一態様では、本発明は一般に、ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用に拮抗するか、それらを阻害または遮断する抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、またはキメラ化抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片に関する。ある特定の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、下で論述するとおり、PACAP27及び/またはPACAP38を含むPACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和する。他の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害し;PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を中和または阻害し;かつ/またはPAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害し;かつ/または例えばグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害する。また他の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害することができるか;PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害することができるか;またはPAC1-RへのPACAP結合を阻害することができる。他の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、PACAP誘導性cAMP産生を阻害する。また他の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は単独で、または組み合わせで、対象、例えばヒトに投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させる。関連実施形態では、ヒトまたはヒト化抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化の増大と関連する急性、一時性、または慢性状態を有するヒト対象を処置するために適している。
別の実施形態では、当該方法は、ベビーハムスター腎臓(「BHK」)細胞;チャイニ
ーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞;マウスセルトリ細胞(「TM4」細胞);アフリカミドリザル腎臓細胞(「VERO-76」細胞);ヒト子宮頸癌(「HELA」)細胞;イヌ腎臓細胞(「MDCK」);バッファローラット肝臓(「BRL」)細胞;ヒト肺細胞;ヒト肝臓(「HepG2」)細胞;マウス乳房腫瘍(「MMT」)細胞;TRI細胞;MRC5細胞;及びFS4細胞からなる群から選択される哺乳類の真核宿主細胞を提供する。好ましくは、哺乳類宿主細胞は、CHO細胞である。より好ましくは、哺乳類宿主細胞は、CHO K1細胞である。
好ましい一実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、VIPと実質的に相互作用(結合)しない。本発明はまた、そのような抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片の治療用途(単独治療または併用療法として)及び診断用途を包含する。
より詳細には、本発明による抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、ヒト、ヒト化、及びキメラ化抗体ならびにそれらの断片、さらにはscFv、ラクダ抗体(camelbodies)、サメ抗体、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(Immunoglobulin New Antigen Receptor、「IgNAR」)、断片抗原結合性(「Fab」)断片、Fab’断片、MetMab様抗体、二重特異性抗体、一価抗体断片、及びF(ab’)2断片を含み得る。加えて、本発明による抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、N-グリコシル化及び/またはO-グリコシル化を実質的に、または完全に欠いていてよい。一実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、ヒト定常ドメイン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4抗体またはその断片の定常ドメインを含む。別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、エフェクター機能、半減期、タンパク質分解、またはグリコシル化のうちの少なくとも1つを変更する(増強する、または損傷する)ように修飾されているFc領域を含んでよい。例えば、Fc領域は、N-及び/またはO-グリコシル化を変更する、または除去する1つまたは複数の変異を含有してよい。
一部の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、例えば、ELISA、バイオレイヤー干渉法(「BLI」)、速度論的排除アッセイ(Kinetic
Exclusion Assay、KINEXA(登録商標)、Sapidyne Instruments、Boise、ID)、またはSPRによって、例えば、25℃または37℃で測定した場合に、PACAPに、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、または10-13M以下のKDで結合する。好ましくは、ヒト、ヒト化、またはキメラ化抗PACAP抗体、及びそれらの抗原結合性断片は、PACAPに、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、または10-12M以下のKDで結合する。好ましくは、ヒト、ヒト化、またはキメラ化抗PACAP抗体、及びそれらの抗原結合性断片は、PACAPに、約100nM未満、約40nM未満、約1nM未満、約100pM未満、約50pM未満、または約25pM未満であるKDで結合する。代わりに、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、PACAPに、約10pM~約100pMであるKDで結合する。別の実施形態では、ヒト、ヒト化、またはキメラ化抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、PACAPに、5×10-4s-1、10-4s-1、5×10-5s-1、または10-5s-1以下のオフ速度(koff)で結合する。
また別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、線状または
立体構造エピトープ(複数可)に特異的に結合し、かつ/またはAb10及びAb20からなる群から選択される抗PACAP抗体と同じヒトPACAP上の線状または立体構造エピトープ(複数可)への結合について、競合することとなる(これらの抗PACAP抗体の可変及び定常領域の特異的アミノ酸配列、ならびにそのような可変及び定常領域をコードする核酸、ならびにアラニン走査法を使用して決定されるとおりの、それらが結合するエピトープを下に開示する)。殊に、本発明は、Ab10及びAb20からなる群から選択される抗PACAP抗体と同じヒトPACAP上の線状または立体構造エピトープ(複数可)に特異的に結合する抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片を包含する。下で開示されるとおり、例示的な実施形態では、エピトープ(複数可)を、アラニン走査変異ストラテジを使用して決定する。
また別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、Ab10またはAb20のいずれか1つ、あるいは上述のいずれか1つの結合性断片と同一のエピトープに結合するヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれる。
また別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、ヒトPACAPまたは対応するアミノ酸残基を含有するその断片もしくは変異体上のエピトープに特異的に結合するヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれ、ここで、前記エピトープは、下からなる群から選択される:
a.ヒトPACAPの残基19、22、23、及び27のうちの少なくとも1個;
b.ヒトPACAPの残基19、22、23、24、及び27のうちの少なくとも1個;c.(a)~(b)のいずれか1つの残基のうちの少なくとも2個;
d.(a)~(b)のいずれか1つの残基のうちの少なくとも3個;
e.(a)~(b)のいずれか1つの残基のうちの少なくとも4個;
f.(b)の5個すべての残基。
また別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、ヒトPACAP上のエピトープ、またはヒトPACAPの残基19、22、23、及び27のうちの1個または複数個を含む対応するアミノ酸残基を含有するその断片もしくは変異体に特異的に結合するヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれる。
また別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、ヒト野生型PACAP38には存在するが、ヒト野生型ヒトPACAP27には存在しないヒトPACAP上のエピトープ、または対応するアミノ酸残基を含有するその断片もしくは変異体に特異的に結合するヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれる。
また別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、例えば、実施例12において開示されているとおりのアラニン走査または別の当技術分野で認識されている方法によって同定されるヒトPACAP上のエピトープ、または対応するアミノ酸残基を含有するその断片もしくは変異体に特異的に結合するヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれる。
また別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、上の(a)または(b)の残基からなるヒトPACAP上のエピトープ、または対応するアミノ酸残基を含有するその断片もしくは変異体に特異的に結合するヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれる。
また別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、ヒト野生型PACAP38において、かつヒト野生型ヒトPACAP27において存在する、ヒトPACAP上のエピトープ、または対応するアミノ酸残基を含有するその断片もしくは変異体に特異的に結合するヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれる。
また別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、ヒト野生型ヒトPACAP38には特異的に結合するが、ヒト野生型ヒトPACAP27には結合しないか、または感知できるほどには結合しないヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれる。
また別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、ヒトPACAP27に対するその抗体または抗体断片のKDよりも少なくとも10倍、100倍、1,000倍、10,000倍、または100,000倍低い(強い)ヒトPACAP38についてのKDを有するヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が包含される。
また別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、ヒト血管作動性腸管ペプチド(「VIP」)には結合しないか、または感知できるほどには結合しないヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれる。
また別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、ヒトVIPに対するその抗体または抗体断片のKDよりも少なくとも10倍、100倍、1,000倍、10,000倍、または100,000倍少ない(弱い)ヒトPACAPについてのKDを有するヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれる。
一部の実施形態では、本発明は、Ab10及びAb20からなる群から選択される抗PACAP抗体のうちの少なくとも2つの相補性決定領域(「CDR」)、または少なくとも3つのCDR、または少なくとも4つのCDR、または少なくとも5つのCDR、または6つすべてのCDRを含む、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、またはキメラ化抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片を提供する。6つすべてのCDRが存在しない場合には、好ましくは少なくともVHCDR3及びVLCDR3が存在する。例示的な実施形態では、抗体及びそれらの抗原結合性断片は、Ab10またはAb20の1つの可変重(「VH」)鎖及び/または可変軽(「VL」)鎖を含む。
具体的な一実施形態では、本発明による抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片であり、(a)配列番号404からなるCDR1配列;配列番号406からなるCDR2配列;及び配列番号408からなるCDR3配列を含む可変重鎖;及び/または(b)配列番号424からなるCDR1配列;配列番号426からなるCDR2配列;及び配列番号428からなるCDR3配列を含む可変軽鎖を含む。別法では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号402に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、及び/または(b)配列番号422に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含み得る。別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号402のアミノ酸配列を有する可変重鎖、及び/または(b)配列番号422のアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含む。より具体的には、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合
性断片は、(a)配列番号401のアミノ酸配列を有する重鎖、及び/または(b)配列番号421のアミノ酸配列を有する軽鎖を含むことができる。
別の具体的な実施形態では、本発明による抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、ヒト、ヒト化、またはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片であり、(a)配列番号444からなるCDR1配列;配列番号446からなるCDR2配列;及び配列番号448からなるCDR3配列を含む可変重鎖;及び/または(b)配列番号464からなるCDR1配列;配列番号466からなるCDR2配列;及び配列番号468からなるCDR3配列を含む可変軽鎖を含む。別法では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号442に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、及び/または(b)配列番号462に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含み得る。別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号442のアミノ酸配列を有する可変重鎖、及び/または(b)配列番号462のアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含む。より具体的には、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号441のアミノ酸配列を有する重鎖、及び/または(b)配列番号461のアミノ酸配列を有する軽鎖を含み得る。
また、一部の実施形態では、抗PACAP抗体及び抗原結合性断片は、1つまたは複数の特性、例えば、結合親和性または免疫原性を変更する変異誘発、例えば、親和性成熟によって修飾された開示抗体のいずれかの配列変異体を含んでよい。
別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、別の部分、例えば、検出可能な標識または治療薬に直接的または間接的に付着される。
別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、PACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和し;PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害し;PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を中和または阻害し;PAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害し;PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害することができ;PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害することができ;PAC1-RへのPACAP結合を阻害することができ;かつ/または例えばGAGを介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害し;PACAP誘導性cAMP産生を阻害し;かつ/または対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させる。
別の実施形態では、ヒトまたはヒト化抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化の増大と関連する急性、一時性、または慢性状態を有するヒト対象を処置するために適している。
別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、VIPと実質的に相互作用しない(すなわち、それに結合しない)。好ましくは、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、VIPと比較して、PACAPについてより強い親和性を有し、すなわち、多少の交差反応性は存在するが、その抗体は、VIPと比較して、PACAPに優先的に結合する。例えば、PACAPに対する前記抗体及びそれらの抗原結合性断片の親和性は、VIPに対する前記抗体及びそれらの抗原結合性断片の親和性よりも少なくとも10倍、30倍、100倍、300倍、1000倍、3000倍、10000倍
、30000倍、100000倍、300000倍、1000000倍、3000000倍、10000000倍、30000000倍、またはそれ以上強い(例えば、ヒトPACAPへの結合についての前記抗体または断片のKDは、VIPへの結合についてのKDよりも10倍、30倍、100倍、300倍、1000倍、3000倍、10000倍、30000倍、100000倍、300000倍、1000000倍、3000000倍、10000000倍、または30000000倍低い)。
一実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、例えば化学的リンカーを含む少なくとも1つのエフェクター部分に付着される。別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、例えば蛍光色素、酵素、基質、生物発光物質、放射性物質、化学発光部分、またはそれらの混合物を含む1つまたは複数の検出可能な部分に付着される。
一実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、1つまたは複数の機能性部分に付着される。
本発明はまた、上記のとおりの抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片に対して生成される抗体、例えば、抗イディオタイプ抗体を企図する。さらに、本発明は、対象において前記抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片のin vivoレベルをモニターするか、または前記抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片を投与された対象において、前記抗PACAP抗体を中和するために、抗イディオタイプ抗体を使用する方法を提供する。
さらに、本発明は、治療、予防、または診断有効量の、本明細書に記載のとおりの少なくとも1種の抗PACAP抗体または抗原結合性断片を含む、治療、予防、または診断用途に適した組成物を包含する。殊に、片頭痛または他の頭痛適応症の処置または予防において使用するための、本抗PACAP抗体またはその結合性断片を含有する組成物及び剤形を本明細書において提供する。また、羞明の処置または予防において使用するための本抗PACAP抗体またはその結合性断片を含有する剤形を本明細書において提供する。当該組成物は、皮下投与、筋肉内投与、及び/または静脈内投与に適し得る。当該組成物は、凍結乾燥されてよい。一部の実施形態では、当該組成物は、薬学的に許容される希釈剤、担体、溶解補助剤、乳化剤、防腐剤、またはそれらの混合物をさらに含む。
加えて、一部の実施形態では、当該組成物は、別の活性薬剤、例えば、化学療法薬、鎮痛薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、サイトカイン、抗増殖性、及び制吐薬をさらに含む。好ましくは、他の治療薬は、鎮痛薬、例えば、NSAID、オピオイド鎮痛薬、抗体(例えば、抗ヒト神経成長因子(「NGF」)抗体もしくは抗体断片;または抗ヒトCGRPもしくは抗ヒトCGRP-受容体抗体または抗体断片);または非抗体生物製剤、例えば、NGFもしくはCGRPポリペプチド断片もしくはコンジュゲート;またはBOTOX(登録商標)(ボツリヌス菌毒素)である。本抗PACAP抗体と組み合わせて使用するために適したNSAIDには、限定されないが、シクロオキシゲナーゼ1及び/またはシクロオキシゲナーゼ2阻害薬;イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロシン、ジクロフェナク、及びケトプロフェンを包含するプロピオン酸誘導体;トルメチン及びスリンダクを包含する酢酸誘導体;メフェナム酸及びメクロフェナム酸を包含するフェナム酸誘導体;ジフルニサル及びフルフェニサルを包含するビフェニルカルボン酸誘導体;ならびにピロキシム、スドキシカム、及びイソキシカムを包含するオキシカムが含まれる。本抗PACAP抗体と組み合わせて使用するために適したオピオイド鎮痛薬には、例えば、コデイン、ジヒドロコデイン、モルヒネもしくはモルヒネ誘導体もしくはそれらの薬学的に許容される塩、ジアセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、オキシモルホン、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、フェンタニール、ス
フェンタニル、メペリジン、メタドン、ナルブフィン、プロポキシフェン、及びペンタゾシン、またはそれらの薬学的に許容される塩が包含される。オピオイド鎮痛薬及び抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片の組合せ投与は、それらによって誘発される鎮痛効果を増大させ得る。
本発明はさらに、本明細書に記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片をコードする1つまたは複数の単離核酸配列、さらには、これらの1つまたは複数の単離核酸配列を含有する1種または複数のベクターを企図する。
加えて、本発明は、これらの1つもしくは複数の単離核酸配列または上述のベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、ベビーハムスター腎臓(「BHK」)細胞;チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞;マウスセルトリ細胞(「TM4」細胞);アフリカミドリザル腎臓細胞(「VERO-76」細胞);ヒト子宮頸癌(「HELA」)細胞;イヌ腎臓細胞(「MDCK」);バッファローラット肝臓(「BRL」)細胞;ヒト肺細胞;ヒト肝臓(「Hep G2」)細胞;マウス乳房腫瘍(「MMT」)細胞;TRI細胞;MRC5細胞;及びFS4細胞からなる群から選択される哺乳類の真核宿主細胞であってよい。好ましくは、哺乳類宿主細胞は、CHO細胞である。より好ましくは、哺乳類宿主細胞は、CHO K1細胞である。宿主細胞は、哺乳類、真菌、酵母、鳥類、または昆虫細胞を含む、原核細胞、すなわち、細菌細胞、または真核細胞であってよい。一実施形態では、宿主細胞は、糸状菌であるか、または酵母細胞である。好ましくは、酵母種は、Pichia属のものである。最も好ましくは、Pichiaの種は、Pichia pastoris、Pichia methanolica、及びHansenula polymorpha(Pichia angusta)から選択される。
本発明はさらに、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片、典型的にはヒト、ヒト化、またはキメラ抗体及びそれらの抗原結合性断片を発現する方法であって、本明細書に記載の宿主細胞を、前記抗体またはそれらの抗原結合性断片の発現をもたらす条件下で培養することを含む方法を提供する。宿主細胞は、少なくとも10~25mg/リットルの前記抗体またはその抗原結合性断片を安定発現し、培養培地中に分泌する細胞培養物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞または倍数酵母培養物であってよい。倍数酵母は、(i)プロモーター及びシグナル配列に作動可能に連結された前記抗体をコードする1種または複数種の異種ポリヌクレオチドを含有する少なくとも1つの発現ベクターを一倍酵母細胞に導入すること;(ii)交配またはスフェロプラスト融合によって、前記第1及び/または第2の一倍酵母細胞から倍数酵母を生成すること;(iii)前記抗体を安定発現する倍数酵母細胞を選択すること;ならびに(iv)前記抗体を培養培地に安定発現する前記倍数酵母細胞から、安定な倍数酵母培養物を生成することを含む方法によって作製され得る。好ましくは、酵母種は、Pichia属のものである。
他の実施形態では、哺乳類細胞培養物は、(i)プロモーター及びシグナル配列に作動可能に連結された前記抗体をコードする1種または複数種の異種ポリヌクレオチドを含有する少なくとも1つの発現ベクターを、哺乳類細胞に導入すること;(ii)前記抗体をコードする1種または複数種の異種のポリヌクレオチドを発現するために、培養のための単細胞を生成すること;(iii)前記抗体を安定発現する哺乳類細胞を選択すること;ならびに(iv)前記抗体を培養培地に安定発現する前記哺乳類細胞から、細胞培養物を生成することを含む方法によって作製され得る。好ましくは、哺乳類種は、CHO細胞である。
本発明はさらに、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片、好ましくはヒト抗体、ヒト化抗体、もしくはキメラ抗体またはその断片の治療及び診断用途に関する。
一実施形態では、本発明は、対象において、PACAPと関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、または中和するための方法であって、対象に、ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用と拮抗するか、それらを阻害、中和、または遮断する有効量のヒトもしくはヒト化もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む方法を提供する。具体的な一実施形態では、当該方法は、ヒトPACAP上で、Ab10またはAb20から選択される抗PACAP抗体と同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)に特異的に結合し、かつ/またはそれらと同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)への結合について競合する抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を使用する。
別の実施形態では、本発明は、対象において、PACAPと関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、または中和するための方法であって、対象に、ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用と拮抗するか、それらを阻害、中和、または遮断し、かつVIPと実質的に相互作用しない(結合しない)有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む方法を提供し、例えば、抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片は、VIPと比較して、PACAPについてより強い親和性を有し、すなわち、多少の交差反応性は存在するが、その抗体は、VIPと比較して、PACAPに優先的に結合する。例えば、PACAPに対する前記抗体またはその抗原結合性断片の親和性は、VIPに対する前記抗体またはその抗原結合性断片の親和性よりも、少なくとも10倍、30倍、100倍、300倍、1000倍、3000倍、10000倍、30000倍、100000倍、300000倍、1000000倍、3000000倍、10000000倍、30000000倍、またはそれ以上高い(例えば、ヒトPACAPへの結合に対する前記抗体または断片のKDは、VIPへの結合に対するKDの10倍、30倍、100倍、300倍、1000倍、3000倍、10000倍、30000倍、100000倍、300000倍、1000000倍、3000000倍、10000000倍、30000000倍、またはそれ以下低い)。具体的な一実施形態では、当該方法は、ヒトPACAP上で、Ab10またはAb20から選択される抗PACAP抗体と同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)に特異的に結合し、かつ/またはそれらと同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)への結合について競合する抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を使用する。
また別の実施形態では、本発明は、対象において、PACAPと関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、または中和するための方法であって、対象に、PACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和し;PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害し;PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を中和または阻害し;PAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害し;PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害することができ;PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害することができ;PAC1-RへのPACAP結合を阻害することができ;かつ/または例えばGAGを介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害することができ;PACAP誘導性cAMP産生を阻害し;かつ/または対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させる有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む方法を提供する。具体的な一実施形態では、当該方法は、ヒトPACAP上で、Ab10またはAb20から選択される抗PACAP抗体と同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)に特異的に結合し、かつ/またはそれらと同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)への結合について競合する抗PACAP抗体またはそ
れらの抗原結合性断片を使用する。
別の実施形態では、本発明は、対象において頭痛または片頭痛の発症、頻度、重症度、または期間を処置または予防するための方法であって、対象に、PACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和し;PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害し;PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を中和または阻害し;PAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害し;PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害することができ;PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害することができ;PAC1-RへのPACAP結合を阻害することができ;かつ/または例えばGAGを介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害することができ;PACAP誘導性cAMP産生を阻害し;かつ/または対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させる有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、ヒト対象において、血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化の増大と関連する急性、一時性、または慢性状態を処置または予防するための方法を提供する。
具体的な一実施形態では、当該方法は、ヒトPACAP上で、Ab10またはAb20から選択される抗PACAP抗体と同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)に特異的に結合し、かつ/またはそれらと同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)への結合について競合する抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を使用する。エピトープは、例えば、アラニン走査変異戦略を使用して同定することができる。
具体的な一実施形態では、本抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片の投与によって処置及び/または予防される頭痛または片頭痛は、前兆を伴う、または伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、及び緊張性頭痛から選択される。
別の具体的な実施形態では、対象は、色盲、無虹彩、抗コリン作動薬に起因する羞明、無水晶体症(水晶体の非存在)、牛眼症(角膜と虹彩との間の異常に狭い角度)、白内障、錐体ジストロフィー、眼の先天異常、ウイルス性結膜炎(「ピンクアイ」)、角膜擦傷、角膜ジストロフィー、角膜潰瘍、角膜上皮細胞の破壊、水晶体転位症、眼内炎、疾患、損傷、もしくは感染、例えば、霰粒腫に起因する眼外傷、上強膜炎、緑内障、円錐角膜、または視神経形成不全、小眼、または先天性緑内障虹彩炎、視神経炎、色素拡散症候群、瞳孔散大(天然または化学的に誘導)、網膜剥離、角膜もしくは強膜の瘢痕化、及びブドウ膜炎からなる群から選択される羞明に関連する眼障害を有する。
別の具体的な実施形態では、対象は、自閉症スペクトラム障害、キアリ形成異常、失読症、筋痛性脳脊髄炎を含む脳炎(「慢性疲労症候群」としても公知)、髄膜炎、クモ膜下出血、後頭頭蓋の腫瘍、強直性脊椎炎、白色症、リボフラビン欠乏症、ベンゾジアゼピン(ベンゾジアゼピンの長期使用またはその離脱)、化学療法、チクングニア、シスチン症、エーレルス-ダンロー症候群、二日酔い、インフルエンザ、感染性単核細胞症、マグネシウム欠乏、水銀中毒、片頭痛、狂犬病、及びチロシン血症II型(「リヒナー-ハナート症候群」としても公知)からなる群から選択される羞明と関連する神経系関連または神経状態を有する。
別の具体的な実施形態では、対象は、片頭痛(前兆を伴うか、または伴わない)、虹彩炎、ブドウ膜炎、髄膜炎、うつ病、双極性障害、群発性頭痛または別の三叉神経・自律神経性頭痛(「TAC」)または眼瞼痙攣、うつ病、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害(「PTSD」)、外傷性脳損傷、及び双極性障害からなる群から選択される羞明関連障害を有する。
別の実施形態では、本発明は、PACAP誘導性PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rシグナル伝達を中和するための方法であって、それを必要とする対象に、ヒトPACAP上で、Ab10またはAb20から選択される抗PACAP抗体と同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)に特異的に結合し、かつ/またはそれらと同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)への結合について競合する有効量の抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、PACAP誘導性cAMP産生を阻害するための方法であって、それを必要とする対象に、ヒトPACAP上で、Ab10またはAb20から選択される抗PACAP抗体と同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)に特異的に結合し、かつ/またはそれらと同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)への結合について競合する有効量の抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む方法を提供する。
また別の実施形態では、本発明は、PACAP誘導性血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を阻害するための方法であって、それを必要とする対象に、ヒトPACAP上で、Ab10またはAb20から選択される抗PACAP抗体と同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)に特異的に結合し、かつ/またはそれらと同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)への結合について競合する有効量の抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む方法を提供する。
また別の実施形態では、本発明は、対象において、PACAPレベルの上昇と関連する状態を処置または予防するための方法であって、それを必要とする対象に、ヒトPACAP上で、Ab10またはAb20から選択される抗PACAP抗体と同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)に特異的に結合し、かつ/またはそれらと同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)への結合について競合する有効量の抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む方法を提供する。エピトープは、例えば、アラニン走査変異戦略を使用して同定することができる。
本発明において使用するために適した例示的な抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、配列番号402及び442から選択されるVH鎖に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVH鎖、及び/または配列番号422及び462から選択されるVL鎖に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVL鎖を含み、かつ/または少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つすべてのCDRが、その中に含まれる。
一実施形態では、当該方法において使用される抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片は、PACAP27及び/またはPACAP38に結合し、PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RへのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断する。別の実施形態では、当該方法において使用される抗PACAP抗体または
その抗原結合性断片は、PACAP27及び/またはPACAP38に結合し、PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断する。好ましくは、抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片は、PACAP27及び/またはPACAP38に結合し、PAC1-RへのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断する。
より詳細には、本発明による方法において使用される抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、ヒト、ヒト化、及びキメラ化抗体ならびにそれらの断片、さらには、scFvs、ラクダ抗体、サメ抗体、ナノボディ、IgNAR、Fab断片、Fab’断片、MetMab様抗体、二重特異性抗体、一価抗体断片、及びF(ab’)2断片が含まれ得る。加えて、本発明による方法によって使用される抗PACAP抗体及びその抗原結合性断片は、N-グリコシル化及び/またはO-グリコシル化を実質的に、または完全に欠いていてよい。一実施形態では、包含される方法において使用される抗PACAP抗体及びその抗原結合性断片は、ヒト定常ドメイン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体を含む。別の実施形態では、抗PACAP抗体及びその抗原結合性断片は、エフェクター機能、半減期、タンパク質分解、またはグリコシル化のうちの少なくとも1つを変更する(増強する、または減衰する)ように修飾されているFc領域を含む。例えば、Fc領域は、N-及び/またはO-グリコシル化を変更または除去する1つまたは複数の変異を含有してよい。
一実施形態では、標記方法は、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、または10-13M以下のKDでPACAPに結合する抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を使用する。好ましくは、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片は、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、または10-12M以下のKDでPACAPに結合する。より好ましくは、当該方法は、約100nM未満、約40nM未満、約1nM未満、約100pM未満、約50pM未満、または約25pM未満であるKDでPACAPに結合するヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を使用する。別法では、抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片は、約10pM~約100pMであるKDでPACAPに結合する。別の実施形態では、ヒト、ヒト化、またはキメラ化抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片は、5×10-4s-1、10-4s-1、5×10-5s-1、または10-5s-1以下のオフ速度(koff)でPACAPに結合する。
別の実施形態では、標記方法で使用される抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片は、別の部分、例えば、検出可能な標識または治療薬に直接的または間接的に付着され;例えば化学的リンカーを含む少なくとも1個のエフェクター部分に付着され;かつ/または例えば、蛍光色素、酵素、基質、生物発光材料、放射性材料、化学発光部分、またはそれらの混合物を含む1つまたは複数の検出可能な部分に付着され;かつ/または1つまたは複数の機能性部分に付着される。
別の実施形態では、当該方法は、例えば、化学療法薬、鎮痛薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、サイトカイン、抗増殖薬、及び制吐薬から選択される別の薬剤を別々に投与、または同時投与することをさらに含む。好ましくは、他の治療薬は、鎮痛薬、例えば、NSAID(シクロオキシゲナーゼ1及び/またはシクロオキシゲナーゼ2阻害薬;イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロシン、ジクロフェナク、及びケトプロフェンを包含するプロピオン酸誘導体;トルメチン及びスリンダクを包含する酢酸誘導体;メフェナム酸及びメクロフェナム酸を包含するフェナム酸誘導体;ジフルニサル及びフルフェニサルを包含するビ
フェニルカルボン酸誘導体;ならびにピロキシム、スドキシカム、及びイソキシカムを包含するオキシカムなど)、オピオイド鎮痛薬(モルヒネもしくはモルヒネ誘導体もしくはその薬学的に許容される塩;コデイン、ジヒドロコデイン、ジアセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、オキシモルホン、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、フェンタニール、スフェンタニル、メペリジン、メタドン、ナルブフィン、プロポキシフェン、及びペンタゾシンまたはそれらの薬学的に許容される塩など)、別の抗体(抗NGF抗体もしくは抗体断片または抗CGRPもしくは抗CGRP受容体(「抗CGRP-R」)抗体もしくは抗体断片など)、または非抗体生物薬、例えば、BOTOX(登録商標)である。
一実施形態では、オピオイド鎮痛薬及び抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片の組合せ投与は、単独で投与されるオピオイド鎮痛薬または抗PACAP抗体もしくはその抗原結合性断片のいずれかと比較して、鎮痛効果を増大させる。
別の実施形態では、対象は、以前に処置され(既処置対象)、抗CGRPもしくは抗CGRP-R抗体またはその抗体断片を投与されたことがある。既処置対象は、抗CGRPまたは抗CGRP-R抗体処置に十分に応答しなかった片頭痛患者(「不十分な応答患者」)であってよい。別法では、既処置対象は、少なくとも1種の抗CGRPもしくは抗CGRP-R抗体またはその抗体断片の投与を以前に受けたことがあってよく、前記抗体またはその抗体断片に対して免疫応答を誘発したことがある。例示的な抗CGRP及び抗CGRP-R抗体ならびにそれらの抗体は、米国特許第9,102,731号;同第9,115,194号;同第8,734,802号;同第8,623,366号;同第8,597,649号;及び同第8,586,045号;ならびに米国特許出願公開第20120294822号、同第20120294802号、及び同第20120294797号において開示されており、それぞれの内容は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
本発明の一態様は一般に、ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用と拮抗するか、それらを阻害、中和、または遮断する抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗ヒトPACAP抗体またはそれらの抗体断片に関する。
さらに、本発明は、ヒトPACAPへの結合について、Ab10及びAb20からなる群から選択され得る抗体、またはその抗原結合性断片と特異的に競合する、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗体断片を包含してよい抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片に関する。
加えて、本発明の抗PACAP抗体及び抗原結合性断片には、少なくともAb10及びAb20からなる群から選択され得る抗PACAP抗体、またはその抗原結合性断片によって結合される少なくとも1つの線状または立体構造エピトープに特異的に結合し得るヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれ得る。エピトープは、例えば、実施例12において開示されているとおりのアラニン走査または別の当技術分野で認識されている方法によって同定され得る。
また、別の実施形態では、本発明の抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、Ab10もしくはAb20、またはその抗原結合性断片のいずれか1つと同一のエピトープに結合するヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗体断片が含まれ得る。エピトープは、例えば、実施例12において開示されているとおりのアラニン走査または別の当技術分野で認識されている方法によって同定され得る。
本発明のさらなる一実施形態では、本発明の抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片には、ヒトPACAP上のエピトープまたは対応するアミノ酸残基を含有するその断片もしくは変異体に特異的に結合し得るヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれ得、ここで、前記エピトープは、下記の1つまたは複数を包含する:
(i)ヒトPACAPの残基19、22、23、及び27のうちの少なくとも1個;
(ii)ヒトPACAPの残基19、22、23、24、及び27のうちの少なくとも1個;
(iii)(i)~(ii)のいずれか1つの残基のうちの少なくとも2個;
(iv)(i)~(ii)のいずれか1つの残基のうちの少なくとも3個;
(v)(i)~(ii)のいずれか1つの残基のうちの少なくとも4個;
(v)(ii)の5個すべての残基。
本発明の具体的な一実施形態では、本発明の抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片には、ヒトPACAP上のエピトープ、またはヒトPACAPの残基19、22、23、及び27を包含し得る対応するアミノ酸残基を含有し得るその断片もしくは変異体に特異的に結合するヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれ得る。また、本発明の別の実施形態では、抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片には、ヒトPACAP上のエピトープ(またはヒト野生型PACAP38中に存在し得る対応するアミノ酸残基を含有し得るその断片もしくは変異体)には特異的に結合するが、ヒト野生型ヒトPACAP27には結合しないヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗体断片が含まれ得る。エピトープは、例えば、実施例12において開示されているとおりのアラニン走査または別の当技術分野で認識されている方法によって同定され得る。
本発明の追加の一実施形態では、本発明の抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片には、ヒトPACAP上のエピトープ、または対応するアミノ酸残基を含有するその断片もしくは変異体に特異的に結合し得るヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗体断片が含まれ得、その際、前記エピトープは、上記のとおりの(i)~(ii)のいずれか1つの残基からなってよい。エピトープは、例えば、実施例12において開示されているとおりのアラニン走査または別の当技術分野で認識されている方法によって同定され得る。
本発明の別の態様はまた、ヒト野生型PACAP38及びヒト野生型ヒトPACAP27中に存在し得るヒトPACAP上のエピトープ(または対応するアミノ酸残基を含有するその断片もしくは変異体)に特異的に結合する、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片を含み得る抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片を包含する。
加えて、抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片には、ヒト野生型ヒトPACAP38には特異的に結合し得るが、ヒト野生型ヒトPACAP27には結合しないか、または感知できるほどには結合し得ないヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗体断片が含まれ得る。本発明の別の実施形態では、本発明の抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、ヒトPACAP27に対する前記抗体または抗体断片のKDよりも少なくとも10倍、100倍、1000倍、10,000倍、または100,000倍低くあり得る(強くあり得る)ヒトPACAP38についてのKDを有し得るヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗体断片が含まれ得る。
別の実施形態では、本発明の抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、ヒト
血管作動性腸管ペプチド(「VIP」)に結合しないか、または感知できるほどに結合しないヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗体断片が含まれ得る。前記抗PACAP抗体またはそれらの抗体断片は、ヒトVIPに対する前記抗体または抗体断片のKDよりも少なくとも10倍、100倍、1000倍、10,000倍、または100,000倍低くあり得る(強くあり得る)ヒトPACAPについてのKDを有し得る。
本発明の実施形態では、本明細書において開示されるとおりのヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片は、ヒトPACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和し得る。
別の実施形態では、本発明の抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片には、次の特性の1つまたは複数を含んでよいヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗体断片が含まれ得る:(a)PAC1受容体(「PAC1-R」)、血管作動性腸管ペプチド受容体1型(「VPAC1-R」)、及び/または血管作動性腸管ペプチド受容体2型(「VPAC2-R」)のうちの少なくとも1つのPACAP活性化を阻害、遮断、または防止する;(b)PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を阻害、遮断、または防止する;(c)PAC1-RのPACAP活性化を阻害、遮断、または防止する;(d)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害することができる;(e)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害することができる;(f)PAC1-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができる;(g)VPAC1-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができる;(h)VPAC2-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができ得る;(i)例えばグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害する;(j)例えばGAGを介しての細胞表面へのそのような抗体のPACAP媒介性結合を阻害しない;(k)例えばグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのそのような抗体のPACAP媒介性結合を阻害する;(l)PACAP誘導性cAMP産生を阻害、遮断、または防止する;(m)対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張を減少させる;及び/または(n)対象に投与された場合に、PACAP誘導性羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させる。
本発明は、ヒト対象において実質的に非免疫原性であり得る、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片であってよい抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片にも関し得る。本発明は、血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化の増大と関連する急性、一時性または慢性状態を有するヒト対象を処置するために適し得る、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片であってよい抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片にも関し得る。
本発明の別の実施形態は、ヒトPACAP上で、Ab10またはAb20から選択され得る抗PACAP抗体と同じか、または重複する線状または配座異性エピトープ(複数可)に特異的に結合し、かつ/または同じか、または重複する線状または配座異性エピトープ(複数可)への結合について競合し得る、好ましくは、ヒト、ヒト化、またはキメラ化抗PACAP抗体、あるいは抗原結合性断片であり得る抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片に関する。本発明のまた別の実施形態は、ヒトPACAP上で、Ab10またはAb20から選択され得る抗PACAP抗体と同じか、または重複する線状または配座異性エピトープ(複数可)に特異的に結合し得る抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片、好ましくは、ヒト、ヒト化、またはキメラ化抗PACAP抗体、あるいは抗原
結合性断片に関する。本発明の前記抗体または抗体断片が結合する本明細書において記載されているとおりの前記エピトープは、例えば、実施例12において開示されているとおりのアラニン走査または別の当技術分野で認識されている方法によって同定され得る。
本発明は、Ab10またはAb20から選択されてよい抗PACAP抗体の、好ましくはVH CDR3及び/またはVL CDR3を含む少なくとも2つの相補性決定領域(「CDR」)を含んでよい、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片であってよい抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片も実施し得る。本発明の別の追加の実施形態は、Ab10またはAb20から選択されてよい抗PACAP抗体のうちの少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つすべてのCDRSを含んでよい、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片であってよい抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片を包含し得る。6つすべてのCDRが存在し得ない場合、好ましくは少なくともVH CDR3及びVL CDR3が存在し得る。
本発明の別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗体断片は、結合親和性または免疫原性を推定上で変更し得る1つまたは複数の修飾を含有してよい本発明の抗体または抗体断片のいずれかの配列変異体を含んでよい。
具体的な一実施形態では、本発明による抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片であり、(a)配列番号404からなるCDR1配列;配列番号406からなるCDR2配列;及び配列番号408からなるCDR3配列を含む可変重鎖;及び/または(b)配列番号424からなるCDR1配列;配列番号426からなるCDR2配列;及び配列番号428からなるCDR3配列を含む可変軽鎖を含む。別法では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号402に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、及び/または(b)配列番号422に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含み得る。別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号402のアミノ酸配列を有する可変重鎖、及び/または(b)配列番号422のアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含む。より具体的には、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号401のアミノ酸配列を有する重鎖、及び/または(b)配列番号421のアミノ酸配列を有する軽鎖を含むことができる。
別の具体的な実施形態では、本発明による抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、ヒト、ヒト化、またはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片であり、(a)配列番号444からなるCDR1配列;配列番号446からなるCDR2配列;及び配列番号448からなるCDR3配列を含む可変重鎖;及び/または(b)配列番号464からなるCDR1配列;配列番号466からなるCDR2配列;及び配列番号468からなるCDR3配列を含む可変軽鎖を含む。別法では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号442に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、及び/または(b)配列番号462に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含むことができる。別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号442のアミノ酸配列を有する可変重鎖、及び/または(b)配列番号462のアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含む。より具体的には、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号441のアミノ酸配列を有する重鎖、及び/または(
b)配列番号461のアミノ酸配列を有する軽鎖を含んでよい。
加えて、本発明の抗PACAP抗体及び抗原結合性断片には、scFv、ラクダ抗体、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(「IgNAR」)、断片抗原結合性(「Fab」)断片、Fab’断片、MetMab様抗体、一価抗体断片、及びF(ab’)2断片からなる群から選択されてよいヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が含まれ得る。別の実施形態では、本発明の抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片は、N-グリコシル化及び/またはO-グリコシル化を実質的に、または完全に欠いていてよい。また、本発明は、本発明の抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片が、ヒト定常ドメイン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4抗体またはその断片の定常ドメインを含んでよい本発明の実施形態を包含する。
本発明の追加の一実施形態は、エフェクター機能、半減期、タンパク質分解、またはグリコシル化のうちの少なくとも1個つを変更するように修飾されていてよいFc領域を含んでよく、例えば、Fc領域が、N-及び/またはO-グリコシル化を変更または除去し得る1つまたは複数の変異を含有してよい抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片に関する。
本発明のまた別の実施形態では、抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片は、例えば、ELISA、バイオレイヤー干渉法(「BLI」)、KINEXA、または表面プラスモン共鳴によって25℃または37℃で決定され得るとおり、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、または10-13M以下の結合親和性(KD)でPACAPに結合し得る。また、本発明の別の実施形態は、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、または10-12M以下の結合親和性(KD)でPACAPに結合し得る抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片に関する。加えて、本発明の抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片には、5×10-4s-1、10-4s-1、5×10-5s-1、または10-5s-1以下のオフ速度(koff)でPACAPに結合する抗PACAP抗体または抗体断片が含まれ得る。
本発明の別の実施形態は、検出可能な標識または治療薬に直接的または間接的に付着されていてよい抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片に関する。本発明の追加の一実施形態は、対象に投与された場合に、PACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和し得る抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片に関する。本発明の抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片は、PACAP27及び/またはPACAP38に結合し得、かつPAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RへのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断し得;PACAP27及び/またはPACAP38に結合し得、かつPAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれへのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断し得;かつ/またはPACAP27及び/またはPACAP38に結合し得、かつPAC1-R発現細胞、VPAC1-R発現細胞、及び/またはVPAC2-R発現細胞へのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断
し得る。
本発明の別の実施形態では、本発明の抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片は、PAC1-R、VPAC1-R、またはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害し得;PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を中和または阻害し得;PAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害し得;PAC1-R、VPAC1-R、またはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害または防止することができ得;PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害または防止することができ得;PAC1-R発現細胞、VPAC1-R発現細胞、及び/またはVPAC2-R発現細胞へのPACAP結合を阻害または防止することができ得;PACAP誘導性cAMP産生を阻害または遮断し得;対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させ得る。
本発明のまた別の実施形態では、抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片は、約100nM未満であり得るKDで;約40nM未満であり得るKDで;約100pM未満であり得るKDで;約50pM未満であり得るKDで;約25pM未満であり得るKDで;または約10pM~約100pMであり得るKDで、PACAPに結合し得る。本発明はまた、VIPと比較してPACAPについて強い結合親和性を有し得る、かつ/またはVIPには結合し得ない、例えば、VIPへのその抗体または抗体断片の親和性よりも少なくとも10倍、30倍、100倍、300倍、1000倍、3000倍、10000倍、30000倍、100000倍、300000倍、1000000倍、3000000倍、10000000倍、30000000倍またはそれ以上強くてよいPACAPに対する親和性を有し得る抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片を包含する。
別の実施形態では、本発明は、例えば化学的リンカーを含んでよい少なくとも1つのエフェクター部分に付着されていてよい抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片に関する。別の実施形態では、本発明は、例えば蛍光色素、酵素、基質、生物発光材料、放射性材料、化学発光部分、及び/またはそれらの混合物を含んでよい1つまたは複数の検出可能な部分に付着されていてよい抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片に関する。また、本発明の抗PACAP抗体及び抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片は、1つまたは複数の機能性部分に付着されていてよい。
本発明の別の実施形態は、抗PACAP抗体または抗体断片に対して産生され得る抗イディオタイプ抗体に関し、前記抗イディオタイプ抗体は、それらが結合し得る抗PACAP抗体の1つまたは複数の生物学的作用を任意選択で中和し得る。本発明の前記実施形態は、対象において前記抗PACAP抗体または抗体断片のin vivoレベルをモニターするか、または対象において前記抗PACAP抗体のin vivo作用を中和するために、前記抗イディオタイプ抗体を使用する方法にも関連付けられ得る。
また別の実施形態では、本発明は、治療、予防、または診断用途に適し得る組成物であって、治療、予防、または診断有効量のうちの少なくとも1種の抗PACAP抗体もしくは抗体断片または抗イディオタイプ抗体を含んでよく、例えば、注射、局所、経口、吸入、または経皮による投与に適していてよく;皮下、静脈内、筋肉内、局所、経口、吸入、鼻腔内、頬側内、膣、肛門、経皮、腹腔内、または髄腔内投与に適していてよく;かつ/
または皮下静脈内または筋肉内投与に適していてよい組成物に関する。本発明はまた、少なくとも1種の抗PACAP抗体もしくは抗体断片または抗イディオタイプ抗体の前記組成物が凍結乾燥されていてよく;かつ/または前記組成物が薬学的に許容される希釈剤、担体、溶解補助剤、乳化剤、防腐剤、またはそれらの混合物を含んでよい本発明の実施形態を包含する。本発明の前記組成物は、少なくとも1種の他の活性薬剤をさらに含んでよく、例えば、そこでは、他の活性薬剤は、化学療法薬、鎮痛薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、サイトカイン、抗増殖薬、制吐薬、及び/または細胞毒素からなる群から選択されてよい。前記組成物はまた、注射による投与のために凍結乾燥、安定化、かつ/または製剤化されていてよい。
本発明のさらなる一実施形態は、1つまたは複数のベクターまたはベクター内に含有されてよい、抗PACAP抗体もしくは抗体断片または抗イディオタイプ抗体をコードし得る1つまたは複数の単離核酸配列を包含する。加えて、本発明の一実施形態では、宿主細胞は、前記1種または複数の単離核酸配列を含んでよく、その際、前記宿主細胞は、哺乳類、細菌、真菌、酵母、鳥類、両生類、植物、または昆虫細胞であってよく;かつ/または前記宿主細胞は、糸状真菌または酵母であってよい。前記宿主細胞が酵母細胞であり得る場合、その酵母は、次の属:Arxiozyma;Ascobotryozyma;Citeromyces;Debaryomyces;Dekkera;Eremothecium;Issatchenkia;Kazachstania;Kluyveromyces;Kodamaea;Lodderomyces;Pachysolen;Pichia;Saccharomyces;Saturnispora;Tetrapisispora;Torulaspora;Williopsis;及びZygosaccharomycesから選択されてよいか;または酵母は、Pichia属であってよい。本発明の一実施形態では、酵母宿主細胞は、Pichia pastoris、Pichia methanolica及びHansenula polymorpha(Pichia angusta)から選択されてよい。加えて、前記宿主細胞は、糸状真菌または酵母であってよいか、またはCHO細胞であってよい。
本発明はまた、限定されないが、本明細書において開示される宿主細胞を、前記抗体または抗体断片の発現をもたらし得る条件下で培養することを含んでよい抗PACAP抗体または抗体断片を発現する方法に関する。加えて、本発明は、宿主細胞が、前記抗体または抗体断片を安定発現及び分泌し得る酵母細胞またはCHO細胞であってよい前記方法に関する。例えば、前記酵母細胞は、(i)プロモーター及びシグナル配列に作動可能に連結された前記抗体をコードする1種または複数種の異種ポリヌクレオチドを含有する少なくとも1つの発現ベクターを一倍酵母細胞に導入すること;(ii)交配またはスフェロプラスト融合によって、前記第1及び/または第2の一倍酵母細胞から倍数酵母を生成すること;(iii)前記抗体を安定発現する倍数酵母細胞を選択すること;ならびに(iv)前記抗体を培養培地に安定発現する前記倍数酵母細胞から、安定な倍数酵母培養物を生成することを含んでよい方法によって作製され得る倍数酵母であってよく;前記倍数酵母は、Pichia属のものであってよい。加えて別の実施形態では、本発明は、哺乳類細胞、例えば、CHO細胞であってよい宿主細胞を培養することを含んでよい抗PACAP抗体または抗体断片を発現する方法を包含する。
加えて、本発明は、対象において、PACAPと関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、遮断、または中和し得る方法であって、前記対象に、ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用と拮抗するか、それらを阻害、中和、または遮断し得る治療または予防有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片を投与することを含んでよい方法に関する。本発明の別の態様は、対象において、PACAPと関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、または中和し得る方法であって、前記対象に、ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用と
拮抗するか、それらを阻害、中和、または遮断し得て、かつVIPと実質的に相互作用し得ない(結合し得ない)治療または予防有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片を投与することを含んでよい方法に関する。
本発明の別の態様は概して、対象において、PACAPと関連する1つまたは複数の生物学的作用、例えば、血管運動作用を遮断、阻害、遮断、または中和し得る方法であって、対象に、下記:PACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害、遮断、または中和すること;PAC1-R、VPAC1-R、及び/もしくはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害すること;PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を阻害、遮断、または中和すること;PAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害すること;PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害すること;PAC1-R、VPAC1-R、及び/もしくはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害すること;PAC1-R発現細胞へのPACAP結合を阻害すること;VPAC1-R及び/もしくはVPAC2-R発現細胞へのPACAP結合を阻害すること;例えばグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのそのような抗体のPACAP媒介性結合を阻害しないこと;例えばグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害すること;PACAP誘導性cAMP産生を阻害すること;ならびに/または、対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させ得ることの1つまたは複数を含んでよい治療または予防有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片を投与することを含んでよい方法に関する。
本発明の別の実施形態は、対象において、PACAPと関連し得るか、またはそれによって誘発され得る血管拡張、例えば、硬膜動脈の血管拡張を遮断、阻害、または中和し得る方法であって、対象に、PACAPと関連するか、またはそれによって誘発される血管拡張を遮断、阻害、または中和し得る治療または予防有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片を投与することを含んでよい方法に関する。
本発明のまた別の実施形態は、対象において、例えば前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、及び緊張性頭痛から選択され得る頭痛または片頭痛の発症、頻度、重症度、または期間を処置または予防し得る方法であって、それを必要とする対象に、次の作用:PACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和すること;PAC1-R、VPAC1-R、及び/もしくはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害すること;PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を中和または阻害すること;PAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害すること;PAC1-R、VPAC1-R、及び/もしくはVPAC2-Rのうちの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害すること;PAC1-R、VPAC1-R、及び/もしくはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害すること;PAC1-R発現細胞へのPACAP結合を阻害すること;VPAC1-R及び/もしくはVPAC2-R発現細胞へのPACAP結合を阻害すること;例えばGAGを介しての細胞表面へのそのような抗体のPACAP媒介性結合を阻害すること;例えばグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害すること;PACAP誘導性環状アデノシン一リン酸(「cAMP」)の産生を阻害すること;ならびに/または、対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させることの1つまたは複数を誘発し得る有効量のヒト、ヒト化、またはキメラ化抗ヒトPACAP抗体または抗体断片を投与することを含んでよい方法に関する。
本発明の別の実施形態は、血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及びニューロン活性化の増大のうちの少なくとも1つまたは前記状態の組合せと関連し得る急性、一時性または慢性状態を有し得るヒト対象を処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の拮抗性ヒト、ヒト化、またはキメラ化抗ヒトPACAP抗体または抗体断片を投与することを含んでよい方法に関する。
また別の実施形態では、本発明は、対象において、PACAPと関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、または中和し得る方法であって、それを必要とする対象に、ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用と拮抗するか、それらを阻害、中和、または遮断し得る有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片を投与することを含んでよい方法に関する。また、本発明の一実施形態は、対象において、PACAPと関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、または中和し得る方法であって、それを必要とする対象に、ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用と拮抗するか、それらを阻害、中和、または遮断し得、かつVIPと実質的に相互作用し得ない(結合し得ない)有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片を投与することを含んでよい方法を包含する。
別の実施形態では、本発明は、対象において、PACAPと関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、または中和し得る方法であって、それを必要とする対象に、(a)PACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和し;(b)PAC1受容体(「PAC1-R」)、血管作動性腸管ペプチド受容体1型(「VPAC1-R」)、及び/または血管作動性腸管ペプチド受容体2型(「VPAC2-R」)の少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害し;(c)PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を中和または阻害し;(d)PAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害し;(e)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害し;(f)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害し;(g)PAC1-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができ得;(h)例えばグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害し;(i)例えばGAGを介しての細胞表面へのそのような抗体のPACAP媒介性結合を阻害し;(j)PACAP誘導性環状アデノシン一リン酸(「cAMP」)産生を阻害し;ならびに/あるいは(k)対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させる、有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片を投与することを含んでよい方法に関する。
さらに、本発明の一実施形態は、対象において、例えば、前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、及び緊張性頭痛から選択される得る頭痛または片頭痛の発症、頻度、重症度、または期間を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、(a)PACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和し;(b)PAC1受容体(「PAC1-R」)、血管作動性腸管ペプチド受容体1型(「VPAC1-R」)、及び/または血管作動性腸管ペプチド受容体2型(「VPAC2-R」)の少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害し;(c)PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を中和または阻害し;(d)PAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害し;(e)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害することができ得;(f)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rのそれぞ
れへのPACAP結合を阻害し;(g)PAC1-R発現細胞へのPACAP結合を阻害し;(h)例えばグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害し;(i)例えばGAGを介しての細胞表面へのそのような抗体のPACAP媒介性結合を阻害し;(j)PACAP誘導性環状アデノシン一リン酸(「cAMP」)産生を阻害し;ならびに/あるいは(k)対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させる、有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片を投与することを含んでよい方法に関する。
本発明のさらなる一実施形態は、血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及びニューロン活性化の増大、または上のいずれかの組合せの少なくとも1つと関連する急性、一時性、または慢性状態を有し得るヒト対象を処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の拮抗性ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片を投与することを含んでよい方法を包含する。
本発明はまた、本明細書において開示される方法のいずれかであって、本発明の抗PACAP抗体または抗原結合性断片の投与を含んでよく、かつ前記抗PACAP抗体が、ヒト抗体または抗原結合性断片であってよく;かつ/または抗PACAP抗体が、ヒト化抗体または抗原結合性断片であってよく;かつ/または抗PACAP抗体が、キメラ抗体または抗原結合性断片であってよい方法に関する。
本発明の別の実施形態はまた、本発明の抗PACAP抗体または抗体断片がPACAP27及び/またはPACAP38に結合し得、かつPAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RへのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断し得る方法に関する。本発明の別の実施形態は、前記抗PACAP抗体または抗体断片が、PACAP27及び/またはPACAP38に結合し得、かつPAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれへのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断し得る方法に関する。本発明のまた別の実施形態は、前記抗PACAP抗体または抗体断片がPACAP27及び/またはPACAP38に結合し得、かつPAC1-R発現細胞へのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断し得る方法に関する。加えて、本発明の前記抗PACAP抗体または抗体断片は、VIPに対する前記抗体または抗体断片の親和性よりも少なくとも10倍、30倍、100倍、300倍、1000倍、3000倍、10000倍、30000倍、100000倍、300000倍、1000000倍、3000000倍、10000000倍、30000000倍、またはそれ以上高くあり得るPACAPに対する親和性を有し得る。
本発明は、対象において、PACAPと関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、遮断、または中和し得る方法であって、前記対象に、ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用と拮抗するか、それらを阻害、中和、または遮断し得る治療または予防有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片を投与することを含んでよく、前記対象が、前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、緊張性頭痛、全体頭痛(general headaches)、ホットフラッシュ、羞明、慢性発作性片頭痛、頭部における潜在的構造問題による二次性頭痛、頸部における潜在的構造問題による二次性頭痛、脳神経痛、副鼻洞性頭痛、副鼻腔炎と関連する頭痛、アレルギー誘導性頭痛、アレルギー誘導性片頭痛、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、幻想肢痛、線維筋痛症、反射性交感神経性ジストロフィー、疼痛、慢性疼痛、炎症性疼痛、術後切開疼痛、手術後疼痛、外傷関連疼痛、下背部痛、眼疼痛、歯痛、複合性局所疼痛症候群、癌性疼痛、原発性または転移性骨癌性疼痛、骨折痛、骨粗鬆症骨折痛、火傷から生じる疼痛、通風性関節痛、鎌状赤血球発症と関連する疼痛、側頭下顎障害と関連する疼痛、硬変、肝炎、神経原性疼痛、神
経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、内臓疼痛、月経痛、卵巣痛、変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、糖尿病性神経障害、坐骨神経痛、消化不良、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病、回腸炎、潰瘍性大腸炎、腎仙痛、月経困難、膀胱炎、間質性膀胱炎、月経期、分娩、閉経期、膵臓炎、統合失調症、うつ病、心的外傷後ストレス障害(「PTSD」)、不安障害、自己免疫性糖尿病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、過活動性膀胱、気管支反応亢進、喘息、卒中、気管支炎、気管支拡張、気腫、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、炎症性皮膚炎、腺組織における腺癌、臓器の胚組織における芽細胞腫、上皮組織における癌腫、血液細胞を形成する組織における白血病、リンパ組織におけるリンパ腫、骨髄における骨髄腫、結合または支持組織における肉腫、副腎癌、AIDS関連リンパ腫、貧血、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、類癌腫、子宮頸癌、化学療法、結腸癌、血球減少症、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部癌、頸部癌、肝胆道癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、神経系腫瘍、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、皮膚癌、胃癌、睾丸癌、甲状腺癌、尿道癌、骨髄の癌、多発性骨髄腫、骨に転移する腫瘍、神経及び中空臓器を浸潤する腫瘍、神経構造付近の腫瘍、尋常性ざそう、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、ケロイド、肥厚性瘢痕及び酒さ、内皮機能不全、レイノー症候群、冠動脈性心疾患(「CHD」)、冠動脈疾患(「CAD」)、心不全、末梢動脈疾患(「PAD」)、糖尿病、肺高血圧(「PH」)、結合組織障害、アレルギー性皮膚炎、乾癬、そう痒症、神経原性皮膚発赤、紅斑、サルコイドーシス、ショック、敗血症、オピエート離脱症候群、モルヒネ耐性、及びてんかんからなる群から選択される状態を有してよい方法を包含する。加えて、前記対象は、片頭痛、頭痛、及び疾患または状態と関連する疼痛からなる群から選択される状態を有してよく、その際、前記頭痛または片頭痛は、前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、及び緊張性頭痛からなる群から選択されてよい。また、前記対象は、色盲、無虹彩、抗コリン作動薬に起因する羞明、無水晶体症、牛眼症、白内障、錐体ジストロフィー、眼の先天異常、ウイルス性結膜炎、角膜擦傷、角膜ジストロフィー、角膜潰瘍、角膜上皮細胞の破壊、水晶体転位症、眼内炎、疾患に起因する眼外傷、損傷に起因する眼外傷、感染に起因する眼外傷、霰粒腫、上強膜炎、緑内障、円錐角膜、視神経形成不全、小眼、先天性緑内障虹彩炎、視神経炎、色素拡散症候群、瞳孔散大、網膜剥離、角膜の瘢痕化、強膜及びブドウ膜炎からなる群から選択される羞明と関連する眼障害を有してよい。さらに、前記対象は、自閉症スペクトラム障害、キアリ形成異常、失読症、脳炎、髄膜炎、クモ膜下出血、後頭頭蓋の腫瘍、強直性脊椎炎、白色症、リボフラビン欠乏症、ベンゾジアゼピン、化学療法、チクングニア、シスチン症、エーレルス-ダンロー症候群、二日酔い、インフルエンザ、感染性単核細胞症、マグネシウム欠乏、水銀中毒、片頭痛、狂犬病、及びチロシン血症II型からなる群から選択される羞明と関連する神経系関連または神経状態を有してよい。加えて、前記対象は、前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、虹彩炎、ブドウ膜炎、髄膜炎、うつ病、双極性障害、群発性頭痛もしくは別の三叉神経・自律神経性頭痛(「TAC」)または眼瞼痙攣、うつ病、広場恐怖症及び双極性障害からなる群から選択される羞明関連障害を有してよい。
加えて、本発明は、本明細書において開示される方法のいずれかであって、本明細書において開示される方法のいずれかの抗体が、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片であってよく、かつ/または本明細書において開示される方法のいずれかの前記抗体が結合するエピトープが、アラニン走査によって同定され得る方法を包含する。
本発明はまた、ヒト、ヒト化、またはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片であってよい抗体または抗体断片に関し;かつ/または抗体または抗体断片が、ヒト、ヒト化、またはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片であってよく;かつ/または抗体または抗体断片が、Ab10またはAb20から選択され得る抗PACAP抗体と同じCDRを
含み得る抗PACAP抗体または抗体断片であってよい本明細書において開示される方法のいずれかを包含する。
加えて、本発明は、本明細書において開示される方法のいずれかであって、抗PACAP抗体または抗原結合性断片が、Ab10またはAb20から選択され得る抗PACAP抗体の少なくとも3個のCDR;少なくとも4個のCDR;少なくとも5個のCDR;または6個すべてのCDRを含んでよい方法を包含する。
本発明はまた、本発明による抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片が、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片であり、(a)配列番号404からなるCDR1配列;配列番号406からなるCDR2配列;及び配列番号408からなるCDR3配列を含む可変重鎖;及び/または(b)配列番号424からなるCDR1配列;配列番号426からなるCDR2配列;及び配列番号428からなるCDR3配列を含む可変軽鎖を含む、本明細書において開示される方法のいずれかを包含する。別法では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号402に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、及び/または(b)配列番号422に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含み得る。別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号402のアミノ酸配列を有する可変重鎖、及び/または(b)配列番号422のアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含む。より具体的には、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号401のアミノ酸配列を有する重鎖、及び/または(b)配列番号421のアミノ酸配列を有する軽鎖を含み得る。
本発明はまた、本発明による抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片が、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片であり、(a)配列番号444からなるCDR1配列;配列番号446からなるCDR2配列;及び配列番号448からなるCDR3配列を含む可変重鎖;及び/または(b)配列番号464からなるCDR1配列;配列番号466からなるCDR2配列;及び配列番号468からなるCDR3配列を含む可変軽鎖を含む、本明細書において開示される方法のいずれかを包含する。別法では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号442に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、及び/または(b)配列番号462に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含み得る。別の実施形態では、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号442のアミノ酸配列を有する可変重鎖、及び/または(b)配列番号462のアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含む。より具体的には、抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、(a)配列番号441のアミノ酸配列を有する重鎖、及び/または(b)配列番号461のアミノ酸配列を有する軽鎖を含み得る。
本発明はまた、抗PACAP抗体または抗体断片が、scFv、ラクダ抗体、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(「IgNAR」)、断片抗原結合性(「Fab」)断片、Fab’断片、MetMab様抗体、一価抗体断片、及びF(ab’)2断片からなる群から選択され得る、本明細書において開示される方法のいずれかに関する。加えて、本発明は、抗PACAP抗体または抗体断片がN-グリコシル化及び/またはO-グリコシル化を実質的に、または完全に欠いていてよい、本明細書において開示される方法のいずれかに関する。また本発明は、抗PACAP抗体または抗体断片が、ヒト定常ドメイン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のヒト定常ドメインを
含んでよい、本明細書において開示される方法のいずれかに関する。
本発明の別の態様は、抗PACAP抗体または抗体断片が、エフェクター機能、半減期、タンパク質分解、またはグリコシル化のうちの少なくとも1つを変更するように修飾されていてよいFc領域を含んでよく、例えば、Fc領域が、N-及び/またはO-グリコシル化を変更または除去し得る1つまたは複数の変異を含有してよい、本明細書において開示される方法のいずれかに関する。
本発明のさらなる一態様は、抗PACAP抗体または抗体断片が5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、または10-13M以下の結合親和性(KD)でPACAPに結合し得る、本明細書において開示される方法のいずれかに関する。また、本明細書において開示される方法のいずれかの前記抗PACAP抗体または抗体断片は、5×1010M、1010M、5×1011M、1011M、5×1012M、または1012M以下の結合親和性(KD)でPACAPに結合し得る。本発明の別の実施形態は、抗PACAP抗体または抗体断片が5×10-4s-1、10-4s-1、5×10-5s-1、または10-5s-1以下のオフ速度(koff)でPACAPに結合し得る、本明細書において開示される方法のいずれかに関する。
さらに、本発明は、抗PACAP抗体または抗体断片が、検出可能な標識または治療薬に直接的または間接的に付着されていてよい、本明細書において開示される方法のいずれかを包含する。また、本発明は、抗PACAP抗体または抗体断片が、約100nM未満、約40nM未満、約1nM未満、約100pM未満、約50pM未満、または約25pM未満であり得るKDでPACAPに結合し得る、本明細書において開示される方法のいずれかに関する。また、本発明は、抗PACAP抗体または抗体断片が約10pM~約100pMであり得るKDでPACAPに結合し得る、本明細書において開示される方法のいずれかを包含する。本発明はさらに、例えば、化学療法薬、鎮痛薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、サイトカイン、抗増殖薬、制吐薬、または細胞毒素から選択されてよい別の薬剤を別々に、または同時投与することをさらに含んでよい、本明細書において開示される方法のいずれかに関する。また本発明は、他の治療薬が鎮痛薬であってよく、前記鎮痛薬が非ステロイド系抗炎症薬(「NSAID」)、オピオイド鎮痛薬、別の抗体もしくは抗体断片生物薬であってよく、さらに前記他の抗体が抗NGF抗体または抗体断片であってよく;かつ/または抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(「CGRP」)抗体または抗体断片及び/または抗CGRP受容体抗体または抗体断片であってよい、本明細書において開示される方法のいずれかを包含する。本発明はまた、前記NSAIDが、シクロオキシゲナーゼ1及び/またはシクロオキシゲナーゼ2阻害薬であってよい本明細書に開示されている方法のいずれかに関する。
本発明の別の実施形態では、本明細書において開示されるとおりの抗PACAP抗体もしくは抗体断片または方法は、血管拡張に対するPACAPの作用を阻害し得;かつ/またはcAMP産生に対するPACAPの作用を阻害し得;かつ/またはPLCに対するPACAPの作用を阻害して、Ca++及びPLDレベルを低下させ得;かつ/またはアデニル酸シクラーゼ活性に対するPACAPの作用を阻害し得;かつ/またはPAC1-R、VPAC1-R、またはVPAC2-Rのいずれかまたはすべてへのその結合に対するPACAPの作用を阻害し得;かつ/または神経発生に対するPACAPの作用を阻害し得;神経保護に対するPACAPの作用を阻害し得;かつ/または神経調節に対するPACAPの作用を阻害し得;かつ/または神経性炎症に対するPACAPの作用を阻害し得;かつ/または侵害受容に対するPACAPの作用を阻害し得;かつ/または例えば、例
えばヘパリン、コンドロイチン、ケラチン、及びヒアルロン酸の1種または複数種を含んでよい少なくとも1つのGAGを介しての細胞表面への結合とのPACAPの相互作用を調節し得、さらに前記抗体もしくは抗体断片または方法は、PACAP38及び/またはPACAP27の受容体非依存性細胞取り込みを遮断または阻害し得、かつ/または細胞によるPACAP38及び/またはPACAP27のGAG依存性取り込みを阻害し得るか、または遮断し得る。
本発明のさらなる一実施形態は、本発明の抗PACAP抗体または抗体断片の投与を含んでよい治療または予防方法に関する。加えて、本発明は、本発明の抗PACAP抗体または抗体断片を含有し得る、ヒト治療において使用し得る組成物に関する。前記組成物は、例えば、化学療法薬、鎮痛薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、サイトカイン、抗増殖薬、制吐薬、または細胞毒素から選択され得る別の活性薬剤を含有してよい。前記他の薬剤が鎮痛薬であってよい場合、前記鎮痛薬は、NSAID、オピオイド鎮痛薬、別の抗体または非抗体生物薬であってよい。前記他の薬剤が、別の抗体であってよい鎮痛薬であってよい場合、他の抗体は、抗NGF抗体または抗体断片であってよく、かつ/または他の抗体は、抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(「CGRP」)抗体もしくは抗体断片及び/または抗CGRP受容体抗体もしくは抗体断片であってよい。前記他の薬剤がNSAIDであってよい場合、前記NSAIDは、シクロオキシゲナーゼ1及び/またはシクロオキシゲナーゼ2阻害薬であってよく;かつ/または前記NSAIDは、(1)イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロシン、ジクロフェナク、及びケトプロフェンを包含するプロピオン酸誘導体;(2)トルメチン及びスリンダクを包含する酢酸誘導体;(3)メフェナム酸及びメクロフェナム酸を包含するフェナム酸誘導体;(4)ジフルニサル及びフルフェニサルを包含するビフェニルカルボン酸誘導体;ならびに(5)ピロキシム、スドキシカム、及びイソキシカムを包含するオキシカムからなる群から選択されてよい。前記他の薬剤がオピオイド鎮痛薬であってよい場合、前記オピオイド鎮痛薬は、コデイン、ジヒドロコデイン、ジアセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、オキシモルホン、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、フェンタニール、スフェンタニル、メペリジン、メタドン、ナルブフィン、プロポキシフェン、ペンタゾシン、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択されてよく;かつ/または前記オピオイド鎮痛薬は、モルヒネもしくはモルヒネ誘導体またはそれらの薬学的に許容される塩であってよく;かつ/または前記オピオイド鎮痛薬及び本発明による抗PACAP抗体または抗原結合性断片は、単独で投与されるオピオイド鎮痛薬または抗PACAP抗体もしくは抗原結合性断片のいずれかと比較して、鎮痛効果を増大させ得る。
本発明の別の実施形態では、本発明による抗PACAP抗体もしくは断片または組成物は、それらの抗PACAP抗体または断片及び別の活性薬剤が一緒に組み合わされてよいか、または組み合わせて投与されてよい場合、PACAP関連作用、例えば、片頭痛の処置もしくは予防に対して、または疼痛に対して相乗または相加効果を誘発し得る。本発明は加えて、治療または診断、例えば、片頭痛の処置または予防において使用され得る、本発明による抗PACAP抗体もしくは断片または組成物を包含する。本発明のさらなる一実施形態は、ホットフラッシュ、前兆を伴う、もしくは伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、または緊張性頭痛の1つまたは複数を処置するために場合によって使用され得る、本発明による抗PACAP抗体もしくは断片または組成物に関する。
本発明の別の実施形態は、頭痛、例えば、前兆を伴う、もしくは伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、または緊張性頭痛を寛解させるか、制御するか、その発生率を低下させるか、またはその発生もしくは進行を遅延させるために使用され得る、本発明による抗PACAP抗体もしくは断片または組成物に関する。本発明の一実施形態では、その使用は、抗CGRP抗体もし
くは抗体断片及び/または抗CGRP受容体抗体もしくは抗体断片を以前に受けたことがあってよいか、または受けていてよい対象のための使用であってよく、さらにその際、前記対象は、抗CGRP抗体もしくは抗体断片及び/または抗CGRP受容体抗体もしくは抗体断片処置に十分には応答し得なかった片頭痛患者であってよく;かつ/または前記対象は、抗CGRP抗体もしくは抗体断片及び/または抗CGRP受容体抗体もしくは抗体断片に対する免疫応答を誘発し得た少なくとも1種の抗CGRP抗体もしくは抗体断片及び/または抗CGRP受容体抗体もしくは抗体断片投与を以前に受けたことがあってよい。
詳細な説明
定義
本発明は、特定の方法論、プロトコル、細胞系、動物種または属、及び使用試薬に限定されず、変化し得ることを理解されたい。本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態のみを記載することを目的としたものであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることとなることも理解されたい。本明細書において使用される場合、単数形「a」、「and」、及び「the」は、内容が別段に明確に述べていない限り、複数の指示物も包含する。したがって、例えば、「a cell(細胞)」との言及は、複数のそのような細胞を包含し、「the protein(タンパク質)」との言及は、1つまたは複数のタンパク質及び当業者に知られているその同等物の言及を包含する、などである。本明細書において使用される技術用語及び科学用語はすべて、別段に明確に指示されていない限り、本発明が属する分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。
下垂体アデニル酸シクラーゼ-活性化ポリペプチド(PACAP):本明細書において使用される場合、別段に述べられない限り、PACAPは、PACAPの任意の哺乳類形態を包含し、殊に、次のHomo sapiens PACAP27及びHomo sapiens PACAP38アミノ酸配列を包含する:
PACAP38:
HSDGIFTDSYSRYRKQMAVKKYLAAVLGKRYKQRVKNK(配列番号1241)[ここで、C末端リシンはアミド化されている;ただし、この配列の任意の変異体、スプライシング変異型、アイソフォーム、オルソログ、同族体、及び変異型も]
PACAP27:
HSDGIFTDSYSRYRKQMAVKKYLAAVL(配列番号1242)[ここで、C末端リシンはアミド化されている;ただし、この配列の任意の変異体、スプライシング変異型、アイソフォーム、オルソログ、同族体、及び変異型も]。
本明細書における「羞明」は、光の視覚的知覚に対する異常な不耐性の症状を指し、これは、時には加えて、光の異常か、または非合理的な恐怖によって、または眼の実際上の物理的光過敏性の存在によって定義される。本発明では、羞明には、殊に、片頭痛、群発性頭痛、及び片頭痛または群発性頭痛を開始させることができる光嫌悪挙動の他の神経性の原因と関連する光嫌悪が含まれる。患者/対象は、眼または神経系に関連するいくつかの異なる医学的状態の結果として、羞明を発症し得る。羞明は、(i)眼への過剰な光の侵入、(ii)角膜擦傷及び網膜損傷などの損傷を目が受けている場合、または瞳孔(複数可)が正常に収縮し得ない(動眼神経の損傷が見られる)場合に、過剰な光が眼に侵入し得ること、(iii)網膜内の光受容体の過剰刺激、(iv)視神経への過剰な電気インパルス、及び(v)中枢神経系における過剰な応答などの視覚系における任意のステップで始まる、光に対する応答の増大に起因し得る。
本明細書における「羞明の有効な処置または予防」は、有効量の本発明による抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片の投与後、光嫌悪行動もしくは羞明の阻害、または光嫌悪行動もしくは羞明の発症の阻害を、それを必要とする対象、例えば、活性な片頭痛発作もしくは群発性頭痛を有する対象、または片頭痛もしくは群発性頭痛もしくは本明細書において特定される他の羞明関連障害の1つに罹患しやすい対象において行うことを指す。処置は、単独治療として、または別の活性薬剤、例えば、例としてトピラマートまたはジヒドロエルゴタミンと一緒に行ってよい。
「片頭痛」という用語は、4つの段階:前駆症状、前兆、頭痛、及び後発症状の間で進行し得る複雑で、活動に支障をもたらす神経障害を指す。片頭痛は、国際頭痛学会によって、4~72時間にわたって継続し、かつ片側性局在化、拍動性の質、中度から重度の疼痛強度;及び歩行などの運動による悪化のうちの少なくとも2つによって特徴づけられる頭痛として定義されている。加えて、頭痛は、悪心及び/または嘔吐、羞明、または音声恐怖のうちの少なくとも1つを随伴しなければならない。片頭痛はまた、典型的には、兆候または前駆症状相の間のデッドラインに先行し、多くの場合に、視覚的変化、例えば、視野を横切って動く閃輝暗点をもたらす前兆を随伴することがある。前駆症状は、他の症状、例えば、倦怠、胃腸問題、及び気分変化を随伴することもある。片頭痛患者は、多くの場合に、長時間にわたって無能力化される。後発症状は最終相であり、発作の後に起こり、その時間の間、片頭痛患者は疲労、または中等度の酩酊を感じることがある。
「頭痛」という用語は、頭部の任意の領域における疼痛を指す。頭部は、頭部の片側または両側に起こり得るか、特定の位置に単離され得るか、一点から頭部全体に放射状に広がり得るか、または万力を使用されているような質を有し得る。頭痛は、鋭い疼痛、拍動感覚、または鈍い疼痛であり得る。頭痛は、徐々に、または急激に現れることがあり、それらは、1時間未満、または数日にわたって継続し得る。
「疾患または状態に関連する疼痛」という用語は、全体で、または一部において急性及び/または慢性疼痛によって定義される任意の疾患または状態を指す。疼痛は一般に、実際の、または潜在的な組織損傷と関連するか、またはそのような損傷に関連して説明され
る不快な感覚及び情動経験として定義される。疼痛は、神経原性、神経障害性、炎症性、または侵害受容性と分類され得る。
本明細書における「オピオイド鎮痛薬」という用語は、モルヒネ様作用を有する天然または合成のすべての薬物を指す。合成及び半合成オピオイド鎮痛薬は、化合物の5種の化学的クラスの誘導体、すなわちフェナントレン;フェニルヘプチルアミン;フェニルピペリジン;モルフィナン;及びベンゾモルファンであり、これらはすべて、この用語の範囲内である。例示的なオピオイド鎮痛薬には、コデイン、ジヒドロコデイン、ジアセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、オキシモルホン、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、フェンタニール、スフェンタニル、メペリジン、メタドン、ナルブフィン、プロポキシフェン、及びペンタゾシン、またはそれらの薬学的に許容される塩が包含される。
「NSAID」という用語は、非ステロイド性抗炎症化合物を指す。NSAIDは、シクロオキシゲナーゼを阻害するそれらの能力によって分類される。シクロオキシゲナーゼ1及びシクロオキシゲナーゼ2は、シクロオキシゲナーゼの主なアイソフォームの2つであり、最も標準的なNSAIDは、これら2種のアイソフォームの混合阻害薬である。最も標準的なNSAIDは、次の5つの構造的カテゴリーの1つに該当する:(1)プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロシン、ジクロフェナク、及びケトプロフェン;(2)酢酸誘導体、例えば、トルメチン及びスリンダク;(3)フェナム酸誘導体、例えば、メフェナム酸及びメクロフェナム酸;(4)ビフェニルカルボン酸誘導体、例えば、ジフルニサル及びフルフェニサル;ならびに(5)オキシカム、例えば、ピロキシム、スドキシカム、及びイソキシカム。シクロオキシゲナーゼ2を選択的に阻害する別のクラスのNSAIDが記載されている。COX-2阻害薬は、例えば、米国特許第5,616,601号;同第5,604,260号;同第5,593,994号;同第5,550,142号;同第5,536,752号;同第5,521,213号;同第5,475,995号;同第5,639,780号;同第5,604,253号;同第5,552,422号;同第5,510,368号;同第5,436,265号;同第5,409,944号;及び同第5,130,311号において記載されており、それらのすべてが参照によって本明細書に組み込まれる。ある特定の例示的なCOX-2阻害薬には、セレコキシブ(SC-58635)、DUP-697、フロスリド(CGP-28238)、メロキシカム、6-メトキシ-2ナフチル酢酸(6-MNA)、ロフェコキシブ、MK-966、ナブメトン(6-MNAのプロドラッグ)、ニメスリド、NS-398、SC-5766、SC-58215、T-614;またはそれらの組合せが包含される。
本明細書において使用される場合、「処置」は、有利か、または所望の臨床結果を得るための手法である。本発明の目的では、有利か、または所望の臨床結果には、限定されないが、片頭痛または頭痛などのPACAP関連状態のいずれかの態様の改善の1つまたは複数が含まれる。例えば、頭痛または片頭痛の処置に関連して、これには、重症度の軽減、疼痛強度及び他の関連症状の緩和、再発頻度の減少、頭痛に罹患しているヒトの生活の質の向上、ならびに頭痛を処置するために必要な他の薬物の用量の減少が包含される。片頭痛では、他の関連症状には、限定されないが、悪心、嘔吐、ならびに光、音、及び/または運動に対する敏感性が包含される。群発性頭痛では、他の関連症状には、限定されないが、眼の下または周囲の腫脹、過剰な涙、赤目、鼻漏または鼻詰まり、及び赤ら顔(red flushed face)が包含される。
「発生率の低下」または「防止」または「予防」は、特定の疾患、状態、症状、または障害の重症度の低下のいずれかを意味する(疾患、状態、及び障害という用語は、本出願を通じて互換的に使用される)。重症度の低下には、例えば、薬物または治療の必要性、
それらの量、及び/またはそれらに対する曝露を減少させることによる、その状態のために一般に使用される薬物及び/または治療の減少が包含される。重症度の低下には、特定の状態、症状、または障害の期間及び/または頻度の減少も包含される(例えば、個体において、次の一時性発作を遅延させるか、またはそれまでの時間を延長することを包含する)。
頭痛、または頭痛もしくは片頭痛もしくは他のPACAP関連状態の1つもしくは複数の症状の「寛解」は、抗PACAPアンタゴニスト抗体の無投与と比較して、状態、例えば、頭痛または片頭痛の1つまたは複数の症状の軽減または改善を意味する。「寛解」には、症状の期間の短縮または減少も包含される。
本明細書において使用される場合、「頭痛の制御」または「片頭痛の制御」または別のPACAP関連状態の「制御」は、個体における状態、例えば、頭痛または片頭痛の1つまたは複数の症状の重症度もしくは期間、または頭痛または片頭痛発作の頻度の維持または減少を指す(処置前のレベルと比較して)。例えば、頭痛の期間もしくは重症度、または発作の頻度は、処置前のレベルと比較して個体において、少なくともおよそ10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%だけ減少する。頭痛の期間もしくは重症度、または発作の頻度の減少は、任意の長さの期間にわたって、例えば、2週間、4週間(1カ月)、8週間(2カ月)、16週間(3カ月)、4カ月、5カ月、6カ月、9カ月、12カ月など継続し得る。
本明細書において使用される場合、片頭痛または頭痛などのPACAP関連状態の発生の「遅延」は、状態または疾患の進行の持越し、妨害、低速化、遅延、安定化、及び/または延期を意味する。この遅延は、処置を受ける状態もしくは疾患及び/または個体の履歴に応じて、様々な長さの時間であり得る。当業者には明らかであるとおり、十分な、または有意な遅延は事実上、個体が頭痛(例えば、片頭痛)を発生させない予防を包含し得る。症状の発生を「遅延」させる方法は、方法の無使用と比較した場合に、所与の時間枠において、症状の発生確率を低下させ、かつ/または所与の時間枠において症状の程度を減少させる方法である。そのような比較は典型的には、統計学的に有意な数の対象を使用する臨床研究に基づく。
片頭痛または頭痛などのPACAP関連状態の「発生」または「進行」は、障害の最初の症状発現及び/または続行する進行を意味する。頭痛または片頭痛の発生は、当技術分野で周知のとおりの標準的な臨床技術を使用して検出可能であり、評価され得る。しかしながら、発生は、検出不可能であり得る進行も指す。本発明の目的では、発生または進行は、症状の生物学的経過を指す。「発生」には、出現、再発、及び発症が包含される。本明細書において使用される場合、頭痛または片頭痛などの状態の「発症」または「出現」には、最初の発症及び/または再発が包含される。
本明細書において使用される場合、薬物、化合物、または医薬組成物の「有効投薬量」または「有効量」は、有利な、または所望の結果をもたらすのに十分な量である。予防用途では、有利な、または所望の結果には、疾患(疾患、疾患の発生の間に存在するその合併症及び中間病的表現型の生化学、組織学的、及び/または行動的症状を含む)のリスクの除去または減少、重症度の軽減、またはその発症の遅延などの結果が含まれる。治療用途では、有利な、または所望の結果には、頭痛発作の疼痛強度、期間、または頻度の減少、及び頭痛(疾患の発生の間に存在するその合併症及び中間病的表現型を包含する)から生じる1つまたは複数の症状(生化学的、組織学的、及び/または行動的)の減少、疾患に罹患しているヒトの生活の質の向上、疾患を処置するために必要な他の薬物の用量の減少、別の薬物の作用の増強、及び/または患者の疾患の進行の遅延などの臨床結果が含まれる。有効投薬量を、1回または複数回の投与で投与することができる。本発明の目的では
、薬物、化合物、または医薬組成物の有効投薬量は、予防または治療処置を直接的または間接的に達成するために十分な量である。臨床状況において理解されるとおり、薬物、化合物、または医薬組成物の有効投薬量は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と組み合わせて達成されても、または達成されなくてもよい。したがって、1種または複数種の他の薬剤と併せて、所望の結果が達成され得るか、または達成されるならば、「有効投薬量」を、1種または複数種の治療薬を投与する状況で考慮してよく、かつ1種の薬剤を有効量で与えることを考慮してよい。
「適切な宿主細胞」または「宿主細胞」には一般に、容易に利用可能な技術及び材料を使用して、本抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片が組換えで産生され得る任意の細胞が含まれる。例えば、本発明の抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、従来の技術による遺伝子操作された宿主細胞において産生され得る。適切な宿主細胞は、外因性DNAで形質転換または遺伝子導入され、培養物中で増殖し得る細胞種であり、それらには、細菌、真菌細胞(例えば、酵母)、及び培養高級真核細胞(多細胞生物の培養細胞を包含)、殊に培養哺乳類細胞、例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳類細胞が含まれる。例示的な一実施形態では、これらの抗体は、CHO細胞において発現され得る。クローニングされたDNA分子を操作し、外因性DNAを様々な宿主細胞に導入する技術は、Sambrook et al.によってMolecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor,N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、及びCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,editors,New York,NY:Green and Wiley and Sons(1993)において開示されている。
一部の例示的な実施形態では、抗体は、培養物中で増殖させることができる交配コンピテント酵母、例えば、任意の一倍体、二倍体または四倍体酵母において発現され得る。発酵発現法において有用な酵母は、一倍体、二倍体、または他の多倍数体形態で存在してよい。所与の倍数性の細胞は、適切な条件下で、不定数の世代にわたって、その形態で増殖し得る。二倍体細胞が芽胞形成すると、一倍体細胞を形成することができる。連続交配は、二倍体株のさらなる交配または融合によって、四倍体株をもたらすことができる。本発明は、一倍体酵母、さらには、例えば、交配またはスフェロプラスト融合によって精製される二倍体または他の倍数酵母細胞の使用を企図する。例として、そのような酵母には、Saccharomycetaceaeファミリーのメンバーが包含され得、それらには、Arxiozyma;Ascobotryozyma;Citeromyces;Debaryomyces;Dekkera;Eremothecium;Issatchenkia;Kazachstania;Kluyveromyces;Kodamaea;Lodderomyces;Pachysolen;Pichia;Saccharomyces;Saturnispora;Tetrapisispora;Torulaspora;Williopsis;及びZygosaccharomyces属が含まれ得る。本発明において潜在的に有用な酵母の他の種類には、Yarrowia;Rhodosporidium;Candida;Hansenula;Filobasium;Sporidiobolus;Bullera;Leucosporidium、及びFilobasidellaが含まれる。
本発明の好ましい例示的な一実施形態では、抗体発現に使用される交配コンピテント酵母は、Pichia属のメンバーを含み得る。本発明のさらに好ましい例示的な一実施形態では、Pichia属の交配コンピテント酵母は、次の種のいずれかである:Pichia pastoris、Pichia methanolica、及びHansenula polymorpha(Pichia angusta)。本発明の殊に好ましい
一実施形態では、Pichia属の交配コンピテント酵母は、Pichia pastoris種である。
本明細書における「選択マーカー」は、例えば形質転換イベントなどによって、その遺伝子を受けた細胞に成長表現型(物理的成長特徴)を与える遺伝子または遺伝子断片を指す。選択マーカーは、選択的成長培地中で、その選択マーカー遺伝子を与えられていない細胞はその中で成長することができない条件下で、細胞が生き残り、かつ成長することを可能にする。選択マーカー遺伝子は一般に、いくつかの種類に分類され、それらには、細胞に、抗生物質または他の薬物、2つの温度感受性(「ts」)変異体が交配されるか、またはts変異体が形質転換される場合には温度に対する抵抗性を与える遺伝子などの正の選択マーカー遺伝子;細胞に、生合成遺伝子を有さないすべての細胞が必要とする特異的な栄養素を含まない培地中で成長する可能性を与える生合成遺伝子、または細胞に、野生型遺伝子を有さない細胞によって成長の不可能性を与える変異生合成遺伝子などの負の選択マーカー遺伝子などが含まれる。適切なマーカーには、限定されないが:ZEO;G418;LYS3;MET1;MET3a;ADE1;ADE3;URA3;などが包含される。
本明細書における「発現ベクター」は、ターゲット宿主細胞、例えば、細菌、昆虫、酵母、植物、両生類、爬虫類、鳥類、または哺乳類細胞、及び最も典型的には、酵母または哺乳類細胞、例えば、CHO細胞内で、外来タンパク質の発現のための操作を促進する要素を含有するDNAベクターを指す。便利には、形質転換のためのDNAの配列及び産生の操作を初めに、細菌宿主、例えばE.coliで行い、通常は、ベクターは、細菌複製起点及び適切な細菌選択マーカーを含む、そのような操作を促進する配列を包含することとなる。選択マーカーは、選択的培養培地中で成長する形質転換宿主細胞の生き残りまたは成長に必要なタンパク質をコードする。選択的遺伝子を含有するベクターで形質転換されなかった宿主細胞は、培養培地中で生き残らないこととなる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素に対する抵抗性を与えるか、(b)栄養素要求性欠陥を補完するか、または(c)複合培地から入手不可能な重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。酵母を形質転換するための例示的なベクター及び方法は、例えば、Burke,D.,Dawson,D.,& Stearns,T.,Methods in yeast genetics:a Cold Spring Harbor Laboratory course manual,Plainview,NY:Cold Spring Harbor Laboratory Press(2000)において記載されている。
本発明の方法において使用するための発現ベクターは、形質転換された宿主株を同定するための選択可能な栄養素要求性または薬物マーカーを含む酵母または哺乳類特定の配列を含んでよい。薬物マーカーはさらに、酵母宿主細胞におけるベクターのコピー数を増幅するために使用され得る。
目的のポリペプチドコード配列は、所望の宿主細胞、例えば、酵母または哺乳類細胞においてポリペプチドの発現をもたらす転写及び翻訳調節配列に作動可能に連結される。これらのベクター構成要素は、限定されないが、エンハンサー要素、プロモーター、及び転写停止配列のうちの1つまたは複数をふくみ得る。ポリペプチドを分泌するための配列、例えばシグナル配列なども含めてよい。複製起点、例えば、酵母複製起点は、任意選択である。それというのも、発現ベクターは多くの場合に、宿主細胞ゲノムに統合されるためである。本発明の一実施形態では、目的のポリペプチドを、酵母二倍体細胞からのポリペプチドの最適な分泌をもたらす配列に、作動可能に連結させるか、または融合させる。
核酸は、別の核酸配列と機能的に関係がある場合に、「作動可能に連結される」。例え
ば、シグナル配列のためのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合に、ポリペプチドのためのDNAに作動可能に連結され;プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合に、コード配列に作動可能に連結される。一般に、「作動可能に連結される」は、連結されるDNA配列が隣接しており、分泌リーダー(secretory leader)の場合には、隣接していて、かつリーディングフレーム内にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、隣接している必要はない。連結は、便利な制限部位でのライゲーション、または別法では、当業者に熟知されているPCR/組換え法によって達成される(GATEWAY(登録商標)Technology;Invitrogen、Carlsbad California)。そのような部位が存在しなければ、従来の実施に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが使用される。
プロモーターは、それらが作動可能に連結されている特定の核酸配列の転写及び翻訳を制御する、構造遺伝子(一般に、約100~1000bp以内)の開始コドンに対して上流(5’)に位置する非翻訳配列である。そのようなプロモーターは、いくつかのクラスに分類される:誘導、構成、及び抑制性プロモーター(リプレッサーの非存在に応じて転写レベルを上昇させる)。誘導プロモーターは、培養条件の多少の変化、例えば、栄養素の存在もしくは非存在または温度の変化に応じて、それらの制御下で、DNAからの転写レベルの上昇を開始させ得る。
プロモーター断片は、宿主細胞、例えば、酵母細胞、ゲノムにおいて、相同的な組換え、及び同じ部位への発現ベクターの統合のための部位としても役立ち得;別法では、選択マーカーが、相同的な組換えのための部位として使用され得る。Pichia形質転換は、Cregg et al.,Mol.Cell.Biol.,5:3376-3385(1985)において記載されている。異なる真核及び原核細胞において使用するために適したプロモーターは、周知であり、市販されている。
直接的だけでなく、異種のポリペプチド、例えば、特異的な切断部位を成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に有するシグナル配列または他のポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても、目的のポリペプチドを組換えで生成してもよい。一般に、シグナル配列は、ベクターの構成要素であってよいか、またはベクターに挿入されているポリペプチドコード配列の一部であってよい。選択される異種のシグナル配列は好ましくは、宿主細胞、例えば、哺乳類細胞、昆虫細胞、または酵母細胞内で利用可能な標準的な経路の一つによって認識及びプロセシングされるものである。加えて、これらのシグナルペプチド配列は、発現系において分泌の増強をもたらすように操作されていてよい。目的の分泌シグナルには、哺乳類及び酵母シグナル配列も含まれ、それらは分泌されるタンパク質に対して異種であってよいか、または分泌されるタンパク質での天然配列であってよい。シグナル配列には、プレペプチド配列が含まれ、一部の場合には、プロペプチド配列が含まれ得る。多くのそのようなシグナル配列が、当技術分野で公知であり、それらには、免疫グロブリン鎖上に存在するシグナル配列、例えば、K28プロプロトキシン(preprotoxin)配列、PHA-E、FACE、ヒトMCP-1、ヒト血清アルブミンシグナル配列、ヒトIg重鎖、ヒトIg軽鎖などが含まれる。例えば、Hashimoto et.al.,Protein Eng.,11(2):75(1998);及びKobayashi et.al.,Therapeutic Apheresis,2(4):257(1998))を参照されたい。
転写は、ベクターへの転写活性化因子配列の挿入によって増大され得る。これらの活性化因子は、その転写を増大させるようにプロモーターで作用する通常は約10~300bpのDNAのシス作用性要素である。転写エンハンサーは比較的に、配向及び位置非依存性であり、転写ユニットに対して5’及び3’で、イントロン内に、さらに、コード配列
自体の内に見いだされている。エンハンサーは、コード配列に対して5’または3’の位置で発現ベクターにスプライシングされてよいが、好ましくはプロモーターから5’の部位に位置する。
真核宿主細胞において使用される発現ベクターは、転写の停止のために、及びmRNAの安定化のために必要な配列も含有してよい。そのような配列は一般に、翻訳停止コドンに対して3’から、真核またはウイルスDNAまたはcDNAの非翻訳領域内で利用可能である。これらの領域は、mRNAの非翻訳ポーション内でポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。
上で列挙された構成要素の1つまたは複数を含有する適切なベクターの構築は、標準的なライゲーション技術またはPCR/組換え法を使用する。必要なプラスミドを生成するために望ましい形態で、または組換え法によって、単離プラスミドまたはDNA断片が切断され、適合され、再ライゲートされる。構築されたプラスミドにおいて正確な配列を確認する分析のために、ライゲーション混合物は、宿主細胞を形質転換するために使用され、成功した形質転換体が、適切な場合には抗生物質抵抗性(例えば、アンピシリンまたはゼオシン)によって選択される。形質転換体からのプラスミドは、制限エンドヌクレアーゼ消化によって調製、分析され、かつ/または配列決定される。
断片の制限及びライゲーションの代わりとして、特異的な付着(「att」)部位及び組換え酵素に基づく組換え法を、DNA配列をベクターに挿入するために使用してよい。そのような方法は、例えば、Landyによって、Ann.Rev.Biochem.,58:913-949(1989)において記載されており;当業者に知られている。そのような方法は、ラムダ及びE.coliによってコードされる組換えタンパク質の混合物によって媒介される分子間DNA組換えを利用する。組換えは、相互作用性DNA分子上のatt部位の間で生じる。att部位の説明については、Weisberg and
Landy,Site-Specific Recombination in Phage Lambda,in Lambda II,p.211-250,Cold Spring Harbor,NY:Cold Spring Harbor Press(1983)を参照されたい。組換えの後に、att部位が各親ベクターによって提供される配列から構成されるハイブリッド配列であるように、組換え部位に隣接するDNAセグメントが交換される。組み換えは、任意のトポロジーのDNA間で起こり得る。
目的の配列を適切なベクターにライゲーションし;特異的なプライマーの使用によってatt B部位を含有するPCR産物を生成し;att部位を含有する適切なベクターにクローニングされるcDNAライブラリを生成することなどによって、att部位が、目的の配列に導入されてよい。
フォールディングは、本明細書において使用される場合、ポリペプチド及びタンパク質の三次元構造を指し、そこでは、アミノ酸残基間の相互作用が、構造を安定化するように作用する。構造の決定において非共有結合性相互作用が重要であるが、通常、目的のタンパク質は、2個のシステイン残基によって形成される分子内及び/または分子間共有結合性ジスルフィド結合を有することとなる。天然に存在するタンパク質及びポリペプチドまたはそれらの誘導体及び変異体では、適正なフォールディングは典型的には、最適な生物学的活性をもたらす配置であり、活性についてのアッセイ、例えば、リガンド結合、酵素活性などによって便利にモニターされ得る。
例えば、所望の生成物が合成由来のものである一部の例では、生物学的活性に基づくアッセイは、あまり意味がないこととなる。そのような分子の適正なフォールディングは、物理的特性、エネルギー上の考慮、モデリング研究などに基づき決定され得る。
発現宿主は、フォールディング及びジスルフィド結合形成を増強する1つまたは複数の酵素、すなわち、フォルダーゼ、シャペロニンなどをコードする配列の導入によって、さらに修飾されてよい。そのような配列は、当技術分野で公知のとおりベクター、マーカーなどを使用して、酵母宿主細胞において構成的に、または誘導性に発現されてよい。好ましくは、所望の発現パターンのために十分な転写調節要素を包含する配列は、標的方法によって、酵母ゲノムに安定的に統合される。
例えば、真核タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(eukaryotic protein disulfide isomerase、「PDI」)は、タンパク質システイン酸化及びジスルフィド結合異性化の効率的な触媒であるだけでなく、シャペロン活性も示す。PDIの同時発現は、多数のジスルフィド結合を有する活性なタンパク質の生成を促進し得る。免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(「BIP」);シクロフィリンなどの発現も重要である。本発明の一実施形態では、一倍体親株のそれぞれは、別個のフォールディング酵素を発現し、例えば、一方の株は、BIPを発現し得、かつ他方の株は、PDIまたはそれらの組合せを発現し得る。
培養哺乳類細胞も、開示の抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片を生成するための好ましい例示的な宿主である。上述のとおり、CHO細胞は、抗体の発現に殊に適している。哺乳類細胞においてモノクローナル抗体を製造するために、多くの手順が当技術分野で公知である(Galfre,G.and Milstein,C.,Methods Enzym.,73:3-46,1981;Basalp et al.,Turk.J.Biol.,24:189-196,2000;Wurm,F.M.,Nat.Biotechnol.,22:1393-1398,2004;及びLi et al.,mAbs,2(5):466-477,2010を参照されたい)。下記でさらに詳細に述べるとおり、哺乳類モノクローナル抗体製造スキームにおいて使用される一般的な宿主細胞系には、限定されないが、ヒト胚網膜芽細胞細胞系PER.C6(登録商標)(Crucell N.V.、Leiden、オランダ)、NS0マウス骨髄腫細胞(Medical Research Council、London、英国)、CV1サル腎臓細胞系、293ヒト胎児由来腎臓細胞系、BHKベビーハムスター腎臓細胞系、VEROアフリカミドリザル腎臓細胞系、ヒト子宮頸癌細胞系HELA、MDCKイヌ腎臓細胞、BRLバッファローラット肝臓細胞、W138ヒト肺細胞、HepG2ヒト肝臓細胞、MMTマウス乳房腫瘍細胞、TRI細胞、MRC5細胞、Fs4細胞、骨髄腫もしくはリンパ腫細胞、またはチャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)卵巣(CHO)細胞などが包含される。組換えモノクローナル抗体の生成のために有用であり、最適化されている当技術分野で公知のCHO細胞の多くの異なるサブクローンまたはサブ細胞系、例えば、DP12(CHO K1 dhfr-)細胞系、NS0細胞は、アザグアニンに対して抵抗性であるNS-1細胞の非IG分泌性、非軽鎖合成性サブクローンである。CHO-DXB11(CHO-DUKX)、CHO-pro3、CHO-DG44、CHO1-15、CHO DP-12、Lec2、M1WT3、Lec8、pgsA-745などを包含する他のチャイニーズハムスター及びCHO細胞は市販されており(ATCCなどから)、これらはすべて、様々なパラメーターについて細胞系を最適化するために遺伝子改変されている。モノクローナル抗体は一般に、モノクローナル抗体鎖が哺乳類細胞系において発現され、バイオリアクター内で組織培養培地中に分泌されるバッチ供給法を使用して製造される。培地(または供給物)は、組換えタンパク質発現を最大化するために、バイオリアクターに連続的に供給される。次いで、組換えモノクローナル抗体は、収集した培地から精製される。一部の状況では、ジスルフィド結合の還元などによって抗体を再アセンブルするために、追加のステップが必要とされる。そのような生成法は、単一バッチにおいて10,000L以上という規模にすることができる。そのような細胞系及び方法の使用によって、20pg/細胞/日ほどを得ることは、今は日常的で
あり、10g/L以上の高いタイターが得られ、10kL~25kLのバイオリアクターから15~100kgの量となる(Li et al.,2010)。抗体をコードするポリヌクレオチドを発現ベクターにクローニングすること、細胞にこれらの発現ベクターを遺伝子導入すること、遺伝子導入された細胞を選択すること、ならびに組換えモノクローナル抗体をこれらの細胞から発現及び精製することを含む、この生成法の様々な詳細は下記に提供する。
哺乳類細胞における抗PACAP抗体または抗原結合性断片の組換え生成のために、抗体またはその断片をコードする核酸が一般に、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入される。抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して、容易に単離または合成される(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードするDNAに特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)。ベクター構成要素は一般に、限定されないが、シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、及び転写停止配列の1つまたは複数を含む。プロモーター、ターミネーター、選択マーカー、ベクター、及び他の要素の選択は、当技術分野における通常の技能レベルの範囲内の日常的な設計事項である。多くのそのような要素は、当技術分野で公知であり、商業的供給者から入手可能である。
直接的だけでなく、好ましくは特異的な切断部位を成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に有するシグナル配列または他のポリペプチドである異種のポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても、本発明の抗体は組換え生成され得る。選択される同種または異種のシグナル配列は好ましくは、宿主細胞によって認識及びプロセシングされる(すなわち、シグナルぺプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳類細胞発現では、哺乳類シグナル配列、さらには、ウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
そのような発現ベクター及びクローニングベクターは一般に、ベクターが1種または複数種の選択された宿主細胞において自己複製することを可能にする核酸配列を含有することとなる。典型的には、クローニングベクターでは、この配列は、ベクターが宿主染色体DNAとは独立に自己複製することを可能にし、かつ複製起点または自発的複製配列を包含するものである。そのような配列は、様々な細菌、酵母、及びウイルスについて周知であり、例えば、プラスミドpBR322からの複製起点は、多くのグラム陰性菌に適しており、2muプラスミド起点は、酵母に適しており、様々なウイルス起点(サルVirus40(「SV40」)、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(「VSV」)、またはウシ乳頭腫ウイルス(「BPV」)は、哺乳類細胞においてクローニングベクターのために有用である。一般に、複製起点構成要素は、哺乳類発現ベクターには必要ない(早期プロモーターを含有するということだけのために、SV40起点が典型的には使用され得る)。
これらのベクターは典型的には、選択マーカーとも名づけられる選択遺伝子も含有することとなる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、またはテトラサイクリンに対する抵抗性を与えるか、(b)栄養素要求性欠陥を補完するか、または(c)複合培地から入手不可能な重要な栄養素を供給するタンパク質、例えば、BacilliのためにD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子をコードする。
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止する薬物を利用する。外来DNAがその中に挿入されている培養哺乳類細胞を選び出すために、薬物選択が一般に使用される。そのような細胞は一般に、「トランスフェクタント」と称される。選択薬剤の存在下で培養
されていて、目的の遺伝子をそれらの後代に渡すことができる細胞は、「安定トランスフェクタント」と称される。そのような優性選択の例は、薬物のネオマイシン、ミコフェノール酸、及びハイグロマイシンを使用する。例示的な選択マーカーは、抗生物質ネオマイシンに対する抵抗性をコードする遺伝子である。選択は、ネオマイシン種の薬物、例えばG-418などの存在下で実施される。異種の遺伝子で成功裏に形質転換された細胞は、薬物抵抗性を付与するタンパク質を産生し、したがって、選択レジメンを生き延びる。
選択システムは、目的の遺伝子の発現レベルを上昇させるためにも使用され得、プロセスは「増幅」と称される。トランスフェクタントの増幅は典型的には、細胞を低レベルの選択薬剤の存在下で培養し、次いで、導入された遺伝子の生成物を高レベルで産生する細胞を選び出すために選択薬剤の量を増大させることによって起こる。哺乳類細胞のための例示的な適切な選択マーカーは、ジヒドロフォレートレダクターゼ(「DHFR」)、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-I及び-II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどの抗体核酸を取り込む能力のある細胞の同定を可能にするものである。
例えば、哺乳類細胞のための増幅可能な選択マーカーは、ジヒドロフォレートレダクターゼであり、それはメトトレキサートに対する抵抗性を与える。他の薬物抵抗性遺伝子(例えば、ハイグロマイシン抵抗性、多剤薬物抵抗性、ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ)も使用され得る。DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は初めに、メトトレキサート(「MTX」)、DHFRの競合アンタゴニストを含有する培養培地中ですべての形質転換体を培養することによって同定される。野生型DHFRが使用される場合の適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠失したチャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞系である。
別法では、抗体、野生型DHFRタンパク質、及び別の選択マーカー、例えば、アミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ(「APH」)をコードするDNA配列で形質転換または同時形質転換された宿主細胞(殊に、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、選択マーカーのための選択薬剤、例えば、アミノグリコシド系抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、またはG-418を含有する培地中での細胞増殖によって選択され得る。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
これらのベクターは、抗体をコードするDNAの転写を促進するエンハンサー配列を含んでよい。多くのエンハンサー配列が哺乳類遺伝子から公知である(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、αフェトプロテイン、及びインスリン)。多くの場合に使用されるエンハンサーは、真核細胞ウイルスに由来するものである。その例には、複製起点(bp100~270)の後側にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後側にあるポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが含まれる(真核プロモーターの活性化のためのエンハンシング要素については、Yaniv,Nature,297:17-18,1982を参照されたい)。エンハンサーは、抗体コード配列に対して5’または3’の位置でベクターにスプライシングされ得るが、好ましくは、プロモーターから5’の部位に位置する。
発現及びクローニングベクターも一般に、宿主生体によって認識され、かつ抗体核酸に作動可能に連結されるプロモーターを含むこととなる。プロモーター配列は、真核生物について公知である。事実上、すべての真核遺伝子は、転写が開始される部位から約25~30塩基上流に位置するATリッチな領域を有する。多くの遺伝子の転写の開始から70~80塩基上流に存在する別の配列は、Nが任意のヌクレオチドであってよいCNCAAT領域である。ほとんどの真核遺伝子の3’末端には、コード配列の3’末端にポリAテールを付加するためのシグナルであり得るAATAAA配列がある。これらの配列はすべ
て、真核発現ベクターに適切に挿入される。
哺乳類宿主細胞におけるベクターからの抗体転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、BPV、鳥類肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、及び最も好ましくはSV40などのウイルスのゲノムから、異種の哺乳類プロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから、ヒートショックプロモーターから得られるプロモーターによって制御されるが、そのようなプロモーターが、宿主細胞系と適合性であることを条件とする。
SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは便利に、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは便利に、HindIII E制限断片として得られる。ベクターとしてBPVを使用して、哺乳類宿主においてDNAを発現するための系は、米国特許第4,419,446号において開示されている。この系の変更形態は、米国特許第4,601,978号において記載されている。単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞におけるヒトベータ-インターフェロンcDNAの発現については、Reyes et al.,Nature,297:598-601(1982)も参照されたい。別法では、ラウス肉腫ウイルスの長い末端反復がプロモーターとして使用され得る。
SV40、サイトメガロウイルス、または骨髄増殖性肉腫ウイルスからのプロモーターなどの強力な転写プロモーターが使用され得る。例えば、米国特許第4,956,288号及び米国特許出願公開第20030103986号を参照されたい。他の適切なプロモーターには、メタロチオネイン遺伝子からのもの(米国特許第4,579,821号及び同第4,601,978号)及びアデノウイルス主要後期プロモーターが包含される。哺乳類細胞において使用するための発現ベクターには、American Type Culture Collection、10801 University Blvd.(Manassas、VA.米国)に、それぞれ受入番号98669、98668、及びPTA-5266で寄託されているpZP-1、pZP-9、及びpZMP21ならびにこれらのベクターの誘導体が含まれる。
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物からの有核細胞)において使用される発現ベクターは一般に、転写を停止させ、かつmRNAを安定化させるために必要な配列も含有することとなる。そのような配列は一般に、真核またはウイルスDNAまたはcDNAの非翻訳領域の5’及び、時には3’から利用可能である。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分において、ポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。有用な転写停止構成要素の1つは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026及びそこに開示されている発現ベクターを参照されたい。
本抗体をクローニングまたは発現するために適した宿主細胞には、上記の原核、酵母、または高級真核生物細胞が含まれる。しかしながら、重要性は、脊椎動物細胞において最大であり、培養における脊椎動物細胞の増殖は、日常的な手順になってきている。有用な哺乳類宿主細胞系の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系(COS-1(ATCC No.CRL1650);及びCOS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児由来腎臓計(293細胞または懸濁培養において増殖するためにサブクローニングされた293細胞、(ATCC No.CRL 1573;Graham et al.,J.Gen.Virol.,36:59-72(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10、ATCC No.CRL 1632;B
HK 570、ATCC No.CRL 10314);CHO細胞(CHO-K1、ATCC No.CCL 61;CHO-DG44、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216-4220(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.,23:243-251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB
8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44-68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞癌系(Hep G2)である。追加の適切な細胞系が、当技術分野で公知であり、American Type Culture Collection(Manassas、VA)などの公共寄託機関から入手可能である。
宿主細胞は、抗体生成のために上記の発現またはクローニングベクターで形質転換され、前記で論述したとおりにプロモーターを誘導するか、形質転換体を選択するか、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切に変更された従来の栄養素培地中で培養される。
本発明の抗体を生成するために使用される哺乳類宿主細胞は、様々な培地中で培養され得る。市販の培地、例えば、Ham’s F10(Sigma-Aldrich Corporation、St.Louis、MO)、最小必須培地((「MEM」(Sigma-Aldrich Corporation、St.Louis、MO)、Roswell Park Memorial Institute-1640培地(「RPMI-1640」、Sigma-Aldrich Corporation、St.Louis、MO)、及びダルベッコ改変イーグル培地((「DMEM」、Sigma-Aldrich Corporation、St.Louis、MO)が、宿主細胞を培養するために適している。加えて、Ham et al.,Meth.Enz.,58:44(1979);Barnes et al.,Anal.Biochem.,102:255(1980);米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;または同第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または米国特許再審査第30,985号において記載されている培地のいずれも、宿主細胞のための培養培地として使用され得る。これらの培地のいずれも、ホルモン及び/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または表皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、緩衝剤(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシン薬など)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常は存在する無機化合物と定義される)、及びグルコースまたは同等のエネルギー源を必要に応じて補充されていてよい。任意の他の必要な補充物も、当業者に知られているであろう適切な濃度で含めてもよい。培養条件、例えば温度、pHなどは、発現のために選択された宿主細胞で以前に使用されたものであり、当業者に明らかであろう。培地の開発及び最適化の方法、ならびに培養条件は、当技術分野で公知である(Gronemeyer
et al.,Bioengineering,1(4):188-212,2014を参照されたい)。
培養条件が最適化され、好ましい細胞系クローンが選択された後に、これらの細胞は、最も典型的には、選択された特定の細胞系のために最適化され、かつこの目的のために選択された培地及び供給物を細胞培養物に連続的に供給することを伴うバイオリアクター(
多くのモデルが市販されている)内でのバッチ供給プロセスで培養される(付着細胞または懸濁培養のいずれか)(Butler,M.,Appl.Microbiol.Biotechnol.,68:283-291,2005;及びKelley,B.,mAb,1(5):443-452,2009を参照されたい)。同じ体積の培地がバイオリアクターから取り出されながら、培地及び供給物が培養物に連続的に供給される潅流システムも利用可能である(Wurm,2004)。合成培地、市販の合成培地も、ウシ血清アルブミンなどの動物成分の使用などに伴う外部供給源からの汚染の可能性を回避して、バッチ供給培養において細胞を増殖させるために利用可能である。しかしながら、細胞密度、培養物生存率、及び生産性を増進させるために役立つ動物成分非含有加水分解物が市販されている(Li et al.,2010)。細胞培養培地を最適化する努力において、ローラーボトル内で利用可能なヘッドスペースに対する慎重な注意、増殖及び発現相中のレドックスの可能性、生成中にジスルフィド結合を維持するための還元剤の存在などを包含する多くの研究が行われている(例えば、Hutterer et al.,mAbs,5(4):608-613,2013;及びMullan et al.,BMC Proceed.,5(Suppl 8):P110,2011を参照されたい)。組換えモノクローナル抗体の生成中の有害な酸化の可能性に対処するために、様々な方法が開発されている(例えば、米国特許第8,574,869号を参照されたい)。培養細胞は、栄養素を連続的に、または別々の投与量として供給することによって増殖されてよい。多くの場合に、様々なプロセスパラメーター、例えば、細胞濃度、pH、温度、CO2、dO2、重量モル浸透圧濃度、グルコース、ラクタート、グルタミン、及びグルタマートなどの代謝産物の量などが、較正分析器との直接的な接続によるオンライで、またはオペレーターの介入によるオフラインのいずれかで、細胞増殖中に、プローブの使用によってモニターされる。培養ステップは典型的には、細胞選択のために当技術分野で公知の任意の手段によって、培養物中で増殖する細胞が、遺伝子導入された組換え遺伝子を維持することを保証することも伴う。
発酵の後に、すなわち、最大細胞増殖及び組換えタンパク質発現に達したら、培養ステップの後に、典型的には採取ステップが続き、それによって、細胞は培地から分離され、それによって、採取された細胞培養培地が得られる(Liu et al.,mAbs,2(5):480-499,2010を参照されたい)。典型的には、カラムクロマトグラフィーなどを伴う様々な精製ステップが培養の後に続いて、組換えモノクローナル抗体を、細胞成分及び細胞培養培地成分から分離する。組換えモノクローナル抗体を生成するこの相に必要とされる正確な精製ステップは、タンパク質の発現部位、すなわち、細胞自体のサイトゾル、または細胞培養培地に排出されるタンパク質のより一般的に好ましい経路におけるタンパク質の発現部位に依存する。様々な細胞成分が、示差的遠心技術、重力に基づく細胞沈下、及び/または接線流マイクロ濾過または深層濾過を包含し得るサイズ排除クロマトグラフ/濾過技術などの当技術分野で公知の技術を使用して分離され得る(Pollock et al.,Biotechnol.Bioeng.,110:206-219,2013及びLiu et al.,2010を参照されたい)。細胞成分の遠心は、連続ディスクスタック遠心分離器の使用、続く、デプス及び膜フィルターを使用する清澄化によって大規模に達成され得る(Kelley,2009を参照されたい)。ほとんどの場合には、清澄化の後に、組換えタンパク質は、抗体のFcドメインに対するプロテインAの高い親和性によって、プロテインAクロマトグラフィーによってさらに精製され、典型的には、低pH/酸性化溶離ステップを使用して行われる(典型的には、酸性化ステップは、予防不活性化ステップと組み合わせられる)。酸性または陽イオン性高分子電解質を使用する凝集及び/または沈殿ステップも、可溶性タンパク質から、懸濁培養物中の動物細胞を分離するために使用され得る(Liu et al.,2010)。最後に、アニオン及びカチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフ(「HIC」)、疎水性電荷誘導クロマトグラフ(hydrophobic charge induction chromatograph、HCIC)、セラミックヒド
ロキシアパタイト(Ca5(PO4)3OH)2を使用するヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、及びこれらの技術の組合せが典型的には、組換えモノクローナル抗体の溶液を洗練させるために使用される。所望のモノクローナル抗体の最終配合及び濃度は、超遠心技術の使用によって達成され得る。精製収率は典型的には、70~80%である(Kelley,2009)。
「所望のタンパク質」または「所望の抗体」という用語は互換的に使用され、一般に、標的に特異的な親抗体、すなわち、本明細書に記載のとおりのPACAPまたはそれらのキメラもしくはヒト化抗体またはそれらに由来する結合性部分を指す。「抗体」という用語は、エピトープとフィットし、それを認識する特異的な形態を有する任意のポリペプチド鎖含有分子構造を包含することが意図されており、そこでは、1つまたは複数の非共有結合性相互作用が分子構造とエピトープとの間の複合体を安定化させる。原型的な抗体分子は、免疫グロブリンであり、すべての供給源、例えば、ヒト、げっ歯類、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、他の哺乳類、ニワトリ、他の鳥類などからのすべての種類の免疫グロブリン、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDなどが「抗体」であると見なされる。本発明による出発物質として有用な抗体を生成するために好ましい供給源は、ウサギである。それらの例には、キメラ抗体、ヒト抗体、及び他の非ヒト哺乳類抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体(scFvなど)、ラクダ抗体、ナノボディ、IgNAR(例えばサメに由来してよい一本鎖抗体)、小モジュール免疫薬(small-modular immunopharmaceuticals、「SMIP」)、及び抗体断片、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2などが包含される(Streltsov et al.,Protein Sci.,14(11):2901-9,2005;Greenberg et al.,Nature,374(6518):168-73,1995;Nuttall et al.,Mol.Immunol.,38(4):313-26,2001;Hamers-Casterman et al.,Nature,363(6428):446-8,1993;Gill et al.,Curr.Opin.Biotechnol.,(6):653-8,2006を参照されたい)。
例えば、抗体またはそれらの抗原結合性断片は、遺伝子工学によって生成され得る。この技術では、他の方法と同じく、抗体産生細胞を、所望の抗原または免疫原に感作させる。抗体産生細胞から単離されたメッセンジャーRNAが、PCR増幅を使用してcDNAを作製するためのテンプレートとして使用される。当初抗原特異性を保持する1つの重鎖遺伝子及び1つの軽鎖遺伝子をそれぞれ含有するベクターのライブラリが、増幅された免疫グロブリンcDNAの適切なセクションの発現ベクターへの挿入によって生成される。コンビナトリアルライブラリが、重鎖遺伝子ライブラリを軽鎖遺伝子ライブラリと組み合わせることによって構築される。これは、重鎖及び軽鎖を同時発現するクローンのライブラリをもたらす(抗体分子のFab断片または抗原結合性断片に類似)。これらの遺伝子を持つベクターが、宿主細胞に同時遺伝子導入される。抗体遺伝子合成が、遺伝子導入された宿主において誘導される場合、重鎖及び軽鎖タンパク質は自己アセンブルして、抗原または免疫原でのスクリーニングによって検出され得る活性な抗体を生成する。
目的の抗体コード配列には、天然の配列によってコードされるもの、さらには、遺伝コードの縮重によって、開示核酸と配列において同一ではない核酸及びそれらの変異体が含まれる。変異体ポリペプチドは、アミノ酸(「aa」)置換、付加、欠失を含んでよい。アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換、あるいは非必須アミノ酸を除去する、例えば、グリコシル化部位を変更するか、または機能に不要な1個もしくは複数個のシステイン残基の置換もしくは欠失によってミスフォールディングを最小化する置換であってよい。変異体は、タンパク質の特定の領域(例えば、機能ドメイン、触媒アミノ酸残基など)の生物学的活性を保持するか、増強するように設計され得る。変異体には、本明細書において開示されるポリペプチドの断片、殊に生物学的に活性な断片、及び/または機能ドメインに
対応する断片も含まれる。クローニングされた遺伝子のin vitro突然変異誘発のための技術は公知である。通常の分子生物学的技術を使用して、タンパク質分解性分解に対するそれらの抵抗性を改善するように、または溶解特性を最適化するように、またはそれらを治療薬としてより適したものにするように修飾されているポリペプチドも、本発明に含まれる。
キメラ抗体は、ある種の抗体産生細胞から得られたVL及びVH領域を、別の種からの定常軽鎖及び重鎖領域と組み合わせることによる組換え手段によって作製され得る。典型的には、キメラ抗体は、主にヒトドメインを有する抗体を生成するために、げっ歯類またはウサギ可変領域及びヒト定常領域を利用する。そのようなキメラ抗体の生成は、当技術分野で周知であり、標準的な手段によって達成され得る(例えば、全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,624,659号において記載されているとおり)。本発明のキメラ抗体のヒト定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4定常領域から選択され得ることがさらに企図される。
ヒト化抗体は、さらに多くのヒト様免疫グロブリンドメインを含有するように操作され、かつ動物由来抗体の相補性決定領域のみが組み込まれる。これは、モノクローナル抗体の可変領域の超可変ループの配列を慎重に試験し、かつそれらをヒト抗体鎖の構造にフィットさせることによって達成される。表面的には複雑であるが、このプロセスは、実際問題として複雑ではない。例えば、参照によって完全に本明細書に組み込まれる米国特許第6,187,287号を参照されたい。
免疫グロブリン全体(またはそれらの組換え対応物)に加えて、エピトープ結合性部位含む免疫グロブリン断片(例えば、Fab’、F(ab’)2を、または他の断片)が合成され得る。「断片」または最小免疫グロブリンは、組換え免疫グロブリン技術を利用して設計され得る。例えば、本発明において使用するための「Fv」免疫グロブリンは、融合可変軽鎖領域及び可変重鎖領域を合成することによって生成され得る。抗体の組合せ、例えば、2個の別個のFv特異性を含む二重特異性抗体も重要である。本発明の別の実施形態では、小分子免疫医薬品(「SMIP」)、ラクダ抗体、ナノボディ、及びIgNARは、免疫グロブリン断片に包含され得る。
免疫グロブリン及びそれらの断片は、例えば、エフェクター部分、例えば、化学的リンカー、検出可能な部分、例えば、蛍光色素、酵素、毒素、基質、生物発光材料、放射性材料、化学発光部分などを付与するために、翻訳後修飾されてよいか、または例えば、ストレプトアビジン、アビジン、またはビオチンなどの特異的結合性部分が、本発明の方法及び組成物において利用されてよい。追加のエフェクター分子の例は、下記において提供する。
遺伝コードに従ったポリヌクレオチド配列の翻訳が、ポリペプチド配列をもたらすならば(すなわち、ポリヌクレオチド配列がポリペプチド配列を「コードする」ならば)、ポリヌクレオチド配列は、ポリペプチド配列に「対応し」、その2つの配列が、同じポリペプチド配列をコードするならば、あるポリヌクレオチド配列は、別のポリヌクレオチド配列に「対応する」。
DNAコンストラクトの「異種」領域またはドメインは、天然において、より大きな分子と関連して見いだされない、より大きなDNA分子内のDNAの同定可能なセグメントである。したがって、異種の領域が哺乳類遺伝子をコードする場合、その遺伝子に隣接するDNAは通常、供給源生体のゲノムにおいて哺乳類ゲノムDNAに隣接しない。異種領域の別の例は、コード配列自体が天然に存在しないコンストラクトである(例えば、ゲノムコード配列がイントロン、または天然遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列を含有
するcDNA)。対立遺伝子変異または天然に存在する変異イベントは、本明細書において定義するとおりのDNAの異種領域を生じさせない。
「コード配列」は、タンパク質またはペプチド配列に対応するか、またはそれをコードするコドンのインフレーム配列である。配列またはそれらの相補配列が同じアミノ酸配列をコードするならば、2つのコード配列は相互に対応する。適切な調節配列に関連するコード配列が転写され、ポリペプチドに翻訳されてよい。ポリアデニル化シグナル及び転写停止配列は通常、コード配列に対して3’に位置することとなる。「プロモーター配列」は、下流(3’方向)コード配列の転写を開始することができるDNA調節領域であり、典型的には、調節分子、例えば、コード配列の転写に影響を及ぼす転写因子の結合のための追加の部位を含有する。RNAポリメラーゼが、細胞においてプロモーター配列に結合し、コード配列をmRNAに転写し、次いで、さらにこれが、コード配列によってコードされるタンパク質に翻訳される場合、コード配列は、プロモーター配列の「制御下に」あるか、またはプロモーターに「作動可能に連結されている」。
脊椎動物における抗体の一般構造は現在では、十分に理解されている。Edelman,G.M.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,190:5 1971)を参照されたい。抗体は、分子量約23,000ダルトンの2つの同一の軽いポリペプチド鎖(「軽鎖」)、及び分子量53,000~70,000の2つの同一の重い鎖(「重鎖」)からなる。それらの4本の鎖は、ジスルフィド結合によって、「Y」の配置でジョイントされており、そこでは、軽鎖は、「Y」配置の口の所から出発して、重鎖と一まとめになっている。「Y」配置の「枝」部分は、Fab領域と名付けられており;「Y」配置の幹の部分は、FC領域と名付けられている。アミノ酸配列の方向は、「Y」配置頂部にあるN末端端部から、各鎖の底部にあるC末端端部へと走る。N末端端部は、それを誘発した抗原について特異性を有する可変領域を持ち、約100アミノ酸長さであり、抗体によって軽鎖と重鎖との間で多少の変化がある。
可変領域は、各鎖において、鎖の残りの長さに伸長し、かつ特定のクラスの抗体内で、抗体の特異性(すなわち、それを誘発する抗原)で変化しない定常領域に連結される。定常領域には、免疫グロブリン分子のクラスを決定する5種の公知の主なクラスが存在する(IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEはγ、μ、α、δ、及びε(ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン)重鎖定常領域に対応する)。定常領域またはクラスは、補体の活性化(Kabat,E.A.,Structural Concepts in Immunology and Immunochemistry,2nd Ed.,p.413-436,New York,NY:Holt,Rinehart,Winston(1976)を参照されたい)、及び他の細胞応答(Andrews
et al.,Clinical Immunology,pp.1-18,W.B.Sanders,Philadelphia,PA(1980);Kohl et al.,Immunology,48:187(1983)を参照されたい)を含む、抗体のその後のエフェクター機能を決定する一方で;可変領域は、それが反応することとなる抗原を決定する。軽鎖は、κ(カッパ)またはλ(ラムダ)のいずれかとして分類される。各重鎖クラスは、カッパまたはラムダ軽鎖のいずれかと共に調製され得る。軽鎖及び重鎖は、相互に共有結合により結合し、免疫グロブリンがハイブリドーマによって、またはB細胞によって生成される場合、2つの重鎖の「テール」部分は、共有結合によるジスルフィド結合によって相互に結合される。
「可変領域」または「VR」という表現は、抗原への抗体の結合に直接関わる、抗体における軽鎖及び重鎖の各対の範囲内のドメインを指す。各重鎖は、一方の端部に、可変ドメイン(VH)を、続いて、いくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、可変ドメイン(VL)を一方の端部に、かつ定常ドメインをその他方の端部に有する;軽鎖の定常ドメ
インは、重鎖の第1の定常ドメインとアラインされており、かつ軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインとアラインされている。
「相補性決定領域」、「超可変領域」、または「CDR」という表現は、抗体の軽鎖または重鎖の可変領域に存在する1つまたは複数の超可変または相補性決定領域(「CDR」)を指す(Kabat et al.,Sequences of Proteins
of Immunological Interest,4th ed.,Bethesda,MD:U.S.Dept.of Health and Human Services,Public Health Service,National Institutes of Health(1987)を参照されたい)。これらの表現は、Kabat et al.によって定義されるとおりの超可変領域(Sequences of Proteins of Immunological Interest,NIH Publication No.91-3242,Bethesda,MD:U.S.Dept.of Health and Human Services,National Institutes of Health(1983))または抗体の三次元構造における超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.,196:901-917 1987)を含む。各鎖におけるCDRは、フレームワーク領域(「FR」)によって近接して保持され、他の鎖からのCDRと共に、抗原結合性部位の形成に寄与する。CDR内には、抗体-抗原相互作用においてCDRによって使用される重要な接触残基となる選択性決定領域(「SDR」)と記載されている選択アミノ酸が存在する(Kashmiri et al.,Methods,36(1):25-34,2005)を参照されたい)。
「エピトープ」または「結合性部位」は、抗原結合性ペプチド(抗体など)が特異的に結合する抗原上のエリアまたは領域である。タンパク質のエピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優性構成要素(immunodominant component)とも呼ばれる)、及び特異的抗原結合性ペプチドによって効果的に遮断されるアミノ酸残基(言い換えると、そのアミノ酸残基は特異的抗原結合性ペプチドの「足跡(footprint)」の内にある)などの、結合に直接関与しない他のアミノ酸残基を含んでよい。本明細書におけるエピトープという用語は、抗PACAP抗体に特異的に結合するPACAP、すなわち、PACAP38及びPACAP27の任意の特定の領域におけるアミノ酸結合性部位の両方の種類を含む。PACAPは、いくつかの異なるエピトープを含み得、それらには、限定ではないが、(1)線状ペプチド抗原決定基、(2)成熟PACAP配座において相互に近接して位置する1個または複数個の非隣接アミノ酸からなる配座異性抗原決定基;及び(3)全体か、または部分で、炭水化物基などのPACAPタンパク質に共有結合によって付着されている分子構造からなる翻訳後抗原決定基が含まれ得る。殊に、「エピトープ」という用語には、アラニン走査技術などの公知で許容される方法によって決定されるとおりの、そのようなタンパク質またはペプチドへの抗体の結合に関与するタンパク質またはペプチド、例えば、PACAP中の特異的な残基が含まれる。そのような方法を本明細書において例示する。
抗体(例えば、第1の抗体)が、別の抗体と「実質的に」または「少なくとも部分的に」同じエピトープ(例えば、第2の抗体)に結合するという文言は、第1の抗体でのエピトープ結合性部位が、第2の抗体のエピトープ結合性部位を構成する抗原上のアミノ酸残基の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上を含むことを意味する。また、第1の抗体が、第2の抗体と実質的に、または部分的に同じか、または重複するエピトープに結合するということは、第1及び第2の抗体が、上記のとおり、抗原への結合において競合するということを意味する。したがって、モノクローナル抗体「と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する」という用語は、ある抗体が、その抗体と「競合する」ということを意味する。
目的の抗体「と同じか、または重複するエピトープまたは決定基に結合する」という文言は、ある抗体が、目的の前記抗体が特異的に結合するPACAP上の少なくとも1個(例えば、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個)、またはすべての残基について、目的の前記抗体と「競合する」ことを意味する。本明細書に記載のモノクローナル抗体と実質的または本質的に同じエピトープに結合する1種または複数種の抗体の同定は、アラニン走査を使用して容易に決定され得る。加えて、抗体の競合を評価することができる様々な免疫スクリーニングアッセイのいずれか1つ。いくつかのそのようなアッセイが、日常的に実行されており、当技術分野で周知である(例えば、参照によって本明細書に具体的に組み込まれる1997年8月26日に発行された米国特許第5,660,827号を参照されたい)。本明細書に記載の抗体が結合するエピトープの実際の決定は、本明細書に記載のモノクローナル抗体と同じか、または実質的に同じか、または重複するエピトープに結合する抗体を同定するために全く必要とされないことは理解されるであろう。
例えば、調査される試験抗体が異なる供給源動物から得られる場合か、または異なるIgアイソタイプのものである場合でも、対照抗体を試験抗体と混合し、次いで、PACAPを含有するサンプルに適用する単純な競合アッセイが使用され得る。ELISA、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロット法をベースとするプロトコル、及びBIACORE(登録商標)(GE Healthcare Life Sciences、Marlborough、MA)分析の使用は、そのような単純な競合研究において使用するために適している。
ある特定の実施形態では、対照抗PACAP抗体を、様々な量の試験抗体と(例えば、約1:1、1:2、1:10、または約1:100の濃度で)ある期間にわたって予め混合し、その後、PACAP38またはPACAP27抗原サンプルに適用する。他の実施形態では、対照及び様々な量の試験抗体を単純に別々に添加し、PACAP38またはPACAP27抗原サンプルへの曝露中に混合することができる。結合抗体が遊離抗体から(例えば、非結合抗体を除去するための分離または洗浄技術の使用によって)、かつ対照抗体が試験抗体から(例えば、種特異的またはアイソタイプ特異的二次抗体の使用によって、または検出可能な標識を有する対照抗体を特異的に標識することによって)区別され得る限り、試験抗体がPACAP38またはPACAP27抗原への対照抗体の結合を減少させ、試験抗体が対照抗PACAP抗体と実質的に同じエピトープを認識することを示すかどうかが決定され得る。完全に無関係な抗体(PACAPと結合しない)の存在下での(標識された)対照抗体の結合は、対照高値として役立ち得る。対照低値は、標識された対照抗体を、同じであるが、標識されていない対照抗体と共にインキュベートすることによって得ることができ、その際、競合が起こり、標識抗体の結合を減少させるであろう。試験アッセイでは、試験抗体の存在下での標識された抗体の反応性の有意な減少は、実質的に同じエピトープを認識する試験抗体、すなわち、標識された対照抗体と競合するものを示している。例えば、約1:1または1:10~約1:100の試験抗体の任意の比で、PACAP38またはPACAP27への対照抗体の結合を少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、またはより好ましくは少なくとも約70%(例えば、約65~100%)減少させる任意の試験抗体は、対照抗体と実質的に同じか、または重複するエピトープまたは決定基に結合する抗体であると判断される。
好ましくは、そのような試験抗体は、PACAP38またはPACAP27抗原への対照抗体の結合を、試験抗体の非存在下で観察される対照抗体の結合の好ましくは少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%(例えば、約95%)に減少させることとなる。
試験抗体が飽和濃度で、PACAP38またはPACAP27がその上に固定化されている表面に適用される単純な競合アッセイも有利に使用され得る。単純な競合アッセイにおける表面は好ましくは、BIACORE(登録商標)(GE Healthcare Life Sciences、Marlborough、MA)チップ(または表面プラスモン共鳴(「SPR」)分析に適した他の培地)である。PACAPコーティングされた表面への、PACAP38またはPACAP27に結合する対照抗体の結合が測定される。PACAP38-またはPACAP27含有表面への対照抗体のみのこの結合が、試験抗体の存在下での対照抗体の結合と比較される。試験抗体の存在下での対照抗体によるPACAP38-またはPACAP27含有表面への結合の有意な減少は、試験抗体が対照抗体と実質的に同じエピトープを認識して、試験抗体が対照抗体と「競合する」ことを示す。対照抗体の結合を少なくとも約20%以上、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、またはそれ以上減少させるいずれの試験抗体も、対照抗体と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する抗体と判断され得る。好ましくは、そのような試験抗体は、PACAP38またはPACAP27への対照抗体の結合を少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%、またはそれ以上)減少させることとなる。対照及び試験抗体の順序は逆転されてよく;すなわち、競合アッセイにおいて、対照抗体を初めに表面に結合させることができ、次いで、その後に、試験抗体を表面と接触させることは分かるであろう。好ましくは、下記の実施例9において例示されている「サンドイッチ式」結合アッセイが使用される。別法では、第2の抗体(抗体が競合すると予測)で見られる結合の減少がより大きな規模であろうと予測されるはずなので、PACAP38またはPACAP27抗原に対してより強い親和性を有する抗体がPACAP38-またはPACAP27含有表面に初めに結合される。そのようなアッセイのさらなる例は、例えば、その開示が参照によって本明細書に組み込まれるSaunal
and Regenmortel,J.Immunol.Methods,183:33-41(1995)において提供されている。
加えて、抗体が、別の抗体と同じか、または重複するPACAP上のエピトープ(複数可)、または試験抗体によって結合されるエピトープに結合するかどうかは、殊に、ウエスタンブロットをベースとするアッセイを使用して決定され得る。このアッセイでは、抗体によって結合される抗原、PACAPタンパク質に対応するペプチドのライブラリが作製され、それらは、タンパク質、典型的には10~25、10~20、または10~15アミノ酸長さの重複部分を含む。PACAP配列を包含するこれらの種々の重複アミノ酸ペプチドが合成され、PEPSPOTS(商標)ニトロセルロース膜(JPT Peptide Technologies、Berlin、ドイツ)に共有結合で結合される。次いで、製造者の推奨に従って、ブロットが調製され、プローブされる。
本質的に、イムノブロットアッセイは次いで、蛍光光度の手段によって、ライブラリ内のどのペプチドが試験抗体に結合するかを検出し、それによって、抗原、すなわち、PACAP上のどの残基が試験抗体と相互作用するかを特定することができる(参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,935,340号を参照されたい)。
様々なエピトープマッピング技術が当技術分野で公知である。例として、抗原及び抗体のX線共結晶構造解析;NMR;SPR(例えば、25℃または37℃で);アレイベースのオリゴペプチド走査(または「ペプスキャン分析」);特定部位の突然変異誘発(例えば、アラニン走査);変異誘発マッピング;水素-ジュウテリウム交換;ファージディスプレイ;及び限定タンパク質分解はすべて、当技術分野で周知のエピトープマッピング技術である(例えば、両方ともそれらの全体が参照によって本明細書に組み込まれるEpitope Mapping Protocols:Second Edition,Methods in Molecular Biology,,editors Mike Schutkowski and Ulrich Reineke,2nd Ed.
,New York,NY:Humana Press(2009)、及びEpitope Mapping Protocols,Methods in Molecular
Biology,editor Glenn Morris,1st Ed.,New
York,NY:Humana Press(1996)を参照されたい)。
本明細書に記載のモノクローナル抗体、例えば、Ab10またはAb20と実質的または本質的に同じエピトープに結合する1種または複数種の抗体の同定は、抗体競合が評価され得る様々な免疫スクリーニングアッセイのいずれか1つを使用して容易に決定され得る。いくつかのそのようなアッセイは、日常的に実行されており、当技術分野で周知である(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,660,827号を参照されたい)。本明細書に記載の抗体が結合するエピトープの決定は、本明細書に記載のモノクローナル抗体と同じか、または実質的に同じエピトープに結合する抗体を同定するために全く必要とされないことは理解されるであろう。
例えば、調査される試験抗体が異なる供給源動物から得られる場合か、または異なるIgアイソタイプのものである場合でも、対照抗体(例えば、Ab1ーまたはAb20の1つ)を試験抗体と混合し、次いで、それぞれ、Ab10またはAb20によって結合されることが公知であるPACAP38及びPACAP27のいずれかまたは両方を含有するサンプルに適用する単純な競合アッセイが使用され得る。ELISA、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロット法をベースとするプロトコル、及びBIACORE(登録商標)(GE Healthcare Life Sciences、Marlborough、MA)分析(本明細書において実施例セクションに記載されているとおり)が、そのような単純な競合研究において使用するために適している。
ある特定の実施形態では、当該方法は、対照抗体を、様々な量の試験抗体と(例えば、約1:1、1:2、1:10、または約1:100の濃度で)ある期間にわたって予め混合し、その後、PACAP抗原サンプルに適用することを含む。他の実施形態では、対照及び様々な量の試験抗体を別々に添加し、PACAP抗原サンプルへの曝露中に混合することができる。結合抗体が遊離抗体から(例えば、非結合抗体を除去するための分離または洗浄技術の使用によって)、かつ対照抗体が試験抗体から(例えば、種特異的またはアイソタイプ特異的二次抗体の使用によって、または検出可能な標識を有する対照抗体を特異的に標識することによって)区別され得る限り、当該方法は、試験抗体がPACAP抗原への対照抗体の結合を減少させ、試験抗体が、対照抗体(例えば、Ab10またはAb20)と実質的に同じエピトープを認識することを示すことを決定するために使用することができる。完全に無関係な抗体(PACAPと結合しない)の存在下での(標識された)対照抗体の結合は、対照高値として役立ち得る。対照低値は、標識された対照抗体を、同じであるが、標識されていない対照抗体と共にインキュベートすることによって得ることができ、その際、競合が起こり、標識抗体の結合を減少させるであろう。試験アッセイでは、試験抗体の存在下での標識された抗体の反応性の有意な減少は、実質的に同じエピトープを認識する試験抗体、すなわち、標識された対照抗体と競合するものを示している。例えば、約1:1または1:10~約1:100の対照Ab10またはAb20:試験抗体またはAb10またはAb20:試験抗体の任意の比で、PACAP38またはPACAP27抗原の両方へのAb10またはAb20の結合を少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、またはより好ましくは少なくとも約70%(例えば、約65~100%)減少させる任意の試験抗体は、それぞれAb10またはAb20と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する抗体であると判断される。好ましくは、そのような試験抗体は、PACAP38及びPACAP27抗原のうちの少なくとも1つ、好ましくはそれぞれに対するAb10またはAb20の結合を、試験抗体の非存在下で観察されるAb10またはAb20の結合の好ましくは少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約80%または少なくとも約90%(例えば、約95%)に減少させることとな
る。これらの方法は、他の対照抗体と競合する抗体を同定及び/または評価するために適合させることができる。
試験抗体が飽和濃度で、PACAP38もしくはPACAP27のいずれか、または両方がその上に固定化されている表面に適用される単純な競合アッセイも有利に使用され得る。単純な競合アッセイにおける表面は好ましくは、OCTET(登録商標)及び/またはPROTEON(登録商標)に適した媒体のものである。PACAPコーティングされた表面への対照抗体(例えば、Ab10またはAb20)の結合が測定される。PACAP含有表面への対照抗体のみのこの結合が、試験抗体の存在下での対照抗体の結合と比較される。試験抗体の存在下での対照抗体によるPACAP含有表面への結合の有意な減少は、試験抗体が対照抗体と実質的に同じエピトープを認識して、試験抗体が対照抗体と「競合する」ことを示す。PACAP38及びPACAP27の両方への対照抗体(Ab10またはAb20など)の結合を少なくとも約20%以上、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、またはそれ以上減少させるいずれの試験抗体も、対照抗体(例えば、Ab10またはAb20)と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する抗体と判断され得る。好ましくは、そのような試験抗体は、PACAP抗原への対照抗体(例えば、Ab10またはAb20)の結合を少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%、またはそれ以上)減少させることとなる。対照及び試験抗体の順序は逆転されてよく;すなわち、競合アッセイにおいて、対照抗体を初めに、表面に結合させることができ、次いで、その後に、試験抗体を表面と接触させることは分かるであろう。好ましくは、第2の抗体(抗体が競合すると予測)で見られる結合の減少がより大きな規模であろうと予測されるはずなので、PACAP38またはPACAP27についてより強い親和性を有する抗体がPACAP含有表面に初めに結合される。そのようなアッセイのさらなる例は、例えば、その開示が参照によって本明細書に組み込まれるSaunal and Regenmortel,J.Immunol.Methods,183:33-41(1989)において提供されている。
抗体、その抗原結合性断片、または抗体誘導体が、上記で規定されたエピトープ領域のいずれか内で結合し得るかどうかの決定は、当業者に公知の方法で実施され得る。そのようなマッピング/特性決定法の別の例では、抗PACAP抗体のためのエピトープ領域は、PACAP38及びPACAP27タンパク質中の露出アミン/カルボキシルの化学的修飾を使用するエピトープ「足跡」によって決定され得る。そのような足跡技術の具体的な一例は、質量分析法(「HXMS」)によって検出される水素-ジュウテリウム交換の使用であり、そこでは、受容体及びリガンドタンパク質アミドプロトンの水素/ジュウテリウム交換、結合、及び逆交換が起こり、タンパク質結合に関与する主鎖アミド基は、逆交換から保護され、したがって、重水素化を維持することとなる。関連領域は、この点において、消化性タンパク質分解、急速ミクロボア高速液体クロマトグラフィー分離、及び/またはエレクトロスプレーイオン化質量分析法によって同定され得る(例えば、Ehring H.,Anal.Biochem.,267(2):252-259,1999;及びEngen,J.R.and Smith,D.L.,Anal.Chem.,73:256A-265A,2001を参照されたい)。適切なエピトープ同定技術の別の例は、核磁気共鳴エピトープマッピング(「NMR」)であり、その際、典型的には、遊離抗原及び、抗体などの抗原結合性ペプチドと複合体を形成した抗原の二次元NMRスペクトルにおけるシグナルの位置が比較される。抗原は典型的には、15Nで選択的に同位体標識され、抗原に対応するシグナルのみがNMRスペクトルにおいて見られ、抗原結合性ペプチドからのシグナルは見られないようになる。抗原結合性ペプチドとの相互作用に関与するアミノ酸に由来する抗原シグナルは典型的には、遊離抗原のスペクトルと比較して、複合体のスペクトルの位置をシフトさせるはずであり、そうして、結合に関与するアミノ酸が同定され得る。例えば、Ernst Schering Res.Found.Workshop,(44):149-67,2004;Huang et al.,J
.Mol.Biol.,281(1):61-67,1998;及びSaito and
Patterson,Methods,9(3):516-24,1996)を参照されたい。
エピトープマッピング/特性決定はまた、質量分析法(「MS」)方法を使用して行われ得る(例えば、Downard,J.Mass Spectrom.,35(4):493-503,2000及びKiselar and Downard,Anal.Chem.,71(9):1792-801、1999を参照されたい)。
プロテアーゼ消化技術も、エピトープマッピング及び同定に関連して有用であり得る。抗原決定基-関連領域/配列は、プロテアーゼ消化によって、例えば、トリプシンをPACAP38またはPACAP27に対して約1:50の比で、終夜(「o/n」)消化で、37℃及びpH7~8で使用し、ペプチド同定のための質量分析法(「MS」)分析を続けることによって決定され得る。後に、抗PACAP抗体によってトリプシン切断から保護されたペプチドは、トリプシン消化に掛けられたサンプルと、抗体と共にインキュベートされ、次いで、例えば、トリプシンによる消化に供された(それによって、抗体のための足跡が明らかになる)サンプルとを比較することによって同定され得る。他の酵素様キモトリプシンまたはペプシンが、同様のエピトープ特性決定法において使用され得る。さらに、酵素消化は、潜在的な抗原決定基配列が、PACAP結合性ポリペプチドに関連して、PACAPの領域内にあるかどうかを分析するための迅速な方法を提供し得る。ポリペプチドが表面露出されていなければ、それは、免疫原性/抗原性の点において関連がない可能性が最も高い(同様の技術の論述については、例えば、Manca,Ann.Ist.Super.Sanita.,27(1):15-9,1991を参照されたい)。
特定部位突然変異誘発は、結合性エピトープの特性決定のために有用な別の技術である。例えば、「アラニン走査」特定部位突然変異誘発(例えば、アラニン走査、アラニン走査突然変異誘発、アラニン走査変異、組換えアラニン走査、またはアラニン点突然変異の作成としても公知)では、タンパク質セグメント内の各残基が、例えば、直接ペプチドもしくはタンパク質合成、特定部位の突然変異誘発、GENEART(商標)Mutagenesis Service(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA U.S.A.)またはショットガン突然変異誘発などの方法によって、アラニン残基(または、アラニンが野生型配列中に存在する場合には、バリンなどの別の残基)と置き換えられる。それによって、この技術を使用して、分子の一連のシングルポイント変異体が作成され;生成される変異体の数は、分子中の残基の数と等しく、各残基は、単一のアラニン残基によって一度に1個ずつ置き換えられる。アラニンは一般に、多くの他のアミノ酸が持ち得る二次構造優先性を模倣し得る、その非嵩高で、化学的に不活性なメチル官能基によって、天然(野生型)残基を置き換えるために使用される。次いで、アラニン走査突然変異体及びその結合パートナーの結合親和性に対する、天然残基をアラニンと置き換える効果は、限定されないが、SPR結合実験などの方法を使用して測定され得る。変異が、結合親和性の有意な減少につながるならば、変異した残基が、結合に関与している可能性が最も高い。構造エピトープに特異的なモノクローナル抗体(すなわち、フォールディングされていないタンパク質と結合しない抗体)は、アラニン置き換えがタンパク質の三次構造全体には影響を及ぼさないことを確認するための結合親和性実験のための陽性対照として使用され得る(タンパク質の全体フォールドへの変化は結合に間接的に影響を及ぼし得、それによって、誤ったプラスの結果をもたらすので)(例えば、Clackson and Wells,Science,267:383-386,1995;Weiss et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97(16):8950-8954,2000;及びWells,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:1-6、1996を参照されたい)。実施例12
において、本明細書において開示される抗PACAP抗体と特異的に相互作用するPACAPの特異的エピトープまたは残基を同定するために、アラニン走査法を使用する。
電子顕微鏡法も、エピトープ「足跡」のために使用され得る。例えば、Wang et
al.,Nature,355:275-278(1992)は、天然カウピーモザイクウイルスのカプシド表面上のFab-断片の物理的足跡を決定するために、極低温電子顕微鏡法、三次元イメージ再構成、及びX線結晶学の協調適用を使用した。
エピトープ評価のための「標識非含有」アッセイの他の形態には、SPR(BIACORE(登録商標)システムとして市販、GE Healthcare Life Sciences、Marlborough、MA)及び反射型干渉分光法(「RifS」)が含まれる(例えば、Fagerstam et al.,J.Mol.Recog.,3:208-14,1990;Nice et al.,J.Chromatogr.,646:159-168,1993;Leipert et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,37:3308-3311,1998;Kroger et al.,Biosensors and Bioelectronics,17:937-944,2002を参照されたい)。
「フレームワーク領域」または「FR」という表現は、抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域内のフレームワーク領域の1つまたは複数を指す(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,4th edition,Bethesda,MD:U.S.Dept.of Health and Human Services,Public Health Service,National Institutes of Health(1987)を参照されたい)。これらの表現は、抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域内の、CDRの間に挿入されているそれらのアミノ酸配列領域を包含する。
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。「Fc領域」は、天然配列Fc領域または変異型Fc領域であってよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界線は変化するかもしれないが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端まで延びると定義される。Fc領域における残基の付番は、KabatにおいてのとおりのEUインデックスの付番である(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th edition,Bethesda,MD:U.S.Dept.of Health
and Human Services,Public Health Service,National Institutes of Health,1991を参照されたい)。免疫グロブリンのFc領域は一般に、2つの定常ドメイン、CH2及びCH3を含む。
「Fc受容体」及び「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明する。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含む(これらの受容体の対立遺伝子変異型及びオルタナティブスプライシング型を含む)。FcγRII受容体には、主にその細胞質ドメインにおいて異なる同様のアミノ酸配列を有するFcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれる。FcRは、Ravetch and Kinet,Ann.Rev.Immunol.,9:457-92(1991);Capel et al.,Immunomethods,4:25-34(1994);及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.,126:330-41(1
995)において総説されている。「FcR」にはまた、胎児への母性IgGの移入を担い(Guyer et al.,J.Immunol.,117:587,1976;及びKim et al.,J.Immunol.,24:249,1994)、かつ循環における抗体の半減期を調節及び/または延長するように主に機能する新生児受容体、FcRnが包含される。発現系及び/または配列の結果として、開示の抗PACAP抗体がアグリコシル化(aglycosylated)されている限りにおいて、本抗体は、FcRn受容体とは結合するが、Fcγ受容体とは結合しない(または僅かにしか結合しない)と予測される。
「機能性Fc領域」は、天然配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を持つ。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合;補体依存性細胞傷害性(「CDC」);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(「ADCC」);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体(「BCR」))のダウンレギュレーションなどが含まれる。そのようなエフェクター機能は一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることを必要とし、そのような抗体エフェクター機能を評価するために当技術分野で公知の様々なアッセイを使用して評価され得る。
「天然配列Fc領域」は、天然において見いだされるFc領域のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む。「変異型Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるが、天然配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能をなお維持するアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異型Fc領域は、天然配列Fc領域と、または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を、例えば、天然配列Fc領域においてか、または親ポリペプチドのFc領域において約1~約10のアミノ酸置換、好ましくは約1~約5つのアミノ酸置換を有する。本明細書における変異型Fc領域は好ましくは、天然配列Fc領域と、かつ/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%配列同一性、最も好ましくは、それらと少なくとも約90%配列同一性、より好ましくはそれらと少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%配列同一性を有することとなる。
PACAPに対して結合活性を有する抗PACAP抗体及びその結合性断片
PACAPは、中枢神経系(「CNS」)及び末梢全体で発現する多機能性血管拡張性ペプチドである。PACAPは、セクレチン/VIP/GRHファミリーのメンバーである。PACAPは、2つのα-アミド化活性形態、すなわちPACAP38(配列番号1241)及びPACAP27(配列番号1242)で存在する。本明細書において、「PACAP」という用語には、別段に明確に示されていない限り、PACAP38及びPACAP27のいずれかまたは両方が含まれる。PACAPは、種の間で高度保存される。
ヒトでは、PACAPは、176アミノ酸前駆体タンパク質(プレプロPACAP)に由来し、その遺伝子は、染色体18p11上に位置し、PACAP38は、エキソン5によってコードされる(Vaudry et al.,Pharmacol.Rev.,61:283-357,2009を参照されたい)。プロプロPACAPは、N末端24アミノ酸シグナルタンパク質、29アミノ酸PACAP関連ペプチド、及びC末端ドメイン中のPACAPを含有する。この前駆体は、プロホルモン転換酵素によって、生物学的に活性なPACAP38及びPACAP27に代謝される。
VIP(配列番号1243)は、PACAPと同じタンパク質ファミリーに属し、PACAPと高い相同性を共有する、すなわち、VIP及びPACAP27は、アミノ酸レベルで68%配列相動性を有し、さらには、同様の全体二次構造、すなわち、C末端の長いアルファへリックス構造を有する。
PACAPの作用は、PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-Rという3種の異なるGタンパク質共役受容体を介して媒介される。VPAC1-Rは、受容体関連膜タンパク質のすべてと会合し得る(「RAMP」、Kaiser and Russo,Neuropeptides 47:451-461,2013を参照されたい)。PAC1-Rが、PACAPについて選択的であるのに対して、VPAC1-R及びVPAC2-Rは、VIP及びPACAPの両方に高い親和性で結合する。PAC1-Rは、VIPよりも100~1000倍高い親和性でPACAPに結合する、すなわち、PACAP27/PACAP38でのKD約0.5nMに対して、VIPでのKD約500nMである。逆に、VPAC1-R及びVPAC2-Rは、PACAP及びVIPについて等しい親和性(KD約1nM)を有する(Schytz et al.2010を参照されたい)。3種の受容体はすべて、末梢組織及びCNSの両方において広く発現されるが、PAC1-Rは、主にCNSにおいて発現され、嗅球、視床、視床下部、海馬の歯状回において、かつ小脳の顆粒細胞において最も豊富である(Hashimoto et al.,J.Comp.Neurol.,371:567-577,1996;Shioda et al.,Neurosci.Res.,28:345-354,1997を参照されたい)。
PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rの活性化は、アデニル酸シクラーゼ活性の増大、したがって、cAMP産生の増大をもたらす。しかしながら、PACAP受容体は、PLCを介してそれらの作用を媒介し、Ca2+レベル、及びPLDの上昇につながり得る。
PACAPは、神経発生、神経保護、神経調節、神経性炎症、及び侵害受容における役割を含む広範な生物学的作用を有する。PACAPは、グリコサミノグリカン(「GAG」)と相互作用することも報告されている。GAGは、繰り返し二糖単位、例えば、ヘパリン、コンドロイチン、ケラチン、及びヒアルロン酸から構成される長い非分枝多糖である。PACAPの細胞取り込みが、GAGタンパク質の発現に依存すること、及びPACAPが硫酸化GAGに結合したことが示されている。殊に、GAGへのPACAP38結合は、PACAP38の受容体非依存性細胞取り込みを誘導することができることが決定された。この研究はさらに、構造転移を受け得ない変異型PACAP38が、PACAP38の野生型のように効率的には、GAG含有細胞系によって内部移行されなかったので、PACAP38におけるランダムなコイル-α-へリックス転移(coil-to-α-helix transition)が、PACAP38のGAG依存性取り込みに必須であることを実証した(Neree et al.,FEBS Lett.,588(24):4590-4596,2014)。フォローアップ研究において、GAG、すなわち、ヘパリンをクラスター化するPACAPの能力は、細胞透過性ペプチド(「CPP」)として機能するその能力に直接関連することが決定された。この活性は、セクレチン/グルカゴン/GHRHファミリーメンバー、例えば、PACAPにおいて存在するヘパリン結合、またはCardin-Weintraubモチーフに寄与し得ると仮説が立てられる(Neree et al.,Int.J.Mol.Sci.,16:27391-27400,2015)。興味深いことに、Neree et al.(2015)は、PACAP38がin vitroで硫酸化GAGをクラスター化し得ることを実証するデータを提供した。これらのデータは、他のペプチド、例えばグルカゴンは、硫酸化GAG(ヘパリン)についてより高い結合親和性を示したが、PACAP38のように効率的には細胞によって内部移行されないので、観察されたクラスター化作用がPACAP38のGAG媒介性細胞取り込みに重要であることを示唆した。さらに、細胞がPACAPに曝露されるin vitro研究において、硫酸化GAGタンパク質が豊富である軟骨マトリックスを含む軟骨形成が増大することが報告されており、これは、様々な細胞ストレス応答中に発現されるその推定上の保護的役割と一致する(Juhasz et al
.,PLoS ONE,9(3):e91541,2014)。それらの形質膜上にPACAP特異的受容体を欠いている細胞種、例えば、CHO-K1細胞を使用して、Doan et al.は、様々な形態の蛍光標識PACAP38及びPACAP27の受容体非依存性細胞取り込みに関係するそのような細胞の能力を実証するデータを提供した(Doan et al.,Biochem.Biophys.Acta,1823:940-949,2012)。
本発明は、ヒトPACAPを含むPACAPと結合する例示的な抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。異なるCDR及びエピトープ特異性を有するものを含む、PACAPと結合する他の抗体またはそれらの抗原結合性断片は、本明細書の開示を使用し、当技術分野で一般に公知である方法を使用して得られ得る。そのような抗体及びそれらの抗原結合性断片は、in vivoでPACAPの生物学的作用に拮抗し、したがって、例えば、頭痛、片頭痛、疼痛、羞明、ホットフラッシュ、PTSD、及び不安障害を包含するPACAP関連状態の処置または予防において有用である。好ましい実施形態では、本発明による抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書に記載の抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片の1つまたは複数のCDR、VL鎖及び/またはVH鎖を含む。
一部の実施形態では、本発明による抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片は、PACAPとその受容体(複数可)(例えば、PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-R)との間の相互作用に干渉するか、それを遮断するか、減少させるか、または調節するであろう。一部の例では、本発明による抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片は、PACAPとPAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rとの特異的な相互作用を「中和する」、例えば、完全に防止する。一部の実施形態では、当該抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、PACAPが、PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rに特異的結合することを防止する位置及び/または手法でPACAPに結合し続けることによって、PACAPを中和する。
一部の実施形態では、本発明による抗体またはその抗原結合性断片は、PACAP媒介性活性(PAC1-R発現細胞への結合を包含する)を阻害することができる。一部の実施形態では、本発明による抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト化されており、例えば、PACAPに対するヒト化ウサギ抗体である。
上述のとおり、本発明による抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片は、様々な用途を有する。例えば、本抗体及び断片は、治療用途、さらには、結合アッセイにおいて診断で有用であり得る。本抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片は、PACAP、殊に、ヒトPACAPまたはそのリガンドの親和性精製のために、かつPACAP活性の他のアンタゴニストを同定するためのスクリーニングアッセイにおいて有用である。当該抗体またはそれらの抗原結合性断片の一部は、PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RへのPACAPの結合を阻害するために、またはPACAP媒介性活性及び/または生物学的作用を阻害するために有用である。
本明細書において使用される場合、「PACAPと関連する1つまたは複数の生物学的作用という用語は、PACAPによって媒介される、誘発される、または他に帰せられ得る任意の生物学的作用、例えば、結合特性、機能特性、及び生物学的に重要な他の特性を指す。PACAPの非限定的な例示的な生物学的作用には、PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RへのPACAP結合;PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-R媒介性シグナル伝達のPACAP活性化;cAMP産生のPACAP媒介性増大;PLC活性のPACAP媒介性増大;PLD活性のPACAP媒介性増大;Ca2+レベルのPACAP媒介性増大;ならびにPACAP媒介性血管拡張、羞明、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化が包含される。本抗PACAP抗
体は、これらの例示的なPACAP生物学的活性の1つ、それらの組合せ、またはすべてを阻害することができる。例えば、本明細書において提供される抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、PACAP誘導性血管拡張(実施例7及び実施例8を参照されたい)を阻害することができる。
本発明による抗体またはその抗原結合性断片は、様々な治療適用において使用され得る。例えば、一部の実施形態では、当該抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片は、PACAPと関連する状態、例えば、限定されないが、片頭痛(前兆を伴うか、伴わない)、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、緊張性頭痛、全体頭痛、ホットフラッシュ、羞明、慢性発作性片頭痛、頭部または頸部における潜在的構造問題による二次性頭痛、脳神経痛、副鼻洞性頭痛(例えば、副鼻腔炎と関連する頭痛)、アレルギー誘導性頭痛または片頭痛、疼痛、慢性疼痛、神経炎症性または炎症性疼痛、術後切開疼痛、手術後疼痛、外傷関連疼痛、眼疼痛、歯痛、複合性局所疼痛症候群、癌性疼痛(例えば、原発性または転移性骨癌性疼痛)、骨折痛、骨粗鬆症骨折痛、火傷から生じる疼痛、通風性関節痛、鎌状赤血球発症と関連する疼痛、側頭下顎障害と関連する疼痛、硬変、肝炎、神経原性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、内臓疼痛、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、幻想肢痛、線維筋痛症、月経痛、卵巣痛、反射性交感神経性ジストロフィー、変形性関節症または関節リウマチ疼痛、下背部痛、糖尿病性神経障害、坐骨神経痛、消化不良、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病、回腸炎、潰瘍性大腸炎、腎仙痛、月経困難、膀胱炎、間質性膀胱炎、月経期、分娩、閉経期、膵臓炎、統合失調症、うつ病、PTSD、不安障害、糖尿病、自己免疫性糖尿病、内皮機能不全、虚血、レイノー症候群、冠動脈性心疾患(「CHD」)、冠動脈疾患(「CAD」)、心不全、末梢動脈疾患(「PAD」)、肺高血圧(「PH」)、結合組織障害、卒中、シェーグレン症候群、多発性硬化症、気管支反応亢進、喘息、気管支炎、気管支拡張、気腫、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、炎症性皮膚炎、腺組織における腺癌、臓器の胚組織における芽細胞腫、上皮組織における癌腫、血液細胞を形成する組織における白血病、リンパ組織におけるリンパ腫、骨髄における骨髄腫、結合または支持組織における肉腫、副腎癌、AIDS関連リンパ腫、貧血、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、類癌腫、子宮頸癌、化学療法、結腸癌、血球減少症、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部癌、頸部癌、肝胆道癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、神経系腫瘍、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、皮膚癌、胃癌、睾丸癌、甲状腺癌、尿道癌、骨髄の癌、多発性骨髄腫、骨に転移する腫瘍、神経及び中空臓器を浸潤する腫瘍、神経構造付近の腫瘍、尋常性ざそう、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、ケロイド、肥厚性瘢痕及び酒さ、アレルギー性皮膚炎、乾癬、そう痒症、神経原性皮膚発赤、紅斑、体重減少、食欲不振、サルコイドーシス、ショック、敗血症、オピエート離脱症候群、モルヒネ耐性、てんかん、尿路感染症、異常排尿、尿意逼迫、夜間頻尿、尿失禁、過活動膀胱などのLUT障害を処置するために、かつそのようなLUT状態に関連する疼痛を予防または緩和するために有用である。
内臓疼痛、すなわち、内臓、または身体の内部器官と関連する疼痛の具体的な例には、心臓、肺、生殖器、膀胱、尿管、消化器官、肝臓、膵臓、脾臓、及び腎臓などの器官が罹患する疼痛が含まれる。それらと関連する状態には、例として、膵臓炎、分娩、イレウスと関連する腹部外科手術、膀胱炎、月経期、または月経困難が含まれる。同様に、腎臓疼痛、上腹部疼痛、胸膜疼痛、及び有痛性胆石仙痛、虫垂炎疼痛はすべて、内臓疼痛と判断され得る。初期心筋梗塞からの胸骨下疼痛または圧力も、内臓性である。胃、十二指腸、または結腸の疾患は、内臓疼痛の原因となり得る。内臓疼痛の原因となる、一般的に起こる胃腸(「GI」)障害には、機能性腸障害(「FBD」)及び炎症性腸疾患(「IBD」)が含まれる。そのようなGI障害にはさらに、胃食道逆流、消化不良、過敏性腸症候群(「IBS」)及び機能性腹痛症候群(「FAPS」)、ならびにIBDに関しては、クローン病、回腸炎、及び潰瘍性大腸炎が含まれ得る。
本抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、PACAPのin vivo作用の遮断、阻害、もしくは中和、またはPACAP及びその受容体、PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-Rの相互作用の遮断もしくは阻害が治療上望ましい任意の対象を処置するために、単独で、または他の生物製剤を含む他の活性薬剤または薬物と一緒に使用してよい。
本発明による例示的な抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片、ならびにそれらの特異的CDRが、このセクションにおいて特定される。便宜上、各例示抗体またはその抗原結合性断片、及び対応する配列は、具体的な命名によって別々に特定される、すなわち、Ab10またはAb20である。
本発明を構成する抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、PACAPについて結合親和性を有し、そこでは、結合親和性は、PACAP38及びPACAP27に特異的に結合するが、VIPに結合しない抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片、及び/またはPACAP38に特異的に結合するが、PACAP27またはVIPに結合しない抗体またはそれらの抗原結合性断片、ならびに/またはPACAP38及び/もしくはPACAP27内の線状及び/もしくは立体構造エピトープに特異的に結合する抗体またはそれらの抗原結合性断片を含む。より具体的には、本発明による拮抗性抗PACAP抗体またはそれらの抗原結合性断片が結合するPACAP38及び/またはPACAP27のエピトープは、実施例12及び/または他のエピトープ同定法において同定されるもの、またはその残基(アラニン走査の使用によって決定されるとおり)を含むこととなる。
抗PACAP抗体ポリペプチド配列
抗体Ab10
一実施形態では、本発明は、配列番号410の重鎖定常領域に連結されている配列番号402の重鎖可変領域からなる配列番号401の配列を含む重鎖配列を持つ、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片を含む。
一実施形態では、本発明は、下に記載する配列を含む可変重鎖配列を含有する、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片を含む:
QSVEESGGRLVTPGTPLTLTCTVSGIDLNSYYMTWVRQAPGKGLEWIGFIDAGGDAYYASWAKGRFTISKTSTTVDLKITSPTTEDTATYFCARDLDLWGQGTLVTVSS(配列番号402)。
別の実施形態では、本発明は、Ab10と同じエピトープと結合し、かつ配列番号1244、1245、もしくは1246のポリペプチドを含む定常重鎖配列を含有するか、または下に記載する配列を含む、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片を含む:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDARVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号410)。
別の実施形態では、本発明は、配列番号430の軽鎖定常領域に連結されている配列番
号422の軽鎖可変領域からなる配列番号421の配列を含む軽鎖配列を含有する、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片を含む。
別の実施形態では、本発明は、下に記載する配列を含む可変軽鎖配列を含有する、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片を含む:
AAVLTQTPSPVSAAVGGTVTINCQSSESVYGNYLAWFQQKPGQPPKLLIYEASKLESGVPSRFSGSGSGTQFTLTISDLQCDDAATYYCAGGDISEGVAFGGGTEVVVKR(配列番号422)。
別の実施形態では、本発明は、Ab10と同じエピトープと結合し、かつ下に記載する配列を含む定常軽鎖配列を含有する、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片を含む:
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号430)。
別の実施形態では、本発明は、配列番号401の重鎖配列のCDR(超可変領域)に対応する配列番号404;配列番号406;及び配列番号408のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、もしくは3つを含有するか、または配列番号402の可変重鎖配列を含有し、かつ/または配列番号421の軽鎖配列のCDR(超可変領域)に対応する配列番号424;配列番号426;及び配列番号428のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、もしくは3つをさらに含有するか、または配列番号422の可変軽鎖配列を含有する、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片、あるいはそれらに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列の組合せを含有する抗体または抗原結合性断片を含む。本発明の別の実施形態では、本発明の抗体及び抗原結合性断片は、例示された可変重鎖及び可変軽鎖配列、または上に記載された重鎖及び軽鎖配列、あるいはそれらに対して少なくとも90%または95%同一である配列の1つまたは複数の組合せを含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明はさらに、配列番号401の重鎖配列もしくは配列番号402の可変重鎖配列のFR(定常領域)に対応する配列番号403;配列番号405;配列番号407;及び配列番号409のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、3つ、もしくは4つ、ならびに/または配列番号421の軽鎖配列もしくは配列番号422の可変軽鎖配列のFR(定常領域)に対応する配列番号423;配列番号425;配列番号427;及び配列番号429のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、3つ、もしくは4つ、あるいはこれらのポリペプチド配列の組合せ、あるいはそれらと少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含む、抗PACAP抗体及び抗原結合性断片を企図する。
本発明の別の実施形態では、本発明の抗PACAP抗体及び抗原結合性断片または断片は、上に記載されたFR、CDR、可変重鎖及び可変軽鎖配列、ならびに重鎖及び軽鎖配列のうちの1つまたは複数の組合せ(それらのすべて、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列も含む)を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明の別の実施形態では、本発明の抗PACAP抗体及び抗原結合性断片は、配列番号401もしくは配列番号402のポリペプチド配列、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一であるポリペプチドを含むか、または別法ではそれらからなる。本発明の別の実施形態では、本発明の抗体及び抗原結合性断片は、配列番号421もし
くは配列番号422のポリペプチド配列、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一であるポリペプチドを含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明のさらなる一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片は、配列番号401の重鎖配列もしくは配列番号402の可変重鎖配列のCDR(超可変領域)に対応する配列番号404;配列番号406;及び配列番号408のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、もしくは3つ、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明のさらなる一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片は、配列番号421の軽鎖配列もしくは配列番号422の可変軽鎖配列のCDR(超可変領域)に対応する配列番号424;配列番号426;及び配列番号428のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、もしくは3つ、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明のさらなる一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片は、配列番号401の重鎖配列もしくは配列番号402の可変重鎖配列のFR(定常領域)に対応する配列番号403;配列番号405;配列番号407;及び配列番号409のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、3つ、もしくは4つ、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明のさらなる一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する本抗体及び抗原結合性断片は、配列番号421の軽鎖配列もしくは配列番号422の可変軽鎖配列のFR(定常領域)に対応する配列番号423;配列番号425;配列番号427;及び配列番号429のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、3つ、もしくは4つ、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明はまた、本明細書に記載の抗体断片のうちの1つまたは複数を含む抗PACAP抗体及び抗原結合性断片を企図する。本発明の一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片は、次の抗体断片のうちの1つ、2つ、3つ、もしくはそれ以上(すべても含んで)を含むか、または別法ではそれらからなる:配列番号402の可変重鎖領域;配列番号422の可変軽鎖領域;配列番号402の可変重鎖領域の相補性決定領域(配列番号404;配列番号406;及び配列番号408);ならびに配列番号422の可変軽鎖領域の相補性決定領域(配列番号424;配列番号426;及び配列番号428)、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列。本発明の別の実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗体の断片は、次の抗体断片のうちの1つ、2つ、3つ、もしくはそれ以上(すべても含んで)を含むか、または別法ではそれらからなる:配列番号402の可変重鎖領域;配列番号422の可変軽鎖領域;配列番号402の可変重鎖領域のフレームワーク領域(配列番号403;配列番号405;配列番号407;及び配列番号409);ならびに配列番号422の可変軽鎖領域のフレームワーク領域(配列番号423;配列番号425;配列番号427;及び配列番号429)、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列。
本発明の別の実施形態では、抗PACAP抗体は、配列番号401及び配列番号421、もしくは配列番号402及び配列番号422を含むか、もしくは別法ではそれらからなるAb10、またはAb10のCDRを含み、かつ本明細書において記載される生物学的活性の少なくとも1つを有する抗体もしくは抗原結合性断片であるか、あるいはPACA
Pとの結合においてAb10と競合する抗PACAP抗体、好ましくはAb10の配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である配列を含有するもの、またはPACAP上で、Ab10と同じか、または重複するエピトープ(複数可)に結合する抗体である。
本発明のさらなる一実施形態では、抗原結合性断片は、PACAPに対して結合特異性を有するFab断片を含むか、または別法ではそれらからなる。抗体Ab10に関して、Fab断片は好ましくは、配列番号402の可変重鎖配列及び配列番号422の可変軽鎖配列、またはそれらに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である配列を含む。本発明のこの実施形態はさらに、PACAPに対する結合特異性を保持する、配列番号402及び/または配列番号422の付加、欠失、及び変異体を含有するFabを含む。
本明細書に記載の本発明の一実施形態では、Fab断片は、Ab10の酵素消化(例えば、パパイン)によって生成され得る。本発明の別の実施形態では、Ab10などの抗PACAP抗体及びFab断片は、哺乳類細胞、例えば、CHO、NSO、またはHEK293細胞、真菌、昆虫、または微生物系、例えば、酵母細胞(例えば、一倍体または二倍体酵母、例えば、一倍体または二倍体Pichia)及び他の酵母株における発現によって生成され得る。適切なPichia種には、限定されないが、Pichia pastorisが含まれる。
追加の一実施形態では、本発明はさらに、Ab10の重鎖及び/または軽鎖、さらには、上に記載されたFR、CDR、可変重鎖及び可変軽鎖配列、ならびに重鎖及び軽鎖配列の断片、変異体、及びそれらのうちの1つまたは複数の組合せ(それらのすべても含む)、あるいはそれらに対して少なくとも90%または95%同一である配列を含む、PACAPに対して結合特異性を有する抗体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを対象とする。
抗体Ab20
一実施形態では、本発明は、配列番号450の重鎖定常領域に連結されている配列番号442の重鎖可変領域からなる配列番号441の配列を含む重鎖配列を有する、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片を含む。
一実施形態では、本発明は、下に記載する配列を含む可変重鎖配列を含有する、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片を含む:
QSVEESGGRLVTPGTPLTLTCTVSGIDLSSYYMSWVRQAPGKGLEWIGFIDTDGSAYYATWAKGRFTISKTSTTVDLKITSPTTEDTATYFCARDLDLWGPGTLVTVSS(配列番号442)。
別の実施形態では、本発明は、Ab20と同じエピトープと結合し、かつ配列番号1244、1245、もしくは1246のポリペプチドを含む定常重鎖配列を含有するか、または下に記載する配列を含む、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片を含む:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPV
LDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号450)。
別の実施形態では、本発明は、配列番号470の軽鎖定常領域に連結されている配列番号462の軽鎖可変領域からなる配列番号461の配列を含む軽鎖配列を含有する、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片を含む。
別の実施形態では、本発明は、下に記載する配列を含む可変軽鎖配列を含有する、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片を含む:
AAVLTQTPSPVSAAVGGTVSISCQSSESVYSNYLAWFQQKPGQPPKFLIYEASKLASGVPSRFKGSGSGTQFTLTISDVQCDDAGTYYCAGGYSSEGVAFGGGTEVVVKR(配列番号462)。
別の実施形態では、本発明は、Ab20と同じエピトープと結合し、かつ下に記載する配列を含む定常軽鎖配列を含有する、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片を含む:
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号470)。
別の実施形態では、本発明は、配列番号441の重鎖配列のCDR(超可変領域)に対応する配列番号444;配列番号446;及び配列番号448のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、もしくは3つを含有するか、または配列番号442の可変重鎖配列を含有し、かつ/または配列番号461の軽鎖配列のCDR(超可変領域)に対応する配列番号464;配列番号466;及び配列番号468のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、もしくは3つをさらに含有するか、または配列番号462の可変軽鎖配列を含有する、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片、あるいはそれらに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列の組合せを含有する抗体または抗原結合性断片を含む。本発明の別の実施形態では、本発明の抗体及び抗原結合性断片は、例示された可変重鎖及び可変軽鎖配列、または上に記載された重鎖及び軽鎖配列、あるいはそれらに対して少なくとも90%または95%同一である配列のうちの1つまたは複数の組合せを含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明はさらに、配列番号441の重鎖配列もしくは配列番号442の可変重鎖配列のFR(定常領域)に対応する配列番号443;配列番号445;配列番号447;及び配列番号449のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、3つ、もしくは4つ、ならびに/または配列番号461の軽鎖配列もしくは配列番号462の可変軽鎖配列のFR(定常領域)に対応する配列番号463;配列番号465;配列番号467;及び配列番号469のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、3つ、もしくは4つ、あるいはこれらのポリペプチド配列の組合せ、あるいはそれらと少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含む、抗PACAP抗体及び抗原結合性断片を企図する。
本発明の別の実施形態では、本発明の抗PACAP抗体及び抗原結合性断片または断片は、上に記載されたFR、CDR、可変重鎖及び可変軽鎖配列、ならびに重鎖及び軽鎖配列のうちの1つまたは複数の組合せ(それらのすべて、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列も包含)を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明の別の実施形態では、本発明の抗PACAP抗体及び抗原結合性断片は、配列番号441もしくは配列番号442のポリペプチド配列、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一であるポリペプチドを含むか、または別法ではそれらからなる。本発明の別の実施形態では、本発明の抗体及び抗原結合性断片は、配列番号461もしくは配列番号462のポリペプチド配列、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一であるポリペプチドを含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明のさらなる一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片は、配列番号441の重鎖配列もしくは配列番号442の可変重鎖配列のCDR(超可変領域)に対応する配列番号444;配列番号446;及び配列番号448のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、もしくは3つ、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明のさらなる一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片は、配列番号461の軽鎖配列もしくは配列番号462の可変軽鎖配列のCDR(超可変領域)に対応する配列番号464;配列番号466;及び配列番号468のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、もしくは3つ、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明のさらなる一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片は、配列番号441の重鎖配列もしくは配列番号442の可変重鎖配列のFR(定常領域)に対応する配列番号443;配列番号445;配列番号447;及び配列番号449のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、3つ、もしくは4つ、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明のさらなる一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する本抗体及び抗原結合性断片は、配列番号461の軽鎖配列もしくは配列番号462の可変軽鎖配列のFR(定常領域)に対応する配列番号463;配列番号465;配列番号467;及び配列番号469のポリペプチド配列のうちの1つ、2つ、3つ、もしくは4つ、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明はまた、本明細書に記載の抗体断片のうちの1つまたは複数を含む抗PACAP抗体及び抗原結合性断片を企図する。本発明の一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗体及び抗原結合性断片は、次の抗体断片のうちの1つ、2つ、3つ、もしくはそれ以上(すべても含む)を含むか、または別法ではそれらからなる:配列番号442の可変重鎖領域;配列番号462の可変軽鎖領域;配列番号442の可変重鎖領域の相補性決定領域(配列番号444;配列番号446;及び配列番号448);ならびに配列番号462の可変軽鎖領域の相補性決定領域(配列番号464;配列番号466;及び配列番号468)、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列。本発明の別の実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗体の断片は、次の抗体断片のうちの1つ、2つ、3つ、もしくはそれ以上(すべても含む)を含むか、または別法ではそれらからなる:配列番号442の可変重鎖領域;配列番号462の可変軽鎖領域;配列番号442の可変重鎖領域のフレームワーク領域(配列番号443;配列番号445;配列番号447;及び配列番号449);ならびに配列番号462の可変軽鎖領域のフレームワーク領域(配列番号463;配列番号465;配列番号467;及び配列番号469)、またはそれらに対して少なくとも90%もしくは95%同一である配列。
本発明の別の実施形態では、抗PACAP抗体は、配列番号441及び配列番号461、もしくは配列番号442及び配列番号462を含むか、もしくは別法ではそれらからなるAb20、またはAb20のCDRを含み、かつ本明細書において記載される生物学的活性の少なくとも1つを有する抗体もしくは抗原結合性断片であるか、あるいはPACAPとの結合においてAb20と競合する抗PACAP抗体、好ましくはAb20の配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である配列を含有するもの、またはPACAP上で、Ab20と同じか、または重複するエピトープ(複数可)に結合する抗体である。
本発明のさらなる一実施形態では、抗原結合性断片は、PACAPに対して結合特異性を有するFab断片を含むか、または別法ではそれらからなる。抗体Ab20に関して、Fab断片は好ましくは、配列番号442の可変重鎖配列及び配列番号462の可変軽鎖配列、またはそれらに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である配列を含む。本発明のこの実施形態はさらに、PACAPに対する結合特異性を保持する、配列番号442及び/または配列番号462の付加、欠失、及び変異体を含有するFabを含む。
本明細書に記載の本発明の一実施形態では、Fab断片は、Ab20の酵素消化(例えば、パパイン)によって生成され得る。本発明の別の実施形態では、Ab20などの抗PACAP抗体及びFab断片は、哺乳類細胞、例えば、CHO、NSO、またはHEK293細胞、真菌、昆虫、または微生物系、例えば、酵母細胞(例えば、一倍体または二倍体酵母、例えば、一倍体または二倍体Pichia)及び他の酵母株における発現によって生成され得る。適切なPichia種には、限定されないが、Pichia pastorisが含まれる。
追加の一実施形態では、本発明はさらに、Ab20の重鎖及び/または軽鎖、さらには、上に記載されたFR、CDR、可変重鎖及び可変軽鎖配列、ならびに重鎖及び軽鎖配列の断片、変異体、及びそれらのうちの1つまたは複数の組合せ(それらのすべても含む)、あるいはそれらに対して少なくとも90%または95%同一である配列を含む、PACAPに対して結合特異性を有する抗体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを対象とする。
別の実施形態では、本発明は、配列番号402及び配列番号442、またはそれらの変異体から選択されるVHポリペプチド配列を含み;かつ配列番号422、配列番号462、またはそれらの変異体から選択されるVLポリペプチド配列をさらに含み、その際、前記VHまたはVLポリペプチド中のフレームワーク領域残基(「FR残基」)及び/またはCDR残基の1個または複数個が別のアミノ酸残基で置き換えられていて、PACAPと特異的に結合する抗PACAP抗体が生じている、単離抗PACAP抗体を企図する。本発明はまた、これらの抗体のヒト化及びキメラ型を含む。キメラ及びヒト化抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4定常領域に由来するFcを包含してよい。
本発明の一実施形態では、キメラもしくはヒト化抗体または断片またはVHもしくはVLポリペプチドは、1つまたは複数のウサギ抗体、例えば、クローナルウサギB細胞集団から単離されたウサギ抗体から発生するか、またはそれらに由来する。
一部の態様では、本発明は、本明細書において開示されるとおりの抗PACAP抗体またはその断片をコードする核酸分子を含むベクターを提供する。一部の実施形態では、本発明は、本明細書において開示されるとおりの抗PACAP抗体またはその断片をコードする核酸分子を含む宿主細胞を提供する。
一部の態様では、本発明は、本明細書において開示される抗体またはその抗原結合性断片と、PACAPへの結合について競合する単離抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
一部の態様では、本発明は、本明細書において開示されるとおりの抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸分子を提供する。
一部の態様では、本発明は、少なくとも1種の本明細書において開示されるとおりの抗体またはその抗原結合性断片を含む、医薬または診断用組成物を提供する。
一部の態様では、本発明は、対象において、PACAPレベルの上昇と関連する状態を処置または予防するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の少なくとも1種の本明細書において開示されるとおりの単離抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む方法を提供する。
一部の態様では、本発明は、対象において、PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RへのPACAPの結合を阻害する方法であって、有効量の少なくとも1種の本明細書において開示されるとおりの抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む方法を提供する。
一部の態様では、本発明は、PACAPに選択的に結合する抗体またはその抗原結合性断片であって、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、または10-13M以下のKD;好ましくは、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、または10-12M以下のKD;より好ましくは、約100pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約25pM未満、約1pM未満、約10pM~約100pM、約1pM~約100pM、または約1pM~約10pMであるKDで、PACAPに結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。好ましくは、当該抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片は、VIPと交差反応性を有さないか、または最小限の交差反応性を有する。
本発明の抗体及びそれらの抗原結合性断片は、エフェクター部分、例えば、化学的リンカー、検出可能な部分、例えば、蛍光色素、酵素、基質、生物発光材料、放射性材料、及び化学発光部分など、または機能性部分、例えば、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチン、細胞毒素、細胞傷害性作用物質、及び放射性材料などを付加するために、翻訳後修飾されてよい。
抗体及びそれらの抗原結合性断片はまた、追加の利点、例えば、増大したポリペプチドの溶解性、安定性、及び循環時間(in vivo半減期)、または低下した免疫原性を得るために化学的に修飾されてよい(米国特許第4,179,337号を参照されたい)。誘導体化のための化学的部分は、水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなどから選択され得る。当該抗体及びそれらの断片は、分子内のランダムな位置で、または分子内の所定の位置で修飾されてよく、かつ1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の付着された化学的部分を含んでよい。
ポリマーは、任意の分子量のものであってよく、かつ分枝または非分枝であってよい。ポリエチレングリコールでは、好ましい分子量は、取扱及び製造の容易さのために、約1kDa~約100kDaである(「約」という用語は、ポリエチレングリコールの調製に
おいて、一部の分子が規定の分子量よりも多い、一部は少ないであろうことを示している)。所望の治療プロファイル(例えば、所望の持続放出期間、もしあるならば生物学的活性に対する作用、取扱の容易さ、抗原性の程度または欠如、及び治療用タンパク質または類似体に対するポリエチレングリコールの他の既知の作用)に応じて、他のサイズを使用してよい。例えば、ポリエチレングリコールは、約200、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、10,500、11,000、11,500、12,000、12,500、13,000、13,500、14,000、14,500、15,000、15,500、16,000、16,500、17,000、17,500、18,000、18,500、19,000、19,500、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、75,000、80,000、85,000、90,000、95,000、または100,000kDaの平均分子量を有してよい。分枝ポリエチレングリコールは、例えば、それぞれの開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,643,575号;Morpurgo et al.,Appl.Biochem.Biotechnol.,56:59-72(1996); Vorobjev et
al.,Nucleosides and Nucleotides,18:2745-2750(1999);及びCaliceti et al.,Bioconjug.Chem.,10:638-646(1999)において記載されている。
当業者が利用可能ないくつかの付着方法が存在する(例えば、PEGをG-CSFにカップリングさせる方法を開示している、参照によって本明細書に組み込まれる欧州特許第0 401 384号;及びMalik et al.、Exp.Hematol.、20:1028-1035(1992)(塩化トレシルを使用してのGM-CSFのペグ化を報告)を参照されたい)。例えば、ポリエチレングリコールは、反応性基、例えば、遊離アミノまたはカルボキシル基を介して、アミノ酸残基によって共有結合で結合されてよい。反応性基は、活性化ポリエチレングリコール分子が結合され得るものである。遊離アミノ基を有するアミノ酸残基には、リシン残基及びN末端アミノ酸残基が含まれ得;遊離カルボキシル基を有するものには、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、及びC末端アミノ酸残基が含まれ得る。スルフヒドリル基は、ポリエチレングリコール分子を付着させるための反応性基としても使用され得る。アミノ基での付着、例えば、N末端またはリシン基での付着が、治療目的では好ましい。
上で示唆したとおり、ポリエチレングリコールは、いくつかのアミノ酸残基のいずれかへの連結を介して、タンパク質に付着されてよい。例えば、ポリエチレングリコールは、リシン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはシステイン残基への共有結合を介して、ポリペプチドに連結され得る。ポリエチレングリコールを特異的なアミノ酸残基(例えば、リシン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはシステイン)に、またはアミノ酸残基の1種類より多く(例えば、リシン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、及びそれらの組合せ)に付着させるために、1つまたは複数の反応化学が使用され得る。
別法では、抗体またはそれらの抗原結合性断片は、アルブミン(限定されないが、組換えヒト血清アルブミンまたはそれらの断片または変異体(例えば、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,876,969号、欧州特許第0413622号、及び米国特許第5,766,883号を参照されたい)を含む)、または他の循環血液タンパク質、例えば、トランスフェリンまたはフェリチンとの融合によって、増大したin vivo半減期を有し得る。好ましい一実施形態では、本発明のポリペプチド及び/または抗体(それらの断片または変異体を含む)は、ヒト血清アルブミンの成熟型
(すなわち、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる欧州特許第0322094号の図1及び2において示されているとおりのヒト血清アルブミンのアミノ酸1~585)と融合される。本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドも、本発明に含まれる。
検出可能な部分に関して、さらなる例示的な酵素には、限定されないが、西洋わさびペルオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、及びルシフェラーゼが含まれる。さらなる例示的な蛍光物質には、限定されないが、ローダミン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ウンベリフェロン、ジクロロトリアジニルアミン、フィコエリトリン、及び塩化ダンシルが含まれる。さらなる例示的な化学発光部分には、限定されないが、ルミノールが含まれる。さらなる例示的な生物発光物質には、限定されないが、ルシフェリン及びエクオリンが含まれる。さらなる例示的な放射性物質には、限定されないが、ヨウ素125(125I)、炭素14(14C)、硫黄35(35S)、トリチウム(3H)、及びリン32(32P)が含まれる。
抗体またはその抗原結合性断片を検出可能な部分などにコンジュゲートするための方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Hunter et al.,Nature,144:945(1962); David et al.,Biochemistry,13:1014(1974); Pain et al.,J.Immunol.Meth.,40:219(1981); and Nygren,J.,Histochem.and Cytochem.,30:407(1982)において記載されている方法などである。
本明細書に記載の実施形態はさらに、本明細書において記載される抗体、抗体断片、二重特異性抗体、SMIP、キャメルボディ、ナノボディ、IgNAR、ポリペプチド、可変領域、及びCDRと実質的に相同である変異体及び同等物を含む。これらは、例えば、保存的置換変異(すなわち、同様のアミノ酸による1個または複数個のアミノ酸の置き換え)を含有してよい。例えば、保存的置換は、同じ一般クラス内で、あるアミノ酸を別のアミノ酸で、例えば、ある酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸で、ある塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸で、またはある中性アミノ酸を別の中性アミノ酸によって置き換えることを指す。保存的アミノ酸置換によって意図されていることは、当技術分野で周知である。
別の実施形態では、本発明は、本明細書において記載される抗原結合性断片、可変領域、及びCDRのポリペプチド配列のいずれか1つまたは複数に対して少なくとも90%以上の配列相同性を有するポリペプチド配列を企図する。より好ましくは、本発明は、本明細書において記載される抗原結合性断片、可変領域、及びCDRのポリペプチド配列のいずれか1つまたは複数に対して少なくとも95%以上の配列相同性、なおより好ましくは少なくとも98%以上の配列相同性、及びさらにより好ましくは少なくとも99%以上の配列相同性を有するポリペプチド配列を企図する。
核酸とアミノ酸配列との間の相同性を決定するための方法は、当技術分野における通常の技能のものには周知である。
別の実施形態では、本発明はさらに、抗PACAP活性をさらに有する、本明細書において記載される抗原結合性断片、可変領域、及びCDRの上で列挙されたポリペプチド同族体を企図する。抗PACAP活性の非限定的例は、本明細書において記載されており、例えば、PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RへのPACAP結合を阻害し、それによって、cAMPの産生を減少させる能力である。
別の実施形態では、本発明はさらに、限定されないが、抗イディオタイプ抗体を含む、上述の配列のいずれかと結合する抗体の生成及び使用を企図する。例示的な一実施形態では、そのような抗イディオタイプ抗体は、抗PACAP抗体を投与されたことのある対象に、抗PACAP抗体の作用を調節、減少、または中和するために投与され得るであろう。そのような抗体はまた、抗PACAP抗体の存在によって特徴づけられる自己免疫疾患を処置するために有用であり得るであろう。そのような抗体、例えば、抗イディオタイプ抗体のさらなる例示的な使用は、例えば、対象の血液または他の体液中に存在する抗PACAP抗体のレベルをモニターするために、本発明の抗PACAP抗体を検出するための使用である。例えば、一実施形態では、本発明は、対象において前記抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片のin vivoレベルをモニターするために、または前記抗PACAP抗体またはその抗原結合性断片を投与されている対象において前記抗PACAP抗体を中和するために、抗イディオタイプ抗体を使用する方法を提供する。
本発明はまた、本明細書に記載の他のポリヌクレオチド配列のいずれかで置き換えられた本明細書に記載のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列のいずれかを含む抗PACAP抗体を企図する。例えば、限定されないが、本発明は、本明細書に記載の可変軽鎖及び可変重鎖配列のいずれかの組合せを含む抗体を企図し、かつさらに、本明細書に記載のCDR配列のいずれかを、本明細書に記載の他のCDR配列のいずれかで置換することから生じる抗体を企図する。
抗PACAP抗体ポリペプチドをコードする例示的なポリヌクレオチド
本発明はさらに、PACAPに対して結合特異性を有する抗体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを対象とする。
抗体Ab10
一実施形態では、本発明はさらに、PACAPに対して結合特異性を有する抗体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを対象とする。本発明の一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号401の重鎖配列をコードし、かつ配列番号412の重鎖可変領域コード配列及び配列番号420の重鎖定常領域コード配列からなる配列番号411のポリヌクレオチド配列を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明の別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号402の可変重鎖ポリペプチド配列をコードする次のポリヌクレオチド配列を含むか、または別法ではそれらからなる:
cagtcggtggaggagtccgggggtcgcctggtcacgcctgggacacccctgacactcacctgcacagtctctggaatcgacctcaatagctactacatgacctgggtccgccaggctccagggaaggggctggaatggatcggattcattgatgctggtggtgacgcatactacgcgagctgggcgaaaggccgattcaccatctccaaaacctcgaccacggtggatctgaaaatcaccagtccgacaaccgaggacacggccacctatttctgtgccagagatcttgacttgtggggccagggcaccctggtcaccgtctcgagc(配列番号412)。
本発明の別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号410の定常重鎖ポリペプチド配列をコードする次のポリヌクレオチド配列を含むか、または別法ではそれらからなる:
gcctccaccaagggcccatcggtcttccccctggcaccctcctccaagagcacctctgggggcacagcggccctgggctg
cctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacccagacctacatctgcaacgtgaatcacaagcccagcaacaccaaggtggacgcgagagttgagcccaaatcttgtgacaaaactcacacatgcccaccgtgcccagcacctgaactcctggggggaccgtcagtcttcctcttccccccaaaacccaaggacaccctcatgatctcccggacccctgaggtcacatgcgtggtggtggacgtgagccacgaagaccctgaggtcaagttcaactggtacgtggacggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagtacgccagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaatggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaagccctcccagcccccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagaaccacaggtgtacaccctgcccccatcccgggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctatcccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaagctcaccgtggacaagagcaggtggcagcaggggaacgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacgcagaagagcctctccctgtctccgggtaaa(配列番号420)。
本発明の別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号421の軽鎖ポリペプチド配列をコードし、かつ配列番号432の軽鎖可変領域コード配列及び配列番号440の軽鎖定常領域コード配列からなる配列番号431のポリヌクレオチド配列を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明の別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号422の可変軽鎖ポリペプチド配列をコードする次のポリヌクレオチド配列を含むか、または別法ではそれらからなる:
gccgccgtgctgacccagactccatctcccgtgtctgcagctgtgggaggcacagtcaccatcaattgccagtccagtgagagtgtttacggtaactacttagcctggtttcagcagaaaccagggcagcctcccaagctcctgatctacgaagcatccaaactggaatctggggtcccatcgcggttcagcggcagtggatctgggacacagttcactctcaccatcagcgacttgcagtgtgacgatgctgccacttactactgtgcaggcggtgatattagtgaaggtgttgctttcggcggagggaccgaggtggtggtcaaacgt(配列番号432)。
本発明の別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号430の定常軽鎖ポリペプチド配列をコードする次のポリヌクレオチド配列を含むか、または別法ではそれらからなる:
acggtagcggccccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatctggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcct
cagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgt(配列番号440)。
本発明のさらなる一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドは、配列番号401の重鎖配列もしくは配列番号402の可変重鎖配列のCDR(超可変領域)をコードするポリヌクレオチドに対応する配列番号414;配列番号416;及び配列番号418のポリヌクレオチド配列のうちの1つもしくは複数、ならびに/または配列番号421の軽鎖配列もしくは配列番号422の可変軽鎖配列のCDR(超可変領域)に対応する配列番号434;配列番号436;及び配列番号438のポリヌクレオチド配列のうちの1つもしくは複数、あるいはこれらのポリヌクレオチド配列の組合せを含むか、または別法ではそれらからなる。本発明の別の実施形態では、本発明の抗体またはそれらの抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドは、上に記載されたCDRのうちの1つまたは複数、可変重鎖及び可変軽鎖配列、ならびに重鎖及び軽鎖配列をコードするポリヌクレオチドの組合せ(それらのすべても含む)を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明のさらなる一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドは、配列番号401の重鎖配列もしくは配列番号402の可変重鎖配列のFR(定常領域)をコードするポリヌクレオチドに対応する配列番号413;配列番号415;配列番号417;及び配列番号419のポリヌクレオチド配列のうちの1つもしくは複数、ならびに/または配列番号421の軽鎖配列もしくは配列番号422の可変軽鎖配列のFR(定常領域)に対応する配列番号433;配列番号435;配列番号437;及び配列番号439のポリヌクレオチド配列のうちの1つもしくは複数、あるいはこれらのポリヌクレオチド配列の組合せを含むか、または別法ではそれらからなる。本発明の別の実施形態では、本発明の抗体またはそれらの断片をコードするポリヌクレオチドは、上に記載されたFRのうちの1つまたは複数、可変重鎖及び可変軽鎖配列、ならびに重鎖及び軽鎖配列の組合せ(それらのすべてを含む)を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明はまた、本明細書に記載の抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数を含むポリヌクレオチド配列を企図する。本発明の一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドは、抗原結合性断片をコードする次のポリヌクレオチドのうちの1つ、2つ、3つ、またはそれ以上(すべても含む)を含むか、または別法ではそれらからなる:配列番号401の重鎖配列をコードするポリヌクレオチド配列番号411;配列番号402の可変重鎖配列をコードするポリヌクレオチド配列番号412;配列番号421の軽鎖配列をコードするポリヌクレオチド配列番号431;配列番号422の可変軽鎖配列をコードするポリヌクレオチド配列番号432;配列番号401の重鎖配列または配列番号402の可変重鎖配列のCDRをコードするポリヌクレオチド(配列番号414;配列番号416;及び配列番号418);配列番号421の軽鎖配列または配列番号422の可変軽鎖配列のCDRをコードするポリヌクレオチド(配列番号434;配列番号436;及び配列番号438);配列番号401の重鎖配列または配列番号402の可変重鎖配列のFRをコードするポリヌクレオチド(配列番号413;配列番号415;配列番号417;及び配列番号419);ならびに配列番号421の軽鎖配列または配列番号422の可変軽鎖配列のFRをコードするポリヌクレオチド(配列番号433;配列番号435;配列番号437;及び配列番号439)。
本発明の別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、PACAPに対して結合特
異性を有するFab断片をコードするポリヌクレオチドを含むか、または別法ではそれらからなる。抗体Ab10に関して、全長Ab10抗体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号401の重鎖配列をコードするポリヌクレオチド配列番号411、及び配列番号421の軽鎖配列をコードするポリヌクレオチド配列番号431を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明の別の実施形態は、哺乳類細胞、例えば、CHO、NSO、またはHEK-293細胞において、または真菌、昆虫、または微生物系、例えば、酵母細胞、例えば、酵母Pichiaにおいて発現させるために発現ベクターに組み込まれたこれらのポリヌクレオチドを企図する。適切なPichia種には、限定されないが、Pichia pastorisが含まれる。本明細書に記載の本発明の一実施形態では、Fab断片は、適切な宿主において全長ポリヌクレオチドを発現させた後に、Ab10の酵素消化(例えば、パパイン)によって生成され得る。本発明の別の実施形態では、抗PACAP抗体、例えば、Ab10またはそれらのFab断片は、哺乳類細胞、例えば、CHO、NSO、またはHEK293細胞、真菌、昆虫、または微生物系、例えば、酵母細胞(例えば、二倍体酵母、例えば、二倍体Pichia)及び他の酵母株におけるAb10ポリヌクレオチドの発現を介して生成され得る。適切なPichia種には、限定されないが、Pichia pastorisが含まれる。
抗体Ab20
一実施形態では、本発明はさらに、PACAPに対して結合特異性を有する抗体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを対象とする。本発明の一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号441の重鎖配列をコードし、かつ配列番号452の重鎖可変領域コード配列及び配列番号460の重鎖定常領域コード配列からなる配列番号451のポリヌクレオチド配列を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明の別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号442の可変重鎖ポリペプチド配列をコードする次のポリヌクレオチド配列を含むか、または別法ではそれらからなる:
cagtcggtggaggagtccgggggtcgcctggtcacgcctgggacacccctgacactcacctgcacagtctctggaatcgacctcagtagctactacatgagctgggtccgccaggctccagggaaggggctggaatggatcggattcattgatactgatggtagcgcatactacgcgacctgggcgaaaggccgattcaccatctccaaaacctcgaccacggtggatctgaaaatcaccagtccgacaaccgaggacacggccacctatttctgtgccagagatcttgacttgtggggcccgggcaccctcgtcaccgtctcgagc(配列番号452)。
本発明の別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号450の定常重鎖ポリペプチド配列をコードする次のポリヌクレオチド配列を含むか、または別法ではそれらからなる:
gcctccaccaagggcccatcggtcttccccctggcaccctcctccaagagcacctctgggggcacagcggccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacccagacctacatctgcaacgtgaatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagaaagttgagcccaaatcttgtgacaaaactca
cacatgcccaccgtgcccagcacctgaactcctggggggaccgtcagtcttcctcttccccccaaaacccaaggacaccctcatgatctcccggacccctgaggtcacatgcgtggtggtggacgtgagccacgaagaccctgaggtcaagttcaactggtacgtggacggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagtacgccagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaatggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaagccctcccagcccccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagaaccacaggtgtacaccctgcccccatcccgggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctatcccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaagctcaccgtggacaagagcaggtggcagcaggggaacgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacgcagaagagcctctccctgtctccgggtaaa(配列番号460)。
本発明の別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号461の軽鎖ポリペプチド配列をコードし、かつ配列番号472の軽鎖可変領域コード配列及び配列番号480の軽鎖定常領域コード配列からなる配列番号471のポリヌクレオチド配列を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明の別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号462の可変軽鎖ポリペプチド配列をコードする次のポリヌクレオチド配列を含むか、または別法ではそれらからなる:
gccgccgtgctgacccagactccatctcccgtgtctgcagctgtgggaggcacagtcagcatcagttgccagtccagtgagagtgtttatagtaactacttagcctggtttcagcagaaaccagggcagcctcctaagttcttgatctacgaagcatccaaactggcatctggggtcccatcgcggttcaaaggcagtggatctgggacacagttcactctcaccatcagcgacgtgcagtgtgacgatgctggcacttactactgtgcaggcggctatagtagtgaaggtgttgctttcggcggagggaccgaggtggtggtcaaacgt(配列番号472)。
本発明の別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号470の定常軽鎖ポリペプチド配列をコードする次のポリヌクレオチド配列を含むか、または別法ではそれらからなる:
acggtagcggccccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatctggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgt(配列番号480)。
本発明のさらなる一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗原結合性
断片をコードするポリヌクレオチドは、配列番号441の重鎖配列もしくは配列番号442の可変重鎖配列のCDR(超可変領域)をコードするポリヌクレオチドに対応する配列番号454;配列番号456;及び配列番号458のポリヌクレオチド配列のうちの1つもしくは複数、ならびに/または配列番号461の軽鎖配列もしくは配列番号462の可変軽鎖配列のCDR(超可変領域)に対応する配列番号474;配列番号476;及び配列番号478のポリヌクレオチド配列のうちの1つもしくは複数、あるいはこれらのポリヌクレオチド配列の組合せを含むか、または別法ではそれらからなる。本発明の別の実施形態では、本発明の抗体またはそれらの抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドは、上に記載されたCDRのうちの1つまたは複数、可変重鎖及び可変軽鎖配列、ならびに重鎖及び軽鎖配列をコードするポリヌクレオチドの組合せ(それらのすべても含む)を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明のさらなる一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドは、配列番号441の重鎖配列もしくは配列番号442の可変重鎖配列のFR(定常領域)をコードするポリヌクレオチドに対応する配列番号453;配列番号455;配列番号457;及び配列番号459のポリヌクレオチド配列のうちの1つもしくは複数、ならびに/または配列番号461の軽鎖配列もしくは配列番号462の可変軽鎖配列のFR(定常領域)に対応する配列番号473;配列番号475;配列番号477;及び配列番号479のポリヌクレオチド配列のうちの1つもしくは複数、あるいはこれらのポリヌクレオチド配列の組合せを含むか、または別法ではそれらからなる。本発明の別の実施形態では、本発明の抗体またはそれらの断片をコードするポリヌクレオチドは、上に記載されたFRのうちの1つまたは複数、可変重鎖及び可変軽鎖配列、ならびに重鎖及び軽鎖配列の組合せ(それらのすべてを含む)を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明はまた、本明細書に記載の抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数を含むポリヌクレオチド配列を企図する。本発明の一実施形態では、PACAPに対して結合特異性を有する抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドは、抗原結合性断片をコードする次のポリヌクレオチドのうちの1つ、2つ、3つ、またはそれ以上(すべても含む)を含むか、または別法ではそれらからなる:配列番号441の重鎖配列をコードするポリヌクレオチド配列番号451;配列番号442の可変重鎖配列をコードするポリヌクレオチド配列番号452;配列番号461の軽鎖配列をコードするポリヌクレオチド配列番号471;配列番号462の可変軽鎖配列をコードするポリヌクレオチド配列番号472;配列番号441の重鎖配列または配列番号442の可変重鎖配列のCDRをコードするポリヌクレオチド(配列番号454;配列番号456;及び配列番号458);配列番号461の軽鎖配列または配列番号462の可変軽鎖配列のCDRをコードするポリヌクレオチド(配列番号474;配列番号476;及び配列番号478);配列番号441の重鎖配列または配列番号442の可変重鎖配列のFRをコードするポリヌクレオチド(配列番号453;配列番号455;配列番号457;及び配列番号459);ならびに配列番号461の軽鎖配列または配列番号462の可変軽鎖配列のFRをコードするポリヌクレオチド(配列番号473;配列番号475;配列番号477;及び配列番号479)。
本発明の別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、PACAPに対して結合特異性を有するFab断片をコードするポリヌクレオチドを含むか、または別法ではそれらからなる。抗体Ab20に関して、全長Ab20抗体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号441の重鎖配列をコードするポリヌクレオチド配列番号451、及び配列番号461の軽鎖配列をコードするポリヌクレオチド配列番号471を含むか、または別法ではそれらからなる。
本発明の別の実施形態は、哺乳類細胞、例えば、CHO、NSO、またはHEK-293細胞において、または真菌、昆虫、または微生物系、例えば、酵母細胞、例えば、酵母Pichiaにおいて発現させるために発現ベクターに組み込まれたこれらのポリヌクレオチドを企図する。適切なPichia種には、限定されないが、Pichia pastorisが含まれる。本明細書に記載の本発明の一実施形態では、Fab断片は、適切な宿主において全長ポリヌクレオチドを発現させた後に、Ab20の酵素消化(例えば、パパイン)によって生成され得る。本発明の別の実施形態では、抗PACAP抗体、例えば、Ab20またはそれらのFab断片は、哺乳類細胞、例えば、CHO、NSO、またはHEK293細胞、真菌、昆虫、または微生物系、例えば、酵母細胞(例えば、二倍体酵母、例えば、二倍体Pichia)及び他の酵母株におけるAb20ポリヌクレオチドの発現を介して生成され得る。適切なPichia種には、限定されないが、Pichia pastorisが含まれる。
前記ポリヌクレオチドを含む宿主細胞及びベクターも企図される。
本発明はさらに、本明細書において記述されているとおりの可変重鎖及び軽鎖ポリペプチド配列、さらには、個々のCDR(超可変領域)をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクター、さらには、前記ベクター配列を含む宿主細胞を企図する。本発明の実施形態では、宿主細胞は、哺乳類細胞、例えば、CHO細胞である。本発明の実施形態では、宿主細胞は、酵母細胞、例えば、Pichia属の酵母細胞である。
B細胞スクリーニング及び単離
一実施形態では、本発明は、所望のPACAP抗原に対して特異的であるPACAPに対するモノクローナル抗体、またはそのような抗体に対応する核酸配列を生成するために使用することができる、少なくとも1つのPACAP抗原特異的細胞を単離するために使用され得る抗原特異的B細胞のクローン集団の調製及び単離を企図する。抗原特異的B細胞の前記クローン集団を調製及び単離する方法は、例えば、その開示がその全体で参照によって本明細書に組み込まれるCarvalho-Jensen et al.に付与された米国特許出願公開第2007/0269868号において教示されている。抗原特異的B細胞の前記クローン集団を調製及び単離する方法は、本明細書において実施例においても教示される。細胞集団をサイズまたは密度において「富化」する方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,627,052号を参照されたい。これらのステップを、抗原特異性による細胞集団の富化に加えて使用することができる。
抗体をヒト化する方法
別の実施形態では、本発明は、抗体重鎖及び軽鎖をヒト化するための方法を企図する。抗PACAP抗体に適用され得る抗体重鎖及び軽鎖をヒト化するための方法は例えば、それぞれの開示がそれらの全体で参照によって本明細書に組み込まれるOlson et al.に付与された米国特許出願公開第2009/0022659号、及びGarcia-Martinez et al.に付与された米国特許第7,935,340号において教示されている。
抗体及びそれらの断片を生成する方法
別の実施形態では、本発明は、抗PACAP抗体及びそれらの断片を生成するための方法を企図する。交配コンピテント酵母の多倍数体、好ましくは二倍体または四倍体株から分泌される抗PACAP抗体及びそれらの断片を生成する方法は、例えば、それぞれの開示がそれらの全体で参照によって本明細書に組み込まれるOlson et al.に付与された米国特許出願公開第2009/0022659号、及びGarcia-Martinez et al.に付与された米国特許第7,935,340号において教示されている。
抗体を生成する他の方法は、当技術分野の通常の技能のものには周知である。例えば、キメラ抗体を生成する方法は現在、当技術分野で周知である(例えば、それぞれの開示がそれらの全体で参照によって本明細書に組み込まれるCabilly et al.らに付与された米国特許第4,816,567号;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81:8651-55,1984;Neuberger et al.,Nature,314:268-270,1985;Boulianne,G.L.et al.,Nature,312:643-46,1984を参照されたい)。
同様に、ヒト化抗体を生成する他の方法も現在、当技術分野で周知である(例えば、それぞれの開示がそれらの全体で参照によって本明細書に組み込まれるQueen et alに付与された米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,762号、及び同第6,180,370号;Winterに付与された米国特許第5,225,539号及び同第6,548,640号;Carter et alに付与された米国特許第6,054,297号、同第6,407,213号、及び同第6,639,055号;Adairに付与された米国特許第6,632,927号;Jones,P.T.et al.,Nature,321:522-525,1986;Reichmann,L.et al.,Nature,332:323-327,1988;Verhoeyen,M.et al.,Science,239:1534-36,1988を参照されたい)。
PACAP結合特異性を有する本発明の抗体ポリペプチドはまた、当技術分野の通常の技能のものに周知の従来の技術を使用して、プロモーター(任意選択で、真核または原核オペロンの構成要素として)、及び抗体特異性に必要とされるCDRをコードするDNA配列が非ヒト細胞源、好ましくはウサギB細胞源に由来する一方で、抗体鎖の残りの部分をコードするDNA配列がヒト細胞源に由来する抗体重鎖をコードするDNA配列を含有する発現ベクターをコンストラクトすることによって生成され得る。
第2の発現ベクターは、当技術分野の通常の技能のものに周知の同じ従来の手段を使用して生成され、その際、前記発現ベクターは、プロモーター(任意選択で、真核または原核オペロンの構成要素として)、及び抗体特異性に必要とされるCDRをコードするDNA配列が非ヒト細胞源、好ましくはウサギB細胞源に由来する一方で、抗体鎖の残りの部分をコードするDNA配列がヒト細胞源に由来する抗体軽鎖をコードするDNA配列を含有する。
発現ベクターは、遺伝子導入された宿主細胞を生成するために、当技術分野の通常の技能のものに周知の従来の技術によって、宿主細胞に遺伝子導入され、その際、前記遺伝子導入された宿主細胞は、前記抗体ポリペプチドを生成するために、当技術分野の通常の技能のものに周知の従来の技術によって培養される。
宿主細胞は、上記の2種の発現ベクターを同時遺伝子導入され得、その際、第1の発現ベクターは、プロモーター(任意選択で、真核または原核オペロンの構成要素として)及び軽鎖由来ポリペプチドを含有するDNAを含有し、第2のベクターは、プロモーター(任意選択で、真核または原核オペロンの構成要素として)及び重鎖由来ポリペプチドをコードするDNAを含有する。2種のベクターは、異なる選択マーカーを含有するが、好ましくは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの実質的に同等の発現を達成する。別法では、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードするDNAを包含する単一ベクターを使用してよい。重鎖及び軽鎖のためのコード配列は、cDNA、ゲノムDNA、またはそれらの両方を含んでよい。
抗体ポリペプチドを発現するために使用される宿主細胞は、細菌細胞、例えば、E.coli、または真核細胞、例えば、P.pastorisのいずれかであってよい。本発明の一実施形態では、この目的で十分に規定されている種類の哺乳類細胞、例えば、骨髄腫細胞、CHO細胞系、NSO細胞系、またはHEK293細胞系を使用してよい。
ベクターをコンストラクトし得る一般方法、宿主細胞を生成するために必要とされる遺伝子導入方法、及び前記宿主細胞から抗体ポリペプチドを生成するために必要とされる培養方法はすべて、従来の技術を包含する。好ましくは、抗体を生成するために使用される細胞系は哺乳類細胞系であるが、任意の他の適切な細胞系、例えば、細菌細胞系、例えば、E.coli由来菌株、または酵母細胞系が別法で使用され得る。
同様に、生成されたら、抗体ポリペプチドは、当技術分野で標準的な手順、例えば、例えば、クロスフロー濾過、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」)などに従って精製され得る。
本明細書に記載の抗体ポリペプチドは、本発明の抗体ポリペプチドと同じ治療適用のために有用であろうペプチドまたは非ペプチド模倣物質のいずれかの設計及び合成のためにも使用され得る(例えば、その内容がその全体で参照によって本明細書に組み込まれるSaragobi et al.,Science,253:792-795,1991を参照されたい).
スクリーニングアッセイ
ここに記載されるスクリーニングアッセイは、PACAP関連疾患または障害の症状を示す対象において、PACAPと関連する疾患及び障害を処置する際に有用であり得る高親和性抗PACAP Abを同定するために設計されている。
一部の実施形態では、当該抗体を、診断ツールとして使用する。当該抗体は、サンプル及び/または対象において存在するPACAPの量をアッセイするために使用され得る。当業者には分かるであろうとおり、そのような抗体は、抗体を中和することを必要としない。一部の実施形態では、診断用抗体は、中和抗体ではない。一部の実施形態では、診断用抗体は、中和抗体が結合するものとは異なるエピトープに結合する。一部の実施形態では、それら2種の抗体は、相互に競合しない。
一部の実施形態では、本明細書において開示される抗体は、PACAPのレベルの変化と関連する疾患または障害をスクリーニング/診断するために、哺乳類組織または細胞においてPACAPを検出するためのアッセイキット及び/または方法において使用または提供される。当該キットは、PACAPに結合する抗体、ならびに抗体と、存在するならばPACAPとの結合、及び任意選択で、PACAPタンパク質レベルを示すための手段を含む。抗体の存在を示すための様々な手段が使用され得る。例えば、フルオロフォア、他の分子プローブ、または酵素が抗体に連結され得、かつ抗体の存在が様々な方法で観察され得る。そのような障害をスクリーニングするための方法は、キットの使用、または単純に、開示の抗体の1種の使用及びその抗体がサンプル中のPACAPに結合するかどうかの決定を伴い得る。当業者には分かるであろうとおり、PACAPのレベルが高いか、または上昇すると、サンプル中でPACAPに結合する抗体の量は多くなる。したがって、抗体結合の程度を、サンプル中にどれくらいのPACAPが存在するかを決定するために使用することができる。所定の量(例えば、PACAP関連障害を有さないヒトが有するであろう量または範囲)よりも多いPACAPの量を有する対象またはサンプルは、PACAP媒介性障害、例えば、片頭痛、頭痛、疼痛、または他の状態を有すると特徴づけられ得る。
本発明はさらに、PACAPへの本発明の抗PACAP抗体の結合を検出するためのキットを提供する。殊に、当該キットは、本発明の抗PACAP抗体またはその免疫反応性断片と特異的に反応性なPACAPの存在を検出するために使用され得る。当該キットは、基質に結合した抗体、抗原と反応性な二次抗体、及び二次抗体と抗原との反応を検出するための試薬も包含してよい。そのようなキットは、ELISAキットであってよく、基質、一次抗体及び適切な場合には二次抗体、ならびに例えば、本明細書に記載のとおりの検出可能な部分、酵素基質、及び呈色試薬などの任意の他の必要な試薬を含み得る。診断用キットは、イムノブロットキットの形態であってもよい。診断用キットは、化学発光キット(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、MD)の形態であってもよい。診断用キットは、ランタニドをベースとする検出キット(PerkinElmer、San Jose、CA)であってもよい。
熟練した臨床家は、生体試料には、これらだけに限定されないが、血清、血漿、尿、唾液、粘液、胸膜液、滑液、及び脊髄液が包含されることを理解するであろう。
PACAPと関連する疾患及び障害の症状を寛解もしくは低減させるか、またはそれらを処置もしくは予防する方法
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載の抗PACAP抗体、またはそれらの抗原結合性断片は、PACAPと関連する疾患及び障害の症状を寛解もしくは低減させるか、またはそれらを処置もしくは予防するために有用である。本明細書に記載の抗PACAP抗体、またはそれらの抗原結合性断片、さらにはそれらの組合せはまた、治療有効量で、PACAPと関連する疾患及び障害の処置を必要とする患者に、下記により詳細に記載されるとおりの医薬組成物の形態で投与され得る。
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載の抗PACAP抗体、またはそれらの抗原結合性断片は、PACAPと関連する疾患及び障害の症状を寛解もしくは低減させるか、またはそれらを処置もしくは予防するために、(単独で、または別の薬剤との組合せで)有用である。
本発明の別の実施形態では、第2の薬剤を伴うか、または伴わない本明細書に記載の抗PACAP抗体、またはそれらの抗原結合性断片は、疾患及び障害の次の非限定的リスト:片頭痛(前兆を伴うか、伴わない)、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、緊張性頭痛、全体頭痛、ホットフラッシュ、羞明、慢性発作性片頭痛、頭部または頸部における潜在的構造問題による二次性頭痛、脳神経痛、副鼻洞性頭痛(例えば、副鼻腔炎と関連する頭痛)、アレルギー誘導性頭痛または片頭痛、疼痛、慢性疼痛、神経炎症性または炎症性疼痛、術後切開疼痛、手術後疼痛、外傷関連疼痛、眼疼痛、歯痛、複合性局所疼痛症候群、癌性疼痛(例えば、原発性または転移性骨癌性疼痛)、骨折痛、骨粗鬆症骨折痛、火傷から生じる疼痛、通風性関節痛、鎌状赤血球発症と関連する疼痛、側頭下顎障害と関連する疼痛、硬変、肝炎、神経原性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、内臓疼痛、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、幻想肢痛、線維筋痛症、月経痛、卵巣痛、反射性交感神経性ジストロフィー、変形性関節症または関節リウマチ疼痛、下背部痛、糖尿病性神経障害、坐骨神経痛、消化不良、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病、回腸炎、潰瘍性大腸炎、腎仙痛、月経困難、膀胱炎、間質性膀胱炎、月経期、分娩、閉経期、膵臓炎、統合失調症、うつ病、心的外傷後ストレス障害、不安障害、糖尿病、自己免疫性糖尿病、内皮機能不全、虚血、レイノー症候群、冠動脈性心疾患(「CHD」)、冠動脈疾患(「CAD」)、心不全、末梢動脈疾患(「PAD」)、肺高血圧(「PH」)、結合組織障害、卒中、シェーグレン症候群、多発性硬化症、気管支反応亢進、喘息、気管支炎、気管支拡張、気腫、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、炎症性皮膚炎、腺組織における腺癌、臓器の胚組織における芽細胞腫、上皮組織における癌腫、血液細胞を形
成する組織における白血病、リンパ組織におけるリンパ腫、骨髄における骨髄腫、結合または支持組織における肉腫、副腎癌、AIDS関連リンパ腫、貧血、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、類癌腫、子宮頸癌、化学療法、結腸癌、血球減少症、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部癌、頸部癌、肝胆道癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、神経系腫瘍、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、皮膚癌、胃癌、睾丸癌、甲状腺癌、尿道癌、骨髄の癌、多発性骨髄腫、骨に転移する腫瘍、神経及び中空臓器を浸潤する腫瘍、神経構造付近の腫瘍(さらに好ましくは、癌性疼痛は、内臓疼痛、好ましくは膵臓癌及び/または腹部における転移から生じる内臓疼痛を含む。さらに好ましくは、癌性疼痛は体性痛、好ましくは骨における転移、手術後疼痛、肉腫、結合組織の癌、骨組織の癌、骨髄の血液形成細胞のがん、多発性骨髄腫、白血病、原発性または続発性骨癌の1つまたは複数による体性痛を含む)、尋常性ざそう、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、ケロイド、肥厚性瘢痕及び酒さ、アレルギー性皮膚炎、乾癬、そう痒症、神経原性皮膚発赤、紅斑、体重減少、食欲不振、サルコイドーシス、ショック、敗血症、オピエート離脱症候群、モルヒネ耐性、てんかん、下部尿路(「LUT」)障害、例えば、尿路感染症、異常排尿、尿意逼迫、夜間頻尿、尿失禁、過活動膀胱の症状を寛解もしくは低減させるか、またはそれらを処置もしくは予防するために、かつそのようなLUT状態と関連する疼痛を予防または緩和するために有用である。好ましくは、本明細書に記載の本抗PACAP抗体及び抗原結合性断片は、片頭痛、頭痛、及び疼痛関連疾患または状態の症状を寛解もしくは低減し、それらを処置もしくは予防するために有用である。
殊に、本抗PACAP抗体及び抗原結合性断片はまた、頭痛及び/または片頭痛で生じる、さらには、頭痛及び/または片頭痛とは独立して生じる羞明を寛解もしくは低減させるか、またはそれらを処置もしくは予防するために有用であり得る。
片頭痛患者は典型的には、光に曝露されると悪化する疼痛及び片頭痛症状、羞明として公知の現象を発生させる。羞明は、眼障害、例えば、虹彩炎及びブドウ膜炎、ならびに頭蓋内障害、例えば、髄膜炎においても共通する。典型的な視路では、光は、網膜において杆体及び錐状体を活性化させ、それらは、視神経を介して外側膝状体、上丘、次いで、視覚野に投射する網膜神経節細胞を活性化させる。この経路は、画像形成及び非画像形成データを包含する。新たな経路(非画像形成情報)は、視交叉上核を介して正常な概日リズムの維持を可能にし、内因性感光性網膜神経節細胞(ipRGC)によって調節される。これらのipRGCは、杆体及び錐状体とは独立しており、メラノプシン、光色素(photopigment)を含有する。
Noseda,R.et al.,Nat.Neurosci.,13:239-245(2010)は、片頭痛を有する盲人を研究し、これらの所見を、ラットモデルと関係づけて、硬膜から、疼痛を知覚する部位へのipRGC投射を追跡した。片頭痛を有する盲目患者のうち、6人は、重篤な視神経損傷または両眼摘出によって、光知覚を有さなかった。これらの対象は、異常な睡眠パターン及び不十分な瞳孔光応答を経験した。彼らの片頭痛は、光曝露で悪化しなかった。対照的に、画像の知覚は最小限であるが、光を検出することができた14人の盲目対象は、正常な睡眠パターン及び正常な瞳孔光反射を有した。広範な杆体及び錐状体退化にも関わらず、これらの患者は、片頭痛発作の間、光曝露で片頭痛症状が悪化し、これは、杆体及び錐状体ではなく、ipRGCが羞明において重要であることを示唆した。
ラットにおける順行性追跡によって実証されたとおり、非画像形成脳領域のこれらの網膜投射は、視床後部の体側後尾領域に投射される。この部位へのipRGCのインプットは、同じくこの領域に投射する硬膜感受性(dura-sensitive)疼痛ニューロンを調節する。硬膜疼痛及び光インプットに対して二重感受性な(dually sensitive)視床ニューロンは、一次体性感覚皮質、一次及び二次運動皮質、頭頂連
合皮質、ならびに一次及び二次視覚皮質を包含する多数の皮質領域に広く投射する。これらの皮質投射は、羞明に加えて、運動麻痺または協調不能、視覚障害、及び集中欠如などの他の普通型片頭痛症状を説明する助けとなり得る。
羞明はまた、頻度は低いが、同様の他の無能化性状態、例えば、群発性頭痛及び他の三叉神経・自律神経性頭痛及び眼瞼痙攣を随伴する。羞明の根底にある機構は、三叉神経系に関係する。盲目患者における羞明は、非視路の寄与を示唆している。加えて、あまり一般的ではない一次頭痛障害の群である三叉神経・自律神経性頭痛は、多くの場合に同側性羞明と関連する片側性三叉神経媒介性疼痛によって特徴づけられる。
羞明の共通の原因には、片頭痛、白内障、または重篤な眼科疾患、例えば、ブドウ膜炎または角膜擦傷が包含される。羞明と関連する障害のより広範なリストには、眼関連の原因、例えば、色盲、無虹彩、虹彩括約筋を麻痺させることによって羞明の原因となり得る抗コリン作動薬、無水晶体症(水晶体の非存在)、牛眼症(角膜と虹彩との間の異常に狭い角度)、白内障、錐体ジストロフィー、眼の先天異常、ウイルス性結膜炎(「ピンクアイ」)、角膜擦傷、角膜ジストロフィー、角膜潰瘍、角膜上皮細胞の破壊、例えば、角膜異物または角膜炎に起因するもの、水晶体転位症、眼内炎、疾患、損傷、もしくは感染、例えば、霰粒腫に起因する眼外傷、上強膜炎、緑内障、円錐角膜、または視神経形成不全、小眼、または先天性緑内障虹彩炎、視神経炎、色素拡散症候群、瞳孔散大(天然または化学的に誘導)、網膜剥離、角膜もしくは強膜の瘢痕化、及びブドウ膜炎が包含される。
加えて、羞明は、自閉症スペクトラム障害、キアリ形成異常、失読症、筋痛性脳脊髄炎aka慢性疲労症候群を包含する脳炎、髄膜炎、クモ膜下出血、後頭蓋窩の腫瘍、さらには、他の原因、例えば、強直性脊椎炎、白子症、リボフラビン欠乏症、ベンゾジアゼピン(ベンゾジアゼピンの長期使用またはそれからの離脱)、化学療法、チクングニア、シスチン症、エーレルス-ダンロー症候群、二日酔い、インフルエンザ、感染性単核細胞症、マグネシウム欠乏、水銀中毒、片頭痛、狂犬病、及びチロシン血症II型(「リヒナー-ハナート症候群」としても公知)を包含する神経系関連または神経性の原因を有する。
加えて、羞明は、うつ病、双極性障害、及び広場恐怖症において亢進することが公知である。
本明細書に記載の本抗PACAP抗体及び抗原結合性断片は、これらの条件のいずれにおいても、好ましくは、心的外傷後ストレス障害(「PTSD」)を有する対象において、または外傷性脳損傷を有する対象において、羞明を処置または予防するために有効であり得る。
頭痛は、下記で論述されるとおり、原因によって分類され得る。
一次性頭痛。一次性頭痛は、頭部における疼痛感受性構造の問題またはその過活動に起因する。一次性頭痛は一般に、根底にある疾患の症状であるとは判断されない。代わりに、脳における化学的活性、頭蓋の外側の頭部の神経もしくは血管、または頭頚部の筋肉、あるいはこれらの因子の一部の組合せが、一次性頭痛において役割を果たし得る。一部のヒトは、彼らがそのような頭痛をより発生させやすくする遺伝子を持っていることがある。例示的な一般的な一次性頭痛には、これらだけに限定されないが、発作性片頭痛を包含する、群発性頭痛;緊張性頭痛(または緊張型頭痛);及び三叉神経・自律神経性頭痛(「TAC」)が包含される。一次性頭痛の種類と判断され得る他の頭痛パターン、例えば、慢性連日性頭痛、咳嗽性頭痛、運動性頭痛、及び性交時頭痛が存在する。これらの頭痛は、あまり一般的ではなく、別個の特徴、例えば、異常な期間またはある種の活動と関連する疼痛を有する。これらの頭痛は一般に、原発性と判断されるが、それらはそれぞれ、根
底にある疾患の症状であり得るであろう。加えて、一部の一次性頭痛は、アルコール;特定の食物(例えば、硝酸塩を含有する加工肉);睡眠の変化または睡眠不足;劣悪な姿勢;欠食;及びストレスを包含する生活因子によって開始され得る。
二次性頭痛。二次性頭痛は、頭部の疼痛感受性神経を活性化させ得る疾患の症状である。重症度においてかなり多様であり得るいくつもの状態が、二次性頭痛の原因となり得る。二次性頭痛の例示的な原因には、これらだけに限定されないが、急性副鼻腔炎;動脈断裂(頸動脈または脊椎動脈解離);脳における静脈性血栓症;脳動脈瘤;脳動静脈形成異常;一酸化炭素中毒;キアリ形成異常;振盪;脱水;歯科の問題;耳感染(中耳);脳炎;巨細胞動脈炎;緑内障;二日酔い;インフルエンザ(感冒);頭蓋内血腫;他の障害を処置するための薬物;髄膜炎;グルタミン酸一ナトリウム(「MSG」);疼痛薬の過剰使用;パニック発作;振盪後症候群;ぴったりしたヘッドギア、例えば、ヘルメットまたはゴーグルからの圧迫;偽脳腫瘍;トキソプラズマ症;及び三叉神経痛が包含される。特定の種類の二次性頭痛には、これらだけに限定されないが、外的圧迫による頭痛(圧迫をもたらすヘッドギアの結果);アイスクリーム頭痛(一般に、「ブレインフリーズ(brain freeze)」と呼ばれる);反跳性頭痛(疼痛薬の過剰使用に起因);副鼻洞性頭痛(副鼻腔における炎症及び閉塞に起因);脊髄性頭痛(外傷、脊椎穿刺、または脊椎麻酔の結果かもしれない低レベルの脳脊髄液に起因);及び雷鳴頭痛(突然の重篤な頭痛を伴う障害の群)が包含される。
本発明の抗PACAP抗体の投与によって処置及び/または予防することができる例示的な非限定的な疼痛関連疾患及び障害には、神経原性、神経障害性、炎症性、または侵害受容性疼痛と関連する任意の状態から生じる疼痛が包含される。好ましくは、疼痛関連障害は、疼痛部位でのPACAPの増大と関連するはずである。
特定の実施形態では、処置されるべき疼痛関連障害は、腺組織における腺癌、臓器の胚組織における芽細胞腫、上皮組織における癌腫、血液細胞を形成する組織における白血病、リンパ組織におけるリンパ腫、骨髄における骨髄腫、結合または支持組織における肉腫、副腎癌、AIDS関連リンパ腫、貧血、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、類癌腫、子宮頸癌、化学療法、結腸癌、血球減少症、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部癌、頸部癌、肝胆道癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、神経系腫瘍、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、皮膚癌、胃癌、睾丸癌、甲状腺癌、尿道癌、骨髄の癌、多発性骨髄腫、骨に転移する腫瘍、神経及び中空臓器を浸潤する腫瘍、神経構造付近の腫瘍の1種または複数種から選択される悪性疾患から、またはがんから生じる癌性疼痛である。さらに好ましくは、癌性疼痛は、内臓疼痛、好ましくは膵臓癌及び/または腹部における転移から生じる内臓疼痛を含む。さらに好ましくは、癌性疼痛は、体性痛、好ましくは骨における転移、手術後疼痛、肉腫、結合組織の癌、骨組織の癌、骨髄の血液形成細胞のがん、多発性骨髄腫、白血病、原発性または続発性骨癌の1つまたは複数による体性痛を含む。
他の実施形態では、処置されるべき疼痛関連状態は、神経障害性疼痛と関連し、それらには、例として、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、幻想肢痛、線維筋痛症、及び反射性交感神経性ジストロフィーが包含され、それらが好ましくは処置される。
さらなる例示的な疼痛関連疾患または状態には、これらだけに限定されないが、全身疼痛、慢性疼痛、炎症性疼痛、術後切開疼痛、手術後疼痛、外傷関連疼痛、下背部痛、眼疼痛、歯痛、複合性局所疼痛症候群、癌性疼痛(例えば、原発性または転移性骨癌性疼痛)、骨折痛、骨粗鬆症骨折痛、火傷から生じる疼痛、通風性関節痛、鎌状赤血球発症と関連する疼痛、側頭下顎障害と関連する疼痛、硬変、肝炎、神経原性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、内臓疼痛、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、幻想肢痛、線維筋痛症、月
経痛、卵巣痛、反射性交感神経性ジストロフィー、変形性関節症または関節リウマチ疼痛、下背部痛、糖尿病性神経障害、坐骨神経痛、消化不良、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病、回腸炎、潰瘍性大腸炎、腎仙痛、月経困難、膀胱炎、間質性膀胱炎、月経期、分娩、閉経期、膵臓炎、統合失調症、うつ病、心的外傷後ストレス障害、不安障害、糖尿病、自己免疫糖尿病、内皮機能不全、虚血、レイノー症候群、冠動脈性心疾患(「CHD」)、冠動脈疾患(「CAD」)、心不全、末梢動脈疾患(「PAD」)、肺高血圧(「PH」)、結合組織障害、卒中、シェーグレン症候群、多発性硬化症、過活動性膀胱、気管支反応亢進、喘息、気管支炎、気管支拡張、気腫、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、炎症性皮膚炎、尋常性ざそう、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、ケロイド、肥厚性瘢痕及び酒さ、アレルギー性皮膚炎、乾癬、そう痒症、神経原性皮膚発赤、紅斑、サルコイドーシス、ショック、敗血症、オピエート離脱症候群が包含される。
したがって、本発明は、本発明の抗体及び抗原結合性断片の使用によって、PACAP活性またはPACAPアップレギュレーションと関連する任意の疾患または障害(上述の例示的な疼痛関連疾患、障害、状態のいずれも包含)を処置、予防、及び/または寛解する方法を包含する。
また、本PACAP抗体及び抗原結合性断片を、単独で、または無痛を誘発するために、または別の鎮痛薬の有効性を強化するために、他の活性薬剤、例えば、オピオイド及び非オピオイド鎮痛薬、例えば、NSAIDと併せて使用してよい。
疼痛管理を増大または増強するために、本抗体は場合によっては、任意のオピオイド鎮痛薬またはNSAIDまたは他の鎮痛薬、場合によっては別の抗体または別の生物薬、例えば、抗NGFまたは抗CGRPまたは抗CGRP-R抗体または抗体断片、あるいはNGF、CGRP、またはCGRP-Rポリペプチド断片またはコンジュゲートなどと組み合わせてよい。これは、そのような鎮痛薬化合物を、より長い期間にわたって、または減少させた投薬量で投与することを可能にし、それによって場合によっては、それらと関連する不利な副作用を緩和し得る。
本抗PACAP抗体及び抗体断片を抗CGRP抗体(例えば、ALD403)もしくは抗CGRP-R抗体または抗体断片と共に同時投与すること、及びさらに、抗CGRPもしくは抗CGRP-R抗体または抗体断片を以前に投与された対象を処置するために本抗PACAP抗体及び抗体断片を使用することが、特に重要である。例えば、以前に処置された対象(少なくとも1種の抗CGRPもしくは抗CGRP-R抗体または抗体断片投与を以前に受けた対象)は、抗CGRPまたは抗CGRP-R抗体処置に十分に応答せず(「不十分な応答患者」)、かつ/または抗CGRPもしくは抗CGRP-R抗体または抗体断片に対する免疫応答を誘発したことのある片頭痛患者であってよい。
同様に、本抗PACAP抗体及び抗原結合性断片をBOTOX(登録商標)(ボツリヌス菌毒素)と同時投与することも、例えば、片頭痛患者を処置する際には特に重要である、一部の例では、片頭痛患者は、以前の処置に十分に応答していなくてよく(「不十分な応答患者」)、かつ/または以前の処置に免疫応答を誘発したことがある。
一部の実施形態では、アスピリン及び/またはアセトアミノフェンは、本抗PACAP抗体または抗原結合性断片と併せて服用され得る。アスピリンは、別の種類の非ステロイド性抗炎症性化合物である。
医薬製剤を投与される対象は、例えば、そのような処置、予防、及び/または寛解を必要とするか、または別段に、PACAP媒介性活性の阻害または減弱から利益を受け得るであろう任意のヒトまたは非ヒト動物であり得る。例えば、対象は、上述の疾患または障
害のいずれかと診断されているか、またはそれらに罹患するリスクを有すると考えられる個体であり得る。本発明はさらに、PACAP活性と関連する任意の疾患または障害(上述の例示的な疾患、障害、及び状態のいずれも包含)を処置、予防、及び/または寛解するための医薬品の製造における、本明細書において開示される医薬製剤のいずれかの使用を包含する。
投与
本発明の一実施形態では、本明細書に記載の抗PACAP抗体、またはそれらのPACAP結合性断片、さらには、前記抗体またはそれらの抗原結合性断片の組合せは、対象に、0.1mg/mlと、およそ0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200mg/mlのいずれか1つとの間の濃度(+/-10%誤差)で投与される。
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載の抗PACAP抗体及びそれらの断片は、対象に、約0.01~100.0または200.0mg/受容対象の体重kgの用量で投与される。特定の実施形態では、PACAP関連疾患の種類及び重症度に応じて、例えば、1回または複数回の別々の投与によるか、または連続注入によるかに関わらず、抗体約1μg/kg~50mg/kg(例えば、0.1~20mg/kg)が、患者に投与するための当初の候補投薬量である。別の実施形態では、抗体約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)が、患者に投与するための当初の候補投薬量である。複数の因子、例えば、処置を受ける特定の哺乳類、個体患者の臨床的状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医学実務者に公知の他の因子に応じて、典型的な1日投薬量は、約1μg/kg~100mg/kgまたはそれ以上の範囲であるであろう。しかしながら、他の投与計画も有用であり得る。
例えば、本明細書において論述される相対投薬量(mg/kg)に加えて、本抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、対象に、絶対用量(mg)で投与され得る。したがって、本発明の一実施形態では、本明細書に記載の抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片は、投与経路に関わらず、対象に、約1マイクログラム~約1000ミリグラムの用量で投与される。
本発明の好ましい一実施形態では、本明細書に記載の抗PACAP抗体、またはそれらの抗PACAP抗原結合性断片、さらには、前記抗体またはそれらの抗原結合性断片の組合せは、受容対象に、26週間またはより短期ごとに1回、例えば、16週間またはより短期ごとに1回、8週間またはより短期ごとに1回、4週間またはより短期ごとに1回、2週間またはより短期ごとに1回、毎週またはより短期ごとに1回、または1日またはより短期ごとに1回の頻度で投与される。
好ましい実施形態によれば、抗体含有医薬品または医薬組成物は、対象に、経口、舌下、頬側、局所、直腸で、吸入によって、経皮、皮下、静脈内、動脈内、または筋肉内で、心臓内投与によって、骨内、皮内、腹腔内、経粘膜、膣、硝子体内、表皮、関節内、関節周囲、または局所での1つまたは複数から選択される経路によって末梢投与される。
Fab断片は、2週間またはより短期ごとに1回、毎週またはより短期ごとに1回、1日またはより短期ごとに1回、1日当たり複数回、かつ/または数時間ごとに投与され得る。本発明の一実施形態では、患者は、所望の結果を得るために有効な1日当たり1~6回の分割用量で、または連続潅流形態で与えられる1日当たり0.1mg/kg~40mg/kgのFab断片を投与される。
所与の患者に投与される抗体またはFabの濃度は、上記で記述された例示的な投与濃度より高くても、または低くてもよいことを理解されたい。
例えば、本明細書における開示、ならびにGoodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Brunton,L.L.et al.editors,11th edition,New York,New York:McGraw-Hill(2006);Howland,R.D.et al., Pharmacology,Volume 864,Lippincott’s illustrated reviews.,Philadelphia,PA:Lippincott Williams & Wilkins(2006);及びGolan,D.E.,Principles of pharmacology:the pathophysiologic basis of drug
therapy,Philadelphia,PA:Lippincott Williams & Wilkins(2007)における教示によってガイドされる日常的な実験によって、当業者は、有効投薬量及び投与頻度を決定することができるであろう。
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載の抗PACAP抗体、またはそれらのPACAP結合性断片、さらには、前記抗体またはそれらの抗原結合性断片の組合せは、対象に、医薬製剤で投与される。好ましい一実施形態では、対象は、ヒトである。
「医薬組成物」または「医薬品」は、対象、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトに投与するために適した化学的または生物学的組成物を指す。そのような組成物は、これらだけに限定されないが、頬側、表皮、硬膜外、吸入、動脈内、心臓内、脳室内、皮内、筋肉内、鼻腔内、眼内、腹腔内、脊髄内、髄腔内、静脈内、経口、非経口、浣腸剤または坐剤による直腸、皮下、真皮下、舌下、経皮、及び経粘膜を包含するいくつかの経路の1つまたは複数による投与のために特異的に製剤化され得る。加えて、投与は、注射、散剤、液剤、ゲル剤、滴剤、または他の投与手段によって行われ得る。
本発明の一実施形態では、本明細書に記載の抗PACAP抗体、またはそれらのPACAP結合性断片、さらには、前記抗体またはそれらの抗原結合性断片の組合せは、任意選択で、1種または複数種の活性薬剤と組み合わせて投与され得る。そのような活性薬剤には、鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、下熱薬、抗炎症薬、抗生物質、抗ウイルス薬、及び抗サイトカイン薬が包含される。活性薬剤には、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、IL-12、IL-13、IL-18、IFN-α、IFN-γ、BAFF、CXCL13、IP-10、VEGF、EPO、EGF、HRG、肝細胞成長因子(「HGF」)、ヘプシジン、NGF、CGRPのアゴニスト、アンタゴニスト、及びモジュレーター(上述のいずれかに対して反応性な抗体、及びそれらの受容体のいずれかに対して反応性な抗体も包含)が包含される。活性薬剤にはまた、これらだけに限定されないが、2-アリールプロピオン酸、アセクロフェナク、アセメタシン、アセチルサリチル酸(アスピリン)、アルクロフェナック、アルミノプロフェン、アモキシプリン(amoxiprin)、アンピロン、アリールアルカン酸、アザプロパゾン、ベノリラート(benorylate)/ベノリラート(benorilate)、ベノキサプロフェン、ブロムフェナク、カルプロフェン、セレコキシブ、コリンマグネシウムサリチル酸、クロフェゾン、COX-2阻害薬、デクスイブプロフェン、デクスケトプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニサル、ドロキシカム、エテンザミド、エトドラク、エトリコキシブ、ファイスラミン(faislamine)、フェナム酸、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェナム酸、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、イブプロキサム、インドメタシン、インドプロフェン、ケブゾン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロルノキシカム、ロキソプロフェン、ルミラコキシブ、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、メタミゾール、サリチル酸メチル、モフ
ェブタゾン、ナブメトン、ナプロキセン、N-アリールアントラニル酸、NGF、オキサメタシン、オキサプロジン、オキシカム、オキシフェンブタゾン、オキシトシン、パレコキシブ、フェナゾン、フェニルブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、ピルプロフェン、プロフェン、プログルメタシン、ピラゾリジン誘導体、ロフェコキシブ、サリチル酸サリチル、サリチルアミド、サリチラート、サブスタンスP、スルフィンピラゾン、スリンダク、スプロフェン、テノキシカム、チアプロフェン酸、トルフェナム酸、トルメチン、及びバルデコキシブも包含される。例えば、選択された抗PACAP抗体、またはそれらのPACAP結合性断片、さらには、これらの抗体または抗原結合性断片の組合せは、任意選択で、オキシトシンと組み合わせて投与され得、例えば、鼻用製剤において鼻腔内送達のために投与され得る。
抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンの作用または細胞(例えば、肥満細胞)からのその放出に対抗する任意の化合物であり得る。抗ヒスタミン薬には、これらだけに限定されないが、アクリバスチン、アステミゾール、アザタジン、アゼラスチン、ベタタスチン、ブロムフェニラミン、ブクリジン、セチリジン、セチリジン類似体、クロルフェニラミン、クレマスチン、CS560、シプロヘプタジン、デスロラタジン、デクスクロルフェニラミン、エバスチン、エピナスチン、フェキソフェナジン、HSR609、ヒドロキシジン、レボカバスチン、ロラタジン、メトスコポラミン、ミゾラスチン、ノラステミゾール、フェニンダミン、プロメタジン、ピリラミン、テルフェナジン、及びトラニラストが包含される。
抗生物質には、これらだけに限定されないが、アミカシン、アミノグリコシド、アモキシシリン、アンピシリン、アンサマイシン、アルスフェナミン、アジスロマイシン、アズロシリン、アズトレオナム、バシトラシン、カルバセフェム、カルバペネム、カルベニシリン、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セファロチン、セファロチン、セファマンドール、セファゾリン、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフィキシム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフォキシチン、セフポドキシム、セフプロジル、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトビプロール、セフトリアキソン、セフロキシム、セファロスポリン、クロラムフェニコール、シラスタチン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、クロキサシリン、コリスチン、コトリモキサゾール、ダルホプリスチン、デメクロサイクリン、ジクロキサシリン、ジリスロマイシン、ドリペネム、ドキシサイクリン、エノキサシン、エルタペネム、エリスロマイシン、エタンブトール、フルクロキサシリン、ホスホマイシン、フラゾリドン、フシジン酸、ガチフロキサシン、ゲルダナマイシン、ゲンタマイシン、グリコペプチド、ヘルビマイシン、イミペネム、イソニアジド、カナマイシン、レボフロキサシン、リンコマイシン、リネゾリド、ロメフロキサシン、ロラカルベフ、マクロライド、マフェニド、メロペネム、メチシリン、メトロニダゾール、メズロシリン、ミノシクリン、モノバクタム、モキシフロキサシン、ムピロシン、ナフシリン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ニトロフラントイン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オキサシリン、オキシテトラサイクリン、パロモマイシン、ペニシリン、ペニシリン、ピペラシリン、プラテンシマイシン、ポリミキシンB、ポリペプチド、プロントジル、ピラジンアミド、キノロン、キヌプリスチン、リファンピシン、リファンピン、ロキシスロマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルアミド、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、スルホンアミド、テイコプラニン、テリスロマイシン、テトラサイクリン、テトラサイクリン、チカルシリン、チニダゾール、トブラマイシン、トリメトプリム、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、トロレアンドマイシン、トロバフロキサシン、及びバンコマイシンが包含される。
活性薬剤には、アルドステロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、コルチコステロイド、コルチゾル、酢酸コルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、酢酸
フルドロコルチゾン、グルココルチコイド、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ステロイド、及びトリアムシノロンも包含される。これらの活性薬剤の任意の適切な組合せも企図される。
「医薬品添加剤」または薬学的に許容される添加剤」は、活性治療薬がその中で製剤化される担体、通常は液体である。本発明の一実施形態では、活性治療薬は、本明細書に記載のヒト化抗体、または1つもしくは複数のそれらの断片である。添加剤は一般に、化学的及び/または生物学的安定性、ならびに放出特徴を提供することはあるが、いかなる薬理活性も製剤に提供しない。例示的な製剤は、例えば、参照によって組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,Gennaro,A.editor,19th edition,Philadelphia,PA:Williams and Wilkins(1995)において見出すことができる。
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」または「添加剤」には、生理学的に適合性であるあらゆるすべての溶媒、分散剤媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤、ならびに吸収遅延剤が包含される。一実施形態では、担体は、非経口投与に適している。別法では、担体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、または舌下投与に適し得る。薬学的に許容される担体には、滅菌水溶液または分散液、及び滅菌注射用液剤または分散剤を即時調製するための滅菌粉末が包含される。薬学的活性物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で周知である。いずれの従来の媒体または薬剤が活性化合物と非適合性である場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が企図される。補充的な活性化合物も、当該組成物に組み込まれ得る。
医薬組成物は典型的には、製造及び貯蔵の条件下で、無菌で、かつ安定していなければならない。本発明は、医薬組成物が凍結乾燥形態で存在することを企図する。組成物は、液剤、マイクロ乳剤、リポソーム剤、または高い薬物濃度に適した他の規則構造として製剤化され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、及びそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒体であり得る。本発明はさらに、医薬組成物中に安定剤を包含させることを企図する。例えば、分散剤の場合には必要な粒径を維持することによって、かつ界面活性剤の使用によって、適正な流動性が維持され得る。
多くの場合に、等張化剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール及びソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物中に包含させることが好ましいであろう。注射用組成物の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを包含させることによって遷延させることができる。さらに、アルカリ性ポリペプチドを、時間放出製剤において、例えば、遅効放出ポリマーを包含する組成物において配合することができる。活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセル封入された送達系などを包含する制御放出製剤など、急速な放出に対して化合物を保護するであろう担体と共に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、ポリ乳酸及びポリグリコールコポリマー(「PLG」)などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤を調製するための多くの方法が当業者に知られている。
列挙された実施形態のそれぞれについて、化合物は、様々な剤形によって投与され得る。当技術分野の通常の技能のものには公知の任意の生物学的に許容される剤形、及びそれらの組合せが企図される。そのような剤形の例には、限定ではないが、再構成可能な散剤、エリキシル剤、リキッド剤、液剤、懸濁剤、乳剤、散剤、顆粒剤、粒子剤、マイクロ粒子剤、分散性顆粒剤、カシェ剤、吸入剤、エアロゾル吸入剤、貼付剤、粒子吸入剤、インプラント剤、デポーインプラント剤、注射剤(皮下、筋肉内、静脈内、及び皮内を包含)
、注入剤、及びそれらの組合せが包含される。
本発明の様々な例示された実施形態の上記の説明は、排他的であること、または、本発明を開示された正確な形態に限定することを意図したものではない。本発明の具体的な実施形態、及びそれらの例が、実例を目的として本明細書に記載されているが、関連分野の当業者には分かるであろうとおり、様々な等価な変更形態が本発明の範囲内で可能である。本明細書において提供される本発明の教示は、上記の例以外の他の目的に適用することができる。
上記の詳細な記載に照らして、これらの、及び他の変化を本発明に成すことができる。一般に、下記の特許請求の範囲では、使用される用語は、本発明を、本明細書及び特許請求の範囲において開示されている具体的な実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。したがって、本発明は、本開示によって限定されず、しかしその代わりに、本発明の範囲は、もっぱら下記の特許請求の範囲によって決定されることとなる。
本発明は、上述の記載及び例において特に記載された方法以外の方法で実行されてよい。上記の教示に照らして、本発明の多数の変更形態及び変形形態が可能であり、したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
抗原特異的B細胞のクローン集団を得るための方法に関連するいくつかの教示は、その開示がその全体で参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0316353号において開示された。
ウサギ由来モノクローナル抗体のヒト化、及び抗原結合親和性を維持するための好ましい配列修飾に関連するいくつかの教示は、その開示がその全体で参照によって本明細書に組み込まれる、「Novel Rabbit Antibody Humanization Methods and Humanized Rabbit Antibodies」との標題の2008年5月21日出願の国際公開WO2008/144757において開示された。
交配コンピテント酵母を使用して抗体またはそれらの断片を生成すること、及び対応する方法に関連するいくつかの教示は、その開示がその全体で参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0270045号において開示された。
Pichiaにおいて抗体またはそれらの断片を生成すること、ならびに抗体を入手及び精製するための好ましい方法に関連するいくつかの教示は、それぞれの開示がそれらの全体で参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0288272号;同第2014/0287952号;同第2013/0055888号;及び同第2012/0277408号においても開示されている。
CHO細胞において抗体またはそれらの断片を生成すること、ならびに抗体を入手及び精製するための例示的な方法に関連するいくつかの教示は、それぞれの開示がそれらの全体で参照によって本明細書に組み込まれる米国特許及び特許出願公開の第7,932,087号;第2009/0285795号;第9,090,672号;及び第2010/0221781号においても開示されている。
特定の抗PACAP抗体ポリヌクレオチド及びポリペプチドは、本特許出願の提出に添付されている配列一覧において開示されており、前記配列一覧の開示は、その全体で参照によって本明細書に組み込まれる。
背景技術、発明を実施するための形態、及び実施例において引用される各文献(特許、特許出願、雑誌論文、要約、マニュアル、書籍、または他の開示を包含)の開示全体が、それらの全体で参照によって本明細書に組み込まれる。
下記の実施例は、当技術分野の通常の技能のものに、本発明を実行及び使用する方法の完全な開示及び説明を提供するために記述されるものであって、本発明とみなされる範囲を限定することを意図したものではない。使用される数値(例えば、量、温度、濃度など)に関して確度を保証する努力が成されてきたが、多少の実験誤差及び偏差は許容されるべきである。別段に示されない限り、部は重量による部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり;圧力は大気圧か、またはその付近である。
実施例1:PACAPと選択的に結合する抗体の調製
実質的に本明細書に記載のとおりの抗体選択プロトコルを使用することによって、PACAP38及びPACAP27に対して特異的な抗体のパネル、ならびにPACAP38のみに対して特異的な抗体のパネルを生成した。
免疫戦略
ウサギをPACAP38(American Peptide、Vista、CA)(配列番号1241)で免疫化した。ペプチドを下記のとおりに免疫化のために調製した。1M NaClに補充されたダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(「DPBS」)に溶解させた0.15ml体積の10mg/mlキーホールリンペットヘモシアニン(「KLH」)を1.0mlの1mg/mlペプチド(脱イオン水中に溶解)と混合した。次いで、1.0mlの40mMカルボジイミドを添加し、その後、室温で、穏やかに混合しながら12時間にわたってインキュベートした。過剰のカルボジイミド及び非コンジュゲートペプチドを、DPBSに対する透析によって除去し、その後、滅菌濾過した。次に、KLHの当初質量に等しい非コンジュゲートペプチドを添加し、その後、ウサギに注射するために調製した。別法では、等質量の滅菌KLH及びペプチドを、カルボジイミド化学作用を伴うことなく混合した。
抗原200μgをDPBSで0.5mlに希釈し、等体積の完全フロイントアジュバントと混合して、1日目に皮下1ml注射することによって、免疫化を行った。
100μgのブースト注射を不完全フロイントアジュバントと共に、21及び42日目に行った。
抗体選択機能的力価評価
PAC1-Rを介してのPACAP38(配列番号1241)誘導性シグナル伝達を中和する抗体を同定するために、ポリクローナル抗体溶液を初めに、プロテインAによって精製し、中性緩衝液に透析した。簡単には、抗体溶液を4×最終濃度(100pM)のPACAP38(配列番号1241)と共に1時間にわたってインキュベートした。抗体/抗原複合体をインキュベートしている間に、PAC1-R発現PC-12細胞(Japanese Collection of Research Bioresources
Cell Bank)を洗浄し、1ml当たり2×106細胞で、細胞培養培地中に再懸濁させた。細胞(10μl)及び抗原/抗体複合体(40μl)を均一性時間分解蛍光(「HTRF」)プレートに移し、室温で30分間にわたって振盪した。インキュベションの後に、溶解緩衝液中の20μlの(1:20希釈された)Eu3+クリプタート標識mAb抗cAMP及び20μlの(1:20希釈された)d2標識cAMPを添加し、プレートを振盪しながら1時間にわたってインキュベートした。インキュベーションの後に、プレートを読み取り(励起330nm、発光620/665nm)、620:665シ
グナルの比を決定した。
組織採取
許容される力価が確立されたら、ウサギ(複数可)をと殺した。脾臓、リンパ節、及び全血を採取し、次のとおり処理した:
組織を分離し、20ccシリンジのプランジャーで70μmの滅菌ワイヤメッシュ(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)に押し通すことによって、脾臓及びリンパ節を単一の細胞懸濁液に処理した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)中に収集した。次いで、細胞を遠心によって2回洗浄した。最後の洗浄の後に、細胞密度をトリパンブルーによって決定した。細胞を1500RPMで10分間にわたって遠心し;次いで、上清を廃棄した。細胞を適切な体積の、ウシ胎児血清(「FBS」HYCLONE(商標)GE Healthcare Life Sciences、Marlborough、MA)中の10%ジメチルスルホキシド(「DMSO」、Sigma-Aldrich Co.、St.Louis、MO)中に再懸濁させ、1ml/vialで分配した。バイアルを-70℃で、スローフリージングチャンバー内で、24時間にわたって貯蔵し、かつ液体窒素中で貯蔵した。
末梢血単核細胞(「PBMC」)を、全血を等部のPBSと混合することによって単離した。35mlの全血混合物を8mlのLYMPHOLYTE(登録商標)Rabbit(Cedarlane Laboratories、Burlington、Ontario)上に、45mlコニカルチューブ(Corning、Corning、NY)内で慎重に層状化し、30分間にわたって2500RPMで、室温で間断なく遠心した。遠心の後に、ガラス製パスツールピペット(VWR International、Radnor、PA)を使用してPBMC層を慎重に除去し、合わせ、清浄な50mlバイアルに入れた。細胞をPBSで、1500RPMで10分間にわたって室温で遠心することによって2回洗浄し、細胞密度をトリパンブルー染色によって決定した。最後の洗浄の後に、細胞を適切な体積の10%DMSO/FBS媒体中に再懸濁させ、上記のとおりに凍結させた。
B細胞の選択、富化、及び培養条件
B細胞の培養を設定する当日に、PBMC、脾細胞、またはリンパ節バイアルを、使用のために解凍した。バイアルを液体窒素タンクから取り出し、解凍するまで37℃水浴に入れた。バイアルの内容物を15mlコニカル遠心管(Corning、Inc.、Corning、NY)に移し、10mlの改変RPMIをその管にゆっくりと添加した。細胞を5分間にわたって2000RPMで遠心し、上清を廃棄した。細胞を新鮮な培地10ml中に再懸濁させた。細胞密度及び生存率をトリパンブルーによって決定した。
抗PACAP38産生B細胞をポジティブ選択するために、ビオチン化PACAP38(配列番号1241)を次のとおりに、ストレプトアビジンビーズ上に予め負荷した。75μlのストレプトアビジンビーズ(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)をN末端側でビオチン化されたPACAP38(10μg/ml最終濃度)ならびに0.5%ビオチン非含有ウシ血清アルブミン(「BSA」)及び2mM EDTA(「PBF」)を補充されたPBS300μlと混合した。この混合物を4℃で30分間にわたってインキュベートし、結合しなかったビオチン化PACAP38(AnaSpec、Fremont、CA)を、MACS(登録商標)分離カラム(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)を使用して、結合しなかった材料を除去するために1mlすすぎ液を用いて除去した。結合した材料を、マグネットからの脱離によって落とし、1×107細胞当たり100μlで細胞を上から再懸濁させるために使用した。次いで、混合物を4℃で30分間にわたってインキュベートし、PBF10mlで1回洗浄した。
洗浄の後に、細胞をPBF500μl中に再懸濁させ、取って置いた。MACS(登録商標)MSカラム(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)をマグネットスタンド(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)上で、PBF500μlで予めすすいだ。細胞懸濁液を、プレフィルターを介してカラムに施与し、結合しなかった画分を収集した。カラムをPBF緩衝液2.5mlで洗浄した。カラムをマグネットスタンドから取り外し、清潔な滅菌1.5ml EPPENDORF(商標)管上に入れた。PBF緩衝液1mlをそのカラムの頂部に添加し、ポジティブ選択された細胞を収集した。ポジティブ細胞画分の収率及び生存率をトリパンブルー染色によって決定した。ポジティブ選択は、出発細胞濃度1%の平均をもたらした。
培養のための播種レベルについての情報を得るために、パイロット細胞スクリーニングを確立した。プレートに、5、10、25、50、100、または200の富化B細胞/ウェルを播種した。加えて、各ウェルは、250μl/ウェルの最終体積の高グルコース改変RPMI培地中に、25~50K細胞/ウェルの照射EL-4.B5細胞(5,000Rad)及び適切なレベルの活性化ウサギT細胞上清(米国特許出願公開第20070269868号を参照されたい)(調製に応じて1~5%の範囲)を含有した。培養物を5~7日間にわたって、37℃で、4%CO2でインキュベートした。
抗原認識(ELISA)によるB細胞培養スクリーニング
抗PACAP38抗体を産生するウェルを同定するために、B細胞上清を抗原認識(ELISA)によって試験した。簡単には、NEUTRAVIDIN(商標)コーティングされたプレート(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を、ELISA緩衝液(PBS pH7.4中の0.5%魚皮ゼラチン)中で希釈されたN末端またはC末端ビオチン化PACAP38(AnaSpec Inc.、Fremont、CA)(1ウェル当たり50μl;1μg/ml)で、約1時間にわたって室温で、または別法では終夜4℃でコーティングした。次いで、プレートをさらに、ELISA緩衝液で1時間にわたって室温でさらにブロックし、0.05%Tween20(「洗浄緩衝液」)を含むPBSを使用して洗浄した。B細胞上清サンプル(50μl)をウェル上に移し、1時間にわたって室温でインキュベートした。このインキュベーションの後に、プレートを洗浄緩衝液で洗浄した。展開のために、抗ウサギ特異的Fc-ホースラディッシュペルオキシダーゼ(「Fc-HRP」)(ELISA緩衝液中で1:5000希釈)をウェル上に添加し、45分間にわたって室温でインキュベートした。洗浄溶液での3回の洗浄ステップの後に、プレートを、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(「TMB」)基質を使用して2分間にわたって室温で展開させ、反応物を、0.5M HClを使用してクエンチした。ウェル吸光度を450nmで読み取った。
VIP(配列番号1243)を認識しない抗PACAP38抗体を産生するウェルを同定するために、ELISAによるとPACAP38結合についてポジティブなウェルからの上清を、VIPへの結合についてELISAによって試験した。簡単には、ビオチン化VIP(AnaSpec Inc.、Fremont、CA)をNEUTRAVIDIN(商標)コーティングされたプレート上に結合させた(ウェル当たり50μg、1μg/μl各ペプチド)。B細胞上清サンプル(50μl)を予め希釈せずに試験した。このアッセイにおける認識は、関係の近いペプチド、VIPとの交差反応性を示し得る。
1種または複数種のアッセイを使用してのB細胞上清における機能的活性の同定
PAC1-Rを介するPACAP38のシグナル伝達を遮断する抗PACAP38抗体を産生するウェルを同定するために、ELISAによるとPACAP38結合についてポジティブなウェルからの上清を、cAMP HTRF アッセイ(Cisbio US、Bedford、MA)において試験した。上清(78μl)を2μlの5nM PACAP38(American Peptide Company、Sunnyvale、
CA)と共に、1時間にわたって37℃でプレインキュベートした。インキュベーションの間に、PC-12細胞を、力価評価のために記載されたとおりに調製した。細胞(10μl)及び抗原/抗体複合体(40μl)をHTRFプレートに移し、室温で30分間にわたって振盪した。インキュベーションの後に、溶解緩衝液中の20μlの(1:20希釈された)Eu3+クリプタート標識mAb抗cAMP及び20μlの(1:20希釈された)d2標識cAMPを添加し、プレートを振盪しながら1時間にわたってインキュベートした。インキュベーションの後に、プレートを読み取って(励起330nm、発光620/665nm)、620:665シグナルの比を決定した。
抗原特異的B細胞の単離
抗原特異的B細胞を単離した(一般方法については、その全体で参照によって本明細書に組み込まれる共同所有公報WO2014/146074を参照されたい)。目的のウェルを含有するプレートを-70℃から取り出し、1ウェル当たり200μlの培地(10%RPMI完全、55μM β-メルカプトエタノール(「BME」))の5回の洗浄を使用して、各ウェルからの細胞を再び覆った。再び覆われた細胞を遠心によってペレット処理し、上清を慎重に除去した。次いで、各ウェルからの細胞を培地100μl中に再懸濁させ、96ウェルプレートに移した。細胞を90分間にわたって37℃でインキュベートした。インキュベーションの後に、細胞を遠心によってペレット処理し、イソチオシアン酸フルオレセイン標識(「FITC標識」)抗ウサギIgG(最終濃度6.25μg/ml)(Creative Diagnostics、Shirley、NY)で染色し、2mlまでの蛍光活性化細胞選別緩衝液(「FACS緩衝液」)(2%FBSを含有するダルベッコPBS)で洗浄し、FACS緩衝液250μl中に再懸濁させた。
目的の貯留ウェルと組成において同様である同じ培養セットからの対照ウェルを解凍し、ターゲットウェルと並行して染色した。これらのサンプルを初めに、FACS(BD INFLUX(商標)Becton、Dickinson and Company、Franklin Lakes、NJ)上に流し、ゲートを、IgG、生存率、及びB細胞をマウスEL4細胞から区別する物理的パラメーター(前方散乱(「FSC」)/側方散乱(「SSC」))について樹立した。ゲートを樹立したら、目的のサンプルを流し、一定の物理的(FSC/SSC)集団からなるIgGポジティブな生細胞を、RT-PCRマスターミックスを予め負荷されている96ウェルプレートのウェルに個別に選別した。1ウェル当たり8個より多くの細胞を選別した。選別されたプレートをソーターから除去し、PCRのためのサーモサイクラーに直接移した。
FACS選別されたB細胞からの抗体配列の増幅及び配列決定
組み合わされたRT-PCRベースの方法を使用して、単一の細胞選別されたB細胞から、抗体配列を回収した。標的免疫グロブリン遺伝子(重鎖及び軽鎖)、例えば、ウサギ免疫グロブリン配列の保存及び定常領域においてアニーリングするように、制限酵素を含有するプライマーを設計し、2ステップに枝分かれしたPCR回収を使用して、抗体配列を増幅させた。各ウェルからのアンプリコンを配列決定し、分析した。得られた配列クラスターからの代表的な抗体を組換えタンパク質発現のために選択した。ウサギ細胞から増幅された元の重鎖及び軽鎖可変領域を、制限酵素消化及びライゲーションによって、ならびにGibson法によって、ヒト重鎖及び軽鎖定常領域発現ベクターにクローニングした。サブクローニングDNA断片を含有するベクターを増幅及び精製した。サブクローニングされた重鎖及び軽鎖の配列を発現の前に検証した。
所望の抗原特異性及び/または機能的特性のモノクローナル抗体の組換え産生
特異的B細胞から回収された抗体の抗原特異性及び機能的特性を決定するために、重鎖及び軽鎖プラスミドを同時遺伝子導入して、試験のためのウサギ/ヒトキメラ抗体を生成した。簡単には、重鎖及び軽鎖キメラプラスミドをHEK-293細胞に一過性に遺伝子
導入した。遺伝子導入を5~7日間にわたってインキュベートし、採取したら、細胞を遠心によってペレット化した。上清をプロテインAによる精製に掛けた。次いで、得られた精製キメラ抗体を様々なアッセイにおいて評価し、特異性及び効力を確認した。
上記の方法を使用して、PACAP38及びPACAP27と結合するか、またはPACAP38とのみに結合し、VIPには結合しないか、もしくは感知できるほどには結合しない多数の機能性(拮抗性)抗体を同定した。例示的な拮抗性抗PACAP抗体のポリペプチド及び例示的なコード配列は、包含される生物学的配列一覧において含有されている。
これらの例において使用される全長抗体Ab10、Ab20、Ab21、Ab22、及びAb23は、それぞれ配列番号401;441;841;881;及び921の配列を有する重鎖ポリペプチド、ならびにそれぞれ配列番号421;461;861;901;及び941の軽鎖ポリペプチドとして発現された。抗体Ab10、Ab20、Ab21、Ab22、及びAb23の重鎖ポリペプチドは、それぞれ配列番号411;451;851;891;及び931のポリヌクレオチドから発現された。抗体Ab10、Ab20、Ab21、Ab22、及びAb23の軽鎖ポリペプチドは、それぞれ配列番号431;471;871;911;及び951のポリヌクレオチドから発現された。前記抗体の追加の特徴は、図1~12における配列番号によって同定される。
競合HTRF結合アッセイによる抗体の抗原結合特異性
本発明によって生成される例示的な抗PACAP38及び抗PACAP27抗体の結合及び機能的特性を下記でさらに記載する。
PACAP38(配列番号1241)及びPACAP27(配列番号1242)とは優先的に結合するが、VIP(配列番号1243)とは結合しない抗体を同定するために、またはPACAP38とは特異的に結合するが、PACAP27とは感知できるほどには結合しないか、またはVIPとは感知できるほどには結合しない抗体などを同定するために、競合HTRF結合アッセイを行った。
平行して、10μlの抗体希釈列(100nMの最高最終濃度)を10μlのN末端もしくはC末端ビオチン化PACAP38(35nM最終)のみと共に、またはPACAP27(350nM最終)もしくはVIP(350nM最終)、すなわち、それぞれ10×PACAP27もしくは10×VIPと組み合わせて、HTRFプレート内でインキュベートした。20μlのEu3+クリプタート標識抗hu Fcドナー及び20μlのd2標識ストレプトアビジンアクセプターを各ウェルに添加し、1時間にわたって室温でインキュベートした。蛍光を620及び665nmで、300μ秒の遅延で測定した。
図13A~Dは、PACAP38に対する、及びPACAP27に対するAb10、Ab20、Ab21、及びAb1.Hでの代表的な結合データ、ならびにVIPがPACAP38の結合と競合することができないことを示す。図13E及び図13Fは、PACAP38に対する抗PACAP抗体Ab22及びAb23での代表的な結合データ、ならびにPACAP27またはVIPがPACAP38の結合と競合することができないことを示す。PACAP38への結合に対するVIPの作用の欠如は、それがPACAP38の結合と競合することができないことを示す。これらの結果は、Ab10、Ab20、Ab21、及びAb1.HがPACAP38及びPACAP27に結合するが、VIPとは結合しない(または感知できるほどには結合しない)ことを実証する。これらの結果はまた、Ab22及びAb23がPACAP38には結合するが、PACAP27またはVIPとは結合しない(または感知できるほどには結合しない)ことを実証している。
EC50値、すなわち、規定の時間内で基線値と最大値の中間の応答をもたらす抗体の濃度を、それらの結合曲線に基づき各抗体について計算し、下記の表1において示す。結果は、Ab10、Ab20、Ab21、Ab22、及びAb23が高い親和性でヒトPACAP38に結合し、それを認識したことを実証する。追記した「.H」、すなわち、Ab1.Hによって特定される抗体Ab1のヒト化形態も、高い親和性でPACAP38に結合した。
PACAP38誘導性及びPACAP27誘導性cAMP産生を中和する抗PACAP抗体の能力
PACAP38誘導性及びPACAP27誘導性PAC1-Rシグナル伝達を中和する抗PACAP抗体の能力を細胞ベースのアッセイにおいて試験した。
Ab10、Ab20、Ab21、Ab1.H、Ab10.H、Ab21.H、Ab22、及びAb23では、PAC1-Rを介してPACAP38誘導性及びPACAP27誘導性シグナル伝達を中和する抗体を同定するために、抗体溶液を4×最終濃度(100pM)のPACAP38またはPACAP27のいずれかと共に1時間にわたってインキュベートした。抗体/抗原複合体をインキュベートしている間に、PAC1-R発現PC-12細胞(Japanese Collection of Research Bioresources Cell Bank)を洗浄し、1ml当たり2×106細胞で、細胞培養培地中に再懸濁した。細胞(10μl)及び抗原/抗体複合体(40μl)をHTRFプレートに移し、室温で30分間にわたって振盪した。インキュベーションの後に、溶解緩衝液中の20μlの(1:20希釈された)Eu3+クリプタート標識mAb抗cAMP及び20μlの(1:20希釈された)d2標識cAMPを添加し、プレートを振盪しながら1時間にわたってインキュベートした。インキュベーションの後に、プレートを読み取り(励起330nm、発光620/665nm)、620:665シグナルの比を決定した。各ウェルにおけるPACAP38及びPACAP27の最終濃度は0.1nMであった。
図16A~H(PACAP38)及び図17A~H(PACAP27)は、試験抗体で得られた阻害曲線を代表する阻害曲線(Ab10、Ab20、Ab21、Ab1.H、Ab10.H、Ab21.H、Ab22、及びAb23での)を示す。阻害結果を各抗体について定量化して、IC50値を得、これらを下記の表2においてまとめる。これらの結果は、抗PACAP抗体Ab10、Ab20、Ab21、Ab1.H、Ab10.H、Ab21.H、Ab22、及びAb23が、PAC1-Rを発現する細胞においてPACA
P38誘導性cAMP増大を阻害することを実証した(図16A~Hを参照されたい)。加えて、これらの結果は、抗PACAP抗体Ab10、Ab20、Ab21、Ab1.H、Ab10.H、及びAb21.Hが、PAC1-Rを発現する細胞においてPACAP27誘導性cAMP増大を阻害するが、Ab22またはAb23は阻害しないことを実証した(図17A~Hを参照されたい)。
実施例2:抗PACAP抗体の結合親和性
PROTEON(商標)XPR36(Bio-Rad、Hercules、CA)上でSPRを使用して、ヒトPACAPについてのモノクローナル抗体の結合親和性を推定した。抗体を、全アミンカップリング(general amine coupling)(「GLC」または「GLM」)Chips(Bio-Rad、Hercules、CA)の表面に固定化した。Teknova(Cat# P1192、Teknova、Hollister、CA)から購入され、0.25Mアルギニン(J.T.BAKER(登録商標)製)、0.2mg/ml BSA(Jackson Immuno Research Labs、West Grove、PA)、及び0.005%アジ化ナトリウム(VWR International、Radnor、PA)を補充され、7にpH調節された1倍PBST緩衝液(4.3mMリン酸Na、1.4mMリン酸K、135mM
NaCl、2.7mM KCl 0.05%ポリソルベート-20)中で調製されたヒトPACAP38(配列番号1241)の希釈列を、抗体を照会するために使用した。抗原(1.23nM~100nMの範囲)を典型的には、PROTEON(商標)Manager Software(v3.1.0.6(Bio-Rad、Hercules、CA))でグループ分けされた2~4分の会合時間及び3~120分の解離時間で順に流し、1:1のLangmuir結合モデルを使用してフィットさせた。分析物の照会の間に、0.85%リン酸を使用して、表面を再生させた。単一のKDを各抗体について、拡散速度付近に限定された会合時間(1.0×106)及び1.5×10-5に限定された解離時間で計算したが、その際、識別し得る分離は観察されなかった。
同じ手順を使用して、1.23nM~1000nMの範囲のペプチド濃度で、200秒
の会合時間及び3~120分の解離時間で、ヒトVIP(配列番号1243)及びPACAP27(配列番号1242)についての抗体の結合親和性を決定した。
PACAP38について測定された抗体親和性を表3において列挙する。
VIPについての抗体親和定数の例を表4において列挙する。
PACAP27についての抗体親和定数の例を表5において列挙する。
表3及び5の結合親和性の結果は、Ab23が、PACAP38についてのその結合親和性と比較して、PACAP27には弱く結合することを実証するデータを示す。表3及び5は加えて、Ab22がPACAP27を特異的に認識しなかったが、Ab22がPACAP38に特異的に結合したことを実証するデータを示す。
実施例3:VPAC1-Rを介してのPACAP38誘導性シグナル伝達の阻害
ヒトVPAC1-Rを介してのPACAP38誘導性シグナル伝達を中和する抗体を同定するために、ヒトVPAC1-Rを発現するCHO-K1細胞を、cAMP HTRF細胞をベースとするアッセイにおいて使用した。抗体希釈液を4×最終濃度(5nM)のPACAP38と共に1時間にわたってインキュベートした。抗体/抗原複合体を1時間にわたってインキュベートしている間に、VPAC1-R発現CHO-K1細胞(ヒトVPAC1-R cDNAをCHO-K1細胞(ATCC、カタログ#CCL-61)に安定的に遺伝子導入することによって、Alder Biopharmaceuticalsで生成;選択されたクローン1を、in vitroでの細胞をベースとするアッセイのために使用した)を0.25%トリプシンで4分間にわたって剥離した。細胞を洗浄し、培養培地1ml当たり1×106細胞で再懸濁させた。20μlのAb/抗原混合物を20μlの細胞と、HTRFプレート内で混合し、振盪しながら30分間にわたってインキュベートした。溶解緩衝液中の20μlのEu3+クリプタート標識抗cAMP mAb(1:20希釈)及び20μlの(1:20希釈)d2標識cAMPを各ウェルに添加し、振盪しながら1時間にわたってインキュベートした。各ウェル中のPACAP38の最終濃度は5nMであった。インキュベーションの後に、プレートを読み取り(励起330nm、発光620/665nm)、620:665シグナルの比を決定した。
図18A~Hは、この方法によって得られた阻害曲線を代表している(結果は、それぞれAb10、Ab20、Ab21、Ab1.H、Ab10.H、Ab21.H、Ab22、及びAb23について示される)。下記の表6において示される、各抗体について計算されたIC50値は、Ab10、Ab20、Ab21、Ab1.H、Ab10.H、Ab21.H、Ab22、及びAb23が、ヒトVPAC1-Rを発現する細胞においてPACAP38誘導性cAMP増大を阻害することを実証した。
実施例4:VPAC2-Rを介してのPACAP38誘導性シグナル伝達の阻害
ヒトVPAC2-Rを介してのPACAP38誘導性シグナル伝達を中和する抗体を同定するために、ヒトVPAC2-Rを発現するCHO-K1細胞を、cAMP HTRF細胞をベースとするアッセイにおいて使用した。抗体希釈液を4×最終濃度(1nM)のPACAP38と共に1時間にわたってインキュベートした。抗体/抗原複合体を1時間にわたってインキュベートしている間に、VPAC2-R発現CHO-K1細胞(ヒトVPAC2-R cDNAをCHO-K1細胞(ATCC、カタログ#CCL-61)に安定的に遺伝子導入することによって、Alder Biopharmaceuticalsで生成;選択されたクローン8を、in vitroでの細胞をベースとするアッセイのために使用した)を0.25%トリプシンで4分間にわたって剥離した。細胞を洗浄し、培養培地1ml当たり1×106細胞で再懸濁させた。20μlのAb/抗原混合物を20μlの細胞と、HTRFプレート内で混合し、振盪しながら30分間にわたってインキュベートした。溶解緩衝液中の20μlのEu3+クリプタート標識抗cAMP mAb(1:20希釈)及び20μlの(1:20希釈)d2標識cAMPを各ウェルに添加し、振盪しながら1時間にわたってインキュベートした。ウェル中のPACAP38の最終濃度は1nMであった。インキュベーションの後に、プレートを読み取り(励起330nm、発光620/665nm)、620:665シグナルの比を決定した。
図19A~Hは、この方法によって得られた阻害曲線を代表している(結果は、それぞれ、Ab10、Ab20、Ab21、Ab1.H、Ab10.H、Ab21.H、Ab22、及びAb23について示される)。下記の表7において示される、各抗体について計算されたIC50値は、Ab10、Ab20、Ab21、Ab1.H、Ab10.H、Ab21.H、Ab22、及びAb23が、ヒトVPAC2-Rを発現する細胞においてPACAP38誘導性cAMP増大を阻害することを実証した。
実施例5:PAC1-R発現細胞へのPACAP38結合の阻害
PAC1-R発現細胞へのPACAP38結合を遮断する抗体を同定するために、PAC1-Rを発現する接着PC-12細胞(ATCC、Manassas、VA)を、EuropiumをベースとするPAC1-R発現細胞結合アッセイにおいて使用した。抗体溶液を10×最終濃度(100nMまたは30nM)のN末端ビオチン化PACAP38と共に1時間にわたってインキュベートし、次いで、24時間前に黒色透明ボトム96ウェルプレート(COSTAR(商標)、Corning Incorporated、Corning、NY)に播種されたPC-12細胞に添加し、さらに、1時間にわたって室温でインキュベートした。3回の洗浄の後に、細胞を20μlのEuropium標識ストレプトアビジン(PerkinElmer、Waltham、MA)と共に1時間にわたって室温でインキュベートした。細胞を3回洗浄し、次いで、20μlのDELFIA(登録商標)Enhancement溶液(PerkinElmer、Waltham、MA)を各ウェルに添加し、穏やかに振盪しながら15分間にわたってインキュベートした。プレートをSPECTRAMAX(登録商標)(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)プレートリーダーで読み取った(時間分解蛍光(「TRF」))。
図14A~Hは、この方法によって得られた阻害曲線を代表しており(結果は、それぞれ、Ab10、Ab20、Ab21、Ab1.H、Ab10.H、Ab21.H、Ab22、及びAb23について示される)、その際、PAC1-R発現細胞はPC-12細胞であった。下記の表8において示される、各抗体について計算されたIC50値は、Ab10、Ab20、Ab21、Ab1.H、Ab10.H、Ab21.H、Ab22、及びAb23が、PAC1-R発現PC-12細胞へのPACAP38結合を阻害することを実証した。
実施例6:PAC1-R発現細胞の細胞表面への、抗PACAP抗体のPACAP38媒介性結合
PACAP38を介してPAC1-R発現細胞の細胞表面に結合する抗PACAP抗体を同定するために、PAC1-Rを発現する接着PC-12細胞(Japanese Collection of Research Bioresources Cell Bank)を、細胞表面結合をベースとするアッセイにおいて使用した。結合実験を行うために、PAC1-R発現PC-12細胞を初めに、Corning 96ウェル白色ソリッドボトムプレート(Corning、Corning、NY)に播種した。細胞を初めに、1×105細胞/ウェルで、完全RPMI(「cRPMI」:10%滅菌熱不活化FBS及び1%滅菌抗生物質/抗真菌物質を補充されたRPMI培地)+10%FBSの溶液中で播種し、プレートを終夜、37℃でインキュベートした。結合アッセイの当日に、15μg/mlの当初濃度の抗体をDELFIA(登録商標)結合緩衝液(50mMトリス、150mM NaCl、0.1%アジド、2%ウマ血清)(Perkin-Elmer、Waltham、MA)中で1:3比で、60μLの合計体積に、別の96ウェル丸底プレート内で希釈した。PACAP38を、それをDELFIA(登録商標)結合緩衝液中で200nMの濃度に希釈することによって結合アッセイのために調製し、次いで、60μlの希釈PACAP38を抗体含有ウェルのそれぞれに添加して、抗体:抗原複合体を形成した。PACAP38を添加した後に、抗体:抗原複合体を室温で、振盪機上で1時間にわたってインキュベートした。別に、抗体:抗原複合体の添加のために、細胞をDELFIA(登録商標)洗浄緩衝液(50mMトリス、150mM NaCl、0.1%アジド)(Perkin-Elmer、Waltham、MA)で2回洗浄することによって、PC-12細胞を調製した。細胞を2回洗浄した後に、かつ抗体:抗原複合体を1時間にわたって室温でインキュベーションした後に、50μlの抗体:抗原複合体を、細胞を含有する各ウェルに添加した。次いで、細胞及び抗体:抗原複合体の混合物を30分間にわたって室温でインキュベートした。この30分間にわたるインキュベーション
の後に、各混合物をDELFIA(登録商標)洗浄緩衝液(Perkin-Elmer、Waltham、MA)で2回洗浄した。
DELFIA(登録商標)Europium標識抗ヒトIgG検出試薬(カタログ#1244-330、Perkin-Elmer、Waltham、MA)を、DELFIA(登録商標)結合緩衝液中で300ng/mlの濃度に希釈した。希釈の後に、50μlの抗ヒトIgG検出試薬を、細胞を含有する各ウェルに添加し、IgG検出試薬のこの添加に、室温で30分間にわたるインキュベーションを続けた。30分間にわたる室温でのインキュベーションが完了した後に、次いで、細胞をDELFIA(登録商標)洗浄緩衝液で2回洗浄した。次に、振盪しながら最後に15分間にわたって室温でインキュベートするために、50μlのDELFIA(登録商標)Enhancement溶液(カタログ#1244-105、Perkin-Elmer、Waltham、MA)を、細胞を含有する各ウェルに添加した。次いで、プレートをSPECTRAMAX(登録商標)(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)プレートリーダーで読み取った(TRF、励起330nm、発光620nm)。
図15A~Hは、この方法によって得られた結合曲線を代表しており(結果は、それぞれAb10、Ab20、Ab21、Ab1.H、Ab10.H、Ab21.H、Ab22、及びAb23について示される)、その際、PAC1-R発現細胞はPC-12細胞であった。Ab1.Hは、PACAP38の存在下でのPAC1-R発現細胞の表面への結合を実証したが、このアッセイを使用すると、Ab20、Ab21、Ab10.H、Ab21.H、Ab22、及びAb23は、PAC1-R発現細胞の表面に感知できるほどには結合しないようであった。PAC1-R細胞の細胞表面へのAb1.Hの結合は、PACAP38の存在下でのみ観察された。理論によって拘束される意図はないが、GAGによるPACAP38の結合が、PC-12細胞によるPACAP38結合及び内部移行化のPAC1-R受容体非依存機構として以前に実証されているので(Doan et al.,2012;Juhasz et al.,2014、及びNeree et al.,2015を参照されたい)、細胞表面への抗体の結合が、細胞表面上に存在するGAGへのPACAP38の結合によって媒介されると仮定される。
実施例7:抗PACAP抗体Ab1.Hによる、ウサギにおけるPACAP38誘導性皮膚血管拡張の阻害
PACAP38の皮内注射は、ウサギ及びヒトにおいて限局性血管拡張を誘発することが示されている(Warren et al.,J.Cardio.Pharmacol.,29(1):83-87,1992;Seelinger et al.,Am.J.Path.,177(5):2563-2575,2010)。in vivo有効性研究を行って、雄のNew Zealand WhiteウサギにおいてPACAP38の皮内注射によって誘導される限局性皮膚血管拡張を阻害するAb1.Hの活性を決定した。
4匹のウサギからなる群に、90mg/kgのAb1.Hを、または陰性対照ビヒクル(25mMヒスチジン、250mMソルビトール、pH6.0)を投与した。注射を、0日目にIV(耳介静脈)ボーラス投与によって行った。各ウサギのPACAP38攻撃の前に、各動物の肩甲骨領域の毛を刈り取り、水中の20%(v/v)アルコールで拭いた。2日目に、動物に、塩酸ケタミンで事前麻酔を掛け、イソフルランガスで深麻酔下に維持した。注射のための4つの部位(目的の領域(Region of Interest(「ROI」))を、SHARPIE(登録商標)油性マーカーを使用して各動物の背部上に特定した。皮膚血管拡張及び血液潅流を、皮内PACAP38攻撃の前に(基線)、かつその後35分間にわたって、レーザースペックルコントラスト分析(「LASCA」)イメージングのためのPeriCam PSI NRシステム(Perimed、Ja
rfalla、Sweden)を使用してモニターした。皮内PACAP38攻撃を次のとおりに行った:各動物は、ビヒクル(1つの部位またはROI)及び30pmole/部位のPACAP38(3部位または3ROI)の単回皮内投与(100μl/部位)を投与された。各ROIでの血液潅流速度は、潅流ユニット(「PU」)内のPeriCam PSI NRシステムによって報告され、PIMSoft(Ver.1.5,Perimed、Jarfalla、Sweden)を使用して分析された。
各処置群で、基線と比較されたAb1.Hまたは陰性対照投与後の相対%PU変化を各ROIについて計算した(各PACAP38攻撃部位での%PU変化-ビヒクル部位での%PU変化)。GraphPad Prism(version 5.0d、GraphPad Software、La Jolla、CA)ソフトウェアを使用して両側独立t検定統計評価を行うことによって、Ab1.H群における相対%PU変化を、陰性対照群における相対%PU変化と比較した。
図20は、Ab1.HがウサギにおいてPACAP38誘導性皮膚血管拡張を阻害することを実証し、in vivoでのPACAP38活性の中和におけるこの抗体の有効性を示している。
実施例8:抗PACAP抗体Ab10による、ウサギにおけるPACAP38誘導性皮膚血管拡張の阻害
PACAP38の皮内注射は、ウサギ及びヒトにおいて限局性血管拡張を誘発することが示されている(Warren et al.,1992;及びSeelinger et al.,2010)。in vivo有効性研究を行って、雄のNew Zealand WhiteウサギにおいてPACAP38の皮内注射によって誘導される限局性皮膚血管拡張を阻害するAb10の活性を決定した。
4匹のウサギからなる群に、72mg/kgのAb10を、またはアイソタイプ抗体対照を投与した。注射を、0日目に(耳介静脈)ボーラス静脈内投与によって行った。各ウサギのPACAP38攻撃の前に、各動物の肩甲骨領域の毛を刈り取り、水中の20%(v/v)アルコールで拭いた。2日目に、動物に、塩酸ケタミンで事前麻酔を掛け、イソフルランガスで深麻酔下に維持した。注射のための4つの部位(ROI)を、SHARPIE(登録商標)油性マーカーを使用して各動物の背部上に特定した。皮膚血管拡張及び血液潅流を、皮内PACAP38攻撃の前に(基線)、かつその後35分間にわたって、LASCAイメージングのためのPeriCam PSI NRシステム(Perimed、Jarfalla、Sweden)を使用してモニターした。皮内PACAP38攻撃を次のとおりに行った:各動物は、ビヒクル(1つの部位またはROI)及び30pmole/部位のPACAP38(3部位または3ROI)の単回皮内投与(100μl/部位)を投与された。各ROIでの血液潅流速度は、PU内のPeriCam PSI NRシステムによって報告され、PIMSoft(Ver.1.5(Perimed、Jarfalla、Sweden))を使用して分析された。
各処置群で、基線と比較されたAb10またはアイソタイプAb対照投与後の相対%PU変化を各ROIについて計算した(各PACAP38攻撃部位での%PU変化-ビヒクル部位での%PU変化)。GraphPad Prism(version 5.0d、GraphPad Software、La Jolla、CA)ソフトウェアを使用して両側独立t検定統計評価を行うことによって、Ab10群における相対%PU変化を、アイソタイプAb対照群における相対%PU変化と比較した。
図21は、Ab10がウサギにおいてPACAP38誘導性皮膚血管拡張を阻害することを実証し、in vivoでのPACAP38活性の中和におけるこの抗体の有効性を
示している。
実施例9:抗PACAP抗体、Ab1及びAb10のエピトープ結合
製造者のガイドラインに従って、Ab1を10:1モル比で、ビオチン(Thermo
Fisher Scientific、Waltham、MA)を用いてビオチン化した。5ステップバイオレイヤー干渉法実験を次のとおりに行った:ステップ1で、ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio LLC、Menlo Park、CA)を、50秒間にわたって1倍反応速度緩衝液(Pall ForteBio
LLC、Menlo Park、CA、カタログ#18-5032のDBS中の1:10希釈液)中で平衡化させた。ステップ2で、1倍反応速度緩衝液中のビオチン化抗体Ab1の2μg/ml希釈液を、500秒間にわたって、ストレプトアビジンバイオセンサー上で固定化した。ステップ3で、抗体官能化バイオセンサーを、1倍反応速度緩衝液中の2μM非標識PACAPペプチド(American Peptide Company、Sunnyvale、CA、カタログ#34-0-20)の溶液中で200秒間にわたってインキュベートした。ステップ4で、1000秒の解離ステップのために、センサーを1倍反応速度緩衝液中の非標識抗体Ab10(図22A)または対照としての非標識抗体Ab1(図22B)の67nM溶液中に入れた。結合の安定性をステップ5の間、1倍反応速度緩衝液中での1000秒の解離についてモニターした。図22Aでは、Ab1捕捉されたPACAPによるAb10の「サンドイッチ式」捕捉は、PACAPへのこれら2種の抗体の同期及び非競合結合を示す。図22Bにおける対照実験は、Ab1捕捉されたPACAPによるAb1の最小の「サンドイッチ式」捕捉を示す。実験を、ForteBio OCTET(登録商標)QK装置(Pall ForteBio LLC、Menlo Park、CA)で、30℃及び1000RPMで行った。
実施例10:抗PACAP抗体による、ヒトPAC1-RへのPACAP27結合の阻害
PAC1-RへのPACAP27結合を遮断する抗体を同定するために、30nMの当初濃度の抗体をインキュベーション緩衝液(50mM Hepes pH7.4、1mM
CaCl2、5mM MgCl2、0.2%BSA)中で希釈し、一連の1:3希釈を行った。次いで、抗体希釈液(30nM、10nM、3nM、1nM、0.3nM、0.1nM、0.03nM、0.01nM、0.003nM、及び0.001nM)を混合し、25℃で30分間にわたって、インキュベーション緩衝液中の0.1nMの125I標識PACAP27と共にプレインキュベートした。次いで、抗体:125I標識PACAP27混合物を、インキュベーション緩衝液中の、ヒト組換えPAC1-Rロングアイソフォームを発現するChem-1細胞に由来する細胞膜の0.5μgアリコットに添加した。次いで、混合物を1時間にわたって25℃でインキュベートした。インキュベーションの後に、サンプルを濾過し、洗浄した。その後、フィルターをカウントして、125I標識PACAP27を定量した。実験対照として、細胞膜への非特異的結合を、0.1μMの標識PACAP27を使用して推定した。結果は、Ab1.H、Ab10.H、及びAb21.HがPAC1-RへのPACAP27結合を遮断することができたことを示し、それによって、表9において示される試験抗体によるリガンド-受容体結合の阻害が実証された。
実施例11:光嫌悪に対する抗PACAP抗体の作用
羞明に対する抗PACAP抗体の作用を検査するために、マウスにPACAPを投与して、羞明を起こさせるマウスモデルを使用した。Kaiser et al.,J.Neurosci.,32(44):15439-15449,2012において記載されているとおりの明暗箱を使用する光嫌悪アッセイを使用して、羞明を検出した。次いで、マウスに、抗PACAP抗体Ab1.HまたはAb10.Hまたは無関連対照抗体を投与し、光に対するそれらの嫌悪を定量した。結果を図23~25において反映させる。
光嫌悪アッセイ
Kaiser et al.において記載されているとおり、試験チャンバーは、3セットの16ビームの赤外アレイを含むプレキシガラス製オープンフィールド(幅27cm×深さ27cm×高さ20.3)であった(2セットの垂直ビームは、マウスの位置及び移動を検出するために1.0cmの高さで交差し、かつ第3のビームは、垂直方向の活動を検出するために、7.3cmの高さでチャンバーの幅に交差する)。フィールドを、上面はあるが床はない5面の黒色プレキシガラス製ボックスである暗色インサートによって、2つの当サイズの帯域に分割した。赤外光ビームを使用して、両方の帯域において追跡を可能にした。暗色インサートの開口部(5.2cm×6.8cm)によって、帯域間を自由に移動することを可能にした。暗色インサートは直接的な光を遮断するが、多少の光は開口部を介して、なお入り得た。各試験チャンバーを、換気のためのファンを備えた消音室(幅56cm×深さ38cm×高さ36cm)内に設置した(Med Associates,Inc.(登録商標)、St.Albans、VT)。6つのチャンバーからのデータを記録するために、Activity Monitor v6.02(Med Associated Inc.)を使用するコンピューターを使用した。
各チャンバーで、LEDパネルを消音室の天井に取り付けた。LEDパネルは、36個のコリメート1ワットLED(白色昼光5500k)(LEDwholesalers.com、Burlingame、CA)を含んだ。光度を制御するために、各LEDパネルを、3.0×102~2.7×104lxの光度の電位範囲をもたらす調光可能LEDドライバ(LINEARdrive(登録商標);eldoLED America Inc.、San Jose、CA)に接続した。LEDの下で、透明プレキシガラス製トレイに載せた蝋紙を使用して、レベルを5.5×101lxにさらに減衰させた。試験チャンバーの床の上に置かれたTraceable Dual-Display Light Meter(Control Company、Friendswood、TX)を用いて、光度を測定した。2.7×104lxで、LED光は、消音チャンバー内で多少の熱を発生し、暗帯域は約25℃、明帯域は約27℃であった。
実験の当日に、マウスを動物飼育容器から移して、試験室(約22℃)に少なくとも30~60分間にわたって、標準の天井蛍光照明(飼育ケージ内で約200lx)で順応させた。室内光は、別段に述べない限りオンのままであった。加えて、すべての音を発生さ
せる装置を、順応の間、オンにし、試験が完了するまで、オンのままにした。順応の間、室内には最小人数のヒトが存在した。0800CST及び1400CSTの間で、挙動試験を行った。いずれの異常な身体的状態(例えば、失明)も記述した。
10週齢の雄及び雌のCD1マウスを研究において使用した(株#022、Charles River、Wilmington、MA、US)。試験の前に、マウスを1~2週間にわたって、輸送から回復させた。
順応
明暗チャンバーに入れる前に、すべてのマウスを試験室内で少なくとも30~60分間にわたって順応させた。チャンバー内の光度を初めは、2.7×103lxに設定した。マウスを毎日30分間にわたってチャンバー内で試験し、明暗チャンバーに露出した。基線測定の間に3日間の休息期間を設けて、マウスを明暗チャンバーに2回露出することによって、各マウスでの明所での基線時間を得た(図23及び25、それぞれ「基線1」及び「基線2」、または「基線」)。
処置
マウスに、30mg/kgの抗PACAP抗体または対照IgG抗体(試験抗体と同じフレームワークを有し、ジゴキシゲニンを認識する陰性対照抗体)を腹腔内注射によって投与した。次いで、マウスをそれらのホームケージに戻して、試験前に1日(24時間)休息させた。次いで、マウスに0.6mg/kgのPACAPまたはビヒクルを腹腔内注射によって投与し、30分間にわたって休息させた。次いで、マウスを明暗チャンバー内に30分間にわたって入れた(図23及び図25、「処置」)。各マウスを明暗チャンバーに露出した後に、明暗チャンバー及び構成部品を、殺菌ワイプで清浄化し、乾燥させた。マウスを明暗チャンバーに入れてから約5~7分後に、試験すべき次のマウスにPACAPまたはビヒクルを上記のとおり注射した。この間隔はおよそ、実験の間に明暗チャンバーを清浄化するために必要な時間量であった。
運動性測定
Kaiser et al.,J.Neurosci.,2012において記載されているとおり、5分間隔で30分間の試験期間にわたって、運動性を測定した。簡単には、垂直移動、例えば後脚立ちの回数、歩行距離(cm、歩行運動状態中に移動した全距離)、転位、及び休息(新たにビームを破断することなく過ごした時間のパーセンテージ)を光ビームによって測定した。すべての運動性パラメーターを各帯域において過ごした時間に対して正規化して、その帯域で過ごした異なる時間量が説明されるようにし;したがって、各パラメーターでの生の値を、5分間隔の間にその帯域で過ごした時間で割った。各チャンバーで過ごした時間を、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)を使用して分析し、平均±平均の標準誤差(「SEM」)として報告した。post-hoc分析のためのボンフェローニ多重比較検定と共に、二元繰り返し測定ANOVAによって、比較を計算した。
マウスを3つの基準に基づき排除した:(1)ボックスへの最初の2回の露出の後に、明所における基線時間を分析し、基線での明所における平均時間の+/-1標準偏差を過ごしたいずれのマウスも実験から除去し、薬物処置を与えなかった、(2)統計的異常値(ボックスプロット、10~90%)と同定された場合、そのマウスを分析から排除した、及び(3)時間のうちの10%未満(明所及び暗所を合わせて)しか運動しなかった場合、そのマウスを排除した。
抗体Ab1.HまたはAb10.Hのいずれかを投与されたマウスの応答を、対照IgGと比較する2つの実験では、結果は、PACAP抗体Ab1.HまたはAb10.Hの
いずれかを投与されたマウスは、IgG対照マウスと比較すると、明所においてより多くの時間を過ごしたことを示す。図23は、マウスが正常に、両方の基線測定においてと同様に挙動することを示す。他方で、図23において示されているデータは、対照IgG抗体及び次いでPACAPで処置されたマウス(四角形)が、抗PACAP抗体Ab1.H及び次いでPACAPを投与されたマウス(円形)よりも、統計学的に短い時間を明所において過ごすことを示す。(図23、「処置」を参照されたい)。図25において示されているデータも、マウスが正常に、基線測定においてと同様に挙動することを示す。他方で、図25において示されているデータは、対照IgG抗体及び次いでPACAPで処置されたマウス(三角形)が、抗PACAP抗体Ab10.H及び次いでPACAPを投与されたマウス(逆三角形)よりも、統計学的に短い時間を明所において過ごすことを示す。(図25、「処置」を参照されたい)。各測定の間の時間は、3日間であった。平均±SEMは、各5分間隔で示される。ビヒクルのみを投与されたマウスは、正常対照として挙動した。図24において示されているデータは、抗PACAP抗体Ab1.H、または対照IgG、及びビヒクル(それぞれ「ビヒクル+PAC Ab」及び「ビヒクル+対照抗体」)の投与がマウス挙動を顕著に変更することはなかったことを示す。図24も、PACAP及び対照IgGが投与された場合には、明所におけるマウスの平均時間が減少した(「PACAP+対照抗体」)一方で、抗PACAP抗体Ab1.H及びPACAPを投与されたマウスは、正常な、非光過敏挙動を示した(「PACAP+PAC Ab」)ことを示す。
実施例12:抗PACAP抗体のエピトープマッピング
本発明の抗PACAP抗体及びそれらの抗原結合性断片が結合する、PACAP内に含有されるエピトープを決定するために、アラニン走査実験を使用した。これらの実験を行うために、各位で天然のアミノ酸をアラニン(「Ala」)で置き換える単一点突然変異を用いて、PACAPペプチドを合成し、PACAP及び抗体の結合親和性に関連する単一点突然変異の結果を測定した。アラニン残基がすでに野生型PACAPの18、24、及び25位を占めているので、慣例に従って、PACAPへの本抗PACAP抗体の結合に対して、これらの位置でアラニンを除去することで起こり得る作用を決定するために、これらのAla残基をバリン(「Val」)で置き換えた。通常の慣例によって、これらのAla変異は、PACAP1-38における位置に、置換されたアミノ酸での文字コードを続けることで標識され、例えば、10Aは、アミノ酸10位でアラニンで置換されたPACAP1-38を示す。ヒトPACAP及び各変異ペプチドについてのモノクローナル抗体の結合を、PROTEON(商標)XRP36(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)でSPRを使用して検出した。サンプル及びサンプル対照をPROTEON(商標)GLCセンサーチップ(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)上に、標準的なアミンカップリングを使用する単一密度で固定化した。固定化のために使用された泳動用緩衝液は、DPBS/改変(HYCLONE(商標)GE Healthcare Life Sciences、Marlborough、MA)であり、固定化を25℃で行った。PROTEON(商標)GLCセンサーチップ(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)を初期化し、製造者のプロトコルに従ってプレコンディショニングした(0.5%SDS、50mM NaOH、100mM HClの双方向注入)。PROTEON(商標)Chip(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)のスポット上に特有の抗体を保証するために、固定化プロセスを段階的に行った。チップの表面を、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド/N-ヒドロキシスクシンイミドの1:1混合物(「EDAC/NHS」)及び30μL/分の流速×5分で活性化させた。抗体サンプルを10mM HEPES 150mM NaCl pH7.2に予め透析または交換し、抗体濃度を、NANODROP(商標)2000分光光度計(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を使用して定量化した。固定化は、2000~3000応答単位(「RU」)を目
標とした。10mM酢酸ナトリウム、pH5.5中の抗体サンプル(5μg/ml)を30μL/分×4分で流した。次の活性化に付随して、0.3Mエタノールアミンを使用して30μL/分の流速で、5分間にわたって、非活性化を達成した。
固定化の後に、泳動用緩衝液を、0.2MアルギニンHCl(非特異的結合を減少させるため)、BSA(0.2mg/ml、担体として)、及びPROCLIN300(登録商標)(0.005%、防腐剤として、Sigma Aldrich、St.Louis、MO)を含む1倍PBST(4.3mMリン酸ナトリウム、1.4mMリン酸カリウム、135mM NaCl、2.7mM KCl、0.05%TWEEN(登録商標))に変え、チップ表面を新たな泳動用緩衝液の注射で再平衡化させた。1mg/mlの濃度のヒトPACAPペプチド(1-38)及びアラニン/バリン変異ペプチド(分子量(複数可):4.5kD)のストック溶液を泳動用緩衝液に、0.45μg/ml(100nM)の最終濃度まで添加した。次いで、これらの混合物を、チップ表面上の個々のスポットを照会するために100μL/分の流速×2分で使用し、600秒間にわたって解離させた。チップ表面を、0.85%リン酸を添加することによって、分析物の間で再生させた。抗体Ab10、Ab20、Ab21、Ab22、及びAb23のそれぞれを、本明細書に記載された条件と同じ条件下で調査した。
抗体パネルへの変異ペプチドの結合の親和性データを示すセンサーグラムを、複数のパラメーターを使用して評価した。初めに、外観検査を各センサーグラムについて行って、野生型PACAPペプチド(1-38)と比較して、見掛けの最大応答(「Rmax」)を評価した。次に、解離相の外観検査を、野生型PACAPペプチドと比較して、曲線形状を強調して行った。オフ速度(解離速度)を、抗体パネルへの野生型PACAPペプチド及び各変異ペプチドの結合について計算した。最後に、各ペプチド変異型(野生型または変異体)の完全性を確認するための対照実験として、ペプチドライブラリの各メンバーの結合親和性を個々に、野生型PACAPと結合することが既知である抗体パネルの各メンバーについて決定して、各Ala変異PACAPペプチドが野生型PACAPペプチドの結合親和性と同様の結合親和性を示すことを保証した。記載のパラメーターのすべての一括評価によって、PACAP/抗体結合に重要なPACAPアミノ酸残基が同定された。
結合及び解離データを図26A~30Bにおいて、野生型PACAP及びPACAP変異体への抗体Ab10、Ab20、Ab21、Ab22、及びAb23の結合について示す。各図における上のパネルは、抗体結合に重要であると考えられるPACAP中の残基(グラフの右端に標識。例えば、「10A」は、PACAPの10位にアラニンを含有する変異体についての結合データを示す)についての結合データを含有する。下のパネルは、残りのPACAPアラニン変異体、すなわち、野生型PACAPと同様に試験抗体に結合したPACAPアラニン変異体の結合程度を示すデータポイントを示す。これらに基づき、残基を、抗体結合に重要ではない可能性があると決定した。陽性対照として、各図での上下のパネルは両方とも、野生型PACAP(標識huPACAP(1-38))を使用して得られた結合データを開示している。
図31A~Bには、これらのアラニン走査研究において得られたデータに基づき、抗体結合親和性に寄与すると決定されたPACAP残基の位置をまとめている。各欄に列挙された位置は、その変異がPACAP/抗体結合親和性の低下をもたらしたPACAPアラニン走査変異体を同定している。残基の位置は、PACAP一次配列に沿った残基の空間的配置に従って(アミノ酸残基1~38から)、図31A~Bのカラム3に列挙されている。抗体結合に最も寄与するPACAP残基の位置は、各抗体が結合するエピトープを一緒に構成すると解釈された。これらのアラニン走査研究において得られたデータに基づき、各抗体が結合するエピトープは、次の残基を含むと断定された:
(i)Ab10:ヒトPACAPの残基19、22、23、及び27;
(ii)Ab20:ヒトPACAPの残基19、22、23、24、及び27;
(iii)Ab21:ヒトPACAPの残基19、22、23、及び27;
(iv)Ab22:ヒトPACAPの残基22、23、27、28、及び31;
(v)Ab23:ヒトPACAPの残基12、20、23、24、26、27、及び28。
アラニン走査実験結果に基づき、PACAPについての抗体Ab10、Ab20、Ab21、Ab22、及びAb23のそれぞれの親和性は、ヒトPACAPの残基19、22、23、及び/または27に関係するか、またはそれらに依存する。
加えて、PACAPに対する抗体Ab22及びAb23のぞれぞれの親和性は、ヒト野生型PACAP38中には存在するが、ヒト野生型PACAP27には存在しない特異的なアミノ酸残基、例えば、PACAP38の残基28及び31に関係するか、またはそれらを必要とすることが観察された。
上述のアラニン走査結果に関して、ヒト化は、親(非ヒト化)抗体と比較して、ヒトPACAPへのヒト化抗PACAP抗体の結合の特異性に感知可能なほどに影響を及ぼさないはずであるので、本抗PACAP抗体のヒト化変異体は、ヒトPACAPの同一または実質的に同一の残基と相互作用するはずである。殊に、Ab10.Hは、ヒトPACAP上でAb10と同じ残基で相互作用するはずであり、Ab21.Hは、ヒトPACAP上でAb21と同じ残基と相互作用するはずである。
ヒトPACAP上で、本抗体と同じか、または重複するエピトープに結合する抗体が、本明細書に記載の方法を使用して生成及び同定され得る。本明細書において同定された抗体のいずれかと同じか、または重複するエピトープに結合する抗体が、結合反応速度において有意な差異を伴うことなく、同様の生物学的活性を有し得るであろうと予想することは合理的である。殊に、そのような抗体は、これらのエピトープと結合する例示された抗PACAP抗体と同様に、PACAPによって誘発される生物学的作用の1つまたは複数と拮抗するはずである。加えて、これらの同じか、または重複するエピトープ、またはそれらの残基のサブセットに結合する抗体は、本抗体の結合特徴を模倣すると予想される。例えば、そのような抗体は、PACAPと選択的に結合し、かつVIPまたは神経ペプチドのこのファミリー内の他のペプチドと結合しないか、またはかなりより低い親和性(より弱い)で結合すると予期される。
本発明を十分に説明及び可能にしてきたが、本発明をさらに、下記の特許請求の範囲によって記載する。
発明の態様
[態様1]ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用と拮抗するか、それらを阻害、中和、または遮断する、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗ヒト下垂体アデニル酸シクラーゼ-活性化ポリペプチド(「PACAP」)抗体または抗体断片。
[態様2]ヒトPACAPへの結合について、Ab10及びAb20からなる群から選択される抗体、または上述のいずれか1つの抗原結合性断片と特異的に競合する、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片。
[態様3]Ab10及びAb20からなる群から選択される抗PACAP抗体、または上述のいずれか1つの抗原結合性断片が結合する少なくとも1つの線状または配座異性エピトープに特異的に結合する、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片。
[態様4]Ab10及びAb20のいずれか1つ、または上述のいずれか1つの抗原結合性断片と同一のエピトープに結合する、先行態様のいずれかに記載のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片。
[態様5]ヒトPACAPまたは対応するアミノ酸残基を含有するその断片もしくは変異体上のエピトープに特異的に結合し、その際、前記エピトープが、下記:
(i)ヒトPACAPの残基19、22、23、及び27のうちの少なくとも1個;
(ii)ヒトPACAPの残基19、22、23、24、及び27のうちの少なくとも1個;
(iii)(i)~(ii)のいずれか1つの残基のうちの少なくとも2個;
(iv)(i)~(ii)のいずれか1つの残基のうちの少なくとも3個;
(v)(i)~(ii)のいずれか1つの残基のうちの少なくとも4個;
(vi)(ii)の5個すべての残基
からなる群から選択される、先行態様のいずれかに記載のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片。
[態様6](a)ヒトPACAPの残基19、22、23、及び27のうちの1個または複数個を包含する対応するアミノ酸残基を含有するか;あるいは(b)態様5において記述したとおりの残基(i)または(ii)を含有するヒトPACAP上のエピトープ、またはそれらの断片もしくは変異体;(c)ヒト野生型PACAP38及びヒト野生型ヒトPACAP27において存在する、ヒトPACAP上のエピトープ、または対応するアミノ酸残基を含有するそれらの断片もしくは変異体に特異的に結合する、先行態様のいずれかに記載のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片。
[態様7]ヒトPACAP上のエピトープ(または対応するアミノ酸残基を含有するその断片もしくは変異体)に特異的に結合し、前記エピトープが、例えば実施例12において開示されているとおりのアラニン走査によって同定される、態様3~6のいずれかに記載のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片。
[態様8](a)ヒト血管作動性腸管ペプチド(「VIP」)に結合しないか、または感知できるほどには結合しないか;(b)ヒトVIPに対する前記抗体または抗体断片のKDよりも少なくとも10、100、1000、10,000、または100,000倍低い(強い)ヒトPACAPについてのKDを有するか;または(c)ヒトPACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和する、先行態様のいずれかに記載のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片。
[態様9]下記:
(i)PAC1受容体(「PAC1-R」)、血管作動性腸管ペプチド受容体1型(「VPAC1-R」)、及び/または血管作動性腸管ペプチド受容体2型(「VPAC2-R」)の少なくとも1つのPACAP活性化を阻害、遮断、または防止すること;
(ii)PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を阻害、遮断、または防止すること;
(iii)PAC1-RのPACAP活性化を阻害、遮断、または防止すること;
(iv)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害することができること;
(v)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害することができること;
(vi)PAC1-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができること;
(vii)VPAC1-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができること;
(viii)VPAC2-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができること;
(ix)例えばグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害すること;
(x)例えばグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのそのような抗体のPACAP媒介性結合を阻害すること;
(xi)PACAP誘導性cAMP産生を阻害、遮断、または防止すること;ならびに/あるいは
(xii)対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張を減少させること
のうちの少なくとも1つまたは複数を含む、先行態様のいずれかに記載のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片。
[態様10]血管拡張、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化の増大と関連する急性、一時性、または慢性状態を有するヒト対象を処置するために適した、先行態様のいずれかに記載のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片。
[態様11]ヒトPACAP上で、Ab10またはAb20から選択される抗PACAP抗体と同じか、または重複する線状または立体構造エピトープ(複数可)に特異的に結合し、かつ/または同じ線状または立体構造エピトープ(複数可)への結合について競合する、先行態様のいずれかに記載のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様12]前記抗体が結合するエピトープが、例えば、実施例12において開示されているとおりのアラニン走査によって同定される、先行態様のいずれかに記載のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様13]Ab10またはAb20から選択される抗PACAP抗体の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの相補性決定領域(「CDR」)、好ましくはVHCDR3及びVLCDR3を含む、ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様14]Ab10またはAb20から選択される抗PACAP抗体の6つすべてのCDRを含む、態様13に記載のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様15]結合親和性または免疫原性を推定上で変更する1つまたは複数の修飾を含有する上述のいずれかの配列変異体を含む、先行態様のいずれかに記載のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様16](a)配列番号404からなるCDR1配列;配列番号406からなるCDR2配列;及び配列番号408からなるCDR3配列を含む可変重鎖;ならびに/または
(b)配列番号424からなるCDR1配列;配列番号426からなるCDR2配列;及び配列番号428からなるCDR3配列を含む可変軽鎖を含み、
その際、任意選択で、前記抗体が、配列番号402に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、もしくは99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、及び/または配列番号422に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、もしくは99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含むか;あるいは配列番号402のアミノ酸配列を有する可変重鎖、及び/または配列番号422のアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含むか;あるいは配列番号401のアミノ酸配列を有する重鎖、及び/または配列番号421のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、態様1~15のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様17](a)配列番号444からなるCDR1配列;配列番号446からなるCDR2配列;及び配列番号448からなるCDR3配列を含む可変重鎖;ならびに/または
(b)配列番号464からなるCDR1配列;配列番号466からなるCDR2配列;及び配列番号468からなるCDR3配列を含む可変軽鎖を含み、
その際、任意選択で、前記抗体が、配列番号442に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、もしくは99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖、及び/または配列番号462に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、もしくは99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖;あるいは配列番号442のアミノ酸配列を有する可変重鎖、及び/または配列番号462のアミノ酸配列を有する可変軽鎖;あるいは配列番号441のアミノ酸配列を有する重鎖、及び/または配列番号461のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、態様1~15のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様18]scFvs、キャメルボディ、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(Immunoglobulin New Antigen Receptor、「IgNAR」)、抗原結合性断片(「Fab」)断片、Fab’断片、MetMab様抗体、一価抗原結合性断片、及びF(ab’)2断片からなる群から選択される、態様1~15のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様19]N-グリコシル化及び/またはO-グリコシル化を実質的に、または完全に欠いている、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様20]ヒト定常ドメインを含み、任意選択で、前記抗体がIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体である、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様21]エフェクター機能、半減期、タンパク質分解、またはグリコシル化の少なくとも1つを変更するように修飾されているFc領域を含み、任意選択で、前記Fc領域が、N-及び/またはO-グリコシル化を変更または除去する1つまたは複数の変異を含有する、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様22]例えば、ELISA、バイオレイヤー干渉法(「BLI」)、KINEXA、または表面プラスモン共鳴によって25℃または37℃で決定された場合に、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、または10-13M以下の結合親和性(KD)で、PACAPに結合する、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様23]5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、または10-12M以下の結合親和性(KD)でPACAPに結合する、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様24]5×10-4s-1、10-4s-1、5×10-5s-1、または10-5s-1以下のオフ速度(koff)でPACAPに結合する、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様25]検出可能な標識または治療薬に直接的または間接的に付着されている、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様26](a)対象に投与された場合に、PACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和するか;(b)PACAP27及び/またはPACAP38に結合し、かつPAC1-R、VPAC1-R及び/またはVPAC2-RへのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断するか;(c)PACAP27及び/またはPACAP38に結合し、かつPAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれへのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断するか;または(d)PACAP27及び/またはPACAP38に結合し、かつPAC1-R発現細胞、VPAC1-R発現細胞、及び/またはVPAC2-R発現細胞へのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断する、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様27](a)PAC1-R、VPAC1-R、またはVPAC2-Rの少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害するか;(b)PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を中和または阻害するか;(c)PAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害するか;(d)PAC1-R、VPAC1-R、またはVPAC2-Rの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害することができるか;(e)PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害することができるか;または(f)PAC1-R発現細胞、VPAC1-R発現細胞、及び/またはVPAC2-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができる、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様28](a)PACAP誘導性cAMP産生を阻害するか;または(b)PACAP誘導性血管拡張、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させる、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様29](a)約100nM未満、(b)約40nM未満、(c)約100pM未満、(d)約50pM未満、(e)約25pM未満、または(f)約10pM~約100pMであるKDで、PACAPに結合する、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様30](a)VIPと比較するとPACAPについてより強い親和性を有し、かつ/またはVIPに結合しないか;または(b)PACAPに対する前記抗体または抗原結合性断片の親和性が、VIPに対する前記抗体または抗原結合性断片の親和性よりも少なくとも10倍、30倍、100倍、300倍、1000倍、3000倍、10000倍、30000倍、100000倍、300000倍、1000000倍、3000000倍、10000000倍、30000000倍、またはそれ以上強い、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様31]少なくとも1つのエフェクター部分、化学的リンカー、検出可能な部分(蛍光色素、酵素、基質、生物発光材料、放射性材料、化学発光部分、またはそれらの混合物など)、または機能性部分に付着されている、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片。
[態様32]それらが結合する抗PACAP抗体の1つまたは複数の生物学的作用を任意選択で中和する、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片に対して産生される抗イディオタイプ抗体。
[態様33]対象において前記抗PACAP抗体または抗原結合性断片のin vivoレベルをモニターするか、または対象において前記抗PACAP抗体のin vivo作用を中和するために、態様32に記載の抗イディオタイプ抗体を使用する方法。
[態様34]治療、予防、または診断有効量の少なくとも1種の態様1~32のいずれかに記載の抗PACAP抗体もしくは抗原結合性断片または抗イディオタイプ抗体を含む、治療、予防、または診断用途に適した組成物。
[態様35](a)注射、局所、経口、吸入、もしくは経皮での;または(b)皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内、頬側内、膣内、経皮、腹腔内、もしくは肛門での投与に適している、態様34に記載の組成物。
[態様36]皮下投与に適しているか、または静脈内投与に適している、態様34に記載の組成物。
[態様37]薬学的に許容される希釈剤、担体、溶解補助剤、乳化剤、防腐剤、またはそれらの混合物をさらに含む、態様34~37のいずれかに記載の組成物。
[態様38]別の活性薬剤、例えば、化学療法薬、鎮痛薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、サイトカイン、抗増殖薬、制吐薬、または細胞毒素をさらに含む、態様34~38のいずれかに記載の組成物。
[態様39]注射による投与のために凍結乾燥、安定化、及び/または製剤化されている、態様34~38のいずれかに記載の組成物。
[態様40]態様1~32のいずれかに記載の抗PACAP抗体もしくは抗原結合性断片または抗イディオタイプをコードする単離核酸配列または核酸配列。
[態様41]態様40に記載の1つまたは複数の単離核酸配列を含有する、1種または複数種のベクター。
[態様42]態様40に記載の1つまたは複数の単離核酸配列、または態様41に記載の1種または複数種のベクターを含む、宿主細胞。
[態様43]哺乳類、細菌、真菌、酵母、鳥類、両生類、植物、または昆虫細胞、例えば、糸状真菌または酵母であるか、または哺乳類細胞、任意選択で、PichiaまたはCHO細胞である、態様42に記載の宿主細胞。
[態様44]態様42~43のいずれかに記載の宿主細胞を培養すること、または態様40に記載の核酸を、前記抗体または抗原結合性断片の発現をもたらす条件下で発現することを含む、抗PACAP抗体または抗原結合性断片を発現する方法。
[態様45]前記宿主細胞が、前記培養培地に、前記抗体または抗原結合性断片を安定発現及び分泌する酵母またはCHO細胞である、態様44に記載の方法。
[態様46]対象において、PACAPと関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、遮断、または中和する方法であって、前記対象に、ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用と拮抗するか、それらを阻害、中和、または遮断する治療または予防有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片を投与することを含む前記方法。
[態様47]対象において、下垂体アデニル酸シクラーゼ-活性化ポリペプチド(「PACAP」)と関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、または中和する方法であって、対象に、ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用と拮抗するか、それらを阻害、中和、または遮断し、かつ血管作動性腸管ペプチド(「VIP」)と実質的に相互作用しない(結合しない)治療または予防有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片を投与することを含む前記方法。
[態様48]対象において、下垂体アデニル酸シクラーゼ-活性化ポリペプチド(「PACAP」)と関連する1つまたは複数の生物学的作用、例えば、血管運動作用を遮断、阻害、遮断、または中和する方法であって、対象に、下記:
(a)PACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害、遮断、または中和すること;
(b)PAC1受容体(「PAC1-R」)、血管作動性腸管ペプチド受容体1型(「VPAC1-R」)、及び/または血管作動性腸管ペプチド受容体2型(「VPAC2-R」)の少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害すること;
(c)PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を阻害、遮断、または中和すること;(d)PAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害すること;
(d)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害することができること;
(e)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害することができること;
(f)PAC1-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができること;
(g)VPAC1-R及び/またはVPAC2-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができること;
(h)例えばグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害すること;
(i)例えばGAGを介しての細胞表面へのそのような抗体のPACAP媒介性結合を阻害すること;
(j)PACAP誘導性環状アデノシン一リン酸(「cAMP」)産生を阻害すること;ならびに/あるいは
(k)前記対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させること
の1つまたは複数を含む治療または予防有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片を投与することを含む前記方法。
[態様49]対象において、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(「PACAP」)と関連するか、またはそれによって誘発される血管拡張、例えば、硬膜動脈の血管拡張を遮断、阻害、または中和する方法であって、対象に、PACAPと関連するか、またはそれによって誘発される血管拡張を遮断、阻害、または中和する治療または予防有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗体断片を投与することを含む前記方法。
[態様50]対象において、頭痛または片頭痛の発症、頻度、重症度、または期間を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、次の作用:
(a)PACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和すること;
(b)PAC1受容体(「PAC1-R」)、血管作動性腸管ペプチド受容体1型(「VPAC1-R」)、及び/または血管作動性腸管ペプチド受容体2型(「VPAC2-R」)の少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害すること;
(c)PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を中和または阻害すること;
(d)PAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害すること;(e)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害することができること;(f)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害することができること;
(e)PAC1-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができること;
(f)VPAC1-R及び/またはVPAC2-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができること;
(g)例えばグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害すること;
(h)例えばGAGを介しての細胞表面へのそのような抗体のPACAP媒介性結合を阻害すること;
(i)PACAP誘導性環状アデノシン一リン酸(「cAMP」)産生を阻害すること;ならびに/あるいは
(j)前記対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させること
の1つまたは複数を誘発する有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗ヒト下垂体アデニル酸シクラーゼ-活性化ポリペプチド(「PACAP」)抗体または抗体断片を投与することを含む前記方法。
[態様51]前記頭痛または片頭痛が、前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、及び緊張性頭痛から選択される、態様50に記載の方法。
[態様52]血管拡張、肥満細胞脱顆粒、及びニューロン活性化の増大の少なくとも1つまたは上述のいずれかの組合せと関連する急性、一時性、または慢性状態を有するヒト対象を処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の拮抗性ヒト、ヒト化、またはキメラ化抗ヒト下垂体アデニル酸シクラーゼ-活性化ポリペプチド(「PACAP」)抗体または抗体断片を投与することを含む前記方法。
[態様53]対象において、下垂体アデニル酸シクラーゼ-活性化ポリペプチド(「PACAP」)と関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、または中和する方法であって、それを必要とする対象に、ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用と拮抗するか、それらを阻害、中和、または遮断する有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片を投与することを含む前記方法。
[態様54]対象において、下垂体アデニル酸シクラーゼ-活性化ポリペプチド(「PACAP」)と関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、または中和する方法であって、それを必要とする対象に、ヒトPACAPと関連する少なくとも1つの生物学的作用と拮抗するか、それらを阻害、中和、または遮断し、かつ血管作動性腸管ペプチド(「VIP」)と実質的に相互作用しない(結合しない)有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片を投与することを含む前記方法。
[態様55]対象において、下垂体アデニル酸シクラーゼ-活性化ポリペプチド(「PACAP」)と関連する1つまたは複数の生物学的作用を遮断、阻害、または中和する方法であって、それを必要とする対象に、(a)PACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和し;(b)PAC1受容体(「PAC1-R」)、血管作動性腸管ペプチド受容体1型(「VPAC1-R」)、及び/または血管作動性腸管ペプチド受容体2型(「VPAC2-R」)の少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害し;(c)PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を中和または阻害し;(d)PAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害し;(e)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害することができ;(f)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害することができ;(g)PAC1-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができ;(h)例えばグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害することができ;(i)例えばGAGを介しての細胞表面へのそのような抗体のPACAP媒介性結合を阻害し;(j)PACAP誘導性環状アデノシン一リン酸(「cAMP」)産生を阻害し;ならびに/あるいは(k)前記対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させる有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片を投与することを含む前記方法。
[態様56]対象において、頭痛または片頭痛の発症、頻度、重症度、または期間を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、(a)PACAPによって誘発される少なくとも1つの生物学的作用を阻害または中和し;(b)PAC1受容体(「PAC1-R」)、血管作動性腸管ペプチド受容体1型(「VPAC1-R」)、及び/または血管作動性腸管ペプチド受容体2型(「VPAC2-R」)の少なくとも1つのPACAP活性化を中和または阻害し;(c)PAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれのPACAP活性化を中和または阻害し;(d)PAC1-RのPACAP活性化を中和または阻害し;(e)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-Rの少なくとも1つへのPACAP結合を阻害することができ;(f)PAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RのそれぞれへのPACAP結合を阻害することができ;(g)PAC1-R発現細胞へのPACAP結合を阻害することができ;(h)おそらくグリコサミノグリカン(「GAG」)を介しての細胞表面へのPACAP結合を阻害することができ;(i)例えばGAGを介しての細胞表面へのそのような抗体のPACAP媒介性結合を阻害し;(j)PACAP誘導性環状アデノシン一リン酸(「cAMP」)産生を阻害し;ならびに/あるいは(k)前記対象に投与された場合に、PACAP誘導性血管拡張、肥満細胞脱顆粒、及び/またはニューロン活性化を減少させる有効量のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片を投与することを含む前記方法。
[態様57]前記頭痛または片頭痛が、前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、及び緊張性頭痛からなる群から選択される、態様56に記載の方法。[態様58]血管拡張、肥満細胞脱顆粒、及びニューロン活性化の増大の少なくとも1つまたは上記のいずれかの組合せと関連する急性、一時性または慢性状態を有し得るヒト対象を処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の拮抗性ヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗ヒト下垂体アデニル酸シクラーゼ-活性化ポリペプチド(「PACAP」)抗体または抗原結合性断片を投与することを含む前記方法。
[態様59]態様1~31のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗原結合性断片の投与を包含する、態様46~58のいずれかに記載の方法。
[態様60]前記抗PACAP抗体または抗原結合性断片が、PACAP27及び/またはPACAP38に結合し、かつPAC1-R、VPAC1-R、及び/またはVPAC2-RへのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断する、態様46~59のいずれかに記載の方法。
[態様61]前記抗PACAP抗体または抗原結合性断片が、PACAP27及び/またはPACAP38に結合し、かつPAC1-R、VPAC1-R、及びVPAC2-RのそれぞれへのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断する、態様46~59のいずれかに記載の方法。
[態様62]前記抗PACAP抗体または抗原結合性断片が、PACAP27及び/またはPACAP38に結合し、かつPAC1-R発現細胞へのPACAP27及び/またはPACAP38結合を遮断する、態様46~59のいずれかに記載の方法。
[態様63]PACAPへの前記抗体または抗原結合性断片の親和性が、VIPへの前記抗体または抗体断片の親和性よりも少なくとも10倍、30倍、100倍、300倍、1000倍、3000倍、10000倍、30000倍、100000倍、300000倍、1000000倍、3000000倍、10000000倍、30000000倍、またはそれ以上強い、態様46~62のいずれかに記載の方法。
[態様64]前記対象が、(a)前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、緊張性頭痛、全体頭痛、ホットフラッシュ、慢性発作性片頭痛、頭部における潜在的構造問題による二次性頭痛、頸部における潜在的構造問題による二次性頭痛、脳神経痛、副鼻洞性頭痛、副鼻腔炎と関連する頭痛、アレルギー誘導性頭痛、アレルギー誘導性片頭痛、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、幻想肢痛、線維筋痛症、反射性交感神経性ジストロフィー、疼痛、慢性疼痛、炎症性疼痛、術後切開疼痛、手術後疼痛、外傷関連疼痛、下背部痛、眼疼痛、歯痛、複合性局所疼痛症候群、癌性疼痛、原発性または転移性骨癌性疼痛、骨折痛、骨粗鬆症骨折痛、火傷から生じる疼痛、通風性関節痛、鎌状赤血球発症と関連する疼痛、側頭下顎障害と関連する疼痛、硬変、肝炎、神経原性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、内臓疼痛、月経痛、卵巣痛、変形性関節症疼痛、関節リウマチ疼痛、糖尿病性神経障害、坐骨神経痛、消化不良、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病、回腸炎、潰瘍性大腸炎、腎仙痛、月経困難、膀胱炎、間質性膀胱炎、月経期、分娩、閉経期、膵臓炎、統合失調症、うつ病、心的外傷後ストレス障害(「PTSD」)、不安障害、自己免疫性糖尿病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、過活動性膀胱、気管支反応亢進、喘息、卒中、気管支炎、気管支拡張、気腫、慢性閉塞性肺疾患(「COPD」)、炎症性皮膚炎、腺組織における腺癌、臓器の胚組織における芽細胞腫、上皮組織における癌腫、血液細胞を形成する組織における白血病、リンパ組織におけるリンパ腫、骨髄における骨髄腫、結合または支持組織における肉腫、副腎癌、AIDS関連リンパ腫、貧血、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、類癌腫、子宮頸癌、化学療法、結腸癌、血球減少症、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部癌、頸部癌、肝胆道癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、神経系腫瘍、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、皮膚癌、胃癌、睾丸癌、甲状腺癌、尿道癌、骨髄の癌、多発性骨髄腫、骨に転移する腫瘍、神経及び中空臓器を浸潤する腫瘍、神経構造付近の腫瘍、尋常性ざそう、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、ケロイド、肥厚性瘢痕及び酒さ、内皮機能不全、レイノー症候群、冠動脈性心疾患(「CHD」)、冠動脈疾患(「CAD」)、心不全、末梢動脈疾患(「PAD」)、糖尿病、肺高血圧(「PH」)、結合組織障害、アレルギー性皮膚炎、乾癬、そう痒症、神経原性皮膚発赤、紅斑、サルコイドーシス、ショック、敗血症、オピエート離脱症候群、モルヒネ耐性、及びてんかんからなる群から選択される状態;(b)色盲、無虹彩、抗コリン作動薬に起因する羞明、無水晶体症、牛眼症、白内障、錐体ジストロフィー、眼の先天異常、ウイルス性結膜炎、角膜擦傷、角膜ジストロフィー、角膜潰瘍、角膜上皮細胞の破壊、水晶体転位症、眼内炎、疾患に起因する眼外傷、損傷に起因する眼外傷、感染に起因する眼外傷、霰粒腫、上強膜炎、緑内障、円錐角膜、視神経形成不全、小眼、先天性緑内障虹彩炎、視神経炎、色素拡散症候群、瞳孔散大、網膜剥離、角膜の瘢痕化、強膜及びブドウ膜炎からなる群から選択され得る羞明と関連する眼障害;(c)自閉症スペクトラム障害、キアリ形成異常、失読症、脳炎、髄膜炎、クモ膜下出血、後頭頭蓋の腫瘍、強直性脊椎炎、白色症、リボフラビン欠乏症、ベンゾジアゼピン、化学療法、チクングニア、シスチン症、エーレルス-ダンロー症候群、二日酔い、インフルエンザ、感染性単核細胞症、マグネシウム欠乏、水銀中毒、片頭痛、狂犬病、及びチロシン血症II型からなる群から選択される羞明と関連する神経系関連または神経状態;あるいは(d)前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、虹彩炎、ブドウ膜炎、髄膜炎、うつ病、双極性障害、群発性頭痛もしくは別の三叉神経・自律神経性頭痛(「TAC」)または眼瞼痙攣、うつ病、広場恐怖症及び双極性障害からなる群から選択される羞明関連障害を有する、態様46~63のいずれかに記載の方法。
[態様65]前記対象が、片頭痛、頭痛、ならびに疼痛関連疾患または状態からなる群から選択される状態を有する、態様46~63のいずれかに記載の方法。
[態様66]前記頭痛または片頭痛が、前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、及び緊張性頭痛からなる群から選択される、態様65に記載の方法。
[態様67]前記抗体が、任意選択で態様1~31のいずれかに記載のヒト、ヒト化、もしくはキメラ化抗PACAP抗体または抗原結合性断片である、態様46~66のいずれかに記載の方法。
[態様68]前記投与抗体が結合するエピトープが、アラニン走査によって同定される、態様46~67のいずれかに記載の方法。
[態様69]前記抗PACAP抗体または抗原結合性断片が、Ab10またはAb20から選択される抗PACAP抗体の同じCDRを含む、態様67に記載の方法。
[態様70](a)化学療法薬、鎮痛薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、サイトカイン、抗増殖薬、制吐薬、または細胞毒素;(b)鎮痛薬;(c)非ステロイド系抗炎症薬(「NSAID」)、オピオイド鎮痛薬、別の抗体または非抗体生物薬、任意選択で、抗NGF抗体または抗原結合性断片;あるいは(d)シクロオキシゲナーゼ1及び/またはシクロオキシゲナーゼ2阻害薬から選択されるNSAIDなどの別の薬剤を別々に投与すること、または同時投与することをさらに含む、態様46~69のいずれかに記載の方法。
[態様71]前記他の薬剤が、抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(「CGRP」)抗体もしくは抗体断片及び/または抗CGRP受容体抗体もしくは抗体断片である、態様70に記載の方法。
[態様72]前記他の薬剤が、(a)(1)イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロシン、ジクロフェナク、及びケトプロフェンを包含するプロピオン酸誘導体;(2)トルメチン及びスリンダクを包含する酢酸誘導体;(3)メフェナム酸及びメクロフェナム酸を包含するフェナム酸誘導体;(4)ジフルニサル及びフルフェニサルを包含するビフェニルカルボン酸誘導体;ならびに(5)ピロキシム、スドキシカム、及びイソキシカムを包含するオキシカムからなる群から選択されるNSAID;(b)コデイン、ジヒドロコデイン、ジアセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、オキシモルホン、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、フェンタニール、スフェンタニル、メペリジン、メタドン、ナルブフィン、プロポキシフェン、ペンタゾシン、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択されるオピオイド鎮痛薬;(c)モルヒネもしくはモルヒネ誘導体またはそれらの薬学的に許容される塩である、態様70に記載の方法。
[態様73]前記オピオイド鎮痛薬及び前記抗PACAP抗体または抗原結合性断片の組合せ投与が、単独で投与される前記オピオイド鎮痛薬または前記抗PACAP抗体もしくは抗原結合性断片のいずれかと比較して、鎮痛効果を増大させる、態様72に記載の方法。
[態様74]前記対象が、抗CGRP抗体もしくは抗体断片及び/または抗CGRP受容体抗体もしくは抗体断片を以前に受けたことがあり、かつ任意選択で、前記対象が、抗CGRP抗体及び/または抗CGRP受容体抗体または抗体断片処置に十分に応答しなかった片頭痛患者であるか、または前記対象が、前記抗CGRP抗体もしくは抗体断片及び/または前記抗CGRP受容体抗体もしくは抗体断片に対する免疫応答を誘発したことがある、態様46~73のいずれかに記載の方法。
[態様75]血管拡張、cAMP産生、PLCに対するPACAPの作用を阻害して、Ca++及びPLDレベルまたはアデニル酸シクラーゼ活性を低下させる、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体もしくは抗体断片または方法。
[態様76]PAC1-R、VPAC1-R、またはVPAC2-Rのいずれかまたはすべてへのその結合に対する、PACAPの作用を阻害する、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体もしくは抗体断片または方法。
[態様77]神経発生、神経保護、神経調節、神経原性炎症、または侵害受容に対するPACAPの作用を阻害する、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体もしくは抗体断片または方法。
[態様78]例えば、少なくとも1つのグリコサミノグリカン(「GAG」)、例えばヘパリン、コンドロイチン、ケラチン、及びヒアルロン酸との相互作用を介しての、細胞表面とのPACAPの相互作用を調節する、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体もしくは抗体断片または方法。
[態様79]PACAP38及び/またはPACAP27の受容体非依存性細胞取り込みを遮断または阻害する、態様78に記載の抗体または抗体断片。
[態様80]細胞によるPACAP38及び/またはPACAP27のGAG依存性取り込みを阻害または遮断する、態様78~79のいずれかに記載の抗体または抗体断片。
[態様81]先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗体断片の投与を含む、治療または予防方法。
[態様82]先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体または抗体断片を含有する、ヒト治療において使用するための組成物。
[態様83]別の活性薬剤、例えば、(a)化学療法薬、鎮痛薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、サイトカイン、抗増殖薬、制吐薬、または細胞毒素;(b)鎮痛薬;(c)非ステロイド系抗炎症薬(「NSAID」)、オピオイド鎮痛薬、別の抗体または非抗体生物薬;(d)抗NGF抗体または抗体断片;(e)抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(「CGRP」)抗体もしくは抗体断片及び/または抗CGRP受容体抗体もしくは抗体断片;(f)シクロオキシゲナーゼ1及び/またはシクロオキシゲナーゼ2阻害薬から選択されるNSAID;(g)(1)イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロシン、ジクロフェナク、及びケトプロフェンを包含するプロピオン酸誘導体;(2)トルメチン及びスリンダクを包含する酢酸誘導体;(3)メフェナム酸及びメクロフェナム酸を包含するフェナム酸誘導体;(4)ジフルニサル及びフルフェニサルを包含するビフェニルカルボン酸誘導体;ならびに(5)ピロキシム、スドキシカム、及びイソキシカムを包含するオキシカムからなる群から選択されるNSAID;(h)コデイン、ジヒドロコデイン、ジアセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、オキシモルホン、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、フェンタニール、スフェンタニル、メペリジン、メタドン、ナルブフィン、プロポキシフェン、ペンタゾシン、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択されるオピオイド鎮痛薬;あるいは(i)モルヒネもしくはモルヒネ誘導体またはそれらの薬学的に許容される塩を含有する、態様82に記載の組成物。
[態様84]前記オピオイド鎮痛薬及び前記抗PACAP抗体または抗原結合性断片が、単独で投与される前記オピオイド鎮痛薬または前記抗PACAP抗体もしくは抗原結合性断片のいずれかと比較して、鎮痛効果を増大させる、態様83に記載の組成物。
[態様85]一緒に組み合わされているか、または組み合わせて投与される前記抗PACAP抗体または断片及び別の活性薬剤が、PACAP関連作用、例えば、片頭痛の処置もしくは予防に対して、または疼痛に対して相乗または相加効果を誘発する、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体もしくは断片またはそれらを含有する組成物。
[態様86]治療または診断、例えば、片頭痛の処置または予防における、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体もしくは断片または組成物の使用。
[態様87]ホットフラッシュ、前兆を伴う、もしくは伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、または緊張性頭痛の1つまたは複数の処置における、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体もしくは断片または組成物の使用。
[態様88]頭痛、例えば、前兆を伴う、もしくは伴わない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発性頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、または緊張性頭痛の寛解、制御、その発生率の低下、またはその発生もしくは進行の遅延における、先行態様のいずれかに記載の抗PACAP抗体もしくは断片または組成物の使用。
[態様89]抗CGRP抗体もしくは抗体断片及び/または抗CGRP受容体抗体もしくは抗体断片を以前に受けたことがあるか、または受けている対象において使用するためであり、任意選択で、前記対象が、抗CGRP抗体もしくは抗体断片及び/または抗CGRP受容体抗体もしくは抗体断片処置に十分には応答しなかった片頭痛患者であるか、または前記対象が、少なくとも1種の抗CGRP抗体もしくは抗体断片及び/または抗CGRP受容体抗体もしくは抗体断片投与を以前に受けたことがあり、かつ前記抗CGRP抗体もしくは抗体断片及び/または抗CGRP受容体抗体もしくは抗体断片に対する免疫応答を誘発したことがある、態様88に記載の使用。