JP7192219B2 - 繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグおよび成形体 - Google Patents
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Description
炭素繊維樹脂複合材料のマトリクス樹脂としては、コストと軽量性に優れるポリプロピレン系樹脂(PP)、機械的強度に優れるポリアミド系樹脂(PA)、耐熱性に優れるポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)などが一般によく検討されている。また、ポリカーボネート樹脂(PC)は、成形が比較的容易であり、自動車用途等の構造部材の使用環境下で安定な物性を維持するものの、耐薬品性が弱いため、接着による組立を行う際の接合強度や使用環境下における強度維持という点で問題があった。PCの耐薬品性を向上させる技術としては、ポリエステル等の他の結晶性樹脂とアロイ化することが広く知られており、CFRTPのマトリクス樹脂とする技術も考案されている。
(1) 以下に記載する(A)成分と(B)成分を含む炭素繊維強化樹脂材料であって、前記(A)成分中の結晶性樹脂の融解時の下記結晶化度χcが40%以上であり、かつ下記再結晶化率が70%未満である炭素繊維強化樹脂材料。
(A)成分:結晶性樹脂を5重量パーセント以上含む樹脂組成物
(B)成分:炭素繊維
<結晶化度χcと再結晶化率>
結晶化度χc=ΔHm/ΔHo/w×100(%)
再結晶化率=|ΔHc/ΔHm|×100(%)
ΔHm;(A)成分中に含まれる結晶性樹脂の融解エンタルピー
ΔHo;(A)成分中に含まれる結晶性樹脂の平衡融解エンタルピー
ΔHc;(A)成分中に含まれる結晶性樹脂の再結晶化エンタルピー
w;結晶性樹脂の(A)成分中における質量分率
(2) 前記(A)成分を100重量部としたとき、前記(B)成分を30~200重量部含む、上記(1)に記載の炭素繊維強化樹脂材料。
(3) 前記(A)成分が、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂を合計で80重量パーセント以上含む樹脂である上記(1)から(2)のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂材料。
(4) 前記(A)成分中のポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との混合質量比をPC/PEsとしたとき、PC/PEsが1以上であり、かつPC/PEsが19以下である上記(3)に記載の炭素繊維強化樹脂材料。
(5) 前記(A)成分中のポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレートである上記(3)または(4)に記載の炭素繊維強化樹脂材料。
(6) 上記(1)から(5)のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂材料からなるスタンパブルシート。
(7) 上記(6)に記載のスタンパブルシートの成形体。
(B)成分:炭素繊維
<結晶化度χcと再結晶化率>
結晶化度χc=ΔHm/ΔHo/w×100(%)
再結晶化率=|ΔHc/ΔHm|×100(%)
ΔHm;(A)成分中に含まれる結晶性樹脂の融解エンタルピー
ΔHo;(A)成分中に含まれる結晶性樹脂の平衡融解エンタルピー
ΔHc;(A)成分中に含まれる結晶性樹脂の再結晶化エンタルピー
w;結晶性樹脂の(A)成分中における質量分率
本発明の炭素繊維樹脂材料は、結晶性樹脂を用いること、樹脂に対する炭素繊維の含有量を特定の範囲とすること、樹脂部における結晶状態を制御することにより得られる。
以下、炭素繊維樹脂複合材材料の構成について詳細に説明する。
本発明に使用される結晶性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリテトラフルオロエチレン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。これらのうち、成形性、耐薬品性の面から、ポリエステルを使用することが望ましい。
本発明で用いるポリエステル樹脂は芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体と、ジオール、またはそのエステル誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である。
ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン-1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボキシレート等の他、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、等のような共重合ポリエステルが挙げられる。これらのうち、機械的性質等のバランスがとれたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートおよびこれらの混合物が好ましく使用できる。
また芳香族ポリエステル樹脂の分子量については特に制限されないが、フェノール/テトラクロロエタン(50:50)混合液を溶媒として35℃で測定した固有粘度が0.5~1.4、好ましくは0.7~1.2である。
本発明で用いる炭素繊維は、強化繊維として公知の炭素繊維を用いることができ、特に限定されない。炭素繊維の平均繊維直径は、1~50μmであることが好ましく、5~20μmであることがさらに好ましい。炭素繊維の平均単繊維繊度は、好ましくは0.5dtex以上、より好ましくは0.6dtex以上であり、好ましくは3.0dtex以下、より好ましくは2.5dtex以下である。通常、このような炭素繊維の単繊維を、1000本以上60000本以下束ねた炭素繊維束の形態で使用することが取扱い上望ましい。
PAN系重合体は、分子構造中にアクリロニトリル単位を有するもので、アクリロニトリルの単独重合体や、アクリロニトリルと他のモノマー(例えば、メタクリル酸等)との共重合体とすることができる。
無機繊維としては、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステル等が挙げられる。
金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維が挙げられ、また金属を被覆した炭素繊維でもよい。
強化繊維中の炭素繊維の含有率は50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、100質量%が最も好ましい。
本発明は、マトリクス樹脂として、結晶性樹脂を5重量パーセント以上混合した樹脂部を用いる。本発明は、この樹脂部に特定量の炭素繊維を分散させた構成を取る。樹脂部には、結晶性樹脂の他に、非晶性樹脂、エステル交換反応抑制剤、酸化防止剤などを含んでも良い。樹脂部において、結晶性樹脂の合計含有量は、5重量パーセント以上、好ましくは10重量パーセント以上、より好ましくは15重量パーセントである。上記範囲内であれば、炭素繊維強化樹脂材料とした際に優れた圧縮特性を発現することができる。
本発明の樹脂部の製造方法には、従来公知の溶融混練法が用いられる。即ち、二軸押し出し機、単軸押し出し機、またはバッチ式混練機等に、原料樹脂を、一括、又は分割して供給することによって、原料樹脂等が混合された樹脂部が得られる。これらの中では、二軸押し出し機が好適に使用され、必要に応じて真空ベントを併用することにより、混練中における樹脂の劣化を低減することができる。
混練時の温度は、樹脂の種類・分子量等に応じて適宜変更される。二軸押し出し機のスクリューには、高い混練効率を得るために単一ないし複数のニーディングディスク部を設ける構成が好ましい。
上記の混練工程を経た後、通常、造粒工程で樹脂を一旦ペレット化し、次の工程に供する。造粒工程では、コールドカッター、又はホットカッターのうちいずれを用いてもよい。
本発明の炭素繊維樹脂複合材組成物に用いられる樹脂部には、所定量の非晶性樹脂が含まれていてもよい。本発明に使用される非晶性樹脂は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。これらのうち、強度・弾性率、成形性のバランスが優れたポリカーボネートを使用することが望ましい。
[η]={(1+1.8×ηsp)1/2-1}/0.45
を用いて固有粘度[η]を計算する。さらに、Mark-Houwing-Sakuradaの式
[η]=1.23×10-4×Mv0.83
に[η]を代入することで、粘度平均分子量Mvが得られる。粘度平均分子量が8000以下では、本発明の優れた機械特性が損なわれるため好ましくなく、粘度平均分子量が25000以上では、連続炭素繊維に樹脂を含浸させてプリプレグを作成する際に含浸性が悪化することがあり、また樹脂組成物からなるスタンパブルシートを工業用部材に成形する際の流動性が損なわれるため好ましくない。
酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ピリジンなどのアミン化合物が使用される。溶媒としては、例えば塩化メチレンクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために、例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いてもよい。反応温度は、通常0~40℃で、反応時間は数分間~5時間である。
反応を促進するためには、エステル交換反応に通常使用される触媒を使用してもよい。
また、適当な分子量調整剤などを適宜使用してもよい。
樹脂部を製造する際に、さらに酸性燐酸エステルを少量配合することが、芳香族ポリカーボネート樹脂と熱可塑性ポリエステルとのエステル交換反応を抑制することに有用であり、高分散時におけるポリエステル樹脂の結晶性を維持するために有効である。前記の酸性燐酸エステルとは、アルコール類と燐酸との部分エステル化合物の総称である。
本発明の炭素繊維樹脂複合材組成物に用いられる樹脂部には、所定量の酸化防止剤が含まれていてもよい。
酸化防止剤としては、1次酸化防止剤であるフェノール系酸化防止剤、2次酸化防止剤であるリン系酸化防止剤を併用することが望ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3-メチル-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-テトラデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、1,4-ブタンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、N,N’-ビス-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’-テトラメチレン-ビス-3-(3-メチル-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N-サリチロイル-N’-サリチリデンヒドラジン、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、N,N’-ビス[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等をあげることができる。好ましくは、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸である。ヒンダードフェノール系化合物の具体的な商品名としては、ADEKA製“アデカスタブAO-20”,”AO-30”,”AO-40”,”AO-50”,”AO-60”,”AO-70”,”AO-80”,”AO-330”、(株)チバスペシャリティケミカル製“イルガノックス245”,”259”,”565”,”1010”,”1035”,”1076”,”1098”,”1222”,”1330”,”1425”,”1520”,”3114”,”5057”、(株)住友化学製“スミライザーBHT-R”、”MDP-S”、”BBM-S”、”WX-R”、”NW”、”BP-76”、”BP-101”、”GA-80”、”GM”、”GS”、サンケミカル(株)製“サイアノックスCY-1790”などが挙げられる。
リン系化合物としては、例えば、ホスファイト系化合物、ホスフェート系化合物が挙げられる。かかるホスファイト系化合物の具体例としては、テトラキス[2-t-ブチル-4-チオ(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-5-メチルフェニル]-1,6-ヘキサメチレン-ビス(N-ヒドロキシエチル-N-メチルセミカルバジド)-ジホスファイト、テトラキス[2-t-ブチル-4-チオ(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-5-メチルフェニル]-1,10-デカメチレン-ジ-カルボキシリックアシッド-ジ-ヒドロキシエチルカルボニルヒドラジド-ジホスファイト、テトラキス[2-t-ブチル-4-チオ(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-5-メチルフェニル]-1,10-デカメチレン-ジ-カルボキシリックアシッド-ジ-サリシロイルヒドラジド-ジホスファイト、テトラキス[2-t(ブチル-4-チオ(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-5-メチルフェニル]-ジ(ヒドロキシエチルカルボニル)ヒドラジド-ジホスファイト、テトラキス[2-t-ブチル-4-チオ(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-5-メチルフェニル]-N,N’-ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド-ジホスファイトなどが挙げられるが、少なくとも1つのP-O結合が芳香族基に結合しているものがより好ましく、具体例としては、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシル)ホスファイト、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジトリデシルホスファイト-5-t-ブチル-フェニル)ブタン、トリス(ミックスド-モノおよびジ-ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’-イソプロピリデンビス(フェニル-ジアルキルホスファイト)などが挙げられ、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンホスホナイトなどが好ましく使用できる。ホスファイト系化合物の具体的な商品名としては、(株)ADEKA製“アデカスタブ C”、”PEP-4C”、”PEP-8”、”PEP-11C”、”PEP-24G”、”PEP-36”、”HP-10”、”2112”、”260”、”522A”、”329A”、”1178”、”1500”、”135A”、”3010”、”TPP”、(株)チバスペシャリティケミカル製“イルガフォス168”、(株)住友化学製”スミライザーP-16”、(株)クラリアント製”サンドスタブPEPQ”、GE製”ウエストン618”、”619G”、”624”などが挙げられる。
本発明の炭素繊維樹脂複合材組成物の製造方法には、前述の炭素繊維を短繊維として添加する方法の他に、一方向に引き揃えられた炭素繊維束に溶融した熱可塑性樹脂を含浸させる方法が好適に用いられる。この方法によれば、炭素繊維を長繊維として含有したプリプレグを製造することができ、高弾性率・高強度の構造部材を製造する際に有利である。
炭素繊維樹脂複合材プリプレグは、通常、厚さ50~200μmの厚みを有するが、これを複数枚積層することで、炭素繊維樹脂複合材シートを得ることができる。積層する際に繊維軸方向を揃えて一方向材とすることも出来るが、繊維軸を任意に組み合わせることで、強度・弾性率の異方性を制御することができる。
また、スタンパブルシートを積層させる場合、シートの間に樹脂組成物層、あるいは樹脂-フィラー複合材層、発泡樹脂層などを挟んでもよい。
(実施例の一方向積層材)
<原料>
<成分(A)>
T;ポリカーボネート樹脂 三菱エンジニアリングプラシチックス社製 ユーピロンH3000
U;ポリエステル樹脂 三菱エンジニアリングプラシチックス社製 ノバデュラン 5008
V;コアシェル型グラフト共重合体 三菱レイヨン社製 メタブレン S2006
W;エステル交換抑制剤 アデカ社製 アデカスタブ AX-71[オクタデシルホスフェート]
X;酸化防止剤 フェノール系酸化防止剤:アデカ社製 アデカスタブ AO-50[オクタデシル3-(3,5-ジt-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
Y;リン系酸化防止剤:アデカ社製 アデカスタブ 2112[トリス(2,4-ジt-ブチルフェニル)ホスファイト]
Z;炭素繊維 三菱レイヨン社製 パイロフィル TR50S15L AD
同方向二軸押出機(株式会社池貝製:PCM-30)を用いて、表1に示す(T)成分、(U)成分、(V)成分、(W)成分、(X)成分、(Y)成分を混練し、樹脂部を製造した。押し出されたストランドは水槽で冷却し、ペレタイザーにより造粒(ペレット化)した。なお、(T)成分、(U)成分、(V)成分、(W)成分、(X)成分、(Y)成分は、メインフィーダから押出機に供給した。混練条件は以下のとおりである。
シリンダ温度 C1:230℃、C2:250℃、C3~C8:270℃
スクリューフォーメーション:ニーディングゾーンを2箇所設置した。
減圧ベント:C7に設置
スクリュー回転数:200rpm
吐出量:15kg/hr
(樹脂フィルムの製造)
上述の樹脂部をアイ・ケイ・ジー(株)製PMS30-32単軸押し出し機に供給し、同押し出し機に装着された幅350mmのT-ダイから押し出し、(株)GSIクレオス製シート冷却巻取り装置705-FA082を経て、厚さ約40μmの樹脂部フィルムとした。
ドラムワインド方式にて、炭素繊維を用いて繊維目付を100g/m2に調整した一方向配向炭素繊維シートを作製した後、この炭素繊維シートに適度に張力を掛け、炭素繊維シートの両面から前記樹脂フィルム、フッ素樹脂製フィルム(日東電工(株)社製、製品名:ニトフロンフィルム970-4UL)、アルミ製の平板(厚さ10mm)の順に挟み、加熱/冷却プレス機の加熱盤で270℃、無加圧で5分間予熱後、20kPaで5分間加圧成形し、冷却盤で25℃、30kPaで5分間加圧冷却し、繊維含有率約34vol%、厚み0.13mmを有する樹脂組成物プリプレグを得た。
こうして得られたプリプレグ16枚を100mm角で深さ2.0mmの印籠金型内に繊維軸方向を揃えて配置し、加熱プレス機の加熱盤で260℃、20kPaで10分間加圧成形した。その後、圧力20kPaのまま、加熱盤の温度を100℃として、30分間保持した。次いで、冷却盤で25℃、40kPaで5分間加圧冷却し、繊維含有率約34vol%、厚み2mmの樹脂組成物一方向積層材(長繊維樹脂組成物)を得た。
実施例と同様の手順で得られたプリプレグ16枚を100mm角で深さ2.0mmの印籠金型内に繊維軸方向を揃えて配置し、加熱プレス機の加熱盤で260℃、20kPaで10分間加圧成形した。次いで、冷却盤で25℃、40kPaで5分間加圧冷却し、繊維含有率約34vol%、厚み2mmの樹脂組成物一方向積層材(長繊維樹脂組成物)を得た。
上記により得られた炭素繊維樹脂複合材組成物から、ニッパーを用いて約10mgのサンプルを切り出し、アルミニウム製オープンパン及びパンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(TAインスツルメンツ製「DSC Q-1000」)を用いて、窒素気流下、0℃から250℃まで10℃/minで昇温し、途中で観察されたポリエステル樹脂の再結晶化発熱量ΔHc、及び結晶融解の吸熱量ΔHmを測定した。
樹脂部のポリエステル樹脂成分の結晶化度の計算は、上述のΔHmとポリエステル樹脂添加量から計算される理論的な平衡融解エンタルピーの比から求めた。即ち、PBTの平衡融解エンタルピーΔHo=145J/gを使って、以下の式で結晶化度χcを求めた。
χc=ΔHm/ΔHo/w×100 (%)
再結晶化率=ΔHc/ΔHm×100(%)
χc;ペレット中の樹脂の結晶化度(%)
w;樹脂部全体に対するポリエステル樹脂成分の質量分率
ΔHc;樹脂部の再結晶化発熱量(J/g)
ΔHm;樹脂部の融解吸熱量(J/g)
ΔHo;ポリエステル樹脂の理論的な平衡融解エンタルピー(J/g)
ΔHc=ΔHcs/wA
ΔHm=ΔHms/wA
ΔHcs;測定サンプル(成形体)の再結晶化発熱量(J/g)
ΔHms;測定サンプル(成形体)の融解吸熱量(J/g)
wA;測定サンプル(成形体)における(A)成分の質量分率
であることに注意する。
(試験片の作製)
得られた平板状の炭素繊維樹脂一方向積層材から、繊維方向と平行方向(0°)に長さ137mm、幅10mmの試験片を切り出した。
(圧縮試験物性の評価)
切り出した曲げ試験片は、ASTM D6641に規定する試験方法に準じて、室温の環境下で、支点間距離を10mmとし、クロスヘッド速度1.0mm/分で圧縮試験を行って強度と弾性率を測定した。試験機としては、島津製作所製「オートグラフAG-X 100kN」を用いた。得られた測定値のそれぞれn=5の平均値を圧縮強度および圧縮弾性率として記録した。
Claims (7)
- 以下に記載する(A)成分と(B)成分を含み、プリプレグから得られる一方向積層材である炭素繊維強化樹脂材料であって、前記(A)成分中の結晶性樹脂の融解時の下記結晶化度χcが40%以上であり、かつ下記再結晶化率が70%未満である炭素繊維強化樹脂材料。
(A)成分:非晶性樹脂と結晶性樹脂とを含み、結晶性樹脂としてポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、またはポリエーテルケトンケトン樹脂を5重量パーセント以上含む樹脂組成物
(B)成分:炭素繊維
<結晶化度χcと再結晶化率>
結晶化度χc=ΔHm/ΔHo/w×100(%)
再結晶化率=|ΔHc/ΔHm|×100(%)
ΔHm;(A)成分中に含まれる結晶性樹脂の融解エンタルピー
ΔHo;(A)成分中に含まれる結晶性樹脂の平衡融解エンタルピー
ΔHc;(A)成分中に含まれる結晶性樹脂の再結晶化エンタルピー
w;結晶性樹脂の(A)成分中における質量分率 - 前記非晶性樹脂が、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、またはポリエーテルイミド樹脂を含む、請求項1に記載の炭素繊維強化樹脂材料。
- 前記(A)成分が、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂を合計で80重量パーセント以上含む樹脂である請求項1または2に記載の炭素繊維強化樹脂材料。
- 前記(A)成分中のポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との混合質量比をPC/PEsとしたとき、PC/PEsが1以上であり、かつPC/PEsが19以下である請求項3に記載の炭素繊維強化樹脂材料。
- 前記(A)成分中のポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレートである請求項3または4に記載の炭素繊維強化樹脂材料。
- 請求項1から5のいずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂材料からなるスタンパブルシート。
- 請求項6に記載のスタンパブルシートの成形体。
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