JP2012158911A - 耐震構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】柱2と梁3で構成される架構の構面5内に設けられ、架構に減衰を付加する減衰部70(オイルダンパ71)と、第1ブレース81及び第2ブレース82を備え、第1ブレース81及び第2ブレース82のうちの一方に引張軸力が生ずると他方に圧縮軸力が生じ、引張軸力が降伏荷重を超えると当該ブレース81または82が塑性化するブレース部80と、を備え、減衰部70とブレース部80が並列に配置される、ことを特徴とする耐震構造体10。
【選択図】図1
Description
狭い空間に設置する場合、軸力降伏型ダンパの剛結合部分を小さくしたいが、ピン結合にすることはできないので、軸力降伏型ダンパに占めるボルト接合による剛結合部分の長さが長くなる。そうすると、必要な変形を生じさせるための減衰部分の長さを確保できなくなる。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、減衰を付加する減衰部と、荷重を受けて塑性化するブレース部とを備えながらも狭い空間に設置することができる耐震構造体を提供することを目的とする。
本発明の耐震構造体は、ブレース部では引張軸力が降伏荷重を超えた場合に当該ブレースが塑性化し、圧縮軸力が作用した場合には軸力を伝達せず横方向にたわみを生ずるので、従来の軸力降伏型ダンパのようにブレース部を剛結合とすることなく、ピン結合でブレース部、減衰部ともに架構に接合できる。さらに、減衰部とブレース部に機能を分離して並列に配置する構造を採用しているので、従来と同等の特性を保持しながらコンパクトに構成できるので、狭い空間にも設置することができる。
より安定した変形状態を得るためには、減衰部を基準にして、水平方向の両側に一対の第1ブレースを配置するとともに、水平方向の両側に一対の第2ブレース配置することが好ましい。
圧縮軸力が生じると減衰部から離れる向きにたわむようにする具体的な手段は以下に示すようにいくつか掲げられる。その一つは、第1ブレース及び第2ブレースに対して、減衰部から離れる向きに予めたわみを持つように加工することである。また、第1ブレース及び第2ブレースにおいて、載荷軸芯より減衰部から離れる向きに断面の中立軸をずらした断面構成としてもよい。
粘弾性ダンパは、オイルダンパよりも低コストで減衰部を構成できるとともに、オイルダンパには必要なオイル漏れの確認などのメンテナンスを省くことができる。
<第1実施形態 耐震構造体10>
図1に示すように、第1実施形態の耐震構造体10は、柱2及び梁3からなる架構式の鉄骨構造物1の構面5内に設けられる。この耐震構造体10は、地震の際に軸方向に作用する引張力と圧縮力からなる交番軸力を受けたときに、ブレース部80のみを塑性化させることにより、鉄骨構造物1は弾性状態を保持するように構成される。したがって、鉄骨構造物1は塑性変形部位が耐震構造体10に特定されるため、耐震構造体10の破断や鉄骨構造物1の崩壊を回避することができる。また、耐震構造体10を除く鉄骨構造物1は常に弾性状態を保つので、地震後は元の形状・位置に復元し、塑性化した耐震構造体10(ブレース部80)のみを交換することで、鉄骨構造物1を継続して使用することができる。
図1、図2に示すように、耐震構造体10は、減衰部70とブレース部80とから構成される。
減衰部70は、オイルダンパ71を備えており、地震などにより鉄骨構造物1に生じた震動を減衰させる。
オイルダンパ71は、よく知られているように、シリンダ72と、シリンダ72内でピストン(図示省略)と連結されるピストンロッド73と、から構成される。
オイルダンパ71は、シリンダ72の一端部に取り付けられた継手74と、ピストンロッド73の一端部に取り付けられた継手75と、を介して、対角線方向に対向するガゼット4にピンPを介して接合される。
ブレース部80は、第1ブレース81と第2ブレース82を備えている。第1ブレース81は、長手方向の両端に幅広の継手83を備える平坦な鋼板を単独あるいは積層することで構成される。各鋼板は一体的に形成されている。第2ブレース82も同様に、長手方向の両端に幅広の継手84を備える平坦な鋼板を単独あるいは積層することで構成される。各々の継手83,84を除く部分は塑性化する部分であり、継手83,84よりも幅(断面積)が小さく設定されている。
第1ブレース81は、鉄骨構造物1の柱2及び梁3で囲まれる矩形の構面5の対角線方向に対向するガゼット4に継手83を介してピン接合される。また、第2ブレース82は、構面5の対角線方向に位置する他のガゼット4に継手84を介してピン接合される。こうして、第1ブレース81と第2ブレース82は互いに交差し、かつ並列に配置される。
ブレース部80は、圧縮軸力に対しては抵抗せず、面外方向のたわみ変形で逃げる構造とする。よって、ガゼット4(鉄骨構造物1)への接合をピン構造にできる。
図2が示すように、シリンダ72の継手74及びピストンロッド73の継手75は櫛歯状の部材であり、ガゼット4を継手74、継手75で挟むようにオイルダンパ71を配置する。ガゼット4、継手74及びピストンロッド73に形成されているピンP挿入用の孔にピンPを貫通させることで、オイルダンパ71を鉄骨構造物1にピン結合する。
以上のように結合されたオイルダンパ71に対して、図2に示されるように、オイルダンパ71に隣接して第1ブレース81が配置され、第1ブレース81に隣接して第2ブレース82が配置される。このように、第1ブレース81及び第2ブレース82は、オイルダンパ71を基準にして、第1ブレース81、第2ブレース82の順に水平方向に並んでいる。このことはまた、オイルダンパ71と、第1ブレース81及び第2ブレース82とが、並列に配置されていることを示している。
第1ブレース81は、ピンPに嵌合されるスペーサ85をガゼット4との間に介在させることにより、オイルダンパ71との干渉が起きないように位置決めされている。また、第2ブレース82は、ピンPに嵌合されるスペーサ86を継手74との間に介在させることにより、オイルダンパ71及び第1ブレース81との干渉が起きないように位置決めされている。
例えば、地震荷重が作用すると耐震構造体10は引張力と圧縮力の交番軸力を受ける。具体的には、継手83,84を介して、軸力が第1ブレース81、第2ブレース82に伝わる。そして、引張軸力が第1ブレース81の降伏軸力に達すると塑性軸変形が生じる(図3(c))。第1ブレース81に引張軸力が生じている間に、第2ブレース82には圧縮軸力が生じる。圧縮軸力が生じると、第2ブレース82は面外方向にたわむことで、圧縮軸力に対しては抵抗しない(図3(c))。第2ブレース82が引張軸力を受ける際には、第1ブレース81と第2ブレース82の関係が以上と逆になる。
また、継手74,75を介して、引張軸力又は圧縮軸力がオイルダンパ71に伝わると、ピストンロッド73を介して図示しないピストンがシリンダ72内で軸方向に移動することにより、振動を減衰させる。
図3に、減衰部70(図3(a))及びブレース部80(図3(b))の各々における変位−荷重特性線図を示す。なお、図3(b)において、符号81が付されている履歴曲線(破線)は第1ブレース81の部分を示し、符号82が付されている履歴曲線は第2ブレース82の部分を示している。
以上説明したように、耐震構造体10は、減衰部70とブレース部80に機能を分離して並列に配置する構造を採用しているので、従来の軸力降伏型ダンパのようにブレース部を剛結合とすることなく、ピン結合で減衰部70、ブレース部80をともに鉄骨構造物1に接合できる、したがって、耐震構造体10をコンパクトに構成できるので、狭い空間にも設置することができる。
また、従来の軸降伏型ダンパは補剛部材で塑性変形を生ぜしめる芯材の座屈を拘束するので、芯材の変形状態が補剛部材に隠れてしまい、外部からは芯材の損傷状況を確認することができない。これに対して耐震構造体10は、ブレース部80(第1ブレース82、第2ブレース82)の塑性変形が生じる部分は表面に露出しているので、損傷状態を容易に確認できる。また、ブレース部80は、引張軸力にだけ抵抗(塑性変形)するので、ブレース部80を構成する鋼材の材料特性から、取替え時期を明確にすることができる。
さらに、ブレース部80はピン結合されているものであるから、地震後にブレース部80を新品に交換する復旧作業も、従来の軸力降伏型ダンパに比べて容易である。
第1実施形態は第1ブレース81、第2ブレース82をオイルダンパ71の水平方向一方の側に並べて配置している。第2実施形態は、この配置を変更することで、柱2、梁3、減衰部70及びブレース部80で構成される構面5の水平方向への変形を安定させることを目的としてなされたものである。
このように、互いに交差する第1ブレース81と第2ブレース82の間に減衰部70(オイルダンパ71)を配置することで、水平方向のバランスが保たれる。したがって、構面のねじれ変形を抑制することができるので、第1ブレース81、第2ブレース82は水平方向への変形が特定の方向へ偏ることなく安定する。
なお、図4、図5において、第1実施形態と同じ構成要素には、図1、図2と同じ符号を付している。図6以降も同様である。
第3実施形態は、第2実施形態よりもさらに水平方向の変形状態を安定化させること目的としてなされたものである。
図6が示すように、第3実施形態による耐震構造体30は、用いられる構成要素及び減衰部70(オイルダンパ71)の両側に第1ブレース81及び第2ブレース82を各々配置することは第2実施形態と同じである。しかるに第3実施形態は、第1ブレース81及び第2ブレース82を増設することで、第2実施形態よりもさらに水平方向のバランスを高め、変形状態を安定させる。
また、耐震構造体30は、オイルダンパ71を基準にして、水平方向の一方の側に第2ブレース82aを配置し、他方の側に第2ブレース82bを配置する。つまり、2つの第2ブレース82a及び第2ブレース82bがオイルダンパ71を基準にして対称の位置に配置されている。なお、2つの第2ブレース82a及び第2ブレース82bは同じ向きに傾いているが、2つの第1ブレース81a及び第1ブレース81bとは互いに交差している。
また、第3実施形態による耐震構造体30は、第1ブレース81a及び第1ブレース81b、第2ブレース82a及び第2ブレース82bと、全部で4基のブレースを備えているので、仮にいずれか1基(例えば、第1ブレース81a)が早期に破断してしまった場合でも、対をなしているもう1基のブレース(例えば、第1ブレース81b)が破断していなければ、図6(c)が示すように、剛性がゼロになるという急激な変化に至ることがなく、震動によるエネルギを吸収できる。したがって、耐震構造体30は安定した耐震性能を発揮できる。
以上の第1実施形態〜第3実施形態は、第1ブレース81及び第2ブレース82に圧縮軸力が作用すると面外方向へたわむ。このとき、第1ブレース81と第2ブレース82同士が接触し、あるいは、第1ブレース81又は第2ブレース82とオイルダンパ71が接触すると、これら部材が損傷するおそれがある。第4実施形態は、これら部材が接触することにより損傷するのを防止することを目的とする。
第4実施形態の耐震構造体40は、基本的な構成は第3実施形態の耐震構造体30と同じであるが、ブレースの具体的な構造が耐震構造体30と相違する。つまり、図7(a)の破線で示すように、耐震構造体40に取り付ける前から第1ブレース81a、81bにたわみ(初期たわみ)を与えておく。この初期たわみは、長手方向の中央をピークとしてオイルダンパ71から離れる向きに凸とされている。初期たわみは、偏平な第1ブレース81a、81bを作製した後に、曲げ加工などを施すことにより得ることができる。
第4実施形態における初期たわみ量を本発明は限定するものではないが、第1ブレース81a、81bの長さの1/1000程度以上(3000mmの場合には3mm程度以上)とすると、圧縮荷重が加わったときにたわみをオイルダンパ71から離れる向きに確実に生じさせることができる。
初期たわみを与える代替手段として、ピンPと第1ブレース81a、81bの間にくさびを打つなどしてたわみを与えることもできる。
第5実施形態の耐震構造体50は、第4実施形態と目的は同じであるが、それを達成するための手段が相違する。
耐震構造体50は、図8に示すように、第1ブレース81a、81b(第2ブレース82a、82b)の横断面を単純な矩形とするのではなく、載荷軸芯xよりオイルダンパ71から離れる側(外側)に断面の中立軸yを有するように第1ブレース81の断面を構成することを特徴としている。より具体的には、偏平な第1ブレース81a、81bの外側の面に、長手方向に延びる突条87a、87bを取り付ける。
これにより、圧縮軸力が第1ブレース81に加わると、第1ブレース81の軸直角方向に生ずるたわみを、外側に確実に向くようにすることができるので、オイルダンパ71との接触などによる損傷を確実に回避することができる。
さらに、耐震構造体50は、第4実施形態のように初期たわみを与えるための加工を別途施す必要がないので、初期製作時の製作コストを低減できる。
耐震構造体50では偏平な第1ブレース81a、81bの外側の面に突条87a、87bを取り付ける構造としたが、これに限定されるものではない。中立軸が第1ブレース81a、81b(主たる平板)よりも外側に位置すること、また設定すべき降伏荷重で断面の縮小部が塑性化すること、端部ピン位置などで最大荷重時でも塑性化が発生しないことを満足すればよい。これは第1実施形態〜第4実施形態でも同様である。
第6実施形態の耐震構造体60は、減衰部70としてオイルダンパ71を備えているが、本発明の減衰部70は鋼板と粘弾性体により粘弾性ダンパ76を備えている。
耐震構造体60は、図9が示すように、第1ブレース81aの第1ブレース81bに対向する面に、第1ブレース81bに向けて張り出すリブ77を設ける。また、第1ブレース81bの第1ブレース81aに対向する面に、第1ブレース81aに向けて張り出すリブ78a、78bを設ける。リブ78a、78bはリブ77を挟むよう二枚を一対(78a,78b)として第1ブレース81bに設けられる。リブ77、78a,78bは、第1ブレース81a,81bの長手方向に間隔をあけて4箇所に設けられている。リブ77とリブ78aの間、及びリブ77とリブ78bの間、には、粘弾性体EVが介在している。こうして、リブ77、リブ78a及び粘弾性体EV、また、リブ77、リブ78b及び粘弾性体EV、により粘弾性ダンパ76が構成される。
なお、ここでは第1ブレース81a及び第1ブレース81bについて説明したが、第2ブレース82a及び第2ブレース82bについても同様に粘弾性ダンパ76(減衰部70)を設けることができる。
図10に示す耐震構造体90は、リブ77,78が、第1ブレース81a及び第1ブレース81bに設けられたリブ支持板79a,79bに設けられている。リブ支持板79a,79bは、第1ブレース81a及び第1ブレース81bよりも幅広に形成されており、例えば溶接により第1ブレース81a及び第1ブレース81bの背面に固定されている。したがって、リブ支持板79a,79bの各々が第1ブレース81a及び第1ブレース81bよりも幅方向に突出する。そして、第1ブレース81a側のリブ支持板79aの幅方向の両縁にリブ77が固定され、第1ブレース81b側のリブ支持板79bの幅方向の両縁にリブ78が固定されている。リブ77は第1ブレース81bに向けて延設されており、逆に、リブ78は第1ブレース81aに向けて延設されている。対応するリブ77とリブ78との間には間隙が設けられており、この間隙には粘弾性体EVが配置されている。
以上のように構成することで、オイルダンパ71と粘弾性ダンパ76とが干渉するのを避けてオイルダンパ71と粘弾性ダンパ76の併用を可能にした。そして、大きな減衰能力が必要な場合には、このようにオイルダンパ71と粘弾性ダンパ76を併用することが有効である。
2 柱
3 梁
5 構面
10,20,30,40,50,60,90 耐震構造体
70 減衰部
71 オイルダンパ
76 粘弾性ダンパ
77,78,78a,78b リブ
79a,79b リブ支持板
80 ブレース部
81,81a,81b 第1ブレース
82,82a,82b 第2ブレース
87a,87b 突条
EV 粘弾性体
x 載荷軸芯
y 中立軸
Claims (8)
- 柱と梁で構成される架構の構面内に設けられ、
前記架構に減衰を付加する減衰部と、
第1ブレース及び第2ブレースを備え、前記第1ブレース及び前記第2ブレースのうちの一方に引張軸力が生ずると他方に圧縮軸力が生じ、前記第1ブレース及び前記第2ブレースともに前記引張軸力が降伏荷重を超えると塑性化するが、圧縮力が作用した場合には軸力を伝達せずにたわみを生ずるブレース部と、
を備え、
前記減衰部と前記ブレース部が並列に配置される、
ことを特徴とする耐震構造体。 - 前記減衰部は粘性ダンパからなる、
請求項1に記載の耐震構造体。 - 前記第1ブレースと前記第2ブレースは、前記減衰部を基準にして、水平方向の両側に配置されている、
請求項1又は2に記載の耐震構造体。 - 前記減衰部を基準にして、水平方向の両側に配置される一対の前記第1ブレースと、
前記減衰部を基準にして、水平方向の両側に配置される一対の前記第2ブレースと、を備える
請求項3に記載の耐震構造体。 - 前記第1ブレース及び前記第2ブレースは、
前記圧縮軸力が生じると前記減衰部から離れる向きにたわむように構成されている、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐震構造体。 - 前記第1ブレース及び前記第2ブレースは、
前記離れる向きに予めたわみを持つように加工されている、
請求項5に記載の耐震構造体。 - 前記第1ブレース及び前記第2ブレースは、
載荷軸芯より前記離れる向きに断面の中立軸がずれている、
請求項5に記載の耐震構造体。 - 前記減衰部は、一対の前記第1ブレースの間、及び、一対の前記第2ブレースの間、のいずれか一方又は双方に形成される粘弾性ダンパからなる、
請求項4に記載の耐震構造体。
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