以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという。)およびコンピュータプログラムについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
なお、本明細書において「インクジェットプリンタ」とは、従来公知のインクジェット技術による印刷方法、例えば、二値偏向方式あるいは連続偏向方式等の連続方式や、サーマル方式、あるいは圧電素子方式等の各種のオンデマンド方式を利用したプリンタ全般をいう。また、「プリンタ」には、二次元の画像を印刷する、所謂2Dプリンタと、三次元の造形物を造形する、所謂3Dプリンタ(三次元造形装置)と、が包含される。
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。プリンタ10は、2Dプリンタである。なお、以下の説明において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、プリンタ10を正面から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号X、Y、Zは、前後方向、左右方向、上下方向を表すものとする。左右方向Yは、後述するキャリッジ20およびインクヘッド32の移動方向(主走査方向)である。また、前後方向Xは、平面視において主走査方向Yと直交する方向であり、後述する記録媒体5の移動方向(副走査方向)である。ただし、これらの方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではない。
プリンタ10は、A0やA1といった大判サイズの記録媒体5に対して印刷を行う大型プリンタである。本実施形態において、記録媒体5はロール状の媒体であり、所謂、ロール紙である。ただし、記録媒体5の形態はロール状に限定されない。また、記録媒体5の材質は特に限定されない。記録媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類以外に、例えば、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等の樹脂製のシート、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、木材、ガラス、ゴム等の各種の材料からなる板材、織布や不織布等の布帛、皮革、その他の媒体であってもよい。
図1に示すように、プリンタ10は、ケーシング11と、操作パネル12と、プラテン14と、ガイドレール15と、キャリッジ20と、キャリッジ移動機構21と、インク供給システム30(図2参照)と、インク吸引機構70(図2参照)と、制御装置60(図6も参照)と、を備えている。ケーシング11は、プリンタ10の筐体である。ケーシング11は、主走査方向Yに延びている。操作パネル12は、ケーシング11の右端部に設けられている。操作パネル12は、ユーザが印刷に関する操作を行ったり、プリンタ10の状況を確認したりするためのものである。操作パネル12には、操作状態等を表示する表示部と、ユーザによって操作される入力キー等と、が設けられている。
プラテン14は、印刷時に記録媒体5を支持するものである。プラテン14は、ケーシング11に設けられ、主走査方向Yに延びている。プラテン14は、ガイドレール15よりも下方に配置されている。プラテン14には、記録媒体5が載置される。プラテン14の上方には、記録媒体5を上から押さえつけるピンチローラ16aが設けられている。プラテン14におけるピンチローラ16aと対向する位置には、グリッドローラ16bが設けられている。グリッドローラ16bは、フィードモータ16c(図6参照)に連結されている。
フィードモータ16cは、制御装置60と電気的に接続されており、制御装置60によって制御される。グリッドローラ16bは、フィードモータ16cの駆動力を受けて回転可能に構成されている。ピンチローラ16aとグリッドローラ16bとの間に記録媒体5が挟まれた状態でグリッドローラ16bが回転すると、記録媒体5が副走査方向(図1の前後方向)Xに搬送される。ピンチローラ16aとグリッドローラ16bとフィードモータ16cとは、記録媒体5を副走査方向Xに移動させる搬送機構である。ただし、ここで説明する機構は一例に過ぎず、搬送機構の構成は特に限定されない。
ガイドレール15は、ケーシング11に設けられ、主走査方向Yに延びている。ガイドレール15は、プラテン14よりも上方に配置されている。ガイドレール15には、キャリッジ20が摺動可能に係合している。本実施形態において、キャリッジ20には、8つのインクヘッド32が設けられている。8つのインクヘッド32は、主走査方向Yに並んで配置されている。ただし、インクヘッド32の個数や配置は一例に過ぎず、特に限定されない。キャリッジ20は、非印刷時に、ガイドレール15の右端部に設けられたホームポジションHPに待機している。キャリッジ20は、キャリッジ移動機構21によって主走査方向Y(図1の左右方向)に移動可能に構成されている。
キャリッジ移動機構21は、キャリッジ20およびインクヘッド32を主走査方向Yに移動させる機構である。本実施形態において、キャリッジ移動機構21は、ガイドレール15の左右に配置されたプーリ22a、22bと、左右のプーリ22a、22bに巻き掛けられた無端状のベルト23と、右のプーリ22bに接続されたキャリッジモータ24と、を備えている。キャリッジ20は、ベルト23に取り付けられている。キャリッジモータ24は、制御装置60と電気的に接続されており、制御装置60によって制御される。キャリッジモータ24が駆動すると右のプーリ22bが回転し、ベルト23が走行する。これにより、キャリッジ20およびインクヘッド32は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yにスライド移動する。ただし、ここで説明する機構は一例に過ぎず、キャリッジ移動機構21の構成は特に限定されない。
図2は、インク供給システム30およびインク吸引機構70の構成を示す模式図である。図2に示すように、インク供給システム30は、インクタンク31と、インクヘッド32と、インク流路33と、導入バルブ37と、循環バルブ38と、送液ポンプ40と、ダンパー50と、を備えている。本実施形態では、インクヘッド32とダンパー50とが、一体的に設けられている。なお、インク供給システム30には、従来公知のインクジェットプリンタと同様に、必要に応じてさらに種々の装置や部材が設けられていてもよい。
インク供給システム30は、インクタンク31内のインクをインクヘッド32に供給するシステムである。また、インク供給システム30は、インク流路33内で、インクを循環させるシステムである。本実施形態において、インク供給システム30は、インクヘッド32ごとに設けられている。このため、プリンタ10は、複数(8つ)のインク供給システム30を備えている。ただし、インク供給システム30の数は特に限定されない。また、本実施形態において、各インク供給システム30は、それぞれ同じ構成である。そのため、以下では、1つのインク供給システム30の構成について詳述する。ただし、複数のインク供給システム30の構成は、一部または全部が同じでなくてもよい。
インクヘッド32は、記録媒体5または後述するキャップ71に向かって、インクを吐出するものである。インクヘッド32は、プラテン14よりも上方に配置されている。インクヘッド32は、キャリッジ20を介してガイドレール15に摺動可能に係合している。インクヘッド32の下面は、プラテン14(図1参照)と対向している。インクヘッド32の記録媒体5と対向する側の面(本実施形態では下面)には、ノズル32aが形成されている。インクヘッド32は、制御装置60と電気的に接続されており、制御装置60によって制御される。
インクタンク31は、インクを貯留する容器である。インクタンク31は、例えば消耗品であり、中身のインクが無くなると、新しいものと交換されるインクカートリッジである。本実施形態において、インクタンク31の個数は、インクヘッド32の数と同じ、8つである。1つのインクタンク31には、1つのインクヘッド32が接続されている。ただし、インクタンク31の個数は一例に過ぎず、特に限定されない。
このうち6つのインクタンク31には、画像形成用のプロセスカラーインクとして、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、がそれぞれ貯留されている。残り2つのインクタンク31には、画像の下地または裏地を形成するためのホワイトインク、光反射性のメタリック顔料を含んだメタリックインク、がそれぞれ貯留されている。ただし、インクタンク31に貯留されているインクの種類は何ら限定されない。インクは、例えば、顔料等の色材を含まず、画像の表面に光沢を付与するためのクリアインク(グロスインク)であってもよい。また、プロセスカラーインクは、ライトイエローインク、ライトブラックインク等であってもよい。また、プリンタ10は、ホワイトインクおよび/またはメタリックインクが貯留されたインクタンク31を備えていなくてもよい。
インク流路33は、インクタンク31に貯留されたインクを、ダンパー50を介してインクヘッド32に供給する流路である。また、インク流路33内のインクを循環させる流路である。インク流路33は、循環型のインク流路である。インク流路33内でインクを循環させることで、インクに含まれる固形分(例えば顔料)の沈殿を抑制することができる。そのため、粒径が大きい顔料を含んだインク、例えば、ホワイトインクおよび/またはメタリックインクのインク流路を循環型とすることで、効果的に顔料の沈殿を抑制することができる。インク流路33の一端(上流端)は、インクタンク31に接続されている。インク流路33の他端(下流端)は、ダンパー50に接続されている。特に限定されるものではないが、インク流路33は、例えば可撓性のチューブによって構成されている。インク流路33は、導入流路34と、通常流路35と、循環流路36と、を備えている。
導入流路34は、インクタンク31に貯留されたインクを通常流路35に供給する流路である。導入流路34の一端(上流端)はインクタンク31に着脱可能に接続され、導入流路34の他端(下流端)は通常流路35に接続されている。本実施形態において、導入流路34は、第1導入部34aと、第2導入部34bと、を有している。導入流路34の途中部分には、導入バルブ37が設けられている。第1導入部34aの一端(上流端)は、インクタンク31に接続され、第1導入部34aの他端(下流端)は導入バルブ37に接続されている。第2導入部34bは、第1導入部34aよりもインクヘッド32に近い側に配置されている。第2導入部34bの一端(上流端)は導入バルブ37に接続され、第2導入部34bの他端(下流端)は、通常流路35に接続されている。
通常流路35は、インクヘッド32にインクを供給する流路である。通常流路35には、インクヘッド32からインクを吐出する動作を実行するとき、およびインク流路33内のインクを循環させる動作を実行するときに、インクが流れる。通常流路35の一端(上流端)は、導入流路34に接続され、通常流路35の他端(下流端)は、ダンパー50を介してインクヘッド32に接続されている。本実施形態において、通常流路35は、第1通常部35aと、第2通常部35bと、を有している。導入流路34の途中部分には、送液ポンプ40が設けられている。第1通常部35aの一端(上流端)は、導入流路34に接続され、第1通常部35aの他端(下流端)は送液ポンプ40に接続されている。第2通常部35bは、第1通常部35aよりもインクヘッド32に近い側に配置されている。第2通常部35bの一端(上流端)は、送液ポンプ40に接続され、第2通常部35bの他端(下流端)は、ダンパー50を介してインクヘッド32に接続されている。
循環流路36は、インク流路33内のインクを循環させる流路である。循環流路36は、インクをダンパー50から通常流路35へと流す流路である。循環流路36の一端はダンパー50に接続され、循環流路36の他端は導入流路34と通常流路35との接続部分に接続されている。本実施形態において、循環流路36は、第1循環部36aと、第2循環部36bと、を有している。循環流路36の途中部分には、循環バルブ38が設けられている。第1循環部36aの一端は、ダンパー50に接続され、第1循環部36aの他端は、循環バルブ38に接続されている。第2循環部36bは、第1循環部36aよりもインクタンク31に近い側に配置されている。第2循環部36bの一端は、循環バルブ38に接続され、第2循環部36bの他端は、第2導入部34bおよび第1通常部35aに接続されている。
導入バルブ37は、開閉自在であり、導入流路34を開閉するバルブである。導入バルブ37は、導入流路34に設けられている。導入バルブ37は、第1導入部34aと第2導入部34bとの間に設けられている。導入バルブ37は、第1導入部34aと第2導入部34bとの間の部分を開閉する。導入バルブ37が導入流路34を開放することで、インクタンク31に貯留されたインクをインク流路33に流通させることが可能になる。導入バルブ37は、後述する送液ポンプ40よりもインクタンク31に近い部分に配置されている。本実施形態において、導入バルブ37は、電気的に制御されるバルブであり、例えばチョークバルブである。導入バルブ37は、制御装置60と電気的に接続されており、制御装置60によって制御される。ただし、導入バルブ37の種類は特に限定されない。
循環バルブ38は、開閉自在であり、循環流路36を開閉するバルブである。循環バルブ38は、循環流路36に設けられている。循環バルブ38は、第1循環部36aと、第2循環部36bとの間に設けられている。本実施形態において、循環バルブ38は、導入バルブ37と同じ種類である。すなわち、循環バルブ38は、電気的に制御されるバルブであり、例えばチョークバルブである。循環バルブ38は、制御装置60と電気的に接続されており、制御装置60によって制御される。ただし、循環バルブ38の種類は特に限定されない。循環バルブ38は、導入バルブ37と異なる種類であってもよい。
循環バルブ38は、インク流路33内のインクを循環させるとき以外、閉鎖されている。循環バルブ38が循環流路36を開放することで、インク流路33内のインクを循環させることができる。他方、循環バルブ38が循環流路36を閉鎖することで、循環流路36内のインクは通常流路35に流れなくなる。このため、インク流路33内のインクは循環しない。導入バルブ37および循環バルブ38は、インク流路33を、導入流路34からのインクの流れを遮断すると共に通常流路35と循環流路36との間を開放する第1流路状態と、導入流路34と通常流路35との間を開放すると共に循環流路36へのインクの流れを遮断する第2流路状態と、に切り替える弁体の一例である。
送液ポンプ40は、インクタンク31に貯留されたインクをインクヘッド32に向かって送るためのものである。また、インク流路33にインクを循環させているときは、インクの循環を促進するためのものである。送液ポンプ40は、通常流路35に設けられている。送液ポンプ40は、第1通常部35aと第2通常部35bとの間に配置されている。送液ポンプ40は、導入バルブ37よりもインクヘッド32に近い側に配置されている。送液ポンプ40は、制御装置60と電気的に接続されており、制御装置60によって制御される。送液ポンプ40の種類は特に限定されない。送液ポンプ40は、駆動に伴ってインクを脈動させる脈動ポンプであってもよいし、インクを脈動させない無脈動ポンプであってもよい。
図3は、送液ポンプ40の内部を模式的に示す鉛直断面図である。送液ポンプ40は、脈動ポンプである。送液ポンプ40は、チューブポンプである。送液ポンプ40は、フレーム41と、チューブ42と、一対の押圧ローラ43と、回転体44と、モータ45と、を備えている。フレーム41は、円弧状に形成された内壁41aを備えている。
チューブ42は、内部にインクが流通しかつ弾性変形可能に形成されている。チューブ42は、フレーム41内に配置されている。特に限定されるものではないが、チューブ42は、例えば可撓性のチューブによって構成されている。チューブ42は、内壁41aに沿って略U字状に曲げられている。チューブ42の上流端は、第1通常部35aに接続され、チューブ42の下流端は、第2通常部35bに接続されている。チューブ42は、押圧ローラ43によって押圧される。押圧ローラ43によって押圧されることにより、チューブ42は変形する。なお、ここでいう「押圧」はチューブ42の断面がへこむ(変形する)程度に圧力を与えることをいう。したがって、必ずしもチューブ42の断面が完全に閉塞するまで押しつぶす必要はない。
押圧ローラ43は、チューブ42を押圧するためのものである。押圧ローラ43は、回転体44に支持されている。一対の押圧ローラ43は、回転体44を挟んで対向している。押圧ローラ43は、フレーム41内で遊星回転可能に設けられている。押圧ローラ43は、チューブ42を押圧してチューブ42を変形させる押圧状態と、チューブ42を変形させない開放状態と、に切り替える押圧部の一例である。回転体44は、一対の押圧ローラ43を支持し、フレーム41内で押圧ローラ43を移動させるものである。回転体44は、フレーム41内に回転自在に配置されている。回転体44の中央には、駆動軸44sが設けられている。駆動軸44sは、モータ45に接続されている。
モータ45は、回転体44を回転駆動させるためのものである。モータ45は、制御装置60と電気的に接続されており、制御装置60によって制御される。制御装置60は、送液ポンプ40の1回の駆動につき、回転体44を、例えば1/16回転ずつ(22.5°ずつ)回転させるようにモータ45を制御する。押圧ローラ43は、回転体44に連動して回転する。押圧ローラ43は、回転体44が第1の方向(図3の矢印Tの方向。ここでは反時計回り。)に回転することによって、第1の方向に回転する。
モータ45が停止しているとき、一対の押圧ローラ43は、チューブ42と接触しない所定の待機位置に位置している。つまり、送液ポンプ40が停止すると、一対の押圧ローラ43が駆動軸44sの半径方向の内側に移動する。このことにより、チューブ42は開放状態に維持される。一方、制御装置60によって送液ポンプ40が駆動されると、回転体44が回転する。すると、一対の押圧ローラ43が駆動軸44sの半径方向の外側に移動する。この状態でモータ45が駆動されると、駆動軸44sが回転する。駆動軸44sが回転すると、回転体44が1/16回転分、回転する。押圧ローラ43は、この回転体44の回転に従って、チューブ42を押し潰しながら駆動軸44sの周りを遊星回転する。このことにより、チューブ42は、押圧ローラ43によって押圧された押圧状態となる。その結果、チューブ42内に圧力が生じ、チューブ42の「360度/16回転」分に充填されている分のインクが、押圧ローラ43の進行方向(図3の矢印Tの方向)に向かって、送り出される。送液ポンプ40の駆動、言い換えれば、回転体44の回転と停止との切り替えに伴い、インク流路33内ではインクの流量の変動(脈動)が発生する。
ダンパー50は、インクの圧力変動を緩和して、インクヘッド32のノズル32aからのインクの吐出動作を安定させるものである。本実施形態において、ダンパー50は、ダンパー50内の圧力、ひいてはダンパー50に流入するインクの流量を検出可能に構成されている。そして、ダンパー50内の圧力に基づいて、送液ポンプ40が制御される。図2に示すように、ダンパー50は、インクヘッド32の真上に設けられている。ダンパー50は、インクヘッド32に連通されている。
図4、図5は、ダンパー50の水平断面図である。ダンパー50は、ダンパー本体51と、貯留室52と、ダンパー膜53と、検出機構54と、弾性部材55と、を備えている。なお、図4は、貯留室52内の圧力が所定の圧力以下である状態を示しており、図5は、貯留室52内の圧力が所定の圧力よりも大きい状態を示している。ダンパー本体51は中空である。ダンパー本体51の内部には、貯留室52が区画されている。貯留室52には、インクが一時的に貯留される。貯留室52は、一部に形成された開口を有している。貯留室52は、通常流路35、循環流路36、およびインクヘッド32と連通している。
本実施形態において、ダンパー本体51の上部には、流入口56aおよび循環流出口56bが形成されている。流入口56aは、通常流路35の第2通常部35bに接続されている。循環流出口56bは、循環流路36の第1循環部36aに接続されている。また、ダンパー本体51の下部には、流出口56c(図2参照)が形成されている。流出口56cは、インクヘッド32に接続されている。ただし、流入口56a、循環流出口56b、および流出口56cの形成位置は一例であり、特に限定されない。ダンパー50は、例えば印刷等、インクヘッド32からインクを吐出する動作を実行するとき、流入口56aから貯留室52内に流入したインクが、流出口56cを通じてインクヘッド32へ流れるように構成されている。また、ダンパー50は、インク流路33内のインクを循環させる動作を実行するとき、流入口56aから貯留室52内に流入したインクが、循環流出口56bへ流れるように構成されている。
ダンパー膜53は、貯留室52の開口部分を覆うようにダンパー本体51に設けられている。ここでは、ダンパー膜53とダンパー本体51によって囲まれた空間が貯留室52である。特に限定されるものではないが、ダンパー膜53は、例えば可撓性を有する樹脂製のフィルムによって構成されている。ダンパー膜53は、貯留室52の内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で、ダンパー本体51に取り付けられている。ダンパー膜53は、貯留室52の開口部分に近づく方向および遠ざかる方向に変位する。ダンパー膜53は、貯留室52内のインクの貯留量や貯留室52内の圧力に基づいて、貯留室52の内側および外側に変形可能なように設けられている。本実施形態において、ダンパー膜53の撓み変形は、後述する押圧体57を介して間接的にフィラー58に伝達される。
弾性部材55は、ダンパー膜53を貯留室52の外側(図4の右側)に向かう方向に付勢する付勢部材である。弾性部材55は、貯留室52内に配置されている。弾性部材55は、ダンパー膜53に対向する貯留室52の一面に取り付けられている。特に限定されるものではないが、弾性部材55は、例えばコイルバネである。弾性部材55は、圧縮された状態に維持されている。なお、弾性部材55は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
検出機構54は、貯留室52内の圧力を検出する機構である。本実施形態において、検出機構54は、押圧体57と、フィラー58と、フィラーセンサ59と、を備えている。押圧体57は、ダンパー膜53の撓み変形を間接的にフィラー58に伝達するものである。押圧体57は、ダンパー膜53に設けられている。押圧体57は、ダンパー膜53の貯留室52側の面に設けられている。押圧体57は、ダンパー膜53の撓み変形に伴って、貯留室52の内側および外側にスライド移動する。ただし、ダンパー膜53に対する押圧体57の相対的な位置は特に限定されない。押圧体57は、例えばダンパー膜53の貯留室52とは反対側の面に設けられていてもよい。また、押圧体57は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。押圧体57は、弾性部材55に支持されている。
フィラー58は、ダンパー膜53および/または押圧体57と接触可能なように、ダンパー本体51に取り付けられている。本実施形態では、ダンパー本体51に支持バネ51aが設けられおり、フィラー58は、支持バネ51aを介して間接的にダンパー本体51に取り付けられている。特に限定されるものではないが、フィラー58は、ここでは略コの字状に形成されている。詳しくは、フィラー58は、押圧体57の右方において、副走査方向Xに延びた接触部58aと、接触部58aの後端から左方に延びた支持部58bと、接触部58aの前端から左方に延びた被検出部58cと、を有している。接触部58aは、ダンパー膜53または押圧体57に接触する部位である。支持部58bは、支持バネ51aに支持されている。被検出部58cは、フィラーセンサ59によって検出される被検出部位である。
フィラーセンサ59は、フィラー58の被検出部58cの位置を検出することによって、貯留室52内の圧力を検出するセンサである。フィラーセンサ59は、例えば非接触式のセンサである。ただし、フィラーセンサ59は接触式のセンサであってもよい。フィラーセンサ59は、一対の検出部59aを有している。図4に示すように、一対の検出部59aの間にフィラー58の被検出部58cが位置しているとき、フィラーセンサ59は、貯留室52内の圧力が所定の圧力以下であることを検出する。図5に示すように、貯留室52内の圧力が大きくなるにしたがって、ダンパー膜53は貯留室52の外側に撓む。すると、押圧体57によってフィラー58が貯留室52の外側に押される。これにより、フィラー58は、接触部58aと支持部58bとの接続部を軸にして回動する。そして、貯留室52内の圧力が所定の圧力より大きくなると、フィラー58の被検出部58cが、フィラーセンサ59の一対の検出部59aの間から外れた位置に移動する。フィラーセンサ59は、一対の検出部59aの間に被検出部58cが位置していないとき、貯留室52内の圧力が所定の圧力よりも大きいことを検出する。
インク吸引機構70は、ダンパー50の貯留室52内のインクを吸引して、貯留室52内のインクを減少させるためのものである。図1に示すように、インク吸引機構70は、ホームポジションHPに配置されている。図2に示すように、インク吸引機構70は、キャップ71と、キャップ移動機構72と、吸引ポンプ73と、を備えている。ホームポジションHPでは、キャップ71がインクヘッド32の真下に位置している。キャップ71は、インクヘッド32のノズル32aに着脱可能に装着される。キャップ71は、インクヘッド32に装着されたときに、インクヘッド32のノズル32aの周囲を覆うように構成されている。キャップ71は、チューブ等の廃液流路74に接続されている。
キャップ移動機構72は、キャップ71を支持し、インクヘッド32のノズル32aに対して、キャップ71を装着させたり離間させたりするものである。キャップ移動機構72は、インクヘッド32に向かって(上下方向Zに)、キャップ71を昇降させる機構である。キャップ移動機構72は、モータ75(図6参照)に連結されている。モータ75は、制御装置60と電気的に接続されており、制御装置60によって制御される。制御装置60によってモータ75が駆動されると、キャップ71が、ノズル32aを覆うキャッピング位置に移動したり、ノズル32aから離間したりする。ただし、ここで説明する機構は一例に過ぎず、キャップ移動機構72の構成は特に限定されない。
吸引ポンプ73は、インクヘッド32にキャップ71が装着された状態において、ノズル32aからインクを吸引するものである。吸引ポンプ73は、キャップ71の底面に接続されている。吸引ポンプ73は、廃液流路74に設けられている。特に限定されるものではないが、吸引ポンプ73は、例えば真空ポンプである。吸引ポンプ73は、制御装置60と電気的に接続されており、制御装置60によって制御される。インクヘッド32にキャップ71が装着された状態で、制御装置60によって吸引ポンプ73が駆動されると、インクヘッド32のノズル32aからインクが吸い出される。吸い出されたインクは、廃液流路74を介して図示しない廃液タンクに回収される。
制御装置60は、印刷に関する制御、および、インクをインク流路33内で循環させる制御を行う装置である。図1に示すように、本実施形態において、制御装置60はケーシング11の内部に配置されたプリンタ10の専用のコンピュータである。制御装置60は、例えばマイクロコンピュータである。ただし、制御装置60は、ケーシング11の外部に配置され、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続された汎用のパーソナルコンピュータ等であっていてもよい。
制御装置60のハードウェア構成は特に限定されない。制御装置60は、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。
図6は、制御装置60の機能ブロック図である。図6に示すように、制御装置60は、フィードモータ16cと、キャリッジ移動機構21のキャリッジモータ24と、インクヘッド32と、導入バルブ37と、循環バルブ38と、送液ポンプ40のモータ45と、ダンパー50の検出機構54のフィラーセンサ59と、キャップ移動機構72のモータ75と、吸引ポンプ73と、にそれぞれ通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。
制御装置60は、記憶部61と、印刷制御部62と、循環前制御部63と、循環制御部64と、循環時検出部65と、異常判定部66と、異常時制御部67と、を備えている。制御装置60の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば上述した各部は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
なお、以下の説明では、図4に示すように、一対の検出部59aの間に被検出部58cが位置しているとき、すなわち、貯留室52内の圧力が所定の圧力以下のとき、フィラー58が「ヒット状態」であるという。一方、図5に示すように、一対の検出部59aの間に被検出部58cが位置していないとき、すなわち、貯留室52内の圧力が所定の圧力よりも大きいとき、フィラー58が「アンヒット状態」であるという。
印刷制御部62は、図示しない外部機器から受信した印刷データに基づいて、記録媒体5に対して印刷動作を行う制御部である。印刷制御部62は、フィードモータ16cを駆動して、記録媒体5を副走査方向Xに移動させる。印刷制御部62は、キャリッジモータ24を駆動して、キャリッジ20を主走査方向Yに移動させる。図7は、印刷時におけるインク供給システム30の制御状態を示す模式図である。図7において、導入バルブ37の「×」は、閉鎖された状態を示している。
図7に示すように、印刷制御部62は、インク流路33を、導入流路34が開放され、かつ循環流路36へのインクの流れが遮断された第2流路状態とする。すなわち、導入バルブ37を開放させ、かつ、循環バルブ38を閉鎖させるように制御する。図7の矢印A1のように、インクタンク31に貯留されたインクは、導入流路34と通常流路35とダンパー50とを介して、インクヘッド32に供給される。印刷制御部62は、インクヘッド32を駆動して、記録媒体5に向かってノズル32aからインクを吐出させる。
インクヘッド32からインクが吐出されると、貯留室52内のインクが減少する。このことで、貯留室52内の圧力が変化する。印刷制御部62は、フィラーセンサ59によって、貯留室52内の圧力が所定の圧力以下であるか否かを検出する。貯留室52内のインクが所定量以下まで減少すると、フィラーセンサ59は、ヒット状態となる。印刷制御部62は、送液ポンプ40を制御することで、ダンパー50およびインクヘッド32に供給するインクの量を調整する。印刷制御部62は、フィラーセンサ59がヒット状態であることが検出されると、送液ポンプ40を所定の動作回数、駆動させて、所定の送液量のインクをダンパー50に向けて送液する。
送液ポンプ40の動作回数は、記憶部61に予め記憶されている。送液ポンプ40の動作回数は、例えばダンパー50の貯留室52の容積や、送液ポンプ40の種類、印刷時の単位時間あたりのインク消費量、等によって適宜設定される回数である。一例では、ダンパー50の貯留室52に供給される単位時間当たりのインクの量が第1の量となるように、送液ポンプ40を駆動させる。特に限定されるものではないが、例えば本実施形態のように1/16回転ずつ動作可能な送液ポンプ40の場合、印刷時の動作回数は、1/16回転~5/16回転(一例では、3/16回転)であってもよい。
循環前制御部63は、後述する循環制御部64が循環動作を実行する前に、ダンパー50の貯留室52内の圧力を調整する制御部である。循環前制御部63は、循環動作の際中にフィラー58がヒット状態を維持するように、言い換えれば、フィラーセンサ59の一対の検出部59aの間にフィラー58の被検出部58cが位置している状態を維持するように、貯留室52内を所定の調整圧力に調整する。典型的には、貯留室52内を上記調整圧力まで減圧する。図4に示すように、ここでの調整圧力は、送液ポンプ40を駆動させたときにも、フィラー58がヒット状態を維持可能な範囲である。上記調整圧力は、予め定められている。
上記調整圧力は、例えばダンパー50の貯留室52の容積や、送液ポンプ40の種類(脈動の有無や程度)、動作回数や動作間隔等によって適宜設定されている。例えば、送液ポンプ40が脈動ポンプである場合には、脈動の大きさに基づいて、調整圧力を設定する必要がある。例えば、第1の程度の脈動を生じる第1脈動ポンプを使用する場合は、貯留室52を第1調整圧力とし、第1の程度の脈動よりも大きい第2の程度の脈動を生じる第2脈動ポンプを使用する場合は、貯留室52を第1調整圧力よりも減圧された(例えば貯留室52内のインクの量が少ない)第2調整圧力とする。上記調整圧力は、記憶部61に予め記憶されている。
本実施形態において、循環前制御部63は、圧力確認部63aと、キャップ装着部63bと、吸引部63cと、フラッシング部63dと、を備えている。ただし、圧力確認部63aは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。また、吸引部63cおよびフラッシング部63dは同じ機能を有する。このため、循環前制御部63は、吸引部63cおよびフラッシング部63dのうちのいずれか一方のみを備え、他方を備えていなくてもよい。
圧力確認部63aは、フィラーセンサ59を制御して、貯留室52内の圧力を確認する制御部である。詳しくは、圧力確認部63aは、フィラー58がヒット状態か、アンヒット状態かを確認する制御部である。キャップ装着部63bは、インクヘッド32のノズル32aがキャップ71で覆われていない場合に、キャップ71がノズル32aを覆う位置に配置されるように、キャップ移動機構72を制御する制御部である。これにより、インクヘッド32にキャップ71を装着させる。
吸引部63cは、インクヘッド32にキャップ71が装着された状態で、吸引ポンプ73を駆動して、インクヘッド32のノズル32aからインクを吸引する制御部である。これにより、貯留室52内のインク量が減少し、貯留室52内が減圧される。フラッシング部63dは、インクヘッド32にキャップ71が装着された状態で、インクヘッド32のノズル32aからキャップ71に向かってインクを吐出させる制御部である。これにより、貯留室52内のインク量が減少し、貯留室52内が減圧される。吸引部63cおよび/またはフラッシング部63dは、圧力確認部63aでの確認結果に基づいて、貯留室52内の圧力を調製する(典型的には、調整圧力まで減圧する)。一実施形態において、循環前制御部63は、キャップ装着部63bと吸引部63cとを制御する。他の実施形態において、循環前制御部63は、キャップ装着部63bとフラッシング部63dとを制御する。
循環制御部64は、インク流路33内のインクを循環させる循環動作を行う制御部である。循環制御部64は、例えば印刷動作が終了してから所定時間が経過するごとに、定期的に循環動作を行うように構成されていてもよい。この場合、上記所定の時間は、予め記憶部61に記憶されていてもよい。循環動作により、インクがインク流路33内、特には循環流路36内に沈殿することを抑制することができる。図8は、インクの循環動作におけるインク供給システム30の制御状態を示す模式図である。図8において、循環バルブ38の「×」は、閉鎖された状態を示している。
図8に示すように、循環制御部64は、インク流路33を、導入流路34からのインクの流れを遮断すると共に、循環流路36を開放する第1流路状態とする。すなわち、導入バルブ37を閉鎖させ、かつ、循環バルブ38を開放させるように制御する。これにより、導入バルブ37に異常がなければ、導入流路34が閉鎖され、かつ、循環流路36が開放され、通常流路35と循環流路36とが連通された状態となる。循環制御部64は、送液ポンプ40を所定の動作回数、駆動させるように制御する。循環制御部64は、典型的には一定の時間間隔で、送液ポンプ40を駆動させる。循環制御部64は、例えばダンパー50の貯留室52に供給される単位時間当たりのインクの量が第2の量となるように、送液ポンプ40を駆動させる。第2の量は、上記印刷時における第1の量よりも多くてもよい。すなわち、印刷時よりも循環動作の方が、インク流路33を流れるインクの流速が速くてもよい。送液ポンプ40の駆動により、通常流路35内のインクは、図8の矢印A2のように、ダンパー50に流れ、その後、矢印A3のように、循環流路36に流れる。
循環時検出部65は、循環制御部64が循環動作を行っている際中に、フィラーセンサ59を制御して、貯留室52内の圧力を検出する制御部である。詳しくは、循環時検出部65は、循環動作の際中にフィラー58がヒット状態を維持しているか否かを検出する制御部である。言い換えれば、フィラー58がアンヒット状態となったか否かを検出する制御部である。循環時検出部65は、連続的に貯留室52内の圧力を検出するように構成されていてもよいし、例えば循環動作を開始してから所定時間が経過するごとに、定期的に貯留室52内の圧力を検出するように構成されていてもよい。
異常判定部66は、循環時検出部65によってフィラー58がアンヒット状態となったことが検知された場合に、「異常あり」と判定する制御部である。上述の通り、ダンパー50の貯留室52は、循環前制御部63によって減圧され、送液ポンプ40を駆動させたときにもヒット状態を維持できる圧力に予め調整されている。にもかかわらず、循環動作の際中にフィラー58がアンヒット状態になる、言い換えればダンパー50の貯留室52内の圧力が所定の圧力を超えるほど高くなる場合、循環流路36に何らかの異常が発生している可能性が考えられる。
異常判定部66は、1回の循環動作の際中に、例えば、循環時検出部65によってフィラー58が1回、アンヒット状態となったことが検知された場合に、異常ありと判定してもよいし、循環時検出部65によってフィラー58が複数回(例えば2回)、アンヒット状態となったことが検知された場合に、異常ありと判定してもよいし、循環時検出部65によってフィラー58が複数回(例えば2回)、連続してアンヒット状態となったことが検知された場合に、異常ありと判定してもよい。異常判定部66は、循環時検出部65が上記検出を連続的に行う場合、所定の連続時間、続けてアンヒット状態となったことが検知された場合に、異常ありと判定してもよい。
異常時制御部67は、異常判定部66で異常ありと判定された場合に、所定の制御を行う制御部である。上記所定の制御は、典型的には、インクの循環動作を中止する循環中止の制御を包含しうる。異常時制御部67は、送液ポンプ40の駆動を停止するように構成されていてもよい。また、上記所定の制御は、循環中止の制御に加えて、あるいは循環中止の制御にかえて、ユーザに異常を通知する制御等であってもよい。
異常時制御部67は、異常がある旨をユーザに通知してもよいし、循環動作を継続できない、あるいは循環動作を停止した旨をユーザに通知してもよい。なお、ユーザに異常等を通知する具体的な手段は特に限定されない。異常時制御部67は、例えば操作パネル12の表示部(図示せず)に所定のメッセージを表示してもよい。異常時制御部67は、例えばケーシング11に設けられたブザー(図示せず)から音を発するように制御してもよいし、ケーシング11に設けられたランプ(図示せず)を所定のパターンで点灯させるように制御してもよい。これにより、異常等の通知を受けたユーザは、例えば業者に連絡して循環流路36を点検してもらう等の対応をとることができる。
図9は、インク循環の制御手順の一例を示すフローチャートである。この制御手順は、圧力確認処理(ステップS1)と、キャップ装着処理(ステップS2)と、インク吸引処理(ステップS3)と、インク循環処理(ステップS4)と、フィラーの状態検出処理(ステップS5)と、異常判定処理(ステップS6、S8)と、インク循環の終了確認処理(ステップS7)と、インク循環停止処理(ステップS9)と、通知処理(ステップS10)と、を含んでいる。ただし、他の実施形態において、このうちの一部を省略することもできる。また、任意の段階において、他の処理を包含することもできる。
ステップS1では、貯留室52内の圧力を確認する圧力確認処理が実行される。圧力確認部63aは、圧力確認処理を実行するように構成またはプログラムされている。ステップS1では、圧力確認部63aがフィラーセンサ59を制御して、フィラー58がヒット状態かアンヒット状態かを確認する。そして、ステップS2に進む。
ステップS2~S3では、貯留室52内を減圧する減圧処理が実行される。ステップS2では、インクヘッド32のノズル32aがキャップ71で覆われていない場合に、インクヘッド32にキャップ71を装着させるキャップ装着処理が実行される。キャップ装着部63bは、キャップ装着処理を実行するように構成またはプログラムされている。なお、ノズル32aが既にキャップ71で覆われている場合には、ステップS2を省略することができる。
ステップS3では、インクヘッド32のノズル32aからインクを吸引するインク吸引処理が実行される。吸引部63cは、インク吸引処理を実行するように構成またはプログラムされている。ステップS3では、インクヘッド32にキャップ71が装着された状態で、吸引ポンプ73を所定の時間、駆動する。これにより、キャップ71を介してノズル32aから所定量のインクが吸引され、廃液タンクへと排出される。このことで、貯留室52内のインク量が減少する。インク吸引処理は、圧力確認部63aでの確認結果に基づいて行われる。例えば、圧力確認部63aでフィラー58がアンヒット状態であると確認された場合は、まずフィラー58がヒット状態となるまで吸引ポンプ73でインクを吸引する。そこから、吸引ポンプ73の駆動時間を制御して、予備実験などによって予め定められた量のインクを、さらに吸引する。これにより、貯留室52内が所定の調整圧力まで減圧される。そして、ステップS4に進む。
ステップS4では、インク流路33内のインクを循環させるインク循環処理が実行される。循環制御部64は、インク循環処理を実行するように構成またはプログラムされている。循環制御部64は、導入バルブ37を閉鎖させると共に、循環バルブ38を開放させるように制御する。これにより、導入流路34が閉鎖され、かつ、循環流路36が開放され、通常流路35と循環流路36とが連通された状態となる。循環制御部64は、送液ポンプ40を駆動させる。これにより、通常流路35とダンパー50と循環流路36とを、インクが循環する。
ステップS5では、循環制御部64がインクの循環動作を実行して、インク流路33内のインクを循環させている間、定期的にフィラーセンサ59を制御して、フィラー58がアンヒット状態であるか否か(言い換えれば、ヒット状態が維持できていないか)を検出するフィラーの状態検出処理が実行される。循環時検出部65は、フィラーの状態検出処理を実行するように構成またはプログラムされている。そして、ステップS6に進む。
ステップS6、S8では、ステップS5での検出結果に基づいて、異常判定処理が実行される。異常判定部66は、異常判定処理を実行するように構成またはプログラムされている。ステップS6では、ステップS5での検出結果から、フィラー58がアンヒット状態でない(言い換えれば、ヒット状態である)と検出された場合に、ステップS1がNoと判定され、ステップS7に進む。ステップS7では、インクの循環が終了したか、言い換えれば循環制御部64の制御が停止しているか否かを判定する。ステップS7において、インクの循環が継続されている場合には、ステップS7がNoと判定され、ステップS5に戻る。一方、インクの循環が終了している場合には、ステップS7がYesと判定され、制御を終了する。
一方、ステップS6において、ステップS5での検出結果から、フィラー58がアンヒット状態である(言い換えれば、ヒット状態でない)と検出された場合は、ステップS1がYesと判定され、ステップS8に進む。記憶部61には、循環動作の際中に、フィラー58がアンヒット状態となったことが記憶される。ステップS8では、記憶部61を参照して、1回の循環動作の中で、フィラー58のアンヒット状態が2回か否か(1回目か2回目か)を判定する。ステップS8において、アンヒット状態が2回ではない(1回目である)場合には、ステップS8がNoと判定され、ステップS5に戻る。一方、アンヒット状態が2回目である場合には、ステップS8がYesと判定され、ステップS9に進む。
ステップS9では、送液ポンプ40を停止して、インクの循環動作を停止するインク循環停止処理が実行される。異常時制御部67は、インク循環停止処理を実行するように構成またはプログラムされている。ステップS10では、ユーザに異常を通知する通知処理が実行される。異常時制御部67は、通知処理を実行するように構成またはプログラムされている。異常時制御部67は、異常判定部66で異常ありと判定された場合に、例えば操作パネル12の表示部にメッセージを表示して、ユーザに異常を通知する。
以上、本実施形態のプリンタ10によれば、循環時検出部65を制御して、フィラー58が所定の範囲内に位置するように貯留室52内の圧力を調整した後、循環制御部64によって循環動作が開始される。また、循環動作を行っている際中は、フィラー58がアンヒット状態であるか否かが検出される。循環動作の際にフィラー58がアンヒット状態となることは、意図せずして貯留室52内の圧力が高まったことを意味する。フィラー58がアンヒット状態となった場合、循環流路36に異常が発生している可能性が考えられる。よって、プリンタ10によれば、インク循環時に循環流路36に発生している異常を検出することができる。また、インクヘッド32のノズル32aからインクが漏れて、記録媒体5にインクが垂れて汚れたり、プリンタ10の周囲にインクが飛んだりすることを未然防止することができる。
本実施形態では、送液ポンプ40は、インクを脈動させる脈動ポンプであり、循環前制御部63は、送液ポンプ40を駆動させたときにインクに発生する脈動に基づいて、貯留室52内の圧力を調整する。これにより、循環動作の際中にインクに脈動が発生しても、フィラー58がアンヒット状態となることが抑制される。したがって、誤って異常ありと検出される可能性が低減され、インク循環時に循環流路36に発生している異常の検出精度を向上することができる。
本実施形態では、プリンタ10は、インクヘッド32のノズル32aを覆うキャップ71と、制御装置60の循環前制御部63と通信可能に接続され、ノズル32aを覆うキャッピング位置にキャップ71を移動させるキャップ移動機構72と、制御装置60と通信可能に接続され、キャップ71に接続された吸引ポンプ73と、をさらに備える。循環前制御部63は、キャップ71がノズル32aを覆うようにキャップ移動機構72を制御するキャップ装着部63bと、吸引ポンプ73を制御し、キャップ71を介してインクを吸引する吸引部63cと、を備える。これにより、減圧処理の所要時間を短縮して、効率的に貯留室52内を減圧することができる。
本実施形態では、異常判定部66は、フィラー58が2回以上、所定の範囲に位置していない(アンヒット状態である)と判定された場合に、異常ありと判定するように構成されている。これにより、誤って異常ありと検出される可能性が低減され、インク循環時に循環流路36に発生している異常の検出精度を向上することができる。
本実施形態では、異常時制御部67は、異常判定部66によって異常ありと判定された場合に、ユーザに異常を通知するように構成されている。これにより、ユーザは循環流路36に異常が発生していることを知ることができ、例えば業者に連絡して循環流路36を点検してもらう等の対応をとることができる。
本実施形態では、インク流路33に複数の弁体が設けられている。詳しくは、導入流路34に設けられ、導入流路34を開閉する導入バルブ37と、循環流路36に設けられ、循環流路36を開閉する循環バルブ38と、を備える。導入バルブ37を設けることにより、ユーザがインクタンク31を取り外したり交換したりしたときに、インク流路33内に空気が入ることが抑えられる。
本実施形態では、送液ポンプ40は、弾性変形可能なチューブ42と、チューブ42を押圧してチューブ42を変形させる押圧状態と、チューブ42を変形させない開放状態とに切り替える押圧ローラ(押圧部)43と、を備える。このような送液ポンプ40は、例えばダイヤフラム等の他のポンプに比べて、相対的に脈動の程度が大きい。プリンタ10によれば、かかる場合にも、インク循環時に循環流路36に発生している異常を精度よく検出することができる。
また、本実施形態には、コンピュータを、循環前制御部63、循環制御部64、循環時検出部65、異常判定部66、異常時制御部67、として動作させるための異常判定用のコンピュータプログラムが含まれる。なお、このコンピュータプログラムは、例えば記憶装置に記録されていてもよい。言い換えれば、ここに開示される技術によって、上記コンピュータプログラムが記録された、コンピュータが読み取り可能な記憶装置が提供される。上記コンピュータプログラムは、例えば不揮発性メモリに記録されていてもよい。言い換えれば、ここに開示される技術によって、上記プログラムが記録された、コンピュータが読み取り可能な不揮発性メモリが提供される。不揮発性メモリとしては、例えば、半導体記憶装置(例えば、ROM、メモリーカード)、光記憶装置(例えば、DVD、MO、MD、CD、BD)、磁気記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク)等が例示される。また、上記コンピュータプログラムは、上記記憶装置あるいはインターネット等のネットワークを介して、クラウドサーバーに送信することができる。
以上、本実施形態に係るプリンタ10について説明した。しかし、プリンタ10は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を、他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、上記した実施形態と以下の変形態様とを適宜組み合わせることもできる。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
上記実施形態では、各インク供給システム30にそれぞれ循環流路36が設けられ、全てのインク供給システム30が循環型であった。しかし、これには限定されない。一部のインク供給システム30については、インク流路33とは異なり、循環流路36を備えていなくてもよい。例えば、ホワイトインクおよび/またはメタリックインクが流通するインク供給システム30には、循環流路36が設けられ、それ以外のインク(例えば、プロセスカラーインクやクリアインク)が流通するインク供給システム30には、循環流路36が設けられていなくてもよい。
上記実施形態では、インクヘッド32とダンパー50とが一体的に設けられ、インク流路33の下流端がダンパー50に直接接続されていた。しかし、これには限定されない。ダンパー50は、インクヘッド32から離間されて、インク流路33の途中部分に設けられていてもよい。インク流路33は、例えば、一端がダンパー50に接続され、他端がインクヘッド32に接続され、ダンパー50からインクヘッド32に向かってインクを流す流路をさらに有していてもよい。
上記実施形態では、導入流路34に導入バルブ37を備え、循環流路36に循環バルブ38を備え、第1流路状態と第2流路状態とを切り替える弁体が2つ(複数)であった。しかし、これには限定されない。第1流路状態と第2流路状態とを切り替える弁体は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。例えば、導入流路34と通常流路35と循環流路36とが連通する部分に設けられた三方弁であってもよい。
上記実施形態では、送液ポンプ40が脈動ポンプであり、詳しくはチューブポンプであった。しかし、これには限定されない。脈動ポンプは、例えば、ダイヤフラムポンプやシリンジポンプ等であってもよい。脈動ポンプは、例えば、ダイヤフラムポンプやシリンジポンプ等の送液専門のポンプと、チューブ42を押圧状態と開放状態とに切り替える押圧部材(例えば押圧ローラ)と、の組合せで構成されてもよい。
上記実施形態では、送液ポンプ40が1/16回転ずつ動作可能に構成されており、送液ポンプ40の動作回数によって送液量を制御していた。しかし、これには限定されない。送液ポンプ40からの送液量は、例えば、押圧ローラ43の公転角度や、送液ポンプ40の駆動時間等で制御してもよい。
上記実施形態では、ステップS3において、インク吸引処理が実行された。しかし、これには限定されない。ステップS3では、インク吸引処理にかえて、あるいはインク吸引処理に加えて、インクヘッド32のノズル32aからキャップ71にインクを吐出するフラッシング処理が実行されてもよい。フラッシング部63dは、フラッシング処理を実行するように構成またはプログラムされている。
すなわち、プリンタ10は、インクヘッド32のノズル32aを覆うキャップ71と、制御装置60の循環前制御部63と通信可能に接続され、ノズル32aを覆うキャッピング位置にキャップ71を移動させるキャップ移動機構72と、をさらに備える。循環前制御部63は、キャップ71がノズル32aを覆うようにキャップ移動機構72を制御するキャップ装着部63bと、インクヘッド32からキャップ71に向かってインクを吐出するフラッシング部63dと、を備える。これにより、減圧処理の所要時間を短縮して、効率的に貯留室52内を減圧することができる。