETフィルム上の塗膜を120℃の熱風循環式オーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に粘着剤層を形成した。続いて、粘着剤層の表面(PETフィルム側の面とは反対側の面)に、剥離フィルム(ダイヤホイル(登録商標)MRF38(厚さ38μmのPETフィルムの表面を、シリコーン剥離剤で処理したもの)、三菱樹脂株式会社製)を貼合した。その後、PETフィルムと、粘着剤層と、剥離フィルムとがこの順に積層されてなる積層体を23℃×50%RHの試験環境下、7日間放置して、表面保護フィルム1を製造した。
[表面保護フィルム2~27の製造]
上記表面保護フィルム1の製造において、粘着剤組成物溶液1を粘着剤組成物溶液2~27へと変更した以外は同様にして、各表面保護フィルムを製造した。
<表面保護フィルムの評価1>
上記製造した表面保護フィルム1~20について、以下の評価を行った。各評価結果は、下記表1および下記表2に示す。
[ガラス粘着力(粘着性)]
上記得られた表面保護フィルムを、幅25mm、長さ200mmに裁断した。次いで、剥離フィルムを剥離した後の表面保護フィルムの粘着剤層表面と無アルカリガラス(EAGLE XG(登録商標)、Corning社製)とを圧着した。圧着は、質量2000gのゴムロール(厚さ6mmのゴム層で被覆された、幅45mm、直径(ゴム層を含む)95mmのロール、ロール表面のスプリング硬さ80Hs)を用いて行った。圧着後、3時間放置したのち、無アルカリガラスから表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定した。強度測定は、23℃×50%RHの試験環境下、引張試験機を用いて、2400mm/分の剥離速度で180°の方向に、無アルカリガラスから表面保護フィルムを剥離するとの条件で行った。そして、当該測定によって得られた値を表面保護フィルムのガラス粘着力(g/25mm)とした。なお、ガラス粘着力は、5g/25mm以上20g/25mm以下である場合に良好であるとした。
[紫外線照射後のガラス粘着力(リワーク性)]
上記得られた表面保護フィルムを、幅25mm、長さ200mmに裁断した。次いで、剥離フィルムを剥離した後の表面保護フィルムの粘着剤層表面と無アルカリガラス(EAGLE XG(登録商標)、Corning社製)とを、上記ガラス粘着力の評価と同様の方法で圧着した。圧着後、3時間放置したのち、表面保護フィルムに対して、PETフィルム側から、PETフィルム越しに紫外線を照射し、粘着剤層の硬化を進行させた。紫外線照射は、23℃×50%RHの試験環境下、メタルハライドランプを用いて、300mJ/cm2の条件で行った。その後、上記ガラス粘着力の測定と同様にしてガラス粘着力を測定した。この値を表面保護フィルムの紫外線照射後のガラス粘着力(g/25mm)とした。紫外線照射後のガラス粘着力は、ガラス粘着力の値から低下していれば特に制限されないが、5g/25mm未満である場合に特に良好であるとした。
[打ち抜き加工性(粘着剤層の脱落の発生頻度)]
上記得られた表面保護フィルムから剥離フィルムを剥離した。次いで、JIS K5600-5-4:1999に記載の引っかき硬度試験法を参照して、粘着剤カスの発生有無を確認した。具体的には、粘着剤層表面に、SUS製の先端が1mmφのPENを45度の角度で500gおよび1000gの荷重で押し付け、2cm滑らせたときの粘着剤カスの発生有無を確認した。なお、当該試験における粘着剤カスの発生の程度と打ち抜き時の粘着剤層の脱落の発生頻度とが対応する傾向を確認している。このため、当該試験結果は打ち抜き加工性の指標として用いることができる。以下の基準に従って表面保護フィルムの打ち抜き加工性を評価し、下記△評価以上が良好な結果であるとした:
(評価基準)
◎:1000g荷重において、粘着剤カスが発生しなかった、
○:1000g荷重において、粘着剤カスが発生するが、500g荷重において、粘着剤カスが発生しなかった、
△:500g荷重において、粘着剤層の一部で粘着剤カスが発生した、
×:500g荷重において、粘着剤層の全面で粘着剤カスが発生した。
[剥離帯電圧]
上記ガラス粘着力の測定と同様にして、表面保護フィルムと無アルカリガラス(EAGLE XG(登録商標)、Corning社製)とを圧着した。圧着後、3時間放置したのち、上記ガラス粘着力の測定と同様にして、無アルカリガラスから表面保護フィルムを剥離した。このとき、剥離の際に発生する表面保護フィルムの電位を測定した。電位の測定は、23℃、50%RHの試験環境下、フィルムの中央から高さ30mmの位置に固定された電位測定機(STATIRON(登録商標)DZ4、シシド静電気株式会社製)を用いて行った。当該測定によって得られる値を表面保護フィルムの剥離帯電圧(kV)とした。なお、剥離帯電圧は、値が小さいほど好ましい。
[基材汚染性]
粘着剤である綜研化学株式会社製 商品名:SKダイン(登録商標)2137と、架橋剤である綜研化学株式会社製 商品名:TD-75と、添加剤である綜研化学株式会社製 商品名:A-50とを、固形分比100/0.1/0.1(質量比)として溶剤である酢酸エチルに添加し、溶液を調製した。次いで、得られた溶液を用いて、基材である東洋紡株式会社製 商品名:コスモシャイン(登録商標)A4300(ポリエステルフィルム、75μm厚)上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるよう粘着剤層を形成した。続いて、粘着剤層の基材側とは反対側の面に、剥離フィルムである藤森工業株式会社製 剥離PET 38E0010BGを貼りわせた。その後、得られた基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層体を、室温で1週間熟成して、粘着シートを作製した。
上記ガラス粘着力の測定と同様にして、表面保護フィルムと無アルカリガラス(EAGLE XG(登録商標)、Corning社製)とを圧着した。そして、40℃の環境下に2週間静置した後、上記ガラス粘着力の測定と同様にして、無アルカリガラスから表面保護フィルムを剥離した。
次いで、新しい無アルカリガラスの表面と、表面保護フィルムを剥離した後の無アルカリガラスの剥離面とに、それぞれ上記作製した粘着シートを圧着した。圧着は、質量2000gのゴムロール(厚さ6mmのゴム層で被覆された、幅45mm、直径(ゴム層を含む)95mmのロール、ロール表面のスプリング硬さ80Hs)を用いて行った。続いて、これらの無アルカリガラスから粘着シートを剥離したときの強度をそれぞれ測定した。強度測定は、23℃×50%RHの試験環境下、引張試験機を用いて、300mm/分の剥離速度で180°の方向に、無アルカリガラスから粘着シートを剥離するとの条件で行った。そして、新しい無アルカリガラスから粘着シートの剥離したときの強度(g/25mm)に対する、表面保護フィルムを剥離した後の無アルカリガラスから粘着シートを剥離したときの強度(g/25mm)の割合(%)を算出した。そして、以下の基準に従って表面保護フィルムのガラス汚染性を評価し、下記△評価以上が良好な結果であるとした:
(評価基準)
◎:表面保護フィルムを剥離した後の無アルカリガラスから粘着シートを剥離したときの強度(g/25mm)の割合が90%以上、
○:表面保護フィルムを剥離した後の無アルカリガラスから粘着シートを剥離したときの強度(g/25mm)の割合が80%以上90%未満、
△:表面保護フィルムを剥離した後の無アルカリガラスから粘着シートを剥離したときの強度(g/25mm)の割合が70%以上80%未満、
×:表面保護フィルムを剥離した後の無アルカリガラスから粘着シートを剥離したときの強度(g/25mm)の割合が70%未満。
[濡れ性試験]
上記得られた表面保護フィルムを、幅25mm、長さ200mmに裁断した。次いで、剥離フィルムを剥離した後の表面保護フィルム(図1 1)の粘着剤層表面(図1 2)と、無アルカリガラス(EAGLE XG(登録商標)、Corning社製)(図1 3)とを、表面保護フィルムの長手方向と、無アルカリガラスの表面とがなす角度が20~30°となるよう、表面保護フィルムの一方の端面と、無アルカリガラスとを接触させた状態で、手で保持した。その後、表面保護フィルムから手を離し、表面保護フィルムと、無アルカリガラスとを、表面保護フィルムの自重のみで貼合した(図1 矢印)。この際の、表面保護フィルムの粘着剤層表面が無アルカリガラスの表面に対して濡れ広がる時間を目視により測定した。そして、以下の基準に従って表面保護フィルムの濡れ性を評価し、下記△評価以上が良好な結果であるとした:
(評価基準)
◎:濡れ広がる時間が3秒未満、
○:濡れ広がる時間が3秒以上5秒未満、
△:濡れ広がる時間が5秒以上10秒未満、
×:濡れ広がる時間が10秒以上。
上記表1および上記表2に示すように、表面保護フィルム15~20は、本発明の範囲外である比較例に係る熱硬化型粘着剤組成物15~20から形成された粘着剤層を有する。これら熱硬化型粘着剤組成物は、(A)成分を含有しない。そして、表面保護フィルム15~19は、剥離帯電圧がより高く、濡れ性に劣ることが確認された。また、表面保護フィルム20は、剥離耐電圧がより高く、打ち抜き加工性および濡れ性に劣ることが確認された。
一方、表面保護フィルム1~14は、本発明の範囲内である実施例に係る熱硬化型粘着剤組成物1~14から形成された粘着剤層を有する。これら表面保護フィルム1~14は、粘着性とリワーク性とを高いレベルで両立することが確認された。また、これらの表面保護フィルムは、粘着剤層の脱落の発生が生じ難く、剥離帯電圧が小さく、基板汚染性が低減され、濡れ性も良好であることが確認された。
<表面保護フィルムの評価2>
上記製造した表面保護フィルム21~27について、上記表面保護フィルムの評価1と同様の方法および評価基準によって、ガラス粘着力、紫外線照射後のガラス粘着力、打ち抜き加工性、剥離帯電圧、基材汚染性、および濡れ性試験の評価を行った。また、上記製造した表面保護フィルム1および21~27について、これらに加えて、以下の評価を行った。各評価結果は、下記表3に示す。
[ガラス粘着力比]
上記得られた表面保護フィルムを、幅25mm、長さ200mmに裁断した。次いで、剥離フィルムを剥離した後の表面保護フィルムの粘着剤層表面と無アルカリガラス(EAGLE XG(登録商標)、Corning社製)とを、上記ガラス粘着力の評価と同様の方法で圧着した。続いて、表面保護フィルムが圧着された無アルカリガラスを、23℃×50%RH、LED照明下(500Lux)の試験環境下で15日(360時間)放置した。その後、上記ガラス粘着力の評価と同様の方法で、無アルカリガラスから表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、この値をLED安定性試験後ガラス粘着力(g/25mm)とした。LED安定性試験後ガラス粘着力の値を、上記で評価したガラス粘着力の値で割った値を、ガラス粘着力比とした。ガラス粘着力比は、特に限定されないが、0.8以上1.2以下である場合に特に良好であるとした。
[紫外線照射後のガラス粘着力比]
上記得られた表面保護フィルムを、幅25mm、長さ200mmに裁断した。次いで、
剥離フィルムを剥離した後の表面保護フィルムの粘着剤層表面と無アルカリガラス(EAGLE XG(登録商標)、Corning社製)とを、上記ガラス粘着力の評価と同様の方法で圧着した。続いて、表面保護フィルムが圧着された無アルカリガラスを、23℃×50%RH、LED照明下(500Lux)の試験環境下で15日(360時間)放置した。そして、放置後の表面保護フィルムに対して、上記紫外線照射後のガラス粘着力の評価と同様の方法で紫外線を照射し、粘着剤層の硬化を進行させた。その後、上記ガラス粘着力の測定と同様にしてガラス粘着力を測定した。この値をLED安定性試験後の紫外線照射後ガラス粘着力(g/25mm)とした。LED安定性試験後の紫外線照射後ガラス粘着力の値を、上記で評価した紫外線照射後のガラス粘着力の値で割った値を、紫外線照射後のガラス粘着力比とした。紫外線照射後のガラス粘着力比は、特に限定されないが、1.2以下である場合に特に良好であるとした。
上記表3の結果に示すように、表面保護フィルム21~27は、本発明の範囲内である実施例に係る熱硬化型粘着剤組成物21~27から形成された粘着剤層を有する。これら熱硬化型粘着剤組成物は、(G)成分を含有する。そして、表面保護フィルム21~27は、安定剤を含まない表面保護フィルム1と比較して、ガラス粘着力比および紫外線照射後のガラス粘着力比がより良好は範囲となった。これより、表面保護フィルム21~27は、(G)成分を含有することで、LED照明下における粘着剤層の光硬化反応の進行が抑制されることが確認された。
この結果は、本発明の一形態に係る表面保護フィルムは、(G)成分をさらに含有することで保管に際して遮光が必須ではなくなり、保管性がより向上することを示している。