以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)100の正面図である。以下の説明において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、プリンタ100を正面から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。主走査方向Yは、後述のインクヘッド41〜44の移動方向である。図面中の符号Xは副走査方向を示している。本実施形態では、副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交する方向である。副走査方向Xは、後述する記録媒体5の搬送方向である。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
プリンタ100は、インクジェット式のプリンタである。プリンタ100は、記録媒体5に対して印刷を行うものである。記録媒体5は例えばロール状の記録紙であり、いわゆるロール紙である。しかしながら、記録媒体5は、ロール状の記録紙に限定されない。例えば記録媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。
図1に示すように、プリンタ100は、プリンタ本体11と、プラテン13と、搬送機構20と、ガイドレール15と、キャリッジ17と、ヘッド移動機構30と、インクヘッド41〜44(図2参照)と、インク供給システム61〜68(図3参照)と、クリーニングシステム90(図7参照)と、制御装置160とを備えている。
プリンタ本体11は、主走査方向Yに延びたケーシングを有している。プラテン13は、記録媒体5を支持する。プラテン13には、記録媒体5が載置される。プラテン13上において印刷が行われる。プラテン13は、主走査方向Yに延びたものである。
プラテン13に載置された記録媒体5は、搬送機構20によって副走査方向Xに搬送される。搬送機構20の構成は特に限定されない。本実施形態では、搬送機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23とを備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方かつガイドレール15の下方に設けられ、記録媒体5を上から押さえ付けるものである。ピンチローラ21は、平面視においてキャリッジ17よりも後方に配置されている。グリットローラ22は、プラテン13に設けられた円筒状の部材である。ここでは、グリットローラ22は、その上面部を露出させた状態でプラテン13に埋設されている。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向している。ここでは、グリットローラ22には、フィードモータ23が接続されている。ピンチローラ21とグリットローラ22との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動すると、グリットローラ22が回転する。このことで、記録媒体5は、副走査方向Xに搬送される。
ガイドレール15は、プラテン13の上方に配置されている。ガイドレール15は、プラテン13と平行に配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール15には、キャリッジ17が係合している。キャリッジ17は、ガイドレール15に摺動可能に設けられている。
ヘッド移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド41〜44(図2参照)を主走査方向Yに移動させる機構である。なお、ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。本実施形態では、ヘッド移動機構30は、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、キャリッジモータ33とを備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部に設けられている。ベルト32は、無端状のベルトであり、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が取り付けられている。ここでは、右のプーリ31bには、キャリッジモータ33が接続されている。キャリッジモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、キャリッジ17およびインクヘッド41〜44は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。
図2は、キャリッジ17の下面の構成を模式的に示す図である。図2に示すように、インクヘッド41〜44は、キャリッジ17に設けられている。インクヘッド41〜44は、その下面を露出するように、キャリッジ17に保持されている。以下の説明では、インクヘッド41〜44のことを、それぞれ第1〜第4インクヘッド41〜44と適宜称することがあり得る。インクヘッド41〜44は、インクを吐出するものである。インクヘッド41〜44は、主走査方向Yに並んで配置されている。本実施形態では、例えば第1インクヘッド41が本発明のインクヘッドの一例であり、第2インクヘッド42が本発明の他のインクヘッドの一例である。
本実施形態では、インクヘッド41〜44は、それぞれノズル面45を有している。ノズル面45は、インクヘッド41〜44の下面に形成されている。第1インクヘッド41のノズル面45には、複数のノズル51が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数のノズル52が副走査方向Xに並んで形成されている。同様に、第2インクヘッド42のノズル面45には、複数のノズル53が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数のノズル54が副走査方向Xに並んで形成されている。第3インクヘッド43のノズル面45には、複数のノズル55が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数のノズル56が副走査方向Xに並んで形成されている。また、第4インクヘッド44のノズル面45には、複数のノズル57が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数のノズル58が副走査方向Xに並んで形成されている。ここでは、各複数のノズル51〜58の列のことを、それぞれノズル列51a〜58aと称する。各インクヘッド41〜44は、それぞれ2つのノズル列を有している。本実施形態では、例えばノズル51が本発明の第1ノズルに対応し、ノズル52が本発明の第2ノズルに対応している。また、例えばノズル53が本発明の他のノズルに対応している。
図3は、インクヘッド41〜44と、インク供給システム61〜68との関係を示す模式図である。図3に示すように、インク供給システム61〜68は、インクヘッド41〜44にインクを供給するシステムである。インク供給システム61〜68は、ノズル列51a〜58aごとに設けられている。本実施形態では、ノズル列の数は「8」であるため、インク供給システムの数も「8」である。ノズル列51a〜58aには、それぞれインク供給システム61〜68が接続されている。ここでは、インク供給システム61〜68は、いずれも同じ構成を有している。そこで、以下では、第1インクヘッド41に係るインク供給システム61および62について説明し、その他のインク供給システム63〜68についての説明は、省略または簡略化する。ただし、インク供給システム61〜68において、一部のインク供給システム61〜68の構成は、他のインク供給システム61〜68の構成と異なっていてもよい。
図4は、第1インクヘッド41に係るインク供給システム61および62の構成を示す模式図である。図4に示すように、インク供給システム61は、第1インクタンク71aと、第1インク供給路72aと、第1送液ポンプ73aと、第1ダンパー74aとを備えている。インク供給システム62は、第2インクタンク71bと、第2インク供給路72bと、第2送液ポンプ73bと、第2ダンパー74bとを備えている。
第1インクタンク71aは、インクが貯留された容器である。第1インクタンク71aには、例えばプロセスカラーインクおよび特色インク(例えばホワイトインク、クリアインクなど)のうちの1つのインクが貯留されている。ただし、第1インクタンク71aに貯留されるインクの色は特に限定されない。また、インクの材料も何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インクなどであってもよい。なお、ここでは、第1インクタンク71aに貯留されているインクは、本発明の第1のインクの一例である。
第1インク供給路72aは、第1インクタンク71aと第1インクヘッド41とを接続する流路である。第1インク供給路72aの一端は、第1ダンパー74aを介して第1インクヘッド41に接続されている。詳しくは、第1インク供給路72aの一端は、ノズル列51aに接続されている。第1インク供給路72aは、ノズル列51aを構成する複数のノズル51と連通している。第1インク供給路72aの他端は、第1インクタンク71aに接続されている。第1ノズル列51aを構成する複数のノズル51からは、第1インクタンク71aに貯留されたインク(ここでは、第1のインク)が吐出される。なお、第1インク供給路72aの材質は特に限定されない。第1インク供給路72aは、例えば可撓性のチューブなどによって構成されている。
第1送液ポンプ73aは、第1インク供給路72aに設けられている。第1送液ポンプ73aは、第1インクタンク71aに貯留されたインクをノズル列51aのノズル51に供給すると共に、第1インクヘッド41からのインクの吐出に適した圧力に調整するためのポンプである。第1送液ポンプ73aは、駆動時には、第1インクタンク71aからノズル列51aに向かってインクを送液する。第1送液ポンプ73aの種類は限定されないが、例えば、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプなどである。
第1ダンパー74aは、インクの圧力変動を緩和して、第1インクヘッド41のインクの吐出動作を安定させるものである。第1ダンパー74aは、第1ダンパー74aに流入するインクの流量(言い換えると、第1ダンパー74a内の圧力)を検出する。そして、インクの流量の検出結果に基づいて、第1送液ポンプ73aが制御される。図4に示すように、第1ダンパー74aは、第1インクヘッド41に接続されている。ここでは、第1ダンパー74aは、第1インクヘッド41の上部に設けられている。なお、第1ダンパー74aの構成は特に限定されない。
図5は、ダンパー74aおよび74bの平面図であり、貯留室82の圧力が所定の判定圧力以下の状態を示す図である。図6は、ダンパー74aおよび74bの平面断面図であり、貯留室82の圧力が所定の判定圧力より大きい状態を示す図である。本実施形態では、図5に示すように、第1ダンパー74aは、ダンパー本体81と、貯留室82と、ダンパー膜83と、検出機構84とを備えている。
ダンパー本体81は中空のものである。貯留室82は、ダンパー本体81内に形成されており、一部に形成された開口を有している。貯留室82には、インクが一時的に貯留される。貯留室82は、第1インク供給路72a(図4参照)および第1インクヘッド41(図4参照)と連通している。本実施形態では、ダンパー本体81の上部には、第1インク供給路72aが接続された流入口85aが形成され、ダンパー本体81の下部には、第1インクヘッド41に接続された流出口85b(図4参照)が形成されている。ただし、流入口85aおよび流出口85bの形成位置は特に限定されない。本実施形態では、第1ダンパー74aは、印刷時に流入口85aから貯留室82に流入したインクが流出口85bを通じて第1インクヘッド41へ流れるように構成されている。
図5に示すように、ダンパー膜83は、貯留室82の開口部分を覆うようにダンパー本体81に設けられている。ここでは、ダンパー膜83とダンパー本体81によって囲まれた空間が貯留室82である。ダンパー膜83は、例えば可撓性を有する樹脂製のフィルムによって構成されている。ダンパー膜83は、貯留室82内のインクの貯留量や、貯留室82内の圧力に基づいて、図5および図6に示すように、貯留室82の内側および外側に変形可能である。ダンパー膜83は、貯留室82の内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で、ダンパー本体81に取り付けられている。
本実施形態では、図5に示すように、貯留室82には、バネ85が設けられている。バネ85は、圧縮された状態で貯留室82に配置されており、ダンパー膜83に向かって弾性力を付与する。ここでは、バネ85は、ダンパー膜83の貯留室82側の面に接続されている。なお、バネ85の種類は特に限定されず、例えば、バネ85はコイルバネである。
検出機構84は、貯留室82内の圧力を検出する機構である。ここでは、検出機構84は、貯留室82内の圧力を検出することで、第1インク供給路72a内の圧力を間接的に検出する。なお、検出機構84の構成は特に限定されない。本実施形態では、検出機構84は、押圧体86と、フィラー87と、フィラーセンサ88とを備えている。押圧体86は、ダンパー膜83に設けられている。本実施形態では、押圧体86は、ダンパー膜83の貯留室82側の面に設けられている。ただし、ダンパー膜83に対する押圧体86の位置は特に限定されず、押圧体86は、ダンパー膜83の貯留室82とは反対側の面に設けられていてもよい。ここでは、押圧体86は、バネ85に支持されており、ダンパー膜83の撓みと共に、貯留室82の内側および外側に移動可能である。
フィラー87は、ダンパー膜83または押圧体86と接触可能にダンパー本体81に設けられている。本実施形態では、ダンパー本体81には、支持バネ89が設けられおり、フィラー87は、支持バネ89に支持されている。フィラー87の形状は特に限定されない。ここでは、フィラー87は、略コの字状に形成されている。詳しくは、フィラー87は、押圧体86の右方において、前後方向に延びた接触部87aと、接触部87aの後部から左方に延びた支持部87bと、接触部87aの前部から左方に延びた被検出部87cとを有している。接触部87aは、ダンパー膜83または押圧体86に接触する。支持部87bは、支持バネ89に支持されている。被検出部87cは、フィラーセンサ88によって検出される部位である。
フィラーセンサ88は、フィラー87の位置を検出することによって、貯留室82内の圧力を検出する。フィラーセンサ88は、貯留室82内の圧力を検出することで、第1インク供給路72aの圧力を間接的に検出する。ここでは、第1ダンパー74aのフィラーセンサ88は、本発明の第1圧力検出機構の一例である。本実施形態では、フィラーセンサ88は、非接触式のセンサであるが、接触式のセンサであってもよい。本実施形態では、フィラーセンサ88は、一対の検出部88aを有している。図5に示すように、一対の検出部88aの間に、フィラー87の被検出部87cが位置しているとき、フィラーセンサ88は、貯留室82の圧力が所定の判定圧力以下であることを検出する。
図6に示すように、貯留室82の圧力が大きくなるにしたがって、ダンパー膜83が貯留室82の外側に撓む。このとき、押圧体86によって、フィラー87が貯留室82の外側に押されることで、フィラー87は、接触部87aと支持部87bとの間に位置する軸87dを軸にして回転する。そして、貯留室82の圧力が所定の判定圧力より大きくなったとき、フィラー87の被検出部87cがフィラーセンサ88の一対の検出部88aの間から外れた位置に移動する。フィラーセンサ88は、一対の検出部88aの間に、フィラー87の被検出部87cが位置していないとき、貯留室82の圧力が所定の判定圧力よりも大きいことを検出する。なお、本実施形態では、第1ダンパー74aの貯留室82、ダンパー膜83、押圧体86、フィラー87、および、フィラーセンサ88は、それぞれ本発明の第1貯留室、第1ダンパー膜、第1押圧体、第1フィラー、および、第1フィラーセンサに対応する。また、本実施形態では、第1ダンパー74aにおける一対の検出部88aの間の範囲は、本発明の所定の第1範囲に対応する。
本実施形態では、図5に示すように、フィラーセンサ88の一対の検出部88aの間に、フィラー87の被検出部87cが位置しているとき、すなわち、貯留室82の圧力が所定の判定圧力以下のとき、「フィラー87がヒットしている」という。一方、図6に示すように、フィラーセンサ88の一対の検出部88aの間に、フィラー87の被検出部87cが位置していないとき、すなわち、貯留室82の圧力が所定の判定圧力よりも大きいとき、「フィラー87がアンヒットしている」という。
図4に示すように、インク供給システム62は、インク供給システム61と同様に構成されている。インク供給システム62において、第2インクタンク71bと、第2インク供給路72bと、第2送液ポンプ73bと、第2ダンパー74bとは、それぞれインク供給システム61の第1インクタンク71aと、第1インク供給路72aと、第1送液ポンプ73aと、第1ダンパー74aと同じ構成である。本実施形態では、第2ダンパー74bの貯留室82、ダンパー膜83、押圧体86、フィラー87、および、フィラーセンサ88は、それぞれ本発明の第2貯留室、第2ダンパー膜、第2押圧体、第2フィラー、および、第2フィラーセンサに対応する。また、本実施形態では、第2ダンパー74bにおける一対の検出部88aの間の範囲は、本発明の所定の第2範囲に対応する。
ここでは、第2インクタンク71bには、第1インクタンク71aに貯留されたインクとは異なるインクが貯留されている。ここで、「異なるインク」とは、インクの成分が異なることである。例えば「異なるインク」とは、インクの色が異なることである。ただし、色が同じであっても、インクの成分が異なる場合には、それらのインクは「異なるインク」である。第2インクタンク71bに貯留されたインクは、本発明の第2インクの一例である。
詳細な説明は省略するが、図3に示すように、第2インクヘッド42に係る2つのインク供給システム63および64、第3インクヘッド43に係る2つのインク供給システム65および66、第4インクヘッド44に係る2つのインク供給システム67および68も、インク供給システム61と同じ構成を備えている。これらのインク供給システムで供給されるインクは、全て異なるインクであってもよく、一部が同じインクであってもよい。
図7、図8は、それぞれクリーニングシステム90のキャップ111〜114およびキャッピング機構120の正面図である。図7は、インクヘッド41〜44が第2位置P2に位置しているときの図である。図8は、インクヘッド41〜44が第1位置P1に位置しているときの図である。図9は、クリーニングシステム90のワイパー141およびワイピング機構140の正面図である。次に、クリーニングシステム90について説明する。クリーニングシステム90は、図7および図9に示すように、インクヘッド41〜44をクリーニングするシステムである。クリーニングシステム90は、第1〜第4キャップ111〜114の4つのキャップと、キャッピング機構120と、第1〜第4吸引ポンプ131〜134の4つの吸引ポンプと、ワイパー141と、ワイピング機構140とを備えている。
詳しい図示は省略するが、キャップ111〜114は、ノズル面45に接触する端面を有している。ここでは、キャップ111〜114の端面は、キャップ111〜114の上端に位置する面のことである。図8に示すように、キャップ111〜114は、それぞれインクヘッド41〜44のノズル面45(図7参照)に装着可能に構成されている。ここで、「装着」とは、ノズル51〜58がキャップ111〜114に囲まれている状態、言い換えるとキャップ111〜114の端面の全体がノズル面45に接触している状態のことをいう。キャップ111〜114は、それぞれノズル51〜58(図2参照)を覆うものである。例えば第1キャップ111は、第1インクヘッド41のノズル面45に形成された複数のノズル51、および、複数のノズル52を覆うものである。本実施形態では、図8に示すように、ガイドレール15の右端部分には、印刷待機時に、インクヘッド41〜44が待機する位置である第1位置P1が設定されている。この第1位置P1とは、いわゆるホームポジションのことである。この第1位置P1にインクヘッド41〜44が位置しているとき、インクヘッド41〜44のノズル面45には、それぞれキャップ111〜114が装着される。キャップ111〜114は、上部が開口した箱状の形状を有している。なお、キャップ111〜114を形成する材料の種類は特に限定されない。キャップ111〜114の少なくともノズル面45と接触する部分は、例えばゴムなどによって形成されている。また、キャップ111〜114の内部には、スポンジなどの吸収体(図示せず)が配置されている。キャップ111〜114の上部の開口は、インクヘッド41〜44の外周部の形状に対応している。
図7および図8に示すように、キャッピング機構120は、キャップ111〜114を支持し、インクヘッド41〜44のノズル面45に対して、それぞれキャップ111〜114を装着させたり、離間させたりするものである。ここでは、キャッピング機構120は、キャップ111〜114を昇降させる機構である。本実施形態では、キャッピング機構120は、インクヘッド41〜44の主走査方向Yへの移動に連動して、キャップ111〜114を主走査方向Yおよび上下方向に移動させるように構成されている。しかしながら、キャッピング機構120は、インクヘッド41〜44の位置を固定させた状態で、キャップ111〜114を上下方向に移動させるように構成されていてもよい。
図7に示すように、ガイドレール15の右端部分であって、第1位置P1よりも左方の位置には、第2位置P2が設定されている。この第2位置P2は、プラテン13の真上には位置していない。第2位置P2から第1位置P1へインクヘッド41〜44が移動している間、キャッピング機構120は、キャップ111〜114が第2位置P2から第1位置P1へ移動しながら、インクヘッド41〜44のノズル面45に向かって移動するように構成されている。一方、第1位置P1から第2位置P2へインクヘッド41〜44が移動している間、キャッピング機構120は、キャップ111〜114が第1位置P1から第2位置P2へ移動しながら、インクヘッド41〜44のノズル面45から離間するように構成されている。本実施形態では、「キャッピング機構120を制御する」とは、ヘッド移動機構30を制御して、インクヘッド41〜44を主走査方向Yに移動させることに連動して、キャップ111〜114をノズル面45に対して装着させたり、離間させたりすることをいう。
キャッピング機構120の具体的な構成は特に限定されない。本実施形態では、キャッピング機構120は、第1〜第4キャップ111〜114が支持された支持プレート121と、第2位置P2から第1位置P1に向かって上方斜めに延びたガイド孔122が形成されたガイド部材123と、ガイド孔122に係合し、支持プレート121に設けられた支持軸124とを備えている。例えばキャリッジ17には、第2位置P2から第1位置P1の間において、支持プレート121に接触する接触部(図示せず)が設けられている。
インクヘッド41〜44が第2位置P2から第1位置P1へ移動している間、キャリッジ17の上記接触部が支持プレート121を第1位置P1側に押す。このとき、支持プレート121およびキャップ111〜114は、ガイド孔122にガイドされながら、ノズル面45に向かって移動し、かつ、第2位置P2から第1位置P1に向かって移動する。そして、図8に示すように、インクヘッド41〜44が第1位置P1に到達したとき、インクヘッド41〜44のノズル面45にキャップ111〜114が装着された状態となる。一方、キャリッジ17およびインクヘッド41〜44が第1位置P1から第2位置P2に移動している間、キャリッジ17の上記接触部も第1位置P1から第2位置P2へ移動する。このとき、支持プレート121およびキャップ111〜114は、ガイド孔122にガイドされながら、ノズル面45から離間して移動すると共に、キャリッジ17の上記接触部に支持プレート121が接触しながら、第1位置P1から第2位置P2に向かって移動する。なお、図7に示すように、キャップ111〜114は、第2位置P2に到達したとき、第2位置P2に待機するように構成されている。
なお、本実施形態では、ノズル面45にキャップ111〜114が装着されている状態から装着されていない状態になるとき、キャップ111〜114の端面の一部がノズル面45から離れた後に、キャップ111〜114の端面の他の一部がノズル面45から離れるように構成されている。例えば、ここでは、ノズル面45からキャップ111〜114が取り外される際、キャップ111〜114の右側の端面がノズル面45から離れた後、キャップ111〜114の左側の端面がノズル面45から離れるように構成されている。ノズル面45からキャップ111〜114が取り外される際、ノズル面45に対してキャップ111〜114が斜めに配置される。
吸引ポンプ131〜134は、キャップ111〜114にそれぞれ接続されている。吸引ポンプ131〜134は、それぞれキャップ111〜114内のインクや空気などを吸引する部材である。本実施形態では、例えば吸引ポンプ131が本発明の吸引装置の一例であり、吸引ポンプ132が本発明の他の吸引装置の一例である。吸引ポンプ131〜134は、例えば、真空ポンプである。吸引ポンプ131〜134は、それぞれチューブなどを介して、キャップ111〜114の底面に接続されている。吸引ポンプ131〜134は、駆動時には、それぞれに対応するインクヘッド41〜44に接続されたインク供給路内の負圧よりも低い負圧を形成するように構成されている。例えば、キャップ111〜114がインクヘッド41〜44に装着された状態で吸引ポンプ131〜134が駆動された時には、インクヘッド41〜44のノズル51〜58からインクなどが吸い出される。吸引ポンプ131〜134に吸引されたインクなどは、図示しないチューブなどを介して図示しない廃液タンクに廃棄される。
ワイパー141およびワイピング機構140は、主走査方向Yにおいて第2位置P2に配置されたときのインクヘッド41〜44と、プラテン13との間に設けられている。ワイパー141およびワイピング機構140は、インクヘッド41〜44のノズル面45を拭ってクリーニング(換言すると、ワイピング)する機構である。図9に示すように、ワイパー141は、インクヘッド41〜44のそれぞれのノズル面45を拭う部材である。ワイパー141は、前後方向と上下方向に延びる平板状の部材である。ワイパー141の前後方向の長さは、インクヘッド41〜44の前後方向の長さよりも長く構成されている。ワイパー141は、例えば、ゴムで形成されている。
ワイピング機構140は、ワイパー141を支持し、ワイパー141をインクヘッド41〜44のノズル面45に接触させたり、インクヘッド41〜44のノズル面45から離間させたりするものである。ワイピング機構140は、回転軸142と、洗浄液槽143と、回転モータ144とを備えている。回転軸142は、ワイパー141の一端を支持しており、ワイパー141の一端に接続されている。ワイパー141は、回転軸142を中心に回転可能である。回転軸142は、前後方向に延びている。ワイパー141が、回転軸142から遠い方の端部を上にするような回転位置に配置されるとき、当該端部は、インクヘッド41〜44のノズル面45よりもわずかに高い位置に位置する。そこで、ワイパー141をこのような回転位置に配置しつつ、キャリッジ17を走行させると、ワイパー141によりインクヘッド41〜44のノズル面45をワイピングすることができる。一方、ワイパー141は、回転軸142から遠い方の端部を下にするような回転位置に配置されるとき、回転軸142の下方に設置された洗浄液槽143中の洗浄液に浸漬される。ワイパー141は、回転モータ144によって回転されている。
なお、本実施形態では、ヘッド移動機構30によってインクヘッド41〜44を主走査方向Yに移動させることで、ワイパー141に対してインクヘッド41〜44を相対的に主走査方向Yに移動させている。
次に、制御装置160について説明する。制御装置160は、印刷に関する制御、および、クリーニングに関する制御を行う装置である。制御装置160の構成は特に限定されない。制御装置160は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。なお、制御装置160は必ずしもプリンタ100の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ100の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ100と通信可能に接続されたコンピュータなどであってもよい。
図10は、本実施形態に係るプリンタ100のブロック図である。図10に示すように、制御装置160は、搬送機構20のフィードモータ23と、ヘッド移動機構30のキャリッジモータ33と、インクヘッド41〜44と、送液ポンプ73a〜73hと、ダンパー74a〜74hのフィラーセンサ88と、吸引ポンプ131〜134と、ワイピング機構140の回転モータ144とにそれぞれ通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。
本実施形態では、制御装置160は、記憶部161と、第1吸引制御部163と、第1負圧調整制御部165と、第1空吸引制御部167と、第2吸引制御部171と、第2負圧調整制御部173と、第2空吸引制御部175と、ワイピング制御部179と、を備えている。なお、上述した制御装置160の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば上述した各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。なお、制御装置160の上記各部の具体的な制御については、後述する。
以上、本実施形態に係るプリンタ100の構成について説明した。ところで、インクヘッド41〜44に対してクリーニングを行う際、空吸引処理が行われる。ここでは、インクヘッド41〜44のそれぞれに対する空吸引処理は、同じ処理である。そのため、以下では、インクヘッド41に対する空吸引処理について説明し、インクヘッド42〜44に対する空吸引処理についての説明は適宜省略する。
空吸引処理は、例えばインクヘッド41のノズル面45からキャップ111を離間させた状態で、吸引ポンプ131を駆動させることで、キャップ111内のインクを吸引すると共に、インクヘッド41のノズル51、52内のインクをキャップ111に排出しない処理である。空吸引処理を実行する際、キャップ111にはインクが満杯に貯留されていることがあり得る。そのため、インクヘッド41のノズル面45と、キャップ111との間隔を空け過ぎた状態で、空吸引処理が実行されると、キャップ111内のインクが外部に漏れるおそれがある。
以下の説明では、ノズル面45とキャップ111との間隔とは、ノズル面45と、キャップ111の端面との距離のことをいう。本実施形態では、キャップ111には、ノズル51から吐出された第1のインク、および、ノズル52から吐出された第2のインクが混在している。また、空吸引処理時、インクヘッド41のノズル51、52内は、負圧状態が維持されている。そのため、インクヘッド41のノズル面45と、キャップ111との間隔が離れ過ぎると、キャップ111とノズル面45とが離れるタイミングで、キャップ111内のインクの一部がノズル面45に付着することがあり得る。ノズル面45に付着したインクは、第1のインクと第2のインクとが混在した混在インクである。このとき、インクヘッド41の内部が負圧であるため、ノズル面45に付着した混在インクがノズル51、52に吸い込まれるおそれがある。なお、空吸引処理とは直接関係ないが、インクヘッド41のノズル面45と、キャップ111との間隔をゼロまたは狭くし過ぎる(ここでは、ノズル面45にキャップ111を完全に装着させた状態にする)場合であっても、キャップ111内の混在インクがノズル51、52に吸い込まれるおそれがある。ここで、「ノズル面45にキャップ111を完全に装着させた状態」とは、ノズル面45とキャップ111の端面との間に、隙間が全くない状態のことである。
以上のことから、空吸引を実施する際には、インクヘッド41のノズル面45と、キャップ111との間隔は、キャップ111内からインクが外部に漏れず、かつ、ノズル51、52にキャップ111内のインクが吸い込まれない程度の微小な距離であることが好ましい。この微小な距離とは、目視することができないような非常に微小な距離である。また、ノズル面45とキャップ111との間隔を上記微小な距離にすることで、吸引ポンプ131を駆動したとき、ノズル51、52内のインクは吸引され難い。
そこで、本実施形態では、この微小な距離に対応したキャップ111〜114の位置(以下、空吸引位置という。)を決定する処理を制御装置160が行う。ここで、「空吸引位置」とは、インクヘッド41のノズル面45とキャップ111の端面との間に隙間が形成され、キャップ111内のインクは吸引され、ノズル51、52からインクが吸引されず、かつ、インクヘッド41のノズル面45に付着した少なくとも一部のインクを除去できる程度に調整された位置である。ここで、「ノズル51、52からインクが吸引されない」とは、ノズル51、52からインクが全く吸引されない場合の他に、ノズル51、52から微量のインクが吸引される場合も含まれるものとする。
また、「空吸引位置」とは、インクヘッド41のノズル面45とキャップ111の端面の少なくとも一部とが接触したときのキャップ111の位置である。「ノズル面45とキャップ111の端面の少なくとも一部が接触」とは、ノズル面45にキャップ111の端面の一部が直接接触している状態の他に、ノズル面45とキャップ111の端面とがインク(例えば、インクの液柱)を介して接触している状態も含まれる。また、「空吸引位置」とは、キャップ111内のインクを吸引する際、インクヘッド41のノズル51、52からインクを吸引することができないときのキャップ111の位置である。本実施形態では、「空吸引位置」とは、キャップ111内のインクを吸引する際、インクヘッド41のノズル51、52からインクを吸引することができないときのキャップ111の位置の中で、キャップ111がノズル面45に最も接近したときのキャップ111の位置である。言い換えると、「空吸引位置」は、インクヘッド41のノズル面45に対するキャップ111の位置のうち、ノズル51、52のインクを吸引することができないときにおける、最も上方に配置されたときのキャップ111の位置である。この空吸引位置にキャップ111を配置した状態で、少しでも上方にキャップ111を移動させると、ノズル51、52のインクを吸引することが可能となる。空吸引位置にキャップ111が配置されたとき、例えばキャップ111の端面の一部がノズル面45から離間し、当該端面の他の一部がノズル面45と接触している。
本実施形態では、図10に示すように、空吸引位置を決定する処理を実行するために、制御装置160は、更に、前処理実行部180と、接近移動制御部181と、接近圧力判定部182と、離間移動制御部183と、離間圧力判定部184と、位置被記憶部185とを備えている。なお、上述した制御装置160の空吸引位置を決定するための上記各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば上述した各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。なお、制御装置160の空吸引位置を決定するための上記各部の具体的な制御については、後述する。
本実施形態では、前処理実行部180、接近移動制御部181、接近圧力判定部182、離間移動制御部183、離間圧力判定部184および位置被記憶部185が行う処理を「空吸引位置決定処理」という。ここで、空吸引位置決定処理は、上記空吸引位置を決定する処理である。空吸引位置決定処理は、例えば、プリンタ100の出荷前や、ユーザが最初にプリンタ100を使用する前に実行される処理である。
次に、空吸引位置決定処理の手順について、図11Aおよび図11Bのフローチャートに沿って説明する。本実施形態では、キャップ111〜114の空吸引位置を決定する処理は同じであるため、以下、キャップ111の空吸引位置を決定する処理について説明する。
まず、図11AのステップS101では、前処理が実行される。本実施形態では、前処理実行部180は、前処理を実行するようにプログラムされている。ここで、前処理とは、空吸引位置決定処理の前段階に行われる処理である。前処理は、第1インク供給路72a(図4参照)内の圧力、および、第2インク供給路72a(図4参照)内の圧力が、所定の判定圧力よりも大きくなるようにする処理である。前処理実行部180は、前処理を実行するために、送液ポンプ73aおよび73bの駆動を制御する。ここで、圧力が所定の判定圧力よりも大きいとは、図6に示すように、ダンパー74aおよび74bのフィラー87が共にアンヒットしている、すなわち、フィラーセンサ88の一対の検出部88aの間に、フィラー87が位置していないことと同義である。
前処理として、具体的には、前処理実行部180は、送液ポンプ73aおよび73bが駆動しているか否かを判定し(ステップS1010)、送液ポンプ73aおよび73bが駆動していないとき、送液ポンプ73aおよび73bを駆動させる(ステップS1011)。以下の説明において、「送液ポンプの駆動を制御」とは、フィラー87がヒットした場合には、送液ポンプを駆動(言い換えると、回転)させるように自動で制御し、それ以外の場合には、送液ポンプを待機状態(例えば、停止状態)に自動で制御することをいう。ここでは、「送液ポンプの駆動を制御」の状態とは、自動制御状態のことである。次に、前処理実行部180は、フィラー87がアンヒットしているか否かを判定する(ステップS1012)。ここでは、送液ポンプ73aおよび73bによって、インクがインクヘッド41に供給されることで、図6に示すように、ダンパー74aおよび74bの貯留室82内のインクの量が徐々に多くなり、ダンパー膜83が外側に撓む。このことで、フィラー87がアンヒットしている状態となる。すなわち、第1インク供給路72a内の圧力、および、第2インク供給路72b内の圧力が、所定の判定圧力よりも大きくなる。
ここで、ステップS1012による判定がNoの場合には、前処理実行部180は、所定の待機時間(例えば、1秒間)の間、待機し(ステップS1013)、再び、ステップS1012の判定を行う。ステップS1012において、フィラー87がアンヒットしていると判定された場合、前処理実行部180は、送液ポンプ73aおよび73bの駆動を停止、および、送液ポンプ73aおよび73bを閉鎖する(ステップS1014)。ここでは、送液ポンプ73aおよび73bを閉鎖することで、インク供給路72a、72bを閉鎖する。このことで、後述するステップS1020の吸引ポンプ131の駆動で、インクを吸引した際に、インクタンク71a、71bからインク供給路72a、72bにインクが供給されて、インク供給路72a、72b内の圧力低下が阻害されることを防止することができる。なお、インク供給路72a、72bを閉鎖する方法は、送液ポンプ73aおよび73bを閉鎖することに限定されず、例えば、インク供給路72a、72bに設けられたバルブ(図示せず)を閉鎖してもよい。その後、前処理実行部180は、インクヘッド41およびキャップ111を所定の位置に移動させる(ステップS1015)。ここで、所定の位置とは、フラッシング位置である。フラッシング位置とは、インクヘッド41からキャップ111に向かってインクを吐出させるフラッシングが行われる位置のことであり、例えば、第1位置P1(図8参照)と第2位置P2(図7参照)との間に設定されている。
以上のように、ステップS101の前処理が終了した後、空吸引位置決定処理が行われる。ここでは、空吸引位置決定処理には、接近処理(ステップS102)と離間処理(ステップS103)とが含まれる。まずステップS102では、接近処理が実行される。本実施形態では、接近処理には、接近移動処理と、接近圧力判定処理とが含まれる。接近移動処理は、キャップ111がノズル面45に装着されていない状態(ここでは、インクヘッド41がフラッシング位置に位置している状態)において、ノズル面45にキャップ111が装着される方向にキャップ111を移動させる処理である。接近圧力判定処理は、接近移動処理が実行されている間、第1インク供給路72a(図4参照)内の圧力である第1接近検出圧力を検出すると共に、第2インク供給路72b(図4参照)内の圧力である第2接近検出圧力を検出し、第1接近検出圧力および第2接近検出圧力のうち少なくとも一方が判定圧力以下であるか否か、すなわち、ダンパー74aおよび74bのそれぞれのフィラー87のうち少なくとも一方がヒットしたか否かを判定する。この第1接近検出圧力および第2接近検出圧力のうち少なくとも一方が所定の判定圧力以下になったときとは、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131に吸引されたときである。インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131に吸引されたとき、ダンパー74aおよび74bのうち少なくとも一方のダンパー膜83は内側に撓み、貯留室82内のインクが減少する。ここでは、接近移動制御部181は、接近移動処理を実行するようにプログラムされている。接近圧力判定部182は、接近圧力判定処理を実行するようにプログラムされている。
本実施形態では、ステップS102の接近処理は、ステップS1020〜S1022に沿って行われる。具体的には、まず接近圧力判定部182は、所定の時間(例えば10秒)の間、第1吸引ポンプ131を駆動させる(ステップS1020)。次に、接近圧力判定部182は、ダンパー74aおよび74bのうち少なくとも一方のフィラー87がヒットしたか否かを判定する(ステップS1021)。ステップS1021では、ダンパー74aおよび74bのうち少なくとも一方のフィラー87がヒットすることで、上記第1接近検出圧力および上記第2接近検出圧力のうち少なくとも一方が所定の判定圧力以下であると判定される。ステップS1021において、Noと判定された場合、接近移動制御部181は、インクヘッド41が第1位置P1(図8参照)に向かって、所定の距離(例えば、0.1mm)移動するようにヘッド移動機構30を制御する(ステップS1022)。このとき、ヘッド移動機構30と連動したキャッピング機構120によって、インクヘッド41のノズル面45とキャップ111とは接近する。その後、再度、ステップS1020の制御が行われる。
一方、ステップS1021において、ダンパー74aおよび74bのうち少なくとも一方のフィラー87がヒットしていると判定された場合、Yesに進み、ステップS102の接近処理が終了する。このように、ダンパー74aおよび74bのフィラー87のうち少なくとも一方がヒットしたのは、ノズル51および52のうち少なくとも一方からインクが吸引されて、インク供給路72aおよび72bの圧力のうち少なくとも一方の圧力が変化したためである。インクヘッド41内のインクが吸引される状態とは、キャップ111がインクヘッド41のノズル面45に装着されている状態であるともいう。
次に、図11BのステップS103では、離間処理を実行する。離間処理には、離間移動処理と、離間圧力判定処理と、位置記憶処理とが含まれる。離間移動処理は、接近圧力判定処理において第1接近検出圧力および第2接近検出圧力のうち少なくとも一方が判定圧力以下であると最初に判定されたとき、キャップ111がノズル面45に装着されている状態において、ノズル面45に対してキャップ111が離間する方向にキャップ111を移動させる処理である。
離間圧力判定処理は、離間移動処理が実行されている間、第1インク供給路72a(図4参照)内の圧力である第1離間検出圧力を検出し、第1離間検出圧力が所定の判定圧力より大きいか否かを判定する。ここでは、離間圧力判定処理は、離間移動処理が実行されている間、上記第1離間検出圧力を検出すると共に、第2インク供給路72b(図4参照)内の圧力である第2離間検出圧力を検出し、第1離間検出圧力および第2離間検出圧力が共に判定圧力より大きいか否か、すなわち、ダンパー74aおよび74bのフィラー87が共にヒットしないか否かを判定する。この第1離間検出圧力および第2離間検出圧力が共に所定の判定圧力より大きくなったときとは、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131に吸引された状態から解除されたときである。インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131に吸引されなくなったとき、図6に示すように、ダンパー74aおよび74bのダンパー膜83は外側に撓んだ状態が維持される。
位置記憶処理は、離間圧力判定処理において第1離間検出圧力が判定圧力より大きいと最初に判定されたときにおける、ノズル面45に対するキャップ111の位置を空吸引位置として記憶する処理である。ここでは、位置記憶処理は、離間圧力判定処理において第1離間検出圧力および第2離間検出圧力が共に判定圧力より大きいと最初に判定されたときにおける、ノズル面45に対するキャップ111の位置を空吸引位置として記憶する。本実施形態では、離間移動制御部183は、離間移動処理を実行するようにプログラムされている。離間圧力判定部184は、離間圧力判定処理を実行するようにプログラムされている。位置被記憶部185は、位置記憶処理を実行するようにプログラムされている。
本実施形態では、ステップS103の離間処理は、ステップS1030〜S1036に沿って行われる。具体的には、まず離間圧力判定部184は、送液ポンプ73aおよび73bを駆動させ(ステップS1030)、所定の時間(例えば3秒間)の間、待機する(ステップS1031)。その後、離間圧力判定部184は、送液ポンプ73aおよび73bの駆動を停止、および、送液ポンプ73aおよび73bを閉鎖する(ステップS1032)。これらのステップを実行することで、ダンパー74aおよび74bのフィラー87をアンヒットにすることができる。
次に、離間圧力判定部184は、所定の時間(例えば10秒)の間、吸引ポンプ131を駆動する(ステップS1033)。その後、離間圧力判定部184は、ダンパー74aおよび74bのそれぞれのフィラー87がヒットしているか否か、すなわち、フィラー87がアンヒット状態から変化したか否かを判定する(ステップS1034)。ここでは、ダンパー74aおよび74bのフィラー87がアンヒットのとき、第1離間検出圧力および第2離間検出圧力が所定の判定圧力よりも大きいと判定される。ステップS1034において、Yesと判定された場合、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131によって吸引されて、貯留室82内のインクが減少した状態である。この場合、離間移動制御部183は、インクヘッド41が第2位置P2(図7参照)に向かって、所定の距離(例えば、0.1mm)移動するようにヘッド移動機構30を制御する(ステップS1035)。このとき、ヘッド移動機構30に連動したキャッピング機構120によって、インクヘッド41のノズル面45と、キャップ111とはさらに離間する。その後、離間圧力判定部184は、再度、ステップS1030の制御を行う。
一方、ステップS1034において、ダンパー74aおよび74bのフィラー87がアンヒットしている判定された場合、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131によって吸引されずに、貯留室82内のインクの量が変化していない状態である。この場合、Noに進み、次にステップS1036では、位置被記憶部185は、このときのインクヘッド41のノズル面45に対するキャップ111の位置を記憶部161に記憶させる。このとき、位置被記憶部185は、インクヘッド41の主走査方向Yの位置を記憶部161に記憶させてもよい。なお、このときのキャップ111の位置とは、キャップ111にノズル51および52内のインクが吸引されなくなった位置である。このときのキャップ111の位置が空吸引位置となる。
なお、本実施形態では、吸引ポンプの「駆動」には、吸引ポンプが常に駆動している状態はもちろんのこと、吸引ポンプが一時的に駆動していない、すなわち停止している状態が含まれていてもよい。吸引ポンプの「駆動」には、例えばキャップ111〜114がノズル面45から離間する方向に移動している間、少なくとも一部の時間において吸引ポンプを停止させたり、吸引ポンプの吸引力を適宜変化させたりする状態が含まれる。なお、本実施形態では、キャップ111〜114がノズル面45から離間する方向に移動している間、吸引ポンプ131〜134が常に駆動している状態である。このとき、吸引ポンプ131〜134は、最大限の吸引力が維持されるように駆動している。吸引ポンプ131〜134が駆動している間、吸引ポンプ131〜134の吸引力は変化してもよい。
以上、空吸引位置決定処理について説明した。図12は、インクヘッド41〜44に対するクリーニングの手順について示したフローチャートである。次に、インクヘッド41〜44に対するクリーニングの手順について、図12に示したフローチャートに沿って説明する。本実施形態では、インクヘッド41〜44のそれぞれに対するクリーニングの手順は同じである。そのため、ここでは、インクヘッド41に対するクリーニングの手順について説明し、その他のインクヘッド42〜44に対するクリーニングの手順に関する説明は適宜省略する。
図13〜図16は、クリーニングの手順を示す模式図である。図13〜図16では、インクヘッド41に対するクリーニングの手順が示されており、インクヘッド42〜44に対するクリーニングの手順の図示は省略されている。吸引ポンプ131が駆動している状態は下向きの矢印で示されている。以下の説明において、ノズル51から吐出されるインクを第1のインクと適宜称し、ノズル52から吐出されるインクを第2のインクと適宜称する。なお、以下の説明において、単にインクと記載している場合、インクは、第1のインクおよび第2のインクの両方のことを示している。
本実施形態では、図12に示すように、インクヘッド41〜44に対するクリーニングとして、主吸引(ステップS201)、負圧調整(ステップS202)、空吸引(ステップS203)、微量吸引(ステップS204)、負圧調整(ステップS205)、空吸引(ステップS206)、および、ワイピング(ステップS207)に関する各処理が順に実行される。上記各処理は、制御装置160によって実行されるものである。なお、図12においてステップS201〜ステップS206までの各処理では、4つのインクヘッド41〜44に対して同時に処理が行われる。ステップS207の処理は、インクヘッド41〜44に対して順に処理されるものである。なお、ステップS201の主吸引処理が実行される前において、記憶部161には、上述した図11Aおよび図11Bのフローチャートに沿って決定された空吸引位置P50が予め記憶されている。
まず、ステップS201では、主吸引処理が行われる。本実施形態では、第1吸引制御部163は主吸引処理を実行するようにプログラムされている。主吸引処理は、本発明の第1吸引処理の一例である。ここで、主吸引処理とは、図13に示すように、キャップ111をインクヘッド41のノズル面45に装着させ、かつ、インクヘッド41のノズル51、52からインク(詳しくは、第1のインクおよび第2のインク)を吸引する処理である。言い換えると、主吸引処理では、インクヘッド41のノズル51、52内のインクをキャップ111に排出する。ここで、「装着」とは、ノズル面45にキャップ111の端面の全体が接触している状態のことをいう。ここでは、第1吸引制御部163は、まずキャップ111をインクヘッド41のノズル面45に装着させるようにヘッド移動機構30を制御することで、キャッピング機構120を間接的に制御する。詳しくは、第1吸引制御部163は、図8に示すように、インクヘッド41を第1位置P1に移動させるように、ヘッド移動機構30を制御する。このとき、ヘッド移動機構30の制御と連動したキャッピング機構120によって、キャップ111がインクヘッド41のノズル面45に向かって徐々に移動し、第1位置P1において、図13に示すように、インクヘッド41のノズル面45にキャップ111が装着される。このとき、ノズル面45とキャップ111とは完全に接触している状態であり、ノズル面45とキャップ111との間には、密閉空間が形成されている。
このように、インクヘッド41のノズル面45にキャップ111を装着させた後、第1吸引制御部163は、図14に示すように、吸引ポンプ131を駆動させて、上記密閉空間内を減圧させる。ここでは、第1吸引制御部163は、吸引ポンプ131によるインクの吸引量が第1の量となるように吸引ポンプ131の駆動を制御する。この第1の量は、プリンタ100およびインクヘッド41から吐出されるインクの成分によって適宜設定されるものであり、記憶部161に予め設定されている。本実施形態では、第1吸引制御部163による制御によって、インクヘッド41のノズル51、52内のインクがキャップ111に排出される。キャップ111内に排出されたインクは、ノズル51内の第1のインクと、ノズル52内の第2のインクとが混ざり合った混在インクである。
次に、ステップS202では、第1負圧調整処理が行われる。本実施形態では、第1負圧調整制御部165は、第1負圧調整処理を実行するようにプログラムされている。第1負圧調整処理は、主吸引処理の後において、インクヘッド41のノズル面45にキャップ111が装着されている状態で、所定の第1の時間の間、吸引ポンプ131を停止させる処理である。具体的には、第1負圧調整制御部165は、第1吸引制御部163によって駆動されていた吸引ポンプ131を停止させ、この停止状態を維持する。このように、吸引ポンプ131が停止することで、主吸引処理は終了する。
その後、第1負圧調整制御部165は、インクヘッド41にキャップ111を装着させた状態で、所定の第1の時間の間、吸引ポンプ131の停止状態を維持する。この第1の時間は、3秒〜10秒(例えば5秒)であり、プリンタ100およびインクの成分によって適宜設定される時間である。なお、第1の時間は、記憶部161に予め記憶されている。このように、吸引ポンプ131の停止状態を維持することで、インクヘッド41のノズル51、52内の負圧状態が調整(言い換えると、均等化)される。なお、第1負圧調整処理が行われている間、インクヘッド41内は負圧の状態であるため、キャップ111内の混在インクがノズル51、52内に入り込むことがあり得る。吸引ポンプ131の停止状態を維持する時間(ここでは第1の時間)が長いほど、キャップ111内の混在インクがノズル51、52内に入り込み易い。
次に、ステップS103では、第1空吸引処理が行われる。本実施形態では、第1空吸引制御部167は、第1空吸引処理を実行するようにプログラムされている。第1空吸引処理は、ノズル面45とキャップ111の端面との間に隙間が形成される位置にキャップ111を移動させ、かつ、吸引ポンプ131を駆動させることによって、キャップ111内のインク(詳しくは、第1のインクと第2のインクとが混在した混在インク)を吸引する処理である。第1空吸引処理は、第1負圧調整処理の後に、図15に示すように、ノズル面45からキャップ111の端面のうち少なくとも一部を離れさせ、キャップ111内のインクを吸引する処理である。本実施形態では、第1空吸引処理では、上述のように図11Aおよび図11Bのフローチャートに沿って決定された空吸引位置P50にキャップ111を移動させ、空吸引位置P50にキャップ111が位置している状態で、キャップ111内のインクを吸引する処理が行われる。このことによって、第1空吸引処理では、キャップ111内のインクを吸引するが、インクヘッド41のノズル51、52内のインクはキャップ111に排出されない。なお、図15および図16では、説明の便宜上、空吸引位置P50において、ノズル面45からキャップ111の端面が離れている状態が図示されているが、実際には、キャップ111の端面の一部は、ノズル面45に接触している。
第1空吸引処理の具体的な処理として、第1空吸引制御部167は、図15に示すように、まず記憶部161に記憶された空吸引位置P50にキャップ111が配置されるように、ヘッド移動機構30を制御する。このとき、インクヘッド41のノズル面45には、キャップ111内の混在インクが付着することがあり得る。しかしながら、この場合、ノズル面45に付着した混在インクは、キャップ111内の混在インクと繋がっている状態となる。
このように、空吸引位置P50にキャップ111が配置されている状態で、第1空吸引制御部167は、吸引ポンプ131を駆動させる(図16参照)。このことで、キャップ111内のインクが吸引ポンプ131によって吸引される。また、本実施形態では、ノズル面45に混在インクが付着している場合、ノズル面45に付着した混在インクは、キャップ111内のインクと繋がっているため、キャップ111内のインクと共に、吸引ポンプ131によって吸引される。よって、ノズル面45には混在インクが残留し難い。
次に、ステップS204では、微量吸引処理が行われる。本実施形態では、第2吸引制御部171は、微量吸引処理を実行するようにプログラムされている。微量吸引処理は、本発明の第2吸引処理の一例である。微量吸引処理は、第1空吸引処理の後において、キャップ111をノズル面45に装着させ、主吸引処理で吸引されたノズル51、52における吸引量よりも少ない吸引量で、ノズル51、52からインクを吸引する。微量吸引処理は、ステップS202において、ノズル51、52に入り込んだ混在インクをキャップ111に排出するための処理である。微量吸引処理は、吸引ポンプ131が吸引するインクの吸引量が主吸引処理に対して相対的に少ないこと以外は主吸引処理と同じ処理である。上述のように、第1吸引制御部163による主吸引処理のとき、吸引ポンプ131が吸引するインクの吸引量は、第1の量である。
ステップS204では、第2吸引制御部171は、図8に示すように、インクヘッド41を第1位置P1に移動させるように、ヘッド移動機構30を制御する。このことで、キャップ111がインクヘッド41のノズル面45側に移動し、第1位置P1において、図13に示すように、インクヘッド41のノズル面45にキャップ111が装着される。その後、第2吸引制御部171は、吸引ポンプ131によるインクの吸引量が第2の量となるように吸引ポンプ131の駆動を制御する。この第2の量は、上記第1の量よりも少ない。例えば、第2の量は、第1の量の1/2よりも少ない量であり、インクヘッド41のノズル51、52内の混在インクがキャップ111に排出できる程度の量であるとよい。この第2の量は、第1の量と同様に、プリンタ100の種類、および、インクの成分によって適宜設定されるものであり、記憶部161に予め設定されている。本実施形態では、微量吸引処理によって、インクヘッド41のノズル51、52内の少なくとも混在したインクがキャップ111に排出され易い。
次に、ステップS205では、第2負圧調整処理が行われる。本実施形態では、第2負圧調整制御部173は、第2負圧調整処理を実行するようにプログラムされている。ここで、第2負圧調整処理は、微量吸引処理の後において、ノズル面45にキャップ111が装着されている状態で、所定の第2の時間の間、吸引ポンプ131を停止させる処理である。第2負圧調整処理は、吸引ポンプ131の停止状態を維持する時間が異なる以外は、第1負圧調整処理と同じ処理である。上述のように、第1負圧調整処理では、吸引ポンプ131の停止状態を維持する時間は、第1の時間である。
ステップS205では、第2負圧調整制御部173は、吸引ポンプ131を停止させた後、インクヘッド41にキャップ111を装着させた状態で、所定の第2の時間の間、吸引ポンプ131の停止状態を維持する。ここでは、微量吸引処理における吸引ポンプ131のインクの吸引量(ここでは第2の量)が相対的に少ないため、この第2の時間は、上記第1の時間よりも短い時間であってもよい。第2の時間は、第1の時間と同様に、プリンタ100の種類、および、インクの成分などによって適宜設定される時間であり、記憶部161に予め記憶されている。第2負圧調整処理によって、インクヘッド41のノズル51、52内の負圧状態が調整(言い換えると、均等化)される。なお、ステップS205においても、ステップS202と同様に、第2負圧調整処理が行われている間、インクヘッド41内は負圧の状態であるため、キャップ111内の混在インクがノズル51、52内に入り込むことがあり得る。しかしながら、吸引ポンプ131の停止状態を維持する時間が短いため、ステップS202のときと比較して、混在インクがノズル51、52内に入り込み難い。
次に、ステップS206では、第2空吸引処理が行われる。本実施形態では、第2空吸引制御部175は、第2空吸引処理を実行するようにプログラムされている。第2空吸引処理は、第2負圧調整処理の後において、図15に示すように、キャップ111を空吸引位置P50に移動させ、かつ、吸引ポンプ131を駆動させることによって、キャップ111内のインク(詳しくは、第1のインクおよび第2のインクとの混在インク)を吸引する処理である。第2空吸引処理は、第1空吸引処理と同じ処理である。本実施形態では、第2空吸引制御部175は、記憶部161に記憶された空吸引位置P50にキャップ111が配置されるように、ヘッド移動機構30を制御する。このとき、仮にノズル面45に混在インクが付着している場合、ノズル面45に付着した混在インクは、キャップ111内の混在インクと繋がっている状態となる。
このように、空吸引位置P50にキャップ111が配置されている状態で、第1空吸引制御部175は、吸引ポンプ131を駆動させる(図16参照)。このことで、ノズル面45に混在インクが付着している場合、ノズル面45に付着した混在インクは、キャップ111内のインクと繋がっているため、キャップ111内のインクと共に、吸引ポンプ131によって吸引され易い。
次に、ステップS207では、ワイピング処理が行われる。本実施形態では、ワイピング制御部179は、ワイピング処理を実行するようにプログラムされている。ワイピング処理は、第2空吸引処理の後に、ワイパー141によってノズル面45をワイピングする処理である。ここでは、ワイピング制御部179は、ワイピング機構140(図9参照)の上方にインクヘッド41が移動するように、ヘッド移動機構30を制御する。そして、インクヘッド41がワイピング機構140の上方を通過するとき、ワイピング制御部179は、ワイパー141を回転させ、ワイパー141でインクヘッド41のノズル面45をワイピングする。ここでは、インクヘッド41、42、43、44に対して、同時にワイピングが行われずに、インクヘッド41、42、43、44の順でワイピングが行われる。以上のようなステップを実行することで、インクヘッド41〜44に対するクリーニングが終了する。
以上、本実施形態では、プリンタ100は、インクヘッド41〜44と、キャップ111〜114と、キャッピング機構120と、吸引ポンプ131〜134と、ワイパー141と、ワイピング機構140と、制御装置160を備えている。図2に示すように、例えばインクヘッド41は、第1のインクを吐出するノズル51と、第1のインクと異なる第2のインクを吐出するノズル52とを備えたノズル面45を有している。図8に示すように、例えばキャップ111は、インクヘッド41のノズル面45に接触する端面を有し、インクヘッド41のノズル面45に装着可能であって、ノズル51、52を覆うように構成されている。図7および図8に示すように、キャッピング機構120は、キャップ111〜114を支持し、ノズル面45に対してキャップ111〜114を装着させたり、離間させたりする。吸引ポンプ131〜134は、それぞれキャップ111〜114に接続されている。図9に示すように、ワイピング機構140は、ワイパー141を支持し、ワイパー141をノズル面45に接触させたり、ノズル面45から離間させたりする。制御装置160は、主吸引処理と、第1空吸引処理と、微量吸引処理と、第2空吸引処理と、ワイピング処理とが少なくとも実行されるように構成されている。主吸引処理は、図13および図14に示すように、キャップ111をノズル面45に装着させ、かつ、ノズル51、52からインクを吸引する処理である。第1空吸引処理は、主吸引処理の後に、図15および図16に示すように、ノズル面45とキャップ111の端面との間に隙間が形成される位置にキャップ111を移動させ、かつ、吸引ポンプ131を駆動させることによって、キャップ111内の第1のインクおよび第2のインクを吸引する処理である。微量吸引処理は、第1空吸引処理の後に、キャップ111をノズル面45に装着させ、第1吸引処理で吸引されたノズル51、52における吸引量よりも少ない吸引量で、ノズル51、52からインクを吸引する処理である。第2空吸引処理は、キャップ111を予め定められた空吸引位置P50に移動させ、かつ、吸引ポンプ131を駆動させることによって、キャップ111内の第1のインクおよび第2のインクを吸引する処理である。ワイピング処理は、第2空吸引処理の後に、ワイパー141によってノズル面45をワイピングする処理である。ここで、空吸引位置P50は、インクヘッド41のノズル面45とキャップ111の端面との間に隙間が形成され、キャップ111内のインクは吸引され、ノズル51、52からインクが吸引されず、かつ、インクヘッド41のノズル面45に付着した少なくとも一部のインクを除去できる程度に調整された位置である。
本実施形態によれば、図12に示すように、インクヘッド41に対して、微量吸引処理(ステップS204)の後に、第2空吸引処理(ステップS206)およびワイピング処理(ステップS207)が順に行われる。微量吸引処理では、キャップ111に第1のインクおよび第2のインクが排出され、キャップ111内には、第1のインクと第2のインクとが混在した混在インクが溜まっている。このような状態において、第2空吸引処理では、空吸引位置P50にキャップ111を移動させた状態で、キャップ111内の混在インクを吸引している。この第2空吸引処理では、例えばノズル面45に混在インクが付着している場合であっても、ノズル面45に付着した混在インクは、キャップ111内の混在インクと共に吸引され易い。よって、ワイピング処理時において、インクヘッド41のノズル51、52に混在インクが入り込み難い。
本実施形態では、第1空吸引処理では、キャップ111を空吸引位置P50に移動させ、キャップ111内の第1のインクおよび第2のインクを吸引する。主吸引処理では、キャップ111に第1のインクおよび第2のインクが排出され、キャップ111内には、混在インクが溜まる。このような状態において、第1空吸引処理では、空吸引位置P50にキャップ111を移動させた状態で、キャップ111内の混在インクを吸引している。この第1空吸引処理では、第2空吸引処理と同様に、例えばノズル面45に混在インクが付着している場合であっても、ノズル面45に付着した混在インクは、キャップ111内の混在インクと共に吸引され易い。
また、本実施形態のような第1空吸引処理が実行されることで、インクヘッド41の複数のノズル51および複数のノズル52のメニスカスを整える、すなわちメニスカスの形状を同じような形状にすることができる。そのため、次の微量吸引処理において、インクヘッド41のノズル51、52のそれぞれから吐出されるインクの量を安定させることができる。
本実施形態では、制御装置160は、図12に示すように、主吸引処理(ステップS201)の後であり、かつ、第1空吸引処理(ステップS203)の前において、ノズル面45にキャップ111が装着されている状態で、所定の第1の時間の間、吸引ポンプ131を停止させる第1負圧調整処理(ステップS202)が実行されるように構成されている。また、制御装置160は、微量吸引処理(ステップS204)の後であり、かつ、第2空吸引処理(ステップS206)の前において、ノズル面45にキャップ111が装着されている状態で、所定の第2の時間の間、吸引ポンプ131を停止させる第2負圧調整処理(ステップS205)が実行されるように構成されている。このように、主吸引処理の後に第1負圧調整処理、および、微量吸引処理の後に第2負圧調整処理が実行されることで、インクヘッド41のノズル51、52内の負圧状態を調整(言い換えると、均等化)することができる。
本実施形態では、第1負圧調整処理における吸引ポンプ131の停止時間(第1の時間)は、第2負圧調整処理における吸引ポンプ131の停止時間(第2の時間)よりも長い。ここでは、主吸引処理におけるインクの吸引量は、微量吸引処理におけるインクの吸引量よりも多い。インクの吸引量が少ない方が、吸引ポンプ131の停止時間が短い場合であっても、負圧状態を均等化することができる。そのため、第2の時間を第1の時間よりも短くした場合であっても、微量吸引処理後のインクヘッド41のノズル51、52内の負圧状態を均等化し易い。
本実施形態において、ワイピング処理(ステップS207)では、図9に示すように、ワイパー141によってインクヘッド41のノズル面45をワイピングした後に、インクヘッド42のノズル面45をワイピングする。このように、ワイピング処理は、インクヘッド41、42、43、44の順でワイピングが行われる。そのため、例えばインクヘッド42〜44には、ワイピングの待機時間が発生する。この場合、インクヘッド44におけるワイピングの待機時間が最も長い。例えばノズル面45に混在インクが付着している場合、このワイピングの待機時間が長いほど、混在インクがノズル53〜58内に入り込み易くなる。しかしながら、本実施形態では、ワイピング処理の前において、第2空吸引処理が行われる。そのため、ノズル面45の混在インクの少なくとも一部が取り除かれた状態でワイピング処理が行われる。よって、ワイピングの待機時間が長い場合であっても、インクヘッド42〜44のノズル53〜58に混在インクが入り込み難い。
本実施形態では、インクヘッド41〜44に対して、主吸引処理、第1負圧調整処理、第1空吸引処理、微量吸引処理、第2負圧調整処理、および、第2空吸引処理は、同時に行われる。このことによって、インクヘッド41〜44の全体に要するクリーニング時間を短くすることができる。
本実施形態では、制御装置160は、空吸引位置P50を決定する空吸引位置決定処理が実行されるように構成されている。空吸引位置決定処理には、離間移動処理と、離間圧力判定処理と、位置記憶処理とが含まれる。例えば、キャップ111がインクヘッド41のノズル面45に装着されている状態で、吸引ポンプ131を駆動させることで、インクヘッド41内のインクが吸引され、キャップ111内に排出される。このとき、インクヘッド41に係るインク供給路72aおよび72b内の圧力は、インクが排出されたために下がり、所定の検出圧力以下となる。一方、インク供給路72aおよび72b内の圧力が、所定の検出圧力より大きい場合には、インクヘッド41内のインクが吸引されていない状態となる。このように、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131によって排出された場合から、排出されない場合に切り替わったときのノズル面45に対するキャップ111の位置が、空吸引を適切に行うことができる位置であって、ノズル面45に対して第1キャップ111が最も接近している位置である。本実施形態では、インク供給路72aおよび72b内の圧力を検出することで、空吸引を行うことが可能であって、ノズル面45に対して第1キャップ111が最も接近している位置を設定することができる。このような位置を空吸引位置P50として、空吸引位置P50で第1空吸引処理および第2空吸引処理を行うことで、インクヘッド41内に混在インクが入り込むことを抑制することができる。また、ノズル面45に対してキャップ111が比較的に接近した状態であるため、キャップ111内のインクが外部に漏れることを抑制することができる。よって、空吸引を適切に行うことができる。
仮に、空吸引時に混在インクがインクヘッド41〜44内に入り込んだとき、より多くのフラッシングが行われる。このフラッシングによって、吐出されたインクは廃棄されるインクである。本実施形態では、空吸引時に混在インクがインクヘッド41〜44内に入り込むことを抑制することができるため、フラッシングの回数を減らすことができる。よって、フラッシングによって廃棄されるインクの量を減らすことができる。
本実施形態では、離間移動処理と離間圧力判定処理とを含む離間処理(図11BのステップS103)が行われる前に、接近移動処理と接近圧力判定処理とを含む接近処理(図11AのステップS102)が行われている。ここで、接近処理では、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131によって吸引されない場合から、吸引される場合に切り替わったタイミングを判定している。一方、離間処理では、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131によって吸引された場合から、吸引されない場合に切り替わったタイミングを判定している。吸引ポンプ131によって吸引されたインクは、廃棄されるものであり、無駄なインクとなる。そのため、離間処理の処理時間が長い程、廃棄されるインクが多くなり、インクの無駄となる。しかしながら、本実施形態では、離間処理の前に接近処理を行うことで、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131によって吸引されない凡その位置を特定することができる。よって、接近処理の後に離間処理を行うことで、離間処理の処理時間を比較的に短くすることができ、吸引ポンプ131に吸引されるインクの量を軽減することができる。よって、空吸引位置を決定するための制御を行うことで廃棄されるインクの量を軽減することができる。
ダンパー74aおよび74bは、印刷時にインクの供給のタイミングを制御するために用いられるものである。本実施形態では、ダンパー74aおよび74bのフィラーセンサ88を使用して、インク供給路72aおよび72bの圧力を検出することで、空吸引位置P50を決定している。よって、空吸引位置P50を決定するための専用の圧力センサをインク供給路72aおよび72bに設けなくてもよいため、部品点数を減らすことができると共に、製造コストを抑えることができる。
なお、本実施形態には、制御装置160によって実行される主吸引処理、第1負圧調整処理、第1空吸引処理、微量吸引処理、第2負圧調整処理、第2空吸引処理、および、ワイピング処理をコンピュータに実現させるためのクリーニング用のコンピュータプログラムが含まれる。また、本実施形態には、制御装置160によって実行される空吸引位置決定処理(詳しくは、接近移動処理、接近圧力判定処理、離間移動処理、離間圧力判定処理、および、位置記憶処理)をコンピュータに実現させるための空吸引位置決定用のコンピュータプログラムが含まれる。
以上、本実施形態に係るインクジェットプリンタ100について説明した。上記実施形態の第1空吸引処理(ステップS203)では、キャップ111を空吸引位置P50に移動させた後に、キャップ111内の混在インクを吸引していた。しかしながら、第1空吸引処理におけるキャップ111の位置は、空吸引位置P50に限定されない。例えば、第1空吸引処理では、空吸引位置P50よりも下方の予め定められた位置にキャップ111を移動させた後に、キャップ111内の混在インクを吸引してもよい。この場合、第2空吸引処理(ステップS206)において、ノズル面45に付着した混在インクが除去され易い。
上記実施形態では、キャッピング機構120は、ヘッド移動機構30に連動して、キャップ111〜114を昇降させていた。しかしながら、本発明に係るキャッピング機構は、駆動モータを備え、この駆動モータを駆動させることで、キャップ111〜114を昇降させてもよい。また、本発明に係るキャッピング機構は、第1位置P1にインクヘッド41〜44が到達した後に、第1位置P1において、キャップ111〜114を昇降させるように構成されていてもよい。
上記実施形態では、接近処理(図11AのステップS102)の後に、離間処理(図11BのステップS103)が行われていた。しかしながら、この接近処理は、省略することが可能である。この場合、離間処理は、ノズル面45にキャップ111〜114が装着されている状態の位置(例えば、第1位置P1)から開始されるとよい。
上記実施形態では、接近圧力判定処理(ここでは、接近圧力判定部182の制御)では、第1接近検出圧力および第2接近検出圧力のうち少なくとも一方が判定圧力以下であるか否かを判定していた。そして、離間移動処理(ここでは、離間移動制御部183の制御)では、第1接近検出圧力および第2接近検出圧力のうち少なくとも一方が判定圧力以下であるとき、ノズル面45に対してキャップ111〜114が離間する方向にキャップ111〜114を移動させていた。しかしながら、接近圧力判定部182は、第1接近検出圧力および第2接近検出圧力が共に判定圧力以下であるか否かを判定してもよい。この場合、離間移動制御部183は、接近圧力判定部182によって、第1接近検出圧力および第2接近検出圧力が共に判定圧力以下であるとき、ノズル面45に対してキャップ111〜114が離間する方向にキャップ111〜114を移動させる。
上記実施形態では、本発明の第1圧力検出機構および第2圧力検出機構は、ダンパー74aおよび74bのフィラーセンサ88であった。しかしながら、第1圧力検出機構および第2圧力検出機構は、インク供給路72aおよび72bに設けられた、いわゆる圧力センサであってもよい。