JP3036372B2 - 渦電流式減速装置用ローター材及びその製造方法 - Google Patents

渦電流式減速装置用ローター材及びその製造方法

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JP3036372B2
JP3036372B2 JP6204313A JP20431394A JP3036372B2 JP 3036372 B2 JP3036372 B2 JP 3036372B2 JP 6204313 A JP6204313 A JP 6204313A JP 20431394 A JP20431394 A JP 20431394A JP 3036372 B2 JP3036372 B2 JP 3036372B2
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光雄 宮原
晃 斉藤
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、バスやトラック等の
大型自動車に使用される渦電流式減速装置のローター材
及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】大型自動車の制動装置としては、主ブレ
ーキであるフートブレーキ、補助ブレーキである排気ブ
レーキのほか、長い坂道の降坂時などで安定した減速を
行ない、かつフートブレーキの焼損を防止するため渦電
流式減速装置が使用されている。
【0003】この渦電流式減速装置には電磁石を使用し
たものと、永久磁石を使用したものとがある。前者は、
鉄心に電磁コイルを巻着した電磁石を磁極として、その
磁極の多数をディスクの両面に配設してなり、バッテリ
ー電源の通電により磁界を発生させ、渦電流現象により
ディスクを減速させる方向にトルクを発生させ制動力を
得るものである(特開昭50−61574号公報等)。
【0004】後者は、隣接する磁石の極性が互いに逆向
きとなるようにして複数個の永久磁石を周設した磁石支
持リングを有し、上記永久磁石の磁極面を所要空隙でロ
ーターの円筒部に磁気的に全面対向する位置から全面離
脱する位置までの長さを進退自在に設け、該永久磁石の
磁気回路によりローターの円筒部に発生する渦電流をオ
ン・オフ操作するものである(特開平1−234043
号公報、特開平1−234045号公報、特開平1−2
98948号公報等)。
【0005】永久磁石の磁極面がローターに磁気的に全
面対向する位置と全面離脱する位置との間の長さを進退
する渦電流式減速装置の一例を示せば、図1に示すよう
に、回転軸15の片側端部に嵌着した支持部材16にロ
ーター1の取付け円板7が複数のボルト18により取着
されている。
【0006】前記ローター1は、外筒2と内筒3を所要
の間隔をもって対向させ円筒部を形成し、外筒2と内筒
3との外側筒端間を多数のアーム4により接続し、外筒
2の外周面に多数の冷却フィン5を等間隔で円周配置
し、かつ内筒3の内側端面に取付け円板7を設けてな
る。
【0007】前記外筒2と内筒3との間の空間には、そ
の筒長さに見合う幅の磁石支持リング8が介在する。こ
の磁石支持リング8は、磁気シールドケーシング内を貫
いて回転軸15の軸線方向に平行して円周配設された複
数の案内棒10に摺動自在に支持され、ケーシング11
に取着したシリンダー12のピストンロッド6の先端を
磁石支持リング8の側面に螺着し、シリンダー12を作
動して磁石支持リング8を進退させることにより、永久
磁石の磁極面がローター1の円筒部に全面対向した位置
から磁気的に外れた位置までの長さを進退自在に設けて
なる。
【0008】そして、磁石支持リング8の外周面に希土
類磁石からなる複数個の永久磁石9を隣接する磁石の磁
性が互いに逆向きとなるように周設されている。
【0009】上記永久磁石群は、軸受けを介して回転軸
15に軸支した支持板17に取着された非磁性のケーシ
ングカバー13と強磁性のケーシング11を接続してな
る磁気シールドケーシングに納め、永久磁石9は制動オ
ン時にはケーシングカバー13に支持されたポールピー
ス14を介して外筒2に対向し、制動オフ時にはケーシ
ング11に対向した位置にあって、外部への磁気漏洩が
防止されている。
【0010】前記渦電流式減速装置は、永久磁石の磁極
面がローターに磁気的に全面対向する位置と全面離脱す
る位置とを切り換えることにより、制動力のオン・オフ
制御が行なわれ、所定の制動トルクで車両の減速が行な
われるのである。
【0011】前記渦電流式減速装置のローターは、制動
オン時には渦電流により制動トルクが発生すると同時
に、ジュール熱により加熱され、また制動オフ時には冷
却フィンにより空冷されるため、制動力のオン・オフ制
御の繰り返しによって著しい熱サイクルが負荷される。
【0012】従来、渦電流式減速装置のローター材とし
ては、例えばC:0.2重量%(以下単に%と省略す
る)、Si:0.74%、Mn:0.61%、P:0.
017%、S:0.025%、Ni:0.07%、C
r:0.29%、Mo:0.03%、Al:0.015
%以下を含有する鋳鋼が使用されていた。
【0013】しかし、前記鋳鋼は安価ではあるが、強度
と靭性が高くはないため、前記のような苛酷な条件下で
長時間使用されると、ローター表面に熱き裂が発生し、
寿命が低下する欠点があった。
【0014】前記ローター材に鋳鋼を使用した場合の欠
点を除くため、本発明者らは先に強度と靭性を備えたロ
ーター材及びその製造方法を提案した(特開平3−24
7742号公報)。その発明は、C:0.05〜0.1
5%、Si:0.10〜3.0%、Mn:1.0〜6.
0%、P:0.3%以下、Ni:0.5〜5.0%、N
b:0.005〜0.02%、V:0.03〜0.07
%、N:0.01%以下を含有するか、あるいは必要に
応じて更にMo:1.0%以下を含有する鋼をローター
材とし、その製造方法は、該鋼を熱間鍛造した後、85
0〜900℃の温度で焼入れし、次いで600〜700
℃で焼戻しすることにある。
【0015】すなわち、前記発明は、強度と靭性を向上
すると共に、効率良く制動トルクを発生し、かつジュー
ル熱を低減するため電気抵抗ρが大きく、保磁力Hcが
小さいという電磁気特性を付与することを目的とし、電
磁気特性に悪影響を及ぼすC含有量を低減し、かつCr
を添加せず、P、Mn、Niによる固溶強化とVによる
析出強化により強度を調整するのであり、その強度調整
のため熱間鍛造した後に焼入れ、焼戻しを行なうのであ
る。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】前記のごとく、強度と
靭性を向上すると共に、電気抵抗ρが大きく、保磁力H
cが小さいという電磁気特性を付与したローター材が開
発された。しかし、近年、渦電流式減速装置に対し要求
される制動性能は益々増加する傾向にあり、実際に渦電
流式減速装置の使用条件は一段と苛酷化しており、ロー
ターに加わる熱負荷もより増加する状況にある。このよ
うな条件下では、前記改良されたローター材を用いても
所望する制動力は得られず、更に高制動力を発揮し得る
ローター材の出現が望まれている。また、前記改良され
たローター材は、ローターの熱疲労き裂の発生は抑制さ
れるものの、使用条件の苛酷化に伴ってローターの熱変
形が進行するため、更に高い高温強度を有するローター
材が要求されている。
【0017】この発明は、前記の要望を満足し、高い制
動力を発揮すると共に、高温強度が高く熱変形量が小さ
く優れた耐久性を有する渦電流式減速装置のローター材
及びその製造方法を提供するものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】渦電流式減速装置のロー
ター材に要求される性質としては、高い制動力を発生す
るための電磁気特性とローターの熱変形を防止するため
の高い高温強度が必要である。本発明者らは、この目的
を達成するため研究を行なった結果、次のような結論に
達した。
【0019】従来、渦電流式減速装置の制動力を増加さ
せるには、保磁力Hcが小さく、またいわゆる電磁鋼板
のように電気抵抗ρが大きいローター材が良いとされて
いた。しかし、本発明者らはローター材の電磁気特性と
制動力の関係に対して以下に示すような検討を行なった
結果、新たな知見を得た。
【0020】渦電流式減速装置の制動トルクとローター
材の電磁気特性の関係を定量的に評価するため、図2に
示すモデルにMaxwellの方程式を適用し、解析的
に検討を行なった。なお、図中のaは永久磁石9の厚さ
(m)、bはローター(外筒2)とヨーク材(磁石支持
リング8)の間隔(m)、2cはロータの幅、τは磁極
間隔、ωは永久磁石の長さ、Vはローターの速度(m/
s)である。このモデルのローターに作用する単位面積
当たりの制動力Tは近似的に次式で表すことができる。
【0021】T=F1(M)・F2(k,a,b,c,
ω)・F3(σ,μr,kb) 1式
【0022】ここで、F1は下記の2式に示すように永
久磁石の強さMに依存する項、F2は装置の幾何学的形
状に依存する項、そしてF3はローター材の透磁率や電
気伝導度など電磁気特性に依存する項であり、F1〜F3
の各値が大きいほど制動力Tが大きくなる。
【0023】F1=(4μ02)/π2 2式 F2=sin2[kω/2]×[sinh(ka)/cosh(kb)]2×[ 1−tanh(kc)/kc] 3式
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
【0026】 T : 単位面積当たりの制動力(N/m2) M : 永久磁石の磁化(A/m) μ0 : 真空の透磁率=4π×10-7(H/m) k : π/τ(m-1) σ : ローターの電気伝導度(1/Ωm) μr : ローターの比透磁率
【0027】次に、後述する制動性能試験に供した渦電
流式減速装置の寸法を基に、a=0.013m、b=
0.015m、2c=0.05mとして、電気伝導度σ
(=1/ρ、ρ:電気抵抗)と比透磁率μrがF3に及ぼ
す影響を求めた結果を図3、図4に示す。その結果、渦
電流式減速装置の使用回転速度領域では、比透磁率μr
が小さいほど、あるいは電気伝導度σが大きいほど(換
言すれば電気抵抗ρが小さいほど)F3の値が大きくな
るが、特に電気伝導度σに対する依存性が強い。以上の
結果から、高い制動トルクを発生するためには、ロータ
ー材の電気抵抗ρを小さくすれば良いことがわかる。
【0028】前記、特開平3−247742号公報に記
載された発明における、従来ローター材の電気抵抗ρを
低減するには、例えばC、Nb、Mo、Vなどの添加元
素を低減すればよいが、この場合にはローター材の高温
強度が低くなり、熱変形が著しくなるため、ローターの
耐久性が低下する恐れがある。そこで、本発明者らはロ
ーター材の成分系について電気抵抗の低減と高温強度の
向上との観点から種々検討を行なった。
【0029】その結果、電気抵抗を低減し、かつ高温強
度を向上させるには、前記従来鋼のP、Ni、Mnの含
有量を低減することによって電気抵抗を低減することが
でき、またBの微量添加によって高温強度を改善し得る
ことを知り得た。この発明は、前記研究結果による知見
に基づいて完成したものである。
【0030】すなわち、この発明による渦電流式減速装
置用ローター材は、重量割合で、 C:0.05〜0.15%、Si:0.10〜0.40%、Mn:0.5〜1.0%未満
P:0.05%以下、 Ni:0.50%未満、Mo:0.2〜1.0%、Nb:0.01〜0.03%、V:0.03
〜0.07%、 B:0.0005〜0.003%、sol.Al:0.02〜0.09%、N:0.01%以下
を含有し、残部は実質的にFeの組成からなる鋼である。
【0031】また、この発明による渦電流式減速装置用
ローター材の製造方法は、前記組成の鋼を熱間鍛造した
後、850〜900℃で焼入れし、引き続き600〜7
00℃で焼戻すことにある。
【0032】
【作用】この発明の実施によるローター材は、電気抵抗
が低く、かつ高温強度が高いものが得られ、その結果渦
電流式減速装置の制動性能が向上すると共に、オン・オ
フ制御の繰り返し使用時の熱変形が抑制されるため、耐
久性が著しく増大する。なお、この発明の実施によるロ
ーター材の機械的性質及び電気的性質としては、実験の
結果、室温での破壊靭性値kQが200kgf/mm1.5
以上、650℃での引張強さが27kgf/mm2
上、室温での電気抵抗が21μΩcm以下であることが
望ましい。
【0033】この発明のローター材の化学成分を限定し
たのは下記の理由による。Cは、鋼の強度を決める最も
基本的な元素であるが、その含有量が0.05%未満で
はローター材として必要な強度レべルを確保することが
できない。また、0.15%を超えると電気抵抗の増加
により渦電流式減速装置の制動力に悪影響を及ぼす。そ
のため、C含有量は0.05〜0.15%とした。
【0034】Siは、鋼の脱酸剤として作用すると共
に、焼入れ性を向上させる作用があるが、その含有量が
0.10%未満では十分な効果が得られない。また電気
抵抗はSi含有量の増加に伴って増大し、その含有量が
0.40%を超えると渦電流式減速装置の制動力に悪影
響を及ぼすようになる。したがって、Si含有量は0.
10〜0.40%とした。
【0035】Mnは、鋼の脱酸、脱硫剤として有効である
と共に、焼入れ性の改善及び固溶強化による高強度化の
作用もある。しかし、Mn含有量を増加すると電気抵抗が
増大し、十分な制動力が得られない。したがって、Mn含
有量の下限は強度を確保する観点から0.5%とし、上限は
電気抵抗を抑制する観点から1.0%未満とした。
【0036】Pは、固溶強化により鋼の強度を向上させ
るのに有効であるが、一方その含有量が増加すると熱間
鍛造性が悪化すると共に、電気抵抗が増加するので、そ
の上限を0.05%とした。
【0037】Niは、焼入れ性と固溶強化による鋼の高強
度化に有効であるが、その含有量が増加すると電気抵抗
が増加し、渦電流式減速装置の制動力に悪影響を及ぼす
から、その上限を0.5%未満とした。
【0038】Moは、鋼の靭性及び高温強度を向上させ
る作用があるが、その含有量が0.2%未満ではロータ
ーに必要な高温強度が得られず、また1.0%を超えて
多く含有させても靭性及び高温強度の改善効果か飽和す
るばかりか、電気抵抗も増加し、かつ経済的に不利益を
招くため、その含有量は0.2〜1.0%とした。
【0039】Nbは、鋼の結晶粒を微細化する作用に加
えて、高温強度を改善する作用も有るが、その含有量が
0.01%未満では十分な効果が得られず、また0.0
3%を超えると靭性が低下すると共に、電気抵抗が増加
するため、その含有量は0.01〜0.03%とした。
【0040】Vは、バナジウム炭化物の析出強化により
鋼の高温強度を向上させる作用があるが、その含有量が
0.03%未満では十分な効果が得られず、また0.0
7%を超えると靭性が低下すると共に、電気抵抗が増加
するため、その含有量は0.03〜0.07%とした。
【0041】Bは、微量添加により鋼の焼入れ性を向上
させる元素で、高温強度の確保に効果があるが、その含
有量が0.0005%未満では十分な効果が得られず、
0.003%を超えると靭性が劣化し、かつ高温強度の
改善効果も飽和するので、その含有量は0.0005〜
0.003%とした。
【0042】Sol.Alは、脱酸剤として不可欠の元
素であり、かつ結晶粒の微細化に有効であるが、その含
有量が0.020%未満では十分な効果が得られず、ま
た0.090%を超えると電気抵抗が増加し、更に靭性
も劣化させるので、その含有量は0.020〜0.09
0%とした。
【0043】Nは、V、Nbの窒化物を生成して電気抵
抗に悪影響を及ぼすから、その含有量は0.01%以下
とした。
【0044】なお、前記成分元素のほかに不純物として
含有されるSは、MnSなどの硫化物を生成して電気抵
抗が増加するため、その含有量は0.01%以下に抑制
することが望ましい。
【0045】この発明のローター材を製造する際の熱処
理条件を限定したのは次の理由による。焼入れ温度は、
オーステナイト化変態温度(A3変態点)を上回る必要
があるため、その下限温度は850℃とした。また、焼
入れ温度が900℃を超えると結晶粒が粗大化するため
その上限は900℃とした。
【0046】焼戻し温度は、図5の引張強さと焼戻し温
度との関係を示すグラフ及び図6の破壊靭性値と焼戻し
温度との関係を示すグラフからわかるように、600℃
未満では高温強度は高いが十分な靭性が得られず、また
700℃を超えると靭性は良くなるが十分な高温強度を
確保することができないため、600〜700℃の範囲
とした。
【0047】
【実施例】この発明の実施例を、図面及び表に基づいて
説明する。表1に成分組成を示した従来材1〜3、本発
明材1〜6及び本発明の成分範囲から外れた比較材1〜
9の各鋼を溶製し、それぞれ通常の熱間鍛造を施して供
試材とした。
【0048】
【表1】
【0049】前記鋼の中から900℃で焼入れした従来
材1、3と本発明材3、4を供試材とし、各供試材の6
50℃における引張強さ(高温強度)と焼戻し温度との
関係を調べた。その結果を図5に示す。この図から本発
明材の高温強度は、従来材に比べて高く、例えば焼戻し
温度650℃で焼戻した場合を比較すれば、従来材の引
張強さ20数kgf/mm2に対し、本発明材は30数
kgf/mm2で約10kgf/mm2高い。また、焼戻
し温度が高くなるほど高温強度は低下することがわか
る。
【0050】また、前記と同じく900℃で焼入れした
従来材1、3と本発明材3、4を供試材とし、室温にお
ける破壊靭性値と焼戻し温度との関係を調べた。その結
果を図6に示す。この図から、従来材1と本発明材3及
び従来材3と本発明材4は、それぞれ破壊靭性値が同等
であり、また焼戻し温度が600℃以上では破壊靭性値
200kgf/mm1.5以上が得られることがわかる。
【0051】前記図5及び図6の試験結果より、ロータ
ー材として望ましい機械的性質、すなわち室温での破壊
靭性値kQが200kgf/mm1.5以上、650℃での
引張強さが27kgf/mm2以上を満足するには、焼
入れ後の焼戻し温度を600〜700℃とする必要のあ
ることがわかる。
【0052】表1に示したすべての従来材、本発明材及
び比較材を900℃で焼入れした後、650℃で焼戻し
て熱処理した供試材について、室温における電気抵抗
ρ、破壊靭性値kQ、650℃における降伏応力(0.
2%耐力)と引張強さを測定した。その結果を表2に示
す。
【0053】
【表2】
【0054】表2から、本発明材は、従来材に比べて電
気抵抗が低く、高温強度が高いことがわかる。また、本
発明材の破壊靭性値は従来材と同等である。なお、比較
材1は既存の構造用鋼JIS SCM415鋼である
が、C含有量が高く、Crが添加されているため、電気
抵抗が高い。また、Mo含有量が少なく、Nb、V、B
が添加されていないため、高温強度が低い。比較材2、
3、6はC、Mn、Bの含有量が低いために電気抵抗ρ
は低いが、十分な高温強度が得られていない。また、比
較材4、5、7、8、9はNb、Mo、P、Al、N
i、Siの含有量が多いために高温強度は本発明材より
高くなっているが、電気抵抗ρが高く、また破壊靭性値
も本発明材に比べて低い。
【0055】次に、表1に示した成分組成の各供試材を
用いて、前記の図1に示すタイプの渦電流式減速装置用
ローターを作成し、これを組み込んだ渦電流式減速装置
を大型トラックのトランスミッション後部のプロペラシ
ャフトの途中に装備して、制動トルクを測定すると共
に、耐久性を調査するため、繰り返し制動試験を実施し
た。この試験に用いた渦電流式減速装置は10トン車用
であり、ローターの内径は約380mm、肉厚は約20
mm、幅(回転軸方向の長さ)は約80mmであった。
【0056】制動トルクの測定は、先ずプロペラシャフ
トの回転速度を徐々に上げてゆき、回転速度が1000
rpmおよび2000rpmとなった時点で行なった。
また、繰り返し制動試験は、プロペラシャフトの回転速
度を3000rpmで一定とし、2分間制動、3分間非
制動を繰り返してローターに繰り返し温度変動を与え
た。この際のローター内面の最高温度は約680℃であ
った。この制動・非制動を1000サイクル繰り返し、
試験後のローターの熱変形量を測定した。熱変形量の測
定は、ローター内径を軸方向中央部で測定し、内径の拡
大量(円周方向8箇所の平均値)を熱変形量とした。以
上の試験結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】前記表3に示すように、本発明材1〜6は
従来材1〜3に比べ、いずれも制動トルクが高く、熱変
形量が小さくてローター材として優れていることがわか
る。また、比較材1は本発明材に比べ制動トルクが低
く、熱変形量が大きい。比較材2、3、6は、制動トル
クは高いが、熱変形量が大きい。更に、比較材4、5、
7、8、9は熱変形量は小さいが、制動トルクが低い。
したがって、成分組成が本発明材で限定している範囲か
ら外れると制動トルクが高く熱変形量が小さいという所
望する性質が得られないことがわかる。
【0059】
【発明の効果】この発明によれば、従来材に比べて電気
抵抗が低く、高温強度が高い渦電流式減速装置用ロータ
ーを提供できるため、渦電流式減速装置の制動能力を向
上し得ると共に、繰り返し使用時の熱変形を抑制するこ
とができ、耐久性が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】永久磁石を使用した渦電流式減速装置の一例を
示す縦断面図である。
【図2】制動トルクの計算を対象とした渦電流式減速装
置の解析モデルである。
【図3】制動トルクに及ぼすローター材の電気伝導度σ
の影響を示すグラフである。
【図4】制動トルクに及ぼすローター材の比透磁率μr
の影響を示すグラフである。
【図5】本発明材と従来材の650℃における引張強さ
と焼戻し温度との関係を示すグラフである。
【図6】本発明材と従来材の室温における破壊靭性値と
焼戻し温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ローター 2 外筒 3 内筒 4 アーム 5 冷却フィン 6 ピストンロッド 7 取付け円板 8 磁石支持リング 9 永久磁石 10 案内棒 11 ケーシング 12 シリンダー 13 ケーシングカバー 14 ポールピース 15 回転軸 16 支持部材 17 支持板 18 ボルト F3 4式で表される電磁気特性に依存する項
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H02K 49/02 H02K 49/02 B (56)参考文献 特開 平3−247742(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 6/00 C21D 9/00 C21D 9/28 H02K 49/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量割合で、 C:0.05〜0.15%、Si:0.10〜0.40%、Mn:0.5〜1.0%未満
    P:0.05%以下、 Ni:0.50%未満、Mo:0.2〜1.0%、Nb:0.01〜0.03%、V:0.03
    〜0.07%、 B:0.0005〜0.003%、Sol.Al:0.02〜0.09%、N:0.01%以下
    を含有し、残部は実質的にFeからなることを特徴とする
    渦電流式減速装置用ローター材。
  2. 【請求項2】 重量割合で、 C:0.05〜0.15%、Si:0.10〜0.40%、Mn:0.5〜1.0%未満
    P:0.05%以下、 Ni:0.50%未満、Mo:0.2〜1.0%、Nb:0.01〜0.03%、V:0.03
    〜0.07%、 B:0.0005〜0.003%、Sol.Al:0.02〜0.09%、N:0.01%以下
    を含有し、残部は実質的にFeからなる鋼を熱間鍛造した
    後、850〜900℃で焼入れし、引き続き600〜700℃で焼戻
    すことを特徴とする渦電流式減速装置用ローター材の製
    造方法。
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