先ず、図1(a)には、本発明の実施例としてホテル等の室内用空調システムの全体構成が示される。本発明の居室であるホテルの客室1は、カードキーKにて開錠可能な開閉扉5で入退室できる。客室1内には、バス2とデスク3とベッド4とが配設されており、バス用照明6、ベッド用照明7、デスク用照明8、及びテレビ9などの電気機器が、それぞれ電源ケーブルを介し電源ユニット11に接続されている。
それぞれの客室1には、いわゆるパッケージ型の室内空調機12が個別に配設されており、客室1の室温を検知する第1の室温センサ14と、利用客が所望する第1の設定温度を設定入力可能な操作部としての室温操作パネル22と、これらが接続される制御部34と、を有し、電源の入り状態において、第1の設定温度に対する第1の室温センサ14で検知された温度に基づいて作動し、適宜設定された風量・温度の空気を客室1内に送風するようになっている。室内空調機12の内部構造について詳細に図示しないが、循環路を形成する流体管、この流体管の内部に熱交換流体を循環させるポンプ、送風用のファン等の各部品を有しており、これら各部品は制御部34の制御に基づいて作動する。
また、図1(a)に示されるように、室内空調機12は、電源ユニット11を介さずに、他の電気機器とは独立して外部電源が接続されている。室内空調機12は、電源を入り状態若しくは切り状態に切替可能な切替部33(図6参照)を有し、室内空調機12の主電源スイッチ12bを操作するか、若しくは切替部33に接点12aを介して信号線Lで接続された電源入切部15(図6参照)により、切替部33を入切できるようになっている。具体的には、検知部としてのキーユニット10に被検知具としてのカードキーKが挿入され、すなわち客室1内に利用者が在室する利用状態にあって、後述のように客室1の利用者が設定した第1の設定温度に基づいて室内空調機12が作動される場合を通常運転モードとしている。また、キーユニット10からカードキーKが抜き出され、すなわち客室1から利用者が退室する非利用状態にあって、利用者が不在の客室1を後述のように予冷・予熱空調する場合を予冷・予熱運転モードとしている。更に、また客室1から利用者が退室する非利用状態にあって、後述のように特定の操作がされたことにより、予冷・予熱運転モードを行わない場合を停止モードとしている。つまり、キーユニット10へのカードキーKの抜き差しに基づいて、室内空調機12の通常運転モード、予冷・予熱運転モード、または停止モードが選択的に設定される。
図3に示されるように、キーユニット10は、客室1が利用状態であるか若しくは非利用状態であるかを判別する判別手段として客室1への入退室を判別する入退室センサであって、客室1の入口部1aの壁面に配設されており、入口部1aの壁面に固定されるベース部材10cと、ベース部材10cの前面に設けられる表示部10aと、ベース部材10cの前面に設けられカードキーKを抜き差し可能なキー挿入部10b(挿入口)と、キー挿入部10bに挿入されたカードキーKを検知可能なセンサ10dと、前述したモードを報知する報知手段としての報知部18と、第2の室温センサ19と、を有している。
詳しくは、キー挿入部10bは上方に開口するとともに下方にカードキーKの収納スペースを備え、キー挿入部10bの上方からカードキーKを抜き差しできるようになっている。また、センサ10dは、ベース部材10cの背面側に突出する突出片10eに取付けられ、入口部1aの壁面内に配設されるセンサ本体部10fと、センサ本体部10fから前方に延設される延設部10gと、を備えており、延設部10gは、その前端部がベース部材10cの貫通孔10hを介してキー挿入部10b内に配置されている。また、延設部10gは、板バネ等の弾性部材で構成されており、該延設部10gの後端部(センサ本体部10f側)を基点として、該延設部10gの自由端である前端部(キー挿入部10b側)が上下方向に揺動可能となっている。図3(b)に示されるように、カードキーKがキー挿入部10bに挿入されていない状態にあっては、延設部10gの弾性復帰力により延設部10gがセンサ本体部10fに設けられたボタン10jに接触若しくは押圧しない状態となっており、すなわちカードキーKの非検知状態となる。また、図3(c)に示されるように、カードキーKがキー挿入部10bに挿入されると、カードキーKの下端により延設部10gの前端部が下方に押し下げられ、延設部10gによりボタン10jが接触若しくは押下され、これによりカードキーKの検知状態となる。また、キー挿入部10bからカードキーKが抜き出された状態にあっては、キー挿入部10bの近傍で表示部10aが発光してカードキーKの挿入を促す表示を行うため、利用者が客室1に入室した直後で室内が消灯した状態であっても、キー挿入部10bの位置を把握できる。また、第2の室温センサ19をキーユニット10に設けることで、客室1内に配設する室内空調システムの構成部品を集約できるため、第2の室温センサ19及びキーユニット10の配線や配設がし易い。
図2に示されるように、電源ユニット11は、端子d1~d6、端子e1~e8、及び端子f1~f4を備えるとともに、これら各端子が接続される制御部13を有している。また制御部13に、後述するタイマ21及び確認用の室温センサ29、温度設定手段としてのスイッチ部20が接続されるとともに、信号線を介してキーユニット10及び第2の室温センサ19と連結され、また電源入切部15により開閉可能な信号線Lを介して室内空調機12と接続されている。
電源ユニット11には、端子d1~d4を介して外部電源が入力されており、端子d1~d4にそれぞれ直接に接続される端子d5,d6及び端子e3,e4を介して、常用の電源ケーブルが配線され、客室1内の図示しないコンセント等に適宜接続され、客室1の使用・非使用に関わらず、常に電源が供給されている。また、端子d2,d4にそれぞれスイッチ16、スイッチ17を介して端子e2,e6が接続され、端子e1,e2及び端子e5,e6に省エネ用の電源ケーブルが客室1内に適宜配線されており、キーユニット10にカードキーKが挿入された場合に、キーユニット10に接続された制御部13がスイッチ16及びスイッチ17を閉状態とし、省エネ用の電源ケーブルに電源が供給されるようになっている。図1で示したバス用照明6、ベッド用照明7、デスク用照明8、及びテレビ9などの電気機器は、それぞれ前記省エネ用の電源ケーブルを介し電源ユニット11に接続され、カードキーKが客室1の入口部1aの壁面に設置されたキーユニット10に挿入された場合に、電源ユニット11を介し電源が供給される。また、これら電気機器は、カードキーKがキーユニット10から抜き出された場合に、電源ユニット11において電源の供給が停止される。更に、端子f1,f2に接続されている入口灯スイッチ31を入切操作することにより、制御部13を介して端子e7,e8に接続されている入口灯32が、点灯若しくは消灯するようになっている。
次に、客室1の空調に関し、通常運転モードについて説明する。通常運転モードとは、キーユニット10にカードキーKが挿入されている、すなわち客室1に利用者が在室している利用状態において設定され、客室1の利用者が室温操作パネル22を押圧操作することで、室温を制御可能となるモードのことをいう。
室温操作パネル22は、主に客室1内の壁面等に、客室利用者により操作可能に配設されており、その前面には、図1(b)に示されるように、風量を設定可能に室内空調機12を作動させるONスイッチ24と、第1の設定温度としての所望の室内温度を設定可能な温度設定スイッチ25と、該温度設定スイッチ25により設定された第1の設定温度を表示する設定温度表示部26と、室内空調機12の作動を停止するOFFスイッチ27と、を備えている。更に、ONスイッチ24は、LOスイッチ24a、HIスイッチ24b、AUTOスイッチ24cの3種のスイッチからなる。キーユニット10にカードキーKが挿入された客室1の利用状態において、いずれかのスイッチ24a~24cを押圧すれば、押圧された所定のモードで起動するようになっている。28は作動表示ランプであり、室内空調機12が作動状態にあるか否かが表示されるようになっている。また、OFFスイッチ27を押圧すれば、室内空調機12の作動は停止する。
また、室内空調機12の本体に、客室1内の温度を検知する第1の室温センサ14が設けられており、AUTOスイッチ24cが押圧操作された場合に、温度設定スイッチ25により設定された第1の設定温度と、第1の室温センサ14により検知された客室1内の温度とを比較し、風量を適宜変更可能に送風が成される。
次に、予冷・予熱運転モードについて説明する。予冷・予熱運転モードとは、キーユニット10からカードキーKが抜き出されている、すなわち客室1から利用者が退室している状態において設定され、後述する条件に応じて、室内空調機12に対し電源を入り状態にする制御、若しくは室内空調機12に対し電源を切り状態にする制御を繰返し反復して行うことをいう。
本実施例の冷房季においては、予め設定した第2の設定温度である上限温度としての30度若しくは27度よりも客室1内の温度を低く維持するように室内空調機12を制御するものである。冷房季における第2の設定温度は、客室1の利用状態において通常所望に設定される第1の設定温度(本実施例では24度)よりも高めで、且つ外気温よりも低めに設定されており、客室1の非利用状態においても、客室1の温度を一定程度低くして、入室の際の快適性を追求したものである。
尚、暖房季においては、予め設定した第2の設定温度である下限温度としての17度若しくは20度よりも客室1内の温度を高く維持するように室内空調機12を制御するものである。暖房季における第2の設定温度は、客室1の利用状態において通常所望に設定される第1の設定温度よりも低めで、且つ外気温よりも高めに設定されており、客室1の非利用状態においても、客室1の温度を一定程度高くして、入室の際の快適性を追求したものである。
以下、本実施例は冷房季であって、通常運転モードにおいて、室温操作パネル22で設定風量「強風」及び第1の設定温度として「24℃」を設定しているものとし、予冷・予熱運転モードにおいて、第2の設定温度である上限温度として「30℃」を設定しているものとして説明する。
図4に示されるように、予冷・予熱運転モードの設定については、電源ユニット11に設けられたスイッチ部20において、1番スイッチをON状態にすることで冷房季における予冷運転モードを設定可能であって、この場合に、2番スイッチをON状態にすることで第2の設定温度を30℃に設定でき、若しくは2番スイッチをOFF状態にすることで第2の設定温度を27℃に設定できる。同様に、3番スイッチをON状態にすることで暖房季における予熱運転モードを設定可能であって、この場合に、4番スイッチをON状態にすることで第2の設定温度を17℃に設定でき、若しくは4番スイッチをOFF状態にすることで第2の設定温度を20℃に設定できる。
また、2番スイッチ及び4番スイッチをいずれもOFF状態にすることにより、予冷・予熱運転モードを実施しないことを選択することもできる。例えば、冷暖房をいずれも必要としない春季・秋季には、予冷・予熱運転モードを実施しない場合が多い。尚、スイッチ部20は、通常ホテルの利用客からは操作不可能な箇所に配設されており、ホテルの管理者が適宜操作するように成っている。
次に、図5に示されるタイミングチャートにより、客室1の通常運転モード及び予冷・予熱運転モードにおける室内空調機12の作動について説明する。尚、ここでは、予冷運転モードを例に挙げ説明し、予熱運転モードの説明を省略する。
先ず、カードキーKがキーユニット10に挿入されているt0~t1の間の通常運転モードにおいては、室温操作パネル22において設定した第1の設定温度「24℃」に基づき室内空調機12を作動させて空調する。t1において、カードキーKをキーユニット10から抜き出すことで、予冷運転モードに移行する。t1~t6の間の予冷運転モードにおいては、第2の室温センサ19で検知された客室1内の室温に応じて、室内空調機12が交互に電源の入り状態若しくは切り状態を繰り返し、客室1内の温度が第2の設定温度である上限温度「30℃」を下回るように空調する。
t1~t6の間の室内空調機12制御について、より具体的には、それまで空調が行われていたt1において予冷運転モードに移行した後、t1~t2において室内空調機12の作動が停止し、客室1の温度が外気温に近づき高くなる。そして、t2において、第2の室温センサ19で検知される客室1の温度が第2の設定温度である上限温度「30℃」を上回り、室内空調機12が作動を開始する。
t2において、一旦作動を開始した室内空調機12は、第2の室温センサ19に優先して、タイマ21(図2参照)により設定された設定時間である5分間は継続して作動し、5分間経過した時点(t2’)以降、客室1の温度が上限温度「30℃」を下回る時点(t3)で、停止する。このt2~t3における室内空調機12を、第2の室温センサ19に優先して継続して作動させる制御を、予冷運転モードにおける入り状態継続制御という。
t3において、一旦作動を停止した室内空調機12は、第2の室温センサ19に優先して、タイマ21(図2参照)により設定された設定時間である5分間は継続して停止し、5分間経過した時点(t3’)以降、客室1の温度が上限温度「30℃」を上回る時点(t4)で、再び作動を開始する。このt3~t4における室内空調機12を、第2の室温センサ19に優先して継続して停止させる制御を、予冷運転モードにおける切り状態継続制御という。
以降、予冷運転モードにおいて入り状態継続制御(t4~t5)と切り状態継続制御(t5~t6)とを繰返し反復して行う。そして本実施例では、この切り状態継続制御の途中時(t6)において、利用者が客室1に入室し、客室1が再び利用状態となる。
このように、客室1の非利用状態の場合でも、制御部13により制御される電源入切部15が、第2の室温センサ19により検知された温度と第2の設定温度との関係で室内空調機12に電源を入り状態若しくは切り状態にし、室温を第2の設定温度である上限温度「30℃」を下回る近傍に維持することができるため、このt6において、利用者の入室時において快適さを与えることができる。
尚、暖房季においては、室内空調機12に電源を入り状態若しくは切り状態にし、室温を第2の設定温度である下限温度「20℃」若しくは「17℃」を上回る近傍に維持することができる。
更に、非利用状態における客室1の温度を第2の設定温度「30℃」を下回るように維持し、第1の設定温度「24℃」に予め近づけることができるため、t6において客室1に入室した後に、t6~t7の間に示される通常運転モードにおいて、客室1の温度を所望の第1の設定温度「24℃」に速やかに到達させることが可能となる。
またこのように、客室1の非利用状態において、制御部13が、室内空調機12に対する電源の切り状態をタイマ21による設定時間(5分間)少なくとも継続する切り状態継続制御を行うため、室内空調機12に対する電源の切り状態から入り状態に切り替る頻度を少なくして、電源の切替により室内空調機12に与える負荷を抑えることができる。
また、客室1の非利用状態において、制御部13が、室内空調機12に対する電源の入り状態をタイマ21による設定時間(5分間)少なくとも継続する入り状態継続制御を行うため、室内空調機12に対する電源の入り状態から切り状態に切り替る頻度を少なくして、電源の切替により室内空調機12に与える負荷を抑えることができる。
更に、客室1の非利用状態において、制御部13が、切り状態継続制御と入り状態継続制御とを、繰返し反復して行うことで、室内空調機12に対する電源の入り状態と切り状態との切替頻度を更に少なくして、室内空調機12に与える負荷を極力抑えることができる。
また、第2の室温センサ19が、客室1内の入口近傍である入口部1aにおいて設置されたキーユニット10に設けられ、入口部1aにおける温度に基づいて客室1を空調できるため、非利用状態の客室1に入室した際(t6)、すなわち非利用状態から利用状態に移行する際の入口部1aにおいても快適に過ごすことができる。
図6(a)(b)に示されるように、上記したモードの設定について、具体的に説明すると、キーユニット10と室内空調機12とが、モード設定手段としての制御部13を介し接続されている。信号線Lが接続される端子f3,f4からは、それぞれc接点,a接点に配線が延びるとともに、c接点とa接点若しくはb接点とを選択的に切り換える電源入切部15が設置されている。
そして、図6(a)に示されるように、キーユニット10にカードキーKが挿入された場合に、制御部13が通常運転モードに設定する。すなわち、制御部13が電源入切部15をa接点に接続して上記信号線を閉状態とすることで、切替部33が閉状態となり、室内空調機12に対し電源が入り状態となるため、室内空調機12が室温操作パネル22に基づいて運転可能となる。
また、キーユニット10からカードキーKが抜き出された場合に、図6(b)に示されるように、制御部13が予冷運転モードを設定する。すなわち、上述したように、タイマ21(図2参照)及び第2の室温センサ19に基づいて、制御部13が電源入切部15をb接点に接続して上記信号線Lを開状態とすることで、切替部33が開状態となり、室内空調機12に対し電源が切り状態となるため、室内空調機12の作動制御が不可能となる。若しくは、図6(b)の点線で示されるように、タイマ21(図2参照)及び第2の室温センサ19に基づいて、制御部13が電源入切部15をa接点に接続して上記信号線Lを閉状態とすることで、切替部33が閉状態となり、室内空調機12に対し電源が入り状態となるため、室内空調機12が室温操作パネル22に基づいて運転可能となる。
このように、客室1の非利用状態において、利用者が客室1内に居るときに設定する第1の設定温度に対する第1の室温センサ14で検知された室温に基づいて作動する室内空調機12の機能を利用して、第2の室温センサ19に基づいて室内空調機12に対し電源を入切することにより、冷房季においては第1の設定温度よりも高い第2の設定温度に空調できる。
またこのように、制御部13が、キーユニット10、第2の室温センサ19、及びスイッチ部20に基づいて電源入切部15を入り状態若しくは切り状態にすることで、制御部13と信号線Lを介して接続された室内空調機12の切替部33を切替えることができ、簡単な構造で室内空調機12に対し外部から容易且つ確実に制御できる。
次に、図7に示されるタイミングチャートにより、例えば利用客がチェックアウトした後など、客室1が比較的長時間に不在となる場合に、清掃員やホテルスタッフ等の管理者が上記予冷運転モードから停止モードに切替える例について説明する。尚、説明の便宜上、図5よりも時間軸(横軸)を拡大して図示している。
先ず、利用客がチェックアウト後には、カードキーKをキーユニット10から抜き出した状態となっているため、管理者がカードキーKをキーユニット10に挿入するt10までは予冷運転モードが実行されている。また、t10においてカードキーKがキーユニット10に挿入されると、室内空調機12が予冷運転モードから通常運転モードに移行して作動を開始する。また、t10~t16の間は、管理者が冷運転モードから停止モードに切替えるために行う特定操作の所定時間αを示しており、t16以降は、予冷運転モードが行われない停止モードが実行されている。
t10~t16の間の特定操作は、所定時間α以内に複数回断続的にカードキーKを検知状態とする操作である。t10~t16の間の特定操作について、より具体的には、t10においてカードキーKがキーユニット10に挿入されると、図示しないタイマがt10の時点から所定時間α(本実施例で5秒間)をカウントするとともに、制御部13が所定時間α内における1回目のカードキーKの検知状態をカウントする。このとき、室内空調機12は、所定時間α内におけるカードキーKの抜き差しによる切り状態を無視して、この所定時間α内は室内空調機12の入り状態が維持されるようになっている。すなわち、所定時間α中は一時的に通常運転モードが実行される。尚、カードキーKの非検知状態から検知状態に変化したときには、図示しないタイマが必ず所定時間αをカウントするようになっている。
所定時間α内において、t10の後、t11のようにカードキーKが抜き出され、t12のようにカードキーKが再度挿入されると、制御部13が所定時間α内における2回目のカードキーKの検知状態をカウントする。以降同様に、制御部13は、t13のようにカードキーKが抜き出され、t14のようにカードキーKが再度挿入されると、所定時間α内における3回目のカードキーKの検知状態をカウントする。また、制御部13は、t15のようにカードキーKが抜き出され、且つ所定時間αの終了時点であるt16においてカードキーKの非検知状態であることを確認して特定操作が行われたと判断する。つまり、制御部13は、所定時間α以内に複数回断続的にカードキーKの検知状態となったか否か、且つ所定時間α経過時(t16の時点)にカードキーKの非検知状態となったか否かを判断している。尚、制御部13は、カードキーKが2回検知状態となった場合に3回目以降のカードキーKの検知状態をカウントせず無視するようにしてもよい。
このように、制御部13は、特定操作が行われたと判断した場合、客室1の非利用状態における運転モードを予冷運転モードから停止モードに切替える。また、例えば、所定時間α内で2回以上カードキーKが検知状態とならなかった場合には、制御部13は、客室1の非利用状態における運転モードを予冷運転モードに維持する。
また、例えば、所定時間α経過時(t16の時点)においてカードキーKが検知状態である場合には、客室1の非利用状態における運転モードを予冷運転モードに維持する。具体的には、図7の仮想線に示すように、t16の時点においてカードキーKが検知状態である場合には、客室1の利用状態と判断し、通常運転モードにより室内空調機12を作動させる。
このように、利用客が客室1を利用中に一時的に外出する場合や、利用客がチェックアウト後に管理者が清掃などのため客室1に入室する場合等、客室1を比較的短時間空室とする場合には、予冷・予熱運転モードにより室温が予め設定された所定の上限温度または下限温度近傍に維持されるように室内空調機12が動作するので、後の利用者(利用客や管理者)の入室時において快適さを与えることができる。また、利用客がチェックアウトした後や、管理者が清掃した後に客室1が終日空室になる場合等、客室1を比較的長時間空室とする場合には、管理者が特定操作を行うことで、停止モードにより室内空調機12の予冷・予熱運転モードを停止させることができるので、客室1の省エネルギー化を図ることができる。
また、客室1の照明や室内空調機12の電源を切り換えるために用いられる既存のカードキーKとキーユニット10とを用いて、客室1の非利用状態における運転モードを冷運転モードから停止モードに切替える特定操作を行うことができるので、例えば、カードキーK及びキーユニット10以外に特定操作を行うためのボタンやスライダー等を用意する必要がなく、室内空調システムの構造を簡素にすることができる。
また、キーユニット10がカードキーKを所定時間α以内に断続的に検知状態となる特殊な特定操作で客室1の非利用状態における運転モードが予冷運転モードから停止モードに切り替わるようになっている。すなわち、キーユニット10に対するカードキーKの通常の抜き差し操作とは異なる特殊な特定操作により予冷運転モードから停止モードに切り替わるようになっているため、利用客の誤操作により室内空調機12が停止されるという不具合を防止できる。また、カードキーKやキーユニット10に特殊な加工や、煩雑な抜き差し操作を行うことなく、簡便に特定操作を行うことができる。
次に、図8に示されるように、各モードにおける空調制御について、フローチャートにより具体的に説明する。尚、以下、S1,S6におけるキーユニット10にカードキーKが挿入されている状態とは、カードキーKがキーユニット10に挿入され所定時間αが経過した後、キーユニット10にカードキーKが挿入された状態が維持されている状態のことをいう。先ず、制御部13は、S1でキーユニット10にカードキーKが挿入されている場合、S2に進み通常運転モードを実行する。この通常運転モードにおいては、客室1の利用者が前述した室温操作パネル22のONスイッチ24を押圧操作することで、設定条件に対応して室内空調機12を制御可能となり、風量を選択してONスイッチ24及び温度設定スイッチ25を適宜押圧操作することで、所望の空調を行うことができる。当然に、OFFスイッチ27を押圧操作することで、室内空調機12を停止することもできる(図1(b)参照)。
次に、制御部13は、S1でキーユニット10からカードキーKが抜き出された時点で、S3に進み、予冷・予熱運転モードを実行する。このとき、制御部13は、スイッチ部20の冷房季(暖房季)使用スイッチのON状態若しくはOFF状態を判定し、冷房季(暖房季)使用スイッチがON状態である場合に、予冷・予熱運転モードが実行される。尚、上述した通常運転状態モードにおいて、室内空調機12が所定の第1の設定温度若しくは所望の風量で起動している状態、若しくは室内空調機12が起動を停止している状態に関わらず、キーユニット10からカードキーKが抜き出された時点で、通常運転モードから強制的に予冷・予熱運転モードに移行する。
次いで制御部13は、予冷・予熱運転モードの実行とともにS4に進み、前述した特定操作が行われたか否かを判断する。S4で特定操作がないと判断されたときには、S1に進み、上記制御が繰り返される。
図9に示されるように、予冷・予熱運転モードにおいて、まずT1で客室1の入口部1a近傍の第2の室温センサ19により、客室1の現室温を検知する。次に、T2で検知された現室温が、予め設定された第2の設定温度に到達した時点で室内空調機12が起動する(T3)。より具体的には、例えば冷房季において現室温が、第2の設定温度としての上限温度「30℃」上回っている場合に、室内空調機12が起動する。また、T2で第2の室温センサ19により検知された現室温が第2の設定温度「30℃」を下回っている場合には、室内空調機12は起動せずに、T1に進み継続して第2の室温センサ19により現室温を検知する。一般的に、適宜空調されていた通常運転モードから予冷・予熱運転モードに移行した直後には、現室温が第2の設定温度である上限温度「30℃」を上回ることはないが、時間の経過とともに、現室温が外気温に近づくにつれ、現室温が第2の設定温度「30℃」を上回ることになる。
そして、室内空調機12の起動と同時にタイマがスタートし(T3)、T4に進み、予め設定された設定時間(5分間)の経過までは、室内空調機12は作動し続けるように成っている。そして5分間の経過とともに、タイマがリセットされ(T5)、T6に進み第2の室温センサ19により客室1の現室温を検知する。次に、検知された現室温が、第2の設定温度である上限温度「30℃」を下回った時点(T7)でT8に進み室内空調機12が停止する。すなわち、室内空調機12は、設定時間(5分間)経過し、且つ、第2の室温センサ19により検知された現室温が、第2の設定温度「30℃」を下回る時点までは継続して作動するように成っている。上記した室内空調機12の作動の継続に関わる制御を予冷・予熱運転モードにおける入り状態継続制御という。
予冷・予熱運転モードにおいて室内空調機12から発せられる空気は、この予冷・予熱運転モードの直前の通常運転モードにおいて最後に設定された風量及び風温である。例えば、利用者が、客室1を退室する直前において室温操作パネル22で設定風量「強風」及び第1の設定風温「24℃」に設定していた場合、この利用者の退室後の予冷・予熱運転モードにおいて、設定風量「強風」及び設定風温「24℃」の空気が、上記した時間発せられる。
続いて、T8で室内空調機12の停止と同時にタイマがスタートし、予め設定された設定時間(5分間)の経過までは、室内空調機12は停止し続けるように成っている(T9)。そして設定時間の経過とともに、T10に進みタイマがリセットされ、再びT1に進み第2の室温センサ19により客室1の現室温を検知する。次に、検知された現室温が、第2の設定温度である上限温度「30℃」を上回った時点(T2)で、T3に進み再び室内空調機12が起動する。すなわち、室内空調機12は、設定時間(5分間)経過し、且つ、第2の室温センサ19により検知された現室温が、再び第2の設定温度「30℃」を上回る時点(T2)までは継続して停止するように成っている。上記した室内空調機12の停止の継続に関わる制御を予冷・予熱運転モードにおける切り状態継続制御という。
以下、同様に、予冷・予熱運転モードにおいて上述した入り状態継続制御と切り状態継続制御とを繰り返し反復して実施するようになっている。尚、上述した予冷・予熱運転モードにおいて、入り状態継続制御を実施している状態、若しくは切り状態継続制御を実施している状態に関わらず、キーユニット10にカードキーKが挿入された時点で、予冷・予熱運転モードから強制的に通常運転モードに移行する(図8のS1→S2を参照)。
このように、予冷・予熱運転モードにおいて、キーユニット10にカードキーKを検知させることで、特別な操作を行うことなく簡便に予冷・予熱運転モードを解除して通常運転モードを実行することができる。具体的には、予冷・予熱運転モード中の客室1に既存の利用客が再入室する場合、利用客がキーユニット10にカードキーKを差し込むだけで室内空調機12の予冷・予熱運転モードが解除され、簡便に通常運転モードに移行させることができる。
尚、暖房季においては、上述とは逆に、第2の設定温度である下限温度「20℃」若しくは「17℃」を下回っている場合、室内空調機12に対し電源が入り状態となり、この下限温度を上回っている場合、室内空調機12に対し電源が切り状態となる。
また、キーユニット10に設けられた第2の室温センサ19と同じ仕様である確認用の室温センサ29が、電源ユニット11内部に配設されており、第2の室温センサ19により検知される現室温と、確認用の室温センサ29により検知される現室温との差分を検出部としての制御部13により算出するように成っている。そして、前記差分が、予め設定された所定値に満たない場合は第2の室温センサ19が正常状態であるものとして、通常通りの制御を実施し、前記差分が、前記所定値を超えた場合に、第2の室温センサ19が故障等によるエラー状態であるものとして、このエラー状態を報知できるようにすると好ましい。このように、確認用の室温センサ29により検知された温度と第2の室温センサ19により検知された温度との温度差を、制御部13により検出し、この温度差が0若しくは微差であることを確認することで、第2の室温センサ19により検知された温度の信頼性を高めることができる。
図8に戻って、制御部13は、S4において、前述した特定操作があると判断された場合には、S5に進み、予冷・予熱運転モードを解除する停止モードを実行する。停止モードにおいては、予冷・予熱運転モードを行わない、すなわち、室内空調機12の電源が常に切り状態となる。また、制御部13は、停止モードの実行とともにS6に進み、キーユニット10にカードキーKが挿入されたか否かを判断する。S6においてキーユニット10にカードキーKが挿入されたと判断された場合には、前述したS2に進み、通常運転モードを実行する。また、S6においてキーユニット10にカードキーKが挿入されていないと判断された場合には、停止モードを継続して実行する。尚、上述した停止モードにおいて、キーユニット10にカードキーKが挿入された時点で、停止モードから強制的に通常運転モードに移行する(図8のS6→S2を参照)。
このように、停止モード中においてキーユニット10にカードキーKを検知させることで、特別な操作を行うことなく簡便に停止モードを解除することができる。具体的には、停止モード中の客室1に新規の利用客が入室する場合、利用客がキーユニット10にカードキーKを差し込むだけで室内空調機12の停止モードが解除され、簡便に通常運転モードに移行させることができる。
次いで、図10を用いて報知部18について説明する。図10に示されるように、報知部18は第1LED18a、第2LED18b、第3LED18cを有するインジケータであり、図10(a)に示されるように、通常運転モード中には第1LED18aが点灯し、図10(b)に示されるように、予冷・予熱運転モード中には第2LED18bが点灯し、停止モード中には第3LED18cが点灯するようになっている。このように、報知部18により現在の運転モードを確認できる。特に予冷・予熱運転モードか停止モードかを確認することができるので、管理者は確実に所望の運転モードに切り替えることができる。
尚、本実施例では、報知部18が第1LED18a、第2LED18b、第3LED18cを有する形態を例示したが、これに限られるものではなく、少なくとも予冷・予熱運転モードか停止モードかを報知できるものであればよく、第2LED18b、第3LED18cのみを有し、通常運転モードにおいては、第2LED18b及び第3LED18cが消灯するようになっているものであってもよい。また、例えば、LEDを1つのみ設け、異なる発光色や発光パターン(点灯・点滅・消灯など)等により予冷・予熱運転モードか停止モードかを報知できるようになっていてもよい。また、報知手段は、LED等の照明に限られず、文字や図形をディスプレイ表示するようになっていてもよい。さらに尚、報知手段は、利用客から視認し難い位置に設けられていてもよい。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では、カードキーKを検知可能な検知部としてのセンサ10dが接触式のセンサである形態を例示したが、これに限られず、光学センサ等の非接触式のセンサであってもよい。また、被検知具としてカードキーKを例に挙げたが、例えば、客室1の鍵に取付けられるキーホルダーなどであってもよいし、利用者が携帯する情報端末を非接触方式でセンサ等の検知部に検知させるようになっていてもよい。
また、前記実施例では、予冷・予熱運転モードから停止モードに切替えるための特定操作として、通常とは異なるキーユニット10に対するカードキーKの抜き差し操作である形態を例示したが、これに限られず、例えば、キーユニット10の下端面など、利用者が容易に発見できない所定箇所に特定操作用の隠しスイッチ等を設け、該スイッチを管理者が押すことで予冷・予熱運転モードから停止モードに切り替わるようにしてもよい。
また、前記実施例では、所定時間α内に2回以上カードキーKが検知状態となり、且つ所定時間α経過時にカードキーKが非検知状態となっていることで、制御部13が特定操作が行われたと判断する形態を例示したが、これに限られず、制御部13は、所定時間α経過時にカードキーKが非検知状態となっているか否かに関わらず、所定時間α内に2回以上カードキーKが検知状態となった場合に特定操作が行われたと判断し、客室1の非利用状態における運転モードを予冷・予熱運転モードから停止モードにセットするようにしてもよい。この形態においては、所定時間α経過時にカードキーKが検知状態となっている場合に通常運転モードに切替えて実行するようにすればよい。
また、前記実施例では、制御部13が特定操作が行われたと判断する1つの判断基準として、所定時間α内に2回以上カードキーKが検知状態となることを例示したが、これに限られず、所定時間α内に複数回カードキーKが非検知状態となることを特定操作が行われたと判断する1つの判断基準としてもよい。また、特定操作における所定時間αの長さや、特定操作の判断基準となる所定時間α内におけるカードキーKの検知状態(または非検知状態)の回数は自由に変更することができる。
また、上記実施例では、冷房季においては、第2の設定温度としての上限温度「27℃」若しくは「30℃」を択一的に選択可能であるが、上限温度は、一般的に冷房季に設定される第1の設定温度よりも高めであれば、上述した温度に限られず、また例えば無段階に可変に設定できるものであってもよい。同様に、暖房季においては、第2の設定温度としての下限温度「17℃」若しくは「20℃」を択一的に選択可能であるが、下限温度は、一般的に暖房季に設定される第1の設定温度よりも低めであれば、上述した温度に限られず、また例えば無段階に可変に設定できるものであってもよい。
また例えば、上記実施例では、設定時間は5分間であるが、必ずしもこの時間に限られず、例えば3分間でも10分間でもよいし、また無段階に可変に設定できるものであってもよい。更に、室内空調機の起動を継続する設定時間と、停止を継続する設定時間とが、同じ時間に限られず異なる時間であっても構わない。
また例えば、上記実施例では、室内空調機12は、客室1ごとに配設されるいわゆる個別タイプのパッケージ型の空調機であるが、空調機のタイプや型式についてはこれに限らず、例えばビルマルチタイプのパッケージ型の空調機であってもよいし、またファンコイル型の空調機であってもよい。
また例えば、第2の室温センサは、客室1の適所に複数設けられており、該複数の第2の室温センサにより検知される室温の平均値を算出し、この平均値に基づいて空調を行うようにしてもよい。
更に、例えば室内空調機が客室の適所に複数設置されている場合には、第2の室温センサは、これら室内空調機に個別に対応するように複数設けられていてもよいし、これら室内空調機に全てに対応するように1つのみ設けられていてもよい。