本発明は、自動車の車載配線などの、いわゆるワイヤーハーネスの技術分野において、使用する電線の保護や識別のためのチューブを、電線の外面に装着(挿入)する技術に関する。特には、チューブ装着工程の生産効率改善と省力化に寄与しうるチューブ挿入装置や、チューブ挿入電線の製造方法などに関する。なお、本明細書においては、「チューブの内孔に電線を挿入する」ことを、「チューブを電線に挿入する」ともいう。
車載部品やモータ類用の配線(ワイヤーハーネス)においては、電線を使用環境から保護して耐久性を向上させるため、電線に保護チューブを挿入することが行われている。ワイヤーハーネスに用いられる電線及びその保護チューブは、通常、両者ともに柔軟で、曲がり癖が付いて、取り扱いがしづらくなるものが多い。電線を保護チューブに挿入する作業や、チューブ挿入後の電線の端処理(端子圧着や半田処理等)の作業は、手作業にて行うのが一般的である。
後記の先行技術には、チューブ挿入を機械で自動的に行うものもある。しかしながら、それらの先行技術においては、一本の電線に保護チューブを挿入しており、複数本の電線をまとめたうえで、それらの複数の電線の外側にチューブを装着するものはない。
特開2009-45699号公報「チューブ挿入装置」
特開2009-43579号公報「電線の外装保護チューブの装着方法」
本発明は、チューブ挿入工程の生産効率改善と省力化に寄与しうるチューブ挿入装置などを提供することを目的とする。特には、複数本の電線をまとめてチューブ挿入できる装置を提供することを目的とする。また、複数本の電線を密着整列させる技術や、電線の曲がりを矯正する技術を提供することを目的とする。さらに、半田槽の上面にある酸化半田を半田槽の外側に掻きだす技術を提供することを目的とする。
この「課題を解決するための手段」、及び、「特許請求の範囲」、並びに、明細書の一部においては、添付図各部の参照符号を括弧書きして示すが、これは単に参考のためであって、権利範囲を添付図のものに限定する意図はない。
本発明の一つの電線整列装置(43・41)は、 複数の電線(W1、W2、W3)を並列に重ねて整列する装置(43・41)であって、 前記複数の電線の端部を把持する整列クランプ(432・438)と、 該整列クランプ(432・438)に、前記複数の電線を一本ずつ送り込む電線送込み手段(41)と、 前記整列クランプ(432・438)に送り込まれた電線の曲がりを矯正するとともに、複数の電線を密着整列させる電線矯正密着手段(433)と、を備えることを特徴とする。
本発明の一つのチューブ挿入装置は、整列された複数の電線WをチューブTuの内孔に挿入する装置(61・43)であって、 前記複数の電線Wを所望の姿勢に保持するクランプ(432・436・438)を有する電線保持手段(43)と、 前記チューブTuを所望の姿勢に保持するクランプ(613・621)を有するチューブ保持手段(61)と、 前記電線保持手段(43)と前記チューブ保持手段(61)を、前記電線Wと前記チューブTuとが略同軸の状態で相対的に移動させる移動手段と、を備える。このチューブ挿入装置は、前記チューブ保持手段(61)が、前記チューブTuの先端にセットされる、前記複数の電線Wの前記チューブTu内孔への進入を案内するガイドブロック(611)を有することが好ましい。
本発明の一つの電線端処理チューブ挿入装置は、電線を送給する電線送給部(11・13)と、送給された電線を任意の長さに切断する電線切断部(15)と、電線の端部の被覆を剥離する電線被覆剥離部(15)と、被覆剥離された前記電線端部に端処理を施す端処理部(21・23・25・37)と、電線を各部に搬送するクランプ搬送部(13・31)と、端処理された電線をチューブTuに挿入するチューブ挿入部(61・43)、を備え、 前記チューブ挿入部(61・43)が上記チューブ挿入装置であることを特徴とする。
本発明の他の電線端処理チューブ挿入装置は、さらに、端処理された複数の電線を整列させる電線整列部(43)を備え、整列された複数の電線をチューブTuに挿入する。
本発明の一つの端処理チューブ挿入電線の製造方法は、電線を送給する工程と、送給された電線を任意の長さに切断する工程と、該電線の端部の被覆を剥離する被覆剥離工程と、 被覆を剥離した前記電線の端部に端処理を施す端処理工程と、端処理された電線をチューブTuに挿入するチューブ挿入工程と、 を備え、上記電線端処理チューブ挿入装置を用いることを特徴とする。
本発明の他の端処理チューブ挿入電線の製造方法は、さらに、端処理された複数の電線を整列させる電線整列工程を備え、整列された複数の電線をチューブTuに挿入する。
本発明によれば、チューブ挿入工程の生産効率改善と省力化に寄与しうるチューブ挿入装置などを提供できる。特には、複数本の電線をまとめてチューブ挿入できる装置を提供できる。また、複数本の電線を密着整列させる技術や、電線の曲がりを矯正する技術を提供できる。さらに、半田槽の上面にある酸化半田を半田槽の外側に掻きだす技術を提供できる。
自動端子端処理(半田や端子圧着など)を行う機械に、チューブリール材からのチューブ供給・切断とチューブ挿入を行う装置を併設することにより、端処理・チューブ装着電線製造における省力化を実現できる。
端処理電線の整列、曲がり矯正、あるいは、保護チューブの切断、曲がり矯正、チューブ挿入時における電線姿勢の矯正案内を実現することで、複数本電線に対して保護チューブを挿入する自動装置・方法を提供できる。
本発明の実施の形態に係る、端処理チューブ挿入電線を製造する装置の全体構成を模式的に示す平面図である。
本発明の実施形態に係る端処理チューブ挿入電線製造装置における、電線整列部43、及び、電線持替部41の構成概要を示す側面図である。
図2の電線整列部43の構成概要を示す平面図である。
図2の電線整列部43の構成概要を示す斜視図である。
図2の電線整列部43の整列クランプ432・438、及び、電線持替部41の構成を示す正面図である。
整列クランプツメ4321の周りの具体的構成を示す正面図である。(A)は、全体図であり、(B)は整列スリット4322内の構造を拡大して示す正面図である。
電線整列部43の整列クランプ432・438、及び、電線持替部41の主要部の動作(電線密着整列動作)の流れを示す図である。
本発明の実施形態に係るチューブ挿入装置の、チューブ引出挿入部61、及び、電線整列部43の全体構成を示す側面図である。
図8のチューブ引出挿入部61におけるチューブガイドブロック611の周辺を拡大して示す図である。
本実施形態のチューブ挿入装置における、三本の縦整列させた電線W1・W2・W3に、チューブTuを装着(挿入)していく動作を、順序を追って示す模式的側面図である。
(A)は、本発明の一実施形態に係るチューブ挿入装置における、チューブ挿入不良検査センサの配置状態を模式的に示す側面図である。(B)は、挿入不良時の電線端部の状況例(代表的な例)を表す模式的側面図である。
本発明の実施形態に係る半田酸化膜掻き取り装置の構成及び作用を示す断面図である。
図12に続く、半田酸化膜掻き取り装置の作用を示す断面図である。
Wf;1側電線、Ws;2側電線、Tu;チューブ
1;端処理チューブ挿入電線製造装置
11;電線リールスタンド、13;電線横搬送部1側、15;電線切断部
21;ヨジリユニット、23;フラックスユニット、25;半田ユニット
250;半田槽、250b;半田溜め、250f;スロープ、250g;下端部、250h;上端部
251;テーブル、252;溶融半田、252b;表面、253;堆積酸化膜、253´;酸化膜堆積物、255;アーム、256;第一の掻きツメ、256b;下端部、256f;貼り合わせ部
258;第二の掻きツメ、258b;下端部、258f;貼り合わせ部、259;酸化膜溜め
31;電線引出部、33;電線横搬送部2側、35;剥離・検査部
37;端子圧着部、38;カメラ検査部、39;NG品排出位置
41;電線持替部(電線送込み手段)、41・43;電線整列装置
411;昇降シリンダ(機構)、413;開閉アクチュエータ(機構)
415;電線持替クランプ(クランプ本体)、4151;ツメ
43;電線整列部(電線保持手段)、432;整列クランプ、4320;整列スリット、
4321;整列クランプツメ(電線把持ツメ)、4321a;テーパー
4321b;突出部、4321c;下部、4321f;柱部、4321´b;スリット側端面
4322;サブクランププレート(サブクランプ部材)、
4322b;先端部、4322f;上側の面、4322j;下側の面(電線把持面)
4322´;上のサブクランププレート、4322´b;先端部、4322´f;下端部4322´
4323;開閉機構(アクチュエータ)、4323b;柱部、4323x・4323y;ハンド
4324;ボールプランジャー(スプリング)、
433;押下げ手段(電線矯正密着手段)、4331;押下げツメ(整列ツメ)、
4331b;先端部、4331f;傾斜部
4333;左右移動シリンダ、4337;押下げツメガイド、4339;昇降シリンダ
434;整列ガイド、4341・4343;ガイド片、4345;整列ガイド開閉機構
4351;昇降台、4355;昇降機構(シリンダ)、4356;位置調整ブロック、
4357;クランプ基台、4358;前後スライド、4359;ボールスクリュー
436;中間クランプ(中間ガイド)、4361;電線ガイド板、4363;昇降フレーム、
4364:電線ガイド板、4364b:溝、4365;クランプ本体、4366;中間クランプ開閉機構、
4367;直動リニアブッシュ、4368;スプリング押しバー、4369;昇降アクチュエータ
438;整列クランプ
49;OK品排出位置
51;チューブリールスタンド、53;チューブ供給部
61・43;チューブ挿入装置、61;チューブ引出挿入部(チューブ保持手段)
611;ガイドブロック、6110;ガイドチップ、6110b;入り口(後側)テーパー部、6110a;ガイド孔、6110c;入り口、6110f;中ストレート部、
6110h; 空気吸引吹き出し(エアブロー)口、6110k;中テーパー部、
6110s;前側ストレート部
6111;クランプツメ(ブロック本体)、6111b;内孔、6111h;面取り
6113;チューブクランプガイド機構、6117;前後移動機構
613;チューブ挿入クランプ後側、6131;クランプ本体、6133;開閉アクチュエータ
619;フレーム
621;チューブ挿入クランプ、6211;クランプツメ、6213;開閉アクチュエータ
6215;開閉アクチュエータ、6217;前後移動機構、6218;引出クランプ
801;挿入不良検査センサ(光電センサ)、803;挿入不良判定部
発明を実施するための良好な形態
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、前後方向は電線Wの軸方向であり、左右方向(横方向)は電線クランプ搬送部が電線Wを横持ちする方向であり、上下方向は圧着機のクリンパーの昇降方向(地球重力方向に限定されない)である。
最初に、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る端処理チューブ挿入電線を製造する装置の全体的な構成を説明する。
端処理チューブ挿入電線製造装置1は、以下の各部を備える。
電線リールスタンド11(電線1~4種);ロール状に巻かれた電線束(図示されず)から電線W1を縦方向に送り出す。複数種類(例えば4種)の電線を一種類毎に巻いた複数のリールを備える。
電線横搬送部1側13(電線セレクタ機構及び電線送給機構付き);リールスタンド11から、電線W1を巻き解して前方に送る。複数種の電線のうちから、所望の(指示された)種類の電線を選択する機構を有する。また、巻き解した電線Wfを左右方向(横方向)に搬送し、電線Wfの先端(トップ)の端処理を行う下述の各部15・21・23・25に、電線トップを配送する。
なお、電線セレクタ機構は、例えば、特開2002-18571号や、特開2002-25363号 に記載のものと同様のものを用いることができる。
電線送給機構は、例えば、特開2012-69527号、特開2011-204527号、特開2005-231783号、特開平10-236733号、特開平10-21764号などに記載のものと同様のものを用いることができる。
電線切断部15;送給される電線Wfを切断し、2側電線(先後切断電線)Wsの長さを決める。なお、電線切断部15の後側の電線を1側電線Wfという。
電線引出部(測長付)31;切断部15を通過した電線を前方向に、所望の長さ引き出す。製品となる端処理電線の長さに対応した位置で電線引き出しを停止し、上記電線切断部15で電線後端を切断する。両端切断された電線を2側電線Wsという。
電線引出部(測長付)は、例えば、特開2020-010588号や、特開平10-193019号などに記載のものと同様のものを用いることができる。
電線切断部15の図1の右方には、1側電線Wfのトップを皮むき(被覆剥離)するとともに電線素線に捩じりを加えるヨジリユニット21、捩られたトップにフラックスを付着させるフラックスユニット23、及び、フラックスの付着した電線端部に半田を付着させる半田ユニット25が、この順序で近接して配置されている。これらの半田処理ユニット21・23・25は、後述する半田槽の酸化膜掻きツメ関係の構成を除いては、特開2014-179274号や、実登3020797号などに記載のものと同様のものを用いることができる。
電線横搬送部2側33;2側電線Wsをクランプし横方向に搬送する。同搬送部33は、2側電線Wsを電線引出部31で受け取り、電線W3の後端(テール)の端処理を行う下述の各部35・37・38に搬送し、電線持替部41に2側電線Wsを渡す。この電線横搬送部2側33は、エアシリンダ式の電線クランプや昇降機構、ボールねじ式の横搬送機構などを有する、公知の一般的なものを用いることができる。
剥離・検査部35;2側電線Wsのテールの被覆を剥離し、その剥離状態を検査する。
端子圧着部37;2側電線Wsのテールに端子を圧着する。
カメラ検査部38;端子の圧着状態を検査する。
NG品排出位置39;カメラ検査部38でNG(不合格)となった2側電線Wsが排出される。
これらの各部35・37・38・39は、公知の一般的なものを用いることができる。
電線持替部41;電線横搬送部2側33から、両端処理済み(トップは半田付け・テールは端子圧着)の2側電線Wsを受け取り、電線整列部43に渡す。
電線整列部43;電線持替部41から電線を受け取り、整列させる。本実施形態では、電線持替部41から、電線を一本ずつ三回(計三本)受け取り、縦(上下)積みで、三本の電線を整列する。
電線持替部41、及び、電線整列部43の構成・作用については、図2~図7や図10を参照しつつ、詳しく後述する。
チューブリールスタンド51;端処理電線(2側電線Ws)の外周に装着するチューブTuを巻いたリールから巻き解いて、チューブ供給部53に送る。
チューブ供給部53;チューブTuを所望長さに切断し、下記チューブ引出挿入部61に供給 する。
これらの各部51・53は、公知の一般的なものを用いることができる。
チューブ引出挿入部61;切断したチューブTuを、図の右方の電線整列部43と前後方向に並ぶ位置まで、搬送する。その後、チューブTuを後方向の電線整列部43内に進めて、2側電線Wsの外周に、トップ側から、チューブTuを装着する(2側電線WsをチューブTu内に挿入する)。チューブ引出挿入部61、及び、それに関連する電線整列部43の構成・作用については、図8~図10を参照しつつ、詳しく後述する。
OK品排出位置49;チューブTuの装着された両端端処理電線の合格品(製品)の払い出しを受ける。
整列
次に、電線整列部43、及び、電線持替部41について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る端処理チューブ挿入電線製造装置における、電線整列部43、及び、電線持替部41の構成概要を示す側面図である。
図3は、図2の電線整列部43の構成概要を示す平面図である。
図4は、図2の電線整列部43の構成概要を示す斜視図である。
図5は、図2の電線整列部43の整列クランプ432・438、及び、電線持替部41の構成を示す正面図である。
図6は、整列スリット4320内を拡大して示す正面図である。
図7は、電線整列部43の整列クランプ432・438、及び、電線持替部41の主要部の動作(電線密着整列動作)の流れを示す図である。図7(A)は、電線持替部41から電線整列部43に一本目の電線W1が渡された状態である。図7(B)は、整列クランプツメ4321に挟まれた電線W1を、押下げツメ4331が下に押し下げている状態である。図7(C)は、三本の電線W1・W2・W3が、押下げツメ4331に押し下げられて、上下に重なって密着整列された状態である。
この電線整列装置43は、 複数の電線W1、W2、W3を並列に重ねて整列する装置43・41であって、 前記複数の電線の端部を把持する整列クランプ432・438と、 該整列クランプ432・438に、前記複数の電線を一本ずつ送り込む電線送込み手段41と、を備える。さらに、 前記整列クランプ432・438に送り込まれた電線の曲がりを矯正するとともに、複数の電線を密着整列させる電線矯正密着手段433を備える。この電線整列装置43は、前記電線送込み手段41が、端処理後の電線の両端を把持し、前記整列クランプ432・438に前記電線の両端を送り込むものである。
図2及び図5の上部には、電線持替部41が示されており、下部には電線整列部43が示されている。電線持替部41は、前後一式ずつの電線持替クランプ415を備えている。電線持替クランプ415は、開閉するクランプ本体415と、その開閉アクチュエータ413(エアシリンダとスライドガイド)とを有する。クランプ本体415は、図5に示すように、左右に対向し開閉するツメ4151を有しており、両ツメ4151の間で電線Wを挟持する。この電線Wは、トップ側が半田処理されており、テール側が端子圧着されている。
電線持替部41は、電線持替クランプ415を昇降させる昇降シリンダ411を備える。また、図示されてはいないが、取り扱う電線Wの長さに応じて、前側(トップ側)のクランプ415を前後に動かす機構を備える。さらに、前後のクランプ415を含む移動部全体を左右方向に動かす機構、すなわち、電線を電線横搬送部2側33から受け取って電線整列部43の直上まで運ぶ機構も有している。図示せぬ移動機構(後述する各部の移動機構を含む)は、リニアガイドなどのガイド部品、ボールスクリューやシリンダ、ベルトなどの公知の駆動アクチュエータを用いて構成できる(他の部分の移動機構も同様)。
電線整列部43は、その上部に、図2において前側から後側に順に示すように、前側(トップ側)の整列クランプ432(押下げツメ4331を併設)、整列ガイド434、中間クランプ436、後側の整列クランプ438(押下げツメ4331を併設)を備える。
電線整列部43の下部の前側には、前側整列クランプ432の開閉機構4323や、整列ガイド434の開閉機構4345や、昇降機構4355、それらの前後スライド4358(内部にボールナットを有する)などが配置されている。なお、上記前後スライド4358内のナットを駆動するボールスクリュー4359は、図3に示されている。電線整列部43の下部の中央部から後側には、中間クランプ436の開閉機構4366、クランプ本体4365(図4参照)、昇降シリンダ4369、同クランプの直動リニアブッシュ4367などが配置されている。
図5の上部には、前述の電線持替部41の持替クランプ415やその開閉機構413・昇降機構411が示されている。この図では、持替クランプ415のツメ4151の下端部には、電線Wが把持されている。なお、電線Wの径は、大きく誇張して描いてある。
図5の下部には、電線整列部43の整列クランプ432・438が示されている。なお、前後の整列クランプ432・438は同じ構造であるので、以下においては、前側の整列クランプ432の符号を用いて説明する。整列クランプ432は、左右に対向して開閉するクランプツメ4321や、その開閉機構4323を有する。左右のクランプツメ4321は、上下に延びる整列スリット4320を介して対向している。なお、クランプツメ4321周りの具体的構造については、図7や図6を参照しつつ後述する。クランプツメ4321の開閉機構4323は、整列ガイド434(後述)とともに、昇降シリンダ4355上に搭載されている。したがって、整列クランプ432と整列ガイド434は、一緒に昇降する。
整列クランプ432の右側には、電線Wを押し下げる(電線送込み方向に進める)押下げ手段(電線矯正密着手段)433が存在する。同手段433の押下げツメ(整列ツメ)4331は、図2や図3に示すように、一つの整列クランプ432・438について、同クランプの前後を挟むように(電線軸方向の前後両側に)二枚設けられている。押下げツメ4331の正面形状は、図5に示すように、左右に長い帯状である。
整列クランプ432の前後2枚の押下げツメ433は、ツメガイド4337に案内されて、昇降シリンダ4339により、独自に(ただし2枚一緒に)昇降される。また、押下げツメ4331は、昇降シリンダ4339とともに、左右移動シリンダ4333により、左右に移動される。
整列クランプ432、及び、押下げツメ4331による電線の整列作用については、図7を参照しつつ後述する。
整列クランプ432、及び、押下げ手段433、並びに、それらの移動機構は、一式が昇降台4351上に搭載されている。同昇降台4351は、昇降シリンダ4355によって昇降される。また、昇降台4351及び昇降シリンダ4355は、前側整列クランプ基台4357上に搭載されている。この前側整列クランプ基台4357は、図2に示すように、前後スライド4358上に搭載されており、前後方向に移動可能である。これらの前側整列クランプ移動機構は、チューブ挿入工程において動作するものであり、その作用については、図10を参照しつつ後述する。なお、上記クランプ基台4357の下には、スプリング押しバー4368の位置調整ブロック4356が配置されている。スプリング押しバー4368は、中間クランプ436を後側に押している(付勢している)。
次に、図6を参照しつつ、整列クランプツメ4321周りの具体的な構造について説明する。
左側の整列クランプツメ4321は、縦長のブロック状であって、上方に延びている。同ツメ4321の整列スリット4320側の上部には、テーパー4321aが付いており、上方から電線Wが入りやすいようになっている。
整列クランプツメ4321には、上下2個のサブクランププレート(サブクランプ部材)4322が、左右方向(把持動作方向)にスライド可能に配置されている。サブクランププレート4322は、左右に延びる帯状のものである。同プレート4322の左側(反スリット側)の端面(先端)は、ボールプランジャー4324によって右方向(スリット方向)に押(付勢)されている。ボールプランジャー(スプリング)4324は、左側の整列クランプツメ4321の下部左側の突出部4321bから上方に突出した柱部4321fと、同ツメ4321との間に、押し勝手で配設されている。
このように、サブクランププレート(部材)4322を、整列クランプツメ4321に対して、上下(電線送り込み方向)に2個(複数)付設しているのは、以下(1)・(2)・(3)の理由による。
(1)図6に示す整列スリット4320の幅を電線外径寸法に合わせたガイド幅とするため。
(2)電線の寸法バラツキを考慮して、クランプする電線が複数本になっても、上側電線を確実にクランプできるようにするため。
(3)電線が引渡しされた位置(上の位置)での電線保持と、密着整列後の位置(下の位置)での電線保持を、両方確実に行うため。
下のサブクランププレート4322の右側(スリット側)の端部(図6(B)の符号4322b参照)は、整列スリット4320内に突出する。そして、同端部は、クランプ閉状態では、整列スリット4320内の電線Wに当接する。これにより、整列クランプ432閉の状態で、電線Wが「軽く把持された」状態が実現する。この状態で、整列クランプ432が電線送込み手段41から電線を受け、押下げツメ4331が電線を押し下げて(送り込んで)密着整列させる。なお、サブクランププレート4322の突出限は、該プレート4322の凸形状(図示されず)により規定される。
整列クランプツメ4321の開閉アクチュエータ4323は、その上部に突出する開閉ハンド4323x・yを有している。左側のハンド4323xは、左側のツメ4321に接続されている。右側のハンド4323yは、右側のツメ4321´に接続されている。これらのハンドが左右に開くと、整列クランプ432が開になる。
次に、図6(B)を参照しつつ、詳細なサブクランププレート4322の先端部の形状及び作用について説明する。図6(B)には、左右の整列クランプツメ4321・4321´が示されている。両ツメ4321・4321´は、整列スリット4320を介して、左右に対向している。同スリット4320の底(左側ツメの下部4321cの上面)には、二本の電線Wが上下に重なった状態で示されている。
左側の整列クランプツメ4321に重なるように、下側のサブクランププレート4322が示されている。なお、具体的には、整列クランプツメ4321に角孔が形成されており、その角孔の中にサブクランププレート4322が、左右スライド可能に収容されている。ただし、サブクランププレート4322の先端部4322bは、ツメ4321の先端面4321bから整列スリット4320内に少し突出している。
サブクランププレート4322の先端部4322bの端面は、上側の面4322fと、下側の面4322jとから構成されている。上側の面4322fは、上方に向かって、垂直から少し左側(反スリット側)に傾斜している。これにより、整列スリット4320に上広がりテーパーを付与して、電線Wが上から下に入り易くなっている。なお、その際は、サブクランププレート4322が電線Wで押されて、ボールプランジャー4324が圧縮され、上記プレート4322が左側(反スリット側)に移動(後退)する。
サブクランププレート4322の先端部4322bの下側の面(電線把持面)4322jは、下方(電線送り込み方向)に向かって、垂直から少し左側(電線Wから離れる方向、反スリット側)に傾斜している(角α)。これにより、上側に位置する電線W、図6(B)の場合は、上の電線W2にサブクランププレート4322が、優先的に当接するようになっている。そして、常に1番上の(最後に送り込まれた)電線を押さえるように把持し、押下げツメ4331にて電線押さえながら電線を張ることで、複数の電線の重ね整列、及び、曲がりの矯正を行っている。なお、電線Wが三本上下に重なっている場合も、同様の作用が起こる。
上のサブクランププレート4322´は、図6(A)に見られるように、その先端部4322´bが、整列スリット4320内に、突出している。しかし、電線Wが押下げられるときには、同プレート4322´は、図の左側(反スリット側)に引っ込んで(ボールプランジャー4324が圧縮される)、電線Wは通過可能である。
上のサブクランププレート4322´の先端部4322´bの下端部4322´fの下方は、空所となっている。この空所は、下のサブクランププレート4322の上側の面4322fの傾斜(上述)のスリット側に形成されている。そして、上のサブクランププレート4322´の先端下端部4322´fは、オーバーハングするように、整列スリット4320内に張り出している。このため、同スリット4320内に重ねられた電線Wは、上に脱出するようなことはない。なお、上のサブクランププレート4322´の整列スリット4320側の先端部4322´bの端面は、上下方向に垂直(傾斜なし)である。
次に、図7を参照しつつ、整列クランプツメ4321複数の電線の整列作用について説明する。本実施形態では、三本の電線を、縦に密着整列する例を説明するが、電線の本数や整列方向などについては、適宜選択可能である。
図7(A)は、電線持替クランプ415から、電線整列クランプ432に、一本目の電線W1が渡された状態である。この状態では、電線W1は、持替クランプツメ4151に「軽く把持された」状態である。この「軽く把持された」状態では、電線W1は、左右の整列クランプツメ4321の間のスリット4320を、小さい抵抗を受けながら、下に進むことができる。なお、整列クランプ432の中で電線を押し下げて(送り込んで)密着整列させるときも、整列クランプ432は「軽く閉」の状態である。
整列クランプ432は、上記の「軽く閉」の状態の他、「開」の状態を選択できる。チューブ挿入工程においてクランプ退避を必要する時、開閉機構4323が開動作をすることで、整列クランプ432の整列スリット4320の幅を広げて、クランプが下方へ退避する。
図7(B)は、押下げツメ4331が電線W1の上に来て、その後、持替クランプツメ4151は開となって電線W1の把持を開放した状態である。すなわち、持替クランプ415の開閉アクチュエータ413(図5)は開となって、左右のクランプツメ4151の間は開いている。このとき、押下げツメ4331が言わば蓋となって、また、上述のスプリング4324、及び、サブクランププレート4322により実現される整列クランプ432の作用により、電線W1は、図7(A)のときと同じ高さで保持されている。
図7(B)において、押下げツメ本体4331は、図7(A)の状態から左に移動して(図5の押下げツメ左右移動シリンダ4333に駆動され)、その先端部4331bが、整列クランプツメ4321に把持された電線W1の上に来ている。なお、押下げツメ本体4331の先端部4331bの下端部分には、先上に傾斜した傾斜部4331fが形成されており、ツメ本体4331の先端が電線W1に干渉しないようになっている。
図7(B)の状態から、押下げツメ本体4331は下降すると(シリンダ4339が下がると)、一本目の電線W1は、整列スリット4320の下端まで押し下げられる。なお、この電線W1の下限位置は、図示されない昇降シリンダ4339のストローク制限ストッパによって規定される。このとき、電線W1の前後端部付近の、縦(方向)・横手方向の曲がり(反り)は、ほぼ矯正される。
図7(C)は、三本の電線W1・W2・W3が、押下げツメ4331に押し下げられて、上下に重なって密着整列された状態である。すなわち、図7(B)の状態(一本目電線W整列)の後、二本目の電線W2、三本目の電線W3が、図7(A)・(B)と同様の動作により、整列スリット4320に送り込まれ、押し下げられて、上下に電線W1・W2・W3が三本重なって密着整列される。すなわち、前述したサブクランププレート4322の傾斜角度により、常に1番上の電線を押さえるようにして、複数の電線の重ね整列、及び、曲がりの矯正を行っている。
次に、図4を参照しつつ、整列ガイド434について説明する。この電線整列装置43は、前側の整列クランプ432に加えて、同クランプの後側に隣接して、整列済みの複数の電線W1、W2、W3の整列を維持する整列ガイド434を備える。整列ガイド434は、一対のガイド片4341・4343を有する。両ガイド片4341・4343は、開閉アクチュエータ4345に駆動されて、整列済みの電線W(この例では3本)を、左右両側(把持方向)から挟み込む。また、両ガイド片4341・4343の凹凸嵌合により、電線Wを上下(電線送込み方向)からも固定する。
ただし、ガイド片4341,4343の固定は、整列クランプ432の後退移動時の電線曲がり防止するためのガイドであり、電線を完全に固定するものではなく、若干の隙間がある。この整列ガイド434の構造により、整列ガイド434は、電線Wの長手方向には、電線Wに沿ってスライド可能である。
整列ガイド434は、後述するチューブ挿入工程中にも、電線の縦三本整列を崩さない様に、整列ガイド434で、電線をクランプし、電線曲がりが発生しない様に保持する。これにより、円滑なチューブ挿入を行うことができる。なお、チューブ挿入中に、チューブ挿入クランプ611との干渉を避けるために退避が必要となった時点で、整列ガイド434のクランプを解除し、整列ガイド434は整列クランプ432と共に下降する。
次に、図4を参照しつつ、中間クランプ436について説明する。中間クランプ436は、前側の整列クランプ432及び整列ガイド434と、後側の整列クランプ438の間に設けられている。この中間クランプ436は、チューブ挿入動作の初期挿入後から用いるもので、チューブ挿入動作時は電線Wを把持して、電線の縦整列姿勢保持と電線曲がり防止する。また、中間クランプ436は、チューブの挿入される長さが長くなるにつれて、後退移動する。後退移動するときは、電線Wの把持を解除して間歇的に後退移動する。そして、少し後退しては、電線を再び把持し、チューブ挿入を行う。すなわち、チューブ挿入に応じて、中間クランプ436の把持開閉動作は、繰り返される。これにより、電線中間部領域から終端の手前付近にまでチューブを挿入する工程中に、電線の姿勢保持と曲がり防止を図っている。
中間クランプ436は、電線ガイド板4361や、昇降フレーム4363、クランプ本体4365、電線ガイド板4364、昇降アクチュエータ4369などからなる。電線ガイド板4361は、左右に分割した構成により、上下方向に延びる上端開放の溝を構成している。同ガイド板4361は、電線受け取り、及び、中間クランプ436移動時において、電線の縦整列姿勢を保持するとともに、及び、チューブ挿入時の電線曲がりを防止するものである。昇降フレーム4363は、上記各部を搭載し、昇降アクチュエータ4369に駆動されて昇降する。
クランプ本体4365は、中間クランプ開閉機構4366に取り付けられており、同機構4366によってクランプ本体4365が閉じて、電線を把持する。なお、後述するチューブ挿入時は、チューブがある程度の長さが挿入された後から、中間クランプ436は間歇的に開閉動作を行う。すなわち、整列クランプ432あるいは、中間クランプ436の後退移動時は、中間クランプ436は開状態であり、このときは、チューブ挿入は一時停止している。そして、中間クランプ436が少し後退移動した後に、中間クランプ436が閉となって、上記後退移動分だけ、チューブ挿入を行う。この間歇的な動作を繰り返して、チューブ挿入を電線の後側に進める。
電線ガイド板4364は、中間クランプ436の後部分に設けられている。電線ガイド板4364は、上下方向に延びる上端開放の溝4364bを有する。この溝4367bは、各電線受け取り時に、中間クランプ436の左右中心に電線が来るようガイドする。
三本の電線を整列させた後には、電線の整列性を電線全長で担保するために、中間クランプ436で、電線の前後方向中間部を挟持する。これにより、電線を前後方向(軸方向)の前側・中間・後側の3列でクランプする。中間クランプ436は、後述するように、整列クランプ432あるいは中間クランプが後退移動するときには、把持動作が解除(開く)される。一方、チューブ挿入動作時には、中間クランプ436は電線を把持し、チューブ挿入量に応じて、挿入補助、すなわち、縦整列を保持しながら、電線曲がり防止を兼ねる作用をする。
電線を整列セットし、前後の各クランプ432・438のツメで電線を把持した状態で、前側のクランプ432を前側に少し移動させて、電線を引っ張り、電線曲がり矯正を行うことができる。すなわち、整列クランプ432・438が電線送り込み手段41から電線を受け取るたびに、押下げツメ4331にて電線を押さえつつ、電線引っ張りをわずかに行い、電線曲がり矯正を行う。一本目・二本目の電線Wの場合は、電線W引っ張り後、次の電線受け取り準備のために、前後のクランプ間の距離縮める。最後(三本目)の電線の場合は、電線を引っ張った状態を保持して、チューブ挿入を待つことになる。
チューブ挿入
次にチューブ挿入(装着)について説明する。
本発明の一つのチューブ挿入装置は、チューブTuを電線Wに挿入する装置(61・43)であって、 前記電線Wを所望の姿勢に保持するクランプ(432・436・438)を有する電線保持手段(43)と、 所望の長さの前記チューブTuを所望の姿勢に保持するクランプ(613・621)を有するチューブ保持手段(61)と、 前記電線保持手段(43)と前記チューブ保持手段(61)を、前記電線Wと前記チューブTuとが略同軸の状態で相対的に移動させる移動手段と、を備え、 前記チューブ保持手段(61)が、前記チューブTuの先端にセットされる、前記電線Wの前記チューブTu内孔への進入を案内するガイドブロック(611)を具備することを特徴とする。
本発明の他のチューブ挿入装置は、整列された複数の電線WをチューブTuの内孔に挿入する装置(61・43)であって、 前記複数の電線Wを所望の姿勢に保持するクランプ(432・436・438)を有する電線保持手段(43)と、 前記チューブTuを所望の姿勢に保持するクランプ(613・621)を有するチューブ保持手段(61)と、 前記電線保持手段(43)と前記チューブ保持手段(61)を、前記電線Wと前記チューブTuとが略同軸の状態で相対的に移動させる移動手段と、を備え、 前記チューブ保持手段(61)が、前記チューブTuの先端にセットされる、前記複数の電線Wの前記チューブTu内孔への進入を案内するガイドブロック(611)を具備することを特徴とする。
電線WやチューブTuの所望の姿勢は、直線状(略直線状含む)とするのが、最もシンプルと考えられる。しかし、それに限定されるわけではなく、円弧状などであってもよい。電線保持手段(43)とチューブ保持手段(61)を相対的に移動させる移動手段は、チューブ保持手段(61)全体を電線Wの軸方向に移動させる構造のものである。
本発明におけるチューブTuの材質は、例えば、テフロン、ウレタン、PVC系チューブ(コルゲートチューブ以外)である。チューブTuの長さは、例えば、90~215mmの比較的に長尺の部類に属するもので、本実施形態のチューブ挿入装置は、自動車用などの保護チューブ付ワイヤーハーネスに対応可能である。特に、本発明の実施形態のチューブ挿入装置は、複数の電線(本数例~三本)に対してのチューブ装着を自動化・省力化を図ることができる。
本発明のチューブ挿入装置においては、 前記電線保持手段(43)の前記クランプ(432・436・438)が、前記チューブTuの前記電線Wへの挿入の進行に合わせて、電線Wから退避する手段を有し、 前記チューブ保持手段(61)が前記チューブTuを保持した状態で、整列した電線の端部から段階的にチューブ挿入を行うことが好ましい。
本発明のチューブ挿入装置においては、 前記ガイドブロック(611)が、電線Wの先端が導入される、電線挿入方向(奥)に向けて小径となる入り口テーパー部(6110b)を有し、 該入り口テーパー部(6110b)を、N本の電線Wが奥に進む際に、電線Wは縦整列の状態から略正N角形整列の状態に、相対的な位置関係が変わるとともに、電線W先端部の曲がり・反りが矯正されることが好ましい。N=3の場合について、後ほど、図9を参照しつつ、具体的に説明する。
次にチューブ挿入装置の実施形態について説明する。この実施形態の装置は、水平に保持した三本の電線Wを縦整列させた状態のものに対し、それらの電線の外周に、水平に保護チューブを動かして挿入するものである。
図8は、本発明の実施形態に係るチューブ挿入装置の、チューブ引出挿入部61、及び、電線整列部43の全体構成を示す側面図である。
図9は、図8のチューブ引出挿入部61のチューブガイドブロック611の周辺を拡大して示す図である。(A)はガイドブロック611、及び、チューブ挿入クランプ後側613の側面断面図である。(B)は、ガイドチップ6110の拡大断面図である。(C)は、電線Wの縦整列状態を模式的に示す正面図である。(D)は、電線Wがチューブ内に挿入された状態(略三角形整列)を模式的に示す正面図である。
図10は、本実施形態のチューブ挿入装置における、三本の縦整列させた電線W1・W2・W3に、チューブTuを装着(挿入)していく動作を、順序を追って示す模式的側面図である。(A)は、電線Wのトップ側端にガイドブロック611を差し込んだ状態である。(B)は、整列クランプ432及び整列ガイド434を後側に移動させながら、チューブTuを電線Wに少し挿入した状態である。(C)は、整列クランプ432及び整列ガイド434を下げて、さらにチューブTuを電線Wに挿入した状態である。(D)は、中間クランプ436も下げて、さらにチューブTuを電線Wに挿入した状態である。
図8の左上部にチューブTuの引出挿入部61を示す。同引出挿入部61は、フレーム619に、前側のチューブ挿入クランプ621や、後側のチューブ挿入クランプ613、前側端部のチューブガイドブロック611などを搭載している。この引出挿入部61のフレーム619は、図1に示すように、左右・前後方向に移動可能である。フレーム619の移動機構は、図示されていないが、フレーム619を吊り下げ搭載して、前後方向・左右方向に移動可能な移動台や、その移動機構(ボールネジやシリンダ、ベルトなど)からなる。チューブTuの移動中に、前側のチューブ挿入クランプ621を少し前方向に動かしてチューブTuを引っ張ることにより、チューブTuの曲がりを矯正する。
前側のチューブ挿入クランプ621は、チューブTuの前側端部(電線トップ側の半田付けされた側)を把持する。後側のチューブ挿入クランプ613は、チューブTuの後側端部(電線テール側の端子の圧着された側)を把持する。チューブ引出挿入部61に、チューブTuが、チューブ供給部53(図1)から供給される(前→後方向に)際には、前後の挿入クランプ621・613は開状態である。チューブTuは、その先端が前側のクランプの先まで進行し、チューブTuの先端のやや元部分を前側クランプ621が把持する(図9(A)参照)。その後、後側のクランプ613の先に出ているチューブTuの後端部にチューブガイドブロック611が装着される)。
前側(図8の左側)のチューブ挿入クランプ621は、左右方向に開閉する一対のクランプ片からなるクランプツメ6211と、その開閉アクチュエータ6213、及び、チューブ切断位置からチューブを引き出す、引き出しクランプ6218とその開閉アクチェータ6215を備える。前後移動機構6217は、取り扱うチューブTuの長さの種類に対応して、前後のクランプ621・611の間隔を変える際に動く。また、チューブTuに引張を加えてチューブTuの曲がりを矯正する際に、少し動く。
後側(図8の右側)のチューブ挿入クランプ613は、左右方向に開閉する一対のクランプ片からなるクランプ本体6131と、その開閉アクチュエータ6133を備える。
前後のチューブ挿入クランプ621・611のクランプツメ6211・6111は、図9や図8の紙面垂直方向に対向する、チューブ外径形状と同形状の円筒を半分に割った把持面を有している。チューブ把持時には、この半円筒把持面をチューブTuの外周面に押し当てる。
チューブガイドブロック611は、その開閉機構6113、前後移動機構6117を備える。 前後移動機構6117は、ガイドブロック611の内部にチューブの後端側を挿入(保持)するために、後方向に移動する。
チューブ挿入のガイドブロック611の詳細について、図9を参照しつつ説明する。
ガイドブロック611は、ガイドブロック本体6111と、ガイドチップ6110とを有する。ガイドチップ6110は、ボルトにより、ガイドブロック本体6111に取り付けられており、さらに左右に分割されたものである。開閉機構6113の円弧開閉の閉動作により、チューブ挿入のガイドブロック611が形成される。
ガイドブロック本体6111は、チューブTuの挿入される内孔6111bを有する。内孔6111bの前端(図の左端)には、面取り6111hが形成されており、チューブTuの後端が少々曲がっていても、チューブTuは内孔6111bに案内される。
ガイドチップ6110は、短い円筒状のものであり、前後方向に延びる内孔(ガイド孔6110a)が開いている。図9(B)に示すように、同ガイド孔6110aには、図の後側から前側に向かって、後側テーパー部6110b、中ストレート部6110f、中テーパー部6110k、前側ストレート部6110sが形成されている。後側テーパー部6110bの入り口6110cの径は、図9(C)にも示すように、縦整列した三本の電線W1・2・3の高さよりも大きい。後側テーパー部6110bは、前側に行くほど小さくなって、中ストレート部6110fに、スムーズにつながっている。
電線Wが、ガイドチップ6110の内孔を、後側テーパー部6110bから中ストレート部6110fに進む際に、三本の電線Wは、図9(C)の縦整列の状態から、図9(D)の略正三角形整列の状態(比較的細いューブTuの内孔に挿入されるのに適した状態)に、相対的な位置関係が変わる。これは、電線(W1、W2、W3)の先端を挿入する時から、空気吸引吹き出し口6110hを一時的に負圧することで、略三角形整列が形成されるためである。また、電線W先端部の曲がり・反りが矯正され、ほぼストレートになる。これにより、電線WがスムーズにチューブTu内孔に挿入できる。
中ストレート部6110fの奥は、中テーパー部6110kとなっている。中テーパー部6110kの後側端部の径は、中ストレート部6110fの径よりも大である。中テーパー部6110fは、前側に行くほど小さくなって、前側ストレート部6110sに、スムーズにつながっている。前側ストレート部6110sの径は、チューブTuの内径よりもやや小さい。中テーパー部6110kは、次工程における電線挿入動作に用いるエアブローの効果を向上させるためのものである。
中ストレート部6110fの奥側の部分の内孔には、空気吸引吹き出し(エアブロー)口6110hが開口している。同空気吸引吹き出し口6110hは、ガイドチップ610の途中(肉厚の中ほど)から斜め後ろ方向に貫通した孔(図示されず)の口である。同口6110hからは、電線W挿入時に、0.1~0.7MPa程度の圧力の空気が噴出して、前側に流れる。この空気の流れ(エアブロー)を利用し、電線の挿入性を良くしている。なお、中テーパー部6110fの奥側の部分と、前側ストレート部6110sの間の孔6110h´は、傾斜穴の加工跡である。
すなわち、チューブ挿入工程における安定性確保として、本実施形態においては、保護チューブの円筒外径寸法と電線サイズ、電線本数に合わせた挿入用の電線姿勢矯正を行う。電線姿勢矯正は、チューブガイドブロック611内での「電線姿勢の矯正」として、エアブローと負圧を利用し、電線が略三角形状姿勢に矯正して、挿入動作としている。具体的には、電線先端挿入までは負圧吸引し、次の挿入動作からは、吹き出し(エアブロー)となる。
次に、図10を参照しつつ、三本の縦整列させた電線W1・W2・W3に、チューブTuを装着(挿入)していく動作を、順序を追って説明する。
図10(A)は、チューブ引出挿入部61が後側(図10の右側)に進んで、三本の電線W1・W2・W3のトップ側端に、チューブ挿入のガイドブロック611を差し込んだ状態である。なお、チューブTuのテール側端部は挿入クランプ613で保持されており、ガイドブロック611は、チューブTuのテールに嵌め込まれている(図9(A)参照)。電線Wは、前側から後側に向かって、電線整列部43の前側整列クランプ432(開状態)、整列ガイド434(閉状態)、中間クランプ436(開状態)、後側整列クランプ438によって保持されている。
図10(A)の状態から、更にチューブ挿入を開始する直前の状態で、前側整列クランプ432(開状態)、整列ガイド434(閉状態)、中間クランプ436(閉状態)、後側整列クランプ438(閉状態)にて、チューブTuがある程度挿入され停止する。チューブ挿入が停止した後、中間クランプ436が開状態になり、前側整列クランプ432及び、整列ガイド434が後退移動を行い、移動完了にて、中間クランプ436が閉状態になり、図10(B)の状態・位置まで前記の動作が繰り返される。
図10(B)は、電線整列部43の整列クランプ432及び整列ガイド434を後側に移動させながら、チューブ引出挿入部61が後側に進んで、チューブTuを電線Wに少し挿入した状態である。図10(A)の状態から(B)の状態へ移行する際には、最初は、整列クランプ432と整列ガイド434が移動し、チューブが挿入される。所定位置までチューブ挿入が進むと、整列クランプ432と整列ガイド434の移動に倣って、中間クランプ436も後側に移動する(スプリング押しバー4368に押される)。チューブ挿入の状態に応じて、クランプやガイドの前後方向の位置を変化させる。
つまり、図10(B)のチューブ挿入工程においては、電線テール側整列クランプ432、及び、整列ガイド434(さらにチューブ挿入が進んだ状態では中間ガイドも)が、少し移動し、その後、移動した分だけチューブを挿入する。以降、電線テール側整列クランプ、整列ガイド、中間ガイドが移動し、その後、移動した分だけチューブを挿入する工程を繰り返し、少しずつチューブを挿入する。
このクランプやガイドの移動時(チューブ挿入時)には、前側整列クランプ432は開、ボールプランジャー4324(図6参照)も付勢解除、整列ガイド434は閉、中間クランプ436はチューブ挿入動作に合わせて開閉動作を繰り返し、後側整列クランプ438は閉の状態である。閉状態の整列ガイド434が電線長手方向に移動するときは、電線Wの外面とガイドの電線挟持面が接触しながら移動する。この後、整列ガイド434と中間クランプ436の隙間が狭くなるとチューブ挿入動作を一旦、停止させ、整列ガイド434を開き、次の工程動作の図10(C)へ移行する。
なお、整列クランプ432と整列ガイド434が下降する直前(図10(C)の状態になる直前)には、中間クランプ436は電線を把持して、整列クランプ432と整列ガイド434下降時の電線姿勢のずれを防止する。以後においては、チューブ挿入動作に合わせて、中間クランプ436は開閉動作を繰り返す。
図10(C)は、電線整列部43の整列クランプ432及び整列ガイド434を下げて退避させ(さらに進む挿入装置61のガイドブロック611などとの部品干渉を回避し)、整列クランプ432などの上方に、チューブ挿入ガイドブロック611や挿入クランプ613を進ませて、さらに長く、中間クランプ436まで、チューブTuを電線Wに挿入した状態である。この図10(C)の状態までチューブが挿入されると中間クランプ436は開の状態となり、図10(D)へ移行する。
図10(D)は、さらに電線整列部43の中間クランプ436も下げて退避させ、その上方でチューブ挿入ガイドブロック611や挿入クランプ613を後方に進ませて、さらに長く、チューブTuを電線Wに挿入した状態である。この状態がチューブ挿入完了状態である。この後、後側整列クランプ438を開として、下方に退避させる。次いで、チューブ挿入のガイドブロック611を、後側に抜く。その後、挿入クランプ613・621でチューブTu及び電線Wを保持して前側に進み、図1のOK品排出位置でチューブ挿入済み電線を解放する(落とす)。これで、図1のチューブ挿入端処理電線製造装置による製品完成である。
一つの変形実施例として、保護チューブ円筒外径寸法に余裕がある場合は、チューブ内に案内シャフトを挿入し、案内シャフト内に電線を入れ込み、案内シャフトごと電線を引き込む動作とすることができる。これにより、挿入性が更に向上する
挿入不良検出
次に、電線のチューブ挿入状態を検査する技術について説明する。
本発明のチューブ挿入装置は、 チューブ挿入後の電線Wの端部の形態を観察する観察手段(801)と、 観察した上記形態が正常か非正常かを判定する手段(803)と、 をさらに具備することが好ましい。前記観察手段(801)は、複数の電線W端部の不揃いを検出するものとできる。
このチューブ挿入不良検出は、後側整列クランプ438の後方に、チューブ挿入後の後側電線端部を観察するセンサ801を設け、チューブ挿入工程が完了した時点での電線端部の位置(突き出し)を検出するものである。以下の実施形態では、チューブ挿入装置の原位置復帰動作中(チューブ挿入後電線の送り出し時)に、電線排出開始から電線が所定位置に移動したときに、光電センサの光量が所定値以下の状態(遮光面積が多い状態)になった場合を、チューブ挿入が未完の電線が残った状態であると判断し、不良判別を行う。以下、具体的に説明する。
図11(A)は、実施形態に係るチューブ挿入不良検査センサの配置状態を模式的に示す側面図であり、同図(B)は挿入不良時の電線端部の状況例(代表的な例)の模式的側面図である。図11(A)には、図の左(前)から右(後)に、チューブTuやチューブ挿入クランプ後側613、ガイドブロック611、電線Wが示されている。
図11は、チューブ挿入完了状態、すなわち、チューブTuやガイドブロック611が、電線Wの後側の予定された端部位置まで進んだ状態である。このときも、電線Wの後端部(tail)は、チューブ挿入されずにガイドブロック611から右(後)に出ている。この電線Wの後端部(tail)には、端子Teが圧着されている。図11(A)は、チューブ挿入が正常な場合であり、縦整列された三本の電線Wの後端の位置が、上下できれいに揃っている。
挿入不良検査センサとしての光電センサ801は、端子Teの根元部の近辺に置かれている。この光電センサ801は、電線Wを挟んで、投光部と受光部が対になって配置されている。投光部から投射された光の一部は、電線W・端子によって遮られ、遮られた光の分だけ、受光部に受光される光の量が減る。受光部で検出された光量の信号は、挿入不良判定部803(マイコンなどで構成)に送られる。
チューブ挿入完了後は、電線W・チューブTuは、図の左方向(前方向、矢印の方向)に排出される(送り出される)。この際、端子Teの後端が光電センサ801の前を通り過ぎたときに遮光物がなくなるので、光電センサ801の検出光量は最大になる。電線WやチューブTu挿入の作業諸元が同じで、チューブ挿入が正常に行われた場合、この光量が最大になる時点あるいは、チューブ挿入クランプ後側613の位置(図の左に移動した位置、チューブ引出挿入部61の前後方向駆動機構の位置情報など)は、一定である。
図11(B)は、挿入不良時の電線端部の状況例(代表的な例)を表す模式的側面図である。この図では、一番上の電線W3が、チューブTuへの挿入が不足していて、図の右側(後側、反チューブ側)にはみ出している。このような形態の他、挿入不良の電線Wが湾曲して、光電センサ801の視野の外に出てしまうこともある。
図11(B)の状態から、電線Wが前側に排出されると、一番上の電線W3の端子Te3が、光電センサ801の視野から外れるタイミングが、(A)の正常状態の場合よりも、少し遅くなる。これにより、チューブ挿入不良を検出できる。挿入不良を検出した場合は、警報を発したり、不良品をそれ用の排出位置に排出する、などの処置を採る。
半田
次に、半田槽の溶融半田の上面に生じる酸化半田の除去(半田槽の外側に掻きだす)方法と除去装置について説明する。この種の酸化半田除去の先行技術には、以下がある。
(1)特開2014-179274「電線端処理装置」、図9・図2・明細書段落0055~0062
(2)特許第4933682号「ワイヤーハーネス製造装置」、図3・図4・明細書段落0029~0039
(3)実用新案第3020797号「半田酸化膜除去装置」
上記の公報の酸化半田除去技術は、それなりに優れたものではあるが、さらに改良されたものが望まれている。
本発明の半田槽(250)の酸化膜掻き取り装置は、 半田槽(250)に溜められた溶融半田(252)の表面(252b)から酸化膜を掻き取る装置であって、 前記半田槽(250)の半田溜め(250b)の一端部に、前記溶融半田(252)の表面(252b)のレベルから上に向かうスロープ(250f)が形成されており、 前記溶融半田(252)の表面(252b)を、前記スロープ(250f)から遠い部位から、前記スロープ(250f)に向けて掻く第一の掻きツメ(256)と、 前記スロープ(250f)の上方を、前記半田溜め(250b)の中から外に向けて掻く第二の掻きツメ(258)と、 を備えることを特徴とする。
本発明の酸化膜掻き取り装置は、 前記第一の掻きツメ(256)、及び、前記第二の掻きツメ(258)が、前記スロープ(250f)から遠い部位から、前記スロープ(250f)に向けて、下記(ア)の状態で、下記(イ)の状態まで水平移動して、前記酸化膜を掻き取るものとすることができる;
(ア)前記第一の掻きツメ(256)の下端部(256b)が前記溶融半田(252)の表面(252b)の高さにあって、かつ、前記第二の掻きツメ(258)の下端部(258b)が前記スロープ(250f)の上端部(250h)のやや上の高さにある状態、
(イ)前記第一の掻きツメ(256)の下端部(256b)が前記スロープ(250f)の下端部(250g)近傍にある状態、かつ、前記第二の掻きツメ(258)の下端部(258b)が、前記スロープ(250f)の上端部(250h)の近傍、あるいは、前記上端部(250h)を越えた状態。
本発明の酸化膜掻き取り装置は、 前記酸化膜を掻き取る動作を行った後に、 前記第一の掻きツメ(256)と前記第二の掻きツメ(258)が上昇し、 前記前記酸化膜を掻き取る動作を開始する位置まで移動し、その後、上記(1)の状態まで下降するものとすることができる。
本発明の半田ユニット(25)は、 溶融半田(252)を溜める半田溜め(250b)、及び、該半田溜めの一端部に形成された前記溶融半田(252)の表面(252b)のレベルから上に向かうスロープ(250f)、を有する半田槽(250)と、 上記の酸化膜掻き取り装置と、 前記第二の掻きツメ(258)により前記半田溜め(250b)の外に向けて掻かれた酸化膜を溜める酸化膜溜め(259)と、 を備えることを特徴とする。
図12及び図13を参照しつつ、本発明の実施形態に係る半田酸化膜掻き取り装置について説明する。
図12は、本発明の実施形態に係る半田酸化膜掻き取り装置の構成及び作用を示す断面図である。(A)は、酸化膜を掻き取る動作を終えた状態である。(B)は、掻きツメ256・258を上昇させた状態である。(C)は、半田溜めの上方を掻きツメ256・258が戻っている状態である。
図13は、図12に続く、半田酸化膜掻き取り装置の作用を示す断面図である。(D)は、掻きツメ256・258を下ろして、掻き取り動作を始める状態である。(E)は、酸化膜253・253´を掻き取った状態である。
図12(A)において、右下部には、半田槽250が示されている。半田槽250は、半田ユニット25のテーブル251上に搭載されている。半田槽250は、平たい盤状のものであり、その上面には、凹部である半田溜め250bが形成されている。半田溜め250bには、溶融した半田252が溜められている。半田槽250の図の左側の端部には、左方上方に向かうスロープ250fが形成されている。スロープ250fの角度θは、20°程度である。
図12(A)において、図の左上部には、二種類の掻きツメ(第一の掻きツメ256・第二の掻きツメ258)や、それらを保持して移動させるアーム255が示されている。第一の掻きツメ256は、この例では、平板状であり、略上下に立った姿勢である。第一の掻きツメ256の下端部256bは、図6・図13の紙面垂直方向には、ほぼ半田溜め250bの幅に近い幅となっている。
第一の掻きツメ256の図の左側には、第二の掻きツメ258が示されている。第二の掻きツメ258は、折れ曲がった板状のものであり、その上部(貼り合わせ部258f)で、第一の掻きツメ256の上下中央の左側面(貼り合わせ部256f)に貼り合わせられている。第二の掻きツメ258の下端部258bは、上記貼り合わせ部258fから左方向かつ下方向に張り出した位置にある。
両掻きツメ256・258の上部は、アーム255に取り付けられている。アーム255は、掻きツメ256・258とともに、下述のように、左右に水平移動する。また、アーム255は、その下部の回動支点254を中心に揺動する。
図12(A)は、掻きツメ256・258が掻き取り動作を終えた状態であるが、この状態において、第一の掻きツメ256の下端部256bは、半田溜め250bの左側のスロープ250fの下端部250g近傍にある。
同じく図12(A)の状態において、第二の掻きツメ258の下端部258bは、その高さが、半田溜め250bのスロープ250fの上端部のやや上の高さにある。また、同ツメ258の下端部258bは、スロープ250fの上端部250hの近傍、あるいは、同部250hを越えた水平(左右)方向の位置にある。
図12(B)は、アーム255が、掻きツメ256・258とともに、図12(A)の状態から、反時計回りに回動した状態である。この状態で、第一の掻きツメ256と第二の掻きツメ258が上昇し、両掻きツメ256・258の下端部256b・258bの高さは、半田槽250の上面より高くなる。なお、アーム255の掻き出し動作となる揺動移動動作は、特許第4933682号の図4とその説明(段落0036~0038)に同じく、エアシリンダロッドの突き出しによりアーム255の回転支点254を回動させ、アーム255が揺動限界位置に達した後、前進動作となり、図12(C)に移行する。
図12(C)は、アーム255が、掻きツメ256・258とともに、図12(B)の状態から、半田槽250の上方を、右方向に水平移動している状態である。なお、アーム255の移動は、その回動支点及びアクチュエータを搭載する台をエアシリンダで動かすなどの前記方法を用いることができる。
図13(D)は、アーム255が、掻きツメ256・258とともに、図12(C)の状態から、半田溜め250bの右端部まで移動し、時計回りに回動した状態である。この図13(D)の状態のアーム255や掻きツメ256・258の姿勢・位置は、酸化膜252bを掻き取る動作を開始する姿勢である。この状態で、アーム255が、掻きツメ256・258とともに、左方向(スロープ250fの方向)に水平移動してツメが溶融半田表面252bの酸化膜を掻き取る。
図13(E)は、アーム255が、掻きツメ256・258とともに、図13(D)の状態から、左方に動いて、図12(A)と同じ位置(掻き取り完了位置)まで来た状態である。このとき、第一の掻きツメ256の下端部258bの前(左側)のスロープ250f上には、掻き集められた堆積酸化膜253が載っている。
同堆積酸化膜253の上面は、半田槽250の上面よりやや低いレベルの略水平面となっている。これは、同面上の酸化膜堆積物が、第二の掻きツメ258の下端部258bによって掻き取られたためである。第二の掻きツメ258によって掻き取られた酸化膜堆積物253´は、図示のように、半田槽250の外(左側)の酸化膜溜め259内に落下して溜まる。溜まった酸化膜堆積物253´が多くなったときには、人手で酸化膜溜め259から排出する。