JP7384732B2 - 耐震補強構造 - Google Patents

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Description

本発明は、耐震補強構造に関するものである。
従来、住宅等の建物において、一対の柱間に一対のブレースを正面視でX字状に配置したブレース構造を有するものがある。このような建物の間取りの変更を伴う改装工事において、既存のブレースの撤去が必要となることがある。そのような場合に既存ブレースの撤去による耐震性能の低下を補って、既存のブレースを撤去した改装後の建物の耐震性能を更に向上させるために、残存する既存のブレースに対し補強ブレースを重ね合わせる技術が本出願人により提案されている(特許文献1参照)。このような技術によれば、残存させる既存のブレースの位置と補強ブレースの位置が同一になるので、補強ブレースの追加による間取りの設計の自由度を低下させることなく補強ブレースが設置でき、改装後の建物の耐震性能を維持することができる。
特開2017-172139号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、限られた壁の厚みの中で既存のブレースと補強ブレースとが正面視で対角線上に重なるように配置されているので、ブレース同士が互いに干渉しやすく、ブレースの径をより大きくして、耐震性能を改工事前の状態より高めるといった対応が難しかった。
このような事情に鑑みて、本発明は、ブレース構造を有する既存建物の改装工事において、残存させる既存ブレースに重ね合わせるように補強部材を付加して耐震補強をする工事で、より効果的に補強をすることができる耐震補強構造を提供することを目的とする。
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)下部横架材、上部横架材、及び当該下部横架材と当該上部横架材との間に立設された一対の柱を有する既存の架構と、
前記既存の架構に配置された一対の既存ブレースと、
前記既存の架構に対し付加されたエネルギー吸収部材と、を備え、
前記エネルギー吸収部材は、正面視において、前記既存の架構及び、前記一対の既存ブレースが存在しない領域に設けられた、耐震補強構造。
(2)前記エネルギー吸収部材は、前記既存の架構と前記一対の既存ブレースとで区画された正面視で略二等辺三角形の領域において、その変位方向が底辺に位置する部材に対し平行となるように、かつ底辺に位置する部材寄りに配置されている、上記(1)に記載の耐震補強構造。
(3)前記エネルギー吸収部材は、前記既存の架構に水平力が作用し最大の相対的変位が生じた際に、前記一対の既存ブレースとの干渉を避けるように配置されている、上記(2)に記載の耐震補強構造。
(4)前記一対の既存のブレース及び前記エネルギー吸収部材は、鋼材で構成されている、上記(1)~(3)のいずれかに記載の耐震補強構造。
(5)前記エネルギー吸収部材は、取付部材を介して前記既存の架構に取り付けられており、
前記エネルギー吸収部材は、略U字状で、対をなしており、その湾曲部同士が互いに対向するように近接配置されており、
前記取付部材の前記エネルギー吸収部材が当接される当接面の長さ寸法は、前記エネルギー吸収部材全体としての長さ寸法に一致している、上記(1)~(4)のいずれかに記載の耐震補強構造。
本発明によれば、耐震性能を高めやすい耐震補強構造を提供することができる。
本発明の一実施形態にかかる耐震補強構造を示す正面図である。 エネルギー吸収部材の一例を示す図である。 本発明の他の実施形態にかかる耐震補強構造を示す正面図である。 エネルギー吸収部材の対比となる配置を示す図である。 対比となるエネルギー吸収部材の変形を模式的に示す図である。 好適な例のエネルギー吸収部材の配置を示す図である。 好適な例のエネルギー吸収部材の変形を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に例示説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる耐震補強構造を示す正面図である。図1に示すように、本実施形態の耐震補強構造1は、ブレース構造を有する既存建物と、既存建物に付加されるエネルギー吸収部材2及び剛体3と、を備えている。既存建物を構成する既存の架構は、鋼製の柱・梁等で構成された鉄骨造である。まず、既存の架構及びブレースについて説明する。
<架構>
架構は、鉄筋コンクリート構造の基礎梁、及び基礎梁の上に構築された、柱・梁(上部横架材)等からなる上部架構で構成される。本例では、地上階(1階)に設置される耐震補強構造について説明する。図1に示すように、架構は、基礎梁(下部横架材)4、梁(上部横架材)5、及び一対の柱6、7を有している。また、架構には一対のブレース8、9が配置されている。ここでいう上下は、建物の鉛直方向の上下であり、図示の上下とも一致する。また、左右は、上記鉛直方向に直交する水平面における水平方向の一方側、他方側であり、図示の左右である。
<<横架材>>
図1に示すように、基礎梁4は、水平方向に延在している。また、梁5は、平面視で基礎梁4に重なるように水平方向に延在している。図示は省略しているが、上部横架材5の端は、柱または他の横架材に固定されている。梁5は、例えばH形鋼で形成することができる。H形鋼の上下フランジには、ボルト接合のための1つ以上の孔が所定のピッチで穿設されている。
<<柱>>
左柱6及び右柱7は、それぞれ、角形鋼管からなる柱本体部と、柱本体部の上端に接続され梁5と接合するように構成された柱頭部と、柱本体部の下端に接続され基礎梁4と接合するように構成された柱脚部と、を有する。
柱本体部は、上記のように角形鋼管からなる。柱頭部は、略板状であり平面視で十字状に構成された4つの起立片と、四角板状であり起立片の上端を覆うように配置された水平片とを有する。各起立片にはブレースをボルト接合する為の孔が穿設されている。また、水平片には梁5の下フランジとボルト接合する為の孔が穿設されている。、柱脚部は、略板状であり平面視で十字状に構成された4つの起立片と、四角板状であり起立片の上端を覆うように配置された水平片とを有する。各起立片にはブレースをボルト接合する為の孔が穿設されている。また、水平片には基礎梁4にアンカーボルトを介して接合する為の孔が穿設されている。
左柱6及び右柱7は、それぞれ基礎梁4に対して柱脚部の孔に挿通されたアンカーボルトを介して接合されており、梁5に対して柱頭部の孔に挿通されたボルトを介して接合されている。
<ブレース>
一対のブレース8、9は、ブレース本体と、ブレース本体の両端に設けられた一対の接合片とを有する。ブレース本体は丸棒状の鋼材で構成されており、接合片は板状の鋼材で構成され柱の柱頭部や柱脚部にボルト接合する為の孔が穿設されている。一対のブレースの一方のブレース8は、左柱6の柱頭部及び右柱7の柱脚部にボルト接合されている。一対のブレースの他方のブレース9は、右柱7の柱頭部及び左柱6の柱脚部にボルト接合されている。
<エネルギー吸収部材>
図2は、エネルギー吸収部材の一例を示す図である。エネルギー吸収部材2は、建物に地震等の水平力が作用した際の建物の層間変形に応じてそれ自体が変形等することにより、エネルギーを吸収し、建物の揺れを減衰させる機能を有するものである。エネルギー吸収部材2は、例えば、鋼材ダンパー、摩擦ダンパー、オイルダンパー、粘性ダンパー、及び粘弾性ダンパーのいずれかとすることができる。本実施形態では、エネルギー吸収部材2が鋼材ダンパーである場合を示している。エネルギー吸収部材2を一対のブレース8、9と同じ鋼材で構成することにより、構造特性に関し互いに影響を及ぼしにくく、構造解析が容易となる。
図1及び図2に示すように、本実施形態においては、エネルギー吸収部材2は、略U字の形状をなしており、湾曲部2aと、湾曲部2aの両端のそれぞれから連続して延びる一対の中間部2bと、一対の中間部2bの端からそれぞれ連続して延びる一対の固定部2cと、を有している。一対の中間部2bの一部及び一対の固定部2cは、(非変形状態において)互いに対向する一対の対向部をなしている。エネルギー吸収部材2は、矩形の板状の鋼材を曲げ加工することにより上記の形状(略U字状)となっている。このような形状のエネルギー吸収部材2では、一対の固定部2cが、互いに平行な状態を保ったままその延在方向の相対的変位を正負方向に繰り返すことで、(一方の対向部における湾曲部の近傍部分が湾曲部と略同一の曲率で湾曲すると共に、他方の対向部における湾曲部の近傍付近が平坦となるような変形が生じて)その変位(変形)に応じた分のエネルギーを吸収することができる。
エネルギー吸収部材2は、耐震要素の固定部2cにはボルト接合の為の孔が複数穿設されており、後述のとおり取付部材の当接面に対しボルト接合等により接合されるが、この接合によって湾曲形状に変形することが拘束され平坦形状が維持される領域が固定部2cであり、円弧状の湾曲形状が常に維持される領域が湾曲部2aであり、湾曲形状と平坦形状とに変化し得る領域が中間部2bである。
また、一方の中間部2bにおける固定部2cとの境界部まで湾曲形状に変形し、他方の中間部2bにおける湾曲部2aとの境界部まで平坦となった状態が、エネルギー吸収部材2の相対的変位が最大値に達した状態であり、エネルギー吸収部材2の相対的変位の最大量は、接合の位置により決定される(接合の位置が湾曲部から遠いほど、固定部2cの領域は小さくなり、エネルギー吸収部材2の相対的変位の最大量は大きくなる)。
本例では、図1に示すように、一対のエネルギー吸収部材2が、湾曲部2a同士を対向させて(湾曲部2a同士が最も近接するように又は接するように)配置されている。湾曲部2a間は、例えば5~10mm間隔を空けることが、湾曲部2aの変形を考慮する上で好ましいが、間隔を設けないこともできる。なお、エネルギー吸収部材2を一対で設ける場合は、固定部2c同士が対向するように(固定部2c同士が最も近接するように又は接するように)配置することもできる。また、エネルギー吸収部材4(対ではなく単体)の長さ寸法は、例えば、250~400mmとすることができ、高さ寸法(一方の当接面から他方の当接面までの寸法)及び幅寸法は、例えば、50~150mmとすることができる。
エネルギー吸収部材2を対で用いる場合には、固定部2c同士が対向するように(固定部2c同士が最も近接するように又は接するように)配置することもできるが、図1や図3に示したように、湾曲部2a同士が対向するように(湾曲部2a同士が最も近接するように又は接するように)配置することが好ましい。対比として図4Aに示すように、エネルギー吸収部材4の一対を、固定部2cを対向させて配置した場合、エネルギー吸収部材2の一対分の長さの当接面を有する一対の拘束部材で両側から挟持していても、図4Bに模式的に示すように、相対的に変位した際に、上下の拘束力がなくなることから、局所的に当初の曲率とは異なる不均質な曲率での変形を生じやすくなり、一対の対向部が相対的変位によってエネルギーを吸収するという本来の機能が十分に発揮できなくなるおそれがある。これに対し、図5Aに示すように、エネルギー吸収部材2の一対を、湾曲部2a同士を対向させて配置することより、図5B(下図は、相対変位が水平方向における相対変位が、上図の逆方向である)に模式的に示すように、相対的変位が生じた際にも、エネルギー吸収部材2が常に一対の拘束部材からの拘束を受けた状態であるため、当初の曲率と同じ曲率での変形が維持され、その結果、エネルギーを十分に吸収して、建物の揺れをより一層速やかに減衰させることができる。また、このような構成によれば、エネルギー吸収部材2を設置する為に必要なスペースも最小限に抑えることもできる。
<取付部材>
取付部材は、架構(柱・梁)とエネルギー吸収部材との間に介在して、地震等の水平力により架構に層間変位が生じた際に層間変位に応じた相対的変位を生じさせる機能を有する。取付部材は、その剛性が大きいほど効果的にエネルギー吸収部材2に相対的変位を与えるが、エネルギー吸収部材2に相対的変位を生じさせる程度の剛性を有していればよく、完全な剛体でなくともよい。
<第一取付部材>
第一取付部材10は、矩形板状の上部水平片、矩形板状の下部水平片と、及び矩形板状であって上部水平片と下部水平片との間で起立した起立片と、を有する断面略I字状の部材である。上部水平片には、梁5とボルト接合する為の孔が穿設されている。また、下部水平片は、その下面がエネルギー吸収部材2の上側の固定部2cが当接される当接面とされ、エネルギー吸収部材2とボルト接合する為の孔が穿設されている。地震等の水平力が作用した際に、第一取付部材10は、梁5の変位に追従して変位する。
<第二取付部材>
第二取付部材11は、一対の棒状部材11a、11bと、一対の棒状部材11a、11bをエネルギー吸収部材2が接合され当接面を有する連結部材11cと、を有する。一対の棒状部材11a、11bは、それぞれ扁平な一対の中空部材と一対の中空部材の下端部に接合された接合片を有している。一対の中空部材は、扁平な面同士が一対のブレース8、9との干渉が回避されるように離隔して対向配置されている。一対の棒状部材11a、11bの下端側は、一対の柱6、7における柱本体部の下端近傍の側面に対して接合片を介してドリルねじにて接合されている。また、連結部材11cは、矩形板状の水平片と、矩形板状であって水平片の両端から垂下した一対の垂下片と、を有する断面略U字状の部材であり、各垂下片の外側の面には一対の棒状部材11a、11bの一対の中空部材の夫々が当接されドリルねじにて接合されている。水平片は、その上面がエネルギー吸収部材2の下側の固定部2cが当接される当接面とされており、エネルギー吸収部材2をボルト接合する為の孔が穿設されている。地震等の水平力が作用した際に、第二取付部材11は、基礎梁4の変位に追従して変位する。
一対の棒状部材11a、11bは、それぞれの一対の中空部材が一対のブレース8、9を挟むような状態で、取り付けられることで、一対のブレース8、9との干渉が回避されている。また、一対の棒状部材11a、11bは、正面視において、一対のブレース8、9と一か所でのみ交差している。また、一対の中空部材は、構面の延在方向から見た際に左右対称形をなしている。
一対のエネルギー吸収部材2は、一対の固定部2cが第一取付部材10の当接面(上部水平片の上面)と第二取付部材11の当接面(下部水平片の下面)にボルト接合されている。一対のエネルギー吸収部材2は、湾曲部2b側は互いに対向するように且つ接近するように配置されており、各エネルギー吸収部材2の一対の固定部2c側の端部は、部取付部材10の当接面及び第二取付部材11の当接面の端部に一致するように構成されている。
また、エネルギー吸収部材2、第一取付部材10、及び第二取付部材11は、柱6、7の厚みの範囲内に収まっており、柱6、7の表面を結ぶ面から突出していない。
地震等の水平力の作用によって架構の層間変形が発生すると(すなわち基礎梁4に対して梁5が左右方向に繰り返し相対的に変位すると)、これに応じて第一取付部材10の当接面と第二取付部材11の当接面との間で左右方向の繰り返しの相対的変位が生じ、これがエネルギー吸収部材2を変形させる。この際、エネルギー吸収部材2は、一対の当接面によって拘束された状態で、同一の曲率を維持した状態で変形を繰り返す。また、エネルギー吸収部材2は、梁5及び一対のブレース8,9で囲まれた略二等辺三角形の領域における梁5(二等辺三角形の底辺に位置する部材)寄りの位置であって、エネルギー吸収部材2に最大の相対的変位が発生した場合であっても、エネルギー吸収部材2と下部取付部材10が一対のブレース8、9と干渉しない位置に、梁5の延在方向と略同一方向に相対的変位が生じるように配置されている。
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態の耐震補強構造によれば、エネルギー吸収を担い耐震性能上最も重要な要素であるエネルギー吸収部材2が、正面視で既存のブレース8、9の存在しない領域に配置されているので、エネルギー吸収部材2の機構、大きさ、形状等の選択の自由度が増え、耐震性能を容易に高めることができ、施工性やメンテナンス性もよい。
また、架構と一対のブレース8、9とで区画された正面視で略二等辺三角形の領域において、エネルギー吸収部材2の変位方向が底辺に位置する部材に対し平行となるように、かつ底辺に位置する部材寄りに配置されているので、既存架構との干渉が生じにくく地震時の各構成部材の破損を防ぐことができる。
また、エネルギー吸収部材2は、架構に水平力が作用し最大の相対的変位が生じた際に、一対のブレース8、9との干渉を避けるように配置されているので、地震時の各構成部材の破損を防ぐことができる。
また、エネルギー吸収部材2が、一対のブレース8、9と同じ鋼材で構成されているので、構造特性に関して互いに影響を及ぼしにくく、構造解析が容易となる(それぞれ個別に算出した構造解析結果を単純に合算することで、両者を組み合わせた際の構造解析ができる)。
また、エネルギー吸収部材2は、略U字状で、対をなしており、湾曲部同士が互いに対向するように近接配置されている。第一取付部材10および第二取付部材11の当接面の長さ寸法はエネルギー吸収部材2全体としての長さ寸法に一致している。このため、エネルギー吸収部材2をコンパクト化することができ、各構成部材の破損を防ぐことができる。
さらに、本実施形態では、棒状部材11a、11bの側面と連結部材11cの垂下片とを重ね合わせ、その重なり部分にてドリルねじにて接合しているため、ずれや緩みが生じにくくなり、また、面を用いるため接合が容易であり、寸法調整(誤差の吸収)もしやすく、施工が容易である。また、本実施形態では、棒状部材11a、11bと柱脚部ともドリルねじ接合しているため、この箇所でもずれや緩みが生じにくくなり、施工も容易である。なお、第二取付部材11の下端部をブレースとともに1本のボルトにて柱の柱脚部にボルト接合(共縫い)することもできる。
続いて本発明の他の実施形態について図3を用いて説明する。図1に示す実施形態と同一の構成については説明を省略し、異なる点を説明する。図3は、本発明の他の実施形態にかかる耐震補強構造を示す正面図である。図3に示す実施形態では、第一取付部材10と第二取付部材11とが、左右方向に配置されており、両者の相対的変位が上下方向に発生する。第一取付部材10は矩形板状であり、一方の柱6の柱本体部の側面にドリルねじにて接合されている(なお、第一取付部材を省略し一方の柱の柱本体部の側面にエネルギー吸収部材2を接合してもよい)。第二取付部材11は、他方の柱7から一方の柱6に向かって延びている。第二取付部材11の棒状部材11a、11bは、柱頭部及び柱脚部の既存ブレースのボルト接合用の孔を用いて、既存ブレースとともに1本のボルトにて接合されている(なお、柱本体部の側面にドリルねじにて接合してもよい。また、基礎梁4や梁5に接合してもよい)。
図3に示す実施形態の耐震補強構造によれば、エネルギー吸収部材2が納まる二等辺三角形の領域の底辺が長くなり、上下方向に相対的変位するエネルギー吸収部材2(及び第二取付部材)を、より干渉しにくくすることができる。
耐震補強構造は、例えば、既存のブレース構造の建物に対して改修前と同等以上の耐震性能を有するエネルギー吸収部材2を、撤去予定の既存ブレースと同一方向の、残存させる既存ブレースに重なるように設置する第1の工程と、開口部を設ける領域の外周壁又は間仕切り壁及びその内部の既存ブレースを撤去する第2の工程と、を含む方法によって用いられることができる。この方法によれば、他の空間に影響を与えることなく、且つ、構造安全性を維持しつつ、間仕切りを撤去して大空間にしたり出入口や窓を設けたりする改修工事を行うことができる。この際、第1の工程の後に第2の工程を行うことが好ましく、これにより、改修工事中に地震等が発生した場合でも構造安定性を保つことができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、本発明の耐震補強構造は、2階以上の階層に適用してもよく、水平ブレースで構成された水平構面の補強に適用してもよい。また、木造の架構やブレースを有する建物にも適用することができる。また、既存のブレースも、板状、角状、パイプ状等、様々な形状のものに適用することができ、頬杖状に配置されたものであってもよく、更にはブレース以外の形態のエネルギー吸収部材にも適用することができる。また、既存のブレースは、柱に替えて四角枠状の構造体に対して対角線上に配置されたものでもよい。
1:耐震補強構造、
2:エネルギー吸収部材、
4:基礎梁(下部横架材)、
5:梁(上部横架材)、
6:柱、
7:柱、
8:ブレース、
9:ブレース、
10:第一取付部材、
11:第二取付部材

Claims (4)

  1. 下部横架材、上部横架材、及び当該下部横架材と当該上部横架材との間に立設された一対の柱を有する既存の架構と、
    前記既存の架構に配置された一対の既存ブレースと、
    前記既存の架構に対し付加されたエネルギー吸収部材と、を備え、
    前記エネルギー吸収部材は、正面視において、前記既存の架構及び、前記一対の既存ブレースが存在しない領域に設けられ、
    前記エネルギー吸収部材は、取付部材を介して前記既存の架構に取り付けられており、
    前記エネルギー吸収部材は、略U字状で、対をなしており、その湾曲部同士が互いに対向するように近接配置されており、
    前記取付部材の前記エネルギー吸収部材が当接される当接面の長さ寸法は、前記エネルギー吸収部材全体としての長さ寸法に一致している、耐震補強構造。
  2. 前記エネルギー吸収部材は、前記既存の架構と前記一対の既存ブレースとで区画された正面視で略二等辺三角形の領域において、その変位方向が底辺に位置する部材に対し平行となるように、かつ底辺に位置する部材寄りに配置されている、請求項1に記載の耐震補強構造。
  3. 前記エネルギー吸収部材は、前記既存の架構に水平力が作用し最大の相対的変位が生じた際に、前記一対の既存ブレースとの干渉を避けるように配置されている、請求項2に記載の耐震補強構造。
  4. 前記一対の既存のブレース及び前記エネルギー吸収部材は、鋼材で構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の耐震補強構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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