JP2011173281A - 液体供給系の異常判定装置及び異常判定方法 - Google Patents

液体供給系の異常判定装置及び異常判定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】液体供給系に異常が発生した場合に早急な修復を可能とし、安定した液体供給を実現する。
【解決手段】液体タンクから液体吐出ヘッドに液体流路を通じて液体を供給する液体供給系の異常判定装置であって、前記液体流路に圧力変化を付与する圧力変化付与手段と、前記液体流路の圧力を計測する第1及び第2の圧力計測手段と、前記圧力変化付与手段による圧力変化の付与前後に前記第1及び第2の圧力計測手段によって計測される計測値に基づき、前記液体供給系の異常判断及び異常箇所の特定を行う異常判定手段と、を備えたことを特徴とする液体供給系の異常判定装置を提供することにより、前記課題を解決する。
【選択図】 図6

Description

本発明は液体供給系の異常判定装置及び異常判定方法に係り、特に、液体タンクから液体吐出ヘッドに液体流路を通じて液体を供給する液体供給系において異常判断及び異常箇所の特定を行う技術に関する。
一般にインクジェット記録装置には、記録ヘッド(インクジェットヘッド)にインクを供給するためのインク供給装置が設けられている。インク供給装置は、主として、インクが収容されるインクタンクと、記録ヘッドとインクタンクとの間を接続するインク供給路と、インク供給路に配設されたポンプとを備え、当該ポンプの駆動に応じて、インクタンクから記録ヘッドにインク供給路を通じてインク供給が行われるようになっている。
ところで、インク供給装置に異常が発生すると正常な印刷ができなくなるというばかりでなく、装置外部にインクが漏れ出してしまうというトラブルが発生する可能性がある。
特に大サイズの印刷物を高速で印刷を行うことが可能な生産性の高いインクジェット記録装置では、記録ヘッドで消費されるのに十分なインクを高流量で供給しなければならず、インク供給装置にトラブルが発生すると、より大量のインクが装置外部に漏れ出してしまう恐れがある。また、異常発生後に早急に修復できるようにするために、異常箇所を速やかに特定できるようにすることが必要とされる。
このため、インクジェット記録装置では、安定な印刷を保証しつつ、インク供給装置の各デバイスの異常を早期に検知して、インク漏れ等のトラブルを未然に防ぎ、さらに異常発生時には早急に修復できるよう異常箇所を速やかに特定できるようにすることが重要な技術的課題の1つとされている。そして、これまでに様々なインク供給に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1には、検知された異常の種類に応じて、記録ヘッドへのインク供給を停止すると共に溶剤を供給して停止する第1の停止制御手段と、記録ヘッドへのインク供給を止めて直ちに停止する第2の停止制御手段とを選択的に機能させることにより、インクが溢れ出すような異常状態が発生してもインクの溢れ出しによる汚損を最小限に防止するようにした技術が記載されている。
特許文献2には、記録ヘッドのノズルに供給されるインク圧力が予め設定されている適正値と一致したときのモータ回転数が、予め設定されている許容範囲外の場合には、インクにノズルを吸送するポンプ、当該ポンプを駆動するモータ、インク供給管に設置したフィルタ、インクタンクからノズルまでの間に配置されているインク供給経路等の各部品に異常があるものとして報知部を動作させると共に、インクジェット記録装置を自動停止させるようにした技術が記載されている。
特許第3203930号公報 特開2000−229422号公報
しかしながら、特許文献1に記載される技術では、異常検知方法の具体的な記載がなく、異常箇所を特定することはできない。
特許文献2に記載される技術についても同様であり、異常原因がセンサ、モータ、流路のリーク、流路の詰まりの何れであるかを判断することができない。
このように従来の技術では、インク供給装置に生じている異常箇所を具体的に特定することはできず、異常発生後、インク供給装置の修復を早急に行うことは困難であるという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、液体供給系に異常が発生した場合に早急な修復を可能とし、安定した液体供給を実現することのできる液体供給系の異常判定装置及び異常判定方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、液体タンクから液体吐出ヘッドに液体流路を通じて液体を供給する液体供給系の異常判定装置であって、前記液体流路に圧力変化を付与する圧力変化付与手段と、前記液体流路の圧力を計測する第1及び第2の圧力計測手段と、前記圧力変化付与手段による圧力変化の付与前後に前記第1及び第2の圧力計測手段によって計測される計測値に基づき、前記液体供給系の異常判断及び異常箇所の特定を行う異常判定手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、圧力変化付与手段によって液体流路に圧力変化が付与され、その前後における液体流路の圧力が第1及び第2の圧力計測手段により計測される。そして、圧力変化付与手段による圧力変化の付与方向と第1及び第2の圧力計測手段による計測値の変化方向とを比較することにより、液体供給系の異常の有無を判断するだけでなく、異常箇所を特定することが可能となる。これにより、液体供給系に異常が発生した場合には早急な修復が可能となり、安定且つ信頼性の高い液体供給を実現することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記異常判定手段は、前記第1及び第2の圧力計測手段のうち、一方の圧力計測手段による計測値が前記圧力変化付与手段による圧力変化の付与方向とは同方向に変化し、且つ、他方の圧力計測手段による計測値が前記圧力変化付与手段による圧力変化の付与方向とは逆方向に変化した場合、もしくは変化しなかった場合には、前記他方の圧力計測手段を異常箇所として特定することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明であって、前記異常判定手段は、前記第1及び第2の圧力計測手段による計測値がいずれも前記圧力変化付与手段による圧力変化の付与方向とは逆方向に変化した場合、もしくは変化しなかった場合には、前記圧力変化付与手段又は前記液体流路を異常箇所として特定することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明であって、前記異常判定手段は、前記圧力変化付与手段による圧力変化が付与されていないとき、前記第1及び第2の圧力計測手段による計測値がいずれも所定範囲を超えて変化した場合には、前記液体流路を異常箇所として特定することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明であって、前記圧力変化付与手段は、前記液体流路に配設された液体ポンプであることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発明であって、前記異常判定手段は、前記液体供給系の本稼働が開始される前に異常判断及び異常箇所の特定を行うことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、液体タンクから液体吐出ヘッドに第1の液体流路を通じて液体を供給すると共に、前記液体吐出ヘッドから前記液体タンクに第2の液体流路を通じて液体を回収する液体供給系の異常判定装置であって、前記第1及び第2の液体流路にそれぞれ圧力変化を付与する圧力変化付与手段と、前記第1の液体流路の圧力を計測する第1の圧力計測手段と、前記第2の液体流路の圧力を計測する第2の圧力計測手段と、前記圧力変化付与手段による圧力変化の付与前後に前記第1及び第2の圧力計測手段によって計測される計測値に基づき、前記液体供給系の異常判断及び異常箇所の特定を行う異常判定手段と、を備えたことを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明であって、前記液体吐出ヘッドを介さずに前記第1の液体流路と前記第2の液体流路との間を直接接続するバイパス流路と、前記バイパス流路を開閉可能に構成された流路開閉手段と、を備え、前記異常判定手段は、前記流路開閉手段によって前記バイパス流路が閉じられている場合の前記第1及び第2の圧力計測手段による計測値と、前記流路開閉手段によって前記バイパス流路が開かれている場合の前記第1及び第2の圧力計測手段による計測値とに基づいて、前記液体供給系の異常判断及び異常箇所の特定を行うこと特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発明であって、前記液体吐出ヘッドは複数のヘッドモジュールからなるラインヘッドであり、前記第1及び第2の液体流路には、ヘッドモジュール毎に設けられた第1及び第2の分岐流路を介して前記複数のヘッドモジュールがそれぞれ接続されることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、液体タンクから液体吐出ヘッドに液体流路を通じて液体を供給する液体供給系の異常判定方法であって、前記液体供給系は、前記液体流路に圧力変化を付与する圧力変化付与手段と、前記液体流路の圧力を計測する第1及び第2の圧力計測手段と、を備えて構成され、前記圧力変化付与手段による圧力変化の付与前後に前記第1及び第2の圧力計測手段によって計測される計測値に基づき、前記液体供給系の異常判断及び異常箇所の特定を行うことを特徴とする。
本発明によれば、圧力変化付与手段によって液体流路に圧力変化が付与され、その前後における液体流路の圧力が第1及び第2の圧力計測手段により計測される。そして、圧力変化付与手段による圧力変化の付与方向と第1及び第2の圧力計測手段による計測値の変化方向とを比較することにより、液体供給系の異常の有無を判断するだけでなく、異常箇所を特定することが可能となる。これにより、液体供給系に異常が発生した場合には早急な修復が可能となり、安定且つ信頼性の高い液体供給を実現することができる。
インクジェット記録装置の概略を示した全体構成図 インクジェット記録装置の印字部周辺を示した要部平面図 ヘッドの構造例を示す平面透視図 インク室ユニットの立体的構成を示す断面図 インクジェット記録装置の制御系を示す要部ブロック図 第1の実施形態に係るインク供給系の構成例を示した模式図 第1の実施形態に係るインク供給系の動作フローの一例を示したフローチャート図 図7に示したフローチャートにおいて異常箇所を特定するために用いられる異常箇所特定判断表を示した図 第2の実施形態に係るインク供給系の構成例を示した模式図 第2の実施形態に係るインク供給系の動作フローの一例を示したフローチャート図 図9に示したフローチャートにおいて異常箇所を特定するために用いられる異常箇所特定判断表を示した図
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
<第1の実施形態>
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態としてインクジェット記録装置の概略を示した全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の記録ヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(不図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。従って、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。印字部12を構成する各ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている(図2参照)。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応したヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出するヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色のヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(不図示)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造について説明する。なお、各ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下では、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
図3(a)は、ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)は、その一部の拡大図である。また、図3(c)は、ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図である。図4は、インク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3(a)、(b)中、IV−IV線に沿う断面図)である。
記録紙面上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図3(a)、(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
紙搬送方向と略直交する方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a)の構成に代えて、図3(c)に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール(ヘッドチップ)50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51とインク流入口54が設けられている。各圧力室52はインク流入口54を介して共通流路55と連通されている。
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される振動板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形して圧力室52内のインクが加圧され、当該圧力室52に連通するノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55からインク流入口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
本例では、ヘッド50に設けられたノズル51から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子58を適用したが、圧力室52内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
かかる構造を有するインク室ユニット53を図3(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、記録紙16の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録紙16の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると記録紙16を幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の記録紙16の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して記録紙16の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
〔制御系の構成〕
図5は、インクジェット記録装置10の制御系を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
メモリ74には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
プログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部90は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示に従って後乾燥部42その他各部のヒータ89を駆動するドライバである。
ポンプドライバ92は、システムコントローラ72からの指示に従ってポンプ94を駆動するドライバである。図5に示すポンプ94には、図6の供給ポンプ104や図9の供給ポンプ208、回収ポンプ210が含まれる。
弁制御部98は、システムコントローラ72の指示に従ってバルブ99を制御する。なお、図5に示したバルブ99には、図6のヘッドバルブ108や図9のヘッドバルブ218、バイパスバルブ220が含まれる。
センサ85は、装置内の各部に設けられる各種センサ類であり、圧力センサ、温度センサ、位置検出センサ等が含まれている。なお、圧力センサには、図6の圧力センサ106A、106Bや図9の圧力センサ216A、216Bが含まれる。センサ85の出力信号はシステムコントローラ72に送られ、システムコントローラ72は該出力信号に基づいて装置各部に対して制御信号を送り、装置各部の制御が行われている。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図5において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられるドットデータに基づいて各色のヘッド50の圧電素子58(図4参照)を駆動するための駆動信号を生成し、圧電素子58に生成した駆動信号を供給する。ヘッドドライバ84にはヘッド50の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいてヘッド50に対する各種補正を行う。
〔インク供給系の構成〕
図6は、インクジェット記録装置10のインク供給系の要部構成を示した模式図である。なお、同図では、説明の便宜上、1色についてのインク供給系のみを示しているが、複数色の場合には同一構成のものが複数備えられる。また、同図に示したヘッド50は、上述したように複数のヘッドモジュール50’(図3(c)参照)から構成されていてもよいのはもちろんのことである。
図6に示すように、インクジェット記録装置10のインク供給系(インク供給装置)は、主として、インクタンク100、供給流路102、供給ポンプ104、第1の圧力センサ106A、第2の圧力センサ106B、及びヘッドバルブ108を備えて構成される。
インクタンク100は、ヘッド50に供給されるインクが収容される基タンク(インク供給源)であり、図1に示したインク貯蔵/装填部14に配置されるタンクに相当するものである。
供給流路102は、インクタンク100とヘッド50との間を接続する液体流路(インク供給路)であり、その流路の途中には供給ポンプ104(本発明の「圧力変化付与手段」に相当)が配設されている。供給ポンプ104は双方向(正転方向及び逆転方向)に駆動可能な液体ポンプであり、図5に示したポンプドライバ92を介してシステムコントローラ72によって駆動制御される。例えば、供給ポンプ104が正転方向に駆動されると、インクタンク100からヘッド50に供給流路102を通じてインクが供給されるようになっている。
供給流路102における供給ポンプ104よりも下流側(ヘッド50側)には、ヘッドバルブ108が設けられている。ヘッドバルブ108は供給流路102を開閉可能に構成された流路開閉手段であり、図5に示したシステムコントローラ72によってその開閉動作が制御される。ヘッドバルブ108が開状態のときにインクタンク100からヘッド50に対してインク供給が可能な状態となり、閉状態のときにインク供給が不可能な状態となる。
ヘッドバルブ108は特に限定されるものではないが、電磁バルブが好ましく用いられる。電磁バルブを用いる態様によれば、他方式のバルブ(例えば電動バルブ等)に比べて、異常検出時に行われる停止処理において供給流路102を瞬時に開状態から閉状態に遷移させることができ、インク漏れ等のトラブルを迅速且つ確実に防止することができる。
供給流路102における供給ポンプ104とヘッドバルブ108との間には、第1及び第2の圧力センサ106A、106Bが設けられている。これらの圧力センサ106A、106Bは供給流路102内の液体圧力(インク圧力)を計測する圧力計測手段であり、各センサによって計測された液体圧力(計測値)は、図5に示したシステムコントローラ72に通知される。システムコントローラ72は、後述するように第1の圧力センサ106A(又は第2の圧力センサ106B)によって計測された液体圧力に基づいて供給ポンプ104の駆動を制御することにより、インクタンク100とヘッド50との間が所望の圧力差となるように圧力制御を行う。
第1の圧力センサ106Aは、インクジェット記録装置10の本稼働時に常時使用される主用の圧力センサである一方で、第2の圧力センサ106Bは、第1の圧力センサ106Aが故障したときに使用される予備用の圧力センサである。後述するインク供給系の異常判断及び異常箇所の特定では、第1及び第2の圧力センサ106A、106Bによる計測値に基づいて異常判断等が行われる。なお、インク供給系の異常判断及び異常箇所の特定は、図5に示したシステムコントローラ72によって行われる。
第1及び第2の圧力センサ106A、106Bによる供給流路102内の液体圧力の計測位置は必ずしも同一位置である必要はない。但し、主用及び予備用の圧力センサのいずれを用いても安定した圧力制御を実現しつつ、後述するインク供給系の異常判断及び異常箇所の特定をより正確に行う観点から、第1及び第2の圧力センサ106A、106Bによる供給流路102内の液体圧力の計測位置は同一位置であることが好ましい。
インクジェット記録装置10によって印刷動作が行われているときのインク供給系のインク供給動作としては、システムコントローラ72は、ヘッドバルブ108を開状態にして、供給ポンプ104の駆動を制御することにより、インクタンク100からヘッド50に供給流路102を通じてインク供給を行う。その際、供給流路102内の液体圧力は、第1の圧力センサ106A(又は第2の圧力センサ106B)によって計測されて、その結果がシステムコントローラ72に通知される。そして、システムコントローラ72は、第1の圧力センサ106A(又は第2の圧力センサ106B)による計測値が所定の基準圧力(目標圧力)に近づくように供給ポンプ104の駆動を制御する。これにより、インク吐出に伴うヘッド50のインク消費量に応じて、インクタンク100からヘッド50にインク供給が行われる。
本実施形態では、インク供給系の本稼働が開始される前に異常判断及び異常箇所の特定を行う処理が行われる。
図7は、第1の実施形態に係るインク供給系の動作フローの一例を示したフローチャート図である。図8は、図7に示したフローチャートにおいて異常箇所を特定するために用いられる異常箇所特定判断表である。以下、図7及び図8を参照しながら、本実施形態における異常判断及び異常箇所の特定を行う処理について説明する。なお、図7に示したフローチャートの各処理は、特に断らない場合は図5に示したシステムコントローラ72によって行われるものとする。
図7に示すように、まず始めに(インク供給系の)電源がオン状態になったか否かを判断する(ステップS10)。電源がオン状態になった場合には、次のステップS12に進む。一方、電源がオフ状態の場合には、電源がオン状態となるまでステップS10の判断を繰り返す。
ステップS10にて電源がオン状態になったと判断されると、インク供給系の初期設定を実行する(ステップS12)。この初期設定には、全バルブ(ヘッドバルブ108を含む)を閉状態にする処理が含まれる。
次に、第1及び第2の圧力センサ106A、106Bによって供給流路102内の液体圧力を計測する(ステップS14)。このとき、第1及び第2の圧力センサ106A、106Bによって計測された液体圧力(送液前圧力)をそれぞれP1、Q1とする。
次に、供給ポンプ104を正転方向に一定時間駆動(CW駆動)する(ステップS16)。これにより、インクタンク100内に収容されるインクが順方向(インクタンク100からヘッド50に向かう方向)に向かって供給流路102内(インクタンク100とヘッドバルブ108の間)に送液される。
このとき、第1及び第2の圧力センサ106A、106Bによって供給流路102の液体圧力を計測可能な必要最小限のインクが供給流路102内に送液されるように供給ポンプ104を駆動する態様が好ましい。例えば、あらかじめ実験等によって各圧力センサ106A、106Bが安定して液体圧力を計測することが可能な供給ポンプ104の駆動条件(回転数や駆動時間等)を求めておき、その駆動条件に従って供給ポンプ104を駆動するようにするとよい。
このようにして一定時間駆動された供給ポンプ104の駆動を停止した後、第1及び第2の圧力センサ106A、106Bによって供給流路102内の液体圧力を計測する(ステップS18)。このとき、第1及び第2の圧力センサ106A、106Bによって計測された液体圧力(送液後圧力)をそれぞれP2、Q2とする。
次に、所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS20)。ここでは、先のステップS18が完了してから所定時間が経過するまで待機状態となる。このとき設定される所定時間は液体圧力の変化からインク漏れが生じている否かを判断するのに必要十分な時間であり、実験又は経験的に求められる値である。所定時間が経過するまでステップS20の判断を繰り返し、所定時間が経過した場合には次のステップS22に進む。
続いて、第1及び第2の圧力センサ106A、106Bによって供給流路102の液体圧力を計測する(ステップS22)。このとき、第1及び第2の圧力センサ106A、106Bによって計測された液体圧力(待機後圧力)をそれぞれP3、Q3とする。
次に、異常判定処理を行う(ステップS24)。ここでは、先のステップS14、S18、S22で計測された液体圧力P1〜P3、Q1〜Q3を用いて、図8に示した異常箇所特定判断表に従ってインク供給系の異常判定及び異常箇所の特定を行う。
具体的には、図8に示すように、以下の条件式(M1)〜(M4)の成否に基づき、異常判定及び異常箇所の特定を行う。なお、同図では、それぞれの条件式が成立する場合は「○」、不成立の場合は「×」で表している。
P2>P1 ・・・(M1)
Q2>Q1 ・・・(M2)
P2≒P3 ・・・(M3)
Q2≒Q3 ・・・(M4)
上記の条件式(M3)及び(M4)において、左辺側の液体圧力と右辺側の液体圧力が略同一であるとみなせる範囲は、供給流路102にインク漏れが発生していないときの液体圧力の変動許容範囲であるものとする。本実施形態では、左辺側の液体圧力の90〜110%(好ましくは95〜105%)の範囲に右辺側の液体圧力があれば、これらの液体圧力は略同一であるものとしている。
ここで、条件式(M1)〜(M4)の成否と異常箇所との対応関係について説明する。
まず、全ての条件式(M1)〜(M4)が成立する場合(図8のPT1)、供給流路102の液体圧力は、供給ポンプ104を駆動する前の送液前圧力よりも駆動した後の送液後圧力の方が高くなっていると共に、送液後圧力と所定時間待機した後の待機後圧力とは略等しくなっている。この場合、供給ポンプ104の駆動に応じた供給流路102の液体圧力の変化は適切であり、インク供給系は正常であると判断される。
これに対し、条件式(M1)が不成立、且つ、条件式(M2)が成立の場合(図8のPT2)、第1の圧力センサ106Aによる圧力計測が不能、或いは、第1の圧力センサ106Aによって計測された液体圧力が異常値を示しているものと推定され、条件式(M3)の成否にかかわらず、第1の圧力センサ106Aが異常箇所として特定される。
上記とは逆に、条件式(M1)が成立、且つ、条件式(M2)が不成立の場合(図8のPT3)、第2の圧力センサ106Bによる圧力計測が不能、或いは、第2の圧力センサ106Bによって計測された液体圧力が異常値を示しているものと推定され、条件式(M4)の成否にかかわらず、第2の圧力センサ106Bが異常箇所として特定される。
また、条件式(M3)及び(M4)が不成立の場合(図8のPT4)、供給ポンプ104の駆動を停止した後の供給流路102の液体圧力が時間の推移とともに低下してしまう場合であり、供給流路102からインク漏れ(リーク)が生じているものと推定され、供給流路102が異常箇所として特定される。
また、条件式(M1)及び(M2)が不成立の場合(図8のPT5)、条件式(M3)及び(M4)の成否にかかわらず、供給ポンプ104が故障しているか、或いは、供給流路102に詰まりが生じているものと推定され、供給ポンプ104又は供給流路102が異常箇所として特定される。
なお、条件式(M1)及び(M2)が不成立の場合には、第1及び第2の圧力センサ106A、106Bが同時に故障している可能性もあるが、その可能性は十分に低いことから、本例では図8に示したように取り扱うことにしている。
このようにして異常判定処理を行った後、その判定結果に従ってインク供給系に異常があるか否かを判断する(ステップS26)。そして、異常がない場合にはステップS28に進み、異常がある場合にはステップS34に進む。
先のステップS26にてインク供給系に異常がないと判断した場合、インク供給系の本稼働を開始する(ステップS28)。このとき、システムコントローラ72は、ヘッドバルブ108を開状態にすると共に、第1の圧力センサ106A(又は第2の圧力センサ106B)によって計測された液体圧力が所定の基準圧力(目標圧力)に近づくように供給ポンプ104の駆動を制御する。これにより、インク吐出動作に伴うヘッド50のインク消費量に応じて、インクタンク100からヘッド50に供給流路102を通じてインク供給が行われる。
続いて、印刷終了したか否かを判断する(ステップS30)。印刷終了していない場合には、印刷終了となるまでステップS30の判断を繰り返す。印刷終了した場合には、インク供給系の停止処理を行う(ステップS32)。
一方、先のステップS26にてインク供給系に異常があると判断した場合には、異常箇所の通知を行う(ステップS34)。異常箇所の通知形態は、インク供給系の異常箇所をユーザが認識可能な形態であれば特に限定されるものではいが、例えば、図5のホストコンピュータ86に付随される表示手段(不図示)に文字、記号、又は図形などを用いて異常箇所を表示する態様が好ましく採用される。そして、異常箇所の通知を行った後、インク供給系の停止処理を行う(ステップS32)。
以上説明したように第1の実施形態によれば、インクタンク100からヘッド50に供給流路102を通じてインク供給が行われるインク供給系において、供給ポンプ104の駆動に応じて供給流路102に圧力変化が付与され、その前後における供給流路102の圧力が第1及び第2の圧力センサ106A、106Bによって計測される。そして、供給ポンプ104によって圧力変化を付与した方向と第1及び第2の圧力センサ106A、106Bによる計測値の変化方向とを比較することにより、インク供給系の異常の有無を判断するだけでなく、異常箇所を特定することが可能となる。これにより、インク供給系に異常が発生した場合には早急な修復が可能となり、安定且つ信頼性の高いインク供給を実現することができる。また、インクジェット記録装置10の安定した印刷も保証することが可能となる。
また、本実施形態のようにインク供給系の異常判断及び異常箇所の特定を行う処理は、インク供給系の本稼働が開始される前に行われる態様が好ましい。インク漏れ等のトラブルを未然に防止することができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
図9は、第2の実施形態に係るインク供給系の要部構成を示した模式図である。なお、同図では、説明の便宜上、1色についてのインク供給系のみを示しているが、複数色の場合には同一構成のものが複数備えられる。
図9に示すように、第2の実施形態で用いられるヘッド150は、複数のヘッドモジュール152(152A、152B、152C)から構成されている。図示は省略するが、ヘッドモジュール152には、第1の実施形態で説明したヘッド50と同様に、ノズル、圧力室、圧電素子、及び共通流路が設けられており、圧電素子の変形に応じて圧力室内のインクが加圧されて、当該圧力室に連通するノズルからインクが吐出される。
また、ヘッドモジュール152には、インク供給系から供給されるインクをヘッド内部(圧力室や共通流路などのインク流路)に導入するための導入口と、当該導入口から導入されたインクのうち、ノズルから吐出されずにヘッド内部を循環したインクをヘッド外部に排出するための排出口とが設けられている。
本実施形態に係るインク供給系(インク供給装置)は、主として、インクタンク200、供給流路202、回収流路204、バイパス流路206、供給ポンプ208、回収ポンプ210、分岐流路212、214、第1の圧力センサ216A、第2の圧力センサ216B、ヘッドバルブ218、及びバイパスバルブ220を備えて構成される。
供給流路202は、各ヘッドモジュール152の供給口にインクを供給するためのメイン流路であり、その一端はインクタンク200に接続される。供給流路202の他端側(インクタンク200側とは反対側)は複数の分岐流路212が分岐接続されており、各分岐流路212の先端部はそれぞれ対応するヘッドモジュール152の供給口に接続される。
供給流路202には、各分岐流路212が分岐接続される位置よりもインクタンク200側に供給ポンプ208が設けられている。供給ポンプ208は双方向(正転方向及び逆転方向)に駆動可能な液体ポンプであり、図5に示したポンプドライバ92を介してシステムコントローラ72によって駆動制御される。例えば、供給ポンプ104を正転方向に駆動すると、インクタンク100から各ヘッドモジュール152に供給流路202及び分岐流路212を通じてインクが供給されるようになる。
回収流路204は、各ヘッドモジュール152の排出口から排出されたインクを回収するためのメイン流路であり、その一端はインクタンク200に接続される。回収流路204の他端側(インクタンク200側とは反対側)は複数の分岐流路214が分岐接続されており、各分岐流路214の先端部はそれぞれ対応するヘッドモジュール152の排出口に接続される。
回収流路204には、各分岐流路214が分岐接続される位置よりもインクタンク200側に回収ポンプ210が設けられている。上述した供給ポンプ208と同様に、回収ポンプ210は双方向(正転方向及び逆転方向)に駆動可能な液体ポンプであり、図5に示したポンプドライバ92を介してシステムコントローラ72によって駆動制御される。例えば、回収ポンプ210を正転方向に駆動すると、各ヘッドモジュール152からインクタンク200に分岐流路214及び回収流路204を通じてインクが回収されるようになる。
各分岐流路212、214には、それぞれヘッドバルブ218が設けられている。ヘッドバルブ218は、それぞれ対応する分岐流路212又は214を開閉可能に構成された流路開閉手段であり、図5に示したシステムコントローラ72によってその開閉動作が制御されるようになっている。システムコントローラ72は、各ヘッドバルブ218を選択的に開閉することによって、各ヘッドモジュール152に対するインク循環を個別に行うことが可能となっている。
第1の圧力センサ216Aは、供給流路202の液体圧力を計測する圧力計測手段であり、供給流路202の他端側(インクタンク200とは反対側)に設けられている。また、第2の圧力センサ216Bは、回収流路204の液体圧力を計測する圧力計測手段であり、回収流路204の他端側(インクタンク200とは反対側)に設けられている。これらの圧力センサ216A、216Bによって計測された液体圧力(計測値)は、図5に示したシステムコントローラ72に通知される。システムコントローラ72は、第1及び第2の圧力センサ216A、216Bによって計測された液体圧力に基づいて、供給ポンプ208及び回収ポンプ210の駆動を制御して、供給流路202及び回収流路204の液体圧力が所定の基準圧力(目標圧力)となるように圧力制御を行う。
ここで、本実施形態で行われる圧力制御について説明を行う。
本実施形態では、システムコントローラ72による圧力制御によって、インクタンク200から供給流路202、分岐流路212を通じてヘッドモジュール152の供給口にインク供給が行われる。ヘッドモジュール152に供給されたインクは、ヘッドモジュール152内部に形成されるインク流路(共通流路、圧力室、ノズル流路など)を循環して、一部のインクはノズル(吐出口)から吐出され、残りのインクは排出口から排出される。ヘッドモジュール152の排出口から排出されたインクは、分岐流路214、回収流路204を通じてインクタンク200に回収されて、インクタンク200からヘッドモジュール152に再び循環されるようになっている。
このようなインク循環を実現するために、システムコントローラ72は、ヘッドモジュール152内のインクに所定の背圧(負圧)が付与されつつ、供給流路202の液体圧力が回収流路204の液体圧力よりも相対的に高くなるように、供給ポンプ208及び回収ポンプ210の駆動を制御している。
ここで、供給ポンプ208を正転方向に駆動させると供給流路202を加圧し、逆転方向に駆動させると供給流路202を減圧する。一方、回収ポンプ210を正転方向に駆動させると回収流路204を減圧し、逆転方向に駆動させると回収流路204を加圧する。
具体的には、供給流路202の液体圧力(基準圧力)をP1、回収流路204の液体圧力(基準圧力)をP2、ヘッドモジュール152の液体圧力(背圧)をP0(但し、P0は大気圧以下とする。)、供給流路202とヘッドモジュール152との高低差に基づく圧力差をΔP1、回収流路204とヘッドモジュール152との高低差に基づく圧力差をΔP2としたとき、システムコントローラ72は、第1及び第2の圧力センサ216A、216Bによって計測される供給流路202及び回収流路204の液体圧力が、次式
P1+ΔP1>P0>P2+ΔP2 ・・・(1)
を満たす液体圧力P1、P2に近づくように供給ポンプ208及び回収ポンプ210の駆動制御を行う。
このよう圧力制御を行うことによって、ヘッドモジュール152のインク吐出動作の有無にかかわらず、ヘッドモジュール152内部(特にノズル近傍)で常にインク循環が行われるようにすることができる。これにより、インク増粘等による吐出不良を防止でき、良好な印刷品質を長時間にわたって維持することができる。
本実施形態のようにインク循環が行われるインク供給系では、ヘッドモジュール152の数が多くなるにつれて、供給流路202や回収流路204の流路長は長くなって圧力損失が大きくなる傾向にある。そのため、インクタンク200側のヘッドモジュール152とその反対側(インクタンク200とは離れた側)のヘッドモジュール152とでは相対的な圧力差が大きくなり、各ヘッドモジュール152のインク吐出にばらつきが生じて濃度ムラなど画像品質に影響を及ぼすことがある。
そこで本実施形態では、各ヘッドモジュール152の相対的な圧力差を解消するためにバイパス流路206が設けられている。このバイパス流路206は供給流路202と回収流路204の他端同士を接続する流路であり、インクタンク200から供給流路202を通じて供給されるインクの一部が、各ヘッドモジュール152を経由することなく、バイパス流路206を介して回収流路204に直接導かれるようになっている。
バイパス流路206には、当該バイパス流路206を開閉可能に構成された流路開閉手段としてのバイパスバルブ220が設けられている。バイパスバルブ220の開閉動作は、図5に示したシステムコントローラ72によって制御される。このようにバイパス流路206にバイパスバルブ220を備えた構成によれば、バイパス流路206を経由したインク循環を選択的に行うことが可能となる。これにより、ヘッドモジュール152の数が少なく、ヘッドモジュール152間の圧力差が小さくインク吐出に影響を及ぼさないような場合には、バイパス流路206を経由したインク循環を停止して、インクタンク200と各ヘッドモジュール152との間のインク循環効率を高めることも可能である。
図10は、第2の実施形態に係るインク供給系の動作フローの一例を示したフローチャート図である。図11は、図10に示したフローチャートにおいて異常箇所を特定するために用いられる異常箇所特定判断表である。以下では、第1の実施形態と重複する処理については簡略的に説明を行うことにする。
図10に示すように、まず始めに(インク供給系の)電源がオン状態であるか否かの判断を行う(ステップS50)。電源がオフ状態の場合にはオン状態となるまでステップS50の判断を繰り返し、電源がオン状態になった場合にはインク供給系の初期設定を実行する(ステップS52)。この初期設定には、ヘッドバルブ218及びバイパスバルブ220を含めた全バルブを閉状態にする処理が含まれる。
次に、バイパスバルブ220を開状態にした後(ステップS54)、第1及び第2の圧力センサ216A、216Bによって供給流路202、回収流路204の液体圧力をそれぞれ計測する(ステップS56)。このとき、第1及び第2の圧力センサ216A、216Bによって計測された液体圧力(送液前圧力)をそれぞれR1、S1とする。
次に、供給ポンプ208を正転方向に一定時間駆動(CW駆動)する(ステップS58)。これにより、インクタンク200内に収容されるインクが順方向(供給流路202からバイパス流路206を経由して回収流路204に向かう方向)に送液される。そして、供給ポンプ208の駆動を停止した後、第1及び第2の圧力センサ216A、216Bによって供給流路202、回収流路204の液体圧力をそれぞれ計測する(ステップS60)。このとき、第1及び第2の圧力センサ216A、216Bによって計測された液体圧力(順方向送液後圧力)をそれぞれR2、S2とする。
次に、回収ポンプ210を逆転方向に一定時間駆動(CCW駆動)する(ステップS62)。これにより、インクタンク200内に収容されるインクが逆方向(回収流路204からバイパス流路206を経由して供給流路202に向かう方向)に送液される。そして、回収ポンプ210の駆動を停止した後、第1及び第2の圧力センサ216A、216Bによって供給流路202、回収流路204の液体圧力をそれぞれ計測する(ステップS64)。このとき、第1及び第2の圧力センサ216A、216Bによって計測された液体圧力(逆方向送液後圧力)をそれぞれR3、S3とする。
次に、所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS66)。ここでは、先のステップS64が完了してから所定時間が経過するまで待機状態となる。このとき設定される所定時間については、第1の実施形態と同様に液体圧力の変化からインク漏れが生じている否かを判断するのに必要十分な時間であり、実験又は経験的に求められる時間である。そして、所定時間が経過した後、第1及び第2の圧力センサ216A、216Bによって供給流路202、回収流路204の液体圧力をそれぞれ計測する(ステップS68)。このとき、第1及び第2の圧力センサ216A、216Bによって計測された液体圧力(待機後圧力)をそれぞれR4、S4とする。
次に、バイパスバルブ220を閉状態にする(ステップS70)。そして、上述したステップS56〜S68と同様の処理を繰り返す(ステップS72〜ステップS84)。
即ち、バイパスバルブ220を閉状態にした後に、供給流路202、回収流路204の液体圧力(送液前圧力)R5、S5を計測する(ステップS72)。続いて、供給ポンプ208を正転方向に一定時間駆動した後(ステップS74)、供給流路202、回収流路204の液体圧力(順方向送液後圧力)R6、S6を計測する(ステップS76)。さらに続いて、回収ポンプ210を逆転方向に一定時間駆動した後(ステップS78)、供給流路202、回収流路204の液体圧力(逆方向送液後圧力)R7、S7を計測する(ステップS80)。そして、所定時間が経過するまで待機した後(ステップS82)、供給流路202、回収流路204の液体圧力(待機後圧力)R8、S8を計測する。なお、これらの液体圧力R5〜R8、S5〜S8は、それぞれ対応する圧力センサ216A、216Bによって計測される。
次に、図11に示した異常箇所特定判断表を用いて、第1の圧力センサ216Aによって計測された液体圧力R1〜R8、及び第2の圧力センサ216Bによって計測された液体圧力S1〜S8に基づいてインク供給系の異常判定及び異常箇所の特定を行う(ステップS86)。
具体的には、図11に示すように、以下の条件式(N1)〜(N12)の成否に基づき、異常判定及び異常箇所の特定を行う。なお、同図では、各条件式が成立する場合は「○」、不成立の場合は「×」で表している。
R2>R1 ・・・(N1)
S2>S1 ・・・(N2)
R3>R2 ・・・(N3)
S3>S2 ・・・(N4)
R3≒R4 ・・・(N5)
S3≒S4 ・・・(N6)
R6>R5 ・・・(N7)
S5≒S6 ・・・(N8)
S7>S6 ・・・(N9)
R6≒R7 ・・・(N10)
R7≒R8 ・・・(N11)
S7≒S8 ・・・(N12)
なお、条件式(N5)、(N6)、(N8)、(N10)、(N11)、及び(N12)において、左辺側の液体圧力と右辺側の液体圧力が略同一であるとみなせる範囲は、供給流路202又は回収流路204にインク漏れが発生していないときの液体圧力の変動許容範囲であるものとする。本実施形態では、左辺側の液体圧力の90〜110%(好ましくは95〜105%)の範囲内に右辺側の液体圧力があれば、これらの液体圧力は略同一であるものとしている。
ここで、条件式(N1)〜(N12)の成否と異常箇所との対応関係について説明する。
まず、全ての条件式(N1)〜(N12)が成立する場合(図11のPT1)、供給ポンプ208及び回収ポンプ210の駆動に応じた供給流路202及び回収流路204の液体圧力の変化は適切であり、インク供給系は正常であると判断される。
これに対し、条件式(N1)及び(N3)が不成立の場合(図11のPT2)、第1の圧力センサ216Aによる圧力計測が不能、或いは、第1の圧力センサ216Aによって計測された液体圧力が異常値を示しているときに起こる現象であり、第1の圧力センサ106Aが異常箇所として特定される。なお、この場合には条件式(N7)も不成立となるので、異常箇所を特定するための判断条件として追加することも可能である。
また、条件式(N2)及び(N4)が不成立の場合(図11のPT3)、第2の圧力センサ216Bによる圧力計測が不能、或いは、第1の圧力センサ216Bによって計測された液体圧力が異常値を示しているときに起こる現象であり、第2の圧力センサ106Bが異常箇所として特定される。なお、この場合には条件式(N9)も不成立となるので、異常箇所を特定するための判断条件として追加することも可能である。
また、条件式(N2)及び(N3)が不成立の場合(図11のPT4)と、条件式(N8)及び(N10)が不成立の場合(図11のPT5)は、バイパスバルブ220の開閉状態が逆になっているときに起こる現象であり、バイパスバルブ220が異常箇所として特定される。
また、条件式(N5)及び(N6)が不成立の場合(図11のPT6、PT7)は、供給流路202又は回収流路204でインク漏れ(リーク)が生じているときに起こる現象である。このような場合には、条件式(N11)及び(N12)の成否を判別することにより、供給流路202及び回収流路204のどちらにインク漏れが生じているかを特定することが可能である。即ち、条件式(N11)が不成立の場合には供給流路202が異常箇所となり、条件式(N12)が不成立の場合には回収流路204が異常箇所となる。
また、条件式(N1)及び(N2)が不成立の場合(図11のPT8)、供給ポンプ208の故障、或いは、供給流路202の詰まりが生じているときに起こる現象であり、供給ポンプ208又は供給流路202が異常箇所として特定される。なお、この場合には条件式(N7)も不成立となるので、異常箇所を特定するための判断条件として追加することも可能である。
また、条件式(N3)及び(N4)が不成立の場合(図11のPT9)、回収ポンプ210の故障、或いは、回収流路204の詰まりが生じているときに起こる現象であり、回収ポンプ210又は回収流路204が異常箇所として特定される。なお、この場合には条件式(N9)も不成立となるので、異常箇所を特定するための判断条件として追加することも可能である。
このようにして異常判定処理を行った後、その判定結果に従ってインク供給系に異常があるか否かを判断する(ステップS88)。そして、異常がない場合にはステップS90に進み、異常がある場合にはステップS96に進む。
先のステップS26にてインク供給系に異常がないと判断した場合、インク供給系の本稼働を開始する(ステップS90)。このとき、システムコントローラ72は、ヘッドバルブ218を開状態にすると共に、第1及び第2の圧力センサ216A、216Bによって計測された液体圧力がそれぞれ所定の基準圧力(目標圧力)に近づくように供給ポンプ208及び回収ポンプ210の駆動を制御することによって、供給流路202及び回収流路204の圧力制御を実行する。これにより、インクタンク200から供給されるインクは、インク吐出動作の有無にかかわらず、ヘッドモジュール152内部のインク流路(特にノズル近傍)を常に循環するようになり、インク増粘等による吐出不良を防止でき、良好な印刷品質を長時間にわたって維持することができる。
続いて、印刷終了したか否かを判断する(ステップS92)。印刷終了していない場合には、印刷終了となるまでステップS92の判断を繰り返す。印刷終了した場合には、インク供給系の停止処理を行う(ステップS94)。
一方、先のステップS88にてインク供給系に異常があると判断した場合には、異常箇所の通知を行う(ステップS96)。異常箇所の通知形態については第1の実施形態と同様である。そして、異常箇所の通知を行った後、インク供給系の停止処理を行う(ステップS94)。
以上説明したように第2の実施形態によれば、インクタンク200と複数のヘッドモジュール152との間でインク循環が行われるインク供給系において、本稼働が開始される前に、供給ポンプ208及び回収ポンプ210の駆動に応じて供給流路202及び回収流路204に圧力変化が付与され、その前後における供給流路202及び回収流路204の圧力が第1及び第2の圧力センサ216A、216Bによって計測される。そして、供給ポンプ208及び回収ポンプ210によって圧力変化を付与した方向と第1及び第2の圧力センサ216A、216Bによる計測値の変化方向とを比較することにより、インク供給系の異常の有無を判断するだけでなく、異常箇所を特定することが可能となる。これにより、インク供給系に異常が発生した場合には早急な修復が可能となり、安定且つ信頼性の高いインク供給を実現することができる。また、インクジェット記録装置10の安定した印刷も保証することが可能となる。
また、第2の実施形態に係るインク供給系では、ヘッドモジュール152内のインクに所定の背圧(負圧)が付与されつつ、供給流路202の液体圧力が回収流路204の液体圧力よりも相対的に高くなるように圧力制御が行われる。これにより、インクタンク200から供給されるインクは、インク吐出動作の有無にかかわらず、ヘッドモジュール152内部のインク流路(特にノズル近傍)を常に循環するようになり、インク増粘等による吐出不良を防止でき、良好な印刷品質を長時間にわたって維持することができる。
なお、上述した各実施形態では、インク供給系の異常判断及び異常箇所を特定するために2つの圧力センサによる計測値が用いられているが、本発明はこれに限らず、3つ以上の圧力センサによる計測値を用いてもよいのはもちろんのことである。例えば、3つの圧力センサによる計測値を用いる場合には、2つの圧力センサが同時に故障している場合にも異常箇所の特定が可能となる。
以上、本発明の液体供給系の異常判定装置及び異常判定方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
10…インクジェット記録装置、50…ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、55…共通流路、56…振動板、58…圧電素子、72…システムコントローラ、100…インクタンク、102…供給流路、104…供給ポンプ、106A…第1の圧力センサ、106B…第2の圧力センサ、108…ヘッドバルブ、150…ヘッド、152…ヘッドモジュール、200…インクタンク、202…供給流路、204…回収流路、206…バイパス流路、208…供給ポンプ、210…回収ポンプ、212…分岐流路、214…分岐流路、216A…第1の圧力センサ、216B…第2の圧力センサ、218…ヘッドバルブ、220…バイパスバルブ

Claims (10)

  1. 液体タンクから液体吐出ヘッドに液体流路を通じて液体を供給する液体供給系の異常判定装置であって、
    前記液体流路に圧力変化を付与する圧力変化付与手段と、
    前記液体流路の圧力を計測する第1及び第2の圧力計測手段と、
    前記圧力変化付与手段による圧力変化の付与前後に前記第1及び第2の圧力計測手段によって計測される計測値に基づき、前記液体供給系の異常判断及び異常箇所の特定を行う異常判定手段と、
    を備えたことを特徴とする液体供給系の異常判定装置。
  2. 前記異常判定手段は、前記第1及び第2の圧力計測手段のうち、一方の圧力計測手段による計測値が前記圧力変化付与手段による圧力変化の付与方向とは同方向に変化し、且つ、他方の圧力計測手段による計測値が前記圧力変化付与手段による圧力変化の付与方向とは逆方向に変化した場合、もしくは変化しなかった場合には、前記他方の圧力計測手段を異常箇所として特定することを特徴とする請求項1に記載の液体供給系の異常判定装置。
  3. 前記異常判定手段は、前記第1及び第2の圧力計測手段による計測値がいずれも前記圧力変化付与手段による圧力変化の付与方向とは逆方向に変化した場合、もしくは変化しなかった場合には、前記圧力変化付与手段又は前記液体流路を異常箇所として特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体供給系の異常判定装置。
  4. 前記異常判定手段は、前記圧力変化付与手段による圧力変化が付与されていないとき、前記第1及び第2の圧力計測手段による計測値がいずれも所定範囲を超えて変化した場合には、前記液体流路を異常箇所として特定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体供給系の異常判定装置。
  5. 前記圧力変化付与手段は、前記液体流路に配設された液体ポンプであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体供給系の異常判定装置。
  6. 前記異常判定手段は、前記液体供給系の本稼働が開始される前に異常判断及び異常箇所の特定を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体供給系の異常判定装置。
  7. 液体タンクから液体吐出ヘッドに第1の液体流路を通じて液体を供給すると共に、前記液体吐出ヘッドから前記液体タンクに第2の液体流路を通じて液体を回収する液体供給系の異常判定装置であって、
    前記第1及び第2の液体流路にそれぞれ圧力変化を付与する圧力変化付与手段と、
    前記第1の液体流路の圧力を計測する第1の圧力計測手段と、
    前記第2の液体流路の圧力を計測する第2の圧力計測手段と、
    前記圧力変化付与手段による圧力変化の付与前後に前記第1及び第2の圧力計測手段によって計測される計測値に基づき、前記液体供給系の異常判断及び異常箇所の特定を行う異常判定手段と、
    を備えたことを特徴とする液体供給系の異常判定装置。
  8. 前記液体吐出ヘッドを介さずに前記第1の液体流路と前記第2の液体流路との間を直接接続するバイパス流路と、
    前記バイパス流路を開閉可能に構成された流路開閉手段と、を備え、
    前記異常判定手段は、前記流路開閉手段によって前記バイパス流路が閉じられている場合の前記第1及び第2の圧力計測手段による計測値と、前記流路開閉手段によって前記バイパス流路が開かれている場合の前記第1及び第2の圧力計測手段による計測値とに基づいて、前記液体供給系の異常判断及び異常箇所の特定を行うこと特徴とする請求項7に記載の液体供給系の異常判定装置。
  9. 前記液体吐出ヘッドは複数のヘッドモジュールからなるラインヘッドであり、
    前記第1及び第2の液体流路には、ヘッドモジュール毎に設けられた第1及び第2の分岐流路を介して前記複数のヘッドモジュールがそれぞれ接続されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液体供給系の異常判定装置。
  10. 液体タンクから液体吐出ヘッドに液体流路を通じて液体を供給する液体供給系の異常判定方法であって、
    前記液体供給系は、前記液体流路に圧力変化を付与する圧力変化付与手段と、前記液体流路の圧力を計測する第1及び第2の圧力計測手段と、を備えて構成され、
    前記圧力変化付与手段による圧力変化の付与前後に前記第1及び第2の圧力計測手段によって計測される計測値に基づき、前記液体供給系の異常判断及び異常箇所の特定を行うことを特徴とする液体供給系の異常判定方法。
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