JP7234773B2 - 渦電流式減速装置用ロータ - Google Patents
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Description
円筒部を備え、
前記円筒部の化学組成が、質量%で、
C:0.05~0.15%、
Si:0.10~0.40%、
Mn:0.50~1.00%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Mo:0.20~1.00%、
Nb:0.020~0.060%、
V:0.040~0.080%、
sol.Al:0.030~0.100%、
B:0.0005~0.0050%、
N:0.003~0.010%、
Cu:0~0.20%、
Ni:0~0.20%、
Cr:0~0.10%、及び、
残部:Fe及び不純物、からなり、式(1)及び式(2)を満たし、
ミクロ組織におけるマルテンサイト及びベイナイトの総面積率が95.0%以上である。
0.060≦(51/93)Nb+V≦0.100 (1)
0.50<Nb/V (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
0.060≦(51/93)Nb+V≦0.100 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
0.50<Nb/V (2)
ここで、式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
円筒部を備え、
前記円筒部の化学組成が、質量%で、
C:0.05~0.15%、
Si:0.10~0.40%、
Mn:0.50~1.00%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Mo:0.20~1.00%、
Nb:0.020~0.060%、
V:0.040~0.080%、
sol.Al:0.030~0.100%、
B:0.0005~0.0050%、
N:0.003~0.010%、
Cu:0~0.20%、
Ni:0~0.20%、
Cr:0~0.10%、及び、
残部:Fe及び不純物、からなり、式(1)及び式(2)を満たし、
ミクロ組織におけるマルテンサイト及びベイナイトの総面積率が95.0%以上である。
0.060≦(51/93)Nb+V≦0.100 (1)
0.50<Nb/V (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
前記化学組成はさらに、
Cu:0.01~0.20%、
Ni:0.01~0.20%、及び、
Cr:0.01~0.10%、からなる群から選択される1元素又は2元素以上を含有する。
図1は、本実施形態の渦電流式減速装置用ロータが適用される、渦電流式減速装置の正面図である。図1を参照して、渦電流式減速装置1は、渦電流式減速装置用ロータ10(以下、単にロータ10ともいう)と、ステータ20とを備える。
図3を参照して、非制動時において、渦電流式減速装置1の径方向に見た場合、各永久磁石22又は23は、互いに隣り合う2つのポールピース24と重複している。この場合、磁束Bは図3に示すとおり、ステータ20内に流れ、具体的には、永久磁石22及び23と、ポールピース24と、磁石保持リング21との間を流れる。この場合、ロータ10と永久磁石22及び23との間には磁気回路が形成されておらず、ロータ10にローレンツ力が発生しない。そのため、制動力が作動しない。
[化学組成]
本実施形態の渦電流式減速装置用ロータ10の円筒部11の化学組成は、次の元素を含有する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
C:0.05~0.15%
炭素(C)は、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Cはさらに、Nb炭化物、V炭化物等の析出強化型の微細な炭化物を生成し、鋼材の高温強度を高める。C含有量が0.05%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上述の効果が十分に得られない。一方、C含有量が0.15%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、C含有量は0.05~0.15%である。C含有量の好ましい下限は0.06%であり、さらに好ましくは0.07%である。C含有量の好ましい上限は0.14%であり、さらに好ましくは0.13%であり、さらに好ましくは0.12%である。
シリコン(Si)は、製鋼工程において、鋼を脱酸する。Siはさらに、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Si含有量が0.10%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Si含有量が0.40%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、Si含有量は0.10~0.40%である。Si含有量の好ましい下限は0.12%であり、さらに好ましくは0.15%である。Si含有量の好ましい上限は0.38%であり、さらに好ましくは0.36%である。
マンガン(Mn)は、製鋼工程において、鋼を脱酸する。Mnはさらに、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Mn含有量が0.50%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Mn含有量が1.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、Mn含有量は0.50~1.00%である。Mn含有量の好ましい下限は0.58%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.62%である。Mn含有量の好ましい上限は0.94%であり、さらに好ましくは0.90%であり、さらに好ましくは0.88%である。
燐(P)は不可避に含有される不純物である。つまり、P含有量は0%超である。Pは、鋼材の熱間加工性及び靱性を低下する。Pはさらに、鋼材の電気抵抗を高め、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量を減少させる。P含有量が0.030%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性及び靱性が顕著に低下し、さらに、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、P含有量は0.030%以下である。P含有量の好ましい上限は0.028%であり、さらに好ましくは0.026%であり、さらに好ましくは0.025%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、P含有量の過剰な低減は、製造コストを引き上げる。したがって、通常の工業生産を考慮した場合、P含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.003%である。
硫黄(S)は不可避に含有される不純物である。つまり、S含有量は0%超である。Sは、鋼材の熱間加工性及び靱性を低下させる。S含有量が0.030%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性及び靱性が顕著に低下する。したがって、S含有量は0.030%以下である。S含有量の好ましい上限は0.025%であり、さらに好ましくは0.022%であり、さらに好ましくは0.020%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、S含有量の過剰な低減は、製造コストを引き上げる。したがって、通常の工業生産を考慮した場合、S含有量の好ましい下限は0.001%である。
モリブデン(Mo)は、鋼材の焼入れ性を高め、固溶強化及びMo炭化物(Mo2C)による析出強化(分散強化)により、高温強度を高める。Moはさらに、鋼材の靱性を高める。Mo含有量が0.20%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Mo含有量が1.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、Mo含有量は0.20~1.00%である。Mo含有量の好ましい下限は0.25%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.35%であり、さらに好ましくは0.40%である。Mo含有量の好ましい上限は0.90%であり、さらに好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.70%であり、さらに好ましくは0.60%である。
ニオブ(Nb)は、炭素と結合してNb炭化物を生成し、析出強化により、鋼材の高温強度を高める。Nbはさらに、結晶粒の粗大化を抑制する。Nb含有量が0.020%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Nb含有量が0.060%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。Nb含有量が0.060%を超えればさらに、鋼材の靱性が低下する。したがって、Nb含有量は0.020~0.060%である。Nb含有量の好ましい下限は0.025%であり、さらに好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.032%であり、さらに好ましくは0.034%である。Nb含有量の好ましい上限は0.058%であり、さらに好ましくは0.056%であり、さらに好ましくは0.054%である。
バナジウム(V)は、炭素と結合してV炭化物を生成し、析出強化により、鋼材の高温強度を高める。Vはさらに、結晶粒の粗大化を抑制する。V含有量が0.040%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、V含有量が0.080%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。V含有量が0.080%を超えればさらに、鋼材の靱性が低下する。したがって、V含有量は0.040~0.080%である。V含有量の好ましい下限は0.044%であり、さらに好ましくは0.048%であり、さらに好ましくは0.050%である。V含有量の好ましい上限は0.075%であり、さらに好ましくは0.070%である。
アルミニウム(Al)は、製鋼工程において、鋼を脱酸する。Alはさらに、Nと結合してAlNを生成して、鋼材の結晶粒を微細化する。sol.Al含有量が0.030%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、sol.Al含有量が0.100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、sol.Al含有量は0.030~0.100%である。sol.Al含有量の好ましい下限は0.040%であり、さらに好ましくは0.050%である。sol.Al含有量の好ましい上限は0.090%である。
ボロン(B)は鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の高温強度を高める。B含有量が0.0005%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、B含有量が0.0050%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の靱性が低下する。したがって、B含有量は0.0005~0.0050%である。B含有量の好ましい下限は0.0010%であり、さらに好ましくは0.0012%であり、さらに好ましくは0.0014%である。B含有量の好ましい上限は0.0045%であり、さらに好ましくは0.0040%であり、さらに好ましくは0.0035%であり、さらに好ましくは0.0030%である。
窒素(N)は、Alと結合してAlNを形成して、鋼材の結晶粒を微細化する。N含有量が0.003%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、N含有量が0.010%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、N含有量は0.003~0.010%である。N含有量の好ましい下限は0.004%である。N含有量の好ましい上限は0.009%であり、さらに好ましくは0.008%であり、さらに好ましくは0.007%である。
本実施形態の渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Cu、Ni及びCrからなる群から選択される1元素又は2元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼材の焼入れ性を高める。
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Cu含有量は0%であってもよい。含有される場合、Cuは、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の高温強度を高める。Cuが少しでも含有されれば、上記効果はある程度得られる。しかしながら、Cu含有量が0.20%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、Cu含有量は0~0.20%である。Cu含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Cu含有量の好ましい上限は0.15%であり、さらに好ましくは0.12%であり、さらに好ましくは0.10%である。
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ni含有量は0%であってもよい。含有される場合、Niは、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の高温強度を高める。Niが少しでも含有されれば、上記効果はある程度得られる。しかしながら、Ni含有量が0.20%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、Ni含有量は0~0.20%である。Ni含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。Ni含有量の好ましい上限は0.15%であり、さらに好ましくは0.12%であり、さらに好ましくは0.10%である。
クロム(Cr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Cr含有量は0%であってもよい。含有される場合、Crは、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の高温強度を高める。Crが少しでも含有されれば、上記効果はある程度得られる。しかしながら、Cr含有量が0.10%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、Cr含有量は0~0.10%である。Cr含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Ni含有量の好ましい上限は0.09%であり、さらに好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.07%であり、さらに好ましくは0.06%であり、さらに好ましくは0.05%である。
本実施形態の渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11の化学組成はさらに、次の式(1)及び式(2)を満たす。
0.060≦(51/93)Nb+V≦0.100 (1)
0.5<Nb/V (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、本実施形態のロータ10の円筒部11の化学組成中の対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
F1=(51/93)Nb+Vと定義する。F1は、MX型析出物を形成するNb炭化物及びV炭化物の析出量の指標である。以下、F1を、「MX型析出物量指標」という。MX型析出物量指標F1は、Nb含有量及びV含有量を全てV含有量として換算した量である。MX型析出物量指標F1が0.060未満であれば、化学組成中の各元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11中のMX型析出物の生成量が不十分であり、十分な高温強度が得られない。具体的には、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11の700℃における降伏強度が140MPa未満となる。一方、MX型析出物量指標F1が0.100を超えれば、化学組成中の各元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、ロータ10の円筒部11中のMX型析出物の生成量が多すぎる。この場合、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11の電気抵抗が高まってしまう。したがって、MX型析出物量指標F1は0.060~0.100である。この場合、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11において、十分な高温強度が得られる。具体的には、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11の700℃における引張強度が140MPa以上になる。さらに、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11の靱性が高まる。MX型析出物量指標F1の好ましい下限は0.065であり、さらに好ましくは0.070である。MX型析出物量指標F1の好ましい上限は0.095であり、さらに好ましくは0.092である。なお、MX型析出物量指標F1は、算出された数値の小数第四位を四捨五入して得られた値(つまり、小数第三位の値)である。
F2=Nb/Vと定義する。F2はMX型析出物の微細度合いを示す指標である。以下、F2を「MX型析出物微細度合い指標」という。MX型析出物であるNb炭化物とV炭化物とを比較した場合、Nb炭化物の方がV炭化物と比較して成長が遅い。つまり、ロータ10の円筒部11中において、Nb炭化物はV炭化物よりも微細である。MX型析出物が微細な方が、鋼材の高温強度をより高めることができる。MX型析出物微細度合い指標F2は、Nb含有量のV含有量に対する比率を規定している。つまり、MX型析出物微細度合い指標F2は、Nb炭化物個数の、V炭化物個数に対する比率を意味している。MX型析出物微細度合い指標F2が0.50以下であれば、微細なNb炭化物個数の、V炭化物個数に対する比率が小さい。この場合、化学組成中の各元素含有量が本実施形態の範囲内であり、かつ、式(1)を満たしていても、微細なMX型析出物個数の割合が少ない。そのため、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11の高温強度を十分に高めることができない。具体的には、MX型析出物微細度合い指標F2が0.50以下であれば、700℃における渦電流式減速装置のロータの円筒部の降伏強度が140MPa未満になる。
本実施形態のロータ10の円筒部11のミクロ組織では、マルテンサイト及びベイナイトの総面積率が95.0%以上である。つまり、本実施形態の渦電流式減速装置用ロータ10の円筒部11のミクロ組織は、主としてマルテンサイト及び/又はベイナイトからなる組織である。本明細書でいう「マルテンサイト及びベイナイト」は、焼戻しマルテンサイト及び焼戻しベイナイトも含む。本実施形態のロータ10の円筒部11のミクロ組織において、マルテンサイト及びベイナイト以外の残部はフェライトである。つまり、フェライトの面積率は5.0%未満である。
マルテンサイト及びベイナイトの総面積率=100.0-フェライトの面積率
渦電流式減速装置用ロータ10の円筒部11の700℃での降伏強度(MPa)は、JIS G 0567(2012)に準拠した測定方法により求めることができる。具体的には、ロータ10の円筒部11の厚さ中央位置を含む引張試験片を採取する。引張試験片の平行部の長さは40mmとし、標点間の長さは30mm、平行部の直径は6mmとする。加熱炉を用いて引張試験片を加熱して、試験片の温度を700℃にする。700℃での保持時間は10分とする。700℃の試験片に対して、大気中にて引張試験を実施して、応力-ひずみ曲線を得る。得られた応力-ひずみ曲線から、オフセット法に基づく0.2%耐力を、降伏強度(MPa)と定義する。
ロータ10の円筒部11の電気抵抗は、JIS C 2526(1994)に準拠した測定方法により求めることができる。具体的には、ロータ10の円筒部11の厚さ中央位置を含む試験片を採取する。試験片は、3mm×4mm×60mmの標準試験片とする。常温(20±15℃)で、ダブルブリッジ法により、試験片の電気抵抗(μΩcm)を求める。
本実施形態の渦電流式減速装置用ロータ10の製造方法の一例を説明する。以降に説明する製造方法は、本実施形態の渦電流式減速装置用ロータ10を製造するための一例である。したがって、上述の構成を有する渦電流式減速装置用ロータ10は、以降に説明する製造方法以外の他の製造方法により製造されてもよい。しかしながら、以降に説明する製造方法は、本実施形態の渦電流式減速装置用ロータ10の製造方法の好ましい一例である。
素材準備工程では、各元素含有量が本実施形態の範囲内であって、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有する素材を準備する。素材は第三者から供給されたものであってもよい。素材を製造してもよい。製造する場合、たとえば、次の方法で製造する。
素材準備工程にて準備された素材に対して熱間加工(熱間鍛造及び/又は熱間圧延)を実施して、円筒部11に相当する中間品を製造する。始めに、素材を1000~1300℃に加熱する。加熱後の素材に対して、熱間鍛造を実施して所定の寸法に成型する。熱間鍛造後さらに、熱間圧延を実施して、円筒状の中間品を製造する。加熱後の素材に対して、熱間鍛造又は熱間圧延を実施して、円筒状の中間品を製造してもよい。
熱間加工工程により製造された中間品に対して、調質処理工程を実施する。具体的には、中間品に対して、焼入れ処理を実施した後、焼戻し処理を実施する。
始めに、中間品に対して、焼入れ処理を実施する。焼入れ温度は870~930℃である。焼入れ温度が870℃未満であれば、熱間加工工程により生成したMX型析出物(Nb炭化物及びV炭化物)が十分に固溶しない。この場合、次工程の焼戻し処理において、焼入れ処理後に中間品内に残存する未固溶のMX型析出物が粗大化してしまう。また、中間品のミクロ組織がオーステナイト単相にならないため、焼入れ後の組織において、マルテンサイト及び/又はベイナイトだけでなく、フェライトが残存してしまう。一方、焼入れ温度が930℃以上であれば、オーステナイト結晶粒が粗大化する。したがって、焼入れ温度は870~900℃である。焼入れ処理での急冷方法は、周知の方法で足りる。焼入れ処理での急冷方法はたとえば、水冷である。
焼入れ処理後の中間品に対して、焼戻し処理を実施する。焼戻し処理により、MX型析出物を生成する。焼戻し温度は660~700℃である。焼戻し温度が660℃未満であれば、MX型析出物のうち、特にNb炭化物が生成しにくくなる。焼戻し温度が660℃未満であればさらに、転位密度が多く残存したままとなる。この場合、転位密度が強度の担保を行うため、700℃での高温強度が急激に低下してしまう。一方、焼戻し温度が700℃を超えれば、ミクロ組織の一部がオーステナイトに変態してしまう可能性がある。したがって、焼戻し温度は660~700℃である。
焼戻し処理後の中間品の外周面を機械加工することにより、冷却フィン11Fを形成する。機械加工は周知の方法で実施すれば足りる。以上の工程により、円筒部11が製造される。
製造された円筒部11に、ホイール部13に取り付けられたアーム部12を取り付けて、渦電流式減速装置用ロータ10を製造する。取り付け方法は溶接であってもよいし、他の方法であってもよい。
製造した各試験番号の擬似ロータに対して、次の評価試験を実施した。
各試験番号の擬似ロータの板厚中央部から、サンプルを採取した。サンプルの表面を鏡面研磨した後、ナイタル腐食液に10秒程度浸漬してエッチングを実施し、組織を現出させた。エッチングにより組織が現出された表面の任意の1視野(観察視野)を、500倍の光学顕微鏡により観察した。観察視野の視野面積は20000μm2であった。コントラストにより、観察視野中の相を特定した。その結果、観察視野中のミクロ組織は、マルテンサイト及び/又はベイナイトと、フェライトとからなった。特定されたフェライトの面積を求めた。フェライトの面積を、観察視野の総面積で除して、フェライトの面積率(%)を求めた。上述のとおり、観察視野中のミクロ組織では、フェライト以外の残部はマルテンサイト及び/又はベイナイトであった。そこで、マルテンサイト及びベイナイトの総面積(%)を、次の式で求めた。
マルテンサイト及びベイナイトの総面積率=100.0-フェライトの面積率
求めたマルテンサイト及びベイナイトの総面積率(%)を、表2に示す。
各試験番号の擬似ロータの700℃での降伏強度(MPa)を、JIS G 0567(2012)に準拠した測定方法により求めた。具体的には、各試験番号の擬似ロータから、引張試験片を採取した。引張試験片の平行部の長さは40mm、標点間の長さは30mm、平行部の直径は6mmであった。加熱炉を用いて引張試験片を加熱して、試験片の温度を700℃にした。700℃の引張試験片に対して、大気中にて引張試験を実施して、応力-ひずみ曲線を得た。得られた応力-ひずみ曲線から、オフセット法に基づく0.2%耐力を、降伏強度(MPa)と定義した。得られた700℃での降伏強度(MPa)を、表2に示す。
各試験番号の擬似ロータの常温での電気抵抗を、JIS C 2526(1994)に準拠した測定方法により求めた。具体的には、各試験番号の擬似ロータから、試験片を採取した。試験片のサイズは3mm×4mm×60mmであった。試験片に対して、常温で、ダブルブリッジ法により、試験片の電気抵抗(μΩcm)を求めた。得られた電気抵抗(μΩcm)を、表2に示す。
表2を参照して、試験番号1~5の擬似ロータの化学組成中の各元素の含有量はいずれも適切であり、F1が式(1)を満たし、F2が式(2)を満たした。さらに、ベイナイト面積率はいずれも95.0%以上であった。そのため、700℃での降伏強度はいずれも140MPa以上であり、700℃の高温環境下においても、極めて高い降伏強度を維持することができた。さらに、電気抵抗は20.5μΩcm以下であり、渦電流式減速装置のロータとして、十分な電気抵抗を示した。
10 ロータ
11 円筒部
12 アーム部
13 ホイール部
20 ステータ
Claims (2)
- 渦電流式減速装置用ロータであって、
円筒部を備え、
前記円筒部の化学組成が、質量%で、
C:0.05~0.15%、
Si:0.10~0.40%、
Mn:0.50~1.00%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Mo:0.20~1.00%、
Nb:0.020~0.060%、
V:0.040~0.080%、
sol.Al:0.030~0.100%、
B:0.0005~0.0050%、
N:0.003~0.010%、
Cu:0~0.20%、
Ni:0~0.20%、
Cr:0~0.10%、及び、
残部:Fe及び不純物、からなり、式(1)及び式(2)を満たし、
ミクロ組織におけるマルテンサイト及びベイナイトの総面積率が95.0%以上である、
渦電流式減速装置用ロータ。
0.060≦(51/93)Nb+V≦0.100 (1)
0.50<Nb/V (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。 - 請求項1に記載の渦電流式減速装置用ロータであって、
前記化学組成はさらに、
Cu:0.01~0.20%、
Ni:0.01~0.20%、及び、
Cr:0.01~0.10%、からなる群から選択される1元素又は2元素以上を含有する、
渦電流式減速装置用ロータ。
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