JP7227759B2 - 油ちょうベーカリー食品用乳化組成物 - Google Patents
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Description
焼成するパン類又は菓子類の生地において油脂や糖の配合が多いものは、しっとりした食感を有する製品を製造できるが、フライなどの油ちょう処理をするパン類又は菓子類の生地において油脂や糖配合を多くすると、油ちょう中に生地から油脂が溶出し、形状を保つことができない。
特許文献1又は2には、油ちょうされたドウ組成物の吸油を低減させることを目的としてメチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロースを生地に添加すると十分な吸油低減効果が得られないという問題に対し、これらのセルロースエーテルの水溶液を添加して製造した油ちょう用ドウ組成物を油ちょうすると、吸油量が大幅に低減された製品が得られたことが報告されている。
したがって、本発明の課題は、油脂や糖類を多量に配合した油ちょうベーカリー食品又はそれを製造することができる油ちょうベーカリー食品用生地を提供することである。
本発明のさらなる課題は、油脂や糖類を多量に配合した油ちょうベーカリー食品であって、しっとりとして口溶けのよい油ちょうベーカリー食品、又はそれを製造することできる油ちょうベーカリー食品用生地を提供することである。
さらに、本発明の他の課題は、保形性がよくかつしっとりとした食感を有する油ちょうベーカリー食品又はそれを製造することができる油ちょうベーカリー食品用生地を提供することである。
(1)穀粉、油脂、水及びセルロース誘導体を含む油ちょうベーカリー食品用生地であって、穀粉100質量部に対し、セルロース誘導体を乳化物の状態で0.2質量部以上含むことを特徴とする、油ちょうベーカリー食品用生地。
(2)穀粉100質量部に対し、油脂を40質量部以上含むことを特徴とする、(1)記載の油ちょうベーカリー食品用生地。
(3)穀粉、油脂、水及びセルロース誘導体を含む油ちょうベーカリー食品用生地であって、穀粉100質量部に対し、セルロース誘導体を非乳化物の状態で0.5質量部以上含み、かつ油脂を40質量部以上含むことを特徴とする、油ちょうベーカリー食品用生地。
(4)水の質量に対する油脂の質量の比が、0.3~1.3である、(1)~(3)のいずれか一に記載の油ちょうベーカリー食品用生地。
(5)穀粉100質量部に対し、セルロース誘導体を4.2質量部以下含むことを特徴とする、(1)~(4)のいずれか一に記載の油ちょうベーカリー食品用生地。
(6)穀粉100質量部に対し、水を350質量部以下含むことを特徴とする、(1)~(5)のいずれか一に記載の油ちょうベーカリー食品用生地。
(7)(1)~(6)のいずれか一に記載の油ちょうベーカリー食品用生地を油ちょうしてなるベーカリー食品。
(8)(1)~(6)のいずれか一に記載の油ちょうベーカリー食品生地の製造方法であって、セルロース誘導体を油脂及び水と混合して乳化物を作製し、前記乳化物を生地に添加することを特徴とする、上記製造方法。
(9)(1)~(6)のいずれか一に記載の油ちょうベーカリー食品生地あるいは前記(8)記載の製造方法により製造された油ちょうベーカリー食品用生地を、油ちょうすることを含む、ベーカリー食品の製造方法。
本発明の油ちょうベーカリー食品用生地の第一の態様は、穀粉、油脂、水及びセルロース誘導体を含む油ちょうベーカリー食品用生地であって、穀粉100質量部に対し、セルロース誘導体を乳化物の状態で0.2質量部以上含むことを特徴とする、油ちょうベーカリー食品用生地である。
また、本発明の油ちょうベーカリー食品用生地の第二の態様は、穀粉、油脂、水及びセルロース誘導体を含む油ちょうベーカリー食品用生地であって、穀粉100質量部に対し、セルロース誘導体を非乳化物の状態で0.5質量部以上含み、かつ油脂を40質量部以上含むことを特徴とする、油ちょうベーカリー食品用生地である。
「油ちょう」とは、油で揚げる調理方法を意味し、フライ調理などともいう。油ちょうの温度等の条件は、目的に応じて適宜調整することができる。例えば、160~210℃で1~7分間、あるいは170~200℃で2~3分間程度油ちょうしてもよい。油ちょうに用いられる油は特に限定されるものではない。通常、パーム油、菜種油等である。
セルロース誘導体は、水溶液2%粘度(温度20℃)で15mPa・s~250,000mPa・sであることが好ましい。より好ましくは5000mPa・s~250000mPa・sの粘度である。
乳化物の形態で用いる場合には、セルロース誘導体を、水及び油脂と混合して乳化物を形成してから生地に混合することができる。生地の水の量は穀粉100質量部に対して50~350質量部、油脂の量は40~300質量部程度であることが好ましいが、乳化物に使用する水の量と油脂の量は、穀粉100質量部に対する上述の油脂又は水の量に含まれる。
乳化物の形成方法については後述する。
セルロース誘導体が乳化物の形態で生地に含まれる場合には、穀粉100質量部に対して、0.2質量部以上のセルロース誘導体を含む。好ましくは0.2~4.2質量部であり、さらに好ましくは0.5~4.0質量部である。
セルロース誘導体が非乳化物の形態で生地に含まれる場合には、穀粉100質量部に対して、0.5質量部以上のセルロース誘導体を含む。好ましくは0.5~4.2質量部であり、さらに好ましくは0.6~2.0質量部である。
セルロース誘導体を添加することにより、従来、油ちょうベーカリー食品として製造できなかったような多量の油脂あるいは糖類を含む食品を製造することが可能になった。
本発明の油ちょうベーカリー食品用生地は、穀粉100質量部に対し、油脂を40質量部以上含むことが好ましい。より好ましくは40~300質量部である。しっとりした食感の点から、油脂を50質量部~250質量部含むことがより好ましく、60質量部~150質量部であることがさらに好ましく、70質量部~100質量部であることがよりさらに好ましい。
本発明の油ちょうベーカリー食品用生地は、穀粉100質量部に対し、糖類を30質量部以上含むことが好ましい。口溶けの点から、糖類を40質量部~150質量部含むことより好ましく、80質量部~120質量部であることがよりさらに好ましい。
また、本発明の油ちょうベーカリー食品用生地は、穀粉100質量部に対し、水を50質量部以上含み、350質量部以下含むことが好ましい。作業性の点から、水を90質量部以上含むことより好ましく、100質量部~130質量部であることがよりさらに好ましい。
本発明において、卵などの水分を含む他の資材を用いる場合には、その水分量を換算して、水の添加量に算入する。
また、食感改良、味の付与として、糖類や粉乳、ココアパウダー等を添加してもよい。その他の材料は、生地100質量部に対し上限25質量部まで加えることができる。
本発明の第一の態様の油ちょうベーカリー食品用生地は、穀粉100質量部に対し、乳化物としたセルロース誘導体を0.2質量部以上添加して製造することができる。好ましくは、穀粉100質量部に対し、油脂を40質量部以上添加し、さらに水を80質量部以上添加してもよい。あるいは糖類を40質量部以上添加してもよい。油脂、糖類の好ましい量については上で記載したとおりである。
セルロース誘導体を油脂及び水と混合して乳化物を作製する工程は、例えば、以下のように行うことが好ましい。
油ちょうベーカリー食品用生地に用いる穀粉100質量部に対し、0.2質量部以上のセルロース誘導体を用意し、穀粉100質量部に対し25~55質量部の油脂と、75~45質量部の水を加えてミキシングを行い、乳化物を形成する。
より好ましくは、油脂にセルロース誘導体を添加し、ミキサーでなじむまで混捏し、その後水を添加して、さらに混捏することが好ましい。
ミキシングの条件は、セルロース誘導体の種類や油脂の量や種類及び水の量により適宜変えることができるが、例えば、ビーターを使用し、1速(100rpm)~2速(200rpm)の速度で1~3分間撹拌することが好ましい。このとき温度は8~15℃程度に調整することが好ましい。
工程1:油脂とセルロース誘導体をミキサーに投入し、ビーターで攪拌した後、水を加えさらに攪拌し、乳化物を製造する(第1ミキシング)
工程2:次に穀粉、糖類を投入し、混捏する(第2ミキシング)
工程3:必要に応じてフロアタイムをとり、生地をなじませた後、成形する。
非乳化物の状態で添加する方法としては、例えば、生地材料にセルロース誘導体を固体のまま添加したり、水溶液を作成してから添加する方法が挙げられる。
本発明において、油ちょうベーカリー食品は、上述の油ちょうベーカリー食品生地を油ちょうすることにより製造することができる。
本発明の油ちょうベーカリー食品の製造方法の好ましい実施態様は以下の工程を含む。工程4:油ちょうベーカリー食品用生地を、ドーナツ用カッターやディッシャーを使用しフライヤーへ分割し、油ちょうする。
油ちょう条件は特に限定されないが、例えば、160~210℃で1~7分間、あるいは170~200℃で2~3分間程度であってもよい。油ちょうに用いられる油は特に限定されるものではない。通常、パーム油、菜種油等である。
サラダ油80質量部にHPMC1.0質量部を添加しミキサー(エスケーミキサー社製、SK-20型)で混捏(ビーター使用1速1分間)しきれいになじんだら、水120質量部を加えさらに混捏し(ビーター使用、3速、2分30秒間、捏ね上げ温度10℃以下)エマルションを得た。
(2)ドーナツ生地の作製(第2ミキシング)
上記エマルション201質量部に小麦粉100質量部とグラニュー糖100質量部を添加し1速1分間、3速30秒間混捏した(捏ね上げ温度15℃~20℃)。
(3)ドーナツの製造
フロア時間を10分間とり、ドーナツカッターにて生地を60gずつ分割し、170℃~200℃の油中で2~3分間フライし目的のフライ菓子を製造した。
参考例1~3では製造例1の第1のミキシングを行なわず、表1のすべての配合をミキサーに投入し、第2のミキシングを行なった。実施例A1は、製造例1の第1ミキシングを行わず、ドーナツ生地の作製において、サラダ油と水とHPMCを添加した。実施例A2は、製造例1の第1ミキシングを行わず、予め水とHPMCの水溶液を作製しておき、製造例1の第2ミキシングでサラダ油とともに添加した。B1は製造例1のとおりにドーナツを製造した。
評価基準表1に従い10人のパネラーにより評価した。評価基準において、参考例3の保形性及び食感の値を3.0とした。
HPMCをエマルション形成なしに添加した例について、サラダ油と水の量について合計量を小麦粉100質量部に対し200質量部に固定し、サラダ油と水の量の割合を表2-1のように変え、その他は製造例1に従いドーナツを製造した。製造したドーナツを25℃で60分間静置し粗熱がとれた後、パネラー10名により評価基準表1に従って保形性と食感を評価した(表2-1)。
実施例A1では、保形性がよく、また食感もかなりしっとりしており口どけが良かった。実施例A3及びA4も形状を保ち、また食感もしっとり感が残っていた。
実施例B1では、保形性及びしっとり感共に非常に良好であった。実施例B3、B4も保形性、食感ともに良好であった。
実施例B2及びB5では保形性がやや安定せず、食感もしっとり感はあるが油っぽくべたつき口溶けがわるいか、あるいはしっとり感がなくなっていた。
エマルション作製に必要なHPMC量検討のため、HPMCの配合量を表3-1及び3-2のように変え、その他は製造例1に従いフライ菓子を製造した。製造したフライ菓子を25℃で60分間静置し粗熱がとれた後、パネラー10名により評価基準表1に従って評価した。
実施例B6及びB7は保形性、食感共に良好であった。実施例B8は保形性は問題ないが、食感が硬くぱさついた。
比較例B1は形状が安定せず、食感もしっとりしているが油っぽくべとつき口溶けがわるいので不適であった。
エマルション作製に必要なMC又はHPMCの種類の検討の為、表4-1及び4-2のように種類を変え、その他は製造例1に従いフライ菓子を製造した。製造したフライ菓子を25℃で60分間静置し粗熱がとれた後、パネラー10名により評価基準表1に従って評価した。
※1 ユニテックフーズ株式会社製 メトセルTM250M(HPMC)
※2 ユニテックフーズ株式会社製 メトセルMx0209(MC)
※3 信越化学工業株式会社製 メトローズMCE4000(MC)
エマルション作製後に骨格や食感改良に必要な小麦粉と糖の割合検討のため、糖の配合量を表5のように変え、その他は製造例1に従いフライ菓子を製造した。製造したフライ菓子を25℃で60分間静置し粗熱がとれた後、パネラー10名により評価基準表1に従って評価した。
実施例B10は保形性は良いが、食感はもっちり弾力があるがしっとりさには欠けていた。実施例B13は保形性がやや悪かった。
小麦粉と糖の割合は変更せず(小麦粉:糖=1:1)、エマルション(サラダ油+水+HPMC)の量を表6のように変え、その他は製造例1に従いフライ菓子を製造した。製造したフライ菓子を25℃で60分間静置し粗熱がとれた後、パネラー10名により評価基準表1に従って評価した。
実施例B14は保形性は良いが、食感はしっとりさが少なくややパサツキがあった。
小麦粉と糖及びエマルション(サラダ油+水+HPMC)の割合を表7のように変え、その他は製造例1に従いフライ菓子を製造した。
製造したフライ菓子を25℃で60分間静置し粗熱がとれた後、パネラー10名により評価基準表1に従って評価した。
実施例B17は保形性は良いが、食感はしっとりさが少なくややパサツキがあった。
Claims (6)
- 穀粉、油脂、水及びセルロース誘導体を含む油ちょうベーカリー食品用生地であって、
穀粉100質量部に対し、セルロース誘導体を乳化物の状態で0.2~4.2質量部含み、
穀粉100質量部に対し、油脂を40~150質量部含み、
水の質量に対する油脂の質量の比(油脂/水比)が、0.3~1.2である、
ことを特徴とする、油ちょうベーカリー食品用生地。 - 穀粉100質量部に対し、油脂を40~110質量部含むことを特徴とする、請求項1記載の油ちょうベーカリー食品用生地。
- 穀粉、油脂、水及びセルロース誘導体を含む油ちょうベーカリー食品用生地であって、
穀粉100質量部に対し、セルロース誘導体を非乳化物の状態で0.5~4.2質量部含み、
穀粉100質量部に対し、油脂を40~100質量部含み、
水の質量に対する油脂の質量の比(油脂/水比)が、0.3~0.9である、
ことを特徴とする、油ちょうベーカリー食品用生地。 - 油脂が液状油から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の油ちょうベーカリー食品用生地。
- 請求項1または2に記載の油ちょうベーカリー食品用生地の製造方法であって、セルロース誘導体を油脂及び水と混合して乳化物を作製し、前記乳化物を生地に添加することを特徴とする、上記製造方法。
- 請求項1~4のいずれか一項に記載の油ちょうベーカリー食品用生地あるいは請求項5記載の製造方法により製造された油ちょうベーカリー食品用生地を、油ちょうすることを含む、ベーカリー食品の製造方法。
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