JP7194361B2 - 電池セル、セルスタック、及びレドックスフロー電池 - Google Patents
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Description
電極と、前記電極の一面に対向する隔膜と、前記電極の他面に対向する双極板とを備え、レドックスフロー電池に用いられる電池セルであって、
前記双極板は、前記電極との対向面に電解液の流路を備え、
前記電極は、カーボン素材を含む多孔質体であり、
前記電極の厚さ方向に0.8MPaの面圧を加えた状態における前記電極の厚さ方向の圧縮ひずみが20%以上60%以下である。
本開示の電池セルを備える。
本開示の電池セル、又は本開示のセルスタックを備える。
特許文献1は、上述の0.8MPaの圧縮応力での圧縮ひずみが20%未満という相対的に硬いカーボン紙であれば、双極板に設けられた溝内への侵入が低減される旨を開示する。また、特許文献1は、上記溝内に侵入した電極によって溝内における電解液の流れが制限されることを低減して、性能の安定性(一貫性)を向上させる旨を開示する。しかし、上記0.8MPaの圧縮応力での圧縮ひずみが20%未満という電極は、電池性能の更なる向上ができない。
本開示の電池セル、及び本開示のセルスタックは、電池性能を向上できるレドックスフロー電池を構築できる。本開示のレドックスフロー電池は、電池性能を向上できる。
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る電池セルは、
電極と、前記電極の一面に対向する隔膜と、前記電極の他面に対向する双極板とを備え、レドックスフロー電池に用いられる電池セルであって、
前記双極板は、前記電極との対向面に電解液の流路を備え、
前記電極は、カーボン素材を含む多孔質体であり、
前記電極の厚さ方向に0.8MPaの面圧を加えた状態における前記電極の厚さ方向の圧縮ひずみが20%以上60%以下である。
前記流路は、幅が0.6mm以上5.0mm以下である溝を含む形態が挙げられる。
前記流路は、深さが0.6mm以上5.0mm以下である溝を含む形態が挙げられる。
前記電極は、カーボン繊維と、カーボンバインダー残渣とを含むカーボン紙である形態が挙げられる。
前記電極は、カーボン繊維と、カーボンバインダー残渣と、カーボン粒子とを含むカーボン紙である形態が挙げられる。
前記カーボン粒子の含有量が10質量%以上50質量%以下である形態が挙げられる。
前記電極の初期厚さが0.3mm以上2.0mm以下である形態が挙げられる。
前記電極の嵩密度が0.11g/cm3以上0.7g/cm3以下である形態が挙げられる。
前記電極の嵩密度が前記電極の厚さ方向に異なっており、
前記電極における前記隔膜との近傍領域、及び前記電極における前記双極板との近傍領域の少なくとも一方の領域に前記嵩密度の極大値を有する形態が挙げられる。
前記電極の剛軟度が10mN以上450mN以下である形態が挙げられる。
前記電極は、非カーボン系材料からなる触媒を担持している形態が挙げられる。
前記非カーボン系材料は、酸化物及び炭化物の少なくとも一種の材料である形態が挙げられる。
前記流路は、前記双極板の供給縁寄りに設けられる第一の溝と、前記双極板の排出縁寄りに設けられる第二の溝とが隣り合って並ぶ溝の組を含む形態が挙げられる。
前記流路は、蛇行溝を含む形態が挙げられる。
前記隔膜の厚さが7μm以上60μm以下である形態が挙げられる。
前記隔膜は、イオン交換膜である形態が挙げられる。
前記イオン交換膜は、イオン交換基を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを含むフッ素系陽イオン交換膜であり、
前記イオン交換基は、スルホン酸であり、
前記イオン交換基のクラスタ径が2.5nm以上であり、
前記フッ素系高分子電解質ポリマーにおける前記イオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数が950g/eq以下である形態が挙げられる。
上述の(1)から(17)のいずれか一つの電池セルを備える。
上述の(1)から(17)のいずれか一つの電池セル、又は上述の(18)のセルスタックを備える。
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の電池セル、セルスタック、及びレドックスフロー電池(RF電池)を説明する。図において同一符号は同一名称物を意味する。
まず、図1,図2を参照して、実施形態の電池セル1、セルスタック2、RF電池10の概要を説明する。その後、実施形態の電池セル1に備えられる電極12、双極板15、隔膜11を順に説明する。なお、後述するように一つの電池セル1は、電極12として正極電極13及び負極電極14を含む。以下の説明では、主として、正極電極13及び負極電極14の少なくとも一方を電極12として説明する。
実施形態の電池セル1は、電極12と、電極12の一面に対向する隔膜11と、電極12の他面に対向する双極板15とを備え、RF電池10の主要素に用いられる。電極12は、カーボン素材を含む多孔質体である。双極板15は、電極12との対向面に電解液の流路4(図2)を備える。
電池セル1は、正極セル1A及び負極セル1Bを備える。正極セル1Aは、正極電極13(電極12の一例)と、隔膜11と、双極板15とを備える。負極セル1Bは、負極電極14(電極12の別例)と、隔膜11と、双極板15とを備える。RF電池10が単セル電池である場合、一つの正極セル1Aと一つの負極セル1Bとを備える。RF電池10が多セル電池である場合、正極セル1Aと負極セル1Bとの組を複数組備える。正極セル1Aと負極セル1Bとの組を複数備える多セル電池は、代表的にはセルスタック2を備える。電池セル1は、代表的には後述のセルフレーム3を用いて構築される。
RF電池10は、電解液循環型の蓄電池の一つである。RF電池10は、電池セル1(セルスタック2でもよい)と、電池セル1に電解液を供給する循環機構とを備える。代表的には、RF電池10は、介在機器6を介して、発電部7と負荷8とに接続される。介在機器6は、例えば交流/直流変換器、変電設備等が挙げられる。発電部7は、例えば太陽光発電機、風力発電機、その他一般の発電所等が挙げられる。負荷8は、例えば電力系統や電力の需要家等が挙げられる。RF電池10は、発電部7を電力供給源として充電を行い、負荷8を電力提供対象として放電を行う。RF電池10は、負荷平準化、瞬低補償や非常用電源、太陽光発電や風力発電といった自然エネルギー発電の出力平滑化等に利用される。
循環機構は、タンク16,17と、配管160,170(往路配管161,171、復路配管162,172)と、ポンプ18,19とを備える。タンク16は、正極電極13に循環供給する正極電解液を貯留する。往路配管161及び復路配管162はタンク16と正極セル1A間を接続する。タンク17は、負極電極14に循環供給する負極電解液を貯留する。往路配管171及び復路配管172はタンク17と負極セル1B間を接続する。ポンプ18,19はそれぞれ、往路配管161,171に接続されて、正極セル1A,負極セル1Bに電解液を循環供給する。図1の黒矢印は、電解液の流れを例示する。
電解液には、活物質となるイオンを含む溶液が利用できる。代表的な電解液は、上記イオンと、酸とを含む水溶液が挙げられる。図1は、正負の活物質としてバナジウムイオンを含む全バナジウム系RF電池を例示する。正極活物質としてマンガンイオンを含み、負極活物質としてチタンイオンを含むMn-Ti系RF電池等、公知の組成の電解液を利用することができる。
セルフレーム3は、双極板15と、枠体30とを備える。双極板15は、電流を流す導電性の部材であり、電解液を通さない部材である。双極板15は、電解液の流路4(図2)を備えるため、電解液の流通性に優れる。枠体30は、双極板15を支持すると共に、双極板15に配置される電極12への電解液の供給、電極12からの電解液の排出に利用される電気絶縁性の部材である。単セル電池又は多セル電池の端部に利用されるセルフレーム3では、双極板15の一面に電極12が配置される。多セル電池の中間部に利用されるセルフレーム3では、双極板15の一面に正極電極13が配置される。この双極板15の他面に負極電極14が配置される。つまり、一組の正極電極13及び負極電極14は、一つの双極板15の両面を挟むように配置される。
セルスタック2は、代表的には複数の電池セル1の積層体と、一対のエンドプレート21と、締結部材22とを備える。上記積層体は、正極セル1A、負極セル1Bが順に積層されて構築される。具体的には、上記積層体は、複数のセルフレーム3を備え、セルフレーム3(双極板15)、正極電極13、隔膜11、負極電極14が順に積層される(図2の分解図参照)。締結部材22は、長ボルト等の連結材及びナット等が挙げられる。締結部材22によってエンドプレート21間が締め付けられる。上記積層体は、その積層方向の締付力によって積層状態を保持する。この締付力によって、各電池セル1を構成する電極12に所定の面圧が負荷される。この負荷状態で、電池セル1はRF電池10に使用される。
以下、図3から図5を参照して、電極12を詳細に説明する。
図3Cは、電極12における厚さ方向に平行な面、ここでは電極12の側面を平面視した状態を示す。電極12の側面は、電極12の表面120であって隔膜11に対向する面(図3Cでは紙面上側の面)と、電極12の表面120であって電極12における双極板15に対向する面(図3Cでは紙面下側の面)とを繋ぐ面である。
図4は、一つの正極セル1Aと一つの負極セル1Bとを備える単セル電池(RF電池10の一例)を構成部材の積層方向に平行する平面で切断した状態を示す部分断面図である。図4は、隔膜11、電極12、双極板15を模式的に示す。これら各部材の寸法(厚さ等)は実際の寸法とは異なる。図4に示す双極板15の断面図は、図6Aに示す切断線(IV)-(IV)で切断した場合に相当する。
図5は、電極12の組織を模式的に示す拡大図である。
実施形態の電池セル1に備えられる正極電極13及び負極電極14の少なくとも一方の電極12は、上述のように0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが20%以上60%以下である。
電極12の初期厚さt0は、JIS L 1096(2010年)のA法(JIS法)に準拠して測定する。具体的には、市販の厚さ測定装置を用いて、一定の時間及び一定の圧力の下で、電極12の厚さを測定する。上記時間は10秒間とする。上記圧力は、0.7kPaとする。測定した厚さを初期厚さt0とする。初期厚さt0及び厚さt0.8はいずれも、RF電池10に組み付ける前の電極12について測定するとよい。
電極12は、カーボン素材を含む多孔質体であり、カーボン素材を主体とすることが好ましい。ここでの主体とするとは、電極12を100質量%として、カーボン素材の含有量が95質量%以上を満たすことをいう。このような多孔質体は、上述の0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが20%以上60%以下を満たすように製造すればよい。電極12は、例えば、カーボン素材の種類、含有量、形状、大きさ、嵩密度、剛軟度等を調整して製造することが挙げられる。
電極12の具体例として、カーボン繊維50と、カーボンバインダー残渣51とを含むカーボン紙が挙げられる。この電極12は、カーボン繊維50がカーボンバインダー残渣51によって三次元的に結着されて、多孔質体となっている。
電極12は、非カーボン系材料からなる触媒55を担持してもよい。触媒55は、電解液中の活物質(イオン)と反応活性を示す物質である。触媒55を備えることで、電極12は、電池反応をより良好に行える。
W(タングステン)、Si(珪素)、Ti(チタン)、Ce(セリウム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Sn(錫)、Mo(モリブデン)、In(インジウム)、Sb(アンチモン)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)、Ru(ルテニウム)、Ir(イリジウム)、Pd(パラジウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Ba(バリウム)等。
酸化物、炭化物は、上記に列挙する元素のうち、一種又は二種以上の元素を含むとよい。電極12は、一種以上の酸化物からなる触媒55、一種以上の炭化物からなる触媒55、又は上記の双方の触媒55を担持してもよい。上記に列挙する非カーボン系材料からなる触媒55を備える電極12は、電池反応をより良好に行えて、セル抵抗の低減効果を得易い。
電極12の初期厚さt0は、例えば0.3mm以上2.0mm以下が挙げられる。初期厚さt0が0.3mm以上であれば、電極12は大きな体積を有することで大きな表面積を有し易い。このような電極12は、RF電池10に組み付けられて所定の面圧を受けた状態でも、電池反応を良好に行える。初期厚さt0が2.0mm以下であれば、RF電池10に組み付けられて所定の面圧を受けて圧縮された状態でも電極12が厚過ぎない。このような電極12は、電極12内における電解液の流速を低下させ難い。適切な流速の電解液は、良好な電池反応を可能にする。この理由は、電解液が電極12の広範囲に行き渡るからである。また、このような電極12は、電解液の流通性にも優れる。初期厚さt0が0.33mm以上、更に0.35mm以上、0.38mm以上であれば、電極12の表面積をより増大し易い。ひいてはRF電池10はセル抵抗を低減し易い。初期厚さt0が1.8mm以下、更に1.5mm以下、1.3mm以下であれば、上述の流速の低下を抑制し易い。ひいてはRF電池10はセル抵抗を低減し易い。また、初期厚さt0がより薄い電極12は、電解液の流通性により優れるため、圧損の増大をより低減し易い。
電極12の嵩密度は、例えば0.11g/cm3以上0.7g/cm3以下が挙げられる。ここでの嵩密度は、電極12に面圧を加えていない状態(以下、非圧縮状態と呼ぶ)で測定する。嵩密度が0.11g/cm3以上であれば、カーボン素材が少な過ぎない。そのため、電極12は大きな表面積を有し易い。このような電極12は、電池反応を良好に行える。嵩密度が0.7g/cm3以下であれば、カーボン素材が多過ぎない。このような電極12は、電解液の流通性に優れる。そのため、電極12内での圧損が増大し難い。嵩密度が0.15g/cm3以上、更に0.18g/cm3以上、0.20g/cm3以上であれば、電極12は、表面積をより増大し易い。ひいてはRF電池10はセル抵抗を低減し易い。嵩密度が0.65g/cm3以下、更に0.60g/cm3以下、0.57g/cm3であれば、電解液の流通性により優れ、圧損の増大を低減し易い。
(1)電極12の空隙率を求める。
空隙率の測定は、市販の三次元画像解析装置によってX線-CT三次元画像を取得し、取得した三次元画像を解析することが挙げられる。三次元画像において、電極12の表面120から厚さ方向に10等分して、電極12を10個の領域に分割する。各領域の厚さは、電極12の厚さtの10%である。各領域の空隙率Pを求める。
空隙率P(%)は、三次元画像の解析から求められる。基本式は、P={(各領域の全体体積-各領域を構成するカーボン素材の体積)/各領域の全体体積}×100が挙げられる。
上述の各領域の空隙率Pと電極12の真密度dとを用いて、嵩密度Bに変換する。真密度dは、例えばピクノメーター法によって求めることが挙げられる。
嵩密度B(g/cm3)は、B=d×(1-P/100)から求める。
電極12を電極12の厚さ方向に分割した10個の領域の嵩密度Bを比較し、近傍領域121,125の嵩密度Bが極大値をとるか否かを調べる。
電極12の剛軟度は、例えば10mN以上450mN以下が挙げられる。剛軟度が10mN以上であれば電極12が柔らか過ぎない。そのため、上述の0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが60%以下であることと合わせて、電極12がある程度変形し難い。従って、電極12の空孔が過度に潰されることをより防止し易い。また、このような電極12は、双極板15の溝40に入り込み過ぎない。そのため、電極12は、溝40への入り込みに起因する電解液の流通性の低下を抑制し易い。剛軟度が450mN以下であれば電極12が硬過ぎない。そのため、上記圧縮ひずみが20%以上であることと合わせて、電極12がある程度変形し易い。従って、電極12における表面120近くの領域が双極板15により密着し易い。この密着により、電極12は、双極板15との接触抵抗をより低減し易い。また、電極12は、上述の双極板15の溝40への若干の入り込みにより電池反応を良好に行える。剛軟度が15mN以上、更に20mN以上、25mN以上であれば、電解液の流通性により優れ、圧損の増大を低減し易い。剛軟度が430mN以下、更に400mN以下、380mN以下であれば、RF電池10のセル抵抗を低減し易い。
以下、主に図6A,6Bを参照して、双極板15を詳細に説明する。
図6A,図6Bはいずれも、双極板15のうち、枠体30に覆われる周縁側の領域を省略し、セルフレーム3の窓部31(図2)から露出される領域(以下、露出領域と呼ぶ)のみを示す平面図である。露出領域には、電極12が配置される。
双極板15が電極12との対向面に電解液の流路4を備えると、電解液の流通性に優れるRF電池10を構築できて好ましい。流路4は、例えば、双極板15における電極12との対向面に開口する溝40を含むことが挙げられる。上述の硬過ぎず柔らか過ぎない特定の電極12と、溝40を有する双極板15とを用いてRF電池10を構築すると、上述のように電極12は、溝40の開口部近くに若干張り出すものの、溝40の全体を塞がない(図4も参照)。従って、溝40は電解液の流通空間を確保できる。このようなRF電池10は、溝40といった流路4を備えることによる良好な電解液の流通性を確保しつつ、電池反応も良好に行える。
溝40は、例えば、電解液の流通方向に沿って直線状に設けられ、平面形状が長方形であるもの(図6A、溝41,42)が挙げられる。その他、平面形状は、曲線の波形、ジグザグ形状(三角波状)、矩形波状、鋸波状(直角三角波状)等が挙げられる。図6Bは、曲線の波形からなる蛇行溝45を例示する。溝40は、供給縁4i側から排出縁4o側に向かって連続して設けられることが挙げられる(例、溝41,42、蛇行溝45)。また、溝40は、一端が開口し、他端が閉じた形状(例、溝41,42)、両端が開口した形状(例、蛇行溝45)が挙げられる。
(A)溝41の一端が供給縁4iに開口し、他端が排出縁4oに閉口する。
(B)溝41の両端がいずれも供給縁4i、排出縁4oに開口しない。かつ、溝41の一端から供給縁4iまでの距離L1と、溝41の他端から排出縁4oまでの距離L2とを比較すると、供給縁4i側の距離L1が距離L2よりも短い。
(a)電解液の流通方向に沿った直線状の溝である、
(b)同一形状、同一の大きさである、
(c)供給縁4i(又は排出縁4o)の延伸方向に隣り合って等間隔に並ぶ。つまり、第一の溝41と第二の溝42とが交互に並ぶ。また、第一の溝41、畝部48、第二の溝42が順に繰り返し並ぶ。
更に、図6Aに例示する双極板15は、第一の溝41、第二の溝42の組を複数備える。この双極板15では、複数の第一の溝41が上記延設方向に所定の間隔で並ぶと共に、複数の第二の溝42が上記延設方向に所定の間隔で並ぶ。かつ、隣り合う第一の溝41間に第二の溝42が配置される。第一の溝41群の各溝41と第二の溝42群の各溝42とが噛み合うように配置される。いわば、双極板15は、インターディジタル状又は櫛歯が対向するように配置される溝40を備える。このような流路4が設けられた双極板15を備えるRF電池10は、セル抵抗の低減、圧損の増大抑制により一層寄与し易い。
流路4が供給縁4i又は排出縁4oの延伸方向に並ぶ複数の溝40を備える場合、流路4は、供給縁4iの延伸方向に沿って設けられる整流溝43、及び排出縁4oの延伸方向に沿って設けられる整流溝44の少なくとも一方を含んでもよい。図6Aは整流溝43,44を備える場合を例示する。図6Bは整流溝43,44を備えていない場合を例示する。供給縁4i側の整流溝43を備えることで、セルフレーム3の枠体30からの電解液は、供給縁4iに沿って拡散して、整流溝43から延びる複数の溝40(図6Aでは溝41)に均一的に流れ易い。排出縁4o側の整流溝44を備えることで、整流溝44に繋がる各溝40(図6Aでは溝42)からの電解液は、枠体30に排出され易い。
流路4は、幅w(図4)が0.6mm以上5.0mm以下である溝40を含むことが挙げられる。ここでの溝40の幅wとは、溝40の形状に沿った電解液の流れ方向に対して直交する平面で切断した断面において、溝40の開口部の長さとする。図4に例示するように溝40の断面形状が長方形であり、直方体の内部空間を有する溝40であれば、幅wは溝40の全長にわたって一様である。
流路4は、深さd(図4)が0.6mm以上5.0mm以下である溝40を含むことが挙げられる。ここでの溝40の深さdとは、溝40の形状に沿った電解液の流れ方向に対して直交する平面で切断した断面において、双極板15の厚さ方向に沿って、溝40の開口部から溝40の底面までの最大距離とする。図4に例示するように溝40の断面形状が長方形であり、直方体の内部空間を有する溝40であれば、深さdは溝40の全長及び全幅にわたって一様である。
流路4は、以下の条件(1)及び(2)の少なくとも一方を満たすことが挙げられる。流路4は、以下の条件(1)及び(2)の双方を満たすことが好ましい。また、流路4が複数の溝40を含む場合には、全ての溝40が以下の条件(1)及び(2)を満たすことが好ましい。
(2)一つの溝40における全長の50%以上の領域について、一様な大きさの深さdを有し、かつ深さdが0.6mm以上5.0mm以下を満たす。一つの溝40における全長の80%以上の領域、更には溝40の全長について、一様な大きさの深さdを有し、かつ上記の範囲を満たすことが好ましい。
流路4が並列される複数の溝40含む場合、隣り合う二つの溝40の最小間隔は、例えば溝幅wの1/2倍以上、溝幅wの7倍以下が挙げられる。上記最小間隔は畝部48の幅に相当する。図6Aは、溝41,42間に一様な幅を有する長方形状の畝部48を備える場合を例示する。図6Bは、隣り合う蛇行溝45間に一様な幅を有する波形の畝部48を備える場合を例示する。
流路4が溝40を含む場合、溝40の個数は適宜選択できる。溝40の個数がある程度多いと、電解液の流通性に優れ、RF電池10は圧損の増大を低減し易い。溝40の個数がある程度少ないと、畝部48を確保し易い。そのため、電極12が電池反応を良好に行えて、RF電池10はセル抵抗を低減し易い。
溝40の断面形状は、適宜選択できる。図4は、溝40の断面形状が長方形である場合を例示するが、上記断面形状はV字形状、半円形状等でもよい。ここでの溝40の断面形状とは、溝40の形状に沿った電解液の流れ方向に対して直交する平面で切断した断面における形状である。
双極板15の構成材料は、例えば有機複合材、いわゆる導電性プラスチック等が挙げられる。有機複合材は、例えば、炭素系材料や金属等の導電性材料と、熱可塑性樹脂等の有機材とを含むものが挙げられる。双極板15は、例えば公知の方法によって板状に成形するとよい。導電性プラスチックの成形方法は、例えば射出成型、プレス成型、真空成型等が挙げられる。流路4を備える双極板15は、例えば、板状に成形する際に同時に流路4も成形することが挙げられる。又は、流路4は、平坦な平板材に切削加工等を行って形成してもよい。
《構成材料》
隔膜11は、正極電解液と負極電解液とを隔てる部材である。隔膜11は、例えば、電解液中の活物質(イオン)を通さず、活物質の酸化還元反応によって生じ得る水素イオンを通過させるものが利用できる。隔膜11の一例として、イオン交換膜が挙げられる。イオン交換膜は、(a)正負の電解液の隔離性に優れる、(b)RF電池10内で電荷担体として利用される水素イオンの透過性に優れるといった効果を有する。そのため、隔膜11としてイオン交換膜を備える電池セル1は、電池反応を良好に行えるRF電池10を構築できる。
隔膜11の厚さt11(図4)は、例えば、7μm以上60μm以下が挙げられる。厚さt11が7μm以上であれば、RF電池10に組み付けられて所定の面圧を受けても、隔膜11が損傷し難い。厚さt11が60μm以下であれば、セル抵抗の増大を招き難い。厚さt11が12μm以上、更に15μm以上、18μm以上であれば、隔膜11の損傷をより防止し易い。厚さt11が50μm以下、更に45μm以下、40μm以下であれば、セル抵抗の増大をより抑制し易い。
実施形態の電池セル1は、0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが上述の特定の範囲を満たす電極12を備える。この電極12は、特許文献1に記載される電極に比較して硬過ぎず、柔らか過ぎない。そのため、電極12は、双極板15に設けられる流路4(溝40)に入り込み過ぎず、かつ溝40から電解液を受け取り易い。このような電極12を備える実施形態の電池セル1は、電極12が良好に電池反応を行える上に、電解液の流通性にも優れる。従って、実施形態の電池セル1は、RF電池10のセル抵抗を低減できる上に、圧損の増大を抑制できる。このような電池セル1は、従来よりも電池特性に優れるRF電池10を構築できる。この効果を以下の試験例で具体的に説明する。
0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが異なる電極を用いて、RF電池を構築して充放電を行い、以下のようにセル抵抗、圧損、性能の安定性を評価した。評価結果を表1~表10に示す。
(セル抵抗)
この試験では、以下のようにして、RF電池のセル抵抗率を求める。
RF電池は、単セル電池とする。単セル電池は、各試料の条件を満たす電極、隔膜、双極板を備える。正極電極及び負極電極はいずれも、各試料の条件を満たす電極とする。一対のセルフレームはいずれも、各試料の条件を満たす双極板を備える。正極電解液及び負極電解液は、硫酸バナジウム溶液とする。バナジウムイオンの濃度は1.7mol/Lである。なお、以下の試験では、正極電極及び負極電極の双方に同じ仕様の電極を用いているが、正極電極の仕様と負極電極の仕様とが異なってもよい。電極における正極活物質との反応性及び負極活物質との反応性、圧損等の観点から、正極電極及び負極電極のいずれか一方のみが、各試料の条件を満たす電極であってもよい。
この試験では、図7に示す測定システム600を用いて、RF電池の圧力損失ΔPを測定する。測定システム600は、測定セル610と、流体槽620と、配管630と、ポンプ640と、流量計650と、差圧計660とを備える。
(セル抵抗の評価)
各試料のセル抵抗率について基準値に対する相対値を求める。セル抵抗は、上記相対値を用いて、S,A~Cの四段階で評価する。具体的には、各試料のセル抵抗率xnと、表1~表10に「基準」と示す試料のセル抵抗率x0との差(xn-x0)を求める。更に、基準値であるセル抵抗率x0に対する上記差の割合{(xn-x0)/x0}×100(%)を求める。この割合をセル抵抗の評価に用いる。上記割合が負の値であれば、当該試料のセル抵抗率xnは、「基準」とする試料のセル抵抗率x0よりも低いといえる。四段階の評価は、以下の通りである。
A:当該試料のセル抵抗率は表中の「基準」よりも低く、上記割合の絶対値が2%以上5%未満である。即ち、当該試料のセル抵抗率は、基準値よりも2%以上5%未満の範囲で低下している。
B:当該試料のセル抵抗率は表中の「基準」と同等程度であり、上記割合の絶対値が0%以上2%未満である。
C:当該試料のセル抵抗率は表中の「基準」よりも高い。
各試料の圧力損失ΔPについて基準値に対する相対値を求める。圧損は、上記相対値を用いて、S,A,Bの三段階で評価する。具体的には、各試料の圧力損失ΔPnと、表1~表10に「基準」と示す試料の圧力損失ΔP0との差(ΔPn-ΔP0)を求める。更に、基準値である圧力損失ΔP0に対する上記差の割合{(ΔPn-ΔP0)/ΔP0}×100(%)を求める。この割合を圧損の評価に用いる。上記割合が負の値であれば、当該試料の圧力損失ΔPnは、「基準」とする試料の圧力損失ΔP0よりも低いといえる。三段階の評価は、以下の通りである。
A:当該試料の圧力損失ΔPは表中の「基準」と同等程度であり、上記割合は±10%以内である。
B:当該試料の圧力損失ΔPは表中の「基準」よりも高く、上記割合の絶対値が10%超である。
各試料について、上述のセル抵抗率を5回測定し(n=5)、5回の平均値及び標準偏差を求める。求めた平均値と標準偏差とを用いて、RF電池の性能の安定性を以下のA,Bの二段階で評価する。n=5の標準偏差が小さいほど、セル抵抗率のばらつきが小さく、RF電池の性能が安定しているといえる。
A:n=5の測定の標準偏差が平均値の10%以下である。
B:n=5の測定の標準偏差が平均値の10%より大きい。
更に、この試験では、以下のS,A~Cの四段階で総合的に評価する。
S:セル抵抗及び圧損の少なくとも一方が「S」の評価を有する。
A:セル抵抗及び圧損の双方が「A」の評価を有する。このような試料は、後述の従来試料よりも優れた性能を有する。
B:セル抵抗及び圧損の少なくとも一方が「B」の評価を有する。このような試料は、従来試料と同等程度である。なお、後述の従来試料の総合評価は「B」とする。
C:セル抵抗が「C」の評価を有し、圧損が「B」の評価を有する。このような試料は、従来試料よりも劣る。
0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが異なる電極を用いて、上述のようにRF電池を構築してセル抵抗、圧損、性能の安定性を評価し、評価結果を表1に示す。
初期厚さt0:0.3mm以上2.0mm以下
嵩密度:0.11g/cm3以上0.7g/cm3以下
電極は、電極の厚さ方向に一様な嵩密度を有し、極大値を有さない。
剛軟度:10mN以上450mN以下
触媒:担持せず
《隔膜の条件》
隔膜の厚さ:20μm
イオン交換基のクラスタ径:2.5nm
フッ素系高分子電解質ポリマーにおけるイオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数(以下、当量質量EWと呼ぶ):750g/eq
《流路の条件》
溝幅:2.0mm
溝深さ:1.5mm
溝幅、及び溝深さは、溝の長手方向に一様である。
初期厚さt0は、上述のようにJIS法に準拠して、市販の厚さ測定装置(例、株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器PG-16J、測定子径:Φ25.2mm)を用いて測定する(面圧:0.7kPa、時間:10秒間)。
上記圧縮ひずみは、上記の初期厚さt0と、厚さt0.8とを用いて求める。厚さt0.8は、市販の強度評価装置(例、株式会社島津製作所製の微小強度評価試験機MST-I type HR)を用いて、上述のように0.8MPaの面圧を負荷した状態で測定する。
嵩密度は、上述のように市販の三次元画像解析装置(例、ZEISS社製のXradia520Versa)によって、X線-CT三次元画像を取得し、空隙率を嵩密度に変換して求めるとよい。
剛軟度は、上述のようにガーレ式剛軟度試験に準拠して、市販の測定装置(例、株式会社東洋精機製作所、デジタルガーレ・柔軟度試験機、型番No.826)を用いて求めるとよい。
クラスタ径は、上述のようにSAXSを用いて求めるとよい。
当量質量EWは、フッ素系高分子電解質ポリマーを塩置換した溶液をアルカリ溶液で逆滴定して求めるとよい。
各試料における0.8MPaの面圧での圧縮ひずみ(%)は、18%以上65%以下の範囲であり、表1に示す値(%)である。
試料No.100の上記圧縮ひずみは20%未満である。セル抵抗の評価、圧損の評価において、試料No.100は、その他の試料に対する「基準」とする。
試料No.1~No.3の上記圧縮ひずみは20%以上60%以下である。
試料No.200の上記圧縮ひずみは60%超である。
以下、試験例1~10において、「0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが20%未満である試料」を従来試料と呼ぶことがある。
0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが異なる電極と、流路の溝幅が異なる双極板とを用いて、上述のようにRF電池を構築してセル抵抗、圧損、性能の安定性を評価し、評価結果を表2に示す。
《電極の条件》
カーボン粒子の組成:平均粒径が480nmのカーボンブラック
カーボン粒子の含有量:カーボン紙を100質量%として25質量%
初期厚さt0:0.75mm
嵩密度:0.32g/cm3、
電極は、電極の厚さ方向に一様な嵩密度を有し、極大値を有さない。
剛軟度:170mN
触媒:担持せず
《隔膜の条件》
隔膜の厚さ:25μm
イオン交換基のクラスタ径:2.7nm
当量質量EW:850g/eq
《流路の条件》
溝幅:0.55mm以上5.2mm以下の範囲であり、表2に示す値(mm)
溝深さ:1.5mm
溝幅、及び溝深さは、溝の長手方向に一様である。
試料No.101~No.104は、0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが20%未満である従来試料である。各試料の上記圧縮ひずみ(%)を表2に示す。セル抵抗の評価及び圧損の評価において、試料No.101は、試料No.51に対する「基準」とする。試料No.102~No.104は順に、試料No.4,No.5,No.6及びNo.52に対する「基準」とする。
試料No.4~No.6の上記圧縮ひずみは35%であり、溝幅は0.6mm以上5.0mm以下である。
試料No.51の上記圧縮ひずみは35%であり、溝幅は0.6mm未満である。試料No.52の上記圧縮ひずみは35%であり、溝幅は5.0mm超である。
表2に示すように、試料No.4~No.6はそれぞれ、従来試料No.102~No.104に比較して、同等程度の圧損を有しつつ、セル抵抗を低減できることが分かる。また、試料No.4~No.6は、性能の安定性の評価から、低いセル抵抗を安定して有することが分かる。更に、試料No.4のセル抵抗は、試料No.51のセル抵抗に比較して低い。試料No.6のセル抵抗及び圧損は、試料No.52のセル抵抗及び圧損に比較して低い。
0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが異なる電極と、流路の溝深さが異なる双極板とを用いて、上述のようにRF電池を構築してセル抵抗、圧損、性能の安定性を評価し、評価結果を表3に示す。
《電極の条件》
カーボン粒子の組成:平均粒径が10μmの黒鉛粒子
カーボン粒子の含有量:カーボン紙を100質量%として40質量%
初期厚さt0:0.9mm
嵩密度:0.35g/cm3
電極は、電極の厚さ方向に一様な嵩密度を有し、極大値を有さない。
剛軟度:210mN
触媒:担持せず
《隔膜の条件》
隔膜の厚さ:15μm
イオン交換基のクラスタ径:2.5nm
当量質量EW:700g/eq
《流路の条件》
溝幅:2.0mm
溝深さ:0.55mm以上5.2mm以下の範囲であり、表3に示す値(mm)
溝幅、及び溝深さは、溝の長手方向に一様である。
試料No.105~No.108は、0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが20%未満である従来試料である。各試料の上記圧縮ひずみ(%)を表3に示す。セル抵抗の評価及び圧損の評価において、試料No.105は、試料No.53に対する「基準」とする。試料No.106~No.108は順に、試料No.7,No.8,No.9及びNo.54に対する「基準」とする。
試料No.7~No.9の上記圧縮ひずみは50%であり、溝深さは0.6mm以上5.0mm以下である。
試料No.53の上記圧縮ひずみは50%であり、溝深さは0.6mm未満である。試料No.54の上記圧縮ひずみは50%であり、溝深さは5.0mm超である。
表3に示すように、試料No.7~No.9はそれぞれ、従来試料No.106~No.108に比較して、同等程度の圧損を有しつつ、セル抵抗を低減できることが分かる。また、試料No.7~No.9は、性能の安定性の評価から、低いセル抵抗を安定して有することが分かる。更に、試料No.7のセル抵抗及び圧損は、試料No.53のセル抵抗及び圧損に比較して低い。試料No.9のセル抵抗は、試料No.54のセル抵抗に比較して低い。
0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが異なると共に、カーボン粒子の含有量が異なる電極を用いて、上述のようにRF電池を構築してセル抵抗、圧損、性能の安定性を評価し、評価結果を表4に示す。
《電極の条件》
カーボン粒子の組成:平均粒径が250nmのカーボンブラック及び平均粒径が30μmの黒鉛粒子の少なくとも一方
カーボン粒子の含有量(ここでは合計含有量):カーボン紙を100質量%として、9質量%以上55質量%以下の範囲であり、表4に示す量(質量%)
初期厚さt0:0.3mm以上2.0mm以下
嵩密度:0.11g/cm3以上0.7g/cm3以下
電極は、電極の厚さ方向に一様な嵩密度を有し、極大値を有さない。
剛軟度:10mN以上450mN以下
触媒:担持せず
《隔膜の条件》
隔膜の厚さ:30μm
イオン交換基のクラスタ径:2.7nm
当量質量EW:950g/eq
《流路の条件》
溝幅:2.0mm
溝深さ:1.5mm
溝幅、及び溝深さは、溝の長手方向に一様である。
試料No.109~No.111は、0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが20%未満である従来試料である。セル抵抗の評価及び圧損の評価において、試料No.109~No.111は順に、試料No.55及びNo.10,No.11,No.12及びNo.56に対する「基準」とする。
試料No.10~No.12の上記圧縮ひずみは30%又は50%であり、カーボン粒子の含有量は10質量%以上50質量%以下である。
これらの試料の上記圧縮ひずみ(%)を表4に示す。
試料No.55の上記圧縮ひずみは40%であり、カーボン粒子の含有量は10質量%未満である。試料No.56の上記圧縮ひずみは35%であり、カーボン粒子の含有量は50質量%超である。
表4に示すように、試料No.10~No.12はそれぞれ、従来試料No.109~No.111に比較して、同等程度の圧損を有しつつ、セル抵抗を非常に低減できることが分かる。また、試料No.10~No.12は、性能の安定性の評価から、低いセル抵抗を安定して有することが分かる。更に、試料No.10のセル抵抗は、試料No.55のセル抵抗に比較して低い。試料No.12のセル抵抗及び圧損は、試料No.56のセル抵抗及び圧損に比較して低い。
0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが異なると共に、初期厚さt0が異なる電極を用いて、上述のようにRF電池を構築してセル抵抗、圧損、性能の安定性を評価し、評価結果を表5に示す。
《電極の条件》
初期厚さt0:0.25mm以上2.3mm以下の範囲であり、表5に示す値(mm)
嵩密度:0.11g/cm3以上0.7g/cm3以下
電極は、電極の厚さ方向に一様な嵩密度を有し、極大値を有さない。
剛軟度:10mN以上450mN以下
触媒:担持せず
《隔膜の条件》
隔膜の厚さ:45μm
イオン交換基のクラスタ径:2.9nm
当量質量EW:650g/eq
《流路の条件》
溝幅:2.0mm又は3.0mmであり、表5に示す値(mm)
溝深さ:1.0mm、1.5mm、2.0mmのいずれかであり、表5に示す値(mm)
溝幅、及び溝深さは、溝の長手方向に一様である。
試料No.112~No.114は、0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが20%未満である従来試料である。セル抵抗の評価及び圧損の評価において、試料No.112~No.114は順に、試料No.57及びNo.13,No.14,No.15及びNo.58に対する「基準」とする。
試料No.13~No.15の上記圧縮ひずみは23%、30%、35%のいずれかであり、電極の初期厚さt0は0.3mm以上2.0mm以下である。
これらの試料の上記圧縮ひずみ(%)を表5に示す。
試料No.57の上記圧縮ひずみは30%であり、電極の初期厚さt0は0.3mm未満である。試料No.58の上記圧縮ひずみは35%であり、電極の初期厚さt0は2.0mm超である。
表5に示すように、試料No.13~No.15はそれぞれ、従来試料No.112~No.114に比較して、同等程度の圧損を有しつつ、セル抵抗を低減できることが分かる。また、試料No.13~No.15は、性能の安定性の評価から、低いセル抵抗を安定して有することが分かる。更に、試料No.13のセル抵抗は、試料No.57のセル抵抗に比較して低い。試料No.15のセル抵抗は、試料No.58のセル抵抗に比較して低い。
0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが異なると共に、電極の嵩密度が異なる電極を用いて、上述のようにRF電池を構築してセル抵抗、圧損、性能の安定性を評価し、評価結果を表6に示す。
《電極の条件》
初期厚さt0:0.3mm以上2.0mm以下
嵩密度:0.10g/cm3以上0.73g/cm3以下であり、表6に示す値(g/cm3)
剛軟度:10mN以上450mN以下
触媒:担持せず
《隔膜の条件》
隔膜の厚さ:20μm
イオン交換基のクラスタ径:2.7nm
当量質量EW:750g/eq
《流路の条件》
溝幅:2.0mm
溝深さ:1.5mm
溝幅、及び溝深さは、溝の長手方向に一様である。
試料No.115~No.118は、0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが20%未満である従来試料である。セル抵抗の評価及び圧損の評価において、試料No.115は、試料No.59に対する「基準」とする。試料No.116~No.118は順に、試料No.16~No.18,No.19及びNo.20,No.21及びNo.60に対する「基準」とする。
試料No.16~No.21の上記圧縮ひずみは25%、30%、50%のいずれかであり、電極の嵩密度は0.11g/cm3以上0.7g/cm3以下である。
これらの試料の上記圧縮ひずみ(%)を表6に示す。
試料No.59の上記圧縮ひずみは55%であり、電極の嵩密度は0.11g/cm3未満である。試料No.60の上記圧縮ひずみは25%であり、電極の嵩密度は0.7g/cm3超である。
表6に示すように、試料No.16~No.21はそれぞれ、従来試料No.116~No.118に比較して、同等程度以上の圧損を有しつつ、セル抵抗を低減できることが分かる。また、試料No.16~No.21は、性能の安定性の評価から、低いセル抵抗を安定して有することが分かる。更に、試料No.16のセル抵抗は、試料No.59のセル抵抗に比較して低い。試料No.21のセル抵抗及び圧損は、試料No.60のセル抵抗及び圧損に比較して低い。
0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが異なると共に、電極の剛軟度が異なる電極を用いて、上述のようにRF電池を構築してセル抵抗、圧損、性能の安定性を評価し、評価結果を表7に示す。
《電極の条件》
初期厚さt0:0.3mm以上2.0mm以下
嵩密度:0.10g/cm3以上0.7g/cm3以下
電極は、電極の厚さ方向に一様な嵩密度を有し、極大値を有さない。
剛軟度:8mN以上470mN以下であり、表7に示す値(mN)
触媒:担持せず
《隔膜の条件》
隔膜の厚さ:20μm、30μm、55μmのいずれかであり、表7に示す値(μm)
イオン交換基のクラスタ径:2.7nm
当量質量EW:750g/eq
《流路の条件》
溝幅:3.0mm
溝深さ:1.0mm
溝幅、及び溝深さは、溝の長手方向に一様である。
試料No.119~No.122は、0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが20%未満である従来試料である。セル抵抗の評価及び圧損の評価において、試料No.119~No.122は順に、試料No.61及びNo.22,No.23,No.24,No.25及びNo.62に対する「基準」とする。
試料No.22~No.25の上記圧縮ひずみは30%、40%、50%のいずれかであり、電極の剛軟度は10mN以上450mN以下である。
これらの試料の上記圧縮ひずみ(%)を表7に示す。
試料No.61の上記圧縮ひずみは50%であり、電極の剛軟度は10mN未満である。試料No.62の上記圧縮ひずみは32%であり、電極の剛軟度は450mN超である。
表7に示すように、試料No.22~No.25はそれぞれ、従来試料No.119~No.122に比較して、同等程度の圧損を有しつつ、セル抵抗を低減できることが分かる。また、試料No.22~No.25は、性能の安定性の評価から、低いセル抵抗を安定して有することが分かる。更に、試料No.22のセル抵抗及び圧損は、試料No.61のセル抵抗及び圧損に比較して低い。試料No.25のセル抵抗は、試料No.62のセル抵抗に比較して低い。
0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが異なると共に、触媒を担持する電極を用いて、上述のようにRF電池を構築してセル抵抗、圧損、性能の安定性を評価し、評価結果を表8に示す。
試料No.26~No.39の電極は、酸化物又は炭化物からなる触媒を担持する。触媒の組成は、表8に示す試料順に、炭化タングステン(WC)、酸化アンチモン(Sb2O3)、炭化珪素(SiC)、炭化チタン(TiC)、酸化セリウム(CeO2)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化錫(SnO2)、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化レニウム(ReO3)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化イリジウム(IrO2)、ルテニウム酸バリウム(BaRuO2)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化鉛(PbO)である。
セル抵抗の評価及び圧損の評価において、試料No.23は、その他の試料に対する「基準」とする。
0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが異なる電極と、厚さが異なる隔膜とを用いて、上述のようにRF電池を構築してセル抵抗、圧損、性能の安定性を評価し、評価結果を表9に示す。
《電極の条件》
初期厚さt0:0.3mm以上2.0mm以下
嵩密度:0.11g/cm3以上0.7g/cm3以下
電極は、電極の厚さ方向に一様な嵩密度を有し、極大値を有さない。
剛軟度:10mN以上450mN以下
触媒:担持せず
《隔膜の条件》
隔膜の厚さ:5μm以上65μm以下であり、表9に示す値(μm)
イオン交換基のクラスタ径:2.5nm以上
当量質量EW:950g/eq
《流路の条件》
溝幅:2.0mm
溝深さ:1.5mm
溝幅、及び溝深さは、溝の長手方向に一様である。
試料No.124~No.126は、0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが20%未満である従来試料である。セル抵抗の評価及び圧損の評価において、試料No.124~No.126は順に、試料No.63及びNo.40,No.41,No.42及びNo.64に対する「基準」とする。
試料No.40~No.42の上記圧縮ひずみは25%、30%、40%のいずれかであり、隔膜の厚さは7μm以上60μm以下である。
これらの試料の上記圧縮ひずみ(%)を表9に示す。
試料No.63の上記圧縮ひずみは30%であり、隔膜の厚さが7μm未満である。試料No.64の上記圧縮ひずみは25%であり、隔膜の厚さが60μm超である。
表9に示すように、試料No.40~No.42はそれぞれ、従来試料No.124~No.126に比較して、同等程度の圧損を有しつつ、セル抵抗を低減できることが分かる。また、試料No.40~No.42は、性能の安定性の評価から、低いセル抵抗を安定して有することが分かる。更に、試料No.40のセル抵抗は、試料No.63のセル抵抗に比較して低い。試料No.42のセル抵抗は、試料No.64のセル抵抗に比較して低い。
圧損に関して、試料No.40~No.42では、電極が柔らか過ぎない。そのため、これらの試料は、電極が上記流路に大きく侵入せず、電解液の流通性に優れて圧損を増大させ難い、と考えられる。
0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが異なる電極と、イオン交換基のクラスタ径及び当量質量EWが異なる隔膜とを用いて、上述のようにRF電池を構築してセル抵抗、圧損、性能の安定性を評価し、評価結果を表10に示す。
《電極の条件》
初期厚さt0:0.3mm以上2.0mm以下
嵩密度:0.11g/cm3以上0.7g/cm3以下
電極は、電極の厚さ方向に一様な嵩密度を有し、極大値を有さない。
剛軟度:10mN以上450mN以下
触媒:担持せず
《隔膜の条件》
隔膜の厚さ:20μm、25μm、30μmのいずれかであり、表10に示す値(μm)
イオン交換基のクラスタ径:2.3nm以上3.1nm以下であり、表10に示す値(nm)
当量質量EW:630g/eq以上980g/eq以下であり、表10に示す値(g/eq)
《流路の条件》
溝幅:2.0mm
溝深さ:1.5mm
溝幅、及び溝深さは、溝の長手方向に一様である。
試料No.127~No.129は、0.8MPaの面圧での圧縮ひずみが20%未満である従来試料である。セル抵抗の評価及び圧損の評価において、試料No.128,No.129は順に、No.44,No.45及びNo.66に対する「基準」とする。セル抵抗の評価において、試料No.65は、試料No.127及びNo.43に対する基準とする(この理由は後述する)。圧損の評価において、試料No.127は、試料No.65及びNo.43に対する基準とする。
試料No.43~No.45の上記圧縮ひずみは30%、40%、55%のいずれかであり、イオン交換基のクラスタ径は2.5nm以上であり、かつ当量質量EWが950g/eq以下である。
これらの試料の上記圧縮ひずみ(%)を表10に示す。
試料No.65の上記圧縮ひずみは30%であり、イオン交換基のクラスタ径は2.5nm未満であり、かつ当量質量EWは950g/eq以下である。試料No.66の上記圧縮ひずみは25%であり、イオン交換基のクラスタ径は2.5nm以上であり、かつ当量質量EWが950g/eq超である。
表10に示すように、試料No.43~No.45はそれぞれ、従来試料No.127~No.129に比較して、同等程度の圧損を有しつつ、セル抵抗を低減できることが分かる。また、試料No.43~No.45は、性能の安定性の評価から、低いセル抵抗を安定して有することが分かる。更に、試料No.43のセル抵抗は、試料No.65のセル抵抗に比較して低い。試料No.45のセル抵抗は、試料No.66のセル抵抗に比較して低い。
圧損に関して、試料No.43~No.45では、電極が柔らか過ぎない。そのため、これらの試料は、電極が上記流路に大きく侵入せず、電解液の流通性に優れて圧損を増大させ難い、と考えられる。
(1)複数の電池セルを備える場合に、仕様が異なる電極を含む。
上記仕様として、0.8MPaの面圧での圧縮ひずみ、嵩密度、剛軟度、初期厚さt0、カーボン素材の材質等が挙げられる。
例えば、流路4は、上述の直線状の溝41,42と蛇行溝45とを含んでもよい。又は、流路4は、例えば、図6Aの流路4において、整流溝43,44を省略してもよい。又は、流路4は、例えば、図6Bの流路4において、整流溝43,44の少なくとも一方を含んでもよい。
上記仕様として、隔膜の材質、イオン交換膜の場合にイオン交換基の種類・クラスタ径・当量質量EW等が挙げられる。
1 電池セル、1A 正極セル、1B 負極セル
11 隔膜、12 電極、13 正極電極、14 負極電極、15 双極板
16,17 タンク、160,170 配管
161,171 往路配管、162,172 復路配管
18,19 ポンプ、120 表面、121,125 近傍領域
124 張出部
2 セルスタック
20 サブセルスタック、21 エンドプレート、22 締結部材
23 給排板
3 セルフレーム
30 枠体、31 窓部、33,34 給液マニホールド
35,36 排液マニホールド、38 シール材
4 流路
4i 供給縁、4o 排出縁
40,41,42 溝、43,44 整流溝、45 蛇行溝、48 畝部
50 カーボン繊維、51 カーボンバインダー残渣、52 カーボン粒子
55 触媒
6 介在機器、7 発電部、8 負荷
128 測定試料、201 固定下盤、202 可動上盤
600 測定システム
610 測定セル、620 流体槽、622 流体、630 配管
632 分岐管、640 ポンプ、650 流量計、660 差圧計
Claims (17)
- 電極と、前記電極の一面に対向する隔膜と、前記電極の他面に対向する双極板とを備え、レドックスフロー電池に用いられる電池セルであって、
前記双極板は、前記電極との対向面に電解液の流路を備え、
前記電極は、カーボン素材を含む多孔質体であり、
前記電極の厚さ方向に0.8MPaの面圧を加えた状態における前記電極の厚さ方向の圧縮ひずみが20%以上60%以下であり、
前記流路は、幅が0.6mm以上5.0mm以下であり、かつ深さが0.6mm以上5.0mm以下である溝を含む、
電池セル。 - 前記電極は、カーボン繊維と、カーボンバインダー残渣とを含むカーボン紙である請求項1に記載の電池セル。
- 前記電極は、カーボン繊維と、カーボンバインダー残渣と、カーボン粒子とを含むカーボン紙である請求項1に記載の電池セル。
- 前記カーボン粒子の含有量が10質量%以上50質量%以下である請求項3に記載の電池セル。
- 前記電極の初期厚さが0.3mm以上2.0mm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電池セル。
- 前記電極の嵩密度が0.11g/cm3以上0.7g/cm3以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電池セル。
- 前記電極の嵩密度が前記電極の厚さ方向に異なっており、
前記電極における前記隔膜との近傍領域、及び前記電極における前記双極板との近傍領域の少なくとも一方の領域に前記嵩密度の極大値を有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電池セル。 - 前記電極の剛軟度が10mN以上450mN以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電池セル。
- 前記電極は、非カーボン系材料からなる触媒を担持している請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電池セル。
- 前記非カーボン系材料は、酸化物及び炭化物の少なくとも一種の材料である請求項9に記載の電池セル。
- 前記流路は、前記双極板の供給縁寄りに設けられる第一の溝と、前記双極板の排出縁寄りに設けられる第二の溝とが隣り合って並ぶ溝の組を含む請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電池セル。
- 前記流路は、蛇行溝を含む請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電池セル。
- 前記隔膜の厚さが7μm以上60μm以下である請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の電池セル。
- 前記隔膜は、イオン交換膜である請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の電池セル。
- 前記イオン交換膜は、イオン交換基を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを含むフッ素系陽イオン交換膜であり、
前記イオン交換基は、スルホン酸であり、
前記イオン交換基のクラスタ径が2.5nm以上であり、
前記フッ素系高分子電解質ポリマーにおける前記イオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数が950g/eq以下である請求項14に記載の電池セル。 - 請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の電池セルを備える、
セルスタック。 - 請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の電池セル、又は請求項16に記載のセルスタックを備える、
レドックスフロー電池。
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