JP2002510500A - 神経精神障害を診断および治療するための方法および組成物 - Google Patents

神経精神障害を診断および治療するための方法および組成物

Info

Publication number
JP2002510500A
JP2002510500A JP2000542473A JP2000542473A JP2002510500A JP 2002510500 A JP2002510500 A JP 2002510500A JP 2000542473 A JP2000542473 A JP 2000542473A JP 2000542473 A JP2000542473 A JP 2000542473A JP 2002510500 A JP2002510500 A JP 2002510500A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pacap
gene
protein
nucleic acid
gene product
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000542473A
Other languages
English (en)
Inventor
チェン,ホン
フレイマー,ネルソン,ビー.
Original Assignee
ミレニアム ファーマシューティカルズ インク.
リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ カリフォルニア
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ミレニアム ファーマシューティカルズ インク., リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ カリフォルニア filed Critical ミレニアム ファーマシューティカルズ インク.
Publication of JP2002510500A publication Critical patent/JP2002510500A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6876Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes
    • C12Q1/6883Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/575Hormones
    • C07K14/57563Vasoactive intestinal peptide [VIP]; Related peptides
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K2217/00Genetically modified animals
    • A01K2217/05Animals comprising random inserted nucleic acids (transgenic)
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q2600/00Oligonucleotides characterized by their use
    • C12Q2600/156Polymorphic or mutational markers
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2333/00Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature
    • G01N2333/435Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature from animals; from humans
    • G01N2333/575Hormones
    • G01N2333/5757Vasoactive intestinal peptide [VIP] or related peptides

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Vascular Medicine (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Endocrinology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 本発明は、哺乳動物のPACAP遺伝子に関する。本発明は、PACAPの発現をモジュレートする化合物を同定するための方法、およびPACAP障害の治療においてそのような化合物を治療薬として使用することに関する。本発明はまた、PACAP媒介型障害の診断的評価、遺伝的試験、および予後判定を行うための方法、ならびにこれらの障害を治療するための方法および組成物に関する。本発明はまた、神経精神障害の媒介に関与する染色体の領域を含めてヒト18番染色体の領域の微細構造マッピングを行うためのマーカーとしてのPACAP遺伝子および/または遺伝子産物の使用に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】1. 序論 本発明は、突然変異形態の下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(P
ACAP)遺伝子の発現によりまたは異常レベルのPACAP発現により媒介される神経精
神障害を治療するための薬剤スクリーニングアッセイならびに診断および治療方
法に関する。本発明は、双極性情動障害(BAD)などの神経精神障害の媒介に関与 する18番染色体の一領域において18番染色体の短腕とPACAP遺伝子を関連づけら れるという出願人の発見に基づくものである。従って、本発明は、神経精神障害
の媒介に関与するヒト18番染色体の一領域を含む該染色体の領域の微細構造マッ
ピングを行うためのマーカーとしてのPACAP遺伝子および/または該遺伝子産物 の使用に関する。本発明はまた、PACAPタンパク質/遺伝子の発現、合成、および
活性を調節する化合物を同定するための方法、ならびに、例えば治療薬として同
定されたような化合物を、PACAP媒介型障害および/または神経精神障害(例え ば、限定されるものではないが双極性情動障害)の治療において使用することに
関する。本発明はまた、PACAP媒介型障害の診断的評価、遺伝的検査、および予 後判定を行うための方法に関する。
【0002】2. 発明の背景 2.1. 神経精神障害 臨床的症状発現を神経系の構造および/または機能の明白な欠陥と関連付ける
ことのできる精神障害は、数種類存在するにすぎない。そのような障害の周知の
例としては、単一遺伝子の突然変異が原因であるとみなすことができ、線条体中
のニューロンが変性するハンティングトン舞踏病、および黒質線条体経路のドー
パミン作動性ニューロンが変性するパーキンソン病が挙げられる。しかしながら
、大多数の精神障害では、細胞および/または分子のレベルで神経系の構造およ
び機能に微妙なおよび/または検出不能な変化が起こっている可能性がある。こ
のように検出可能な神経系の欠陥が存在しないことにより、精神分裂症、注意欠
陥障害、分裂性情動障害、双極性情動障害、または一極性情動障害のような「神
経精神」障害と、解剖学的または生化学的病変が現れる神経系障害とが区別され
る。従って、これらの障害の症状を治すかまたは改善すべく臨床医が適切な治療
方針を評価および指示できるように、神経精神障害の原因となりうる欠陥および
神経精神障害の神経病変を同定することが必要である。
【0003】 最も一般的で荒廃した状態になる恐れのある神経精神障害の1つは、意気昂揚
(躁病)および抑鬱のエピソードにより特性付けられる双極性情緒障害(BP)または
躁鬱病としても知られる双極性情動障害(BAD)である(Goodwinら, 1990, Manic D
epressive Illness, Oxford University Press, New York)。最も重症で臨床的 に特徴的な形態のBADは、米国で2〜3百万人が罹患しているBP-I(重症双極性 情動(情緒)障害)、およびSAD-M(分裂性情動障害の躁病型)である。これらの障 害は、大鬱病的エピソード(睡眠、食事、および性的活動のような規則的行動の 障害を伴う意気消沈または抑鬱として定義付けられる)をもつかまたはもたない 少なくとも1回の十分な躁病的エピソードにより特性付けられる。BP-Iは、多く
の場合、より病因学的に異質な症候群、例えば、より広範な定義付けのなされた
表現型である一極性大鬱障害(MDD)のような一極性情動障害と共に、家系内で共 分離する(Freimer および Reus, 1992, The Molecular and Genetic Basis of N
eurological Disease, Rosenbergら編, Butterworths, New York中、pp. 951-96
5; Mclnnes および Freimer, 1995, Curr. Opin. Genet. Develop. 5, 376-381)
。BP-IおよびSAD-Mは、断面画像診断に基づいて互いに区別するのがしばしば困 難で、類似の臨床過程を辿り、家系の研究では一緒に分離する重症情緒障害であ
る(Rosenthalら, 1980, Arch. General Psychiat. 37, 804-810; Levinson およ
び Levitt, 1987, Am. J. Psychiat. 144, 415-426; Goodwinら, 1990, Manic D
epressive Illness, Oxford University Press, New York)。従って、苦しむ患 者を効果的に診断および治療すべく、このような神経精神障害を区別するための
方法が必要とされている。
【0004】 現在、患者個人のBADに対する判定は、典型的には、American Psychiatric As
sociation's Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM) の最新版に記載されている判定基準を用いて行われる。BADであると診断された 個体を治療するために、リチウム塩、カルバマゼピン、バルプロ酸などの多くの
薬剤が使用されてきたが、現在利用可能な薬剤の中には適切なものは存在しない
。例えば、薬剤による治療は、BP-Iであると診断された個体の約60〜70%に
有効であるにすぎない。更に、例えば、BP-Iに罹患している特定の個体に対して
、どの薬剤による治療が有効であるかを予測することは、現在のところ不可能で
ある。通常、診断にあたって、罹患者に対して、有効な薬剤が見出されるまで順
次1種ずつ薬剤が処方される。従って、極端に危険性の高い躁病的エピソードを
回避すること、および有効な治療法が見出されないと徐々に悪化する危険性など
のいくつかの理由で、有効な薬剤による治療を早期に指示することが極めて重要
である。
【0005】 BADに対する遺伝的要因が存在することは、分離比分析や双生児研究によって 強く支持される(Bertelson., 1977, Br. J. Psychiat. 130, 330-351; Freimer
および Reus, 1992, The Molecular and Genetic Basis of Neurological Disea
se, Rosenbergら編, Butterworths, New York中、pp. 951-965; Paulsら, 1992,
Arch. Gen. Psychiat. 49, 703-708)。BP-Iに関与する可能性のある遺伝子の染
色体位置を同定する努力がなされたが、次の点で期待はずれな結果に終わった。
すなわち、X染色体および11番染色体上のBP-Iとマーカーとが連鎖するという報 告は、そのもとの家系の再分析において独立して再現することも確認することも
できなかった。このことは、BAD連鎖研究において、単一遺伝子座でのロッドス コアは極めて大きいが、これは偽陽性であり得ることを示している(Baronら, 19
87, Nature 326, 289-292; Egelandら, 1987, Nature 325, 783-787; Kelsoeら,
1989, Nature 342, 238-243; Baronら, 1993, Nature Genet. 3, 49-55)。
【0006】 最近の研究では、BAD遺伝子が染色体18pおよび21q上に位置している可能性が あることが示唆されたが、いずれの場合においても、提案された候補領域は十分
に明確化されておらず、それぞれの位置に対する明瞭な裏付けは存在しない(Ber
rettiniら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 5918-5921; Murrayら, 199
4, Science 265, 2049-2054; Paulsら, 1995, Am. J. Hum. Genet. 57, 636-643
; Maierら, 1995, Psych. Res. 59, 7-15; Straubら, 1994, Nature Genet. 8,
291-296)。
【0007】 BADのように複数の遺伝子によって引き起こされると考えられる通常の疾患に 対する遺伝子のマッピングは、表現型の定義が典型的には不明瞭であるため、病
因学的な異質性が存在するため、および疾患形質の遺伝的伝達様式が不確定であ
るために、複雑になり得ると考えられる。神経精神障害の場合、変化した(affec
ted)遺伝子型を有する可能性のある個体と、遺伝的に変化していない個体とを区
別することには、更に大きな曖昧性が存在する。例えば、BADの罹患表現型は、 情緒障害の大まかにグループ分けした診断的分類(BP-I、SAD-M、MDD、および軽
躁病と大鬱病とを伴う双極性情動(情緒)障害(BP-II))を1つ以上含めることに より、定義付けが可能である。
【0008】 従って、精神医学の遺伝学者が直面する最大の問題点の1つは、表現型を規定
することの有効性が曖昧な点である。なぜなら、臨床的診断は、臨床所見および
被験者の報告のみに基づいているからである。また、神経精神障害などの複雑な
形質の場合、形質を引き起こす遺伝子を遺伝学的にマッピングすることは、次の
理由により、困難である。(1) 神経精神障害の表現型は、単一遺伝子座に起因す
る古典的なメンデルの劣性または優性遺伝パターンを示さない; (2) 不完全浸透
が存在する可能性がある、すなわち、素因対立遺伝子を受け継いだ個体に、疾患
が現れない可能性がある; (3) 表現型模写の現象を生じる可能性がある、すなわ
ち、素因対立遺伝子を受け継いでいない個体であっても、環境的または確率的要
因により疾患に罹る可能性がある; (4) 遺伝的異質性が存在する可能性があり、
この場合、いくつかの遺伝子のうちの任意の1つが突然変異を起こしても、同等
な表現型を呈する可能性がある。
【0009】 しかしながら、こうした困難な問題があるにもかかわらず、双極性情動障害な
どの神経精神障害の原因となりうる遺伝子および遺伝子産物の染色体位置、配列
ならびに機能を同定することは、罹患家系内の個人の遺伝相談、診断、および治
療を行う上で極めて重要である。
【0010】2.2. ヒト下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子(PACAP) PACAPは、もともと、下垂体前葉細胞培養においてアデニル酸シクラーゼを刺 激するその能力のためにウシ視床下部から単離された生物活性ポリペプチドであ
る(Miyataら, 1989, Biochem. Biophys. Res. Commun. 164, 567-574)。PACAPポ
リペプチドのアミノ末端ドメインは、血管作用性腸管ペプチド(VIP)に対して68%
の同一性を呈し、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ペプチドヒスチジンイソロ
イシンアミド(PHI)、セクレチン、およびグルカゴンに対する類似性はそれより も低い(Miyata,同上)。ヒトPACAP遺伝子(ADCYAP1としても知られる)は、単離お よび配列決定が行われており(GenBank(登録商標)受託番号X60435)、ヒトPACAP c
DNAとの比較により、そのイントロン/エキソン境界の構造が決定されている(Hos
oyaら, 1992, Biochim. Biophys. Acta 1129, 199-206)。
【0011】 更に、ヒト18番染色体を含有しているヒト-マウスハイブリッド体細胞系DNAを
用いたサザンブロットハイブリダイゼーションに基づいて、この遺伝子が18番染
色体に局在化されることが確認された(Hosoya,同上)。更にまた、放射性同位体i
n situハイブリダイゼーション法により、詳細にヒト染色体バンド18p11に特定 化された(Hosoya,同上)。Perez-JuradoおよびFrancke (1993, Human Molecular
Genetics 2, 827)は、ヒトPACAPの3'非翻訳領域におけるジヌクレオチドリピー トの多型性について報告している。W3440として知られているこのマーカーは、 連鎖不平衡分析で使用され、ヒトPACAPをコードする候補遺伝子間隔(candidate
genetic interval)を規定するのに重要である。ADCYAP1として知られているもう
1つのSTSマーカーは、ヒトPACAP遺伝子の3'非翻訳領域に位置する。このマーカ
ーは、18番染色体の物理的地図上での遺伝子位置を正確に規定するために使用さ
れた。
【0012】 発現研究から示唆されるように、PACAPは、概日時計の位置する視交差上核(SC
N)のVIPニューロンで終わる網膜神経節細胞中で合成される。更に、PACAP発現は
、ラットSCN中で概日周期を示し、明時間中は低レベルで起こり、暗時間中は高 レベルで起こり、連続的暗条件下では安定したレベルで起こる(Fukuharaら, 199
7, Neurosci. Lett. 229, 49-52)。また、PACAPは、自覚的日照時間(subjective
day)の終わり頃、SCN中でCREBのリン酸化を誘導し、メラトニンは、このPACAP 誘導リン酸化を抑制するとの報告もなされている(Koppら, 1997, Neurosci. Let
t. 227, 145-148)。これらの知見から示唆されるように、SCNにおけるPACAPの発
現レベルおよび/または活性は、照明条件により変化する可能性があり、また、
PACAP含有ニューロンは、概日周期を同調させる役割を担っている可能性がある 。
【0013】3. 発明の概要 本発明の目的は、神経精神障害に対する遺伝的根拠を同定すること、神経精神
障害を治療および診断する方法を提供すること、治療および/または診断方法の
一部として使用するための化合物を同定する方法を提供することである。
【0014】 本発明は更に、PACAP媒介型神経精神障害を治療するための方法であって、障 害の症状を改善すべく、哺乳動物PACAP遺伝子の発現および/または哺乳動物PAC
AP遺伝子産物の合成もしくは活性を調節する化合物を投与することを含んでなる
方法に関する。
【0015】 本発明は更に、PACAP遺伝子の突然変異により生じる哺乳動物PACAP媒介型神経
精神障害を治療するための方法であって、欠陥のないPACAP遺伝子産物を発現さ せて障害の症状を改善すべく、欠陥のないPACAP遺伝子産物をコードする核酸分 子を哺乳動物に供給することを含んでなる方法に関する。
【0016】 本発明は更に、PACAP遺伝子の突然変異により生じる哺乳動物PACAP媒介型神経
精神障害を治療するための方法であって、欠陥のないPACAP遺伝子産物を細胞に より発現させて障害の症状を改善すべく、欠陥のないPACAP遺伝子産物をコード する核酸分子を含有している細胞を哺乳動物に供給することを含んでなる方法に
関する。
【0017】 このほか、本発明は、PACAP媒介型神経精神障害の診断的評価、遺伝的検査、 および予後判定を行うべく、PACAP遺伝子および/または遺伝子産物の配列を利 用する方法を指向する。例えば、本発明は、PACAP媒介型神経精神障害を診断す るための方法であって、患者のサンプル中でPACAP遺伝子発現を測定するか、ま たはこのような障害を呈すると推測される哺乳動物のゲノム中でPACAP突然変異 を検出することを含んでなる方法に関する。
【0018】 更にまた、本発明は、哺乳動物PACAP遺伝子の発現および/または哺乳動物PAC
AP遺伝子産物の合成もしくは活性を調節しうる化合物を同定するための方法であ
って、化合物を、PACAP遺伝子を発現する細胞に接触させることと、PACAP遺伝子
発現、遺伝子産物発現、または遺伝子産物活性のレベルを測定することと、この
レベルを、化合物の不在下で該細胞により生じさせたPACAP遺伝子発現、遺伝子 産物発現、または遺伝子産物活性のレベルと比較して、化合物の存在下で得られ
たレベルがその不在下で得られたレベルと異なっていた場合、哺乳動物PACAP遺 伝子の発現および/または哺乳動物PACAP遺伝子産物の合成もしくは活性を調節 しうる化合物が同定されたとみなすことと、を含んでなる方法に関する。
【0019】 本発明は、部分的には、ヒト18番染色体の特定部分への、より詳細にはヒト18
番染色体の短腕の、テロメアとD185481との間への、PACAP遺伝子の遺伝的および
物理的マッピングに基づくものである。これについては以下の第6節の実施例で 説明する。従って、本発明はまた、ヒト18番染色体のこの領域の微細構造マッピ
ング用のマーカーとしてPACAP遺伝子および/または遺伝子産物を使用すること に関する。
【0020】 本明細書で言及するPACAP媒介型神経精神障害としては、限定されるものでは ないが、双極性情動障害、例えば、重症双極性情動(情緒)障害(BP-I)、軽躁病と
大鬱病とを伴う双極性情動(情緒)障害(BP-II)が挙げられる。
【0021】 本明細書中で使用されている「PACAP媒介型神経精神障害」という用語は、正 常で罹患していない欠陥のない個体で見出されるレベル、臨床的に正常な個体で
見出されるレベル、および/またはベースラインの平均的PACAPレベルを示す集 団に見出されるレベルと比較して、異常レベルのPACAP遺伝子発現、遺伝子産物 合成、および/または遺伝子産物活性を伴う障害を意味する。
【0022】3.1. 定義 本明細書中で使用する場合、次の用語は、記載の略号で表されるものとする。
【0023】 BAC:細菌人工染色体 BAD:双極性情動障害 BP:双極性情緒障害 BP-I:重症双極性情動(情緒)障害 BP-II:軽躁病と大鬱病とを伴う双極性情動(情緒)障害 bp:塩基対 EST:エクスプレスド・シークエンス・タグ lod:確率の対数 MDD:一極性大鬱障害 ROS:反応性酸素種 RT-PCR:逆転写酵素PCR SSCP:一本鎖高次構造多型 SAD-M:分裂性情動障害の躁病型 STS:短いタグ配列 YAC:酵母人工染色体4. 図面の簡単な説明 (図面の説明については下記参照)5. 発明の詳細な説明 本発明は、染色体18番の特定の狭い部分へのPACAP遺伝子の遺伝子的および物 理的マッピングに基づくものである。これについては、以下の第6節に提示され ている実施例中でも説明する。
【0024】 以下の分節に記載されている本発明には、PACAP媒介型神経精神障害を患って いる個体を治療するために使用できる化合物を同定するためのスクリーニング方
法(例えば、アッセイ)が包含される。本発明にはまた、小分子、大分子、および
抗体を含めて、PACAP遺伝子産物のアゴニストおよびアンタゴニスト、ならびにP
ACAP遺伝子発現を抑制するために使用できるヌクレオチド配列(例えば、アンチ センス分子およびリボザイム分子)、更には、PACAP遺伝子発現を促進するように
デザインされた遺伝子もしくは調節配列置換構築物(例えば、PACAP遺伝子を強 力プロモーター系の制御下に置く発現構築物)が包含される。
【0025】 特に、PACAP遺伝子産物と相互作用する化合物、例えば、PACAPの活性を調節す
るおよび/またはPACAP遺伝子産物に結合する化合物を同定するために使用でき る細胞性および非細胞性アッセイについて説明する。本発明のこうした細胞に基
づくアッセイでは、PACAP遺伝子産物を発現する細胞、細胞系、または遺伝子工 学的に操作された細胞もしくは細胞系が利用される。
【0026】 本発明にはまた、細胞に基づくアッセイまたは細胞溶解物アッセイ(例えば、i
n vitro転写または翻訳アッセイ)を用いて、PACAP遺伝子発現を調節する化合物 または組成物をスクリーニングすることが包含される。この目的では、PACAP遺 伝子の調節エレメントに連結されたリポーター配列を含んでなる構築物を、遺伝
子工学的に操作された細胞中または細胞溶解物の抽出物中で使用して、転写レベ
ルでリポーター遺伝子産物の発現を調節する化合物のスクリーニングを行うこと
ができる。例えば、このようなアッセイを用いれば、PACAP遺伝子発現に関与す る転写因子の発現または活性を調節する化合物を同定したり、3重鎖ヘリックス ポリヌクレオチドの活性をテストしたりすることができる。このほか、遺伝子工
学的に操作された細胞または翻訳抽出物を用いて、PACAP mRNA転写産物の翻訳を
調節してそれ故にPACAP遺伝子産物の発現に影響を及ぼす化合物(アンチセンスお
よびリボザイム構築物を含む)をスクリーニングできる。
【0027】 本発明にはまた、細胞に基づくものではないスクリーニングアッセイに使用す
るための、抗体の生成に使用するための、診断および治療を行うための、PACAP 遺伝子産物、ポリペプチド(可溶性PACAPポリペプチドまたはペプチドを含む)、 およびPACAP融合タンパク質が包含される。かかるペプチドまたはポリペプチド を、異種タンパク質、例えば、リポーター、Ig Fc領域などに融合させ、融合タ ンパク質を作製できる。このようなペプチド、ポリペプチド、および融合タンパ
ク質を、細胞に基づくものではないアッセイで用いて、PACAP遺伝子産物と相互 作用する化合物、例えば、PACAP遺伝子産物の活性を調節するおよび/またはPAC
AP遺伝子産物に結合する化合物を同定できる。
【0028】 PACAP遺伝子産物を用いることにより、PACAP媒介型障害を治療できる。このよ
うなPACAP遺伝子産物としては、限定されるものではないが、PACAP遺伝子産物の
1以上のドメインに対応するペプチドやポリペプチド等の可溶性誘導体が挙げら れる。このほか、PACAP遺伝子産物(Fab断片を含む) を模倣するPACAPタンパク質
に対する抗体もしくは抗イディオタイプ抗体、アンタゴニスト、またはアゴニス
トを用いることにより、PACAPの関与する神経精神障害を治療することができる 。更にもう1つの手法では、このようなPACAP遺伝子産物をコードするヌクレオ チド構築物を用いることにより、このようなPACAP遺伝子産物をin vivoで発現さ
せるように宿主細胞に遺伝子工学的操作を行うことができる。遺伝子工学的に操
作されたこれらの細胞は、体内で、PACAP遺伝子産物、PACAPペプチド、可溶性PA
CAPポリペプチドの連続的供給を送達する「バイオリアクター」として機能し得 る。
【0029】 このほか、本発明は、PACAP媒介型障害の診断的評価および予後判定を行うた めの方法を提供する。例えば、PACAPをコードする核酸分子は、診断ハイブリダ イゼーションプローブとして、またはPACAP遺伝子突然変異、対立遺伝子変異、 およびPACAP遺伝子の調節欠陥の同定を行うための診断PCR分析用プライマーとし
て使用できる。
【0030】 PACAP遺伝子発現および/または活性の調節を行う「遺伝子治療」法は、本発 明の範囲内に含まれる。例えば、機能的PACAP遺伝子、突然変異PACAP遺伝子、な
らびにアンチセンス分子およびリボザイム分子をコードするヌクレオチド構築物
を用いることにより、PACAP遺伝子発現を調節できる。
【0031】 本発明にはまた、PACAP遺伝子の関与した障害を治療するための医薬製剤およ び方法が包含される。本発明は、PACAP媒介型障害を有する個体に投与するのに 有効な薬剤を選択するための方法を提供する。このような方法は、治療薬の安全
性および効力に影響を及ぼし得る、改変されたメチル化、ディファレンシャルス
ピニング(differential spinning)、またはPACAP遺伝子産物の形質導入後改変に
より、PACAP遺伝子の遺伝子多型性またはPACAP遺伝子発現の変動を検出すること
に基づくものである。
【0032】5.1. PACAP遺伝子 図1中に開示されているPACAP遺伝子配列に関して、そのような配列は、例えば
、BAC54(Identification Reference EpHS996, ATCC受託番号第98363号)に対して
標準的な配列決定および細菌性人工染色体(BAC)技術を利用することにより、容 易に得られる。
【0033】 例えば、剪断ライブラリーは、BAC54から作製できる。好都合なサイズの断片 、例えば、約1kbのサイズ範囲の断片を標準的プラスミド中にクローン化し、配 列決定を行う。次に、更なるPACAP配列は、図1に示されているPACAP配列とBAC 配列とのアライメントを行うことにより、容易に同定できる。このほか、他のPA
CAP配列を含むBACサブクローンの同定は、図1に示されているPACAP配列から誘導
されたプローブにハイブリダイズするこれらのサブクローンを同定することによ
って行い得る。
【0034】 ヒトPACAP遺伝子の対立遺伝子変異体および他の種(例えば、マウス)に由来す る相同体のクローニングに関して、本明細書中に開示されている単離されたPACA
P遺伝子配列を標識化して使用することにより、目的の生物(例えば、マウス)に 由来する適切な細胞または組織(例えば、脳組織)より得られたmRNAから構築され
たcDNAライブラリーのスクリーニングを行うことができる。使用するハイブリダ
イゼーション条件は、cDNAライブラリーが、標識化された配列をもたらした生物
のタイプと異なる生物に由来するものである場合、ストリンジェンシーをより低
くしなければならない。
【0035】 このほか、標識化された断片を用いて、目的の生物に由来するゲノムライブラ
リーをスクリーニングすることもできる。この場合にも適度にストリンジェント
な条件を使用する。低ストリンジェンシー条件は、当業者に公知であり、ライブ
ラリーや標識化配列の生成に用いられた特定の生物に依存して、予測し得るよう
に変化する。このような条件については、例えば、Sambrookら、1989, Molecula
r Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Press
, N.Y.; および Ausubelら、1989, Current Protocols in Molecular Biology,
Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.を参照されたい。
【0036】 更に、PACAP遺伝子の対立遺伝子変異体は、本明細書中に開示されているPACAP
遺伝子産物内のアミノ酸配列に基づいてデザインされた2つの縮重オリゴヌクレ オチドプライマープールを用いてPCRを行うことにより、例えば、ヒト核酸から 単離し得る。反応に使用する鋳型は、例えば、PACAP遺伝子の対立遺伝子を発現 させることが知られているかまたは発現させる可能性のあるヒトまたは非ヒト細
胞系または組織から調製されたmRNAの逆転写によって得られたcDNAであってよい
(例えば、Dolnickら、1996, Cancer Research 56, 1207-3260; Dolnickら、 199
3, Nucleic Acids Res., 21, 1747-1752; Blackら、1996, Cancer Res. 56, 700
-705などに記載されているK562 B1A、H630、およびH630-1などのヒト白血病細胞
系)。好ましくは、対立遺伝子変異体は、PACAP媒介型神経精神障害を有する個体
から単離されるであろう。
【0037】 PCR産物をサブクローン化して配列決定することにより、増幅された配列がPAC
AP遺伝子の核酸配列からなる配列であることを確認できる。次に、PCR断片を用 いて、様々な方法で全長cDNAクローンを単離し得る。例えば、増幅された断片を
標識化して使用することにより、バクテリオファージcDNAライブラリーをスクリ
ーニングできる。このほか、標識化された断片を用いて、ゲノムライブラリーの
スクリーニングを介してゲノムクローンを単離し得る。
【0038】 また、全長cDNA配列を単離するために、PCR法を利用し得る。例えば、適切な 細胞または組織の供給源(すなわち、PACAP遺伝子を発現させることが知られてい
るかまたは発現させる可能性のある供給源、例えば、生検もしくは検死で得られ
る脳組織サンプルなど)から、標準的な手順に従って、RNAを単離し得る。第1の
鎖の合成をプライムするために、増幅された断片の最も5'側の末端に特異的なオ
リゴヌクレオチドプライマーを用いて、RNAに対して逆転写反応を行うことが可 能である。次に、こうして得られたRNA/DNAハイブリッドに、標準的な末端基転 移酵素反応を用いてグアニンを「末端付加」させ得るものであり、RNAse Hでハ イブリッドを消化させ得るものであり、次に、ポリ-Cプライマーで第2の鎖の合
成をプライムできる。このように、増幅された断片の上流のcDNA配列を容易に単
離できる。使用可能なクローニング手順に関する総説については、例えば、上記
のSambrookら、1989を参照されたい。
【0039】 上述したように、PACAP遺伝子配列を用いて、好ましくはヒト被験者から、PAC
AP遺伝子の突然変異対立遺伝子を単離し得る。このような突然変異対立遺伝子は
、PACAP媒介型障害の症状に寄与する遺伝子型を有することが知られているかま たは有する可能性のある個体から単離し得る。次に、下記の治療システムおよび
診断システムにおいて、突然変異対立遺伝子および突然変異対立遺伝子産物を利
用し得る。このほか、このようなPACAP遺伝子配列を、PACAP媒介型障害に関連付
けられ得るPACAP遺伝子調節(例えば、プロモーター)欠陥を検出するために使用 し得る。
【0040】 PACAP遺伝子の突然変異対立遺伝子変異体のcDNAは、例えば、当業者に公知の 手法であるPCRを用いて単離し得る。この場合、第1のcDNA鎖は、突然変異PACAP
対立遺伝子を有すると推定される個体で発現されることが知られているかまたは
発現させる可能性のある組織から単離されたmRNAにoligo-dTオリゴヌクレオチド
をハイブリダイズさせ、そして逆転写酵素で新しい鎖を伸長させることによって
合成できる。次に、正常遺伝子の5'末端に特異的にハイブリダイズするオリゴヌ
クレオチドを用いて、cDNAの第2の鎖を合成する。続いて、これらの2つのプライ
マーを用いて、当業者に公知の方法に従って、PCRにより産物を増幅し、好適な ベクター中にクローン化し、DNA配列分析に付す。突然変異PACAP対立遺伝子のDN
A配列を正常PACAP対立遺伝子のものと比較することによって、突然変異PACAP遺 伝子産物の機能の消失または改変の原因となる突然変異を確定できる。
【0041】 このほか、突然変異PACAP対立遺伝子を有する可能性があるかまたは有するこ とが知られている個体から得られたDNAを用いて、ゲノムライブラリーを構築で き、あるいは突然変異PACAP対立遺伝子を発現させることが知られているかまた は発現させる可能性のある組織に由来するRNAを用いて、cDNAライブラリーを構 築できる。次に、そのようなライブラリー中の対応する突然変異PACAP対立遺伝 子を同定するために、欠陥のないPACAP遺伝子またはその任意の好適な断片を標 識化してプローブとして用い得る。次に、当業者に公知の方法に従って、突然変
異PACAP遺伝子配列を含むクローンを精製して配列分析に付すことができる。
【0042】 更に、例えば、突然変異PACAP対立遺伝子を有する可能性があるかまたは有す ることが知られている個体中でこのような突然変異対立遺伝子を発現させること
が知られているかまたは発現させる可能性のある組織から単離されたRNAから合 成されたcDNAを用いて、発現ライブラリーを構築できる。このように、突然変異
を起こしていると推定される組織によって産生される遺伝子産物を発現させて、
以下の第5.3.節に記載されているように、正常PACAP遺伝子産物に対して産生さ れた抗体と組み合わせて、標準的な抗体スクリーニング法によりスクリーニング
できる(スクリーニング法については、例えば、HarlowおよびLane, eds., 1988,
"Antibodies: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Press, Cold Sprin
g Harbor, New Yorkを参照されたい)。
【0043】 PACAP突然変異の結果として、改変された機能を有する遺伝子産物が発現され た場合(例えば、ミスセンス突然変異またはフレームシフト突然変異の結果とし て)、抗PACAP遺伝子産物抗体のポリクロナールセットは、突然変異PACAP遺伝子 産物と交差反応する可能性がある。このような標識化抗体との反応により検出さ
れたライブラリークローンは、当業者に公知の方法に従って、精製して配列分析
に付すことができる。
【0044】 更に、PACAP突然変異は、PCR増幅法を用いても検出できる。プロモーター領域
を含むPACAP配列全体のオーバラップ領域を増幅すべく、日常的な手法でプライ マーをデザインできる。1実施形態では、エキソン-イントロン境界をカバーする
ようにプライマーをデザインし、それにより、コード領域の突然変異をスキャン
できるようにする(図2A〜2Uを参照されたい)。種々のPACAPエキソンを分析する ためのいくつかのプライマーが実施例中に提供されている。
【0045】 正常な個体および罹患した個体のリンパ球から単離されたゲノムDNAを、PCR用
の鋳型として使用する。1本鎖高次構造多型性(SSCP)突然変異検出法および/ま たは配列決定法により、正常な個体および罹患した個体に由来するPCR産物を比 較する。続いて、突然変異PACAP遺伝子産物の機能の消失または改変の原因とな る突然変異を確定できる。
【0046】5.2. PACAP遺伝子のタンパク質産物 PACAP遺伝子産物またはそのペプチド断片は、種々の用途のために調製できる 。例えば、抗体を生成させるために、診断アッセイにおいて、またはPACAP媒介 型障害の調節に関与する他の細胞性遺伝子産物または細胞外遺伝子産物を同定す
るために、PACAP遺伝子産物またはそのペプチド断片を使用できる。
【0047】 図1に記載のアミノ酸配列は、PACAP遺伝子産物を表している。PACAP遺伝子産
物は、本明細書中では「PACAPタンパク質」とも記されており、具体的には、図 1に記載のPACAP遺伝子配列、および本明細書中に記載の方法により同定し得るP
ACAPの他のヒト対立遺伝子変異体によってコードされている遺伝子産物が挙げら
れる。
【0048】 このほか、PACAP遺伝子産物としては、機能上同等な遺伝子産物を提示するタ ンパク質が挙げられる。このような同等なPACAP遺伝子産物には、欠失(内部欠 失など)、付加(融合タンパク質を生じる付加など)、または上記の第5.1節で 説明したPACAP遺伝子配列によってコードされたアミノ酸配列の内部および/ま たは隣接部のアミノ酸残基の置換が含まれ得るが、ただし、こうした変化が機能
上同等なPACAP遺伝子産物をもたらすという意味で「サイレント」変化でなけれ ばならない。アミノ酸置換は、関与する残基の極性、荷電、溶解性、疎水性、親
水性、および/または両親媒性の類似性に基づいて行い得る。例えば、非極性( 疎水性)のアミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プ ロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが挙げられ、極
性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシ
ン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられ、正荷電(塩基性)のアミノ酸と
しては、アルギニン、リシン、およびヒスチジンが挙げられ、負荷電(酸性)のア
ミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
【0049】 このほか、機能の改変が望まれる場合、縮小されたPACAP遺伝子産物を含めて 、改変されたPACAP遺伝子産物が得られるように、欠失または非保存的改変の操 作を行い得る。このような改変を行うことにより、例えば、PACAP遺伝子産物の 生物学的機能の1つ以上を変化させ得る。更に、選択された宿主細胞中において 、発現、スケールアップなどに一層適したPACAP遺伝子産物を生成すべく、この ような改変を選択できる。例えば、ジスルフィド結合をなくすために、システイ
ン残基を除去するかまたはシステイン残基を別のアミノ酸残基で置換できる。
【0050】 PACAP遺伝子産物、そのペプチド断片、およびその融合タンパク質は、当技術 分野で公知の技法を用いた組換えDNA技術によって作製できる。従って、本明細 書中には、PACAP遺伝子配列を含有する核酸を発現させることによって本発明のP
ACAP遺伝子産物、ポリペプチド、ペプチド、融合ペプチドおよび融合ポリペプチ
ドを調製するための方法が記載されている。当業者に公知の方法を用いて、PACA
P遺伝子産物コード配列ならびに適切な転写および翻訳制御シグナルを含有する 発現ベクターを構築できる。こうした方法としては、例えば、in vitro組換えDN
A法、合成法、およびin vivo遺伝子組換えが挙げられる。例えば、上記のSambro
okら、1989および上記のAusubelら、1989に記載の方法を参照されたい。このほ か、PACAP遺伝子産物配列をコードしうるRNAはまた、例えば、合成機を用いて化
学的に合成し得る。例えば、"Oligonucleotide Synthesis", 1984, Gait, ed.,
IRL Press, Oxfordに記載の方法を参照されたい。
【0051】 本発明のPACAP遺伝子産物コード配列を発現させるために、種々の宿主-発現ベ
クター系を利用できる。このような宿主-発現ベクター系は、目的のコード配列 の産生およびそれに続く精製を可能にする媒体を意味するものであってもよいし
、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトした場合に
本発明のPACAP遺伝子産物をin situで提示する細胞を意味するものであってもよ
い。このような例としては、限定されるものではないが、組換えバクテリオファ
ージDNA、PACAP遺伝子産物コード配列を含有するプラスミドDNAまたはコスミドD
NA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、E. coli、B. subtilis)などの微
生物、PACAP遺伝子産物コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転 換された酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia)、PACAP遺伝子産物コード配列を
含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染させた
昆虫細胞系、PACAP遺伝子産物コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクタ ー(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV; タバコモザイクウイルス、T
MV)で感染させたかまたはPACAP遺伝子産物コード配列を含有する組換えプラスミ
ド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系、あるいは
哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロ モーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイ
ルス後期プロモーター; ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換 え発現構築物を内蔵する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3)が 挙げられる。
【0052】 細菌系では、PACAP遺伝子産物を発現させる用途に応じて、いくつかの発現ベ クターを有利に選択できる。例えば、PACAP遺伝子産物の医薬組成物を作製する ために、またはPACAP遺伝子産物に対する抗体を産生するために、このようなタ ンパク質を大量に産生させる必要がある場合、例えば、容易に精製される融合タ
ンパク質産物を高いレベルで発現させるように指令するベクターが望ましいであ
ろう。このようなベクターとしては、限定されるものではないが、融合タンパク
質が産生されるように、インフレームでlac Zコード領域と共にPACAP遺伝子産物
コード配列を個別にベクター中に連結させうるE. coli発現ベクターpUR278(Ruth
erら、1983, EMBO J. 2, 1791); pINベクター (InouyeおよびInouye, 1985, Nuc
leic Acids Res. 13, 3101-3109; Van HeekeおよびSchuster, 1989, J. Biol. C
hem. 264, 5503-5509)などが挙げられる。また、グルタチオンS-トランスフェラ
ーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるために、pGE
Xベクターを使用し得る。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、 グルタチオン-アガロースビーズに吸着させてから遊離グルタチオンの存在下で 溶出させることによって、溶解細胞から容易に精製できる。GST部分からクロー ン化標的遺伝子産物を放出できるように、トロンビンまたはXa因子プロテアーゼ
開裂部位を含有させるべく、pGEXベクターがデザインされる。
【0053】 昆虫系において、Autographa Californica、すなわち、核多角体病ウイルス(
AcNPV)を、外来遺伝子を発現するベクターとして使用した。このウイルスは、S
podoptera frugiperda細胞中で増殖する。PACAP遺伝子産物コード配列を、ウイ ルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)中に個別にクローニングし、
AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くこと ができる。PACAP遺伝子産物コード配列を好適に挿入することにより、ポリヘド リン遺伝子の不活性化、ならびに非閉塞(non-occluded)組換えウイルス(すなわ
ち、ポリヘドリン遺伝子によりコードされたタンパク様コートがないウイルス)
の産生が起こる。次に、これらの組換え体ウイルスを用いて、挿入した遺伝子を
発現するSpodoptera frugiperdaを感染させる(例えば、Smithら、1983、J. Vir
ol. 46、584;Smith、米国特許第4,215,051号を参照)。
【0054】 哺乳動物の宿主細胞には、様々なウイルスに基づく発現系を使用することがで
きる。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合には、関心のあるPACAP 遺伝子産物コード配列を、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期
プロモーターおよび三部分リーダー配列に連結させる。次に、このキメラ遺伝子
をアデノウイルスゲノムに、in vitroまたはin vivo組換えにより挿入する。ウ イルスゲノムの非必須領域(例えば、E1またはE3領域)への挿入により、組換え
ウイルスが生じ、このウイルスは、感染した宿主中でPACAP遺伝子産物を発現す ることができる(例えば、LoganおよびShenk、1984、Proc. Natl. Acad. Sci. U
SA 81、3655〜3659を参照)。また、挿入したPACAP遺伝子産物コード配列の効率
的な翻訳のためには、特異的開始シグナルが必要である。これらのシグナルには
、ATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。全PACAP遺伝子(それ自身の開始コ
ドンおよび隣接配列を含む)を、適切な発現ベクターに挿入する場合には、追加
の翻訳制御シグナルは必要ない。しかし、PACAP遺伝子産物コード配列の一部だ けを挿入する場合には、外来翻訳制御シグナル(恐らく、ATG開始コドンを含む )を供給しなければならない。さらに、開始コドンは、全インサートの翻訳を確
実にするために、所望のコード配列の読み枠を有する状態になければならない。
これらの外来翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成双方の多様
な起原のものでよい。適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター
等を組み込むことにより、発現の効率を高めることができる(例えば、Bittner ら、1987、Methods in Enzymol. 153、516〜544を参照)。
【0055】 さらに、挿入した配列の発現を調節するか、あるいは、遺伝子産物を、所望の
特異的方式で、修飾および処理する宿主細胞株を選択することもできる。このよ
うなタンパク質産物の修飾(例えば、グリコシル化)および処理(例えば、切断
)は、タンパク質の機能にとって重要な場合がある。様々な宿主細胞が、タンパ
ク質および遺伝子産物の翻訳後の処理および修飾のための独特かつ特異的な機構
を有する。適した細胞系または宿主系を選択して、発現させた外来タンパク質の
正確な修飾および処理を確実にすることができる。このために、一次転写産物の
適切な処理、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞機構を有す
る真核宿主細胞を使用することができる。このような哺乳動物宿主細胞としては
、限定しないが、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3およびWI38が挙 げられる。
【0056】 組換えタンパク質を、長期にわたり、高収率で生成するためには、安定した発
現が好ましい。例えば、PACAP遺伝子産物を安定して発現する細胞系を遺伝子操 作することができる。ウイルスの複製開始点を有する発現ベクターを使用するの
ではなく、適した発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、
配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)や、選択可能なマーカーに
より制御されたDNAで、宿主細胞を形質転換させてもよい。外来DNAを導入
した後、富化培地で、1〜2日間、操作細胞を増殖させてから、選択性培地に移
すことができる。組換えプラスミド中の選択可能なマーカーは、選択に耐性を賦
与し、細胞が、プラスミドを該細胞の染色体に安定して組み込み、増殖させて、
フォーカスを形成するのを可能にする。次に、これらフォーカスを細胞系にクロ
ーニングし、増殖させることができる。この方法を用いて、PACAP遺伝子産物を 発現する細胞系を操作すれば有利である。このような操作細胞系は、特に、PACA
P遺伝子産物の内在活性に作用する化合物のスクリーニングおよび評価に有用で ある。
【0057】 様々な選択系を使用することができ、これらには、限定しないが、単純ヘルペ
スウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、1997、Cell 11,223)、ヒポキサンチ
ンーグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(SzybalskaおよびSzybalski、
1962、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48、2026)、ならびに、アデニンホスホリ ボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、1980、Cell 22、817)が含まれ、遺伝子は
、それぞれ、tk-、hgprt-またはaprt-細胞で、用いることができる。また、抗代
謝産物耐性を、次の遺伝子の選択基準として用いてもよい:メトトレキセートに
耐性を賦与するdhfr(Wiglerら、1980、Natl. Acad.Sci. USA 77、3567;O'Hare
ら、1981、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78、1527);マイコフェノール酸に耐 性を賦与するgpt(MullinganおよびBerg、1981、Proc. Natl.Acad. Sci. USA 78
、2072);アミノグリコシドG-418に耐性を賦与するneo(Colberre-Garapinら、
1981、J. Mol. Biol. 150、1);ならびに、ヒグロマイシンに耐性を賦与するh
ygro(Santerreら、1984、Gene 30、147)。
【0058】 あるいは、発現させる融合タンパク質に対して特異的な抗体を使用して、融合
タンパク質を容易に精製することができる。例えば、Janknechtらが記載した系 は、ヒトの細胞系に発現した非変性融合タンパク質の容易な精製を可能にする(
Janknechtら、1991、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88、8972〜8976)。この系で
は、関心のある遺伝子をワクシニア組換えプラスミドにサブクローニングするが
、このとき、遺伝子のオープンリーディングフレームが、6つのヒスチジン残基
から成るアミノ末端タグに、翻訳により融合するようにする。組換えワクシニア
ウイルスに感染した細胞からの抽出物をNi2+ニトリロ酢酸−アガロースカラム
に載せ、イミダゾール含有バッファーを用いて、ヒスチジン標識タンパク質を選
択的に溶離する。
【0059】 また、PACAP遺伝子産物を、トランスジェニック動物で発現させることもでき る。限定しないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、マイクロピッ
グ(micro-pig)、ヤギ、ヒツジ、ならびにヒト以外の霊長類、例えば、ヒヒ、 サル、チンパンジー等のあらゆる種の動物を用いて、PACAPトランスジェニック 動物を作ることができる。本明細書で用いる「トランスジェニック」という用語
は、異なる種由来のPACAP遺伝子配列を発現する動物(例えば、ヒトPACAP遺伝子
配列を発現するマウス)、さらには、内因性(すなわち、同じ種の)PACAP配列 を過剰発現するように遺伝子操作した動物、もしくは、内在性PACAP遺伝子配列 を発現しないように遺伝子操作した動物(すなわち、「ノックアウト」動物)お
よびその子孫を意味する。
【0060】 当業者には公知の方法を使用して、PACAP遺伝子トランスジーンを動物に導入 することにより、トランスジェニック動物の創始系を作ることができる。このよ
うな技法としては、限定しないが、前核微量注入(HoppeおよびWagner、1989、 米国特許第4,873,191号);生殖系列へのレトロウイルス媒介遺伝子導入(Van d
er Puttenら、1985、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82、6148〜6152);胚性幹細
胞における遺伝子ターゲッティング(Thompsonら、1989、Cell 56、313〜321) ;胚の電気穿孔法(Lo、1983、Mol. Cell.Biol. 3、1803〜1814);ならびに精
子媒介遺伝子導入(Lavitranoら、1989、Cell 57、717〜723)(このような技法
を検討するためには、Gordon、1989、トランスジェニック動物、Intl. Rev. Cyt
ol. 115、171〜229を参照のこと)等が挙げられる。
【0061】 当業者には公知の方法を用いて、PACAPトランスジーンを含むトランスジェニ ック動物のクローンを作製することも可能である。このような技法として、例え
ば、除核した卵母細胞への、休止期を誘導した培養胚、胎児または成体細胞由来
の核移植がある。(Campbellら、1996、Nature 380、64〜66;Wilmutら、Nature
385、810〜813)。
【0062】 本発明は、全細胞にPACAPトランスジーンを担持するトランスジェニック動物 、ならびに、全部ではないが、一部の細胞にトランスジーンを担持する動物、す
なわち、モザイク動物を提供する。トランスジーンは、単一のトランスジーンと
して組み込まれていてもよいし、あるいは、コンカテマー(例えば、頭−頭タン
デムまたは頭−尾タンデム)の形態をしていてもよい。また、トランスジーンは
、例えば、Laskoらの記載(Laskoら、1992、Proc. Natl. Acad.Sci. USA 89、623
2〜6236)に従い、特定の細胞タイプに選択的に導入し、活性化させることもで きる。このような細胞タイプ特異的活性化に必要な調節配列は、関心のある特定
の細胞タイプによって異なり、当業者には、明らかであろう。PACAPトランスジ ーンを、内因性PACAP遺伝子の染色体部位に組み込みたい場合には、遺伝子ター ゲッティングが好ましい。簡単に言えば、このような技法を利用する際、内因性
PACAP遺伝子と相同なヌクレオチド配列をいくつか含むベクターを設計し、染色 体配列との相同的組換えによって、このベクターを組み込み、内因性PACAP遺伝 子のヌクレオチド配列機能を破壊するようにする。また、例えば、Guらの記載(
Guら、1994、Science 265、103〜106)に従い、トランスジーンを特定の細胞タ イプに導入し、この細胞タイプだけの内因性PACAP遺伝子を不活性化することも 可能である。このような細胞タイプ特異的不活性化に必要な調節配列は、関心の
ある特定の細胞タイプによって異なり、当業者には明らかであろう。
【0063】 トランスジェニック動物を作製したら、標準的方法を用いて、組換えPACAP遺 伝子の発現を検定することができる。初期スクリーニングは、サザンブロット分
析もしくはPCR方法により実施し、動物の組織を分析して、トランスジーンの
組込みが起こったかどうかを検定する。また、限定しないが、動物から採取した
組織サンプルのノーザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション分析、 およびRT-PCR(逆転写酵素PCR)等の方法を用いて、トランスジェニック動物の 組織におけるトランスジーンのmRNA発現のレベルを評価することもできる。
さらに、PACAPトランスジーン産物に特異的な抗体を用いて、PACAP遺伝子発現組
織のサンプルを免疫細胞化学的に評価することも可能である。
【0064】5.3.PACAP遺伝子産物に対する抗体 本明細書に、1つ以上のPACAP遺伝子産物エピトープ、もしくは、PACAP遺伝子
産物の保存的変異体またはペプチドフラグメントのエピトープを特異的に認識す
ることができる抗体の作製方法を説明する。さらに、本発明の範囲には、PACAP の突然変異体形態を特異的に認識する抗体も含まれる。
【0065】 このような抗体としては、限定しないが、ポリクローナル抗体、モノクローナ
ル抗体(mAbs)、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(a
b')2フラグメント、Fab発現ライブラリーにより産生されたフラグメント、抗イ ディオタイプ(抗Id)抗体、ならびに、これらのうちいずれかのエピトープ結合
フラグメントが挙げられる。このような抗体は、例えば、生体サンプルにおける
PACAP遺伝子産物の検出に使用することができる。従って、これらの抗体を、診 断または予後法の一環として使用することにより、PACAP遺伝子産物の異常レベ ル、および/または該遺伝子産物の異常形態の存在について、患者を検査するこ
とができる。また、これらの抗体を、例えば、後の第5.8節で説明する化合物
スクリーニング法と組み合わせて使用し、PACAP遺伝子産物レベルおよび/また は活性に対する試験化合物の作用を評価することもできる。さらに、これらの抗
体を、後の第5.9.2節で説明する遺伝子治療法と組み合わせて用いることに
より、例えば、患者への導入前の正常細胞および/または操作したPACAP発現細 胞を評価することも可能である。
【0066】 上記の他にも、抗PACAP遺伝子産物抗体は、異常PACAP遺伝子産物活性を抑制す
る方法において使用してもよい。従って、これらの抗体は、PACAP媒介型障害の 治療法の一環として用いることができる。
【0067】 PACAP遺伝子産物に対する抗体を産生するため、PACAP遺伝子産物、もしくはそ
の一部を注射することにより、様々な宿主動物を免疫感作してもよい。このよう
な宿主動物としては、限定しないが、ウサギ、マウス、ラット等があるが、これ
らはほんの一例に過ぎない。宿主の種に応じて、免疫応答を高めるために、様々
なアジュバントを用いることができる。このようなアジュバントとして、限定し
ないが、フロイントアジュバント(完全および不完全)、水酸化アルミニウム等
の無機ゲル、リゾレシチン等の界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリア
ニオン、ペプチド、オイルエマルション、キーホールリンペットヘモシアニン(
スカシガイのヘモシアニン)、ジニトロフェノール、ならびに、BCG(カルメッ トゲラン菌)やCorynebacterium parvum等の潜在的に有用なヒトアジュバントが
ある。
【0068】 ポリクローナル抗体は、PACAP遺伝子産物等の抗原、もしくは、その抗原機能 誘導体で免疫感作した動物の血清に由来する抗体分子の不均質集団である。ポリ
クローナル抗体を産生するため、前述した宿主動物を、やはり前述のアジュバン
トで補足したPACAP遺伝子産物の注射により、免疫感作することができる。
【0069】 モノクローナル抗体は、特定抗原に対する抗体の均質な集団であるが、これは
、培養した連続的細胞系による抗体分子の産生をもたらす任意の技法により、取
得することができる。これらの技法には、限定しないが、KohlerおよびMilstein
のハイブリドーマ法(1975、Nature 256、495〜497;および米国特許第4,376,11
0号)、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kosborら、1983年、Immunology Today 4 、72;Coleら、1983、Proc. Natl.Acad. Sci. USA 80、2026〜2030)、ならびに
EBVハイブリドーマ法(Coleら、1985、モノクローナル抗体および癌治療(Monocl
onal Antibodies And Cancer Therapy)、Alan R. Liss, Inc.、pp77〜96)が含 まれる。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそれらの任意のサ ブクラスを含む任意の免疫グロブリンクラスであってよい。本発明のmAbを産生 するハイブリドーマは、in vitroまたはin vivoで培養することができる。in vi
voでの高力価mAbの産生が、現在のところ好ましい作製方法である。
【0070】 さらに、適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的
活性を有するヒト抗体分子由来の遺伝子と共にスプライシングすることにより、
「キメラ抗体」を作製するために開発された技法(Morrisonら、1984、Proc. Na
tl. Acad. Sci. USA 81、6851〜6855;Neubergerら、1984、Nature 312、604〜6
08;Takedaら、1985、Nature、314、452〜454)を用いてもよい。キメラ抗体は 、マウスのmAb由来の可変領域と、ヒト免疫グロブリン定常領域を併せ持つもの 等、異なる動物種に由来する異種部分を有する分子である(例えば、Cabillyら 、米国特許第4,816,567号;およびBossら、米国特許第4,816,397号を参照のこと
。尚、これらは、参照により全文を本明細書に組み込むものとする)。
【0071】 さらに、ヒト化抗体の生産方法も開発されている(例えば、Queen、米国特許 第5,585,089号参照。尚、これは、参照により全文を本明細書に組み込むものと する)。免疫グロブリン軽鎖または重鎖の可変領域は、相補性決定領域(CDR) と呼ばれる三つの超可変領域によって中断された「フレームワーク」領域から成
る。フレームワーク領域およびCDRの範囲は、正確に規定されている(「免疫学 的に注目されるタンパク質配列」、Kabat, Eら、米国保健社会福祉省、1983、参
照)。簡単に言えば、ヒト化抗体は、ヒト以外の種由来の1つ以上のCDRと、ヒ ト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域とを有するヒト以外の種由来の
抗体である。
【0072】 あるいは、一本鎖抗体の作製のために記載された方法(米国特許第4,946,778 号;Bird、1988、Science 242、423〜426;Hustonら、1988、Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 85、5879〜5883;ならびにWardら、1989、Nature 334、544〜546)を
用いて、PACAP遺伝子産物に対する一本鎖抗体を作製することもできる。一本鎖 抗体は、アミノ酸架橋を介して、Fv領域の重鎖および軽鎖フラグメントを連結す
ることにより形成され、一本鎖ポリペプチドが得られる。
【0073】 特異的エピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の方法により作製する
ことができる。例えば、このようなフラグメントには、限定しないが、抗体分子
のペプシン消化により作製できるF(ab')2フラグメント、ならびに、F(ab')2フラ
グメントのジスルフィド架橋を減少させることにより作製できるFabフラグメン トがある。あるいはまた、Fab発現ライブラリーを構築して(Huseら、1989、Sci
ence、246、1275〜1281)、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメン
トの迅速かつ容易な同定を行うことができる。
【0074】5.4.PACAP遺伝子配列、遺伝子産物および抗体の使用 ここに、PACAP遺伝子配列、ペプチドフラグメントおよびその融合タンパク質 等のPACAP遺伝子産物、ならびに、PACAP遺伝子産物に対する抗体およびそのペプ
チドフラグメントの様々な用途を記載する。このような用途としては、例えば、
PACAP媒介型障害の予後及び診断評価、ならびに、後の第5.5節に説明するよ うに、これらの障害に対する素因を有する被験体の同定が挙げられる。さらに、
これらの用途には、後の第5.9節で説明するPACAP媒介型障害の治療方法、な らびに、後の第5.8節に説明するPACAP遺伝子の発現および/またはPACAP遺伝
子産物の合成または活性を調節する化合物の同定方法も含まれる。このような化
合物には、例えば、感情調節やPACAP媒介型障害に関与する他の細胞産物がある 。これらの化合物は、例えば、PACAP媒介型障害の改善に用いることができる。
【0075】5.5.PACAP媒介型障害の異常診断 PACAP媒介型障害の診断および予後評価、ならびに、このような障害に対する 素因を有する被験体の同定には、様々な方法を用いることができる。
【0076】 このような方法は、例えば、第5.1節に記載したPACAP遺伝子ヌクレオチド 配列、ならびに、第5.3節に記載したPACAP遺伝子産物(そのペプチドフラグ メントを含む)に対する抗体等の試薬を使用する。特に、これらの試薬は、例え
ば、次の目的のために用いる: (1)PACAP遺伝子突然変異の存在の検出、または、PACAPタンパク質の過剰もし くは過少発現の検出、 (2)PACAP遺伝子産物の過剰または過少存在量の検出、および (3)異常レベルのPACAP遺伝子産物活性の検出。
【0077】 PACAP遺伝子ヌクレオチド配列は、例えば、前記第5.1節に記載したPACAP突
然変異検出方法を用いて、PACAP媒介型障害を診断するのに使用することができ る。
【0078】 複数の異なる遺伝子座での突然変異によって、神経精神障害に関連する表現型
が発生する恐れがある。理想的には、このような神経精神障害に罹患した患者の
治療は、この障害を媒介する突然変異を含有する特定の遺伝子座をターゲッティ
ングすることを目的として実施する。遺伝子の多型性は、薬物効力の相違に関連
していた。従って、PACAP遺伝子またはタンパク質における変化の同定を利用し て、治療薬による治療を最適化することができる。
【0079】 本発明のある実施形態では、PACAP遺伝子産物のメチル化の変化、差異のある スプライシング、もしくは、翻訳後の修飾によるPACAP遺伝子配列の多型性、ま たはPACAP遺伝子発現の変異を利用して、PACAP媒介型障害に起因する疾病または
病状を有する個体を同定し、最も効果的で、しかも安全な薬物治療を規定するこ
とができる。本明細書に記載したような検定を利用して、PACAP遺伝子発現活性 の多型性もしくは変異を同定することができる。ある個体において、PACAP遺伝 子の多型性、もしくは、PACAP遺伝子発現の変異を同定したら、適切な薬物治療 をその個体に処方することができる。
【0080】 本明細書に記載した方法は、例えば、本明細書に記載した少なくとも1つの特
異的PACAP遺伝子核酸もしくは抗PACAP遺伝子産物抗体試薬を含む予めパッケージ
した診断キットを用いて実施してもよい。このようなキットを、例えば臨床環境
において、PACAP媒介型障害の異常を呈示する患者の診断に好適に用いることが できる。
【0081】 PACAP遺伝子突然変異検出のためには、ゲノム核酸の出発源として、どんな有 核細胞を用いてもよい。PACAP遺伝子発現またはPACAP遺伝子産物の検出のために
は、PACAP遺伝子を発現するものであれば、どんな細胞タイプもしくは組織を用 いてもよい。
【0082】 核酸に基づく検出方法は、以下の第5.6節で説明する。ペプチド検出方法は
、後の第5.7節で説明する。
【0083】5.6.PACAP核酸分子の検出 様々な方法を用いて、PACAP遺伝子特異的突然変異の存在をスクリーニングし 、PACAP核酸配列のレベルを検出および/または検定することができる。
【0084】 PACAP遺伝子内の突然変異は、多様なの方法を用いて検出することができる。 任意の有核細胞からの核酸は、このような検定方法の出発点として使用すること
ができ、この核酸は、当業者には公知の標準的核酸調製法に従って単離すること
ができる。
【0085】 PACAP核酸配列を生体サンプルのハイブリダイゼーションまたは増幅検定に用 いて、PACAP遺伝子構造に関与する異常(点突然変異、挿入、欠失、転位、転座 および染色体再配列等)を検出することができる。このような検定には、限定し
ないが、サザン分析、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ならびにPCR分析が
ある。
【0086】 PACAP遺伝子特異的突然変異検出のための診断方法は、例えば、患者のサンプ ル、もしくは、リンパ球等の他の適切な細胞源に由来するサンプルから得た、組
換えDNA分子、クローン化遺伝子またはその縮重変異体等の核酸を、第5.1
節に記載したような組換えDNA分子、クローン化遺伝子またはその縮重変異体
等の1つ以上の標識核酸試薬に、これらの試薬と、PACAP遺伝子内のその相補的 配列との特異的アニーリングに好ましい条件下で接触させ、インキュベートする
ことを含み得る。本発明の診断方法は、PACAP遺伝子の単一ヌクレオチド突然変 異または多型性の検出のために、核酸を接触させ、インキュベートすることをさ
らに含む。好ましくは、これら核酸試薬の長さは、少なくとも15〜30ヌクレオチ
ドである。インキュベートの後、アニーリングしなかった核酸すべてを該核酸か
ら除去する:PACAP分子ハイブリッド。次に、ハイブリダイズした核酸の存在( もしそのような分子が存在すれば)を検出する。このような検出方法を用いて、
関心のある細胞タイプまたは組織からの核酸を、例えば、膜等の固相支持体、ま
たはマイクロタイタープレートやポリスチレンビーズ等のプラスチック表面に固
定化することができる。この場合、インキュベートの後、第5.1節に記載した
タイプのアニーリングされていない標識核酸試薬が容易に除去される。残りの、
アニーリングした標識PACAP核酸試薬の検出は、当業者には公知の標準的方法を 用いて達成する。核酸試薬をアニーリングしたPACAP遺伝子配列は、正常PACAP遺
伝子配列から予想されるアニーリングパターンと比較して、PACAP遺伝子突然変 異が存在するかどうかを決定することができる。
【0087】 好ましい実施形態では、基質または「遺伝子チップ」に固定化したPACAP核酸 配列のマイクロアッセイにより、PACAP突然変異または多型性を検出することが できる(例えば、Croninら、1996、Human Mutation、7:244〜255を参照)。
【0088】 患者のサンプル、もしくは、他の適した細胞採取源において、PACAP遺伝子特 異的核酸分子を検出する別の診断方法では、例えば、PCR(Mullis、1987、米
国特許第4,683,202号に記載した実施例)により、それら分子を増幅した後、当 業者には公知の方法を用いて、増幅した分子の検出を行う。こうして得られた増
幅配列を、増幅される核酸がPACAP遺伝子の正常なコピーしか含んでいない場合 に予想される配列と比較して、PACAP遺伝子突然変異が存在しているかどうかを 決定する。
【0089】 さらに、公知の遺伝子型分類方法を実施して、PACAP遺伝子突然変異を有する 個体を同定する。このような方法には、例えば、制限断片長多型(RFLP)の使用
があり、これは、使用した特異的制限酵素について認識部位の1つに配列変異を
含むものである。
【0090】 さらに、DNAの多型性を分析するための改善された方法が記載されており、
PACAP遺伝子特異的突然変異の同定に使用できるが、この方法は、制限酵素部位 間の、可変数の短く、縦列に反復するDNA配列の存在を利用するものである。
例えば、Weber(米国特許第5,075,217号)は、(dc-dA)n-(dG-dT)n個の短い縦列 反復配列のブロックにおける長多型に基づくDNAマーカーを記載している。(d
c-dA)n-(dG-dT)nのブロックの平均間隔は、30,000〜60,000bpであると推定され る。このように近間隔の標識は、高頻度の同一遺伝を表示することから、例えば
、PACAP遺伝子内の突然変異等の遺伝子突然変異の同定や、PACAP突然変異に関連
する疾患および障害の診断に極めて有用である。
【0091】 また、Caskeyら(米国特許第5,364,759号)は、短いトリ−およびテトラヌク レオチド反復配列を検出するためのDNAプロファイリング検定法を記載してい
る。この方法は、PACAP遺伝子等の関心のあるDNAを抽出し、抽出したDNA を増幅した後、反復配列を標識して、個体のDNAの遺伝子地図を形成すること
を含む。
【0092】 PACAP遺伝子発現のレベルを検定することもできる。例えば、PACAP遺伝子を発
現することがわかっているか、あるいは疑われる細胞タイプまたは組織(例えば 、脳)からのRNAを単離し、前述のようなハイブリダイゼーションまたはPC R法を用いて試験する。単離した細胞は、細胞培養または患者由来のものでよい
。培養から採取した細胞の分析は、細胞に基づく遺伝子治療法の一環として使用
するか、または、PCR遺伝子の発現に対する化合物の作用を試験する細胞の評
価において、必要なステップである。このような分析から、PACAP遺伝子発現の 活性化または不活性化を含むPACAP遺伝子の発現パターンの量および質両面の特 徴が明らかになる。
【0093】 このような検出法の一実施形態では、関心のあるRNA分子から、cDNA分
子を合成する(例えば、cDNAへのRNA分子の逆転写により)。次に、cD
NA内の配列を、PCR増幅反応等の核酸増幅反応用の鋳型として使用する。こ
の方法の逆転写および核酸増幅ステップにおける合成開始試薬(例えば、プライ
マー)として使用する核酸試薬は、第5.1節に記載したPACAP遺伝子核酸試薬 から選択する。このような核酸試薬の好ましい長さは、少なくとも9〜30ヌク
レオチドである。増幅した産物を検出するために、放射性もしくは非放射性標識
ヌクレオチドを用いて、核酸増幅を実施することができる。あるいは、十分に増
幅した産物を、この産物が、標準的臭化エチジウム染色により、または、その他
の適した核酸染色法を使用して、視覚化されるように、作製してもよい。
【0094】 また、このようなPACAP遺伝子発現検定を「in situ」で、すなわち、生検もし
くは切除したものから採取した患者組織の組織切片(固定および/または凍結)
に直接実施して、核酸精製を必要としないようにすることも可能である。第5.
1節に記載したもの等の核酸試薬は、このようなin situ方法のプローブおよび /またはプライマーとして使用することができる(例えば、Nuovo、G.J.、1992 、「PCRin situハイブリダイゼーション:プロトコルと応用(PCR In Situ Hy
bridization: Protocols And Applications)」、Raven Press、NYを参照のこと )。
【0095】 あるいは、十分な量の適切な細胞の採取が可能な場合には、標準ノーザン分析
を実施して、PACAP遺伝子のmRNA発現レベルを測定することができる。
【0096】5.7.PACAP遺伝子産物の検出 前記第5.3節で考察したような、損傷していない、もしくは、突然変異体PA
CAP遺伝子産物、あるいは、その保存的変異体またはペプチドフラグメントに対 抗する抗体を、PACAP媒介型障害の診断および予後診断に用いることもできる。 このような方法を使用して、PACAP遺伝子産物の合成または発現レベルの異常; あるいは、PACAP遺伝子産物の構造、一過性発現、および/または物理的位置の 異常を検出することができる。本明細書に記載した抗体および免疫検定方法は、
例えば、PACAP媒介型障害の治療の効果を評価する上で重要なin vitroにおける 用途を有する。後述するもののような抗体もしくは抗体のフラグメントを用いて
、治療効果が見込める化合物をin vitroでスクリーニングし、PACAP遺伝子発現 およびPACAP遺伝子産物産生に及ぼす該化合物の作用を測定することができる。P
ACAP媒介型障害に有益な作用を及ぼす化合物。
【0097】 また、in vitro免疫検定を使用して、例えば、PACAP媒介型障害の細胞に基づ く遺伝子治療の効果を評価することも可能である。PACAP遺伝子産物に対抗する 抗体をin vitroで使用して、例えば、PACAP遺伝子産物を産生するように遺伝子 操作した細胞で達成されるPACAP遺伝子発現のレベルを測定することができる。 細胞内PACAP遺伝子産物の場合には、このような評価は、細胞溶解物または抽出 物を用いて実施するのが好ましい。このような分析により、in vivoで治療効果 を達成するのに必要な形質転換細胞の数の測定、ならびに、遺伝子置換プロトコ
ルの最適化が可能になる。
【0098】 分析しようとする組織または細胞タイプには、一般に、PACAP遺伝子を発現す ることがわかっているもの、または、疑われるものが含まれる。本明細書で用い
るタンパク質単離方法は、例えば、HarlowおよびLane(1988、「抗体:研究室マ
ニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laborator
y Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク)に記載されているもの等でよい 。単離した細胞は、細胞培養もしくは患者に由来するものでよい。培養から採取
した細胞の分析は、細胞に基づく遺伝子治療法の一環として使用するか、あるい
は、PACAP遺伝子の発現に対する化合物の作用を試験する細胞の評価において、 重要なステップである。
【0099】 PACAP遺伝子産物、その保存的変異体またはペプチドフラグメントを検出する のに好ましい診断方法として、例えば、PACAP遺伝子産物、または保存的変異体 もしくはペプチドフラグメントを、抗PACAP遺伝子産物特異的抗体との相互作用 により検出する免疫検定がある。
【0100】 例えば、前記第5.3節に記載したような、抗体、または抗体のフラグメント
を用いて、PACAP遺伝子産物、または、その保存的変異体もしくはペプチドフラ グメントの存在を定量的または定性的に検出することができる。これは、例えば
、蛍光標識した抗体(本節で後述する)を使用する免疫蛍光法と、光学顕微鏡、
フローサイトメトリー、もしくは蛍光光度計検出を組み合わせることにより、達
成される。このような方法は、細胞表面で発現するPACAP遺伝子産物に特に好ま しい。
【0101】 さらに、本発明で有用な抗体(または、そのフラグメント)は、免疫蛍光法ま
たは免疫電子顕微鏡検定法におけるのと同様、組織学的に用いて、PACAP遺伝子 産物、その保存的変異体またはペプチドフラグメントのin situ検出を実施する ことも可能である。in situ検出は、患者から組織検体を採取し、該検体に、PAC
APポリペプチドに結合する標識抗体を適用することにより達成される。この抗体
(またはフラグメント)は、生体サンプルに標識抗体(またはフラグメント)を重
ねることにより適用するのが好ましい。このような手順を実施することにより、
PACAP遺伝子産物、保存的変異体またはペプチドフラグメントの存在だけではな く、被検査組織におけるその分布も測定することができる。本発明を用いて、当
業者は、非常に多様な組織学的方法(染色法等)に変更を加えることにより、PA
CAP遺伝子産物のin situ検出を達成できることを容易に認識するであろう。
【0102】 PACAP遺伝子産物、その保存的変異体またはペプチドフラグメントの免疫検定 は、典型的に、生体液、組織抽出物、採取した新しい細胞、もしくは細胞溶解物
等のサンプルを、PACAP遺伝子産物、その保存的変異体またはペプチドフラグメ ントを同定することができる検出可能に標識した抗体の存在下で、インキュベー
トした後、当業者に公知の様々な方法のいずれかにより、結合した抗体を検出す
ることを含む。
【0103】 生体サンプルは、細胞、細胞粒子または可溶性タンパク質を固定化できるニト
ロセルロース等の固相支持体または担体に接触させ、固定化してもよい。次に、
支持体を適したバッファーで洗浄した後、検出可能に標識したPACAP遺伝子産物 特異的抗体により処理する。上記固相支持体を上記バッファーで再度洗浄して、
未結合の抗体を除去する。その後、固体支持体上に結合した標識の量を、従来の
手段により検出する。
【0104】 「固相支持体または担体」とは、抗原または抗体を結合することができる任意
の支持体を意味する。公知の支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン
、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然
および改変セルロース、ポリアクリルアミド、ハンレイ岩および磁鉄鉱等がある
。担体の性質は、本発明の目的に応じて、ある程度可溶性か、あるいは不溶性の
いずれかであり得る。支持体の材料は、結合した分子が、抗原または抗体に結合
できる限り、実質的にどんな構造的形状をしていてもよい。従って、支持体の形
状は、ビーズのように球形でもよいし、または、試験管の内側面もしくはロッド
の外側面のように円筒形でもよい。あるいは、この面は、シート、試験片等のよ
うに、平面でもよい。好ましい支持体としては、ポリスチレンビーズが挙げられ
る。当業者には、抗体または抗原を結合するのに適したその他の担体は公知であ
り、また、通常の実験により、これを選定することも可能であろう。
【0105】 PACAP遺伝子産物特異的抗体を検出可能に標識する方法の一つは、酵素免疫検 定(EIA)に使用されるもの等の酵素に、該抗体を結合することによる(Voller,
A.、「酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)」1978、Diagnostic Horizon
s 2、1〜7、Microbiological Associates Quaterly Publication、ウォーカ ーズビル、MD);Voller, A.ら、1978、J. Clin. Pathol. 31、507〜520;Butle
r, J.E.、1981、Meth. Enzymol. 73,482〜523;Maggio, E. (編)、1980、酵素 免疫検定法(Enzyme Immunoassay)、CRC Press、Boca Raton、FL;Ishikawa, E. ら、(編)、1981、酵素免疫検定法(Enzyme Immunoassay)、Kgaku Shoin、東京 )。抗体に結合させる酵素は、例えば、分光光度計、蛍光光度計、もしくは視覚
的手段により、検出できる化学的部分を生成するような様式で適した基質、好ま
しくは、発色性基質と反応する。抗体を検出可能に標識するのに用いられる酵素
としては、限定しないが、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカスヌク
レアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナー ゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西
洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グル
コースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、
カタラーゼ、クルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよび アセチルコリンエステラーゼが挙げられる。検出は、酵素用の発色性基質を用い
た比色分析法により、達成することができる。また、検出は、同様に作製した標
準と比較した、基質の酵素反応の程度の視覚的比較によって、達成することもで
きる。
【0106】 また、その他の多様な免疫検定法のいずれかを用いて検出を実施してもよい。
例えば、抗体または抗体フラグメントを放射性標識することにより、放射線免疫
検定法(RIA)を使用して、PACAP遺伝子産物を検出することが可能である(例え
ば、Weintraub, B.、放射線免疫検定法の原理、放射性リガンド検定法の第7回 トレーニングコース(Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Cou
rse on Radioligand Assay Techniques)、The Endocrine Society、1986年3月)
。ガンマ計数管もしくはシンチレーション計数管の使用等の手段、または、オー
トラジオグラフィーにより、放射性同位元素を検出することができる。
【0107】 また、抗体を蛍光化合物で標識することも可能である。蛍光標識した抗体を、
適切な波長の光線に暴露すると、蛍光により、その存在が検出される。最もよく
使用されている蛍光標識用の化合物の中でも、フルオレセインイソチオシアネー
ト、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-
フタルデヒドおよびフルオレスカミン(fluorescamine)が挙げられる。
【0108】 さらに、152Eu、もしくはランタニド系列の他のもの等の蛍光発生金属を用い て、抗体を検出可能に標識することもできる。これらの金属は、ジエチレントリ
アミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の金属キレート
基を用いて、抗体に結合することができる。
【0109】 また、抗体を化学発光化合物に結合することにより、検出可能に標識すること
もできる。次に、化学反応中に生じるルミネセンスの存在を検出することにより
、化学発光標識抗体の存在を測定する。特に有用な化学発光標識用の化合物の例
として、ルミノール、イソルミノール、テロマチック(theromatic)アクリジニ
ウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびオキサレートエステル等
が挙げられる。
【0110】 同様に、生物発光化合物を使用して、本発明の抗体を標識してもよい。生物発
光は、生物系に見られる化学発光の一種であり、触媒タンパク質が、化学発光反
応の効率を高める。生物発光タンパク質の存在は、ルミネセンスの存在を検出す
ることにより測定する。標識のための重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、
ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0111】5.8.PACAP遺伝子活性を調節する化合物のスクリーニング検定 次の検定は、PACAP遺伝子産物に結合する化合物、細胞内タンパク質に結合す る化合物、もしくは、PACAP遺伝子産物と相互作用するタンパク質部分、PACAP遺
伝子産物と細胞内タンパク質との相互作用を妨げる化合物、ならびに、PACAP遺 伝子産物の活性を調節する(すなわち、PACAP遺伝子の発現レベルを調節する、 および/または、PACAP遺伝子産物の活性レベルを調節する)化合物を同定する ことを目的とする。さらに、PACAP遺伝子調節配列(例えば、プロモーター配列 ;例えば、Platt、1994、J. Biol. Chemi. 269、28558〜28562を参照)に結合す
る化合物、ならびに、PACAP遺伝子発現を調節することができる化合物を同定す る検定を用いてもよい。このような化合物には、限定しないが、血液脳関門を通
過し、適切な細胞に入り、PACAP遺伝子、もしくは、PACAP調節経路に関与するそ
の他の遺伝子、あるいは細胞内タンパク質の発現に作用することができる分子等
の小さな有機分子がある。
【0112】 このような細胞内タンパク質の同定方法については、以下の第5.8.2節で
説明する。このような細胞内タンパク質は、感情の制御および/または調節に関
与すると考えられる。さらに、これらの化合物の中には、以下の第5.9節で説
明するように、PACAP遺伝子発現および/またはPACAP遺伝子産物活性のレベルに
作用し、PACAP媒介型障害の治療に使用できる化合物がある。
【0113】 このような化合物として、限定しないが、例えば、Ig-テールを有する融合ペ プチドを含む可溶性ペプチドや、ランダムペプチドライブラリーのメンバー(例
えば、Lamら、1991、Nature 354,82〜84;Houghtenら、1991、Nature 354,84 〜86を参照)、D-および/またはL-型アミノ酸から成る組合せ化学由来の分子ラ
イブラリーのメンバー、ホスホペプチド(限定しないが、ランダムまたは部分縮
重の、定方向ホスホペプチドライブラリーを含む;例えば、Songyangら、1993、
Cell 72、767〜778を参照)等のペプチド、抗体(限定しないが、ポリクローナ ル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラまたは一本鎖抗体、な
らびに、FAb、F(ab')2およびFAb発現ライブラリーフラグメント、およびそのエ ピトープ結合フラグメントを含む)、ならびに小さな有機分子または無機分子を
挙げることができる。
【0114】 さらに、このような化合物には、特に、障害の症候を改善もしくは悪化させる
ことが知られる薬物、もしくは、薬物群のメンバー等の化合物が含まれる。この
ような化合物として、リチウム塩、カルバマゼピン、バルプロ酸、リゼルグ酸ジ
エチルアミド(LSD),p-クロロフェニルアラニン、p-プロピルドパセタミドジ チオカルバマート誘導体(例えば、FLA63)等の抗うつ薬;抗不安薬(例えば、 ジアゼパム);モノアミンアキシダーゼ(MAO)抑制剤(例えば、イプロニアジ ド、クロルジリン、フェネルジンおよびイソカルボキサジド);生物発生アミン
摂取遮断薬(例えば、デシプラミン、イミプラミンおよびアミトリプチリン等の
三環式抑うつ薬;セロトニン再摂取抑制剤(例えば、フルオキセチン);フェノ
チアジン誘導体(例えば、クロルプロマジン(トラジン)およびトリフルオロマ
ジン)、ブチロフェノン(例えば、ハロペリドール(ハルドール))、チオキサ
ンテン誘導体(例えば、クロルプロチキセン)、およびジベンゾジアゼピン(例
えば、クロザピン)等の抗精神病薬;ベンゾジアゼピン;ドーパミン作動性作用
薬および拮抗薬(例えば、L-DOPA、コカイン、アンフェタミン、α−メチル−チ
ロシン、レセルピン、テトラベナジン、ベンゾトロピン、パルジリン);ノルア
ドレナリン作動性作用薬および拮抗薬(例えば、クロニジン、フェノキシベンザ
ミン、フェントールアミン、トロポロン)が挙げられる。
【0115】 本明細書に記載した方法等の検定によって同定した化合物は、例えば、PACAP 遺伝子産物の生物学的機能を形成したり、PACAP媒介型障害を改善する上で、有 用である。例えば、第5.8.1〜5.8.3節に記載するもの等の方法により
同定した化合物の効力を試験する検定については、後の第5.8.4節で説明す
る。
【0116】5.8.1. PACAP遺伝子産物と結合する化合物のin vitroスクリーニングアッセイ 本発明のPACAP遺伝子産物と結合する能力のある化合物を同定するin vitro系 を設計することができる。同定された化合物は、例えば、無傷のおよび/もしく
は突然変異体のPACAP遺伝子産物の活性をモジュレートするのに有用であり、PAC
AP遺伝子産物の生物学的機能を精査するのに有用であり、正常なPACAP遺伝子産 物の相互作用を破壊する化合物を同定するためのスクリーニングに利用すること
ができ、または自身でそのような相互作用を破壊することができる。
【0117】 PACAP遺伝子産物と結合する化合物を同定するために使うアッセイの原理は、P
ACAP遺伝子産物と試験化合物の反応混合物を2成分が相互作用し結合することの
できる条件下で十分な時間をかけて調製して、それにより複合体を形成すること
を含み、該複合体を除去および/または反応混合物中で検出することができる。
これらのアッセイは、様々な方法で実施することができる。例えば、このような
アッセイを実施する1つの方法は、PACAP遺伝子産物または試験物質を固体支持 体上に固着(anchoring)させ、反応終了時に固体支持体上に生成したPACAP遺伝
子産物/試験化合物複合体を検出することを含む。このような方法の1つの実施
形態においては、PACAP遺伝子産物を固体支持体上に固着させ、そして固着して ない試験化合物を直接もしくは間接的に標識することができる。
【0118】 実施には、マイクロタイタープレートを固体支持体に用いるのが好都合である
。固着した成分は、非共有結合または共有結合により固定することができる。非
共有結合は、単に固体表面を該タンパク質の溶液でコーティングし、乾燥して達
成することができる。あるいは、固定した抗体、好ましくは、固定すべきタンパ
ク質に特異的なモノクローナル抗体を使って、該タンパク質を固体表面に固着さ
せることができる。該表面を予め調製し、貯蔵することができる。
【0119】 前記アッセイを実施するためには、非固定の成分を、固着した成分を含有する
コーティングした表面に加える。反応が完了した後に、生成した複合体が全て固
体表面上に固定されて残るような条件下で未反応成分を除去する(例えば、洗浄
して)。固体表面上に固着した複合体の検出は、複数の方法で行うことができる
。先に非固定の成分を予め標識している場合、該表面上に固定された標識を検出
すれば複合体が生成したことが示される。先に非固定の成分を予め標識していな
い場合、間接的標識を使って該表面上に固着した複合体を検出することができる
;例えば、先に非固定の成分に特異的な、標識した抗体(該抗体は、順に、直接
的に標識しても、または間接的に標識抗Ig抗体で標識してもよい)を使う。
【0120】 あるいは、反応を、液相で実施し、反応生成物を未反応成分から分離し、そし
て複合体を検出することができる;例えば、PACAP遺伝子産物または試験化合物 に特異的な固定化抗体を使って、溶液中に形成した複合体を固着し、そして可能
性のある複合体の他の成分に特異的な標識抗体を使って固着した複合体を検出す
る。
【0121】5.8.2. PACAP遺伝子産物と相互作用する細胞内タンパク質についてのアッセイ タンパク質−タンパク質相互作用を検出するために適当な任意の方法を、PACA
P遺伝子産物−タンパク質相互作用を同定するために利用することができる。
【0122】 利用できる伝統的な方法には、免疫共沈降、架橋および勾配またはクロマトグ
ラフィーカラムを使う同時精製がある。これらの方法を利用して、PACAP遺伝子 産物と相互作用する、細胞内タンパク質を含むタンパク質を同定することが可能
である。このようなタンパク質は、一旦単離すれば同定は可能であり、標準技術
を併せて使って、相互作用するタンパク質を同定することができる。例えば、PA
CAP遺伝子産物と相互作用するタンパク質の少なくともある部分のアミノ酸配列 は、エドマン(Edman)分解法を経由するような、当業者が精通する技術を使っ て確かめることができる(例えば、Creighton, 1983, "Proteins: Structures a
nd Molecular Principles(タンパク質:構造および分子的原理)", W. H. Free
man & Co., N.Y., pp.34-49を参照)。得られたアミノ酸配列を基準として使っ てオリゴヌクレオチド混合物を作製し、このようなタンパク質をコードする遺伝
子配列をスクリーニングするために使うことができる。スクリーニングは、例え
ば、標準のハイブリダイゼーションまたはPCR技術により実施することができる 。オリゴヌクレオチド混合物の作製およびそのスクリーニングの技術は、公知で
ある(例えば、Ausubel, 前掲、および1990, "PCR Protocols: A Guid to Metho
ds and Applications(PCRプロトコル:方法および応用の手引き)" Innisら, 編, Academic Press, Inc., New York、を参照)。
【0123】 さらに、PACAP遺伝子産物と相互作用するタンパク質をコードする遺伝子を同 時に同定する方法を利用することができる。これらの方法は、例えば、PACAP遺 伝子産物を周知のλgt11ライブラリーの抗体探索についての周知の技術と同様の
手法で用いる、標識したPACAP遺伝子産物による発現ライブラリーの探索を含む 。
【0124】 in vivoでタンパク質相互作用を検出する1つの方法であるツーハイブリッド システム(two-hybrid system)を、限定のためでなく説明だけのために、詳細 に記載する。このシステムの1つのバージョンは、記載されており(Chienら, 1
991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, 9578-9582)、Clontech(Palo Alto, C
A)から市販されている。
【0125】 簡単に説明すると、このようなシステムを使い、2つのハイブリッドタンパク
質をコードするプラスミドを構築する:1つは、転写アクチベータータンパク質
のDNA結合ドメインからなり、PACAP遺伝子産物と融合しており、もう1つは、転
写アクチベータータンパク質の活性化ドメインからなり、cDNAライブラリーの一
部分としてこのプラスミドに組換えられたcDNAによりコードされた未知タンパク
質と融合している。DNA結合ドメイン融合プラスミドおよびcDNAライブラリーを 、レポーター遺伝子(例えば、HBSまたはlacZ)を有し、かつその調節領域に転 写アクチベーター結合部位を有する酵母(Saccharomyces cerevisiae)の株中に
形質転換する。いずれのハイブリッドタンパク質も単独で該レポーター遺伝子の
転写を活性化することはできない:というのは、DNA結合ドメインハイブリッド は活性化機能を与えないからであり、また、活性化ドメインハイブリッドはアク
チベーター結合部位に局在化できないからである。2つのハイブリッドタンパク
質が相互作用すると、機能性アクチベータータンパク質が再構築され、レポータ
ー遺伝子の発現をもたらし、これはレポーター遺伝子産物についてのアッセイに
より検出される。
【0126】 ツーハイブリッドシステムまたは関係する方法を使って、「餌(bait)」遺伝
子産物と相互作用するタンパク質について活性化ドメインライブラリーをスクリ
ーニングすることができる。限定するためでなく、例示するために説明すると、
PACAP遺伝子産物を餌遺伝子産物として使うことができる。全ゲノム配列またはc
DNA配列を、活性化ドメインをコードするDNAに融合させる。このライブラリー、
およびDNA結合ドメインに融合した餌PACAP遺伝子産物のハイブリッドをコードす
るプラスミドを、酵母レポーター株中に共形質転換し、得られた形質転換体をレ
ポーター遺伝子を発現するものについてスクリーニングする。例えば、PACAP遺 伝子のオープンリーディングフレームのような餌PACAP遺伝子配列を、該配列がG
AL4タンパク質のDNA結合ドメインをコードするDNAと翻訳的に融合されるように 、ベクター中にクローン化することができる。これらのコロニーを精製し、そし
て、レポーター遺伝子発現に関与するライブラリープラスミドを単離する。その
後、DNA配列決定を利用し、ライブラリープラスミドによりコードされるタンパ ク質を同定する。
【0127】 餌PACAP遺伝子産物と相互作用するタンパク質を検出するための細胞系のcDNA ライブラリーは、当業者が日常的に実施する方法を使用して作ることができる。
本明細書に記載の特定のシステムにより、例えば、cDNA断片を、翻訳的にGAL4の
転写活性化ドメインに融合されるように、ベクター中に挿入することができる。
このようなライブラリーを、餌PACAP遺伝子−GAL4融合プラスミドと共に、GAL4 活性化配列を有するプロモーターにより駆動されるlacZ遺伝子を有する酵母株中
に、共形質転換することができる。cDNAがコードする、GAL4転写活性化ドメイン
に融合し、餌PACAP遺伝子産物と相互作用するタンパク質は、活性GAL4タンパク 質を再構築し、それによりHIS3遺伝子の発現を駆動するであろう。HIS3を発現す
るコロニーは、半固体寒天に基づくヒスチジン欠乏培地を容れたペトリ皿上での
それらの増殖により検出することができる。その後、当業界で日常的に実施され
る技術を使って、cDNAをこれらの株から精製することができ、そしてそれを使用
して餌PACAP遺伝子産物と相互作用するタンパク質を生成し、単離することがで きる。
【0128】5.8.3. PACAP遺伝子産物の巨大分子相互作用を妨害する化合物についてのアッ セイ PACAP遺伝子産物は、in vivoで、タンパク質のような、細胞内巨大分子を含む
1つ以上の巨大分子と相互作用することができる。このような巨大分子は、限定
されるものでないが、核酸分子および上述の第5.8.1.−5.8.2.節に記載した方法
を経由して同定されるタンパク質を含む。この考察において、本明細書では該巨
大分子を「結合パートナー(binding partner)」と呼ぶ。PACAP遺伝子産物の結
合パートナーとの結合を破壊する化合物は、PACAP遺伝子産物、特に突然変異体P
ACAP遺伝子産物の活性を調節するのに有用でありうる。このような化合物は、限
定されるものでないが、例えば、上述の第5.8.2.節に記載したペプチドような分
子等を含む。
【0129】 PACAP遺伝子産物と1つ以上の結合パートナーとの間の相互作用を妨害する化 合物を同定するために使うアッセイ系の基本原理は、PACAP遺伝子産物と結合パ ートナーを含有する反応混合物を、両者が相互作用し、結合することのできる条
件下で十分な時間をかけて調製し、そしてそれにより複合体を形成することを含
む。ある化合物を阻害活性について試験するには、反応混合物を、試験化合物の
存在下および不在下で調製する。試験化合物は最初に反応混合物中に含まれてい
ても、またはPACAP遺伝子産物とその結合パートナーを添加した後のある時間に 加えてもよい。対照反応混合物を、試験化合物なしに、または複合体形成をブロ
ックしないことが判っている化合物と共にインキュベートする。その後、PACAP 遺伝子産物と結合パートナー間の複合体の形成を検出する。複合体形成が対照反
応中で起こるが、試験化合物を含有する反応混合物中で起こらないことは、該化
合物がPACAP遺伝子産物と結合パートナーとの相互作用を妨害することを示す。 さらに、試験化合物と正常PACAP遺伝子産物を含有する反応混合物内の複合体形 成を、試験化合物と突然変異体PACAP遺伝子産物を含有する反応混合物内の複合 体形成と比較することもできる。この比較は、突然変異体の相互作用を破壊する
が、正常なPACAP遺伝子産物の相互作用を破壊しない化合物を同定することが所 望である場合に、重要である。
【0130】 PACAP遺伝子産物と結合パートナーとの相互作用を妨害する化合物についての アッセイを、不均質相または均質相のフォーマットで実施することができる。不
均質相アッセイは、PACAP遺伝子産物または結合パートナーを固体支持体上に固 着させ、反応終了時に固体支持体上に形成される複合体を検出することを含む。
均質相アッセイにおいては、全反応は液相中で実施される。いずれの手法におい
ても、試験される化合物について様々な情報を得るために、反応物の添加順序を
変えることができる。例えば、PACAP遺伝子産物と結合パートナー間の相互作用 を、例えば、競合により妨害する試験化合物は、試験物質の存在下で反応を実施
することにより;すなわち、試験物質を反応混合物に、PACAP遺伝子産物および 相互作用する細胞内結合パートナーの前または同時に加えることにより、同定す
ることができる。あるいは、前形成された複合体を破壊する試験化合物、例えば
、複合体からの構成成分の1つに置き換わる、より高い結合定数をもつ化合物を
、複合体が形成された後に試験化合物を反応混合物に添加して試験することがで
きる。様々なフォーマットを以下に簡単に記載する。
【0131】 不均質相アッセイ系では、PACAP遺伝子産物または相互作用結合パートナーの いずれかを固体表面上に固着させ、一方、固着しない種は直接的または間接的に
標識する。実施には、マイクロタイタープレートを用いるのが好都合である。固
着した種は、非共有結合または共有結合により固定することができる。非共有結
合は、単純に固体表面をPACAP遺伝子産物または結合パートナーの溶液を用いて コーティングし、乾燥することによって達成することができる。あるいは、固着
すべき種に特異的な、固定した抗体を使って、その種を固体表面に固着させるこ
とができる。表面を予め調製し、貯蔵することができる。
【0132】 前記アッセイを実施するには、固定した種のパートナーを、試験化合物と共に
または無しでコーティングした表面に曝す。反応が完了した後に、未反応成分を
除去する(例えば、洗浄により)と、形成した複合体は固体表面に固定されたま
ま残るであろう。固体表面上に固着した複合体の検出は、いくつかの方法で実施
することができる。非固定の種が予め標識されている場合、表面上に固定された
標識の検出は、複合体が形成されたことを示す。非固定の種が予め標識されてい
ない場合、間接的標識を使って、表面に固着した複合体を検出することができる
;例えば、最初に非固定であった種に特異的な標識抗体を使う(該抗体は、順に
、直接的に標識しても、または間接的に標識抗Ig抗体で標識してもよい)。反応
成分の添加順序に依って、複合体形成を阻害するか、または前形成した複合体を
破壊する試験化合物を検出することができる。
【0133】 あるいは、該反応を試験化合物の存在または非存在の液相で実施し、反応生成
物を未反応物成分から分離し、そして複合体を検出することができる;例えば、
溶液中に形成した複合体を固着させるために結合成分の1つに特異的な固定した
抗体を使い、そして固着した複合体を検出するためにもう一方のパートナーに特
異的な標識抗体を使う。再び、液相への反応物の添加順序によって、複合体形成
を阻害するか、または前形成した複合体を破壊する試験化合物を検出することが
できる。
【0134】 本発明の代わりの実施形態においては、均質相アッセイを使うことができる。
この手法では、PACAP遺伝子産物と相互作用結合パートナーとの前形成複合体を 調製し、その際、PACAP遺伝子産物またはその結合パートナーのいずれかを標識 するが、該標識により生成されるシグナルは複合体形成によって抑えられる(qu
ench)(例えば、この手法をイムノアッセイに用いるRubensteinの米国特許第4,
109,496号を参照)。前形成した複合体由来の種の1つと競合し、かつ置き換わ る試験物質を添加すると、バックグラウンド以上のシグナルが生成される。この
方法で、PACAP遺伝子産物/結合パートナー相互作用を妨害する試験物質を同定 することができる。
【0135】 本発明の他の実施形態においては、これらの同じ技術を、PACAP産物および/ または結合パートナー(結合パートナーがタンパク質である場合)の結合ドメイ
ンに対応するペプチド断片を、片方または両方の全長タンパク質の代わりに使っ
て利用することができる。当業界で日常的に実施される複数の方法を使って結合
部位を同定し、単離することができる。これらの方法は、限定されるものでない
が、あるタンパク質をコードする遺伝子の突然変異誘発および免疫共沈降アッセ
イにおける結合の破壊についてのスクリーニングを含む。複合体の第2の種をコ
ードする遺伝子の補償性(compensating)突然変異を、その後、選択することが
できる。それぞれのタンパク質をコードする遺伝子の配列分析により、相互作用
結合に関わるタンパク質領域に対応する突然変異が明らかになるであろう。ある
いは、1つのタンパク質を、この節で上に記載した方法を使って固体表面に固着
させ、トリプシンのようなタンパク質分解性酵素で処理しておいた標識結合パー
トナーと相互作用させ、かつ結合させることができる。洗浄の後、結合ドメイン
を含む、短い、標識したペプチドは固体材料と結合して残るので、それを単離し
、アミノ酸配列決定により同定することができる。また、該セグメントをコード
する遺伝子を遺伝子操作して、該タンパク質のペプチド断片を発現させれば、そ
の後、それを結合活性について試験し、そして精製または合成することができる
【0136】 例えば、限定のためではないが、PACAP遺伝子産物を、本節において上に記載 のとおり、GST−PACAP融合タンパク質を作って、それをグルタチオンアガロース
ビーズと結合させることにより、固体材料に固着させることができる。結合パー
トナーを、35Sのような放射性同位体で標識して、トリプシンのようなタンパク 質分解性酵素で切断することができる。その後、切断産物を、固着したGST−PAC
AP融合タンパク質に加えて結合させることができる。未結合ペプチドを洗い流し
た後、結合パートナーの結合ドメインを表す標識した結合材料を、溶出し、精製
して、周知の方法によりアミノ酸配列を分析することができる。こうして同定し
たペプチドを合成的に作るか、または組換えDNA技術を使って作ることができる 。
【0137】5.8.4. PACAP媒介型障害を改善する化合物を同定するためのアッセイ 限定されるものでないが、上記の第5.8.1.〜5.8.4.節のようなアッセイ技術に
より同定される結合化合物を含む化合物を、PACAP媒介型障害の症候を改善する 能力について試験することができる。
【0138】 注意すべきは、本明細書に記載のアッセイは、PACAP遺伝子発現に影響を与え ることにより、またはPACAP遺伝子産物活性のレベルに影響を与えることにより 、PACAP活性に影響を与える化合物を同定できることである。例えば、PACAP遺伝
子および/またはPACAP遺伝子産物が関わる経路の他のステップに関わる化合物 を同定することができ、そして、この同じ経路に影響を与えることによってPACA
P媒介型障害の発症に対するPACAPの作用をモジュレートすることができる。この
ような化合物は該障害の治療のための治療法の一部として使うことができる。
【0139】 以下に記載するのは、PACAP媒介型障害の症候を改善するような能力を示す化 合物を同定するための、細胞に基づくおよび動物モデルに基づくアッセイである
【0140】 最初に、細胞に基づくシステムを使って、PACAP媒介型障害の症候を改善する よう作用する化合物を同定することができる。このような細胞システムは、例え
ば、PACAP遺伝子を発現する細胞系のような、組換えまたは非組換え細胞を含む ことができる。
【0141】 このような細胞システムを使う場合、PACAPを発現する細胞を、PACAP媒介型障
害の症候を改善する能力を示すと思われる化合物に曝露し、曝された細胞におい
てそのような症候のそのような改善を誘発するために十分な濃度で十分な時間、
曝露する。曝露の後、該細胞をアッセイして、PACAP遺伝子の発現の変化を測定 することができる、例えば、細胞溶解物を、PACAPのmRNA転写物(例えば、ノー ザン分析により)について、または細胞により発現されたPACAP遺伝子産物につ いてアッセイすることによる;PACAP遺伝子の発現をモジュレートする化合物は 、治療薬として良い候補薬である。
【0142】 さらに、PACAP媒介型障害に対する動物に基づくシステムまたはモデル、例え ば、ヒトまたは改変型のPACAP遺伝子を含有するトランスジェニックマウスを使 って、該障害の症候を改善する能力のある化合物を同定することができる。この
ような動物モデルは、薬剤、製薬物、治療、および介入の確認のための試験基質
として使うことができる。例えば、動物モデルを、症候を改善する能力を示すと
思われる化合物に、PACAP障害の症候のそのような改善を誘発するのに十分な濃 度および十分な時間、曝すことができる。動物の曝露に対する応答を、該障害の
症候の逆転を評価することによりモニターすることができる。
【0143】 介入については、PACAP媒介型障害の症候の任意の様態を逆転するあらゆる治 療が、この障害のヒトの治療的介入の候補として考えられるべきである。試験薬
の用量は、以下の第5.10.1.節に考察した、用量応答曲線より導いて決定するこ とができる。
【0144】5.9. PACAP媒介型神経精神障害の治療のための化合物と方法 以下に記載したのは、PACAP媒介型障害を治療することができる方法および組 成物である。例えば、このような方法は、哺乳動物のPACAP遺伝子の発現および /または哺乳動物のPACAP遺伝子産物の合成または活性をモジュレートして該障 害の症候を改善する化合物を投与することを含む。
【0145】 あるいは、哺乳動物のPACAP媒介型障害がPACAP遺伝子突然変異から生じる場合
は、この方法は、哺乳動物に無傷のPACAP遺伝子産物をコードする核酸分子を供 給し、無傷のPACAP遺伝子産物が発現されるようにして、該障害の症候を改善す ることを含むことができる。
【0146】 PACAP遺伝子突然変異からもたらされる哺乳動物のPACAP媒介型障害の治療法の
他の実施形態においては、その方法は、哺乳動物に、無傷のPACAP遺伝子産物を コードする核酸分子を含む細胞を供給し、該細胞が無傷のPACAP遺伝子産物を発 現し、該障害の症候を改善することを含むことができる。
【0147】 正常なPACAP遺伝子産物機能の欠損がPACAP媒介型障害の発症をもたらす場合に
おいては、PACAP遺伝子産物活性の増加が、PACAP遺伝子発現レベルおよび/また
はPACAP遺伝子産物活性レベルの不足を示す個体において無症状への進行を容易 にするであろう。PACAPの発現または合成を増強する方法は、例えば、以下の第5
.9.2.節に記載のような方法を含むことができる。
【0148】 あるいは、PACAP媒介型障害の症候は、PACAP遺伝子発現レベルおよび/または
PACAP遺伝子産物活性レベルを低下させる化合物を投与することにより改善する ことができる。PACAP遺伝子産物の合成レベルまたは発現レベルを抑制または低 下させる方法は、例えば第5.9.1.節に記載の方法を含むことができる。
【0149】5.9.1. 阻害性アンチセンス、リボザイムおよび三重らせん手法 他の実施形態においては、PACAP媒介型障害の症候は、PACAP遺伝子配列を周知
のアンチセンス、遺伝子「ノックアウト」、リボザイムおよび/または三重らせ
ん法と共に使ってPACAP遺伝子発現レベルを低下させることによって、PACAP遺伝
子発現レベルおよび/またはPACAP遺伝子産物活性レベルを低下させることによ り、改善することができる。PACAP媒介型障害の症候を改善する能力を含む、PAC
AP遺伝子の活性、発現または合成をモジュレートする能力を示すことができる化
合物の中には、アンチセンス、リボザイム、および三重らせん分子がある。この
ような分子を、無傷のまたは、もし適当であれば、突然変異体の標的遺伝子活性
を低下させるか、または阻害するように設計することができる。当業者はこのよ
うな分子の作製と使用の技術に精通している。
【0150】 アンチセンスRNAおよびDNA分子は、標的とするmRNAをハイブリダイズし、およ
びタンパク質翻訳を阻止することにより、mRNAの翻訳を直接ブロックするように
作用する。アンチセンス手法は、標的遺伝子mRNAに相補的なオリゴヌクレオチド
の設計に関わる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは相補的標的遺伝子mRNA転写
物と結合し、翻訳を阻止するであろう。絶対的な相補性は、好ましいが必要でな
い。
【0151】 本明細書で呼ぶ、RNAの一部分に「相補的な」配列は、RNAとハイブリダイズし
て安定な二重らせんを形成しうるのに十分な相補性を有する配列を意味し;2本 鎖アンチセンス核酸の場合は、したがって二重らせんDNAの1本鎖を試験するか 、または三重らせん形成をアッセイすることができる。ハイブリダイズする能力
は、相補性の程度とアンチセンス核酸の長さの両方に依存するであろう。一般的
に、ハイブリダイズする核酸が長いほど、より多くのRNAとの塩基ミスマッチを 有し、それでも安定な二重らせん(または、場合によって、三重らせん)を形成
する。当業者であれば、ハイブリダイズした複合体の融点を測定する標準の方法
を使って、ミスマッチの許容度を確かめることができる。
【0152】 1つの実施形態においては、PACAP遺伝子の非コード領域に相補的なオリゴヌク
レオチドを、内因性PACAP mRNAの翻訳を阻害するアンチセンス手法に使うことが
できる。アンチセンス核酸は、長さが6ヌクレオチド以上であるべきで、好まし
くは長さが6〜約50ヌクレオチドの範囲にある。特定の態様においては、オリゴ ヌクレオチドは10ヌクレオチド以上、17ヌクレオチド以上、25ヌクレオチド以上
または50ヌクレオチド以上である。
【0153】 標的配列の選択に関わらず、in vitro研究を最初に実施して、遺伝子発現を阻
害するアンチセンスオリゴヌクレオチドの能力を定量化することが好ましい。こ
れらの研究は、アンチセンス遺伝子阻害とオリゴヌクレオチドの非特異的生物学
的作用とを区別する対照を用いることが好ましい。また、これらの研究は、標的
RNAまたタンパク質のレベルを、内部対照RNAまたはタンパク質のレベルと比較す
ることが好ましい。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドを使って得た結果
を、対照オリゴヌクレオチドを使って得た結果と比較することを想定している。
対照オリゴヌクレオチドは試験オリゴヌクレオチドとほぼ同じ長さであり、かつ
該オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列とアンチセンス配列の違いは、標的配
列への特異的ハイブリダイゼーションを阻止するのに必要であるだけしかないこ
とが好ましい。
【0154】 オリゴヌクレオチドは、DNAもしくはRNAまたはキメラ混合物または誘導体ある
いはそれらの改変体、1本鎖または2本鎖であることができる。オリゴヌクレオ チドは、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーション等を改善するために、
塩基部、糖部、またはリン酸主鎖で改変することができる。オリゴヌクレオチド
は、ペプチド(例えば、in vivoで宿主細胞受容体を標的とする)、または細胞 膜(例えば、Letsingerら, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86, 6553-65
56;Lemaitreら, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 84, 648-652;1988年12
月15日公開のPCT公開WO88/09810を参照)もしくは血液脳関門(例えば、1988年4
月25日公開のPCT公開WO89/10134を参照)を横切る輸送を容易にする作用剤、ハ イブリダイゼーション誘発切断剤(例えば、Krolら, 1988, BioTechniques 6, 9
58-976を参照)またはインターカレート剤(例えば、Zon, 1988, Pharm. Res. 5
, 539-549を参照)のような他の付属群を含むことができる。この目的のために 、オリゴヌクレオチドを他の分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション
誘発架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発切断剤などにコンジュゲート
することができる。
【0155】 アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されるものでないが、5−フルオロ ウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポ キサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシル メチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カ
ルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシ ルキューオシン(queosine)、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチ ルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン 、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン 、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメ チル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5'−メトキシカルボ
キシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニ
ルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)
、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウ ラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5
−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−
チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3
)w、および2,6−ジアミノプリンを含む群から選択された1つ以上の改変された 塩基部分を含むことができる。
【0156】 アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、限定されるものでないが、2−フル オロアラビノース、キシルロース、およびヘキソースを含む群から選択される1
つ以上の改変された糖部分を含むことができる。
【0157】 さらに他の実施形態においては、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホ
ロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホルアミドチオアート、ホスホルア
ミダート、ホスホルジアミダート、メチルホスホナート、アルキルホスホトリエ
ステル、およびホルムアセタールまたはそれらの類似体からなる群から選択され
る1つ以上の改変されたリン酸主鎖を含む。
【0158】 さらに他の実施形態においては、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、α−ア
ノマーのオリゴヌクレオチドである。α−アノマーのオリゴヌクレオチドは、相
補的なRNAと特異的な2本鎖ハイブリッドを形成し、ここでは、通常のβ−ユニッ
トとは逆に、鎖はお互いに平行して走る(Gautierら, 1987, Nucl. Acids Res.
15, 6625-6641)。該オリゴヌクレオチドは、2'−O−メチルリボヌクレオチド(
Inoueら, 1987, Nucl. Acids Res. 15, 6131-6148)またはキメラRNA−DNA類似 体(Inoueら, 1987, FEBS Lett. 215, 327-330)である。
【0159】 本発明のオリゴヌクレオチドは、当業界で公知の標準の方法により、例えば、
自動DNA合成機(Biosearch, Applied Biosystemsなどが市販のものなど)を使っ
て合成することができる。例えば、ホスホロチオアートオリゴヌクレオチドは、
Steinら(1988, Nucl. Acids Res. 16, 3209)の方法により合成することができ
、メチルホスホナートオリゴヌクレオチドは、制御された多孔質ガラスポリマー
支持体(Sarinら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85, 7448-7451)を使
って調製することができる、等々である。
【0160】 標的遺伝子コード領域配列に相補的なアンチセンスヌクレオチドを使うことが
できるが、転写された未翻訳の領域に相補的なアンチセンスヌクレオチドが最も
好ましい。
【0161】 アンチセンス分子は、in vivoで標的遺伝子を発現する細胞に送達されなけれ ばならない。アンチセンスDNAまたはRNAを細胞に送達するための多くの方法が開
発されている;例えば、アンチセンス分子を直接、組織部位中に注入することが
できるし、または所望の細胞を標的にするよう設計された、改変されたアンチセ
ンス分子(例えば、標的細胞表面上に発現される受容体または抗原に特異的に結
合するペプチドまたは抗体に連結されたアンチセンス)を全身に投与することが
できる。
【0162】 しかし、内因性mRNAの翻訳を抑制するために十分なアンチセンスの細胞内濃度
を達成することはしばしば困難である。したがって、好ましい手法では、アンチ
センスオリゴヌクレオチドを強いpol IIIまたはpol IIプロモーターの制御下に 配置した組換えDNA構築物を使う。このような構築物を患者の標的細胞をトラン スフェクトするために使うと、内因性標的遺伝子転写物と相補的な塩基対を形成
するであろう1本鎖RNAの十分な量の転写が得られ、それによって標的遺伝子mRN
Aの翻訳を阻止するであろう。例えば、あるベクターを、例えば、細胞に取り込 まれてアンチセンスRNAの転写を指令するように導入することができる。それが 転写され、所望のアンチセンスRNAを産生する限り、このようなベクターはエピ ソームとして残るかまたは染色体に組み込まれることが可能である。このような
ベクターは、当業界の組換えDNA技術手法標準により構築することができる。ベ クターは哺乳動物細胞における複製および発現に使われるプラスミド、ウイルス
、または当業界で公知の他のものであってよい。アンチセンスRNAをコードする 配列の発現は、哺乳動物、好ましくはヒト細胞において作用することが当業界で
知られている任意のプロモーターによることができる。これらのプロモーターは
、誘導性であるかまたは構成的である。このようなプロモーターは、限定される
ものでないが:SV40初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon, 1981, Nat
ure 290, 304-310)、ラウスサルコーマウイルス(Rous sarcoma virus)の3'長
末端反復に含まれるプロモーター(Yamamotoら, 1980, Cell 22, 787-797)、ヘ
ルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sc
i. U.S.A. 78, 1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら,
1982, Nature 296, 39-42)などを含む。任意の型のプラスミド、コスミド、YA
Cまたはウイルスベクターを使って、組織部位に直接導入することができる組換 えDNA構築物を調製することができる。あるいは、選択的に所望の組織に感染す るウイルスベクターを使うことが可能であり、その場合、投与は他の経路(例え
ば、全身に)により行うことができる。
【0163】 触媒的に標的遺伝子mRNA転写物を切断するように設計されたリボザイム分子を
使って、標的遺伝子mRNAの翻訳、したがって標的遺伝子産物の発現を阻止するこ
ともできる。例えば、1990年10月4日公開のPCT国際公開WO90/11364;Sarverら,
1990, Science 247, 1222-1225を参照すること。
【0164】 リボザイムはRNAの特異的切断を触媒する能力をもつ酵素的RNA分子である。(
レビューには、Rossi, 1994, Current Biology 4, 469-471を参照)。リボザイ ム作用の機構は、リボザイム分子の相補的な標的RNAとの配列特異的ハイブリダ イゼーション、および続いて起こるヌクレオチド鎖内部切断を含む。リボザイム
分子の組成は、標的遺伝子mRNAに1つ以上の相補的な配列を含まなければならず
、そして、mRNA切断に関与する公知の触媒配列を含まなければならない。この配
列については、本明細書にその全文が参照により組み入れられる米国特許第5,09
3,246号を参照すること。
【0165】 部位特異的認識配列mRNAを切断するリボザイムを標的遺伝子mRNAを破壊するた
めに使うことができるが、ハンマーヘッドリボザイムの使用が好ましい。ハンマ
ーヘッドリボザイムは、標的RNAと相補的な塩基対を形成するフランキング領域 により指揮される位置でmRNAを切断する。唯一の要件は、標的mRNAが次の2つの
塩基の配列を有することである:5'-UG-3'。ハンマーヘッドリボザイムの構築お
よび作製は当業界では公知であり、さらに詳しくは、Myers, 1995, Molecular B
iology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers
, New York(特に833頁の図4を参照)、および、本明細書にその全文が参照に より組み入れられるHaseloffおよびGerlach, 1988, Nature, 334, 585-591に記 載されている。
【0166】 好ましくは、リボザイムは、切断認識部位が標的遺伝子mRNAの5'末端近くに位
置するように、すなわち、効率を増加しかつ非機能性mRNA転写物の細胞内蓄積を
最小化するように、遺伝子操作する。
【0167】 本発明のリボザイムはまた、天然にテトラヒメナ(Tetrahymena thermophila)
(IVS、またはL-19 IVS RNAとして知られる)に産し、かつThomas Cechと協同研
究者(Zaugら, 1984, Science, 224, 574-578;ZaugおよびCech, 1986, Science
, 231, 470-475;Zaugら, 1986, Nature, 324, 429-433;University Patentes
Inc.による公開国際特許出願第WO 88/04300号;BeenおよびCech, 1986, Cell, 4
7, 207-216)により広範に記載されているようなリボザイムRNAエンドリボヌク レアーゼ(以後、「Cech型リボザイム」と呼ぶ)を含む。Cech型リボザイムは、
標的RNA配列とハイブリダイズし、その後、そこから標的RNAの切断が起こるよう
な8塩基対活性部位を有する。本発明は、標的遺伝子中に存在する8塩基対活性部
位を標的とするこれらのCech型リボザイムを包含する。
【0168】 アンチセンス手法におけるように、該リボザイムは、改変オリゴヌクレオチド
(例えば、改善された安定性、標的設定など)で構成させることができ、かつin
vivoで標的遺伝子を発現する細胞に送達されなければならない。好ましい送達 の方法は、トランスフェクトした細胞が内因性標的遺伝子メッセージを破壊し、
翻訳を阻害するために十分な量のリボザイムを産生するように、強い構成的なpo
l IIIまたはpol IIプロモーターの制御下で、リボザイムを「コードする」DNA構
築物を使うことを含む。リボザイムは、アンチセンス分子と異なり、触媒作用が
あるので、効率のために細胞内濃度がより低い必要がある。
【0169】 内因性標的遺伝子発現はまた、標的を定めた相同的組換えを使って、標的遺伝
子またはそのプロモーターを不活化または「ノックアウト」することによって低
下させることができる(例えば、それぞれ参照により本明細書にその全文が組み
入れられる、Smithiesら, 1985, Nature 317, 230-234;ThomasおよびCapecchi,
1987, Cell 51, 503-512;Thompsonら, 1989, Cell 5, 313-321を参照)。例え
ば、内因性標的遺伝子(標的遺伝子のコード領域または調節領域)に相同的なDN
Aに隣接する突然変異体の非機能性標的遺伝子(または完全に無関係なDNA配列)
を、選択マーカーおよび/またはネガティブ選択マーカーと共にまたは無しに、
使って、in vivoで標的遺伝子を発現する細胞にトランスフェクトすることがで きる。標的を定めた相同的組換えを経由する、該DNA構築物の挿入は、標的遺伝 子の不活化をもたらす。このような手法は、特に、ES(胚幹)細胞の改変を使っ
て、不活性な標的遺伝子をもつ動物子孫を生み出すことができる農場に適してい
る(例えば、ThomasおよびCapecchi, 1987およびThompson, 1989、前掲を参照)
。しかし、この手法は、組換えDNA構築物を直接投与するかまたは適当なウイル スベクターを使ってin vivoで必要とする部位に標的設定するのであれば、ヒト での使用にも適用することができる。
【0170】 あるいは、内因性標的遺伝子発現は、標的遺伝子の調節領域に相補的なデオキ
シリボヌクレオチド配列(すなわち、標的遺伝子プロモーターおよび/またはエ
ンハンサー)を標的として、体内の標的細胞内における標的遺伝子の転写を阻止
する三重らせん構造を形成することによって低下させることができる(一般的に
は、Helene, 1991, Anticancer Drug Des, 6(6), 569-584;Heleneら, 1992, An
n. N.Y. Acad. Sci., 660, 27-36;およびMaher, 1992, Bioassays 14(12), 807
-815、を参照)。
【0171】 転写阻害のための三重らせん形成に使われる核酸分子は、1本鎖であってデオ
キシヌクレオチドからなるものでなければならない。これらのオリゴヌクレオチ
ドの塩基組成は、フーグスティーン型塩基対を介して三重らせん形成を増強する
ように設計しなければならず、一般的に二重らせんの1つの鎖上に存在すべきプ
リンまたはピリミジンのいずれかの大きなストレッチが必要である。ヌクレオチ
ド配列は、ピリミジンに基づくことができ、生成する三重らせんの3つの結合し
た鎖を横断してTATおよびCGC'トリプレットを生じるであろう。ピリミジンリッ チな分子は、その鎖に平行な配向にある二重らせんの1つの鎖のプリンリッチ領
域と相補的な塩基対を与える。さらに、プリンリッチな、例えば、G残基のスト レッチを含有する核酸分子を選ぶことができる。これらの分子は、GC対のリッチ
なDNA二重らせんと三重らせんを形成し、ここで、プリン残基の大部分は標的二 重らせんの1本の鎖上に位置し、三重らせんの3本の鎖を横断するGGCトリプレッ
トを生じる。
【0172】 あるいは、三重らせん形成の標的とすることができる可能性のある配列を、い
わゆる「スイッチバック(switch back)」核酸分子を作製して増加させること ができる。スイッチバック分子は、二重らせんの第1鎖と塩基対を形成した後に
もう一方の鎖と塩基対を形成するように5'-3'、3'-5'というふうに交互に合成さ
れるので、二重らせんの1つの鎖上にプリンまたはピリミジンのいずれかからな
るかなり大きなストレッチが存在する必要はない。
【0173】 突然変異体遺伝子発現を阻害するために本明細書に記載したアンチセンス、リ
ボザイム、および/または三重らせん分子を利用する場合、該技術は、正常標的
遺伝子の対立遺伝子により産生されるmRNAの転写(三重らせん)および/または
翻訳(アンチセンス、リボザイム)を効率よく低下しまたは阻害するので、存在
する正常標的遺伝子産物の濃度が正常な表現型に必要な値より低くなる可能性が
生じる。したがって、このような場合、標的遺伝子活性の実質的に正常なレベル
を確保するために、正常標的遺伝子活性を表す標的遺伝子ポリペプチドをコード
しかつ発現し、アンチセンス、リボザイム、または三重らせん処理のどれかの利
用に対して感受性をもつ配列を含有しない核酸分子を、以下の第5.9.2節に記載 するように、遺伝子治療を介して細胞中に導入することができる。あるいは、標
的遺伝子が細胞外タンパク質をコードする場合には、標的遺伝子活性の必要レベ
ルを維持するために、正常標的遺伝子タンパク質を同時投与することが好ましい
かもしれない。
【0174】 本発明のアンチセンスRNAおよびDNA、リボザイム、および三重らせん分子は、
上に記載した、DNAおよびRNAの合成のための当業界で公知の方法により調製する
ことができる。これらは、例えば、固相ホスホラミダイト化学合成のような、当
業界で公知のオリゴデオキシリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチドを
化学的に合成する技術を含む。あるいは、RNA分子を、アンチセンスRNA分子をコ
ードするDNA配列のin vitroおよびin vivo転写により生成することができる。こ
のようなDNA配列を、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターのような適当なRNA ポリメラーゼプロモーターを組込んでいる様々なベクター中に組込むことができ
る。あるいは、アンチセンスRNAを構成的にまたは使用するプロモーターにより 誘導的に合成するアンチセンスcDNA構築物を、細胞系に安定に導入することがで
きる。
【0175】5.9.2. 遺伝子置換治療 第5.1節に記載したPACAP遺伝子核酸配列を、PACAP介在障害の治療に利用する ことができる。このような治療は、遺伝子置換治療の形態に含まれる。特定的に
は、正常PACAP遺伝子機能を表すPACAP遺伝子産物の産生を指令する正常PACAP遺 伝子またはPACAP遺伝子の一部分の1つ以上のコピーを、限定されるものでない が、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、およびレトロウイルスベクターを含
むベクターを使って、リポソームのようなDNAを細胞中に導入する他の粒子に加 えて、患者内の適当な細胞中に挿入することができる。
【0176】 PACAP遺伝子は脳で発現されるので、このような遺伝子置換治療技術は、PACAP
遺伝子配列を患者内のこれらの細胞型に送達する能力を有しなければならない。
したがって、ある実施様態においては、当業者に公知の技術(例えば、1988年4 月25日公開のPCT出願公開第WO89/10134号を参照)を使って、PACAP遺伝子配列が
血液脳関門を容易に通過して脳内の細胞に送達することを可能にすることができ
る。血液脳関門を横断する能力のある送達については、例えば、上記のようなウ
イルスベクターが好ましい。
【0177】 他の実施様態においては、送達のための技術には、このようなPACAP遺伝子配 列の、PACAP遺伝子配列を発現される細胞部位への直接投与が含まれる。
【0178】 PACAP遺伝子発現および/またはPACAP遺伝子活性の全体レベルを増加するため
に使用し得る追加の方法は、適当なPACAP発現細胞、好ましくは自己細胞を、患 者内の適当な位置に、PACAP介在神経精神医学的障害の症候を改善するのに十分 な数で、導入することを含む。このような細胞は組換体でもまたは非組換体でも
よい。
【0179】 患者のPACAP遺伝子発現の全体レベルを増加するために投与することができる 細胞には、PACAP遺伝子を発現する正常細胞、好ましくは、脳細胞がある。ある いは、細胞、好ましくは自己細胞をPACAP遺伝子配列を発現するように遺伝子操 作することができ、その後、患者中、PACAP介在神経精神医学的障害の症候を改 善するために適当な位置に導入することができる。あるいは、無傷PACAP遺伝子 を発現しかつMHCが整合した個体からの細胞を利用することができ、例えば、脳 細胞が含まれ得る。PACAP遺伝子配列の発現は、必要な細胞型においてそのよう な発現を可能にするように、適当な遺伝子調節配列により制御される。そのよう
な遺伝子調節配列は当業者に公知である。そのような細胞に基づく遺伝子治療技
術は当業者に公知である、例えば、Anderson,米国特許第5,399,349号を参照。
【0180】 投与すべき細胞が非自己細胞であるときは、導入した細胞に対する宿主免疫反
応が現れるのを防止する公知の技術を使って投与することができる。例えば、細
胞を封入形態で導入し、成分の直接細胞外環境との交換を可能にしつつも、導入
細胞が宿主免疫系により認識されないようにすることができる。
【0181】 さらに、上記の第5.8節記載の技術を経由して同定した、PACAP遺伝子産物活性
を調節する能力のある化合物を、当業者に公知の標準技術を使って投与すること
ができる。投与すべき化合物が脳細胞との相互作用に関わる場合は、該投与技術
は、血液脳関門を通過することを可能にする公知の技術を含まなければならない
【0182】5.10. 医薬調製および投与の方法 PACAP遺伝子発現または遺伝子産物活性に影響を与えることが確認された化合 物を、PACAP介在神経精神医学的障害を治療または改善するために治療的に有効 な用量で、患者に投与することができる。治療的に有効な用量は、このような障
害の症候の改善をもたらすために十分な化合物の量を意味する。
【0183】5.10.1. 有効用量 このような化合物の毒性および治療効能は、例えば、LD50(集団の50%の致死 用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するための、細胞 培養物または実験動物における標準の医薬学的方法によって決定することができ
る。毒性と治療効能の間の用量の比は、治療指数であり、比LD50/ED50として表
現することができる。大きい治療指数を表す化合物が好ましい。毒性副作用を表
す化合物を使ってもよいが、未罹患細胞に与える障害の可能性を最小化しそれに
よる副作用を減少する目的で、このような化合物が罹患組織部位を標的とする送
達系を設計するように注意を払う必要がある。
【0184】 細胞培養アッセイおよび動物研究から得たデータを、ヒトに使うための用量範
囲を処方するのに使うことができる。このような化合物の用量は、好ましくは、
毒性がわずかか全く伴なわないED50を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、こ
の範囲内で使用する用量形態および利用する投与経路に依存して変化し得る。本
発明の方法に使われる任意の化合物についての治療有効用量は、最初は細胞培養
アッセイから評価することができる。動物モデルにおいて用量を明確化し、細胞
培養物中で決定したIC50(すなわち、症候の最大阻害の半分を達成する試験化合
物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成することができる。このような情報を
使って、ヒトにおいて有用な用量をさらに正確に決定することができる。血漿中
のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる
【0185】5.10.2. 製剤および使用 本発明による使用のための医薬組成物は、従来の方法で、1つ以上の生理学的
に許容される担体または賦形剤を使って製剤することができる。
【0186】 したがって、該化合物とその生理学的に許容される塩および溶媒を、吸引もし
くは吸入(口または鼻のいずれかを通して)による投与または経口、舌下、非経
口もしくは直腸投与用に製剤することができる。
【0187】 経口投与用には、医薬組成物は、例えば錠剤またはカプセルの形態をとり、従
来の方法により、結合剤(例えば、予めゲル化したトウモロコシ澱粉、ポリビニ
ルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、
ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤沢剤(例えば
、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガ
イモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば
、ラウリル硫酸ナトリウム)のような製薬上許容される賦形剤を用いて、調製す
ることができる。錠剤は、当業界で公知の方法によりコートすることができる。
経口投与用の液調製物は、例えば、溶液、シロップまたは懸濁剤の形態をとるこ
とができるし、または、使用前に水もしくは他の適当なビヒクルを用いて調合す
る乾燥製品として提示することもできる。このような液調製物は、従来の方法に
より、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素添
加食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例
えば、アーモンドオイル、油状エステル、エチルアルコールまたは分留した植物
油);および保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエ ートまたはソルビン酸)のような製薬上許容される添加剤を用いて、調製するこ
とができる。該調製物は、バッファー塩、風味剤、着色剤および甘味剤を適当に
含有することができる。
【0188】 経口投与用の調製物は、活性化合物の制御放出を与えるように適当に製剤する
ことができる。
【0189】 舌下投与用には、該組成物は、従来の方法で製剤化される、錠剤またはトロー
チ剤の形態をとることができる。
【0190】 吸入による投与用には、本発明による使用のための化合物は、加圧パックまた
は噴霧器からのエーロゾルスプレイ提示の形態で、適当な噴霧剤、例えばジクロ
ロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタ
ン、二酸化炭素または他の適当なガスを使用して、送達するのが好都合である。
加圧エーロゾルの場合、用量単位は、計量した量を送達するバルブを設けて決定
することができる。吸引器または吸入器での使用には、該化合物とラクトースま
たはデンプンのような適当な粉末ベースとの粉末混合物を含有する、例えば、ゼ
ラチンのカプセルおよびカートリッジを製剤することができる。
【0191】 該化合物を、注入による、例えば、ボーラス注射または連続輸液による非経口
投与用に製剤することができる。注入用の製剤は、単位用量形態、例えばアンプ
ルでまたは多用量容器で、保存剤を添加して、提示することができる。該組成物
は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、溶剤または乳剤の形態をとることがで
き、また、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤のような製剤用物質を含有す
ることができる。あるいは、活性成分は、使用前に適当なビヒクル、例えば発熱
物質を含まない無菌水を用いて調合する粉末形態であってもよい。
【0192】 該組成物はまた、例えばココアバターまたは他のグリセリドのような従来の座
薬基剤を含有する、座薬または保持浣腸のような直腸用組成物に製剤することが
できる。
【0193】 以上記載した製剤に加えて、該化合物はまた、デポ調製品として製剤すること
ができる。このような長期作用製剤は、移植(例えば、皮下または筋内に)によ
りまたは筋内注射により投与することができる。したがって、例えば、該化合物
は、適当なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳液)
もしくはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体、例えば難溶製塩として
製剤することができる。
【0194】 該組成物は、もし所望であれば、活性成分を含有する1つ以上の単位用量剤型
を含有するパックまたはディスペンサーデバイスで提示することができる。パッ
クは、例えば、ブリスターパックのように金属またはプラスチック箔を含んでも
よい。パックまたはディスペンサーデバイスは、投与の指示書を付すことができ
る。
【0195】6. 実施例:PACAP遺伝子の第18染色体への局在化 本節で提示する実施例は、第1に神経精神医学的障害に関係する領域が存在す
るヒト第18染色体の短腕上の約310kbのインターバルを定義し、そして、第2に 、この領域内のマッピングとしてPACAP遺伝子を同定する研究を記載した。
【0196】6.1. 材料と方法 6.1.1. 連鎖不平衡 連鎖不平衡(LD)研究を、神経精神医学的障害(BP-I)患者の集団サンプルか
らのDNAを使って実施した。集団サンプルおよびLD技術は、(Freimerら, 1996,
Nature Genetics 12, 436-441)に記載のとおりであった。本発明のLD研究は、 以下に記載した物理的マッピング技術により同定した追加の物理的マーカーを利
用した。
【0197】6.1.2. 酵母人工染色体(YAC)マッピング 物理的マッピングについては、ヒト配列を含有する酵母人工染色体(YAC)を 、公に利用可能なマップ(Cohenら, 1993, C.R. Acad. Sci. 316, 1484-1488) に基づいて分析対象の領域にマッピングした。その後、遺伝子的に定義された候
補領域周辺のデータベースからの利用可能なマイクロサテライトマーカーおよび
非多型STSを用いて、標準短タグセグメント(STS)-含量マッピングを実施する ことにより、YACを整列して、コンティグを再構築した。
【0198】6.1.3. 細菌人工染色体(BAC)マッピング ヒト第18染色体の短腕からのSTSを使って、ヒトBACライブラリー(Research G
enetics, Huntsville, AL)をスクリーニングした。該BACの末端をクローン化す
るか、または直接配列決定した。該末端配列を使って隣りの重複BACを増幅した 。それぞれのBACから、追加のマイクロサテライトを同定した。特定的に、ラン ダムに切断されたライブラリーを、定義された遺伝子インターバル内の重複BAC から調製した。BAC DNAをネビュライザー(CIS-US Inc., Bedford, MA)で切断 した。600から1,000bpのサイズ範囲の断片をサブライブラリー生成に使った。サ
ブライブラリーからのマイクロサテライト配列を、対応するマイクロサテライト
プローブにより同定した。このような反復配列の周囲の配列を得て、ゲノムDNA 用のPCRプライマーを開発することができた。
【0199】6.1.4. 放射ハイブリッド(RH)マッピング 標準のRHマッピング技術をStanford G3 RHマッピングパネル(Research Genet
ics, Huntsville, AL)に応用して、分析対象の領域の全てのマイクロサテライ トマーカーと非多型STSを整列した。
【0200】6.1.5. サンプル配列決定 定義された遺伝子領域内の全てのBACから、ランダムに切断されたライブラリ ーを作った。領域の8倍配列範囲を達成する目的で、約310kb領域内の約9,000サ ブクーロンを、ベクタープライマーにより配列決定した。全ての配列を自動配列
分析パイプラインを通して処理することにより、品質を評価し、ベクター配列を
除去し、反復配列をマスクした。その後、得られた配列を、公知のDNAおよびタ ンパク質データベースとBLASTアルゴリズムを使って比較した(Altschulら, 199
0, J. Molec. Biol., 215, 403-410)。
【0201】6.2. 結果 双極性情動障害(BAD)ヒト遺伝子に含まれる遺伝子領域は、ヒト第18染色体 の長腕(18q)および短腕(18p)の部分にマップされ、マーカーD18S469とD18S5
54の間の約6-7cMの広い18q遺伝領域を含むと先に報じられている(それぞれ参照
により本明細書にそれぞれの内容が組み入れられる1996年3月28日および1996年8
月23日に出願された米国仮出願第60/014,498号および第60/023,438号;Freimer ら, 1996, Neuropsychiat. Genet. 67, 254-263;Freimerら, 1996, Nature Gen
etics 12, 436-441)それぞれの全内容は本明細書に参照により組み入れられる 。
【0202】 連鎖不平衡 遺伝子配列を同定することを試みるのに先立って、さらに神経精
神医学的障害領域をさらに狭める研究を実施した。具体的には、連鎖不平衡(LD
)分析を、先の第6.1節に記載した集団サンプルおよび技術を使って実施し、該 技術は以下に記載した物理的マッピング技術によって同定した追加の物理的マー
カーを利用したものである。
【0203】 YAC、BACおよびRH技術を使う高解像物理的マッピング 連結およびLDマッピン
グのために必要な遺伝子マーカーの正確な順序を与えるために、および、より精
査なマッピングのための新しいマイクロサテライトマーカー開発を手引きするた
めに、18q23候補領域の高解像物理的マップを、YAC、BACおよびRH技術を使って 開発した。
【0204】 このような物理的マッピングには、第1に、YACを分析対象の第18染色体領域 にマッピングした。マッピングしたYACコンティグをフレームワークとして使い 、先に記載したD18S469-D18S554領域のほとんどに広がる公に利用可能なマーカ ーD18S1161およびD18S554からの領域もマップし、BACでコンティグした。コンテ
ィグしたBACからのサブライブラリーを構築し、それからマイクロサテライトマ ーカー配列を同定し、配列決定した。
【0205】 正確な物理的マップの開発を確保するため、放射ハイブリッド(RH)マッピン
グ技術を分析対象の領域に独立して適用した。RHを使って、該領域内の全てのマ
イクロサテライトマーカーと非多型STSを整列した。このようにして、最終的に 構築された高解像物理的マップを、RHマッピングおよびSTS含量マッピングから のデータを使って取得した。
【0206】 新しく同定した310kb神経精神医学的障害領域内のBACクローンを分析して、該
領域内の特異的遺伝子を同定した。サンプル配列決定、cDNA選択および転写マッ
ピング分析の組合わせを結合して、配列を暫定転写ユニットに並べた、すなわち
、目的とするゲノム領域内の遺伝子のコード配列を暫定的に描いた。
【0207】 同定した転写ユニットの1つをPACAPと名づけた。
【0208】 本発明は、本明細書に記載され、本発明の個別の様態の単一の説明として意図
された特定の実施様態により、範囲が制限されるものではなく、そして機能的に
均等である方法と成分は本発明の範囲内にある。実際に、先の記載および添付の
図面から、本明細書に示され記載されたものに加えて本発明の様々な改変が、当
業者には明らかになるであろう。このような改変は添付した特許請求の範囲内に
あると意図している。
【0209】 本明細書に述べられた全ての出版物および特許出願は、本明細書に、それぞれ
の個々の出版物または特許出願が具体的にかつ個別に参照により組み入れられる
と示されたのと同じ程度に、参照により組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ヒトPACAP遺伝子の配列。アミノ酸配列が示される。
【図2】 ヒトPACAP遺伝子のゲノム配列。エキソンは太字で示されており、5'UTRには下
線を引いた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ,BA ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU, CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GD,G E,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS ,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK, LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,M N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU ,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM, TR,TT,UA,UG,UZ,VN,YU,ZA,Z W (72)発明者 チェン,ホン アメリカ合衆国 02146 マサチューセッ ツ州,ブロックライン,アスピンワル ア ベニュー ナンバー2 46 (72)発明者 フレイマー,ネルソン,ビー. アメリカ合衆国 94131 カリフォルニア 州,サンフランシスコ,29ティーエイチ ストリート 630 Fターム(参考) 2G045 AA25 AA35 AA40 DA12 DA13 FB02 FB03 FB07 FB08 4B024 AA01 AA11 CA02 CA09 CA20 DA03 HA11 HA12 HA14 HA19 4B063 QA01 QA13 QA17 QA18 QA19 QQ08 QQ43 QQ58 QQ91 QR14 QR48 QR55 QR62 QS25 QS34

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト被験者がPACAP媒介型神経精神障害を有しているかまた は該障害を発症する危険性を有しているかを判定するための方法であって、 該被験者のPACAP遺伝子(配列番号1)中の遺伝子突然変異の存在または不在を検
    出するステップを含んでなり、該遺伝子突然変異が、ヌクレオチド置換、ヌクレ
    オチド挿入、およびヌクレオチド欠失からなる群より選択され、該遺伝子突然変
    異の結果として、野生型PACAPアミノ酸配列以外のアミノ酸配列を有するPACAPタ
    ンパク質が産生され、該遺伝子突然変異の存在により、PACAP媒介型神経精神障 害を有しているかまたは該障害を発症する危険性を有している被験者が識別され
    るものである、上記方法。
  2. 【請求項2】 a) 前記被験者由来の核酸分子を含有しているサンプルを取 得するステップと、 b) PACAPタンパク質をコードしている該サンプル中の核酸分子の増幅を、該PA
    CAPタンパク質をコードしている核酸分子に選択的にアニーリングして該核酸分 子を増幅する増幅プライマーを用いて行うステップと、 c) 前記遺伝子突然変異が存在するか否かを判定するステップと、 を更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 ステップc)の前記判定が、前記PACAPタンパク質をコードし ている前記核酸分子の配列決定を含む、請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記PACAPタンパク質をコードしている前記核酸分子のヌク レオチド配列が決定される、請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 a) 前記被験者由来の核酸分子を含有しているサンプルを取 得するステップと、 b) 前記PACAPタンパク質をコードしている該サンプル中の核酸分子の検出を、
    前記PACAPタンパク質をコードしている核酸分子に選択的にハイブリダイズする 核酸プローブを用いて行うステップと、 c) 前記遺伝子突然変異が存在するか否かを判定するステップと、 を更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
  6. 【請求項6】 a) 前記被験者由来の核酸分子を含有しているサンプルを取 得するステップと、 b) 前記PACAPタンパク質をコードしている該サンプル中の核酸分子の検出を、
    制限エンドヌクレアーゼによる該核酸分子の消化および前記PACAPタンパク質ま たはその断片をコードしている核酸分子に選択的にハイブリダイズする核酸プロ
    ーブを用いて行うステップと、 c) 前記遺伝子突然変異が存在するか否かを判定するステップと、 を更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記遺伝子突然変異が塩基の変化である、請求項1に記載の
    方法。
  8. 【請求項8】 改変されたPACAPタンパク質が前記被験者中で産生されたか 否かを判定することによって、前記遺伝子突然変異の検出が行われる、請求項1
    に記載の方法。
  9. 【請求項9】 a) 前記被験者由来のタンパク質分子を含有しているサンプ ルを取得するステップと、 b) 該サンプル中のPACAPタンパク質の検出を、該PACAPタンパク質に結合する 抗体を用いて行うステップと、 c) 該PACAPタンパク質が、前記遺伝子突然変異を含有している核酸分子により
    コードされているか否かを判定するステップと、 を更に含んでなる、請求項8に記載の方法。
  10. 【請求項10】 PACAP媒介型神経精神障害の治療に使用可能な化合物を同 定するための方法であって、 a) 試験化合物をPACAPタンパク質に接触させるステップと、 b) 該試験化合物が該PACAPタンパク質に結合するか否かを判定するステップと
    、 c) 該PACAPタンパク質に結合する試験化合物を、PACAP媒介型神経精神障害の 治療に使用可能な化合物として選択するステップと、 を含んでなる、上記方法。
  11. 【請求項11】 野生型活性を有するPACAPが使用される、請求項10に記 載の方法。
  12. 【請求項12】 改変された活性を有するPACAPが使用される、請求項10 に記載の方法。
  13. 【請求項13】 PACAP媒介型神経精神障害の治療に使用可能な化合物を同 定するための方法であって、 a) PACAP遺伝子を発現させる細胞を試験化合物の存在下および不在下でインキ
    ュベートするステップと、 b) 該試験化合物の存在下および不在下でPACAP遺伝子産物の活性を測定するス
    テップと、 c) 該PACAP遺伝子産物の活性を改変する試験化合物を、PACAP媒介型神経精神 障害の治療に使用可能な化合物として選択するステップと、 を含んでなる、上記方法。
  14. 【請求項14】 野生型活性を有するPACAPが使用される、請求項13に記 載の方法。
  15. 【請求項15】 改変された活性を有するPACAPが使用される、請求項13 に記載の方法。
  16. 【請求項16】 前記PACAP媒介型神経精神障害が双極性情動障害である、 請求項1に記載の方法。
  17. 【請求項17】 前記PACAP媒介型神経精神障害が分裂性情動障害の躁病型 である、請求項1に記載の方法。
JP2000542473A 1998-04-03 1999-04-02 神経精神障害を診断および治療するための方法および組成物 Pending JP2002510500A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US8057098P 1998-04-03 1998-04-03
US60/080,570 1998-04-03
PCT/US1999/007401 WO1999051762A1 (en) 1998-04-03 1999-04-02 Methods and compositions for the diagnosis and treatment of neuropsychiatric disorders

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002510500A true JP2002510500A (ja) 2002-04-09

Family

ID=22158229

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000542473A Pending JP2002510500A (ja) 1998-04-03 1999-04-02 神経精神障害を診断および治療するための方法および組成物

Country Status (5)

Country Link
EP (1) EP1068347A1 (ja)
JP (1) JP2002510500A (ja)
AU (1) AU3469699A (ja)
CA (1) CA2324510A1 (ja)
WO (1) WO1999051762A1 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016510342A (ja) * 2013-02-15 2016-04-07 トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティThomas Jefferson University 腫瘍画像化のためのキット
JP2019513398A (ja) * 2016-04-15 2019-05-30 アルダー バイオファーマシューティカルズ、インコーポレイテッド ヒト化抗pacap抗体及びそれらの使用
US11254741B2 (en) 2015-04-16 2022-02-22 H. Lundbeck A/S Anti-PACAP antibodies

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20130143954A1 (en) * 2010-06-24 2013-06-06 Genomictree, Inc. Recombinant vector for suppressing proliferation of human papilloma virus cells including adenylate cyclase activating polypeptide 1 (pituitary) gene and pharmaceutical composition for treating human papilloma virus
CA3070941A1 (en) * 2017-07-25 2019-01-31 Dignity Health Methods of treating neurodegenerative diseases

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5198542A (en) * 1989-06-20 1993-03-30 Takeda Chemical Industries, Inc. Dna encoding a pitvitary adenylate cyclase activating protein and use thereof
DE69132864T2 (de) * 1990-03-17 2002-08-08 Takeda Chemical Industries, Ltd. Antikörper gegen hypophysäre adenylatzyklase aktivierende peptid-pacap, hybridome und bestimmung von pacap
US5521069A (en) * 1990-08-10 1996-05-28 Takeda Chemical Industries, Ltd. Genomic DNA exons having exons encoding human pituitary adenylate cyclase activity peptide with 38 amino acids residues(PACAP38) and a promoter thereof

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016510342A (ja) * 2013-02-15 2016-04-07 トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティThomas Jefferson University 腫瘍画像化のためのキット
US11254741B2 (en) 2015-04-16 2022-02-22 H. Lundbeck A/S Anti-PACAP antibodies
US11993648B2 (en) 2015-04-16 2024-05-28 H. Lundbeck A/S Screening method for identifying anti-PACAP antibodies or antibody fragments suitable for use in treating or preventing PACAP-associated photophobia or light aversion
US12077581B2 (en) 2015-04-16 2024-09-03 H. Lundbeck A/S Anti-PACAP antibodies and uses thereof
JP2019513398A (ja) * 2016-04-15 2019-05-30 アルダー バイオファーマシューティカルズ、インコーポレイテッド ヒト化抗pacap抗体及びそれらの使用
JP2019515671A (ja) * 2016-04-15 2019-06-13 アルダー バイオファーマシューティカルズ、インコーポレイテッド 抗pacap抗体及びそれらの使用
US11352409B2 (en) 2016-04-15 2022-06-07 H. Lundbeck A/S Anti-PACAP antibodies and uses thereof
JP7116685B2 (ja) 2016-04-15 2022-08-10 エイチ. ルンドベック アー/エス ヒト化抗pacap抗体及びそれらの使用
US11938185B2 (en) 2016-04-15 2024-03-26 H. Lundbeck A/S Treatment of headache, migraine and/or photophobia conditions using humanized anti-PACAP antibodies

Also Published As

Publication number Publication date
EP1068347A1 (en) 2001-01-17
WO1999051762A1 (en) 1999-10-14
CA2324510A1 (en) 1999-10-14
WO1999051762A9 (en) 2000-05-25
AU3469699A (en) 1999-10-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6248528B1 (en) Methods and compositions for the diagnosis and treatment of neuropsychiatric disorders
US5866412A (en) Chromosome 18 marker
US5955355A (en) Chromosome 18 marker
WO2004040016A2 (en) Genetic markers on chromosome 12 associated to bipolar or unipolar disorders
WO1998042362A9 (en) Methods and compositions for the diagnosis and treatment of neuropsychiatric disorders
AU3354999A (en) Methods and compositions for diagnosing and treating chromosome-18p related disorders
JP2002510500A (ja) 神経精神障害を診断および治療するための方法および組成物
US5914394A (en) Methods and compositions for the diagnosis and treatment of neuropsychiatric disorders
US5939316A (en) Chromosome 18 marker
CA2298474A1 (en) Methods and compositions for the diagnosis and treatment of neuropsychiatric disorders
WO1998042723A9 (en) Methods and compositions for the diagnosis and treatment of neuropsychiatric disorders
WO1999035290A9 (en) Methods and compositions for the diagnosis and treatment of neuropsychiatric disorders
MXPA00009702A (en) Methods and compositions for the diagnosis and treatment of neuropsychiatric disorders
MXPA00009801A (en) Methods and compositions for the diagnosis and treatment of neuropsychiatric disorders
WO2001034630A1 (en) METHODS AND COMPOSITIONS FOR DIAGNOSING AND TREATING CHROMOSOME 18q RELATED DISORDERS
MXPA00008949A (en) METHODS AND COMPOSITIONS FOR DIAGNOSING AND TREATING CHROMOSOME-18p RELATED DISORDERS
WO2001034771A2 (en) METHODS AND COMPOSITIONS FOR DIAGNOSING AND TREATING CHROMOSOME 18q RELATED DISORDERS
WO2001034773A9 (en) METHODS AND COMPOSITIONS FOR DIAGNOSING AND TREATING CHROMOSOME 18q RELATED DISORDERS
WO2001034841A1 (en) METHODS AND COMPOSITIONS FOR DIAGNOSING AND TREATING CHROMOSOME 18q RELATED DISORDERS
WO2001034772A2 (en) METHODS AND COMPOSITIONS FOR DIAGNOSING AND TREATING CHROMOSOME 18q RELATED DISORDERS