以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)100の正面図である。以下の説明において、プリンタ100の前、後、左、右、上、下とは、プリンタ100を正面から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号L、R、U、Dは、プリンタ100の左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示す。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。主走査方向Yは、後述のインクヘッド41の移動方向である。ここでは、前後方向のことを副走査方向ともいう。副走査方向は、主走査方向Yと交差する方向(例えば、平面視で直交する方向)である。副走査方向は、後述する記録媒体5の搬送方向である。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
本実施形態に係るプリンタ100は、インクジェット方式のプリンタである。プリンタ100は、記録媒体5に対して印刷を行うものである。記録媒体5はロール状の記録紙であり、いわゆる、ロール紙である。しかしながら、記録媒体5は、ロール状の記録紙に限定されない。例えば、記録媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。
図1に示すように、プリンタ100は、プリンタ本体11と、プラテン13と、搬送機構20と、ガイドレール15と、キャリッジ17と、ヘッド移動機構30と、インク供給システム40(図2参照)と、キャップユニット50(図4参照)と、操作パネル60と、制御装置70とを備えている。
図1に示すように、プリンタ本体11は、主走査方向Yに延びたケーシングを有している。プラテン13は、主走査方向Yに延びている。プラテン13には、記録媒体5が載置される。プラテン13に載置された記録媒体5に対して印刷が行われる。プラテン13に載置された記録媒体5は、搬送機構20によって、副走査方向(ここでは、前後方向)に搬送される。ここでは、搬送機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23と、を備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方かつガイドレール15の下方に設けられ、記録媒体5を上から押さえ付けるものである。ピンチローラ21は、キャリッジ17よりも後方に配置されている。グリットローラ22は、プラテン13に設けられた円筒状の部材である。ここでは、グリットローラ22は、その上面部を露出させた状態でプラテン13に埋設されている。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向している。グリットローラ22は、フィードモータ23に接続されている。ピンチローラ21とグリットローラ22との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動すると、グリットローラ22が回転する。このことで、記録媒体5は、副走査方向に搬送される。
ガイドレール15は、プラテン13の上方に配置されている。ガイドレール15は、プラテン13と平行に配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール15には、キャリッジ17が係合している。キャリッジ17は、ガイドレール15に摺動可能に設けられている。
ヘッド移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド41(図2参照)を主走査方向Yに移動させる機構である。ヘッド移動機構30は、左右のプーリ31aおよび31bと、ベルト32と、キャリッジモータ33とを備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部に設けられている。ベルト32は、無端状のベルトであり、左右のプーリ31aおよび31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が固定されている。ここでは、右のプーリ31bには、キャリッジモータ33が接続されている。キャリッジモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、キャリッジ17およびインクヘッド41は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。
図2は、インク供給システム40を示す模式図である。インク供給システム40は、後述のインクタンク43からインクヘッド41に向かってインクを供給するシステムである。インク供給システム40は、1つのインクヘッド41ごとに設けられている。図3は、キャリッジ17の正面断面図であり、ダンパー47とインクヘッド41との位置関係を示した図である。図3に示すように、ここでは、インクヘッド41の数が「4」であるため、インク供給システム40の数は「4」である。ただし、インク供給システム40の数は特に限定されない。本実施形態では、複数のインク供給システム40は、同じ構成を有している。そのため、以下では、1つのインク供給システム40の構成について詳述する。なお、複数のインク供給システム40において、一部のインク供給システム40の構成は、他のインク供給システム40の構成と異なっていてもよい。例えば、複数のインク供給システム40のうちの何れかには、インクを循環させる機構が備えられてもよい。
図2に示すように、インク供給システム40は、インクヘッド41と、インクタンク43と、インク供給路45と、送液ポンプ46と、ダンパー47とを備えている。
インクヘッド41は、プラテン13(図1参照)に載置された記録媒体5にインクを吐出する。インクヘッド41には、底面にノズル面42が形成されている。インクヘッド41のノズル面42には、インクを吐出する複数のノズル41aが形成されている。複数のノズル41aは、副走査方向に並んで配置されている。図3に示すように、インクヘッド41は、キャリッジ17に搭載されている。インクヘッド41は、キャリッジ17を介してガイドレール15(図1参照)に沿って主走査方向Yに移動可能である。
図2に示すように、インクタンク43は、インクを貯留するものである。インクタンク43とは、例えばインクカートリッジのことである。1つのインクタンク43には、1つのインクヘッド41が接続されている。しかしながら、1つのインクヘッド41に2つのインクタンクが接続されていてもよい。この場合、インクヘッド41には、2つのインク供給路45が接続されている。1つのインクタンク43に貯留されているインクは、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、および、ブラックインクなどのプロセスカラーインクと、ホワイトインク、メタリックインク、および、クリアインクなどの特色インクのうち何れかのインクである。なお、インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、上記インクは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インクなどであってもよい。
また、インクタンク43の配置位置は特に限定されない。インクタンク43は、例えばプリンタ本体11に着脱可能に設けられていてもよいし、キャリッジ17に着脱可能に設けられていてもよい。
インク供給路45は、インクタンク43とインクヘッド41とを接続する流路である。インク供給路45の一端(ここでは、上流端)は、インクタンク43に接続されている。インク供給路45の他端(ここでは、下流端)は、インクヘッド41に接続されている。インク供給路45の他端は、インクヘッド41のノズル41aと連通している。なお、インク供給路45の材質は特に限定されない。インク供給路45は、例えば可撓性を有するチューブなどによって構成されている。
送液ポンプ46は、インクタンク43に貯留されたインクをインクヘッド41に供給すると共に、インクヘッド41からのインクの吐出に適した圧力に調整するためのポンプである。送液ポンプ46は、インク供給路45に設けられている。送液ポンプ46は、駆動時には、インクタンク43からインクヘッド41に向かってインクを送液する。なお、送液ポンプ46の種類は特に限定されない。例えば、送液ポンプ46は、ダイヤフラムポンプ、または、チューブポンプなどである。
ダンパー47は、インクの圧力変動を緩和して、インクヘッド41のインク吐出動作を安定させるものである。ダンパー47は、ダンパー47に流入するインクの流量(言い換えると、ダンパー47内の圧力)を検出する。そして、インクの流量に基づいて、送液ポンプ46が制御される。図3に示すように、ダンパー47は、インクヘッド41の上部に設けられている。図2に示すように、ダンパー47は、送液ポンプ46よりも下流側(ここでは、インクヘッド41側)に設けられている。なお、ダンパー47の構成は特に限定されない。本実施形態では、ダンパー47は、インクが貯留されるインク貯留室48と、インク貯留室48のインク貯留量が所定の貯留量以下であるか否かを検出する検出センサ49を備えている。例えば、検出センサ49は、フォトインタラプタである。例えば、検出センサ49がインク貯留室48のインク貯留量が所定の貯留量以下であることを検出すると、制御装置70は、インクの流量を増やすように送液ポンプ46の駆動を制御する。一方、インク貯留室48のインク貯留量が所定の貯留量よりも多い場合、制御装置70は、インクの流量を減らすように送液ポンプ46の駆動を制御する。
次に、キャップユニット50について説明する。図4は、キャップユニット50を示す模式図である。キャップユニット50は、インクヘッド41のノズル41aを覆った状態で、インクヘッド41内のインクを吸引するものである。キャップユニット50の配置位置は特に限定されない。ここでは、キャップユニット50は、非印刷時に、インクヘッド41が待機する位置であるホームポジションに配置されている。このホームポジションは、例えばガイドレール15(図1参照)の右端部に位置している。しかしながら、ホームポジションは、ガイドレール15の左端部に位置していてもよい。
図4に示すように、キャップユニット50は、キャップ51と、排出流路52と、廃液タンク53と、吸引ポンプ54と、大気開放流路55と、排出バルブ56と、大気開放バルブ57と、キャップ移動機構58と、を備えている。キャップ51は、インクヘッド41に装着可能なものである。本実施形態では、キャップ51は、ノズル面42に装着され、インクヘッド41のノズル41aを下方から覆うものである。キャップ51は、上部が開口した箱状の形状を有している。キャップ51は、例えばゴムなどによって形成されている。キャップ51の上部の開口は、インクヘッド41の外周部の形状に対応している。
排出流路52は、インクヘッド41内のインクおよびキャップ51内のインクを廃液タンク53に排出する流路である。排出流路52は、キャップ51と廃液タンク53とに接続されている。本実施形態では、排出流路52は、上流側流路52aと、下流側流路52bとを有している。上流側流路52aは、排出流路52の上流側を構成している。上流側流路52aの一端(ここでは、上流端)は、キャップ51の底面に接続されている。上流側流路52aは、キャップ51の内部の空間と連通している。上流側流路52aの他端(ここでは、下流端)は、吸引ポンプ54に接続されている。下流側流路52bは、上流側流路52aよりも下流側に配置され、排出流路52の下流側を構成している。下流側流路52bの一端は、吸引ポンプ54に接続されている。下流側流路52bの他端は、廃液タンク53に接続されている。なお、排出流路52の材質は特に限定されない。排出流路52は、例えば可撓性を有するチューブなどによって構成されている。廃液タンク53は、有底の容器であり、インクヘッド41およびキャップ51から排出されたインクが貯留される。
吸引ポンプ54は、インクヘッド41内のインク、および、キャップ51内のインクや空気などを吸引する部材である。吸引ポンプ54は、排出流路52に設けられている。詳しくは、吸引ポンプ54は、排出流路52の上流側流路52aと下流側流路52bの間に配置されており、上流側流路52aおよび下流側流路52bに接続されている。吸引ポンプ54は、排出流路52を介してキャップ51に接続されている。本実施形態では、吸引ポンプ54は、チューブポンプである。
図5は、吸引ポンプ54の模式図である。図5に示すように、吸引ポンプ54は、回転体81と、ローラ82と、内部チューブ83と、駆動モータ84とを備えている。回転体81は、軸81aを中心に回転するものである。回転体81には、2つのローラ82が設けられている。ローラ82は、一部が回転体81の外側に突出するように回転体81に設けられている。なお、ローラ82の数は特に限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。ここでは、ローラ82は、回転体81の回転に伴い、内部チューブ83を押圧することが可能である。内部チューブ83は、回転体81を囲むように配置されている。ここでは、内部チューブ83は、回転体81の回転方向に沿うように配置されている。内部チューブ83は、可撓性を有している。本実施形態では、内部チューブ83は、流入口83aと、流出口83bと、大気口83cとを有している。流入口83aは、内部チューブ83の一端(ここでは、上流端)に形成されている。流入口83aには、排出流路52の上流側流路52aの他端が接続されている。流出口83bは、内部チューブ83の他端(ここでは、下流端)に形成されている。流出口83bには、排出流路52の下流側流路52bの一端が接続されている。大気口83cは、内部チューブ83の途中部分に形成されている。詳しくは、大気口83cは、内部チューブ83の途中部分であって、内部チューブ83のうちローラ82に押圧される部位よりも流入口83a側の部位に形成されている。大気口83cには、大気開放流路55の一端が接続されている。駆動モータ84は、回転体81の軸81aに接続されている。駆動モータ84が駆動することで回転体81を回転させる。
本実施形態では、回転体81が回転方向R1に回転するように駆動モータ84が駆動することで、ローラ82は、内部チューブ83を押し潰しながら回転方向R1に沿って移動する。回転体81が回転方向R1に回転しているとき、ローラ82は、回転体81の径方向の外側に向かって移動し、内部チューブ83を押圧するように構成されている。回転方向R1は、本発明の一方に回転の一例である。このことで、内部チューブ83内のインクは、流入口83aから流出口83bに向かって移動し、キャップ51内のインクを吸引することができる。一方、回転体81が回転方向R2に回転するように駆動モータ84が駆動することで、ローラ82は回転方向R2に沿って移動し、内部チューブ83内の圧力は開放された状態となる。図示は省略するが、回転体81が回転方向R2に回転しているとき、ローラ82は、回転体81の径方向の内側に向かって移動し、内部チューブ83を押圧しないように構成されている。回転方向R2は、本発明の他方に回転の一例である。このように、ローラ82が回転体81の径方向の内側に向かって移動し、内部チューブ83が押圧されていない状態のことを、吸引ポンプ54のリリース状態という。また、本実施形態では、回転体81を回転方向R1に回転させるような駆動モータ84の駆動、すなわち、キャップ51内のインクを吸引するような駆動モータ84の駆動のことを、吸引ポンプ54の正転駆動という。一方、回転体81を回転方向R2に回転させるような駆動モータ84の駆動のことを、吸引ポンプ54の反転駆動という。なお、以下の説明において、吸引ポンプ54の駆動とは、正転駆動のことを意味する。
図4に示すように、大気開放流路55は、吸引ポンプ54が反転運動しているとき、流入口83aに向かうインクの流れを外部に開放させる流路である。大気開放流路55は、吸引ポンプ54に接続されている。詳しくは、大気開放流路55の一端(ここでは、上流端)は、吸引ポンプ54の内部チューブ83に形成された大気口83cに接続されている。大気開放流路55の他端部(ここでは、下流部)は、大気開放バルブ57に接続されている。なお、大気開放流路55の材質は特に限定されない。ここでは、大気開放流路55は、排出流路52と同様に、可撓性を有するチューブなどによって構成されている。
排出バルブ56は、開閉自在であり、排出流路52を開放および閉鎖することが可能なバルブである。排出バルブ56は、上流側流路52a内において、キャップ51側へのインクの流れを塞き止めることが可能なものである。本実施形態では、排出バルブ56は、第1閉鎖機構の一例である。ここで、排出流路52の閉鎖には、排出バルブ56によって排出流路52が完全に閉鎖している状態はもちろんのこと、多少開放されている状態も含まれる。本実施形態では、排出バルブ56は、排出流路52に設けられている。詳しくは、排出バルブ56は、上流側流路52aに設けられている。言い換えると、排出バルブ56は、吸引ポンプ54よりも上流側の排出流路52の部位に設けられている。排出バルブ56によって排出流路52が開放されているとき、吸引ポンプ54が正転駆動することでキャップ51内のインクを吸引し、吸引したインクを廃液タンク53に排出することができる。
大気開放バルブ57は、開閉自在であり、大気開放流路55を開放および閉鎖することが可能なバルブである。本実施形態では、大気開放バルブ57は、第2閉鎖機構の一例である。ここで、大気開放流路55の閉鎖には、排出流路52の閉鎖と同様に、大気開放バルブ57によって大気開放流路55が完全に閉鎖している状態はもちろんのこと、多少開放されている状態も含まれる。本実施形態では、大気開放バルブ57は、大気開放流路55に設けられている。大気開放バルブ57によって大気開放流路55が開放されることで、回転体81が回転方向R2に回転しているときに、吸引ポンプ54の内部チューブ83内のインクの流れが外部に開放される。
キャップ移動機構58は、インクヘッド41のノズル面42に対して、キャップ51を接近または離間させるように、キャップ51を移動させる機構である。ここでは、キャップ移動機構58は、キャップ51を昇降させる機構である。キャップ移動機構58は、インクヘッド41のノズル面42に向かってキャップ51を移動させる機構である。なお、このキャップ移動機構58の構成は特に限定されない。例えば、キャップ移動機構58は、キャップ51が係合し、上下方向に延びたレールと、キャップ51に接続された駆動モータとを備えている。この駆動モータが駆動することで、キャップ51は、上記レールに沿って昇降する。
図1に示すように、プリンタ100のプリンタ本体11の右端部には、操作パネル60が設けられている。操作パネル60には、機器状態を表示する表示画面61と、ユーザによって操作される入力キー62などが設けられている。
次に、制御装置70について説明する。制御装置70は、印刷に関する制御、および、主吸引や空吸引などの制御を行う装置である。制御装置70の構成は特に限定されない。制御装置70は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。なお、制御装置70は必ずしもプリンタ100の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ100の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ100と通信可能に接続されたコンピュータなどであってもよい。
図6は、本実施形態に係るプリンタ100のブロック図である。図6に示すように、制御装置70は、搬送機構20のフィードモータ23と、ヘッド移動機構30のキャリッジモータ33と、インクヘッド41と、送液ポンプ46と、ダンパー47の検出センサ49と、吸引ポンプ54の駆動モータ84と、排出バルブ56と、大気開放バルブ57と、キャップ移動機構58と、操作パネル60とにそれぞれ通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。
ところで、キャップユニット50を使用した制御として、主吸引制御と、空吸引制御とが存在する。主吸引制御とは、キャップ51がインクヘッド41のノズル41aを覆うようにしてノズル面42に装着した状態において、吸引ポンプ54を正転駆動させることで、インクヘッド41内のインクをキャップ51内に排出する制御のことである。空吸引制御とは、ノズル面42に対してキャップ51を離間させた状態において、吸引ポンプ54を正転駆動させることで、インクヘッド41内のインクを吸引せずに、キャップ51内のインクを吸引する制御のことである。
上記空吸引制御の後には、吸引ポンプ54をリリース状態にするために、吸引ポンプ54を反転駆動させる。吸引ポンプ54を反転駆動させるとき、吸引ポンプ54の内部チューブ83がローラ82によって押圧されていない状態となり、内部チューブ83が開放された状態となる。このように、吸引ポンプ54を反転運動させたとき、内部チューブ83内のインクが流入口83aに逆流するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、内部チューブ83に大気口83cが形成されているため、吸引ポンプ54が反転運動しているときに、内部チューブ83内のインクの流れは、大気口83cから開放される。
本実施形態では、空吸引時、排出流路52内には、空気とインクが混在し、インクの薄い膜が複数形成されていることがあり得る。そのため、吸引ポンプ54をリリース状態にしたとき、排出流路52内のインクの薄い膜がキャップ51内に戻り、キャップ51内でインクの気泡が発生することがあり得る。この気泡は、インクヘッド41のインクの吐出不良を引き起こす原因となり得る。
例えば、この気泡をキャップ51内に発生させないために、空吸引時に、所定の時間の間、吸引ポンプ54の正転駆動の駆動速度を高速にした後、正転駆動の駆動速度を低速にすることが行われる。そして、空吸引制御の後の吸引ポンプ54の反転駆動の際、反転駆動の駆動速度を低速にすることが行われる。このように、駆動速度を低速にすることで、排出流路52内にインクの薄い膜が形成されることを抑制することができる。その結果、キャップ51内にインクの気泡が発生することを抑制することができ、かつ、インクヘッド41のインクの吐出不良を抑制することができる。
しかしながら、吸引ポンプ54の正転駆動および反転運動の駆動速度を低速にすることで、空吸引の時間を要することとなる。空吸引制御は印刷以外の制御であるため、利用者にとって空吸引時間は短いことが好ましい。
そこで、本実施形態では、吸引ポンプ54の正転駆動および反転運動の駆動速度を低速にすることなく、キャップ51内に気泡が発生し難くするために、図4に示すように、大気開放流路55、排出バルブ56および大気開放バルブ57がキャップユニット50に備えられている。
次に、本実施形態に係るキャップユニット50を使用した各制御について説明する。本実施形態では、図6に示すように、制御装置70は、記憶部71と、第1開閉制御部72と、主吸引制御部73と、負圧調整部74と、空吸引制御部75と、第2開閉制御部76と、リリース制御部77とを備えている。
次に、キャップユニット50を使用した制御装置70の制御について、図7のフローチャートに沿って説明する。図8および図9は、排出バルブ56および大気開放バルブ57の制御状態を示すキャップユニット50の模式図である。図8および図9の排出バルブ56および大気開放バルブ57において、「×」は閉鎖している状態を示し、「×」が示されていないときには開放している状態を示している。
図7のフローチャートのステップS101の前において、図8に示すように、キャップ51は、インクヘッド41のノズル面42に装着され、インクヘッド41のノズル41aを覆っている状態である。すなわち、ノズル面42にキャップ51を装着させるようにキャップ移動機構58が制御装置70の主吸引制御部73に制御された後の状態である。このとき、キャップ51の内部には、インクは溜まっていない状態である。
このような状態において、まずステップS101では、第1開閉制御部72は、図8に示すように、排出バルブ56を開放させ、大気開放バルブ57を閉鎖させるように制御する。このことで、排出流路52の上流側流路52aは開放され、キャップ51と廃液タンク53とは連通した状態となる。このとき、大気開放流路55は閉鎖され、排出流路52は大気圧に開放されていない状態となる。
次に、ステップS102では、主吸引制御部73は、第1開閉制御部72によって、上流側流路52aが開放され、かつ、大気開放流路55が閉鎖されている間において、主吸引制御を行う。主吸引制御が行われるときには、ノズル面42とキャップ51との間には、密閉空間が形成されている。
このように、インクヘッド41のノズル面42にキャップ51が装着されている状態において、主吸引制御部73は、吸引ポンプ54を正転駆動させて、上記密閉空間内を減圧させる。ここでは、主吸引制御部73は、吸引ポンプ54の駆動速度が第1の速度となるように吸引ポンプ54を駆動させている。ここで、第1の速度は、予め定められたものであり、記憶部71に予め記憶されている。主吸引時、インクヘッド41内のインクは、吸引ポンプ54に吸引され、キャップ51内に排出される。キャップ51から吸引ポンプ54に向かって吸引されたインクは、排出流路52を通じて廃液タンク53に排出される。
次に、ステップS103では、負圧調整部74は、負圧調整を実施する。負圧調整部74は、主吸引制御部73によって駆動されていた吸引ポンプ54を停止させ、停止状態を維持する。このように、吸引ポンプ54が停止することで、主吸引制御は終了する。その後、負圧調整部74は、インクヘッド41にキャップ51を装着した状態で、所定の時間の間、吸引ポンプ54の停止状態を維持する。この所定の時間は、3~10秒(例えば5秒)であり、プリンタ100によって適宜設定される時間である。なお、この所定の時間は、記憶部71に予め記憶されている。このように、吸引ポンプ54の停止状態を維持することで、インクヘッド41内の負圧状態が調整(言い換えると、均等化)される。
次に、ステップS104では、空吸引制御部75は、空吸引制御を行う。ここでは、インクヘッド41のノズル面42とキャップ51との間の密閉空間を大気圧に開放させることで、インクヘッド41内のインクは、吸引ポンプ54によって吸引されない。ここでは、第1開閉制御部72によって上流側流路52aが開放され、かつ、大気開放流路55が閉鎖されている間において、空吸引制御部75は、ノズル面42に対してキャップ51が離間するようにキャップ移動機構58を制御する。このことで、キャップ51が下降して、ノズル面42とキャップ51との間に隙間が形成される。そのため、ノズル面42とキャップ51との間の密閉空間は大気圧に開放される。
このように、ノズル面42とキャップ51とが離間している状態において、空吸引制御部75は、キャップ51内のインクを吸引するように吸引ポンプ54を正転駆動させる。このとき、空吸引制御部75は、吸引ポンプ54の駆動速度が第2の速度となるように、吸引ポンプ54を駆動させている。その後、空吸引制御部75は、吸引ポンプ54の駆動速度が第3の速度となるように、吸引ポンプ54を駆動させる。ここで、第2の速度とは、上記第1の速度よりも速い速度である。例えば、第2の速度は、吸引ポンプ54の最大駆動速度であり、最大限の吸引力が発揮される速度である。第3の速度とは、第2の速度よりも遅い速度である。本実施形態では、第3の速度は、第1の速度よりも遅いが、第1の速度と同じであってもよいし、第1の速度よりも速い速度であってもよい。なお、第2の速度および第3の速度は、予め定められたものであり、記憶部71に予め記憶されている。本実施形態では、空吸引制御部75は、吸引ポンプ54の正転駆動の駆動速度を高速(第2の速度)にした後、正転駆動の駆動速度を低速(第3の速度)にする。空吸引制御によって、キャップ51内のインクは、吸引ポンプ54によって排出流路52内に吸引される。排出流路52に吸引されたインクは、廃液タンク53に排出される。なお、所定の時間が経過した後、空吸引制御部75は、吸引ポンプ54を停止してもよい。
このように、空吸引制御が行われた後、ステップS105では、第2開閉制御部76は、図9に示すように、開放されている排出バルブ56を閉鎖させると共に、閉鎖されている大気開放バルブ57を開放させるように制御する。このことによって、排出流路52の上流側流路52aは閉鎖され、キャップ51と廃液タンク53とは連通していない状態となる。また、大気開放流路55は開放され、排出流路52および吸引ポンプ54は大気圧に開放されている状態となる。
次に、ステップS106では、第2開閉制御部76によって、上流側流路52aが閉鎖され、かつ、大気開放流路55が開放されている間において、リリース制御部77は、吸引ポンプ54がリリース状態となるように、吸引ポンプ54を反転駆動させる。このとき、リリース制御部77は、吸引ポンプ54の駆動速度の絶対値が上記第3の速度の絶対値と同じになるように吸引ポンプ54を反転駆動させる。ここで、「反転駆動の駆動速度の絶対値と、第3の速度の絶対値とが同じ」とは、厳密に同じ場合以外にも、多少の誤差も含まれるものとする。すなわち、ステップS106における反転駆動の駆動速度の絶対値は、第3の速度の絶対値と同じくらいの値であればよく、第3の速度の絶対値と同じである必要はない。本実施形態では、ステップS106における吸引ポンプ54の駆動速度の絶対値は、第2の速度の絶対値よりも小さい値である。ここでは、排出バルブ56によって排出流路52の上流側流路52aが閉鎖しているため、吸引ポンプ54をリリース状態にした場合、排出流路52内のインクおよび空気は、キャップ51側に向かって流れない。
以上、本実施形態では、空吸引制御が行われた後、排出バルブ56によって排出流路52の上流側流路52aを閉鎖し、大気開放バルブ57によって大気開放流路55を開放した状態にする。その後、吸引ポンプ54を反転駆動させる。このとき、内部チューブ83内のインクが流入口83aに向かって逆流することがあり得る。しかしながら、本実施形態では、内部チューブ83には、大気口83cが形成されているため、吸引ポンプ54の反転駆動時における内部チューブ83内のインクの流れは、大気口83cを通じて開放された状態となる。よって、吸引ポンプ54の反転駆動時、内部チューブ83内のインクが、流入口83aから内部チューブ83の外部に向かって流れ難くすることができる。
例えば空吸引時に、排出流路52内には、空気とインクが混在しており、インクの薄い膜が複数形成されていることがあり得る。このインクの薄い膜がキャップ51内に戻り、キャップ51内でインクの気泡が発生するおそれがある。この気泡に起因して、インクヘッド41のインクの吐出不良が発生することがある。しかしながら、本実施形態では、空吸引制御が行われたことで排出流路52内に発生したインクの薄い膜は、上流側流路52aが閉鎖されているため、キャップ51内に戻らない。よって、キャップ51内にインクの気泡が溜まることを抑制することができる。したがって、インクの気泡の発生に起因して、インクヘッド41の吐出不良が発生することを抑制することができる。
本実施形態では、図9に示すように、上流側流路52aを閉鎖するために、上流側流路52aには、排出バルブ56が設けられている。このことによって、排出バルブ56の開閉を制御するという簡単な制御で、上流側流路52aを容易に開閉することができる。また、上流側流路52aを排出バルブ56によって閉鎖することで、吸引ポンプ54をリリース状態にしたときに、キャップ51内にインクおよび空気が逆流することを確実に防止することができる。また、本実施形態では、図8に示すように、大気開放流路55を閉鎖するために、大気開放流路55には、大気開放バルブ57が設けられている。このことによって、大気開放バルブ57の開閉を制御するという簡単な制御で、大気開放流路55を容易に開閉することができる。
本実施形態では、主吸引制御部73は、吸引ポンプ54の駆動速度が第1の速度となるように吸引ポンプ54を駆動させる。空吸引制御部75は、吸引ポンプ54の駆動速度が第1の速度よりも速い第2の速度となるように吸引ポンプ54を駆動させる。このことによって、空吸引制御のときには、比較的に高速でインクの吸引が行われる。よって、従来技術のように、比較的に低速でのインクの吸引は行われないため、従来技術と比較して、空吸引時間を短縮することができる。
本実施形態では、空吸引制御部75は、所定の時間の間、吸引ポンプ54の駆動速度が第2の速度となるように吸引ポンプ54を駆動させた後に、第2の速度よりも遅い第3の速度となるように吸引ポンプ54を駆動させている。すなわち、空吸引制御部75は、吸引ポンプ54の正転駆動の駆動速度を高速にした後、正転駆動の駆動速度を低速にする。このことによって、排出流路52内にインクの薄い膜が形成されることを抑制することができる。その結果、キャップ51内にインクの気泡が発生することを抑制することができ、かつ、インクヘッド41のインクの吐出不良を抑制することができる。
本実施形態では、リリース制御部77は、吸引ポンプ54の駆動速度の絶対値が第2の速度の絶対値よりも小さい値となるように吸引ポンプ54を駆動させる。このことによって、吸引ポンプ54がリリース状態のとき、吸引ポンプ54の反転駆動の駆動速度は、比較的に低速である。そのため、内部チューブ83内のインクが逆流し難くすることができる。
以上、本実施形態に係るインクジェットプリンタ100について説明した。上記実施形態では、本発明に係る第1閉鎖機構は、排出バルブ56であった。しかしながら、第1閉鎖機構は、バルブに限定されない。例えば、本発明に係る第1閉鎖機構は、上流側流路52aにおいて、キャップ51に向かう方向へのインクの流れを塞き止める逆流防止弁であってもよい。
なお、上記実施形態のプリンタ100の制御装置70の各部である記憶部71と、第1開閉制御部72と、主吸引制御部73と、負圧調整部74と、空吸引制御部75と、第2開閉制御部76と、リリース制御部77とは、ソフトウェアによって構成されていてもよい。すなわち、制御装置70の上記各部は、コンピュータプログラムがコンピュータに読み込まれることにより、当該コンピュータによって実現されるようになっていてもよい。本発明には、コンピュータを上記各部として機能させるためのコンピュータプログラムが含まれる。また、本発明には、当該コンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体が含まれる。また、上記各部は、制御装置70に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで実現されるプロセッサであってもよい。この場合、各部は、1つのプロセッサによって実現されるものであってもよいし、複数のプロセッサによって実現されるものであってもよい。また、本発明には、各部が実行するプログラムと同様の機能が実現された回路が含まれる。