以下、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。各図において共通の構成には、同一の符号を付している。
図1は、本発明の第1実施形態としての枠体構造1aを示す正面図である。枠体構造1aは、建築物等の構造物の一部として、例えば、屋内空間と屋外空間とを区画する外壁、屋内空間同士を区画する仕切壁、を構成する。図1に示すように、枠体構造1aは、枠体10と、第1鉛直ブレース90aと、第2鉛直ブレース90bと、斜材30aと、を備える。枠体構造1aは、例えば、第1鉛直ブレース90a及び第2鉛直ブレース90bが取り付けられた既存の枠体10に、斜材30aが追加的に取り付けられて形成される。
図1に示すように、枠体10は、上部横架材11と、下部横架材12と、第1垂直材21と、第2垂直材22と、で形成されている。
上部横架材11は、枠体10の上部に位置し、水平方向に延在している。本実施形態の上部横架材11は、構造物の鉄骨造の軸組架構を構成する梁である。上部横架材11は、水平方向の一端(図1の左端)で、第1垂直材21に固定されている。本実施形態では、上部横架材11の水平方向の一端には、鉛直方向の上下両側に上部横架材11よりも突出したフランジ13がボルト等の締結部材で固定されている。そして、上部横架材11は、フランジ13を第1垂直材21の側面に当接させた状態で、ボルト等の締結部材でフランジ13を第1垂直材21に固定することにより、第1垂直材21に固定されている。このように、フランジ13は、上部横架材11と第1垂直材21とを接合する。フランジ13の下端部には、後述する第1鉛直ブレース90aの取付部としての貫通孔14が形成されている。
下部横架材12は、枠体10の下部に位置し、水平方向に延在している。下部横架材12は、本実施形態では構造物の基礎梁である。ただし、本実施形態の上部横架材11と同様、鉄骨造の軸組架構を構成する梁としてもよい。
第1垂直材21は、枠体10の一対の側部のうちの一方(図1の左側の側部)に位置し、鉛直方向に延在している。第1垂直材21は、本実施形態では構造物の鉄骨造の軸組架構を構成する柱である。第1垂直材21は、下端で下部横架材12に固定されている。本実施形態では、第1垂直材21の下端部に、後述する第2鉛直ブレース90bの取付部としての貫通孔23が形成されている。
第2垂直材22は、枠体10の一対の側部のうちの他方(図1の右側の側部)に位置し、鉛直方向に延在している。第2垂直材22は、本実施形態では構造物の鉄骨造の軸組架構を構成する柱である。第2垂直材22は、上端で上部横架材11に固定されている。第2垂直材22は、下端で下部横架材12に固定されている。本実施形態では、第2垂直材22の上端部に、後述する第2鉛直ブレース90bの取付部としての貫通孔24が形成されている。また、本実施形態では、第2垂直材22の下端部に、後述する第1鉛直ブレース90aの取付部としての貫通孔25が形成されている。
第1鉛直ブレース90aは、一端が上部横架材11と第1垂直材21との接合部付近に、他端が下部横架材12と第2垂直材22との接合部付近に、それぞれ取り付けられている。換言すれば、第1鉛直ブレース90aは、枠体10の一方の略対角線上に延在するように、枠体10に取り付けられている。第1鉛直ブレース90aは、水平方向に沿う引張力によって、枠体10の下部横架材12に対する上部横架材11の一方側(図1では左側)への層間変位を抑制する。本実施形態では、第1鉛直ブレース90aは、フランジ13の貫通孔14と、第2垂直材22の貫通孔25と、にそれぞれボルト等の軸部材によりピン接合で取り付けられている。第1鉛直ブレース90aが枠体10に取り付けられる態様は、ピン接合には限定されず、例えば溶接等による剛接合であってもよい。
第2鉛直ブレース90bは、一端が上部横架材11と第2垂直材22との接合部付近に、他端が下部横架材12と第1垂直材21との接合部付近に、それぞれ取り付けられている。換言すれば、第2鉛直ブレース90bは、枠体10の他方の略対角線上に延在するように、枠体10に取り付けられている。第2鉛直ブレース90bは、水平方向に沿う引張力によって、枠体10の下部横架材12に対する上部横架材11の他方側(図1では右側)への層間変位を抑制する。本実施形態では、第2鉛直ブレース90bは、第2垂直材22の貫通孔24と、第1垂直材21の貫通孔23と、にそれぞれボルト等の軸部材によりピン接合で取り付けられている。第2鉛直ブレース90bが枠体10に取り付けられる態様は、ピン接合には限定されず、例えば溶接等による剛接合であってもよい。
斜材30aは、制振部31と、延設部32と、回動拘束部33と、第1被取付部34と、第2被取付部35と、を備える長尺体である。斜材30aは、枠体10に囲まれる領域に配置されている。また、斜材30aは、第1被取付部34及び第2被取付部35により、枠体10に対して取り付けられている。本実施形態の斜材30aは、図1に示す正面視で第1鉛直ブレース90aと重なる位置で、枠体10の一方の略対角線上に延在するように、枠体10に取り付けられている。
第1被取付部34は、斜材30aの一端に位置する。図2は、斜材30aの第1被取付部34が、枠体10の取付部としての貫通孔14に取り付けられている様子を示す、背面側から見た斜視図である。図2に示すように、本実施形態の第1被取付部34は、貫通孔であり、第1鉛直ブレース90aと共に、枠体10の取付部としての貫通孔14に、軸部材としてのボルト18が挿通されることによりピン接合で取り付けられている。具体的に、第1鉛直ブレース90aが貫通孔14の正面側に取り付けられているのに対して、斜材30aの第1被取付部34は、貫通孔14の背面側に取り付けられている。斜材30aが枠体10に取り付けられる態様は、ピン接合には限定されず、例えば溶接等による剛接合であってもよい。
図1に示すように、第2被取付部35は、斜材30aの他端に位置する。本実施形態の第2被取付部35は、図2に示す第1被取付部34と同様に貫通孔であり、第1鉛直ブレース90aと共に、枠体10の取付部としての貫通孔25に、軸部材としてのボルト等が挿通されることによりピン接合で取り付けられている。具体的に、第1鉛直ブレース90aが貫通孔25の正面側に取り付けられているのに対して、斜材30aの第2被取付部35は、貫通孔25の背面側に取り付けられている。斜材30aが枠体10に取り付けられる態様は、ピン接合には限定されず、例えば溶接等による剛接合であってもよい。
このように、本実施形態の枠体構造1aでは、第1鉛直ブレース90aを取り付けるために枠体10に形成された取付部としての貫通孔14及び貫通孔25を利用して、斜材30aを取り付けることができる。従って、斜材30aを取り付けるために垂直材や横架材を新たに設置しなくても、既存の枠体10を利用して斜材30aを設置できる。
斜材30aの制振部31は、外力に応じて斜材30aの延在方向Aに伸縮しながらエネルギーを吸収する。制振部31は、延在方向Aに所定の最大長まで伸長可能であり、かつ、延在方向Aに所定の最小長まで収縮可能である。換言すれば、制振部31は、延在方向Aに沿って、所定の伸縮可能範囲を有する。本実施形態では、制振部31は、第1被取付部34と延設部32との間に位置する。
延設部32は、制振部31から斜材30aの延在方向Aに延設されている。延設部32が延在方向Aに沿って伸縮するのに必要な外力は、制振部31が延在方向Aに沿って最大長まで伸長及び最小長まで収縮するのに必要な外力よりも、はるかに大きい。つまり、斜材30aでは、延在方向Aの外力が入力されると、延設部32よりも制振部31が延在方向Aに優先的に伸縮する。従って、延設部32の延在方向Aに沿う全長は、所定の一定長であるとみなせる。延設部32の延在方向Aに沿う全長は、斜材30aの取り付け位置に応じて選択できる。すなわち、斜材30aは、枠体10が変形していない正常な状態で、制振部31が更に延在方向Aに伸長及び収縮できるように、延設部32の延在方向Aに沿う全長を選択できる。これにより、枠体10が地震等の外力によって振動する場合に、制振部31が延在方向Aに伸縮しながら有効にエネルギーを吸収し、枠体10の振動を抑制できる。
回動拘束部33は、制振部31が延設部32の延在方向Bに直交する方向への回動を拘束する。斜材30aは、回動拘束部33を備えることにより、延在方向Aに沿う外力、特に延在方向Aに圧縮する外力が加わった場合に、制振部31が延在方向Bに直交する方向に回動して制振部31の伸縮方向が延在方向Aからずれることが規制される。従って、斜材30aは、延在方向Aに圧縮する外力が加わっても、外力によるエネルギーを有効に吸収し、枠体10の振動を抑制できる。回動拘束部33の機構の詳細については後述する。
図1に示すように、本実施形態の斜材30aの角度αは、約56°である。
以下、図3を参照して、斜材30aの詳細について説明する。図3は、斜材30aの一部を拡大して示す斜視図である。図3に示すように、本実施形態の斜材30aは、制振装置40と、筒状部材50と、板状部材55と、を備える。
制振装置40は、外力に応じて延在方向Aに伸縮しながらエネルギーを吸収する装置である。すなわち、本実施形態の制振部31は、制振装置40により構成されている。制振装置40としては、既存の制振装置を用いることができ、例えば、オイルダンパー、摩擦ダンパー、粘弾性ダンパー等で構成される。制振装置40は、長寿命化の観点から、塑性変形を伴い得る粘弾性ダンパーよりも、塑性変形を伴わないオイルダンパー又は摩擦ダンパーで構成することが好ましい。
本実施形態の制振装置40は、オイルダンパーで構成される。詳細には、制振装置40は、一端に位置するピストン41と、他端に位置するシリンダー43と、を備える。シリンダー43の内部にはオイル等の流体が充填されている。ピストン41は、シリンダー43の内部に挿入され、シリンダー43に対して延在方向Aに沿って移動可能である。制振装置40は、外力に応じてピストン41をシリンダー43に対して延在方向Aに沿って移動させることで、シリンダー43内部の流体が移動して、その際の抵抗力で、外力によるエネルギーを吸収する。ピストン41がシリンダー43に対して延在方向Aに沿って移動可能な範囲は、上述した制振部31の所定の伸縮可能範囲である。本実施形態の制振装置40は、斜材30aの一端に位置する。制振装置40の一端部、すなわちピストン41の一端部には、第1被取付部34としての貫通孔42が形成されている。
制振装置40は、シリンダー43の他端側が筒状部材50の内部に挿入されている。すなわち、制振装置40は、筒状部材50の内部に挿入された挿入部45を備える。換言すれば、筒状部材50は、制振装置40が挿入され制振装置40の周囲を覆う嵌合部52を備える。つまり、筒状部材50の嵌合部52内に、制振装置40の挿入部45が位置している。挿入部45は、筒状部材50に取り付けられている。詳細には、本実施形態のシリンダー43は、他端に、延在方向Aに直交する方向に沿って貫通孔44が形成された板状部46を備えている。また、筒状部材50には、延在方向Aに直交する方向に沿って、貫通孔51a及び貫通孔51bが形成されている。貫通孔51aと、貫通孔44と、貫通孔51bと、にボルト38等の軸部材を通過させ、ナット39等で締結することで、挿入部45が筒状部材50に取り付けられている。挿入部45を含むシリンダー43の外径は、例えば42mmである。
筒状部材50は、上述した嵌合部52と連続して延在方向Aに延在する筒本体部59を備えている。つまり、本実施形態の延設部32は、筒本体部59により構成されている。また、上述したように、筒状部材50の嵌合部52は、制振装置40の挿入部45の周囲を覆っている。従って、筒状部材50の嵌合部52は、制振装置40の挿入部45と当接することで、制振装置40が延設部32としての筒本体部59の延在方向Bに直交する方向に、例えば筒状部材50に取り付けられた貫通孔44を中心として、回動することを拘束する。すなわち、本実施形態の回動拘束部33は、筒状部材50の嵌合部52により構成されている。制振装置40が筒状部材50の延在方向Bに直交する方向に回動することを拘束する観点から、挿入部45の延在方向Aに沿う長さは、制振装置40の延在方向Aに沿う全長の、50%以上であることが好ましい。筒状部材50は、例えばSTK鋼管で構成される。筒状部材50の内径は、例えば42.2mmである。筒状部材50の厚みは、例えば3.2mmである。
板状部材55の一端は、筒状部材50の他端に固定されている。板状部材55の他端部には、第2被取付部35としての貫通孔56が形成されている。
上記の通り、本実施形態の枠体構造1aは、枠体10に斜材30aを取り付けるという簡易な構成で、枠体10の振動を抑制できる。
図4は、斜材30aの第1の変形例としての斜材30a1の一部を示す斜視図である。図4に示すように、斜材30a1は、制振装置40と、二又板状部材50aと、を備える。斜材30a1の制振装置40及び二又板状部材50aは互いに接続されているが、図4では説明の便宜上、互いに分離した状態で示している。
斜材30a1が備える制振装置40は、図3に示した斜材30aが備える制振装置40と同一であるので、説明を省略する。二又板状部材50aは、延在方向Aの一端に位置するコの字状部53と、コの字状部53と連続して延在方向Aの他端側に延在する板状部54と、を備える。コの字状部53は、延在方向Aに平行な一対の板状部57と、一対の板状部57を他端側で連結する連結部58と、を備える。コの字状部53の一対の板状部57それぞれには、延在方向Aに直交する方向に沿って、貫通孔51a1及び貫通孔51b1が形成されている。
制振装置40のシリンダー43の他端に位置する板状部46の一部を、一対の板状部57で区画される空間に挿入した状態で、貫通孔51a1と、貫通孔44と、貫通孔51b1と、にボルト等を通過させ、ナット等の締結部材で締結することで、制振装置40が二又板状部材50aに取り付けられている。このとき、二又板状部材50aのうち、コの字状部53の連結部58、及び板状部54は、制振装置40のシリンダー43から延在方向Aに延設されている。つまり、本実施形態の延設部32は、コの字状部53の連結部58、及び板状部54により構成されている。
一対の板状部57は、板状部46が、延設部32としての連結部58及び板状部54の延在方向Bに直交する方向のうちの第1方向(図4の奥行方向)に回動することを拘束する。また、連結部58は、板状部46が、延在方向B及び上記第1方向のいずれにも直交する第2方向(図4の上下方向)に回動することを拘束する。さらに、シリンダー43と二又板状部材50aとを強固に締結することによっても、板状部46が第2方向に回動することを拘束可能である。従って、本実施形態の回動拘束部33は、二又板状部材50aのうち、コの字状部53の一対の板状部57及び連結部58、並びに、シリンダー43と二又板状部材50aとを締結する締結部材により、構成されている。
図5は、斜材30aの第2の変形例としての斜材30a2の一部を示す斜視図である。図5に示すように、斜材30a2は、制振装置40’と、板状部材50bと、を備える。
制振装置40’は、シリンダー43(図3参照)に代えてシリンダー43’を備えること以外は、図3に示した制振装置40と同一である。シリンダー43’は、他端に、板状部46(図3参照)に代えて板状部46’を備えること以外は、図3に示したシリンダー43と同一である。板状部46’は、板状部46よりも延在方向Aに長く、延在方向Aに沿って異なる位置に、延在方向Aと直交する方向に沿って2つの貫通孔44a及び44bが形成されている。
板状部材50bは、延在方向Aに延在している。板状部材50bは、延在方向Aの一端側の延在方向Aに沿って異なる位置に、延在方向Aと直交する方向に沿って2つの貫通孔51a2及び51b2が形成されている。2つの貫通孔44a及び44b同士の間隔と、2つの貫通孔51a2及び51b2同士の間隔は、略等しい。
制振装置40’の板状部46’と、板状部材50bとは、貫通孔44a及び貫通孔51a2と、貫通孔44b及び貫通孔51b2と、がそれぞれ延在方向Aに直交する方向に並ぶように配置された状態で、それぞれボルト及びナット等の締結部材で締結することで、互いに取り付けられている。このとき、板状部材50bは、制振装置40’の一方の面を覆う嵌合部52’を備える。また、板状部材50bは、嵌合部52’と連続して延在方向Aに延在する板本体部59’を備える。つまり、本実施形態の延設部32は、板本体部59’により構成されている。
制振装置40’が、延設部32としての板本体部59’の延在方向Bに直交する方向に回動しようとする場合、板状部材50bの嵌合部52’、貫通孔44aと貫通孔51a2とを締結する締結部材、及び、貫通孔44bと貫通孔51b2とを締結する締結部材によって、制振装置40’の回動が拘束される。詳細には、制振装置40’が延在方向Bに直交する方向のうちの第1方向(図5の奥行方向)に回動しようとする場合、制振装置40’の板状部46’を第1方向に挟み込んでいる嵌合部52’及び締結部材によって、制振装置40’の回動が拘束される。また、制振装置40’が延在方向Bに直交する方向のうちの第2方向(図5の上下方向)に回動しようとする場合、延在方向Bの異なる位置で制振装置40’の板状部46’を固定している2つの締結部材によって、制振装置40’の回動が拘束される。このように、本実施形態の回動拘束部33は、板状部材50bの嵌合部52’、貫通孔44aと貫通孔51a2とを締結する締結部材、及び、貫通孔44bと貫通孔51b2とを締結する締結部材により、構成されている。
図6は、本発明の第2実施形態としての枠体構造1bを示す正面図である。枠体構造1bは、建築物等の構造物の一部として、例えば、屋内空間と屋外空間とを区画する外壁、屋内空間同士を区画する仕切壁、を構成する。図6に示すように、枠体構造1bは、枠体10と、第1鉛直ブレース90aと、第2鉛直ブレース90bと、2つの斜材30bと、2つの取付部材26aと、を備える。枠体構造1bは、例えば、第1鉛直ブレース90a及び第2鉛直ブレース90bが取り付けられた既存の枠体10に、2つの斜材30bが2つの取付部材26aを用いて追加的に取り付けられて形成される。
本実施形態の枠体10、第1鉛直ブレース90a、及び第2鉛直ブレース90bは、図1に示した第1実施形態の枠体10、第1鉛直ブレース90a、及び第2鉛直ブレース90bとそれぞれ同一であるので、説明を省略する。
2つの斜材30bそれぞれは、制振部31と、延設部32と、回動拘束部33と、第1被取付部34と、第2被取付部35と、を備える長尺体である。斜材30bは、枠体10に囲まれる領域で、第1被取付部34及び第2被取付部35で、枠体10に斜材として取り付けられている。本実施形態の斜材30bは、延設部32の延在方向Aに沿う長さが、図1等に示した第1実施形態における斜材30aの延設部32の長さよりも短いが、それ以外の点では斜材30aと同様である。
2つの取付部材26aは、枠体10の内部空間の鉛直方向中心位置付近で、互いに鉛直方向に隣接するようにして、第1垂直材21に設けられている。2つの取付部材26aそれぞれには、貫通孔27が形成されている。
2つの斜材30bのうちの一方は、第1被取付部34が2つの取付部材26aのうちの一方(図6の上側)の貫通孔27に取り付けられ、第2被取付部35が枠体10の取付部としての貫通孔24に取り付けられている。ここで、貫通孔24は、第2垂直材22の上端部に形成されている。2つの斜材30bのうちの他方は、第1被取付部34が2つの取付部材26aのうちの他方(図6の下側)の貫通孔27に取り付けられ、第2被取付部35が枠体10の取付部としての貫通孔25に取り付けられている。ここで、貫通孔25は、第2垂直材22の下端部に形成されている。
2つの斜材30bそれぞれは、互いに水平線Hを対称軸として線対称に延在する。換言すれば、2つの斜材30bは、第1垂直材21に、水平線Hを対称軸として互いに線対称に延在するように取り付けられた一対の斜材である。2つの斜材30bをこのように線対称に取り付けることで、第1垂直材21の曲げモーメントの発生を抑制でき、第1垂直材21の曲げ変形を防止することができる。なお、図6に示すように、本実施形態の斜材30bの延在方向Aが水平方向に対してなす角度αは、約36°である。このように、斜材30aの延在方向Aが水平方向に対してなす角度αは、30°以上40°以下であることが好ましい。角度αが30°以上40°以下であれば、高い水平剛性を得ることができるため、エネルギー吸収効率及び部材コストを鑑みて、バランスの良い設計をすることができる。
図7は、本発明の第3実施形態としての枠体構造1cを示す正面図である。枠体構造1cは、建築物等の構造物の一部を構成する。図7に示すように、枠体構造1cは、枠体10と、第1鉛直ブレース90aと、第2鉛直ブレース90bと、2つの斜材30cと、2つの取付部材15と、を備える。枠体構造1cは、例えば、第1鉛直ブレース90a及び第2鉛直ブレース90bが取り付けられた既存の枠体10に、2つの斜材30cが2つの取付部材15を用いて追加的に取り付けられて形成される。
本実施形態の枠体10、第1鉛直ブレース90a、及び第2鉛直ブレース90bは、図1に示した第1実施形態の枠体10、第1鉛直ブレース90a、及び第2鉛直ブレース90bとそれぞれ同一であるので、説明を省略する。
2つの斜材30cそれぞれは、制振部31と、延設部32と、回動拘束部33と、第1被取付部34と、第2被取付部35と、を備える長尺体である。斜材30cは、枠体10に囲まれる領域で、第1被取付部34及び第2被取付部35で、枠体10に斜材として取り付けられている。本実施形態の斜材30cは、延設部32の延在方向Aに沿う長さが、図1等に示した第1実施形態の斜材30aの延設部32の長さよりも短いが、それ以外の点では斜材30aと同一である。
2つの取付部材15は、枠体10の内部空間の水平方向中心位置付近で、互いに水平方向に隣接するようにして、上部横架材11に設けられている。2つの取付部材15それぞれには、貫通孔16が形成されている。
2つの斜材30cのうちの一方は、第1被取付部34が2つの取付部材15のうちの一方(図7の左側)の貫通孔16に取り付けられ、第2被取付部35が枠体10の取付部としての貫通孔23に取り付けられている。ここで、貫通孔23は、第1垂直材21の下端部に形成されている。2つの斜材30cのうちの他方は、第1被取付部34が2つの取付部材15のうちの他方(図7の右側)の貫通孔16に取り付けられ、第2被取付部35が枠体10の取付部としての貫通孔25に取り付けられている。ここで、貫通孔25は、第2垂直材22の下端部に形成されている。
2つの斜材30cそれぞれは、互いに鉛直線Vを対称軸として線対称に延在する。換言すれば、2つの斜材30cは、上部横架材11に、鉛直線Vを対称軸として互いに線対称に延在するように取り付けられた一対の斜材である。2つの斜材30cをこのように線対称に取り付けることで、上部横架材11の曲げモーメントの発生を抑制でき、上部横架材11の曲げ変形を防止することができる。なお、図7に示すように、本実施形態の斜材30cの延在方向Aが水平方向に対してなす角度αは、約71.6°である。
図8は、本発明の第4実施形態としての枠体構造1dを示す正面図である。枠体構造1dは、建築物等の構造物の一部を構成する。図8に示すように、枠体構造1dは、枠体10と、第1鉛直ブレース90aと、第2鉛直ブレース90bと、2つの斜材30dと、2つの取付部材26bと、を備える。枠体構造1dは、例えば、第1鉛直ブレース90a及び第2鉛直ブレース90bが取り付けられた既存の枠体10に、2つの斜材30dが2つの取付部材26bを用いて追加的に取り付けられて形成される。
本実施形態の枠体10、第1鉛直ブレース90a、及び第2鉛直ブレース90bは、図1に示した第1実施形態の枠体10、第1鉛直ブレース90a、及び第2鉛直ブレース90bとそれぞれ同一であるので、説明を省略する。
2つの斜材30dそれぞれは、制振部31と、延設部32と、回動拘束部33と、第1被取付部34と、第2被取付部35と、を備える長尺体である。斜材30dは、枠体10に囲まれる領域で、第1被取付部34及び第2被取付部35で、枠体10に斜材として取り付けられている。本実施形態の斜材30dは、延設部32の延在方向Aに沿う長さが、図1等に示した第1実施形態の斜材30aの延設部32の長さよりも短いが、制振部31、延設部32、回動拘束部33、第1被取付部34、及び第2被取付部35の各機能は、斜材30aと同一である。
図8に示すように、本実施形態の斜材30dは、2つの制振装置40と、筒状部材50cと、板状部材55’と、を備える。
制振装置40は、図3に示した第1実施形態の制振装置40と同一である。筒状部材50cは、図3に示した第1実施形態の筒状部材50よりも、延在方向Aに直交する方向(幅方向)に長く、例えば角形鋼管で構成される。筒状部材50cの内部には、2つの筒状部材5cが、延在方向Aに沿って並行するように挿入されている。筒状部材50cには、延在方向Aに直交する方向に沿って、貫通孔51a及び貫通孔51bが形成されている。貫通孔51aと、2つの制振装置の貫通孔44と、貫通孔51bと、にボルト等を通過させ、ナット等で締結することで、2つの制振装置40が筒状部材50cに取り付けられている。
板状部材55’の一端は、筒状部材50cの他端に固定されている。板状部材55’の他端部には、第2被取付部35としての貫通孔が形成されている。
2つの取付部材26bは、枠体10の内部空間の鉛直方向中心位置付近で、互いに鉛直方向に隣接するようにして、第1垂直材21に設けられている。2つの取付部材26bそれぞれには、2つの貫通孔27a及び27bが形成されている。
2つの斜材30dのうちの一方は、第1被取付部34が2つの取付部材26bのうちの一方(図8の上側)の2つの貫通孔27a及び27bに取り付けられ、第2被取付部35が枠体10の取付部としての貫通孔24に取り付けられている。ここで、貫通孔24は、第2垂直材22の上端部に形成されている。2つの斜材30dのうちの他方は、第1被取付部34が2つの取付部材26bのうちの他方(図8の下側)の2つの貫通孔27a及び27bに取り付けられ、第2被取付部35が枠体10の取付部としての貫通孔25に取り付けられている。ここで、貫通孔25は、第2垂直材22の下端部に形成されている。
2つの斜材30dそれぞれは、互いに水平線Hを対称軸として線対称に延在する。換言すれば、2つの斜材30dは、第1垂直材21に、水平線Hを対称軸として互いに線対称に延在するように取り付けられた一対の斜材である。2つの斜材30dをこのように線対称に取り付けることで、第1垂直材21の曲げモーメントの発生を抑制でき、第1垂直材21の曲げ変形を防止することができる。なお、図8に示すように、本実施形態の斜材30dの延在方向Aが水平方向に対してなす角度αは、約36°である。
上記のように、本実施形態の枠体構造1dでは、延在方向Aに沿って互いに並行する2つの制振装置40を備える斜材30dを用いているので、枠体10の振動をより効果的に抑制することができる。
図9は、本発明の第5実施形態としての枠体構造1eを示す正面図である。枠体構造1eは、建築物等の構造物の一部を構成する。図9に示すように、枠体構造1eは、枠体10aと、第1鉛直ブレース90aと、第2鉛直ブレース90bと、2つの斜材30eと、2つの取付部材26bと、を備える。枠体構造1eは、例えば、第1鉛直ブレース90a及び第2鉛直ブレース90bが取り付けられた既存の枠体10aに、2つの斜材30eが2つの取付部材26bを用いて追加的に取り付けられて形成される。
本実施形態の枠体構造1eは、図8に示した第4実施形態の枠体構造1dが備える枠体10よりも幅の小さい枠体10aを備え、枠体構造1dが備える斜材30dよりも延設部32の延在方向Aに沿う長さが短い斜材30eを備えるが、それ以外の点では枠体構造1dと同様である。すなわち、2つの斜材30eは、第1垂直材21に、水平線Hを対称軸として互いに線対称に延在するように取り付けられた一対の斜材である。図9に示すように、本実施形態の斜材30eの延在方向Aが水平方向に対してなす角度αは、約40°である。
図10は、本発明の第6実施形態としての枠体構造1fを示す正面図である。枠体構造1fは、建築物等の構造物の一部を構成する。図10に示すように、枠体構造1fは、枠体10bと、第1鉛直ブレース90aと、第2鉛直ブレース90bと、4つの斜材30fと、2つの取付部材26aと、4つの取付部材26bと、を備える。枠体構造1fは、例えば、第1鉛直ブレース90a及び第2鉛直ブレース90bが取り付けられた既存の枠体10bに、4つの斜材30eが2つの取付部材26a及び4つの取付部材26bを用いて追加的に取り付けられて形成される。
枠体10bは、図9に示した第5実施形態の枠体構造1eが備える枠体10aよりも更に幅の小さい枠体である。枠体10bは、上記以外の点では、図1等に示した第1実施形態の枠体構造1aが備える枠体10と同様である。
本実施形態における第1鉛直ブレース90a、第2鉛直ブレース90b、2つの取付部材26a、及び4つの取付部材26bは、それぞれ、上記各実施形態において対応する構成と同一である。4つの斜材30fは、延設部32の延在方向Aに沿う長さが、図9に示した第5実施形態における斜材30eの延設部32の長さよりも短いが、それ以外の点では斜材30eと同様である。
2つの取付部材26aは、枠体10の内部空間の鉛直方向中心位置付近で、互いに鉛直方向に隣接するようにして、第2垂直材22に設けられている。4つの取付部材26bのうちの2つは、枠体10の内部空間の鉛直方向の上方からの距離と下方からの距離が1:3となる位置付近で、互いに鉛直方向に隣接するようにして、第1垂直材21に設けられている。4つの取付部材26bのうちの残りの2つは、枠体10の内部空間の鉛直方向の上方からの距離と下方からの距離が3:1となる位置付近で、互いに鉛直方向に隣接するようにして、第1垂直材21に設けられている。
4つの斜材30fのうちの最も上方に位置する斜材30fは、第1被取付部34が最も上方に位置する取付部材26bの2つの貫通孔27a及び27bに取り付けられ、第2被取付部35が枠体10の取付部としての貫通孔24に取り付けられている。ここで、貫通孔25は、第2垂直材22の上端部に形成されている。4つの斜材30fのうちの上方から2番目に位置する斜材30fは、第1被取付部34が上方から2番目に位置する取付部材26bの2つの貫通孔27a及び27bに取り付けられ、第2被取付部35が上方に位置する取付部材26aの貫通孔27に取り付けられている。4つの斜材30fのうちの上方から3番目に位置する斜材30fは、第1被取付部34が上方から3番目に位置する取付部材26bの2つの貫通孔27a及び27bに取り付けられ、第2被取付部35が下方に位置する取付部材26aの貫通孔27に取り付けられている。4つの斜材30fのうちの最も下方に位置する斜材30fは、第1被取付部34が最も下方に位置する取付部材26bの2つの貫通孔27a及び27bに取り付けられ、第2被取付部35が枠体10の取付部としての貫通孔25に取り付けられている。ここで、貫通孔25は、第2垂直材22の下端部に形成されている。
図10に示すように、4つの斜材30fのうち最も上方に位置する斜材30f、及び上方から2番目に位置する斜材30fは、第1垂直材21に、水平線Hを対称軸として互いに線対称に延在するように取り付けられた一対の斜材である。4つの斜材30fのうち上方から2番目に位置する斜材30f、及び上方から3番目に位置する斜材30fは、第2垂直材22に、水平線Hを対称軸として互いに線対称に延在するように取り付けられた一対の斜材である。4つの斜材30fのうち上方から3番目に位置する斜材30f、及び最も下方に位置する斜材30fは、第1垂直材21に、水平線Hを対称軸として互いに線対称に延在するように取り付けられた一対の斜材である。図10に示すように、本実施形態の斜材30fの延在方向Aが水平方向に対してなす角度αは、約29°である。
図11は、本発明の第7実施形態としての枠体構造1gを示す正面図である。枠体構造1gは、建築物等の構造物の一部を構成する。図11に示すように、枠体構造1gは、枠体10cと、第1鉛直ブレース90aと、第2鉛直ブレース90bと、4つの斜材30gと、2つの取付部材26aと、4つの取付部材26bと、を備える。枠体構造1gは、例えば、第1鉛直ブレース90a及び第2鉛直ブレース90bが取り付けられた既存の枠体10cに、4つの斜材30eが2つの取付部材26a及び4つの取付部材26bを用いて追加的に取り付けられて形成される。
本実施形態の枠体構造1gは、図10に示した第6実施形態の枠体構造1fが備える枠体10bよりも幅の小さい枠体10cを備え、枠体構造1fが備える斜材30fよりも延設部32の延在方向Aに沿う長さが短い斜材30fを備えるが、それ以外の点では枠体構造1fと同様である。すなわち、4つの斜材30gのうち、それぞれ上下方向に隣り合う斜材30gは、水平線Hを対称軸として互いに線対称に延在するように取り付けられた一対の斜材を構成する。図11に示すように、本実施形態の斜材30gの延在方向Aが水平方向に対してなす角度αは、約36°である。
図12は、本発明の第8実施形態としての枠体構造1hを示す正面図である。枠体構造1hは、建築物等の構造物の一部を構成する。図12に示すように、枠体構造1hは、枠体10と、第1鉛直ブレース90aと、第2鉛直ブレース90bと、3つの斜材30hと、1つの取付部材26aと、3つの取付部材26bと、を備える。枠体構造1hは、例えば、第1鉛直ブレース90a及び第2鉛直ブレース90bが取り付けられた既存の枠体10に、3つの斜材30hが1つの取付部材26a及び4つの取付部材26bを用いて追加的に取り付けられて形成される。
本実施形態の枠体10、第1鉛直ブレース90a、第2鉛直ブレース90b、取付部材26a、及び取付部材26bは、上記各実施形態の各構成とそれぞれ同一であるので、説明を省略する。4つの斜材30hは、延設部32の延在方向Aに沿う長さが、図8に示した第4実施形態の斜材30dの延設部32の長さよりも短いが、それ以外の点では斜材30dと同様である。
3つの取付部材26bのうちの2つは、枠体10の内部空間の鉛直方向の上方からの距離と下方からの距離が1:2となる位置付近で、互いに鉛直方向に隣接するようにして、第2垂直材22に設けられている。取付部材26a及び4つの取付部材26bのうちの残りの1つの取付部材26bは、枠体10の内部空間の鉛直方向の上方からの距離と下方からの距離が2:1となる位置付近で、互いに鉛直方向に隣接するようにして、第1垂直材21に設けられている。
3つの斜材30hのうちの最も上方に位置する斜材30hは、第1被取付部34が最も上方に位置する取付部材26bの2つの貫通孔27a及び27bに取り付けられ、第2被取付部35が枠体10の取付部としての貫通孔14に取り付けられている。ここで、貫通孔14は、上部横架材11の第1垂直材21が位置する側の一端に溶接固定されたフランジ13の、下端部に形成されている。3つの斜材30hのうちの上方から2番目に位置する斜材30hは、第1被取付部34が上方から2番目に位置する取付部材26bの2つの貫通孔27a及び27bに取り付けられ、第2被取付部35が取付部材26aの貫通孔27に取り付けられている。3つの斜材30hのうちの最も下方に位置する斜材30hは、第1被取付部34が最も下方に位置する取付部材26bの2つの貫通孔27a及び27bに取り付けられ、第2被取付部35が枠体10の取付部としての貫通孔25に取り付けられている。ここで、貫通孔25は、第2垂直材22の下端部に形成されている。
図12に示すように、3つの斜材30hのうち最も上方に位置する斜材30h、及び上方から2番目に位置する斜材30hは、第2垂直材22に、水平線Hを対称軸として互いに線対称に延在するように取り付けられた一対の斜材である。3つの斜材30hのうち上方から2番目に位置する斜材30h、及び最も下方に位置する斜材30hは、第1垂直材21に、水平線Hを対称軸として互いに線対称に延在するように取り付けられた一対の斜材である。図12に示すように、本実施形態の斜材30hの延在方向Aが水平方向に対してなす角度αは、約26°である。
本発明は、上述した各実施形態で特定された構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各実施形態の枠体構造1a~1hは、第1鉛直ブレース90a及び第2鉛直ブレース90bのうち、少なくとも一方を備えていなくてもよい。但し、枠体構造1a~1hは、外力に対する補強の観点で、第1鉛直ブレース90a及び第2鉛直ブレース90bを備えていることが好ましい。
また、各実施形態における斜材は、制振部31に対して延在方向Aの一方に延設部32を備える構成としたが、制振部31に対して延在方向Aの両側に延設部32を備えていてもよい。