JP7225197B2 - 電極材料、それを用いた電極層並びに蓄電デバイス、及び電極材料の製造方法 - Google Patents

電極材料、それを用いた電極層並びに蓄電デバイス、及び電極材料の製造方法 Download PDF

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Description

実施形態は、電極材料、それを用いた電極層並びに蓄電デバイス、及び電極材料の製造方法に関する。
電気の有効利用の一環として、充放電可能なデバイスの開発が進められている。充放電可能なデバイスとしては、二次電池、コンデンサ、電気二重層キャパシタといった様々なものが開発されている。
充放電可能なデバイスの性能を示すパラメータとして、パワー密度(W/kg)とエネルギー密度(Wh/kg)がある。パワー密度とは、電気を供給するスピードを示すものである。パワー密度が高いほど瞬発力に優れたデバイスとなる。また、エネルギー密度は、容量を示すものである。エネルギー密度が高いほど容量の高いデバイスとなる。
一般に、二次電池はパワー密度が10W/kg~4000W/kg、エネルギー密度が10-2Wh/kg~200Wh/kgである。コンデンサは、パワー密度が10W/kg~10W/kg、エネルギー密度が10-3Wh/kg~10-2Wh/kgである。電気二重層キャパシタは、パワー密度が10W/kg~10W/kg、エネルギー密度が1Wh/kg~10Wh/kgである。
二次電池、コンデンサ、キャパシタは、パワー密度またはエネルギー密度のどちらか一方に特化した性能を有していた。
近年、蓄電した電気を有効利用することが求められている。例えば、電気自動車では、急発進することがある。急発進に対応するためには、エンジンを動かすのに必要な電気量をすばやく供給する必要がある。二次電池では、パワー密度が低いため、瞬間的な電気供給には不向きである。また、コンデンサやキャパシタでは、エネルギー密度が低いため、電気容量が不足していた。このように従来の充放電可能なデバイスは、パワー密度とエネルギー密度が両立したものはなかった。
国際公開第2016/039157号(特許文献1)では、酸素欠損を設けることによりホッピング伝導特性を付与した酸化タングステンからなる電極材料が開示されている。また、国際公開第2014/142066号(特許文献2)では、六方晶結晶を有する酸化タングステンからなる電極材料が開示されている。
国際公開第2016/039157号 国際公開第2014/142066号
特許文献1や特許文献2の酸化タングステン電極材料は、内部抵抗の低減、初期容量の向上およびサイクル維持率が改善される。しかしながら、サイクル維持率の向上には限界があった。
実施形態は、このような問題に対処するためのものであり、内部抵抗を低減し、サイクル維持率を向上させることができる電極材料に関するものである。
実施形態にかかる電極材料は、酸素欠損およびb軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有する酸化タングステン粉末からなることを特徴とする。酸化タングステン粉末はWO 3-x で表され、x>0である。上記ヘキサゴナルトンネル構造では、酸化タングステン粉末中でヘキサゴナルトンネルが酸化タングステンの結晶構造のb軸方向につながっている状態にある。
実施形態にかかる電極材料の一例を示す図。 実施形態にかかる電極材料の別の一例を示す図。 特許文献2の電極材料を示す図。 蓄電デバイスの構成を示す概念図。
実施形態
実施形態にかかる電極材料は、酸素欠損およびb軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有する酸化タングステン粉末からなることを特徴とするものである。
酸素欠損とは、酸化タングステン結晶格子において、結晶格子を構成する酸素原子の一部が存在しないことを示す。つまり、酸化タングステンをWO3-xで示したとき、x>0であることを示す。また、酸化タングステン粉末は、WO3-xで表され、0.1≦x≦0.3を満たすことが好ましい。
酸素欠損を有することにより酸化タングステン粉末の電気的な抵抗値を下げることができる。これにより、電極層にしたときの内部抵抗を下げることができる。内部抵抗の低減はパワー密度の向上につながる。x値が0.1未満であると酸素欠損を設ける効果が小さい。また、x値が0.3を超えて大きいと、抵抗値は下がるものの蓄電容量が小さくなる。そのため、x値は0.1以上0.3以下の範囲内であることが好ましい。
酸素欠損量の測定は、KMnO溶液を用いて低電荷のW(W4+、W5+)イオンを全て酸化しW6+にするのに要したKMnO量を化学分析で定量することで行う。この分析により、WO3-xに置き換え、x値を求めることができる。このx値が0を超えると、酸素欠損を有すると判断する。
また、実施形態にかかる電極材料は、b軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有する酸化タングステン粉末からなっている。図1に実施形態にかかる電極材料の一例を示した。また、図2に実施形態にかかる電極材料の他の一例を示した。また、図3は特許文献2の電極材料を示す図である。図中、1は酸化タングステン粉末、2はヘキサゴナルトンネル、である。図1はアスペクト比が高い粉末、図2はアスペクト比が低い粉末を例示したものである。
まず、図1を使って説明する。酸化タングステン粉末1には、b軸に沿ってヘキサゴナルトンネル2が形成されている。b軸に沿ってヘキサゴナルトンネル構造を有するとは、b軸方向に一端部から直線的にもう一方の端部までヘキサゴナルトンネル2が形成されている状態を示す。少なくとも1箇所あればよい。また、図1に示したように、ヘキサゴナルトンネル2は複数本存在していても良い。
例えば、特許文献2に記載されている六方晶構造を有する酸化タングステン粉末は図3に示したように、ヘキサゴナルトンネルが直線的に形成されていなかった。ヘキサゴナルトンネルがランダムに形成されており、実施形態のようにb軸に沿ったものではなかった。
b軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有することにより、Liイオンの通り道を直線的にすることができる。これにより、Liイオンの取込み、取出しがスムーズになる。
また、ヘキサゴナルトンネル構造の測定は、走査型透過電子顕微鏡(STEM)にて行うことができる。粉末を分散法により薄膜化した試料を、収差補正機能付走査型透過電子顕微鏡(Cs-corrected STEM)にて加速電圧200Vで観察することにより、ヘキサゴナルトンネルがb軸に沿って直線的に存在することが分かる。実施形態にかかる電極材料は、酸化タングステン粉末に酸素欠損とb軸に沿ってヘキサゴナルトンネル構造を有している。
b軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有するとは、酸化タングステン粉末中でヘキサゴナルトンネルが酸化タングステンの結晶構造のb軸方向につながっている状態を示す。粉末がこのような状態を有するか否かは、例えば、上述した方法により透過電子顕微鏡(TEM)でb軸方向に端から端まで観察することで確認できる。なお、簡易的にはb軸方向の両端と中心をみればよいものとする。
また、ヘキサゴナルトンネル構造がb軸方向に成長していることが好ましい。b軸方向へ成長していると、ヘキサゴナルトンネルが安定する。充放電を繰り返したとしても、ヘキサゴナルトンネル構造が劣化しない。このため、サイクル維持率を向上させることができる。
ヘキサゴナルトンネル構造のb軸方向への成長度合いは、X線回折(XRD)分析により確認できる。電極材料をXRD分析したとき、X線回折スペクトル中の第1ピーク強度比I(010)/I(103)は、ヘキサゴナルトンネル構造のb軸方向への成長度合いと粉末(電極材料)の配向性の両方を示す指標である。I(010)は(010)面に帰属されるピークのピーク強度を指す。I(103)は(103)面に帰属されるピークのピーク強度である。
また、ヘキサゴナルトンネル構造がb軸方向に成長すると電極材料粉末のアスペクト比が大きくなりやすい傾向がある。また、粉末(電極材料)の配向性において配向方向が同じ方向で揃っているほどI(010)/I(103)比は大きくなる。配向性はLiイオンを取り込む際の方向に関与する。
XRDの測定は、Cuターゲット、管電圧40kV、管電流40mA、操作軸2θ/θ、走査範囲(2θ)10°~50°、走査スピード0.1°/秒、ステップ幅0.01°にて行うものとする。
XRD分析したとき、(010)面のピークの強度をI(010)、(103)面のピークの強度をI(103)とする。WO2.72では、(010)面のピークは約23.5°、(103)面のピークは約23.8°に検出される。
(010)とI(103)との比I(010)/I(103)が1以上10以下(より好ましくは1.0以上10.0以下)の範囲内であることが好ましい。b軸方向に十分に成長していると、I(010)/I(103)が1.0以上になる。I(010)/I(103)比が1未満であると、b軸方向に沿った成長が不十分であり得る。成長を促進するためにはI(010)/I(103)比が1.1以上であることが好ましい。また、I(010)/I(103)比は10.0以下であることが好ましい。I(010)/I(103)比が10を超えていると、b軸方向への成長が過剰であり得る。b軸方向へ成長し過ぎると、ヘキサゴナルトンネル構造が長くなる。ヘキサゴナルトンネル構造が長いと、容量は大きくなるものの、充放電の瞬発力はやや低下する。これは、Liイオンの取り出し距離が長くなるためと考えられる。また、配向方向が揃いすぎると、Liイオンの取り込み易さに方向性ができてしまう。配向方向ではLiイオンが取り込み易いが、そうでない方向ではLiイオンは取り込み難くなる。このため、I(010)/I(103)比は1以上10以下(より好ましくは1.0以上10.0以下)、さらには1.1以上9.0以下が好ましい。I(010)/I(103)比は1.1以上、さらには3以上がより好ましい。また、後述するように、I(010)/I(103)比が大きな粉末を粉砕して上記範囲内にすることも有効である。
また、酸化タングステン粉末の真密度が6.0g/cm以上であることが好ましい。真密度とは粉末自身の体積から算出する密度である。粉末の質量をM、容器内容積をN、隙間容積をN、粉末の容積をNとする。真密度=N/M=(N-N)/M、により求めることができる。また、測定はHeガスを用いてボイルの法則を使って行うものとする。測定する際の試料の量は0.8g~3.2g程度とする。
なお、試料の前処理として、120℃で12時間以上の乾燥工程を行うものとする。吸着水を除去することにより、測定値のばらつきを抑制できる。
真密度が6.0g/cm以上であるということは、酸化タングステン粉末の密度が高いことを示す。b軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造があるにも関わらず、真密度が高いということは、粒径が小さくかつヘキサゴナルトンネル構造以外の部分は密度が高い状態であることを示す。また、真密度は6.5g/cm以上8.5g/cm以下が好ましい。WO2.72の真密度の理論値は7.719g/cmとなる。理論値と大きく異なる真密度では酸素欠損量が異なる可能性があり、理論値に近いほうが好ましい。これにより、容量を向上させることができる。
以上のような電極材料は、電極層に用いることが好ましい。電極層は、上記電極材料を具備したことを特徴とするものである。また、電極層は負極層または正極層のどちらか一方または両方であることが好ましい。
電極層の厚さは特に限定されるものではないが、厚さ1μm以上100μm以下が好ましい。電極層の厚さが1μm未満では、電極材料の絶対量が少ないため容量が稼げない。また、厚さ100μmを超えて厚いと、電極層の内部抵抗が大きくなる恐れがある。内部抵抗が大きくなると、充放電のスピードが低下する。
また、電極層の空隙率は10%以上80%以下が好ましい。電極層に空隙を設けることにより、電解液と接触する面積を稼ぐことができる。
なお、電極材料がヘキサゴナルトンネル構造を有しているため、電極層の空隙率がやや低くても電解液との接触面積を確保できる。電極層の空隙率が10%以上50%以下であることがより好ましい。また、電極層の空隙率は20%以上80%以下であり得る。
また、電極層をXRD分析したとき、I(010)/I(103)比が0.1以上3以下の範囲内であることが好ましい。I(010)/I(103)比が0.5以上2.0以下の範囲内であることがより好ましい。電極層についての第2ピーク強度比I(010)/I(103)が0.1以上3以下の範囲内であるということは、電極面に対してb軸がランダムに配列していることを示す。電極層に含まれているb軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有した酸化タングステン粉末のうち粉砕されたものが多いとb軸の配列がランダムになりやすい。また、粉砕粉の割合を多くすることにより、電極材料の電解液への接触面積を大きくすることができる。
前述のように、I(010)/I(103)比はヘキサゴナルトンネル構造のb軸方向への成長度合いと粉末(電極材料)の配向性の両方を示す指標である。電極層に用いられたときにI(010)/I(103)比が0.1以上3以下であるということは、粉末の配向性が弱められていることを示す。電極層は、最外層の電極面だけでなく層内のヘキサゴナルトンネルや空隙においても電解液と接触する。粉末の配向性を弱めることにより、電極層にてLiイオンを取り込む方向をランダムにすることができる。
電極層の電極面に平行に配向しているヘキサゴナルトンネルが多いとI(010)が小さくなる傾向がある。そのため、電極面に対し平行な方向の配向が多いと、I(010)/I(103)比が0.1未満となり得る。電極層に対し、垂直方向に配向しているヘキサゴナルトンネルが多いとI(103)が小さくなる傾向がある。そのため、電極面に対し垂直な方向の配向が多いと、I(010)/I(103)比が3を超え得る。なお、XRD測定の際の測定試料の向きによるI(010)/I(103)比への影響は少ない。ヘキサゴナルトンネルがランダムに配向していることにより、Liイオンを取り込むことができる方向が平面方向及び垂直方向の何れにも限られない。
また、第1ピーク強度比I(010)/I(103)が1以上10以下である粉末を粉砕して、第2ピーク強度比I(010)/I(103)が0.1以上3以下である電極層を形成することが好ましい。第1ピーク強度比I(010)/I(103)が3以上10以下である粉末を粉砕して、0.1以上3以下である第2ピーク強度比I(010)/I(103)を得ることがより好ましい。電極層についてのI(010)/I(103)比を下げるには、粉砕粉の割合を多くすることが有効である。
また、酸化タングステン粉末は、長径の平均粒径が1μm以上5μm以下であることが好ましい。また、短径の平均粒径は0.1μm以上1μm以下が好ましい。また、平均アスペクト比(長径/短径)は1以上50以下の範囲内であることが好ましい。また、平均アスペクト比は1以上20以下であることがさらに好ましい。アスペクト比が小さい酸化タングステン粉末の方が、電極層に用いたときにヘキサゴナルトンネルのランダム配向がより得られ易い。
酸化タングステン粉末の粒径およびアスペクト比の測定は、SEM(走査型電子顕微鏡)観察を用いて行うものとする。SEM写真に写る酸化タングステン粉末の長径、短径を測定する。長径はSEM写真に写る酸化タングステン粉末の最も長い対角線とする。短径は、長径の中心から直角に引いた線に沿う幅を示す。アスペクト比は長径を短径で割った値である。これらの測定を100粒の粒子に対して行い、それらの平均値をそれぞれ長径の平均粒径、短径の平均粒径、平均アスペクト比とする。
図1及び図2では酸化タングステン粉末において結晶格子のb軸が粉末粒子の長径に沿っている例を示したが、酸化タングステンの粒子形状と結晶格子の向きとの関係は図示したものに限られない。b軸方向への酸化タングステン結晶の径は、粉末粒子の長径にも短径にも限られない。
また、粉砕後の酸化タングステン粉末は、BET比表面積が10m/g以上30m/g以下の範囲内であることが好ましい。粉砕後の粉末は、一次粒子と二次粒子が混在した状態となり易い。このため、BET比表面積を用いることが好ましい。BET比表面積を測定する際の試料は1gとする。
また、酸素欠損およびb軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有する酸化タングステン粉末からなる電極材料が、50wt%以上100wt%以下電極層に含有されていることが好ましい。電極層を構成する電極材料の内、実施形態にかかる酸化タングステン粉末が50質量%未満になると、効果が低下する。そのため、実施形態にかかる酸化タングステン粉末からなる電極材料の含有量は、50質量%以上、さらには70質量%以上であることが好ましい。
また、実施形態にかかる電極材料以外の添加物としては、b軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有さない酸化タングステン粉末が挙げられる。このような酸化タングステン粉末としては、例えば、特許文献1または特許文献2に示したものが挙げられる。また、酸化モリブデン粉末や炭素粉末を用いても良い。炭素粉末としては、アセチレンブラック粉末が挙げられる。
以上のような電極層は、蓄電デバイスに好適である。蓄電デバイスの例としては、負極電極と正極電極が非導電性層を介して対向し、電解液を用いたものを挙げることができ、この例のデバイスは、酸化還元反応やイオンの吸着・脱離によって電荷を蓄え(充電)る反応、放出(放電)する反応を繰り返し可能なデバイスである。
実施形態にかかる電極材料では、酸化還元反応およびイオンの吸着・脱離の両方が行える。そのため、当該電極材料を様々な蓄電デバイスに適用できる。なお、酸化還元反応の有無はサイクリックボルタンメトリーで確認できる。一定の走査電圧で充放電させたとき、酸化還元反応があると特定の電圧でピークが観察される。イオン吸着・脱離については、ピークは観測されない。
図4に蓄電デバイスの構成を示す概念図を示した。図中、10は蓄電デバイス、11は負極側電極層、12は負極層、13はセパレータ層、14は正極層、15は正極側電極層、である。図4は、セル部分の構造を示したものである。
負極側電極層11および正極側電極層15は導電性を有する材料から形成されている。導電性を有する材料としては、アルミニウム、銅、ステンレス、白金、ITO、IZO、FTO、SnO、InOなどが挙げられる。また、厚さ5μm以上50μm以下の範囲内が好ましい。
また、負極層12または正極層14のいずれか一方は実施形態にかかる電極層である。また、実施形態にかかる電極層は負極層12に用いることが好ましい。
また、正極層14には、LiCoO、LiMnO、LiNiOなどのLi複合酸化物を用いることが好ましい。Li対極基準で電位が卑なものが負極、貴なものが正極になる。前述の正極層との組合せでは、実施形態にかかる電極層は負極層になる。前記Li複合酸化物は正極活物質として汎用的なものである。言い換えると、負極層を実施形態のものに変えることによって蓄電デバイスとしての性能を付与することができるのである。
また、セパレータ層13は、負極層12と正極層14との間に一定の間隔を設けるためのものである。セパレータ層13は、ポリエチレン多孔質層、ポリプロピレン多孔質層などの多孔質層が挙げられる。セパレータ層13には、Liイオンを含む電解液を含浸する。電解液には、有機溶媒やイオン液体などが適用できる。有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマブチロラクトン(γ-BL)、バレロラクトン(VL)およびこれらの混合溶媒が挙げられる。また、電解質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiCFSOおよびこれら混合電解質が挙げられる。
蓄電デバイスは、上記のような積層構造を有するセルを有している。また、容量を稼ぐために、このセル構造を多層化したり、長尺化して巻回する構造を行っても良い。
このような蓄電デバイスは、車両、電子機器、機械設備に用いることが好ましい。
車両としては、自動車、電鉄などが挙げられる。自動車には、ハイブリット自動車、電気自動車などのモータで駆動する自動車が挙げられる。また、自動車は、自家用車、バス、クレーン車、トラックなど特に限定されるものではない。
また、電子機器は、電気で駆動する装置を示す。また、機械設備は稼働する設備がついたものである。機械設備としては、エレベータ、クレーン、ロボット、医療機器、工作機械から選ばれる一種が挙げられる。
次に、実施形態にかかる電極材料の製造方法について説明する。実施形態にかかる電極材料は上記構成を有していれば、その製造方法は限定されるものではないが、歩留り良く得るための製造方法として次のものが挙げられる。
酸化タングステン粉末を得るための方法として昇華工程を利用する方法が挙げられる。昇華工程は、プラズマ処理、アーク放電処理、レーザ処理または電子線処理のいずれか1種であることが好ましい。プラズマ処理としては、誘導結合型プラズマ処理が好ましい。タングステン粉末または酸化タングステン粉末を原料粉末とし、プラズマ処理を施していく。プラズマ処理は、燃焼炎に粉末を投入する。大気などの酸素含有雰囲気中で処理することにより、酸化タングステン粉末を得ることができる。昇華工程を利用することにより、三酸化タングステン(WO)粉末を得ることができる。WO粉末を作製することにより、酸素欠損量を制御し易くなる。
三酸化タングステン(WO)粉末が得られるのであれば、液相合成などの別の方法で作製してもよい。
また、得られたWO粉末を酸素含有雰囲気中で熱処理することも有効である。昇華工程を利用して酸化タングステン粉末を作製した場合、出来上がった酸化タングステン粉末の酸素量がばらつく恐れがある。これは、燃焼炎の内側と外側で温度が異なるため、酸化度合いにばらつきが生じることに起因する。このため、酸素含有雰囲気で熱処理することにより、酸素欠損の無いWOにすることができる。これにより、粒径が小さく、結晶性のよいWO粉末を得ることができる。
次に、非酸化性雰囲気中熱処理を行う。非酸化性雰囲気としては、窒素含有ガス、水素含有ガスまたはそれらの混合ガスが好ましい。特に、水素と窒素の混合ガスであることが好ましい。混合ガス濃度は、水素1vol%以上15vol%以下、窒素99vol%以下85vol%以上の範囲内であることが好ましい。混合ガス濃度が、水素1vol%以上10vol%以下、窒素99vol%以下90vol%以上の範囲内であることがより好ましい。
また、熱処理温度は600℃以上900℃以下の範囲内であることが好ましい。熱処理温度は、例えば、600℃以上700℃以下であり得る。また、保持時間は2分~10分間の範囲内であることが好ましい。これにより、酸素欠損を安定した量で導入することができる。特に、前述の水素と窒素の混合ガスであると、酸素欠損量を制御し易い。酸素欠損とは、結晶格子の酸素が抜ける現象である。混合ガスであると、短時間で目的とする酸素欠損を導入しやすく、粒成長を抑制できる。
また、非酸化性雰囲気中熱処理の温度と時間を制御することにより、b軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を形成することができる。熱処理温度または時間が範囲外であると、酸素欠損量が減少・増大し、ヘキサゴナルトンネル構造が短くなったり、ランダムな配向となる。
また、非酸化性雰囲気中熱処理の保持時間までの昇温速度を2℃/min以上にすることが好ましい。また、保持時間後の冷却速度を5℃/min以下にすることが好ましい。昇温速度を2℃/min以上と早めることにより、保持時間までの到達時間を早くすることができる。これにより、昇温工程中に急激に粒成長をするのを防ぐことができる。昇温速度の上限は10℃/min以下が好ましい。昇温速度が早すぎると、WO粉への熱の伝わり方にばらつきが生じる恐れがある。このため、昇温速度は2℃/min以上10℃/min以下、さらには3℃/min以上6℃/min以下であることが好ましい。
また、冷却速度は5℃/min以下にすることが好ましい。冷却速度を遅くすることにより、b軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造の成長を促進させることができる。熱の伝わり方を安定にし、b軸方向への成長の度合いを均一化させることができる。これにより、I(010)/I(103)比が1以上10以下(好ましくは、1.0以上10.0以下)になった酸化タングステン粉末とすることができる。また、冷却速度を2℃/min以下にすることにより、I(010)/I(103)比を3以上10以下、さらには5.0以上10.0以下にすることができる。なお、冷却速度の下限は0.1℃/min以上であることが好ましい。あまり、冷却速度が遅いと、b軸方向へ成長し過ぎて、I(010)/I(103)比が10.0を超える恐れがある。10.0を超えるとヘキサゴナルトンネル構造がランダム配向に形成され易くなる。
また、熱の負荷を均一にすることにより、真密度6.0g/cm以上の酸化タングステン粉末を得ることができる。
以上の工程により、酸素欠損およびb軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有する酸化タングステン粉末を製造することができる。
次に、得られた酸化タングステン粉末を用いて電極層を形成する方法を説明する。電極層は、酸素欠損およびb軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有する酸化タングステン粉末を50wt%以上100wt%以下になるようにする。
他の成分としては、b軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有さない酸化タングステン粉末が挙げられる。また、酸化モリブデン粉末や炭素粉末を用いても良い。炭素粉末としては、アセチレンブラック粉末が挙げられる。
また、酸素欠損およびb軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有する酸化タングステン粉末を粉砕して用いることも有効である。酸化タングステン粉末を粉砕することにより、I(010)/I(103)比を0.1以上3以下、さらには0.5以上2.0以下、またさらには1.1以上2.0以下に制御し易くなる。また、I(010)/I(103)比が3以上10以下または5.0以上10.0以下の酸化タングステン粉末を粉砕することにより、I(010)/I(103)比を0.1以上3以下に制御し易くなる。
また、粉砕工程には、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、及びブレードミル、並びに混練機での混錬などを用いることができる。
ボールミルとビーズミルは、メディアを混合して粉砕する方法である。ボールミルでは、回転容器内でのメディアの自然落下を利用して粉砕する。ビーズミルでは、攪拌装置で強制的に発生させた遠心力でメディアを攪拌して粉砕する。
ジェットミルは、ノズルから噴射される高圧ガスを利用して粉砕する方法である。
ブレードミルは、ブレードを回転させながら粉砕する方法である。ブレードを複数用いたり、ブレードに粉砕刃を設けることにより粉砕力を向上させることができる。
混練機は、混ぜることや練ることを同時に行うことができる。ロータに複数の羽を設けることにより粉砕力を向上させることができる。混練機は、他の材料と混合して粉砕する工程に有効である。他の材料としては、酸化タングステン以外の金属酸化物粉末、カーボン粉末、バインダなどが挙げられる。酸化タングステン以外の金属酸化物粉末としては、例えば、酸化モリブデン、酸化ニオブを用いることができる。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)を用いることが出来る。これら他の材料からなる群より選択される1以上を酸化タングステン粉末と混合してもよい。また、混錬機を用いた方法以外の粉砕においても、他の材料と酸化タングステン粉末とを混合してもよい。
粉砕工程では、I(010)/I(103)比が3以上10以下の酸化タングステン粉末を原料に用いてI(010)/I(103)比が0.1以上3以下になるように粉砕することが有効である。実施形態にかかる酸化タングステン粉末を粉砕する方法は特に限定されるものではないが、例えば次のような方法が挙げられる。ボールミルを用いる場合、回転容器の容積を100vol%としたとき、原料粉末を30vol%以上40vol%以下と、メディアを20vol%以上40vol%以下と、を混合する。また、回転速度50rpm以上200rpm以下で2時間以上10時間以下粉砕することが有効である。また、メディアとしては、φ3.0mmのジルコニアボールが挙げられる。このような粉砕方法であれば、I(010)/I(103)比を0.1以上3以下に制御し易い。
酸化タングステン粉末をペースト化して、塗布、乾燥することにより電極層とすることができる。
蓄電デバイス10のセル構造は、図4に示したように、負極側電極層11、負極層12、セパレータ層13、正極層14、正極側電極層15を形成していく。
また、負極側電極層11は、図示しない絶縁基板上に設ける。絶縁基板としては、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂基板などが挙げられる。また、樹脂基板であれば、巻回構造を取れるので好ましい。
また、負極側絶縁基板上に負極側電極層11を形成した後、負極層12を形成する。また、正極側絶縁基板上に正極側電極層15を形成した後、正極層14を形成する。負極層12と正極層14の間にセパレータ層13を挟みこむ。セパレータ層13に電解液を注入する。その後、液漏れしないように封止する。
以上により、蓄電システムを作製することができる。
(実施例)
(実施例1~5、比較例1~2)
原料粉末として平均粒径1.5μmの酸化タングステン粉末を用意した。この原料粉末に、プラズマ処理を行った。プラズマ処理では、空気をキャリアガスとして誘導結合プラズマ炎に平均流速1.2m/sとなるように噴霧した。この工程により、原料粉末を昇華させながら酸化反応を行って酸化タングステン粉末を製造した。
次に、非酸化性雰囲気中熱処理を行った。熱処理条件は表1に示した通りである。実施例1~5は好ましい製造条件を満たしたものである。比較例1は温度が高い条件である。なお、水素と窒素の混合ガスは、水素が5vol%、窒素が95vol%のものとした。
また、比較例2は昇温速度および冷却速度が好ましい条件を外れたものである。また、比較例3は特許文献2の実施例1である。
Figure 0007225197000001
実施例および比較例にかかる酸化タングステン粉末に関して、酸素欠損量、b軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造の有無、真密度、b軸方向へ成長の度合いを調べた。
酸素欠損量の測定は、KMnO溶液を用いて低電荷のW(W4+、W5+)イオンを全て酸化しW6+にするのに要したKMnO量を化学分析で定量することで行った。この分析により、WO3-xに置き換え、x値を求めた。
b軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造の有無はSTEMにより分析した。
また、真密度の測定は、Heガスを用いてボイルの法則を使って行った。真密度の測定は試料3gで行った。
また、b軸方向への成長の度合いは、XRDによりI(010)/I(103)比を求めた。XRDは、Cuターゲット、管電圧40kV、管電流40mAとした。走査角(2θ)で10°~50°を測定した。(010)面のピークは約23.5°、(103)面のピークは約23.8°に検出されたものをそれぞれI(010)、I(103)比とした。その結果を表2に示す。
また、実施例および比較例にかかる酸化タングステン粉末では、いずれも長径の平均粒径が1μm以上5μm以下の範囲内、短径の平均粒径が0.1μm以上1μm以下の範囲内、平均アスペクト比が1以上50以下の範囲内であった。
Figure 0007225197000002
実施例にかかる酸化タングステン粉末は、酸素欠損量が0.1≦x≦0.3であり、b軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有していた。また、真密度は6.0g/cm以上と高かった。また、I(010)/I(103)比は2.0以上となっており、b軸方向へ適度に成長していることが確認された。
但し、実施例1ではI(010)が検出されなかった。これは、WO2.83ではI(010)が検出されないためである。そのため「-」と表示した。
それに対し、比較例のものはb軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造は観察されなかった。いずれも、ヘキサゴナルトンネルがランダム配向となっていた。また、比較例1~3では、I(010)又はI(103)が検出されなかった。そのため「-」と表示した。
また、比較例1では保持温度が高いため、酸素欠損量が多く導入された。
比較例3は昇華工程を使っていないため真密度は7.1g/cmと低下した。
また、比較例1のように非酸化性雰囲気中の保持温度が高い場合や、比較例2のように水素を含まない不活性雰囲気中で処理したり昇温速度または冷却速度が好ましい範囲を外れていると、I(010)/I(103)比は検出されなかった。また、比較例3のように非酸化性雰囲気中での熱処理自体を行っていないものでも、I(010)/I(103)比が検出されなかった。
次に、実施例および比較例にかかる酸化タングステン粉末を用いて電極層を作製した。
まず、実施例1~3にかかる酸化タングステン粉末を粉砕して、I(010)/I(103)比を表3に示したように変えたものを用意した。
粉砕には、ボールミルを用いた。ボールミルは、回転速度50rpm~200rpmで、2時間~10時間行った。また、メディアにはφ3.0mmのジルコニアボールを用いた。
また、粉砕後の酸化タングステン粉末のBET比表面積は10m/g以上30m/g以下の範囲内であった。
また、実施例4-4は実施例1の酸化タングステン粉末を20wt%、実施例4の酸化タングステン粉末を80wt%混合したものである。また、実施例4-5は比較例1の酸化タングステン粉末を30wt%、実施例4の酸化タングステン粉末を70wt%混合したものである。
Figure 0007225197000003
また、電極層は表4に示したものとした。また、酸化タングステン粉末にアセチレンブラックを混合したペーストを作製し、塗布、乾燥、プレスを行った。また、実施例および比較例は、酸化タングステン粉末を90質量部、アセチレンブラックを10質量部として混合した。
Figure 0007225197000004
負極側電極層11および正極側電極層15は厚さ15μmの導電性コートアルミニウム箔とした。また、実施例および比較例にかかる電極層は負極層12として用いた。また、正極層14はLiCoO粉末を用いた。正極層の目付け量は負極層の電気容量に対して十分に余裕のある量を設けた。電極面積は負極・正極ともにφ16mm(約2cm)とした。
また、セパレータ層13は、ポリエチレン多孔質層(厚さ20μm)を用いた。負極側電極層11、負極層12、セパレータ層13、正極層14、正極側電極層15の積層体をアルミニウム製セル容器に組み込んだ。その後、電解液を含浸した後、脱泡処理し、密閉した。また、電解液はプロピレンカーボネート(PC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の混合液とした。また、電解質はLiPFとLiBFの混合を用いた。
これにより、蓄電デバイスを作製した。
作製した蓄電デバイスの初期放電容量、内部抵抗、レート特性を測定した。初期放電容量は蓄電デバイスの充電電圧を2.5V、放電電圧を1.5Vに設定し、定電流(0.1mA)で実施した。得られた放電容量から活物質当りの放電容量(mAh/g)を算出した。内部抵抗測定はSOC(State of Charge)50%とし、交流インピーダンス法にて1kHz(振幅10mV)での直流抵抗(Ω・cm)を求めた。また、レート特性は放電電流を1Cから100Cまで変化させ、1C放電時の容量に対して100Cでの放電容量維持率を測定した。レート(C)は理論容量に1時間で達する電気量を単位とするものである。
測定結果を表5に示す。
Figure 0007225197000005
上記のように蓄電デバイスは、内部抵抗が低く、レート特性が良いものが得られた。次に、負極・正極電極を積層したラミネート型セルを作製し、蓄電デバイスのパワー密度(W/kg)、エネルギー密度(Wh/kg)を測定し、サイクル維持率を測定した。
蓄電デバイスの単セルについての重量で表すパワー密度、即ち重量パワー密度P(W/kg)はP(W/kg)=(V -V )/4RM、で求められる。
ここで、Vは放電開始電圧(V)、Vは放電終了電圧(V)、Rは内部抵抗(Ω)、Mはセル重量(kg)である。
また、エネルギー密度E(Wh/kg)は、E(Wh/kg)=(Ah×Vave)/Mで求められる。ここでAhは0.2Cレートでの放電容量(Ah)、Vaveは放電平均電圧、Mはセル重量(kg)である。
また、サイクル維持率は、雰囲気温度を45℃とし、5Cレートでの初期放電容量を100%とし、5000サイクル後の容量維持率を測定した。
その結果を表6に示す。
Figure 0007225197000006
表から分かる通り、パワー密度やエネルギー密度が高く、また、サイクル維持率も高かった。これは、酸素欠損とb軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有した酸化タングステン粉末からなる電極材料を用いているためである。
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 酸素欠損およびb軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有する酸化タングステン粉末からなる電極材料。
[2] 前記酸化タングステン粉末は、WO 3-x で表され、0.1≦x≦0.3を満たす、[1]記載の電極材料。
[3] X線回折スペクトルにおいて(010)面に帰属されるピーク強度I (010) と(103)面に帰属されるピーク強度I (103) との第1ピーク強度比I (010) /I (103) が1以上10以下である、[1]又は[2]に記載の電極材料。
[4] X線回折スペクトルにおいて(010)面に帰属されるピーク強度I (010) と(103)面に帰属されるピーク強度I (103) との第1ピーク強度比I (010) /I (103) が3以上10以下である、[1]又は[2]に記載の電極材料。
[5] 前記酸化タングステン粉末の真密度が6.0g/cm 以上である、[1]ないし[4]のいずれか1つに記載の電極材料。
[6] [1]ないし[5]のいずれか1項に記載の電極材料を具備する電極層。
[7] 前記電極層についてのX線回折スペクトルにおいて(010)面に帰属されるピーク強度I (010) と(103)面に帰属されるピーク強度I (103) との第2ピーク強度比I (010) /I (103) が0.1以上3以下である、[6]に記載の電極層。
[8] 前記電極材料を50wt%以上100wt%以下含有する、[6]又は[7]に記載の電極層。
[9] [6]ないし[8]のいずれか1つに記載の電極層を具備する蓄電デバイス。
[10] X線回折スペクトルにおいて(010)面に帰属されるピーク強度I (010) と(103)面に帰属されるピーク強度I (103) との第1ピーク強度比I (010) /I (103) が1以上10以下である酸化タングステン粉末を粉砕して0.1以上3以下の第2ピーク強度比I (010) /I (103) を得ることを含む、電極材料の製造方法。
[11] 前記酸化タングステン粉末はWO 3-x で表され、0.1≦x≦0.3を満たす、[10]に記載の電極材料の製造方法。
[12] 前記酸化タングステン粉末を粉砕する際、酸化タングステン以外の金属酸化物粉末、カーボン粉末、及びバインダからなる群より選択される1以上を前記酸化タングステン粉末と混合する、[10]又は[11]に記載の電極材料の製造方法。

Claims (12)

  1. 酸素欠損およびb軸に沿ったヘキサゴナルトンネル構造を有する酸化タングステン粉末からなり、前記酸化タングステン粉末はWO 3-x で表され、x>0であり、前記ヘキサゴナルトンネル構造では、前記酸化タングステン粉末中でヘキサゴナルトンネルが酸化タングステンの結晶構造のb軸方向につながっている状態にある、電極材料。
  2. 前記酸化タングステン粉末は0.1≦x≦0.3を満たす、請求項1記載の電極材料。
  3. X線回折スペクトルにおいて(010)面に帰属されるピーク強度I(010)と(103)面に帰属されるピーク強度I(103)との第1ピーク強度比I(010)/I(103)が1以上10以下である、請求項1又は請求項2に記載の電極材料。
  4. X線回折スペクトルにおいて(010)面に帰属されるピーク強度I(010)と(103)面に帰属されるピーク強度I(103)との第1ピーク強度比I(010)/I(103)が3以上10以下である、請求項1又は2に記載の電極材料。
  5. 前記酸化タングステン粉末の真密度が6.0g/cm以上である、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電極材料。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電極材料を具備する電極層。
  7. 前記電極層についてのX線回折スペクトルにおいて(010)面に帰属されるピーク強度I(010)と(103)面に帰属されるピーク強度I(103)との第2ピーク強度比I(010)/I(103)が0.1以上3以下である、請求項6に記載の電極層。
  8. 前記電極材料を50wt%以上100wt%以下含有する、請求項6又は請求項7に記載の電極層。
  9. 請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の電極層を具備する蓄電デバイス。
  10. X線回折スペクトルにおいて(010)面に帰属されるピーク強度I(010)と(103)面に帰属されるピーク強度I(103)との第1ピーク強度比I(010)/I(103)が1以上10以下である酸化タングステン粉末を粉砕して0.1以上3以下の第2ピーク強度比I(010)/I(103)を得ることを含む、電極材料の製造方法。
  11. 前記酸化タングステン粉末はWO3-xで表され、0.1≦x≦0.3を満たす、請求項10に記載の電極材料の製造方法。
  12. 前記酸化タングステン粉末を粉砕する際、酸化タングステン以外の金属酸化物粉末、カーボン粉末、及びバインダからなる群より選択される1以上を前記酸化タングステン粉末と混合する、請求項10又は請求項11に記載の電極材料の製造方法。
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