本発明は、液体を吐出する例えばインクジェットヘッドのノズル面に付着した汚れの清掃をウェブとワイパブレードで払拭するヘッド清掃装置において、ウェブの巻き取り量に関わらず不変であるウェブ押し付け部の払拭位置と退避位置への移動動作と、ワイパブレードの払拭位置と退避位置への移動動作を共通の駆動源で行うことを、要旨の一つとする。以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態における「液体を吐出する装置」は、液体を吐出するヘッドを備え、該ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。「液体を吐出する装置」には、被吐出物に対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。例えば、画像形成装置、立体造形装置、処理液塗布装置、噴射造粒装置などが該当する。本実施形態では、「液体を吐出する装置」の一例として、画像形成装置の一つのインクジェット記録装置を例に取っている。
また、以下の説明において、同一若しくは同一と見なせる各部には同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
[第1の実施形態][全体説明]
図1は、本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。図1に示すように、画像形成システムとしてのインクジェット記録装置1は、基本的に、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300及び排紙部400から構成されている。インクジェット記録装置1は、給紙部100から給紙される媒体としてのシート材である記録材である用紙Pに対し、画像形成部200で画像形成用の液体であるインクを吐出することで画像を形成する。そして、用紙P上に付着したインクを乾燥部300で乾燥させた後、用紙Pを排紙部400から排紙する。
[給紙部]
給紙部100は、複数の用紙Pが積載される給紙トレイ110と、給紙トレイ110から用紙を1枚ずつ分離して送り出す給送装置120と、用紙を画像形成部200へ送り込むレジストローラ対130とを備えている。給送装置120には、ローラやコロを用いた装置、エア吸引を利用した装置など、給送機能を有する公知のあらゆる給送装置を用いることができる。給送装置120により給紙トレイ110から送り出された用紙Pは、その先端がレジストローラ対130に到達した後、レジストローラ対130が所定のタイミングで駆動されることにより、画像形成部200へ給紙される。なお、本実施形態において、給紙部100は、画像形成部200へ用紙Pを送り出す機能を備えていれば、特にその構成を限定するものではない。
[画像形成部]
画像形成部200は、受け取り胴201、用紙搬送ドラム210(搬送部材)、インク吐出部220及び受け渡し胴202を備えている。受け取り胴201は、給紙された用紙P(記録媒体)を受け取り、用紙搬送ドラム210は、受け取り胴201によって搬送された用紙Pを外周面に担持して搬送する円筒形状の搬送部材である。インク吐出部220は、用紙搬送ドラム210によって搬送された用紙Pに向けてインクを吐出する。受け渡し胴202は、用紙搬送ドラム210によって搬送された用紙Pを乾燥部300へ受け渡す。
給紙部100から画像形成部200へ搬送されてきた用紙Pは、受け取り胴201の表面に設けられた用紙グリッパ210aによって先端が把持され、受け取り胴201の表面移動に伴って搬送される。受け取り胴201により搬送された用紙Pは、用紙搬送ドラム210との対向位置で用紙搬送ドラム210へ受け渡される。なお、用紙グリッパ210aは公知の構造を有するものである。
用紙搬送ドラム210の表面にも用紙グリッパ210aが設けられており、用紙Pの先端が用紙グリッパ210aによって把持される。また、用紙搬送ドラム210の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されている。各吸引孔には吸引装置211によって用紙搬送ドラム210の内側へ向かう吸い込み気流が発生し、用紙Pはこの吸い込み気流により用紙搬送ドラム210の表面に吸着される。受け取り胴201から用紙搬送ドラム210へ受け渡された用紙Pは、用紙グリッパ210aによって先端が把持されるとともに、吸い込み気流によって用紙搬送ドラム210の表面に吸着して、用紙搬送ドラム210の表面移動に伴って搬送される。
インク吐出部220は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインクを吐出して画像を形成するものであり、インクの色ごとに個別のラインヘッド220C,220M,220Y,220Kを備えている。ラインヘッド220C,220M,220Y,220Kは、液体を吐出するものであれば、その構成に制限はなく、あらゆる構成のものを採用することができる。必要に応じて、白色、金色、銀色などの特殊なインクを吐出する液体吐出ヘッドを設け、あるいは表面コート液などの画像を構成しない液体を吐出する液体吐出ヘッドを設けることもできる。
インク吐出部220のラインヘッド220C,220M,220Y,220Kは、それぞれ後述する液体吐出ヘッド221を複数有し、画像情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。用紙搬送ドラム210によって搬送された用紙Pがインク吐出部220との対向領域を通過する際に、各液体吐出ヘッドの下面(ノズル面)から各色インクが吐出され、当該画像情報に応じた画像が形成される。液体吐出ヘッド221は、公知の構成のものを用いることができる。ここで、「液体吐出ヘッド」とは、液体を吐出させる機能部品を意味する。
なお、本実施形態において、画像形成部200は、用紙P上に液体を付着させて画像を形成する機能を備えていればよく、液体を吐出させ、あるいは液体を付着させる構成を特に限定するものではない。
[乾燥部]
乾燥部300は、乾燥機構301及び搬送機構302を備えている。乾燥機構301は、画像形成部200で用紙P上に付着したインクを乾燥させる。搬送機構302は、画像形成部200から搬送されてくる用紙Pを排紙部400側に搬送する。すなわち、画像形成部200から搬送されてきた用紙Pは、搬送機構302に受け取られた後、搬送機構302により乾燥機構301を通過するように搬送され、排紙部400へ受け渡される。乾燥機構301を通過する際、用紙P上のインクには乾燥処理が施され、これによりインク中の水分等の液分が蒸発し、用紙P上にインクが固着するとともに、用紙Pのカールが抑制される。
[排紙部]
排紙部400は、複数の用紙Pが積載される排紙トレイ410を備えている。搬送機構302により乾燥部300から搬送されてくる用紙Pは、排紙トレイ410上に順次積み重ねられて保持される。なお、本実施形態において、排紙部400は、用紙Pを排紙する機能を備えていればよく、その構成を特に限定するものではない。
[その他の機能部]
本実施形態のインクジェット記録装置1は、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、排紙部400から構成されているが、他の機能部を適宜追加してもよい。例えば、給紙部100と画像形成部200との間に画像形成の前処理を行う前処理部を追加し、あるいは乾燥部300と排紙部400との間に画像形成の後処理を行う後処理部を追加したりすることができる。
前処理部としては、例えば、インクと反応して滲みを抑制するための処理液を用紙Pに塗布する処理液塗布処理を行うものなどが挙げられるが、前処理の内容について、特に限定するものではない。後処理部としては、例えば、画像形成部200で画像が形成された用紙を反転させて再び画像形成部200へ送って用紙の両面に画像を形成するための用紙反転搬送処理、あるいは画像が形成された複数枚の用紙を綴じる処理などが挙げられる。ここでは、後処理の内容についても特に限定しない。
なお、本実施形態では、「液体を吐出する装置」を、インクジェット記録装置1の画像形成部200を例にとって説明している。しかし、「液体を吐出する装置」は、シート材の被乾燥面に向けて液体を吐出する液体吐出ヘッドを備え、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではなく、例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するものも含まれる。
シート材は、材質を限定されるものではなく、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど、液体が一時的でも付着可能なものであればよい。例えば、フィルム製品、衣料用等の布製品、壁紙や床材等の建材、皮革製品などに使用されるものであってもよい。本実施形態においては、液体が一時的でも付着可能なものを「媒体」と称している。
また、「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。
より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは、例えば、インクジェット用インク、表面処理液等の用途で用いることができる。
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドとシート材とが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
また、「液体吐出ヘッド」とは、吐出孔(ノズル)から液体を吐出・噴射する機能部品である。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどの吐出エネルギー発生手段を使用することができるが、使用する吐出エネルギー発生手段が限定されるものではない。
なお、後述するが、本実施形態においては、複数の液体吐出ヘッドを用紙幅方向(用紙Pの搬送方向と直交する方向)に並べることで、長尺な液体吐出ヘッド(ラインヘッド)としている。
また、「払拭」とは、清掃、回復、洗浄、メンテナンス、ワイピング、クリーニング、等の意味を含むものとし、特筆しない場合はこれらの言葉は同義語として扱う。
図2及び図3は、払拭ユニット周りの構成を説明するためのもので、図2はレール部材790が用紙幅方向に移動する前の画像形成部200の要部平面図、図3はレール部材790が用紙幅方向に移動したときの画像形成部200の要部平面図である。
図2において、シアンのインクを吐出するラインヘッド220Cは、用紙幅方向(用紙Pの搬送方向と直交する方向)に沿って、第1ないし第8の液体吐出ヘッド221a~221hを備える。以下の説明では、第1ないし第8の液体吐出ヘッド221a~221hを互いに区別しない場合は、「液体吐出ヘッド221」と称する。他の色のラインヘッドについても同様の構成となっている。本実施形態では第1ないし第8の8つの液体吐出ヘッド221a~221hを並べて配置しているが、液体吐出ヘッド221の数は問わない。また本実施形態では液体吐出ヘッド221の配置を千鳥状としているが、配置はこれに限られない。
また、各ラインヘッド220C,220M,220Y,220Kの用紙幅方向の外側には、払拭機構70が配置されている。払拭機構70は、主に各色のラインヘッド220C,220M,220Y,220Kに対応した払拭ユニット700C、700M、700Y、700K(以下、特筆しない場合は払拭ユニット700とする)、レール部材790等から構成されている。
払拭ユニット700は、ウェブ等からなる払拭部材を少なくとも備え、複数の液体吐出ヘッド221の配列方向に沿って移動して払拭部材が液体吐出ヘッド221に接触することで、液体吐出ヘッド221のノズル面の汚れを払拭することができる。払拭ユニット700はレール部材790の端部に備えられている。払拭ユニット700は、図3に示すようにレール部材790が用紙幅方向に移動することで払拭ユニット700も移動し、払拭ユニット700の払拭部材が液体吐出ヘッド221に接触し、ノズル面の汚れを払拭できる構成となっている。
なお、本実施形態では液体吐出ヘッド221を千鳥配列としており、インク吐出部220としてのラインヘッド(以下、符号220を付す)には、第1ないし第4の液体吐出ヘッド221a,221b,221c,221dの列と、第5ないし第8の液体吐出ヘッド221e,221f,221g,221hの列とがある。本実施形態は各ヘッド列に対応するように複数の払拭ユニット700を設けている。つまり、本実施形態では、各液体吐出ヘッド221において、2つのヘッド列と1対1に対応する2つの払拭ユニット700が設けられている。しかし、これに限らず、例えば1つの払拭ユニット700で2つのヘッド列をまとめて払拭するように構成することもできる。
図4、図5及び図6は、払拭ユニット700による払拭動作を示す説明図で、払拭開始前、ウェブ払拭時、ワイパ払拭時の状態をそれぞれ示す。図4~図6は画像形成部200の要部を用紙Pの搬送方向から見た図である。
図2及び図3に示したようにインク吐出部220の用紙幅方向の外側には、払拭ユニット700が配置されている(図4)。払拭ユニット700は、二種のクリーニング部材、すなわち第1の払拭部材701及び第2の払拭部材702と、押圧部材703とを備える。第1の払拭部材701は液体吐出ヘッド221(221a~221h)の各々のノズル面221a1~221h1を払拭するシート状の部材であり、例えば吸液性のあるウェブ等のシートなどが使用される。
なお、ノズル面221a1~221h1を互いに区別しない場合は、「ノズル面221-1」と称する。第2の払拭部材702は液体吐出ヘッド221の各々のノズル面221―1を払拭する弾性部材であり、例えば吸液性のないブレードとしてゴムワイパなどが使用される。押圧部材703は、第1の払拭部材701を上方へ付勢するように構成されており、第1の払拭部材701を液体吐出ヘッド221のノズル面221-1に向けて押圧する。
そして、図5に示すように払拭ユニット700が用紙幅方向に移動することにより、払拭ユニット700に備えられた第1の払拭部材701が第1の液体吐出ヘッド221aに接触し、第1の液体吐出ヘッド221aのノズル面221a1を払拭することができる。同様にして第2ないし第8の液体吐出ヘッド221b~221hのノズル面221b1~221h1が払拭される。次いで、図6に示すように第1の払拭部材701を退避位置へ移動させ、第2の払拭部材702を払拭位置へ移動させる。この移動により、第1の払拭部材701と第2の払拭部材702の切り替えが行われる。
そして、払拭ユニット700が用紙幅方向(用紙搬送方向と直交する方向)に移動することによって、払拭ユニット700に備えられた第2の払拭部材702が第1の液体吐出ヘッド221aに接触し、第1の液体吐出ヘッド221aのノズル面221a1を払拭することができる。同様にして第2ないし第8の液体吐出ヘッド221b~221hのノズル面221b1~221h1が払拭される。払拭ユニット700の用紙幅方向の移動は、用紙幅方向移動駆動機構と払拭ユニット移動モータ552によって行われ、その制御は、後述のCPU510と第4のモータコントローラ544を介して実行される。
このとき第1の払拭部材701と第2の払拭部材702を共に払拭位置へ移動させておけば、同時にノズル面221-1を払拭することができる。しかし、複数の液体吐出ヘッド221を並べて一つのインク吐出部220を形成する構成においては、払拭対象ヘッドの前後の液体吐出ヘッド221に第1の払拭部材701及び第2の払拭部材702が接触してしまうことがある。払拭対象ではない液体吐出ヘッド221に払拭部材が接触してしまうと、逆にノズル面221-1を汚し、あるいは、吐出不良を起こすなどの不具合につながる。そのため、第1の払拭部材701と第2の払拭部材702はそれぞれが個別に払拭動作を行う必要がある。
図7及び図8は、第1の払拭部材701と第2の払拭部材702を別駆動とした払拭ユニット700の概略構成を示す説明図である。図9及び図10は第1の払拭部材701と第2の払拭部材702を共通の駆動源で駆動する本実施形態に係る払拭ユニット700の概略構成を示す説明図である。図7及び図9は第1の払拭部材701でノズル面221-1を払拭するときの状態を示し、図8及び図10は第2の払拭部材702でノズル面221-1を払拭するときの状態を示す。
第1の払拭部材701はノズル面221-1を払拭するシート状の部材であり、例えばウェブ等のシートが使用される。第2の払拭部材702はノズル面221-1を払拭する弾性部材であり、例えばゴムワイパ等が使用される。両者を明確に区別するため、以下、第1の払拭部材701をウェブ701として、第2の払拭部材702をワイパ702として説明する。
図7において、ウェブ701は、供給側ロール705と巻き取り側ロール706との間に張設されている。供給側ロール705と巻き取り側ロール706の間には、押圧部材703を真ん中に、その両側に対となる第1の搬送ローラ704aと第2の搬送ローラ704bがそれぞれ配置されている。この構成により、ウェブ701は、巻き取り側ロール706を駆動する巻き取りモータ707により供給側ロール705から第1及び第2の搬送ローラ704a,704b、及び押圧部材703を介して巻き取り側ロール706へと巻き取られ、搬送される。この動作により、常にウェブ701の新しい面が押圧部材703の上部に供給され、ウェブ701の新しい面でノズル面221-1の払拭を行うことができる。押圧部材703の下部には、ウェブ701を上方へ付勢するように圧縮バネ712が配置されており、この圧縮バネ712の弾性力によって適切な圧力でノズル面221-1の払拭を行う。なお、圧縮バネ712に代えて例えばゴム等の弾性部材を使用することもできる。
また、押圧部材703は圧縮バネ712での付勢に加えて、押圧部材昇降モータ711による昇降動作も可能な構成となっている。この昇降動作は、押圧部材703を、ノズル面221-1を払拭するための払拭位置と、ノズル面221-1にウェブ701が接触しないようにするための退避位置への切り替えを行うための動作である。図7に示した構成では、押圧部材昇降モータ711から第1のギヤ駆動列710を介して、押圧部材703を上下に昇降させる。
第1のギヤ駆動列710は、押圧部材昇降モータ711の駆動軸に連結された初段の第1の駆動ギヤ710a、第1の駆動ギヤ710aと噛み合う第2の中間ギヤ710b、及び第2の中間ギヤ710bと噛み合う最終段の第3の従動ギヤ710cを含む。最終段の第3の従動ギヤ710cは、圧縮バネ712の下端に配置されたラック703aと噛み合い、第3の従動ギヤ710cの回転方向に応じて押圧部材703を昇降動作させる。なお、本実施形態では、押圧部材703を昇降させる押圧部材昇降モータ711、第1のギヤ駆動列710は押圧部材703よりも巻き取り側ロール706側に配置されている。
ワイパ702は第2のギヤ駆動列708を介してワイパ回転モータ709と駆動が連結しており、ワイパ回転モータ709によってワイパ702は回転動作可能に構成されている。この回転動作はワイパ702を、ノズル面221-1を払拭するための払拭位置と、ノズル面221-1にワイパ702が接触しないようにするための退避位置への切り替えを行うための動作である。
第2のギヤ駆動列708は、ワイパ回転モータ709の駆動軸に連結された初段の第2の駆動ギヤ708a、第2の駆動ギヤ708aと噛み合う第2の中間ギヤ708b、第2の中間ギヤ708bと噛み合う第3の中間ギヤ708c、及び第3の中間ギヤ708cと噛み合う第2の受動キヤを有する最終段のワイパ回転軸708dを含む。ワイパ702はワイパ回転軸708dと一体に回転可能に設けられ、ワイパ回転軸708dの回転により、ワイパ702の払拭位置と退避位置が設定される。
このように2つの駆動源を備えることにより、押圧部材703の払拭位置と退避位置への切り替え動作、ワイパ702の払拭位置と退避位置への切り替え動作をそれぞれで行い、払拭対象ヘッドではないヘッドへの払拭部材の接触を回避している。また、ノズル面221-1の状態やクリーニングのモードによって、ウェブ701のみで払拭を行う場合、ワイパ702のみで払拭を行う場合、ウェブ701で払拭を行った後にワイパ702で払拭を行うモード、ワイパ702で払拭を行った後にウェブ701で払拭を行うモード等を選択的に動作させている。
以上が、本実施形態に対応させた二つの駆動源、すなわち、ワイパ回転モータ709と押圧部材昇降モータ711でワイパ702と押圧部材703の払拭位置と退避位置への切り替え動作を行う例である。
これに対して、本実施形態では、ワイパ702と押圧部材703の払拭位置と退避位置への切り替え動作を共通の払拭切り替えモータ715で行い、ノズル面221-1を払拭することを特徴としている。
図9において、払拭切り替えモータ715から第2のギヤ駆動列708を介してワイパ702へと駆動が連結され、さらにワイパ回転軸708dからタイミングベルト713を介して押圧部材昇降カム714のカム軸(以下、第1のカム軸と称す)714bへと駆動が連結される。ワイパ702の回転と押圧部材昇降カム714の第1のカム軸714bの回転は1対1の比になっており、払拭切り替えモータ715によりワイパ702を90度回転させると、図10に示すように押圧部材昇降カム714も同期して90度回転する。押圧部材昇降カム714にはカム溝(以下、第1のカム溝と称す)714aが形成されており、押圧部材ホルダ716に設けられた突起部(以下、第1の突起部と称す)716aが第1のカム溝714a内を挿通し、あるいは第1のカム溝714aに係合し、第1の突起部716aがカムフォロワとして機能する。なお、払拭切り替えモータ715は、後述の制御回路500のCPU510と第1のモータコントローラ541により、駆動制御される。
押圧部材ホルダ716は上下方向のみに移動可能にガイドされており、押圧部材昇降カム714の回転した第1のカム溝714aに沿って移動する第1の突起部716aの軌跡に対応して、押圧部材ホルダ716が下降し、押圧部材703が退避位置へ移動する。図9及び図10に示した構成では、押圧部材昇降カム714が図9の位置から90度回転すると、押圧部材703が下降して図10に示す退避位置へ移動する。
ワイパ702の回転と押圧部材昇降カム714の回転の比は1対1でなくても良く、押圧部材昇降カム714の形状と合わせて、レイアウト都合や動作させたいパターンに応じて自由に設定することができる。また、図9及び図10に示した構成では、タイミングベルト713によりワイパ回転軸708dから押圧部材昇降カム714の第1のカム軸714bへと駆動を連結しているが、タイミングベルト713に限らず、ギヤ、ワイヤーなど駆動を連結できるものであれば適用可能である。なお、第2のギヤ駆動列708の構成については図7を参照して説明した構成と同一である。
このように構成すると、図7及び図8に示した押圧部材昇降モータ711、第1のギヤ駆動列710及びラック703aは不要となり、駆動源が払拭切り替えモータ715一つで済む。その結果、部品点数の削減が可能となり、コストダウンと装置の小型化を図ることができる。また、ウェブ701とワイパ702でノズル面221-1を払拭するので、クリーニング効果も高くなる。
本実施形態によれば、駆動源である払拭切り替えモータ715の駆動によって第1の回転体であるワイパ回転軸708dとホルダ716とが同期して駆動される。これにより第1の払拭部材701の直線運動と第2の払拭部材702の回転運動とを簡易な構成で同期して実行できる。
[第2の実施形態]
図11ないし図13はウェブ701とワイパ702を共通の駆動源で駆動する第2の実施形態に係る払拭ユニット700の概略構成を示す説明図である。
図9及び図10に示した第1の実施形態では、ワイパ702は回転動作によって、押圧部材703は昇降動作によって、それぞれ払拭位置と退避位置の切り替えを行っている。これに対し、ワイパ702が昇降動作を行い、押圧部材703が回転動作を行うようにしても良い。また、図11ないし図13に示すようにワイパ702と押圧部材703の両方が昇降動作を行うようにしても良い。これらは、レイアウト状況によって自由に選択することができる。そこで、第2の実施形態では、ワイパ702の昇降動作をワイパ昇降カム717で行い、押圧部材703の昇降動作を押圧部材昇降カム714で行うように構成した。
図11に示すように、第2の実施形態は、第1の実施形態におけるワイパ回転軸708dをワイパ昇降カム171のカム軸(以下、第2のカム軸と称す)171bとして使用した例である。第2のカム軸171bは、第1の実施形態と同様に第2の従動ギヤとしても機能し、また、タイミングベルト713を介して押圧部材昇降カム714の第1のカム軸714bへの駆動を連結している。
ワイパ昇降カム717は、第2のカム溝171aと第2のカム軸171bを備える。第2のカム軸171bはワイパ昇降カム717の回転中心であり、ワイパ昇降カム717は第2のカム軸171bに一体に固定されている。また、第2のカム軸171bには、払拭切り替えモータ715から第2のギヤ駆動列708を介して駆動力が伝達され、この駆動力がさらに第1のカム軸714bへと伝達される。
ワイパ702はワイパホルダ718によって上部が突出するように保持され、ワイパホルダ718の下部に設けられた突起部(以下、第2の突起部と称す)718aが、第2のカム溝717a内に挿通され、あるいは第2のカム溝717aに係合し、第2の突起部718aがカムフォロワとして機能する。この機構により、ワイパ昇降カム717の回転によってワイパホルダ718が昇降し、ワイパ702が昇降動作する。押圧部材703の昇降動作は、押圧部材ホルダ716の第1の突起部716aが押圧部材昇降カム714の第1のカム溝714aに挿通していることから、押圧部材昇降カム714の回転に応じて押圧部材ホルダ716が昇降し、押圧部材703が昇降動作する。
この場合、カムの形状によっては、ワイパ702の昇降動作と押圧部材703の昇降動作を図12及び図13に示すように払拭切り替えモータ715の正転と逆転を切り替えることによってそれぞれを個別に行うこともできる。正転と逆転で昇降動作する対象を切り替えることにより、正転と逆転で払拭切り替えモータ715の回転速度を変更し、それぞれの昇降動作の速度を変えることもできる。例えば、正転と逆転で駆動負荷の高い方の回転速度を遅くするように払拭切り替えモータ715の回転速度を変更することにより、モータトルクに余裕ができ、安価なモータを選択することもできる。また、負荷の軽い方の回転速度を上げることにより、動作時間を短縮することができる。本実施形態においても、払拭切り替えモータ715の制御は後述のようにCPU510と第4のモータコントローラ544によって実行される。
なお、図12は押圧部材703を上昇させた状態(払拭位置)で、ワイパ702を下降若しくは後退(退避位置に移動)させるときの各部の状態を示す。逆に、図13はワイパ702を上昇させた状態(払拭位置)で、押圧部材703を下降若しくは後退(退避位置に移動)させるときの各部の状態を示す。前者の状態のとき、払拭切り替えモータ715は図示反時計回り方向に回転し、後者の状態のとき、払拭切り替えモータ715は図示時計回り方向に回転している。なお、押圧部材昇降カム714とワイパ昇降カム717のカム形状とカムサイズは動作に応じて適宜設計される。例えば、本実施形態では、同一サイズ、同一カム形状のものを、角度をずらして配置することで実現することができる。
また、機構的には、第2の実施形態は、第1の実施形態におけるワイパ回転軸708dとワイパ702を、第2のカム軸717bとワイパ昇降カム717とワイパホルダ718に保持されたワイパ702に置換したものと同等である。その他、特に説明しない各部は第1の実施形態と同一に構成され、同様に機能する
。
図14ないし図20は、第2の実施形態において第2の液体吐出ヘッド221bのノズル面221b1を払拭ユニット700によって払拭する動作を示す動作説明図である。第2の液体吐出ヘッド221bは、図2に示した用紙端部から2番目のヘッドである。以下、図24の制御構成を示すブロック図及び図25のフローチャートも参照し、払拭動作について説明する。
第2の液体吐出ヘッド221bのノズル面221b1をウェブ701によって払拭する場合、まず、押圧部材703を第2の液体吐出ヘッド221bの払拭開始位置に位置させる。払拭開始位置は、第1の液体吐出ヘッド221aと第2の液体吐出ヘッド221bの間である。図15では、押圧部材703が第2の液体吐出ヘッド221bと第3の液体吐出ヘッド221cの間に位置し、払拭完了位置を示しているが、この状態は、第3の液体吐出ヘッド221cの払拭開始位置に相当する。したがって、第2の液体吐出ヘッド221bについては、押圧部材703が第1の液体吐出ヘッド221aと第2の液体吐出ヘッド221bの間に位置した状態が、第2の液体吐出ヘッド221bの払拭開始位置となる。
この状態では、インク吐出部220は矢印A方向に退避しており、押圧部材703は払拭位置に、ワイパ702は退避位置にそれぞれ位置するように払拭切り替えモータ715を正転(予め設定された一方向に回転)させる。この正転動作により、押圧部材703が払拭位置に、ワイパ702が退避位置にそれぞれ位置すると、払拭切り替えモータ715はCPU510の制御により、回転を停止する。
そこで、第2の液体吐出ヘッド221bを払拭する場合、CPU510は、まず、インク吐出部220が退避位置に退避しているか確認する(ステップS1)。退避していることが確認できると(ステップS1:Y)、押圧部材703が第1の液体吐出ヘッド221aと第2の液体吐出ヘッド221bの間の、第2の液体吐出ヘッド221bのノズル面221b1の払拭開始位置に位置しているかを確認する(ステップS2)。
払拭開始位置に位置していることが確認できると(ステップS2:Y)、押圧部材703が払拭位置に、ワイパ702が退避位置にそれぞれ位置しているかを、さらに確認し(ステップS3)、払拭の可否を判断する。なお、押圧部材703が払拭位置に、ワイパ702が退避位置にあるか否かは、払拭切り替えモータ715の回転角度から判断することができる。
払拭可と判断されると、ラインヘッド昇降モータ551によってラインヘッド昇降機構を駆動してインク吐出部220を払拭位置まで下降させる(ステップS4:矢印A1方向に対応)。ラインヘッド昇降機構は、モータコントローラ543を介してCPU510によって駆動される機構である。昇降機構自体は、当業者であれば、カム、ギヤ等を用いて適宜構成できるものであり、詳細についての説明は省略する。
インク吐出部220が払拭位置まで下降すると(ステップS5:Y)、払拭ユニット移動モータ552によって用紙幅方向移動駆動機構を駆動して、払拭ユニット700を用紙幅方向(矢印B1方向)に移動させる(ステップS6)。用紙幅方向移動駆動機構は、モータコントローラ544を介してCPU510によって駆動される機構である。前記昇降機構と同様に移動機構自体は、当業者であれば、カム、ギヤ等を用いて適宜構成できるものであり、詳細についての説明は省略する。
図14は、ステップS6における押圧部材703の払拭方向、すなわち、矢印B1方向の移動状態を示す図である。図14に示すように、第2の液体吐出ヘッド221bのノズル面221b1にウェブ701が接触し、若しくは圧接し、この状態で払拭ユニット700は矢印B1方向に移動する。このように押圧部材703によりウェブ701がノズル面221b1に接触した状態で払拭ユニット700が移動し、ノズル面221b1を払拭する。このとき、ワイパ702は第2の液体吐出ヘッド221aに接触しない退避位置に位置しており、ウェブ701のみによってノズル面221b1の払拭が行われる。
押圧部材703が第2の液体吐出ヘッド221bのノズル面221b1の端部まで移動し、ウェブ701での払拭が完了すると(ステップS7:Y)、図15に示すように押圧部材703は第2の液体吐出ヘッド221bと第3の液体吐出ヘッド221cとの間に位置する。この状態になると、インク吐出部220は上昇し(矢印A2方向)、押圧部材703と所定の距離離間した退避位置に移動する(ステップS8)。
図15に示すように、押圧部材703が第2の液体吐出ヘッド221bのノズル面221b1の払拭を終了した位置に来たとき、ワイパ702は第2の液体吐出ヘッド221bに対向した位置に位置している。すなわち、ワイパ702は、第1の液体吐出ヘッド221a側の端部から第3の液体吐出ヘッド221c側に若干入った位置に位置している。そのため、このままワイパ702による払拭動作を開始すると、拭き残しが発生する。
そこで、図15及び図16に示すように、ワイパ702を、第2の液体吐出ヘッド221bに対する押圧部材703の払拭開始位置に対応する位置まで後退させる。すなわち、払拭ユニット移動モータ552を駆動し、矢印B2方向に図15に示す位置から図16に示す位置まで払拭ユニット700を移動させる(ステップS9)。
そして、払拭切り替えモータ715を図14の状態にした方向と逆方向に所定角度回転させ(ステップS10)、ワイパ702を払拭位置に、押圧部材703を退避位置に位置させる(ステップS11:Y)。この状態から、ラインヘッド昇降モータ551を駆動して、インク吐出部220を払拭位置まで下降(移動)させる(ステップS12)。インク吐出部220が払拭位置まで移動すると、ワイパ702は、図16に示すように第1の液体吐出ヘッド221aと第2の液体吐出ヘッド221bとの間に突出し、押圧部材703はノズル面221b1に接触不能な位置まで後退した状態になる。この位置が、ワイパ702による払拭開始位置である。
ワイパ702が払拭開始位置に位置すると(ステップS13:Y)、図17に示すように払拭ユニット移動モータ552が駆動され、払拭ユニット700を矢印B1方向に移動させる(ステップS14)。このとき、ワイパ702は弾性変形した状態でノズル面221b1に接触するので、払拭ユニット700の移動にともなってノズル面221b1が払拭され、ノズル面221b1のワイパ702による清掃が実施される。
ワイパ702が第2の液体吐出ヘッド221bのノズル面221b1の端部まで移動し、ワイパ702での払拭が完了すると(ステップS15:Y)、図18に示すようにワイパ702は第2の液体吐出ヘッド221bと第3の液体吐出ヘッド221cとの間に位置する。この状態になると、インク吐出部220は上昇して(矢印A2方向)押圧部材703と所定の距離離間した退避位置に移動し(ステップS16)、第2の液体吐出ヘッド221bのノズル面221b1の清掃は終了する。
第1、第3~第8の液体吐出ヘッド221a、221c~221hについても第2の液体吐出ヘッド221bと同様の動作を繰り返しインク吐出部220の清掃が行われる。
図19及び図20に示すように、ウェブ701とワイパ702の払拭方向はそれぞれ異なっても良い。図19では、ウェブ701の液体吐出ヘッド221bのノズル面221b1に対する払拭方向は矢印B2方向であり、図20では、ワイパ702の液体吐出ヘッド221bのノズル面221b1に対する払拭方向は矢印B1方向である。すなわち、押圧部材703とワイパ702の位置関係、あるいは液体吐出ヘッド221の位置関係によっては、矢印B1方向と矢印B2方向で示すように、異なる方向から払拭した方が動作の時間が短縮できる場合がある。一方向で払拭するか、方向を変えて払拭するかは、レイアウト状況に応じて、動作時間を検討し、適宜選択すればよい。
なお、ここでは、第2の液体吐出ヘッド221bのノズル面221b1を払拭する動作について説明した。第1の液体吐出ヘッド221a、第3~第8の液体吐出ヘッド221c~221hなどの、他の液体吐出ヘッド221a,221c~221hのノズル面221a1,221c1~221h1に対しても同様の動作で払拭する。このようにしてノズル面221a1~221h1の清掃が行われる。
その他、特に説明しない各部は第1の実施形態と同様に構成され、同様に機能する。
本実施形態によれば、駆動源である払拭切り替えモータ715の駆動源の駆動によってワイパホルダ718と押圧部材ホルダ716とが同期して駆動される。これにより第1の払拭部材701の直線運動と第2の払拭部材702の直線運動とを簡易な構成で同期して実行できる。
[第3の実施形態]
ところで、第2の実施形態において、押圧部材703が払拭位置にある場合、ウェブ701は押圧部材703の下部に配置される圧縮バネ712によって上方へ付勢されている。押圧部材703が払拭位置から退避位置へ移動した時、図21のウェブ701の移動動作を示す説明図において実線で示すように、ウェブ701は自重によって点線の位置から下方の退避位置へ移動する。この時、押圧部材703が退避位置へ移動したにもかかわらず、同図点線で示す払拭位置に残り、ウェブ701が下方へ移動しない場合がある。
例えば、ウェブ701でノズル面221-1を払拭した後にウェブ701に付いたインクが乾燥すると、図22のウェブ701が払拭位置に留まった状態を示す説明図から分かるように、ウェブ701が固まって押圧部材703が払拭位置にいた時の形状でそのまま残ってしまうことがある。このような状態になると、押圧部材703が退避位置にあってもウェブ701が払拭対象ではない液体吐出ヘッド221に接触してしまい、ノズル面221-1を汚し、あるいは吐出不良を発生させてしまう。
これを解消するため、押圧部材703によってウェブ701を上下で挟み込むような構成にすれば、押圧部材703の移動に伴ってウェブ701も押圧部材703に追従できる。しかし、ウェブ701は、ノズル面221-1に押し付けられた状態で払拭を行うため、ウェブ701の上側に部品を配置してしまうとノズル面221-1と部品が接触し、ノズル面221-1を傷付けしまう。そのため押圧部材703によってウェブ701を上下で挟み込むような構成を採用することはできない。
そこで、第3の実施形態では、押圧部材703の退避動作に伴ってウェブ701を確実に退避させるようにした。図23は第3の実施形態において、より確実にウェブ701を液体吐出ヘッド221に接触させないよう退避させるための動作を示す動作説明図である。
本実施形態では、CPU510は、図23に示すように押圧部材703が退避位置へ移動した後、巻き取りモータ707を動作させ、押圧部材703が移動して発生したウェブ701のたるみ分だけ巻き取りを行う。これにより、ウェブ701が退避した押圧部材703の位置まで、ウェブ701を確実に下降させることができる。巻き取りモータ707によってウェブ701の巻き取りを行うタイミングは、押圧部材703が退避位置へ移動した後だけではなく、押圧部材703が退避位置へ移動開始するのと同じタイミングで動作させても良い。
逆に押圧部材703が退避位置から払拭位置へ移動する際には、CPU510は、巻き取りモータ707を逆回転させてウェブ701にたるみを作ってから押圧部材703を払拭位置へ移動させる。これにより、押圧部材703が退避位置から払拭位置へ移動する時の負荷を低減させることができ、押圧部材703を確実に払拭位置へ移動させることができる。
その他、特に説明しない各部は、前述の第1及び第2の実施形態と同様に構成され、同様に機能する。
なお、前記第1ないし第3の実施形態において、各部の制御は、画像形成部200に備えられた制御回路500によって実行される。図25は制御回路500の要部を示すブロック図である。制御回路500は、払拭切り替えモータ715の駆動制御、液体吐出ヘッド221の液体吐出制御及び払拭ユニット700への近接離間動作制御、払拭ユニット700の液体吐出ヘッド221のノズル面221-1に沿う移動制御、等々の制御を行う。
制御回路500は、CPU(Central Processing Unit)510、ROM(Read Only Memory)520、RAM(Random Access Memory)530を含む制御主体と、制御される制御客体と、通信インタフェース等を備えている。これらの各部はアドレスバス、データバス等のバスラインを介して相互に電気的に接続されている。
制御客体としては、本実施形態では、払拭切り替えモータ715、巻き取りモータ707、ラインヘッド昇降モータ551、払拭ユニット移動モータ552、液体吐出ヘッド駆動ユニット553、等々を含む。これらの制御客体は、それぞれ第1ないし第4のモータコントローラ541,542,543,544及びヘッドコントローラ545を介して制御される。このうち、ラインヘッド昇降モータ551は、図中矢印A1,A2で示したインク吐出部220を払拭位置と退避位置に移動させるラインヘッド昇降駆動機構を駆動するモータである。払拭ユニット移動モータ552は、図中矢印B1,B2で示した払拭ユニット700をインク吐出部220の液体吐出ヘッド221の並び方向に平行に移動させる払拭ユニット駆動機構を駆動するモータである。ヘッドコントローラ545は、液体吐出ヘッド駆動ユニット553においてヘッド付勢し、液体の吐出を制御するために使用される。
CPU510はROM520に記憶されたコンピュータ読み取り可能なプログラムを実行することにより、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300及び排紙部400を制御する。ROM520はCPU510が実行するデータやプログラム等を記憶する。RAM530はCPU510がプログラムを実行する際に一時的にデータ等を記憶する。
本発明を各実施形態に対応させれば、次のような効果を奏する。なお、以下の説明では、各実施形態の各部と特許請求の範囲における各構成要素について対応を取り、両者の用語が異なる場合には後者をかっこ書きで示し、また、対応する参照符号を付して両者の対応関係を明確にした。
(1) 第1及び第2の実施形態に係るヘッド清掃装置(払拭ユニット700)は、複数の液体吐出ヘッド221の各ノズル面221-1を払拭するウェブ701(第1の払拭部材)と、前記ウェブ701を、前記ノズル面221-1を払拭する払拭位置と前記ノズル面221-1から離間した退避位置へ移動させる第2のギヤ駆動列708、タイミングベルト713、押圧部材昇降カム714(第1の駆動手段)と、前記ノズル面221-1を払拭するワイパ702(第2の払拭部材)と、前記ワイパ702を、前記ノズル面221-1を払拭する払拭位置と前記ノズル面から離間した退避位置へ移動させる第2のギヤ駆動列708、ワイパ回転軸708d又はワイパ昇降カム717(第2の駆動手段)と、前記第1の駆動手段及び前記第2の駆動手段を駆動する払拭切り替えモータ715(共通の駆動源)と、払拭切り替えモータ715(駆動源)を制御するCPU510(制御手段)と、を備えているので、払拭切り替えモータ715(共通の駆動源)の駆動制御だけで、ウェブ701とワイパ702をそれぞれ払拭位置と退避位置に独立して移動させることができる。すなわち、第1及び第2の実施形態によれば、ノズル面221-1を払拭する二種の払拭手段の各動作の駆動源を一つにしたので、装置のコストダウンと小型化を図ることができる。また、二種の異なる払拭手段を用いてノズル面221-1を払拭し、クリーニングするので、ノズル面221-1のクリーニング効果をより上げることができる。
(2) 第1及び第2の実施形態によれば、ウェブ701は、シート状の払拭部材であるから、これによってノズル面221-1を払拭し、クリーニングするので、ノズル面221-1のクリーニング効果をより上げることができる。
(3) 第1及び第2の実施形態によれば、ワイパ702(第2の払拭部材)を駆動する第2のギヤ駆動列708(前記第2の駆動手段)の駆動力を、ウェブ701(第1の払拭部材)を駆動する押圧部材昇降カム714(第1の駆動手段)に伝達するタイミングベルト713(駆動力伝達手段)を備え、ウェブ701(第1の払拭部材)の移動とワイパ702(第2の払拭部材)の移動が、払拭切り替えモータ715(駆動源)により同期して行われるので、両者を常に同じタイミング関係で制御し、簡単な制御構成で確実にノズル面221-1を払拭することができる。
(4) また第1の実施形態によれば、払拭切り替えモータ715によって回転するワイパ回転軸708d(第1の回転体)と、ワイパ回転軸708dと駆動連結された押圧部材昇降カム714(第1の偏心カム)と、押圧部材昇降カム714に当接する被当接部716dを有し押圧部材昇降カム714の回転に伴って直線移動する押圧部材ホルダ716(第1のホルダ)と、を備え、ワイパ回転軸708dはウェブ702(第2の払拭部材)を回転可能に保持し、押圧部材ホルダ716は、ウェブ701(第1の払拭部材)を直線移動可能に保持するので、駆動源である払拭切り替えモータ715の駆動によってワイパ回転軸708dと押圧部材ホルダ716とが同期して駆動される。これによって、第1の払拭部材701の直線運動と第2の払拭部材702の回転運動とを簡易な構成で同期して実行できる。
(5) 第2の実施形態によれば、払拭切り替えモータ715によって回転するワイパ昇降カム717(第2の偏心カム)と、ワイパ昇降カム717と駆動連結された押圧部材昇降カム714(第1の偏心カム)と、ワイパ昇降カム717に当接する第2の突起部718a(第2の被当接部)を有しワイパ昇降カム717の回転に伴って直線移動するワイパホルダ718と、押圧部材昇降カム714に当接する第1の突起部716a(第1の被当接部)を有しワイパ昇降カム717の回転に伴って直線移動する押圧部材ホルダ716(第1のホルダ)と、を備え、ワイパホルダ718(第2のホルダ)は、ウェブ702(第2の払拭部材)を直線移動可能に保持し、押圧部材ホルダ716は、ウェブ701(第1の払拭部材)を直線移動可能に保持するので、払拭切り替えモータ715の駆動によってワイパホルダ718とワイパホルダ718とが同期して駆動される。これによりウェブ701の直線運動とウェブ702の直線運動とを簡易な構成で同期して実行できる。
(6) 第1及び第2の実施形態によれば、第2のギヤ駆動列708、タイミングベルト713、押圧部材昇降カム714(第1の駆動手段)は、ウェブ701(第1の払拭部材)を押圧部材昇降カム714により押圧部材ホルダ716を直線運動させて移動させ、第2のギヤ駆動列708、ワイパ回転軸708d又はワイパ昇降カム717(第2の駆動手段)は、ワイパ702(第2の払拭部材)を円運動又は直線運動により移動させるので、払拭切り替えモータ715一つ(一つの駆動源)ウェブ701(第1の払拭部材)とワイパ702(第2の払拭部材)を払拭位置と退避位置に移動させることができる。その際、ワイパ702(第2の払拭部材)については、円運動で移動させるか直線運動で移動させるか、払拭対象に応じて適宜設定することができる。
(7) 第2の実施形態によれば、(6)における直線運動が、押圧部材昇降カム714あるいはワイパ昇降カム717(カム機構)によりノズル面221-1に垂直な方向に行われるので、狭小なスペースでも払拭位置と退避位置への移動が可能となり、装置の小型化に貢献することができる。
(8) 第2の実施形態によれば、ウェブ701(第1の払拭部材)の移動とワイパ702(第2の払拭部材)の移動が、払拭切り替えモータ715(駆動源)を正転あるいは逆転させることにより行われるので、払拭切り替えモータ715の駆動方向の制御だけで、ウェブ701の移動とワイパ702の移動が可能となる。また、正転と逆転で速度を変更することが可能となり、制御のバリエーションを広げることができる。
(9) 第2の実施形態によれば、払拭切り替えモータ715(駆動源)は、正転と逆転で速度を変更するので、第1の駆動手段と第2の駆動手段の負荷に対応した制御が可能となる。例えば、負荷の高い方の速度を遅くすると、モータトルクに余裕が生じ、安価なモータを選択することも可能になる。
(10) 第1及び第2の実施形態によれば、ウェブ701(第1の払拭部材)又はワイパ(第2の払拭部材)のいずれか一方で前記ノズル面221-1を払拭する第1の払拭動作と、第1の払拭動作の後に他方の払拭部材で前記ノズル面221-を払拭する第2の払拭動作と、を実行するので、同一のノズル面221-1に対して2回払拭作業が実施されることになる。これにより、払拭効率を上げることができる。
(11) 第2の実施形態によれば、(10)において、第1の払拭動作と第2の払拭動作の払拭方向を異ならせたので、往復1回で2度の払拭作業が可能となり、払拭時間の短縮化を図ることができる。
(12) 第1及び第2の実施形態によれば、第1の払拭部材であるウェブ701は吸液性を備え、第2の払拭部材であるワイパ702(ブレード)は吸液性を備えていないので、異なる性質の払拭部材により異なる払拭効果を得ることができる。
(13) 第3の実施形態によれば、ウェブ701(第1の払拭部材)を払拭位置に移動させ、ノズル面221-1に対して押し付ける押圧部材703と、ウェブ701(第1の払拭部材)を押圧部材703に沿って移動させる巻き取り側ロール706及び巻き取りモータ707と、を備え、押圧部材703が払拭位置から退避位置へ移動完了すると同時もしくは移動完了直後に、巻き取りモータ707と巻き取り側ロール706(搬送部材)によりウェブ701(第1の払拭部材)を巻き取り、ウェブ701の搬送を開始するので、ウェブ701を確実に退避させることができる。
(14) 第3の実施形態によれば、(14)において、巻き取りモータ707と巻き取り側ロール706(搬送部材)は、押圧部材703が退避位置から払拭位置へ移動する際、押圧部材703がウェブ701(第1の払拭部材)に接触する前に、ウェブ701を巻き戻し、ウェブ701にたるみを作るので、押圧部材703を確実に払拭位置に移動させることができる。
(15) 画像形成部200(液体を吐出する装置)が、(1)ないし(14)に記載のヘッド清掃装置を備えているので、(1)ないし(14)に述べた効果を奏する画像形成部、さらには、この画像形成部を備えた画像形成システムを提供することができる。
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。