本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削装置を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る切削装置の加工対象の被加工物を示す斜視図である。
(被加工物)
実施形態1に係る図1に示す切削装置1は、図2に示す被加工物200を切削ブレード21で切削加工して、個々のデバイス205に分割する装置である。実施形態1では、被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを基板201とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハである。被加工物200は、基板201の表面202に格子状に形成された複数のストリート203,204によって格子状に区画された領域にデバイス205が形成されている。なお、実施形態1では、複数のストリート203は、互いに平行に配置され、複数のストリート204は、互いに平行に配置されている。また、ストリート203,204は、互いに直交している。
また、本発明の被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウエーハでもよく、ウエーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、デバイス205及びストリート203,204が設定されていないセラミックス基板、フェライト基板、ガラス板又はニッケル及び鉄の少なくとも一方を含む基板等でも良い。実施形態1において、被加工物200は、裏面206が外周縁に環状フレーム210が装着された粘着テープ211に貼着されて、環状フレーム210に支持されている。
また、被加工物200は、図2に点線で示す直線状の切削予定ライン220が設定されている。切削予定ライン220は、切削装置1が切削ブレード21を切り込ませる位置を示す仮想的な線であり、各ストリート203,204と、最も外縁寄りのデバイス205の外側にストリート203,204と平行に配置されている。各ストリート203,204に設けられた切削予定ライン220は、各ストリート203,204の全長に亘って各ストリート203,204の幅方向の中央に配置されている。
(切削装置)
実施形態1に係る切削装置1は、図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持した被加工物200をスピンドル22に装着した切削ブレード21で切削する切削手段である切削ユニット20と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮像する撮像ユニット30と、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的に移動させる移動手段である移動ユニット40と、各構成要素を制御する制御手段である制御ユニット100とを少なくとも有する。
移動ユニット40は、チャックテーブル10を鉛直方向と平行なZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転駆動源41と、チャックテーブル10を水平方向と平行なX軸方向に加工送りするX軸移動ユニット42と、切削ユニット20を水平方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸移動ユニット43と、切削ユニット20をZ軸方向に切り込み送りするZ軸移動ユニット44とを少なくとも備える。
チャックテーブル10は、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成された円盤形状である。また、チャックテーブル10は、X軸移動ユニット42によりX軸方向に移動自在で回転駆動源41によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、ポーラスセラミック等から形成された保持面11が図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル10は、保持面11に環状フレーム210に一体となった被加工物200が粘着テープ211を介して載置され、保持面11が真空吸引源により吸引されることで、環状フレーム210に一体となった被加工物200を吸引保持する。
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ブレード21を回転可能に装着したユニットである。切削ユニット20は、切削ブレード21が装着されるスピンドル22と、スピンドル22を回転自在に支持しY軸移動ユニット43によりY軸方向に移動自在に設けられかつZ軸移動ユニット44によりZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング23とを備えるものである。切削ユニット20は、それぞれ、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット43によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット44によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
切削ユニット20は、Y軸移動ユニット43及びZ軸移動ユニット44により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。スピンドル22は、切削ブレード21を回転させることで被加工物200を切削する。スピンドルハウジング23は、スピンドル22を軸心回りに回転自在に収容している。切削ユニット20は、スピンドル22に切削ブレード21を装着することにより、切削ブレード21を回転可能に保持する。切削ユニット20のスピンドル22及び切削ブレード21の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。
撮像ユニット30は、切削ユニット20と一体的に移動するように、切削ユニット20に固定されている。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
X軸移動ユニット42は、チャックテーブル10をX軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。Y軸移動ユニット43は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット44は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りするものである。
X軸移動ユニット42、Y軸移動ユニット43及びZ軸移動ユニット44は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ及びチャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
また、切削装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、チャックテーブル10のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。
また、切削装置1は、切削前後の被加工物200を収容するカセット51が載置されかつカセット51をZ軸方向に移動させるカセットエレベータ50と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット60と、被加工物200をカセット51とチャックテーブル10と洗浄ユニット60との間で搬送する図示しない搬送ユニットと、切削ブレード21の刃先の下端がチャックテーブル10の保持面11と同一平面上となる切削ユニット20のZ軸方向の基準位置を割り出す図示しないセットアップ機構とを備える。
制御ユニット100は、切削装置1の上述した構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、コンピュータである。制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。
また、制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニット及びオペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットと接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
また、制御ユニット100は、切削装置1の加工動作の際に、Z軸方向位置検出ユニットの検出結果及びセットアップ機構のセットアップ結果に基づいて、切削ブレード21の刃先の下端が、予め設定されたX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置を通るように移動ユニット40を制御する。実施形態1では、制御ユニット100は、各切削予定ライン220の一端221から他端222に向かう加工送り方向X1に沿って切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に移動させて、切削ブレード21で被加工物200の切削予定ライン220を切削する。
また、切削ユニット20は、一本の切削予定ライン220を切削した後、切削ブレード21を上昇させかつ切削ブレード21が次に切削する切削予定ライン220上に位置するように切削ブレード21を被加工物200に対して相対的にY軸方向に移動させるとともに、切削ブレード21が次に切削する切削予定ライン220を一端221から切削できるように加工送り方向X1の逆向きの戻し方向X2に沿って切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に移動させる。切削ユニット20は、次に切削する切削予定ライン220を一端221から他端222に向かう加工送り方向X1に沿って切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に移動させて切削する。
なお、本発明では、切削ブレード21で被加工物200を切削させながら被加工物200に対して加工送り方向X1に相対的に移動させることを加工送りと呼び、切削ブレード21を被加工物200を切削させることなく被加工物200に対して戻し方向X2に相対的に移動させることを戻し移動と呼ぶ。また、本発明では、切削ブレード21が次に切削する切削予定ライン220上に位置するように切削ブレード21を被加工物200に対して相対的にY軸方向に移動させることを割り出し送りと呼ぶ。
なお、本発明では、切削ブレード21の刃先の下端のX軸方向及びY軸方向の位置は、図2に示す切削加工するストリート203,204がX軸方向と平行に配置された時の予め定められた基準位置(実施形態1では、チャックテーブル10の保持面11の中心)からのX軸方向及びY軸方向の距離で定められる。なお、図6は、ストリート203,204のうち一方のストリート203に設定された切削予定ライン220を切削する際に、一方のストリート203をX軸方向と平行に位置付けて切削ブレード21の刃先の下端の位置を定める場合を示している。実施形態1では、他方のストリート204に設定された切削予定ライン220を切削する際には、他方のストリート204をX軸方向と平行に位置付けて、切削ブレード21の刃先の下端の位置を定める。
また、実施形態1では、切削ブレード21の刃先の下端のZ軸方向の位置は、保持面11からのZ軸方向の高さで定められる。
また、制御ユニット100は、図1に示すように、加工条件記憶部101と、切削範囲設定部102と、切削加工部103と、戻し移動制御部104と、加工送り復帰制御部105と、を備える。
加工条件記憶部101は、入力ユニット等から受け付けた各種の加工条件を記憶する。実施形態1では、加工条件は、被加工物200の直径、厚み500(図2に示す)、切削予定ライン220の本数、及び各切削予定ライン220の延在方向における長さ等の被加工物200の情報、切削ブレード21をチャックテーブル10に対して相対的に加工送りしながら切削予定ライン220を切削する際のチャックテーブル10のX軸方向の移動速度である加工送り速度、切削予定ライン220を切削する際の切削ブレード21の刃先の下端の切り込み高さ位置及び切削ブレード21を割り出し送りする際の切削ブレード21のY軸方向の被加工物200に対する相対的な移動量(隣接する切削予定ライン220の間隔)、粘着テープ211の厚み212(図13に示す)、各切削予定ライン220の一端221からの切削開始位置303(図5に示す)までの余裕幅である開始側余裕幅301、各切削予定ライン220の他端222からの切削終了位置304(図5に示す)までの余裕幅である終了側余裕幅302等である。
なお、被加工物200の厚み500は、図13に示すように、基板201の裏面206からデバイス205の上面までの被加工物200の厚みである。切り込み高さ位置は、切削ブレード21がチャックテーブル10の保持面11に保持した被加工物200に貼着された粘着テープ211まで切り込むことができるZ軸方向の位置である。なお、切削開始位置303は、切削予定ライン220の一端221よりも被加工物200の外側に位置し、切削終了位置304は、切削予定ライン220の他端222よりも被加工物200の外側に位置する。切削開始位置303及び切削終了位置304は、切削ブレード21の刃先の下端を切り込み高さ位置に位置付ける位置である。各加工条件は、オペレータが入力ユニットを操作することで任意の値に設定可能である。
切削範囲設定部102は、被加工物200の各切削予定ライン220の両端221,222に余裕幅301,302を設けて、各切削予定ライン220に対して切削開始位置303と切削終了位置304を設定するものである。切削範囲設定部102は、各切削予定ライン220の一端221からX軸方向に開始側余裕幅301分被加工物200の外側の位置を切削開始位置303として設定する。切削範囲設定部102は、各切削予定ライン220の他端222からX軸方向に終了側余裕幅302分被加工物200の外側の位置を切削終了位置304として設定する。
切削加工部103は、切削ブレード21の刃先の下端を所定の切り込み高さ位置に位置付けて、切り込み高さ位置に位置付けられた切削ブレード21を、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して切削開始位置303から切削終了位置304に向かって相対的に加工送りすることで、切削ブレード21に各切削予定ライン220を切削させるものである。
戻し移動制御部104は、切削ブレード21が各切削予定ライン220の切削終了位置304に達した後に、切削ブレード21を被加工物200に対して次に切削する切削予定ライン220の切削開始位置303に向けて移動させるものである。戻し移動制御部104は、切削ブレード21の刃先の下端が各切削予定ライン220の切削終了位置304に達した時に加工送りを停止することなく、切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に加速上昇させることを開始し、切削ブレード21の刃先の下端が被加工物200のデバイス205の上面よりも高い所定の高さ503(図13に示す)に達した時に加速上昇を停止し減速を開始するとともに、切削ブレード21が次に切削する切削予定ライン220の切削開始位置303に向うように、切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に割り出し送りするとともに被加工物200に対して加工送りの逆向きに戻し移動するものである。
加工送り復帰制御部105は、切削ブレード21を戻し移動させながら下降させるとともに、切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に戻し移動させる移動速度を減速させつつ加工送りさせる移動速度を加速させながら刃先の下端を切り込み高さ位置に位置付けて、切削ブレード21の刃先の下端を次に切削する切削予定ライン220の切削開始位置303に位置付けるものである。
なお、加工条件記憶部101の機能は、前述した記憶装置により実現され、切削範囲設定部102、切削加工部103、戻し移動制御部104及び加工送り復帰制御部105の機能は、演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することで実現される。
次に、本明細書は、実施形態1に係る切削方法を図面に基づいて説明する。図3は、実施形態1に係る切削方法の一部を示すフローチャートである。図4は、実施形態1に係る切削方法の残りを示すフローチャートである。
実施形態1に係る切削方法は、図1に示された切削装置1の加工動作を構成する。加工動作は、オペレータが加工条件を制御ユニット100の加工条件記憶部101に登録し、被加工物200を収容したカセット51をカセットエレベータ50に設置し、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に、切削装置1により開始される。加工動作が開始されると、切削装置1は、搬送ユニットに切削前の被加工物200をカセット51から1枚取り出させてチャックテーブル10に載置させ、チャックテーブル10の保持面11に被加工物200を粘着テープ211を介して吸引保持する。加工動作では、切削装置1は、チャックテーブル10をX軸方向に沿って撮像ユニット30の下方まで移動させ、撮像ユニット30に被加工物200を撮像させて、アライメントを遂行して、回転駆動源41を制御して一方のストリート203をX軸方向と平行にして、実施形態1に係る切削方法を実行する。
実施形態1に係る切削方法は、図1に示す切削装置1が、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削ブレード21で切削して、個々のデバイス205に分割する方法である。切削方法は、図3に示すように、切削範囲設定ステップST1と、第1位置付けステップST2と、切り込み高さ位置付けステップST3と、切削ステップST4とを備える。また、切削方法は、図4に示すように、上昇ステップST6と、割り出し送りステップST7と、第2位置付けステップST8とを備える。
(切削範囲設定ステップ)
図5は、図3に示された切削方法の切削範囲設定ステップにおいて設定された切削開始位置と切削終了位置との一例を示す被加工物の平面図である。切削範囲設定ステップST1は、被加工物200の各切削予定ライン220の両端221,222に余裕幅301,302を設けて、各切削予定ライン220に対して切削開始位置303と、切削終了位置304を設定するステップである。実施形態1において、切削範囲設定ステップST1では、制御ユニット100の切削範囲設定部102が加工条件記憶部101に記憶された加工条件を参照して、図5に示すように、各切削予定ライン220の一端221からX軸方向に開始側余裕幅301分被加工物200の外側の位置を切削開始位置303として設定し、各切削予定ライン220の他端222からX軸方向に終了側余裕幅302分被加工物200の外側の位置を切削終了位置304として設定して、記憶装置に一旦記憶する。切削開始位置303と切削終了位置304とを設定すると、第1位置付けステップST2に進む。
なお、実施形態1において、切削方法では、複数の切削予定ライン220のうち図5に示す切削予定ライン220のうちの最も下方の切削予定ライン220を切削した後、下から2番目の切削予定ライン220を切削する。以下、本明細書では、最も下方の切削予定ライン220を第1の切削予定ライン220-1と記し、下から2番目の切削予定ライン220を第2の切削予定ライン220-2と記す。なお、本明細書でいう、第1の切削予定ライン220-1とは、複数の切削予定ライン220のうち切削順番が前後する2つの切削予定ライン220のうち初めに切削される切削予定ライン220をいい、第2の切削予定ライン220-2とは、後に切削される切削予定ライン220をいう。
(第1位置付けステップ)
図6は、図3に示された切削方法の第1位置付けステップにおいて切削ブレードが第1の切削予定ラインの切削開始位置に位置付けられた状態を示す被加工物の平面図である。図7は、図6に示された切削ブレード、被加工物及び粘着テープを側方からみた図である。第1位置付けステップST2は、軸心回りに回転する切削ブレード21を被加工物200の第1の切削予定ライン220-1の切削開始位置303に位置付けるステップである。
実施形態1では、制御ユニット100の切削加工部103が、刃先の下端を被加工物200のデバイス205の上面よりも上方に位置付けた状態で、移動ユニット40のX軸移動ユニット42及びY軸移動ユニット43を制御して、図6及び図7に示すように、切削ブレード21の刃先の下端を第1の切削予定ライン220-1の切削開始位置303に位置付ける。切削ブレード21の刃先の下端を第1の切削予定ライン220-1の切削開始位置303に位置付けると、切り込み高さ位置付けステップST3に進む。なお、第1位置付けステップST2後では、切削ブレード21の刃先の下端は、図7に示すように、粘着テープ211から間隔をあけて粘着テープ211の上方に位置している。
(切り込み高さ位置付けステップ)
図8は、図3に示された切削方法の切り込み高さ位置付けステップ後の切削ブレード、被加工物及び粘着テープを側方からみた図である。切り込み高さ位置付けステップST3は、切削ブレード21をZ軸方向の所定の切り込み高さ位置に位置付けるステップである。
切り込み高さ位置付けステップST3では、制御ユニット100の切削加工部103が、移動ユニット40のZ軸移動ユニット44を制御して、切削ブレード21を下降させて、図8に示すように、軸心回りに回転する切削ブレード21の刃先の下端を切り込み高さ位置に位置付けて、切削ブレード21を粘着テープ211に切り込ませる。切削ブレード21の刃先の下端を切り込み高さ位置に位置付けると、切削ステップST4に進む。
(切削ステップ、上昇ステップ、割り出し送りステップ、第2位置付けステップ)
図9は、図3に示された切削方法の切削ステップ中の切削ブレード、被加工物及び粘着テープを側方からみた図である。図10は、図3に示された切削方法の切削ステップ中の切削ブレードの被加工物に対する相対的な加工送り速度の変化を示す図である。図11は、図3に示された切削方法の切削ステップの切削ブレードが切削終了位置に到達した時の被加工物の平面図である。図12は、図11に示された切削ブレード、被加工物及び粘着テープを側方からみた図である。図13は、図3及び図4に示された切削方法の切削ステップ、上昇ステップ、割り出し送りステップ及び第2位置付けステップにおける切削ブレードの刃先の下端の軌跡を示す図である。図14は、図13に示された切削ブレードの被加工物に対する相対的なX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の移動速度を示す図である。図15は、図3及び図4に示された切削方法の第2位置付けステップ及び第2の切削予定ラインを切削する切削ステップにおける切削ブレードの刃先の下端の軌跡を示す図である。図16は、図15に示された切削ブレードの被加工物に対する相対的なX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の移動速度を示す図である。図17は、図3及び図4に示された切削方法の第2位置付けステップにおいて切削ブレードが第2の切削予定ラインの切削開始位置に位置付けられた状態を示す被加工物の平面図である。図18は、図17に示された切削ブレード、被加工物及び粘着テープを側方からみた図である。
以下、実施形態1に係る切削方法では、切削ステップST4、上昇ステップST6、割り出し送りステップST7及び第2位置付けステップST8の少なくとも一部が同時に実施されるので、これらのステップST4,ST6,ST7,ST8をまとめて説明する。
なお、切削ステップST4は、切り込み高さ位置に位置付けられた切削ブレード21を被加工物200に対して切削開始位置303から切削終了位置304まで相対的に加工送りすることで、切削ブレード21で被加工物200の第1の切削予定ライン220-1を切削するステップである。上昇ステップST6は、切削ステップST4後に切削ブレード21の刃先の下端が被加工物200のデバイス205の上面よりも高くなるように切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に加速上昇させるステップである。
また、割り出し送りステップST7は、切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に割り出し送りして切削ブレード21を第2の切削予定ライン220-2の上方に位置付けるステップである。第2位置付けステップST8は、切削ブレード21を第2の切削予定ライン220-2の切削開始位置303に位置付けるステップである。
まず、実施形態1において、切削ステップST4では、制御ユニット100の切削加工部103が、図9に示すように、回転する切削ブレード21が切削開始位置303に位置した状態からX軸移動ユニット42を制御して、チャックテーブル10を加工送り方向X1の逆向きに移動させて、切削ブレード21を被加工物200に対して切削開始位置303から切削終了位置304まで相対的に加工送りする(ステップST41)。
このとき、切削ステップST4では、制御ユニット100の切削加工部103が、X軸移動ユニット42を制御して、図10に示すように、切削開始位置303から加工条件の加工送り速度までチャックテーブル10の移動速度を加速させた後、加工送り速度に達した後、チャックテーブル10を加工送り速度で加工送り方向X1の逆向きに移動させる。なお、図10の横軸は、切削開始位置303から切削ブレード21が被加工物200に対して相対的に移動開始してからの時間を示し、図10の縦軸は、チャックテーブル10の移動速度を示している。
また、実施形態1において、切削ステップST4中に、制御ユニット100の戻し移動制御部104が切削ブレード21の刃先の下端の切削終了位置304までのX軸方向の距離が所定の距離701(図13に示す)以下であるかを判定する(ステップST81)。制御ユニット100の戻し移動制御部104が切削ブレード21の刃先の下端の切削終了位置304までの距離が所定の距離701以下ではないと判定する(ステップST81:No)と、ステップST81を繰り返す。
制御ユニット100の戻し移動制御部104が切削ブレード21の刃先の下端の切削終了位置304までの距離が所定の距離701以下であると判定する(ステップST81:Yes)と、X軸移動ユニット42を制御して、切削ブレード21の被加工物200に対する相対的な加工送り方向X1の移動速度の減速を開始し、戻し方向X2の移動速度の加速を開始する(ステップST82)。
即ち、図13に示された切削ブレード21の刃先の下端の軌跡800において、切削終了位置304までのX軸方向の距離が所定の距離701となる位置401に切削ブレード21の刃先の下端が位置すると、図14に示すように、切削ブレード21の被加工物200に対する相対的な加工送り方向X1の移動速度の減速を開始し、移動速度が零になった以降、切削ブレード21の被加工物200に対する相対的な戻し方向X2の移動速度の加速を開始する。なお、実施形態1では、所定の距離701及び加工送り方向X1の減加速度は、切削ブレード21の刃先の下端が被加工物200の厚み500に余裕高さ502を加えた所定の高さ503の1/2の高さ501になる位置402に位置した時に切削ブレード21の被加工物200に対する相対的な移動速度が零になる値に設定されている。余裕高さ502は、切削ブレード21の刃先の下端が被加工物200に接触することを規制できる高さであり、実施形態1では、例えば、1mmである。なお、実施形態1において、高さ501,503は、粘着テープ211からの高さである。
なお、図13は、粘着テープ211及び被加工物200に対する相対的な切削ブレード21の刃先の下端の軌跡800を示している。また、図14は、横軸を時間として、被加工物200に対する相対的な切削ブレード21の刃先の下端のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の移動速度をそれぞれ縦軸に示している。図14に示されたX軸方向の移動速度は、零より上が加工送り方向X1の移動速度を示し、零より下が戻し方向X2の移動速度を示している。図14に示されたY軸方向の移動速度は、零より上が第1の切削予定ライン220-1上から第2の切削予定ライン220-2上に向う割り出し送りの移動速度を示している。図14に示されたZ軸方向の移動速度は、零より上が切削ブレード21が上昇する時の移動速度を示し、零より下が切削ブレード21が下降する時の移動速度を示している。また、図14は、図13の軌跡800の各位置401,304,402,403,440,405,406,407,408,409を対応する位置に示している。
なお、ステップST81及びステップST82は、第2位置付けステップST8を構成する。このために、実施形態1に係る切削方法は、切削ステップST4中、即ち切削ステップST4において切削ブレード21が切削終了位置304までの距離が所定の距離701以下となって切削終了位置304に近付くと、第2位置付けステップST8を開始する。
実施形態1において、ステップST82の後、切削ステップST4では、制御ユニット100の切削加工部103が図11及び図12に示すように切削ブレード21の刃先の下端が切削終了位置304に到達したかを判定する(ステップST42)。制御ユニット100の切削加工部103が切削ブレード21の刃先の下端が切削終了位置304に到達していないと判定する(ステップST42:No)と、ステップST42を繰り返す。
制御ユニット100の切削加工部103が、図11及び図12に示すように、切削ブレード21の刃先の下端が切削終了位置304に到達したと判定する(ステップST42:Yes)と、制御ユニット100は、複数のストリート203のうちの最後に切削するストリート203の切削予定ライン220を切削したか否かを判定する(ステップST5)。制御ユニット100は、最後に切削するストリート203の切削予定ライン220を切削していないと判定する(ステップST5:No)と、戻し移動制御部104が図14に示すように切削ステップST4後に切削ブレード21の刃先の下端が被加工物200のデバイス205の上面よりも高くなるように切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に加速上昇を開始する(ステップST61)。
実施形態1では、ステップST82において加工送り方向X1の移動速度を減速しているが、図13及び図14に示すように、切削ブレード21の刃先の下端が所定の高さ503の1/2の高さ501に到達する位置402まで切削ブレード21は、被加工物200に対して相対的に加工送り方向X1に移動する。こうして、実施形態1に係る切削方法は、切削ステップST4で切削ブレード21が第1の切削予定ライン220-1の切削終了位置304に達した時に加工送りを停止することなく上昇ステップST6を開始する。そして、実施形態1では、切削ブレード21の刃先の下端が位置402に位置すると、切削ブレード21の移動速度が零になり、切削ブレード21の刃先の下端が高さ501よりも高くなるのにしたがって、切削ブレード21は、戻し方向X2に加速しながら戻し移動する。
上昇ステップST6では、制御ユニット100の戻し移動制御部104は、切削ブレード21の刃先の下端が所定の高さ503に到達したか否かを判定する(ステップST62)。制御ユニット100の戻し移動制御部104は、切削ブレード21の刃先の下端が所定の高さ503に到達していないと判定する(ステップST62:No)と、ステップST62を繰り返す。
制御ユニット100の戻し移動制御部104は、切削ブレード21の刃先の下端が所定の高さ503に到達したと判定する(ステップST62:Yes)と、図14に示すように、切削ブレード21の上昇加速を停止し減速を開始するとともに、割り出し送りステップST7を開始する。実施形態1では、制御ユニット100の戻し移動制御部104は、切削ブレード21の刃先の下端が所定の高さ503に到達した位置403に位置すると、切削ブレード21の上昇加速を停止し、図14に示すように、一定速度で切削ブレード21を上昇させながら割り出し送りステップST7を開始する。
実施形態1では、割り出し送りステップST7では、制御ユニット100の戻し移動制御部104は、切削ブレード21の刃先の下端が位置403に位置すると切削ブレード21を第2の切削予定ライン220-2に上方に向けて割り出し送りの加速を開始し、位置404に位置すると切削ブレード21の割り出し送りの移動速度を一定にし、位置405に位置すると切削ブレード21の割り出し送りの速度の減速を開始し、位置406に位置すると切削ブレード21を第2の切削予定ライン220-2上に位置付けて割り出し送りの移動速度を零にして、割り出し送りステップST7を終了する。
実施形態1では、制御ユニット100の戻し移動制御部104は、割り出し送りステップST7が終了した後、切削ブレード21の刃先の下端が位置407に位置すると、上昇速度の減速を開始する(ステップST63)。なお、実施形態1では、位置407及び上昇速度の減加速度は、切削ブレード21の刃先の下端が所定の高さ503よりも高い第2の所定の高さ504となる位置409に位置付けられた時に切削ブレード21の上昇速度が零になる値に設定されている。
実施形態1では、制御ユニット100の戻し移動制御部104は、割り出し送りステップST7が終了した後、切削ブレード21の刃先の下端が所定の高さ503よりも高い第2の所定の高さ504に到達したか否かを判定する(ステップST64)。なお、実施形態1では、第2の所定の高さ504は、所定の高さ503の2倍の高さである。制御ユニット100の戻し移動制御部104は、切削ブレード21の刃先の下端が第2の所定の高さ504に到達していないと判定する(ステップST64:No)と、ステップST64を繰り返す。なお、実施形態1において、第2の所定の高さ504は、粘着テープ211からの高さである。
制御ユニット100の戻し移動制御部104は、切削ブレード21の刃先の下端が第2の所定の高さ504に到達して、位置409に位置したと判定する(ステップST64:Yes)と、切削ブレード21の上昇を終了する(ステップST65)。また、実施形態1において、上昇ステップST6では、切削ブレード21の刃先の下端が所定の高さ503に達した時に第2位置付けステップST8を実施しており、位置407,409間の位置408に切削ブレード21の刃先の下端が位置すると戻し方向X2の加速を停止し、以後、一定の速度で切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に戻し移動させる。
こうして、戻し移動制御部104は、切削ブレード21が各切削予定ライン220の切削終了位置304に達した時に加工送りを停止することなく、切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に加速上昇させることを開始し、切削ブレード21の刃先の下端が被加工物200のデバイス205の上面よりも高い所定の高さ503に達した時に加速上昇を停止し減速を開始するとともに、切削ブレード21が次に切削する切削予定ライン220の切削開始位置303に向かうように、切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に割り出し送りするとともに被加工物200に対して相対的に加工送りと逆向きに戻し移動させる。
次に、第2位置付けステップST8において、制御ユニット100の加工送り復帰制御部105は、切削ブレード21の刃先の下端の第2の切削予定ライン220-2の切削開始位置303までのX軸方向の距離が第2の所定の距離702(図15に示す)以下であるかを判定する(ステップST83)。制御ユニット100の加工送り復帰制御部105が切削ブレード21の刃先の下端の第2の切削予定ライン220-2の切削開始位置303までの距離が第2の所定の距離702以下ではないと判定する(ステップST83:No)と、ステップST83を繰り返す。制御ユニット100の加工送り復帰制御部105が切削ブレード21の刃先の下端の第2の切削予定ライン220-2の切削開始位置303までの距離が第2の所定の距離702以下であると判定する(ステップST83:Yes)と、Z軸移動ユニット44を制御して、切削ブレード21の下降を開始する(ステップST84)。
即ち、図15に示された切削ブレード21の刃先の下端の軌跡800において、第2の所定の高さ504の切削ブレード21の刃先の下端の第2の切削予定ライン220-2の切削開始位置303までのX軸方向の距離が第2の所定の距離702となる位置601に位置すると、図16に示すように、切削ブレード21の下降を開始する。第2位置付けステップST8において、制御ユニット100の加工送り復帰制御部105は、切削ブレード21の刃先の下端が位置601よりも第2の切削予定ライン220-2の切削開始位置303寄りの位置602に位置すると、図16に示すように、切削ブレード21のX軸方向の戻し方向X2の被加工物200に対する相対的な移動速度の減速を開始し、移動速度が零になった以降、切削ブレード21の加工送り方向X1の被加工物200に対する相対的な移動速度の加速を開始する(ステップST85)。
なお、図15は、図13と同様に、粘着テープ211及び被加工物200に対する相対的な切削ブレード21の刃先の下端の軌跡800を示している。また、図16は、図14と同様に、横軸を時間として、被加工物200に対する相対的な切削ブレード21の刃先の下端のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の移動速度をそれぞれ縦軸に示している。また、図16は、図15に示された切削ブレード21の刃先の下端の軌跡800の各位置601,602,603,604,605,606,304を対応する位置に示している。
第2位置付けステップST8において、制御ユニット100の加工送り復帰制御部105は、切削ブレード21の刃先の下端が切り込み高さ位置に到達し、第2の切削予定ライン220-2の切削開始位置303に到達したかを判定する(ステップST86)。第2位置付けステップST8において、制御ユニット100の加工送り復帰制御部105は、切削ブレード21の刃先の下端が切り込み高さ位置に到達していなく、第2の切削予定ライン220-2の切削開始位置303に到達していないと判定する(ステップST86:No)と、ステップST86を繰り返す。
実施形態1では、第2位置付けステップST8において、切削ブレード21の刃先の下端が位置602よりも被加工物200の外側の位置603に位置すると、制御ユニット100の加工送り復帰制御部105は、切削ブレード21の下降速度を一定の速度にし、さらに、切削ブレード21の刃先の下端が被加工物200の外側の位置604に位置すると、切削ブレード21の下降速度の減速を開始する。その後、第2位置付けステップST8において、制御ユニット100の加工送り復帰制御部105は、切削ブレード21の刃先の下端が位置605に位置すると、切削ブレード21の被加工物200に対するX軸方向の相対的な移動速度が零になり、以後、切削ブレード21の被加工物200に対する相対的な加工送り方向X1の速度を加速して、切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に加工送り方向X1に移動する。
第2位置付けステップST8において、制御ユニット100の加工送り復帰制御部105は、切削ブレード21の刃先の下端が位置606に位置すると、切削ブレード21の被加工物200に対する加工送りの速度が加工送り速度に到達し、以後切削ブレード21の被加工物200に対する加工送りの速度を加工送り速度に維持する。その後、制御ユニット100の加工送り復帰制御部105は、切削ブレード21の刃先の下端が第2の切削予定ライン220-2の切削開始位置303に位置すると、切削ブレード21の下降を停止し、図17及び図18に示すように、切削ブレード21を切り込み高さ位置となる切削開始位置303に位置付ける。
第2位置付けステップST8において、制御ユニット100の加工送り復帰制御部105は、切削ブレード21の刃先の下端が切り込み高さ位置に到達し、第2の切削予定ライン220-2の切削開始位置303に到達したと判定する(ステップST86:Yes)と、ステップST41に戻る。こうして、第2位置付けステップST8では、切削ブレード21を戻し移動させながら下降させるとともに、切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に戻し移動の移動速度を減速させつつ加工送りの移動速度を加速させながら刃先の下端を切り込み高さ位置に位置付けて、切削ブレード21の刃先の下端を第2の切削予定ライン220-2の切削開始位置303に位置付ける。
切削方法は、制御ユニット100の切削加工部103が、切削ブレード21に第2の切削予定ライン220-2を切削させる切削ステップST4を実施する。こうして、切削方法は、一方のストリート203の切削予定ライン220を順に切削する加工動作を実施する。
また、制御ユニット100は、最後に切削するストリート203の切削予定ライン220を切削したと判定する(ステップST5:Yes)と、全てのストリート203,204の切削予定ライン220を切削したかを判定する(ステップST10)。なお、一方のストリート203の切削予定ライン220を切削した後で、かつ他方ストリート204の切削予定ライン220を切削する前では、制御ユニット100は、全てのストリート203,204の切削予定ライン220を切削していないと判定して(ステップST10:No)、回転駆動源41にチャックテーブル10を90度回転させて、他方のストリート204をX軸方向と平行して、切削範囲設定ステップST1に戻る。切削方法は、他方のストリート204の切削予定ライン220を順に切削する加工動作を実施する。制御ユニット100が、全てのストリート203,204の切削予定ライン220を切削したと判定する(ステップST10:Yes)と、実施形態1に係る切削方法を終了する。
その後、切削装置1の制御ユニット100は、チャックテーブル10を切削ユニット20の下方から退避した後、チャックテーブル10の吸引保持を解除する。制御ユニット100は、搬送ユニットに切削後の被加工物200を洗浄ユニット60に搬送させ、洗浄ユニット60で洗浄した後、カセット51に収容する。制御ユニット100は、カセット51に収容されたすべての被加工物200を前述した加工動作を実施することで、カセット51に収容されたすべての被加工物200を順に切削する。制御ユニット100は、カセット51に収容されたすべての被加工物200を切削すると、加工動作を終了する。
実施形態1に係る切削方法は、被加工物200の各切削予定ライン220の一端221から他端222まで切削した後、加工送りを停止することなく切削ブレード21の上昇を開始する。切削方法は、切削ブレード21の刃先の下端が被加工物200のデバイス205の上面より高い所定の高さ位置に達したら割り出し送りを開始し、切削ブレード21の戻し移動を実施している。このように、切削方法は、各切削予定ライン220を切削した後に、切削ブレード21を被加工物200に対して相対的にX軸方向に移動させながらZ軸方向に上昇させてY軸方向に割り出し送りする。このために、切削方法は、例えば、図19に示す切削予定ライン220を切削した後に切削ブレード21の被加工物200に対する相対的なX軸方向の移動を停止し、Z軸方向の上昇を実施した後、Y軸方向の割り出し送りをする比較例よりも各切削予定ライン220の切削を終了した後、次に切削する切削予定ライン220の切削開始位置303に切削ブレード21の刃先の下端を位置付けるまでにかかる所要時間を抑制することができる。
また、切削方法は、切削方法は、切削ブレード21の刃先の下端が被加工物200のデバイス205の上面より高い所定の高さ位置に達したら割り出し送りを開始するので、被加工物200上を切削ブレード21が相対的に移動しても切削ブレード21で被加工物200を切削することがない。
その結果、切削方法は、被加工物200の加工品質に影響を及ぼすことなく加工にかかる時間を短縮することができるという効果を奏する。
また、切削方法は、第2位置付けステップST8では、切削ブレード21を戻し移動させながら下降させるとともに、切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に戻し移動させる移動速度を減速させつつ加工送りさせる移動速度を加速させながら刃先の下端を切り込み高さ位置でかつ第2の切削予定ライン220-2の切削開始位置303に位置付ける。
このために、切削方法は、例えば、図20に示す次に切削する切削予定ライン220の切削開始位置303上に切削ブレード21の刃先の下端が位置すると切削ブレード21の被加工物200に対する相対的なX軸方向の移動を停止し、Z軸方向の下降を実施する比較例よりも戻し移動させてから次に切削する切削予定ライン220の切削開始位置303に切削ブレード21の刃先の下端を位置付けるまでにかかる所要時間を抑制することができる。
なお、図19は、比較例の切削予定ラインの他端付近における切削ブレードの被加工物に対する相対的なX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の移動速度を示す図である。図20は、比較例の切削予定ラインの一端付近における切削ブレードの被加工物に対する相対的なX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の移動速度を示す図である。図19及び図20は、図14及び図16と同様に切削ブレードの被加工物に対する相対的なX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の移動速度を示し、実施形態1と同一部分に同一符号を付している。
また、切削方法は、切削ステップST4中、即ち切削ステップST4において切削ブレード21が切削終了位置304までの距離が所定の距離701以下となって切削終了位置304に近付くと、第2位置付けステップST8を開始するので、図19に示す比較例より各切削予定ライン220の切削を終了した後、次に切削する切削予定ライン220の切削開始位置303に切削ブレード21の刃先の下端を位置付けるまでにかかる所要時間を抑制することができる。
実施形態1に係る切削装置1は、切削ブレード21の刃先の下端が各切削予定ライン220の切削終了位置304に達した時に加工送りを停止することなく、切削ブレード21を上昇させ、かつ被加工物200に対して相対的に次に切削する切削予定ライン220の切削開始位置303に向けて割り出し送りするとともに戻し方向X2に移動させて、切削ブレード21を被加工物200に対して相対的に戻し移動する戻し移動制御部104を備えている。その結果、切削装置1は、図19に示す比較例よりも各切削予定ライン220の切削を終了した後、次に切削する切削予定ライン220の切削開始位置303に切削ブレード21の刃先の下端を位置付けるまでにかかる所要時間を抑制することができる。
また、切削装置1は、切削ブレード21の刃先の下端が所定の高さ503に達した時に割り出し送りするので、被加工物200上を切削ブレード21が相対的に移動しても切削ブレード21で被加工物200を切削することがない。
また、切削装置1は、切削ブレード21を戻し移動させながら下降させるとともに、切削ブレード21を被加工物に対して相対的に戻し移動させる移動速度を減速させつつ加工送りさせる移動速度を加速させながら刃先の下端を切り込み高さ位置に位置付けて、切削ブレード21の刃先の下端を次に切削する切削予定ライン220の切削開始位置303に位置付ける加工送り復帰制御部105を備えている。その結果、切削装置1は、図20に比較例よりも戻し移動させてから次に切削する切削予定ライン220の切削開始位置303に切削ブレード21の刃先の下端を位置付けるまでにかかる所要時間を抑制することができる。
なお、本発明は、上記実施形態等に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。