JP7224178B2 - ミシン及び返し縫いの制御プログラム - Google Patents

ミシン及び返し縫いの制御プログラム Download PDF

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Description

本発明は、ミシン及び返し縫いの制御プログラムに関する。
下記特許文献1には、ミシンの返し縫い制御装置が開示されている。この返し縫い制御装置では、始め自動返し縫い制御、ソフトスタート制御のそれぞれが実行される。始め自動返し縫い制御では、予め設定された返し縫い針数で返し縫いソレノイドが駆動され、送り歯の送り方向を正方向の送りから逆方向の送りに逆転させる返し縫いが、通常の縫製前に行われる。ソフトスタート制御では、ミシン縫製開始時において、予め設定されたソフトスタート針数の縫製が、通常の縫製速度よりも遅いソフトスタート縫製速度により行われる。
特開2009-240600号公報
ミシンにおいて、直線模様やジグザグ模様の返し縫いが実行されると、強固なほつれ止めを兼ねた縫製を行うことができる。
ところで、ミシンの送り機構の機械的構造によっては、通常の縫製を行う一針分の最大前進送り量に対して、返し縫いを行う一針分の最大後進送り量が一致しない場合がある。例えば、最大前進送り量に対して、最大後進送り量が小さい場合において、前進送り量が最大後進送り量に比し大きいと、前進縫いの縫い目と返し縫いの縫い目とにずれが生じてしまう。このため、縫製の見栄えが悪く、改善の余地があった。
ここで、最大後進送り量の範囲内において前進送り量は調整可能ではあるが、前進縫いの縫い目が小さくなってしまい、ミシンとしての使い勝手が悪く、ミシンの性能が制限されてしまう。
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、返し縫いの見栄えを向上させることができるミシン及び返し縫いの制御プログラムを提供する。
本発明の第1実施態様に係るミシンは、前進縫いの一針分の前進送り量を設定する送り量設定部と、送り量設定部により設定される前記前進送り量と送り機構により決定される返し縫いの一針分の最大後進送り量とを比較し、前進送り量が前記最大後進送り量よりも大きいとき、一針分の前進送り量と一致するように、複数針分の後進送り量の総量を調整し、前記前進送り量が前記最大後進送り量と同一か又は小さいとき、一針分の前進送り量と一致するように、後進送り量を調整する送り量調整部と、を備えている。
本発明の第実施態様に係るミシンでは、第1実施態様に係るミシンにおいて、送り量調整部は、複数針分の後進送り量の総量におけるそれぞれの後進送り量を等間隔とする。
本発明の第実施態様に係るミシンでは、第1実施態様に係るミシンにおいて、送り量調整部は、複数針分の後進送り量の総量におけるそれぞれの後進送り量を不等間隔とする。
本発明の第実施態様に係るミシンでは、第1実施態様~第実施態様のいずれか1つに係るミシンにおいて、返し縫いを指示する返し縫い指示部を更に備え、返し縫い指示部からの指示により、送り量調整部において調整される複数針分の後進送り量の総量の返し縫いが行われる。
本発明の第実施態様に係る返し縫いの制御プログラムは、送り量設定部と、送り量調整部とを備えたミシンの返し縫い制御方法をコンピュータに実行させる返し縫いの制御プログラムであって、前記送り量設定部が、前進縫いの一針分の前進送り量を設定する工程と、前記送り量調整部が、前記送り量設定部により設定される前記前進送り量と送り機構により決定される返し縫いの一針分の最大後進送り量とを比較し、前記前進送り量が前記最大後進送り量よりも大きいとき、一針分の前進送り量と一致するように、複数針分の後進送り量の総量を調整し、前記前進送り量が前記最大後進送り量と同一か又は小さいとき、一針分の前進送り量と一致するように、後進送り量を調整する工程と、を備えている。
本発明によれば、返し縫いの見栄えを向上させることができるミシンを提供することができる。
本発明の第1実施の形態に係るミシンの一部のブロック構成図である。 (A)は第1実施の形態に係るミシンを用いて縫製された前進直線縫いの縫い目及び後進直線縫いの縫い目を概略的に示す平面図、(B)は比較例に係る図2(A)に対応する平面図である。 (A)は第1実施の形態に係るミシンを用いて縫製された前進ジグザグ縫いの縫い目及び後進ジグザグ縫いの縫い目を概略的に示す平面図、(B)は比較例に係る図3(A)に対応する平面図である。 第1実施の形態に係るミシンの返し縫いの制御方法を説明するフローチャートである。 本発明の第2実施の形態に係るミシンを用いて縫製された前進直線縫いの縫い目及び後進直線縫いの縫い目を概略的に示す平面図である。 本発明の第3実施の形態に係るミシンを用いて縫製された前進直線縫いの縫い目及び後進直線縫いの縫い目を概略的に示す図5に対応する平面図である。
[第1実施の形態]
以下、図1~図4を用いて、本発明の第1実施の形態に係るミシン及び返し縫いの制御プログラムについて説明する。
(ミシン1の構成)
図1に示されるように、本実施の形態に係るミシン1は、制御ユニット2と、駆動ユニット3とを含んで構成されている。
制御ユニット2は、中央演算処理ユニット(CPU)21と、不揮発性メモリ(ROM:Read Only Memory)22と、揮発性メモリ(RAM:Random Access Memory)23と、操作部24と、送り量調整部25とを備えている。さらに、制御ユニット2は、ミシンモータ制御部26と、振幅・送りモータ制御部27とを備えている。制御ユニット2の中央演算処理ユニット21等の各構成要素は共通バス4を介して相互に接続されている。
一方、駆動ユニット3は、ミシンモータ31と、振幅・送りモータ32と、送り機構33とを含んで構成されている。
中央演算処理ユニット21は、制御プログラムに従ってミシン1の全体の動作を制御するコンピュータとして、制御ユニット2に組み込まれている。不揮発性メモリ22には、制御プログラムが格納され、本実施の形態では更に返し縫いの制御プログラムが格納されている。揮発性メモリ23には、中央演算処理ユニット21により実行された処理情報が一時的に格納され、又制御プログラム以外の各種プログラムや処理情報が格納されている。
操作部24は、例えばタッチパネルを含んで構成され、ミシン1を操作する入力デバイスとして、又は操作内容や処理内容を表示する出力デバイスとして構成されている。操作部24は、送り量設定部241と、返し縫い指示部242とを更に備えている。
送り量設定部241では、縫製作業の前進縫いの一針分の前進送り量を設定することができる。ユーザの操作により、送り量設定部241では、最大前進送り量、例えば 5 mmまでの範囲内において前進送り量を設定することができる。
返し縫い指示部242では、ユーザの操作により、縫製作業の返し縫いを指示することができる。返し縫いが指示されると、ミシン1は後進縫いへ切り替わる。
送り量調整部25では、送り量設定部241により設定される前進縫いの前進送り量と、返し縫いの一針分の最大後進送り量とが比較される。一針分の最大後進送り量は、駆動ユニット3の送り機構33の機械的構造により決定されている。本実施の形態では、一針分の最大後進送り量は、前進縫いの一針分の最大前進送り量に比し小さく、例えば 4 mm とされ、最大後進送り量までの範囲内において後進縫いの後進送り量を設定することができる。
さらに、送り量調整部25では、送り量設定部241により設定される一針分の前進送り量が一針分の最大後進送り量よりも大きいとき、一針分以上の前進送り量の総量と一致するように、複数針分の後進送り量の総量を調整することができる。この送り量調整部25による調整方法について詳しく説明する。
図2(A)には、前進直線縫い5Sと、便宜的にこの前進直線縫い5Sの右側に並べた、返し縫いである後進直線縫い6Sとを、上方から見た概略図が示されている。前進直線縫い5S、後進直線縫い6Sのそれぞれは、実際には上下に重なっているが、実施の形態の理解を助けるために、あえて左右に並べて示されている。前進直線縫い5Sは、前進縫い方向Fへ向かって一定間隔において一針分P1の縫い目51を複数配置することにより形成されている。一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量は、送り量設定部241において設定される。
送り量調整部25では、一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量が、一針分の最大後進送り量よりも大きいか否かが比較され、かつ、判定される。前進送り量が最大後進送り量よりも大きいと判定されたとき、送り量調整部25では、一針分P1以上の前進送り量の総量と一致するように、複数針分の後進送り量の総量が調整される。
ここでは、一針分P1の縫い目51の前進縫い方向Fの長さが、ほぼ2分割された一針分P2の長さを有する縫い目61が、後進縫い方向Bへ向かって一定間隔において配置されている。一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量の総量は、2つの一針分P2の縫い目61(二針分の縫い目61)に相当する後進送り量の総量に一致されている。
つまり、送り量調整部25では、最大後進送り量の範囲内において、一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量の総量に一致させて、複数の一針分P2の縫い目61に相当する後進送り量となるように、後進送り量が調整される。表現を代えれば、一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量の総量に一致させて、複数の一針分P2の縫い目61に相当する後進送り量を1セットSeとして、後進送り量が調整される。
また、送り量調整部25では、複数の一針分P2の縫い目61に相当する後進送り量の総量、例えば1セットSeにおける、一針分P2の縫い目61に相当するそれぞれの後進送り量は等間隔に調整されている。
図2(B)には、本実施の形態における送り量調整部25を持たない比較例に係るミシンにより形成された前進直線縫い5Sと後進直線縫い7Sとを上方から見た、図2(A)に対応する概略図が示されている。前進直線縫い5Sは、前述と同様に、前進縫い方向Fへ向かって一定間隔において一針分P1の縫い目51を複数配置することにより形成されている。
一方、後進直線縫い7Sは、後進縫い方向Bへ向かって一定間隔において、最大後進送り量に相当する一針分P3の縫い目71を複数配置することにより形成されている。
比較例に係るミシンにより形成された後進直線縫い7Sの縫い目71は、前進直線縫い5Sの縫い目51に対して一致していない。
また、図3(A)には、前進ジグザグ縫い5Zと返し縫いである後進ジグザグ縫い6Zとを上方から見た、図2(A)に対応する概略図が示されている。前進ジグザグ縫い5Zは、前進縫い方向Fへ向かい、かつ、一定の振幅において左右の折り返し毎に一針分P1の縫い目52を複数配置することにより形成されている。一針分P1の縫い目52の前進送り量は、送り量設定部241において設定される。
送り量調整部25では、一針分P1の縫い目52に相当する前進送り量が、一針分の最大後進送り量よりも大きいか否かが比較され、かつ、判定される。前進送り量が最大後進送り量よりも大きいと判定されたとき、送り量調整部25では、一針分P1以上の前進送り量の総量と一致するように、複数針分の後進送り量の総量が調整される。
前述の後進直線縫い6Sと同様に、一針分P1の縫い目52の前進縫い方向Fに対して傾斜する方向の長さが、ほぼ2分割された一針分P2の長さを有する縫い目62が、後進縫い方向Bに対して傾斜する方向へ向かって一定間隔において配置されている。一針分P1の縫い目52に相当する前進送り量の総量は、2つの一針分P2の縫い目62(二針分の縫い目62)に相当する後進送り量の総量に一致されている。
つまり、送り量調整部25では、最大後進送り量の範囲内において、一針分P1の縫い目52に相当する前進送り量の総量に一致させて、複数の一針分P2の縫い目62に相当する後進送り量となるように、後進送り量が調整される。ここでも、一針分P1の縫い目52に相当する前進送り量の総量に一致させて、複数の一針分P2の縫い目62に相当する後進送り量を1セットSeとして、後進送り量が調整される。
図3(B)には、本実施の形態における送り量調整部25を持たない比較例に係るミシンにより形成された前進ジグザグ縫い5Zと後進ジグザグ縫い7Zとを上方から見た、図3(A)に対応する概略図が示されている。前進ジグザグ縫い5Zは、前述と同様に、前進縫い方向Fへ向かい、かつ、一定の振幅において左右の折り返し毎に一針分P1の縫い目52を複数配置することにより形成されている。
一方、後進ジグザグ縫い7Zは、後進縫い方向Bへ向かい、かつ、一定の振幅において左右の折り返し毎に、最大後進送り量に相当する一針分P3の縫い目72を複数配置することにより形成されている。
比較例に係るミシンにより形成された後進ジグザグ縫い7Zの縫い目72は、前進ジグザグ縫い5Zの縫い目52に対して一致していない。
図1に戻って、ミシンモータ制御部26は、中央演算処理ユニット21からの指令に基づいて、駆動ユニット3のミシンモータ31を回転駆動させる。ミシンモータ31が回転駆動されると、送り機構33を介して、図示省略の針棒が上下に駆動される。
振幅・送りモータ制御部27は、同様に中央演算処理ユニット21からの指令に基づいて、振幅・送りモータ32を回転駆動させる。振幅・送りモータ32の振幅モータが回転駆動されると、送り機構33を介して、図示省略の針棒を左右に振幅させることができる。また、振幅・送りモータ32の送りモータが回転駆動されると、送り機構33を介して、布、皮等の被縫製体の前進送り或いは後進送りを行うことができる。
図2(A)に示される前進直線縫い5S、後進直線縫い6Sのそれぞれは、ミシンモータ31の回転駆動並びに振幅・送りモータ32の送りモータの回転駆動により行われる。また、図3(A)に示される前進ジグザグ縫い5Z、後進ジグザグ縫い6Zのそれぞれは、ミシンモータ31の回転駆動、振幅・送りモータ32の送りモータの回転駆動並びに振幅モータの回転駆動により行われる。
(返し縫いの制御方法及び返し縫いの制御プログラム)
次に、図1を参照しつつ、図4を用いて、本実施の形態に係るミシン1の返し縫いの制御方法及び返し縫いの制御プログラムについて説明する。
ここで、以下に説明する返し縫いの制御方法は、ミシン1が製品として出荷される前に、又は出荷された後に、格納(保存)された返し縫いの制御プログラムに基づいて、図1に示される中央演算処理ユニット21をコンピュータとして用いて実行される。制御プログラムは不揮発性メモリ22若しくは揮発性メモリ23に格納される。
また、ここでは、図2(A)に示される前進直線縫い5Sに対して後進直線縫い6Sを形成する返し縫いの制御方法について説明する。図3(B)に示される前進ジグザグ縫い5Zに対して後進ジグザグ縫い6Zを形成する返し縫いの制御方法は、前進直線縫い5Sに対して後進直線縫い6Sを形成する返し縫いの制御方法とほぼ同様であるので、説明を省略する。
図4に示されるように、返し縫いの制御方法が開始される。最初に、ミシン1の制御ユニット2において、操作部24の送り量設定部241(図1参照)に、前進直線縫い5Sの一針分P1の縫い目51(図2(A)参照)に相当する前進送り量が設定される(ステップS1)。
ユーザが返し縫いを選択する場合、ユーザは操作部24の返し縫い指示部242(図1参照)を操作する。ここで、制御ユニット2では、返し縫いの指示があるか否かが判定される(ステップS2)。返し縫いの指示が無いと判定されたときには、ステップS1へ戻る。
一方、返し縫いの指示があると判定されたとき、ステップS1において設定された前進送り量が、図1に示される送り量調整部25において取得される(ステップS3)。送り量調整部25では、取得した一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量と、ミシン1の送り機構33により決定される一針分の縫い目に相当する最大後進送り量とが比較され、前進送り量が最大後進送り量よりも大きいか否かが判定される(ステップS4)。
ステップS4において、前進送り量が最大後進送り量の範囲内にある、つまり前進送り量が最大後進送り量と同一か、又は最大後進送り量よりも小さいと判定されるとき、前進送り量と後進送り量とが同値に設定される(ステップS5)。このとき、送り量調整部25では、「後進1セット送り回数」が「1」に設定され、「後進送りカウント値」が「0」に設定される。
この判定結果に基づいて、送り量調整部25は、振幅・送りモータ制御部27を介して振幅・送りモータ32の送りモータ(ステッピングモータ)を回転駆動させ、返し縫いの後進送り量が送り機構33(図1参照)に設定される(ステップS6)。
このとき、送り量調整部25では、「後進送りカウント値」に「1」が加算される(ステップS7)。
そして、後進送り量が設定されると、返し縫いが実行される(図2(A)に示される後進直線縫い6Sを参照)。
返し縫いが実行されると、後進1セットの返し縫いが完了したか否かが判定される(ステップS8)。「後進送りカウント値」が「後進1セット送り回数」と等しいときに「完了した」と判定され、「後進送りカウント値」が「後進1セット送り回数」と等しくないときには「完了していない」と判定される。
「完了した」と判定されると、返し縫いの解除要求があるか否かが判定される(ステップS9)。解除要求があると判定されると、返し縫いが終了し(ステップS13)、本実施の形態に係るミシン1の返し縫いの制御方法は終了する。ここでは、解除要求があるまで、返し縫いが継続して実施される。一方、「完了していない」と判定されると、ステップS3へ戻る。
前述のステップS4において、前進送り量が最大後進送り量よりも大きいと判定されたとき、送り量調整部25では、返し縫いの後進送り量が算出される(ステップS10)。後進送り量の算出には、下記式<1>及び式<2>が用いられる。
後進1セット送り回数=前進送り量÷後進最大送り量 …<1>
後進送り量=前進送り量÷後進送り1セット回数 …<2>
また、このとき、送り量調整部25では、「後進送りカウント値」が「0」に設定される。
仮に、前進送り量が3.9 mmに設定され、最大後進送り量が2.5 mmとされている場合、式<1>に基づいて、後進1セット送り回数は「3.9 mm÷2.5 mm」から「1.56」となる。算出値が「回数」であるため、小数部を切り上げ或いは四捨五入により整数化すると、後進1セット送り回数は「2 」になる。式<2>に基づいて、後進送り量は「3.9 mm÷2 」から「1.95 mm」となる。小数点以下第1位までの範囲内において十分な縫製精度となるので、小数点以下第2位は単純に削除されると、後進送り量は「1.9 mm」になる。
後進送り量が算出され、「後進送りカウント値」が「0」に設定されると、ステップS6へ移行する。後進送り量の算出結果に基づいて、送り量調整部25は、振幅・送りモータ制御部27を介して振幅・送りモータ32の送りモータを回転駆動させ、返し縫いの後進送り量が送り機構33(図1参照)に設定される(ステップS6)。
後進送り量が設定されると、図2(A)に示されるように、後進直線縫い6Sが形成される。後進直線縫い6Sの複数(1セットSe)の一針分P2の縫い目61に相当する後進送り量の総量は、前進直線縫い5Sの一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量の総量に近似する。
この後、ステップS7以降の処理が実行される。
前述のステップS8において、返し縫いが実行され、後進1セットの返し縫いが完了していないと判定されると、一針分P2の縫い目61に相当する後進送り量にて後進直線縫い6Sの形成が継続される。
ここで、後進1セットの最後の後進送りか否かが判定される(ステップS11)。最後の後進送りではないと判定されると、ステップS6へ戻る。
一方、最後の後進送りであると判定されるときには、一針分P2の縫い目61に相当する後進送り量の端数を参照し、後進送り量が、再度、算出される(ステップS12)。後進送り量の再算出には、下記式<3>が用いられる。
後進送り量=前進送り量-後進送り量×(後進1セット送り回数-1) …<3>
上記例では、前進送り量が3.9 mmに設定され、後進送り量が1.9 mmと算出されているので、「後進1セットの送り回数」が「2 」の場合、式<3>に基づいて、後進送り量は「3.9 mm-1.9 mm×(2 -1 )」から「2 」となる。
後進送り量が再算出されると、ステップS6へ戻り、再算出された後進送り量が後進直線縫い6Sの形成に反映される。
(作用効果)
本実施の形態に係るミシン1は、図1に示されるように、送り量設定部241と、送り量調整部25とを含んで構成される。送り量設定部241では、図2(A)に示される前進直線縫い5Sの一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量が設定される。また、送り量設定部241では、図3(B)に示される前進ジグザグ縫い5Zの一針分P1の縫い目52に相当する前進送り量が設定される。
ここで、送り量調整部25では、送り量設定部241により設定される一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量と、送り機構33の機械的構造により決定される返し縫いの一針分の最大後進送り量とが比較される。そして、送り量調整部25では、前進送り量が最大後進送り量よりも大きいとき(ステップS4)、図2(A)に示されるように、前進直線縫い5Sの一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量の総量と一致するように、後進直線縫い6Sの複数の一針分P2の縫い目61に相当する後進送り量の総量が調整される(ステップS10)。図3(A)に示される後進ジグザグ縫い6Zの後進送り量についても同様の調整がなされる。
このため、図2(A)に示されるように、前進直線縫い5Sの縫い目51に後進直線縫い6Sの縫い目61を一致させ、縫い目のずれを効果的に抑制することができる。表現を代えると、前進直線縫い5Sの縫い目51の針落ち位置に、後進直線縫い6Sの1セットSeの縫い目61の針落ち位置を一致させ、縫い目のずれを効果的に抑制することができる。このため、ミシン1では、返し縫いの縫い上がりの見栄えを向上させることができる。
本実施の形態では、送り量調整部25は、前進直線縫い5Sの一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量の総量に一致するように、後進直線縫い6Sの2つの一針分P2の縫い目61に相当する後進送り量の総量を調整する構成とされている。送り量調整部25では、一針分P1以上の縫い目51に相当する前進送り量の総量に一致するように、複数の一針分P2の縫い目61に相当する後進送り量の総量が調整されてもよい。
例えば、2つの一針分P1(一針分P1以上)の縫い目51に相当する前進送り量の総量に一致するように、複数の、具体的には3つ、4つ又は5以上の一針分P2の縫い目61に相当する後進送り量の総量が、送り量調整部25により調整されてもよい。さらに、前進送り量の総量は、3以上の一針分P1の縫い目51に相当させてもよい。
また、ミシン1では、同様に、図3(A)に示されるように、前進ジグザグ縫い5Zの縫い目52に後進ジグザグ縫い6Zの縫い目62を一致させることができるので、縫い目のずれを効果的に抑制することができる。このため、ミシン1では、返し縫いの後進ジグザグ縫い6Zにおいても、縫い上がりの見栄えを向上させることができる。
さらに、本実施の形態に係るミシン1では、図2(A)に示されるように、前進直線縫い5Sに対して同一直線上に後進直線縫い6Sを形成する(縫製する)ことができるので、ほつれを効果的に抑制することが期待される。
特に、比較例として説明した図3(B)に示される後進ジグザグ縫い7Zは前進ジグザグ縫い5Zに対して縫製位置にずれを生じ、見栄えの点並びにほつれの点において、改善の余地がある。これに対して、本実施の形態に係るミシン1では、図3(A)に示されるように、前進ジグザグ縫い5Zに対して同一ジグザグ上に後進ジグザグ縫い6Zを形成することができるので、見栄えの点並びにほつれの点を十分に改善することができる。
また、ミシン1では、図1に示される送り量調整部25が、図2(A)に示されるように、前進直線縫い5Sの一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量と一致するように、後進直線縫い6Sの複数の一針分P2の縫い目61に相当する後進送り量の総量を調整する。
このため、一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量が後進送り量の総量を算出する基本単位とされているので、後進送り量の総量の算出を単純、かつ、簡易に行うことができる。
この作用効果は、図3(A)に示される返し縫いの後進ジグザグ縫い6Zにおいても、同様に得られる。
さらに、ミシン1では、図1に示される送り量調整部25が、図2(A)に示されるように、複数の一針分P2の後進送り量の総量におけるそれぞれの後進送り量を等間隔に調整する。つまり、後進直線縫い6Sにおいて、後進送り量の総量における個々の一針分P2の縫い目61の長さ並びにピッチはすべて同一とされる。
このため、等間隔とされる後進送り量が後進送り量の総量を算出する基本単位とされるので、後進送り量の総量の算出を単純、かつ、簡易に行うことができる。
この作用効果は、図3(A)に示される返し縫いの後進ジグザグ縫い6Zにおいても、同様に得られる。
また、ミシン1は、図1に示されるように、制御ユニット2の操作部24において、返し縫い指示部242を備えている。返し縫い指示部242では、ユーザの操作に基づいて返し縫いが指示される(ステップS4)。そして、返し縫い指示部242からの指示により、送り量調整部25において調整される後進送り量の総量まで、少なくとも返し縫いが行われる(ステップS9)。
このため、図2(A)に示されるように、前進直線縫い5Sの縫い目51に対して後進直線縫い6Sの縫い目61を一致させて返し縫いを行うことができるので、見栄えを向上させることができる。勿論、ほつれも効果的に抑制することができる。
この作用効果は、図3(A)に示される返し縫いの後進ジグザグ縫い6Zにおいても、同様に得られる。
さらに、図4に示されるように、返し縫いの制御プログラムによれば、ミシン1の返し縫い制御方法を実行させることができ、前述の作用効果を得ることができる。
[第2実施の形態]
図5を用いて、本発明の第2実施の形態に係るミシン1について説明する。なお、本実施の形態並びに後述する第3実施の形態の説明において、第1実施の形態に係るミシン1の構成要素と同一の構成要素、又は実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、本実施の形態に係る返し縫いの制御方法並びに返し縫いの制御プログラムは、前述の第1実施の形態に係る返し縫いの制御方法並びに返し縫いの制御プログラムと略同様であるので、ここでの説明を省略する。
(ミシン1の構成)
本実施の形態に係るミシン1は、前述の図1に示される第1実施の形態に係るミシン1の構成要素と同一の構成要素を備え、更に図4に示される返し縫いの制御方法とほぼ同様の制御方法に基づいて返し縫いが実施される。
本実施の形態に係るミシン1では、送り量調整部25による後進送り量の調整方法に違いがある。図5に示されるように、送り量調整部25では、返し縫いの後進直線縫い8Sの1セットSeにおける一針分P4の縫い目81と一針分P5の縫い目82との長さを代える後進送り量の調整がなされている。つまり、送り量調整部25は、一針分P4の縫い目81に相当する後進送り量に対して、一針分P5の縫い目82に相当する後進送り量を変える調整を行う。ここでは、前者の送り量が後者に対して大きく設定されている。
それぞれの後進送り量は違っているが、一針分P4の縫い目81に相当する後進送り量に一針分P5の縫い目82に相当する後進送り量を加算した後進送り量の総量は、前進直線縫い5Sの一針分P1の縫い目51に相当する前進送り量の総量に一致させている。勿論、双方の後進送り量の大きさが逆に設定されてもよい。
なお、本実施の形態では、送り量調整部25において、2種類の大きさの後進送り量とされているが、3種類以上の大きさの後進送り量により、後進送り量の総量が調整されてもよい。この場合、それぞれの送り量が等しい(等間隔の)調整が行われてもよく、それぞれの送り量が等しくない(不等間隔の)調整が行われてもよく、又一部の送り量が等しく一部の送り量が等しくない(不等間隔の)調整が行われてもよい。
(作用効果)
本実施の形態に係るミシン1及び返し縫いの制御プログラムでは、前述の第1実施の形態に係るミシン1及び返し縫いの制御プログラムにより得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
また、ミシン1では、図1に示される制御ユニット2の送り量調整部25が、図5に示されるように、返し縫いの後進直線縫い8Sの複数針分の後進送り量の総量におけるそれぞれの後進送り量を不等間隔に調整する。すなわち、1セットSeにおいて、一針分P4の縫い目81に相当する後進送り量と、これとは間隔が異なる一針分P5の縫い目82に相当する後進送り量とにより、後進送り量の総量が設定されている。
このため、図5に示されるように、前進直線縫い5Sの縫い目51に後進直線縫い8Sの縫い目81及び縫い目82を一致させ、縫い目のずれを効果的に抑制することができるので、ミシン1では、返し縫いの縫い上がりの見栄えを向上させることができる。勿論、ミシン1では、ほつれも効果的に抑制することができる。
加えて、返し縫いの後進直線縫い8Sは、単調な等間隔の縫い目ではなく、各々の間隔が異なる一針分P4の縫い目81と一針分P5の縫い目82とを含んで構成されるので、アクセントを有する縫製模様となり、更に見栄えを向上させることができる。
なお、ここでの説明は省略するが、返し縫いの後進ジグザグ縫い(図3(A)参照)においても、同様の作用効果を得ることができる。
[第3実施の形態]
図6を用いて、本発明の第3実施の形態に係るミシン1について説明する。また、本実施の形態に係る返し縫いの制御方法並びに返し縫いの制御プログラムは、前述の第1実施の形態に係る返し縫いの制御方法並びに返し縫いの制御プログラムと略同様であるので、ここでの説明を省略する。
(ミシン1の構成)
本実施の形態に係るミシン1は、前述の図1に示される第1実施の形態に係るミシン1の構成要素と同一の構成要素を備え、更に図4に示される返し縫いの制御方法とほぼ同様の制御方法に基づいて返し縫いが実施される。
本実施の形態に係るミシン1では、送り量調整部25による後進送り量の調整方法に違いがある。図6に示されるように、送り量調整部25では、返し縫いの後進直線縫い9Sの1セットSeにおける一針分P2の縫い目91だけを形成する後進送り量の調整がなされている。第1実施の形態に係るミシン1では、1セットSeにおいて、一針分P2の縫い目91と一針分P2の縫い目92(破線により示されている)とが形成されるが、本実施の形態に係るミシン1では、縫い目92が省略されている。縫い目92の省略は、ミシン1の図示省略の上軸の動きと針棒の動きとを連動させない(針棒の上下運動を上軸の回転から切り離す)針棒離脱や、上軸の動きと下軸の動きとを連動させない(下軸の動きを上軸に伝えない)上軸の離脱などの方法を用いて、上軸と針棒或いは上軸と下軸とが連動していないタイミングにおいて縫い目92を形成させないことにより実現される。これにより、一針分P2の縫い目92に相当する間隔を開けて、一針分P2の縫い目91だけが後進縫い方向Bに形成されている。一針分P2の形成される縫い目91と形成されない縫い目92とは、前述した実施の形態のように等間隔でも不等間隔でもよく、3つ以上であってもよい。
(作用効果)
本実施の形態に係るミシン1及び返し縫いの制御プログラムでは、前述の第1実施の形態に係るミシン1及び返し縫いの制御プログラムにより得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
さらに、第2実施の形態に係るミシン1により得られる作用効果と同様に、返し縫いの後進直線縫い9Sは、単調な等間隔の縫い目ではなく、一針分P2の縫い目91を、一針分P2の縫い目92分、縫い目を形成させないので、アクセントを有する縫製模様となり、見栄えを一層向上させることができる。
なお、ここでの説明は省略するが、返し縫いの後進ジグザグ縫い(図3(A)参照)においても、同様の作用効果を得ることができる。
[その他の実施の形態]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
例えば、上記実施の形態に係るミシンでは、返し縫いの後進直線縫い、後進ジグザグ縫いを例に説明したが、返し縫いの後進曲線縫いに適用してもよい。
1 ミシン
2 制御ユニット
21 中央演算処理ユニット
22 不揮発性メモリ
23 揮発性メモリ
24 操作部
241 送り量設定部
242 返し縫い指示部
25 送り量調整部
26 ミシンモータ制御部
27 振幅・送りモータ制御部
3 駆動ユニット
31 ミシンモータ
32 振幅・送りモータ
33 送り機構
5S 前進直線縫い
5Z 前進ジグザグ縫い
51、52、61、62、81、82、91 縫い目
6S、8S、9S 後進直線縫い
6Z 後進ジグザグ縫い

Claims (5)

  1. 前進縫いの一針分の前進送り量を設定する送り量設定部と、
    前記送り量設定部により設定される前記前進送り量と送り機構により決定される返し縫いの一針分の最大後進送り量とを比較し、
    前記前進送り量が前記最大後進送り量よりも大きいとき、一針分の前進送り量と一致するように、複数針分の後進送り量の総量を調整し、前記前進送り量が前記最大後進送り量と同一か又は小さいとき、一針分の前進送り量と一致するように、後進送り量を調整する送り量調整部と、
    を備えたミシン。
  2. 前記送り量調整部は、
    前記複数針分の後進送り量の総量におけるそれぞれの後進送り量を等間隔とする
    請求項に記載のミシン。
  3. 前記送り量調整部は、
    前記複数針分の後進送り量の総量におけるそれぞれの後進送り量を不等間隔とする
    請求項に記載のミシン。
  4. 前記返し縫いを指示する返し縫い指示部を更に備え、
    前記返し縫い指示部からの指示により、前記送り量調整部において調整される前記複数針分の後進送り量の総量の返し縫いが行われる
    請求項1~請求項のいずれか1項に記載のミシン。
  5. 送り量設定部と、送り量調整部とを備えたミシンの返し縫い制御方法をコンピュータに実行させる返し縫いの制御プログラムであって、
    前記送り量設定部が、前進縫いの一針分の前進送り量を設定する工程と、
    前記送り量調整部が、前記送り量設定部により設定される前記前進送り量と送り機構により決定される返し縫いの一針分の最大後進送り量とを比較し、前記前進送り量が前記最大後進送り量よりも大きいとき、一針分の前進送り量と一致するように、複数針分の後進送り量の総量を調整し、前記前進送り量が前記最大後進送り量と同一か又は小さいとき、一針分の前進送り量と一致するように、後進送り量を調整する工程と、
    を備えた返し縫いの制御プログラム。
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