配列
配列番号1~配列番号105の配列表は本願の一部であり、参照によって本明細書に援用される。この配列表は本文書の末尾に提供され、コンピュータ可読フォーマットで別途提供される。
詳細な説明
定義
本開示を解釈する際、以下の定義及び略記を用いるものとする。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上特に明確に指示されない限り複数の指示対象を含む。従って、例えば「フェロモン」という表現は複数のかかるフェロモンを含み、及び「微生物」という表現は1つ以上の微生物への言及を含むなどとする。
本明細書で使用されるとき、用語「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有する」、「有している」、「含有する」、「含有している」、又はこれらの任意の他の変化形は、非排他的包含を含むことが意図される。要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるわけではなく、明示的に列挙されない、又はかかる組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置に固有の他の要素を含み得る。更に、反する旨が明記されない限り、「又は」は排他的「又は」でなく、包含的「又は」を指す。
用語「約」及び「およそ」は、本明細書で数値を修飾して使用されるとき、その明示された値を挟んだ近い範囲を示す。「X」が値であった場合、「約X」又は「およそX」は0.9X~1.1Xの値、又は一部の実施形態では0.95X~1.05Xの値を指示し得る。「約X」又は「およそX」という任意の表現は、少なくともその値X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X、及び1.05Xを具体的に指示する。従って、「約X」及び「およそX」は、例えば「0.98X」のクレーム限定についての明細書のサポートを教示及び提供することが意図される。
本明細書で使用されるとき、用語「微生物の」、「微生物(microbial organism)」、及び「微生物(microorganism)」は、古細菌、細菌又は真核生物(後者の真核生物には、酵母及び糸状菌、原虫、藻類、又は高等原生生物界(Protista)が含まれる)のドメイン内に含まれる顕微鏡的細胞として存在する任意の生物を含む。従って、この用語は、顕微鏡的サイズを有する原核又は真核細胞又は生物を包含することが意図され、全ての種の細菌、古細菌、及び真正細菌並びに真核微生物、例えば酵母及び真菌が含まれる。また、化学物質の作成のため培養することのできる任意の種の細胞培養物も含まれる。
本明細書に記載されるとおり、一部の実施形態では、本組換え微生物は原核微生物である。一部の実施形態では、原核微生物は細菌である。「細菌」、又は「真正細菌」は、原核生物のドメインを指す。細菌は以下のとおりの少なくとも11の異なる分類を含む:(1)グラム陽性(グラム+)細菌、これには2つの主要な細区分がある:(1)高G+C群(放線菌類(Actinomycetes)、マイコバクテリア(Mycobacteria)、ミクロコッカス(Micrococcus)など)(2)低G+C群(桿菌(Bacillus)、クロストリジウム類(Clostridia)、乳酸桿菌(Lactobacillus)、ブドウ球菌類(Staphylococci)、レンサ球菌類(Streptococci)、マイコプラズマ類(Mycoplasmas));(2)プロテオバクテリア門(Proteobacteria)、例えば、紅色光合成細菌+非光合成グラム陰性菌(最も「一般的な」グラム陰性菌を含む);(3)シアノバクテリア(Cyanobacteria)、例えば酸素発生型光合成生物;(4)スピロヘータ類(Spirochetes)及び関連種;(5)プランクトミセス(Planctomyces);(6)バクテロイデス(Bacteroides)、フラボバクテリア(Flavobacteria);(7)クラミジア(Chlamydia);(8)緑色硫黄細菌;(9)緑色非硫黄細菌(嫌気光合成生物も);(10)放射線耐性ミクロコッカス及び近縁類;(11)サーモトガ属(Thermotoga)及びサーモサイホ属(Thermosipho)好熱菌類。
「グラム陰性菌」には、球菌、非腸内桿菌、及び腸内桿菌が含まれる。グラム陰性菌の属としては、例えば、ナイセリア属(Neisseria)、スピリルム属(Spirillum)、パスツレラ属(Pasteurella)、ブルセラ属(Brucella)、エルシニア属(Yersinia)、フランシセラ属(Francisella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ボルデテラ属(Bordetella)、大腸菌属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)、赤痢菌属(Shigella)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、ビブリオ属(Vibrio)、シュードモナス属(Pseudomonas)、バクテロイデス属(Bacteroides)、アセトバクター属(Acetobacter)、アエロバクター属(Aerobacter)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、アゾトバクター属(Azotobacter)、スピリルム属(Spirilla)、セラチア属(Serratia)、ビブリオ属(Vibrio)、リゾビウム属(Rhizobium)、クラミジア属(Chlamydia)、リケッチア属(Rickettsia)、トレポネーマ属(Treponema)、及びフゾバクテリウム属(Fusobacterium)が挙げられる。
「グラム陽性菌」には、球菌、非胞子形成桿菌、及び胞子形成桿菌が含まれる。グラム陽性菌の属としては、例えば、アクチノミセス属(Actinomyces)、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、エリシペロスリクス属(Erysipelothrix)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、リステリア属(Listeria)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ミキソコッカス属(Myxococcus)、ノカルジア属(Nocardia)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、及びストレプトミセス属(Streptomyces)が挙げられる。
用語「組換え微生物」及び「組換え宿主細胞」は、本明細書では同義的に使用され、内因性酵素を発現又は過剰発現するか、ベクターに含まれる異種酵素など、組込みコンストラクト中の異種酵素を発現するように遺伝子修飾されている、又は内因性遺伝子の発現の変化を有する微生物を指す。「変化」とは、遺伝子の発現、又は1つ以上のポリペプチド又はポリペプチドサブユニットをコードするRNA分子又は等価なRNA分子のレベル、又は1つ以上のポリペプチド又はポリペプチドサブユニットの活性が上方制御又は下方制御されて、その変化がない場合に観察されるものと比べて発現、レベル、又は活性が高くなる又は低くなることを意味する。例えば、用語「変化させる」は「阻害する」を意味し得るが、この語句「変化する」の使用はこの定義に限定されない。用語「組換え微生物」及び「組換え宿主細胞」は、特定の組換え微生物を指すのみならず、かかる微生物の子孫又は潜在的な子孫も指すことが理解される。突然変異又は環境の影響のいずれかに起因して後続の世代である種の修飾が起こり得るため、かかる子孫は実際上は親細胞と同一でないこともあるが、それでもなお本明細書で使用されるとおりのこの用語の範囲内に含まれる。
遺伝子配列に関する用語「発現」は、遺伝子の転写を指し、及び適切な場合、得られたmRNA転写物のタンパク質への翻訳を指す。従って、文脈から明らかであろうとおり、タンパク質の発現はオープンリーディングフレーム配列の転写及び翻訳によって生じる。宿主細胞における所望の産物の発現レベルは、細胞に存在する対応するmRNAの量、又は選択の配列によってコードされる所望の産物の量のいずれかに基づき決まり得る。例えば、選択の配列から転写されたmRNAは、qRT-PCRによるか、又はノーザンハイブリダイゼーションによって定量化し得る(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)を参照されたい)。選択の配列によってコードされるタンパク質は、様々な方法、例えば、ELISAによるか、タンパク質の生物学的活性をアッセイすることによるか、又はウエスタンブロッティング若しくはラジオイムノアッセイなど、かかる活性と独立した、タンパク質を認識して結合する抗体を用いるアッセイを利用することにより定量化し得る。Sambrook et al., 1989、前掲を参照されたい。
用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書では用語「核酸」と同義的に使用され、限定はされないが、任意の長さの一本鎖又は二本鎖センス又はアンチセンスデオキシリボ核酸(DNA)及び適切な場合、siRNAを含めた、任意の長さの一本鎖又は二本鎖センス又はアンチセンスリボ核酸(RNA)を含め、ヌクレオチド、ヌクレオシド又はこれら類似体を含む2つ以上の単量体で構成された有機ポリマーを指す。用語「ヌクレオチド」は、プリン又はピリミジン塩基及びリン酸基に結合したリボース又はデオキシリボース糖からなる幾つかの化合物のいずれかを指し、核酸の基本的な構造単位である。用語「ヌクレオシド」は、デオキシリボース又はリボースと組み合わさったプリン又はピリミジン塩基からなる(グアノシン又はアデノシンとしての)化合物を指し、特に核酸に見られる。用語「ヌクレオチド類似体」又は「ヌクレオシド類似体」は、1つ以上の個々の原子が異なる原子又は異なる官能基に置き換えられているそれぞれヌクレオチド又はヌクレオシドを指す。従って、用語のポリヌクレオチドには、任意の長さの核酸、DNA、RNA、これらの類似体及び断片が含まれる。3ヌクレオチド以上のポリヌクレオチドはヌクレオチドオリゴマー又はオリゴヌクレオチドとも称される。
本明細書に記載されるポリヌクレオチドには「遺伝子」が含まれること、及び本明細書に記載される核酸分子には「ベクター」又は「プラスミド」が含まれることが理解される。従って、用語「遺伝子」は、「構造遺伝子」とも称され、1つ以上のタンパク質又は酵素の全て又は一部を含む特定のアミノ酸配列をコードする、且つ例えば遺伝子が発現する条件を決定するプロモーター配列などの調節(非転写)DNA配列を含み得るポリヌクレオチドを指す。遺伝子の転写領域には、イントロン、5’-非翻訳領域(UTR)、及び3’-UTRを含めた非翻訳領域、並びにコード配列が含まれ得る。
用語「酵素」は、本明細書で使用されるとき、1つ以上の化学的又は生化学的反応を触媒又は促進する任意の物質を指し、これには、通常、全面的又は部分的に1つ又は複数のポリペプチドで構成された酵素が含まれるが、ポリヌクレオチドを含む異なる分子で構成された酵素が含まれてもよい。
本明細書で使用されるとき、用語「天然に存在しない」は、本開示の微生物又は酵素活性に関連して使用されるとき、その微生物又は酵素が、言及される種の野生型株を含めた、言及される種の天然に存在する株には通常見られない少なくとも1つの遺伝子変化を有することを意味するように意図される。遺伝子変化には、例えば、代謝ポリペプチドをコードする発現可能な核酸を導入する修飾、他の核酸付加、核酸欠失及び/又は微生物の遺伝物質の他の機能破壊が含まれる。かかる修飾は、例えば、言及される種の異種、相同、又は異種及び相同の両方のポリペプチドについてのコード領域及びその機能的断片を含む。更なる修飾は、例えば、修飾が遺伝子又はオペロンの発現を変化させる非コード調節領域を含む。例示的な天然に存在しない微生物又は酵素活性としては、上記に記載されるヒドロキシル化活性が挙げられる。
用語「外因性」は、様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素等に関連して本明細書で使用されるとき、自然中の所与の酵母、細菌、生物、微生物、又は細胞に通常は又は天然では見られない及び/又はそれによって産生されない分子を指す。
他方で、用語「内因性」又は「天然」は、様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素等に関連して本明細書で使用されるとき、自然中の所与の酵母、細菌、生物、微生物、又は細胞に通常又は天然で見られる及び/又はそれによって産生される分子を指す。
[0162] 本明細書で使用されるとき、用語「飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源」は、飽和C6~C24脂肪酸が微生物内部で生成又は合成されるときなど、微生物内に由来する飽和C6~C24脂肪酸の供給源(内因性)、又は飽和C6~C24脂肪酸が、フラスコ又は他の容器中の培地で微生物を培養する(culturing又はcultivating)過程で微生物に提供されるときなど、微生物の外部に由来する飽和C6~C24脂肪酸の供給源(外因性)を指す。
用語「異種」は、本明細書において修飾された宿主細胞に関連して使用されるとき、以下の少なくとも1つが真である様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素等を指す:(a)その分子が宿主細胞にとって外来性(「外因性」)である(即ち、そこに天然では見られない);(b)その分子が所与の宿主微生物又は宿主細胞に天然で見られる(例えば、「それにとって内因性」である)が、細胞における非天然の位置又は非天然の量で産生される;及び/又は(c)その分子は内因性ヌクレオチド又はアミノ酸配列とヌクレオチド又はアミノ酸配列が異なり、そのため内因的に見られるとおりの内因性ヌクレオチド又はアミノ酸とヌクレオチド又はアミノ酸配列が異なる分子が細胞において非天然の(例えば、天然で見られるよりも多い)量で産生される。
[0164] 本明細書で使用されるとき、用語「相同配列」、「ホモログ(homolog)」、「ホモログ(homologs)」又は「オルソログ」は、基準配列に機能的に関連する関連配列(核酸又はアミノ酸)を指す。機能的な関係は、限定はされないが、(a)配列同一性の程度及び/又は(b)同じ又は類似の生物学的機能を含むいくつかの方法のいずれか1つで示され得る。本開示における用語ホモログの使用は、(a)及び(b)の両方が示される場合を指す。配列同一性の程度は、変化し得るが、一実施形態では、当該技術分野において公知の標準的な配列アラインメントプログラム(例えば、デフォルトパラメータを用いたClustal Omegaアラインメント)を用いた際、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%、50%又は50%の配列同一性である。相同性は、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987)Supplement 30,section 7.718,Table 7.71に記載されるものなど、当該技術分野において容易に利用可能なソフトウェアプログラムを用いて決定され得る。いくつかのアラインメントプログラムは、MacVector(Oxford Molecular Ltd,Oxford,U.K.)及びALIGN Plus(Scientific and Educational Software,Pennsylvania)である。他の非限定的なアラインメントプログラムとしては、Sequencher(GeneCodes,Ann Arbor,Michigan)、AlignX及びVector NTI(Invitrogen,Carlsbad,CA)が挙げられる。従って、本開示におけるホモログへの言及は、上述されるように同じ又は類似の生物学的機能及び高度の配列同一性を有する関連配列を言及するものと理解されるであろう。
用語「脂肪酸」は、本明細書で使用されるとき、構造R-COOH(式中、RはC6~C24飽和、不飽和、直鎖状、分枝状又は環状炭化水素であり、及びカルボキシル基は1位にある)の化合物を指す。詳細な実施形態では、RはC6~C24飽和又は不飽和直鎖炭化水素であり、及びカルボキシル基は1位にある。
用語「脂肪アルコール」は、本明細書で使用されるとき、式R-OH(式中、RはC6~C24飽和、不飽和、直鎖状、分枝状又は環状炭化水素である)を有する脂肪族アルコールを指す。詳細な実施形態では、RはC6~C24飽和又は不飽和直鎖炭化水素である。
用語「脂肪アシル-CoA」は、構造R-(CO)-S-R1(式中、R1は補酵素Aである)を有する化合物を指し、及び用語「脂肪アシル-ACP」は、構造R-(CO)-S-R1(式中、R1はアシルキャリアータンパク質ACPである)を有する化合物を指す。
[0168] 用語「短鎖(short chain)」又は「短鎖(short-chain)」は、C18以下の炭素鎖長を有するフェロモン、フレグランス、フレーバー及びポリマー中間体を含めた脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを指す。
序論
本開示は、低コスト原料から高価値の生成物を費用効率良く生産する新規技術の必要性に対処するものである。具体的には、本発明者らは、合成昆虫フェロモン、フレグランス、フレーバー、及びポリマー中間体を含めた広範囲に及ぶ不飽和C6~C24脂肪アルコール、アルデヒド、及びアセテートを低コスト原料から生成する能力を有する組換え微生物の開発によってこの必要性に対処した。従って、本開示の態様は、低コスト原料から高価値産物を生成するように組換え微生物を改変することができ、それにより高価値産物を生成するための従来の合成方法を回避し得るという本発明者らの発見に基づく。
上記で考察したとおり、組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを合成するように改変することができる。本明細書に記載されるとおり合成した一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールは、対応するアルデヒド又はアセテートに更に変換することができる。従って、本開示の様々な実施形態を用いて、脂肪アルコール、アルデヒド、及びアセテートから選択される種々の昆虫フェロモンを合成することができる。加えて、本明細書に記載される実施形態はまた、フレグランス、フレーバー、及びポリマー中間体の合成にも用いることができる。
[0172] 微生物宿主の改変は、限定はされないが、1つ又は複数の脂肪アシルデサチュラーゼ及び脂肪アルコール形成又は脂肪アルデヒド形成レダクターゼから構成される非天然フェロモン生合成経路の発現を伴う。不飽和化反応によって生成される脂肪酸は、トリアシルグリセリドとして細胞内に保持されるか又はレダクターゼによって酵素的に還元されて、脂肪アルコール又はアルデヒドを形成し得る。不飽和脂肪酸を含有するトリアシルグリセリドは、抽出され、エステル化され、化学的に還元されて、不飽和脂肪アルコールを生成し得る。記載される経路によって生成される脂肪アルコールは、その後の化学的酸化及びエステル化方法によってそれぞれ脂肪アルデヒドフェロモン及び脂肪アセテートフェロモンに更に変換され得る。化学的酸化及びエステル化の方法は、当該技術分野において公知である。記載されるフェロモン生合成経路を介して生成される脂肪アルコールは、それぞれアルコールデヒドロゲナーゼ及びアセチルトランスフェラーゼなどの酵素的変換を用いて、脂肪アルデヒドフェロモン及び脂肪アセテートフェロモンにも更に変換され得る。同様に、フェロモン生合成経路において中間体として形成される脂肪アシル-CoA又は脂肪アシル-ACPは、天然の又は異種由来のチオエステラーゼによって遊離脂肪酸として放出されて、メタセシスを用いたフェロモンの合成のための基質になり得る。
フェロモン
上記に記載したとおり、本開示の実施形態は、組換え微生物を用いた1つ以上の昆虫フェロモンの合成を提供する。フェロモンは、種内における化学的コミュニケーション機能のため特定の昆虫によって分泌される揮発性の化学的化合物である。即ち、フェロモンは、同じ種のメンバーに社会的反応を惹起する、分泌又は排泄される化学的因子である。とりわけ、警報フェロモン、食物の道標フェロモン、性フェロモン、集合フェロモン、自己顕示フェロモン、解発フェロモン、起動フェロモン、及び縄張りフェロモンがあり、これらは行動又は生理に影響を及ぼす。
本明細書に開示される組換え微生物及び方法を用いて合成することのできる昆虫フェロモンの非限定的な例としては、表1に掲載する直鎖アルコール、アルデヒド、及びアセテートが挙げられる。
一部の態様において、本開示に教示されるとおり合成されるフェロモンには、表2aに掲載される昆虫の行動を調節する表2aに掲載される少なくとも1つのフェロモンが含まれる。他の態様において、本明細書に開示される組換え微生物及び方法を用いて合成することのできる昆虫フェロモンの非限定的な例としては、表2aに掲載されるアルコール、アルデヒド、及びアセテートが挙げられる。しかしながら、本明細書に記載される微生物は、表1及び表2aに掲載されるC6~C20フェロモンの合成に限定されない。むしろ、本開示の微生物はまた、フレグランス、フレーバー、及びポリマー中間体を含めた、様々なC6~C24一不飽和又は多価不飽和脂肪アルコール、アルデヒド、及びアセテートの合成においても利用することができる。
多くのフェロモンは、末端水素が官能基によって置換されている炭化水素骨格を含む(Ryan MF (2002). Insect Chemoreception. Fundamental and Applied. Kluwer Academic Publishers)。表2bは一部の一般的な官能基をその式、接頭辞及び接尾辞と共に示す。隣接炭素からの水素の喪失によって生じた1つ以上の二重結合の存在によって分子の不飽和度が決まると共に、炭化水素の呼称が-アン(-ane)(多重結合なし)から-エン(-ene)に変わる。2つ及び3つの二重結合の存在は、名称がそれぞれ-ジエン及び-トリエンで終わることにより示される。各二重結合の位置は、それが始まる炭素の位置に対応する数字によって表され、各炭素は、官能基に結合しているものから付番される。官能基が結合している炭素を-1-と呼ぶ。フェロモンは、限定はされないが、10(デカ-)、12(ドデカ-)、14(テトラデカ-)、16(ヘキサデカ-)、又は18(オクタデカ-)炭素長を数える炭化水素鎖長を有し得る。二重結合の存在は別の効果を有する。二重結合は、分子を2つの可能な配置(各々、異なる分子である幾何異性体に相当する)の一方に固定することにより分子の回転を妨げる。これらは、炭素鎖が二重結合のそれぞれ反対側(トランス)又は同じ側(シス)で接続しているとき、E(ドイツ語のEntgegen、反対に由来)又はZ(Zusammen、一緒)のいずれかで呼ばれる。
本明細書に記載されるフェロモンは、IUPAC命名法又は当業者に公知の様々な略称若しくは変化形を用いて参照することができる。例えば、(11Z)-ヘキサデセン-1-アールはまた、Z-11-ヘキサデセン-1-アール、Z-11-ヘキサデセナール、又はZ-x-y:Ald(式中、xは二重結合の位置を表し、及びyは炭化水素骨格中の炭素の数を表す)とも書くことができる。炭化水素骨格上の官能基を特定するために本明細書で用いられる及び当業者に公知の略称には、アルデヒドを示す「Ald」、アルコールを示す「OH」、及びアセチルを示す「Ac」が含まれる。また、鎖中の炭素数は、数詞を用いるよりむしろ、数字を用いて示すこともできる。従って、本明細書で使用されるとき、16炭素で構成される不飽和炭素鎖は、ヘキサデセン又は16と書くことができる。
同様の略称及び派生語が、フェロモン前駆体を記載するため本明細書で用いられる。例えば、(11Z)-ヘキサデセン-1-アールの脂肪アシル-CoA前駆体は、(11Z)-ヘキサデセニル-CoA又はZ-11-16:アシル-CoAとして特定することができる。
本開示は、合成過程の1つ以上の段階についての基質の生成物への変換を触媒する1つ以上の異種酵素を含む組換え微生物を用いた一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、アルデヒド、及びアセテートの合成に関する。
デサチュラーゼ
本開示は、脂肪アシル基質を対応する不飽和脂肪アシル基質に不飽和化する酵素を記載する。
一部の実施形態では、脂肪アシル-CoA又はアシル-ACPの、対応する不飽和脂肪アシル-CoA又はアシル-ACPへの変換を触媒するためデサチュラーゼが使用される。デサチュラーゼは、少なくとも2つの水素原子を取り除くことにより飽和脂肪酸又は脂肪酸誘導体、例えば、脂肪アシル-CoA又は脂肪アシル-ACP(本明細書ではまとめて「脂肪アシル」と称される)における炭素-炭素二重結合の形成を触媒して対応する不飽和脂肪酸/アシルを生成させる酵素である。デサチュラーゼは、脂肪酸/アシルのメチル末端に対する内部炭素又は脂肪酸/アシルのカルボニル末端に対する内部炭素でこの酵素が二重結合形成を選択的に触媒する能力に基づき分類される。オメガ(ω)デサチュラーゼは、脂肪酸/アシルのメチル末端に対する固定的な内部炭素で炭素-炭素二重結合の形成を触媒する。例えば、ω3デサチュラーゼは、脂肪酸/アシルのメチル末端から3番目の炭素と4番目の炭素との間で二重結合の形成を触媒する。デルタ(Δ)デサチュラーゼは、脂肪酸のカルボキシル基又は脂肪アシルCoAのカルボニル基から特定の位置で炭素-炭素二重結合の形成を触媒する。例えば、Δ9デサチュラーゼは、脂肪酸のカルボキシル末端又は脂肪アシルCoAのカルボニル基からC9~C10の炭素間で二重結合の形成を触媒する。
本明細書で使用されるとき、デサチュラーゼは、そのデサチュラーゼが二重結合の形成を触媒する位置、及び結果として得られる不飽和炭化水素の幾何配置(即ち、E/Z)に関連して記載することができる。従って、本明細書で使用されるとき、Z9デサチュラーゼは、脂肪酸/アシルのカルボニル末端からC9~C10の炭素間で二重結合の形成を触媒し、それにより2つの炭化水素をシス又はZ配置で炭素-炭素二重結合の反対側に配向させるΔデサチュラーゼを指す。同様に、本明細書で使用されるとき、Z11デサチュラーゼは、脂肪酸/アシルのカルボニル末端からC11~C12の炭素間で二重結合の形成を触媒するΔデサチュラーゼを指す。
デサチュラーゼは保存された構造モチーフを有する。膜貫通デサチュラーゼのこの配列モチーフは、[HX3-4HX7-41(3個の非His)HX2-3(1個の非His)HHX61-189(40個の非His)HX2-3(1個の非His)HH]によって特徴付けられる。可溶性デサチュラーゼの配列モチーフは、[D/EEXXH]が2つ出現することによって特徴付けられる。
一部の実施形態では、デサチュラーゼは、脂肪アシル-CoAにおける二重結合の形成を触媒する脂肪アシル-CoAデサチュラーゼである。一部のかかる実施形態では、本明細書に記載される脂肪アシル-CoAデサチュラーゼは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24炭素原子の鎖長を有する脂肪アシル-CoAを基質として利用する能力を有する。従って、本組換え微生物に使用されるデサチュラーゼは、基質の鎖長に基づき選択することができる。
一部の実施形態では、本明細書に記載される脂肪アシルデサチュラーゼは、不飽和脂肪アシル-CoAの末端CoAに対して所望の炭素で二重結合の形成を触媒する能力を有する。従って、一部の実施形態では、脂肪アシル-CoAのカルボニル基から3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13位で二重結合挿入を触媒するデサチュラーゼを本組換え微生物で使用するように選択することができる。
一部の実施形態では、本明細書に記載される脂肪アシルデサチュラーゼは、得られる不飽和脂肪アシル-CoAがシス又はトランス(即ちZ又はE)幾何配置を有するように飽和脂肪アシル-CoAにおける二重結合の形成を触媒する能力を有する。
一部の実施形態では、デサチュラーゼは、脂肪アシル-ACPにおける二重結合の形成を触媒する脂肪アシル-ACPデサチュラーゼである。一部の実施形態では、本明細書に記載される脂肪アシル-ACPデサチュラーゼは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24炭素原子の鎖長を有する脂肪アシル-CoAを基質として利用する能力を有する。従って、本組換え微生物に使用されるデサチュラーゼは、基質の鎖長に基づき選択することができる。
一部の実施形態では、本明細書に記載される脂肪アシル-ACPデサチュラーゼは、不飽和脂肪アシル-ACPの末端カルボニルに対して所望の炭素で二重結合の形成を触媒する能力を有する。従って、一部の実施形態では、脂肪アシル-ACPのカルボニル基から3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13位で二重結合挿入を触媒するデサチュラーゼを本組換え微生物で使用するように選択することができる。
一部の実施形態では、本明細書に記載される脂肪アシルデサチュラーゼは、得られる不飽和脂肪アシル-ACPがシス又はトランス(即ちZ又はE)幾何配置を有するように飽和脂肪アシル-CoAにおける二重結合の形成を触媒する能力を有する。
一実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼはZ11デサチュラーゼである。一部の実施形態では、カブラヤガ(Agrotis segetum)、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、アカオビコハマキ(Argyrotaenia velutiana)、ハスオビハマキ(Choristoneura rosaceana)、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)、又はタラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)種の生物由来のZ11デサチュラーゼをコードする核酸配列がコドン最適化される。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)由来の配列番号9、18、24及び26から選択される核酸配列を含む。
一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)由来の配列番号49に示されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)由来の配列番号10及び16から選択されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)由来の配列番号53に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)由来の配列番号11及び23から選択されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)由来の配列番号50及び51から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)由来の配列番号12、17及び30から選択されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)由来の配列番号52に示されるアミノ酸配列を含む。更なる実施形態では、Z11デサチュラーゼは、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)由来の配列番号13、19、25、27及び31から選択されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)由来の配列番号54に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、イネヨトウ(S. inferens)由来の配列番号39に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、GenBank受託番号AF416738、AGH12217.1、AII21943.1、CAJ43430.2、AF441221、AAF81787.1、AF545481、AJ271414、AY362879、ABX71630.1及びNP001299594.1、Q9N9Z8、ABX71630.1及びAIM40221.1に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、キメラポリペプチドを含む。一部の実施形態では、完全な又は部分的なZ11デサチュラーゼが別のポリペプチドに融合される。特定の実施形態では、Z11デサチュラーゼのN末端天然リーダー配列が別の種由来のオレオシンリーダー配列に置換される。特定の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、配列番号15、28及び29から選択されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、配列番号61、62、63、78、79及び80から選択されるアミノ酸配列を含む。
[0192] 一実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、Z9デサチュラーゼである。一部の実施形態では、Z9デサチュラーゼをコードする核酸配列がコドン最適化される。一部の実施形態では、Z9デサチュラーゼは、アワノメイガ(Ostrinia furnacalis)由来の配列番号20に示されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、Z9デサチュラーゼは、アワノメイガ(Ostrinia furnacalis)由来の配列番号58に示されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、Z9デサチュラーゼは、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)由来の配列番号21に示されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、Z9デサチュラーゼは、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)由来の配列番号59に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、Z9デサチュラーゼは、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)由来の配列番号22に示されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、Z9デサチュラーゼは、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)由来の配列番号60に示されるアミノ酸配列を含む。
したがって、一部の実施形態において、本開示は、配列番号39、49、50、51、52、53、54、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、78、79、80、95、97、99、101、103及び105からなる群から選択される配列のいずれかと、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%又は50%の配列同一性を示すZ11又はZ9デサチュラーゼを含む組換え微生物を教示する。
したがって、一部の実施形態において、本開示は、Z11又はZ9デサチュラーゼをコードする核酸分子を含む組換え微生物を教示し、ここで、該核酸分子は、配列番号9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、68、69、70、71、94、96、98、100、102及び104からなる群から選択される配列のいずれか一つと、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%又は50%の配列同一性を示す。
一部の態様において、本開示は、配列番号39、54、60、62、78、79、80、95、97、99,101,103及び105からなる群から選択される脂肪アシルデサチュラーゼと少なくとも、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%又は50%の配列同一性を有する脂肪アシルデサチュラーゼであって、飽和C6-C24脂肪アシルCoAから対応する一不飽和又は多価不飽和C6-C24脂肪アシルCoAへの変換を触媒する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む組換え微生物を教示する。
脂肪アシルレダクターゼ
本開示は、脂肪アシル基質を対応する脂肪アルコール又はアルデヒドに還元する酵素を記載する。
一部の実施形態では、脂肪アシル-CoAの、対応する脂肪アルコールへの変換を触媒するため脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼが使用される。一部の実施形態では、脂肪アシル-ACPの、対応する脂肪アルデヒドへの変換を触媒するため脂肪アルデヒド形成脂肪アシルレダクターゼが使用される。脂肪アシルレダクターゼは、脂肪アシル-CoAの、対応する脂肪アルコールへの還元又は脂肪アシル-ACPの、対応する脂肪アルデヒドへの還元を触媒する酵素である。脂肪アシル-CoA及び脂肪アシル-ACPは、R-(CO)-S-R1(式中、RはC6~C24飽和、不飽和、直鎖状、分枝状又は環状炭化水素であり、及びR1はCoA又はACPを表す)の構造を有する。詳細な実施形態では、RはC6~C24飽和又は不飽和直鎖炭化水素である。「CoA」は、脂肪酸の合成及び酸化に関わる非タンパク質アシルキャリアー群である。「ACP」は、脂肪酸の合成に用いられる脂肪酸シンターゼのアシルキャリアータンパク質、即ちポリペプチド又はタンパク質サブユニットである。
従って、一部の実施形態において、本開示は、脂肪アシル-CoAの、対応する脂肪アルコールへの還元を触媒する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼを提供する。例えば、R-(CO)-S-CoAは、NAD(P)Hの2つの分子が酸化されてNAD(P)+になるとR-CH2OH及びCoA-SHに変換される。従って、一部のかかる実施形態において、本明細書に記載される組換え微生物は、脂肪アシル-CoAの、対応する脂肪アルコールへの還元を触媒する異種脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼを含み得る。例示的実施形態では、本明細書に開示される組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールへの変換を触媒する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を含む。
他の実施形態において、本開示は、脂肪アシル-ACPの、対応する脂肪アルデヒドへの還元を触媒する脂肪アルデヒド形成脂肪アシルレダクターゼを提供する。例えば、R-(CO)-S-ACPは、NAD(P)Hの1つの分子が酸化されてNAD(P)+になるとR-(CO)-H及びACP-SHに変換される。一部のかかる実施形態において、本明細書に記載される組換え微生物は、脂肪アシル-ACPの、対応する脂肪アルデヒドへの還元を触媒する異種脂肪アルデヒド形成脂肪アシルレダクターゼを含み得る。例示的実施形態では、本明細書に開示される組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-ACPの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルデヒドへの変換を触媒する脂肪アルデヒド形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を含む。
[0200] いくつかの昆虫種では、それぞれのアルコール形成脂肪アシルレダクターゼ(FAR)酵素が部位特異的脱リン酸化によって活性化される(Jurenka,R.& Rafaeli,A. Regulatory Role of PBAN in Sex Pheromone Biosynthesis of Helipthine Moths. Front. Endocrinol.(Lausanne). 2:46(2011);Gilbert,L. I. Insect Endocrinology.(Academic Press))。いずれか1つの理論によって制限されるものではないが、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)などの酵母中の異種発現したFAR酵素のリン酸化が不活性化につながり得、低い脂肪アルコール力価をもたらす。一部の実施形態では、バイオインフォマティクス手法を用いて、FAR内のリン酸化残基を予測することができる。セリン及びトレオニン残基のアラニン置換がリン酸化をなくすことが示された(Shi,S.,Chen,Y.,Siewers,V.& Nielsen,J. Improving Production of Malonyl Coenzyme A-Derived Metabolites by Abolishing Snf1-Dependent Regulation of Acc1. mBio 5(2014))。従って、セリン残基のリン酸化を防ぐためのアラニン置換の影響及び脂肪アルコール力価に対するその影響が試験され得る。アラニン置換に加えて、FAR活性の改善は、他のアミノ酸置換によっても達成され得る。
[0201] 一部の実施形態では、宿主微生物におけるその発現時のリン酸化感受性残基の選択及び改変に基づいてFARの有益な突然変異を同定するための方法が提供される。好ましい実施形態では、宿主微生物は、ヤロウイア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)、ハンゼヌラ属(Hansenula)及びクルイベロミセス属(Kluyveromyces)からなる群から選択される酵母である。
[0202] タンパク質リン酸化部位についての他の参考文献としては、Blom,N.,Gammeltoft,S.& Brunak,S. Sequence and structure-based prediction of eukaryotic protein phosphorylation sites1. J. Mol. Biol. 294,1351-1362(1999);Ingrell,C. R.,Miller,M. L.,Jensen,O. N. & Blom,N. NetPhosYeast:prediction of protein phosphorylation sites in yeast. Bioinforma.23:895-897(2007);Miller,W.T.Tyrosine kinase signaling and the emergence of multicellularity. Biochim. Biophys. Acta 1823,1053-1057(2012)が挙げられ、これらは、それぞれ全体が本明細書に援用される。
[0203] 一部の実施形態では、カブラヤガ(Agrotis segetum)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、ミドリムシ(Euglena gracilis)、サクラスガ(Yponomeuta evonymellus)及びオオタバコガ(Helicoverpa armigera)種の生物由来の脂肪アシルレダクターゼをコードする核酸配列がコドン最適化される。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)由来の配列番号1に示されるヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)由来の配列番号2に示されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、配列番号3、32、40、72、74、76及び81から選択されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)由来の配列番号55に示されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)由来の配列番号56に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)由来の配列番号41及び57から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)由来の配列番号73及び82から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、ミドリムシ(Euglena gracilis)由来の配列番号75に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、サクラスガ(Yponomeuta evonymellus)由来の配列番号77に示されるアミノ酸配列を含む。
[0204] 一部の実施形態では、組換え微生物における不飽和脂肪アルコールの生成は、1つ以上の突然変異体FARの発現を含む。特定の実施形態では、配列番号41に示されるアミノ酸配列によってコードされる野生型オオタバコガ(Helicoverpa amigera)脂肪アシル-CoAレダクターゼの酵素活性と比べて増加した酵素活性を有する、オオタバコガ(Helicoverpa amigera)脂肪アシル-CoAレダクターゼ(HaFAR)変異体が提供される。一部の実施形態では、増加した酵素活性は、配列番号41に示されるアミノ酸配列によってコードされるHaFARの野生型酵素活性によって生成される脂肪アルコールの量と比べた、生成される脂肪アルコールの量の正味の活性増加である。一部の実施形態では、野生型HaFARは、配列番号90に示されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、配列番号41に示されるアミノ酸配列によってコードされる野生型HaFARの変異体は、以下の位置:S60X、S195X、S298X、S378X、S394X、S418X及びS453Xにおける点突然変異を含み、ここで、Xは、F、L、M、I、V、P、T、A、Y、K、H、N、Q、K、D、E、C、W及びRから選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、配列番号41に示されるアミノ酸配列によってコードされる野生型HaFARの変異体は、以下のアミノ酸位置:S60X、S195X、S298X、S378X、S394X、S418X及びS453Xにおける突然変異から選択される点突然変異の組み合わせを含み、ここで、Xは、F、L、M、I、V、P、T、A、Y、K、H、N、Q、K、D、E、C、W及びRから選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、突然変異脂肪アシルレダクターゼであり、配列番号42~48から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、突然変異脂肪アシルレダクターゼであり、配列番号83~89から選択されるヌクレオチド配列を含む。
したがって、一部の実施形態において、本開示は、配列番号41、42、43、44、45、46、47、48、55、56、57、73、75、77及び82からなる群から選択される配列のいずれかと、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%又は50%の配列同一性を示す脂肪アシルレダクターゼを含む組換え微生物を教示する。
したがって、一部の実施形態において、本開示は、脂肪アシルレダクターゼをコードする核酸分子を含む組換え微生物を教示し、ここで、該核酸分子は、配列番号1、2、3、32、37、40、72、74、76、81、83、84、85、86、87、88、89及び90からなる群から選択される配列のいずれかと、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%又は50%の配列同一性を示す。
一部の態様において、本開示は、配列番号41~48、57、73、75及び77からなる群から選択される脂肪アシルレダクターゼと少なくとも、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%又は50%の配列同一性を有し、一不飽和又は多価不飽和C6-C24脂肪アシルCoAかを対応する単不飽和又はポリ不飽和C6-C24脂肪アルコールへの変換を触媒する脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む組換え微生物を教示する。
アシル-ACPシンテターゼ
本開示は、脂肪酸を対応する脂肪アシル-ACPに結合させる酵素を記載する。
一部の実施形態では、脂肪酸の、対応する脂肪アシル-ACPへの変換を触媒するためアシル-ACPシンテターゼが使用される。アシル-ACPシンテターゼは、脂肪酸をACPに結合させて脂肪酸アシル-ACPを生じさせる能力を有する酵素である。一部の実施形態では、脂肪酸の、対応する脂肪アシル-ACPへの変換を触媒するためアシル-ACPシンテターゼが使用されてもよい。一部の実施形態では、アシル-ACPシンテターゼは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24炭素原子の鎖長を有する脂肪酸を基質として利用する能力を有するシンテターゼである。1つのかかる実施形態では、本明細書に記載される組換え微生物は、脂肪酸の、対応する脂肪アシル-ACPへの変換を触媒する異種アシル-ACPシンテターゼを含み得る。例示的実施形態では、本明細書に開示される組換え微生物は、飽和C6~C24脂肪酸の、対応する飽和C6~C24脂肪アシル-ACPへの変換を触媒するアシル-ACPシンテターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を含む。
脂肪酸シンターゼ複合体
本開示は、脂肪酸における炭素鎖の伸長を触媒する酵素を記載する。
一部の実施形態では、脂肪酸における炭素鎖の開始及び伸長を触媒するため脂肪酸シンターゼ複合体が使用される。「脂肪酸シンターゼ複合体」は、脂肪酸上の炭素鎖の開始及び伸長を触媒する酵素群を指す。ACPが脂肪酸シンターゼ(FAS)経路の酵素と共に、生成される脂肪酸の長さ、飽和度、及び分枝形成を調節する。この経路のステップは、脂肪酸生合成(fab)及びアセチル-CoAカルボキシラーゼ(acc)遺伝子ファミリーの酵素によって触媒される。所望の生成物に応じて、これらの遺伝子の1つ以上を減弱させ、発現させ、又は過剰発現させることができる。例示的実施形態では、これらの遺伝子の1つ以上が過剰発現する。
脂肪酸シンターゼの主要なクラスは2つある。I型(FAS I)系は単一の大きい多機能性ポリペプチドを利用し、哺乳類及び真菌類の両方に共通している(但しシンターゼの構造配列は真菌類と哺乳類とで異なる)。I型FAS系はまた、CMN細菌群(コリネバクテリウム、マイコバクテリア、及びノカルジア)にも見られる。II型FAS(FAS II)は、脂肪酸合成に個別的な単機能酵素を使用することによって特徴付けられ、古細菌及び細菌に見られる。
FAS I多酵素ポリペプチド及びFAS II酵素のドメインは大部分が保存されているため、FAS I及びFAS IIの伸長及び還元機構は実質的に同様である。
脂肪酸は、一連の脱炭酸性クライゼン縮合反応によってアセチル-CoA及びマロニル-CoAから合成される。この経路のステップは、脂肪酸生合成(fab)及びアセチル-CoAカルボキシラーゼ(acc)遺伝子ファミリーの酵素によって触媒される。この経路の説明については、例えば、Heath et al., Prog. Lipid Res. 40:467, 2001(全体として参照により本明細書に援用される)を参照されたい。理論によって制限されるものではないが、細菌では、アセチル-CoAがアセチル-CoAカルボキシラーゼ(Acc、4つの別個の遺伝子accABCDによってコードされるマルチサブユニット酵素)によってカルボキシル化されてマロニル-CoAを形成する。酵母では、アセチル-CoAが、ACC1及びACC2によってコードされるアセチル-CoAカルボキシラーゼの酵母等価物によってカルボキシル化される。細菌では、マロン酸基がマロニル-CoA:ACPトランスアシラーゼ(FabD)によってACPに転移してマロニル-ACPが形成される。酵母では、マロニル-パルミチルトランスフェラーゼドメインがマロニル-CoAのマロニルをFAS複合体のACPドメインに付加する。次に縮合反応が起こり、ここでマロニル-ACPがアシル-CoAと合体してβ-ケトアシル-ACPが生じる。このようにして、炭化水素基質が2炭素伸長する。
伸長後、β-ケト基がケトレダクターゼ(KR)、デヒドラターゼ(DH)、及びエノールレダクターゼ(ER)の連続作用によって完全飽和炭素鎖に還元される。伸長した脂肪酸鎖はACPのホスホパンテテイン補欠分子族に共有結合的に結合しつつこれらの活性部位の間を運ばれる。初めに、β-ケトアシル-ACPがNADPHによって還元されてβ-ヒドロキシアシル-ACPを形成する。細菌では、このステップはβ-ケトアシル-ACPレダクターゼ(FabG)によって触媒される。等価な酵母反応がFASのケトレダクターゼ(KR)ドメインによって触媒される。次にβ-ヒドロキシアシル-ACPが脱水してトランス-2-エノイル-ACPを形成し、これは、細菌ではβ-ヒドロキシアシル-ACPデヒドラターゼ/イソメラーゼ(FabA)又はβ-ヒドロキシアシル-ACPデヒドラターゼ(FabZ)のいずれか、又は酵母ではFASのデヒドラターゼ(DH)ドメインによって触媒される。細菌におけるNADPH依存性トランス-2-エノイル-ACPレダクターゼI、II、又はIII(それぞれFabl、FabK、及びFabL)及び酵母におけるFASのエノールレダクターゼ(ER)ドメインがトランス-2-エノイル-ACPを還元すると、アシル-ACPが形成される。続くサイクルは、β-ケトアシル-ACPシンターゼI又はβ-ケトアシル-ACPシンターゼII(細菌ではそれぞれFabB及びFabF、又は酵母ではβ-ケトアシルシンターゼ(KS)ドメイン)によるマロニル-ACPとアシル-ACPの縮合から開始される。
一部の実施形態では、脂肪アシル-ACPから基質と比べて2炭素の伸長を有する対応する脂肪アシル-ACPへの伸長を触媒するため脂肪酸シンターゼ複合体を使用することができる。
デヒドロゲナーゼ
本開示は、脂肪アルデヒドの脂肪アルコールへの変換を触媒する酵素を記載する。一部の実施形態では、脂肪アルデヒドの脂肪アルコールへの変換を触媒するためアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH、表3及び表3a)が使用される。アルカン代謝活性型生物、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)NRRL B-1244(Hou et al. 1983)、シュードモナス・ブタノボラ(Pseudomonas butanovora)ATCC 43655(Vangnai and Arp 2001)、及びアシネトバクター属種(Acinetobacter sp.)株M-1(Tani et al. 2000)から同定された幾つものADHが、短鎖~中鎖アルキルアルコール(C2~C14)に対して活性があることを示す。加えて、Sigmaから市販されているADH、ウマ肝臓ADH及びパン酵母ADHが、長さC10以上の基質に対する検出可能な活性を有する。より長鎖の脂肪アルコールに対する既報告の活性は、基質の難可溶化の影響を受け得る。Sigmaの酵母ADHは、C12~C14アルデヒドに対する活性がほとんど乃至全くないことが(Tani et al. 2000)によって観察され、しかしながら、C12及びC16ヒドロキシ-ω-脂肪酸に対する活性は観察されている(Lu et al. 2010)。最近になって、LadAヒドロキシラーゼを用いてC15~C36アルカンを分解する生物であるゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)NG80-2から2つのADHが特徴付けられた。両方のADHにメタノールから1-トリアコンタノール(C30)への活性が検出され、ADH2については1-オクタノール及びADH1についてはエタノールが好ましい基質であった(Liu et al. 2009)。
全細胞生物変換におけるADHの使用は、主にケトンからのキラルアルコールの生成に焦点が置かれている(Ernst et al. 2005)(Schroer et al. 2007)。Schroer et al.は、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)由来のADH及びイソプロパノールによる共役補因子再生を用いて、アセト酢酸メチルからの797gの(R)-メチル-3ヒドロキシブタノエートの生成(空時収率29g/L/h)を報告した(Schroer et al. 2007)。全細胞形質転換における脂肪族アルコール酸化の例が、商業的に入手されたS.セレビシエ(S. cerevisiae)で、ヘキサノールのヘキサナール(Presecki et al. 2012)への及び2-ヘプタノールの2-ヘプタノン(Cappaert and Larroche 2004)への変換について報告されている。
一部の実施形態において、本開示は、YALI0F09603g(FADH)、YALI0D25630g(ADH1)、YALI0E17787g(ADH2)、YALI0A16379g(ADH3)、YALI0E15818g(ADH4)、YALI0D02167g(ADH5)、YALI0A15147g(ADH6)、YALI0E07766g(ADH7)からなる群より選択される一つ以上の内在性(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼの活性の欠失、破壊、変異、及び又は低下を含む組換え微生物を教示する。
したがって、一部の実施形態において、本開示の組換え微生物は、YALI0F09603g(FADH)、YALI0D25630g(ADH1)、YALI0E17787g(ADH2)、YALI0A16379g(ADH3)、YALI0E15818g(ADH4)、YALI0D02167g(ADH5)、YALI0A15147g(ADH6)及びYALI0E07766g(ADH7)によってコードされるタンパク質と、少なくとも100%、99%、98%、97%、95%、94%、93%、92%、91%、又は90%の配列同一性を示すタンパク質をコードする内因性遺伝子の欠失又は他の破壊を含む。
したがって、一部の実施形態において、本開示の組換え微生物は、uniprotデータベースID Q6C297(FADH)、Q6C7T0(ADH1)、F2Z678(ADH2)、Q6CGT5(ADH3)、Q6C5R5(ADH4)、Q6CAT5(ADH5)、Q6CGX5(ADH6)及びQ6C7K3(ADH7)と、少なくとも100%、99%、98%、97%、95%、94%、93%、92%、91%、又は90%の配列同一性を示すタンパク質をコードする内因性遺伝子における欠失を含む。
アルコールオキシダーゼ
本開示は、脂肪アルコールを脂肪アルデヒドに酸化する酵素を記載する。
一部の実施形態では、脂肪アルコールの脂肪アルデヒドへの変換を触媒するためアルコールオキシダーゼ(AOX)が使用される。アルコールオキシダーゼは、分子酸素の使用による副生成物としての過酸化水素の形成を介した電子移動により、アルコールの、対応するアルデヒド(又はケトン)への変換を触媒する。AOX酵素はフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を必須補因子として利用し、反応媒体中の酸素を用いて再生する。カタラーゼ酵素をAOXにカップリングすると、水及び酸素への触媒変換による過酸化水素の蓄積を回避し得る。
AOXは、基質特異性に基づき4種類:(a)短鎖アルコールオキシダーゼ、(b)長鎖アルコールオキシダーゼ、(c)芳香族アルコールオキシダーゼ、及び(d)第二級アルコールオキシダーゼに分類することができる(Goswami et al. 2013)。所望の基質の鎖長に応じて、これらの4種類のうちのあるメンバーが評価候補として他のメンバーより好適である。
短鎖アルコールオキシダーゼ(限定はされないが、現在EC 1.1.3.13に分類されているものを含む、表4)は、C1~C8炭素の範囲の低鎖長アルコール基質の酸化を触媒する(van der Klei et al. 1991)(Ozimek et al. 2005)。カンジダ・ボイジニ(Candida boidinii)及びコマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)(旧ピキア・パストリス(Pichia pastoris))などのメチロトローフ酵母由来の脂肪族アルコールオキシダーゼは、第一級アルカノールの、対応するアルデヒドへの酸化を触媒し、非分枝状短鎖脂肪族アルコーを選好する。最も広い基質特異性が、プロパルギルアルコール、2-クロロエタノール、2-シアノエタノールを含め、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)由来のアルコールオキシダーゼに認められる(Dienys et al. 2003)。アルコール酸化で直面する主な課題は、アルデヒド生成物の高い反応性である。2つの液相系(水/溶媒)を利用することにより、アルデヒド生成物が酸に更に変換される前に反応相からアルデヒド生成物をインサイチュで除去することができる。例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)アルコールオキシダーゼをウシ肝臓カタラーゼと組み合わせて用いたヘキサノールからのヘキサナール生成が、水相中の安定アルコールオキシダーゼの存在を利用することにより二相系において達成された(Karra-Chaabouni et al. 2003)。例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)由来のアルコールオキシダーゼは、二相性有機反応系を用いたとき、C6の脂肪族アルコールをC11に酸化させることが可能であった(Murray and Duff 1990)。(Karra-Chaabouni et al. 2003)及び(Murray and Duff 1990)による二相系におけるアルコールオキシダーゼの使用方法は、全体として参照により援用される。
長鎖アルコールオキシダーゼ(限定はされないが、現在EC 1.1.3.20に分類されているものを含む;表5)には、炭素鎖長が6より大きいアルコール基質を酸化させる脂肪アルコールオキシダーゼ、長鎖脂肪酸オキシダーゼ、及び長鎖脂肪アルコールオキシダーゼが含まれる(Goswami et al. 2013)。Banthorpe et al.は、ヨモギギク(Tanacetum vulgare)の葉から精製された長鎖アルコールオキシダーゼを報告し、これはヘキサ-トランス-2-エン-1-オール及びオクタン-1-オールを含めた飽和及び不飽和長鎖アルコール基質を酸化させることが可能であった(Banthorpe 1976)(Cardemil 1978)。ホホバ(Simmondsia chinensis)(Moreau, R.A., Huang 1979)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Cheng et al. 2004)、及びミヤコグサ(Lotus japonicas)(Zhao et al. 2008)を含めた他の植物種も長鎖アルコールオキシダーゼの供給源として報告されている。脂肪アルコールオキシダーゼは主に酵母種から報告されており(Hommel and Ratledge 1990)(Vanhanen et al. 2000)(Hommel et al. 1994)(Kemp et al. 1990)、これらの酵素は長鎖脂肪酸代謝において重要な役割を果たす(Cheng et al. 2005)。長鎖アルカン及び脂肪酸を分解し及びそこで成長する酵母種由来の脂肪アルコールオキシダーゼは、脂肪アルコールの酸化を触媒する。カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)由来の脂肪アルコールオキシダーゼがミクロソーム細胞画分として単離され、様々な基質について特徴付けられている(Eirich et al. 2004)(Kemp et al. 1988)(Kemp et al. 1991)(Mauersberger et al. 1992)。長さC8~C16の第一級アルコールについて有意な活性が観察され、報告されているKMは10~50μMの範囲である(Eirich et al. 2004)。記載されるアルコールオキシダーゼは、例えば、全細胞カンジダ・ボイジニ(Candida boidinii)(Gabelman and Luzio 1997)、及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)(Duff and Murray 1988)(Murray and Duff 1990)について記載されるとおり中鎖脂肪族アルコールのアルデヒドへの変換に使用し得る。炭化水素基質上で成長する間に糸状菌類由来の長鎖アルコールオキシダーゼが生成された(Kumar and Goswami 2006)(Savitha and Ratledge 1991)。ミヤコグサ(Lotus japonicas)由来の長鎖脂肪アルコールオキシダーゼ(LjFAO1)が大腸菌(E. coli)で異種発現しており、1-ドデカノール及び1-ヘキサデカノールを含めたアルコール酸化に対する広い基質特異性を呈している(Zhao et al. 2008)。
一部の実施態様において、本開示は、一つ以上の内因性(脂肪)アルコールオキシダーゼYALI0B14014g(FAO1)の活性の、欠失、破壊、変異及び又は低下を含む組換え微生物を教示する。
したがって、一部の実施形態において、本開示の組換え微生物は、(脂肪)アルコールオキシダーゼYALI0B14014g(FAO1)によってコードされるタンパク質と、少なくとも100%、99%、98%、97%、95%、94%、93%、92%、91%又は90%の配列同一性を示すタンパク質をコードする内因性遺伝子の欠失又は他の破壊を含む。
したがって、一部の実施形態において、本開示の組換え微生物は、uniprotデータベースID Q6CEP8(FAO1)、少なくとも100%、99%、98%、97%、95%、94%、93%、92%、91%、又は90%の配列同一性を示すタンパク質をコードする内因性遺伝子における欠失を含む。
アセチルトランスフェラーゼ
本開示は、アルコールを脂肪アセテートに変換する酵素を記載する。
一部の実施形態では、脂肪アルコールの脂肪アセテートへの変換を触媒するためアセチルトランスフェラーゼが使用される。アセチルトランスフェラーゼは、アセチル基をアセチル-CoAからアルコールへと転移させることにより酢酸エステルを生成することが可能な酵素である。一部の実施形態では、アセチルトランスフェラーゼは2.3.1.84のEC番号を有し得る。
アセチルトランスフェラーゼ、又はそれをコードする核酸配列は、限定はされないが、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、オオカバマダラ(Danaus plexippus)、ニセアメリカタバコガ(Heliotis virescens)、カイコガ(Bombyx mori)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)、カブラヤガ(Agrotis segetum)、ニシキギ(Euonymus alatus)、ヒト(Homo sapiens)、ラカンセア・サーモトレランス(Lachancea thermotolerans)及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)種の生物を含め、様々な生物から単離することができる。例示的実施形態では、アセチルトランスフェラーゼは、GenBank受託番号AY242066、AY242065、AY242064、AY242063、AY242062、EHJ65205、ACX53812、NP_001182381、EHJ65977、EHJ68573、KJ579226、GU594061、KTA99184.1、AIN34693.1、AY605053、XP_002552712.1、XP_503024.1、XP_505595.1及びXP_505513.1.から選択される配列を含む。例示的アセチルトランスフェラーゼ酵素は、表5dに示す。更なる例示的アセチルトランスフェラーゼペプチドについては、米国特許出願公開第2010/0199548号(本明細書において参照により援用される)を参照し得る。
脂肪アシル-ACPチオエステラーゼ
アシル-ACPチオエステラーゼは、アシル-ACPから、デノボ脂肪酸生合成により合成された遊離脂肪酸を放出する。この反応は脂肪酸生合成を終了させる。植物では、脂肪酸生合成はプラスチドで起こり、従ってプラスチド局在アシル-ACPチオエステラーゼが必要である。全ての植物の栄養組織においてアシル-ACPチオエステラーゼの主な生成物はオレイン酸塩(C18:0)、及びそれより程度は少ないがパルミチン酸塩(C16:0)である。放出された遊離脂肪酸はプラスチドエンベロープにおいて補酵素Aと再エステル化され、プラスチドから運び出される。
アシル-ACPチオエステラーゼには2つのアイソフォーム、FatA及びFatBがある。これらのアイソフォームの基質特異性が植物における飽和脂肪酸の鎖長及びレベルを決定する。FatAの活性はC18:1-ACPで最も高い。FatAは、C18:1-ACPと比較したときに他のアシル-ACPに対する活性が極めて低い。FatBの活性はC16:0-ACPで最も高い。また、C18:1-ACP、続いてC18:0-ACP及びC16:1-ACPでも著しく高い活性を有する。FatA及びFatBの速度論的研究からは、種々のアシル-ACPとのそれらの基質特異性はKmよりむしろKcat値から生じたことが示される。種々の基質とのこれらの2つのアイソフォームのKm値はマイクロモル濃度程度で同様である。FatA及びFatBのドメイン交換は、アイソフォームのN末端がその基質特異性を決定することを示す(Salas JJ and Ohlrogge JB (2002) Characterization of substrate specificity of plant FatA and FatB acyl-ACP thioesterases. Arch Biochem Biophys 403(1): 25-34))。種子に主に中鎖長飽和脂肪酸を蓄積する植物について、それらは特殊化したFatB及び/又はFatAチオエステラーゼと共に進化した(Voelker T and Kinney AJ (2001) Variations in the biosynthesis of seed-storage lipids. Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol 52: 335-361)。例えば、ラウリン酸塩(12:0)は、ココナツの優勢な種子油である。対応して、ココナツ種子に中鎖特異的アシル-ACPチオエステラーゼ活性が検出された。
[0235] 一部の実施形態では、本開示は、YALI0E16016g(FAT1)の活性の欠失、破壊、変異及び又は低下を含む組換え微生物を教示する。
[0236] 従って、一部の実施形態では、本開示の組換え微生物は、YALI0E16016g(FAT1)によってコードされるタンパク質との少なくとも100%、99%、98%、97%、95%、94%、93%、92%、91%又は90%の配列同一性を示すタンパク質をコードする内因性遺伝子における欠失又は他の破壊を含むであろう。
[0237] 従って、一部の実施形態では、本開示の組換え微生物は、uniprotデータベースID Q6C5Q8(FAO1)との少なくとも100%、99%、98%、97%、95%、94%、93%、92%、91%又は90%の配列同一性を示すタンパク質をコードする内因性遺伝子における欠失を含むであろう。
アシル-CoAオキシダーゼ
[0238] アシル-CoAオキシダーゼ(ACO)は、8~18の鎖長を有する脂肪酸のCoA誘導体に作用する。それらは、サブユニット当たり1つの非共有的に結合されたFADを含有するフラビン酵素であり、ミトコンドリアアシル-CoAデヒドロゲナーゼと同じスーパーファミリーに属する。ミトコンドリア脂肪アシル-CoAデヒドロゲナーゼと同様に、ペルオキシソームアシル-CoAオキシダーゼは、ペルオキシソーム脂肪酸β-酸化経路の初期の律速段階、すなわち還元的半反応においてトランス-2-エノイル-CoAを生じる、アシル-CoAのα,β-脱水素化を触媒する。ペルオキシソームアシル-CoAオキシダーゼの酸化的半反応において、還元されたFADは、分子酸素によって再度酸化されて、過酸化水素を生成する。
[0239] アシル-CoAオキシダーゼは、ホモ二量体であり、サブユニットのポリペプチド鎖は、N末端α-ドメイン、β-ドメイン及びC末端α-ドメインに折り畳まれる。ペルオキシソームアシル-CoAオキシダーゼ及びミトコンドリアアシル-CoAデヒドロゲナーゼ間の機能差は、FAD環境の構造差に起因する。
[0240] 一部の実施形態では、短鎖脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートの生成のための組換え微生物及び方法が提供される。特定の実施形態では、短鎖脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートは、C16以下の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、短鎖脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートは、長鎖脂肪酸から生成される。短鎖フェロモンを生成するための方法の一部の好ましい実施形態では、フェロモン生合成経路における脂肪アシル-CoAを短縮する能力を有する所定の酵素がフェロモン生合成経路酵素と共発現される。好適な鎖短縮酵素の例としては、FAD依存性アシル-CoAオキシダーゼが挙げられる。偶数の炭素を有する脂肪酸分子の場合、鎖短縮酵素は、アセチル-CoAの分子及び2つの炭素によって短縮される脂肪アシル-CoAを生成する。奇数の炭素を有する脂肪酸分子は、同様に酸化されて、鎖長が5つの炭素に減少されるまで毎回の酸化中にアセチル-CoA分子を生成する。酸化の最後のサイクルにおいて、この5-炭素アシル-CoAは、酸化されて、アセチル-CoA及びプロピオニル-CoAを生成する。
[0241] アシル-CoAオキシダーゼは、異なる鎖長を有する基質に対する可変の特異性を示すことが知られている(図40)。従って、脂肪アシル-CoA切断の程度を制御することは、適切な酵素変異体の改変又は選択に依存する。この目的に好適なアシル-CoAオキシダーゼの例が表5aに列挙される。
[0242] 更なる実施形態では、本開示は、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールを生成する能力を有する組換え微生物を提供し、この組換え微生物は、(a)飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子;(b)アシル-CoAオキシダーゼ活性の1つ以上の連続サイクル後、(a)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アシル-CoAへの変換を触媒するアシル-CoAオキシダーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子であって、所与のサイクルは、そのサイクルにおける出発一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoA基質と比べて2つの炭素切断を有する一不飽和又は多価不飽和C4~C22脂肪アシル-CoA中間体を生成する、少なくとも1つの外因性核酸分子;及び(c)(b)からの一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールへの変換を触媒する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、アルギロタエニア・ベルチナナ(Argyrotaenia velutinana)、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、イネヨトウ(Sesamia inferens)、タバコスズメガ(Manduca sexta)、ヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)、ハスオビハマキ(Choristoneura rosaceana)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、カブラヤガ(Agrotis segetum)、アワノメイガ(Ostrinia furnicalis)及びタラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)由来の脂肪アシルデサチュラーゼから選択される。一部の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、配列番号39、49~54、58~63、78~80並びにGenBank受託番号AF416738、AGH12217.1、AII21943.1、CAJ43430.2、AF441221、AAF81787.1、AF545481、AJ271414、AY362879、ABX71630.1、NP001299594.1、Q9N9Z8、ABX71630.1及びAIM40221.1からなる群から選択される脂肪アシルデサチュラーゼに対する少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%、50%又は50%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、アシル-CoAオキシダーゼは、表5aから選択される。他の実施形態では、脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、ミドリムシ(Euglena gracilis)、サクラスガ(Yponomeuta evonymellus)及びオオタバコガ(Helicoverpa armigera)由来の脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼから選択される。更なる実施形態では、脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼは、配列番号1~3、32、41~48、55~57、73、75、77及び82からなる群から選択される脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼに対する少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%、50%又は50%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、本組換え微生物は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)及びカンジダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)からなる群から選択される酵母である。
[0243] 脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを生成するための方法の一部の好ましい実施形態では、アシル-CoAオキシダーゼをコードする微生物宿主の1つ以上の遺伝子は、所望の鎖長を超える所望の脂肪アシル-CoAの切断を除去又は低減するように欠失又は下方制御される。このような欠失又は下方制御標的としては、限定はされないが、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX1(YALI0E32835g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX2(YALI0F10857g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX3(YALI0D24750g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX4(YALI0E27654g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX5(YALI0C23859g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX6(YALI0E06567g);S.セレビシエ(S. cerevisiae)POX1(YGL205W);カンジダ属(Candida)POX2(CaO19.1655、CaO19.9224、CTRG_02374、M18259)、カンジダ属(Candida)POX4(CaO19.1652、CaO19.9221、CTRG_02377、M12160)及びカンジダ属(Candida)POX5(CaO19.5723、CaO19.13146、CTRG_02721、M12161)が挙げられる。
[0244] 一部の実施形態では、本開示は、POX1(YALI0E32835g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX2(YALI0F10857g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX3(YALI0D24750g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX4(YALI0E27654g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX5(YALI0C23859g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX6(YALI0E06567g)からなる群から選択される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼの活性の欠失、破壊、変異及び又は低下を含む組換え微生物を教示する。
[0245] 従って、一部の実施形態では、本開示の組換え微生物は、POX1(YALI0E32835g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX2(YALI0F10857g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX3(YALI0D24750g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX4(YALI0E27654g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX5(YALI0C23859g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX6(YALI0E06567g)によってコードされるタンパク質との少なくとも100%、99%、98%、97%、95%、94%、93%、92%、91%又は90%の配列同一性を示すタンパク質をコードする内因性遺伝子における欠失又は他の破壊を含むであろう。
[0246] 従って、一部の実施形態では、本開示の組換え微生物は、データベースID POX1(O74934)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX2(O74935)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX3(O74936)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX4(F2Z627)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX5(F2Z630)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX6(Q6C6T0)との少なくとも100%、99%、98%、97%、95%、94%、93%、92%、91%又は90%の配列同一性を示すタンパク質をコードする内因性遺伝子における欠失を含むであろう。
[0247] 一部の実施形態では、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを生成する能力を有する組換え微生物が提供され、この組換え微生物は、1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ酵素を発現し、この組換え微生物は、1つ以上の内因性アシル-CoAオキシダーゼ酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。一部の実施形態では、発現される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ酵素は、欠失又は下方制御される1つ以上の内因性アシル-CoAオキシダーゼ酵素と異なる。一部の実施形態では、本組換え微生物は、フェロモン生合成経路酵素を更に発現する。更なる実施形態では、フェロモン生合成経路酵素は、1つ以上の脂肪アシルデサチュラーゼ及び/又は脂肪アシルコンジュゲートを含む。更に別の実施形態では、フェロモン生合成経路酵素は、1つ以上の脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼを含む。一部の実施形態では、発現される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ酵素は、表5aから選択される。他の実施形態では、発現される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ酵素は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートの鎖長を調節する。一部の実施形態では、欠失され、破壊され、変異され、又は下方制御される1つ以上の内因性アシル-CoAオキシダーゼ酵素は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX1(YALI0E32835g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX2(YALI0F10857g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX3(YALI0D24750g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX4(YALI0E27654g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX5(YALI0C23859g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX6(YALI0E06567g);S.セレビシエ(S. cerevisiae)POX1(YGL205W);カンジダ属(Candida)POX2(CaO19.1655、CaO19.9224、CTRG_02374、M18259)、カンジダ属(Candida)POX4(CaO19.1652、CaO19.9221、CTRG_02377、M12160)及びカンジダ属(Candida)POX5(CaO19.5723、CaO19.13146、CTRG_02721、M12161)から選択される。他の実施形態では、欠失され、破壊され、変異され、又は下方制御される1つ以上の内因性アシル-CoAオキシダーゼ酵素は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートの鎖長を制御する。
[0248] 一部の実施形態では、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを生成する方法が提供され、本方法は、アシル-CoAオキシダーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を組換え微生物中に導入するか又は組換え微生物中で発現させ、アシル-CoAオキシダーゼをコードする1つ以上の遺伝子における欠失、挿入又は機能喪失突然変異を導入することを含み、導入又は発現されるアシル-CoAオキシダーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子は、欠失又は下方制御されるアシル-CoAオキシダーゼをコードする1つ以上の遺伝子と異なる。一部の実施形態では、本方法は、脂肪アシルデサチュラーゼ及び/又は脂肪アシルコンジュゲートをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を組換え微生物中に導入するか又は組換え微生物中で発現させることを更に含む。更なる実施形態では、本方法は、脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を組換え微生物中に導入するか又は組換え微生物中で発現させることを更に含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子は、表5aから選択されるアシル-CoAオキシダーゼをコードする。他の実施形態では、少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートの鎖長を調節するアシル-CoAオキシダーゼをコードする。一部の実施形態では、欠失又は下方制御される1つ以上の遺伝子は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX1(YALI0E32835g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX2(YALI0F10857g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX3(YALI0D24750g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX4(YALI0E27654g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX5(YALI0C23859g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX6(YALI0E06567g);S.セレビシエ(S. cerevisiae)POX1(YGL205W);カンジダ属(Candida)POX2(CaO19.1655、CaO19.9224、CTRG_02374、M18259)、カンジダ属(Candida)POX4(CaO19.1652、CaO19.9221、CTRG_02377、M12160)及びカンジダ属(Candida)POX5(CaO19.5723、CaO19.13146、CTRG_02721、M12161)から選択されるアシル-CoAオキシダーゼをコードする。他の実施形態では、欠失又は下方制御される1つ以上の遺伝子は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートの鎖長を調節するアシル-CoAオキシダーゼをコードする。
アシルトランスフェラーゼ
[0249] 一部の実施形態では、短鎖脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートの生成のための組換え微生物及び方法が提供される。特定の実施形態では、短鎖脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートは、C18以下の炭素鎖長を有する。短鎖フェロモンを生成するための方法の一部の好ましい実施形態では、短鎖脂肪アシル-CoAを保持することを選好する所定の酵素が1つ以上の脂肪アシルデサチュラーゼと共発現される。このような好適なアシルトランスフェラーゼ酵素は、異種又は改変グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)、グリセロールリン脂質アシルトランスフェラーゼ(GPLAT)及び/又はジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)によって例示される。この目的に好適なアシルトランスフェラーゼの例が表5bに列挙される。
[0250] 脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを生成するための方法の一部の好ましい実施形態では、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)、グリセロールリン脂質アシルトランスフェラーゼ(GPLAT)及び/又はジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)をコードする微生物宿主の1つ以上の遺伝子が欠失又は下方制御され、短鎖脂肪アシル-CoAを保持することを選好する1つ以上のGPAT、LPAAT、GPLAT又はDGATで置換される。このような欠失又は下方制御標的としては、限定はされないが、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C00209g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E18964g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F19514g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14014g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E16797g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32769g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D07986g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YBL011w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YDL052c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR175C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YPR139C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YNR008w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR245c、カンジダ属(Candida)I503_02577、カンジダ属(Candida)CTRG_02630、カンジダ属(Candida)CaO19.250、カンジダ属(Candida)CaO19.7881、カンジダ属(Candida)CTRG_02437、カンジダ属(Candida)CaO19.1881、カンジダ属(Candida)CaO19.9437、カンジダ属(Candida)CTRG_01687、カンジダ属(Candida)CaO19.1043、カンジダ属(Candida)CaO19.8645、カンジダ属(Candida)CTRG_04750、カンジダ属(Candida)CaO19.13439、カンジダ属(Candida)CTRG_04390、カンジダ属(Candida)CaO19.6941、カンジダ属(Candida)CaO19.14203及びカンジダ属(Candida)CTRG_06209が挙げられる。他の実施形態では、アシルトランスフェラーゼは、AXP酸細胞外プロテアーゼ遺伝子座(YALI0B05654g)において挿入される。
[0251] 従って、一部の実施形態では、本開示は、92からなる群から選択される配列番号のいずれか1つとの少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%又は50%の配列同一性を示すアシルトランスフェラーゼを含む組換え微生物を教示する。
[0252] 従って、一部の実施形態では、本開示は、アシルトランスフェラーゼをコードする核酸分子を含む組換え微生物を教示し、前記核酸分子は、91からなる群から選択される配列番号のいずれか1つとの少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%又は50%の配列同一性を示す。
[0253] 一部の実施形態では、本開示は、配列番号92からなる群から選択されるアシルトランスフェラーゼに対する少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%又は50%の配列同一性を有するアシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む組換え微生物を教示する。
[0254] 一部の実施形態では、本開示は、YALI0E32791g(DGA1)及び/又はYALI0D07986g(DGA2)からなる群から選択される1つ以上のアシルトランスフェラーゼの活性の欠失、破壊、変異及び又は低下を含む組換え微生物を教示する。
[0255] 従って、一部の実施形態では、本開示の組換え微生物は、YALI0E32791g(DGA1)及びYALI0D07986g(DGA2)によってコードされるタンパク質との少なくとも100%、99%、98%、97%、95%、94%、93%、92%、91%又は90%の配列同一性を示すタンパク質をコードする内因性遺伝子における欠失又は他の破壊を含むであろう。
[0256] 従って、一部の実施形態では、本開示の組換え微生物は、uniprotデータベースID Q6C3R1(DGA1)及び/又はQ6C9V5(DGA2)との少なくとも100%、99%、98%、97%、95%、94%、93%、92%、91%又は90%の配列同一性を示すタンパク質をコードする内因性遺伝子における欠失を含むであろう。
グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)
[0257] 本開示は、以下のように示されるグリセロール-3-リン酸のsn-1位置におけるアシル化反応を触媒する酵素を記載する:
[0258] 長鎖アシル-CoA+sn-グリセロール-3-リン酸→1-アシル-sn-グリセロール-3-リン酸+補酵素A。
[0259] グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)は、グリセロール-3-リン酸のsn-1位置におけるアシル化反応を触媒する。植物細胞は、葉緑体、ミトコンドリア及び細胞質中に位置する3つのタイプのGPATを含有する。葉緑体中の酵素は、可溶性であり、アシル供与体としてアシル-(アシル-キャリアータンパク質)を使用する一方、ミトコンドリア及び細胞質中の酵素は、膜に結合され、アシル供与体としてアシル-CoAを使用する(Nishida I et al.(1993)The gene and the RNA for the precursor to the plastid-located glycerol-3-phosphate acyltransferase of Arabidopsis thaliana. Plant Mol Biol.21(2):267-77;Murata N and Tasaka Y(1997)Glycerol-3-phosphate acyltransferase in plants. Biochim Biophys Acta. 1348(1-2):10-16)。
[0260] 8つのGPAT遺伝子は、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)において同定された(Zheng Z et al.(2003)Arabidopsis AtGPAT1, a member of the membrane-bound glycerol-3-phosphate acyltransferase gene family, is essential for tapetum differentiation and male fertility. Plant Cell 15(8):1872-87)。GPAT1は、ミトコンドリア酵素をコードすることが示された(Zheng et al. 2003)。GPAT4、GPAT5及びGPAT8は、クチン生合成に不可欠であることが示された(Beisson F et al.(2007)The acyltransferase GPAT5 is required for the synthesis of suberin in seed coat and root of Arabidopsis. Plant Cell 19(1):351-368;Li,Y et al.(2007)Identification of acyltransferases required for cutin biosynthesis and production of cutin with suberin-like monomers.Proc Natl Acad Sci USA 104(46):18339-18344)。GPAT2、GPAT3、GPAT6及びGPAT7は、依然として特徴付けられていない。
[0261] 細胞質GPATは、トリアシルグリセロール及び非葉緑体膜リン脂質の合成に関与している。それは、パルミテート(C16:0)及びオレエート(C18:1)に対して基質選択性を有することが予測され、なぜなら、これらの2つの脂肪酸は、植物トリアシルグリセロールのsn-1位置において見られる最も一般的なものであるためである。細胞質GPATは、アボカドから部分的に精製された(Eccleston VS and Harwood JL(1995)Solubilisation, partial purification and properties of acyl-CoA: glycerol-3-phosphate acyltransferase from avocado(Persea americana)fruit mesocarp. Biochim Biophys Acta 1257(1):1-10)。
[0262] 大腸菌(E. coli)由来の膜結合グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(PlsB)は、リン脂質生合成における第1の関与段階を触媒し、後続の酵素1-アシルグリセロール-3-リン酸O-アシルトランスフェラーゼ(PlsC)に近接して機能するものと考えられる(Kessels JM et al.(1983)Facilitated utilization of endogenously synthesized lysophosphatidic acid by 1-acylglycerophosphate acyltransferase from Escherichia coli. Biochim Biophys Acta 753(2):227-235)。それは、sn-グリセロール-3-リン酸の位置1におけるアシル化に特有であり、アシル供与体として脂肪アシル-アシルキャリアータンパク質(アシル-ACP)又は脂肪アシル-補酵素A(アシル-CoA)チオエステルのいずれかを用いて、1-アシル-sn-グリセロール-3-リン酸を形成し得る。内因的に合成された脂肪酸は、ACPに結合され、外部から加えられた脂肪酸は、CoAに結合される。大腸菌(E. coli)リン脂質において、sn 1位置は、主に、パルミテート又はシス-バクセネートのいずれかによって占められ、sn 2位置は、主に、パルミトレエート又はシス-バクセネートである。これは、PlsB及びPlsC酵素の基質選択性に起因するものと考えられる。
[0263] plsB遺伝子は、RNAポリメラーゼ、シグマ24(シグマE)因子及びppGppなどのストレス反応調節因子によって調節されることが示されている(Wahl A et al.(2011)Antagonistic regulation of dgkA and plsB genes of phospholipid synthesis by multiple stress responses in Escherichia coli. Mol Microbiol 80(5):1260-75)。PlsBは、リン脂質合成のタンパク質ネットワークの一部であり、ホロ-[アシル-キャリアータンパク質](ACP)、エステラーゼ/チオエステラーゼ(YbgC)及びホスファチジルセリンシンターゼ(PssA)と相互作用して、内膜の細胞質側において複合体を形成する。
[0264] plsBは、成長に不可欠である(Baba T et al.(2006)Construction of Escherichia coli K-12 in-frame, single-gene knockout mutants: the Keio collection. Mol Syst Biol. 2:2006-2008;Yoshimura M et al.(2007)Involvement of the YneS/YgiH and PlsX proteins in phospholipid biosynthesis in both Bacillus subtilis and Escherichia coli. BMC Microbiol 7:69)。
[0265] 部位特異的突然変異誘発及び化学修飾研究は、触媒反応に不可欠な不変ヒスチジン残基を含む、PlsBにおける触媒上重要なアミノ酸残基を実証した(Lewin TM et al.(1999)Analysis of amino acid motifs diagnostic for the sn-glycerol-3-phosphate acyltransferase reaction. Biochemistry 38(18):5764-5771)。遺伝学的研究は、多剤耐性休眠細胞(persister cell)の形成に関与するplsB遺伝子座を同定した。
[0266] 大腸菌(E. coli)B酵素の特性は、過去の研究において研究された(Kito M et al.(1972)Inhibition of L-glycerol 3-phosphate acyltransferase from Escherichia coli by cis-9, 10-methylenehexadecanoic acid. J Biochem 71(1):99-105;Okuyama H and Wakil SJ(1973)Positional specificities of acyl coenzyme A: glycerophosphate and acyl coenzyme A: monoacylglycerophosphate acyltransferases in Escherichia coli.J Biol Chem 248(14):5197-5205;Kito M et al.(1978)Function of phospholipids on the regulatory properties of solubilized and membrane-bound sn-glycerol-3-phosphate acyltransferase of Escherichia coli.Biochim Biophys Acta 529(2):237-249)。
[0267] グリセロール-3-リン酸/ジヒドロキシアセトンリン酸二重基質特異的sn-1アシルトランスフェラーゼは、脂質粒子及び小胞体中に位置し、脂質生合成におけるグリセロール-3-リン酸及びジヒドロキシアセトンの段階的アシル化に関与している。最も保存的なモチーフ及び機能的に関連する残基が小胞体内腔に対して配向される。
[0268] 二重グリセロール-3-リン酸O-アシルトランスフェラーゼ(GAT)/ジヒドロキシアセトンリン酸アシルトランスフェラーゼ(DHAT)をコードする遺伝子(SCT1)は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)から同定され、クローニングされ、生化学的に特徴付けられる。非常に低いGAT/DHAT活性を示す酵母Δgpt1突然変異体において、プラスミドベクターを介したSCT1の過剰発現は、グリセロール-3-リン酸O-アシルトランスフェラーゼ/ジヒドロキシアセトンリン酸アシルトランスフェラーゼとしての提示された分子機能の根底にある増加したGAT/DHAT活性を示した。アシル供与体に対するGAT/DHAT活性は、パルミトレオイル-CoAで最も高く、続いてパルミトイル-CoA、オレオイル-CoA及びステアロイル-CoAである。SCT1pは、サイトゾル中の膜、おそらく小胞体に限局されていた。Δsct1突然変異体のインビボ研究は、全ての4つのリン脂質に対する影響を示したが、ホスファチジルエタノールアミンクラスにおける16:0脂肪酸の観察された減少は、他の脂肪酸、特に18:0分子種の増加によって相殺された。SCT1及びGPT2のヌル突然変異体は、酵母において合成致死性であった(Zheng Z and Zou J(2001)The initial step of the glycerolipid pathway: identification of glycerol 3-phosphate/dihydroxyacetone phosphate dual substrate acyltransferases in Saccharomyces cerevisiae. J Biol Chem 276(45):417104-41716)。
[0269] サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)からの二重グリセロール-3-リン酸O-アシルトランスフェラーゼ(GAT)/ジヒドロキシアセトンリン酸アシルトランスフェラーゼ(DHAT)をコードする遺伝子(GPT2)を同定し、クローニングし、生化学的に特徴付けた。GPT2は、GAT/DHAT活性を有さないΔplsBバックグラウンド中の大腸菌(E. coli)において組換え的に発現され、増加したGAT活性を示したが、おそらく膜中へのGPT2の不適切な埋め込みのため、突然変異体をレスキューすることはできなかった。非常に低いGAT/DHAT活性を示す酵母Δgpt1突然変異体において、プラスミドベクターからのGPT2の過剰発現は、グリセロール-3-リン酸O-アシルトランスフェラーゼ/ジヒドロキシアセトンリン酸アシルトランスフェラーゼとしての提示された分子機能の根底にある増加したGAT/DHAT活性を示した。アシル供与体に対するGAT/DHAT活性は、オレオイル-CoAで最も高く、続いてパルミトレオイル-CoA、パルミトイル-CoA及びステアロイル-CoAであった。
[0270] GPT2pは、サイトゾル中の膜に限局されていた。Δgpt2突然変異体のインビボ研究は、全脂肪酸プロファイルに対する有意な影響を示さなかったが、ホスファチジルエタノールアミンクラスにおける16:1脂肪酸の減少が観察され、これは、16:0及び18:1分子種の増加によって相殺された。GAT活性が欠損した公知の酵母突然変異体TTA1の分析は、TTA1 GPT2遺伝子がアシルトランスフェラーゼのための保存モチーフIIIにおける1つのヌクレオチド変化によるミスセンス突然変異を有していたことを示した。SCT1及びGPT2のヌル突然変異体は、酵母において合成致死性であった(Zheng and Zou 2001)。
[0271] 一部の実施形態では、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(At1g02390)由来のGPATである。一部の実施形態では、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼは、大腸菌(E. coli)(遺伝子ID EG10740)由来のPlsBである。一部の実施形態では、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼは、S.セレビシエ(S. cerevisiae)(YBL011w)由来の二重グリセロール-3-リン酸O-アシルトランスフェラーゼ(GAT)/ジヒドロキシアセトンリン酸アシルトランスフェラーゼ(DHAT)SCT1である。一部の実施形態では、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼは、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)由来のYALI0C00209gである。一部の実施形態では、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来のI503_02577である。一部の実施形態では、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)由来のCTRG_02630である。一部の実施形態では、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼは、S.セレビシエ(S. cerevisiae)(YKR067w)由来の二重グリセロール-3-リン酸O-アシルトランスフェラーゼ(GAT)/ジヒドロキシアセトンリン酸アシルトランスフェラーゼ(DHAT)GPT2である。一部の実施形態では、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来のCaO19.5815である。一部の実施形態では、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来のCaO19.13237である。一部の実施形態では、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)由来のCTRG_02630である。
リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)
[0272] 本開示は、トリアシルグリセロールのsn-2位置のアシル化を触媒する酵素を記載する。
[0273] 遺伝子plsCによってコードされる膜結合1-アシルグリセロール-3-リン酸O-アシルトランスフェラーゼは、リン脂質生合成における第2の段階を触媒し、遺伝子plsBによってコードされる先行する酵素グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼに近接して機能するものと考えられる(Kessels JM et al. 1983)。それは、1-アシル-sn-グリセロール-3-リン酸のsn-2位置におけるアシル化に特有であり、脂肪アシル供与体としてアシル-アシルキャリアータンパク質(アシル-ACP)又はアシル-補酵素A(アシル-CoA)を用いて、1,2-ジアシル-sn-グリセロール-3-リン酸(ホスファチデート、ホスファチジン酸)を形成し得る。内因的に合成される脂肪酸は、ACPに結合され、外部から加えられた脂肪酸は、CoAに結合される(Greenway DL and Silbert DF(1983)Altered acyltransferase activity in Escherichia coli associated with mutations in acyl coenzyme A synthetase. J Biol Chem 258(21):13034-13042)。大腸菌(E. coli)リン脂質において、sn 1位置は、主に、パルミテート又はシス-バクセネートのいずれかによって占められる一方、sn 2位置は、主に、パルミトレエート又はシス-バクセネートである。これは、PlsB及びPlsC酵素の基質選択性に起因するものと考えられる(Rock CO et al.(1981)Phospholipid synthesis in Escherichia coli. Characteristics of fatty acid transfer from acyl-acyl carrier protein to sn-glycerol 3-phosphate.J Biol Chem 256(2):736-742;Goelz SE及びCronan JE(1980)The positional distribution of fatty acids in Escherichia coli phospholipids is not regulated by sn-glycerol 3-phosphate levels. J Bacteriol 144(1):462-464)。
[0274] 部位特異的突然変異誘発研究は、トレオニン-122をアラニン又はロイシンに変更することがアシル-CoA基質特異性の変化をもたらしたことを示した(Morand LZ et al.(1998)Alteration of the fatty acid substrate specificity of lysophosphatidate acyltransferase by site-directed mutagenesis. Biochem Biophys Res Commun 244(1):79-84)。
[0275] 大腸菌(E. coli)の改変された株において、PlsC及びGalUの過剰発現は、グリセロ糖脂質の増加した生成をもたらした(Mora-Buye N et al.(2012).An engineered E. coli strain for the production of glycoglycerolipids. Metab Eng 14(5):551-559)。
[0276] 肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)のplsC遺伝子は、大腸菌(E. coli)酵素に相同な1-アシルグリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼをコードする。この遺伝子をクローニングし、大腸菌(E. coli)において発現させ、それを発現する膜が、予測される機能を触媒することが示された(Lu YJ et al.(2006)Acyl-phosphates initiate membrane phospholipid synthesis in Gram-positive pathogens. Mol Cell 23(5):765-772)。
[0277] 植物リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)は、トリアシルグリセロールのsn-2位置のアシル化を触媒する。所与の植物種におけるLPAATの基質特異性は、一般に、いずれの脂肪酸種がsn-2位置において組み込まれるかを決定する。LPAATがトウモロコシ及びメドウフォームからクローニングされた。メドウフォームには2つのLPAAT遺伝子がある一方、トウモロコシには1つのみである。メドウフォームにおけるLAT1及びLAT2の両方の酵素活性がインビトロアッセイによって確認された。更に、LAT2は、大腸菌(E. coli)LPAAT欠損株を機能的に補完することが示された(Brown AP et al.(2002)Limnanthes douglasii lysophosphatidic acid acyltransferases: immunological quantification, acyl selectivity and functional replacement of the Escherichia coli plsC gene.Biochem J 364(Pt 3):795-805)。
[0278] LAT1は、基質として18:1-CoAのみを使用する高度に選択的なアシルトランスフェラーゼである。LAT2は、あまり選択的でない。最も高い活性が22:1-CoAに対して示され、続いて16:0-及び18:1-CoAである。LAT1及びLAT2の基質特異性は、膜脂質生合成におけるLAT1及び貯蔵脂質生合成におけるLAT2についての、それらの提示される役割と一致している。植物細胞膜は、主に、C16及びC18不飽和脂肪酸を含有する一方、貯蔵脂質は、飽和脂肪酸及び非常に長鎖の不飽和脂肪酸を含む広範囲の脂肪酸を含有する。様々な植物組織におけるLAT1及びLAT2のタンパク質レベルが抗体によって検出された。LAT1は、葉及び成長中の種子の両方に存在する一方、LAT2は、成長中の種子のみに検出される。これも、それらの提示される役割と一致している。トリアシルグリセロール生合成におけるLAT2の役割は、sn-2位置において22:1-CoAを通常含まない菜種におけるLAT2の形質転換によって更に示された。メドウフォームLAT2の形質転換は、sn-2位置において22:1-CoAを挿入した(Lassner MW et al.(1995)Lysophosphatidic acid acyltransferase from meadowfoam mediates insertion of erucic acid at the sn-2 position of triacylglycerol in transgenic rapeseed oil.Plant Physiol 109(4):1389-1394)。
[0279] スフィンゴ脂質生合成を欠いた生存突然変異体サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株を用いて、遺伝子SLC1が単離され、アシル-CoA:リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼをコードすることが実証された。1-アシル-sn-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼとして分類される大腸菌(E. coli)のPLSCタンパク質との配列相同性が同様の機能を示した。SLC1pのこの推定分子機能は、大腸菌(E. coli)のΔplsC突然変異体をレスキューする能力によって裏付けられた。位置131においてL-グルタミンをL-ロイシンに変更する単一のヌクレオチド改変は、C16及びC18脂肪酸からC26脂肪酸に基質選択性を変換したことが示され、これは、突然変異体(SLC1-1)に対する野生型(SLC1)の対応する脂肪酸組成においてインビボで反映された(Nagiec MM et al.(1993)A suppressor gene that enables Saccharomyces cerevisiae to grow without making sphingolipids encodes a protein that resembles an Escherichia coli fatty acyltransferase.J Biol Chem 268(29):22156-22163)。
[0280] 大腸菌(E. coli)において組換え的に発現され、精製されたSLC1pを用いたインビトロアッセイは、リゾホスファチジン酸及びオレオイル-CoAに対する基質選択性を示したが、1-パルミトイルグリセロール3-リン酸及び1-ステアロイル-sn-グリセロール-3-リン酸も受容した。Δslc1、Δslc4(別の可能なアシル-CoA:ホスファチジルアシルトランスフェラーゼ)などの突然変異体及び2.ΔSLC1(又は2.ΔSLC4)と呼ばれるSLC1又はSLC4遺伝子のいずれかを有するプラスミドを保有するΔslc1Δslc4の二重突然変異体のインビボ研究は、SLC1がホスファチデート及び更にホスファチジルイノシトール及びジアシルグリセロールの生合成を促進したことを示した。SLC1は、インビボでグリセロリン脂質上の脂肪酸を変更することによるリン脂質リモデリングに関与していることが示唆された(Benghezal M et al.(2007)SLC1 and SLC4 encode partially redundant acyl-coenzyme A 1-acylglycerol-3-phosphate O-acyltransferases of budding yeast.J Biol Chem 282(42):30845-30855)。
[0281] 公知のアシルトランスフェラーゼ酵素の候補オープンリーディングフレーム(ORF)を用いた酵母ゲノムをスクリーニングし、関連する欠失株を試験して、アシル-CoA依存性リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ(ALE1)をコードする遺伝子を同定した。Δale1株において、リゾホスファチジルエタノールアミンアシルトランスフェラーゼ(LPEAT)活性の劇的な減少が観察されたが、ALE1pは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)中の主なLPAAT、すなわちSLC1pが存在しないか又は不活性にされるとき、過剰なリゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)活性を提供し得ることも実証され得る。ALE1pは、好ましくは、可変長さの不飽和アシル鎖をリゾリン脂質のsn-2位置に結合する。酵素は、高純度の細胞分画を用いてミクロソーム及びミトコンドリア膜の両方に限局された。ALE1は、酵母における外因性リゾ脂質代謝(ELM)経路における主なLPEATであり得るが、それは、内因性Kennedy経路の効率的な機能にも必要とされることが示された(Riekhof WR et al.(2007)Identification and characterization of the major lysophosphatidylethanolamine acyltransferase in Saccharomyces cerevisiae. J Biol Chem 282(39):28344-28352)。
[0282] 同時研究において、LPT1(ALE1と同義)は、合成遺伝子アレイ解析を適用することによって同定され、リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ活性を有することが示された。この研究において、LPT1(=ALE1)のための最良の基質は、リゾホスファチジルコリンであり、それによりリゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)として作用し、以前に報告されたLPAATとしての残りの活性も、単一のΔlpt1及び二重Δscl1Δlpt1突然変異体を用いて実証されており、後者は生存不可能である。ホスファチジルコリン中にオレエートを組み込む比率は、デノボ合成に向けて70%及びリモデリングに向けて30%として決定された(Jain S et al.(2007)Identification of a novel lysophospholipid acyltransferase in Saccharomyces cerevisiae. J Biol Chem 282(42):30562-30569)。
[0283] リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)としてのALE1(LCA1又はSLC4とも呼ばれる)の分子機能は、ホスファチジルコリン(PC)中への放射性標識したリゾホスファチジルコリン及び/又はパルミトイル-CoAの組み込みをモニターする別の同時研究において裏付けられた。この研究は、ALE1p(この試験では=LCA1p)が様々なアシル供与体を受け入れることを確認したが、リゾホスファチジルコリン種のアシル鎖にかかわらずLPCATとして最も高い活性を示した(16:0又は18:1)。更に、Zn2+に対する高い感度が観察されたが、これは、0.1mMを超える濃度で抑制性であり、より低い濃度(10~25μM)で活性化する。ALE1p(=LCA1p)について測定された高いPCターンオーバー率は、主な触媒としての酵素がPCの再アシル化に関与していたことを強調した(Chen Q et al.(2007)The yeast acylglycerol acyltransferase LCA1 is a key component of Lands cycle for phosphatidylcholine turnover.”FEBS Lett 581(28):5511-5516)。
[0284] サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における脂肪滴(LD)の形成の異常を引き起こす遺伝子の探求により、アシル-CoA依存性リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子LOA1(以前はVPS66)が同定された。LOA1pのインビボ分子機能は、野生型及びΔloa1酵母株のリピドームの比較を用いて決定された。分析は、LOA1欠損突然変異体(Δloa1)において、オレエート含有ホスファチデート分子種のパーセンテージがかなり低下され、トリアシルグリセロール(TGA)の含量が20パーセント低下されたことを示した。タンパク質は、大腸菌(E. coli)において組換え的に発現され、高度に濃縮された脂肪滴画分を得ることにより、且つマトリックスビーズに依然として結合されているLOA1pによるアフィニティークロマトグラフィーにより部分的に精製された。精製されたLOA1pは、インビトロアッセイにおいて特徴付けられ、これは、LOA1pがリゾホスファチジン酸及びオレオイル-CoAに特異的であり、従って、酵母においてオレオイル-CoA:リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼとして作用することを実証する。この結果に基づいて、LOA1pは、TAG生合成への過剰なオレエート含有ホスファチデート種の組み込み及び脂肪滴(LD)の適切な発生にかなり関与することが提示された。ゲノムタグ付けコンストラクト、細胞下分画、免疫組織化学及び蛍光顕微鏡検査法を用いて、LOA1は、小胞体(ER)及び脂肪滴(LD)の両方に限局された(Ayciriex S et al.(2012)YPR139c/LOA1 encodes a novel lysophosphatidic acid acyltransferase associated with lipid droplets and involved in TAG homeostasis. Mol Biol Cell 23(2):233-246)。
[0285] 一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、大腸菌(E. coli)(MetaCyc受託ID EG11377)由来のplsCである。他の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、肺炎レンサ球菌(S. pneumoniae)(MetaCyc受託ID G-10763)由来のplsCである。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、リムナンテス・ダグラシー(Limnanthes douglasii)由来のLAT1である。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、リムナンテス・ダグラシー(Limnanthes douglasii)(MetaCyc受託ID G-9398)由来のLAT2である。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(YDL052c)由来のSLC1である。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)由来のYALI0E18964gである。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来のCaO19.250である。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来のCaO19.7881である。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)由来のCTRG_02437である。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(YOR175C)由来のALE1である。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)由来のYALI0F19514gである。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来のCaO19.1881である。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来のCaO19.9437である。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)由来のCTRG_01687である。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(YPR139C)由来のLOA1である。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)由来のYALI0C14014gである。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来のCaO19.1043である。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来のCaO19.8645である。一部の実施形態では、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)由来のCTRG_04750である。
グリセロールリン脂質アシルトランスフェラーゼ(GPLAT)
[0286] 本開示は、以下の反応を触媒する酵素を記載する:
[0287] 1-アルキル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン+2-アシル-1-アルキル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン⇔O-1-アルキル-2-アシル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン+1-アルキル-2-リゾ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン。
[0288] GPLAT酵素は、無傷のコリン-又はエタノールアミン含有グリセロールリン脂質からリゾグリセロールリン脂質のsn-2位置への脂肪酸の移動を触媒する。供与体又は受容体分子のsn-1上のオルガニル基は、アルキル、アシル又はアルク-1-エニルであり得る。用語「ラジル(radyl)」は、このような置換基を指すのにときに使用されている。酵素は、補酵素Aを必要とし、多価不飽和アシル基を移動するのに有利に機能しない。
ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)
[0289] 本開示は、アシル基をジアシルグリセロール(DAG)のsn-3位置に付加して、トリアシルグリセロール(TAG)を形成する酵素を記載する。
[0290] ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)は、トリアシルグリセロール生合成において固有の反応のみを触媒する。以下に示されるように、それは、アシル基をジアシルグリセロール(DAG)のsn-3位置に付加し、トリアシルグリセロール(TAG)を形成する:
[0291] アシル-CoA+1,2-ジアシル-sn-グリセロール→トリアシル-sn-グリセロール+補酵素A。
[0292] DGATは、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)DGATについて実証されているように、C18:1、C18:2及びC20:1アシル-CoAを含む広範囲のアシル-CoAをアシル供与体として受容する(Jako C et al.(2001)Seed-specific over-expression of an Arabidopsis cDNA encoding a diacylglycerol acyltransferase enhances seed oil content and seed weight.Plant Physiol 126(2):861-874)。昆虫細胞培養物及び酵母中でDGATのシロイヌナズナ属(Arabidopsis)cDNAを発現させること並びに野生型シロイヌナズナ属(Arabidopsis)においてcDNAを過剰発現させることは、DAGのsn-3位置にアシル基を移動させる際のDGAT活性を実証した(Hobbs DH et al.(1999)Cloning of a cDNA encoding diacylglycerol acyltransferase from Arabidopsis thaliana and its functional expression. FEBS Lett 452(3):145-149;Zou J et al.(1999)The Arabidopsis thaliana TAG1 mutant has a mutation in a diacylglycerol acyltransferase gene.Plant J 19(6):645-653)。野生型シロイヌナズナ属(Arabidopsis)におけるシロイヌナズナ属(Arabidopsis)cDNAの過剰発現は、種子における油の堆積を増加させ、この増加は、DGATの増加したmRNA発現レベルに相関している。これは、DGATがトリアシルグリセロール生合成経路の調節点であることを示す。
[0293] 二機能性アシル-CoA:アシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)をコードする遺伝子は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)において、トリアシルグリセロール生合成の主要な寄与因子として同定された(Sandager L et al.(2002)Storage lipid synthesis is non-essential in yeast.J Biol Chem 277(8):6478-6482)。遺伝子(DGA1)は、メンバーがアシル-CoA依存性アシルトランスフェラーゼとして特徴付けられるDGAT2ファミリーに属する(Lardizabal KD et al.(2001)DGAT2 is a new diacylglycerol acyltransferase gene family: purification, cloning, and expression in insect cells of two polypeptides from Mortierella ramanniana with diacylglycerol acyltransferase activity.”J Biol Chem 276(42):38862-38869)。DGA1pは、酵母ゲノムにおけるジアシルグリセロール(DAG)からトリアシルグリセロール(TAG)へのエステル化を触媒する唯一のアシル-CoA依存性アシルトランスフェラーゼであることが実証された。これは、DGA1(Δdga1)の欠失突然変異体中において、且つ酵母において重要な他のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ、すなわちリン脂質アシル供与体(Δlro1)を用いてDAGをエステル化するLRO1と組み合わせて示される。Δdga1Δlro1二重突然変異体において、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼのほぼ全てが喪失され、TAG合成がなくされた。DGA1遺伝子を保有するプラスミドは、突然変異体におけるTAG合成欠損をレスキューすることができ、これは、インビボDGA1がTAG生合成経路に深く関与していたことを示す(Sorger D,Daum G(2002).Synthesis of triacylglycerols by the acyl-coenzyme A:diacyl-glycerol acyltransferase Dga1p in lipid particles of the yeast Saccharomyces cerevisiae. J Bacteriol 184(2):519-524;Oelkers P et al.(2002)The DGA1 gene determines a second triglyceride synthetic pathway in yeast. J Biol Chem 277(11):8877-8881)。インビトロで、オレオイル-CoA及びパルミトイル-CoAに対するDGA1pの選好性が観察され、これは、リン脂質依存性アシルトランスフェラーゼLRO1pについては逆であった(Oelkers et al.2002)。
[0294] 更に、アシル-CoA依存性モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(MGAT)としてのDGA1pの機能は、Δdga1突然変異体をインビボで用いることにより、60%超のMGAT活性が喪失されたことを実証した。DGA1のインビトロMGAT活性は、プロセスにおいて1,2-ジオレオイルグリセロールを生じる2-オレオイルグリセロールのオレオイル-CoA依存性エステル化によって示された(Heier C et al.(2010)Identification of Yju3p as functional orthologue of mammalian monoglyceride lipase in the yeast Saccharomyces cerevisiae.Biochim Biophys Acta 1801(9):1063-1071)。
[0295] DGA1pの一次配列における配列モチーフの機能的重要性及びトポロジー的配向の更なる洞察は、インシリコ分析、シグネチャーモチーフの部位特異的突然変異誘発並びにC末端及びN末端の欠失突然変異によって得られた。他のDGAT2ファミリーメンバーにおいて見られるシグネチャーモチーフに加えて、サッカロミセス属(Saccharomyces)は、酵素活性を有意に調節することが示されている固有の親水性区間を有することが実証され得る。また、4つの決定された膜貫通ドメインの2つ目におけるヒスチジン残基195が酵素活性に不可欠であることが分かった。DGA1のトポロジーは、C末端及びN末端の両方が細胞質に面し、C末端がN末端よりDGA1活性にとって重要であったことを示した(Liu Q et al.(2011)Functional and topological analysis of yeast acyl-CoA:diacylglycerol acyltransferase 2, an endoplasmic reticulum enzyme essential for triacylglycerol biosynthesis.J Biol Chem 286(15):13115-13126)。
[0296] 高度に精製された細胞断片及び免疫ブロット法を用いて、Sorger et al.(2002)及びLiu et al.(2011)は、DGA1が脂肪滴及びミクロソーム膜、おそらく小胞体に限局されていたことを実証した。
[0297] アシネトバクター属種(Acinetobacter sp.)ADP1は、ワックスエステルシンターゼ(WS)及びアシル-coA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)活性の両方を示す二機能性酵素を発現する(Kalscheuer R and Steinbuchel A(2003)A novel bifunctional wax ester synthase/acyl-CoA:diacylglycerol acyltransferase mediates wax ester and triacylglycerol biosynthesis in Acinetobacter calcoaceticus ADP1.J Biol Chem 278(10):8075-8082)。このホモ二量体は、TAG及びWE生合成における最終段階を触媒する(Stoveken T et al.(2005)The wax ester synthase/acyl coenzyme A:diacylglycerol acyltransferase from Acinetobacter sp. strain ADP1: characterization of a novel type of acyltransferase. J Bacteriol 187(4):1369-1376)。それは、オキソエステル及びチオエステル結合形成の両方を媒介し、広い基質範囲を有し、中鎖脂肪アルコール及びアシル-CoAエステル並びにモノアシルグリセロール(MAG)を受容する(Uthoff S et al.(2005)Thio wax ester biosynthesis utilizing the unspecific bifunctional wax ester synthase/acyl coenzyme A:diacylglycerol acyltransferase of Acinetobacter sp. strain ADP1. Appl Environ Microbiol 71(2):790-796)。
[0298] 一部の実施形態では、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(遺伝子ID AT2G19450)由来のTAG1である。一部の実施形態では、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼは、S.セレビシエ(S. cerevisiae)(YOR245c)由来のDGA1である。一部の実施形態では、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼは、アシネトバクター属種(Acinetobacter sp.)ADP1(MetaCyc受託ID ACIAD0832)由来のatfAである。一部の実施形態では、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼは、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)由来のYALI0E32769gである。一部の実施形態では、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来のCaO19.6941である。一部の実施形態では、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来のCaO19.14203である。一部の実施形態では、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼは、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)由来のCTRG_06209である。
[0299] リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)は、以下の反応を触媒する:ホスファチジルコリン+1,2-ジアシル-sn-グリセロール→トリアシル-sn-グリセロール+1-アシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン。
[0300] シロイヌナズナ属(Arabidopsis)PDATは、いずれかのsn-位置における10~22炭素鎖長のアシル基を有するアシル供与体として様々なリン脂質を使用し得る(Stahl U et al.(2004)Cloning and functional characterization of a phospholipid:diacylglycerol acyltransferase from Arabidopsis. Plant Physiol 135(3):1324-1335)。しかしながら、ホスファチジルコリンのsn-2位置におけるアシル基は、sn-1位置におけるより3倍多く使用される。最も高い活性は、複数の二重結合を有するアシル基、エポキシ又はヒドロキシ基で得られる。試験される中で、酵素活性は、リシノレオイルで最も高かった。18:0-及び22:1-アシル基が最も低い酵素活性を示した。様々なリン脂質種の中で、最も高い活性は、ホスファチデート又はホスファチジルコリンよりホスファチジルエタノールアミンで得られる。
[0301] PDAT活性がトウゴマ種子ミクロソーム画分で検出された。放射性標識リシノレオイル及びベルノロイル基がホスファチジルコリンからDAGに有効に移動されて、トリアシルグリセロールを形成する(Dahlqvist A et al.(2000)Phospholipid: diacylglycerol acyltransferase: an enzyme that catalyzes the acyl-CoA-independent formation of triacylglycerol in yeast and plants. Proc Natl Acad Sci USA 97(12):6487-6492)。
[0302] 他の実施形態では、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼは、リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)である。一部の実施形態では、PDATは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(遺伝子ID AT5G13640)由来である。一部の実施形態では、PDATは、トウゴマ(Ricinus communis)由来である。一部の実施形態では、PDATは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(YNR008w)由来のLRO1である。一部の実施形態では、PDATは、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)由来のYALI0E16797gである。一部の実施形態では、PDATは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来のCaO19.13439である。一部の実施形態では、PDATは、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)由来のCTRG_04390である。
[0303] 一部の実施形態では、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを生成する能力を有する組換え微生物が提供され、この組換え微生物は、1つ以上のアシルトランスフェラーゼ酵素を発現し、この組換え微生物は、1つ以上の内因性アシルトランスフェラーゼ酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。一部の実施形態では、発現される1つ以上のアシルトランスフェラーゼ酵素は、欠失又は下方制御される1つ以上の内因性アシルトランスフェラーゼ酵素と異なる。一部の実施形態では、1つ以上の内因性又は外因性アシルトランスフェラーゼ酵素は、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)、グリセロールリン脂質アシルトランスフェラーゼ(GPLAT)及び/又はジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)を含む。一部の実施形態では、発現される1つ以上のアシルトランスフェラーゼ酵素は、短鎖脂肪アシル-CoAを保持することを選好する。他の実施形態では、発現される1つ以上のアシルトランスフェラーゼ酵素は、表5bから選択される。一部の実施形態では、欠失又は下方制御される1つ以上の内因性アシルトランスフェラーゼ酵素は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C00209g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E18964g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F19514g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14014g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E16797g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32769g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D07986g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YBL011w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YDL052c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR175C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YPR139C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YNR008w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR245c、カンジダ属(Candida)I503_02577、カンジダ属(Candida)CTRG_02630、カンジダ属(Candida)CaO19.250、カンジダ属(Candida)CaO19.7881、カンジダ属(Candida)CTRG_02437、カンジダ属(Candida)CaO19.1881、カンジダ属(Candida)CaO19.9437、カンジダ属(Candida)CTRG_01687、カンジダ属(Candida)CaO19.1043、カンジダ属(Candida)CaO19.8645、カンジダ属(Candida)CTRG_04750、カンジダ属(Candida)CaO19.13439、カンジダ属(Candida)CTRG_04390、カンジダ属(Candida)CaO19.6941、カンジダ属(Candida)CaO19.14203及びカンジダ属(Candida)CTRG_06209から選択される。一部の実施形態では、本組換え微生物は、フェロモン生合成経路酵素を更に発現する。更なる実施形態では、フェロモン生合成経路酵素は、1つ以上の脂肪アシルデサチュラーゼ及び/又は脂肪アシルコンジュゲートを含む。更に別の実施形態では、フェロモン生合成経路酵素は、1つ以上の脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼを含む。
[0304] 一部の実施形態では、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを生成する方法が提供され、本方法は、アシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を組換え微生物中に導入するか又は組換え微生物中で発現させ、アシルトランスフェラーゼをコードする1つ以上の遺伝子における欠失、挿入又は機能喪失突然変異を導入することを含み、導入又は発現されるアシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子は、欠失又は下方制御されるアシルトランスフェラーゼをコードする1つ以上の遺伝子と異なる。一部の実施形態では、導入又は発現されるアシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子又は欠失又は下方制御されるアシルトランスフェラーゼをコードする1つ以上の遺伝子は、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)、グリセロールリン脂質アシルトランスフェラーゼ(GPLAT)及び/又はジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子は、短鎖脂肪アシル-CoAを保持することを選好するアシルトランスフェラーゼをコードする。一部の実施形態では、少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子は、表5bから選択されるアシルトランスフェラーゼをコードする。一部の実施形態では、欠失又は下方制御される1つ以上の内因性アシルトランスフェラーゼ酵素は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C00209g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E18964g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F19514g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14014g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E16797g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32769g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D07986g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YBL011w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YDL052c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR175C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YPR139C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YNR008w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR245c、カンジダ属(Candida)I503_02577、カンジダ属(Candida)CTRG_02630、カンジダ属(Candida)CaO19.250、カンジダ属(Candida)CaO19.7881、カンジダ属(Candida)CTRG_02437、カンジダ属(Candida)CaO19.1881、カンジダ属(Candida)CaO19.9437、カンジダ属(Candida)CTRG_01687、カンジダ属(Candida)CaO19.1043、カンジダ属(Candida)CaO19.8645、カンジダ属(Candida)CTRG_04750、カンジダ属(Candida)CaO19.13439、カンジダ属(Candida)CTRG_04390、カンジダ属(Candida)CaO19.6941、カンジダ属(Candida)CaO19.14203及びカンジダ属(Candida)CTRG_06209から選択される。一部の実施形態では、本方法は、脂肪アシルデサチュラーゼ及び/又は脂肪アシルコンジュゲートをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を組換え微生物中に導入するか又は組換え微生物中で発現させることを更に含む。更なる実施形態では、本方法は、脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を組換え微生物中に導入するか又は組換え微生物中で発現させることを更に含む。
アシルグリセロールリパーゼ及びステロールエステラーゼ
[0305] 一部の実施形態では、短鎖脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートの生成のための組換え微生物及び方法が提供される。特定の実施形態では、短鎖脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートは、C18以下の炭素鎖長を有する。短鎖フェロモンを生成するための方法の一部の好ましい実施形態では、長鎖アシルグリセロールのエステル結合を加水分解することを選好する所定の酵素が1つ以上の脂肪アシルデサチュラーゼと共発現される。このような好適な酵素は、異種又は改変アシルグリセロールリパーゼによって例示される。この目的に好適なアシルグリセロールリパーゼの例が表5cに列挙される。
[0306] 脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを生成するための方法の一部の好ましい実施形態では、アシルグリセロールリパーゼ(モノ-、ジ-又はトリアシルグリセロールリパーゼ)及びステロールエステルエステラーゼをコードする微生物宿主の1つ以上の遺伝子が欠失又は下方制御され、長鎖アシルグリセロール基質を選好する1つ以上のアシルグリセロールリパーゼで置換される。このような欠失又は下方制御標的としては、限定はされないが、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32035g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D17534g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F10010g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14520g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E00528g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL140w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YMR313c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKR089c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR081c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL094W、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YLL012W、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YLR020C、カンジダ属(Candida)CaO19.2050、カンジダ属(Candida)CaO19.9598、カンジダ属(Candida)CTRG_01138、カンジダ属(Candida)W5Q_03398、カンジダ属(Candida)CTRG_00057、カンジダ属(Candida)CaO19.5426、カンジダ属(Candida)CaO19.12881、カンジダ属(Candida)CTRG_06185、カンジダ属(Candida)CaO19.4864、カンジダ属(Candida)CaO19.12328、カンジダ属(Candida)CTRG_03360、カンジダ属(Candida)CaO19.6501、カンジダ属(Candida)CaO19.13854、カンジダ属(Candida)CTRG_05049、カンジダ属(Candida)CaO19.1887、カンジダ属(Candida)CaO19.9443、カンジダ属(Candida)CTRG_01683及びカンジダ属(Candida)CTRG_04630が挙げられる。
[0307] カルボン酸エステルヒドロラーゼ(EC 3.1.1)は、エステル結合の加水分解又は合成を触媒する酵素の大きい種類である。それらは、全ての生物ドメイン(life domain)、原核生物及び真核生物において記載されている。それらのほとんどは、α/β-ヒドロラーゼスーパーファミリーに属し、高度に保存されたGXSXG配列で配置されるHis、酸性アミノ酸及びSer残基によって形成される保存された「触媒三残基」を有する。加水分解中、触媒Serは、空間的に近接した三残基からの他の2つの残基によって補助される基質の求核的攻撃を開始するであろう。これらは、キモトリプシン様セリンプロテアーゼのものと類似した機構によってエステルの加水分解を促進することが推定される。別の特徴的な特徴は、配列が触媒三残基のものほど保存されていないアミノ酸性領域である、オキシアニオンホールの存在であり、これは、触媒反応中に生じる遷移状態を安定させる役割を果たす。更に、これらの酵素は、一般に、補因子を必要としない。アシルグリセロールリパーゼ及びステロールエステラーゼは、カルボン酸エステルヒドロラーゼファミリーに属する。
[0308] アシルグリセロールリパーゼ酵素は、水分子を用いて長鎖脂肪酸のグリセロールモノエステルを破壊する化学反応を触媒する。この酵素クラスの系統名は、グリセロール-エステルアシルヒドロラーゼである。一般的に使用される他の名称としては、モノアシルグリセロールリパーゼ、アシルグリセロリパーゼ、モノグリセリドリパーゼ、モノグリセリドヒドロラーゼ、脂肪アシルモノエステルリパーゼ、モノアシルグリセロールヒドロラーゼ、モノグリセリジルリパーゼ及びモノグリセリダーゼが挙げられる。この酵素は、グリセロ脂質代謝に関与する。
[0309] ステロールエステラーゼ酵素は、以下の化学反応を触媒する:
[0310] ステリルエステル+H2O⇔ステロール+脂肪酸。
[0311] 従って、この酵素の2つの基質は、ステリルエステル及びH2Oであるが、その2つの生成物は、ステロール及び脂肪酸である。
[0312] この酵素クラスの系統名は、ステリル-エステルアシルヒドロラーゼである。一般的に使用される他の名称としては、コレステロールエステラーゼ、コレステリルエステルシンターゼ、トリテルペノールエステラーゼ、コレステリルエステラーゼ、コレステリルエステルヒドロラーゼ、ステロールエステルヒドロラーゼ、コレステロールエステルヒドロラーゼ、コレステラーゼ及びアシルコレステロールリパーゼが挙げられる。この酵素は、胆汁酸生合成に関与する。ステロールエステラーゼは、自然界に広く存在し、膵臓、腸粘膜、肝臓、胎盤、大動脈及び脳などの哺乳動物の組織から、糸状菌、酵母及び細菌に至るまで確認されている。
[0313] 基質特異性に関して、多くのステロールエステラーゼは、アシルグリセロール、アリールエステル及び場合によりアルコールエステル、シンナミルエステル、キサントフィルエステル又は合成ポリマーなど、エステル結合を含む比較的広範囲の他の基質の加水分解又は合成を触媒することができる。
[0314] 一部の実施形態では、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを生成する能力を有する組換え微生物が提供され、この組換え微生物は、1つ以上のアシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素を発現し、この組換え微生物は、1つ以上の内因性アシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。一部の実施形態では、発現される1つ以上のアシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素は、欠失又は下方制御される1つ以上の内因性アシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素と異なる。一部の実施形態では、発現される1つ以上の内因性又は外因性アシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素は、長鎖アシルグリセロールのエステル結合を加水分解することを選好する。他の実施形態では、発現される1つ以上のアシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素は、表5cから選択される。一部の実施形態では、欠失又は下方制御される1つ以上の内因性アシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32035g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D17534g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F10010g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14520g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E00528g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL140w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YMR313c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKR089c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR081c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL094W、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YLL012W、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YLR020C、カンジダ属(Candida)CaO19.2050、カンジダ属(Candida)CaO19.9598、カンジダ属(Candida)CTRG_01138、カンジダ属(Candida)W5Q_03398、カンジダ属(Candida)CTRG_00057、カンジダ属(Candida)CaO19.5426、カンジダ属(Candida)CaO19.12881、カンジダ属(Candida)CTRG_06185、カンジダ属(Candida)CaO19.4864、カンジダ属(Candida)CaO19.12328、カンジダ属(Candida)CTRG_03360、カンジダ属(Candida)CaO19.6501、カンジダ属(Candida)CaO19.13854、カンジダ属(Candida)CTRG_05049、カンジダ属(Candida)CaO19.1887、カンジダ属(Candida)CaO19.9443、カンジダ属(Candida)CTRG_01683及びカンジダ属(Candida)CTRG_04630から選択される。一部の実施形態では、本組換え微生物は、フェロモン生合成経路酵素を更に発現する。更なる実施形態では、フェロモン生合成経路酵素は、1つ以上の脂肪アシルデサチュラーゼ及び/又は脂肪アシルコンジュゲートを含む。更に別の実施形態では、フェロモン生合成経路酵素は、1つ以上の脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼを含む。
[0315] 一部の実施形態では、飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを生成する方法が提供され、本方法は、アシルグリセロールリパーゼ又はステロールエステルエステラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を組換え微生物中に導入するか又は組換え微生物中で発現させ、アシルグリセロールリパーゼ又はステロールエステルエステラーゼをコードする1つ以上の遺伝子における欠失、挿入又は機能喪失突然変異を導入することを含み、導入又は発現されるアシルグリセロールリパーゼ又はステロールエステルエステラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子は、欠失又は下方制御されるアシルグリセロールリパーゼ又はステロールエステルエステラーゼをコードする1つ以上の遺伝子と異なる。一部の実施形態では、導入又は発現されるアシルグリセロールリパーゼ又はステロールエステルエステラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子は、長鎖アシルグリセロールのエステル結合を加水分解することを選好する。一部の実施形態では、導入又は発現されるアシルグリセロールリパーゼ又はステロールエステルエステラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子は、表5cから選択される。一部の実施形態では、欠失又は下方制御される1つ以上の遺伝子は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32035g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D17534g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F10010g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14520g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E00528g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL140w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YMR313c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKR089c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR081c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL094W、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YLL012W、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YLR020C、カンジダ属(Candida)CaO19.2050、カンジダ属(Candida)CaO19.9598、カンジダ属(Candida)CTRG_01138、カンジダ属(Candida)W5Q_03398、カンジダ属(Candida)CTRG_00057、カンジダ属(Candida)CaO19.5426、カンジダ属(Candida)CaO19.12881、カンジダ属(Candida)CTRG_06185、カンジダ属(Candida)CaO19.4864、カンジダ属(Candida)CaO19.12328、カンジダ属(Candida)CTRG_03360、カンジダ属(Candida)CaO19.6501、カンジダ属(Candida)CaO19.13854、カンジダ属(Candida)CTRG_05049、カンジダ属(Candida)CaO19.1887、カンジダ属(Candida)CaO19.9443、カンジダ属(Candida)CTRG_01683及びカンジダ属(Candida)CTRG_04630から選択されるアシルグリセロールリパーゼ又はステロールエステルエステラーゼをコードする。一部の実施形態では、本方法は、脂肪アシルデサチュラーゼ及び/又は脂肪アシルコンジュゲートをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を組換え微生物中に導入するか又は組換え微生物中で発現させることを更に含む。更なる実施形態では、本方法は、脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を組換え微生物中に導入するか又は組換え微生物中で発現させることを更に含む。
毒性タンパク質又はポリペプチドの発現
本開示は、組換え微生物によってコードされる毒性タンパク質、ペプチド、又は小分子を記載する。一部の実施形態では、毒性タンパク質、ペプチド、又は小分子は昆虫フェロモンと共に生合成的に生成される。
一部の実施形態では、本組換え微生物は、昆虫にとって毒性のあるタンパク質又はポリペプチドをコードする1つ以上の核酸分子を発現する。一部の実施形態では、毒性タンパク質又はポリペプチドは昆虫病原生物由来である。一部の実施形態では、昆虫病原生物は、バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及びセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)から選択される。詳細な実施形態では、核酸分子はバチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)毒素をコードする。
一部の実施形態では、本組換え微生物は、発現時に昆虫にとって毒性のある小分子を生成する代謝経路を発現するように改変される。
例示的実施形態では、本明細書に記載される組換え微生物によって生成される昆虫フェロモンを使用することにより、害虫を誘引し、続いて本明細書に記載される組換え微生物によって同時生成された毒性タンパク質、ペプチド、又は小分子などの毒性物質でその害虫を根絶し得る。
組換え微生物を使用したフェロモンの生合成
上記で考察したとおり、第1の態様において、本開示は、飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを生成する能力を有する組換え微生物に関する。第1の態様の例示的な実施形態を図1に示す。青色の線は、不飽和脂肪アシルCoA変換の基質としての役割を果たす飽和アシル-CoAの生成に用いられる生化学的経路を示す。基質の不飽和脂肪アシル-CoAへの変換は、宿主の内因性又は外因性酵素によって実施されてもよい。緑色の線は、酵素をコードする外因性核酸分子によって触媒される変換を示す。従って、一部の実施形態では、飽和脂肪アシル-CoAの一不飽和又は多価不飽和脂肪アシル-CoAへの変換は、外因性核酸分子によってコードされる少なくとも1つのデサチュラーゼによって触媒される。更なる実施形態では、一不飽和又は多価不飽和脂肪アシル-CoAの一不飽和又は多価不飽和脂肪アルコールへの変換は、外因性核酸分子によってコードされる少なくとも1つのレダクターゼによって触媒される。灰色の破線は、アルコールオキシダーゼ又は酸化剤を用いた一不飽和又は多価不飽和脂肪アルデヒドの生成、及びアセチルトランスフェラーゼ又はアセチルクロリドなどの化学物質を用いた一不飽和又は多価不飽和脂肪アセテートの生成など、フェロモン、フレグランス、フレーバー、及びポリマー中間体の合成の下流ステップを示す。赤色のバツ印は宿主にとって天然の経路の欠失又は下方制御を示し、これは改変経路へのフラックスを増加させる。
従って、一実施形態では、本組換え微生物は、(a)飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子;及び(b)(a)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールへの変換を触媒する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を発現する。一部の実施形態では、飽和C6~C24脂肪アシル-CoAは宿主微生物の内因性酵素を用いて生成されてもよい。他の実施形態では、飽和C6~C24脂肪アシル-CoAは宿主微生物の1つ以上の外因性酵素を用いて生成されてもよい。
上記に記載したとおり、脂肪アシルデサチュラーゼは、例えば飽和脂肪アシル-CoA分子上の炭化水素鎖の不飽和化を触媒して、対応する不飽和脂肪アシルCoA分子を生じさせる。一部の実施形態では、外因性脂肪アシルデサチュラーゼは、炭化水素鎖に6~24個の炭素を有する脂肪アシル-CoA分子において少なくとも1つの二重結合の形成を触媒するように選択し、組換え微生物で発現させることができる。従って、一部の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24炭素原子の鎖長を有する脂肪アシル-CoAを基質として利用する能力を有するデサチュラーゼである。
本明細書に記載される外因性脂肪アシルデサチュラーゼは、炭化水素鎖上の所望の位置で不飽和化を触媒するように選択することができる。従って、一部の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、脂肪酸又は例えば脂肪酸CoAエステルなどのその誘導体のC5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、又はC13位に二重結合を生じさせる能力を有する。
宿主において1つ又は2つ以上の脂肪アシル-CoAデサチュラーゼを発現させて、炭化水素鎖上の複数の位置で不飽和化を触媒することができる。一部の実施形態では、脂肪アシル-CoAデサチュラーゼは宿主微生物にとって異種である。従って、様々な実施形態が、飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を含む組換え微生物を提供する。
一例示的実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼはZ11デサチュラーゼである。Z11脂肪アシルデサチュラーゼは、基質のカルボニル基から11番目の炭素と12番目の炭素との間の二重結合形成を触媒する。本明細書に記載される様々な実施形態において、Z11デサチュラーゼ、又はそれをコードする核酸配列は、カブラヤガ(Agrotis segetum)、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、アカオビコハマキ(Argyrotaenia velutiana)、ハスオビハマキ(Choristoneura rosaceana)、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)、又はタラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)種の生物から単離することができる。更なるZ11-デサチュラーゼ、又はそれらをコードする核酸配列は、カイコガ(Bombyx mori)、タバコスズメガ(Manduca sexta)、サウスウエスタンコーンボーラー(Diatraea grandiosella)、ミスジアオリンガ(Earias insulana)、クサオビリンガ(Earias vittella)、コナガ(Plutella xylostella)、カイコガ(Bombyx mori)又はアメリカウリノメイガ(Diaphania nitidalis)から単離することができる。例示的実施形態では、Z11デサチュラーゼは、GenBank受託番号JX679209、JX964774、AF416738、AF545481、EU152335、AAD03775、AAF81787、及びAY493438から選択される配列を含む。一部の実施形態では、カブラヤガ(Agrotis segetum)、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、アカオビコハマキ(Argyrotaenia velutiana)、ハスオビハマキ(Choristoneura rosaceana)、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)、又はタラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)種の生物由来のZ11デサチュラーゼをコードする核酸配列がコドン最適化される。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)由来の配列番号9、18、24及び26から選択される配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)由来の配列番号49のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)由来の配列番号10及び16から選択される配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)由来の配列番号53のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)由来の配列番号11及び23から選択される配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)由来の配列番号50及び51から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)由来の配列番号12、17及び30から選択される配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)由来の配列番号52のアミノ酸配列を含む。更なる実施形態では、Z11デサチュラーゼは、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)由来の配列番号13、19、25、27及び31から選択される配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)由来の配列番号54に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、イネヨトウ(S. inferens)由来の配列番号39に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、GenBank受託番号AF416738、AGH12217.1、AII21943.1、CAJ43430.2、AF441221、AAF81787.1、AF545481、AJ271414、AY362879、ABX71630.1、NP001299594.1、Q9N9Z8、ABX71630.1及びAIM40221.1のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、Z11デサチュラーゼはキメラポリペプチドを含む。一部の実施形態では、完全な又は部分的なZ11デサチュラーゼが別のポリペプチドに融合される。特定の実施形態では、Z11デサチュラーゼのN末端天然リーダー配列が別の種由来のオレオシンリーダー配列に置換される。特定の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、配列番号15、28及び29から選択される配列を含む。特定の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、配列番号61、62、63、78、79及び80から選択されるアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態では、Z11デサチュラーゼは、脂肪アシル-CoAの、Z11-13:アシル-CoA、E11-13:アシル-CoA、(Z,Z)-7,11-13:アシル-CoA、Z11-14:アシル-CoA、E11-14:アシル-CoA、(E,E)-9,11-14:アシル-CoA、(E,Z)-9,11-14:アシル-CoA、(Z,E)-9,11-14:アシル-CoA、(Z,Z)-9,11-14:アシル-CoA、(E,Z)-9,11-15:アシル-CoA、(Z,Z)-9,11-15:アシル-CoA、Z11-16:アシル-CoA、E11-16:アシル-CoA、(E,Z)-6,11-16:アシル-CoA、(E,Z)-7,11-16:アシル-CoA、(E,Z)-8,11-16:アシル-CoA、(E,E)-9,11-16:アシル-CoA、(E,Z)-9,11-16:アシル-CoA、(Z,E)-9,11-16:アシル-CoA、(Z,Z)-9,11-16:アシル-CoA、(E,E)-11,13-16:アシル-CoA、(E,Z)-11,13-16:アシル-CoA、(Z,E)-11,13-16:アシル-CoA、(Z,Z)-11,13-16:アシル-CoA、(Z,E)-11,14-16:アシル-CoA、(E,E,Z)-4,6,11-16:アシル-CoA、(Z,Z,E)-7,11,13-16:アシル-CoA、(E,E,Z,Z)-4,6,11,13-16:アシル-CoA、Z11-17:アシル-CoA、(Z,Z)-8,11-17:アシル-CoA、Z11-18:アシル-CoA、E11-18:アシル-CoA、(Z,Z)-11,13-18:アシル-CoA、(E,E)-11,14-18:アシル-CoA、又はこれらの組み合わせから選択される一不飽和又は多価不飽和生成物への変換を触媒する。
別の例示的実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼはZ9デサチュラーゼである。Z9脂肪アシルデサチュラーゼは、基質のカルボニル基から9番目の炭素と10番目の炭素との間の二重結合形成を触媒する。本明細書に記載される様々な実施形態において、Z9デサチュラーゼ、又はそれをコードする核酸配列は、アワノメイガ(Ostrinia furnacalis)、ヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nobilalis)、ハスオビハマキ(Choristoneura rosaceana)、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)、タバコガ(Helicoverpa assulta)、又はアメリカタバコガ(Helicoverpa zea)種の生物から単離することができる。例示的実施形態では、Z9デサチュラーゼは、GenBank受託番号AY057862、AF243047、AF518017、EU152332、AF482906、及びAAF81788から選択される配列を含む。一部の実施形態では、Z9デサチュラーゼをコードする核酸配列がコドン最適化される。一部の実施形態では、Z9デサチュラーゼは、アワノメイガ(Ostrinia furnacalis)由来の配列番号20に示される核酸配列を含む。一部の実施形態では、Z9デサチュラーゼは、アワノメイガ(Ostrinia furnacalis)由来の配列番号58に示されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、Z9デサチュラーゼは、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)由来の配列番号21に示される核酸配列を含む。一部の実施形態では、Z9デサチュラーゼは、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)由来の配列番号59に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、Z9デサチュラーゼは、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)由来の配列番号22に示される核酸配列を含む。一部の実施形態では、Z9デサチュラーゼは、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)由来の配列番号60に示されるアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態では、Z9デサチュラーゼは、脂肪アシル-CoAの、Z9-11:アシル-CoA、Z9-12:アシル-CoA、E9-12:アシル-CoA、(E,E)-7,9-12:アシル-CoA、(E,Z)-7,9-12:アシル-CoA、(Z,E)-7,9-12:アシル-CoA、(Z,Z)-7,9-12:アシル-CoA、Z9-13:アシル-CoA、E9-13:アシル-CoA、(E,Z)-5,9-13:アシル-CoA、(Z,E)-5,9-13:アシル-CoA、(Z,Z)-5,9-13:アシル-CoA、Z9-14:アシル-CoA、E9-14:アシル-CoA、(E,Z)-4,9-14:アシル-CoA、(E,E)-9,11-14:アシル-CoA、(E,Z)-9,11-14:アシル-CoA、(Z,E)-9,11-14:アシル-CoA、(Z,Z)-9,11-14:アシル-CoA、(E,E)-9,12-14:アシル-CoA、(Z,E)-9,12-14:アシル-CoA、(Z,Z)-9,12-14:アシル-CoA、Z9-15:アシル-CoA、E9-15:アシル-CoA、(Z,Z)-6,9-15:アシル-CoA、Z9-16:アシル-CoA、E9-16:アシル-CoA、(E,E)-9,11-16:アシル-CoA、(E,Z)-9,11-16:アシル-CoA、(Z,E)-9,11-16:アシル-CoA、(Z,Z)-9,11-16:アシル-CoA、Z9-17:アシル-CoA、E9-18:アシル-CoA、Z9-18:アシル-CoA、(E,E)-5,9-18:アシル-CoA、(E,E)-9,12-18:アシル-CoA、(Z,Z)-9,12-18:アシル-CoA、(Z,Z,Z)-3,6,9-18:アシル-CoA、(E,E,E)-9,12,15-18:アシル-CoA、(Z,Z,Z)-9,12,15-18:アシル-CoA、又はこれらの組み合わせから選択される一不飽和又は多価不飽和生成物への変換を触媒する。
飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの不飽和化は、複数の反応を通じて進めることにより多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAを生成し得る。一部の実施形態では、本組換え微生物は、少なくとも2つの二重結合の形成を触媒する能力を有する二機能性デサチュラーゼを発現し得る。一部の実施形態では、本組換え微生物は、飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する2つ以上の脂肪アシルデサチュラーゼをコードする2つ以上の外因性核酸分子を発現し得る。例えば、本組換え微生物は、Z11デサチュラーゼをコードする外因性核酸分子とZ9デサチュラーゼをコードする別の外因性核酸分子とを発現し得る。従って、得られる多価不飽和脂肪アシル-CoAは、9番目の炭素と10番目の炭素との間に二重結合を有し、且つ11番目の炭素と12番目の炭素との間に別の二重結合を有し得る。
一部の実施形態では、本組換え微生物は、独立に又は脂肪アシルデサチュラーゼと共に飽和又は一不飽和脂肪アシル-CoAの共役多価不飽和脂肪アシル-CoAへの変換を触媒するように作用する脂肪アシルコンジュガーゼを発現し得る。
一実施形態において、本開示は、飽和又は一不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの内因性又は外因性供給源から多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを生成する能力を有する組換え微生物を提供し、この組換え微生物は、(a)飽和又は一不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する脂肪アシルコンジュガーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子;及び(b)(a)からの多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する多価不飽和C6~C24脂肪アルコールへの変換を触媒する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を発現する。
別の実施形態では、本組換え微生物は、飽和又は一不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する脂肪アシルコンジュガーゼをコードする少なくとも2つの外因性核酸分子を発現する。
更なる実施形態において、本開示は、飽和又は一不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの内因性又は外因性供給源から多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを生成する能力を有する組換え微生物を提供し、この組換え微生物は、(a)飽和又は一不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子及び脂肪アシルコンジュガーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子;及び(b)(a)からの多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する多価不飽和C6~C24脂肪アルコールへの変換を触媒する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を発現する。
別の実施形態では、本組換え微生物は、飽和又は一不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する、脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも2つの外因性核酸分子及び脂肪アシルコンジュガーゼをコードする少なくとも2つの外因性核酸分子を発現する。
更に別の実施形態では、脂肪アシルコンジュガーゼは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24炭素原子の鎖長を有する脂肪アシル-CoAを基質として利用する能力を有するコンジュガーゼである。
特定の実施形態では、コンジュガーゼ、又はそれをコードする核酸配列は、コドリンガ(Cydia pomonella)、エンドウシンクイ(Cydia nigricana)、ホソバヒメハマキ(Lobesia botrana)、ゴママダラメイガ(Myelois cribrella)、ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)、マッソンマツカレハ(Dendrolimus punctatus)、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、タバコスズメガ(Manduca sexta)、カイコガ(Bombyx mori)、キンセンカ(Calendula officinalis)、キカラスウリ(Trichosanthes kirilowii)、ザクロ(Punica granatum)、ツルレイシ(Momordica charantia)、ホウセンカ(Impatiens balsamina)、及びリンゴウスチャイロハマキ(Epiphyas postvittana)種の生物から単離することができる。例示的実施形態では、コンジュガーゼは、GenBank受託番号又はUniprotデータベース:A0A059TBF5、A0A0M3L9E8、A0A0M3L9S4、A0A0M3LAH8、A0A0M3LAS8、A0A0M3LAH8、B6CBS4、XP_013183656.1、XP_004923568.2、ALA65425.1、NP_001296494.1、NP_001274330.1、Q4A181、Q75PL7、Q9FPP8、AY178444、AY178446、AF182521、AF182520、Q95UJ3から選択される配列を含む。
上記に記載したとおり、脂肪アシルレダクターゼは、例えば不飽和脂肪アシル-CoA分子上のカルボニル基の還元を触媒して対応する不飽和脂肪酸分子を生じさせる。一部の実施形態では、脂肪アルコール形成脂肪アシルCoAレダクターゼはその微生物にとって異種である。従って、様々な実施形態は、不飽和脂肪アシル-CoA分子上のカルボニル基の還元を触媒して対応する不飽和脂肪酸分子を生じさせる脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を含む組換え微生物を提供する。
[0339] 一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、ミドリムシ(Euglena gracilis)、サクラスガ(Yponomeuta evonymellus)及びオオタバコガ(Helicoverpa armigera)種の生物由来である。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼをコードする核酸配列がコドン最適化される。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)由来の配列番号1に示される配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)由来の配列番号55に示されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)由来の配列番号2に示される配列を含む。他の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)由来の配列番号56に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、配列番号3、32、40、72、74、76及び81から選択される配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)由来の配列番号55に示されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)由来の配列番号56に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)由来の配列番号41及び57から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)由来の配列番号73及び82から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、ミドリムシ(Euglena gracilis)由来の配列番号75に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、サクラスガ(Yponomeuta evonymellus)由来の配列番号77に示されるアミノ酸配列を含む。
[0340] 一部の実施形態では、組換え微生物における不飽和脂肪アルコールの生成は、1つ以上の突然変異体FARの発現を含む。特定の実施形態では、配列番号41に示されるアミノ酸配列によってコードされる野生型オオタバコガ(Helicoverpa amigera)脂肪アシル-CoAレダクターゼと比較して、生成される脂肪アルコールの正味の増加を示す、オオタバコガ(Helicoverpa amigera)脂肪アシル-CoAレダクターゼ(HaFAR)変異体が提供される。一部の実施形態では、増加した酵素活性は、配列番号41に示されるアミノ酸配列によってコードされるHaFARの野生型酵素活性によって生成される脂肪アルコールの量と比べた、生成される脂肪アルコールの量の正味の活性増加である。一部の実施形態では、野生型HaFARは、配列番号90に示されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、配列番号41に示されるアミノ酸配列によってコードされる野生型HaFARの変異体は、以下の位置:S60X、S195X、S298X、S378X、S394X、S418X及びS453Xにおける点突然変異を含み、ここで、Xは、アミノ酸F、L、M、I、V、P、T、A、Y、K、H、N、Q、K、D、E、C、W、Rを含む。一部の実施形態では、配列番号41に示されるアミノ酸配列によってコードされる野生型HaFARの変異体は、以下のアミノ酸位置:S60X、S195X、S298X、S378X、S394X、S418X及びS453Xにおける突然変異から選択される点突然変異の組み合わせを含み、ここで、Xは、アミノ酸F、L、M、I、V、P、T、A、Y、K、H、N、Q、K、D、E、C、W、Rを含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、突然変異脂肪アシルレダクターゼであり、配列番号42~48から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、突然変異脂肪アシルレダクターゼであり、配列番号83~89から選択されるヌクレオチド配列を含む。
例示的実施形態では、脂肪アシルレダクターゼは、一不飽和又は多価不飽和脂肪アシル-CoAの、(Z)-3-ヘキセノール、(Z)-3-ノネノール、(Z)-5-デセノール、(E)-5-デセノール、(Z)-7-ドデセノール、(E)-8-ドデセノール、(Z)-8-ドデセノール、(Z)-9-ドデセノール、(Z)-9-テトラデセノール、(Z)-9-ヘキサデセノール、(Z)-11-テトラデセノール、(Z)-7-ヘキサデセノール、(Z)-11-ヘキサデセノール、(E)-11-テトラデセノール、又は(Z,Z)-11,13-ヘキサデカジエノール、(11Z,13E)-ヘキサデカジエノール、(E,E)-8,10-ドデカジエノール、(E,Z)-7,9-ドデカジエノール、(Z)-13-オクタデセノール、又はこれらの組み合わせから選択される脂肪アルコール生成物への変換を触媒する。
一部の実施形態では、本明細書に記載される組換え微生物は複数の脂肪アシルレダクターゼを含み得る。従って、かかる実施形態では、本組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールへの変換を触媒する脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも2つの外因性核酸分子を発現する。
[0343] 更なる実施形態では、本開示は、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールを生成する能力を有する組換え微生物を提供し、この組換え微生物は、(a)飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子;(b)アシル-CoAオキシダーゼ活性の1つ以上の連続サイクル後、(a)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アシル-CoAへの変換を触媒するアシル-CoAオキシダーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子であって、所与のサイクルは、そのサイクルにおける出発一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoA基質と比べて2つの炭素切断を有する一不飽和又は多価不飽和C4~C22脂肪アシル-CoA中間体を生成する、少なくとも1つの外因性核酸分子;及び(c)(b)からの一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールへの変換を触媒する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を含む。一部の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、アルギロタエニア・ベルチナナ(Argyrotaenia velutinana)、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、イネヨトウ(Sesamia inferens)、タバコスズメガ(Manduca sexta)、ヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)、ハスオビハマキ(Choristoneura rosaceana)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、カブラヤガ(Agrotis segetum)、アワノメイガ(Ostrinia furnicalis)及びタラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)由来の脂肪アシルデサチュラーゼから選択される。一部の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、配列番号39、49~54、58~63、78~80並びにGenBank受託番号AF416738、AGH12217.1、AII21943.1、CAJ43430.2、AF441221、AAF81787.1、AF545481、AJ271414、AY362879、ABX71630.1、NP001299594.1、Q9N9Z8、ABX71630.1及びAIM40221.1からなる群から選択される脂肪アシルデサチュラーゼに対する95%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、アシル-CoAオキシダーゼは、表5aから選択される。他の実施形態では、脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、ミドリムシ(Euglena gracilis)、サクラスガ(Yponomeuta evonymellus)及びオオタバコガ(Helicoverpa armigera)由来の脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼから選択される。更なる実施形態では、脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼは、配列番号1~3、32、41~48、55~57、73、75、77及び82からなる群から選択される脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼに対する95%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、本組換え微生物は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)及びカンジダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)からなる群から選択される酵母である。
[0344] 一部の実施形態では、本組換え微生物は、好ましくは、≦C18脂肪アシル-CoAを保持するアシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む。一部の実施形態では、アシルトランスフェラーゼは、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)、グリセロールリン脂質アシルトランスフェラーゼ(GPLAT)及びジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)からなる群から選択される。一部の好ましい実施形態では、アシルトランスフェラーゼは、表5bから選択される。
[0345] 一部の実施形態では、ワックスエステラーゼの共発現は、1:1の比率での脂肪アルコール及び脂肪酸の貯蔵を可能にし得る。後に様々な生成物流れに使用され得るTAG及び脂肪アルコールの興味深い比率をもたらし得るTAG貯蔵と組み合わせたものである。ワックスエステルシンターゼの例:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)AWAT2(XM_011530876.2)、ムス・ムスクルス(Mus musculus)(AAT68766.1)ミドリムシ(Euglena gracilis)WS(ADI60058.1)、ミドリムシ(Euglena gracilis)WSD2(BAV82975.1)、ミドリムシ(Euglena gracilis)WSD5(BAV82978.1)。
[0346] 一部の実施形態では、本組換え微生物は、好ましくは、>C16、>C14、>C12又は>C10アシルグリセロール基質のエステル結合を加水分解するアシルグリセロールリパーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む。一部の実施形態では、アシルグリセロールリパーゼは、表5cから選択される。
[0347] 一部の実施形態では、本組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの生成のための生合成経路と競合する経路における反応を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む。更なる実施形態では、本組換え微生物は、(i)1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ;(ii)1つ以上のアシルトランスフェラーゼ;(iii)1つ以上のアシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ;(iv)1つ以上の(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ;(v)1つ以上の(脂肪)アルコールオキシダーゼ;及び(vi)1つ以上のシトクロムP450モノオキシゲナーゼから選択される1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む。
[0348] 一部の好ましい実施形態では、アシル-CoAオキシダーゼをコードする微生物宿主の1つ以上の遺伝子は、所望の鎖長を超える所望の脂肪アシル-CoAの切断を除去又は低減するように欠失又は下方制御される。一部の実施形態では、本組換え微生物は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX1(YALI0E32835g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX2(YALI0F10857g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX3(YALI0D24750g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX4(YALI0E27654g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX5(YALI0C23859g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX6(YALI0E06567g);S.セレビシエ(S. cerevisiae)POX1(YGL205W);カンジダ属(Candida)POX2(CaO19.1655、CaO19.9224、CTRG_02374、M18259)、カンジダ属(Candida)POX4(CaO19.1652、CaO19.9221、CTRG_02377、M12160)及びカンジダ属(Candida)POX5(CaO19.5723、CaO19.13146、CTRG_02721、M12161)からなる群から選択される1つ以上の内因性アシル-CoAオキシダーゼ酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む。
[0349] 一部の実施形態では、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを生成する能力を有する組換え微生物が提供され、この組換え微生物は、1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ酵素を発現し、この組換え微生物は、1つ以上の内因性アシル-CoAオキシダーゼ酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。一部の実施形態では、発現される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ酵素は、欠失又は下方制御される1つ以上の内因性アシル-CoAオキシダーゼ酵素と異なる。他の実施形態では、発現される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ酵素は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートの鎖長を調節する。他の実施形態では、発現される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ酵素は、表5aから選択される。
[0350] 一部の実施形態では、本組換え微生物は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C00209g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E18964g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F19514g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14014g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E16797g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32769g及びY.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D07986g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YBL011w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YDL052c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR175C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YPR139C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YNR008w及びS.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR245c並びにカンジダ属(Candida)I503_02577、カンジダ属(Candida)CTRG_02630、カンジダ属(Candida)CaO19.250、カンジダ属(Candida)CaO19.7881、カンジダ属(Candida)CTRG_02437、カンジダ属(Candida)CaO19.1881、カンジダ属(Candida)CaO19.9437、カンジダ属(Candida)CTRG_01687、カンジダ属(Candida)CaO19.1043、カンジダ属(Candida)CaO19.8645、カンジダ属(Candida)CTRG_04750、カンジダ属(Candida)CaO19.13439、カンジダ属(Candida)CTRG_04390、カンジダ属(Candida)CaO19.6941、カンジダ属(Candida)CaO19.14203及びカンジダ属(Candida)CTRG_06209からなる群から選択される1つ以上の内因性アシルトランスフェラーゼ酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む。
[0351] 一部の実施形態では、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを生成する能力を有する組換え微生物が提供され、この組換え微生物は、1つ以上のアシルトランスフェラーゼ酵素を発現し、この組換え微生物は、1つ以上の内因性アシルトランスフェラーゼ酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。一部の好ましい実施形態では、GPAT、LPAAT、GPLAT及び/又はDGATをコードする微生物宿主の1つ以上の遺伝子が欠失又は下方制御され、短鎖脂肪アシル-CoAを保持することを選好する1つ以上のGPAT、LPAAT、GPLAT又はDGATで置換される。一部の実施形態では、発現される1つ以上のアシルトランスフェラーゼ酵素は、欠失又は下方制御される1つ以上の内因性アシルトランスフェラーゼ酵素と異なる。他の実施形態では、発現される1つ以上のアシルトランスフェラーゼ酵素は、表5bから選択される。
[0352] 一部の好ましい実施形態では、アシルグリセロールリパーゼ(モノ-、ジ-又はトリアシルグリセロールリパーゼ)及びステロールエステルエステラーゼをコードする微生物宿主の1つ以上の遺伝子が欠失又は下方制御され、長鎖アシルグリセロール基質を選好する1つ以上のアシルグリセロールリパーゼで置換される。一部の実施形態では、本組換え微生物は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32035g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D17534g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F10010g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14520g及びY.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E00528g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL140w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YMR313c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKR089c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR081c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL094W、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YLL012W及びS.セレビシエ(S. cerevisiae)YLR020C並びにカンジダ属(Candida)CaO19.2050、カンジダ属(Candida)CaO19.9598、カンジダ属(Candida)CTRG_01138、カンジダ属(Candida)W5Q_03398、カンジダ属(Candida)CTRG_00057、カンジダ属(Candida)CaO19.5426、カンジダ属(Candida)CaO19.12881、カンジダ属(Candida)CTRG_06185、カンジダ属(Candida)CaO19.4864、カンジダ属(Candida)CaO19.12328、カンジダ属(Candida)CTRG_03360、カンジダ属(Candida)CaO19.6501、カンジダ属(Candida)CaO19.13854、カンジダ属(Candida)CTRG_05049、カンジダ属(Candida)CaO19.1887、カンジダ属(Candida)CaO19.9443、カンジダ属(Candida)CTRG_01683及びカンジダ属(Candida)CTRG_04630からなる群から選択される1つ以上の内因性アシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む。
[0353] 一部の実施形態では、本組換え微生物は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E25982g(ALK1)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F01320g(ALK2)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E23474g(ALK3)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B13816g(ALK4)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B13838g(ALK5)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B01848g(ALK6)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0A15488g(ALK7)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C12122g(ALK8)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B06248g(ALK9)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B20702g(ALK10)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C10054g(ALK11)及びY.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0A20130g(ALK12)からなる群から選択される1つ以上の内因性シトクロムP450モノオキシゲナーゼの活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む。
[0354] 一部の実施形態では、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを生成する能力を有する組換え微生物が提供され、この組換え微生物は、1つ以上のアシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素を発現し、この組換え微生物は、1つ以上の内因性アシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。一部の実施形態では、発現される1つ以上のアシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素は、欠失又は下方制御される1つ以上の内因性アシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素と異なる。一部の実施形態では、発現される1つ以上の内因性又は外因性アシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素は、長鎖アシルグリセロールのエステル結合を加水分解することを選好する。他の実施形態では、発現される1つ以上のアシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素は、表5cから選択される。
[0355] 一部の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、E5-10:アシル-CoA、E7-12:アシル-CoA、E9-14:アシル-CoA、E11-16:アシル-CoA、E13-18:アシル-CoA、Z7-12:アシル-CoA、Z9-14:アシル-CoA、Z11-16:アシル-CoA、Z13-18:アシル-CoA、Z8-12:アシル-CoA、Z10-14:アシル-CoA、Z12-16:アシル-CoA、Z14-18:アシル-CoA、Z7-10:アシル-coA、Z9-12:アシル-CoA、Z11-14:アシル-CoA、Z13-16:アシル-CoA、Z15-18:アシル-CoA、E7-10:アシル-CoA、E9-12:アシル-CoA、E11-14:アシル-CoA、E13-16:アシル-CoA、E15-18:アシル-CoA、E5Z7-12:アシル-CoA、E7Z9-12:アシル-CoA、E9Z11-14:アシル-CoA、E11Z13-16:アシル-CoA、E13Z15-18:アシル-CoA、E6E8-10:アシル-CoA、E8E10-12:アシル-CoA、E10E12-14:アシル-CoA、E12E14-16:アシル-CoA、Z5E8-10:アシル-CoA、Z7E10-12:アシル-CoA、Z9E12-14:アシル-CoA、Z11E14-16:アシル-CoA、Z13E16-18:アシル-CoA、Z3-10:アシル-CoA、Z5-12:アシル-CoA、Z7-14:アシル-CoA、Z9-16:アシル-CoA、Z11-18:アシル-CoA、Z3Z5-10:アシル-CoA、Z5Z7-12:アシル-CoA、Z7Z9-14:アシル-CoA、Z9Z11-16:アシル-CoA、Z11Z13-16:アシル-CoA及びZ13Z15-18:アシル-CoAから選択される一不飽和又は多価不飽和中間体への脂肪アシル-CoAの変換を触媒する。更なる実施形態では、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールは、E5-10:OH、Z8-12:OH、Z9-12:OH、Z11-14:OH、Z11-16:OH、E11-14:OH、E8E10-12:OH、E7Z9-12:OH、Z11Z13-16OH、Z9-14:OH、Z9-16:OH及びZ13-18:OHからなる群から選択される。
[0356] 一部の実施形態では、本組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルデヒド形成脂肪アシル-CoAレダクターゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む。一部の好ましい実施形態では、アルデヒド形成脂肪アシル-CoAレダクターゼは、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)A0A1C4HN78、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)N9DA85、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)R8XW24、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)A0A1A0GGM5、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)A0A117N158及びノストック・プンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)YP_001865324からなる群から選択される。一部の実施形態では、本組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む。一部の好ましい実施形態では、≦C18脂肪アルデヒドは、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される。
[0357] 一部の実施形態では、本組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む。一部の実施形態では、アセチルトランスフェラーゼは、表5dから選択される。一部の好ましい実施形態では、≦C18脂肪アセテートは、E5-10:Ac、Z7-12:Ac、Z8-12:Ac、Z9-12:Ac、E7Z9-12:Ac、Z9-14:Ac、Z9E12-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac及びZ11-16:Acからなる群から選択される。
[0358] 一部の実施形態では、本組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有する、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ及びアルデヒド形成脂肪アシル-CoAレダクターゼから選択される酵素をコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子;及び一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む。一部の好ましい実施形態では、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルデヒド及び≦C18脂肪アセテートは、E5-10:Ac、Z7-12:Ac、Z8-12:Ac、Z9-12:Ac、E7Z9-12:Ac、Z9-14:Ac、Z9E12-14:Ac、E11-14:Ac、Z11-14:Ac、Z11-16:Ac、Z9-16:Ac、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される。
[0359] 更なる実施形態では、本開示は、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを生成する能力を有する組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物を提供し、この組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、(a)飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する、配列番号54、60、62、78、79、80、95、97、99、101、103及び105からなる群から選択される脂肪アシルデサチュラーゼに対する95%の配列同一性を有する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの核酸分子;及び(b)(a)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールへの変換を触媒する、配列番号41~48、57、73、75及び77からなる群から選択される脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼに対する95%の配列同一性を有する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む。
[0360] 一部の実施形態では、本組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの生成のための生合成経路と競合する経路における反応を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む。一部の好ましい実施形態では、組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、以下:(i)YALI0E32835g(POX1)、YALI0F10857g(POX2)、YALI0D24750g(POX3)、YALI0E27654g(POX4)、YALI0C23859g(POX5)、YALI0E06567g(POX6)からなる群から選択される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ;(ii)YALI0F09603g(FADH)、YALI0D25630g(ADH1)、YALI0E17787g(ADH2)、YALI0A16379g(ADH3)、YALI0E15818g(ADH4)、YALI0D02167g(ADH5)、YALI0A15147g(ADH6)、YALI0E07766g(ADH7)からなる群から選択される1つ以上の(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ;(iii)(脂肪)アルコールオキシダーゼYALI0B14014g(FAO1);(iv)YALI0E25982g(ALK1)、YALI0F01320g(ALK2)、YALI0E23474g(ALK3)、YALI0B13816g(ALK4)、YALI0B13838g(ALK5)、YALI0B01848g(ALK6)、YALI0A15488g(ALK7)、(YALI0C12122g(ALK8)、YALI0B06248g(ALK9)、YALI0B20702g(ALK10)、YALI0C10054g(ALK11)及びYALI0A20130g(Alk12)からなる群から選択される1つ以上のシトクロムP450酵素;及び(v)YALI0E32791g(DGA1)及びYALI0D07986g(DGA2)からなる群から選択される1つ以上のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼから選択される1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む。他の好ましい実施形態では、本組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、以下:(i)YALI0E32835g(POX1)、YALI0F10857g(POX2)、YALI0D24750g(POX3)、YALI0E27654g(POX4)、YALI0C23859g(POX5)、YALI0E06567g(POX6)からなる群から選択される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ;(ii)YALI0F09603g(FADH)、YALI0D25630g(ADH1)、YALI0E17787g(ADH2)、YALI0A16379g(ADH3)、YALI0E15818g(ADH4)、YALI0D02167g(ADH5)、YALI0A15147g(ADH6)、YALI0E07766g(ADH7)からなる群から選択される1つ以上の(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ;(iii)(脂肪)アルコールオキシダーゼYALI0B14014g(FAO1);(iv)YALI0E25982g(ALK1)、YALI0F01320g(ALK2)、YALI0E23474g(ALK3)、YALI0B13816g(ALK4)、YALI0B13838g(ALK5)、YALI0B01848g(ALK6)、YALI0A15488g(ALK7)、(YALI0C12122g(ALK8)、YALI0B06248g(ALK9)、YALI0B20702g(ALK10)、YALI0C10054g(ALK11)及びYALI0A20130g(Alk12)からなる群から選択される1つ以上のシトクロムP450酵素;及び(v)YALI0E32791g(DGA1)及びYALI0D07986g(DGA2)からなる群から選択される1つ以上のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼから選択される1つ以上の内因性酵素の欠失を含む。
[0361] 一部の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、Z9-14:アシル-CoA、Z11-14:アシル-CoA、E11-14:アシル-CoA、Z9-16:アシル-CoA及びZ11-16:アシル-CoAから選択される一不飽和又は多価不飽和中間体への飽和脂肪アシル-CoAの変換を触媒する。他の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールは、Z9-14:OH、Z11-14:OH、E11-14:OH、Z9-16:OH、Z11-16:OH、Z11Z13-16:OH及びZ13-18:OHからなる群から選択される。
[0362] 一部の実施形態では、本組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む。一部の実施形態では、アルコールデヒドロゲナーゼは、表3aから選択される。一部の実施形態では、C6~C24脂肪アルデヒドは、Z9-14:Ald、Z11-14:Ald、E11-14:Ald、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される。
[0363] 一部の実施形態では、本組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む。一部の実施形態では、アセチルトランスフェラーゼは、表5dから選択される。一部の実施形態では、C6~C24脂肪アセテートは、Z9-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac、Z11-16:Ac、Z11Z13-16:Ac及びZ13-18:Acからなる群から選択される。
[0364] 一部の実施形態では、本組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子;及び一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む。一部の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルデヒド及びC6~C24脂肪アセテートは、Z9-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac、Z11-16:Ac、Z11Z13-16:Ac、Z13-18:Ac、Z9-14:Ald、Z11-14:Ald、E11-14:Ald、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される。
[0365] 一部の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、配列番号64、65、66及び67からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む脂肪アシルデサチュラーゼを含まない。他の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、カブラヤガ(Agrotis segetum)又はイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)由来のデサチュラーゼから選択される脂肪アシルデサチュラーゼを含まない。
[0366] 一部の実施形態では、本開示は、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを生成する能力を有するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物に改変する方法であって、以下:(a)飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する、配列番号39、54、60、62、78、79、80、95、97、99、101、103及び105からなる群から選択される脂肪アシルデサチュラーゼに対する95%の配列同一性を有する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの核酸分子;及び(b)(a)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールへの変換を触媒する、配列番号41~48、57、73、75及び77からなる群から選択される脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼに対する95%の配列同一性を有する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの核酸分子をヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中に導入することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、微生物は、MATA ura3-302::SUC2 Δpox1 Δpox2 Δpox3 Δpox4 Δpox5 Δpox6 Δfadh Δadh1 Δadh2 Δadh3 Δadh4 Δadh5 Δadh6 Δadh7 Δfao1::URA3である。
[0367] 一部の実施形態では、本開示は、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド又は脂肪アセテートを生成する方法であって、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド又は脂肪アセテートの生成に適正な炭素源を供給する原料を含む培養培地で本明細書に記載される組換え微生物を培養することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド又は脂肪アセテートを回収するステップを更に含む。更なる実施形態では、回収するステップは、蒸留を含む。更に別の実施形態では、回収するステップは、膜に基づく分離を含む。
[0368] 一部の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールは、化学的方法を用いて対応するC6~C24脂肪アルデヒドに変換される。更なる実施形態では、化学的方法は、TEMPO-ブリーチ、TEMPO-銅-空気、TEMPO-PhI(OAc)2、スワーン酸化及び貴金属-空気から選択される。一部の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールは、化学的方法を用いて対応するC6~C24脂肪アセテートに変換される。更なる実施形態では、化学的方法は、4-N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)又は酢酸ナトリウムの存在下において、塩化アセチル、無水酢酸、塩化ブチリル、無水酪酸、塩化プロパノイル及びプロピオン酸無水物からなる群から選択される化学剤を利用して、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを対応するC6~C24脂肪アセテートにエステル化する。
上記で考察したとおり、第2の態様において、本願は、C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から不飽和C6~C24脂肪アルコールを生成する能力を有する組換え微生物に関する。第2の態様の例示的実施形態を図2に示す。青色の線は、宿主にとって内因性の生化学的経路、例えば、n-アルカン、脂肪アルコール、又は脂肪アルデヒドを脂肪酸に変換する経路、又は脂肪酸の脂肪アシル-CoA、アセチル-CoA、又はジカルボン酸への変換を示す。基質からの不飽和脂肪酸への変換は、宿主の内因性又は外因性酵素によって実施され得る。黄色の線は、酵素をコードする外因性核酸分子によって触媒される変換を示す。従って、一部の実施形態では、飽和脂肪酸の飽和脂肪アシル-ACPへの変換は少なくとも1つの飽和脂肪アシル-ACPシンテターゼによって触媒されることができ、ここで脂肪アシル-ACPシンテターゼは外因性核酸分子によってコードされる。更なる実施形態では、飽和脂肪アシル-ACPの一不飽和又は多価不飽和脂肪アシル-ACPへの変換は少なくとも1つの脂肪アシル-ACPデサチュラーゼによって触媒されることができ、ここで脂肪アシル-ACPデサチュラーゼは外因性核酸分子によってコードされる。更に別の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和脂肪アシル-ACPは、脂肪酸シンターゼ複合体及び炭素源、例えばマロニル-ACPを用いて相対的に少なくとも2炭素伸長させることができる。1つのかかる実施形態では、一不飽和又は多価不飽和脂肪アシル-ACPの、対応する2炭素伸長一不飽和又は多価不飽和脂肪アシル-ACPへの変換は少なくとも1つの脂肪酸シンターゼ複合体によって触媒されることができ、ここで脂肪酸シンターゼ複合体は1つ以上の外因性核酸分子によってコードされる。更に別の実施形態では、伸長した一不飽和又は多価不飽和脂肪アシル-ACPの一不飽和又は多価不飽和脂肪アルデヒドへの変換が脂肪アルデヒド形成脂肪アシルレダクターゼによって触媒されることができ、ここで脂肪アルデヒド形成脂肪アシルレダクターゼは外因性核酸分子によってコードされる。一部の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和脂肪アルデヒドは対応する一不飽和又は多価不飽和脂肪アルコールに変換されることができ、ここで基質の生成物への変換はデヒドロゲナーゼによって触媒され、デヒドロゲナーゼは内因性又は外因性核酸分子によってコードされる。破線は、アセチルトランスフェラーゼ又はメタセシス、又は続く化学転換を利用した機能化フェロモンの生成など、本開示の下流ステップを示す。赤色のバツ印は宿主にとって天然の経路の欠失又は下方制御を示し、これは改変経路へのフラックスを増加させる。
一実施形態では、本組換え微生物は、(a):C6~C24脂肪酸の、対応する飽和C6~C24脂肪アシル-ACPへの変換を触媒するアシル-ACPシンテターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子;(b)飽和C6~C24脂肪アシル-ACPの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-ACPへの変換を触媒する脂肪アシル-ACPデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子;(c)(b)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-ACPの、(b)の生成物と比べて2炭素の伸長を有する対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-ACPへの変換を触媒する脂肪酸シンターゼ複合体をコードする1つ以上の内因性又は外因性核酸分子;(d):(c)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-ACPの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルデヒドへの変換を触媒する脂肪アルデヒド形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子;及び(e)(d)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルデヒドC6~C24の、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールへの変換を触媒するデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を発現する。一部の実施形態では、C6~C24脂肪酸は宿主微生物の内因性酵素を用いて生成され得る。他の実施形態では、飽和C6~C24脂肪酸は宿主微生物の1つ以上の外因性酵素によって生成され得る。
一部の実施形態では、本明細書に開示される組換え微生物は、C6~C24脂肪酸の、対応する飽和C6~C24脂肪アシル-ACPへの変換を触媒するアシル-ACPシンテターゼを含む。一部の実施形態においてアシル-ACPシンテターゼは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24炭素原子の鎖長を有する脂肪酸を基質として利用する能力を有するシンテターゼである。例示的実施形態では、本組換え微生物は、ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)、又はヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)種の生物由来の異種アシル-ACPシンテターゼを含み得る。
一部の実施形態では、本組換え微生物は脂肪アシル-ACPデサチュラーゼを含む。一部の実施形態では、脂肪アシル-ACPデサチュラーゼは可溶性デサチュラーゼである。他の実施形態では、脂肪アシル-ACPデサチュラーゼは、ハナテンジクアオイ(Pelargonium hortorum)、オオトウワタ(Asclepias syriaca)、又はキャッツクロー(Uncaria tomentosa)種の生物由来である。
一部の実施形態では、本組換え微生物は脂肪酸シンターゼ複合体を含む。一部の実施形態では、脂肪酸シンターゼ複合体をコードする1つ以上の核酸分子は内因性核酸分子である。他の実施形態では、脂肪酸シンターゼ複合体をコードする1つ以上の核酸分子は外因性核酸分子である。
一部の実施形態では、本明細書に開示される組換え微生物は、C6~C24脂肪アシル-ACPの、対応するC6~C24脂肪アルデヒドへの変換を触媒する脂肪アルデヒド形成脂肪アシルレダクターゼを含む。例示的実施形態では、脂肪アルデヒド形成脂肪アシルレダクターゼは、ハナテンジクアオイ(Pelargonium hortorum)、オオトウワタ(Asclepias syriaca)、及びキャッツクロー(Uncaria tomentosa)種の生物由来である。一部の実施形態では、本組換え微生物は、不飽和脂肪アルデヒドを対応する不飽和脂肪アルコールに変換するデヒドロゲナーゼを含む。一部の実施形態では、デヒドロゲナーゼをコードする核酸分子は組換え微生物にとって内因性である。他の実施形態では、デヒドロゲナーゼをコードする核酸分子は組換え微生物にとって外因性である。例示的実施形態では、デヒドロゲナーゼをコードする内因性又は外因性核酸分子は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、大腸菌(Escherichia coli)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、又はカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)種の生物から単離される。
上記で考察したとおり、第3の態様において、本願は、C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から不飽和C6~C24脂肪アルコールを生成する能力を有する組換え微生物に関する。第2の態様の例示的実施形態を図3に示す。青色の線は、宿主にとって内因性の生化学的経路、例えば、n-アルカン、脂肪アルコール、又は脂肪アルデヒドを脂肪酸に変換する経路、又は脂肪酸の脂肪アシル-CoA、アセチル-CoA、又はジカルボン酸への変換を示す。基質の不飽和脂肪酸への変換は、宿主の内因性又は外因性酵素によって実施され得る。黄色の線は、酵素をコードする外因性核酸分子によって触媒される変換を示す。従って、一部の実施形態では、飽和脂肪酸の飽和脂肪アシル-ACPへの変換は少なくとも1つの飽和脂肪アシル-ACPシンテターゼによって触媒されることができ、ここで脂肪アシル-ACPシンテターゼは外因性核酸分子によってコードされる。非天然飽和脂肪アシル-ACPチオエステルは、不飽和化に好適であり、且つβ酸化又は脂肪酸伸長に用いられるCoA-チオエステルとは異なる基質を作り出す。更なる実施形態では、飽和脂肪アシル-ACPの一不飽和又は多価不飽和脂肪アシル-ACPへの変換は少なくとも1つの脂肪アシル-ACPデサチュラーゼによって触媒されることができ、ここで脂肪アシル-ACPデサチュラーゼは外因性核酸分子によってコードされる。更に別の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和脂肪アシル-ACPは脂肪アシル-ACPチオエステラーゼによって対応する一不飽和又は多価不飽和脂肪酸に変換されることができる。詳細な実施形態では、可溶性脂肪アシル-ACPチオエステラーゼを使用して遊離脂肪酸を放出させ、CoAチオエステルに再活性化させることができる。Q41635、Q39473、P05521.2、AEM72519、AEM72520、AEM72521、AEM72523、AAC49784、CAB60830、EER87824、EER96252、ABN54268、AAO77182、CAH09236、ACL08376、及びこれらのホモログを含めた脂肪アシル-ACPチオエステラーゼを使用し得る。更なる実施形態では、一不飽和又は多価不飽和脂肪アシル-CoAは、エロンガーゼ及び炭素源、例えばマロニル-ACPを用いて相対的に少なくとも2炭素伸長させることができる。更に別の実施形態では、伸長した一不飽和又は多価不飽和脂肪アシル-CoAの一不飽和又は多価不飽和脂肪アルコールへの変換が脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼによって触媒されることができ、ここで脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼは外因性核酸分子によってコードされる。破線は、アセチルトランスフェラーゼ又はメタセシス、又は続く化学転換を利用した機能化フェロモンの生成など、本開示の下流ステップを示す。赤色のバツ印は宿主にとって天然の経路の欠失又は下方制御を示し、これは改変経路へのフラックスを増加させる。
本明細書に教示されるとおり生成される脂肪アルコールを更に変換して、昆虫フェロモン、フレグランス、フレーバー、及びポリマー中間体などの下流生成物を生成することができ、これにはアルデヒド又はアセテート官能基が利用される。従って、一部の実施形態では、本組換え微生物は、アルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含み、このアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼは、C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有する。他の実施形態では、本組換え微生物は、C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含み得る。特定の実施形態では、アセチルトランスフェラーゼ、又はそれをコードする核酸配列は、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、オオカバマダラ(Danaus plexippus)、ニセアメリカタバコガ(Heliotis virescens)、カイコガ(Bombyx mori)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)、カブラヤガ(Agrotis segetum)、ニシキギ(Euonymus alatus)ヒト(Homo sapiens)、ラカンセア・サーモトレランス(Lachancea thermotolerans)及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)種の生物から単離することができる。例示的実施形態では、アセチルトランスフェラーゼは、GenBank受託番号AY242066、AY242065、AY242064、AY242063、AY242062、EHJ65205、ACX53812、NP_001182381、EHJ65977、EHJ68573、KJ579226、GU594061、KTA99184.1、AIN34693.1、AY605053、XP_002552712.1、XP_503024.1及びXP_505595.1から選択される配列を含む。
組換え微生物
本開示は、様々な外因性酵素を発現するように改変することのできる微生物を提供する。
本明細書に記載される様々な実施形態において、組換え微生物は真核微生物である。一部の実施形態では、真核微生物は酵母である。例示的実施形態では、酵母は、ヤロウイア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、イサチェンキア属(Issatchenkia)、ザイゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)、デバリオミセス属(Debaryomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、パキソレン属(Pachysolen)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、トリコスポロン属(Trichosporon)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、及びミクソザイマ属(Myxozyma)からなる群から選択される属のメンバーである。
本発明者らは、カンジダ属(Candida)及びヤロウイア属(Yarrowia)などの油産生酵母が、意外にも、C6~C24脂肪アルコール基質及び生成物に対して高い耐性を有することを発見した。従って、かかる一例示的実施形態では、本発明の組換え微生物は油産生酵母である。更なる実施形態では、油産生酵母は、ヤロウイア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、トリコスポロン属(Trichosporon)、及びリポミセス属(Lipomyces)からなる群から選択される属のメンバーである。更に別の実施形態では、油産生酵母は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、リポミセス・スタルケイ(Lipomyces starkey)、L.リポフェルス(L. lipoferus)、C.レブカウフィ(C. revkaufi)、C.プルケリマ(C. pulcherrima)、C.ウチリス(C. utilis)、ロドトルラ・ミヌタ(Rhodotorula minuta)、トリコスポロン・プルランス(Trichosporon pullans)、T.クタネウム(T. cutaneum)、クリプトコッカス・カルバツス(Cryptococcus curvatus)、R.グルチニス(R. glutinis)、及びR.グラミニス(R. graminis)から選択される種のメンバーである。
一部の実施形態では、本組換え微生物は原核微生物である。例示的実施形態では、原核微生物は、大腸菌属(Escherichia)、クロストリジウム属(Clostridium)、ザイモモナス属(Zymomonas)、サルモネラ属(Salmonella)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、クレブシエラ属(Klebsiella)、パエニバチルス属(Paenibacillus)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、及びブレビバクテリウム属(Brevibacterium)からなる群から選択される属のメンバーである。
一部の実施形態では、本組換え微生物を使用して、本明細書に開示される一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、アルデヒド、又はアセテートが生成される。
従って、別の態様において、本発明は、本明細書に記載される組換え微生物を使用して一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、アルデヒド、又はアセテートを生成する方法を提供する。一実施形態では、この方法は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、アルデヒド、又はアセテートが生成されるまで、炭素源を供給する原料が入った培養培地で組換え微生物を培養することを含む。一部の実施形態では、この方法は、一不飽和又は多価不飽和のC18以下の脂肪アルコール、脂肪アルデヒド、又は脂肪アセテートの生成に適正な炭素源を供給する原料が入った培養培地で、本明細書に記載の組換え微生物を培養することを含む。更なる実施形態では、一不飽和又は多価不飽和のC18以下の脂肪アルコール、アルデヒド、又はアセテートは回収される。回収は、蒸留、膜に基づく分離、ガスストリッピング、溶媒抽出、及び拡張吸着流動床など、当該技術分野において公知の方法によることができる。
一部の実施形態では、原料は炭素源を含む。本明細書に記載される様々な実施形態において、炭素源は、糖、グリセロール、アルコール、有機酸、アルカン、脂肪酸、リグノセルロース、タンパク質、二酸化炭素、及び一酸化炭素から選択され得る。更なる実施形態では、糖は、グルコース、フルクトース、及びスクロースからなる群から選択される。
[0384] 一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートを生成する能力を有する微生物に改変する方法。
[0385] 一態様において、本開示は、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールを生成する能力を有する微生物に改変する方法であって、以下:(a)飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子;(b)アシル-CoAオキシダーゼ活性の1つ以上の連続サイクル後、(a)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アシル-CoAへの変換を触媒するアシル-CoAオキシダーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子であって、所与のサイクルは、そのサイクルにおける出発一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoA基質と比べて2つの炭素切断を有する一不飽和又は多価不飽和C4~C22脂肪アシル-CoA中間体を生成する、少なくとも1つの外因性核酸分子;及び(c)(b)からの一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールへの変換を触媒する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を微生物中に導入することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、微生物は、MATA ura3-302::SUC2 Δpox1 Δpox2 Δpox3 Δpox4 Δpox5 Δpox6 Δfadh Δadh1Δadh2 Δadh3 Δadh4 Δadh5 Δadh6 Δadh7 Δfao1::URA3である。
[0386] 一部の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、アルギロタエニア・ベルチナナ(Argyrotaenia velutinana)、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、イネヨトウ(Sesamia inferens)、タバコスズメガ(Manduca sexta)、ヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)、ハスオビハマキ(Choristoneura rosaceana)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、カブラヤガ(Agrotis segetum)、アワノメイガ(Ostrinia furnicalis)及びタラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)由来の脂肪アシルデサチュラーゼから選択される。一部の好ましい実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、配列番号39、49~54、58~63、78~80並びにGenBank受託番号AF416738、AGH12217.1、AII21943.1、CAJ43430.2、AF441221、AAF81787.1、AF545481、AJ271414、AY362879、ABX71630.1及びNP001299594.1、Q9N9Z8、ABX71630.1及びAIM40221.1からなる群から選択される脂肪アシルデサチュラーゼに対する95%の配列同一性を有する。更なる実施形態では、アシル-CoAオキシダーゼは、表5aから選択される。更に別の実施形態では、脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、ミドリムシ(Euglena gracilis)、サクラスガ(Yponomeuta evonymellus)及びオオタバコガ(Helicoverpa armigera)由来の脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼから選択される。更なる実施形態では、脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼは、配列番号1~3、32、41~48、55~57、73、75、77及び82からなる群から選択される脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼに対する90%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、本組換え微生物は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)及びカンジダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)からなる群から選択される酵母である。
[0387] 一部の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、E5-10:アシル-CoA、E7-12:アシル-CoA、E9-14:アシル-CoA、E11-16:アシル-CoA、E13-18:アシル-CoA、Z7-12:アシル-CoA、Z9-14:アシル-CoA、Z11-16:アシル-CoA、Z13-18:アシル-CoA、Z8-12:アシル-CoA、Z10-14:アシル-CoA、Z12-16:アシル-CoA、Z14-18:アシル-CoA、Z7-10:アシル-coA、Z9-12:アシル-CoA、Z11-14:アシル-CoA、Z13-16:アシル-CoA、Z15-18:アシル-CoA、E7-10:アシル-CoA、E9-12:アシル-CoA、E11-14:アシル-CoA、E13-16:アシル-CoA、E15-18:アシル-CoA、E5Z7-12:アシル-CoA、E7Z9-12:アシル-CoA、E9Z11-14:アシル-CoA、E11Z13-16:アシル-CoA、E13Z15-18:アシル-CoA、E6E8-10:アシル-CoA、E8E10-12:アシル-CoA、E10E12-14:アシル-CoA、E12E14-16:アシル-CoA、Z5E8-10:アシル-CoA、Z7E10-12:アシル-CoA、Z9E12-14:アシル-CoA、Z11E14-16:アシル-CoA、Z13E16-18:アシル-CoA、Z3-10:アシル-CoA、Z5-12:アシル-CoA、Z7-14:アシル-CoA、Z9-16:アシル-CoA、Z11-18:アシル-CoA、Z3Z5-10:アシル-CoA、Z5Z7-12:アシル-CoA、Z7Z9-14:アシル-CoA、Z9Z11-16:アシル-CoA、Z11Z13-16:アシル-CoA及びZ13Z15-18:アシル-CoAから選択される一不飽和又は多価不飽和中間体への脂肪アシル-CoAの変換を触媒する。更なる実施形態では、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールは、E5-10:OH、Z8-12:OH、Z9-12:OH、Z11-14:OH、Z11-16:OH、E11-14:OH、E8E10-12:OH、E7Z9-12:OH、Z11Z13-16OH、Z9-14:OH、Z9-16:OH及びZ13-18:OHからなる群から選択される。
[0388] 一部の実施形態では、本方法は、好ましくは、≦C18脂肪アシル-CoAを保持するアシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含む。一部の実施形態では、アシルトランスフェラーゼは、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)、グリセロールリン脂質アシルトランスフェラーゼ(GPLAT)及びジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)からなる群から選択される。一部の好ましい実施形態では、アシルトランスフェラーゼは、表5bから選択される。
[0389] 一部の実施形態では、本方法は、好ましくは、>C16、>C14、>C12又は>C10アシルグリセロール基質のエステル結合を加水分解するアシルグリセロールリパーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含む。一部の実施形態では、アシルグリセロールリパーゼは、表5cから選択される。
[0390] 一部の実施形態では、本方法は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの生成のための生合成経路と競合する経路における反応を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾を微生物中に導入することを更に含む。更なる実施形態では、本組換え微生物は、(i)1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ;(ii)1つ以上のアシルトランスフェラーゼ;(iii)1つ以上のアシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ;(iv)1つ以上の(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ;(v)1つ以上の(脂肪)アルコールオキシダーゼ;及び(vi)1つ以上のシトクロムP450モノオキシゲナーゼから選択される1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む。
[0391] 一部の実施形態では、本方法は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX1(YALI0E32835g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX2(YALI0F10857g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX3(YALI0D24750g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX4(YALI0E27654g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX5(YALI0C23859g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX6(YALI0E06567g);S.セレビシエ(S. cerevisiae)POX1(YGL205W);カンジダ属(Candida)POX2(CaO19.1655、CaO19.9224、CTRG_02374、M18259)、カンジダ属(Candida)POX4(CaO19.1652、CaO19.9221、CTRG_02377、M12160)及びカンジダ属(Candida)POX5(CaO19.5723、CaO19.13146、CTRG_02721、M12161)からなる群から選択される1つ以上の内因性アシル-CoAオキシダーゼ酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾を微生物中に導入することを更に含む。
[0392] 一部の実施形態では、本方法は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C00209g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E18964g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F19514g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14014g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E16797g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32769g及びY.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D07986g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YBL011w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YDL052c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR175C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YPR139C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YNR008w及びS.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR245c並びにカンジダ属(Candida)I503_02577、カンジダ属(Candida)CTRG_02630、カンジダ属(Candida)CaO19.250、カンジダ属(Candida)CaO19.7881、カンジダ属(Candida)CTRG_02437、カンジダ属(Candida)CaO19.1881、カンジダ属(Candida)CaO19.9437、カンジダ属(Candida)CTRG_01687、カンジダ属(Candida)CaO19.1043、カンジダ属(Candida)CaO19.8645、カンジダ属(Candida)CTRG_04750、カンジダ属(Candida)CaO19.13439、カンジダ属(Candida)CTRG_04390、カンジダ属(Candida)CaO19.6941、カンジダ属(Candida)CaO19.14203及びカンジダ属(Candida)CTRG_06209からなる群から選択される1つ以上の内因性アシルトランスフェラーゼ酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾を微生物中に導入することを更に含む。
[0393] 一部の実施形態では、本方法は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32035g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D17534g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F10010g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14520g及びY.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E00528g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL140w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YMR313c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKR089c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR081c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL094W、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YLL012W及びS.セレビシエ(S. cerevisiae)YLR020C並びにカンジダ属(Candida)CaO19.2050、カンジダ属(Candida)CaO19.9598、カンジダ属(Candida)CTRG_01138、カンジダ属(Candida)W5Q_03398、カンジダ属(Candida)CTRG_00057、カンジダ属(Candida)CaO19.5426、カンジダ属(Candida)CaO19.12881、カンジダ属(Candida)CTRG_06185、カンジダ属(Candida)CaO19.4864、カンジダ属(Candida)CaO19.12328、カンジダ属(Candida)CTRG_03360、カンジダ属(Candida)CaO19.6501、カンジダ属(Candida)CaO19.13854、カンジダ属(Candida)CTRG_05049、カンジダ属(Candida)CaO19.1887、カンジダ属(Candida)CaO19.9443、カンジダ属(Candida)CTRG_01683及びカンジダ属(Candida)CTRG_04630からなる群から選択される1つ以上の内因性アシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾を微生物中に導入することを更に含む。
[0394] 一部の実施形態では、本方法は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E25982g(ALK1)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F01320g(ALK2)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E23474g(ALK3)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B13816g(ALK4)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B13838g(ALK5)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B01848g(ALK6)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0A15488g(ALK7)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C12122g(ALK8)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B06248g(ALK9)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B20702g(ALK10)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C10054g(ALK11)及びY.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0A20130g(ALK12)からなる群から選択される1つ以上の内因性シトクロムP450モノオキシゲナーゼの活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾を微生物中に導入することを更に含む。
[0395] 一部の実施形態では、本方法は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルデヒド形成脂肪アシル-CoAレダクターゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含む。一部の好ましい実施形態では、アルデヒド形成脂肪アシル-CoAレダクターゼは、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)A0A1C4HN78、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)N9DA85、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)R8XW24、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)A0A1A0GGM5、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)A0A117N158及びノストック・プンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)YP_001865324からなる群から選択される。一部の実施形態では、本方法は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含む。一部の好ましい実施形態では、≦C18脂肪アルデヒドは、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される。
[0396] 一部の実施形態では、本方法は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含む。一部の実施形態では、アセチルトランスフェラーゼは、表5dから選択される。一部の好ましい実施形態では、≦C18脂肪アセテートは、E5-10:Ac、Z7-12:Ac、Z8-12:Ac、Z9-12:Ac、E7Z9-12:Ac、Z9-14:Ac、Z9E12-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac及びZ11-16:Acからなる群から選択される。
[0397] 一部の実施形態では、本方法は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有する、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ及びアルデヒド形成脂肪アシル-CoAレダクターゼから選択される酵素をコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子;及び一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含む。一部の好ましい実施形態では、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルデヒド及び≦C18脂肪アセテートは、E5-10:Ac、Z7-12:Ac、Z8-12:Ac、Z9-12:Ac、E7Z9-12:Ac、Z9-14:Ac、Z9E12-14:Ac、E11-14:Ac、Z11-14:Ac、Z11-16:Ac、Z9-16:Ac、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される。
[0398] 一部の実施形態では、本開示は、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコール、脂肪アルデヒド又は脂肪アセテートを生成する方法であって、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコール、脂肪アルデヒド又は脂肪アセテートの生成に適正な炭素源を供給する原料を含む培養培地で本明細書に記載される組換え微生物を培養することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコール、脂肪アルデヒド又は脂肪アセテートを回収するステップを更に含む。更なる実施形態では、回収するステップは、蒸留を含む。更に別の実施形態では、回収するステップは、膜に基づく分離を含む。
[0399] 一部の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールは、化学的方法を用いて対応する≦C18脂肪アルデヒドに変換される。更なる実施形態では、化学的方法は、TEMPO-ブリーチ、TEMPO-銅-空気、TEMPO-PhI(OAc)2、スワーン酸化及び貴金属-空気から選択される。一部の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールは、化学的方法を用いて対応する≦C18脂肪アセテートに変換される。更なる実施形態では、化学的方法は、4-N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)又は酢酸ナトリウムの存在下において、塩化アセチル、無水酢酸、塩化ブチリル、無水酪酸、塩化プロパノイル及びプロピオン酸無水物からなる群から選択される化学剤を利用して、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールを、対応する≦C18脂肪アセテートにエステル化する。
[0400] 別の態様では、本開示は、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを生成する能力を有するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物に改変する方法を提供し、この組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、(a)飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する、配列番号54、60、62、78、79、80、95、97、99、101、103及び105からなる群から選択される脂肪アシルデサチュラーゼに対する95%の配列同一性を有する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの核酸分子;及び(b)(a)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールへの変換を触媒する、配列番号41~48、57、73、75及び77からなる群から選択される脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼに対する95%の配列同一性を有する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの核酸分子を含む。
[0401] 一部の実施形態では、本方法は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの生成のための生合成経路と競合する経路における反応を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾をヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中に導入することを更に含む。一部の好ましい実施形態では、本組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、以下:(i)YALI0E32835g(POX1)、YALI0F10857g(POX2)、YALI0D24750g(POX3)、YALI0E27654g(POX4)、YALI0C23859g(POX5)、YALI0E06567g(POX6)からなる群から選択される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ;(ii)YALI0F09603g(FADH)、YALI0D25630g(ADH1)、YALI0E17787g(ADH2)、YALI0A16379g(ADH3)、YALI0E15818g(ADH4)、YALI0D02167g(ADH5)、YALI0A15147g(ADH6)、YALI0E07766g(ADH7)からなる群から選択される1つ以上の(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ;(iii)(脂肪)アルコールオキシダーゼYALI0B14014g(FAO1);(iv)YALI0E25982g(ALK1)、YALI0F01320g(ALK2)、YALI0E23474g(ALK3)、YALI0B13816g(ALK4)、YALI0B13838g(ALK5)、YALI0B01848g(ALK6)、YALI0A15488g(ALK7)、(YALI0C12122g(ALK8)、YALI0B06248g(ALK9)、YALI0B20702g(ALK10)、YALI0C10054g(ALK11)及びYALI0A20130g(Alk12)からなる群から選択される1つ以上のシトクロムP450酵素;及び(v)YALI0E32791g(DGA1)及びYALI0D07986g(DGA2)からなる群から選択される1つ以上のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼから選択される1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む。他の好ましい実施形態では、本組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、以下:(i)YALI0E32835g(POX1)、YALI0F10857g(POX2)、YALI0D24750g(POX3)、YALI0E27654g(POX4)、YALI0C23859g(POX5)、YALI0E06567g(POX6)からなる群から選択される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ;(ii)YALI0F09603g(FADH)、YALI0D25630g(ADH1)、YALI0E17787g(ADH2)、YALI0A16379g(ADH3)、YALI0E15818g(ADH4)、YALI0D02167g(ADH5)、YALI0A15147g(ADH6)、YALI0E07766g(ADH7)からなる群から選択される1つ以上の(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ;(iii)(脂肪)アルコールオキシダーゼYALI0B14014g(FAO1);(iv)YALI0E25982g(ALK1)、YALI0F01320g(ALK2)、YALI0E23474g(ALK3)、YALI0B13816g(ALK4)、YALI0B13838g(ALK5)、YALI0B01848g(ALK6)、YALI0A15488g(ALK7)、(YALI0C12122g(ALK8)、YALI0B06248g(ALK9)、YALI0B20702g(ALK10)、YALI0C10054g(ALK11)及びYALI0A20130g(Alk12)からなる群から選択される1つ以上のシトクロムP450酵素;及び(v)YALI0E32791g(DGA1)及びYALI0D07986g(DGA2)からなる群から選択される1つ以上のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼから選択される1つ以上の内因性酵素の欠失を含む。
[0402] 一部の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、Z9-14:アシル-CoA、Z11-14:アシル-CoA、E11-14:アシル-CoA、Z9-16:アシル-CoA及びZ11-16:アシル-CoAから選択される一不飽和又は多価不飽和中間体への飽和脂肪アシル-CoAの変換を触媒する。他の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールは、Z9-14:OH、Z11-14:OH、E11-14:OH、Z9-16:OH、Z11-16:OH、Z11Z13-16:OH及びZ13-18:OHからなる群から選択される。
[0403] 一部の実施形態では、本方法は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子をヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中に導入することを更に含む。一部の実施形態では、アルコールデヒドロゲナーゼは、表3aから選択される。一部の実施形態では、C6~C24脂肪アルデヒドは、Z9-14:Ald、Z11-14:Ald、E11-14:Ald、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される。
[0404] 一部の実施形態では、本方法は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子をヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中に導入することを更に含む。一部の実施形態では、アセチルトランスフェラーゼは、表5dから選択される。一部の実施形態では、C6~C24脂肪アセテートは、Z9-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac、Z11-16:Ac、Z11Z13-16:Ac及びZ13-18:Acからなる群から選択される。
[0405] 一部の実施形態では、本方法は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子;及び一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子をヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中に導入することを更に含む。一部の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルデヒド及びC6~C24脂肪アセテートは、Z9-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac、Z11-16:Ac、Z11Z13-16:Ac、Z13-18:Ac、Z9-14:Ald、Z11-14:Ald、E11-14:Ald、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される。
[0406] 一部の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、配列番号64、65、66及び67からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む脂肪アシルデサチュラーゼを含まない。他の実施形態では、脂肪アシルデサチュラーゼは、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、カブラヤガ(Agrotis segetum)又はイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)由来のデサチュラーゼから選択される脂肪アシルデサチュラーゼを含まない。
[0407] 一部の実施形態では、本開示は、飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド又は脂肪アセテートを生成する方法であって、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド又は脂肪アセテートの生成に適正な炭素源を供給する原料を含む培養培地で本明細書に記載される組換え微生物を培養することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド又は脂肪アセテートを回収するステップを更に含む。更なる実施形態では、回収するステップは、蒸留を含む。更に別の実施形態では、回収するステップは、膜に基づく分離を含む。
[0408] 一部の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールは、化学的方法を用いて対応するC6~C24脂肪アルデヒドに変換される。更なる実施形態では、化学的方法は、TEMPO-ブリーチ、TEMPO-銅-空気、TEMPO-PhI(OAc)2、スワーン酸化及び貴金属-空気から選択される。一部の実施形態では、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールは、化学的方法を用いて対応するC6~C24脂肪アセテートに変換される。更なる実施形態では、化学的方法は、4-N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)又は酢酸ナトリウムの存在下において、塩化アセチル、無水酢酸、塩化ブチリル、無水酪酸、塩化プロパノイル及びプロピオン酸無水物からなる群から選択される化学剤を利用して、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを対応するC6~C24脂肪アセテートにエステル化する。
酵素改変
組換え微生物の酵素は、基質の生成物への変換の1つ以上の側面が向上するように改変することができる。本開示の方法での使用向けに更に改変し得る酵素の非限定的な例としては、デサチュラーゼ(例えば、脂肪アシル-CoAデサチュラーゼ又は脂肪アシル-ACPデサチュラーゼ)、脂肪アルコールを形成する脂肪アシルレダクターゼ、アシル-ACPシンテターゼ、脂肪酸シンテターゼ、脂肪酸シンターゼ複合体、アセチルトランスフェラーゼ、デヒドロゲナーゼ、及びアルコールオキシダーゼ、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの酵素は、触媒活性の向上、選択性の向上、安定性の向上、様々な発酵条件(温度、pH等)に対する耐性の向上、又は様々な代謝基質、生成物、副生成物、中間体等に対する耐性の向上のため改変することができる。
デサチュラーゼ酵素は、不飽和基質の不飽和化における触媒活性の向上、炭化水素選択性の向上、E型生成物と比べたZ型生成物、又はZ型生成物と比べたE型生成物の選択性の向上のため改変することができる。例えば、Z9脂肪アシルデサチュラーゼは、飽和脂肪アシル-CoAの、対応する不飽和脂肪アシル-CoAへの基質の生成物への変換における収率が向上するように、及びそれに加えて又は代えて、対応するZ-9脂肪アシル-CoAの生成のための9位における不飽和化の選択性が向上するように改変することができる。更なる非限定的な例において、脂肪アシル-ACPシンテターゼはACPライゲーション活性の向上のため改変することができ;脂肪酸シンターゼ複合体酵素は、脂肪酸基質の伸長の触媒活性の向上のため改変することができ;脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼは、脂肪アシル-CoAの、対応する脂肪アルコールへの還元における触媒活性の向上のため改変することができ;脂肪アルデヒド形成脂肪アシルレダクターゼは、脂肪アシル-ACPの、対応する脂肪アルデヒドへの還元における触媒活性の向上のため改変することができ;デヒドロゲナーゼは、脂肪アシル-ACPの、対応する脂肪アルコールへの変換における触媒活性の向上のため改変することができ;アルコールオキシダーゼは、脂肪アルコールの、対応する脂肪アルデヒドへの変換における触媒活性の向上のため改変することができ;及びアセチルトランスフェラーゼは、脂肪アルコールの、対応する脂肪アセテートへの変換における触媒活性の向上のため改変することができる。
用語「触媒活性の向上」は、特定の酵素活性に関連して本明細書で使用されるとき、非改変デサチュラーゼ(例えば脂肪アシル-CoAデサチュラーゼ又は脂肪アシル-ACPデサチュラーゼ)、脂肪アルコール又はアルデヒド形成脂肪アシルレダクターゼ、アシル-ACPシンテターゼ、脂肪酸シンテターゼ、脂肪酸シンターゼ複合体、アシルトランスフェラーゼ、デヒドロゲナーゼ、又はアルコールオキシダーゼ酵素など、同等の非改変酵素と比べて計測したレベルよりも高いレベルの酵素活性を指す。例えば、特異的酵素の過剰発現は、その酵素に関する細胞の活性レベルの増加につながり得る。デサチュラーゼ(例えば脂肪アシル-CoAデサチュラーゼ又は脂肪アシル-ACPデサチュラーゼ)、脂肪アルコール又はアルデヒド形成脂肪アシルレダクターゼ、アシル-ACPシンテターゼ、脂肪酸シンテターゼ、脂肪酸シンターゼ複合体、アシルトランスフェラーゼ、デヒドロゲナーゼ、又はアルコールオキシダーゼ酵素に突然変異を導入して、触媒活性が向上した改変酵素を得ることができる。酵素活性を増加させる方法は当業者に公知である。かかる技法には、プラスミドコピー数を増加させること及び/又はより強力なプロモーターの使用及び/又は活性化リボスイッチの使用によって酵素の発現を増加させること、突然変異の導入によって酵素の負の調節を軽減すること、特異的突然変異の導入によって比活性を増加させ及び/又は基質に対するKMを低下させることによるか、又は定向進化によることが含まれ得る。例えば、Methods in Molecular Biology (vol. 231), ed. Arnold and Georgiou, Humana Press (2003)を参照されたい。
代謝改変-経路フラックスを増加させるための酵素過剰発現及び遺伝子欠失/下方制御
本明細書に記載される様々な実施形態において、本明細書に記載される生合成経路に関与する組換え微生物の外因性及び内因性酵素は過剰発現させてもよい。
用語「過剰発現した」又は「過剰発現」は、基礎レベルのmRNAを発現する又は基礎レベルのタンパク質を有する同様の対応する非修飾細胞と比較したときの、タンパク質をコードするmRNAのレベルの上昇(例えば異常レベル)、及び/又は細胞中のタンパク質のレベルの上昇を指す。詳細な実施形態では、mRNA又はタンパク質は、遺伝子mRNA、タンパク質、及び/又は活性の増加を呈するように改変された微生物において少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、10倍、12倍、15倍又はそれ以上過剰発現し得る。
一部の実施形態では、本開示の組換え微生物は、基質脂肪酸を合成する酵素的能力を含む宿主から作成される。この具体的な実施形態では、脂肪酸の合成又は蓄積を増加させることにより、例えば、改変された脂肪アルコール生成経路に利用可能な脂肪酸の量を増加させることが有用であり得る。
一部の実施形態では、脂肪アルコール、アルデヒド、又はアセテート生成経路に関与する内因性又は外因性酵素の発現を増加させて脂肪酸から脂肪アルコール、アルデヒド、又はアセテートへのフラックスを増加させ、それにより脂肪アルコール、アルデヒド、又はアセテートの合成又は蓄積の増加を生じさせることが有用であり得る。
一部の実施形態では、内因性又は外因性酵素の発現を増加させて補酵素の細胞内レベルを増加させることが有用であり得る。一実施形態では、補酵素はNADHである。別の実施形態では、補酵素はNADPHである。一実施形態では、ペントースリン酸経路におけるタンパク質の発現が増加することによりNADPHの細胞内レベルが増加する。ペントースリン酸経路は、還元当量の供給に重要な異化経路であり、且つ生合成反応に重要な同化経路である。一実施形態では、グルコース-6-ホスフェートを6-ホスホD-グルコノ-1,5-ラクトンに変換するグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼを過剰発現させる。一部の実施形態では、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼは酵母由来のZWF1である。別の実施形態では、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のZWF1(YNL241C)である。一実施形態では、D-グルコピラノース-6-ホスフェートを6-ホスホD-グルコノ-1,5-ラクトンに変換するグルコース-6-リン酸-1-デヒドロゲナーゼを過剰発現させる。別の実施形態では、グルコース-6-リン酸-1-デヒドロゲナーゼは細菌由来のzwfである。特定の実施形態では、グルコース-6-リン酸-1-デヒドロゲナーゼは大腸菌(E. coli)由来のzwf(NP_416366)である。一実施形態では、6-ホスホD-グルコノ-1,5-ラクトンをD-グルコン酸6-ホスフェートに変換する6-ホスホグルコノラクトナーゼを過剰発現させる。一部の実施形態では、6-ホスホグルコノラクトナーゼは酵母のSOL3である。特定の実施形態では、6-ホスホグルコノラクトナーゼはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のSOL3(NP_012033)である。一部の実施形態では、6-ホスホグルコノラクトナーゼは酵母のSOL4である。特定の実施形態では、6-ホスホグルコノラクトナーゼはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のSOL4(NP_011764)である。一部の実施形態では、6-ホスホグルコノラクトナーゼは細菌のpglである。特定の実施形態では、6-ホスホグルコノラクトナーゼは大腸菌(E. coli)のpgl(NP_415288)である。一実施形態では、D-グルコン酸6-ホスフェートをD-リブロース5-ホスフェートに変換する6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼを過剰発現させる。一部の実施形態では、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼは酵母由来のGND1である。特定の実施形態では、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のGND1(YHR183W)である。一部の実施形態では、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼは酵母由来のGND2である。特定の実施形態では、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のGND2(YGR256W)である。一部の実施形態では、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼは細菌由来のgndである。特定の実施形態では、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼは大腸菌(E. coli)由来のgnd(NP_416533)である。一実施形態では、D-グリセルアルデヒド3-ホスフェート及びD-セドヘプツロース7-ホスフェートをβ-D-フルクトフラノース6-ホスフェート及びD-エリトロース4-ホスフェートに相互変換するトランスアルドラーゼを過剰発現させる。一部の実施形態では、トランスアルドラーゼは酵母のTAL1である。特定の実施形態では、トランスアルドラーゼはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のTAL1(NP_013458)である。一部の実施形態では、トランスアルドラーゼは酵母のNQM1である。特定の実施形態では、トランスアルドラーゼはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のNQM1(NP_011557)である。一部の実施形態では、トランスアルドラーゼは細菌のtalである。特定の実施形態では、トランスアルドラーゼは大腸菌(E. coli)のtalB(NP_414549)である。特定の実施形態では、トランスアルドラーゼは大腸菌(E. coli)のtalA(NP_416959)である。一実施形態では、D-エリトロース4-ホスフェート及びD-キシルロース5-ホスフェートをβ-D-フルクトフラノース6-ホスフェート及びD-グリセルアルデヒド3-ホスフェートに相互変換する及び/又はD-セドヘプツロース7-ホスフェート及びD-グリセルアルデヒド3-ホスフェートをD-リボース5-ホスフェート及びD-キシルロース5-ホスフェートに相互変換するトランスケトラーゼを過剰発現させる。一部の実施形態では、トランスケトラーゼは酵母のTKL1である。特定の実施形態では、トランスケトラーゼはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のTKL1(NP_015399)である。一部の実施形態では、トランスケトラーゼは酵母のTKL2である。一部の実施形態では、トランスケトラーゼはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のTKL2(NP_009675)である。一部の実施形態では、トランスケトラーゼは細菌のtktである。特定の実施形態では、トランスケトラーゼは大腸菌(E. coli)のtktA(YP_026188)である。特定の実施形態では、トランスケトラーゼは大腸菌(E. coli)のtktB(NP_416960)である。一実施形態では、D-リボース5-ホスフェート及びD-リブロース5-ホスフェートを相互変換するリボース-5-リン酸ケトールイソメラーゼを過剰発現させる。一部の実施形態では、リボース-5-リン酸ケトールイソメラーゼは酵母のRKI1である。特定の実施形態では、リボース-5-リン酸ケトールイソメラーゼはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のRKI1(NP_014738)である。一部の実施形態では、リボース-5-リン酸イソメラーゼは細菌のrpiである。特定の実施形態では、リボース-5-リン酸イソメラーゼは大腸菌(E. coli)のrpiA(NP_417389)である。特定の実施形態では、リボース-5-リン酸イソメラーゼは大腸菌(E. coli)のrpiB(NP_418514)である。一実施形態では、D-リブロース5-ホスフェート及びD-キシルロース5-ホスフェートを相互変換するD-リブロース-5-リン酸3-エピメラーゼを過剰発現させる。一部の実施形態では、D-リブロース-5-リン酸3-エピメラーゼは酵母のRPE1である。特定の実施形態では、D-リブロース-5-リン酸3-エピメラーゼはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のRPE1(NP_012414)である。一部の実施形態では、D-リブロース-5-リン酸3-エピメラーゼは細菌のrpeである。特定の実施形態では、D-リブロース-5-リン酸3-エピメラーゼは大腸菌(E. coli)のrpe(NP_417845)である。
一実施形態では、NADP+依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼの発現を増加させて補酵素の細胞内レベルを増加させる。一実施形態では、NADP+依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼはD-トレオ-イソシトレートを2-オキソグルタレートに酸化させると同時にNADPHを生じる。別の実施形態では、NADP+依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼはD-トレオ-イソシトレートを2-オキサロスクシネートに酸化すると同時にNADPHを生じる。一部の実施形態では、NADP+依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼは酵母由来のIDPである。特定の実施形態では、NADP+依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のIDP2(YLR174W)である。一部の実施形態では、NADP+依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼは細菌由来のicdである。特定の実施形態では、NADP+依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼは大腸菌(E. coli)由来のicd(NP_415654)である。
一部の実施形態では、マレートをピルベートに脱炭酸すると同時にNADH又はNADPHを生じるリンゴ酸酵素の発現を増加させて補酵素の細胞内レベルを増加させる。一実施形態では、リンゴ酸酵素はNAD+依存性である。別の実施形態では、リンゴ酸酵素はNADP+依存性である。一実施形態では、リンゴ酸酵素は細菌由来のNAD+依存性リンゴ酸デヒドロゲナーゼである。一部の実施形態では、NAD+依存性リンゴ酸デヒドロゲナーゼは大腸菌(E. coli)由来のmaeA(NP_415996)である。一部の実施形態では、NAD+依存性リンゴ酸デヒドロゲナーゼはカセイ菌(Lactobacillus casei)由来のmaeE(CAQ68119)である。別の実施形態では、リンゴ酸酵素は酵母由来のミトコンドリアNAD+依存性リンゴ酸デヒドロゲナーゼである。一部の実施形態では、NAD+依存性リンゴ酸デヒドロゲナーゼはS.セレビシエ(S. cerevisiae)由来のMAE1(YKL029C)である。別の実施形態では、リンゴ酸酵素は寄生線虫由来のミトコンドリアNAD+依存性リンゴ酸デヒドロゲナーゼである。一部の実施形態では、NAD+依存性リンゴ酸デヒドロゲナーゼはブタ回虫(Ascaris suum)由来のM81055である。一実施形態では、リンゴ酸酵素は細菌由来のNADP+依存性リンゴ酸デヒドロゲナーゼである。一部の実施形態では、NADP+依存性リンゴ酸デヒドロゲナーゼは大腸菌(E. coli)由来のmaeB(NP_416958)である。一実施形態では、リンゴ酸酵素はトウモロコシ由来のNADP+依存性リンゴ酸デヒドロゲナーゼである。一部の実施形態では、NADP+依存性リンゴ酸デヒドロゲナーゼはトウモロコシ(Zea mays)由来のme1である。
一部の実施形態では、アルデヒドをカルボン酸に酸化させると同時にNADH又はNADPHを生じるアルデヒドデヒドロゲナーゼの発現を増加させて補酵素の細胞内レベルを増加させる。一実施形態では、アルデヒドデヒドロゲナーゼはNAD+依存性である。別の実施形態では、アルデヒドデヒドロゲナーゼはNADP+依存性である。一実施形態では、アルデヒドデヒドロゲナーゼは細菌由来のNAD+依存性アルデヒドデヒドロゲナーゼである。一部の実施形態では、NAD+依存性アルデヒドデヒドロゲナーゼは大腸菌(E. coli)由来のaldA(NP_415933)である。別の実施形態では、アルデヒドデヒドロゲナーゼは酵母由来の細胞質NADP+依存性アルデヒドデヒドロゲナーゼである。一部の実施形態では、NADP+依存性アルデヒドデヒドロゲナーゼはS.セレビシエ(S. cerevisiae)由来のALD6(YPL061W)である。別の実施形態では、アルデヒドデヒドロゲナーゼは細菌由来の細胞質NADP+依存性アルデヒドデヒドロゲナーゼである。一部の実施形態では、NADP+依存性アルデヒドデヒドロゲナーゼは大腸菌(E. coli)由来のaldB(NP_418045)である。
一実施形態では、補酵素の細胞内レベルを増加させるための酵素の過剰発現には、補基質の補充と酵素の過剰発現との併用が含まれる。一実施形態では、酵素の過剰発現をそのの補基質の補充と併用すると、生化学的経路を通じたフラックスが増加する。一実施形態では、NAD+又はNADP+依存性アルコールデヒドロゲナーゼを補基質と共に発現させる。特定の実施形態では、アルコールデヒドロゲナーゼをイソプロパノール補基質と共に発現させる。一実施形態では、NAD+又はNADP+依存性グルコースデヒドロゲナーゼを補基質と共に発現させる。特定の実施形態では、グルコースデヒドロゲナーゼをグルコース補基質と共に発現させる。
一実施形態では、トランスヒドロゲナーゼの発現を増加させてNADH及びNADPHを相互変換する。一部の実施形態では、トランスヒドロゲナーゼはピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼである。一部の実施形態では、ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼは細菌由来である。特定の実施形態では、ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼは大腸菌(E. coli)由来のpntAB(βサブユニット:NP_416119;αサブユニット:NP_416120)である。一部の実施形態では、ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼはヒト由来である。特定の実施形態では、ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼはヒト(Homo sapiens)由来のNNT(NP_036475)である。特定の実施形態では、ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼはジャガイモ(Solanum tuberosum)由来である。特定の実施形態では、ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼはホウレンソウ(Spinacea oleracea)由来である。
一部の実施形態では、内因性又は外因性タンパク質の発現を増加させて小胞体(ER)膜増殖を誘導することが有用であり得る。一部の実施形態では、小胞体膜増殖を誘導して脂肪アルコール、アルデヒド、又はアセテートの生成を向上させることができる。一実施形態では、ERに面する1つ以上のループを含有する不活性化HMG-CoAレダクターゼ(ヒドロキシメチルグルタリル-CoAレダクターゼ)の発現を増加させる。特定の実施形態では、1つ以上のループは不活性化HMG-CoAレダクターゼの膜貫通ドメイン6~7の間にある。一部の実施形態では、不活性化HMG-CoAレダクターゼは、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)YALI0E04807pの最初の500アミノ酸又は最初の500アミノ酸の部分配列をコードする不活性化タンパク質又はキメラを含む。他の実施形態では、不活性化HMG-CoAレダクターゼは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のHMG1(NP_013636.1)の最初の522アミノ酸又は最初の522アミノ酸の部分配列をコードする不活性化タンパク質又はキメラを含む。他の実施形態では、不活性化HMG-CoAレダクターゼは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のHMG2(NP_013555.1)の最初の522アミノ酸又は最初の522アミノ酸の部分配列をコードする不活性化タンパク質又はキメラを含む。一部の実施形態では、1つ以上の調節タンパク質の発現を増加させて、脂肪アルコール、アルデヒド、又はアセテートの生成を向上させる。特定の実施形態では、調節タンパク質はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のHAC1転写因子(NP_116622.1)を含む。特定の実施形態では、調節タンパク質はヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)由来のHAC1転写因子(YALI0B12716p)を含む。
合成又は蓄積の増加は、例えば、上述の脂肪アルコール経路酵素の1つ以上をコードする核酸を過剰発現させることによって達成し得る。1つ又は複数の脂肪アルコール経路酵素の過剰発現は、例えば、1つ又は複数の内因性遺伝子の発現増加によるか、又は1つ又は複数の外来遺伝子の発現、又はその発現の増加によって生じさせることができる。従って、天然に存在する生物は、脂肪アルコール生合成経路酵素をコードする1つ以上の核酸分子の過剰発現によって非天然の脂肪アルコール生成微生物が生じるように容易に修飾することができる。加えて、脂肪アルコール生合成経路中の酵素の活性の増加をもたらす内因性遺伝子の突然変異誘発により、天然に存在しない生物を生じさせることができる。
本開示を携えた当業者であれば、上記に例示したとおりの当該技術分野において周知の方法を用いて脂肪アルコール経路酵素をコードする少なくとも1つの核酸を脂肪アルコールの生成に十分な量で外因的に発現するように本開示の組換え微生物を構築することができ、本明細書に記載される組換え微生物を容易に構築することが可能であろう。
天然に存在しない脂肪アルコール生成宿主を構築し、及びその発現レベルを試験する方法は、例えば、当該技術分野において周知の組換え及び検出方法によって実施することができる。かかる方法については、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York (2001);Ausubo et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Md. (1999)を参照することができる。
当該技術分野において公知の種々の機構を用いて外因性又は内因性遺伝子を発現、又は過剰発現させることができる。例えば、宿主生物で機能性の発現制御配列に作動可能に連結された、本明細書に例示されるとおりの1つ以上の脂肪アルコール生合成経路酵素コード核酸を有する1つ又は複数の発現ベクターを構築することができる。本発明の微生物宿主生物における使用に適用可能な発現ベクターとしては、宿主染色体への安定組込みのため操作可能なベクター及び選択配列又はマーカーを含め、例えば、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、エピソーム及び人工染色体が挙げられる。
例えば、抗生物質又は毒素耐性を提供し、栄養要求欠損を補完し、又は培養培地にない必須栄養素を供給する選択可能なマーカー遺伝子も含まれ得る。一部の実施形態では、本開示は、bla(細菌ampR耐性マーカー)の使用を教示する。一部の実施形態において、本開示は、URA3マーカーの使用を教示する。いくつかの態様において、本開示は、スクロース培地中での発酵を可能にするSUC2遺伝子を含む微生物を教示する。
発現制御配列には、構成的及び誘導性プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどが含まれてもよく、これらはその技術分野において周知である。2つ以上の外因性コード核酸を共発現させる場合、両方の核酸を例えば単一の発現ベクターに挿入しても、又は別個の発現ベクターに挿入してもよい。単一ベクター発現については、コード核酸を1つの共通の発現制御配列に作動可能に連結してもよく、又は1つの誘導性プロモーター及び1つの構成的プロモーターなど、異なる発現制御配列に連結してもよい。代謝又は合成経路に関与する外来性核酸配列の形質転換は、当該技術分野において周知の方法を用いて確認することができる。
発現制御配列は当該技術分野において公知であり、例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写ターミネーター、配列内リボソーム進入部位(IRES)など、宿主細胞におけるポリヌクレオチド配列の発現をもたらすものが含まれる。発現制御配列は、転写に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用する(Maniatis et al., Science, 236: 1237-1245 (1987))。例示的発現制御配列については、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, Vol. 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されている。
様々な実施形態において、発現制御配列はポリヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。「作動可能に連結された」とは、適切な分子(例えば転写活性化因子タンパク質)がその発現制御配列に結合したときに遺伝子発現を可能にするような方法でポリヌクレオチド配列と発現制御配列とが結び付いていることが意味される。作動可能に連結されたプロモーターは、転写及び翻訳の向きに見て選択のポリヌクレオチド配列の上流に位置する。作動可能に連結されたエンハンサーは選択のポリヌクレオチドの上流、その範囲内、又はその下流に位置し得る。
一部の実施形態では、本組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコール、アルデヒド、又はアセテートを生成する生合成経路と競合する経路内の反応を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。
一部の実施形態では、本組換え微生物は、脂肪酸のω-ヒドロキシ脂肪酸への変換を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。一部のかかる実施形態では、脂肪酸のω-ヒドロキシ脂肪酸への変換を触媒する酵素は、XP_504406、XP_504857、XP_504311、XP_500855、XP_500856、XP_500402、XP_500097、XP_501748、XP_500560、XP_501148、XP_501667、XP_500273、BAA02041、CAA39366、CAA39367、BAA02210、BAA02211、BAA02212、BAA02213、BAA02214、AAO73952、AAO73953、AAO73954、AAO73955、AAO73956、AAO73958、AAO73959、AAO73960、AAO73961、AAO73957、XP_002546278、BAM49649、AAB80867、AAB17462、ADL27534、AAU24352、AAA87602、CAA34612、ABM17701、AAA25760、CAB51047、AAC82967、WP_011027348、又はこれらのホモログからなる群から選択される。
一部の実施形態では、組換え微生物を操作して、ヤロウイア・リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E25982g(ALK1)、Y.リポリティカ YALI0F01320g (ALK2)、Y.リポリティカ YALI0E23474g(ALK3)、Y.リポリティカ YALI0B13816g(ALK4)、Y.リポリティカ YALI0B13838g(ALK5)、Y.リポリティカ YALI0B01848g(ALK6)、Y.リポリティカ YALI0A15488g(ALK7)、Y.リポリティカ YALI0C12122g(ALK8)、Y.リポリティカ YALI0B06248g(ALK9)、Y.リポリティカ YALI0B20702g(ALK10)、Y.リポリティカ YALI0C10054g(ALK11)及びY.リポリティカ YALI0A20130g(ALK12)からなる群から選択される1つ以上の内因性シトクロムP450モノオキシゲナーゼの活性を欠失、破壊、変異、及び/又は減少させる。
他の実施形態では、本組換え微生物は、脂肪アシル-CoAのα,β-エノイル-CoAへの変換を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。一部のかかる実施形態では、脂肪アシル-CoAのα,β-エノイル-CoAへの変換を触媒する酵素は、CAA04659、CAA04660、CAA04661、CAA04662、CAA04663、CAG79214、AAA34322、AAA34361、AAA34363、CAA29901、BAA04761、AAA34891、AAB08643、CAB15271、BAN55749、CAC44516、ADK16968、AEI37634、WP_000973047、WP_025433422、WP_035184107、WP_026484842、CEL80920、WP_026818657、WP_005293707、WP_005883960、又はこれらのホモログからなる群から選択される。
[0435] 一部の実施形態では、アシル-CoAオキシダーゼをコードする微生物宿主の1つ以上の遺伝子は、所望の鎖長を超える所望の脂肪アシル-CoAの切断を除去又は低減するように欠失又は下方制御される。このような欠失又は下方制御標的としては、限定はされないが、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX1(YALI0E32835g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX2(YALI0F10857g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX3(YALI0D24750g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX4(YALI0E27654g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX5(YALI0C23859g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX6(YALI0E06567g);S.セレビシエ(S. cerevisiae)POX1(YGL205W);カンジダ属(Candida)POX2(CaO19.1655、CaO19.9224、CTRG_02374、M18259)、カンジダ属(Candida)POX4(CaO19.1652、CaO19.9221、CTRG_02377、M12160)及びカンジダ属(Candida)POX5(CaO19.5723、CaO19.13146、CTRG_02721、M12161)が挙げられる。
一部の実施形態では、本組換え微生物は、ペルオキシソームバイオジェネシスに関与する1つ以上のタンパク質の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。かかる実施形態では、ペルオキシソームバイオジェネシスに関与する1つ以上のタンパク質は、XP_505754、XP_501986、XP_501311、XP_504845、XP_503326、XP_504029、XP_002549868、XP_002547156、XP_002545227、XP_002547350、XP_002546990、EIW11539、EIW08094、EIW11472、EIW09743、EIW0828、又はこれらのホモログからなる群から選択される。
一部の実施形態では、本組換え微生物は、1つ以上の不飽和脂肪アシル-CoA中間体の生合成経路と競合する経路内の反応を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。一実施形態では、1つ以上の内因性酵素は1つ以上のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼを含む。組換え酵母微生物に関連して、組換え酵母微生物は、YALI0E32769g、YALI0D07986g及びCTRG_06209、又はこれらのホモログからなる群から選択される1つ以上のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼの活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように改変される。別の実施形態では、1つ以上の内因性酵素は1つ以上のグリセロールリン脂質アシルトランスフェラーゼを含む。組換え酵母微生物に関連して、組換え酵母微生物は、YALI0E16797g及びCTG_04390、又はこれらのホモログからなる群から選択される1つ以上のグリセロールリン脂質アシルトランスフェラーゼの活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように改変される。別の実施形態では、1つ以上の内因性酵素は1つ以上のアシル-CoA/ステロールアシルトランスフェラーゼを含む。組換え酵母微生物に関連して、組換え酵母微生物は、YALI0F06578g、CTRG_01764及びCTRG_01765、又はこれらのホモログからなる群から選択される1つ以上のアシル-CoA/ステロールアシルトランスフェラーゼの活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように改変される。
[0438] 一部の実施形態では、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)、グリセロールリン脂質アシルトランスフェラーゼ(GPLAT)及び/又はジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)をコードする微生物宿主の1つ以上の遺伝子が欠失又は下方制御され、短鎖脂肪アシル-CoAを保持することを選好する1つ以上のGPAT、LPAAT、GPLAT又はDGATで置換される。このような欠失又は下方制御標的としては、限定はされないが、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C00209g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E18964g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F19514g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14014g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E16797g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32769g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D07986g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YBL011w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YDL052c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR175C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YPR139C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YNR008w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR245c、カンジダ属(Candida)I503_02577、カンジダ属(Candida)CTRG_02630、カンジダ属(Candida)CaO19.250、カンジダ属(Candida)CaO19.7881、カンジダ属(Candida)CTRG_02437、カンジダ属(Candida)CaO19.1881、カンジダ属(Candida)CaO19.9437、カンジダ属(Candida)CTRG_01687、カンジダ属(Candida)CaO19.1043、カンジダ属(Candida)CaO19.8645、カンジダ属(Candida)CTRG_04750、カンジダ属(Candida)CaO19.13439、カンジダ属(Candida)CTRG_04390、カンジダ属(Candida)CaO19.6941、カンジダ属(Candida)CaO19.14203及びカンジダ属(Candida)CTRG_06209が挙げられる。
[0439] 一部の好ましい実施形態では、アシルグリセロールリパーゼ(モノ-、ジ-又はトリアシルグリセロールリパーゼ)及びステロールエステルエステラーゼをコードする微生物宿主の1つ以上の遺伝子が欠失又は下方制御され、長鎖アシルグリセロール基質を選好する1つ以上のアシルグリセロールリパーゼで置換される。一部の実施形態では、欠失又は下方制御される1つ以上の内因性アシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32035g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D17534g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F10010g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14520g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E00528g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL140w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YMR313c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKR089c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR081c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL094W、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YLL012W、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YLR020C、カンジダ属(Candida)CaO19.2050、カンジダ属(Candida)CaO19.9598、カンジダ属(Candida)CTRG_01138、カンジダ属(Candida)W5Q_03398、カンジダ属(Candida)CTRG_00057、カンジダ属(Candida)CaO19.5426、カンジダ属(Candida)CaO19.12881、カンジダ属(Candida)CTRG_06185、カンジダ属(Candida)CaO19.4864、カンジダ属(Candida)CaO19.12328、カンジダ属(Candida)CTRG_03360、カンジダ属(Candida)CaO19.6501、カンジダ属(Candida)CaO19.13854、カンジダ属(Candida)CTRG_05049、カンジダ属(Candida)CaO19.1887、カンジダ属(Candida)CaO19.9443、カンジダ属(Candida)CTRG_01683及びカンジダ属(Candida)CTRG_04630から選択される。
別の実施形態では、本組換え微生物は、脂肪アルデヒド中間体を酸化する経路内の反応を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。一実施形態では、1つ以上の内因性酵素は1つ以上の脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼを含む。組換え酵母微生物に関連して、組換え酵母微生物は、YALI0A17875g、YALI0E15400g、YALI0B01298g、YALI0F23793g、CTRG_05010及びCTRG_04471、又はこれらのホモログからなる群から選択される1つ以上の脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように改変される。
別の実施形態では、本組換え微生物は、脂肪アセテート生成物を消費する経路内の反応を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。一実施形態では、1つ以上の内因性酵素は1つ以上のステロールエステラーゼを含む。組換え酵母微生物に関連して、組換え酵母微生物は、YALI0E32035g、YALI0E00528g、CTRG_01138、CTRG_01683及びCTRG_04630、又はこれらのホモログからなる群から選択される1つ以上のステロールエステラーゼの活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように改変される。別の実施形態では、1つ以上の内因性酵素は1つ以上のトリアシルグリセロールリパーゼを含む。組換え酵母微生物に関連して、組換え酵母微生物は、YALI0D17534g、YALI0F10010g、CTRG_00057及びCTRG_06185、又はこれらのホモログからなる群から選択される1つ以上のトリアシルグリセロールリパーゼの活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように改変される。別の実施形態では、1つ以上の内因性酵素は1つ以上のモノアシルグリセロールリパーゼを含む。組換え酵母微生物に関連して、組換え酵母微生物は、YALI0C14520g、CTRG_03360及びCTRG_05049、又はこれらのホモログからなる群から選択される1つ以上のモノアシルグリセロールリパーゼの活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように改変される。別の実施形態では、1つ以上の内因性酵素は1つ以上の細胞外リパーゼを含む。組換え酵母微生物に関連して、組換え酵母微生物は、YALI0A20350g、YALI0D19184g、YALI0B09361g、CTRG_05930、CTRG_04188、CTRG_02799、CTRG_03052及びCTRG_03885、又はこれらのホモログからなる群から選択される1つ以上の細胞外リパーゼの活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように改変される。
[0442] 一部の実施形態では、本組換え微生物は、(1)β-酸化の過程で脂肪酸を分解し、及び/又は(2)ω-酸化の過程でω-ヒドロキシ脂肪酸を脂肪酸アルデヒド又はジルボン酸に酸化する1つ以上の内因性酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。一部の実施形態では、本組換え微生物は、(i)YALI0E32835g(POX1)、YALI0F10857g(POX2)、YALI0D24750g(POX3)、YALI0E27654g(POX4)、YALI0C23859g(POX5)、YALI0E06567g(POX6)からなる群から選択される1つ以上の内因性アシル-CoAオキシダーゼ;(ii)YALI0F09603g(FADH)、YALI0D25630g(ADH1)、YALI0E17787g(ADH2)、YALI0A16379g(ADH3)、YALI0E15818g(ADH4)、YALI0D02167g(ADH5)、YALI0A15147g(ADH6)、YALI0E07766g(ADH7)からなる群から選択される1つ以上の内因性(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ;及び(iii)内因性(脂肪)アルコールオキシダーゼYALI0B14014g(FAO1)の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む。
[0443] 一部の実施形態では、C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートの生成のための生合成経路が導入されるY.リポリティカ(Y. lipolytica)微生物は、H222 ΔP ΔA ΔF ΔURA3である。ΔPは、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)におけるアシル-CoAオキシダーゼ遺伝子(POX 1-6)の欠失を示す。ΔAは、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)における(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(FADH、ADH 1-7)の欠失を示す。ΔFは、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)における(脂肪)アルコールオキシダーゼ遺伝子(FAO1)の欠失を示す。ΔURA3は、酵母をウラシル栄養要求株にする、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)におけるURA3遺伝子の欠失を示す。一部の実施形態では、C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートの生成のための生合成経路が導入されるY.リポリティカ(Y. lipolytica)微生物は、H222 ΔP ΔA ΔFである。一部の実施形態では、C6~C24脂肪アルコール、脂肪アルデヒド及び/又は脂肪アセテートの生成のための生合成経路が導入されるY.リポリティカ(Y. lipolytica)微生物は、MATA ura3-302::SUC2 Δpox1 Δpox2 Δpox3 Δpox4 Δpox5 Δpox6 Δfadh Δadh1 Δadh2 Δadh3 Δadh4 Δadh5 Δadh6 Δadh7 Δfao1::URA3である。
[0444] 酵母Y.リポリティカ(Y. lipolytica)、好ましくは、株H222の野生型分離株は、本開示に従って株の構築のための出発株として使用され得る。株H222は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約(the Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedure)に従って番号DSM 27185でDSMZ(Deutsche Sammlung fur Mikroorganismen and Zellkulturen GmbH,D-38142 Braunschweig)において29.04.2013で受託された。選択マーカーが更なる遺伝子プロセシングのための株の使用に必要とされる。この選択マーカーは、例えばウラシル栄養要求株の形態で、それ自体公知の方法で株に導入され得る。代わりに、既知のウラシル栄養要求株、好ましくは、株H222-S4が使用され得る(Mauersberger S,Wang HJ,Gaillard in C,Barth G & Nicaud JM(2001)J Bacterial 183:5102-5109)。それぞれの欠失カセット(例えばPOX 1-6、FADH、ADH 1-7、FAO1)は、PCR又は制限によって得られ、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)H222-S4に変換され、これは、Barth及びGaillardin(Barth G & Gaillardin C(1996)Yarrowia lipolytica. Springer-Verlag, Berlin, Heidelberg, New York)に従って、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)H222から生成され得る(Mauers-berger et al.(2001))。H222 ΔP ΔA ΔF ΔURA3の生成は、全体が参照により本明細書に援用される国際公開第2015/086684号に記載されている。Y.リポリティカ(Y. lipolytica)株H222 ΔP ΔA ΔF ΔURA3が本開示においてデサチュラーゼ及びレダクターゼの導入のための出発微生物として使用される(例えば、実施例7、9及び10を参照されたい)。
別の実施形態では、本組換え微生物は、不飽和C6~C24脂肪アルコール、アルデヒド、又はアセテートを妨げる、即ち、経路基質又は生成物の、望ましくない副生成物への変換を触媒する1つ以上の内因性レダクターゼ又はデサチュラーゼ酵素の活性を欠失し、破壊し、変異させ、及び/又は低下させるように操作される。
微生物合成からの生成物の化学変換
本開示は、組換え微生物によって合成された生成物を下流生成物に変換するために用いることのできる化学変換を記載する。
一部の実施形態では、微生物によって生成された不飽和脂肪アルコール、アルデヒド、アセテート、又はカルボン酸が続く化学変換を受けることにより、フェロモン、フレグランス、フレーバー、ポリマー、又はポリマー中間体を生成することができる。化学転換の非限定的な例としては、エステル化、メタセシス、及び重合が挙げられる。
不飽和脂肪カルボン酸は、当該技術分野において公知の方法によってエステル化することができる。例えば、フィッシャーエステル化反応を用いて脂肪カルボン酸を対応する脂肪酸エステルに変換することができる。例えば、Komura, K. et al., Synthesis 2008. 3407-3410を参照されたい。
炭素鎖の伸長は、不飽和脂肪アルコールをその伸長型誘導体に変換する公知の方法によって実施することができる。オレフィンメタセシス触媒を実施して脂肪炭素鎖上の炭素の数を増加させ、対応する不飽和生成物にZ型又はE型立体化学を付与することができる。
[0450] 一部の実施形態では、メタセシス触媒は、タングステンメタセシス触媒、モリブデンメタセシス触媒又はルテニウムメタセシス触媒である。特定の実施形態では、メタセシス触媒は、タングステン触媒又はモリブデン触媒である。本発明に用いられる触媒は、一般に、特定の所望の化学反応を媒介し得る金属を用いる。一般に、任意の遷移金属(例えば、d電子を有する)が触媒を形成するのに使用され得、例えば、周期表の第3~12族又はランタニド系列の1つから選択される金属である。一部の実施形態では、金属は、第3~8族又は場合により第4~7族から選択される。一部の実施形態では、属は、第6族から選択される。用語「第6族」は、クロム、モリブデン及びタングステンを含む遷移金属族を指す。更に、本発明は、これらの元素の形態を含む不均一触媒の形成も含み得る(例えば、金属錯体を不溶性基質、例えば、シリカ上に固定することによって)。
一般に、反応条件下で安定であり、且つ脂肪基質上の官能基(例えば、アルコール、エステル、カルボン酸、アルデヒド、又はアセテート)と非反応性の任意のメタセシス触媒を本開示で用いることができる。かかる触媒は、例えば、Grubbs(Grubbs, R.H., “Synthesis of large and small molecules using olefin metathesis catalysts.” PMSE Prepr., 2012)(本明細書において全体として参照により援用される)によって記載されるものである。シス選択的など、オレフィンの所望の異性体に応じたメタセシス触媒、例えば、Shahane et al.(Shahane, S., et al. ChemCatChem, 2013. 5(12): p. 3436-3459)(本明細書において全体として参照により援用される)によって記載されるものの1つを使用し得る。シス選択性を呈する触媒については以前記載されている(Khan, R.K., et al. J. Am. Chem. Soc., 2013. 135(28): p. 10258-61;Hartung, J. et al. J. Am. Chem. Soc., 2013. 135(28): p. 10183-5.;Rosebrugh, L.E., et al. J. Am. Chem. Soc., 2013. 135(4): p. 1276-9.;Marx, V.M., et al. J. Am. Chem. Soc., 2013. 135(1): p. 94-7.;Herbert, M.B., et al. Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 2013. 52(1): p. 310-4;Keitz, B.K., et al. J. Am. Chem. Soc., 2012. 134(4): p. 2040-3.;Keitz, B.K., et al. J. Am. Chem. Soc., 2012. 134(1): p. 693-9.;Endo, K. et al. J. Am. Chem. Soc., 2011. 133(22): p. 8525-7)。
更なるZ選択的触媒が(Cannon and Grubbs 2013;Bronner et al. 2014;Hartung et al. 2014;Pribisko et al. 2014;Quigley and Grubbs 2014)に記載されており、これらは本明細書において全体として参照により援用される。その優れた安定性及び官能基耐性のため、一部の実施形態においてメタセシス触媒は、限定はされないが、式上+2酸化状態である金属中心を持ち、16の電子数を有し、ペンタ配位した、及び一般式LL’AA’M=CRbRc又はLL’AA’M=(C=)nCRbRc;(式中、
Mはルテニウム又はオスミウムであり;
L及びL’は、各々独立して、任意の中性電子供与体リガンドであり、ホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスフィト、ホスフィニト、ホスホニト、アルシン、スチブナイト、エーテル、アミン、アミド、イミン、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、チオエーテル、又は複素環式カルベンから選択され;及び
A及びA’は、ハロゲン、水素、C1~C20アルキル、アリール、C1~C20アルコキシド、アリールオキシド、C2~C20アルコキシカルボニル、アリールカルボキシレート、C1~C20カルボキシレート、アリールスルホニル、C1~C20アルキルスルホニル、C1~C20アルキルスルフィニルから独立して選択されるアニオン性リガンドであり;各リガンドは、任意選択でC1~C5アルキル、ハロゲン、C1~C5アルコキシで置換されているか;又はハロゲン、C1~C5アルキル、又はC1~C5アルコキシによって任意選択で置換されているフェニル基で置換されており;及びA及びA’は一緒になって任意選択で二座リガンドを含んでもよく;及び
Rb及びRcは、水素、C1~C20アルキル、アリール、C1~C20カルボキシレート、C1~C20アルコキシ、アリールオキシ、C1~C20アルコキシカルボニル、C1~C20アルキルチオ、C1~C20アルキルスルホニル及びC1~C20アルキルスルフィニルから独立して選択され、Rb及びRcの各々は、任意選択でC1~C5アルキル、ハロゲン、C1~C5アルコキシで置換されているか、又はハロゲン、C1~C5アルキル、又はC1~C5アルコキシによって任意選択で置換されているフェニル基で置換されている)の中性ルテニウム又はオスミウム金属カルベン錯体を含む(Pederson and Grubbs 2002)。
「十分に定義付けられた触媒(well defined catalysts)」などの他のメタセシス触媒も使用することができる。かかる触媒としては、限定はされないが、Grubbs et al.(Tetrahedron 1998, 54: 4413-4450)によって記載されるシュロック(Schrock)のモリブデンメタセシス触媒、2,6-ジイソプロピルフェニルイミドネオフィリデンモリブデン(VI)ビス(ヘキサフルオロ-t-ブトキシド)、及びCouturier, J. L. et al.(Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1992, 31: 628)によって記載されるバセット(Basset)のタングステンメタセシス触媒が挙げられる。
本開示の方法において有用な触媒としてはまた、米国特許番号第9,776,179号、Peryshkov, et al. J. Am. Chem. Soc. 2011, 133: 20754-20757;Wang, et al. Angewandte Chemie, 2013, 52: 1939-1943;Yu, et al. J. Am. Chem. Soc., 2012, 134: 2788-2799;Halford. Chem. Eng. News, 2011, 89 (45): 11;Yu, et al. Nature, 2011, 479: 88-93;Lee. Nature, 2011, 471: 452-453;Meek, et al. Nature, 2011: 471, 461-466;Flook, et al. J. Am. Chem. Soc. 2011, 133: 1784-1786;Zhao, et al. Org Lett., 2011, 13(4): 784-787;Ondi, et al. “High activity, stabilized formulations, efficient synthesis and industrial use of Mo- and W-based metathesis catalysts” XiMo Technology Updates, 2015: http://www.ximo-inc.com/files/ximo/uploads/ download/Summary _3.11.15.pdf;Schrock, et al. Macromolecules, 2010: 43, 7515-7522;Peryshkov, et al. Organometallics 2013: 32, 5256-5259;Gerber, et al. Organometallics 2013: 32, 5573-5580;Marinescu, et al. Organometallics 2012: 31, 6336-6343;Wang, et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2013: 52, 1939 - 1943;Wang, et al. Chem. Eur. J. 2013: 19, 2726-2740;及びTownsend et al. J. Am. Chem. Soc. 2012: 134, 11334-11337によって記載されるものも挙げられる。
本開示の方法において有用な触媒としてはまた、国際公開第2014/155185号;国際公開第2014/172534号;米国特許出願公開第2014/0330018号;国際公開第2015/003815号;及び国際公開第2015/003814号に記載されるものも挙げられる。
本開示の方法において有用な触媒としてはまた、米国特許第4,231,947号;米国特許第4,245,131号;米国特許第4,427,595号;米国特許第4,681,956号;米国特許第4,727,215号;国際公開第1991/009825号;米国特許第5,0877,10号;米国特許第5,142,073号;米国特許第5,146,033号;国際公開第1992/019631号;米国特許第6,121,473号;米国特許第6,346,652号;米国特許第8,987,531号;米国特許出願公開第2008/0119678号;国際公開第2008/066754号;国際公開第2009/094201号;米国特許出願公開第2011/0015430号;米国特許出願公開第2011/0065915号;米国特許出願公開第2011/0077421号;国際公開第2011/040963号;国際公開第2011/097642号;米国特許出願公開第2011/0237815号;米国特許出願公開第2012/0302710号;国際公開第2012/167171号;米国特許出願公開第2012/0323000号;米国特許出願公開第2013/0116434号;国際公開第2013/070725号;米国特許出願公開第2013/0274482号;米国特許出願公開第2013/0281706号;国際公開第2014/139679号;国際公開第2014/169014号;米国特許出願公開第2014/0330018号;及び米国特許出願公開第2014/0378637号に記載されるものも挙げられる。
本開示の方法において有用な触媒としてはまた、国際公開第2007/075427号;米国特許出願公開第2007/0282148号;国際公開第2009/126831号;国際公開第2011/069134号;米国特許出願公開第2012/0123133号;米国特許出願公開第2013/0261312号;米国特許出願公開第2013/0296511号;国際公開第2014/134333号;及び米国特許出願公開第2015/0018557号に記載されるものも挙げられる。
本開示の方法において有用な触媒としてはまた、米国特許出願公開第2008/0009598号;米国特許出願公開第2008/0207911号;米国特許出願公開第2008/0275247号;米国特許出願公開第2011/0040099号;米国特許出願公開第2011/0282068号;及び米国特許出願公開第2015/0038723号に記載されるものも挙げられる。
本開示の方法において有用な触媒としては、国際公開第2007/140954号;米国特許出願公開第2008/0221345号;国際公開第2010/037550号;米国特許出願公開第2010/0087644号;米国特許出願公開第2010/0113795号;米国特許出願公開第2010/0174068号;国際公開第2011/091980号;国際公開第2012/168183号;米国特許出願公開第2013/0079515号;米国特許出願公開第2013/0144060号;米国特許出願公開第2013/0211096号;国際公開第2013/135776号;国際公開第2014/001291号;国際公開第2014/067767号;米国特許出願公開第2014/0171607号;及び米国特許出願公開第2015/0045558号に記載されるものが挙げられる。
触媒は、典型的には反応混合物中に準化学量論的量(例えば触媒量)で提供される。特定の実施形態では、この量は、どの試薬が化学量論的に過剰であるかに応じて、化学反応の限定試薬を基準として約0.001~約50mol%の範囲である。一部の実施形態では、触媒は限定試薬に対して約40mol%以下で存在する。一部の実施形態では、触媒は限定試薬に対して約30mol%以下で存在する。一部の実施形態では、触媒は、限定試薬に対して約20mol%未満、約10mol%未満、約5mol%未満、約2.5mol%未満、約1mol%未満、約0.5mol%未満、約0.1mol%未満、約0.015mol%未満、約0.01mol%未満、約0.0015mol%未満、又はそれ以下で存在する。一部の実施形態では、触媒は、限定試薬に対して約2.5mol%~約5mol%の範囲で存在する。一部の実施形態では、反応混合物は約0.5mol%の触媒を含有する。触媒錯体の分子式が2つ以上の金属を含む場合、反応に使用されるその触媒錯体の量はそれに従い調整され得る。
ある場合には、本明細書に記載される方法は溶媒の非存在下(例えばニート)で実施することができる。ある場合には、本方法は1つ以上の溶媒の使用を含み得る。本開示における使用に好適であり得る溶媒の例としては、限定はされないが、ベンゼン、p-クレゾール、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、グリコール、ジエチルエーテル、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、酢酸エチル、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリンなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。一部の実施形態では、溶媒は、ベンゼン、トルエン、ペンタン、塩化メチレン、及びTHFから選択される。特定の実施形態では、溶媒はベンゼンである。
一部の実施形態では、本方法は減圧下で実施される。これは、メタセシス反応の間にエチレンなどの揮発性副生成物が生成され得る場合に有利であり得る。例えば、反応槽からエチレン副生成物を除去すると、有利には、メタセシス反応の平衡が所望の生成物の形成の方にシフトし得る。一部の実施形態では、本方法は約760トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約700トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約650トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約600トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約550トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約500トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約450トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約400トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約350トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約300トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約250トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約200トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約150トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約100トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約90トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約80トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約70トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約60トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約50トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約40トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約30トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約20トル未満の圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約20トルの圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約10トルの圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は約1トルの圧力で実施される。一部の実施形態では、本方法は、約1トル未満の圧力で実施される。
一部の実施形態では、2つのメタセシス反応物は等モル量で存在する。一部の実施形態では、2つのメタセシス反応物は等モル量では存在しない。特定の実施形態では、2つの反応物は約20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、又は1:20のモル比で存在する。特定の実施形態では、2つの反応物は約10:1のモル比で存在する。特定の実施形態では、2つの反応物は約7:1のモル比で存在する。特定の実施形態では、2つの反応物は約5:1のモル比で存在する。特定の実施形態では、2つの反応物は約2:1のモル比で存在する。特定の実施形態では、2つの反応物は約1:10のモル比で存在する。特定の実施形態では、2つの反応物は約1:7のモル比で存在する。特定の実施形態では、2つの反応物は約1:5のモル比で存在する。特定の実施形態では、2つの反応物は約1:2のモル比で存在する。
一般に、本明細書に開示されるメタセシス触媒の多くとの反応が、15%より良い、50%より良い、75%より良い、又は90%より良い収率をもたらす。加えて、反応物及び生成物は、沸点の少なくとも5℃の差、20℃より大きい差、又は40℃より大きい差をもたらすように選択される。加えて、メタセシス触媒の使用により、副生成物よりもはるかに速い生成物形成が可能となり、これらの反応を実際上可能な限り迅速に行うためにこれは望ましい。詳細には、反応は約24時間未満、12時間未満、8時間未満、又は4時間未満で実施される。
当業者は、時間、温度及び溶媒が互いに依存し得ること、及び1つを変更すると、本開示の方法によるピレスロイド生成物及び中間体の調製に他も変更する必要があり得ることを理解するであろう。メタセシスステップは種々の温度及び時間で進行させ得る。一般に、本開示の方法における反応は数分~数日の反応時間を用いて行われる。例えば、約12時間~約7日の反応時間を用いることができる。一部の実施形態では、1~5日の反応時間を用いることができる。一部の実施形態では、約10分~約10時間の反応時間を用いることができる。一般に、本開示の方法における反応は約0℃~約200℃の温度で行われる。例えば、反応は15~100℃で行うことができる。一部の実施形態では、反応は20~80℃で行うことができる。一部の実施形態では、反応は100~150℃で行うことができる。
不飽和脂肪エステルは、エステルを対応するアルデヒド又はアルコールに選択的に還元するが、二重結合は還元しない好適な還元剤を用いて還元することができる。不飽和脂肪エステルは、ハロゲン化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)又はVitride(登録商標)を使用して対応する不飽和脂肪アルデヒドに還元することができる。不飽和脂肪アルデヒドは、例えばDIBAL又はVitride(登録商標)で対応する脂肪アルコールに還元することができる。一部の実施形態では、不飽和脂肪エステルは、AlH3又は9-ボラビシクロ(3.3.1)ノナン(9-BBN)を使用して対応する脂肪アルコールに還元することができる。(Galatis, P. Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis. 2001. New York: John Wiley & Sons;及びCarey & Sunderburg. Organic Chemistry, Part B: Reactions and Synthesis, 5th edition. 2007. New York. Springer Sciencesを参照されたい)。
フェロモン組成物及びその使用
上記に記載したとおり、本明細書に記載される方法によって作られる生成物はフェロモンである。本発明の方法により調製されるフェロモンは、昆虫防除組成物としての使用向けに製剤化することができる。フェロモン組成物は担体を含んでもよく、及び/又はディスペンサーに入っていてもよい。担体は、限定はされないが、不活性な液体又は固体であり得る。
固体担体の例としては、限定はされないが、充填剤、例えば、カオリン、ベントナイト、ドロマイト、炭酸カルシウム、タルク、粉末マグネシア、フラー土、ワックス、セッコウ、珪藻土、ゴム、プラスチック、チャイナクレー、ミネラル土類、例えば、シリカ、シリカゲル、シリケート、アタクレー(attaclay)、石灰石、チョーク、黄土、クレー、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、粉砕合成材料、肥料、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、チオ尿素及び尿素、植物由来の生成物、例えば、穀物ミール、樹皮ミール、木材ミール及び堅果殻ミール、セルロース粉末、アタパルジャイト、モンモリロナイト、雲母、バーミキュライト、合成シリカ及び合成ケイ酸カルシウム、又はこれらの組成物が挙げられる。
液体担体の例としては、限定はされないが、水;アルコール、例えば、エタノール、ブタノール又はグリコール、並びにこれらのエーテル又はエステル、例えば、酢酸メチルグリコール;ケトン、例えば、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、又はイソホロン;アルカン、例えば、ヘキサン、ペンタン、又はヘプタン;芳香族炭化水素、例えば、キシレン又はアルキルナフタレン;鉱物油又は植物油;脂肪族塩素化炭化水素、例えば、トリクロロエタン又は塩化メチレン;芳香族塩素化炭化水素、例えば、クロロベンゼン;水溶性又は強極性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、又はN-メチルピロリドン;液化ガス;蝋、例えば、蜜蝋、ラノリン、セラック蝋、カルナウバ蝋、果実蝋(シロヤマモモ蝋又はサトウキビ蝋など)、カンデリラ蝋、他の蝋、例えば、マイクロクリスタリン、オゾケライト、セレシン、又はモンタン;塩、例えば、モノエタノールアミン塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、二リン酸水素アンモニウム、一リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム又はカルバミン酸アンモニウム、これらの混合物が挙げられる。餌又は摂食刺激物質も担体に加えることができる。
相乗剤
一部の実施形態では、本フェロモン組成物を活性化学剤と組み合わせて相乗効果を生じさせる。本教示の方法によって得られる相乗効果はコルビー(Colby)の式(即ち(E)=X+Y-(X×Y/100)に従い定量化することができる。Colby, R. S., “Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combinations”, 1967 Weeds, vol. 15, pp. 20-22(全体として参照により本明細書に援用される)を参照されたい。従って、「相乗的」とは、その存在のおかげで所望の効果を相加的な量より多く増加させる成分が意図される。本方法のフェロモン組成物及び補助剤は、農業用活性化合物及びまた農業用補助化合物の有効性を相乗的に高めることができる。
従って、一部の実施形態では、フェロモン組成物は相乗剤と共に製剤化することができる。用語、「相乗剤」は、本明細書で使用されるとき、フェロモン用量を減量するため、又は少なくとも1つの昆虫種を誘引するフェロモンの有効性を増進するため、フェロモンと共に使用することのできる物質を指す。相乗剤は、フェロモンの非存在下で独立した昆虫誘引剤であっても、又はそうでなくてもよい。
一部の実施形態では、相乗剤は、鱗翅目(Lepidoptera)の少なくとも1つの種を誘引する揮発性植物化学物質である。用語、「植物化学物質」は、本明細書で使用されるとき、植物種に天然に存在する化合物を意味する。詳細な実施形態では、相乗剤は、β-カリオフィレン、イソカリオフィレン、α-フムレン、イナロール、Z3-ヘキセノール/ヘキセニルアセテート、β-ファルネセン、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。
フェロモン組成物はフェロモン及び相乗剤を混合形態又は他の組み合わせ形態で含有することができ、又はそれはフェロモン及び相乗剤を非混合形態で独立して含有してもよい。
殺虫剤
フェロモン組成物は1つ以上の殺虫剤を含み得る。一実施形態では、殺虫剤は当業者に公知の化学的殺虫剤である。化学的殺虫剤の例としては、限定はされないが、シフルトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、ビフェントリン、フェンバレレート、フルシトリネート、アジンホスメチル、メチルパラチオン、ブプロフェジン、ピリプロキシフェン、フロニカミド、アセタミプリド、ジノテフラン、クロチアニジン、アセフェート、マラチオン、キナルホス、クロルピリホス、プロフェノホス、ベンダイオカルブ、ビフェントリン、クロルピリホス、シフルトリン、ダイアジノン、除虫菊、フェンプロパトリン、キノプレン、殺虫ソープ又はオイル、ネオニコチノイド、ジアミド、アベルメクチン及び誘導体、スピノサド及び誘導体、アザジラクチン、ピリダリル、及びこれらの混合物を含めたピレスロイド系又は有機リン系殺虫剤の1つ以上が挙げられる。
別の実施形態では、殺虫剤は、当業者に公知の1つ以上の生物学的殺虫剤である。生物学的殺虫剤の例としては、限定はされないが、アザジラクチン(ニーム油)、天然ピレトリン由来の毒素、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiencis)及びビューベリア・バシアナ(Beauveria bassiana)、ウイルス(例えば、CYD-X(商標)、CYD-X HP(商標)、Germstar(商標)、Madex HP(商標)及びSpod-X(商標))、ペプチド(Spear-T(商標)、Spear-P(商標)、及びSpear-C(商標))が挙げられる。
別の実施形態では、殺虫剤は、神経及び筋肉を標的とする殺虫剤である。例としては、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬、例えば、カーバメイト系(例えば、メトミル及びチオジカルブ)及び有機リン系(例えば、クロルピリホス)、GABA作動性クロライドチャネル拮抗薬、例えば、シクロジエン有機塩素系(例えば、エンドスルファン)及びフェニルピラゾール系(例えば、フィプロニル)、ナトリウムチャネル修飾薬、例えばピレトリン系及びピレスロイド系(例えば、シペルメトリン及びλ-シハロトリン)、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)作動薬、例えば、ネオニコチノイド系(例えば、アセタミプリド、チアクロプリド、チアメトキサム)、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アロステリック修飾薬、例えば、スピノシン系(例えば、スピノーズ(spinose)及びスピネトラム)、クロライドチャネル活性化薬、例えば、アベルメクチン系及びミルベマイシン系(例えば、アバメクチン、エマメクチン安息香酸塩)、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)遮断薬、例えば、ベンスルタップ及びカルタップ、電位依存性ナトリウムチャネル遮断薬、例えば、インドキサカルブ及びメタフルミゾン、リアノジン受容体修飾薬、例えば、ジアミド系(例えばクロラントラニリプロール及びフルベンジアミド)が挙げられる。別の実施形態では、殺虫剤は、呼吸を標的とする殺虫剤である。例としては、プロトン勾配の破壊によって酸化的リン酸化を脱共役させる化学物質、例えばクロルフェナピル、及びミトコンドリア複合体I電子伝達阻害薬が挙げられる。
別の実施形態では、殺虫剤は、中腸を標的とする殺虫剤である。例としては、昆虫中腸膜を破壊する微生物、例えば、バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)及びバチルス・スフェリカス(Bacillus sphaericus)が挙げられる。
別の実施形態では、殺虫剤は、成長及び発生を標的とする殺虫剤である。例としては、幼若ホルモン模倣体、例えば、幼若ホルモン類似体(例えばフェノキシカルブ)、キチン生合成阻害薬、タイプ0、例えばベンゾイル尿素(例えば、フルフェノクスロン、ルフェヌロン、及びノバルロン)、及びエクジソン受容体作動薬、例えばジアシルヒドラジン系(例えば、メトキシフェノジド及びテブフェノジド)が挙げられる。
安定剤
本開示の別の実施形態によれば、本フェロモン組成物は、組成物の安定性を増進する1つ以上の添加剤を含み得る。添加剤の例としては、限定はされないが、脂肪酸及び植物油、例えば、オリーブ油、ダイズ油、トウモロコシ油、ベニバナ油、キャノーラ油、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
充填剤
本開示の別の実施形態によれば、本フェロモン組成物は1つ以上の充填剤を含み得る。充填剤の例としては、限定はされないが、1つ以上の鉱物クレー(例えばアタパルジャイト)が挙げられる。一部の実施形態では、誘引剤組成物は1つ以上の有機増粘剤を含み得る。かかる増粘剤の例としては、限定はされないが、メチルセルロース、エチルセルロース、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
溶媒
別の実施形態によれば、本開示のフェロモン組成物は1つ以上の溶媒を含み得る。溶媒を含有する組成物は、ハケ塗り、浸漬、ロール塗り、吹き付け、又はその他の方法で、使用者がフェロモンコーティングを付与しようとする被塗物(例えばルアー)に液体組成物を適用することによって適用され得る液体組成物を使用者が利用する場合に望ましい。一部の実施形態では、使用する溶媒は、フェロモン組成物の1つ以上の成分を可溶化、又は実質的に可溶化するように選択される。溶媒の例としては、限定はされないが、水、水性溶媒(例えば、水とエタノールの混合物)、エタノール、メタノール、塩素化炭化水素、石油溶媒、テルペンチン、キシレン、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
一部の実施形態では、本開示のフェロモン組成物は有機溶媒を含む。有機溶媒は主に乳化性濃縮物の製剤、ULV製剤に使用され、及びそれより程度は少ないが、顆粒状製剤に使用される。時に溶媒の混合物が使用される。一部の実施形態において、本開示は、ケロシン又は精製パラフィンなどの脂肪族パラフィン系オイルを含めた溶媒の使用を教示する。他の実施形態において、本開示は、キシレン並びにC9及びC10芳香族溶媒の高分子量画分など、芳香族溶媒の使用を教示する。一部の実施形態では、製剤を水中に乳化させたときの結晶化を防ぐ共溶媒として塩素化炭化水素が有用である。アルコールは時に、溶解力を増加させる共溶媒として使用される。
可溶化剤
一部の実施形態では、本開示のフェロモン組成物は可溶化剤を含む。可溶化剤はサーファクタントであり、限界ミセル濃度を上回る濃度では水中でミセルを形成し得る。このとき、ミセルは、ミセルの疎水性部分の内部に水不溶性材料を溶解させ又は可溶化することが可能である。可溶化に通常用いられるサーファクタントのタイプは、非イオン剤:モノオレイン酸ソルビタン;モノオレイン酸ソルビタンエトキシレート;及びオレイン酸メチルエステルである。
結合剤
本開示の別の実施形態によれば、本フェロモン組成物は1つ以上の結合剤を含み得る。結合剤は、前記組成物を塗布する材料の表面へのフェロモン組成物の結合を促進するために使用し得る。一部の実施形態では、結合剤は、フェロモン組成物及び/又は材料の表面への別の添加剤(例えば、殺虫剤、昆虫成長調整物質など)の結合を促進するために使用し得る。例えば、結合剤は、ペンキ及びコーティングに典型的に用いられる合成又は天然樹脂を含み得る。これらは、塗布表面が、コーティングの構造的完全性はなおも維持しつつ、昆虫に組成物の成分(例えば、殺虫剤、昆虫成長調整物質など)をかじり取らせ摂食させるのに十分な脆さとなるように修飾されてもよい。
結合剤の非限定的な例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体及びポリ酢酸ビニル、又はこれらの組成物;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、タルク又はポリエチレングリコール、又はこれらの組成物などの滑沢剤;シリコーンエマルション、長鎖アルコール、リン酸エステル、アセチレンジオール、脂肪酸又は有機フッ素化合物などの消泡剤、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩、トリニトリロ三酢酸塩又はポリリン酸塩、又はこれらの組成物などの錯化剤が挙げられる。
一部の実施形態では、結合剤はまた充填剤及び/又は増粘剤としても役割も果たす。かかる結合剤の例としては、限定はされないが、セラック、アクリル、エポキシ、アルキド、ポリウレタン、亜麻仁油、キリ油、及びこれらの任意の組み合わせの1つ以上が挙げられる。
界面活性剤
一部の実施形態では、本フェロモン組成物は界面活性剤を含む。一部の実施形態では、界面活性剤は液体農業用組成物に添加される。他の実施形態では、界面活性剤は固形製剤、特に適用前に担体で希釈するように設計された固形製剤に添加される。従って、一部の実施形態では、本フェロモン組成物はサーファクタントを含む。サーファクタントは時に、噴霧タンク混合物に対する補助剤として単独で、或いは鉱物油若しくは植物油などの他の添加剤と共に使用され、標的に対するフェロモンの生物学的性能を向上させる。界面活性剤はアニオン性、カチオン性、又は非イオン性の性質であってもよく、乳化剤、湿潤剤、懸濁剤として、又は他の目的で用いることができる。一部の実施形態では、サーファクタントは、アルキルエトキシレート、直鎖脂肪族アルコールエトキシレート、及び脂肪族アミンエトキシレートなど、非イオン剤である。製剤の技術分野で従来用いられている且つ本製剤にも使用し得るサーファクタントは、McCutcheon’s Detergents and Emulsifiers Annual, MC Publishing Corp., Ridgewood, N.J.,1998、及びEncyclopedia of Surfactants, Vol. I-III, Chemical Publishing Co., New York, 1980-81に記載されている。一部の実施形態において、本開示は、芳香族スルホン酸、例えば、リグノスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸及びジブチルナフタレンスルホン酸の、及びアリールスルホン酸塩の脂肪酸の、アルキルエーテルの、ラウリルエーテルの、脂肪アルコール硫酸塩の及び脂肪アルコールグリコールエーテル硫酸塩のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、スルホン化ナフタレン及びその誘導体とホルムアルデヒドとの縮合物、ナフタレン又はナフタレンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドとの縮合物、フェノール又はフェノールスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物、フェノールとホルムアルデヒド及び亜硫酸ナトリウムとの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、エトキシ化イソオクチルフェノール、オクチルフェノール又はノニルフェノール、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、エトキシ化ヒマシ油、エトキシ化トリアリールフェノール、リン酸化トリアリールフェノールエトキシレートの塩、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセテート、ソルビトールエステル、亜硫酸リグニン廃液又はメチルセルロース、又はこれらの組成物を含めたサーファクタントの使用を教示する。
一部の実施形態において、本開示は、ジエタノールアンモニウムラウリル硫酸塩などのアルキル硫酸塩;カルシウムドデシルベンゼンスルホン酸塩などのアルキルアリールスルホン酸塩;ノニルフェノール-C18エトキシレートなどのアルキルフェノール-アルキレンオキシド付加生成物;トリデシルアルコール-C16エトキシレートなどのアルコール-アルキレンオキシド付加生成物;ステアリン酸ナトリウムなどのセッケン;ナトリウムジブチルナフタレンスルホン酸塩などのアルキルナフタレンスルホン酸塩;スルホコハク酸ナトリウムジ(2-エチルヘキシル)などのスルホコハク酸塩のジアルキルエステル;オレイン酸ソルビトールなどのソルビトールエステル;塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどの第4級アミン;ステアリン酸ポリエチレングリコールなど、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル;エチレンオキシドと酸化プロピレンとのブロック共重合体;モノアルキル及びジアルキルリン酸エステルの塩;ダイズ油、菜種/キャノーラ油、オリーブ油、ヒマシ油、ヒマワリ種油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、パーム油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、キリ油などの植物油;及び上記の植物油のエステル、特にメチルエステルを含めた他の好適な界面活性剤を教示する。
湿潤剤
一部の実施形態では、本フェロモン組成物は湿潤剤を含む。湿潤剤は、液体に加えたときに液体とそれが展着する表面との間の界面張力を低減することによってその液体の展着力又は浸透力を増加させる物質である。湿潤剤は、農薬製剤中に2つの主な機能:加工及び製造中に可溶性液体濃縮物又は懸濁濃縮物を作製するための粉末の水に対する濡れ速度を高めるため;及び噴霧タンク又は他のベッセル内で生成物を水と混合するときに濡れ性粉末の濡れ時間を短縮し、及び水分散性顆粒への水の浸透を向上させるために使用される。一部の実施形態では、本開示のフェロモン組成物に使用される湿潤剤の例は、濡れ性粉末、懸濁濃縮物、及び水分散性顆粒製剤を含め、ラウリル硫酸ナトリウム;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム;アルキルフェノールエトキシレート;及び脂肪族アルコールエトキシレートである。
分散剤
一部の実施形態では、本開示のフェロモン組成物は分散剤を含む。分散剤は、粒子の表面上に吸着して粒子が分散した状態を保つことを促進し、その再集合を防ぐ物質である。一部の実施形態では、分散剤は、製造中の分散及び懸濁を促進し、及び噴霧タンク内で粒子が水中に再び分散することを確実にするため、本開示のフェロモン組成物に添加される。一部の実施形態では、分散剤は、濡れ性粉末、懸濁濃縮物、及び水分散性顆粒に使用される。分散剤として使用されるサーファクタントは粒子表面上に強力に吸着する能力を有し、粒子の再集合に対する電荷的又は立体的バリアを提供する。一部の実施形態では、最も一般的に用いられるサーファクタントは、アニオン性、非イオン性、又はこれらの2つのタイプの混合物である。
一部の実施形態では、濡れ性粉末製剤について、最も一般的な分散剤はリグノスルホン酸ナトリウムである。一部の実施形態では、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルムアルデヒド縮合物などの高分子電解質を用いると、懸濁濃縮物が極めて良好な吸着及び安定化をもたらす。一部の実施形態では、エトキシ化トリスチリルフェノールリン酸エステルも使用される。一部の実施形態では、アルキルアリールエチレンオキシド縮合物及びEO-POブロック共重合体などが、時に懸濁濃縮物の分散剤としてアニオン剤と組み合わされる。
ポリマーサーファクタント
一部の実施形態では、本開示のフェロモン組成物はポリマーサーファクタントを含む。一部の実施形態では、ポリマーサーファクタントは、非常に長い疎水性「骨格」と、「櫛」サーファクタントの「歯」を形成する多数のエチレンオキシド鎖とを有する。一部の実施形態では、これらの高分子量ポリマーは、疎水性骨格が粒子表面上へのアンカリング点を多く有するため、懸濁濃縮物に極めて良好な長期安定性を付与することができる。一部の実施形態では、本開示のフェロモン組成物に使用される分散剤の例は、リグノスルホン酸ナトリウム;ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルムアルデヒド縮合物;トリスチリルフェノールエトキシレートリン酸エステル;脂肪族アルコールエトキシレート;アルキルエトキシレート;EO-POブロック共重合体;及びグラフト共重合体である。
乳化剤
一部の実施形態では、本開示のフェロモン組成物は乳化剤を含む。乳化剤は、ある液相の液滴の別の液相中における懸濁液を安定化させる物質である。乳化剤がなければ、これらの2つの液体は2つの不混和性液相に分離し得る。一部の実施形態において、最も一般的に用いられる乳化剤ブレンドには、12個以上のエチレンオキシド単位を有するアルキルフェノール又は脂肪族アルコールと、ドデシルベンゼンスルホン酸の油溶性カルシウム塩とが含まれる。8~18の範囲の親水性-親油性バランス(「HLB」)値が、通常、良好な安定エマルションをもたらす。一部の実施形態において、時に少量のEO-POブロック共重合体サーファクタントを加えることによりエマルション安定性を向上させることができる。
ゲル化剤
一部の実施形態では、本フェロモン組成物はゲル化剤を含む。増粘剤又はゲル化剤は主に懸濁濃縮物、エマルション、及びサスポエマルションの製剤中に、液体のレオロジー又は流れ特性を改良し、且つ分散した粒子又は液滴の分離及び沈降を防ぐために使用される。増粘剤、ゲル化剤、及び沈降防止剤は、概して2種類、即ち水不溶性微粒子と水溶性ポリマーとに分けられる。クレー及びシリカを用いて懸濁濃縮物製剤を作製することが可能である。一部の実施形態では、本フェロモン組成物は、限定はされないが、モンモリロナイト、例えばベントナイト;ケイ酸アルミウニムマグネシウム;及びアタパルジャイトを含めた1つ以上の増粘剤を含む。一部の実施形態において、本開示は、増粘剤としての多糖類の使用を教示する。最も一般的に用いられる多糖類のタイプは、種子及び海藻の天然抽出物又はセルロースの合成誘導体である。一部の実施形態はキサンタンを利用し、一部の実施形態はセルロースを利用する。一部の実施形態において、本開示は、限定はされないが、グアーガム;ローカストビーンガム;カラギーナン;アルギン酸塩;メチルセルロース;カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC);ヒドロキシエチルセルロース(HEC)を含めた増粘剤の使用を教示する。一部の実施形態において、本開示は、加工デンプン、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、及びポリエチレンオキシドなど、他のタイプの沈降防止剤の使用を教示する。別の良好な沈降防止剤はキサンタンガムである。
消泡剤
一部の実施形態では、界面張力を低下させるサーファクタントの存在により、製造時の混合操作中及び噴霧タンクを用いた適用時に水性製剤に泡立ちが生じ得る。従って、一部の実施形態では、起泡傾向を抑えるため、製造段階で、又は瓶/噴霧タンクへの充填前に、多くの場合に消泡剤が添加される。概して、2つのタイプの消泡剤、即ちシリコーン系と非シリコーン系とがある。シリコーン系は、通常ジメチルポリシロキサンの水性エマルションであり、一方、非シリコーン系消泡剤はオクタノール及びノナノールなどの水不溶性油、又はシリカである。いずれの場合にも、消泡剤の機能は、気水界面からサーファクタントを排除することである。
保存剤
一部の実施形態では、本フェロモン組成物は保存剤を含む。
追加的な活性薬剤
本開示の別の実施形態によれば、本フェロモン組成物は1つ以上の昆虫摂食刺激物質を含み得る。昆虫摂食刺激物質の例としては、限定はされないが、粗綿実油、フィトールの脂肪酸エステル、ゲラニルゲラニオールの脂肪酸エステル、他の植物アルコールの脂肪酸エステル、植物抽出物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
本開示の別の実施形態によれば、本フェロモン組成物は1つ以上の昆虫成長調整物質(「IGR」)を含み得る。IGRは、昆虫の成長を変えて奇形の昆虫を作り出すために用いられ得る。昆虫成長調整物質の例としては、例えばジミリンが挙げられる。
本開示の別の実施形態によれば、誘引剤組成物は、捕獲した昆虫を不妊化し又は他の形でその生殖能力を遮断して、それにより以降の世代の集団を減少させる1つ以上の昆虫不妊化剤を含み得る。場合により、不妊化昆虫を生存させて非捕獲昆虫と交尾に関して競合させることが、直に殺虫するより有効である。
噴霧可能組成物
一部の実施形態では、本明細書に開示されるフェロモン組成物は、噴霧可能組成物(即ち、噴霧可能なフェロモン組成物)として製剤化することができる。噴霧可能組成物には、水性溶媒、例えば、水、又は水とアルコール、グリコール、ケトン、又は他の水混和性溶媒との混合物を使用することができる。一部の実施形態では、かかる混合物の含水量は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%である。一部の実施形態では、噴霧可能組成物は濃縮物、即ち、フェロモンと水性溶媒中の他の添加剤(例えば、蝋様物質、安定剤など)との濃縮懸濁液であり、溶媒(例えば水)を加えることにより最終使用濃度に希釈され得る。
一部の実施形態では、噴霧可能組成物中におけるフェロモン及びその位置異性体の担体として蝋様物質を使用することができる。蝋様物質は、例えば、生分解性蝋、例えば蜜蝋、カルナウバ蝋など、カンデリラ蝋(炭化水素蝋)、モンタン蝋、セラック及び同様の蝋、飽和又は不飽和脂肪酸、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸又はステアリン酸、脂肪酸アミド及びエステル、ヒドロキシ脂肪酸エステル、例えばヒドロキシエチル又はヒドロキシプロピル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、及び低分子量ポリエステル、例えばポリアルキレンスクシネートであってもよい。
一部の実施形態では、噴霧可能なフェロモン組成物と共に安定剤を使用することができる。安定剤は、濃縮物の粒径を調節し、及び/又はフェロモン組成物の安定懸濁液の調製を可能にするために用いられ得る。一部の実施形態では、安定剤はヒドロキシルポリマー及び/又はエトキシ化ポリマーから選択される。例としては、エチレンオキシド・酸化プロピレン共重合体、多価アルコール、例えば、デンプン、マルトデキストリン及び他の可溶性炭水化物又はこれらのエーテル若しくはエステル、セルロースエーテル、ゼラチン、ポリアクリル酸並びにこれらの塩及び部分エステルなどが挙げられる。他の実施形態では、安定剤としては、ポリビニルアルコール及びその共重合体、例えば部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルを挙げることができる。安定剤は、粒径の調節及び/又は安定懸濁液の調製に十分なレベル、例えば水溶液の0.1%~15%で使用し得る。
一部の実施形態では、噴霧可能なフェロモン組成物と共に結合剤を使用することができる。一部の実施形態では、結合剤は分散液を更に安定化させ、及び/又は標的場所(例えば、トラップ、ルアー、植物など)への噴霧された分散液の接着性を向上させる役割を果たし得る。結合剤は、多糖、例えば、アルギン酸塩、セルロース誘導体(アセテート、アルキル、カルボキシメチル、ヒドロキシアルキル)、デンプン又はデンプン誘導体、デキストリン、ガム(アラビア、グアー、ローカストビーン、トラガカント、カラギーナンなど)、スクロースなどであってもよい。結合剤はまた、ポリビニルピロリドンなどの非炭水化物水溶性ポリマー、又は酸及び/又は塩形態のポリアクリル酸又はポリメタクリル酸などの酸性ポリマー、又はかかるポリマーの混合物であってもよい。
マイクロカプセル化フェロモン
一部の実施形態では、本明細書に開示されるフェロモン組成物は、Ill’lchev, AL et al., J. Econ. Entomol. 2006;99(6):2048-54;及びStelinki, LL et al., J. Econ. Entomol. 2007;100(4):1360-9に開示されるようなマイクロカプセル化フェロモンとして製剤化することができる。マイクロカプセル化フェロモン(MEC)は、ポリマーカプセル内に封入されたフェロモンの小液滴である。このカプセルは周囲環境へのフェロモンの放出速度を制御し、十分に小さいため、噴霧殺虫剤に用いられるのと同じ方法で適用される。マイクロカプセル化フェロモン製剤の野外有効寿命は、とりわけ、気候条件、カプセルサイズ及び化学的特性に依存して、数日~1週間を僅かに超える範囲であり得る。
徐放製剤
フェロモン組成物は、大気中への徐放をもたらすように、及び/又は放出後の分解から保護されるように製剤化することができる。例えば、フェロモン組成物は、マイクロカプセル、生分解性フレーク及びパラフィン蝋ベースのマトリックスなどの担体に含まれてもよい。或いは、フェロモン組成物は、徐放噴霧可能なものとして製剤化することができる。
特定の実施形態では、本フェロモン組成物は、当業者に公知の1つ以上のポリマー剤を含み得る。ポリマー剤は、環境への組成物の放出速度を制御し得る。一部の実施形態では、ポリマー誘引剤組成物は環境条件の影響を受け難い。ポリマー剤はまた、環境への組成物の持続的な放出を可能にする持続放出剤であってもよい。
ポリマー剤の例としては、限定はされないが、セルロース、カゼインなどのタンパク質、フッ化炭素系ポリマー、水素化ロジン、リグニン、メラミン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル(PVAC)などのビニルポリマー、ポリカーボネート、ポリビニリデンジニトリル、ポリアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド-アルデヒド、ポリビニルアルデヒド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニリデン、シリコーン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。セルロースの例としては、限定はされないが、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸酢酸セルロース、プロピオン酸酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
徐放製剤又は持続放出製剤に用いることのできる他の薬剤としては、脂肪酸エステル(セバシン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸又はアラキジン酸エステルなど)又は脂肪アルコール(ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、トリデセノール、テトラデカノール、テトラデセノール、テトラデカジエノール、ペンタデカノール、ペンタデセノール、ヘキサデカノール、ヘキサデセノール、ヘキサデカジエノール、オクタデセノール及びオクタデカジエノールなど)が挙げられる。
本発明の方法により調製されるフェロモン、並びにそのようなフェロモンを含有する組成物は、様々な環境下の昆虫の行動及び/又は成長を制御するために使用することができる。このフェロモンを使用して、例えば、雄又は雌昆虫を特定の標的範囲に誘引し、又はそこから忌避させることができる。このフェロモンを使用して昆虫を誘引して、被害を受け易い作物範囲から引き離すことができる。また、このフェロモンを使用して、例えば、昆虫モニタリング、大量捕獲、ルアー/誘引殺虫又は交信撹乱戦略の一環として昆虫を誘引することができる。
ルアー
本開示のフェロモン組成物はルアーに塗布又は噴霧されてもよく、又はその他の方法でルアーにフェロモン組成物を含浸させてもよい。
トラップ
本開示のフェロモン組成物は、任意の昆虫種、例えば鱗翅目(Lepidoptera)の昆虫を誘引するために一般的に用いられるものなど、トラップにおいて使用し得る。かかるトラップは当業者に周知であり、多くの州及び国で昆虫根絶計画において一般的に用いられている。一実施形態では、トラップは、フェロモン組成物を保持するための1つ以上の隔壁、容器、又は貯蔵用の入れ物を備える。従って、一部の実施形態において、本開示は、少なくとも1つのフェロモン組成物が充填されたトラップを提供する。従って、本開示のフェロモン組成物は、例えばトラップに毒性物質を組み込んで捕獲した昆虫を殺虫することによる、昆虫モニタリング、大量捕獲、交信撹乱、又はルアー/誘引殺虫戦略の一環として例えば昆虫を誘引するため、トラップにおいて使用することができる。
大量捕獲は、保護しようとする作物に高密度のトラップを置き、作物が被害を受ける前に大部分の昆虫を除去することを含む。ルアー/誘引殺虫技法も同様であるが、但し昆虫はルアーに誘引された後、致死剤に曝される。致死剤が殺虫剤である場合、ディスペンサーにまた、有効量の殺虫剤を摂食するよう昆虫を誘き寄せる餌又は摂食刺激物質が入っていてもよい。殺虫剤は当業者に公知の殺虫剤であってよい。殺虫剤は誘引剤組成物と混合されてもよく、又はトラップ内に別々に存在してもよい。混合物は昆虫の誘引と殺虫との二重の機能を果たし得る。
かかるトラップは任意の好適な形態をとることができ、殺虫トラップは必ずしも毒性物質を組み込んでいる必要はなく、任意選択で昆虫は、溺死又は感電死など、他の手段によって殺虫してもよい。或いは、トラップが昆虫を真菌又はウイルスに感染させ、それが後に昆虫を殺虫してもよい。昆虫が殺虫されない場合であっても、トラップは雌の昆虫がいる場所から雄の昆虫を取り除いて繁殖を防ぐ役割を果たし得る。
当業者は、種々の異なるトラップが可能であることを理解するであろう。かかるトラップの好適な例としては、ウォータートラップ、粘着トラップ、及びワンウェイトラップが挙げられる。粘着トラップは多くの種類が出ている。粘着トラップの一例は、三角形又は楔形断面のボール紙製の構造物で、内表面が不乾性粘着物質で被覆されているものである。昆虫が粘着面に接触して、捕虫される。ウォータートラップは水及びデタージェントの受け皿を備え、それを用いて昆虫が捕獲される。デタージェントによって水の表面張力を失わせることにより、受け皿に誘引された昆虫を水に溺れさせる。ワンウェイトラップでは昆虫はトラップに入ることはできるが、出ることはできない。本開示のトラップは、昆虫が一層誘引されるように鮮やかな色に着色されてもよい。
一部の実施形態では、本組成物を含むフェロモントラップが他の種類の捕虫機構と組み合わされてもよい。例えば、フェロモン組成物に加え、トラップは、蛾を誘引するため1つ以上の蛍光灯、1つ以上の粘着性基材及び/又は1つ以上の着色表面を含んでもよい。他の実施形態では、本組成物を含むフェロモントラップは、他の種類の捕虫機構を有しなくてもよい。
トラップは野外に1年のうちいつでも設置することができる。当業者は、特定のトラップに使用する適切な組成物量を容易に決定することができ、及びまた、保護しようとする作物畑の1エーカー当たりのトラップの適切な密度も決定することができる。
トラップは、昆虫の被害を受ける(又は潜在的に被害を受ける可能性のある)範囲に位置決めすることができる。概して、トラップは樹木又は植物上に又はその近くに置かれる。フェロモンの芳香が昆虫をトラップに誘引する。次に昆虫はトラップ内に捕らわれ、動けなくなり、及び/又は例えばトラップに存在する致死剤によって殺虫され得る。
トラップはまた、単純に雄が雌の位置を特定できないよう雌が放つフェロモンを圧倒するように果樹園内に置かれてもよい。これに関連して、トラップとしては、単純な器具、例えばフェロモンを分注する保護された吸液芯(wickable)以上のものは何も必要ない。
本開示のトラップは完成品形態で提供されてもよく、ここでは本開示の化合物は既に適用されている。かかる例では、化合物の半減期に応じて化合物は露出していてもよく、又は他のアロマディスペンサーで標準的なものなど、従来方法で密封されていてもよく、この密封はトラップが所定位置に置かれた後に限り取り除かれる。
或いは、トラップは別個に販売されてもよく、トラップが所定位置に置かれた後に捕獲のための所定量を適用し得るように、本開示の化合物が分注可能な様式で提供されてもよい。従って、本開示は、化合物をサシェ又は他のディスペンサーに提供し得る。
ディスペンサー
フェロモン組成物は、特定の環境において組成物を放出するためのディスペンサーと併せて使用することができる。当該技術分野において公知の任意の好適なディスペンサーを使用し得る。かかるディスペンサーの例としては、限定はされないが、エアロゾル放出器、手作業で適用するディスペンサー、フェロモンがゆっくりと放出される透過性バリアを有するリザーバを含むバブルキャップ、フェロモン組成物を含浸させたゴム、プラスチック、革、綿、脱脂綿、木材又は木材産物でできたパッド、ビーズ、チューブ、ロッド、スパイラル又はボールが挙げられる。例えば、フェロモン組成物が蒸発するポリ塩化ビニルラミネート、ペレット、顆粒、ロープ又はスパイラル、又はゴムセプタム。当業者は、所望の適用、貯蔵、輸送又は取扱い方法に好適な担体及び/又はディスペンサーを選択することが可能であろう。
別の実施形態では、フェロモン物質それ自体を含有する粉末によって雄の昆虫を汚染させる装置が用いられ得る。汚染された雄は次に飛び去り、大気にフェロモン物質を充満させることによるか、又は本物の雌よりむしろ汚染された雄に他の雄を誘引することにより、交信撹乱源を供給する。
行動修正
本明細書に開示される方法により調製したフェロモン組成物を使用して、昆虫の行動を制御又は調節し得る。一部の実施形態では、標的の昆虫の行動は、特に、昆虫が特定の場所に誘引されるが前記場所と接触はしないように、又はかかる昆虫が実際に前記場所に接触するように、組成物中のフェロモンと位置異性体との比率を変えることによって調整可能な方法で調節し得る。従って、一部の実施形態では、フェロモンを使用して昆虫を誘引して、被害を受け易い作物範囲から引き離すことができる。従って、本開示はまた、ある場所に昆虫を誘引する方法も提供する。この方法は、ある場所に有効量のフェロモン組成物を投与することを含む。
交信撹乱方法は、捕獲された昆虫の総数又は総量を定期的にモニタリングすることを含み得る。モニタリングは、例えば、毎日、毎週、隔週、毎月、3ヵ月に1回、又は監視者によって選択された任意の他の時間など、所定期間中に捕獲された昆虫の数をカウントすることにより実施し得る。捕獲された昆虫のかかるモニタリングは、その特定の期間についての昆虫個体数を推定することを促進し、それにより総合的害虫管理システムにおける害虫防除の詳細なタイプ及び/又は投薬量を決定することを促進し得る。例えば、昆虫個体数が多いことが見出されると、必然的に昆虫の駆除方法の使用が必要となる。新しい生息場所における被害の早期警告は、その集団が手に負えなくなる前に対策を取ることを可能にし得る。逆に、昆虫個体数が少ないことが見出されると、その集団のモニタリングを継続することで十分であるという判断につながり得る。昆虫集団は、昆虫が特定の閾値に達したときにのみ、それらの昆虫が防除するように定期的にモニタされ得る。これにより、費用効率の高い昆虫防除がもたらされ、殺虫剤使用の環境影響が低減される。
交信撹乱
本開示の方法により調製されるフェロモンはまた、交尾の阻害にも使用することができる。交信撹乱は、昆虫を混乱させて交尾場所の特定及び/又は求愛を阻害し、それにより交尾を防ぎ、生殖周期を遮断する人工刺激(例えば、本明細書に開示されるとおりのフェロモン組成物)を導入することによって害虫を防除するように設計された害虫管理法である。
鱗翅目(Lepidoptera)の種など、農業上関心がもたれる多くの昆虫種では、雌がその種の性フェロモンを成す特定の化学的ブレンドのトレイルを空中に放つ。この空中のトレイルはフェロモンプルームと称される。その種の雄はフェロモンプルームに含まれる情報を用いて放出元の雌(「コーリング」雌として知られる)の居場所を特定する。交信撹乱は、雌の昆虫が産生する性フェロモンを模倣するように設計された合成フェロモンを昆虫の生息場所に導入することにより、雄の昆虫がプルームを辿る自然な反応を利用する。従って、一部の実施形態では、交信撹乱に利用される合成フェロモンは、標的の昆虫によって産生されない、性フェロモンの化学構造を有するフェロモン及びその位置異性体を含む合成的に誘導されたフェロモン組成物である。
交信撹乱の一般的な効果は、天然のフェロモンプルームをマスクすることにより雄の昆虫を混乱させて、交尾相手を探し出そうとするのを利用して雄に「偽のフェロモンのトレイル」を辿らせ、雄が「コーリング」雌に反応する能力に影響を及ぼすことである。結果的に、雄集団が雌の居場所を特定して交尾に成功する可能性が低くなり、これが最終的には繁殖の中止及び昆虫被害の縮小につながる。
交信撹乱戦略には、混乱、トレイルのマスキング及び偽のトレイルの追随が含まれる。昆虫を高濃度のフェロモンに絶えず曝露させると、雌の昆虫が放出する正常なレベルのフェロモンに雄の昆虫が反応できなくなり得る。トレイルのマスキングはフェロモンを用いて雌が放出するフェロモンのトレイルを破壊する。偽のトレイルの追随は、高濃度のフェロモンのスポットを多数配置して雄に辿るべき多くの偽のトレイルを提示することにより行われる。十分に多量に放出されると、雄の昆虫は天然の性フェロモン源(雌の昆虫)を探し出すことができず、交尾が起こり得なくなる。
一部の実施形態では、吸液芯又はトラップが少なくとも小昆虫の繁殖期に等しい期間にわたってフェロモンを放出し、ひいては交信撹乱を引き起こすように適合され得る。小昆虫が長い繁殖期を有する場合、又は繁殖期を繰り返す場合、本開示は、フェロモンをある期間、特に約2週間、及び一般的には約1~4週間及び最長6週間にわたって放出することが可能な吸液芯又はトラップを提供し、これは続く同様のトラップと交替又は交換され得る。フェロモン組成物を含有する複数のトラップが、例えば作物畑に隣接する場所に置かれてもよい。トラップの位置、及び地面からのトラップの高さは、当業者に公知の方法に従い選択し得る。
或いは、本フェロモン組成物は、害虫の交尾の阻害に一般的に用いられるような、マイクロカプセル又はツイストタイ(twist-ties)などの製剤から分注されてもよい。
誘引殺虫
誘引殺虫方法は、性フェロモンなどの誘引剤を利用して殺虫性の化学物質、表面、装置等に標的種の昆虫を誘き寄せ、大量死滅させて、最終的には個体数を抑制するものであり、大量捕獲と同じ効果があり得る。例えば、合成雌性フェロモンを用いて雄の害虫、例えば蛾を誘き寄せる場合、誘引殺虫戦略では、多数の雄の蛾を長期間にわたって死滅させることにより交尾及び繁殖を低下させ、最終的に害虫の個体数を抑制しなければならない。誘引殺虫手法は、トラップの手入れ又は他の頻繁な保守が不要であるため、大量捕獲の有利な代替法であり得る。本明細書に記載される様々な実施形態では、組換え微生物が、(i)昆虫フェロモンの生成経路、及び(ii)昆虫にとって毒性のタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、又は小分子を共発現し得る。このようにして、組換え微生物は、誘引殺虫手法における使用に好適な物質を同時生成することができる。
当業者には明らかなとおり、特定の適用に使用されるフェロモン又はフェロモン組成物の量は、被害のタイプ及びレベル;使用する組成物のタイプ;活性成分の濃度;どのように組成物を提供するか、例えば、使用するディスペンサーのタイプ;取り扱う場所のタイプ;本方法が用いられる時間の長さ;並びに温度、風速及び風向、雨量及び湿度などの環境因子など、幾つかの要因に応じて変わり得る。当業者は、所与の適用に使用するフェロモン又はフェロモン組成物の有効量を決定することができるであろう。
本明細書で使用されるとき、「有効量」は、所望の結果に影響を及ぼすのに十分な本開示のフェロモン組成物の量を意味する。有効量は1回以上の投与で投与することができる。例えば、有効量の組成物とは、所与の昆虫を所与の場所に誘引するのに十分なフェロモン組成物の量を指し得る。更に、有効量の組成物とは、所与の場所における目的とする特定の昆虫集団の交尾を阻害するのに十分なフェロモン組成物の量を指し得る。
実施例1.メタセシス及び化学変換による酵素的に誘導されたゴンド酸からのフェロモン生成物の生成
この実施例は、種々の脂肪酸をフェロモン又はフェロモン前駆体の生合成生成の出発物質として使用し得ることを示す。本明細書に開示される生合成プロセスから得られる生成物を更なる化学変換に供して種々の生成物を生じさせることができる。
酵素によるオレイン酸の2炭素伸長により、ゴンド酸が得られる。エステル化後、次にゴンド酸脂肪酸メチルエステル(FAME)をZ選択的オレフィンメタセシスによってC11不飽和を含むC16及びC18 FAME生成物に変換することができる。エステルを還元すると、アルデヒド及び脂肪アルコールフェロモン材料が生成され得る。脂肪アルコール生成物のアセチル化により、対応する脂肪アセテートフェロモンを生じさせることができる。加えて、ゴンド酸は、酵素的に修飾されたオレイン酸に同じ化学転換を適用することにより、C20脂肪アルデヒド、アルコール及びアセテートフェロモンに直接変換することができる。
仮想例2:個別調整された合成ブレンド
この仮想例は、本明細書に開示される組換え微生物を使用して昆虫フェロモンの合成ブレンドを作成し得ることを示す。
図54に記載のスキームに示されるとおり、テトラデシル-ACP(14:ACP)を使用して、組換え微生物でE-及びZ-テトラデセニルアセテート(E11-14:OAc及びZ11-14:OAC)フェロモンのブレンドを生成することができる。このブレンドは種々の昆虫、例えば、ハスオビハマキ(Choristoneura roseceana)(ハマキガ科(Tortricidae)の蛾)によって生成される。
同様に、ヘキサデシル-ACP(16:ACP)を使用して、組換え微生物でZ-及びE-ヘキサデセニルアセテートフェロモン(E11-16:OAc及びZ11-16:OAc)のブレンドを生成することができる。
微生物を異なるデサチュラーゼ、又はレダクターゼ等の他の酵素で改変して、フェロモンの所望のブレンドを生成することができる。本発明の組換え微生物及び方法を用いて生成可能な特に関連性のある1つのブレンドは、97:3比の(Z)-11-ヘキサデセナール(Z11-16:Ald)及び(Z)-9-ヘキサデセナール(Z9-16:Ald)である。
実施例3:S.セレビシエ(S. cerevisiae)における膜貫通アルコール形成レダクターゼの発現
背景及び理論的根拠
微生物による脂肪酸からの昆虫脂肪アルコールの生成の改変は、合成経路の機能発現を必要とする。1つのかかる経路は、脂肪アシル-CoAの、位置特異的及び立体特異的不飽和脂肪アシル-CoAへの、及び続く脂肪アルコールへの変換を媒介する膜貫通デサチュラーゼ、及びアルコール形成レダクターゼを含む。これらの酵素をコードする幾つもの遺伝子がある種の昆虫(並びに脂肪アルコールレダクターゼの場合にはある種の微細藻類)に見られ、好ましい生成宿主である酵母における合成経路の構築に使用することができる。幾つもの膜貫通デサチュラーゼ及びアルコール形成レダクターゼ変異体をスクリーニングして、単一の昆虫脂肪アルコール又は脂肪アルコールのブレンドの高レベル合成を可能にする集団を同定し得る。加えて、これらの酵素を複数の宿主(サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))にわたってスクリーニングすることにより、これらの膜貫通タンパク質の最適発現に好適な宿主を見つけ出すための検索を最適化し得る。
手法の概要
昆虫由来の3つのアルコール形成レダクターゼを選択した。
S.セレビシエ(S. cerevisiae)における発現にコドン最適化して、レダクターゼをコードする核酸を合成した(シントン)。
所与のレダクターゼをコードする各核酸をGal1プロモーター下のエピソーム発現カセットにサブクローニングした。
S.セレビシエ(S. cerevisiae)野生型及びβ酸化欠失突然変異体を発現コンストラクトで形質転換した。
異種タンパク質をガラクトースによって誘導し、及びレダクターゼの機能発現をインビボでZ11-ヘキサデセン酸のZ11-ヘキサデセノールへの生物変換によって評価した。
GC-MS分析を用いて代謝産物を同定及び定量化した。
結果
アルコール形成レダクターゼ変異体をS.セレビシエ(S. cerevisiae)W303(野生型)及びBY4742 ΔPOX1(β酸化欠失突然変異体)における活性に関してスクリーニングした。酵素活性の評価には、Z11-ヘキサデセン酸を基質として選択した。インビボ生物変換アッセイから、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)、及びカブラヤガ(Agrotis segetum)に由来する酵素変異体(Ding, B-J., Loefstedt, C. Analysis of the Agrotis segetum pheromone gland transcriptome in the light of sex pheromone biosynthesis. BMC Genomics 16:711 (2015))をW303Aで発現させるとZ11-ヘキサデセノール生成がもたらされ、タンパク質誘導から48時間以内にそれぞれ約37μM(8mg/L)、約70μM(約16mg/L)、及び11μM(約3mg/L)にまで達したことが示された(図5及び図6)。生物学的に生成されたZ11-ヘキサデセノールは、GC-MSによって決定するとき、Z11-ヘキサデセノール標準物質(Bedoukian)と一致した(図7)。BY4742 ΔPOX1はまた、重要なβ酸化経路酵素の欠失がZ11-ヘキサデセン酸の分解を制限し得たため、発現宿主としても調べた。しかしながら、β酸化欠失突然変異体におけるレダクターゼ変異体の発現は、野生型宿主における発現と比較したときに生成物力価を低下させた(図5)。BY4742 ΔPOX1を宿主として使用したときの力価低下の1つの寄与因子は、W303と比較したときのバイオマスの減少であった(図8)。
従って、S.セレビシエ(S. cerevisiae)における少なくとも2つのアルコール形成レダクターゼの機能発現が、Z11-ヘキサデセン酸のZ11-ヘキサデセノールへの生物変換をもたらした。
結論
S.セレビシエ(S. cerevisiae)における昆虫膜貫通アルコール形成レダクターゼの機能発現が実証された。試験したレダクターゼの中で、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)に由来する変異体がZ11-ヘキサデセン酸に対して最も高活性である。
他の脂肪酸基質の生物変換を調べて酵素の可塑性を評価することができる。
材料及び方法
株の樹立及び機能発現アッセイ
S.セレビシエ(S. cerevisiae)W303(MATA ura3-1 trp1-1 leu2-3_112 his3-11_15 ade2-1 can1-100)及びBY4742(MATa POX1::kanMX his3Δ1 leu2Δ0 lys2Δ0 ura3Δ0)を発現宿主として使用した。脂肪アルコールレダクターゼ変異体をコードするDNA配列をS.セレビシエ(S. cerevisiae)における発現が最適化されるように再設計した(配列番号1~3)。生じたシントン(Genscript)をpESC-URAベクターにBamHI-XhoI部位を使用してクローニングして、Gal1プロモーターを利用したタンパク質発現を促進した。得られたプラスミドコンストラクトを使用してW303を形質転換し、CM寒天培地(2%グルコース含有、及びウラシル不含)(Teknova)で陽性形質転換体を選択した。機能発現を評価するため、CM寒天培地(2%グルコース含有、及びウラシル不含)にパッチした2つの陽性形質転換クローンを使用して、24ディープウェルプレートフォーマットを用いてCM液体培地を播種した。タンパク質発現を誘導するため、次に、28℃で成長させておいた一晩培養物にガラクトース、ラフィノース、及びYNBをそれぞれ2%、1%、及び6.7g/Lの最終濃度となるように補足した。タンパク質誘導の24時間後、生物変換基質Z11-ヘキサデセン酸(エタノール中)又はヘプタデカン酸(エタノール中)を300mg/Lの最終濃度となるように加えた。生物変換アッセイを28℃で48時間進めた後、GC-MS分析を行った。
代謝産物抽出及びGC-MS検出
Hagstroem et al.(Hagstroem, A. K., Lienard, M. A., Groot, A. T., Hedenstroem, E. & Loefstedt, C. Semi-Selective Fatty Acyl Reductases from Four Heliothine Moths Influence the Specific Pheromone Composition. PLoS One 7: e37230 (2012))の変法により脂質を抽出した。1.5mL細胞培養物を15mLファルコンチューブに移した。この細胞懸濁液を1mL 5N HClで酸性化した。5μLテトラデカン二酸(エタノール中10mM)を内部標準として加えた。1.5mLヘキサンを加えることによりこの混合物を抽出し、次に37℃、250rpmで1時間振盪した。相分離を促進するため、試料を2000gで10分間遠心した。次に1mLの有機ヘキサン相を1.5mLプラスチックチューブに移した。この試料を90℃で30分間加熱することにより溶媒を除去した。試料を蒸発乾固させた後、50μLのBSTFA(1%のトリメチルクロロシランを含有するN,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド)を加えた。1.5mLプラスチックチューブを10秒間にわたり2回激しく振盪した。ガラスインサートが入ったスクリューキャップGCガラスバイアルに移す前に、試料を1分間(13000rpm)遠心した。バイアルをキャップし、90℃で30分間加熱した。この方法によって生じたトリメチルシリルエステルを続いてGC-MS分析によって分析した。GC-MSパラメータを表6に指定する。SIMモード(特徴的生成物及びISイオン)を使用すると、バックグラウンドノイズの低下により検出感度が高まり、2.4μM(0.6mg/L)もの低量の生成物の検出が可能となる。スプリット比を更に低下させると、今後の適用向けに更なる感度上昇の可能性がもたらされる。図9に示すZ11-ヘキサデセノール検量線を使用して、酵母から生成されたZ11-ヘキサデセノールを定量化した。容易に区別されるヘプタデカノール生成物が成功したGC-MSランのベンチマークに用いられた可能性があるため、ヘプタデカン酸の生物変換も試験した。しかしながら、試験したレダクターゼのいずれも、ヘプタデカン酸に対して何ら活性を示さなかった。
実施例4:S.セレビシエ(S. cerevisiae)における膜貫通デサチュラーゼの発現
背景及び理論的根拠
微生物による脂肪酸からの昆虫脂肪アルコールの生成の改変には、合成経路の機能発現が必要である。1つのかかる経路は、脂肪アシル-CoAの、位置特異的及び立体特異的不飽和脂肪アシル-CoAへの、及び続く脂肪アルコールへの変換を媒介する膜貫通デサチュラーゼ、及びアルコール形成レダクターゼを含む。これらの酵素をコードする幾つもの遺伝子が、ある種の昆虫並びにある種の微細藻類に見られる。幾つもの膜貫通デサチュラーゼ及びアルコール形成レダクターゼ変異体をスクリーニングして、単一の昆虫脂肪アルコール又は脂肪アルコールのブレンドの高レベル合成を可能にする集団を同定し得る。加えて、これらの酵素を複数の宿主(サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))にわたってスクリーニングすることにより、これらの膜貫通タンパク質の最適発現に好適な宿主を見つけ出すための検索を最適化し得る。
手法の概要
デサチュラーゼ(昆虫由来:カブラヤガ(Agrotis segetum)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)、及び海洋性珪藻:タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana))の小さい組をテストケースとして選択して、機能発現アッセイ、代謝産物抽出方法、及び分析化学を調査し及び確立した。
S.セレビシエ(S. cerevisiae)におけるデサチュラーゼの発現用合成カセットを構築した。このカセットは、OLE1プロモーター領域、OLE1 N末端リーダー配列、及びVSP13ターミネーターからなる。
この発現カセットをGFP変異体の発現によって機能性に関して試験した。このカセットがバリデートされたことにより、昆虫デサチュラーゼの発現の調査へのその利用が可能であった。
異種デサチュラーゼを含有する発現コンストラクトでS.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1を形質転換した。デサチュラーゼの機能性を、不飽和脂肪酸(UFA)を外因的に補充しない場合のΔOLE1の成長をレスキューする能力によって評価した。S.セレビシエ(S. cerevisiae)デサチュラーゼ(OLE1)を補完成功の陽性対照として使用した。
ヘキサデカン酸(パルミチン酸)の(Z)-11-ヘキサデセン酸(パルミトバクセン酸)へのインビボ生物変換によってデサチュラーゼの機能性をバリデートした。
GC-MS分析を用いて代謝産物を同定及び定量化した。
結果
S.セレビシエ(S. cerevisiae)において膜貫通デサチュラーゼ変異体をスクリーニングした。当初3つの変異体を試験して、機能発現アッセイ、代謝産物抽出方法、及び分析化学を調査及び確立した。これらのデサチュラーゼをS.セレビシエ(S. cerevisiae)において機能発現させるため、pOLE1カセットと呼ばれるエピソーム合成発現カセット(図10)を構築し、これは、OLE1プロモーター領域、S.セレビシエ(S. cerevisiae)OLE1の最初の27アミノ酸をコードするN末端リーダー配列、及びVPS13(原生胞子の膜形成に関与するタンパク質、これのターミネーターは、RNA半減期を延長させることにより潜在的に異種タンパク質発現を増加させることが既に特徴付けられている)のターミネーター領域からなった。pOLE1カセットの機能性をそのGFP発現能力によってバリデートした(図11A~図11E)。続いて、昆虫デサチュラーゼシントン、及び酵母OLE1シントンをpOLE1カセットにクローニングし、S.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1株で発現させた。OLE1対立遺伝子(これはパルミトイル:CoA/ステアロイル:CoA(z)-9-デサチュラーゼをコードする)を欠失させると、それを機能性昆虫デサチュラーゼのスクリーニングツールとして利用することが可能になるため、この株を選択した。具体的には、活性デサチュラーゼであれば、UFAを外因的に補充する必要なしに成長を補完することが可能になり得る。pOLE1カセットを使用してOLE1を発現させると、UFAなしでのΔOLE1成長の成長が補完された(図11A~図11E);従って、これは補完アッセイの陽性対照としての役割を果たす。昆虫デサチュラーゼを発現させたとき、本発明者らは、それらがUFAなしでのΔOLE1成長を様々な程度でレスキューしたことを観察した。富栄養培地(YPD)寒天プレート上では、S.セレビシエ(S. cerevisiae)OLE1の発現は最も高いレベルの成長をもたらし、それにイラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼが続いた(図12A)。後者は、イラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼによる不飽和脂肪アシル:CoAの生成がΔOLE1における欠損した(Z)-9-ヘキサデセノイル:CoA生合成のサロゲートとしての役割を果たし得ることを示した。T.シュードナナ(T. pesudonana)及びカブラヤガ(A. segetum)デサチュラーゼの発現はYPD上での成長をそれほど良好にはレスキューしないように見えた(図12A)。最少培地(CM-Uraグルコース)寒天プレート上にパッチしたとき、S.セレビシエ(S. cerevisiae)OLE1及びイラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼの発現のみが、外因性UFAなしでのΔOLE1成長をレスキューした(図12B)。T.シュードナナ(T. pseudonana)及びカブラヤガ(A. segetum)デサチュラーゼの発現は最少培地寒天上でのΔOLE1の成長をもたらさなかったことから、UFAの生成におけるそれらの活性が限られていることが示唆される(結果は図示せず)。カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)においてデサチュラーゼライブラリをスクリーニングすると、クルミマダラメイガ(A. transitella)及びアメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼの機能発現が同定された。これらのデサチュラーゼをΔOLE1で発現させたとき、それらはYPD培地及びCM-Uraグルコース培地の両方でイラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼの発現と同程度にUFAなしでの成長をもたらした(図12B)。
パルミチン酸の昆虫特異的UFAへのインビボ生物変換によって異種デサチュラーゼの機能発現を更に特徴付けた。パルミチン酸を含有する最少培地で約96時間培養した後、イラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼを発現するS.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1の全脂肪酸分析から、天然酵母OLE1デサチュラーゼを発現する対照株に存在しない新規脂肪酸種(Z)-11-ヘキサデセン酸の生成が明らかになった(図13A~図13B)。カブラヤガ(A. segetum)、又はT.シュードナナ(T. pseudonana)デサチュラーゼを発現する株には、(Z)-11-ヘキサデセン酸は検出されない(結果は図示せず)。イラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼを発現するΔOLE1株には、(Z)-11-ヘキサデセン酸に加え、(Z)-9-ヘキサデセン酸も検出された(図13A~図13B)。この培養条件下で、イラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼを発現するΔOLE1のC16脂肪酸は、約84.7%のヘキサデカン酸、5.6%の(Z)-9-ヘキサデセン酸及び9.8%の(Z)-11-ヘキサデセン酸で構成される。比較すると、OLE1デサチュラーゼを発現するΔOLE1のC16脂肪酸画分は、約68.6%のヘキサデカン酸及び31.4%の(Z)-9-ヘキサデセン酸で構成される。イラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼを発現するΔOLE1における(Z)-11-ヘキサデセン酸生合成は約1.5mg/Lを占める。全脂肪酸及びこの混合物中の各脂肪酸の量は定量化することができる。生物学的に生成された(Z)-11-ヘキサデセン酸はまた、GC-MSによって決定するとき、標準物質(Z)-11-ヘキサデセン酸(Larodan)の保持時間及びフラグメンテーションパターンとも一致する(図14A~図14B)。従って、生物学的に生成された(Z)-11-ヘキサデセン酸の位置異性体及び立体異性体が確認された。クルミマダラメイガ(A. transitella)及びアメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼのインビボでの特徴付けも行うことができる。
要約すれば、UFA、即ち(Z)-9-ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)を外因的に補充しない場合のS.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1の成長のレスキュー能力を有する少なくとも3つの昆虫デサチュラーゼが同定された。
発現コンストラクトを担持するS.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1の富栄養培地(YPD)上での成長の程度は以下のデサチュラーゼ含量の順序であった:OLE1、イラクサギンウワバ(T. ni)、T.シュードナナ(T. pseudonana)、及びカブラヤガ(A. segetum)。
発現コンストラクトを担持するS.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1の最少培地(CMグルコース、ウラシル不含)上での成長の程度は以下のデサチュラーゼ含量の順序であった:OLE1、イラクサギンウワバ(T. ni)。
クルミマダラメイガ(A. transitella)及びアメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼを使用した補完アッセイも行ったところ、インビボ生物変換アッセイによって示されたカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)における機能発現が実証された。これらのデサチュラーゼはまた、並びにイラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼも、少なくとも富栄養及び最少培地上でのS.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1成長を補完した。
T.シュードナナ(T. pseudonana)及びカブラヤガ(A. segetum)デサチュラーゼの発現は、インキュベーション時間を14日にまで延長した後であっても、UFAを含まない最少培地上でのS.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1の成長をもたらさなかった。T.シュードナナ(T. pseudonana)又はカブラヤガ(A. segetum)デサチュラーゼを担持する株には、(Z)-11-ヘキサデセン酸は観察されなかった。
結論
S.セレビシエ(S. cerevisiae)における昆虫由来の膜貫通デサチュラーゼの機能発現が達成された。
所与の異種デサチュラーゼの活性は、外因性パルミトレイン酸補充なしでのS.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1の成長を補完するその能力、及びパルミチン酸を昆虫フェロモン前駆体(Z)-11-ヘキサデセン酸に変換するその能力から評価することができる。
S.セレビシエ(S. cerevisiae)における昆虫デサチュラーゼの機能発現及び/又は活性は、配列の起源に応じて幅広く異なる。上記の基準によって測定したとき、イラクサギンウワバ(T. ni)に由来する変異体が、カブラヤガ(A. segetum)及びT.シュードナナ(T. pseudonana)と比較して最良の活性を呈した。
クルミマダラメイガ(A. transitella)及びアメリカタバコガ(H. Zea)に由来するデサチュラーゼは、並びにイラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼも、ΔOLE1を補完した。これらのデサチュラーゼを使用した生物変換アッセイを行うことができる。
他の脂肪酸基質の生物変換を調べて酵素の可塑性を評価することができる。
材料及び方法
株の樹立及び機能発現アッセイ
S.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1(MATA OLE1::LEU2 ura3-52 his4)を発現宿主として使用した。OLE1プロモーター領域(配列番号5及び6)、27N末端アミノ酸のOLE1リーダー配列をコードするヌクレオチド(配列番号7)、及びVPS13ターミネーター配列(配列番号8)を含むpOLE1と呼ばれる合成発現カセット(図10、配列番号4)を作成し、pESC-URAベクターのSacI部位とEcoRI部位との間にクローニングした。pOLE1カセットの機能性を試験するため、SpeI部位と及びNotI部位との間にDasher GFPシントンを挿入してpOLE1-GFPプラスミドを作成した。コンピテントΔOLE1をpOLE1-GFPで形質転換し、UFAを含有するCM-Uraグルコース寒天プレート(Teknova)に置いた(20mm CM-URAグルコース寒天プレートに、1%テルジトール(tergitol)及び3μLパルミトレイン酸を含有する100μL CM-Uraグルコース培地を塗布した)。30℃で5日間インキュベートした後、ΔOLE1形質転換体の緑色の呈色によって示されるとおり、Dasher GFP発現が見えた。この結果から、pOLE1カセットが異種タンパク質発現をドライブする能力を有したことが示された。OLE1活性を回復させることにより、ΔOLE1補完性の検証を実施した。具体的には、リーダー配列を欠くpOLE1カセットに天然S.セレビシエ(S. cerevisiae)OLE1シントンを挿入してpOLE1-OLE1プラスミドを作成した。ΔOLE1の形質転換、及びUFAを含有するCM-Uraグルコース寒天での選択後、UFAを含まないYPD及びCM-Uraグルコースにシングルコロニーをパッチした。30℃で5日間インキュベートした後、成長を観察した(図11A~図11E)。予想どおり、Dasher GFP発現はUFAなしでのΔOLE1成長を補完できなかった(図11A~図11E)。デサチュラーゼ変異体をコードするDNA配列を合成し(クローニング目的で用いられる制限部位を除去するヌクレオチド変化を含めた)、SpeI-NotI部位を用いてpOLE1にクローニングした(Genscript、配列番号9~13)。昆虫デサチュラーゼによるΔOLE1の補完アッセイをOLE1デサチュラーゼと同様に実施した。
機能発現を評価するため、UFAを含有するCM-Uraグルコース寒天培地にパッチしておいた2つの陽性形質転換クローンを1.5mLのパルミチン酸(エタノール中)含有CM-Uraグルコース液体培地に300mg/Lの最終濃度で、及び6.7g/LでYNBに接種した。(z)-11-ヘキサデセン酸異性体を確認するため、20mLの培養物を作成した。生物変換アッセイを28℃で96時間進行させた後、GC-MS分析を行った。
代謝産物抽出及びGC-MS検出
全脂質組成並びに(Z)-11-ヘキサデセン酸定量化は、Moss et al. (1982)(Moss, C. W., Shinoda, T. & Samuels, J. W. Determination of cellular fatty acid compositions of various yeasts by gas-liquid chromatography. J. Clin. Microbiol. 16: 1073-1079 (1982))及びYousuf et al (2010)(Yousuf, A., Sannino, F., Addorisio, V. & Pirozzi, D. Microbial Conversion of Olive Oil Mill Wastewaters into Lipids Suitable for Biodiesel Production. J. Agric. Food Chem. 58: 8630-8635 (2010))による変法に基づいた。通常約10mg~80mgのペレット状細胞(1.5mLプラスチックチューブ内)を5%(w/w)の水酸化ナトリウム含有メタノール中に再懸濁した。アルカリ性細胞懸濁液を1.8mLスクリューキャップGC-バイアルに移した。この混合物を90℃のヒートブロックで1時間加熱した。400 2.5N HClで酸性化する前に、バイアルを放冷して室温に戻した。1mMヘプタデカン酸を含有する500μLクロロホルムを加え、この混合物を激しく振盪し、次に水相及び有機相の両方を1.5mLプラスチックチューブに移した。この混合物を13,000rpmで遠心した後、450μLの有機相を新しい1.5mLプラスチックチューブに移した。水相を2回目に500μLクロロホルムで、今回はヘプタデカン酸なしに抽出した。合わせた有機相を90℃で蒸発させた。室温に冷却した後、残留する脂肪酸メチルエステル及び遊離脂肪酸を溶解し、0.2M TMSH(水酸化トリメチルスルホニウム)を含有するメタノール中で誘導体化した。
ジメチルジスルフィド(DMDS)誘導体のフラグメンテーションパターンを標準物質のDMDS誘導体と比較することにより、生物学的に生成された(Z)-11-ヘキサデセン酸の位置選択性を決定した。酵母培養物を12のアリコートに分けた(開発した手順におけるいかなるパラメータも変更しないようにした)。細胞をペレット化すると、これにより平均63mgの細胞(ccw)(18mLの培養物から755mg)が得られた。このペレットを上記に記載したとおり塩基性メタノリシスに供した。しかしながら、酸性化後、これらの試料を50mLファルコンチューブに合わせた。合わせた試料を10mLクロロホルムで2回抽出した。この混合物を3000rpmで10分間遠心すると、より良好な相分離が実現した。合わせた有機相、これらは新しい50mL Falconに合わせ、10mLのブライン及び10mLの水で連続的に洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空濃縮した。濃縮した油を1.5mLクロロホルム中に溶解させて、1.5mLプラスチックチューブに移した。クロロホルムを90℃で蒸発させた。残りの試料は50μLのメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)中に溶解させた。50μLを1、5、10及び20μLに分け、インサートのないGC-バイアルに移した。各バイアルに200μL DMDS(ジメチルジスルフィド)及び50μL MTBE(60mg/mLヨウ素含有)を加えた。この混合物を50℃で48時間加熱した後、100μL飽和チオ硫酸ナトリウム溶液を加えることにより過剰なヨウ素を除去した。試料をプラスチックバイアルに移し、500μLジクロロメタンで数回抽出した。合わせた有機相を新しい1.5mLプラスチックバイアルに移し、90℃で蒸発させた。試料を50μL DCMに取り、GC-バイアルに移した。この試料をHagstroem et al. (2013)の方法(Hagstroem, A. K. et al. A moth pheromone brewery: production of (Z)-11-hexadecenol by heterologous co-expression of two biosynthetic genes from a noctuid moth in a yeast cell factory. Microb. Cell Fact. 12: 125 (2013))を用いてGC-MSによって分析した(表7)。
実施例5:昆虫脂肪アルコール合成用の生成プラットフォームとしてのS.セレビシエ(S. cerevisiae)
背景及び理論的根拠
微生物による脂肪酸からの昆虫脂肪アルコールの生成の改変には、合成経路の機能発現が必要である。1つのかかる経路は、脂肪アシル-CoAの、位置特異的及び立体特異的不飽和脂肪アシル-CoAへの、及び続く脂肪アルコールへの変換を媒介する膜貫通デサチュラーゼ、及びアルコール形成レダクターゼを含む。これらの酵素をコードする幾つもの遺伝子が、ある種の昆虫並びにある種の微細藻類に見られる。幾つもの遺伝子変異体をスクリーニングすることにより、単一の昆虫脂肪アルコール又はそのブレンドの高レベル合成能を有する経路の作成を可能にする酵素活性を同定した。加えて、これらの膜貫通タンパク質の最適発現に好適な宿主を見つけ出すため、これらの酵素を複数の宿主(サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))にわたってスクリーニングした。
手法の概要
パルミチン酸からの(Z)-11-ヘキサデセン酸の合成を可能にするため選択の機能性膜貫通デサチュラーゼ変異体を発現するようにS.セレビシエ(S. cerevisiae)を予め改変した。これにより、変異体を同定して、それらの生物変換性能に基づき順位付けすることが可能であった(実施例4を参照されたい)。
(Z)-11-ヘキサデセン酸からの(Z)-11-ヘキサデセノール(Z11-16OH)の合成を可能にするため選択の機能性膜貫通レダクターゼ変異体を発現するようにS.セレビシエ(S. cerevisiae)を予め改変した。これにより、変異体を同定して、それらの生物変換性能に基づき順位付けすることが可能であった(実施例3を参照されたい)。
これまでのスクリーニングで同定された最も高活性の変異体デサチュラーゼ及びレダクターゼを含む幾つかの脂肪アルコール経路をアセンブルした。
S.セレビシエ(S. cerevisiae)W303A及びΔOLE1を経路コンストラクトで形質転換した。組換え酵母がパルミチン酸からZ11-16OHを合成する能力によって経路の機能性を評価した。
GC-MS分析を用いて代謝産物を同定及び定量化した。
結果
目標は、S.セレビシエ(S. cerevisiae)の1つ以上の昆虫脂肪アルコール生合成経路を改変することであった。これまでに、S.セレビシエ(S. cerevisiae)における昆虫由来の幾つかの膜貫通デサチュラーゼの機能発現が実証された(実施例4を参照されたい)。簡潔に言えば、OLE1プロモーター領域、S.セレビシエ(S. cerevisiae)OLE1の最初の27アミノ酸をコードするN末端リーダー配列、及びVPS13のターミネーター領域からなる発現カセットを設計することにより、異種デサチュラーゼ発現が可能であった。活性デサチュラーゼのスクリーニングは、2つの手法を用いることにより行った。第一に、不飽和脂肪酸(UFA)を外因的に加えない場合のΔOLE1成長をレスキューするその能力に関して活性デサチュラーゼをスクリーニングし、第二に、パルミチン酸の(Z)-11-ヘキサデセン酸への生物変換に関するインビボスクリーニングによって活性デサチュラーゼをスクリーニングした。これらのスクリーニング戦略により、幾つかの活性変異体を同定し、それらの相対活性を順位付けすることが可能になった。これらのスクリーニング結果に基づき、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)(TN_desat)及びS.セレビシエ(S. cerevisiae)(SC_desat)由来のデサチュラーゼを脂肪アルコール経路におけるコンビナトリアル発現用に選択した。S.セレビシエ(S. cerevisiae)デサチュラーゼはパルミトレイン酸及びオレイン酸を形成することが知られている。
S.セレビシエ(S. cerevisiae)における昆虫由来の幾つかの膜貫通アルコール形成レダクターゼの機能発現が既に実証済みであった(実施例3を参照されたい)。GAL1プロモーター及びCYCターミネーターを含む発現カセットを使用して、S.セレビシエ(S. cerevisiae)におけるレダクターゼの機能発現を可能にした。(Z)-11-ヘキサデセン酸のZ11-16OHへのインビボ生物変換によって幾つかのレダクターゼをスクリーニングすることにより、活性変異体を同定し、それらの相対活性を順位付けすることが可能になった。このスクリーニングに基づき、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)(HA_reduc)、及びエジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)(SL_reduc)由来のレダクターゼを脂肪アルコール経路のアセンブリ用に選択した。
コンビナトリアルアセンブリにより、4つの脂肪アルコール経路、即ち、TN_desat-HA_reduc、TN_desat-SL_reduc、SC_desat-HA_reduc、及びSC_desat-SL_reducが作成された。SC_desatを含む経路を昆虫Z11-16OH合成の陰性対照として供した。これらの経路を有するコンストラクトでS.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1及びW303Aを形質転換し、パルミトレイン酸を塗布した2%グルコース含有CM-Ura上で成長した形質転換体を単離した。脂肪アルコール生成に関して試験するため、2%グルコース、1%ラフィノース、2%ガラクトースを含有するCM-Ura培地に個々のクローンを接種した。300mg/Lパルミチン酸、及び360mg/Lパルミトレイン酸を生物変換基質として加えた。パルミトレイン酸なしにパルミチン酸を用いた生物変換も試験した。パルミチン酸及びパルミトレイン酸の存在下で約96時間培養した後、培養ブロス分析により、それぞれSC_desat-HA_reduc、及びTN_desat-HA_reducを有するΔOLE1株の培養物中に主要なC16アルコール生成物として約0.2mg/L、及び約0.3mg/LのZ11-9OHが合成されたことが明らかになった(図15、図16)。イラクサギンウワバ(T. ni)又はS.セレビシエ(S. cerevisiae)デサチュラーゼ、及びオオタバコガ(H. armigera)レダクターゼを含む経路にも微量のZ11-16OHが検出された。概して、(Z)-11-ヘキサデセン酸はイラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼから生合成されなければならないが、パルミトレイン酸を外因的に加えると、Z9-16OHの合成用の基質がより容易に利用可能となるため、パルミチン酸及びパルミトレイン酸の存在下では、Z9-16OH合成がZ11-16OH合成よりも有利であったことが予想された。脂肪酸分析も実施した。この結果によれば、昆虫デサチュラーゼを含む経路では、S.セレビシエ(S. cerevisiae)デサチュラーゼを発現する経路と比べて(Z)-11-ヘキサデセン酸(図17)の蓄積がより高いことが示された。微量とはいえ、S.セレビシエ(S. cerevisiae)デサチュラーゼを有する経路からのZ11-16OH、及び(Z)-11-ヘキサデセン酸の検出(これは予想外であった)から、S.セレビシエ(S. cerevisiae)デサチュラーゼによる小規模なΔ11不飽和化活性の可能性が開かれる。Z11-16COOH脂肪酸部分の低レベルの合成もZ9-14COOH脂肪アシル中間体の伸長から誘導することができる。図15に示されるデータはまた、オオタバコガ(H. armigera)レダクターゼを含む経路と比較して、エジプトヨトウ(S. littoralis)レダクターゼを含めると、Z9-16OH力価が(最大約30倍)低下したことも示した。エジプトヨトウ(S. littoralis)レダクターゼを用いる経路には、Z11-16OHは検出することができなかった。これらの結果は、エジプトヨトウ(S. littoralis)レダクターゼと比較してオオタバコガ(H. armigera)レダクターゼを用いた(Z)-11-ヘキサデセン酸の優れた生物変換を示したレダクターゼスクリーニングアッセイと一致する。
TN_desat-HA_reduc及びTN_desat-SL_reducを発現するΔOLE1株により、パルミチン酸の生物変換を単独でも(パルミトレイン酸を外因的に加えることなく)試験した(図18)。培養ブロス分析から、優勢な不飽和C16脂肪酸生成物としてのZ11-16OHの合成が決定された(図16)。このアッセイでは、それぞれオオタバコガ(H. armigera)レダクターゼ及びエジプトヨトウ(S. littoralis)レダクターゼを有する経路により、最大0.22mg/L、及び0.05mg/LのZ11-16OHが合成された。生物学的に生成されたZ11-16OHはまた、GC-MS(SIM)によって決定するときに保持時間も一致し、標準物質Z11-16OHと同様の特徴的な297.3m/zピークを呈した。従って、生物学的に生成されたZ11-16OHの位置異性体及び立体異性体が確認された(図19)。更に、Z9-16OH(0.01mg/L)はまた、イラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼ及びオオタバコガ(H. armigera)レダクターゼを共発現する株の培養物にも観察された。このことから、イラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼもΔ9不飽和化活性を有し得ることが示唆された。
OLE1欠失は成長を損なう。従って、インタクトなOLE1対立遺伝子を有する宿主であるW303Aにおいても経路発現を調べた。しかしながら、成長の改善にも関わらず、この宿主における経路発現はZ11-16OH力価の2倍を超える低下をもたらした。この結果は、OLE1の産物である内因性不飽和脂肪アシル:CoAによるOLE1プロモーター(これが異種デサチュラーゼ発現をドライブした)の抑制に起因するものと思われた。S.セレビシエ(S. cerevisiae)OLE1プロモーターは、従来、飽和及び不飽和脂肪酸によってそれぞれ正及び負の調節を受けることが分かっている構造領域によって特徴付けられている(Choi, J-Y. et al. Regulatory Elements That Control Transcription Activation and Unsaturated Fatty Acid-mediated Repression of the Saccharomyces cerevisiae OLE1 Gene. J. Biol. Chem. 271: 3581-3589 (1996))。シス転写調節に加え、不飽和脂肪酸はまた、OLE1プロモーターエレメントとも相互作用してmRNA安定性を調節する(Gonzales, C. I. et al. Fatty acid-responsive control of mRNA stability. Unsaturated fatty acid-induced degradation of the Saccharomyces OLE1 transcript. J. Biol. Chem. 271: 25801-25809 (1996))。OLE1プロモーターのこの固有の複雑さに起因して、S.クルイベリ(S.kluyveri)由来のOLE1プロモーターなど(Kajiwara, S. Molecular cloning and characterization of the v9 fatty acid desaturase gene and its promoter region from Saccharomyces kluyveri. FEMS Yeast. Res. 2: 333-339 (2002)、調節されない直交性プロモーターを利用した昆虫デサチュラーゼ発現のドライブについて、脂肪アルコール生成の増進のため調べることができる。
要約すれば、S.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1において合成フェロモン経路変異体が機能的に発現すると、パーム油脂肪酸(パルミチン酸及びパルミトレイン酸)からの、それぞれ最大約0.2mg/L及び0.3mg/LのZ11-16OH及びZ9-16OHの合成が生じた。
最も高い脂肪アルコールをもたらした改変経路は、イラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼ及びオオタバコガ(H. armigera)レダクターゼを含む。
Z11-16OHを生成した株において、この経路の中間体である(Z)-11-ヘキサデセン酸の蓄積も観察された。
Z11-16OHは生成されず、陰性対照株(ベクターのみを含む)において僅かに痕跡量のZ9-16OHが検出されたに過ぎなかった。
保持時間及びフラグメンテーションパターンを標準物質化合物とGC-MSによって比較することにより、生物学的に生成されたZ11-16OHの位置化学及び立体化学が確認された。
結論
昆虫フェロモンの脂肪アルコール前駆体であるZ11-16OH及びZ9-16OHの合成のためのパン酵母の改変が実証された。
脂肪アルコール生成はデサチュラーゼ及びレダクターゼ変異体の選択に応じて様々である。
(Z)-11-ヘキサデセン酸の蓄積から、アルコール形成レダクターゼの性能を高めることによる更なる脂肪アルコール改良の可能性が示唆された。しかしながら、(Z)-11-ヘキサデセン酸の検出は、それがリン脂質として小胞体膜以外の任意の膜(ミトコンドリア膜、ペルオキシソーム、核膜など)に取り込まれ、従って、そのCoAチオエステル部分における(Z)-11-ヘキサデセン酸をその基質として利用しなければならないアルコール形成レダクターゼ(恐らくは小胞体内へと移行した)に到達できないことに起因した可能性もある。
脂肪アルコール力価を増加させる培養条件を調べることができる。イラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼは、経路において、高活性を示し且つΔOLE1成長をイラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼよりも速くレスキューした別の変異体であるクルミマダラメイガ(A. transitella)デサチュラーゼに置き換えることができる。この合成経路は、パルミチン酸及びパルミトレイン酸などの疎水性基質に対して高い接着特性を有する酵母であるカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に取り込むことができる。微生物による生成プラットフォームへの基質の接近容易性を高めることにより、生成物力価及び収率を改善し得ると予測できる。
材料及び方法
株の樹立及び機能発現アッセイ
S.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1(MATA OLE1::LEU2 ura3-52 his4)、及びW303A(MATA ura3-1 trp1-1 leu2-3_112 his3-11_15 ade2-1 can1-100)を発現宿主として使用した。分子設計により、BamHI及びXhoIを利用してレダクターゼシントンを切り出すコンビナトリアル経路アセンブリ(実施例3を参照されたい)及びpOLE1-デサチュラーゼコンストラクトを含有するプラスミドへのサブクローニング(実施例4を参照されたい)が可能である。コンピテント酵母を経路コンストラクトで形質転換し、CM-Uraグルコース寒天プレート(Teknova)にプレーティングした。ΔOLE1形質転換の場合、コロニーのプレーティングには、1%テルジトール(tergitol)及び3μLパルミトレイン酸を含有する100μL CM-Uraグルコース培地を塗布した20mM CM-Uraグルコース寒天プレートを利用した。
機能発現を評価するため、6.7g/LのYNB、2%グルコース、1%ラフィノース、及び2%ガラクトースを含有する約20mL CM-Ura液体培地に形質転換体を接種した。脂肪酸基質、即ちパルミチン酸(エタノール中)を300mg/Lの最終濃度で加えた。パルミトレイン酸を360mg/Lの最終濃度で加えた。生物変換アッセイを28℃で96時間進行させた後、GC-MS分析を行った。
代謝産物抽出及びGC-MS検出
脂肪酸分析は実施例4に記載されるとおりであり、但し試料は2回抽出するのでなく、試料は1mMヘプタデカン酸メチル(C17:0Me)を含有するクロロホルムで1回抽出したのみであった。脂肪アルコール分析は実施例3に記載されるとおりであり、但しヘキサン(テトラデカン二酸を含有する)でなく、クロロホルム(1mMヘプタデカン酸メチルを含有する)を使用した。抽出時間は1時間から20秒間に短縮した。その後、試料は1.5mLプラスチックチューブでなく、1.8mL GCバイアルに収集した。質量分析計はSIMモード(m/z 208、297.3及び387.3)で使用した。
実施例6:カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)における膜貫通デサチュラーゼの発現
背景及び理論的根拠
微生物による脂肪酸からの昆虫脂肪アルコールの生成の改変には、合成経路の機能発現が必要である。1つのかかる経路は、脂肪アシル-CoAの、位置特異的及び立体特異的不飽和脂肪アシル-CoAへの、及び続く脂肪アルコールへの変換を媒介する膜貫通デサチュラーゼ、及びアルコール形成レダクターゼを含む。これらの酵素をコードする幾つもの遺伝子が、ある種の昆虫並びにある種の微細藻類に見られる。幾つもの遺伝子変異体をスクリーニングすることにより、単一の昆虫脂肪アルコール又はそのブレンドの高レベル合成能を有する経路の作成を可能にする酵素活性を同定した。加えて、これらの酵素を複数の宿主(サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))にわたってスクリーニングすることにより、これらの膜貫通タンパク質の最適発現に好適な宿主を見つけ出すための検索を最適化し得る。
手法の概要
デサチュラーゼ(昆虫由来:カブラヤガ(Agrotis segetum)、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、アワノメイガ(Ostrinia furnacalis)、及びカラントシュートボーラー(Lampronia capitella)及び海洋性珪藻:タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana))の小さい組をテストケースとして選択して、機能発現アッセイ、代謝産物抽出方法、及び分析化学を調査し及び確立した。
SPV053におけるpXICL発現カセットからのmCherry対照の組込み及び機能発現の成功が確認された。
SPV053バックグラウンドで同じpXICLベクターを使用する組換えデサチュラーゼライブラリを組み込んだ(図20)。1つの変異体、カブラヤガ(Agrotis segetum)のZ11デサチュラーゼもクローニングして、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)Ole1pの最初の27アミノ酸が昆虫デサチュラーゼのN末端に融合したタンパク質生成物を作製した(配列番号15)。
ヘキサデカン酸(パルミチン酸)の(Z)-11-ヘキサデセン酸(パルミトバクセン酸)へのインビボ生物変換によってデサチュラーゼの機能性をバリデートした。
GC-FID及びGC-MS分析を用いて代謝産物を同定及び定量化した。
結果
ライブラリ構築
この試験は、C.トロピカリス(C. tropicalis)(SPV053)における膜貫通デサチュラーゼ変異体のスクリーニングに焦点を置いた。スクリーニングには、パルミトイル-CoA(C16:0)に対して既報告のZ11デサチュラーゼ活性を有する5つの昆虫デサチュラーゼ(配列番号16~19、23)及び既報告のZ9デサチュラーゼ活性を有する3つの昆虫デサチュラーゼ(配列番号20~22)を含めた。1つの変異体、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)OLE1 N末端の27アミノ酸が昆虫配列の上流に融合したカブラヤガ(A. segetum)由来のZ11デサチュラーゼ(配列番号16)もサブクローニングした(図20、配列番号15)。構築時点では、カブラヤガ(A. segetum)Z11デサチュラーゼは陽性対照であると考えられ、及びC.アルビカンス(C. albicans)OLE1融合物は、カンジダ属(Candida)リーダー配列を含めると機能発現が向上し得るかどうかを試験するために構築した。このコンストラクトは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)デサチュラーゼスクリーニングで使用されるものを模倣するように設計した(実施例4を参照されたい)。最後に、組込み及び発現に関する陽性対照及び組換えデサチュラーゼ活性に関する陰性対照としての役割を果たすように、mCherry赤色蛍光タンパク質(配列番号14)を発現する対照コンストラクトを含めた(図21A~図21D)。
SPV053への線状化プラスミドの形質転換効率はコンストラクト間で大幅に異なった。低効率であるものの、各変異体につき少なくとも3つのクローン分離株が同定された(表8及び表9)。ゼオシン選択下ではゼオシン耐性マーカーの存在が成長速度を増加させるはずであるため、形質転換プレート上の大型コロニーが陽性組込み体である可能性がより高いという仮定がなされていた。スクリーニング結果の分析から、大型コロニーの数は形質転換効率と相関しないことが示唆された。代わりに、総コロニー(小及び大)の数が、観察された効率と最良に相関した(図22)。加えて、ある場合には、小コロニー中に陽性クローンが認められた。低いプレーティング密度では、成長速度が組込みイベントと相関し得る(即ち陽性組込み体はより速く成長する)可能性がある。コロニーをYPD+ゼオシンにパッチし直す二次スクリーニングが、陽性組込み体のエンリッチメントに有効であることが分かった。パッチの速い成長は、形質転換プレート上のコロニーの一般的な集団と比べて陽性組込み体である可能性が高かった。
機能発現アッセイ
一連のインビボ生物変換実験によって異種デサチュラーゼの機能発現を特徴付けた。エタノール(誘導のため)及び飽和酸基質(パルミチン酸、パルミチン酸メチル、ミリスチン酸メチル)を補足した富栄養(YPD)培地又は限定(CMグルコース)培地において、昆虫デサチュラーゼを発現するC.トロピカリス(C. tropicalis)SPV053由来の株を培養した。小規模(2ml)培養物は24ディープウェルプレートで合計72時間、最初の24時間が経った後に基質を追加して培養した。
初回のスクリーニングでは、パルミチン酸基質を補足した複数の生物変換培地を調べた。細胞脂質含量の脂肪酸メチルエステル(FAME)分析により、2つの機能性パルミトイル-CoA(Z)-11デサチュラーゼが同定された。クルミマダラメイガ(A. transitella)又はアメリカタバコガ(H. Zea)Z11デサチュラーゼを発現する株(SPV0305-SPV0310)は、(Z)-11-ヘキサデセン酸標準で溶出した、mCherry対照株(SPV0302-SPV0304)では観察されない脂肪酸種を生成した(図23)。試験した他の株は非天然脂肪酸種を生成しなかった(データは示さず)。C16画分の近似脂肪酸組成を表10に掲載する。天然パルミトイル-CoA(Z)-9デサチュラーゼがなおもSPV053バックグラウンドに存在し、これは、デサチュラーゼの(Z)-9/(Z)-11特異性を厳密には決定できないことを意味する。培地中にパルミチン酸を補足すると、アメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼ発現株について(Z)-11/(Z)-9ヘキサデセン酸比が0.6から1.4に上昇した。(Z)-11-ヘキサデセン酸力価は、クルミマダラメイガ(A. transitella)デサチュラーゼを発現する株について約5.62mg/Lであり、及びアメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼを発現する株について5.96mg/Lであることが観察された。パルミチン酸メチル補足でも同様の性能が観察された(データは示さず)。
推定(Z)-11-ヘキサデセン酸種の更なる特徴付けに十分なバイオマスを作成するため、生物変換アッセイを振盪フラスコ内の20mlにスケールアップした。観察された種は(Z)-11-ヘキサデセン酸標準と共に及び(Z)-9-ヘキサデセン酸標準とは独立して溶出したが、異なる脂肪酸異性体(例えば(E)-9-ヘキサデセン酸)が(Z)-11-ヘキサデセン酸と同様の保持時間を有し得た可能性があった。異なる立体異性体がDB-23上で別様に溶出することに伴い、(E)-11-ヘキサデセン酸の発生を除外することができた。(Z)-11-ヘキサデセン酸生成の最終的な確認は、DMDS誘導体化脂肪酸の質量分析検出を用いて11-位置選択性を確認することにより完了した。この誘導体化技法を用いると、(Z)-11及び(E)-11異性体も原則的に解くことができた。実験試料のフラグメンテーションパターンは(Z)-11-ヘキサデセン酸標準に一致させることができた(図24A~図24E)。この技法を用いて、クルミマダラメイガ(A. transitella)及びアメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼ発現株の両方の特定の(Z)-11-ヘキサデセン酸位置異性体及び立体異性体の生成が確認された。
最後に、ミリスチン酸メチル(C14:0)を基質としてデサチュラーゼライブラリ全体に関して試験した。クルミマダラメイガ(A. transitella)又はアメリカタバコガ(H. Zea)Z11デサチュラーゼのいずれかを発現する株において、ミリスチン酸塩(C14:0)と(Z)-9-テトラデセン酸(Z9-C14:1)との間に溶出する非天然脂肪酸種が観察された(図25A)。この非天然種は(Z)-11-テトラデセン酸であることが仮定され、このことは標準物質で確認することができる。加えて、カブラヤガ(A. segetum)Z11デサチュラーゼ、アワノメイガ(O. furnacalis)Z9デサチュラーゼ、及びアメリカタバコガ(H. Zea)Z9デサチュラーゼが全て、ミリスチン酸塩(C14:0)ピークのすぐ後に溶出した肩ピークを生じた(図25B)。全ての株において他のC14由来種(例えばテトラデカン二酸)が観察された。これらの結果は、クルミマダラメイガ(A. transitella)及びアメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼがミリストイル-CoAに対して何らかの活性を有することを示唆する。インビボでのデサチュラーゼ基質特異性に関して更なる結論を導き出すには、未知の種の確認及び定量化が必要である。
要約すれば、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)(AAF81787)及びクルミマダラメイガ(Amyelois transitella)(JX964774)由来の2つのデサチュラーゼをSPV053で発現させて、内因的に産生されるか又は補足されるかのいずれかのパルミチン酸からの(Z)-11-ヘキサデセン酸の合成をもたらした。
C.トロピカリス(C. tropicalis)SPV053におけるアメリカタバコガ(H. Zea)及びクルミマダラメイガ(A. transitella)デサチュラーゼの機能発現が富栄養(YPD)培地及び限定(CMグルコース)培地の両方におけるインビボ生物変換アッセイを用いて確認された。活性デサチュラーゼが細胞内(Z)-11-ヘキサデセン酸を生じさせ、これはmCherry発現対照株では観察されなかった。アメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼを発現するSPV053のC16脂肪酸組成は、約50.0%ヘキサデカン酸、30.91%(Z)-9-ヘキサデセン酸及び19.1%(Z)-11-ヘキサデセン酸である。パルミチン酸を補足すると、組成物は58.1%ヘキサデカン酸、17.5%(Z)-9-ヘキサデセン酸及び24.4%(Z)-11-ヘキサデセン酸である。クルミマダラメイガ(A. transitella)デサチュラーゼを発現するSPV053のC16脂肪酸組成は、55.5%ヘキサデカン酸、14.5%(Z)-9-ヘキサデセン酸及び30.0%(Z)-11-ヘキサデセン酸である。比較すると、mCherryを発現するSPV053は、約72.9%ヘキサデカン酸、27.1%(Z)-9-ヘキサデセン酸及び(Z)-11-ヘキサデセン酸無しのC16脂肪酸組成を生じた。(Z)-11-ヘキサデセン酸は、機能性Z11デサチュラーゼを発現する両方の株において約5.5mg/Lで生成された。
イラクサギンウワバ(T. ni)、T.シュードナナ(T. pseudonana)、又はカブラヤガ(A. segetum)デサチュラーゼを含む株では(Z)-11-ヘキサデセン酸は観察されなかった。
アメリカタバコガ(H. Zea)、アワノメイガ(O. furnacalis)、又はカラントシュートボーラー(L. capitella)由来のZ9昆虫デサチュラーゼを発現する株について、脂肪酸組成の違いは観察されなかった。
DMDS誘導体化後のGC-MSによって標準物質化合物の保持時間及びフラグメンテーションパターンと比較することにより、生物学的に生成された(Z)-11-ヘキサデセン酸の位置異性体及び立体異性体が確認された。
ミリスチン酸メチルを補足したクルミマダラメイガ(A. transitella)及びアメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼを発現するSPV053の生物変換では、mCherry発現陰性対照株に観察されない未同定の代謝産物が生成された。この代謝産物のGC保持時間は、ミリスチン酸塩(C14:0)と(Z)-9-テトラデセン酸との間であることが認められる。
結論
C.トロピカリス(C. tropicalis)SPV053における昆虫由来の膜貫通デサチュラーゼの機能発現が達成された。
C.トロピカリス(C. tropicalis)におけるスクリーニングによって同定された活性デサチュラーゼはまた、S.セレビシエ(S. cerevisiae)ΔOLE1で発現させたときにOLE1機能も補完した(実施例4を参照されたい)。
インビボアッセイを用いて非天然脂肪酸異性体(例えば(Z)-11-ヘキサデセン酸)に関するC.トロピカリス(C. tropicalis)におけるデサチュラーゼ活性をアッセイすることができる。パルミチン酸又はミリスチン酸メチルなどの飽和酸基質を補足することにより、向上した比の非天然脂肪酸を生成することができる。
昆虫デサチュラーゼの機能発現及び/又は活性は、C.トロピカリス(C. tropicalis)SPV053では配列起源に応じて幅広く異なる。S.セレビシエ(S. cerevisiae)スクリーニングで観察された結果と同様に(実施例4を参照されたい)、カブラヤガ(A. segetum)及びT.シュードナナ(T. pseudonana)変異体は検出可能な(Z)-11-ヘキサデセン酸を生成しなかった。興味深いことに、イラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼも、アッセイ条件下で検出可能な(Z)-11-ヘキサデセン酸を生成することができなかった。S.セレビシエ(S. cerevisiae)アッセイと異なり、イラクサギンウワバ(T. ni)発現コンストラクトはキメラOLE1リーダー配列を含まなかった。
機能性アメリカタバコガ(H. Zea)変異体及び非機能性イラクサギンウワバ(T. ni)変異体に対するC.アルビカンス(C. albicans)OLE1リーダー配列の包含を試験することができる。
C14特異的デサチュラーゼを同定するため更なるデサチュラーゼ変異体の機能発現を調べることができる。
機能性デサチュラーゼをレダクターゼ変異体と共に発現させて、続いて不飽和脂肪アルコール生成に関するスクリーニングを実施することができる。
材料及び方法
株の樹立
遺伝子の記録には従来手法を用いた。CTGロイシンコドンをTTAに置き換えたことを除き、天然配列は変化させなかった。GenscriptによるNcoI及びNotI制限部位を使用して、全ての遺伝子をpPV0053にクローニングした。大腸菌(E. coli)NEB10βへの形質転換後、Zyppyプラスミドミニプレップキット(Zymo Research、Irvine, CA)を用いてプラスミドをミニプレップした。BsiWI(New England Biolabs、Ipswich, MA)で消化することによりプラスミドを線状化した後、SPV053に形質転換した。消化後、Clean and Concentrator Kit(Zymo Research、Irvine, CA)を使用してDNAを単離した。約1μgのDNAを電気穿孔によって形質転換した。TE+100mM酢酸リチウム+DTTとインキュベートする代わりに、細胞はTE+100mM酢酸リチウムのみで2時間インキュベートした。陽性組込み体は部位特異的であることが分かり、チェックPCRにより遺伝子タイピングを行った。低効率転換の更なるスクリーニングに二段階手法を取った。約60コロニーをYPD+300μg/mlゼオシンに再パッチし、一晩成長させた。急速に成長した(24時間以内の高密度増殖)一部のパッチをコロニーPCRによってスクリーニングした。急速に成長するパッチの圧倒的多数が陽性組込み体として同定された。
機能発現アッセイ
YPD及びCMグルコースにおけるパルミチン酸補足
陽性分離株をYPD+300μg/mlゼオシンに再パッチし、一晩成長させて、次に4℃で保存した。株をパッチプレートから24ディープウェルプレート(四角形ウェル、ピラミッド形底)内の2mlのYPDに接種した。各デサチュラーゼ変異体及びmCherry発現対照株につき3つの陽性クローンを接種した。ディープウェルプレートを30℃、1000rpm、及び80%湿度でInfors HT Multitron Proプレートシェーカーにおいて24時間インキュベートした。24時間インキュベートした後、培養物を1mlの等量に分けて2組の同一プレートを作製した。両組のプレートとも500×gで遠心することによりペレット化した。一方の組のプレートは2mlのYPD+0.3%(v/v)エタノールに再懸濁し、第2の組は2mlのCMグルコース+0.3%エタノールに再懸濁した。この段階でエタノールを加えて、ICLプロモーターからの組換え酵素発現を誘導した。培養物を同じ条件下で更に24時間インキュベートした後、エタノール中90g/Lストック溶液からの培養物に300mg/Lパルミチン酸を加えた。この結果は、新鮮0.3%エタノールをパルミチン酸と併せて加えることであった。一部の株はまた、パルミチン酸を加えることなく培養した。これらの培養物は代わりに0.3%エタノールを加えた。全ての培養物を更に24時間インキュベートした後、最後に0.3%エタノールを加えた。更に24時間インキュベートした後、1.5mlの各培養物を1.7ml微量遠心管に回収し、ペレット化した。上清は新鮮なチューブに保管し、ペレットは以下に記載するとおり処理した。一部の上清試料はまた抽出して、細胞外培地中の遊離酸を調べた。
代替基質による反復スクリーニング
パルミチン酸及びパルミチン酸メチルの両方を基質として使用してmCherry対照及び確認された陽性変異体を再スクリーニングした。培養は、エタノールストック溶液(パルミチン酸メチル94g/Lストック、313mg/L最終濃度)から等モル量(1.17mM)の基質を加えて上記に記載したとおり行った。株の完全なパネルでも、84g/Lストックのミリスチン酸メチル(C14:0)を使用して同じプロトコルを繰り返した。基質の最終濃度は再び1.17mMであった。
(Z)-11-ヘキサデセン酸異性体の確認
(Z)-11-ヘキサデセン酸合成を確認するためインビボ生物変換アッセイをスケールアップした。株SPV0302、SPV0303、及びSPV0304(mCherry)、SPV0304、SPV0305、及びSPV0306(クルミマダラメイガ(A. transitella)Z11デサチュラーゼ)、並びにSPV0307、SPV0308、及びSPV0309(アメリカタバコガ(H. Zea)Z11デサチュラーゼ)の2ml YPDシード培養物をInfors HT Multitronプレートシェーカーにおいて30℃、1000rpm、80%湿度で一晩成長させた。3つのクローン分離株の各々からの200μlの一晩培養物をプールし、20ml YPDが入った単一の125mlバッフル付きフラスコに接種した。得られた3つのフラスコを30℃及び250rpm(Inforsフラスコシェーカー)で24時間成長させた。培養物を500×gで遠心することによりペレット化し、20mlのYPD+0.3%(v/v)エタノールに再懸濁し、125mlバッフル付き振盪フラスコに戻した。培養物を更に24時間インキュベートした後、エタノール中90g/Lストックの300mg/Lパルミチン酸(1フラスコ当たり221μl)を加えた。24時間インキュベートした後、誘導を持続させるため各フラスコに更なる0.3%(v/v)エタノール(221μl)を加えた。フラスコを更に24時間インキュベートした後、FAME分析及びDMDS誘導体化のため細胞を回収した。
代謝産物抽出及びGC-MS検出
全脂質組成並びに(Z)-11-ヘキサデセン酸定量化は、Moss et al. (1982)及びYousuf et al (2010)による変法に基づいた。通常約10mg~80mgのペレット化した細胞(1.5mLプラスチックチューブ内)を、5%(w/w)の水酸化ナトリウムを含有するメタノール中に再懸濁した。アルカリ性細胞懸濁液を1.8mLスクリューキャップGC-バイアルに移した。この混合物を90℃のヒートブロックで1時間加熱した。400 2.5N HClで酸性化する前に、バイアルを放冷して室温に戻した。1mMヘプタデカン酸を含有する500μLクロロホルムを加え、この混合物を激しく振盪し、次に水相及び有機相の両方を1.5mLプラスチックチューブに移した。この混合物を13,000rpmで遠心した後、450μLの有機相を新しい1.5mLプラスチックチューブに移した。水相を2回目に500μLクロロホルムで、今回はヘプタデカン酸なしに抽出した。合わせた有機相を90℃で蒸発させた。室温に冷却した後、残留する脂肪酸メチルエステル及び遊離脂肪酸を溶解し、0.2M TMSH(水酸化トリメチルスルホニウム)を含有するメタノール中で誘導体化した。
ジメチルジスルフィド(DMDS)誘導体のフラグメンテーションパターンを標準物質のDMDS誘導体と比較することにより、生物学的に生成された(Z)-11-ヘキサデセン酸の位置選択性を決定した。酵母培養物を12のアリコートに分けた(開発した手順におけるいかなるパラメータも変更しないようにした)。細胞をペレット化すると、これにより平均63mgの細胞(ccw)(18mLの培養物から755mg)が得られた。このペレットを上記に記載したとおり塩基性メタノリシスに供した。しかしながら、酸性化後、これらの試料を50mLファルコンチューブに合わせた。合わせた試料を10mLクロロホルムで2回抽出した。この混合物を3000rpmで10分間遠心すると、より良好な相分離が実現した。合わせた有機相を新しい50mLファルコンに合わせ、10mLのブライン及び10mLの水で連続的に洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空濃縮した。濃縮した油を1.5mLクロロホルム中に溶解させて、1.5mLプラスチックチューブに移した。クロロホルムを90℃で蒸発させた。残りの試料は50μLのメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)中に溶解させた。50μLを1、5、10及び20μLに分け、インサートのないGC-バイアルに移した。各バイアルに200μL DMDS(ジメチルジスルフィド)及び50μL MTBE(60mg/mLヨウ素含有)を加えた。この混合物を50℃で48時間加熱した後、100μL飽和チオ硫酸ナトリウム溶液を加えることにより過剰なヨウ素を除去した;しかしながら、カンジダ属(Candida)株からのデタージェントの過剰形成に起因して、層が十分に混合されなかった。従って試料を15mLファルコンチューブ内で希釈して、200μL、3.55mL MTBE(ヨウ素及び分析物を含有する)、500μLジクロロメタン、1.5mL水及び1mLエタノールの最終試料組成とした。有機相を1.8mLガラスバイアルにおいて85℃で段階的に蒸発させた。試料を500μLジクロロメタンに取り、試料を実施例4にあるとおりHagstroem et al. (2013)の方法を用いたGC-MSによって分析した。
実施例7:ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)における膜貫通デサチュラーゼの発現
背景及び理論的根拠
微生物による脂肪酸からの昆虫脂肪アルコールの生成の改変には、合成経路の機能発現が必要である。1つのかかる経路は、脂肪アシル-CoAの、位置特異的及び立体特異的不飽和脂肪アシル-CoAへの、及び続く脂肪アルコールへの変換を媒介する膜貫通デサチュラーゼ、及びアルコール形成レダクターゼを含む。これらの酵素をコードする幾つもの遺伝子が、ある種の昆虫並びにある種の微細藻類に見られる。或いは、位置特異的及び立体特異的デサチュラーゼを使用して、脂肪酸前駆体リッチな微生物油を生成することができる。次に微生物油は誘導体化し、活性成分に還元することができる。幾つもの遺伝子変異体をスクリーニングすることにより、単一の昆虫脂肪酸及びアルコール又はそのブレンドの高レベル合成能を有する経路の作成を可能にする酵素活性を同定した。加えて、これらの酵素を複数の宿主(サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・ビスワナチイ(トロピカリス)(Candida viswanathii(tropicalis))、及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))にわたってスクリーニングすることにより、これらの膜貫通タンパク質の最適発現に好適な宿主を見つけ出すための検索を最適化し得る。
S.セレビシエ(S. cerevisiae)及びC.ビスワナチイ(トロピカリス)(C. viswanathii(tropicalis))におけるデサチュラーゼの初期スクリーニングにより、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)、及びイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)から3つの活性Z11-C16:1デサチュラーゼ変異体が同定された。S.セレビシエ(S. cerevisiae)スクリーニングは、S.セレビシエ(S. cerevisiae)Ole1p Z9デサチュラーゼのN末端リーダー配列が完全長昆虫Z11デサチュラーゼ配列に融合したコード配列を使用した。この戦略はこれまでに科学文献においてS.セレビシエ(S. cerevisiae)で真核生物デサチュラーゼを発現させるために用いられている。上記のデサチュラーゼの3つ全てが、OLE1欠失バックグラウンドで発現させたとき、Ole1pリーダー融合を伴うZ11デサチュラーゼ活性を示した。C.アルビカンス(C. albicans)Ole1pリーダー配列を伴う同様の設計をアメリカタバコガ(H. Zea)由来のZ11デサチュラーゼで用いた。このOle1p-アメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼ融合物は、活性であるものの、Z11-ヘキサデセン酸力価を有意に増加させることはなかった。加えて、従来どおり最適化したクルミマダラメイガ(A. transitella)Z11デサチュラーゼは、S.セレビシエ(S. cerevisiae)及びC.ビスワナチイ(C. viswanathii)の両方で活性であった。以下の研究は、2つの異なるY.リポリティカ(Y. lipolytica)株、SPV140及びSPV300におけるアメリカタバコガ(H. Zea)、イラクサギンウワバ(T. ni)、及びクルミマダラメイガ(A. transitella)Z11デサチュラーゼの機能発現を試験することに焦点を置いた。アメリカタバコガ(H. Zea)及びイラクサギンウワバ(T. ni)デサチュラーゼには天然配列及びヒト(Homo sapiens)コドン最適化した配列の両方を使用した一方、クルミマダラメイガ(A. transitella)には天然配列のみを使用した。最後に、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)Ole1p Z9ステアロイル-CoAデサチュラーゼのN末端は、S.セレビシエ(S. cerevisiae)又はC.アルビカンス(C. albicans)のいずれに由来するOle1pのN末端よりも昆虫デサチュラーゼと一層緊密にアラインメントする。このアラインメントに基づき、2つの更なるデサチュラーゼバージョンを作成した。推定リーダー配列をY.リポリティカ(Y. lipolytica)Ole1pからイラクサギンウワバ(T. ni)及びアメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼに交換した。
手法の概要
Z11デサチュラーゼ(昆虫由来:クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni))の焦点を絞ったライブラリ(これらはS.セレビシエ(S. cerevisiae)又はC.ビスワナチイ(C. viswanathii)のいずれかにおいて活性が観察された)を、URA3選択マーカーを有するXPR2遺伝子座を標的とするダブルクロスオーバーカセットにクローニングした。タンパク質コード配列は、天然昆虫配列(配列番号24、25)、ヒト(Homo sapiens)最適化コード配列(配列番号26、27)、又はN末端84塩基(アメリカタバコガ(H. Zea)、配列番号29)又は81塩基(イラクサギンウワバ(T. ni)、配列番号28)がY.リポリティカ(Y. lipolytica)OLE1(YALI0C05951)遺伝子のN末端96塩基と交換されているヒト(Homo sapiens)最適化配列のいずれかを使用する。S.セレビシエ(S. cerevisiae)及びC.ビスワナチイ(C. viswanathii)スクリーニングと異なり、リーダー配列キメラは、宿主リーダー配列が完全長デサチュラーゼコード配列のN末端に連結されているのではなく、リーダー配列の直接的な交換を試験する。クルミマダラメイガ(A. transitella)デサチュラーゼについては、天然コード配列のみを使用した(配列番号30)。
これらの7つのデサチュラーゼコンストラクトの各々をSPV140(PO1f)及びSPV300(H222 ΔP ΔA ΔF ΔURA3)に形質転換し、部位特異的組込みが確認された。
デサチュラーゼ活性は、YPD培地におけるヘキサデカン酸(パルミチン酸)の(Z)-11-ヘキサデセン酸(パルミトバクセン酸)へのインビボ生物変換によって試験した。
GC-FID分析を用いて代謝産物を同定及び定量化した。
結果
株の樹立
XPR2遺伝子座への組込みを標的とするY.リポリティカ(Y. lipolytica)発現カセットを含むpPV101ベクターにデサチュラーゼ変異体をクローニングした。
天然昆虫配列(配列番号24、25)、ヒト(Homo sapiens)にコドン最適化した完全長昆虫配列(配列番号26、27)、又は推定リーダー配列がY.リポリティカ(Y. lipolytica)OLE1デサチュラーゼ由来のリーダー配列に置換されているもの(配列番号28、29)でイラクサギンウワバ(T. ni)及びアメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼを各々合成した。天然昆虫コード配列を用いてクルミマダラメイガ(A. transitella)デサチュラーゼも合成した(配列番号30)。7つ全てのデサチュラーゼ変異体をSPV140に形質転換した。以前の活性結果に基づき、アメリカタバコガ(H. Zea)及びクルミマダラメイガ(A. transitella)デサチュラーゼ変異体のみをSPV300に形質転換した。
機能発現アッセイ
C.ビスワナチイ(C. viswanathii)SPV053における膜貫通デサチュラーゼ発現に使用したプロトコルの変法によって機能的活性を評価した(実施例6を参照されたい)。簡潔に言えば、昆虫デサチュラーゼを発現するY.リポリティカ(Y. lipolytica)SPV140及びSPV300由来の株を富栄養(YPD)培地で培養してバイオマスを生じさせた。YPDで生じたバイオマスを使用して、小規模(2ml)培養物をパルミチン酸と共に24ディープウェルプレートにおいて合計48時間培養した(詳細については材料及び方法を参照されたい)。
イラクサギンウワバ(T. ni)、アメリカタバコガ(H. Zea)、及びクルミマダラメイガ(A. transitella)変異体の初期スクリーニングでは、ヒト(Homo sapiens)にコドン最適化したアメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼ変異体のみが検出可能なZ11-ヘキサデセン酸を生成した(図26)。天然アメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼの発現は100±5mg/L Z11-ヘキサデセン酸の生成をもたらし、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)OLE1リーダー配列を含むバージョンは83±11mg/Lを生成した。図26に見られるとおり、他の主要な脂肪酸種の分布は機能性デサチュラーゼ発現の影響を比較的受けなかった。活性株では、Z11-ヘキサデセン酸が脂肪酸種の10%(g/g)を占めた(細胞外表面に吸着し得るパルミチン酸基質を含む)。
SPV140バックグラウンドにおける活性変異体をSPV300由来デサチュラーゼ株と比較してフォローアップ実験を行った。hrGFPを発現する親SPV300及びSPV140を陰性対照として使用した。同じ生物変換アッセイプロトコルを使用した。SPV140にあるとおり、ヒト(H. sapiens)最適化変異体のみが検出可能な活性を生じた(図27)。SPV300株はより高い最終細胞密度に成長した(SPV300 OD600=26~28、SPV140 OD600=19~22)(図28)。ヒト(H. sapiens)コドン最適化した天然アメリカタバコガ(H. Zea)Z11-デサチュラーゼを発現する株(pPV199)について、最も高い力価が観察された。再度試験したSPV140株は113±1mg/L(5.5±0.2mg/L/OD)のZ11-ヘキサデセン酸を生じたが、これは最初の実験で観察された力価よりも13%高い(図29)。同じデサチュラーゼを発現するSPV300株は、より広範囲の生成能力を生じた。平均してそれらは89±18mg/L(3.3±1.2mg/L/OD)のZ11-ヘキサデセン酸を生成したが、1つのクローンは124mg/L(4.6mg/L/OD)のZ11-ヘキサデセン酸を生成した。
要約すれば、ヒト(Homo sapiens)コドン最適化したアメリカタバコガ(H. Zea)Z11デサチュラーゼ変異体のみが検出可能なZ11-ヘキサデセン酸を生成した。現在のアッセイ条件下では、SPV300と比べてSPV140バックグラウンドで僅かに高い力価が観察された。表11にZ11-ヘキサデセン酸力価を要約する。
SPV300では、pPV200(ヒト(Homo sapiens)コドン最適化したY.リポリティカ(Y. lipolytica)OLE1-アメリカタバコガ(H. Zea)Z11デサチュラーゼ)の1つの非部位特異的組込み体を試験した。この組込み体は検出可能なZ11-ヘキサデセン酸を生成しなかったが、これらの2つの部位特異的組込み体は55±1mg/Lを生成した。
SPV140又はSPV300由来株のペレットからは主要なヒドロキシ又は二酸ピークは観察されず、現在のアッセイ条件下で(比較的低い基質濃度、富栄養培地)、SPV300におけるβ-酸化/ω-酸化遺伝子の欠失によってZ11-ヘキサデセン酸蓄積は増加しなかった。
結論
アメリカタバコガ(H. Zea)Z11デサチュラーゼは活性であり、約500mg/L パルミチン酸基質から約100mg/L Z11-ヘキサデセン酸の生成をもたらす。3つの陽性組込み体及び24ウェルプレートアッセイにおけるレプリケート実験にわたって機能発現が実証された。
アメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼは、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)における活性にコドン最適化(ヒト(Homo sapiens)又は潜在的にY.リポリティカ(Y. lipolytica))が必要であった。
イラクサギンウワバ(T. ni)Z11デサチュラーゼは、S.セレビシエ(S. cerevisiae)で活性であるものの、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)では検出可能なZ11-ヘキサデセン酸を生成しない。
Y.リポリティカ(Y. lipolytica)株のアッセイの再現性はグリセロールストックから出発して確認することができる。
クルミマダラメイガ(A. transitella)デサチュラーゼは、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)における発現にコドン最適化することができる。
Y.リポリティカ(Y. lipolytica)は候補生成宿主であるため、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)に活性デサチュラーゼの更なるコピーを組み込むことができ、生物変換を向上させる培養条件を同定することができ、及び基質変換を定量化することができる。
材料及び方法
株の樹立
全てのデサチュラーゼ遺伝子を合成した(Genscript)。天然配列又はヒト(Homo sapiens)コドン最適化のいずれかを使用した。合成した遺伝子はpPV101にサブクローニングした。プラスミドを形質転換し、Zyppyプラスミドミニプレップキット(Zymo Research、Irvine, CA)を使用して大腸菌(E. coli)EPI400からプレップした。Frozen-EZ Yeast Transformation II Kit(Zymo Research、Irvine, CA)を使用して約1~2μgの線状化DNAを形質転換した。形質転換混合物全体をCMグルコース -ura寒天プレートにプレーティングした。陽性組込み体は部位特異的であることが分かり、チェックPCRにより遺伝子タイピングを行った。
機能発現アッセイ
YPDにおけるパルミチン酸補足
陽性分離株をYPDに再パッチし、一晩成長させ、次に4℃で保存した。株をパッチプレートから24ディープウェルプレート(四角形ウェル、ピラミッド形底)内の2mlのYPDに接種した。各デサチュラーゼ変異体につき3つの陽性クローンを接種した。SPV140及び親SPV300におけるpPV101の3つの分離株を陰性対照として使用した。ディープウェルプレートを28℃及び250rpmでInfors Multitron冷却フラスコシェーカーにおいて24時間インキュベートした。24時間インキュベートした後、1ml容積の各培養物を500×gで遠心することによりペレット化した。各ペレットを2mlのYPDに再懸濁した。エタノール中90g/Lストック溶液からの培養物に500mg/Lパルミチン酸を加えた。この結果、0.5%エタノールをパルミチン酸基質と共に加えることになった。培養物は全て、48時間インキュベートした後にエンドポイント試料を採取した。最終細胞密度はTecan Infinite 200proプレートリーダーで測定した。0.75又は0.8mlの各培養物を1.7ml微量遠心管に回収し、ペレット化した。上清を除去し、ペレットを以下に記載するとおり処理した。
代謝産物抽出及びGC-FID分析
全脂質組成並びに(Z)-11-ヘキサデセン酸定量化は、Moss et al. (1982)及びYousuf et al (2010)による変法に基づいた。通常約10mg~80mgのペレット化した細胞(1.5mLプラスチックチューブ内)を、5%(w/w)の水酸化ナトリウムを含有するメタノール中に再懸濁した。アルカリ性細胞懸濁液を1.8mLクリンプバイアルに移した。この混合物を90℃のヒートブロックで1時間加熱した。400 2.5N HClで酸性化する前に、バイアルを放冷して室温に戻した。1mMヘプタデカン酸メチルを含有する500μLクロロホルムを加え、この混合物を激しく振盪し、次に水相及び有機相の両方を1.5mLプラスチックチューブに移した。この混合物を13,000rpmで遠心した後、450μLの有機相をGCバイアルに移した。脂質の分析及び脂肪酸の定量化のため、50μLの0.2M TMSH(メタノール中水酸化トリメチルスルホニウム)を加え、試料をGC-FIDによって分析した。
実施例8:昆虫脂肪アルコール合成用の生成プラットフォームとしてのカンジダ・ビスワナチイ(トロピカリス)(Candida viswanathii(tropicalis))
背景及び理論的根拠
昆虫膜貫通デサチュラーゼ及びレダクターゼの変異体を予めスクリーニングし、カンジダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)又はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のいずれかにおけるそれらの機能発現に基づき順位付けした(実施例3、4及び6を参照されたい)。アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)デサチュラーゼ及びオオタバコガ(Helicoverpa armigera)レダクターゼを選択してC.ビスワナチイ(C. viswanathii)における合成昆虫脂肪アルコール経路をアセンブルした。カンジダ属(Candida)イソクエン酸リアーゼ(ICL)プロモーター下にあるコドン最適化アメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼと、カンジダ属(Candida)転写伸長因子(TEF)プロモーター下にあるコドン最適化オオタバコガ(H. armigera)レダクターゼとの同時発現を完全脂肪アルコール経路のゲノム組込みによって達成した。組換え株(SPV0490)の培養物において単純炭素源及びパルミチン酸を使用してZ11-16OHの蓄積を達成した。
手法の概要
推定構成的C.トロピカリス(C. tropicalis)プロモーター(pTEF)によってドライブされるオオタバコガ(Helicoverpa armigera)レダクターゼと対にした機能性アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)デサチュラーゼ(実施例6を参照されたい)を含む組込みプラスミドを設計した。
ヘキサデカン酸(パルミチン酸)のZ11-16OHへのインビボ生物変換によって完全経路の機能性を評価した。
GC-FID及びGC-MS分析を用いて代謝産物を同定及び定量化した。
結果
ICLプロモーター下にあるアメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼ及びTEFプロモーター下にあるオオタバコガ(H. armigera)レダクターゼを発現するように改変されたカンジダ属(Candida)の培養物にZ11-16OHの蓄積が検出された(表12及び図30)。
材料及び方法
株の樹立
2つの発現カセットを含む組込みプラスミド(ppV0228)を設計した。第一のカセットは、C.ビスワナチイ(C. viswanathii)ICLプロモーター(配列番号33)によってドライブされるアメリカタバコガ(H. Zea)コドン最適化デサチュラーゼ(配列番号31)を含む。第2のカセットは、C.トロピカリス(C. tropicalis)TEFプロモーター(配列番号34)によってドライブされるコドン最適化オオタバコガ(H. armigera)レダクターゼ(配列番号32)を含む。ICLプロモーターカセットの遺伝子発現はICLターミネーター配列(配列番号35)によって終結する。TEFプロモーターカセットの遺伝子発現はTEFターミネーター配列(配列番号36)によって終結する。遺伝子の記録には従来手法を用いた。天然遺伝子CTGロイシンコドンをTTAに置き換えたことを除き、配列は変化させなかった。大腸菌(E. coli)NEB10βへの形質転換後、Zyppyプラスミドミニプレップキット(Zymo Research、Irvine, CA)を用いてプラスミドをミニプレップした。BsiWI(New England Biolabs、Ipswich, MA)で消化することによりプラスミドを線状化した後、SPV053に形質転換した。消化後、Clean and Concentrator Kit(Zymo Research、Irvine, CA)を使用してDNAを単離した。約3~5μgのDNAを電気穿孔によって形質転換した。陽性組込み体は部位特異的であることが分かり、チェックPCRにより遺伝子タイピングを行った。低効率転換の更なるスクリーニングに二段階手法を取った。約100コロニーをYPD+250μg/mlゼオシンに再パッチし、一晩成長させた。急速に成長した(24時間以内の高密度増殖)一部のパッチをコロニーPCRによってスクリーニングした。
機能発現アッセイ
YPDにおけるパルミチン酸補足
陽性分離株をYPD+300μg/mlゼオシンに再パッチし、一晩成長させ、次に4℃で保存した。株をパッチプレートから24ディープウェルプレート(四角形ウェル、ピラミッド形底)内の2mlのYPDに接種した。各デサチュラーゼ及びレダクターゼ変異体につき4つの陽性クローンを接種し、及び各デサチュラーゼ及びmCherry発現対照株につき3つの陽性クローンを接種した。ディープウェルプレートを30℃、1000rpm、及び80%湿度でInfors HT Multitron Proプレートシェーカーにおいて24時間インキュベートした。24時間インキュベートした後、1ml容積の各培養物を500×gで遠心することによりペレット化した。各ペレットは2mlのYPD+0.3%(v/v)エタノールに再懸濁した。この段階でエタノールを加えて、ICLプロモーターからの組換え酵素発現を誘導した。培養物を同じ条件下で更に24時間インキュベートした後、エタノール中90g/Lストック溶液からの培養物に300mg/Lパルミチン酸を加えた。この結果は、新鮮0.3%エタノールをパルミチン酸と併せて加えることであった。全ての培養物を更に24時間インキュベートした後、最後に0.3%エタノールを加えた。更に24時間インキュベートした後、1.5mlの各培養物を1.7ml微量遠心管に回収し、ペレット化した。上清を除去し、ペレットを以下に記載するとおり処理した。
代謝産物抽出及びGC-MS検出
通常約10mg~80mgのペレット化した細胞(1.5mLプラスチックチューブ内)を、5%(w/w)の水酸化ナトリウムを含有するメタノール中に再懸濁した。アルカリ性細胞懸濁液を1.8mLクリンプバイアルに移した。この混合物を90℃のヒートブロックで1時間加熱した。400μL 2.5N HClで酸性化する前に、バイアルを放冷して室温に戻した。1mMヘプタデカン酸メチルを含有する500μLクロロホルムを加え、この混合物を激しく振盪し、次に水相及び有機相の両方を1.5mLプラスチックチューブに移した。この混合物を13,000rpmで遠心した後、450μLの有機相をGCバイアルに移した。有機相を90℃のヒートブロックにおいて30分間蒸発させた。1%トリメチルクロロシランを含有する50μL N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミドに残渣を溶解した。ガラスインサートに移す前に、この混合物を90℃で5分加熱した。この試料をGC-MSによって分析した(表13)。
実施例9:ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)由来の昆虫脂肪アルコール生成
背景及び理論的根拠
パルミチン酸からの昆虫脂肪アルコール(Z11-16OH及びZ9-16OH)合成の生成プラットフォームとしてヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)を改変した。
Z11デサチュラーゼ(実施例7)及び脂肪アシル-CoAレダクターゼ(FAR)の機能発現を個々に確認した後、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)において完全Z11-16OH及びZ9-16OH経路(Bdr)を改変した。脂肪アルコール力価を改善する目的で、成長促進用に設計した培養物と比べた脂質貯蔵の誘発用に設計した培養物も調べた。成長条件は高いバイオマス生成に有利であるが、改変経路によって用いられる脂肪アシル-CoAプールサイズを制限し、脂肪アシル-CoA中間体を膜合成に向ける。逆に、脂質貯蔵条件は脂肪アシル-CoAの生成の強力な落ち込みを生じさせ、これは望ましい。しかしながら、脂肪体への脂肪アシル-CoA輸送はFAR活性に関して強い競合を生じる。この第2のシナリオ下では、細胞にZ11-16Acid又はZ9-16Acidが蓄積するとしても、その大部分はFARにとって到達できない。他方で、脂質貯蔵条件下では脂質再動員の連続的なフラックスがあってもよく、これはFARに利用可能なZ11-16CoA又はZ9-16CoAの持続的なプールにつながる。
手法の概要
2つの生物不飽和化-還元(Bdr)経路変異体をH222 ΔPΔAΔF(SPV300)バックグラウンドで試験した。第1は、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)Z11デサチュラーゼをオオタバコガ(Helicoverpa armigera)脂肪アシル-CoAレダクターゼ(FAR 配列番号41のアミノ酸配列)と対にした組換え発現を組み合わせてZ11-16OH合成経路を作り出した。第2は、天然Y.リポリティカ(Y. lipolytica)Z9デサチュラーゼ活性をオオタバコガ(H. armigera)脂肪アシル-CoAレダクターゼ(FAR)発現と組み合わせてZ9-16OH経路を作り出した。
アメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼ及びオオタバコガ(H. armigera)FARを発現する2つの組込みプラスミドを構築した。デサチュラーゼ発現にはTEFプロモーターを使用し、レダクターゼ発現にはEXP1(エクスポートタンパク質)又はTAL1(トランスアルドラーゼ)プロモーターを使用した。
H222 ΔPΔAΔF(SPV300)バックグラウンドへのZ11-16OH経路カセットの組込みの成功はコロニーPCRによって確認した。
16Acid(パルミチン酸)のZ11-16OH(Z-11-ヘキサデセノール)へのインビボ生物変換によって完全Z11-16OH経路の機能性を評価した。
TEFプロモーターによってドライブされるオオタバコガ(H. armigera)FARを発現する予め構築したSPV471(H222 ΔPΔAΔF由来)を使用した16Acid(パルミチン酸)のインビボ生物変換によって完全Z9-16OH経路の機能性を評価した。
GC-MS分析を用いてZ9-16OH及びZ11-16OHを同定及び定量化した。GC-FID分析を用いて脂肪酸を同定及び定量化した。
概要
アメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼ(pTEF)及びオオタバコガ(H. armigera)レダクターゼ(pEXP1)を発現する10個の分離株をスクリーニングした。インビボ生物変換アッセイにより、全ての分離株からのZ11-16OH生成が確認された。
10g/Lパルミチン酸メチルを補足したYPD培地において、比較的低い、検出可能なZ11-16OH力価(0.26±0.09mg/L)が観察された。Z11-16Acid前駆体は220±11mg/Lで測定された(クローン2、4、9、17、23間)。
C:N比が約80の半限定培地において、より高いZ11-16OH力価が観察された。10個全ての分離株にわたってZ11-16OHは2.65±0.36mg/Lで生成された。Z11-16Acid前駆体力価は900±30mg/Lであった。1つの分離株(SPV578)は3.68±0.31mg/L Z11-16OH(Z11-16Acid 840±14mg/L)を生成した。
アメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼ(pTEF)及びオオタバコガ(H. armigera)レダクターゼ(pTAL1)を発現する9個の分離株をスクリーニングした。インビボ生物変換アッセイにより、全ての分離株からのZ11-16OH生成が確認された。
1つの分離株(SPV603)は半限定培地(Z11-16Acid 1.36g/L)で6.82±1.11mg/L Z11-16OHを生成した。
先に試験したレダクターゼ株、SPV471(オオタバコガ(H. armigera)FARを発現するH222 ΔPΔAΔF)は、半限定培地(約80のC:N比)を用いると4.30±2.33mg/L Z9-16OH及び450±80mg/L Z9-16Acidを生成した。
結果
株の樹立
文献のエビデンスから、昆虫デサチュラーゼ及びFARは両方とも、活性部位が細胞質に向かって配向した小胞体の膜に局在することが示唆される。機能変異体のうち、アメリカタバコガ(H. Zea)由来のZ11デサチュラーゼ及びオオタバコガ(H. armigera)由来のFAR(FAR 配列番号41のアミノ酸配列)を選択し、1つ仮説は、同じ属(ヘリコベルパ属(Helicoverpa))由来の酵素であれば、ER膜に起こり得るタンパク質間相互作用をより良好に保つことができるであろうというものであった。
2つの新規コンストラクトをGenscriptから注文し、先にアセンブルしたアメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼプラスミド、pPV0199にクローニングした。Y.リポリティカ(Y. lipolytica)由来のEXP1又はTAL1のいずれかのプロモーターを有する2つのFARシントンをこの発現カセットにクローニングした。
1つのデュアル発現プラスミド(EXP1プロモーターを含む)を親株SPV300(H222 Δpox1 Δpox2 Δpox3 Δpox4 Δpox5 Δpox6 Δadh1 Δadh2 Δadh3 Δadh4 Δadh5 Δadh6 Δadh7 Δfao1 Δura3)に形質転換した。同じ親株の2つの異なるコンピテント細胞調製物を形質転換して、コンピテント細胞調製物によって生じる株性能のばらつきを研究した。約25%のURA+ クローンが、XPR2遺伝子座における標的組込み体であることが確認された(調製物1について20%、調製物2について33%)。Comp.細胞調製物1からの2つのクローン及びComp.細胞調製物2からの8つ全ての標的クローンを機能発現アッセイにおけるスクリーニングに選択した。
第2のデュアル発現プラスミド(TAL1プロモーターを含む)を同じ親株(SPV300)に組み込んだ。23個のコロニーをチェックPCRによってスクリーニングし、及び11個が標的組込み体であることが分かった(48%)。9個の組込み体を機能発現アッセイにおけるスクリーニングに選択した。
SPV471(オオタバコガ(H. armigera)FARを発現するH222 ΔPΔAΔF)の構築は先述のとおりであった。
Z11-16OH機能発現アッセイ
インビボ24ウェルプレートアッセイを用いてZ11-16OHの生成を判定した。このアッセイは、スクリーニングデサチュラーゼ及びレダクターゼ変異体に用いられる設計、並びに脂肪酸蓄積を増加させるために用いられる条件に基づいた。10g/Lパルミチン酸メチルを生物変換基質として補足した富栄養培地(YPD)及び半限定培地を使用した。半限定培地は約80のC:N比を有し、5g/Lグリセロール及び60g/Lグルコースを含んだ(更なる詳細については材料及び方法を参照されたい)。
TEFプロモーターによってドライブされるアメリカタバコガ(H. Zea)デサチュラーゼ及びEXP1プロモーターによってドライブされるオオタバコガ(H. armigera)FAR(FAR 配列番号41のアミノ酸配列)を有する株の初期スクリーニングから、Z11-16OHの生成にFARの存在が必要であることが確認された。いかなる条件下においても、親及びデサチュラーゼ単独対照株の両方からヘキサデセノールは観察されなかった。両方の培地条件下で、完全デサチュラーゼ-レダクターゼ経路を発現するクローンからZ11-16OH及び程度は少ないがZ9-16OHが検出された。富栄養培地で変換を完了させたとき、0.26±0.09mg/L Z11-16OH及び0.06±0.01mg/L Z9-16OHが生成された(図32A)。半限定培地を使用したとき、Z11-16OH力価の10倍の増加及びZ9-16OH力価の3倍の増加が観察された(図32B)。全経路クローンでは、2.65±0.29mg/L Z11-16OH及び0.18±0.02mg/L Z9-16OHが生成された。Z9-16OHと比べたZ11-16OHのエンリッチメントが、位置特異的Bdr経路を改変し得る可能性を裏付けている。テクニカルレプリケート間の一貫性は、半限定培地条件下ではクローン間で異なった。クローン2、4、6、9、及び17の力価はCV<20と一致した。クローン1、7、及び23はCV>40%を有した。クローン17について最も高い一貫したZ11-16OH力価、3.68±31mg/Lが観察された(表15)。
完全経路クローンの脂質プロファイルも定量化した。簡単にするため、図33A~図33Bでは、選択のクローンについて16炭素脂肪酸種をプロットする。一般に、完全Bdr経路クローンはデサチュラーゼ単独対照よりも少ないZ11-16Acidを蓄積した(YPDにおいて0.25<0.5g/L、半限定において0.8~1.0<1.5g/L)。完全Bdr経路クローンにおいてZ11-16Acid力価が低いのは、デュアル発現カセットにおけるデサチュラーゼ発現の低下、又は潜在的にFAR及び続く副生成物経路によるZ11-16Acid消費に起因し得る。YPDでは16Acid力価に傾向は観察されなかったが、半限定培地では、デサチュラーゼ単独株及び完全経路株について16Acid力価は同様であった。
pEXPクローンの判定に用いる同じ半限定培地条件下で、第2のデュアル発現カセット(pTAL-Ha_FAR)を使用した株をアッセイした。9個のpTALクローンをSPV300(親)、SPV575(pEXP-Ha_FARクローン4)、及びSPV578(pEXP-Ha_FARクローン17)対照に対してアッセイした。予想どおり、陰性対照からはアルコール生成物は観察されなかった。pEXP陽性対照株からのアルコール力価は、pEXPクローンの初期アッセイで観察された結果を再現した(図34、表16)。1つの外れ値のクローン、クローン9を除き、pTALクローン(4.19±0.16mg/L)及びpEXPクローン(4.10±0.22mg/L)からのZ11-16OH力価は同等であった。クローン9は6.82±1.11mg/LのZ11-16OHを生成した。pEXPクローンでの最初のアッセイのとおり、Z9-16OHの低いが検出可能な力価が観察された(図34、表16)。
第2の(pTAL)完全経路スクリーニングにおける全ての株の脂質プロファイルも定量化した。簡単にするため、図35には16炭素脂肪酸種をプロットする。予想どおり、デサチュラーゼを発現する株についてのみZ11-16Acidが存在する。完全脂質プロファイルは先に観察されたものと同様であった(図36)。Z9-18Acid(オレイン酸)は、Z11-16Acidに次いで2番目に最も豊富な脂肪酸種であった
Z9-16OH機能発現アッセイ
インビボフラスコ規模アッセイを用いてZ9-16OH生成を試験した。親対照株のH222 ΔPΔAΔF(SPV300)を、オオタバコガ(H. armigera)FARを発現する株(Z9-16CoA前駆体(SPV471)の合成を天然Z9デサチュラーゼ活性に頼る)と比較した。プレートアッセイを模倣するYPDシード培養によってバイオマスを作成した。生物変換フラスコをZ11-16OHプレートアッセイにおいて用いた同じ半限定C:N=80培地に初期OD600=1又はOD600=4で接種した(詳細については材料及び方法を参照されたい)。予想どおり、対照フラスコは検出可能なZ9-16OHを生成しなかったが、SPV471フラスコは24時間のインキュベーション後に最大4.30±2.23mg/Lを生成した(図37A~図37B)。レプリケート間には大きいばらつきがあったが、全てのSPV471(オオタバコガ(H. armigera)FAR)レプリケートが1mg/L力価を超えた。播種密度を増加させてもZ9-16Acid又はZ9-16OH力価は増加しなかった。24時間における前駆体Z9-16Acid力価は、Z11-16OHの生成に用いられるデュアル発現カセット株について観察されたZ11-16Acid前駆体よりも著しく低かった(<0.5g/L)。他の脂肪酸種の相対的存在量も、先に観察されたプロファイルと同様であり、次に最も豊富な種としてZ9-18Acidがあった(図38)。48時間の経過中に脂質試料及びアルコール試料の両方を採取して、Z9-16OH力価及び脂質力価の時間変化を作成した。Z9-16OH力価は24時間でピークとなり、その後2日目にわたって低下した(図39A)。Z9-16Acidは最初の24時間で急速に増加し、その後次の24時間にわたって安定化し、又はゆっくりと増加した(図39B)。用いた分析的方法は細胞ペレットのみを利用するため、Z9-16OH力価の低下は、アルコール生成物が下流で消費又は分泌されるという仮説を裏付けている。アルコール生成物は酸化されるか(ω-酸化)、遊離アルコールとして分泌されるか、又は誘導体化されてエステルとして分泌され得る。FID及びMS SCAN検出を用いた上清試料の分析から、検出可能なZ9-16OH又はZ9-16OH誘導体がないことが明らかになり、酸化経路を通じた消費の仮説を裏付けている。
結論
ヘリコベルパ属(Helicoverpa)Z11デサチュラーゼと脂肪アシル-CoAレダクターゼとの組み合わせ発現は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)H222 ΔPΔAΔF(SPV300)における力価>1mg/LでのZ11-16OHの生成につながった。
高いC:N比条件が、富栄養培地条件と比べてZ11-16OH力価を改善した。
脂質蓄積条件下では、天然Z9デサチュラーゼ及びオオタバコガ(H. armigera)FAR活性の組み合わせが、>1mg/L Z9-16OHの合成に十分である。
力価は、例えば、脂肪アルコール生成物及び/又は脂肪酸前駆体を消費する経路を欠失させるか;オオタバコガ(H. armigera)FARよりも高い代謝回転率を呈するFAR変異体を同定するか;及び/又は経路コピー数を増加させることにより増加する。
望ましくない主要な副生成物を同定する。
1つ以上の内因性アセチルトランスフェラーゼの活性によって脂肪アルコール生成物の一部が脂肪アセテートに変換される可能性を調べる。
改良された宿主株を改変することにより、ω-酸化経路及び脂質貯蔵経路の成分を除去する。
材料及び方法
株の樹立
全てのデサチュラーゼ及びレダクターゼ遺伝子はGenscriptから注文した。ヒト(Homo sapiens)コドン最適化を用いた(Genscriptアルゴリズム)。新しく合成した発現カセットをGenscriptによってSapI制限部位を用いてpPV199にサブクローニングした。プラスミドを形質転換し、大腸菌(E. coli)EPI400からZyppy Plamsid Miniprep Kit(Zymo Research、Irvine, CA)を用いてプレップした。プラスミドをPmeI(New England Biolabs、Ipswich, MA)で消化し、Zymoclean Gel DNA recovery Kit(Zymo Research、Irvine, CA)を用いたゲル抽出によって精製した。Clean and Concentrator Kit(Zymo Research、Irvine, CA)を用いてDNAを更に濃縮した。Frozen-EZ Yeast Transformation II Kit(Zymo Research、Irvine, CA)を用いて約1~2μgのDNAを形質転換した。製造者のプロトコルを以下のとおり変更した:2ml YPDシード培養物はコンピテント細胞調製前日の午前9時に接種した。シードは8時間(午後5時まで)成長させて、その後250mlバッフル付き振盪フラスコに入った40mlのYPD(又は125mlバッフル付きフラスコ内の20ml)を0.0005の初期OD600になるように接種した。培養物は28℃及び250rpmで約24時間インキュベートした。OD600=0.5~1で細胞を回収した。製造者の指示にあるとおり10mlの培養物を1mlの溶液2に再懸濁する(OD600約10)代わりに、10mlのSPV140培養物を0.5mlに再懸濁した(OD600約20~30)。溶液2アリコートは全て、チューブを密閉されたスタイロフォームボックスに置いた後-80℃のフリーザーに入れることによりゆっくりと-80℃に凍結した。1.7mlエッペンドルフ試験管内のコンピテント細胞の50μlアリコートを氷上で解凍し、水中に溶出したDNAを直接細胞に加え、及び500μlの溶液3を用いて穏やかにピペッティングしながら細胞を懸濁した。チューブを28℃で3時間、30分毎に穏やかにボルテックスしながらインキュベートした。形質転換混合物全体をCMグルコース -ura寒天プレートにプレーティングした。陽性組込み体は部位特異的であることが分かり、チェックPCRにより遺伝子タイピングを行った。
Z11-16OH機能発現アッセイ
陽性分離株をYPDに再パッチし、一晩成長させ、次に4℃で保存した。株をパッチプレートから24ディープウェルプレート(四角形ウェル、ピラミッド形底)内の2mlのYPDに接種した。各パッチからレプリケート接種を行った。陰性対照株はグリセロールストックからYPDにストリーク(struck out)し、個々のコロニーを使用して接種した。ディープウェルプレートを28℃及び250rpmでInfors Multitron冷却フラスコシェーカーにおいて24時間インキュベートした。24時間インキュベートした後、0.85ml容積の各培養物を800×gで遠心することによりペレット化した。各ペレットは2mlのYPD又は半限定培地のいずれかに再懸濁した(以下の表17に記載する)。培養物に10g/Lパルミチン酸メチル(約50℃に予熱した)を加えた。培養物は全て、48時間インキュベートした後にエンドポイント試料を採取した。最終細胞密度はTecan Infinite 200proプレートリーダーで測定した。1.5ml(アルコール分析)又は500μl(脂質分析)を1.7ml微量遠心管に移し、ペレット化した。上清を清浄なチューブに移し、試料を以下に記載するとおり処理した。
Z9-16OH機能発現アッセイ
SPV300(陰性対照)及びSPV471をYPD寒天プレートにストリーク(struck out)し、一晩成長させ、次に4℃で保存した。株をコロニーから2mlのYPDに接種し、14ml丸底培養管において28℃及び250rpmで約8時間インキュベートした。インキュベーション後、2mlの培養物を使用して125mlバッフル付き振盪フラスコ内の20mlのYPDを接種した。振盪フラスコを28℃及び250rpmで24時間インキュベートした。インキュベーション後、Tecan Infinite 200proプレートリーダーを使用して振盪フラスコ内の細胞密度を測定した。適切な容積の培養物をペレット化することにより、細胞を25mlの半限定C:N=80培地(上記表17を参照されたい)に初期OD600=1(約1gDCW/L)又は4(約4gDCW/L)で再懸濁した。この再懸濁培養物を250mlバッフル付き振盪フラスコに加えた。50℃に予熱した後にニートなパルミチン酸メチルを10g/Lの最終濃度で加えた。基質を加えた後、フラスコを28℃及び250rpmで2日間インキュベートした。12、18、24、36、42、及び48時間目に500μl(脂質分析)及び1.5ml(アルコール分析)の試料を1.7ml微量遠心管に採取した。試料をペレット化し、上清を清浄な微量遠心管に移した。
代謝産物抽出及びGC-MS検出
アルコール分析
通常約10mg~80mgのペレット化した細胞(1.5mLプラスチックチューブ内)を、5%(w/w)の水酸化ナトリウムを含有するメタノール中に再懸濁した。アルカリ性細胞懸濁液を1.8mLクリンプバイアルに移した。この混合物を90℃のヒートブロックで1時間加熱した。400μL 2.5N HClで酸性化する前に、バイアルを放冷して室温に戻した。1mMヘプタデカン酸メチルを含有する500μLクロロホルムを加え、この混合物を激しく振盪し、次に水相及び有機相の両方を1.5mLプラスチックチューブに移した。この混合物を13,000rpmで遠心した後、450μLの有機相をGCバイアルに移した。有機相を90℃のヒートブロックにおいて30分間蒸発させた。1%トリメチルクロロシランを含有する50μL N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミドに残渣を溶解した。ガラスインサートに移す前に、この混合物を90℃で5分加熱した。この試料をGC-MSによって分析した(表18)。
脂質分析
全脂質組成は、Moss et al. (1982)及びYousuf et al (2010)による変法に基づいた。通常約10mg~80mgのペレット化した細胞(1.5mLプラスチックチューブ内)を、5%(w/w)の水酸化ナトリウムを含有するメタノール中に再懸濁した。アルカリ性細胞懸濁液を1.8mLガラスクリンプGC-バイアルに移した。この混合物を90℃のヒートブロックで1時間加熱した。400μL 2.5N HClで酸性化する前に、バイアルを放冷して室温に戻した。1mMヘプタデカン酸メチルを含有する500μLクロロホルムを加え、この混合物を激しく振盪し、次に水相及び有機相の両方を1.5mLプラスチックチューブに移した。この混合物を13,000rpmで遠心した後、450μLの有機相を新しい1.8mLガラススクリューキャップGC-バイアルに移した。室温に冷却した後、残留する脂肪酸メチルエステル及び遊離脂肪酸を溶解し、0.2M TMSH(水酸化トリメチルスルホニウム)を含有するメタノール中で誘導体化した(表19)。
実施例10:ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中でのZ11-14Acidの生成
[0771] 背景及び理論的根拠
[0772] ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)を、標的鱗翅目(Lepidoptera)フェロモンZ11-14Acの前駆体であるZ11-14Acidを生成するように改変した。
[0773] 73のデサチュラーゼのライブラリを、Z11-14Ac、Z7-12Ac、Z9E12-14Ac、E8E10-C12OH及びZ9E11-14Acを含む可能なフェロモンを標的にするように選択した。全てのデサチュラーゼをH222 ΔPΔAΔF(SPV300)バックグラウンドにおいて試験した。
[0774] Δ11活性を有する11のデサチュラーゼを文献から同定した(DST001-DST009、DST030及びDST039、表20)。全てのデサチュラーゼを、基質としてパルミチン酸メチル(C16)、ミリスチン酸メチル(C14)又はラウリン酸メチル(C12)のいずれかを供給することによってスクリーニングし、全生成物プロファイルをGC分析によって決定した。
[0775] 推定Δ11デサチュラーゼライブラリ及びΔ11化合物、特にZ11-14Acidを生成することが示された他のデサチュラーゼの得られた活性が記載される。
[0776] 結果
[0777] 最大で69mg/LのZ11-14Acid生成が、2g/Lのミリスチン酸メチルをデサチュラーゼライブラリに供給した場合に観察された(図41)。現在の最良のデサチュラーゼ、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)(Hz)DST(SPV459、配列番号54によってコードされる)は、デサチュラーゼDST001~DST007、DST030及びDST039に加えて、16mg/L~69mg/Lの範囲のある程度の量のZ11-14Acidを生成する。DST001(A.ベルチナナ(A. velutinana))、DST004(タバコスズメガ(M. sexta))及びDST039(クルミマダラメイガ(A. transitella))は、Z11-16Acid生成よりZ11-14Acid生成に対してより特異的であるが、これらのデサチュラーゼは、約20mg/LのZ11-14Acidを生成する。より高いZ11-14Acid力価を生成する株は、20~30mg/Lのミリスチン酸メチル基質からZ9-14Acidも生成し、これは、陰性対照SPV298と比較して減少された。SPV298と比較したHz DST(SPV459)のC14~C18生成物プロファイルが図42に示される。
[0778] Z11-14Acid合成の概念実証が示される。アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)DSTを上回る改善されたZ11-16Acid力価又は生成物特異性を有していた酵素を同定することが試みられた(1.05g/LのZ11-16Acid;69mg/LのZ11-14Acid)。Hz DST(SPV459)より高い生成を有するデサチュラーゼはなかった一方、DST003(配列番号39)は、HzDesat株と類似の生成表現型を有しており、DST002及びDST005は、減少したZ11-14Acidと共に類似のZ11-16Acid生成を有していた。DST006中のデサチュラーゼは、SPV459において発現されるアメリカタバコガ(H. zea)デサチュラーゼと遺伝子学的に同等であり、ライブラリ対照として用いられる。DST006は、パルミチン酸メチルを供給したときに同等のレベルのZ11-16Acidを生成したが;この株は、ミリスチン酸メチルにおけるZ11-14Acidのより低い力価を生じた。株バックグラウンドの遺伝的差異は、観察される差異を説明し得る。
[0779] DST039(クルミマダラメイガ(A. transitella))は、様々な条件下で既にスクリーニングされた。富栄養培地において、天然のクルミマダラメイガ(A. transitella)コード配列を用いたZ11-16Acid生成は観察されなかった。H.サピエンス(H. sapiens)最適化配列を試験し、富栄養培地条件で依然として活性は観察されなかった。このスクリーンにおいて、DST039を、Hs最適化配列を用いて窒素制限条件において試験し、関連する基質におけるZ11-16Acidの235mg/Lの生成及び21mg/LのZ11-14Acidを得た。
[0780] SPV300バックグラウンドにおけるDST008(キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))又はDST009(エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis))からのΔ11生成物は観察されなかった。
[0781] 概要
[0782] Z11-14Acid生成が16mg/L~69mg/Lの範囲の力価で10のデサチュラーゼにおいて観察された(2g/Lのミリスチン酸メチル供給)。
[0783] アメリカタバコガ(H. zea)DST(配列番号54)は、依然として最良のZ11-16Acid生成体であった(パルミチン酸メチルを供給した場合、>1g/L)。
[0784] DST003(イネヨトウ(S. inferens)、配列番号39)は、アメリカタバコガ(H. zea)DSTと最も類似する表現型を有する。
[0785] DST002(ハスモンヨトウ(S. litura))及びDST005(ヨーロッパアワノメイガ(O. nubialis))は、Z11-16Acid生成についてアメリカタバコガ(H. zea)DSTより特異的である(減少したZ11-14Acid生成)。
[0786] DST001(A.ベルチナナ(A. velutinana))、DST004(タバコスズメガ(M. sexta))及びDST039(クルミマダラメイガ(A. transitella))は、Z11-14Acid生成についてアメリカタバコガ(H. zea)DSTより特異的である。
[0787] 結論
[0788] Z11-14Acidは、ミリスチン酸メチルを供給した場合、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)における特定のデサチュラーゼの異種発現を伴って生成され得る。
[0789] デサチュラーゼ(同一の配列又は配列の組み合わせ)の複数のコピーは、増加したZ11-14Acid力価、生成物特異性及び遺伝的安定性について改善された株バックグラウンドにおいて統合される。
[0790] 材料及び方法
[0791] ライブラリ作製
[0792] PacI/SapI制限消化を用いたpPV266(TEFプロモーター及びターミネーターを含むXPR2遺伝子座統合ベクター)へのコドン最適化(ホモ・サピエンス(Homo sapiens)発現生物)クローニングのために、デサチュラーゼ配列をGenscriptに提供した。凍結乾燥されたDNA並びにEPI400寒天スタブを提供した。デサチュラーゼコンストラクトが表21に列挙される。
[0793] コンストラクトを、PmeI制限酵素を用いて線状にし、宿主株SPV300に直接形質転換した。形質転換を、XPR2統合接合部の外部及びpTEFプロモーター内のプライマーを用いて、チェックPCRによって確認した。
[0794] プラスミド消化
[0795] 約10μgの凍結乾燥されたDNAをGenscriptから注文した。DNAを約200ng/μLの最終濃度になるまで50μLの水中で再懸濁した。10μLのDNAを1.25μLの10倍CutSmartバッファー及び1.25μLのPmeI制限酵素と混合した(12.5μLの反応体積)。反応物をPCR機械中において37℃で1.5時間インキュベートし、65℃で30分間にわたって熱で不活性化した。
[0796] 形質転換
[0797] バッフル付きフラスコ中で0.001ODのYPD培養物を接種し、0.5~1.0ODになるまで成長させることにより、SPV300コンピテント細胞を成長させた。細胞を800×gで採取し、Zymo Frozen-EZ Transformation II Kit for Yeastからの0.25倍体積の溶液1で洗浄した。細胞を元の培養物体積の1000倍濃度の溶液2に再懸濁し、発泡スチレン容器中で断熱しながら-80℃でゆっくりと凍結させた(凍結細胞は、新鮮細胞より良好な形質転換効率を有し得る)。50μLの細胞をまず12.5μLの消化反応物(清浄化の必要はない)、次に500μLの溶液3と混合した。形質転換を、振盪せずに28℃で3時間インキュベートし、その後、全形質転換混合物を適切な選択的寒天培地にプレーティングした。ペトリ皿をコロニーの出現前に3~4日間インキュベートした。
[0798] チェックPCR
[0799] 形質転換コロニーをPCRプレートにおいて7μLの水中に採取した。5μLの細胞をマルチチャネルにより選択的オムニトレイにパッチし、一晩成長させた。残りの2μLの細胞を2分間にわたってマイクロ波にかけてから、15μLのPCRマスターミックスを加えた。
[0800] コロニーパッチング
[0801] 陽性クローンを、アッセイ対照を含む24ウェルフォーマットにおいてYPDオムニトレイに再パッチした。オムニトレイを28℃で一晩成長させ、これを用いて、バイオアッセイ培養物を接種した。
[0802] バイオアッセイ
[0803] 陽性形質転換細胞(コンストラクト当たりN=4クローン)を24ウェル培養プレート内の1mLのYPDに接種し、1000rpmで振盪しながら28℃でInfors HT Mulitron Proにおいて24時間インキュベートした。細胞を800×gでペレット化し、5μLの基質(約2g/Lの濃度)を含むS2培地に再懸濁した。250μLの培養物を48時間の生物変換後にクリンプトップガラスバイアル中に採取した。
[0804] S2培地
[0805] 2g/Lの酵母エキス、1g/Lのペプトン、0.1Mのリン酸緩衝液、1.7g/LのYNB w/o aa、NH4、60g/Lのグルコース、5g/Lのグリセロール
[0806] GC試料処理
[0807] 前部入口/検出器:
システム:6890 GC、ChemStation Rev. B.03.02(341)
カラム:J&W DB-23 30m×25mm×25um
実行時間=14.4min
入口:ヒータ=240℃;圧力=9.0psi;全流量{H2}=36.2mL/min
キャリアー:H2@1.0mL/min、9.0psi、35cm/sec
シグナル:データ転送速度=2Hz/0.1min
オーブン:150℃で1分間
12℃/minで220℃まで昇温、3分間保持
35℃/minで240℃まで昇温、4分間保持
平衡時間:2min
注入:スプリット、240℃
スプリット比-30:1;29.1mL/min
検出器:FID、240℃
H2@35.0mL/min、Air@350mL/min
電位計{Litオフセット}@2.0pA
試料:注入量=1μL
[0808] 後部入口/検出器:
システム:6890 GC、ChemStation Rev. B.03.02(341)
カラム:J&W DB-23 30m×25mm×25um
実行時間=14.4min
入口:ヒータ=240℃;圧力=9.8psi;全流量{H2}=40.1mL/min
キャリアー:H2@1.1mL/min、9.8psi、38cm/sec
シグナル:データ転送速度=2Hz/0.1min
オーブン:150℃で1分間
12℃/minで220℃まで昇温、3分間保持
35℃/minで240℃まで昇温、4分間保持
平衡時間:2min
注入:スプリット、240℃
スプリット比-30:1;32.3mL/min
検出器:FID、240℃
H2@35.0mL/min、Air@350mL/min
電位計{Litオフセット}@2.0pA
試料:注入量=1μL
[0809] TMSH:トリメチルスルホニウムヒドロキシド(メタノール中0.2mol/L)-VWR TCT1576-025ML
実施例11:増加したコピー数の又は改変された変異体脂肪アルコール形成肪アシル-CoAレダクターゼ(FAR)を用いた、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)におけるZ11-16OHの生成
[0810] 背景及び理論的根拠
[0811] 不飽和昆虫脂肪アルコールの微生物生成の改変は、合成経路の機能発現を必要とする。1つのこのような経路は、脂肪アシル-CoAの、位置特異的及び立体特異的な不飽和脂肪アシル-CoAへの変換を媒介する膜貫通デサチュラーゼを含む。アルコール形成レダクターゼ(FAR)は、それぞれの脂肪アルコールを生成するように合成経路を補完する。
[0812] いくつかの昆虫種では、それぞれのFAR酵素が部位特異的脱リン酸化によって活性化される(Jurenka,R.& Rafaeli,A. Regulatory Role of PBAN in Sex Pheromone Biosynthesis of Helipthine Moths. Front. Endocrinol.(Lausanne). 2,46(2011);Gilbert,L. I. Insect Endocrinology.(Academic Press))。Y.リポリティカ(Y. lipolytica)中の異種発現したFAR酵素のリン酸化が不活性化につながり得、低い脂肪アルコール力価をもたらす。バイオインフォマティクス手法を用いて、HaFAR内のリン酸化残基を予測した。
[0813] セリン及びトレオニン残基のアラニン置換がリン酸化をなくすことが示された(Shi,S.,Chen,Y.,Siewers,V.& Nielsen,J. Improving Production of Malonyl Coenzyme A-Derived Metabolites by Abolishing Snf1-Dependent Regulation of Acc1. mBio 5,(2014))。従って、FAR遺伝子コピー数を増加させることに加えて、Z11-16OH力価に対するHaFAR酵素(配列番号41に示されるHaFARアミノ酸配列及び配列番号90に示されるHaFARヌクレオチド配列)のいくつかのセリン残基のアラニン置換の影響を試験した。
[0814] 手法
[0815] ヒトコドン最適化されたオオタバコガ(H. armigera)FAR遺伝子(HaFAR)の第2のコピーをZ11-16OH生成親株の染色体に導入した。並行して、Z11-16OH生成の改善に対する突然変異オオタバコガ(H. armigera)FAR遺伝子変異体のコピーを導入することの影響も調べた。7つの突然変異された変異体を、脱リン酸化(一部の昆虫種において観察される)の必要条件を潜在的に緩和することによってFAR活性を増加させるためにデザインした。このために、オオタバコガ(H. armigera)FARのアミノ酸配列内のいくつかの可能なリン酸化部位を同定し、アラニンで置換した。
[0816] 結果
[0817] HaFARにおけるリン酸化部位の決定
[0818] サーバは、ワールドワイドウェブアドレス:cbs.dtu.dk/services/NetPhos/()において、17のキナーゼ:ATM、CKI、CKII、CaMII、DNAPK、EGFR、GSK3、INSR、PKA、PKB、PKC、RSK、SRC、cdc2、cdk5及びp38MAPKに基づいて実験的に確認されたリンタンパク質のデータベース(ワールドワイドウェブアドレス:phospho.elm.eu.org/about.htmL)に基づいて、可能なリン酸化部位を予測する。
[0819] ソフトウェアプログラムは、オオタバコガ(H. armigera)FARにおける可能なリン酸化部位として22セリン、11トレオニン及び10チロシンを予測した(図43)。
[0820] 次に、酵母における発現時のオオタバコガ(H. armigera)FARのリン酸化部位を決定するように調整された予測プログラムを適用した(ワールドワイドウェブアドレス:cbs.dtu.dk/services/NetPhosYeast/;Blom, N., Gammeltoft, S. & Brunak, S. Sequence and structure-based prediction of eukaryotic protein phosphorylation sites1.J. Mol. Biol. 294,1351-1362(1999))。酵母中でチロシンキナーゼが依然として同定されなかったため(Ingrell, C. R., Miller, M. L., Jensen, O. N. & Blom, N. NetPhosYeast: prediction of protein phosphorylation sites in yeast. Bioinforma. 23, 895-897 (2007))、酵母特異的ソフトウェアのみがセリン及びトレオニンを可能なリン酸化部位と見なす。両方のプログラムが、同じ11セリン残基がリン酸化されることを予測したことは際立っていた。対照的に、酵母特異的分析ツールは、リン酸化トレオニン残基を予測しなかった(図44)。
[0821] 第1の実験において、7つのSerからAlaの点突然変異体からなる小さいライブラリを試験した(表22)。3つの予測されるリン酸化部位は、突然変異誘発のために考慮されなかった(位置Ser301、Ser386、Ser416は、閾値を辛うじて上回るスコアであった)。残りの7つのセリン残基については、アラニン置換を導入した。
[0822] HaFARライブラリを特別に合成し、AXP遺伝子座において、TEFプロモーター及びXPR2ターミネーター下での発現のためにプラスミドpPV234にサブクローニングした。線状化コンストラクトを、オオタバコガ(H. armigera)FAR(配列番号41)と組み合わされたアメリカタバコガ(H. zea)Z11デサチュラーゼ(配列番号54)を発現する株Y.リポリティカ(Y. lipolytica)H222ΔPΔAΔF SPV603に形質転換した。この手法は、個々の点突然変異の影響に加えて、第2のコピー、例えばタンパク質発現の影響を決定した。
[0823] 陽性組込み体の4つの個々のクローンを試験した。培養を24ウェルプレートにおいて行った。簡潔に述べると、2mLのYPDを個々のクローンのパッチから接種し、28℃、1000rpmで24時間インキュベートした。24時間後、OD600を測定し、細胞を1000rpmで遠心分離した(表23)。細胞ペレットを1mLのS2培地に再懸濁し、10g/Lのパルミチン酸メチルを加えた。細胞を28℃、1000rpmで18時間インキュベートした。培養物を分析されるまで-20℃で貯蔵した。抽出及び分析を、GC-FIDを用いて、既に確立された標準的なプロトコルに従って行った。
[0824] 図45に示されるように、点突然変異をコードする第2のHaFARコピー、HaFAR-GFP又はHaFAR*(ここで、*は、親株の既存のコピーに加えて、親HaFAR酵素の第2のコピーを示す)を発現する株である。コピーは、親株(SPV603)と比較して脂肪アルコール力価を増加させた。HaFAR(S60A)、HaFAR(S298A)、HaFAR(394A)、HaFAR(S453A)の導入は、中性であるか、又はHaFAR二重コピー株と比較した際にわずかな増加を示した。対照的に、HaFAR(S418A)及びHaFAR(S195A)の発現は、Z11-16OH力価のはっきりとした増加をもたらした。
[0825] 全体的に、これらの結果は、残基195及び418が、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)におけるHaFAR活性を増加させるのに重要であることを示唆している。アラニンへのそれらの置換は、リン酸化を阻害することができ;従って、脱リン酸化機構は、それらの活性の向上に必要とされなかった。他の説明の中でも特に、セリンからアラニンへの突然変異の活性化効果は、改善されたタンパク質折り畳み、増加した安定性又はより高いタンパク質発現に起因し得る。
[0826] 更に、増加したZ11-16OH生成がZ11-16Acid欠失をもたらしたかどうかを決定するために、いくつかの脂肪酸種を定量化した。いくつかの試料についての標準偏差は非常に高かった(図46)。全ての試料において、飽和及びZ11-16Acidを検出した。それぞれの生成物中間体Z11-16Acidの定量化は、HaFAR S195A及びHaFAR S418Aを発現する突然変異体株SPV910及びSPV914についての消費を増加させた。
[0827] 親株への追加のHaFARの染色体統合は、振盪フラスコ実験においてZ11-16OH力価を約20mg/Lから40mg/Lに増加させた。
[0828] HaFAR(Ser195Ala)又はHaFAR(Ser418Ala)を導入した場合、Z11-16OH力価は、それぞれ振盪フラスコ実験において約40mg/Lから約120mg/L又は約80mg/Lに増加した。
[0829] HaFAR(Ser195Ala)を有する突然変異体株SPV910及びHaFAR(Ser418Ala)を有するSPV914についての経路中間体Z11-16Acidは、親株SPV603より少ない約100mg/Lで蓄積された。
[0830] 結論
[0831] Z11-16OH生成株への別のオオタバコガ(H. armigera)FAR遺伝子の追加は、力価をわずかに増加させた。しかしながら、突然変異FARの導入は、Z11-16OHを最大で約7倍、有意に改善した。これは、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)がFAR酵素をリン酸化すること及びFAR脱リン酸化がその全活性の障壁であることを示唆している。HaFARにおけるデザインされた突然変異は、Z11-16AcidをZ11-16OHに変換する脱リン酸化のためのその必要条件を緩和し得る。デザインされた突然変異が脱リン酸化依存性機構によってFAR活性を改善したことも可能である。振盪フラスコ実験は、バイオマス、時間及び脂肪アルコール力価の間の直接の相関を示唆している。
[0832] 第二世代株は、例えば、脂質貯蔵経路(例えばジアシルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ(DGAT)遺伝子欠失)をなくし、及び/又は副生成物(ヒドロキシ酸、二酸)経路をなくすことにより、Z11-16OHの更なる改良のために生成される。
[0833] 材料及び方法
[0834] SPV603のマーカーレスキュー
[0835] 30mLのCM-ウラシルに、250mLのバッフル付き振盪フラスコにおいてSPV603を接種した。培養物を卓上シェーカーにおいて250~300rpm及び28℃でインキュベートした。翌朝、培養物のOD600を測定した。細胞をOD600:0.6で採取した。細胞をファルコンチューブ(800×g、5min)においてペレット化した。上清を除去し、1/2の体積(15mL)の、Zymoキットからの溶液1で洗浄した。細胞を再度ペレット化し(800×g、5min)、200μlの溶液2に再懸濁した。50μlのアリコートを1.7mLのエッペンドルフ試験管中で直接使用した。残りのアリコートを-80℃で貯蔵した。10μlのDNA(1~2μg)を加え、細胞と穏やかに混合した。500μlの溶液3を加え、穏やかに混合した。形質転換混合物を28℃のプレートインキュベータにおいて3時間以下にわたってインキュベートし、それをその後2mLの脱イオン水で洗浄した(オートクレーブ)。回収を28℃で2mLのYPDにおいて一晩行った。形質転換混合物を選択プレートにおいて直接プレーティングした。クローンを採取し、URA-FOA0.1%及びYPDプレート上で再パッチした。URA除去を、標準的なPCRプロトコルを用いて確認した。
[0836] HaFAR統合カセットの構築
[0837] HaFARライブラリを、ヒトコドン(Genscript)を用いて特別に合成し、AXP遺伝子座においてTEFプロモーター及びXPR2ターミネーター下での発現のために制限部位SpeI及びNotIを用いて、プラスミドpPV234にサブクローニングした。線状化コンストラクトを、オオタバコガ(H. armigera)FAR(配列番号41)と組み合わされたアメリカタバコガ(H. zea)Z11デサチュラーゼ(配列番号54)を発現する株Y.リポリティカ(Y. lipolytica)H222ΔPΔAΔF SPV603に形質転換した。変異体FARのアミノ酸配列が配列番号42~48に示される。変異体FARのヌクレオチド配列が配列番号83~89に示される。
[0838] 24ウェルプレート中でのHaFAR突然変異体ライブラリの培養
[0839] 第1の段階において、各形質転換からの4つの個々の分離株を試験した。培養を24ウェルプレートにおいて行った。2mLのYPDを個々のクローンのパッチから接種し、28℃、1000rpmで24時間インキュベートした。24時間後、OD600を測定し、細胞を1000rpmで遠心分離した。細胞ペレットを1mLのS2培地に再懸濁し、10g/Lのパルミチン酸メチルを加えた。細胞を28℃、1000rpmで24時間インキュベートした。培養物を分析されるまで-20℃で貯蔵した。次に、最良の性能の陽性組込み体の4つのクローンを試験した。培養を24ウェルプレートにおいて行った。2mLのYPDを個々のクローンのパッチから接種し、28℃、1000rpmで約28時間インキュベートした。28時間後、OD600を測定し、細胞を1000rpmで遠心分離した。細胞ペレットを1mLのS2培地に再懸濁し、10g/Lのパルミチン酸メチルを加えた。細胞を28℃、1000rpmで18時間インキュベートした。培養物を分析されるまで-20℃で貯蔵した。
[0840] 振盪フラスコにおけるHaFAR突然変異体ライブラリの培養
[0841] 振盪フラスコ実験1:振盪フラスコ培養中の脂肪アルコール及び脂肪酸力価の時間経過分析
[0842] 第1の段階において、それぞれの株の振盪フラスコ実験を、経時的な脂肪アルコール及び脂肪酸形成を分析するために行った。HaFAR、HaFAR S195A及びHaFAR S418Aを発現する株の最良の性能のクローンを試験した。10mLのYPDを個々のクローンのパッチから接種し、125mLの振盪フラスコにおいて、28℃、250rpmで24時間インキュベートした。次に、25mLのYPDに、500mLの振盪フラスコにおいて5mLの出発培養物を接種し、28℃、250rpmで24時間インキュベートした。細胞を採取し、ペレットを15mLのS2培地に再懸濁し、10g/Lのパルミチン酸メチルを加えた。OD600を測定し、その後、パルミチン酸メチルを加えた。細胞を28℃、1000rpmで72時間インキュベートした。4×0.5mLの試料を24時間ごとに取り、既に確立された標準的なプロトコルに従って、分析されるまで-20℃で貯蔵した(図47及び図48)。試料採取を改善し、標準偏差を減少させるために、試料をGCクリンプバイアルに直接移し、分析されるまで貯蔵した。
[0843] 株のOD600は、SPV910-10.2、SPV914-11.5及びSPV916-12.3であった。
[0844] 振盪フラスコ実験2:生物変換に対する増加したバイオマスの影響
[0845] 時間経過実験は、経時的な脂肪アルコールの減少を示した。従って、試料採取を20時間に減少させた。以前の24ウェルプレート生物変換実験において、測定されたバイオマスは、振盪フラスコ実験と比較して約2倍高かった。次に、それぞれの株の振盪フラスコ実験を、脂肪アルコール力価に対するバイオマスの影響を分析するために行った。全インキュベーション時間が減少され、バイオマスが生物変換段階中に増加された。HaFAR S195A及びHaFAR S418Aを発現する株の最良の性能のクローンを試験した。20mLのYPDを個々のクローンのパッチから接種し、500mLの振盪フラスコにおいて28℃、250rpmで28時間インキュベートした。細胞を採取し、ペレットを10mLのS2培地に再懸濁し、且つ10g/L、OD600を測定し、その後、パルミチン酸メチルを加えた。細胞を28℃、1000rpmで20時間インキュベートした。4×0.5mLの試料を取り、既に確立された標準的なプロトコルに従って分析した(図49)。
[0846] 株のOD600は、SPV910-24.9及びSPV914-24.7であった。
[0847] 代謝産物抽出
[0848] 細胞ペレットを500μLの5%のNaOH(メタノール中)で再懸濁し、85℃で1時間加熱した。試料を冷却し、次に、400μLの5NのHClを加えることによって酸性化した。次に、500μLのクロロホルム(1mMのC17:0ヘプタデカノエート内部標準を含有する)を試料に加えた。試料を激しく混合し、次に、卓上遠心分離機を用いて13,000RPMで2分間にわたって沈降させた。450μLのクロロホルムを新しいバイアルに移し、次に、85℃で約15分間蒸発させた。次に、試料を50μLのBSTFAに再懸濁した(この時点でGC分析の準備が整った)。脂肪アルコールの分析の後、試料を約1:10に希釈し、GC上で再度泳動させて、脂肪酸ピークのピーク分離を改善した。
[0849] 定量化
[0850] 全ての定量化を内部標準の濃度に基づいて行った。内部標準C17Mの濃度は、1mMである。脂肪アルコール並びに脂肪酸の最終濃度を、内部標準と比較した有効炭素数に基づいて計算した。
実施例12:脂質貯蔵経路をなくすように改変された第二世代株を用いた、又は追加の変異体脂肪アルコール形成脂肪アシル-CoAレダクターゼ(FAR)を用いた、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)における脂肪アルコール及び脂肪酸の生成
[0851] YALI0E32791g(DGA1)及びYALI0D07986g(DGA2)からなる群から選択される内因性ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ欠失の影響を試験した。各dga遺伝子が株SPV735において個々に欠失していた(ΔURA、ΔLeu、leu2::pTEF-HZ_Z11_desat_Hs-tXPR2_loxP)。続いて、標準的な手順に従って、各欠失株SPV957(Δdga1、ΔLeu、leu2::pTEF-HZ_Z11_desat_Hs-tXPR2_loxP)及びSPV959(Δdga2ΔURA、leu2::pTEF-HZ_Z11_desat_Hs-tXPR2_loxP)における個々の選択マーカーを行った。得られた株SPV1053(Δdga1ΔURA、ΔLeu、leu2::pTEF-HZ_Z11_desat_Hs-tXPR2_loxP)及びSPV1054(Δdga2ΔURA、ΔLeu、leu2::pTEF-HZ_Z11_desat_Hs-tXPR2_loxP)を用いて、HaFAR及びHaFARS195Aを形質転換した。株SPV603と比較した脂肪アルコールの形成を振盪フラスコにおいて試験した(図50及び図51)。経時的な振盪フラスコにおける結果は、各個々のdga遺伝子の欠失が脂肪アルコール形成を改善し、脂肪酸貯蔵を減少させることを示唆している。
[0852] 振盪フラスコ培養中の脂肪アルコール及び脂肪酸力価の時間経過分析
[0853] 酵素HAFAR(配列番号41)又はHaS195A(配列番号43)のコピーを株SPV1053(Δdga1 ΔURA、ΔLeu、leu2::pTEF-HZ_Z11_desat_Hs-tXPR2_loxP)及びSPV1054(Δdga2ΔURA、ΔLeu、leu2::pTEF-HZ_Z11_desat_Hs-tXPR2_loxP)中に導入し、これらは、それぞれアメリカタバコガ(H. zea)Z11デサチュラーゼ(配列番号54)を発現し、DGA1又はDGA2ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼのいずれかを欠失している。
[0854] 培養を振盪フラスコ中での生物学的なトリプリケートとして行った。各株の出発培養物を250rpm、28℃で28時間にわたって250mLの振盪フラスコにおいて50mLのYPD中で成長させた。細胞を室温で5分間にわたる800gにおける遠心分離によって採取し、30mLのS2培地に再懸濁した。細胞懸濁液をOD600:約8に対して正規化した。各出発培養物を3つの個々の125mLの振盪フラスコに分割した。10g/Lのパルミチン酸メチルを加えた。培養物を72時間インキュベートした。試料採取を24時間ごとに行い、各振盪フラスコのOD600を測定した。図50及び図51は、それぞれ時間経過実験についての脂肪アルコール力価及び脂肪酸力価を示す。
[0855] 培養試料の抽出。0.5mLの各試料を直接クリンプバイアル中に採取した。クリンプバイアルを800gで5分間遠心分離した。上清を除去し、試料を密閉し、分析されるまで-20℃で貯蔵した。試料を、5%のKOHを含有する500μLのメタノールに再懸濁し、65℃~85℃で60分間インキュベートした。冷却工程の後、200μLの5NのHCLを各クリンプバイアルに加えた。1mMのC17Meを含有する600μLのクロロホルムを加え、再度密閉した。試料を混合し、遠心分離した。500uLのクロロホルムを新しいGCバイアルに移し、85℃で30分間にわたって完全に乾燥させた。試料を100uLのBSTFAに再懸濁し、室温で1時間インキュベートした。試料を、ガスクロマトグラフィーを用いて、標準的なプロトコルに従って分析した。
[0856] 24ウェルプレート中での新たな株の脂肪アルコール形成脂肪アシル-CoAレダクターゼライブラリスクリーニング
[0857] 表24からの各それぞれのFAR酵素の単一のコピーを、アメリカタバコガ(H. zea)Z11デサチュラーゼ(配列番号54)を発現し、且つDGA2ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼを欠失した株SPV1054(Δdga2ΔURA、ΔLeu、leu2::pTEF-HZ_Z11_desat_Hs-tXPR2_loxP)中に導入した。
[0858] 培養を24ウェルプレート中での生物学的なクアドルプリケートとして行った。2mLのYPDを各個々の形質転換細胞のパッチから接種した。24ウェルプレートを250rpm、28℃で28時間インキュベートした。細胞を室温で5分間にわたる800gにおける遠心分離によって採取した。細胞を1mLのS2+60g/Lのグリセロールに再懸濁し、10g/Lのパルミチン酸メチルを加えた。細胞を1000rpm、28℃で96時間インキュベートした。図52及び図53は、それぞれ24ウェルプレートスクリーニング実験についての脂肪アルコール力価及び脂肪酸力価を示す。
[0859] 培養試料の抽出。0.5mLの各試料を直接クリンプバイアル中に採取した。クリンプバイアルを800gで5分間遠心分離した。上清を除去し、試料を密閉し、分析されるまで-20℃で貯蔵した。試料を、5%のKOHを含有する500μLのメタノールに再懸濁し、65℃~85℃で60分間インキュベートした。冷却工程の後、200μLの5NのHCLを各クリンプバイアルに加えた。1mMのC17Meを含有する600μLのクロロホルムを加え、再度密閉した。試料を混合し、遠心分離した。500uLのクロロホルムを新しいGCバイアルに移し、85℃で30分間にわたって完全に乾燥させた。試料を100uLのBSTFAに再懸濁し、室温で1時間インキュベートした。試料を、ガスクロマトグラフィーを用いて、標準的なプロトコルに従って分析した。
[0860] 追加のFAR変異体及び追加の細菌FAR酵素がそれぞれ表25及び表26に列挙される。これらのFAR酵素は、脂肪アルコール及び脂肪酸生成について上述されるように試験される。
前述の詳細な説明は理解を明解にするために提供されるに過ぎず、当業者には変更形態が自明であろうとおり、そこから不必要な限定が理解されてはならない。
本開示はその具体的な実施形態に関連して説明されているが、更なる変更形態が可能であることが理解されるであろうと共に、本願は、一般に本開示の原理に従い、且つ本開示が関係する技術分野内で公知の又は慣習的な実践の範囲内にあるとおりの、並びに以上に示される及び以下の添付の特許請求の範囲にあるとおりの本質的な特徴に適用され得るとおりの本開示からのかかる逸脱を含む、本開示の任意の変形形態、使用、又は適合形態を包含することが意図される。
参照による援用
[0863] 本明細書に引用されるあらゆる参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報及び特許出願は、あらゆる目的のために、全体が参照により援用される。本願は、以下のそれぞれの参照によりその全体を本明細書に援用する:2015年11月18日に出願された米国仮特許出願第62/257,054号、2016年6月17日に出願された米国仮特許出願第62/351,605号及び2016年11月18日に出願されたPCT出願第PCT/米国特許出願公開第S2016/062852号。
[0864] しかしながら、本明細書に引用されるあらゆる参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報及び特許出願の言及は、それらが有効な先行技術を構成するか又は世界のいずれの国でも共通の一般知識の一部を成すという承認又は何らかの形態の示唆ではなく、そのように解釈されるべきではない。
本発明の更なる実施形態
[0865] 本開示によって考えられる他の主題は、以下の番号付けられた実施形態に記載されている。
1.飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを生成する能力を有する組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物であって、
(a)飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する、配列番号39、54、60、62、78、79、80、95、97、99、101、103及び105からなる群から選択される脂肪アシルデサチュラーゼに対する少なくとも95%の配列同一性を有する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの核酸分子;及び
(b)(a)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールへの変換を触媒する、配列番号41~48、57、73、75及び77からなる群から選択される脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼに対する少なくとも95%の配列同一性を有する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの核酸分子
を含む、組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
2.組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの生成のための生合成経路と競合する経路における反応を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む、実施形態1に記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
3.組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、以下:
(i)YALI0E32835g(POX1)、YALI0F10857g(POX2)、YALI0D24750g(POX3)、YALI0E27654g(POX4)、YALI0C23859g(POX5)、YALI0E06567g(POX6)からなる群から選択される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ;
(ii)YALI0F09603g(FADH)、YALI0D25630g(ADH1)、YALI0E17787g(ADH2)、YALI0A16379g(ADH3)、YALI0E15818g(ADH4)、YALI0D02167g(ADH5)、YALI0A15147g(ADH6)、YALI0E07766g(ADH7)からなる群から選択される1つ以上の(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ;
(iii)(脂肪)アルコールオキシダーゼYALI0B14014g(FAO1);
(iv)YALI0E25982g(ALK1)、YALI0F01320g(ALK2)、YALI0E23474g(ALK3)、YALI0B13816g(ALK4)、YALI0B13838g(ALK5)、YALI0B01848g(ALK6)、YALI0A15488g(ALK7)、(YALI0C12122g(ALK8)、YALI0B06248g(ALK9)、YALI0B20702g(ALK10)、YALI0C10054g(ALK11)及びYALI0A20130g(Alk12)からなる群から選択される1つ以上のシトクロムP450酵素;及び
(v)YALI0E32791g(DGA1)及びYALI0D07986g(DGA2)からなる群から選択される1つ以上のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ
から選択される1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む、実施形態1又は2に記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
4.組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、以下:
(i)YALI0E32835g(POX1)、YALI0F10857g(POX2)、YALI0D24750g(POX3)、YALI0E27654g(POX4)、YALI0C23859g(POX5)、YALI0E06567g(POX6)からなる群から選択される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ;
(ii)YALI0F09603g(FADH)、YALI0D25630g(ADH1)、YALI0E17787g(ADH2)、YALI0A16379g(ADH3)、YALI0E15818g(ADH4)、YALI0D02167g(ADH5)、YALI0A15147g(ADH6)、YALI0E07766g(ADH7)からなる群から選択される1つ以上の(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ;
(iii)(脂肪)アルコールオキシダーゼYALI0B14014g(FAO1);
(iv)YALI0E25982g(ALK1)、YALI0F01320g(ALK2)、YALI0E23474g(ALK3)、YALI0B13816g(ALK4)、YALI0B13838g(ALK5)、YALI0B01848g(ALK6)、YALI0A15488g(ALK7)、(YALI0C12122g(ALK8)、YALI0B06248g(ALK9)、YALI0B20702g(ALK10)、YALI0C10054g(ALK11)及びYALI0A20130g(Alk12)からなる群から選択される1つ以上のシトクロムP450酵素;及び
(v)YALI0E32791g(DGA1)及びYALI0D07986g(DGA2)からなる群から選択される1つ以上のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ
から選択される1つ以上の内因性酵素の欠失を含む、実施形態1又は2に記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
5.脂肪アシルデサチュラーゼは、Z9-14:アシル-CoA、Z11-14:アシル-CoA、E11-14:アシル-CoA、Z9-16:アシル-CoA及びZ11-16:アシル-CoAから選択される一不飽和又は多価不飽和中間体への飽和脂肪アシル-CoAの変換を触媒する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
6.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールは、Z9-14:OH、Z11-14:OH、E11-14:OH、Z9-16:OH、Z11-16:OH、Z11Z13-16:OH及びZ13-18:OHからなる群から選択される、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
7.組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
8.アルコールデヒドロゲナーゼは、表3aから選択される、実施形態7に記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
9.C6~C24脂肪アルデヒドは、Z9-14:Ald、Z11-14:Ald、E11-14:Ald、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される、実施形態7又は8に記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
10.組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
11.アセチルトランスフェラーゼは、表5dから選択される、実施形態10に記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
12.C6~C24脂肪アセテートは、Z9-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac、Z11-16:Ac、Z11Z13-16:Ac及びZ13-18:Acからなる群から選択される、実施形態10又は11に記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
13.組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、
一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子;及び
一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子
を更に含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
14.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルデヒド及びC6~C24脂肪アセテートは、Z9-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac、Z11-16:Ac、Z11Z13-16:Ac、Z13-18:Ac、Z9-14:Ald、Z11-14:Ald、E11-14:Ald、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される、実施形態13に記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
15.脂肪アシルデサチュラーゼは、配列番号64、65、66及び67からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む脂肪アシルデサチュラーゼを含まない、実施形態1~14のいずれか1つに記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
16.脂肪アシルデサチュラーゼは、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、カブラヤガ(Agrotis segetum)又はイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)由来のデサチュラーゼから選択される脂肪アシルデサチュラーゼを含まない、実施形態1~15のいずれか1つに記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物。
17.飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを生成する方法であって、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの生成に適正な炭素源を供給する原料を含む培養培地で実施形態1~16のいずれか1つに記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物を培養することを含む方法。
18.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールは、Z9-14:OH、Z11-14:OH、E11-14:OH、Z9-16:OH、Z11-16:OH、Z11Z13-16:OH及びZ13-18:OHからなる群から選択される、実施形態17に記載の方法。
19.組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、以下:
(i)YALI0E32835g(POX1)、YALI0F10857g(POX2)、YALI0D24750g(POX3)、YALI0E27654g(POX4)、YALI0C23859g(POX5)、YALI0E06567g(POX6)からなる群から選択される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ;
(ii)YALI0F09603g(FADH)、YALI0D25630g(ADH1)、YALI0E17787g(ADH2)、YALI0A16379g(ADH3)、YALI0E15818g(ADH4)、YALI0D02167g(ADH5)、YALI0A15147g(ADH6)、YALI0E07766g(ADH7)からなる群から選択される1つ以上の(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ;
(iii)(脂肪)アルコールオキシダーゼYALI0B14014g(FAO1);
(iv)YALI0E25982g(ALK1)、YALI0F01320g(ALK2)、YALI0E23474g(ALK3)、YALI0B13816g(ALK4)、YALI0B13838g(ALK5)、YALI0B01848g(ALK6)、YALI0A15488g(ALK7)、(YALI0C12122g(ALK8)、YALI0B06248g(ALK9)、YALI0B20702g(ALK10)、YALI0C10054g(ALK11)及びYALI0A20130g(Alk12)からなる群から選択される1つ以上のシトクロムP450酵素;及び
(v)YALI0E32791g(DGA1)及びYALI0D07986g(DGA2)からなる群から選択される1つ以上のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ
から選択される1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む、実施形態17又は18に記載の方法。
20.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを回収するステップを更に含む、実施形態17又は18に記載の方法。
21.前記回収するステップは、蒸留を含む、実施形態20に記載の方法。
22.前記回収するステップは、膜に基づく分離を含む、実施形態20に記載の方法。
23.飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルデヒドを生成する方法であって、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルデヒドの生成に適正な炭素源を供給する原料を含む培養培地で実施形態1~16のいずれか1つに記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物を培養することを含む方法。
24.C6~C24脂肪アルデヒドは、Z9-14:Ald、Z11-14:Ald、E11-14:Ald、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される、実施形態23に記載の方法。
25.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルデヒドを回収するステップを更に含む、実施形態23又は24に記載の方法。
26.前記回収するステップは、蒸留を含む、実施形態25に記載の方法。
27.前記回収するステップは、膜に基づく分離を含む、実施形態25に記載の方法。
28.飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アセテートを生成する方法であって、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アセテートの生成に適正な炭素源を供給する原料を含む培養培地で実施形態1~16のいずれか1つに記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物を培養することを含む方法。
29.C6~C24脂肪アセテートは、Z9-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac、Z11-16:Ac、Z11Z13-16:Ac及びZ13-18:Acからなる群から選択される、実施形態28に記載の方法。
30.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アセテートを回収するステップを更に含む、実施形態28に記載の方法。
31.前記回収するステップは、蒸留を含む、実施形態28に記載の方法。
32.前記回収するステップは、膜に基づく分離を含む、実施形態28に記載の方法。
33.飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルデヒド及びC6~C24脂肪アセテートを生成する方法であって、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルデヒド及びC6~C24脂肪アセテートの生成に適正な炭素源を供給する原料を含む培養培地で実施形態1~16のいずれか1つに記載の組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物を培養することを含む方法。
34.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルデヒド及びC6~C24脂肪アセテートは、Z9-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac、Z11-16:Ac、Z11Z13-16:Ac、Z13-18:Ac、Z9-14:Ald、Z11-14:Ald、E11-14:Ald、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される、実施形態33に記載の方法。
35.飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを生成する能力を有するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物に改変する方法であって、以下:
(a)飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する、配列番号39、54、60、62、78、79、80、95、97、99、101、103及び105からなる群から選択される脂肪アシルデサチュラーゼに対する少なくとも95%の配列同一性を有する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの核酸分子;及び
(b)(a)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールへの変換を触媒する、配列番号41~48、57、73、75及び77からなる群から選択される脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼに対する少なくとも95%の配列同一性を有する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの核酸分子
をヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中に導入することを含む方法。
36.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの生成のための生合成経路と競合する経路における反応を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾をヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中に導入することを更に含む、実施形態35に記載の方法。
37.ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物は、MATA ura3-302::SUC2 Δpox1Δpox2 Δpox3 Δpox4 Δpox5 Δpox6 Δfadh Δadh1 Δadh2 Δadh3 Δadh4 Δadh5 Δadh6 Δadh7 Δfao1::URA3である、実施形態35又は36に記載の方法。
38.以下:
(i)YALI0E32835g(POX1)、YALI0F10857g(POX2)、YALI0D24750g(POX3)、YALI0E27654g(POX4)、YALI0C23859g(POX5)、YALI0E06567g(POX6)からなる群から選択される1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ;
(ii)YALI0F09603g(FADH)、YALI0D25630g(ADH1)、YALI0E17787g(ADH2)、YALI0A16379g(ADH3)、YALI0E15818g(ADH4)、YALI0D02167g(ADH5)、YALI0A15147g(ADH6)、YALI0E07766g(ADH7)からなる群から選択される1つ以上の(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ;
(iii)(脂肪)アルコールオキシダーゼYALI0B14014g(FAO1);
(iv)YALI0E25982g(ALK1)、YALI0F01320g(ALK2)、YALI0E23474g(ALK3)、YALI0B13816g(ALK4)、YALI0B13838g(ALK5)、YALI0B01848g(ALK6)、YALI0A15488g(ALK7)、(YALI0C12122g(ALK8)、YALI0B06248g(ALK9)、YALI0B20702g(ALK10)、YALI0C10054g(ALK11)及びYALI0A20130g(Alk12)からなる群から選択される1つ以上のシトクロムP450酵素;及び
(v)YALI0E32791g(DGA1)及びYALI0D07986g(DGA2)からなる群から選択される1つ以上のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ
から選択される1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾をヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中に導入することを更に含む、実施形態35~37のいずれか1つに記載の方法。
39.脂肪アシルデサチュラーゼは、Z9-14:アシル-CoA、Z11-14:アシル-CoA、E11-14:アシル-CoA、Z9-16:アシル-CoA及びZ11-16:アシル-CoAから選択される一不飽和又は多価不飽和中間体への脂肪アシル-CoAの変換を触媒する、実施形態35~38のいずれか1つに記載の方法。
40.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールは、Z9-14:OH、Z11-14:OH、E11-14:OH、Z9-16:OH、Z11-16:OH、Z11Z13-16:OH及びZ13-18:OHからなる群から選択される、実施形態35~39のいずれか1つに記載の方法。
41.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中に導入するか又は組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中で発現させることを更に含む、実施形態35~40のいずれか1つに記載の方法。
42.アルコールデヒドロゲナーゼは、表3aから選択される、実施形態41に記載の方法。
43.C6~C24脂肪アルデヒドは、Z9-14:Ald、Z11-14:Ald、E11-14:Ald、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される、実施形態41に記載の方法。
44.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中に導入するか又は組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中で発現させることを更に含む、実施形態35~43のいずれか1つに記載の方法。
45.アセチルトランスフェラーゼは、表5dから選択される、実施形態44に記載の方法。
46.C6~C24脂肪アセテートは、Z9-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac、Z11-16:Ac、Z11Z13-16:Ac及びZ13-18:Acからなる群から選択される、実施形態44に記載の方法。
47.
一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子;及び
一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールの、対応するC6~C24脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子
を組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中に導入するか又は組換えヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)微生物中で発現させることを更に含む、実施形態35~46のいずれか1つに記載の方法。
48.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルデヒド及びC6~C24脂肪アセテートは、Z9-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac、Z11-16:Ac、Z11Z13-16:Ac、Z13-18:Ac、Z9-14:Ald、Z11-14:Ald、E11-14:Ald、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される、実施形態35~47のいずれか1つに記載の方法。
49.脂肪アシルデサチュラーゼは、配列番号64、65、66及び67からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む脂肪アシルデサチュラーゼを含まない、実施形態35~48のいずれか1つに記載の方法。
50.脂肪アシルデサチュラーゼは、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、カブラヤガ(Agrotis segetum)又はイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)由来のデサチュラーゼから選択される脂肪アシルデサチュラーゼを含まない、実施形態35~49のいずれか1つに記載の方法。
51.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールは、化学的方法を用いて対応するC6~C24脂肪アルデヒドに変換される、実施形態17~22のいずれか1つに記載の方法。
53.一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールは、化学的方法を用いて対応するC6~C24脂肪アセテートに変換される、実施形態17~22のいずれか1つに記載の方法。
54.化学的方法は、4-N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)又は酢酸ナトリウムの存在下において、塩化アセチル、無水酢酸、塩化ブチリル、無水酪酸、塩化プロパノイル及びプロピオン酸無水物からなる群から選択される化学剤を利用して、一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アルコールを対応するC6~C24脂肪アセテートにエステル化する、実施形態53に記載の方法。
55.飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールを生成する能力を有する組換え微生物であって、
(a)飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子;
(b)アシル-CoAオキシダーゼ活性の1つ以上の連続サイクル後、(a)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アシル-CoAへの変換を触媒するアシル-CoAオキシダーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子であって、所与のサイクルは、そのサイクルにおける出発一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoA基質と比べて2つの炭素切断を有する一不飽和又は多価不飽和C4~C22脂肪アシル-CoA中間体を生成する、少なくとも1つの外因性核酸分子;及び
(c)(b)からの一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールへの変換を触媒する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子
を含む組換え微生物。
56.組換え微生物は、好ましくは、≦C18脂肪アシル-CoAを保持するアシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む、実施形態55に記載の組換え微生物。
57.組換え微生物は、好ましくは、≦C18脂肪アシル-CoAを保持するアシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含み、アシルトランスフェラーゼは、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)、グリセロールリン脂質アシルトランスフェラーゼ(GPLAT)及びジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)からなる群から選択される、実施形態55~56のいずれか1つに記載の組換え微生物。
58.組換え微生物は、好ましくは、≦C18脂肪アシル-CoAを保持するアシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含み、アシルトランスフェラーゼは、表5bから選択される、実施形態55~57のいずれか1つに記載の組換え微生物。
59.組換え微生物は、好ましくは、>C16、>C14、>C12又は>C10アシルグリセロール基質のエステル結合を加水分解するアシルグリセロールリパーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む、実施形態55~58のいずれか1つに記載の組換え微生物。
60.組換え微生物は、好ましくは、>C16、>C14、>C12又は>C10アシルグリセロール基質のエステル結合を加水分解するアシルグリセロールリパーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含み、アシルグリセロールリパーゼは、表5cから選択される、実施形態55~59のいずれか1つに記載の組換え微生物。
61.組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの生成のための生合成経路と競合する経路における反応を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む、実施形態55~60のいずれか1つに記載の組換え微生物。
62.組換え微生物は、
(i)1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ;
(ii)1つ以上のアシルトランスフェラーゼ;
(iii)1つ以上のアシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ;
(iv)1つ以上の(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ;
(v)1つ以上の(脂肪)アルコールオキシダーゼ;及び
(vi)1つ以上のシトクロムP450モノオキシゲナーゼ
から選択される1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む、実施形態55~61のいずれか1つに記載の組換え微生物。
63.組換え微生物は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX1(YALI0E32835g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX2(YALI0F10857g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX3(YALI0D24750g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX4(YALI0E27654g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX5(YALI0C23859g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX6(YALI0E06567g);S.セレビシエ(S. cerevisiae)POX1(YGL205W);カンジダ属(Candida)POX2(CaO19.1655、CaO19.9224、CTRG_02374、M18259)、カンジダ属(Candida)POX4(CaO19.1652、CaO19.9221、CTRG_02377、M12160)及びカンジダ属(Candida)POX5(CaO19.5723、CaO19.13146、CTRG_02721、M12161)からなる群から選択される1つ以上の内因性アシル-CoAオキシダーゼ酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む、実施形態55~62のいずれか1つに記載の組換え微生物。
64.組換え微生物は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C00209g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E18964g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F19514g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14014g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E16797g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32769g及びY.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D07986g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YBL011w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YDL052c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR175C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YPR139C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YNR008w及びS.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR245c並びにカンジダ属(Candida)I503_02577、カンジダ属(Candida)CTRG_02630、カンジダ属(Candida)CaO19.250、カンジダ属(Candida)CaO19.7881、カンジダ属(Candida)CTRG_02437、カンジダ属(Candida)CaO19.1881、カンジダ属(Candida)CaO19.9437、カンジダ属(Candida)CTRG_01687、カンジダ属(Candida)CaO19.1043、カンジダ属(Candida)CaO19.8645、カンジダ属(Candida)CTRG_04750、カンジダ属(Candida)CaO19.13439、カンジダ属(Candida)CTRG_04390、カンジダ属(Candida)CaO19.6941、カンジダ属(Candida)CaO19.14203及びカンジダ属(Candida)CTRG_06209からなる群から選択される1つ以上の内因性アシルトランスフェラーゼ酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む、実施形態55~63のいずれか1つに記載の組換え微生物。
65.組換え微生物は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32035g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D17534g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F10010g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14520g及びY.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E00528g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL140w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YMR313c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKR089c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR081c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL094W、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YLL012W及びS.セレビシエ(S. cerevisiae)YLR020C並びにカンジダ属(Candida)CaO19.2050、カンジダ属(Candida)CaO19.9598、カンジダ属(Candida)CTRG_01138、カンジダ属(Candida)W5Q_03398、カンジダ属(Candida)CTRG_00057、カンジダ属(Candida)CaO19.5426、カンジダ属(Candida)CaO19.12881、カンジダ属(Candida)CTRG_06185、カンジダ属(Candida)CaO19.4864、カンジダ属(Candida)CaO19.12328、カンジダ属(Candida)CTRG_03360、カンジダ属(Candida)CaO19.6501、カンジダ属(Candida)CaO19.13854、カンジダ属(Candida)CTRG_05049、カンジダ属(Candida)CaO19.1887、カンジダ属(Candida)CaO19.9443、カンジダ属(Candida)CTRG_01683及びカンジダ属(Candida)CTRG_04630からなる群から選択される1つ以上の内因性アシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む、実施形態55~64のいずれか1つに記載の組換え微生物。
66.組換え微生物は、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E25982g(ALK1)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F01320g(ALK2)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E23474g(ALK3)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B13816g(ALK4)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B13838g(ALK5)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B01848g(ALK6)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0A15488g(ALK7)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C12122g(ALK8)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B06248g(ALK9)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B20702g(ALK10)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C10054g(ALK11)及びY.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0A20130g(ALK12)からなる群から選択される1つ以上の内因性シトクロムP450モノオキシゲナーゼの活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む、実施形態55~65のいずれか1つに記載の方法。
67.脂肪アシルデサチュラーゼは、アルギロタエニア・ベルチナナ(Argyrotaenia velutinana)、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、イネヨトウ(Sesamia inferens)、タバコスズメガ(Manduca sexta)、ヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)、ハスオビハマキ(Choristoneura rosaceana)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、カブラヤガ(Agrotis segetum)、アワノメイガ(Ostrinia furnicalis)及びタラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)由来の脂肪アシルデサチュラーゼから選択される、実施形態55~66のいずれか1つに記載の組換え微生物。
68.脂肪アシルデサチュラーゼは、配列番号39、49~54、58~63、78~80並びにGenBank受託番号AF416738、AGH12217.1、AII21943.1、CAJ43430.2、AF441221、AAF81787.1、AF545481、AJ271414、AY362879、ABX71630.1、NP001299594.1、Q9N9Z8、ABX71630.1及びAIM40221.1からなる群から選択される脂肪アシルデサチュラーゼに対する少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態55~67のいずれか1つに記載の組換え微生物。
69.アシル-CoAオキシダーゼは、表5aから選択される、実施形態55~68のいずれか1つに記載の組換え微生物。
70.脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、ミドリムシ(Euglena gracilis)、サクラスガ(Yponomeuta evonymellus)及びオオタバコガ(Helicoverpa armigera)由来の脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼから選択される、実施形態55~69のいずれか1つに記載の組換え微生物。
71.脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼは、配列番号1~3、32、41~48、55~57、73、75、77及び82からなる群から選択される脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼに対する少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態55~70のいずれか1つに記載の組換え微生物。
72.脂肪アシルデサチュラーゼは、E5-10:アシル-CoA、E7-12:アシル-CoA、E9-14:アシル-CoA、E11-16:アシル-CoA、E13-18:アシル-CoA、Z7-12:アシル-CoA、Z9-14:アシル-CoA、Z11-16:アシル-CoA、Z13-18:アシル-CoA、Z8-12:アシル-CoA、Z10-14:アシル-CoA、Z12-16:アシル-CoA、Z14-18:アシル-CoA、Z7-10:アシル-coA、Z9-12:アシル-CoA、Z11-14:アシル-CoA、Z13-16:アシル-CoA、Z15-18:アシル-CoA、E7-10:アシル-CoA、E9-12:アシル-CoA、E11-14:アシル-CoA、E13-16:アシル-CoA、E15-18:アシル-CoA、E5Z7-12:アシル-CoA、E7Z9-12:アシル-CoA、E9Z11-14:アシル-CoA、E11Z13-16:アシル-CoA、E13Z15-18:アシル-CoA、E6E8-10:アシル-CoA、E8E10-12:アシル-CoA、E10E12-14:アシル-CoA、E12E14-16:アシル-CoA、Z5E8-10:アシル-CoA、Z7E10-12:アシル-CoA、Z9E12-14:アシル-CoA、Z11E14-16:アシル-CoA、Z13E16-18:アシル-CoA、Z3-10:アシル-CoA、Z5-12:アシル-CoA、Z7-14:アシル-CoA、Z9-16:アシル-CoA、Z11-18:アシル-CoA、Z3Z5-10:アシル-CoA、Z5Z7-12:アシル-CoA、Z7Z9-14:アシル-CoA、Z9Z11-16:アシル-CoA、Z11Z13-16:アシル-CoA及びZ13Z15-18:アシル-CoAから選択される一不飽和又は多価不飽和中間体への脂肪アシル-CoAの変換を触媒する、実施形態55~71のいずれか1つに記載の組換え微生物。
73.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールは、E5-10:OH、Z8-12:OH、Z9-12:OH、Z11-14:OH、Z11-16:OH、E11-14:OH、E8E10-12:OH、E7Z9-12:OH、Z11Z13-16OH、Z9-14:OH、Z9-16:OH及びZ13-18:OHからなる群から選択される、実施形態55~72のいずれか1つに記載の組換え微生物。
74.組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルデヒド形成脂肪アシル-CoAレダクターゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む、実施形態55~73のいずれか1つに記載の組換え微生物。
75.アルデヒド形成脂肪アシル-CoAレダクターゼは、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)A0A1C4HN78、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)N9DA85、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)R8XW24、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)A0A1A0GGM5、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)A0A117N158及びノストック・プンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)YP_001865324からなる群から選択される、実施形態74に記載の組換え微生物。
76.組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む、実施形態55~75のいずれか1つに記載の組換え微生物。
77.≦C18脂肪アルデヒドは、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される、実施形態55~76のいずれか1つに記載の組換え微生物。
78.組換え微生物は、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を更に含む、実施形態55~77のいずれか1つに記載の組換え微生物。
79.アセチルトランスフェラーゼは、表5dから選択される、実施形態78に記載の組換え微生物。
80.≦C18脂肪アセテートは、E5-10:Ac、Z7-12:Ac、Z8-12:Ac、Z9-12:Ac、E7Z9-12:Ac、Z9-14:Ac、Z9E12-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac及びZ11-16:Acからなる群から選択される、実施形態78に記載の組換え微生物。
81.組換え微生物は、
一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有する、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ及びアルデヒド形成脂肪アシル-CoAレダクターゼから選択される酵素をコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子;及び
一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子
を更に含む、実施形態55~80のいずれか1つに記載の組換え微生物。
82.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルデヒド及び≦C18脂肪アセテートは、E5-10:Ac、Z7-12:Ac、Z8-12:Ac、Z9-12:Ac、E7Z9-12:Ac、Z9-14:Ac、Z9E12-14:Ac、E11-14:Ac、Z11-14:Ac、Z11-16:Ac、Z9-16:Ac、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される、実施形態81に記載の組換え微生物。
83.組換え微生物は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)及びカンジダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)からなる群から選択される酵母である、実施形態55~82のいずれか1つに記載の組換え微生物。
84.飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールを生成する方法であって、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの生成に適正な炭素源を供給する原料を含む培養培地で実施形態55~83のいずれか1つに記載の組換え微生物を培養することを含む方法。
85.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールは、E5-10:OH、Z8-12:OH、Z9-12:OH、Z11-14:OH、Z11-16:OH、E11-14:OH、E8E10-12:OH、E7Z9-12:OH、Z11Z13-16OH、Z9-14:OH、Z9-16:OH及びZ13-18:OHからなる群から選択される、実施形態84に記載の方法。
86.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールを回収するステップを更に含む、実施形態84~85のいずれか1つに記載の方法。
87.前記回収するステップは、蒸留を含む、実施形態86に記載の方法。
88.前記回収するステップは、膜に基づく分離を含む、実施形態86に記載の方法。
89.飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールを生成する能力を有する微生物に改変する方法であって、以下:
(a)飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAへの変換を触媒する脂肪アシルデサチュラーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子;
(b)アシル-CoAオキシダーゼ活性の1つ以上の連続サイクル後、(a)からの一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoAの、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アシル-CoAへの変換を触媒するアシル-CoAオキシダーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子であって、所与のサイクルは、そのサイクルにおける出発一不飽和又は多価不飽和C6~C24脂肪アシル-CoA基質と比べて2つの炭素切断を有する一不飽和又は多価不飽和C4~C22脂肪アシル-CoA中間体を生成する、少なくとも1つの外因性核酸分子;及び
(c)(b)からの一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アシル-CoAの、対応する一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールへの変換を触媒する脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子
を微生物中に導入することを含む方法。
90.微生物は、MATA ura3-302::SUC2 Δpox1 Δpox2 Δpox3 Δpox4 Δpox5 Δpox6 Δfadh Δadh1 Δadh2 Δadh3 Δadh4 Δadh5 Δadh6 Δadh7 Δfao1::URA3である、実施形態89に記載の方法。
91.好ましくは、≦C18脂肪アシル-CoAを保持するアシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含む、実施形態89~90のいずれか1つに記載の方法。
92.好ましくは、≦C18脂肪アシル-CoAを保持するアシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含み、アシルトランスフェラーゼは、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)、リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)、グリセロールリン脂質アシルトランスフェラーゼ(GPLAT)及びジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)からなる群から選択される、実施形態89~91のいずれか1つに記載の方法。
93.好ましくは、≦C18脂肪アシル-CoAを保持するアシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含み、アシルトランスフェラーゼは、表5bから選択される、実施形態89~92のいずれか1つに記載の方法。
94.好ましくは、>C16、>C14、>C12又は>C10アシルグリセロール基質のエステル結合を加水分解するアシルグリセロールリパーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含む、実施形態89~93のいずれか1つに記載の方法。
95.好ましくは、>C16、>C14、>C12又は>C10アシルグリセロール基質のエステル結合を加水分解するアシルグリセロールリパーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含み、アシルグリセロールリパーゼは、表5cから選択される、実施形態89~94のいずれか1つに記載の方法。
96.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの生成のための生合成経路と競合する経路における反応を触媒する1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾を微生物中に導入することを更に含む、実施形態89~95のいずれか1つに記載の方法。
97.
(i)1つ以上のアシル-CoAオキシダーゼ;
(ii)1つ以上のアシルトランスフェラーゼ;
(iii)1つ以上のアシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ;
(iv)1つ以上の(脂肪)アルコールデヒドロゲナーゼ;
(v)1つ以上の(脂肪)アルコールオキシダーゼ;及び
(vi)1つ以上のシトクロムP450モノオキシゲナーゼ
から選択される1つ以上の内因性酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾を微生物中に導入することを更に含む、実施形態89~96のいずれか1つに記載の方法。
98.Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX1(YALI0E32835g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX2(YALI0F10857g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX3(YALI0D24750g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX4(YALI0E27654g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX5(YALI0C23859g)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)POX6(YALI0E06567g);S.セレビシエ(S. cerevisiae)POX1(YGL205W);カンジダ属(Candida)POX2(CaO19.1655、CaO19.9224、CTRG_02374、M18259)、カンジダ属(Candida)POX4(CaO19.1652、CaO19.9221、CTRG_02377、M12160)及びカンジダ属(Candida)POX5(CaO19.5723、CaO19.13146、CTRG_02721、M12161)からなる群から選択される1つ以上の内因性アシル-CoAオキシダーゼ酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾を微生物中に導入することを更に含む、実施形態89~97のいずれか1つに記載の方法。
99.Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C00209g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E18964g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F19514g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14014g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E16797g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32769g及びY.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D07986g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YBL011w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YDL052c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR175C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YPR139C、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YNR008w及びS.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR245c並びにカンジダ属(Candida)I503_02577、カンジダ属(Candida)CTRG_02630、カンジダ属(Candida)CaO19.250、カンジダ属(Candida)CaO19.7881、カンジダ属(Candida)CTRG_02437、カンジダ属(Candida)CaO19.1881、カンジダ属(Candida)CaO19.9437、カンジダ属(Candida)CTRG_01687、カンジダ属(Candida)CaO19.1043、カンジダ属(Candida)CaO19.8645、カンジダ属(Candida)CTRG_04750、カンジダ属(Candida)CaO19.13439、カンジダ属(Candida)CTRG_04390、カンジダ属(Candida)CaO19.6941、カンジダ属(Candida)CaO19.14203及びカンジダ属(Candida)CTRG_06209からなる群から選択される1つ以上の内因性アシルトランスフェラーゼ酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾を微生物中に導入することを更に含む、実施形態89~98のいずれか1つに記載の方法。
100.Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E32035g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0D17534g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F10010g、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C14520g及びY.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E00528g、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL140w、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YMR313c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKR089c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YOR081c、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YKL094W、S.セレビシエ(S. cerevisiae)YLL012W及びS.セレビシエ(S. cerevisiae)YLR020C並びにカンジダ属(Candida)CaO19.2050、カンジダ属(Candida)CaO19.9598、カンジダ属(Candida)CTRG_01138、カンジダ属(Candida)W5Q_03398、カンジダ属(Candida)CTRG_00057、カンジダ属(Candida)CaO19.5426、カンジダ属(Candida)CaO19.12881、カンジダ属(Candida)CTRG_06185、カンジダ属(Candida)CaO19.4864、カンジダ属(Candida)CaO19.12328、カンジダ属(Candida)CTRG_03360、カンジダ属(Candida)CaO19.6501、カンジダ属(Candida)CaO19.13854、カンジダ属(Candida)CTRG_05049、カンジダ属(Candida)CaO19.1887、カンジダ属(Candida)CaO19.9443、カンジダ属(Candida)CTRG_01683及びカンジダ属(Candida)CTRG_04630からなる群から選択される1つ以上の内因性アシルグリセロールリパーゼ及び/又はステロールエステルエステラーゼ酵素の活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾を微生物中に導入することを更に含む、実施形態89~99のいずれか1つに記載の方法。
101.Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E25982g(ALK1)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0F01320g(ALK2)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0E23474g(ALK3)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B13816g(ALK4)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B13838g(ALK5)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B01848g(ALK6)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0A15488g(ALK7)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C12122g(ALK8)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B06248g(ALK9)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0B20702g(ALK10)、Y.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0C10054g(ALK11)及びY.リポリティカ(Y. lipolytica)YALI0A20130g(ALK12)からなる群から選択される1つ以上の内因性シトクロムP450モノオキシゲナーゼの活性の欠失、破壊、変異及び/又は低下を含む1つ以上の修飾を更に含む、実施形態89~100のいずれか1つに記載の方法。
102.脂肪アシルデサチュラーゼは、アルギロタエニア・ベルチナナ(Argyrotaenia velutinana)、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、イネヨトウ(Sesamia inferens)、タバコスズメガ(Manduca sexta)、ヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)、ハスオビハマキ(Choristoneura rosaceana)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、カラントシュートボーラー(Lampronia capitella)、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、カブラヤガ(Agrotis segetum)、アワノメイガ(Ostrinia furnicalis)及びタラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)由来の脂肪アシルデサチュラーゼから選択される、実施形態89~101のいずれか1つに記載の方法。
103.脂肪アシルデサチュラーゼは、配列番号39、49~54、58~63並びにGenBank受託番号AF416738、AGH12217.1、AII21943.1、CAJ43430.2、AF441221、AAF81787.1、AF545481、AJ271414、AY362879、ABX71630.1、NP001299594.1、Q9N9Z8、ABX71630.1及びAIM40221.1からなる群から選択される脂肪アシルデサチュラーゼに対する少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態89~102のいずれか1つに記載の方法。
104.アシル-CoAオキシダーゼは、表5aから選択される、実施形態89~103のいずれか1つに記載の方法。
105.脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼは、カブラヤガ(Agrotis segetum)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、エジプトヨトウ(Spodoptera littoralis)、ミドリムシ(Euglena gracilis)、サクラスガ(Yponomeuta evonymellus)及びオオタバコガ(Helicoverpa armigera)由来の脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼから選択される、実施形態89~104のいずれか1つに記載の方法。
106.脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼは、配列番号1~3、32、41~48、55~57、73、75、77及び82からなる群から選択される脂肪アルコール形成脂肪アシルレダクターゼに対する少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態89~105のいずれか1つに記載の方法。
107.脂肪アシルデサチュラーゼは、E5-10:アシル-CoA、E7-12:アシル-CoA、E9-14:アシル-CoA、E11-16:アシル-CoA、E13-18:アシル-CoA、Z7-12:アシル-CoA、Z9-14:アシル-CoA、Z11-16:アシル-CoA、Z13-18:アシル-CoA、Z8-12:アシル-CoA、Z10-14:アシル-CoA、Z12-16:アシル-CoA、Z14-18:アシル-CoA、Z7-10:アシル-coA、Z9-12:アシル-CoA、Z11-14:アシル-CoA、Z13-16:アシル-CoA、Z15-18:アシル-CoA、E7-10:アシル-CoA、E9-12:アシル-CoA、E11-14:アシル-CoA、E13-16:アシル-CoA、E15-18:アシル-CoA、E5Z7-12:アシル-CoA、E7Z9-12:アシル-CoA、E9Z11-14:アシル-CoA、E11Z13-16:アシル-CoA、E13Z15-18:アシル-CoA、E6E8-10:アシル-CoA、E8E10-12:アシル-CoA、E10E12-14:アシル-CoA、E12E14-16:アシル-CoA、Z5E8-10:アシル-CoA、Z7E10-12:アシル-CoA、Z9E12-14:アシル-CoA、Z11E14-16:アシル-CoA、Z13E16-18:アシル-CoA、Z3-10:アシル-CoA、Z5-12:アシル-CoA、Z7-14:アシル-CoA、Z9-16:アシル-CoA、Z11-18:アシル-CoA、Z3Z5-10:アシル-CoA、Z5Z7-12:アシル-CoA、Z7Z9-14:アシル-CoA、Z9Z11-16:アシル-CoA、Z11Z13-16:アシル-CoA及びZ13Z15-18:アシル-CoAから選択される一不飽和又は多価不飽和中間体への脂肪アシル-CoAの変換を触媒する、実施形態89~106のいずれか1つに記載の方法。
108.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールは、E5-10:OH、Z8-12:OH、Z9-12:OH、Z11-14:OH、Z11-16:OH、E11-14:OH、E8E10-12:OH、E7Z9-12:OH、Z11Z13-16OH、Z9-14:OH、Z9-16:OH及びZ13-18:OHからなる群から選択される、実施形態89~107のいずれか1つに記載の方法。
109.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルデヒド形成脂肪アシル-CoAレダクターゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含む、実施形態89~108のいずれか1つに記載の方法。
110.アルデヒド形成脂肪アシル-CoAレダクターゼは、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)A0A1C4HN78、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)N9DA85、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)R8XW24、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)A0A1A0GGM5、A.カルコアセティカス(A. calcoaceticus)A0A117N158及びノストック・プンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)YP_001865324からなる群から選択される、実施形態109に記載の方法。
111.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有するアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含む、実施形態89~110のいずれか1つに記載の方法。
112.≦C18脂肪アルデヒドは、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される、実施形態109~111のいずれか1つに記載の方法。
113.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子を微生物中に導入することを更に含む、実施形態89~112のいずれか1つに記載の方法。
114.アセチルトランスフェラーゼは、表5dから選択される、実施形態113に記載の方法。
115.≦C18脂肪アセテートは、E5-10:Ac、Z7-12:Ac、Z8-12:Ac、Z9-12:Ac、E7Z9-12:Ac、Z9-14:Ac、Z9E12-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac、Z11-14:Ac及びZ11-16:Acからなる群から選択される、実施形態113~114のいずれか1つに記載の方法。
116.
一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アルデヒドへの変換を触媒する能力を有する、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ及びアルデヒド形成脂肪アシル-CoAレダクターゼから選択される酵素をコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子;及び
一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールの、対応する≦C18脂肪アセテートへの変換を触媒する能力を有するアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性又は外因性核酸分子
を微生物中に導入することを更に含む、実施形態89~115のいずれか1つに記載の方法。
117.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルデヒド及び≦C18脂肪アセテートは、E5-10:Ac、Z7-12:Ac、Z8-12:Ac、Z9-12:Ac、E7Z9-12:Ac、Z9-14:Ac、Z9E12-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z11-16:Ac、Z9-16:Ald、Z9-16:Ac、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される、実施形態116に記載の方法。
118.飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルデヒドを生成する方法であって、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルデヒドの生成に適正な炭素源を供給する原料を含む培養培地で実施形態74~76のいずれか1つに記載の組換え微生物を培養することを含む方法。
119.≦C18脂肪アルデヒドは、Z9-16:Ald、Z11-16:Ald、Z11Z13-16:Ald及びZ13-18:Aldからなる群から選択される、実施形態118に記載の方法。
120.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルデヒドを回収するステップを更に含む、実施形態118~119のいずれか1つに記載の方法。
121.前記回収するステップは、蒸留を含む、実施形態120に記載の方法。
122.前記回収するステップは、膜に基づく分離を含む、実施形態120に記載の方法。
123.飽和C6~C24脂肪酸の内因性又は外因性供給源から一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アセテートを生成する方法であって、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アセテートの生成に適正な炭素源を供給する原料を含む培養培地で実施形態78~80のいずれか1つに記載の組換え微生物を培養することを含む方法。
124.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アセテートは、E5-10:Ac、Z7-12:Ac、Z8-12:Ac、Z9-12:Ac、E7Z9-12:Ac、Z9-14:Ac、Z9E12-14:Ac、Z11-14:Ac、E11-14:Ac、Z9-16:Ac及びZ11-16:Acからなる群から選択される、実施形態123に記載の方法。
125.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アセテートを回収するステップを更に含む、実施形態123~124のいずれか1つに記載の方法。
126.前記回収するステップは、蒸留を含む、実施形態125に記載の方法。
127.前記回収するステップは、膜に基づく分離を含む、実施形態125に記載の方法。
128.組換え微生物は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)及びカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)からなる群から選択される酵母である、実施形態89~115のいずれか1つに記載の方法。
129.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールは、化学的方法を用いて対応する≦C18脂肪アルデヒドに変換される、実施形態89~115のいずれか1つに記載の方法。
130.化学的方法は、TEMPO-ブリーチ、TEMPO-銅-空気、TEMPO-PhI(OAc)2、スワーン酸化及び貴金属-空気から選択される、実施形態129に記載の方法。
131.一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールは、化学的方法を用いて対応する≦C18脂肪アセテートに変換される、実施形態89~115のいずれか1つに記載の方法。
132.化学的方法は、4-N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)又は酢酸ナトリウムの存在下において、塩化アセチル、無水酢酸、塩化ブチリル、無水酪酸、塩化プロパノイル及びプロピオン酸無水物からなる群から選択される化学剤を利用して、一不飽和又は多価不飽和≦C18脂肪アルコールを、対応する≦C18脂肪アセテートにエステル化する、実施形態131に記載の方法。