JP2018159043A - 炭素繊維樹脂複合材組成物、及びそれからなるスタンパブルシート - Google Patents

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清利 藤岡
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Abstract

【課題】 広範な使用環境下において安定に高い機械的物性を発現する炭素繊維樹脂複合材組成物、及びそれからなるスタンパブルシートを提供することを課題とする。【解決手段】 本発明は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、コアシェル型グラフト共重合体、及び炭素繊維からなる樹脂組成物において、樹脂部におけるポリエステル樹脂の結晶性、並びにポリカーボネート樹脂、及びポリエステル樹脂の溶融粘度を特定の範囲とし相構造、及び樹脂間の反応を適度に制御することにより、課題を解決する。【選択図】 なし

Description

本発明は、広範な使用環境下において安定な機械的物性を発現する炭素繊維樹脂複合材組成物、及びそれからなるスタンパブルシートに関する。
自動車や電気機器の軽量かつ高強度の構造部材として、炭素繊維樹脂複合材料が種々提案されている。一般に、工業的用途に用いられる構造部材は、温度・湿度などの使用環境による性能の変化が小さなものが好ましい。
このような構造部材には、従来金属材料が使用されることが多かったが、金属材料に比して軽量でかつ高強度の炭素繊維樹脂複合材(CFRP)の使用が、近年検討されている。
炭素繊維樹脂複合材料のマトリクス樹脂としては様々なものを使用しうるが、熱硬化性樹脂に比して成形サイクルの短い熱可塑性樹脂によるCFRP(CFRTP)が産業上有用である。
しかしながら、樹脂材料は使用環境下における温度変化や湿度変化等の環境変化によって、強度・弾性率といった物性が大きく変化することが欠点であり、殊に自動車用途等の構造部材としては使用環境の変化に対して安定に物性を保持するマトリクス樹脂が求められていた。
炭素繊維樹脂複合材料のマトリクス樹脂としては、コストと軽量性に優れるポリプロピレン系樹脂(PP)、機械的強度に優れるポリアミド系樹脂(PA)、耐熱性に優れるポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)などが一般によく検討されているが、PPは高温環境下での強度低下、PAは吸湿時の強度低下が大きく工業用構造部材には不向きである。PPSは温度・湿度に対する物性の安定性には非常に優れているものの、成形温度が高く金型を腐食するなど、工程適合性・生産性という観点で問題があった。
一方、ポリカーボネート樹脂(PC)は、成形が比較的容易であり、自動車用途等の構造部材の使用環境下で、安定な物性を維持するものの、耐薬品性が弱いため、接着による組立を行う際の接合強度や使用環境下における強度維持という点で問題があった。PCの耐薬品性を向上させる技術としては、ポリエステル等の他の結晶性樹脂とアロイ化することが広く知られており、CFRTPのマトリクス樹脂とする技術も考案されている。
文献1には、芳香族ポリカーボネート樹脂にポリエチレンテレフタレート(PET)、またはポリブチレンンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂を混合し、更に無機繊維状粒子、及び炭素繊維を添加することにより、高剛性、高衝撃性、耐クラック性が良好な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得る技術が開示されている。
文献2には、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル、ケイ素含有重合体、および、特定の電気的特性を有する炭素繊維を配合することにより、流動性、耐衝撃性と剛性(強度)を両立させ、表面外観、電磁波シールド性に優れた導電性樹脂組成物が得られることが記載されている。
文献3には酸変性ポリアクリレート幹とポリアクリレート側鎖とよりなるグラフト共重合体を用いることにより、ポリカーボネートとポリエステルとの均一性の高い樹脂組成物を得ることで、機械的強度、耐熱性、電気絶縁性および耐薬品性に優れた繊維強化樹脂積層体をうる技術が記載されている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、これらの技術による樹脂組成物は、50〜80℃の高温使用環境下における物性変化が大きく、また十分な機械的強度が得られないため本発明の用途には不適であった。
特開2009−161671 特開2002−138191 特開平6−287428
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであり、広範な使用環境下において安定な機械的強度を発現する炭素繊維を含有する樹脂組成物、及びそれからなるスタンパブルシートを提供することを課題とする。
本発明は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、コアシェル型グラフト共重合体、及び炭素繊維からなる樹脂組成物において、樹脂部におけるポリエステル樹脂の結晶性、及びポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の溶融粘度を特定の範囲に制御することにより、課題を解決する。即ち本発明の要旨は以下の(1)〜(6)に存する。
(1) ポリカーボネート樹脂(A)70〜90質量部、ポリエステル樹脂(B)10〜30質量部からなる熱可塑性樹脂100質量部に、コアシェル型グラフト共重合体(C)0〜20質量部を添加した樹脂部(D)と、炭素繊維(E)35〜200質量部とからなる樹脂組成物において、該樹脂部(D)の
・ポリエステル樹脂(B)の融解時の結晶化度χcが40%以上であり、
・ポリエステル樹脂(B)の再結晶化率が50%以上である
炭素繊維樹脂複合材組成物。
ただし、
結晶化度χc=ΔHm/ΔH0/wPEs×100(%)
再結晶化率=|ΔHc/ΔHm|×100(%)
ΔHm;ポリエステル樹脂(B)の融解エンタルピー
ΔH0;ポリエステル樹脂(B)の平衡融解エンタルピー
ΔH;ポリエステル樹脂(B)の再結晶化エンタルピー
PEs;ポリエステル樹脂(B)の樹脂部(D)中における質量分率
である。
(2) ポリカーボネート樹脂(A)の260℃における溶融粘度ηPCが50(Pa・s)以上であり、ポリエステル樹脂(B)の260℃における溶融粘度ηPBTが50(Pa・s)以上であり、両者の積ηPC・ηPBTが2×10(Pa・s)以下である上記(1)に記載の炭素繊維樹脂複合材組成物。
(3) 樹脂部(D)の80℃における貯蔵弾性率E’(80)の−30℃における貯蔵弾性率E’(−30)に対する保持率(貯蔵弾性率保持率)が70%以上である上記(1)または(2)に記載の炭素繊維樹脂複合材組成物。
ただし、貯蔵弾性率保持率=E’(80)/E’(−30)×100(%) である。
(4) 上記炭素繊維の繊維長Lが、2(mm)≦L≦100(mm)である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の炭素繊維樹脂複合材組成物。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の炭素繊維樹脂複合材組成物からなるスタンパブルシート。
(6) 上記(5)に記載のスタンパブルシートを圧縮成形することによって得られる炭素繊維樹脂複合材成形体。
本発明によれば、広範な使用環境下において安定な機械的物性を発現する構造部材用樹脂組成物を提供することができる。
炭素繊維樹脂複合積層材からなるハットチャンネルの図である。 中空成形体の図である。 実施例5の透過型電子顕微鏡画像の図である。 比較例4の透過型電子顕微鏡画像の図である。
本発明の炭素繊維樹脂複合材組成物について以下詳細に説明するが、本発明の趣旨に反しない限り、これらの内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の炭素繊維樹脂複合材組成物は、特定の溶融粘度範囲のポリカーボネート樹脂(PC)、及びポリエステル樹脂(PEs)を用いることにより、PCとPEsとの巨視的な相分離を抑制すること、及びエステル交換反応抑制剤によりPCとPBTとのエステル交換反応を制御すること、PCとPEsの組成比を特定の範囲とすること、樹脂に対する炭素繊維の含有量を特定の範囲とすることにより得られる。
以下、衝撃吸収部材用樹脂組成物の構成について詳細に説明する。
<炭素繊維>
本発明で用いる炭素繊維は、強化繊維として公知の炭素繊維を用いることができ、特に限定されない。炭素繊維の平均繊維直径は、1〜50μmであることが好ましく、5〜20μmであることがさらに好ましい。炭素繊維の平均単繊維繊度は、好ましくは0.5dtex以上、より好ましくは0.6dtex以上であり、好ましくは3.0dtex以下、より好ましくは2.5dtex以下である。通常、このような炭素繊維の単繊維を、1000本以上60000本以下束ねた炭素繊維束の形態で使用することが取扱い上望ましい。
炭素繊維束を構成する単繊維は、例えば、アクリロニトリル系重合体(PAN系重合体)や、石油又は石炭から得られるピッチ、レイヨン、リグニン等を繊維化し、炭素化することで得られる。特に、PAN系重合体を原料としたPAN系炭素繊維が、工業規模における生産性及び機械的特性に優れており好ましい。
PAN系重合体は、分子構造中にアクリロニトリル単位を有するもので、アクリロニトリルの単独重合体や、アクリロニトリルと他のモノマー(例えば、メタクリル酸等)との共重合体とすることができる。
炭素繊維は単独で使用することが望ましいが、その他の無機繊維、有機繊維、金属繊維、又はこれらを組み合せたハイブリッド構成の強化繊維を含んでもよい。
無機繊維としては、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステル等が挙げられる。
金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維が挙げられ、また金属を被覆した炭素繊維でもよい。
強化繊維中の炭素繊維の含有率は50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、100質量%が最も好ましい。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂としては、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲン、または炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる芳香族ホモまたはコポリカーボネートが挙げられる。該芳香族ホモまたはコポリカーボネート樹脂は、ガラス転移温度が約130〜160℃であり、粘度平均分子量が8000〜25000、好ましくは10000〜20000の範囲のものであり、混合物の粘度平均分子量が8000〜25000の範囲であれば、粘度平均分子量の異なるポリカーボネート樹脂を併用しても良い。粘度平均分子量は、以下の手順で測定される。まず、溶媒に塩化メチレンを用い、樹脂濃度C=0.5g/dlの濃度の溶液を調整し、ウベローデ式毛管粘度計を用いて溶液温度20℃で比粘度ηspを測定する。測定された還元粘度からHugginsの式
[η]={(1+1.8×ηsp1/2−1}/0.45
を用いて固有粘度[η]を計算する。さらに、Mark−Houwing−Sakuradaの式
[η]=1.23×10−4×Mv0.83
に[η]を代入することで、粘度平均分子量Mvが得られる。粘度平均分子量が8000以下では、本発明の優れた機械特性が損なわれるため好ましくなく、粘度平均分子量が25000以上では、連続炭素繊維に樹脂を含浸させてプリプレグを作成する際に含浸性が悪化することがあり、また樹脂組成物からなるスタンパブルシートを工業用部材に成形する際の流動性が損なわれるため好ましくない。
前記の芳香族二価フェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。
カーボネート前駆体としてホスゲンを使用する場合には、通常、酸結合剤および溶媒の存在下で反応を行い、芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する。
酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ピリジンなどのアミン化合物が使用される。溶媒としては、例えば塩化メチレンクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために、例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いてもよい。反応温度は、通常0〜40℃で、反応時間は数分間〜5時間である。
カーボネート前駆体として炭酸ジエステルを用い、エステル交換反応で芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する場合には、不活性ガス雰囲気下で所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分と炭酸ジエステルとを加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる。
この場合の反応温度は、生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応系の圧力は、反応の初期段階から減圧とし、アルコールまたはフェノール類を留出させながら、反応を完結させる。
反応を促進するためには、エステル交換反応に通常使用される触媒を使用してもよい。
また、適当な分子量調整剤などを適宜使用してもよい。
<ポリエステル系樹脂>
本発明で用いる熱可塑性ポリエステル樹脂は芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体と、ジオール、またはそのエステル誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である。
ここでいう芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−ターフェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸が好適に用いられ、特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく使用できる。
芳香族ジカルボン酸は二種以上を混合して使用してもよい。なお少量であれば、該ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を一種以上混合使用することも可能である。
また本発明の芳香族ポリエステルの成分であるジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等、2,2−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の芳香環を含有するジオール等およびそれらの混合物等が挙げられる。さらに少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合してもよい。
また本発明の芳香族ポリエステルは少量の分岐剤を導入することにより分岐させることができる。分岐剤の種類に制限はないがトリメシン酸、トリメリチン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
具体的な芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、
ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等の他、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、等のような共重合ポリエステルが挙げられる。これらのうち、機械的性質等のバランスがとれたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートおよびこれらの混合物が好ましく使用できる。
また得られた芳香族ポリエステル樹脂の末端基構造は特に限定されるものではなく、末端基における水酸基とカルボキシル基の割合がほぼ同量の場合以外に、一方の割合が多い場合であってもよい。またかかる末端基に対して反応性を有する化合物を反応させる等により、それらの末端基が封止されているものであってもよい。
かかる芳香族ポリエステル樹脂の製造方法については、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合させ、副生する水またはジオールを系外に排出することにより行われる。例えば、ゲルマニウム系重合触媒としては、ゲルマニウムの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、フェノラート等が例示でき、さらに具体的には、酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム等が例示できる。
有機チタン化合物の重合触媒としては、好ましい具体例としてチタンテトラブトキシド、チタンイソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物などを挙げることができる。有機チタン化合物の使用量は、そのチタン原子がポリエステル樹脂を構成する酸成分に対し、3〜12mg原子%となる割合が好ましい。
また本発明では、従来公知の重縮合の前段階であるエステル交換反応において使用される、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の化合物を併せて使用でき、およびエステル交換反応終了後にリン酸または亜リン酸の化合物等により、かかる触媒を失活させて重縮合することも可能である。
芳香族ポリエステル樹脂の製造方法は、バッチ式、連続重合式のいずれの方法をとることも可能である。
また芳香族ポリエステル樹脂の分子量については特に制限されないが、フェノール/テトラクロロエタン(50:50)混合液を溶媒として35℃で測定した固有粘度が0.5〜1.4、好ましくは0.7〜1.2である。
ポリエステル樹脂の固有粘度が0.5未満だと、ポリカーボネート樹脂/ポリエステル樹脂組成物とした時に、マトリクスとなるポリカーボネート樹脂の耐薬品性が充分に確保されない。またポリエステル樹脂の固有粘度が1.4超過であると、ポリカーボネート樹脂に対する分散性が悪化して、樹脂組成物としての高温環境下における強度が低下して好ましくない。
<コアシェル型グラフト共重合体>
本発明で用いるコアシェル型グラフト共重合体は、一般的なコアシェル型グラフト共重合体である。 具体的には、メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン共重合体樹脂(MBS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)等のジエン系コアシェル型ゴム質重合体;アクリレート/スチレン/アクリロニトリル共重合体樹脂(ASA樹脂)、アクリレート/メチルメタクリレート共重合体樹脂等のアクリル系コアシェル型ゴム質重合体;シリコーン/アクリレート/メチルメタクリレート共重合体樹脂、シリコーン/アクリレート/アクリロニトリル/スチレン共重合体樹脂等のシリコーン系コアシェル型ゴム質重合体;及びこれらの無水マレイン酸やグリシジルメタクリレート等による変性品が挙げられる。
これらの内では、シリコーン系コアシェル型ゴム質重合体が好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
コアシェルゴム型グラフト共重合体の好ましい例としては、シリコーン系コアシェル型ゴム質重合体を使用した製品名:メタブレンS−2001、S−2006、S−2030、S−2100、SRK200A、SX−005、SX−006(三菱レイヨン(株)製)、ジエン系コアシェル型ゴム質重合体を使用した製品名:パラロイド(商標)EXL−2655(呉羽化学工業(株)製)、C−223A、C−215A(三菱レイヨン(株)製)、アクリル系コアシェル型ゴム質重合体を使用した製品名:スタフィロイド(商標)AC−3355、製品名:TR−2122(武田薬品工業(株)製)、製品名:PARALOID EXL−2611、EXL−3387(Rohm&Haas社製)、W−450A、W−600A(三菱レイヨン(株)製)等を挙げることができる。
<樹脂部>
本発明は、マトリクス樹脂として、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及びコアシェル型グラフト共重合体を混合した樹脂部を用い、この樹脂部に特定量の炭素繊維を分散させた構成を取る。
熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂は、構造部材が一般に使用される−30℃〜80℃の温度範囲で、弾性率・強度ともに安定な物性を維持する樹脂材料であるが、単独で用いると耐薬品性に劣るという欠点がある。耐薬品性を付与するために結晶性のポリエステル樹脂を添加するが、ポリカーボネート樹脂(PC)とポリエステル樹脂(PEs)との好ましい混合質量比は、PC/PEs=(90:10)〜(60:40)である。PEsの添加量が熱可塑性樹脂中に占める比率が10質量%未満であると、十分な耐薬品性が得られない。また、40質量%超過であると、50〜80℃の高温環境下における物性低下が著しく、好ましくない。より好ましいPC/PEsの組成比は、(85:15)〜(70:30)である。
コアシェル型グラフト共重合体の添加量は、PC/PEsからなる熱可塑性樹脂100質量部に対して、0〜20質量部であることが望ましい。コアシェル型グラフト共重合体を添加しなくても十分高い強度、及び強度の安定性を得ることができるが、添加することによって更に高い衝撃吸収特性を得ることができる。コアシェル型グラフト共重合体の添加量が20質量部を超えると、樹脂組成物の強度が低下するため好ましくない。
<樹脂部の製造方法>
本発明の樹脂部の製造方法には、従来公知の溶融混練法が用いられる。即ち、二軸押し出し機、単軸押し出し機、またはバッチ式混練機等に、原料であるポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及びコアシェル型グラフト共重合体を、一括、又は分割して供給することによって、原料樹脂等が混合された樹脂部が得られる。これらの中では、二軸押し出し機が好適に使用され、必要に応じて真空ベントを併用することにより、混練中における樹脂の劣化を低減することができる。
混練時の温度は、樹脂の種類・分子量等に応じて適宜変更されるが、本発明の場合、シリンダー温度=220〜300℃、好ましくは240〜280℃が選択される。
樹脂の供給速度、スクリューの回転数等は、装置のサイズによって適宜設定されるが、平均滞留時間=2〜10分間、好ましくは3〜8分間程度、スクリュー回転数=50〜500rpm、好ましくは100〜300rpm程度が選択される。
二軸押し出し機のスクリューには、高い混練効率を得るために単一ないし複数のニーディングディスク部を設ける構成が好ましい。
上記の混練工程を経た後、通常、造粒工程で樹脂を一旦ペレット化し、次の工程に供する。造粒工程では、コールドカッター、又はホットカッターのうちいずれを用いてもよい。
また、炭素繊維を短繊維として添加して樹脂組成物を得る場合は、樹脂部の混練工程において、裁断された炭素繊維を二軸押し出し機の下流領域でサイドフィードすることにより、繊維長を保持した良好な樹脂組成物を得ることができる。裁断された炭素繊維をサイドフィードする場合、フィード位置を適宜変えることによって、炭素繊維の平均長を制御することができる。
<エステル交換反応抑制剤>
樹脂部を製造する際に、さらに酸性燐酸エステルを少量配合することが、芳香族ポリカーボネート樹脂と熱可塑性ポリエステルとのエステル交換反応を抑制することに有用であり、高分散時におけるポリエステル樹脂の結晶性を維持するために有効である。前記の酸性燐酸エステルとは、アルコール類と燐酸との部分エステル化合物の総称である。
前記の酸性燐酸エステルの具体例としては、モノメチルアシッドホスフェート、モノエチルアシッドホスフェート、モノイソプロピルアシッドホスフェート、モノブチルアシッドホスフェート、モノラウリルアシッドホスフェート、モノステアリルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノベヘニルアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジベヘニルアシッドホスフェート、トリメチルアシッドホスフェート、トリエチルアシッドホスフェート、および前記のモノとジの混合物、モノ、ジおよびトリとの混合物や前記化合物の一種以上の混合物であっても良い。好ましく用いられる酸性燐酸エステルとしては、モノおよびジステアリルアシッドホスフェートの混合物などの長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられる。市販品としては、アデカ社製“アデカスタブ”AX−71を入手することができる。
また、前記の酸性燐酸エステルの配合量は、熱変形温度と機械特性の点から、ポリカーボネート樹脂/ポリエステル樹脂組成物100質量部に対し、0.05〜2質量部、好ましくは0.1〜1質量部である。
<酸化防止剤>
本発明の炭素繊維樹脂複合材組成物に用いられる樹脂部には、所定量の酸化防止剤が含まれていてもよい。
酸化防止剤としては、1次酸化防止剤であるフェノール系酸化防止剤、2次酸化防止剤であるリン系酸化防止剤を併用することが望ましい。
<フェノール系酸化防止剤>
フェノール系酸化防止剤としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス−3−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等をあげることができる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸である。ヒンダードフェノール系化合物の具体的な商品名としては、ADEKA製“アデカスタブAO−20”,”AO−30”,”AO−40”,”AO−50”,”AO−60”,”AO−70”,”AO−80”,”AO−330”、(株)チバスペシャリティケミカル製“イルガノックス245”,”259”,”565”,”1010”,”1035”,”1076”,”1098”,”1222”,”1330”,”1425”,”1520”,”3114”,”5057”、(株)住友化学製“スミライザーBHT−R”、”MDP−S”、”BBM−S”、”WX−R”、”NW”、”BP−76”、”BP−101”、”GA−80”、”GM”、”GS”、サンケミカル(株)製“サイアノックスCY−1790”などが挙げられる。
<リン系酸化防止剤>
リン系化合物としては、例えば、ホスファイト系化合物、ホスフェート系化合物が挙げられる。かかるホスファイト系化合物の具体例としては、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−1,6−ヘキサメチレン−ビス(N−ヒドロキシエチル−N−メチルセミカルバジド)−ジホスファイト、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−1,10−デカメチレン−ジ−カルボキシリックアシッド−ジ−ヒドロキシエチルカルボニルヒドラジド−ジホスファイト、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−1,10−デカメチレン−ジ−カルボキシリックアシッド−ジ−サリシロイルヒドラジド−ジホスファイト、テトラキス[2−t(ブチル−4−チオ(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−ジ(ヒドロキシエチルカルボニル)ヒドラジド−ジホスファイト、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド−ジホスファイトなどが挙げられるが、少なくとも1つのP−O結合が芳香族基に結合しているものがより好ましく、具体例としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチル−フェニル)ブタン、トリス(ミックスド−モノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)などが挙げられ、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイトなどが好ましく使用できる。ホスファイト系化合物の具体的な商品名としては、(株)ADEKA製“アデカスタブ C”、”PEP−4C”、”PEP−8”、”PEP−11C”、”PEP−24G”、”PEP−36”、”HP−10”、”2112”、”260”、”522A”、”329A”、”1178”、”1500”、”135A”、”3010”、”TPP”、(株)チバスペシャリティケミカル製“イルガフォス168”、(株)住友化学製”スミライザーP−16”、(株)クラリアント製”サンドスタブPEPQ”、GE製”ウエストン618”、”619G”、”624”などが挙げられる。
<炭素繊維樹脂複合材組成物の製造方法>
本発明の炭素繊維樹脂複合材組成物の製造方法には、前述の炭素繊維を短繊維として添加する方法の他に、一方向に引き揃えられた炭素繊維束に溶融した熱可塑性樹脂を含浸させる方法が好適に用いられる。この方法によれば、炭素繊維を長繊維として含有したプリプレグを製造することができ、高弾性率・高強度の構造部材を製造する際に有利である。
プリプレグを製造する際に用いられる炭素繊維は連続繊維であり、一ないし複数のボビンから供給され、溶融樹脂と接触する前に開線され、シート状の炭素繊維束として溶融樹脂を含浸させる装置に供給される。炭素繊維の開線方法には、バー開線、空気開線など、公知の技術が使用されうる。シート状の炭素繊維束は、溶融樹脂と接触する前に、加熱されていてもよい。
溶融樹脂の供給方法は特に限定されないが、例えば、予め溶融混練されて造粒された樹脂部を単軸押し出し機に供給して、押し出し機の先端に装着されたT−ダイから膜状の溶融樹脂を炭素繊維束上に流下させる方法が好適に用いられる。また、押し出し機として二軸押し出し機を用いて、前述の樹脂部の混練工程から造粒工程を経ずに、直接プリプレグを製造することもできる。
その他の方法として、予め製膜されたフィルム状の樹脂を樹脂の融点、または軟化点以上に加熱された熱ロール上に供給した後、炭素繊維束と接触させてもよい。
樹脂の炭素繊維束への含浸には、対向した熱ロール中に炭素繊維束と溶融樹脂を挟み込み、加圧含浸させる方法が好適に用いられる。熱ロールは樹脂の融点または軟化点以上の温度であることが含浸効率の観点から好ましいが、特に溶融粘度の低い樹脂を用いる場合や、炭素繊維束の目付が低い場合は、炭素繊維束と溶融樹脂を樹脂の融点または軟化点以下の対向する熱ロールに同時に供給して、含浸と同時に樹脂を冷却固化させる方法も用い得る。
溶融した樹脂を熱ロールから直接剥がすことも可能ではあるが、この場合は熱ロール表面に一定量の溶融樹脂が付着して残留することから、樹脂の熱劣化が生じやすい。材料物性、及び生産性の観点からは、熱ロールと冷却ロールをシームレスベルトで繋いで、溶融ゾーンで樹脂を炭素繊維束に含浸させた後、冷却ゾーンで樹脂を固化させる方法が好適に用いられる。また、熱ロールと溶融樹脂の間に離型紙を挿入し、離型紙ごと冷却ロールで冷却する方法も好適に用いられる。
さらには、炭素繊維束上に溶融樹脂をカーテン状に流下させ、含浸ブレードでしごくことにより樹脂を含浸させる方法も好適に用い得る。この方法は、シームレスベルトや離型紙を用いる方法に比べて、設備投資が低減できることや運転管理が容易で高速化に向いているなどの長所がある。
本発明の炭素繊維樹脂複合材組成物における樹脂部に対する炭素繊維の質量部は、樹脂部100質量部に対して、通常35質量部以上、好ましくは50質量部以上、より好ましくは70質量部以上であり、通常200質量部以下、好ましくは170質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。樹脂部100質量部に対する炭素繊維の質量部が200質量部以下であれば、成形時に十分な流動性を確保することができ、炭素繊維の質量部の値が低いほど流動性は向上する。樹脂部100質量部に対する炭素繊維の質量部の値が35質量部以上であれば構造部材に必要な力学特性が得られる。なお、樹脂組成物中の炭素繊維の含有量は、JIS K7075に準拠した方法により測定することができる。
このようにして得られた炭素繊維樹脂複合材プリプレグは、単独でテープ状の補強材として使用することもできるし、積層してスタンパブルシート(圧縮成形用シート)として使用することもできる。
炭素繊維樹脂複合材プリプレグは、通常、厚さ50〜200μmの厚みを有するが、これを複数枚積層することで、炭素繊維樹脂複合材シートを得ることができる。積層する際に繊維軸方向を揃えて一方向材とすることも出来るが、繊維軸を任意に組み合わせることで、強度・弾性率の異方性を制御することができる。
等方的な力学特性のスタンパブルシートを得るためには、例えばプリプレグを繊維軸に沿ってスリッティングしたのち任意の長さに切断し、得られた微小片をランダムに積層させて加熱圧着する方法を取ることができる。この際、スリッティングの幅としては、2〜50(mm)が好ましい。更に好ましくは4〜30(mm)である。スリッティング幅が2(mm)未満であるとスタンパブルシートの成形性が悪化するとともに、積層させる際に嵩高くなり生産性が悪化する。スリッティング幅が50(mm)超過であると、スタンパブルシートの力学強度のばらつきが大きくなり、好ましくない。
また、等方的な力学特性のスタンパブルシートを得るためには、一方向に引き揃えられたプリプレグに、必要に応じて炭素繊維を断ち切るための切込を入れ、繊維方向が平面(360°)を等分割するように積層させる方法を取ることも好ましく用いられる。例えば、繊維軸を[0°,90°]として積層すれば平面を2分割できる。繊維軸を[0°,60°,120°]として積層すれば平面を3分割できる。4分割する場合は[0°,45°,90°,135°]とすればよく、6分割する場合は[0°,30°,60°,90°,120°,150°]とすればよい。
スタンパブルシートの成形性を向上させるためには、一般に炭素繊維樹脂複合材に含まれる炭素繊維の長さは、長いほど力学特性に優れるものの、スタンピング成形時の流動性は低下する。スタンピング成形時の流動性向上のためには、炭素繊維をある長さに切断することが効果的であり、このことによりリブやボスといった複雑な3次元形状にも流入する炭素繊維樹脂複合材を得ることができる。なお、「炭素繊維を断ち切るための切込」とは、炭素繊維を断ち切る深さを有し、さらに炭素繊維の配向方向とは異なる方向に伸びる切込であることを意味する。
炭素繊維樹脂複合材が炭素繊維を断ち切る切込を有する場合、断ち切られた炭素繊維の長さは特に限定されないが、通常5mm以上、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上であり、通常100mm以下、好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下である。上記範囲内であれば、十分な力学物性とスタンピング成形時のリブ等の薄肉部への流動を両立させることができる。本発明において長繊維とは、数平均繊維長が5mm以上のものを指す。
このような切込みは、積層材とする前にプリプレグに入れておくことが好ましい。プリプレグに入れる切込みは、繊維に対して任意の角度を持たせることができるが、流動性、及び機械的強度のバランスから、繊維方向に対して30乃至60°の角度とすることが望ましい。切込みは連続なものでも不連続なものでもよい。
これらの方法で得られた等方、または疑似等方のスタンパブルシートは、単独で用いても良いし、1種以上のシートを組み合わせて使用しても良い。
また、スタンパブルシートを積層させる場合、シートの間に樹脂組成物層、あるいは樹脂−フィラー複合材層、発泡樹脂層などを挟んでもよい。
このような長繊維を含有する炭素繊維樹脂複合材は、機械的強度に優れる。かかる機械的強度は、ISO 178に基づいて曲げ強度として測定することができる。本発明の製造方法によって得られる炭素繊維樹脂複合材成形体の曲げ強度は、等方材料の場合、通常250MPa以上、好ましくは300MPa以上である。一方向材料の場合は、繊維方向で500MPa以上、好ましくは600MPa以上である。
<構造部材>
本発明の炭素繊維樹脂複合材組成物は、電気製品、車両、航空機等の構造材料一般に好適に用いられる。
本発明によって得られる炭素繊維樹脂複合材組成物から得られる構造部材は、平板状であっても十分な強度と弾性率を発現するが、波板状、ハットチャンネル状等の成形体とすることによって、より効果的な構造強度を発現させることができる。また、平面部にリブ構造を付与することによっても構造強度を補強することができる。リブ構造は、スタンパブルシートを圧縮成形する際に同時に形成することもできるが、圧縮成形後の成形体を射出成型金型内に配置し、インサート成形によって付与する方法も好適に用いられる。
かかる構造部材は、一般に工業部品の使用環境とされる、−30〜80℃程度の温度領域において、絶乾状態でも吸湿状態においても同等の強度・弾性率を有することが望ましい。
一般に樹脂材料は、吸湿状態より乾燥状態の方が高弾性率、高強度であり、高温環境下より低温環境下の方が高弾性率、高強度である。炭素繊維と複合させた場合でも、マトリクス樹脂のこの傾向が、複合樹脂組成物の特性に反映される傾向にある。
ポリカーボネート樹脂/ポリエステル樹脂アロイは従来から一般によく知られた樹脂材料であるが、絶乾低温環境下における強度と吸湿高温環境下における強度とをバランスさせる技術については知見がなかった。本発明者らは、熱分析測定におけるポリエステル樹脂成分の結晶融解熱量に着目し、樹脂部に含有されるポリエステル樹脂成分の結晶融解の際に吸収される熱エネルギー(融解エンタルピー)ΔHmの、含有されるポリエステル樹脂量から理論的に計算される平衡融解エンタルピーΔHoに対する値ΔHm/ΔHoが40%以上であることが、高い物性保持率を達成するために必要であることを見出した。ポリエステル樹脂成分の結晶性を維持することにより、吸湿による物性低下を低減できるとともに、耐薬品性においても好ましい結果が得られる。ΔHm/ΔHoが40%未満であると、樹脂部の吸湿による物性低下が著しく、またポリカーボネート樹脂部のガラス転移点が下がるために高温環境下における物性維持率が低下する。
ポリエステル樹脂成分が、かかる高結晶性を維持するためには、溶融混練時のポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とのエステル交換反応を抑制することが肝要であり、エステル交換反応抑制剤の添加が効果的である。
さらに本発明者らは、ポリエステル樹脂の結晶性を維持することだけでは物性の温度変化を抑制するのに不十分であり、ポリカーボネート樹脂/ポリエステル樹脂アロイ中におけるポリエステル樹脂が、通常の成形条件では結晶化しない程度まで分散性を高めることが、吸湿高温条件下での物性保持に重要であることを見出した。即ち、成形品の熱分析測定時に観測されるポリエステル樹脂の再結晶化エンタルピーΔHcの融解エンタルピーΔHmに対する比ΔHc/ΔHmを再結晶化率とし、再結晶化率が50%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上とすることが好ましいことを見出した。ΔHc/ΔHmが50%以上であると、炭素繊維樹脂複合材料とした時に、常温(23℃)絶乾条件における曲げ弾性率に対する吸湿80℃の曲げ弾性率の保持率が、90%以上となり好ましい。
このような特徴はポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の溶融粘度を特定の範囲に制御した結果、ポリエステル樹脂が極めて微細に分散したためと思われ、驚くべきことに透過型電子顕微鏡による観察で確認されるポリエステル樹脂相は、厚み10nm程度の樹状結晶構造であった。
ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の分散性を好ましい範囲まで高めるためには、溶融粘度が一定の範囲のポリカーボネート樹脂・ポリエステル樹脂を使用することが有効である。即ち、本発明に使用されるポリカーボネート樹脂、及びポリエステル樹脂の好ましい溶融粘度は、260℃において50(Pa・s)以上であり、さらにポリカーボネート樹脂の溶融粘度ηPCとポリエステル樹脂の溶融粘度ηPEsの積[ηPC・ηPEs]が2×10(Pa・s)以下である。各樹脂の溶融粘度の積が上限を超えると、ポリエステル樹脂が巨視的に相分離するため、温度特性上好ましくない。下限値を下回ると機械的強度が低下するため好ましくない。
以下、実施例により本発明の具体的態様を詳細に説明するが、本発明は実施例の態様のみに限定されるものではない。
<原料>
<ポリカーボネート樹脂>
A−1;三菱エンジニアリングプラシチックス社製 ユーピロンH4000
(MVR=60cm/10min)
A−2;三菱エンジニアリングプラシチックス社製 ユーピロンH3000
(MVR=28cm/10min)
A−3;三菱エンジニアリングプラシチックス社製 ノバレックス7020IR
(MVR=28cm/10min)
A−4;三菱エンジニアリングプラシチックス社製 ノバレックス7022R
(MVR=13cm/10min)
<ポリエステル樹脂>
B−1;三菱エンジニアリングプラシチックス社製 ノバデュラン 5008
([η]=0.85dl/g)
B−2;三菱エンジニアリングプラシチックス社製 ノバデュラン 5010R508
([η]=1.0dl/g)
<コアシェル型グラフト共重合体>
C−1;三菱レイヨン社製 メタブレン S2006
<炭素繊維>
E−1;三菱レイヨン社製 パイロフィル TR50S15L AD
<エステル交換抑制剤>
F−1;アデカ社製 アデカスタブ AX−71[オクタデシルホスフェート]
<酸化防止剤>
G−1;フェノール系酸化防止剤:アデカ社製 アデカスタブ AO−50
[オクタデシル3−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロピオネート]
G−2;リン系酸化防止剤:アデカ社製 アデカスタブ 2112
[トリス(2,4−ジt−ブチルフェニル)ホスファイト]
<樹脂部Dの製造>
同方向二軸押出機(株式会社池貝製:PCM−30)を用いて、表1に示す各成分を混練し、樹脂部D(実施例1〜5、比較例1〜4)を製造した。押し出されたストランドは水槽で冷却し、ペレタイザーにより造粒(ペレット化)した。なお、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(F)成分、(G)成分は、メインフィーダから押出機に供給した。混練条件は以下のとおりである。
シリンダ温度 C1:230℃、C2:250℃、C3〜C8:270℃
スクリューフォーメーション:ニーディングゾーンを2箇所設置した。
減圧ベント:C7に設置
スクリュー回転数:200rpm
吐出量:15kg/hr
<樹脂試験片の作成>
東芝機械社製IS55射出成形機を用いて、シリンダ温度:270℃、金型温度:80℃の条件において、ペレット化された樹脂部、及び樹脂組成物からISO 3167:93 A型ダンベル型試験片を成形し、樹脂部の耐薬品性試験に供した。
<長繊維樹脂組成物の製造>
(樹脂フィルムの製造)
上述の樹脂部をアイ・ケイ・ジー(株)製PMS30−32単軸押し出し機に供給し、同押し出し機に装着された幅350mmのT−ダイから押し出し、(株)GSIクレオス製シート冷却巻取り装置705−FA082を経て、厚さ約40μmの樹脂部フィルムとした。
(プリプレグの製造)
ドラムワインド方式にて、炭素繊維を用いて繊維目付を100g/mに調整した一方向配向炭素繊維シートを作製した後、この炭素繊維シートに適度に張力を掛け、炭素繊維シートの両面から前記樹脂フィルム、フッ素樹脂製フィルム(日東電工(株)社製、製品名:ニトフロンフィルム970−4UL)、アルミ製の平板(厚さ10mm)の順に挟み、加熱/冷却プレス機の加熱盤で270℃、無加圧で5分間予熱後、20kPaで5分間加圧成形し、冷却盤で25℃、30kPaで5分間加圧冷却し、繊維含有率約40vol%、厚み0.13mmを有する樹脂組成物プリプレグを得た。
(一方向積層材の製造)
こうして得られたプリプレグ16枚を100mm角で深さ2.0mmの印籠金型内に繊維軸方向を揃えて配置し、加熱/冷却プレス機の加熱盤で260℃、20kPaで10分間加圧成形し、冷却盤で25℃、40kPaで5分間加圧冷却し、繊維含有率約40vol%、厚み2mmの樹脂組成物一方向積層材(長繊維樹脂組成物)を得た。得られた平板状の炭素繊維樹脂一方向積層材から、繊維方向と平行方向(0°)に長さ100mm、幅12.5mmの試験片を切り出し、曲げ試験に供した。
<樹脂部融解時のPBT成分の結晶化度、及び再結晶化率の評価>
樹脂部Dのペレットを予め100℃真空乾燥機中で5時間乾燥し、260℃の熱プレス機中で、直径25mmφ、厚さ2mmのスペーサー金型を用いて、20kPaで5分間加圧成形し、25℃の冷却プレス機で30kPa、5分間加圧冷却してプレス試験片を得た。この試験片から、約10mgのサンプルを切り出し、40℃に保たれた真空乾燥機中で3日間乾燥させてから精秤し、アルミニウム製オープンパン及びパンカバー(常圧タイプ、セイコー電子社製「P/N SSC000E030」及び「P/N SSC000E032」)を用いて封入し、示差走査熱量計(セイコー社製「DSC220C」)を用いて、窒素気流下、0℃から250℃まで10℃/minで昇温し、途中で観察されたPBT樹脂の再結晶化発熱量ΔHc、及び結晶融解の吸熱量ΔHmを測定した。
ΔHcは上記測定中に100〜180℃の間で観測される発熱ピーク面積から求め、ΔHmは180〜250℃の間に観察される吸熱ピークの面積から求めた。いずれの場合もピークが多重ピークとなる場合はそれらの総和として求めた。
樹脂部のPBT成分の結晶化度の計算は、上述のΔHmとポリエステル樹脂添加量から計算される理論的な平衡融解エンタルピーの比から求めた。即ち、PBTの平衡融解エンタルピーΔHo=145J/gを使って、以下の式で結晶化度χcを求めた。
χc=ΔHm/ΔH/wPBT×100 (%)
樹脂部のPBT成分の再結晶化率の計算は、上述のΔHc、およびΔHmから以下の式で計算した。
再結晶化率=ΔHc/ΔHm×100(%)
χc;ペレット中の樹脂の結晶化度(%)
PBT;樹脂部全体に対するPBT成分の質量分率
ΔHc;樹脂部の再結晶化発熱量(J/g)
ΔHm;樹脂部の融解吸熱量(J/g)
ΔH;ポリエステル樹脂の理論的な平衡融解エンタルピー(J/g)
<樹脂原料の溶融粘度>
樹脂を厚さ1mmにプレス成型し、打ち抜き刃で直径25mmφの粘弾性測定用試験片を作成した。この試験片を260℃に温度調整された回転式粘度計に装填し、動的粘弾性を角周波数ω=100(rad/sec)から0.1(rad/sec)まで、初期歪量=10%で測定した。測定装置には、ARES100FRTN1(TAインスツルメント・ジャパン社製)を用い、測定治具には直径25mmφのパラレルプレートを使用した。得られた動的粘弾性データの角周波数ω=1.0〜10(rad/sec)における複素粘性率の絶対値を平均し、樹脂の溶融粘度とした。測定時に試料に印加する歪量は、測定トルクが装置トランスデューサーのダイナミックレンジに入るように、調節した。
<固体粘弾性測定>
樹脂部の貯蔵弾性率E’の測定は以下の方法で行った。樹脂部サンプルを80℃の真空乾燥機中で8時間乾燥させた後、プレス成型機を用いて、厚さ約0.1mmのシート状試料とした。得られたシート状試料を一旦130℃で3分間熱処理した後、幅5.0mmのリボン状試験片を切り出し、測定に供した。測定にはTAインスツルメント・ジャパン社製RSA−IIIを用い、測定治具にはファイバー/フィルム ツールを使用した。
測定条件は、初期試料長=20.0mm、印加周波数=1.0Hz、歪量0.1%、測定温度範囲=−30℃〜130(℃)、昇温速度=5℃/分、測定間隔=5秒間(試料の軟化温度に応じて適宜停止)として、固体粘弾性の温度分散測定を行った。冷却には液体窒素を用い、温度制御には温調された窒素ガスを用いた。
測定された貯蔵弾性率E’から、80℃における貯蔵弾性率E’の値をE’(80)、−30℃におけるそれをE’(−30)として、貯蔵弾性率保持率を以下の式で求めた。
貯蔵弾性率保持率=E’(80)/E’(−30)×100(%)
<耐薬品性>
上述の樹脂部ダンベル試験片に、ステンレス鋼製治具により一定の撓みを与えて、最大撓みを与えている箇所の引っ張り応力側に、グリコール系ブレーキフルードを接触させて、耐薬品性を評価した。具体的には、3点曲げの要領で、支点間距離101mmのサンプル固定治具にダンベル試験片を静置し、中央部が支点部より3mm下方に撓むように押し子を固定した。押し子の位置が最大撓みを与えている箇所である。厚み4mmのダンベル試験片にこの条件で撓みを与えると、押し子の反対側の試験片表面には、0.71%の引っ張り歪が生じる。この位置に、グリコール系ブレーキフルードを含浸させた長さ20mmの濾紙を貼り付け、5分間放置し、サンプルの表面状態を目視観察した。
評価結果は以下のように整理した。
◎;5分間破断せずに形状を保持したもの
○;5分以内に破断するが、クラックの生成が横方向のみに限定されたもの
×;5分以内に破断しており、クラックが縦横に走っていたもの
<炭素繊維樹脂複合材組成物の曲げ物性評価>
(試験片の乾燥)
室温(23℃)絶乾状態で曲げ物性を測定する炭素繊維樹脂複合材組成物の試験片は、80℃の真空乾燥機中で8時間乾燥処理を行い、試験に供した。
(試験片の吸湿処理)
上述の一方向積層材試験片を80℃の温水に48時間浸漬することで、試験片の吸湿処理を行った。
(曲げ試験物性の評価)
切り出した曲げ試験片は、ISO 178に規定する試験方法に準じて、室温、または80℃の環境下で、支点間距離を80mmとし、クロスヘッド速度5.0mm/分で3点曲げ試験を行って強度と弾性率を測定した。試験機としてはインストロン万能試験機4465型を用いた。得られた測定値のそれぞれn=4の平均値を曲げ強度および曲げ弾性率として記録した。
(強度保持率の評価)
炭素繊維樹脂複合材組成物に関して、曲げ強度に関する保持率(強度保持率)の評価を行った。即ち、上述の吸湿処理を行った試験片を80℃の環境下で曲げ試験を行った際の強度FS(80℃)と、乾燥処理を行った試験片を23℃で曲げ試験を行った際の強度FS(23℃)の比から強度保持率を算出した。
ただし、強度保持率=FS(80℃)/FS(23℃)×100(%)である。
FS(23℃)の評価
◎;850MPa≦FS(23℃)
○;750MPa≦FS(23℃)<850MPa
×;FS(23℃)<750MPa
FS(80℃)の評価
◎;600MPa≦FS(80℃)
○;500MPa≦FS(80℃)<600MPa
×;FS(80℃)<500MPa
強度保持率の評価
◎;70(%)≦強度保持率
○:60(%)≦強度保持率<70(%)
×:強度保持率<60(%)
(弾性率保持率の評価)
強度保持率の評価と同様に、曲げ弾性率に関する保持率(弾性率保持率)の評価を以下の基準で行った。
ただし、弾性率保持率=FM(80℃)/FM(23℃)×100(%)である。
FM(23℃)、FM(80℃)の評価
◎;90GPa≦FM(23℃)、FM(80℃)
○;80GPa≦FM(23℃)、FM(80℃)<90GPa
×;FM(23℃)、FM(80℃)<80GPa
弾性率保持率の評価
◎;95(%)≦弾性率保持率
○;90(%)≦弾性率保持率<95(%)
×;弾性率保持率<90(%)
実施例1:耐薬品性はPC単独使用の場合に比して充分改善されており、コンポジットの高温での強度は非常に優れていた。常温での弾性率は良好で、湿熱環境下においても十分に維持されていた。
実施例2〜5:いずれも耐薬品性、コンポジットの物性の安定性ともに非常に優れていた。
(参考例1)
PC単独で評価した。機械的特性、温度安定性ともに非常に優れているが、耐薬品性が不良であった。
比較例1、2:耐薬品性の改善効果が低く、吸湿高温下での強度低下が著しく構造材料には適さなかった。
比較例3:PBT量が多いため、PBTの結晶性が保持されており耐薬品性は良好であるが、マトリクス樹脂の弾性率低下が大きく、吸湿高温下での弾性率低下が大きく構造材料には適さなかった。
比較例4:PC樹脂の粘度が高く、PC樹脂とPBT樹脂とが巨視的に相分離しているため、吸湿高温下での強度低下が大きく構造材料には適さなかった。
<スタンパブルシートの製造例>
上述の方法で得られた炭素繊維が一方向に引き揃えられたプリプレグ16枚を、0°方向と90°方向に交互に積層し、200mm角、深さ2mmの印籠金型に入れ、260℃、20kPaで10分間加圧成形し、200mm角、厚み2mmのスタンパブルシートを得る。
<炭素繊維樹脂複合材成形体の製造例>
得られた積層シートより200mm×100mmの板状物を2枚切り出す。それを赤外ヒーター(日本ガイシ製、製品名:QU−95469−S01)を用いて、280℃にて3分間加熱し、80℃に設定したハットチャンネル型の印籠金型に配置し、100tプレス(山本鉄工所製、プレス成形機PPM1−100)を用いて、90tにて3分間プレスを行い、繊維強化複合材製ハットチャンネルを得る。(図1)
得られた2つのハットチャンネルを熱盤溶着法により貼りあわせ、中空状成形体を得る。(図2)
1:ハットチャンネル
2:中空成形体
3:PBT樹脂(暗い部分がPC樹脂。実施例5では全てのPBT樹脂が10nm程度
の樹状結晶として析出していた。比較例4では、大部分のPBT樹脂が数百nm
程度の巨視的な相分離構造を取っていることが確認された。)
(1) ポリカーボネート樹脂(A)70〜90質量部、ポリエステル樹脂(B)10〜30質量部からなる熱可塑性樹脂100質量部に、コアシェル型グラフト共重合体(C)0〜20質量部を添加した樹脂部(D)と、炭素繊維(E)35〜200質量部とからなる樹脂組成物において、該樹脂部(D)の
・ポリエステル樹脂(B)の融解時の結晶化度χcが40%以上であり、
・ポリエステル樹脂(B)の再結晶化率が70%以上である
炭素繊維樹脂複合材組成物。
ただし、
結晶化度χc=ΔHm/ΔH0/wPEs×100(%)
再結晶化率=|ΔHc/ΔHm|×100(%)
ΔHm;ポリエステル樹脂(B)の融解エンタルピー
ΔH0;ポリエステル樹脂(B)の平衡融解エンタルピー
ΔH;ポリエステル樹脂(B)の再結晶化エンタルピー
PEs;ポリエステル樹脂(B)の樹脂部(D)中における質量分率
である。
(2) ポリカーボネート樹脂(A)の260℃における溶融粘度ηPCが50(Pa・s)以上であり、ポリエステル樹脂(B)の260℃における溶融粘度ηPBTが50(Pa・s)以上であり、両者の積ηPC・ηPBTが2×10(Pa・s)以下である上記(1)に記載の炭素繊維樹脂複合材組成物。
(3) 樹脂部(D)の80℃における貯蔵弾性率E’(80)の−30℃における貯蔵弾性率E’(−30)に対する保持率(貯蔵弾性率保持率)が70%以上である上記(1)または(2)に記載の炭素繊維樹脂複合材組成物。
ただし、貯蔵弾性率保持率=E’(80)/E’(−30)×100(%) である。
(4) 上記炭素繊維の繊維長Lが、2(mm)≦L≦100(mm)である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の炭素繊維樹脂複合材組成物。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の炭素繊維樹脂複合材組成物からなるスタンパブルシート。
(6) 上記(5)に記載のスタンパブルシートを圧縮成形することによって得られる炭素繊維樹脂複合材成形体。

Claims (6)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)70〜90質量部、ポリエステル樹脂(B)10〜30質量部からなる熱可塑性樹脂100質量部に、コアシェル型グラフト共重合体(C)0〜20質量部を添加した樹脂部(D)と、炭素繊維(E)35〜200質量部とからなる樹脂組成物において、該樹脂部(D)の
    ・ポリエステル樹脂(B)の融解時の結晶化度χcが40%以上であり、
    ・ポリエステル樹脂(B)の再結晶化率が50%以上である
    炭素繊維樹脂複合材組成物。
    ただし、
    結晶化度χc=ΔHm/ΔH0/wPEs×100(%)
    再結晶化率=|ΔHc/ΔHm|×100(%)
    ΔHm;ポリエステル樹脂(B)の融解エンタルピー
    ΔH0;ポリエステル樹脂(B)の平衡融解エンタルピー
    ΔH;ポリエステル樹脂(B)の再結晶化エンタルピー
    PEs;ポリエステル樹脂(B)の樹脂部(D)中における質量分率
    である。
  2. ポリカーボネート樹脂(A)の260℃における溶融粘度ηPCが50(Pa・s)以上であり、ポリエステル樹脂(B)の260℃における溶融粘度ηPBTが50(Pa・s)以上であり、両者の積ηPC・ηPBTが2×10(Pa・s)以下である請求項1に記載の炭素繊維樹脂複合材組成物。
  3. 樹脂部(D)の80℃における貯蔵弾性率E’(80)の−30℃における貯蔵弾性率E’(−30)に対する保持率(貯蔵弾性率保持率)が70%以上である請求項1または2に記載の炭素繊維樹脂複合材組成物。
    ただし、貯蔵弾性率保持率=E’(80)/E’(−30)×100(%) である。
  4. 上記炭素繊維の繊維長Lが、2(mm)≦L≦100(mm)である請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維樹脂複合材組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維樹脂複合材組成物からなるスタンパブルシート。
  6. 請求項5に記載のスタンパブルシートを圧縮成形することによって得られる炭素繊維樹脂複合材成形体。
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