以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)100の正面図である。以下の説明において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、プリンタ100を正面から見たとき(ここでは、後述の媒体5が搬送される側からプリンタ100を見たとき)の前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示す。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。主走査方向Yは、後述のインクヘッド41~44(図2参照)の移動方向である。図面中の符号Xは副走査方向を示す。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交する。副走査方向Xは、後述する媒体5の搬送方向である。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
プリンタ100は、インクジェット式のプリンタである。プリンタ100は、媒体5に対して印刷を行うものである。媒体5はロール状の記録紙であり、いわゆる、ロール紙である。しかしながら、媒体5は、ロール状の記録紙に限定されない。例えば媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。
図1に示すように、プリンタ100は、プリンタ本体11と、プラテン13と、ガイドレール15と、キャリッジ17と、搬送機構20と、ヘッド移動機構30と、インクヘッド41~44(図2参照)と、インク供給システム61~68(図3参照)と、キャップユニット110(図7参照)と、制御装置150とを備えている。
プリンタ本体11は、主走査方向Yに延びたケーシングを有している。プラテン13には、媒体5が載置される。ここでは、プラテン13は、媒体5を支持する。プラテン13は、主走査方向Yに延びている。
ガイドレール15は、プラテン13の上方に配置されている。ガイドレール15は、プラテン13と平行に配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール15には、キャリッジ17が係合している。キャリッジ17は、ガイドレール15に対して摺動可能に設けられている。キャリッジ17は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動可能である。
プラテン13に支持された媒体5は、搬送機構20によって副走査方向Xに搬送される。搬送機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23と、を備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方かつガイドレール15の下方に設けられ、媒体5を上から押さえ付けるものである。ピンチローラ21は、キャリッジ17よりも後方に配置されている。グリットローラ22は、プラテン13に設けられた円筒状の部材である。ここでは、グリットローラ22は、その上面部を露出させた状態でプラテン13に埋設されている。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向している。グリットローラ22は、フィードモータ23に接続されている。ピンチローラ21とグリットローラ22との間に媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動すると、グリットローラ22が回転する。このことで、媒体5は、副走査方向Xに搬送される。
ヘッド移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド41~44(図2参照)を主走査方向Yに移動させる機構である。ヘッド移動機構30は、キャップ111~114(図7参照)に対してインクヘッド41~44を相対的に主走査方向Yに移動させる機構である。なお、ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。本実施形態では、ヘッド移動機構30は、図1に示すように、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、キャリッジモータ33とを備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部に設けられている。ベルト32は、無端状のベルトであり、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が取り付けられている。ここでは、右のプーリ31bには、キャリッジモータ33が接続されている。キャリッジモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、キャリッジ17およびインクヘッド41~44は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。
図2は、キャリッジ17の下面の構成を模式的に示す図である。図2に示すように、インクヘッド41~44は、キャリッジ17に設けられている。インクヘッド41~44は、その下面を露出するように、キャリッジ17に支持されている。以下の説明では、インクヘッド41~44のことを、それぞれ第1~第4インクヘッド41~44と適宜称する。インクヘッド41~44は、インクを吐出する。ここでは、インクヘッド41~44は、主走査方向Yに並んで配置されている。
第1~第4インクヘッド41~44は、それぞれ第1~第4ノズル面45a~45dを有している。第1~第4ノズル面45a~45dは、それぞれインクヘッド41~44の下面を構成している。第1ノズル面45aには、複数の第1の1ノズル51が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数の第1の2ノズル52が副走査方向Xに並んで形成されている。同様に、第2ノズル面45bには、複数の第2の1ノズル53が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数の第2の2ノズル54が副走査方向Xに並んで形成されている。第3ノズル面45cには、複数の第3の1ノズル55が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数の第3の2ノズル56が副走査方向Xに並んで形成されている。また、第4ノズル面45dには、複数の第4の1ノズル57が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数の第4の2ノズル58が副走査方向Xに並んで形成されている。ノズル51~58からインクが吐出される。
ここでは、各複数のノズル51~58の列のことを、ノズル列51a~58aと称する。インクヘッド41~44は、それぞれ2つのノズル列を有している。本実施形態では、例えば第1の1ノズルが本発明の第1ノズルに対応している。また、第2の1ノズル53が本発明の第2ノズルに対応している。
図3は、インクヘッド41~44と、インク供給システム61~68との関係を示す概念図である。図3に示すように、インク供給システム61~68は、それぞれインクヘッド41~44のノズル51~58にインクを供給するシステムである。本実施形態では、インク供給システム61~68は、ノズル列51a~58a(図2参照)ごとに設けられている。ここでは、ノズル列の数は「8」であるため、インク供給システムの数も「8」である。ノズル51~58には、それぞれインク供給システム61~68が接続されている。ここでは、インク供給システム61~68は、いずれも同じ構成を有している。そこで、以下では、第1インクヘッド41に接続されたインク供給システム61、62について説明し、他のインク供給システム63~68についての説明は、省略または簡略化する。なお、インク供給システム61~68において、一部のインク供給システムの構成は、他のインク供給システムの構成と異なっていてもよい。
図4は、第1インクヘッド41に接続されたインク供給システム61、62の構成を示す模式図である。図4に示すように、インク供給システム61は、第1の1インクタンク71aと、第1の1インク供給路72aと、第1の1送液ポンプ73aと、第1の1ダンパー74aとを備えている。インク供給システム62は、第1の2インクタンク71bと、第1の2インク供給路72bと、第1の2送液ポンプ73bと、第1の2ダンパー74bとを備えている。
第1の1インクタンク71aは、インクが貯留される容器である。インクタンク71aには、例えばプロセスカラーインクおよび特色インク(例えばホワイトインク、クリアインクなど)のうちの1つのインクが貯留されている。ただし、インクタンク71aに貯留されるインクの色は特に限定されない。また、インクの材料も何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、上記インクは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インクなどであってもよい。
第1の1インク供給路72aは、第1の1インクタンク71aと第1インクヘッド41の第1の1ノズル51とを接続する流路である。インク供給路72aの一端は、ダンパー74aを介してノズル51に接続され、かつ、連通している。インク供給路72aの他端は、インクタンク71aに接続されている。そのため、複数のノズル51からは、インクタンク71aに貯留されたインクが吐出される。なお、インク供給路72aの構成は特に限定されないが、インク供給路72aは、例えばチューブによって構成されている。
第1の1送液ポンプ73aは、第1の1インク供給路72aに設けられている。送液ポンプ73aは、インクタンク71aに貯留されたインクをノズル51に供給すると共に、ノズル51からのインクの吐出に適した圧力に調整するためのポンプである。送液ポンプ73aは、駆動時、インクタンク71aからノズル51に向かってインクを送液する。送液ポンプ73aの種類は限定されないが、送液ポンプ73aは、例えばダイヤフラムポンプやチューブポンプなどである。
第1の1ダンパー74aは、インクの圧力変動を緩和して、ノズル51のインクの吐出動作を安定させるものである。第1の1ダンパー74aは、本発明の第1ダンパーの一例である。ダンパー74aは、ダンパー74aに流入するインクの流量(言い換えると、ダンパー74a内の圧力)を検出する。そして、インクの流量の検出結果に基づいて、送液ポンプ73aの駆動が制御される。ダンパー74aは、インクヘッド41に接続されている。ここでは、ダンパー74aは、インクヘッド41の上部に設けられている。なお、ダンパー74aの構成は特に限定されない。
図5は、ダンパー74a~74hの平面図であり、貯留室82の圧力が所定の基準圧力(例えば第1基準圧力)以下の状態を示す図である。図6は、ダンパー74a~74hの平面断面図であり、貯留室82の圧力が所定の基準圧力(例えば第1基準圧力)より大きい状態を示す図である。なお、本実施形態では、ダンパー74a~74hは、同じ構成を有している。そのため、ここでは、第1の1ダンパー74aの構成について説明する。本実施形態では、図5に示すように、ダンパー74aは、ダンパー本体81と、貯留室82と、ダンパー膜83と、検出機構84とを備えている。
ダンパー本体81は中空のものである。貯留室82は、ダンパー本体81内に設けられている。貯留室82は、一部に形成された開口82aを有している。貯留室82には、インクが一時的に貯留される。第1の1ダンパー74aの貯留室82は、第1の1インク供給路72a(図4参照)および第1の1ノズル51(図4参照)と連通している。本実施形態では、第1の1ダンパー74aのダンパー本体81の上部には、第1の1インク供給路72aが接続された流入口85aが形成され、第1の1ダンパー74aのダンパー本体81の下部には、第1の1ノズル51に接続された流出口85b(図4参照)が形成されている。ただし、流入口85aおよび流出口85bの形成位置は特に限定されない。第1の1ダンパー74aは、印刷時に流入口85aから貯留室82に流入したインクが流出口85bを通じて第1の1ノズル51へ流れるように構成されている。本実施形態では、第1の1ダンパー74aの貯留室82は、本発明の第1貯留室の一例である。
図5に示すように、ダンパー膜83は、貯留室82の開口82aを覆うようにダンパー本体81に設けられている。ここでは、ダンパー膜83とダンパー本体81によって囲まれた空間が貯留室82である。ダンパー膜83は、例えば可撓性を有する樹脂製のフィルムによって構成されている。ダンパー膜83は、貯留室82内のインクの貯留量や、貯留室82内の圧力に基づいて、図5および図6に示すように、貯留室82の内側および外側に変形可能である。ダンパー膜83は、貯留室82の内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で、ダンパー本体81に取り付けられている。
本実施形態では、貯留室82には、バネ85が設けられている。バネ85は、圧縮された状態で貯留室82に配置されており、ダンパー膜83に向かって弾性力を付与する。ここでは、バネ85は、後述の押圧体86を介してダンパー膜83の貯留室82側の面に接続されている。なお、バネ85の種類は特に限定されず、例えばバネ85はコイルバネである。
検出機構84は、貯留室82内の圧力を検出する機構である。ここでは、第1の1ダンパー74aの検出機構84は、貯留室82内の圧力を検出することで、第1の1インク供給路72a(図4参照)内の圧力を間接的に検出する。なお、検出機構84の構成は特に限定されない。本実施形態では、検出機構84は、図5に示すように、押圧体86と、フィラー87と、フィラーセンサ88とを備えている。押圧体86は、ダンパー膜83に設けられている。本実施形態では、押圧体86は、ダンパー膜83の貯留室82側の面に設けられている。ただし、押圧体86は、ダンパー膜83の貯留室82とは反対側の面に設けられていてもよい。ここでは、押圧体86は、バネ85に支持されており、ダンパー膜83の撓みと共に、貯留室82の内側および外側に移動可能である。
フィラー87は、ダンパー膜83または押圧体86と接触可能にダンパー本体81に設けられている。本実施形態では、ダンパー本体81には、支持バネ89が設けられおり、フィラー87は、支持バネ89に支持されている。フィラー87の形状は特に限定されない。ここでは、フィラー87は、コの字状に形成されている。詳しくは、フィラー87は、押圧体86の右方において、前後方向に延びた接触部87aと、接触部87aの後部から左方に延びた支持部87bと、接触部87aの前部から左方に延びた被検出部87cとを有している。接触部87aは、ダンパー膜83または押圧体86に接触する。支持部87bは、支持バネ89に支持されている。被検出部87cは、フィラーセンサ88によって検出される部位である。
フィラーセンサ88は、フィラー87の位置を検出することによって、貯留室82内の圧力を検出する。第1の1ダンパー74aのフィラーセンサ88は、貯留室82内の圧力を検出することで、第1の1インク供給路72aの圧力を間接的に検出する。ここでは、第1の1ダンパー74aのフィラーセンサ88は、本発明の第1圧力検出機構の一例である。本実施形態では、フィラーセンサ88は、非接触式のセンサであるが、接触式のセンサであってもよい。フィラーセンサ88は、一対の検出部88aを有している。図5に示すように、一対の検出部88aの間に、フィラー87の被検出部87cが位置しているとき、フィラーセンサ88は、貯留室82の圧力が所定の基準圧力以下であることを検出する。ここで、所定の基準圧力とは、本発明の第1基準圧力の一例であり、第2基準圧力の一例である。
図6に示すように、貯留室82の圧力が大きくなるにしたがって、ダンパー膜83が貯留室82の外側に撓む。このとき、押圧体86によって、フィラー87が貯留室82の外側に押されることで、フィラー87は、接触部87aと支持部87bとの間に位置する軸87dを軸にして回転する。そして、貯留室82の圧力が所定の基準圧力より大きくなったとき、フィラー87の被検出部87cがフィラーセンサ88の一対の検出部88aの間から外れた位置に移動する。フィラーセンサ88は、一対の検出部88aの間に、フィラー87の被検出部87cが位置していないとき、貯留室82の圧力が所定の基準圧力よりも大きいことを検出する。本実施形態では、一対の検出部88aの間の範囲は、本発明の所定の範囲に対応する。
本実施形態では、図5に示すように、フィラーセンサ88の一対の検出部88aの間に、フィラー87の被検出部87cが位置しているとき、すなわち、貯留室82の圧力が所定の基準圧力以下のとき、「フィラー87がヒットしている」という。一方、図6に示すように、フィラーセンサ88の一対の検出部88aの間に、フィラー87の被検出部87cが位置していないとき、すなわち、貯留室82の圧力が所定の基準圧力よりも大きいとき、「フィラー87がアンヒットしている」という。
図4に示すように、インク供給システム62は、インク供給システム61と同様に構成されている。インク供給システム62において、第1の2インクタンク71bと、第1の2インク供給路72bと、第1の2送液ポンプ73bと、第1の2ダンパー74bとは、それぞれインク供給システム61の第1の1インクタンク71aと、第1の1インク供給路72aと、第1の1送液ポンプ73aと、第1の1ダンパー74aと同じ構成である。
図3に示すように、インク供給システム63~68は、それぞれインク供給システム61と同じ構成を有している。詳しい説明は省略するが、インク供給システム63は、第2の1ノズル53に接続されており、第2の1インクタンク71cと、第2の1インク供給路72cと、第2の1送液ポンプ73cと、第2の1ダンパー74cとを備えている。ここでは、第2の1ダンパー74cは、本発明の第2ダンパーの一例である。第2の1ダンパー74cの貯留室82は、本発明の第2貯留室の一例であり、第2の1ダンパー74cのフィラーセンサ88は、本発明の第2圧力検出機構の一例である。
インク供給システム64は、第2の2ノズル54に接続されており、第2の2インクタンク71dと、第2の2インク供給路72dと、第2の2送液ポンプ73dと、第2の2ダンパー74dとを備えている。インク供給システム65は、第3の1ノズル55に接続されており、第3の1インクタンク71eと、第3の1インク供給路72eと、第3の1送液ポンプ73eと、第3の1ダンパー74eとを備えている。インク供給システム66は、第3の2ノズル56に接続されており、第3の2インクタンク71fと、第3の2インク供給路72fと、第3の2送液ポンプ73fと、第3の2ダンパー74fとを備えている。インク供給システム67は、第4の1ノズル57に接続されており、第4の1インクタンク71gと、第4の1インク供給路72gと、第4の1送液ポンプ73gと、第4の1ダンパー74gとを備えている。また、インク供給システム68は、第4の2ノズル58に接続されており、第4の2インクタンク71hと、第4の2インク供給路72hと、第4の2送液ポンプ73hと、第4の2ダンパー74hとを備えている。
図7は、キャップユニット110の正面図である。図7は、キャップ111~114がそれぞれノズル面45a~45dに装着されていない状態を示す図である。図8は、キャップユニット110の正面図であり、キャップ111~114がそれぞれノズル面45a~45dに装着されている状態を示す図である。図7に示すように、キャップユニット110は、キャップ111~114と、キャッピング機構120と、吸引ポンプ131~134とを備えている。
図8に示すように、キャップ111~114は、それぞれノズル面45a~45dに装着可能に構成されている。ここで、「装着」とは、ノズル51~58がキャップ111~114に覆われるように、インクヘッド41~44に取り付けられている状態のことをいう。「装着」には、図8のように、キャップ111~114がそれぞれインクヘッド41~44の下部に嵌まっている状態の他、キャップ111~114がノズル51~58を覆うように、キャップ111~114の端面(ここでは上端面)がそれぞれノズル面45a~45dに接触している状態も含まれるものとする。
本実施形態では、キャップ111~114は、主走査方向Yに並んで配置されている。キャップ111~114は、上部が開口した箱状の形状を有している。なお、キャップ111~114を形成する材料の種類は特に限定されない。キャップ111~114の少なくともインクヘッド41~44と接触する部分は、例えばゴムなどによって形成されている。また、キャップ111~114の内部には、スポンジなどの吸収体(図示せず)が配置されている。キャップ111~114の上部の開口の形状は、インクヘッド41~44の外周部の形状に対応している。
図7に示すように、キャッピング機構120は、キャップ111~114を昇降させる機構である。キャッピング機構120は、ノズル面45a~45dに対して、それぞれキャップ111~114を装着させたり、離間させたりする機構である。本実施形態では、キャッピング機構120は、キャップ111~114同士の相対的な位置を変化させずに、キャップ111~114を同時に昇降させるように構成されている。
なお、キャッピング機構120の具体的な構成は特に限定されない。本実施形態では、キャッピング機構120は、支持部材121と、キャッピングモータ122とを有している。支持部材121は、キャップ111~114を支持する部材である。ここでは、支持部材121は板状の部材である。支持部材121を水平面に配置したとき、支持部材121に支持されたキャップ111~114のそれぞれの端面は、水平方向に延びている。キャッピングモータ122は、支持部材121に接続されている。キャッピングモータ122が駆動することで、支持部材121が昇降する。この支持部材121の昇降に伴い、キャップ111~114は同時に昇降する。
第1~第4吸引ポンプ131~134は、それぞれキャップ111~114に接続されている。吸引ポンプ131~134は、それぞれキャップ111~114内のインクや空気などを吸引する部材である。吸引ポンプ131~134の種類は特に限定されない。吸引ポンプ131~134は、例えば真空ポンプである。吸引ポンプ131~134は、それぞれチューブなどを介してそれぞれキャップ111~114の底面に接続されている。吸引ポンプ131~134は、駆動時には、それぞれに対応するインクヘッド41~44に接続されたインク供給路内の負圧よりも低い負圧を形成するように構成されている。例えば、キャップ111~114がそれぞれノズル面45a~45dに装着された状態で吸引ポンプ131~134が駆動された時には、インクヘッド41~44のノズル51~58からインクなどが吸い出される。吸引ポンプ131~134に吸引されたインクなどは、図示しないチューブなどを介して図示しない廃液タンクに廃棄される。
本実施形態では、キャップ111~114は、ガイドレール15の右端部に位置するホームポジション(図示せず)に配置されている。そのため、ヘッド移動機構30によってインクヘッド41~44が主走査方向Yに移動することで、キャップ111~114に対するインクヘッド41~44の主走査方向Yにおける相対的な位置を変更することができる。インクヘッド41~44が主走査方向Yに移動することで、平面視においてノズル面45a~45dがそれぞれキャップ111~114と重なる位置に、インクヘッド41~44を配置することができる。そして、平面視においてノズル面45a~45dがそれぞれキャップ111~114に重なっている状態で、キャップ111~114が上昇することで、ノズル面45a~45dにそれぞれキャップ111~114を装着させることができる。
図9は、ワイパー機構140の正面図である。図9に示すように、プリンタ100は、ワイパー機構140を備えている。ワイパー機構140は、キャップ111~114の近傍に配置されており、インクヘッド41~44よりも下方に設けられている。ワイパー機構140は、ノズル面45a~45dをワイピングする機構である。ワイパー機構140は、ワイパー141と、回転軸142と、洗浄液槽143と、回転モータ144とを備えている。
ワイパー141は、インクヘッド41~44のノズル面45a~45dを拭う部材である。ワイパー141は、前後方向と上下方向に延びる平板状の部材である。ワイパー141の前後方向の長さは、インクヘッド41~44の前後方向の長さよりも長く構成されている。ワイパー141は、例えばゴムで形成されている。ワイパー141の一端は回転軸142に接続されている。ワイパー141は、回転軸142を中心に回転可能に構成されている。回転軸142は、前後方向に延びている。ワイパー141が、回転軸142から遠い方の端部を上にするような回転位置に配置されるとき、当該端部は、インクヘッド41~44のノズル面45a~45dよりもわずかに高い位置に位置する。そこで、ワイパー141をこのような回転位置に配置しつつ、キャリッジ17を走行させると、ワイパー141によりインクヘッド41~44のノズル面45a~45dを拭うことができる。一方、ワイパー141は、回転軸142から遠い方の端部を下にするような回転位置に配置されるとき、回転軸142の下方に設置された洗浄液槽143中の洗浄液に浸漬される。ワイパー141は、回転モータ144によって回転されている。
本実施形態では、図1に示すように、プリンタ100のプリンタ本体11の右端部には、操作パネル145が設けられてる。操作パネル145には、プリンタ100の状態を表示する表示画面146と、ユーザによって操作される入力キー147が設けられている。
次に、制御装置150について説明する。制御装置150は、印刷に関する制御と、後述の吸引処理、空吸引処理およびフラッシング処理などを含むクリーニングに関する制御と、キャップ111~114の上下方向の位置を決定する制御などを行う装置である。制御装置150の構成は特に限定されない。制御装置150は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。なお、制御装置150は必ずしもプリンタ100の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ100の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ100と通信可能に接続されたコンピュータなどであってもよい。
図10Aは、プリンタ100のブロック図である。図10Aに示すように、制御装置150は、搬送機構20のフィードモータ23と、ヘッド移動機構30のキャリッジモータ33と、インクヘッド41~44と、送液ポンプ73a~73hと、ダンパー74a~74hのフィラーセンサ88と、キャッピング機構120のキャッピングモータ122と、吸引ポンプ131~134と、ワイパー機構140の回転モータ144とに、それぞれ通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。
図10Bは、制御装置150のブロック図である。本実施形態では、図10Bに示すように、制御装置150は、記憶部151と、吸引位置移動部153と、吸引制御部154と、空吸引位置移動部155と、空吸引制御部156と、フラッシング位置移動部157と、フラッシング制御部158と、ワイピング制御部159とを備えている。
ところで、本実施形態に係るプリンタ100では、印刷の品質の維持、および、インクヘッド41~44のノズル51~58におけるインクの吐出不良の防止するために、インクヘッド41~44に対してクリーニングが行われる。インクヘッド41~44に対するクリーニングとして、例えば吸引処理、空吸引処理、フラッシング処理、および、ワイピング処理などが行われる。
吸引処理は、インクヘッド41~44のノズル51~58内の残留しているインクを吸引する処理である。吸引処理は、吸引位置移動部153および吸引制御部154によって実行される。吸引処理では、図8に示すように、キャップ111~114を吸引位置P1に配置した状態で行われる。吸引位置移動部153は、キャップ111~114が吸引位置P1に位置するようにキャッピング機構120を制御する。ここでは、吸引位置移動部153は、キャップ111~114を上昇させるようにキャッピング機構120を制御する。
吸引位置P1とは、キャップ111~114が、それぞれノズル51~58を覆うようにノズル面45a~45dに装着されているときのキャップ111~114の位置のことである。吸引位置P1とは、吸引ポンプ131~134が駆動しているとき、ノズル51~58内のインクが吸引されるようなキャップ111~114の位置のことである。吸引位置P1にキャップ111~114が配置されているとき、ノズル面45a~45dとキャップ111~114との間には、密閉空間が形成されている。
吸引処理では、吸引制御部154は、吸引位置P1にキャップ111~114が位置している状態で、吸引ポンプ131~134を駆動させる。このことによって、上記密閉空間内が減圧される。その結果、インクヘッド41~44のノズル51~58内に残留していたインクは、吸引ポンプ131~134の吸引によってキャップ111~114に排出される。キャップ111~114内に排出されたインクは、吸引ポンプ131~134によって更に吸引され、図示しない廃液ボトルに排出される。
空吸引処理は、キャップ111~114内のインクを吸引し、かつ、インクヘッド41~44のノズル51~58内のインクを吸引しない処理である。空吸引処理は、空吸引位置移動部155および空吸引制御部156によって実行される。図11は、キャップユニット110の正面図であり、キャップ111~114が空吸引位置P2に配置されている状態を示す図である。空吸引処理では、図11に示すように、キャップ111~114を空吸引位置P2に配置した状態で行われる。空吸引位置移動部155は、キャップ111~114が空吸引位置P2に位置するようにキャッピング機構120を制御する。ここで、空吸引位置P2とは、吸引位置P1(図8参照)よりも下方に位置し、ノズル面45a~45dとキャップ111~114との間には、微小な隙間が形成されるような位置である。
例えば空吸引処理が行われる際、キャップ111~114には、インクが満杯に貯留されている。そのため、インクヘッド41~44のノズル面45a~45dと、キャップ111~114との間隔を空け過ぎた状態で空吸引処理が行われると、キャップ111~114内のインクが外部に漏れるおそれがあり得る。また、空吸引処理のとき、ノズル51~58内は、負圧状態が維持されている。そのため、インクヘッド41~44のノズル面45a~45dと、キャップ111~114との間隔が離れ過ぎると、キャップ111~114とノズル面45a~45dとが離れるタイミングで、インクの液滴の一部がノズル面45a~45dに付着することがあり得る。このとき、インクヘッド41~44の内部が負圧であるため、ノズル面45a~45dに付着したインクがノズル51~58に吸い込まれるおそれがある。また、ノズル面45a~45dにキャップ111~114が近過ぎると、ノズル51~58内のインクが吸引されるおそれがある。
以上のことから、空吸引位置P2におけるノズル面45a~45dと、キャップ111~114との間隔は、キャップ111~114内からインクが外部に漏れず、かつ、ノズル51~58にキャップ111~114内のインクが吸い込まれない程度の微小な距離であることが好ましい。この微小な距離とは、目視することができないような非常に微小な距離である。
空吸引処理では、空吸引制御部156は、空吸引位置P2にキャップ111~114が位置している状態で、吸引ポンプ131~134を駆動させる。このことで、ノズル51~58内のインクは吸引せずに、キャップ111~114内のインクを吸引ポンプ131~134に向かって吸引することができる。
フラッシング処理は、インクヘッド41~44のノズル51~58からキャップ111~114にインクを吐出する処理である。フラッシング処理は、フラッシング位置移動部157およびフラッシング制御部158によって実行される。図12は、キャップユニット110の正面図であり、キャップ111~114がフラッシング位置P3に配置されている状態を示す図である。フラッシング処理は、図12に示すように、キャップ111~114をフラッシング位置P3に配置した状態で行われる。フラッシング位置移動部157は、キャップ111~114がフラッシング位置P3に位置するようにキャッピング機構120を制御する。ここで、フラッシング位置P3は、空吸引位置P2(図11参照)よりも下方に位置する。
フラッシング制御部158は、図12に示すように、フラッシング位置P3にキャップ111~114が位置している状態で、ノズル51~58からインクを吐出させるようにインクヘッド41~44を制御する。このことで、ノズル51~58から吐出されたインクは、キャップ111~114内に排出される。なお、フラッシング制御部158は、フラッシング処理を行う際、キャップ111~114内のインクを吸引するために、吸引ポンプ131~134を駆動させてもよい。
ワイピング処理は、ノズル面45a~45dをワイパー141で拭う処理であり、ワイピング制御部159によって実行される。ワイピング制御部159は、ワイパー機構140(図9参照)の上方にインクヘッド41~44が移動するように、ヘッド移動機構30を制御する。そして、インクヘッド41~44がワイパー機構140の上方を通過するとき、ワイピング制御部159は、ワイパー141を回転させ、ワイパー141でインクヘッド41~44のノズル面45a~45dを順に拭う。
ところで、プリンタ100において、上述の吸引位置P1、空吸引位置P2、および、フラッシング位置P3は、プリンタ100の製造時に組み立てる際に決定される。しかしながら、プリンタ100を搬送する際、搬送のときに発生する振動などによってノズル面45a~45dに対するキャップ111~114の相対的な位置が変化することがあり得る。また、キャップ111~114はゴムによって形成されているため、ゴムの経年劣化によってノズル面45a~45dに対するキャップ111~114の密着性が低くなることがあり得る。
このように、ノズル面45a~45dに対するキャップ111~114の位置が変化したり、キャップ111~114の密着性が低くなったりした状態で、上記組み立て時に決定された位置P1、P2、P3にキャップ111~114を配置したとき、位置ずれが生じ、適切なクリーニングが行われないことがあり得る。このような場合、従来では専用の治具をプリンタ100に取り付けて、手動でキャップ111~114の位置を調整し、位置P1、P2、P3を再設定していた。そのため、キャップ111~114の位置を調整するための手間とコストを要していた。
そこで、本実施形態では、プリンタ100に専用の治具などを取り付けて手動でキャップ111~114の位置を調整することなく、キャップ111~114の位置P1、P2、P3を自動で決定することを行う。ここでは、ダンパー74a~74hのフィラーセンサ88の検出結果を利用して、キャップ111~114の位置P1、P2、P3を決定する。
本実施形態では、制御装置150は、図10Bに示すように、更に接近移動部161と、接近判定部162と、吸引位置決定部163と、離間移動部165と、離間判定部166と、空吸引位置決定部167と、フラッシング位置決定部168とを備えている。制御装置150は、更に、吸引エラー判定部171と、吸引補正移動部172と、吸引補正判定部173と、補正吸引位置決定部174と、空吸引エラー判定部175と、空吸引補正移動部176と、空吸引補正判定部177と、補正空吸引位置決定部178と、補正フラッシング位置決定部179とを備えている。制御装置150の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置150の各部は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
次に、図8の吸引位置P1を決定する制御の手順について図13のフローチャートに沿って説明する。本実施形態では、吸引位置P1は、接近移動部161、接近判定部162および吸引位置決定部163によって決定される。なお、吸引位置P1を決定する制御は、インクヘッド41~44のノズル面45a~45dからキャップ111~114が離間している状態で開始される。
本実施形態では、ステップS101の処理が行われる前において、ダンパー74a~74hのフィラー87は全てアンヒット(図6参照)の状態である。すなわち、ダンパー74a~74hの貯留室82の圧力は、いずれも基準圧力よりも大きい状態である。仮にフィラー87がヒット(図5参照)の状態である場合には、送液ポンプ73a~73hを駆動させて、貯留室82にインクを送液する。このことで、貯留室82内の圧力が大きくなり、フィラー87をアンヒットの状態にすることができる。
まずステップS101では、接近移動部161は、図8の仮想線で示すように、インクヘッド41~44の真下に、それぞれキャップ111~114が配置するように、ヘッド移動機構30のキャリッジモータ33を駆動させる。そして、接近移動部161は、インクヘッド41~44の真下に、それぞれキャップ111~114が移動してきたとき、キャリッジモータ33の駆動を停止する。
次にステップS102では、接近移動部161は、ノズル面45a~45dに向かって、所定の第1距離、キャップ111~114を上昇させるようにキャッピング機構120を制御する。このことで、キャップ111~114は上方に向かって移動する。なお、本実施形態では、キャップ111~114は、一体的に上下方向に移動するように構成されている。ここで、所定の第1距離とは、記憶部151に予め記憶されたものであり、より精度よくキャップ111~114の位置を規定したい場合には、より小さい値が設定されている。所定の第1距離は、例えば0.1mm~0.5mmである。
以上のようにキャップ111~114が所定の第1距離、上昇した後、ステップS103では、接近判定部162は、キャップ111~114の移動を停止させた状態で、吸引ポンプ131~134を所定の時間の間、駆動させる。この所定の時間は、例えばステップS104の判定の処理が終了するまでの時間である。この所定の時間は、記憶部151に予め記憶されている。
次に、ステップS104では、接近判定部162は、キャップ111~114の移動を停止させた状態、かつ、全ての貯留室82の圧力が基準圧力より大きい状態で吸引ポンプ131~134を駆動させ、ダンパー74a~74hのフィラー87の全てがヒットしているか否か、すなわち、ダンパー74a~74hのフィラー87の全てがアンヒット状態からヒット状態に変化したか否かを判定する。なお、本実施形態において、ステップS104におけるフィラー87のヒット状態またはアンヒット状態が、本発明の第1接近検出圧力および第2接近検出圧力である。ステップS104において、フィラー87がヒット状態のとき、第1接近検出圧力および第2接近検出圧力が共に基準圧力以下であると判定される。
ステップS104において、ダンパー74a~74hのフィラー87のうち、何れかのフィラー87がアンヒットしていると判定された場合、アンヒットと判定されたフィラー87に対応したノズル内のインクが吸引されずに、貯留室82内のインクの量が変化していない状態である。この場合、ノズル面45a~45dの何れかがキャップ111~114に適切に装着されていない状態である。そのため、この場合、ステップS102に戻り、キャップ111~114を所定の第1距離、更に上昇させる。
一方、ステップS104において、ダンパー74a~74hの全てのフィラー87がヒットしていると判定された場合、ノズル51~58内のインクが吸引ポンプ131~134によって吸引されて、全ての貯留室82内のインクが減少し、全ての貯留室82の圧力が低くなった状態である。この場合、ノズル面45a~45dにそれぞれキャップ111~114が最初に適切に装着された状態(図8参照)となるため、次にステップS105に進む。ステップS105では、吸引位置決定部163は、全てのフィラー87がヒットしていると最初に判定されたときのキャップ111~114の上下方向の位置を吸引位置P1に決定する。言い換えると、吸引位置P1は、全てのフィラー87がヒットしていると最初に判定されたときのキャッピング機構120の支持部材121(図7参照)の上下方向の位置でもある。なお、吸引位置決定部163によって決定された吸引位置P1は、記憶部151に記憶される。以上のようにして、ダンパー74a~74hを利用して吸引位置P1を決定することができる。
次に、図11の空吸引位置P2、および、図12のフラッシング位置P3を決定する制御の手順について、図14のフローチャートに沿って説明する。本実施形態では、空吸引位置P2は、離間移動部165、離間判定部166および空吸引位置決定部167によって決定される。フラッシング位置P3は、空吸引位置P2に基づいて決定されるものであり、ここではフラッシング位置決定部168によって決定される。
なお、空吸引位置P2を決定する制御は、インクヘッド41~44のノズル面45a~45dに、それぞれキャップ111~114が装着されている状態で開始される。そのため、空吸引位置P2を決定する制御は、図13で示した吸引位置P1を決定する制御の後に行われることが好ましい。また、ステップS201の処理が行われる前において、ダンパー74a~74hのフィラー87は全てアンヒット(図6参照)の状態である。すなわち、ダンパー74a~74hの貯留室82の圧力は、いずれも基準圧力よりも大きい状態である。
まずステップS201では、離間移動部165は、ノズル面45a~45dにそれぞれキャップ111~114が装着している状態(図8参照)において、ノズル面45a~45dに対して、それぞれキャップ111~114が離間する方向に移動するようにキャッピング機構120を制御する。本実施形態に係るステップS201では、離間移動部165は、ノズル面45a~45dから所定の第2距離、キャップ111~114を降下させるようにキャッピング機構120を制御する。このことで、キャップ111~114は下方に向かって移動する。ここで、所定の第2距離とは、記憶部151に予め記憶されたものであり、より精度よくキャップ111~114の位置を規定したい場合には、より小さい値が設定されている。所定の第2距離は、上記第1距離と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。所定の第2距離は、例えば0.1mm~0.5mmである。
以上のようにキャップ111~114が所定の第2距離、降下した後、ステップS202では、離間判定部166は、キャップ111~114の移動を停止させた状態で、吸引ポンプ131~134を所定の時間の間、駆動させる。この所定の時間は、例えばステップS203の判定の処理が終了するまでの時間である。この所定の時間は、記憶部151に予め記憶されている。
次に、ステップS203では、離間判定部166は、キャップ111~114の移動を停止させた状態、かつ、全ての貯留室82の圧力が基準圧力より大きい状態で吸引ポンプ131~134を駆動させ、ダンパー74a~74hのフィラー87の全てがアンヒットしているか否か、すなわち、ダンパー74a~74hのフィラー87の全てがアンヒット状態を維持しているか否かを判定する。なお、本実施形態において、ステップS203におけるフィラー87のヒット状態またはアンヒット状態が、本発明の第1離間検出圧力および第2離間検出圧力である。ステップS203において、フィラー87がアンヒット状態のとき、第1離間検出圧力および第2離間検出圧力が共に基準圧力より大きいと判定される。
ステップS203において、ダンパー74a~74hのフィラー87のうち何れかのフィラー87がヒットしていると判定された場合、ヒットと判定されたフィラー87に対応したノズル内のインクが吸引されて、貯留室82内のインクの量が減少し、貯留室82内の圧力が小さくなった状態である。この場合、ノズル面45a~45dの何れかがキャップ111~114に装着されている状態である。そのため、この場合、ステップS201に戻り、キャップ111~114を所定の第2距離、更に降下させる。
なお、ステップS201に戻ったときに、ダンパー74a~74hのフィラー87のうちヒット状態のフィラー87が存在する場合には、ヒット状態からアンヒット状態に変化するように送液ポンプ73a~73hの何れかを駆動させるとよい。
一方、ステップS203において、ダンパー74a~74hの全てのフィラー87がアンヒットしていると判定された場合、全てのノズル51~58内のインクが吸引ポンプ131~134によって吸引されず、貯留室82内のインクの量が変化していない状態である。この場合、ノズル面45a~45dの全てがキャップ111~114に装着されていない状態となる。この場合、ノズル面45a~45dの全てがキャップ111~114に最初に装着されていない状態(図11参照)となるため、次にステップS204に進む。
ステップS204では、空吸引位置決定部167は、全てのフィラー87がアンヒットしていると最初に判定されたときのキャップ111~114の上下方向の位置を空吸引位置P2に決定する。言い換えると、空吸引位置P2は、全てのフィラー87がアンヒットしていると最初に判定されたときのキャッピング機構120の支持部材121(図7参照)の上下方向の位置でもある。なお、空吸引位置決定部167によって決定された空吸引位置P2は、記憶部151に記憶される。
次にステップS205では、フラッシング位置決定部168は、フラッシング位置P3を決定する。本実施形態では、フラッシング位置決定部168は、ステップS204において決定された空吸引位置P2に基づいてフラッシング位置P3を決定する。詳しくは、フラッシング位置決定部168は、空吸引位置決定部167によって決定された空吸引位置P2から下方に所定の補間距離離れた位置をフラッシング位置P3に決定する。この補間距離は、記憶部151に予め記憶されたものであり、プリンタ100の機種に応じて適宜決定されるものである。補間距離は、例えば1mm~3mmである。以上のようにして、ダンパー74a~74hを利用して空吸引位置P2およびフラッシング位置P3を決定することができる。
本実施形態では、クリーニングの吸引処理を実行する際、吸引位置決定部163によって決定された吸引位置P1(図8参照)にキャップ111~114を配置した状態で、吸引処理が行われる。空吸引処理を実行する際、空吸引位置決定部167によって決定された空吸引位置P2(図11参照)にキャップ111~114を配置した状態で、空吸引処理が行われる。また、フラッシング処理を実行する際、フラッシング位置決定部168によって決定されたフラッシング位置P3(図12参照)にキャップ111~114を配置した状態で、フラッシング処理が行われる。
ところで、インクヘッド41~44のクリーニングのうち吸引処理を実行中のとき、適切に吸引処理が行われないことがあり得る。また、上記クリーニングのうち空吸引処理を実行中のとき、適切に空吸引処理が行われないことがあり得る。例えばノズル面45a~45dに対するキャップ111~114の相対的な位置ずれの発生や、キャップ111~114の経年劣化によって、吸引処理を行っているにも関わらず、ノズル51~58のうち一部または全部のノズルからインクを吸引することができないという吸引不具合が発生することがあり得る。また、上述のような位置ずれやキャップ111~114の経年劣化によって、空吸引処理を行っているにも関わらず、ノズル51~58のうち一部または全部のノズル内のインクを吸引するという空吸引不具合が発生することがあり得る。このような吸引不具合や空吸引不具合が発生した場合、本実施形態では、吸引位置P1や空吸引位置P2を自動で再設定することで吸引不具合や空吸引不具合を解消することが可能となる。
ここでは、まず、吸引不具合が発生したときに、吸引位置P1を再設定する制御の手順について図15のフローチャートに沿って説明する。本実施形態では、吸引位置P1の再設定は、吸引エラー判定部171、吸引補正移動部172、吸引補正判定部173および補正吸引位置決定部174によって行われる。
吸引処理を実行しているときにおいて、吸引制御部154は、吸引ポンプ131~134を駆動しており、ノズル51~58からインクが吸引されている。ステップS301では、吸引エラー判定部171は、吸引処理を実行しているときに吸引ポンプ131~134が駆動している間、ダンパー74a~74h内の圧力を検出し、検出した圧力の何れかが基準圧力より大きいか否かを判定する。本実施形態では、吸引エラー判定部171は、ダンパー74a~74hのフィラー87のうち何れかがアンヒットしているか否か、すなわち、ダンパー74a~74hのフィラー87のうち何れかがアンヒットの状態を維持しているか否かを判定する。なお、本実施形態において、ステップS301におけるフィラー87のヒット状態またはアンヒット状態が、本発明の吸引圧力である。ステップS301において、フィラー87がアンヒット状態のとき、吸引圧力が基準圧力より大きいと判定される。
ステップS301において、ダンパー74a~74hのフィラー87のうち全てのフィラー87がヒットしていると判定された場合、ノズル51~58の全てからインクが吸引されている状態である。そのため、吸引処理が適切に行われているため、ステップS301の処理を再び行う。すなわち、吸引処理が適切に行われている間、ステップS301の処理が連続して行われる。
一方、ステップS301において、ダンパー74a~74hのフィラー87のうち何れかがアンヒットしていると判定された場合、アンヒットと判定されたフィラー87に対応したノズルからインクが吸引されていない状態である。この場合、吸引処理が適切に行われていないため、吸引不具合が発生したと判定される。吸引不具合が発生したと判定された場合、次にステップS302に進む。
ステップS302では、吸引補正移動部172は、ノズル面45a~45dに向かって、所定の第1距離、キャップ111~114を上昇させるようにキャッピング機構120を制御する。このことで、キャップ111~114は上方に向かって移動する。この第1距離とは、上述した吸引位置P1を決定する処理のうちステップS102(図13参照)の第1距離と同じである。
以上のようにキャップ111~114が所定の第1距離、上昇した後、ステップS303では、吸引補正判定部173は、キャップ111~114の移動を停止させた状態、かつ、貯留室82内の圧力が基準圧力より大きい状態で吸引ポンプ131~134を駆動させ、ダンパー74a~74hのフィラー87の全てがヒットしているか否かを判定する。なお、本実施形態において、ステップS303におけるフィラー87のヒット状態またはアンヒット状態が、本発明の吸引補正圧力である。ステップS303において、フィラー87がヒット状態のとき、吸引補正圧力が基準圧力以下であると判定される。
ステップS303において、ダンパー74a~74hのフィラー87のうち何れかのフィラー87がアンヒットしていると判定された場合、アンヒットと判定されたフィラー87に対応したノズル内のインクが吸引されていない状態であり、吸引不具合が未だ解消されていない状態である。この場合、ステップS302に戻り、キャップ111~114を所定の第1距離、更に上昇させる。
一方、ステップS303において、ダンパー74a~74hの全てのフィラー87がヒットしていると判定された場合、ノズル51~58内のインクが吸引ポンプ131~134によって吸引された状態であり、吸引不具合が解消された状態である。この場合、次にステップS304に進む。
ステップS304では、補正吸引位置決定部174は、全てのフィラー87がヒットしていると判定されたときのキャップ111~114の上下方向の位置を新たな吸引位置P1に決定する。すなわち、補正吸引位置決定部174は、吸引位置P1を、ステップS303のときのキャップ111~114の上下方向の位置に変更する。ここでは、補正吸引位置決定部174によって決定された新たな吸引位置P1は、記憶部151に記憶される。その後、吸引処理が実行される際には、補正吸引位置決定部174によって決定された新たな吸引位置P1にキャップ111~114を配置して、吸引処理を実行する。
次に、上記の空吸引不具合が発生したときに、空吸引位置P2を再設定する制御の手順について図16のフローチャートに沿って説明する。本実施形態では、空吸引位置P2の再設定は、空吸引エラー判定部175、空吸引補正移動部176、空吸引補正判定部177および補正空吸引位置決定部178によって行われる。本実施形態では、空吸引位置P2が再設定されると、フラッシング位置P3も再設定される。
空吸引処理を実行しているときにおいて、空吸引制御部156は、吸引ポンプ131~134を駆動しており、キャップ111~114内のインクを吸引しているが、ノズル51~58からインクは吸引していない。ステップS401の処理が実行される前において、ダンパー74a~74hのフィラー87は、全てアンヒットの状態である。
ステップS401では、空吸引エラー判定部175は、空吸引処理を実行しているときに吸引ポンプ131~134が駆動している間、ダンパー74a~74h内の圧力を検出し、検出した圧力の何れかが基準圧力以下であるか否かを判定する。本実施形態では、空吸引エラー判定部175は、ダンパー74a~74hのフィラー87のうち何れかがヒットしているか否か、すなわちダンパー74a~74hのフィラー87のうち何れかがアンヒットの状態からヒットの状態に変化したか否かを判定する。なお、本実施形態において、ステップS401におけるフィラー87のヒット状態またはアンヒット状態が、本発明の空吸引圧力である。ステップS401において、フィラー87がヒット状態のとき、空吸引圧力が基準圧力以下であると判定される。
ステップS401において、ダンパー74a~74hのフィラー87のうち全てのフィラー87がアンヒットしていると判定された場合、ノズル51~58の全てからインクが吸引されていない状態である。そのため、空吸引処理が適切に行われているため、ステップS401の処理を再び行う。すなわち、空吸引処理が適切に行われている間、ステップS401の処理が連続して行われる。
一方、ステップS401において、ダンパー74a~74hのフィラー87のうち何れかがヒットしていると判定された場合、ヒットと判定されたフィラー87に対応したノズルからインクが吸引されている状態である。この場合、空吸引処理が適切に行われていないため、空吸引不具合が発生したと判定される。空吸引不具合が発生したと判定された場合、次にステップS402に進む。
ステップS402では、空吸引補正移動部176は、ノズル面45a~45dから所定の第2距離離れるようにキャッピング機構120を制御する。このことで、キャップ111~114は下方に向かって移動する。この第2距離とは、上述した空吸引位置P2を決定する処理のうちステップS201(図14参照)の第2距離と同じである。
以上のようにキャップ111~114が所定の第2距離、降下した後、ステップS403では、空吸引補正判定部177は、キャップ111~114の移動を停止させた状態、かつ、貯留室82の圧力が基準圧力より大きい状態で吸引ポンプ131~134を駆動させ、ダンパー74a~74hのフィラー87の全てがアンヒットしているか否かを判定する。なお、本実施形態において、ステップS403におけるフィラー87のヒット状態またはアンヒット状態が、本発明の空吸引補正圧力である。ステップS303において、フィラー87がアンヒット状態のとき、空吸引補正圧力が基準圧力より大きいと判定される。
ステップS403において、ダンパー74a~74hのフィラー87のうち何れかのフィラー87がヒットしていると判定された場合、ヒットと判定されたフィラー87に対応したノズル内のインクが吸引されている状態であり、空吸引不具合が未だ解消されていない状態である。この場合、ステップS402に戻り、キャップ111~114を所定の第2距離、更に降下させる。
一方、ステップS403において、ダンパー74a~74hの全てのフィラー87がアンヒットしていると判定された場合、ノズル51~58内のインクが吸引ポンプ131~134によって吸引されていない状態であり、空吸引不具合が解消された状態である。この場合、次にステップS404に進む。
ステップS404では、補正空吸引位置決定部178は、全てのフィラー87がアンヒットしていると判定されたときのキャップ111~114の上下方向の位置を新たな空吸引位置P2に決定する。すなわち、補正空吸引位置決定部178は、空吸引位置P2を、ステップS403のときのキャップ111~114の上下方向の位置に変更する。ここでは、補正空吸引位置決定部178によって決定された新たな空吸引位置P2は、記憶部151に記憶される。
次にステップS405では、補正フラッシング位置決定部179は、補正空吸引位置決定部178によって決定された新たな空吸引位置P2に基づいて、フラッシング位置P3を再設定する。ここでは、補正フラッシング位置決定部179は、詳しくは、補正空吸引位置決定部178によって決定された新たな空吸引位置P2から下方に所定の補間距離離れた位置を、新たなフラッシング位置P3に決定する。
その後、空吸引処理が実行される際には、補正空吸引位置決定部178によって決定された新たな空吸引位置P2にキャップ111~114を配置して、空吸引処理を実行する。フラッシング処理が実行される際には、補正フラッシング位置決定部179によって決定された新たなフラッシング位置P3にキャップ111~114を配置して、フラッシング処理を実行する。
以上、本実施形態では、例えば第1キャップ111がノズル面45aに装着されていない状態で第1吸引ポンプ131が駆動しているとき、ノズル51、52内のインクが吸引されず、ダンパー74a、74bの貯留室82内の圧力は基準圧力より大きくなる。一方、第1キャップ111がノズル面45aに装着された状態で第1吸引ポンプ131が駆動しているとき、ノズル51、52内のインクが吸引され、ダンパー74a、74bの貯留室82内の圧力が小さくなり、当該貯留室82の圧力が基準圧力以下となる。よって、ノズル面45aにキャップ111を接近させながらダンパー74a、74bの貯留室82内の圧力を検出することで、ノズル面45aに第1キャップ111が最初に装着されたときの第1キャップ111の上下方向の位置を測定することができる。そのときの第1キャップ111の上下方向の位置を吸引位置P1とする。このように、本実施形態では、専用の治具を使用することなく、ダンパー74a、74bのフィラーセンサ88を使用して吸引位置P1を決定することができる。よって、吸引位置P1を設定し易い。
本実施形態のように、インクヘッド41~44が複数存在し、かつ、ダンパー74a~74hのフィラーセンサ88が複数存在している場合、キャップ111~114をノズル面45a~45dに接近させている間に吸引ポンプ131~134を駆動させる。このような状態において、全てのフィラー87がアンヒットからヒットに変化したとき、すなわち、ノズル51~58の全てからインクが吸引されたときのキャップ111~114の位置を吸引位置P1に決定している。このことによって、全てのノズル51~58に対して吸引することができるようなキャップ111~114の位置を吸引位置P1に決定することができる。よって、吸引処理を適切に行うことができる吸引位置P1を、ダンパー74a~74hを使用して決定することができる。
本実施形態では、吸引処理中にインクが吸引されないノズル51~58が発生して、吸引不具合が発生した場合、キャップ111~114を上方に移動させる制御が行われる。そして、キャップ111~114を上方に移動させ、かつ、吸引ポンプ131~134を駆動させている間において、ダンパー74a~74hの全てのフィラー87がヒットしていると判定されたときのキャップ111~114の上下方向の位置を新たな吸引位置P1に決定している。このことによって、例えば吸引不具合が発生した場合であっても、吸引処理を適切に行えるような吸引位置P1を自動で再設定することができる。よって、吸引不具合が発生した場合であっても、自動で吸引不具合を解消することができる。したがって、吸引不具合が発生した場合であっても、専用の治具を使用してキャップ111~114の位置を調整しなくてもよいため、作業の手間を省くことができる。
本実施形態では、例えばキャップ111において、ノズル面45aからキャップ111を離間させながらダンパー74a、74bの貯留室82内の圧力を検出することで、ノズル面45aに第1キャップ111が最初に装着されなくなったときの第1キャップ111の上下方向の位置を測定することができる。そのときの第1キャップ111の上下方向の位置を空吸引位置P2(図11参照)とする。このように、本実施形態では、専用の治具を使用することなく、ダンパー74a、74bのフィラーセンサ88を使用して空吸引位置P2を決定することができる。よって、空吸引位置P2を設定し易い。
本実施形態のようにインクヘッド41~44が複数存在し、かつ、ダンパー74a~74hのフィラーセンサ88が複数存在している場合、キャップ111~114をノズル面45a~45dから離間させている間に吸引ポンプ131~134を駆動させる。このような状態において、全てのフィラー87がアンヒットの状態のとき、すなわち、ノズル51~58の全てからインクが吸引されないときのキャップ111~114の位置を空吸引位置P2に決定している。このことによって、全てのノズル51~58に対して吸引することができないようなキャップ111~114の位置を空吸引位置P2に決定することができる。よって、空吸引処理を適切に行うことができる空吸引位置P2を、ダンパー74a~74hを使用して決定することができる。
本実施形態では、空吸引処理中にインクが吸引されるノズル51~58が発生して、空吸引不具合が発生した場合、キャップ111~114を下方に移動させる制御が行われる。そして、キャップ111~114を下方に移動させ、かつ、吸引ポンプ131~134を駆動させている間において、ダンパー74a~74hの全てのフィラー87がアンヒットしていると判定されたときのキャップ111~114の上下方向の位置を新たな空吸引位置P2に決定している。このことによって、例え空吸引不具合が発生した場合であっても、空吸引処理を適切に行えるような空吸引位置P2を自動で再設定することができる。よって、空吸引不具合が発生した場合であっても、自動で空吸引不具合を解消することができる。したがって、空吸引不具合が発生した場合であっても、専用の治具を使用してキャップ111~114の位置を調整しなくてもよいため、作業の手間を省くことができる。
本実施形態では、フラッシング位置決定部168は、空吸引位置決定部167によって決定された空吸引位置P2から下方に所定の補間距離離れた位置をフラッシング位置P3(図12参照)に決定している。フラッシング位置P3は、インクヘッド41~44から吐出されたインクがキャップ111~114に排出され、かつ、ノズル51~58内のインクが吸引ポンプ131~134によって吸引されないようなキャップ111~114の上下方向の位置であればよい。フラッシング位置P3は、空吸引位置P2と比較して厳密な位置は要求されず、空吸引位置P2から更に下方に移動した位置であればよい。そのため、本実施形態では、空吸引位置P2に基づいてフラッシング位置P3を決定している。よって、フラッシング位置P3を決定するために要する時間を短くすることができ、かつ、簡単にフラッシング位置P3を決定することができる。
本実施形態では、図5および図6に示すダンパー74a~74hは、印刷時にインクの供給のタイミングを制御するために用いられるものである。ここでは、ダンパー74a~74hのそれぞれのフィラーセンサ88を使用して、貯留室82の圧力を検出し、その検出した圧力に基づいて、吸引位置P1、空吸引位置P2およびフラッシング位置P3を決定している。よって、吸引位置P1、空吸引位置P2およびフラッシング位置P3を決定するための専用の機構を設ける必要がないため、部品点数を減らせることができると共に、製造コストを抑えることができる。
なお、本実施形態には、制御装置150の記憶部151と、吸引位置移動部153と、吸引制御部154と、空吸引位置移動部155と、空吸引制御部156と、フラッシング位置移動部157と、フラッシング制御部158と、ワイピング制御部159と、接近移動部161と、接近判定部162と、吸引位置決定部163と、離間移動部165と、離間判定部166と、空吸引位置決定部167と、フラッシング位置決定部168と、吸引エラー判定部171と、吸引補正移動部172と、吸引補正判定部173と、補正吸引位置決定部174と、空吸引エラー判定部175と、空吸引補正移動部176と、空吸引補正判定部177と、補正空吸引位置決定部178と、補正フラッシング位置決定部179をコンピュータによって実現させるためのコンピュータプログラムが含まれる。
本実施形態では、接近判定部162および吸引補正判定部173は、キャップ111~114を所定の第1距離、上方に移動させて、キャップ111~114の移動を停止させた後に、フィラー87のアンヒットおよびヒットの判定を行っていた。しかしながら、接近判定部162および吸引補正判定部173は、キャップ111~114を上方に移動させながら、フィラー87のアンヒットおよびヒットの判定を行ってもよい。
同様に、離間判定部166および空吸引補正判定部177は、キャップ111~114を所定の第2距離、下方に移動させて、キャップ111~114の移動を停止させた後に、フィラー87のアンヒットおよびヒットの判定を行っていた。しかしながら、離間判定部166および空吸引補正判定部177は、キャップ111~114を下方に移動させながら、フィラー87のアンヒットおよびヒットの判定を行ってもよい。