JP7187814B2 - 半導体装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ヒートシンクからの放熱を行う半導体装置に関するものである。
従来より、特許文献1のように、発熱素子を有する半導体装置が提案されている。発熱素子を有する半導体装置では、高温化を抑制するために、発熱素子が発した熱を放出させる必要がある。このため、発熱素子を金属製のヒートシンクに貼り付け、ヒートシンクを介して効率的に放熱が行われるようにしている。また、モールド樹脂部のうちヒートシンクよりも外側に位置している部分の吸湿時の膨張による応力により、モールド樹脂部とヒートシンクとの間に剥離が生じ得る。このため、この剥離を抑制するために、ヒートシンクのうち発熱素子の外側であって発熱素子から離れた位置に、剥離抑制手段となる窪みを設けている。
特開2015-126119号公報
発熱素子を有する半導体装置において、ヒートシンクを備えることで放熱できる構造とする場合、発熱素子と外部との絶縁を図ることが必要となる。このため、発熱素子とヒートシンクとの間に、金属とセラミックスと金属とを貼り合わせた積層構造の金属絶縁基板を配置し、セラミックスによって絶縁構造体とすることが考えられている。
このような絶縁構造体を用いる場合、金属絶縁基板とヒートシンクとの線膨張係数の差、より詳しくはセラミックスと銅(Cu)などの金属で構成されるヒートシンクとの線膨張係数の差に起因する応力により、モールド樹脂とヒートシンクとの間の剥離が生じる。
このようなモールド樹脂とヒートシンクとの剥離を抑制するために、上記した特許文献1の構造を適用することが考えられる。しかしながら、金属絶縁基板から離れた位置において、ヒートシンクの表面に窪みを設けただけの構造では、応力を低下させることができず、十分に剥離を抑制することができないことが確認された。
また、モールド樹脂のうちの外縁部に、半導体装置の表面側と裏面側それぞれに配置されるヒートシンクの間に入り込むように切欠きを設けることで、応力を緩和する構造とすることも考えられる。しかしながら、このような構造とする場合、切欠き部に応力が集中し、半導体装置の強度が低下するという問題も発生させる。
本発明は上記点に鑑みて、半導体装置の強度を低下させることなく、モールド樹脂部とヒートシンクとの間の剥離を抑制することができるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、板状の半導体チップ(10)と、半導体チップの少なくとも一面側に配置され、半導体チップで発した熱を放出させる放熱構造体(20、30)と、を有する半導体装置であって、放熱構造体は、半導体チップ側に配置される金属絶縁基板(21、31)と、金属絶縁基板に対して半導体チップと反対側に配置される板状部分を有するヒートシンク(22、32)と、を有し、金属絶縁基板は、半導体チップ側に配置される第1金属板(21a、31a)と、第1金属板を挟んで半導体チップと反対側に配置されると共にヒートシンクに接続される第2金属板(21b、31b)と、第1金属板と第2金属板との間に配置されると共に、第1金属板と第2金属板の外周端から突き出して配置された絶縁板(21c、31c)と、を有した構成とされ、ヒートシンクのうち第2金属板に接続される部分が、該第2金属に接続される部分よりも外側の部分となる外縁部よりも突出した凸部(22a、32a)とされており、ヒートシンクの外縁部のうち絶縁板が第2金属板から突き出した部分と対向する領域が溝部(22c、32c)とされていることで前記凸部が構成されており、ヒートシンクのうち溝部よりも外側の領域は、凸部と同じ高さであり、凸部は、第2金属板の全域と接続されており、ヒートシンクのうち溝部が形成される面には、第2金属板のみが接続されている
このように、ヒートシンクのうち第2金属板に接続される部分を凸部とすることで、ヒートシンクのうち絶縁板と対向する部分について、絶縁板からの距離を離すことが可能となり、ヒートシンクとモールド樹脂との接合部の最大剪断応力を低下させられる。したがって、ヒートシンクとモールド樹脂との接合部の剥離を抑制することが可能となる。また、このような剥離抑制効果を得るのに、モールド樹脂に対してヒートシンクの間に入り込むような切欠きを設ける必要がない。このため、半導体装置の強度の低下を招くこともない。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
第1実施形態にかかる半導体装置の断面図である。 凸部を形成していない場合と凸部の高さを変化させた場合それぞれについて、ヒートシンクとモールド樹脂との接合部の各位置での剪断応力の変化を示した図である。 凸部の高さと最大剪断応力との関係を示した図である。 凸部の側壁と凹部の底面との成す角の一例を示した図である。 第2実施形態にかかる半導体装置の断面図である。 第3実施形態にかかる半導体装置の断面図である。 第4実施形態にかかる半導体装置の断面図である。 突き出し量dを変化させた場合において、ヒートシンクとモールド樹脂との接合部の各位置での剪断応力の変化を示した図である。 突き出し量dとヒートシンクの先端位置での剪断応力との関係を示した図である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本実施形態にかかる半導体装置の構成について説明する。
図1に示す本実施形態の半導体装置100は、例えばモータ駆動のためのスイッチングを行うパワーモジュールとして用いられるものである。半導体装置100は、半導体チップ10、第1放熱構造体20、第2放熱構造体30および金属ブロック40等を備えている。また、半導体チップ10、第1放熱構造体20、第2放熱構造体30および金属ブロック40や、第1放熱構造体20と第2放熱構造体30を構成する各部は、第1~第5接合材50a~50eを含む接合材50によって接合されている。そして、これらがモールド樹脂60によって封止された構成とされている。
具体的には、半導体チップ10のうち紙面下方に位置する一面側を下面、紙面上方に位置する他面側を上面として、半導体チップ10の下面と第1放熱構造体20の上面との間は第1接合材50aによって接合されている。また、半導体チップ10の上面と金属ブロック40の下面との間も第2接合材50bを介して接合されている。さらに、金属ブロック40と第2放熱構造体30との間も第3接合材50cによって接合されている。
本実施形態の場合、第1~第3接合材50a~50cおよび後述する第4、第5接合材50d、50eを含む接合材50は、導電材料である鉛フリーはんだ等によって構成されており、各接合材50の厚みは例えば0.1~0.2mmとされている。そして、接合材50により、半導体チップ10、第1放熱構造体20、第2放熱構造体30および金属ブロック40の相互間が物理的にも電気的にも接続された形態とされている。なお、接合材50としては、はんだ以外のもの、例えば導電性接着剤等を用いることもできる。また、電気的な接続を行わずに物理的な接合のみを行えば良い場所については、導電材料でない材料で構成されていても良い。
このような構成により、半導体チップ10の上面では、第2接合材50b、金属ブロック40、第3接合材50cおよび第2放熱構造体30を介して放熱が行われる。また、半導体チップ10の下面では、第1接合材50aから第1放熱構造体20を介して放熱が行われる。
半導体チップ10は、シリコン(Si)や炭化珪素(SiC)もしくは窒化ガリウム(GaN)などの半導体基板に対して発熱素子などを形成した発熱部品に相当するものである。発熱素子としては、例えば縦型のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やMOSFET、ダイオード等のパワー半導体素子が挙げられる。本実施形態の場合、半導体チップ10には、発熱素子として縦型のIGBTもしくはMOSFETが備えてある。
半導体チップ10は、例えば矩形状の薄板状とされている。そして、半導体チップ10の上面における一部に金属ブロック40が接合され、金属ブロック40よりも外側に制御端子を構成するリードフレーム70が配置されている。そして、半導体チップ10とリードフレーム70とがボンディングワイヤ80を介して電気的に接続されている。例えば、半導体チップ10に対して縦型のIGBTやMOSFETを備えている場合、リードフレーム70はゲートに接続され、金属ブロック40は表面電極、すなわちIGBTの場合のエミッタ電極やMOSFETの場合のソース電極に接続される。一方、半導体チップ10の裏面には裏面電極、すなわちIGBTの場合のコレクタ電極やMOSFETの場合のドレイン電極が形成され、裏面電極の全面が第1放熱構造体20に接続されている。
第1放熱構造体20は、金属絶縁基板21とヒートシンク22とが第4接合材50dを介して接合された構造とされ、平板状とされている。金属絶縁基板21は、第1金属板21aと第2金属板21bとの間に絶縁板21cを挟み込んだ構成とされている。そして、金属絶縁基板21は、第1金属板21aが半導体チップ10側に向けられ、第2金属板21bが第1金属板21aを挟んで半導体チップ10と反対側、つまりヒートシンク22側に向けられて配置されている。
第1金属板21aは、第1外部リード71と一体もしくは電気的に接続されており、半導体チップ10の裏面側とも第1接合材50aを介して電気的に接続されている。このため、第1金属板21aおよび第1外部リード71を通じて、半導体チップ10の裏面電極と外部との導通が図れるようになっている。
第1金属板21aのうち絶縁板21cと貼り合わされている部分は長方形状などの四角形状とされており、半導体チップ10よりも大きな寸法とされている。また、第1金属板21aは、厚さが0.1mm以上かつ1.5mm以下とされている。第1金属板21aを0.1mm以上としているのは、発熱素子に流れる大電流を許容できる厚みとするためと、放熱性を確保するためである。第1金属板21aを1.5mm以下としているのは、厚すぎても大電流を流し易くする効果や放熱性の向上効果が期待できない反面、厚すぎると絶縁板21cとの接合性が悪くなって剥離を発生させる可能性があるためである。
第2金属板21bは、絶縁板21cを介して第1金属板21aと一体化されているが、絶縁板21cが挟まれることによって第1金属板21aとは絶縁されている。第2金属板21bは、はんだ等で構成された第4接合材50dを介してヒートシンク22と接続されているが、第1金属板21aと絶縁されていることから、ヒートシンク22と半導体チップ10との間も絶縁されている。第2金属板21bのうち絶縁板21cと貼り合わされている部分は長方形状などの四角形状とされており、半導体チップ10よりも大きな寸法とされている。本実施形態の場合、第2金属板21bは、第1金属板21aと同じ寸法とされ、互いに対向配置されていて、第2金属板21bの法線方向から見て第1金属板21aと重なり合うように配置されている。また、本実施形態では、第2金属板21bの厚みを0.1mm以上かつ1.5mm以下としている。この厚みとしている理由については、第1金属板21aと同様である。
絶縁板21cは、SiN、AlN、Alで構成されたセラミックス等とされており、例えば厚みが0.2~0.8mmとされている。絶縁板21cは、第1金属板21aや第2金属板21bよりも大きな寸法とされており、第1金属板21aの法線方向から見た場合、絶縁板21cの全外縁部が第1金属板21aの外周端よりも外側にはみ出した状態となっている。本実施形態の場合、絶縁板21cの先端が第1金属板21aや第2金属板21bよりも0.5mm程度突き出すようにしている。これにより、第1金属板21aと第2金属板21bとの間の沿面距離が絶縁板21cの厚み分よりも大きくなり、第1金属板21aと第2金属板21bとの間の沿面放電を抑制できるようになっている。
ヒートシンク22は、銅などの熱伝達率の高い金属で構成されており、半導体チップ10から伝わる熱を効率よく放出し、半導体チップ10の高温化を抑制する。ヒートシンク22は、金属絶縁基板21と第4接合材50dを介して物理的に接続されている。第4接合材50dをはんだなどの導電材料で構成する場合、金属絶縁基板21のうちの第2金属板21bと電気的にも接続されることになるが、少なくとも物理的に接続されていれば良い。また、ヒートシンク22のうち、半導体チップ10と反対側の一面はモールド樹脂60から露出させられており、この露出面を放熱面として、より放熱が行われ易くなっている。
なお、本実施形態の半導体装置を冷却装置によって冷却する構成とすることもできる。その場合、冷却装置内の冷媒もしくは冷却装置を構成する金属部材が直接ヒートシンク22に接する構成とし、より冷却効率を高めることもできるが、冷媒もしくは金属部材と半導体チップ10とを絶縁する必要がある。このため、半導体チップ10とヒートシンク22との間に金属絶縁基板21を備えることで、絶縁板21cによって冷媒もしくは金属部材と半導体チップ10とを絶縁することが可能となる。
また、本実施形態では、ヒートシンク22を段付形状で構成し、ヒートシンク22のうちの内側部が外縁部よりも突き出した凸部22aとされ、凸部22aの外周部が窪んだ凹部22bとされている。具体的には、ヒートシンク22のうち第2金属板21bと接続される部分が凸部22aとされ、それよりも外側が凹部22bとされている。凸部22aの高さは0.05mm以上かつ1.0mm以下とされている。そして、上記したように、第2金属板21bの厚みを0.1mm以上かつ1.5mm以下としているため、絶縁板21cから凹部22bの表面までの距離は、0.15mm以上となっている。ただし、凸部22aの高さ、換言すれば凹部22bの深さについては任意であり、少なくとも金属絶縁基板21と接合される部分が凸部22aとされており、その周囲が凹部22bとされていれば良い。
一方、第2放熱構造体30は、金属絶縁基板31とヒートシンク32とが第5接合材50eを介して接合された構造とされ、平板状とされている。金属絶縁基板31は、第1金属板31aと第2金属板31bとの間に絶縁板31cを挟み込んだ構成とされており、第1金属板31aが半導体チップ10側に向けられ、第2金属板31bがヒートシンク32側に向けられている。
なお、第2放熱構造体30を構成する金属絶縁基板31とヒートシンク32は、第1放熱構造体20を構成する金属絶縁基板21とヒートシンク22と同様の構造とされている。金属絶縁基板31を構成する第1金属板31a、第2金属板31bおよび絶縁板31cは、それぞれ、金属絶縁基板21を構成する第1金属板21a、第2金属板21bおよび絶縁板21cと同じ構成とされている。そして、ヒートシンク32のうち半導体チップ10と反対側の一面がモールド樹脂60から露出させられており、この露出面を放熱面として、より放熱が行われ易くなっている。さらに、ヒートシンク32には、凸部22aおよび凹部22bと同様の構成とされた凸部32aおよび凹部32bが形成されている。また、第1金属板31aには第2外部リード72が一体もしくは電気的に接続されており、金属ブロック40を介して半導体チップ10の表面側に第1金属板31aが電気的に接続されることで、第2外部リード72を通じて、半導体チップ10の表面側と外部との導通が図れるようになっている。
金属ブロック40は、例えば上面形状が長方形とされた四角形板状部材で構成され、銅などの熱伝達率の高い金属によって構成されている。金属ブロック40は、例えば0.5~2.0mmの厚さで構成されており、半導体チップ10の表面側に電気的および物理的に接続されている。
モールド樹脂60は、半導体チップ10、第1放熱構造体20、第2放熱構造体30および金属ブロック40などを封止している。モールド樹脂60からは、第1放熱構造体20や第2放熱構造体30におけるヒートシンク22、32の一面やリードフレーム70の一端、および、第1外部リード71や第2外部リード72の一端が露出させられている。露出させられたリードフレーム70の一端や第1外部リード71や第2外部リード72の一端において、外部と電気的に接続可能とされている。
なお、リードフレーム70は、上記したように半導体チップ10の上面の所望箇所にボンディングワイヤ80を介して接続されている。ボンディングワイヤ80による接合箇所についてはモールド樹脂60によって覆われており、リードフレーム70のうちボンディングワイヤ80との接合箇所よりも先端位置がモールド樹脂60から露出させられている。
以上のような構造によって、本実施形態にかかる半導体装置100が構成されている。このように構成される半導体装置100は、例えば自動車におけるインバータ回路などに用いられる。そして、使用時には半導体チップ10が熱を発するため、その熱を放出させるために、半導体装置100は例えば図示しない冷却装置に取り付けられ、ヒートシンク22、32の露出面が冷却装置内の冷媒に曝されるように組みつけられる。
このような半導体装置100では、モールド樹脂60とヒートシンク22、32との接合部において、線膨張係数差に起因する応力が加わる。しかしながら、ヒートシンク22、32のうち第2金属板21b、31bと接続される部分を凸部22a、32aとし、それよりも外側の部分の全域を凹部22b、32bとしている。すなわち、絶縁板21c、31cのうち第2金属板21b、31bよりも突き出している部分と対向する領域において、絶縁板21c、31cからヒートシンク22、32までの距離を離すことができる。
実験によると、モールド樹脂60とヒートシンク22、32との接合部の中でも、最も線膨張係数差に起因する応力が大きくなるのは、絶縁板21c、31cのうち第2金属板21b、31bよりも突き出している部分の先端位置であることが確認されている。具体的に、ヒートシンク22、32に凸部22a、32aを形成していない構造と高さhを変えた凸部22a、32aを形成した構造とについて、ヒートシンク22、32の先端位置から金属絶縁基板21、31との境界位置までの間での剪断応力の変化を調べた。図2は、その結果を示した図であり、凸部22a、32aを形成していない構造と、凸部22a、32aを形成しつつ、その高さhを0.1mm、0.2mm、0.5mm、1mmで変化させた場合の結果を示している。また、図3は、各場合の最大剪断応力を示した図である。
図2に示すように、凸部22a、32aを形成していない構造においては、金属絶縁基板21、31との境界位置の近傍において、剪断応力が最も大きくなっている。具体的には、最大剪断応力が55MPaに至っている。このため、この部分において、モールド樹脂60とヒートシンク22、32との密着力よりも剪断応力が大きくなり、両者の間の剥離が生じる。
これに対して、凸部22a、32aを形成した構造においては、高さhが比較的高い場合には、金属絶縁基板21、31との境界位置の近傍において剪断応力が最も大きくなるものの、その大きさが凸部22a、32aを形成していない場合よりも低下する。この剪断応力の低下の割合は、凸部22a、32aが高くなるほど大きくなり、高さhが1mmに至るまで最大剪断応力を低下させることができていた。
具体的には、凸部22a、32aを形成していない場合の最大剪断応力が55MPaであった。一方、凸部22a、32aを形成した場合の最大剪断応力は、深さが0.1mmのときには33MPa、0.2mmのときには30MPa、0.5mmのときには20MPa、1mmのときには14MPaとなっていた。つまり、凸部22a、32aの高さhを0.1mm、0.2mm、0.5mm、1mmとした場合、それぞれ、最大剪断応力が40%、45%、65%、75%減少していた。
このように、高さhが低かったとしても、少なくとも凸部22a、32aを形成することにより、最大剪断応力を低下させることが可能となり、モールド樹脂60とヒートシンク22、32との剥離を抑制することが可能となる。特に、凸部22a、32aの高さhを0.5mm以上にすると、ヒートシンク22、32のうち金属絶縁基板21、31との境界位置の近傍において、剪断応力が最大とならないようにでき、より剥離抑制効果を高めることが可能となる。
なお、凸部22a、32aの高さhについては、1mmを超える高さとしても、剥離抑制効果を得ることができるが、図3に示すように最大剪断応力にほぼ変化が無くなり飽和する。逆に、凸部22a、32aの高さhを高くすることは、ヒートシンク22、32の厚みを厚くすることになるため、できるだけ凸部22a、32aの高さhを抑えるようにするのが好ましい。このため、凸部22a、32aの高さhを、0<h≦1mmの範囲で形成すると良く、好ましくは0.5≦h≦1mmとすると良い。
以上説明したように、本実施形態では、ヒートシンク22、32のうち金属絶縁基板21、31と接続される場所を凸部22a、32aとし、その周囲を凹部22b、32bとした構造としている。これにより、ヒートシンク22、32のうち絶縁板21c、31cと対向する部分について、絶縁板21c、31cからの距離を離すことが可能となり、ヒートシンク22、32とモールド樹脂60との接合部の最大剪断応力を低下させることが可能となる。したがって、ヒートシンク22、32とモールド樹脂60との接合部の剥離を抑制することが可能となる。
また、このような剥離抑制効果を得るのに、モールド樹脂60に対してヒートシンク22、32の間に入り込むような切欠きを設ける必要がない。このため、半導体装置の強度の低下を招くこともない。
なお、凸部22a、32aについては、高さの条件を満たしていれば、側面の形状については任意である。例えば、凸部22a、32aの側面と凹部22b、32bの表面とが成す角度θが、図4(a)に示すように90°であっても良いし、図4(b)に示すように鋭角であっても良いし、図4(c)に示すように鈍角であっても良い。
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してヒートシンク22、32の形状を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図5に示すように、本実施形態では、ヒートシンク22、32のうち凸部22a、32aよりも外側の全域に凹部22b、32bを形成するのではなく、所定幅の溝部22c、32cを形成している。そして、溝部22c、32cよりも外側については、凸部22a、32aと同じ高さとしている。つまり、ヒートシンク22、32のうち、絶縁板21c、31cの突き出している部分と対向する領域、より詳しくは突き出している部分の先端位置を含むように溝部22c、32cを設け、それよりも内側が凸部22a、32aとなるようにしている。
このように、溝部22c、32cを形成することで凸部22a、32aを構成するようにしても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。このときの溝部22c、32cの深さ、つまり凸部22a、32aの高さhについては、実験により、第1実施形態と同様、0<h≦1mmの範囲とすることで、ヒートシンク22、32とモールド樹脂60との接合部の剥離を抑制できることを確認している。したがって、溝部22c、32cを構成することによって凸部22a、32aの高さhを、0<h≦1mmの範囲とすること、好ましくは0.5≦h≦1mmとすることで、剥離陽性効果を得ることが可能となる。
なお、溝部22c、32cの幅については、任意であるが、溝部22c、32cが少なくとも絶縁板21c、31cの突き出している部分の先端位置と対応する部分を含むように形成されていれば良い。
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して第2金属板21b、31bおよびヒートシンク22、32を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図6に示すように、本実施形態では、ヒートシンク22、32については凹部22b、32bや溝部22c、32cを形成していない表面が平坦面とされた板状部材とし、第2金属板21b、31bの厚みを第1金属板21a、31aよりも厚くしている。
ここで、第1金属板21a、31aや第2金属板21b、31bの厚みについては、基本的には、電流を流し易くでき、かつ、放熱性を確保できる厚みであれば良く、厚くすることによる接合性の低下と半導体装置の大型化等を考慮すると、薄い方が好ましい。このため、第1金属板21a、31aについては、厚みを0.1mm以上かつ1.5mm以下としている。これに対して、第2金属板21b、31bについては、第1金属板21a、31aの厚みaと第2金属板21b、31bの厚みbとの厚み差s(=b-a)が、0<s≦1.0mmとなるようにしている。すなわち、少なくとも第2金属板21b、31bの厚みを第1金属板21a、31aよりも厚くしつつ、厚くなり過ぎないようにしている。
このような構成とすることで、絶縁板21c、31cのうち第2金属板21b、31bよりも突き出している部分と対向する領域において、絶縁板21c、31cからヒートシンク22、32までの距離を離すことができる。また、第2金属板21b、31bを厚くし過ぎないようにすることで、半導体装置の大型化を抑制することができる。
(第4本実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して絶縁板21c、31cやヒートシンク22、32の形状を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図7に示すように、本実施形態では、ヒートシンク22、32については凹部22b、32bや溝部22c、32cを形成していない表面が平坦面とされた板状部材とし、絶縁板21c、31cの突き出し量dを制限している。具体的には、絶縁板21c、31cの突き出し量dが、0.18mm≦d≦0.5mmとなるようにしている。
金属絶縁基板21、31において絶縁板21c、31cを突き出した構造とするのは、第1金属板21a、31aと第2金属板21b、31bとの間の沿面距離を稼ぐことで沿面放電を抑制できるようにするためである。
上記したように、ヒートシンク22、32とモールド樹脂60との接合部の剥離を防ぐためには、これらの間の最大剪断応力を低下させると良い。しかしながら、これらの間の剥離は、最大剪断応力の大きさのみによって決まるのではない。具体的には、これらの間の剥離は、概ね、ヒートシンク22、32の先端位置から始まり、そこから進展して行くことになる。このため、最大剪断応力の大きさを低下させるのではなく、ヒートシンク22、32の先端位置での剪断応力を低下させるということによっても、剥離を抑制することが可能となる。また、このような剥離抑制効果を得るのに、モールド樹脂60に対してヒートシンク22、32の間に入り込むような切欠きを設ける必要がない。このため、半導体装置の強度の低下を招くこともない。
そして、実験により、絶縁板21c、31cの突き出し量dについて変化させて、剪断応力の変化を調べたところ、突き出し量dを小さくすると、ヒートシンク22、32の先端位置での剪断応力が低下させられることが確認された。図8および図9は、ヒートシンク22、32の先端位置から金属絶縁基板21、31との境界位置までの間での剪断応力の変化を調べた結果を示している。
図8に示すように、突き出し量dを0mm、0.5mm、1mmと変化させた場合、突き出し量dが小さくなるほどヒートシンク22、32の先端位置での剪断応力が小さくなり、0.5mm以下になると剪断応力が5MPa以下まで低下してほぼ一定になっていた。したがって、突き出し量dを小さくすること、好ましくは0.5mm以下とすることで、ヒートシンク22、32とモールド樹脂60との接合部の剥離を抑制することが可能となる。
ただし、突き出し量dを小さくし過ぎると、沿面放電の抑制効果が得られなくなるため、ある程度の大きさにすることが必要となる。沿面放電の抑制効果が得られる沿面距離については、半導体装置に要求される耐圧によって変わるが、使用環境として想定される400V耐圧を得るようにすることを考えると、沿面距離を1mm以上にすることが必要になる。そして、絶縁板21c、31cの厚みは、0.64mm以下に設定され、最大厚みが0.64mmであるときの突き出し量dは0.18mmとなる。
したがって、本実施形態では、突き出し量dが、0.18mm≦d≦0.5mmとなるようにしている。これにより、沿面放電の抑制効果を得つつ、ヒートシンク22、32とモールド樹脂60との接合部の剥離を抑制することが可能となる。
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
例えば、上記各実施形態では、放熱機能を有する絶縁構造体を備えた半導体装置の一例を挙げたが、他の構造の半導体装置であっても良い。例えば、上記各実施形態では、半導体チップの上面と下面の両面に放熱構造体を備えた構造を例に挙げたが、少なくとも一面側に放熱構造体が備えられていれば良い。
また、ヒートシンク22、32を板状部材で構成した放熱構造体を例に挙げて説明したが、板状部材のみで構成されている必要はない。例えば、ヒートシンク22、32を板状部分に対して放熱フィンなどを一体とした構造としても良い。すなわち、板状部分を有するヒートシンク22、32とされていれば良い。
また、各実施形態は適宜組み合わせることが可能である。例えば、第1、第2実施形態のようにヒートシンク22、32に対して凸部22a、32aを備えた構造にしつつ、第3実施形態のように第2金属板21b、31bが第1金属板21a、31aよりも厚くされた構造としても良い。同様に、第1~第3実施形態の構成に対して、第4実施形態のように絶縁板21c、31cの突き出し量dを小さくした構造を組み合わせても良い。
さらに、第1放熱構造体20と第2放熱構造体30を異なる構造とし、一方を第1~第4実施形態のいずれかの構造とし、他方を一方と異なる第1~第4実施形態のいずれかの構造としても良い。
10 半導体チップ
20、30 第1、第2放熱構造体
21、31 金属絶縁基板
21a、31a 第1金属板
21b、31b 第2金属板
21c、31c 絶縁板
22、32 ヒートシンク
22a、32a 凸部
22c、32c 溝部
60 モールド樹脂

Claims (6)

  1. 板状の半導体チップ(10)と、
    前記半導体チップの少なくとも一面側に配置され、前記半導体チップで発した熱を放出させる放熱構造体(20、30)と、を有する半導体装置であって、
    前記放熱構造体は、前記半導体チップ側に配置される金属絶縁基板(21、31)と、
    前記金属絶縁基板に対して前記半導体チップと反対側に配置される板状部分を有するヒートシンク(22、32)と、を有し、
    前記金属絶縁基板は、前記半導体チップ側に配置される第1金属板(21a、31a)と、前記第1金属板を挟んで前記半導体チップと反対側に配置されると共に前記ヒートシンクに接続される第2金属板(21b、31b)と、前記第1金属板と前記第2金属板との間に配置されると共に、前記第1金属板と前記第2金属板の外周端から突き出して配置された絶縁板(21c、31c)と、を有した構成とされ、
    前記ヒートシンクのうち前記第2金属板に接続される部分が、該第2金属板に接続される部分よりも外側の部分となる外縁部よりも突出した凸部(22a、32a)とされており、
    前記ヒートシンクの外縁部のうち前記絶縁板が前記第2金属板から突き出した部分と対向する領域が溝部(22c、32c)とされていることで前記凸部が構成されており、
    前記ヒートシンクのうち前記溝部よりも外側の領域は、前記凸部と同じ高さであり、
    前記凸部は、前記第2金属板の全域と接続されており、
    前記ヒートシンクのうち前記溝部が形成される面には、前記第2金属板のみが接続されている、半導体装置。
  2. 前記凸部の高さtが、0<t≦1mmとされている請求項1に記載の半導体装置。
  3. 記第2金属板は前記第1金属板よりも厚くされている請求項1または2に記載の半導体装置。
  4. 前記第2金属板と前記第1金属板との厚み差sが、0<s≦1.0mmとされている請求項に記載の半導体装置。
  5. 記絶縁板が前記第2金属板から突き出した部分の突き出し量dが、0.18mm≦d≦0.5mmとされている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置。
  6. 前記溝部は、前記ヒートシンクのうち前記絶縁板が前記第2金属板から突き出した部分の先端位置と対向する部分まで形成されている請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置。
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