JP7183658B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置。 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置。 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
従来、電子写真方式の画像形成装置としては、電子写真感光体を用いて帯電、静電潜像形成、現像、転写、クリーニングなどの工程を順次行う装置が広く知られている。
電子写真感光体としては、アルミニウムなどの導電性を有する基体上に、電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型の感光体、又は、電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能を同一の層が果たす単層感光体が知られている。
ここで、特許文献1には、「導電性支持体上に中間層および感光層をこの順に設けてなる電子写真感光体であって、前記中間層が、ポリオレフィン結着樹脂および有機電子輸送物質を含有し、前記有機電子輸送物質が、イミド系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、キノン系化合物、シクロペンタジエニリデン系化合物、アゾ系化合物およびそれらの誘導体からなる群より選択される化合物であることを特徴とする電子写真感光体」が開示されている。
また、特許文献2には、「導電性支持体上に、下引層、感光層をこの順に設けてなる電子写真感光体であって、前記下引層が、カルボン酸基及びカルボン酸無水物基の少なくとも一方を有する化合物を構成成分として含むオレフィン結着樹脂、並びに、有機電子搬送材料を含有することを特徴とする電子写真感光体」が開示されている。
特開2011-095665号公報 特開2009-288621号公報
しかしながら、下引層を備える電子写真感光体では、繰り返し画像を形成したときに残留電位の上昇が生じることがある。そこで、本発明では、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、前記導電性基体と前記感光層との間に設けられ、電荷輸送性材料と、ポリアミド樹脂のみを含有する結着樹脂と、を含む下引層と、を備える電子写真感光体である場合に比べ、繰り返し画像を形成したときの残留電位の上昇を抑制する電子写真感光体を提供することを課題とする。
上記課題は、以下の手段により解決される。
[1] 導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられ、ジアリルフタレート化合物を重合した樹脂を含む結着樹脂及び電荷輸送性材料を含む下引層と、
前記下引層上に設けられた感光層と、
を備える電子写真感光体。
[2] 前記ジアリルフタレート化合物は、ジアリルイソフタレート化合物を含む、前記[1]に記載の電子写真感光体。
[3] 前記ジアリルフタレート化合物は、前記ジアリルフタレート化合物の単量体とプレポリマーとを含む、前記[1]又は[2]に記載の電子写真感光体。
[4] 前記単量体と前記プレポリマーの質量比は1/99以上99/1以下である、前記[3]に記載の電子写真感光体。
[5] 前記電荷輸送性材料は、
一般式(1)及び一般式(2)で表されるペリノン化合物の少なくとも1種を含む、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
Figure 0007183658000001
(一般式(1)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R11とR12、R12とR13及びR13とR14は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R15とR16、R16とR17及びR17とR18は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R21とR22、R22とR23及びR23とR24は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R25とR26、R26とR27及びR27とR28は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。)
[6] 前記一般式(1)においてR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18が、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はアリールオキシカルボニルアルキル基を表し、前記一般式(2)においてR21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28が、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はアリールオキシカルボニルアルキル基を表す、前記[5]に記載の電子写真感光体。
[7] 前記結着樹脂は、前記ジアリルフタレート化合物と(メタ)アクリル単量体とを重合した樹脂を含む結着樹脂である、前記[1]~[6]のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
[8] 下引層の全固形分量に対する前記電荷輸送性材料の含有量は、40質量%以上80質量%以下である、前記[1]~[7]のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
[9] 前記[1]~[7]のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
[10] 前記[1]~[7]のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
[1]に記載の発明によれば、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、前記導電性基体と前記感光層との間に設けられ、電荷輸送性材料と、ポリアミド樹脂のみを含有する結着樹脂と、を含む下引層と、を備える電子写真感光体である場合に比べ、繰り返し画像を形成したときの残留電位の上昇を抑制する電子写真感光体が提供される。
[2]に記載の発明によれば、前記ジアリルフタレート化合物がo-ジアリルフタレート化合物である場合に比べ、繰り返し画像を形成したときの残留電位の上昇を抑制する電子写真感光体が提供される。
[3]に記載の発明によれば、前記ジアリルフタレート化合物がプレポリマーのみである場合に比べ、繰り返し画像を形成したときの残留電位の上昇を抑制する電子写真感光体が提供される。
[4]に記載の発明によれば、前記単量体と前記プレポリマーの質量比が1/99未満又は99/1超えである場合に比べ、繰り返し画像を形成したときの残留電位の上昇を抑制する電子写真感光体が提供される。
[5]又は[6]に記載の発明によれば、電荷輸送性材料がペリノン化合物以外の電荷輸送性材料のみを含む場合に比べ、繰り返し画像を形成したときの残留電位の上昇を抑制する電子写真感光体が提供される。
[7]に記載の発明によれば、前記結着樹脂がジアリルフタレート化合物のみを重合した結着樹脂である場合に比べ、漏れ電流の発生を抑制する電子写真感光体が提供される。
[8]に記載の発明によれば、下引層の全固形分量に対する前記電荷輸送性材料の含有量が40質量%未満又は80質量%超えである場合に比べ、繰り返し画像を形成したときの残留電位の上昇を抑制する電子写真感光体が提供される。
[9]又は[10]に記載の発明によれば、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、前記導電性基体と前記感光層との間に設けられ、電荷輸送性材料と、フェノール樹脂と、を含む下引層と、を含む電子写真感光体を備える場合に比べ、繰り返し画像を形成したときの残留電位の上昇を抑制するプロセスカートリッジ、又は電子写真感光体が提供される。
本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略斜視図である。 本実施形態に係る画像形成装置の一例の概略断面図である。 本実施形態に係る画像形成装置の他の例の概略斜視図である。
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
-電子写真感光体-
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられ、ジアリルフタレート化合物を重合した樹脂を含む結着樹脂及び電荷輸送性材料を含む下引層と、前記下引層上に設けられた感光層と、を備える。
従来、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、前記導電性基体と前記感光層との間に設けられ、電荷輸送性材料と、ポリアミド樹脂のみを含有する結着樹脂と、を含む下引層と、を備える電子写真感光体を用いると、繰り返し画像を形成したときに残留電位が上昇することがある。
一方、本実施形態に係る電子写真感光体は、上記構成を有することにより、繰り返し画像を形成したときに生じる残留電位の上昇が抑制される。この残留電位の上昇が抑制される要因は必ずしも明らかではないが、以下のように考えることができる。
本実施形態に係る電子写真感光体は、下引層においてジアリルフタレート化合物を重合した樹脂を含む。前記ジアリルフタレート化合物は液状であり、重合の際に溶媒を必要としない。また、前記ジアリルフタレート化合物の重合反応はラジカル重合反応であるため、重合反応の系中において水などが副生しない。そのため、電荷輸送性材料が分散された前記ジアリルフタレート化合物の液体を、重合反応により結着樹脂とした場合、加熱等によって溶媒及び副生成物の除去をすることなく、下引層が形成される。その結果、下引層における電荷輸送性材料の分散性が高くなる傾向にある。下引層における電荷輸送性材料の分散性が高いと、下引層における電荷輸送性が局所的に低下することが抑制され易くなり、繰り返し画像を形成したときも残留電位が上昇が抑制されると考えられる。
以下、本実施形態に係る電子写真感光体の層構成について説明する。
図1に示す電子写真感光体7Aは、いわゆる機能分離型感光体(又は積層型感光体)であり、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、及び電荷輸送層3が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Aにおいては、電荷発生層2及び電荷輸送層3により感光層5が構成される。本実施形態に係る電子写真感光体は、その他の層、例えば、保護層を含んで構成してもよい。
以下、本実施形態に係る電子写真感光体の各層について、詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
[下引層]
(ジアリルフタレート化合物を重合した樹脂を含む結着樹脂)
結着樹脂は、ジアリルフタレート化合物を重合した樹脂を含む。
本実施形態に係るジアリルフタレート化合物とは、ジアリルフタレート骨格を有する化合物を表す。
ジアリルフタレート骨格を有する化合物としては、例えば、o-ジアリルフタレート、m-ジアリルフタレート(ジアリルイソフタレート)及びp-ジアリルフタレートが挙げられる。
上記のジアリルフタレート骨格を有する化合物の中でも、ジアリルフタレート化合物は、ジアリルイソフタレート化合物を含むことが好ましい。
ジアリルフタレート化合物が、ジアリルイソフタレート化合物を含むと、ジアリルイソフタレート化合物を重合し結着樹脂とする際に、分子内架橋が抑制される傾向にある。そのため、分子間で重合した結着樹脂が優先的に生じ易くなり、ジアリルフタレート化合物の溶液中に分散させた電荷輸送性材料の分散性が高いまま、下引層が形成される傾向にある。その結果、電荷輸送効率が向上し、繰り返し画像を形成したときの残留電位の上昇が抑制される傾向にある。
ジアリルフタレート化合物としては、前記ジアリルフタレート骨格を有する化合物の単量体、前記ジアリルフタレート骨格を有する化合物の単量体の1種以上を含んで構成されるプレポリマー、及びそれらの混合物が挙げられる。
上記の中でも、ジアリルフタレート化合物は、ジアリルフタレート化合物の単量体とプレポリマーとを含むことが好ましい。
ジアリルフタレート化合物が、ジアリルフタレート化合物の単量体とプレポリマーとを含むと、結着樹脂の硬化度、有機溶剤への溶解性、電荷発生層の膜厚などの制御が容易となる傾向にある。
プレポリマーの重量平均分子量(Mw)は、200,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましく、50,000以下であることが更に好ましい。
プレポリマーの重合平均分子量が200,000以下であると、電荷輸送性材料の分散性を保ちながら下引層における膜強度を向上させる傾向にある。
プレポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される値である。GPCによる分子量測定は、例えば、測定装置として東ソー(株)製GPC・HLC-8120を用い、東ソー(株)製カラム・TSKgel GMHHR-M+TSKgel GMHHR-M(7.8mmI.D.30cm)を使用し、クロロホルム溶媒で行い、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線を使用して算出する。
単量体とプレポリマーとを組み合わせて用いる場合、単量体とプレポリマーの質量比は、1/99以上99/1以下であることが好ましく、80/20以上20/80以下であることがより好ましい。
結着樹脂は、繰り返し画像を形成したときに残留電位の上昇が抑制できる範囲において、ジアリルフタレート化合物と、ジアリルフタレート化合物以外の硬化性化合物と、を重合した結着樹脂であってもよい。
ジアリルフタレート化合物以外の硬化性化合物としては、スチレン単量体、(メタ)アクリル単量体、それらの重合体又は混合物等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれをも含む表現である。
スチレン単量体としては、例えば、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン等)、ハロゲン置換スチレン(例えば、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン等)、ビニルナフタレン等が挙げられる。上記の中で、スチレン単量体としては、反応し易さ、反応の制御の容易さ、さらに入手性の点で、スチレンが好ましい。スチレン単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル等)、(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ジフェニルエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルフェニル、 (メタ)アクリル酸ターフェニル等)、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル単量体としては、定着性の点から、炭素数2以上14以下(好ましくは炭素数2以上10以下、より好ましくは3以上8以下)のアルキル基を持つ(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。(メタ)アクリル単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態に係る結着樹脂がジアリルフタレート化合物以外の硬化性化合物を含む場合、結着樹脂は、ジアリルフタレート化合物と(メタ)アクリル単量体とを重合した結着樹脂であってもよい。
結着樹脂がジアリルフタレート化合物と(メタ)アクリル単量体とを重合した結着樹脂であると、下引層における膜強度が向上する傾向にある。下引層の膜強度が高いと、例えば、トナー中に炭素繊維等の針状の異物が含まれる場合、この針状の異物が混入し電子写真感光体に傷が生じたとしても、下引層に傷が生じ難くなる傾向にある。その結果、漏れ電流の発生が抑制される傾向にある。
結着樹脂がジアリルフタレート化合物以外の硬化性化合物を含む場合、ジアリルフタレート化合物の含有量は、結着樹脂における全固形分量に対して50質量部以上99.5質量部以下であることが好ましく、80質量部以上99.5質量部以下であることがより好ましい。
ジアリルフタレート化合物を重合するときに用いられる重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられ、選択するジアリルフタレート化合物又は下引層の厚み等に応じて適宜公知の重合開始剤を適用してよい。
熱重合開始剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシカルボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2.5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシキルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカルボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-m-トルオイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート等が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソポロピルチオキサントン等が挙げられる。
重合開始剤として熱重合開始剤を用いる場合、ジアリルフタレート化合物を重合させ硬化させる際の温度は、室温(23℃)以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、150℃以上200℃以下であることが更に好ましい。
ジアリルフタレート化合物を重合させ硬化させる際の雰囲気は、特に制限されず、大気雰囲気下であってもよく、窒素雰囲気下であってもよい。
ジアリルフタレート化合物を重合させ硬化させる際の温度が、室温以上であると硬化速度が低下することを抑制し、効率よく硬化膜が形成される傾向にある。一方、ジアリルフタレート化合物を重合させ硬化させる際の温度が、300℃以下であると、電荷輸送性材料が酸化分解したり着色したりすることが抑制される傾向にある。
結着樹脂において、重合開始剤とジアリルフタレート化合物との配合比(重合開始剤/ジアリルフタレート化合物)は、1/100以上1/1以下であることが好ましく、3/100以上3/10以下であることがより好ましい。
重合開始剤の配合量がジアリルフタレート化合物の配合量の1/100以上であると、未反応のジアリルフタレート化合物の残存が抑制される傾向にある。一方、重合開始剤の配合量がジアリルフタレート化合物の配合量の1/1以下であると、電荷輸送性材料が分解したり、過剰の重合開始剤が結着樹脂中に残留に起因する電気特性の低下が抑制されたり、する傾向にある。
ジアリルフタレート化合物を重合した樹脂を、加熱したアセトンを用いて抽出した後のジアリルフタレート化合物を重合した樹脂の減量(以下、「抽出減量」と称す)としては、前記加熱したアセトンを用いて抽出する前におけるジアリルフタレート化合物を重合した樹脂の全量に対して、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
前記ジアリルフタレート化合物を重合した樹脂の抽出減量が20質量%以下であると、下引層における電荷輸送性材料の分散性が高くなり易く、且つ、下引層の膜強度が向上させる傾向にある。
前記ジアリルフタレート化合物を重合した樹脂の抽出減量は、以下の様にして求める。
(1)電子写真感光体における下引層の外周面上に形成された層(感光層等)をカッター等により除去又は溶剤等により溶解することで除去する。
(2)下引層を切り取り、溶剤等により溶解又はろ過することで電荷輸送材料を除去し、ジアリルフタレート化合物を重合した樹脂を、単離する。
(3)下引層から単離したジアリルフタレート化合物を重合した樹脂を、乳鉢等で細かく砕き、その一定量を量りとり、円筒ろ紙中に入れる。次に、前記ジアリルフタレート化合物を重合した樹脂を含む円筒ろ紙を、ソックスレー抽出器に入れ、アセトンで2時間還流し、前記樹脂を抽出する。その後、円筒ろ紙を減圧乾燥し、更に、大気中で1時間静置乾燥する。そして、前記樹脂を含む円筒ろ紙の重さを量り、前記重さから、ろ紙の重量差し引いた値を、ジアリルフタレート化合物を重合した樹脂の抽出減量とする。
結着樹脂は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、ジアリルフタレート化合物を重合した樹脂以外に、その他の樹脂を含有していてもよい。
その他の樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン-アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、スチレン-アルキッド樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。この場合、前ジアリルフタレート化合物を重合した樹脂の含有量は、下引層における結着樹脂の総量に対して、90質量%以上(より好ましくは95%以上)であることが、本実施形態の効果を達成する上で好ましい。
(電荷輸送性材料)
下引層は、電荷輸送性材料を含む。
電荷輸送性材料としては、電子輸送性材料及び正孔輸送性材料が挙げられる。
電子輸送性材料としては、ペリノン化合物;p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン化合物;テトラシアノキノジメタン化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン化合物;ベンゾフェノン化合物;シアノビニル化合物;エチレン化合物;9-ジシアノメチレンフルオレン化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。
これらの電子輸送材料は、1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
正孔輸送性材料としては、ベンジジン化合物、アリールアルカン化合物、アリール置換エチレン化合物、スチルベン化合物、アントラセン化合物、ヒドラゾン化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。
これらの正孔輸送材料は、1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
上記の中でも、電荷輸送性材料は、繰り返し画像を形成したときの残留電位の上昇を抑制する観点から、一般式(1)及び一般式(2)で表されるペリノン化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。
Figure 0007183658000002
一般式(1)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R11とR12、R12とR13及びR13とR14は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R15とR16、R16とR17及びR17とR18は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R21とR22、R22とR23及びR23とR24は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R25とR26、R26とR27及びR27とR28は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(1)中、R11~R18で表されるアルキル基としては、置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基としては、炭素数1以上20以下(好ましくは炭素数1以上10以下、より好ましくは炭素数1以上6以下)の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上20以下(好ましくは炭素数3以上10以下)の分岐状のアルキル基、炭素数3以上20以下(好ましくは炭素数3以上10以下)の環状アルキル基が挙げられる。
炭素数1以上20以下の直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基等が挙げられる。
炭素数3以上20以下の分岐状のアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、イソドデシル基、sec-ドデシル基、tert-ドデシル基、tert-テトラデシル基、tert-ペンタデシル基等が挙げられる。
炭素数3以上20以下の環状のアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、これら単環のアルキル基が連結した多環(例えば、二環、三環、スピロ環)のアルキル基等が挙げられる。
上記の中でも、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基等の直鎖状のアルキル基が好ましい。
アルキル基における置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アルキル基中の水素原子を置換するアルコキシ基としては、一般式(1)中のR11~R18で表される無置換のアルコキシ基と同様の基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシ基としては、置換若しくは無置換のアルコキシ基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシ基としては、炭素数1以上10以下(好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下)の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基が挙げられる。
直鎖状のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基等が挙げられる。
分岐状のアルコキシ基として具体的には、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec-ヘプチルオキシ基、tert-ヘプチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec-ノニルオキシ基、tert-ノニルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec-デシルオキシ基、tert-デシルオキシ基等が挙げられる。
上記の中でも、無置換のアルコキシ基としては、メトキシ基が好ましい。
アルコキシ基における置換基としては、アリール基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アルコキシ基中の水素原子を置換するアリール基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリール基と同様の基が挙げられる。
アルコキシ基中の水素原子を置換するアルコキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
アルコキシ基中の水素原子を置換するアリールオキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表されるアラルキル基としては、置換若しくは無置換のアラルキル基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアラルキル基としては、炭素数7以上30以下のアラルキル基であることが好ましく、炭素数7以上16以下のアラルキル基であることがより好ましく、炭素数7以上12以下のアラルキル基であることが更に好ましい。
炭素数7以上30以下の無置換のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラチルメチル基、フェニル-シクロペンチルメチル基等が挙げられる。
アラルキル基における置換基としては、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アラルキル基中の水素原子を置換するアルコキシ基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシ基と同様の基が挙げられる。
アラルキル基中の水素原子を置換するアルコキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
アラルキル基中の水素原子を置換するアリールオキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表されるアリール基としては、置換若しくは無置換のアリール基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリール基としては、炭素数6以上30以下のアリール基が好ましく、6以上14以下のアリール基がより好ましく、6以上10以下のアリール基が更に好ましい。
炭素数6以上30以下のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アンスリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基、5-ナフタセニル基、1-インデニル基、2-アズレニル基、9-フルオレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基等が挙げられる。上記の中でも、フェニル基が好ましい。
アリール基における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アリール基中の水素原子を置換するアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基と同様の基が挙げられる。
アリール基中の水素原子を置換するアルコキシ基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシ基と同様の基が挙げられる。
アリール基中の水素原子を置換するアルコキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
アリール基中の水素原子を置換するアリールオキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシ基(-O-Ar、Arはアリール基を表す。)としては、置換若しくは無置換のアリールオキシ基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシ基としては、炭素数6以上30以下のアリールオキシ基が好ましく、6以上14以下のアリールオキシ基がより好ましく、6以上10以下のアリールオキシ基が更に好ましい。
炭素数6以上30以下のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基(フェノキシ基)、ビフェニルオキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、9-アンスリルオキシ基、9-フェナントリルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、5-ナフタセニルオキシ基、1-インデニルオキシ基、2-アズレニルオキシ基、9-フルオレニルオキシ基、ビフェニレニルオキシ基、インダセニルオキシ基、フルオランテニルオキシ基、アセナフチレニルオキシ基、アセアントリレニルオキシ基、フェナレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、アントリルオキシ基、ビアントラセニルオキシ基、ターアントラセニルオキシ基、クオーターアントラセニルオキシ基、アントラキノリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、トリフェニレニルオキシ基、ピレニルオキシ基、クリセニルオキシ基、ナフタセニルオキシ基、プレイアデニルオキシ基、ピセニルオキシ基、ペリレニルオキシ基、ペンタフェニルオキシ基、ペンタセニルオキシ基、テトラフェニレニルオキシ基、ヘキサフェニルオキシ基、ヘキサセニルオキシ基、ルビセニルオキシ基、コロネニルオキシ基等が挙げられる。上記の中でも、フェニルオキシ基(フェノキシ基)が好ましい。
アリールオキシ基における置換基としては、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アリールオキシ基中の水素原子を置換するアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基と同様の基が挙げられる。
アリールオキシ基中の水素原子を置換するアルコキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
アリールオキシ基中の水素原子を置換するアリールオキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニル基(-CO-OR、Rはアルキル基を表す。)としては、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基におけるアルキル鎖の炭素数としては、1以上20以下であることが好ましく、1以上15以下であることがより好ましく、1以上10以下であることが更に好ましい。
アルキル鎖の炭素数が1以上20以下のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシブチルカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンタオキシカルボニル基、ヘキサオキシカルボニル基、ヘプタオキシカルボニル基、オクタオキシカルボニル基、ノナオキシカルボニル基、デカオキシカルボニル基、ドデカオキシカルボニル基、トリデカオキシカルボニル基、テトラデカオキシカルボニル基、ペンタデカオキシカルボニル基、ヘキサデカオキシカルボニル基、ヘプタデカオキシカルボニル基、オクタデカオキシカルボニル基、ノナデカオキシカルボニル基、イコサオキシカルボニル基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基における置換基としては、アリール基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アルコキシカルボニル基中の水素原子を置換するアリール基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリール基と同様の基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニル基(-CO-OAr、Arはアリール基を表す。)としては、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基におけるアリール基の炭素数としては、6以上30以下であることが好ましく、6以上14以下であることがより好ましく、6以上10以下であることが更に好ましい。
炭素数6以上30以下のアリール基を有するアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、ビフェニルオキシカルボニル基、1-ナフチルオキシカルボニル基、2-ナフチルオキシカルボニル基、9-アンスリルオキシカルボニル基、9-フェナントリルオキシカルボニル基、1-ピレニルオキシカルボニル基、5-ナフタセニルオキシカルボニル基、1-インデニルオキシカルボニル基、2-アズレニルオキシカルボニル基、9-フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニレニルオキシカルボニル基、インダセニルオキシカルボニル基、フルオランテニルオキシカルボニル基、アセナフチレニルオキシカルボニル基、アセアントリレニルオキシカルボニル基、フェナレニルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、アントリルオキシカルボニル基、ビアントラセニルオキシカルボニル基、ターアントラセニルオキシカルボニル基、クオーターアントラセニルオキシカルボニル基、アントラキノリルオキシカルボニル基、フェナントリルオキシカルボニル基、トリフェニレニルオキシカルボニル基、ピレニルオキシカルボニル基、クリセニルオキシカルボニル基、ナフタセニルオキシカルボニル基、プレイアデニルオキシカルボニル基、ピセニルオキシカルボニル基、ペリレニルオキシカルボニル基、ペンタフェニルオキシカルボニル基、ペンタセニルオキシカルボニル基、テトラフェニレニルオキシカルボニル基、ヘキサフェニルオキシカルボニル基、ヘキサセニルオキシカルボニル基、ルビセニルオキシカルボニル基、コロネニルオキシカルボニル基等が挙げられる。上記の中でも、フェノキシカルボニル基が好ましい。
アリールオキシカルボニル基における置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基の水素原子を置換するアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基と同様の基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニルアルキル基(-(C2n)-CO-OR、Rはアルキル基を表し、nは1以上の整数を表す。)としては、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルアルキル基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニルアルキル基におけるアルコキシカルボニル基(-CO-OR)としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニルアルキル基におけるアルキレン鎖(-C2n-)としては、炭素数1以上20以下(好ましくは炭素数1以上10以下、より好ましくは炭素数1以上6以下)の直鎖状のアルキレン鎖、炭素数3以上20以下(好ましくは炭素数3以上10以下)の分岐状のアルキレン鎖、炭素数3以上20以下(好ましくは炭素数3以上10以下)の環状アルキレン鎖が挙げられる。
炭素数1以上20以下の直鎖状のアルキレン鎖としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ウンデシレン基、n-ドデシレン基、トリデシレン基、n-テトラデシレン基、n-ペンタデシレン基、n-ヘプタデシレン基、n-オクタデシレン基、n-ノナデシレン基、n-イコシレン基等が挙げられる。
炭素数3以上20以下の分岐状のアルキレン鎖としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert-ペンチレン基、イソヘキシレン基、sec-ヘキシレン基、tert-ヘキシレン基、イソヘプチレン基、sec-ヘプチレン基、tert-ヘプチレン基、イソオクチレン基、sec-オクチレン基、tert-オクチレン基、イソノニレン基、sec-ノニレン基、tert-ノニレン基、イソデシレン基、sec-デシレン基、tert-デシレン基、イソドデシレン基、sec-ドデシレン基、tert-ドデシレン基、tert-テトラデシレン基、tert-ペンタデシレン基等が挙げられる。
炭素数3以上20以下の環状のアルキレン鎖としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基等が挙げられる。
アルコキシカルボニルアルキル基における置換基としては、アリール基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アルコキシカルボニルアルキル基の水素原子を置換するアリール基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリール基と同様の基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニルアルキル基(-(C2n) -CO-OAr、Arはアリール基を表し、nは1以上の整数を表す。)としては、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアルキル基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニルアルキル基におけるアリールオキシカルボニル基(-CO-OAr、Arはアリール基を表す)としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニルアルキル基におけるアルキレン鎖(-C2n-)としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニルアルキル基におけるアルキレン鎖と同様の基が挙げられる。
アリールオキシカルボニルアルキル基における置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アリールオキシカルボニルアルキル基の水素原子を置換するアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基と同様の基が挙げられる。
一般式(1)中、R11~R18で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
一般式(1)中、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R15とR16、R16とR17又はR17とR18が、互いに連結して形成する環構造としては、ベンゼン環、炭素数10以上18以下の縮合環(ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、クリセン環(ベンゾ[α]フェナントレン環)、テトラセン環、テトラフェン環(ベンゾ[α]アントラセン環)、トリフェニレン環等)などが挙げられる。上記の中でも、形成される環構造としては、ベンゼン環が好ましい。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアルキル基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアルコキシ基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシ基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアラルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアラルキル基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアリール基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアリール基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアリールオキシ基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシ基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアルコキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアリールオキシカルボニル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアルコキシカルボニルアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニルアルキル基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるアリールオキシカルボニルアルキル基としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニルアルキル基と同様の基が挙げられる。
一般式(2)中、R21~R28で表されるハロゲン原子としては、一般式(1)中、R11~R18で表されるハロゲン原子と同様の原子が挙げられる。
一般式(2)中、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R25とR26、R26とR27又はR27とR28が、互いに連結して形成する環構造としては、ベンゼン環、炭素数10以上18以下の縮合環(ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、クリセン環(ベンゾ[α]フェナントレン環)、テトラセン環、テトラフェン環(ベンゾ[α]アントラセン環)、トリフェニレン環等)などが挙げられる。上記の中でも、形成される環構造としては、ベンゼン環が好ましい。
繰り返し画像を形成したときの残留電位の上昇を抑制する観点から、一般式(1)においてR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18が、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はアリールオキシカルボニルアルキル基を表し、一般式(2)においてR21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28が、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はアリールオキシカルボニルアルキル基を表すことが好ましい。
以下、一般式(1)及び一般式(2)で表されるペリノン化合物の例示化合物を示すが、これに限定されるわけではない。下記の構造式中、Phはフェニル基を示す。
Figure 0007183658000003
Figure 0007183658000004
Figure 0007183658000005
Figure 0007183658000006
Figure 0007183658000007
Figure 0007183658000008
ペリノン化合物1-1と2-1とは異性体(シス体とトランス体の関係)の関係にある。そのため、合成法上、両者の混合物が得られる傾向にあり、混合比は、通常、1:1である。このペリノン化合物1-1と2-1との混合物は、公知の精製方法に従い、混合物から一方を精製することができる。シス体とトランス体の関係にあるほかのペリノン化合物どうしも上記と同様である。
電荷輸送性材料に対する一般式(1)及び(2)で表されるペリノン化合物の割合は、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、98質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
下引層の全固形分量に対する電荷輸送性材料の含有量は、繰り返し画像を形成したときの残留電位の上昇を抑制する観点から、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、塗布時の膜の均一性の観点から、40質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
(無機粒子)
下引層は、無機粒子を更に含んでもよい。
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)が1.0×10(Ω・cm)以上1.0×1011(Ω・cm)以下である無機粒子が挙げられる。
上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化バリウム、及び酸化モリブデン等の金属酸化物粒子が挙げられる。これらは1種単独で用いる以外に2種以上を併用してもよい。
上記の中でも、繰り返し画像を出力したときに生じる残留電位の上昇を抑制する観点から、金属酸化物粒子としては、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化スズからなる群より選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m/g以上であることが好ましい。BET比表面積の測定は、窒素置換法によって行う。具体的にはSA3100比表面積測定装置(ベックマンコールター株式会社製)を用いて、3点法により測定する。
無機粒子の体積平均粒子径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)であることが好ましい。
体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(LA-700:堀場製作所製)を用いて測定する。測定法としては、界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液50ml中に測定試料を2g加え、超音波分散機(1,000Hz)にて2分間分散して、試料を作製し、測定する。得られたチャンネルごとの体積平均粒子径を、体積平均粒子径の小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒子径とする。
無機粒子、具体的には金属酸化物粒子の含有量は、繰り返し画像を出力したときに生じる残留電位の上昇を抑制する観点から、下引層に対し、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
表面処理剤の処理量は、例えば、分散性向上の観点から、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
ここで、下引層は、電気特性の長期安定性及びキャリアブロック性が高まる観点から、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有してもよい。
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物;2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよく、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
(下引層における添加剤)
下引層には、種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、結着樹脂粒子を添加してもよい。結着樹脂粒子としては、シリコーン結着樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル(PMMA)結着樹脂粒子等の公知の材料が挙げられる。
(下引層における特性)
以下、下引層におけるその他の特性について説明する。
下引層の膜厚は、繰り返し画像を形成したときに生じる、残留電位の上昇を抑制する観点から、3μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上30μm以下であることがより好ましく、3μm以上20μm以下であることが更に好ましい。
下引層の膜厚は、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR-1500Eを用いて測定する。
下引層の体積抵抗率は、繰り返し画像を形成したときに生じる、残留電位の上昇を抑制する観点から、1.0×10(Ω・m)以上10×1010(Ω・m)以下であることが好ましく、1.0×10(Ω・m)以上10×10(Ω・m)以下であることがより好ましく、1.0×10(Ω・m)以上10×10(Ω・m)以下であることがさらに好ましい。
電子写真感光体から、体積抵抗率測定用の下引層試料を作製する方法は、以下の通りである。例えば、下引層を被覆している電荷発生層、電荷輸送層等の塗膜をアセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等の溶媒を用いて除去し、露出された下引層上に真空蒸着法やスパッタ法等により金電極を装着することで、体積抵抗率測定用の下引層試料とする。
交流インピーダンス法による体積抵抗率の測定には、電源としてSI1287 electrochemical interface(東陽テクニカ製)、電流計としてSI1260 inpedance/gain phase analyzer(東陽テクニカ製)、電流アンプとして1296 dielectric interface(東陽テクニカ製)を用いる。
交流インピーダンス測定試料におけるアルミニウム基材を陰極、金電極を陽極として、1Vp-pの交流電圧を周波数1MHzから1mHzまでの範囲で高周波側から印加し、各試料の交流インピーダンスを測定し、この測定より得られたCole-ColeプロットのグラフをRC並列の等価回路にフィッティングすることで体積抵抗率を算出する。
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)(nは上層の屈折率)から1/2までに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に結着樹脂粒子等を添加してもよい。結着樹脂粒子としてはシリコーン結着樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル結着樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
下引層の形成方法は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで形成してもよい。
下引層形成用塗布液を調製するときの電荷輸送性材料(無機粒子を更に含む場合は、電荷輸送性材料及び無機粒子)の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
[導電性基体]
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013(Ω/cm)未満であることをいう。
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
[感光層]
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro-Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、特開平5-263007号公報、特開平5-279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン;特開平5-98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン;特開平5-140472号公報、特開平5-140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン;特開平4-189873号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;特開2004-78147号公報、特開2005-181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等が好ましい。
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基体からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp-型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn-型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。n-型の電荷発生材料としては、例えば、特開2012-155282号公報の段落[0288]~[0291]に記載された化合物(CG-1)~(CG-27)が挙げられるがこれに限られるものではない。
なお、n-型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn-型とする。
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
電荷輸送材料としては、p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体及び下記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
Figure 0007183658000009
構造式(a-1)中、ArT1、ArT2及びArT3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、-C-C(RT4)=C(RT5)(RT6)、又は-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)を示す。RT4、RT5、RT6、RT7及びRT8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
Figure 0007183658000010
構造式(a-2)中、RT91及びRT92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。RT101、RT102、RT111及びRT112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、-C(RT12)=C(RT13)(RT14)、又は-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)を示し、RT12、RT13、RT14、RT15及びRT16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
ここで、構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体及び前記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)」を有するトリアリールアミン誘導体及び「-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
高分子電荷輸送材料としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8-176293号公報、特開平8-208820号公報等に開示されているポリエステル系の高分子電荷輸送材は特に好ましい。なお、高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよいが、結着樹脂と併用してもよい。
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、スチレン-アルキッド樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
[保護層]
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、-OH、-OR[但し、Rはアルキル基を示す]、-NH、-SH、-COOH、-SiRQ1 3-Qn(ORQ2Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1~3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
[単層型感光層]
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、例えば、電荷発生材料と電荷輸送材料と、必要に応じて、結着樹脂及びその他周知の添加剤と、を含む層である。なお、これら材料は、電荷発生層及び電荷輸送層で説明した材料と同様である。
そして、単層型感光層中、電荷発生材料の含有量は、全固形分に対して10質量%以上85質量%以下がよく、好ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、単層型感光層中、電荷輸送材料の含有量は、全固形分に対して5質量%以上50質量%以下がよい。
単層型感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
単層型感光層の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下がよく、好ましくは10μm以上40μm以下である。
―画像形成装置及びプロセスカートリッジ―
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図2に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
なお、図2には、画像形成装置として、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
-帯電装置-
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
-露光装置-
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
-現像装置-
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
-クリーニング装置-
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
-転写装置-
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
-中間転写体-
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」を意味する。
[実施例1]
(下引層の作製)
電荷輸送性材料1-1を60質量部と、ジアリルフタレート化合物である単量体(M-DAP-A、ダイソーダップ100モノマー、株式会社大阪ソーダ製)20質量部と、ジアリルフタレート化合物であるプレポリマー(P-DAP-A、ダイソーイソダップ、株式会社大阪ソーダ製)20質量部と、を混合させ、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて120分の分散を行い、分散液を得た。
得られた分散液に、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシベンゾエート( パーブチルZ 、日本油脂製)を0.8質量部添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にてアルミニウム基材上に浸漬塗布し、窒素雰囲気下、160℃で60分乾燥させた。その後、更にチャンバー内で100℃、12時間の乾燥硬化を行い、厚さ3μmの下引層を得た。
(電荷発生層の作製)
電荷発生物質としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜、16.0゜、24.9゜、28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体結着樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、及びn-酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間攪拌して分散させた。得られた分散液にn-酢酸ブチル175質量部、メチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用の塗布液を得た。この電荷発生層形成用塗布液を下引層上に浸漬塗布した。その後、140℃、10分で乾燥を行い、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
(電荷輸送層の作製)
電荷輸送剤(HT-1)40質量部、電荷輸送剤(HT-2)8質量部、及びポリカーボネート結着樹脂(A)(粘度平均分子量:5万)52質量部を、テトラヒドロフラン800質量部に加えて溶解し、4フッ化エチレン結着樹脂(ダイキン工業製:ルブロンL5 平均粒子径300nm)8質量部を加え、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックス)を用いて5500rpmで2時間分散して、電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を、前述の電荷発生層上に塗布した。その後、140℃、40分の乾燥を行い、膜厚27μmの電荷輸送層を形成した。これを電子写真感光体1とする。
Figure 0007183658000011
Figure 0007183658000012
[実施例2~実施例16]
下引層の作製において、電荷輸送性材料の種類及び含有量、結着樹脂の種類及び含有比を、表1に示す仕様とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、電子写真感光体を得た。なお、電荷輸送性材料の具体的な構造を次に説明する。
実施例2における電荷輸送性材料1-3中、メチル基はR14及びR18に位置する。
実施例3における電荷輸送性材料1-6中、メトキシカルボニル基はR12及びR16に位置する。
実施例4における電荷輸送性材料1-7中、エトキシカルボニル基はR13及びR17に位置する。
実施例6における電荷輸送性材料2-3中、メチル基はR21及びR28に位置する。
実施例7における電荷輸送性材料2-8中、オクタオキシカルボニル基はR23及びR27に位置する。
・また、実施例12では、電荷輸送性材料1-1の代わりに、下記の構造を有する電荷輸送性材料3-1を用いる仕様とした。
Figure 0007183658000013
[実施例17]
下引層の厚みを10μmとする仕様とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、電子写真感光体を得た。
[実施例18]
実施例1において、下引層に無機粒子を更に含む仕様とした。また、実施例1における下引層の作製工程を下記の工程に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、電子写真感光体を得た。
酸化亜鉛(テイカ社製、平均粒子径:70nm、比表面積値:15m/g)100質量部を、トルエン600質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン、信越シリコーン社製)1.2質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、125℃で2時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
表面処理後の酸化亜鉛30質量部と、電荷輸送性材料1-1を40質量部と、ジアリルフタレート化合物である単量体(M-DAP-A、ダイソーダップ100モノマー、株式会社大阪ソーダ製)15質量部と、ジアリルフタレート化合物であるプレポリマー(P-DAP-A、ダイソーイソダップ、株式会社大阪ソーダ製)15質量部と、を混合させ、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて120分の分散を行い、分散液を得た。
得られた分散液に、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシベンゾエート(パーブチルZ 、日本油脂製)を0.8質量部添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にてアルミニウム基材上に浸漬塗布し、窒素雰囲気下、160℃、60分乾燥させ、その後、更にチャンバー内で100℃、12時間の乾燥硬化を行い、厚さ10μmの下引層を得た。
なお、実施例2~17の電子写真感光体における、ジアリルフタレート化合物の単量体及びプレポリマーの量は、実施例1における単量体20部とプレポリマー20部の量;合計40部を、表1に示す単量体及びプレポリマーの質量比とした量へと変更する仕様とした。
[比較例1]
下引層の作製において、結着樹脂の種類を表2に示す仕様とし、ジアリルフタレート化合物の代わりに下記の原料と溶媒を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、電子写真感光体を得た。
・結着樹脂としてポリアミド樹脂を形成するために使用した材料
:共重合ナイロン(製品番号CM8000、TORAY社製)
・溶媒:メタノール、60質量部
[比較例2]
下引層の作製において、結着樹脂の種類を表2に示す仕様とし、ジアリルフタレート化合物の代わりに下記の原料と溶媒を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、電子写真感光体を得た。
・結着樹脂としてメラミン樹脂を形成するために使用した材料
:メラミン樹脂(MX-730、株式会社三和ケミカル製)
・溶媒:2-プロパノール、60質量部
[比較例3]
下引層の作製において、結着樹脂の種類を表2に示す仕様とし、ジアリルフタレート化合物の代わりに下記の原料と溶媒を用いた。また、電荷輸送材料を含まない仕様とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、電子写真感光体を得た。
・結着樹脂としてポリアミド樹脂を形成するために使用した材料
:共重合ナイロン(製品番号CM8000、TORAY社製)
・溶媒:メタノール、60質量部
[比較例4]
下引層の作製において、結着樹脂の種類を表2に示す仕様とし、ジアリルフタレート化合物の代わりに下記の原料と溶媒を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、電子写真感光体を得た。
・結着樹脂として(メタ)アクリル樹脂を形成するために使用した材料
:メタクリル酸メチルポリマー(富士フイルム和光純薬社製)
・溶媒:メチルエチルケトン、60質量部
[評価]
-帯電電位及び残留電位の評価-
得られた電子写真用感光体の電子写真特性を、レーザープリンタ改造スキャナー(XP-15改造機、富士ゼロックス製)を用いて、常温常湿(20℃、40%)環境下、グリッド印加電圧-700Vのスコロトロン帯電器で帯電し(A)、780nmの半導体レーザーを用いて、1秒後に10.0erg/cmの光を照射して放電を行い、3秒後に50.0erg/cmの赤色LED光を照射して除電を行なう(B)と言うプロセスによって、各部の電位を測定した。評価結果を表1及び表2に示す。
(A)帯電電位評価基準(許容範囲はA及びBである。)
A: グリッド印加電圧との差が10V未満
B: グリッド印加電圧との差が20V未満
C: グリッド印加電圧との差が20V以上
(B)残留電位評価基準(許容範囲はA及びBである。)
A:20V未満
B:20V以上40V未満
C:40V以上80V未満
D:80V以上
-画質評価-
得られた感光体を富士ゼロックス社製複写機「Docu Centre Color 500」に搭載し、20℃/40%RHの条件でチャートを連続10枚出力した。チャートは、画像濃度100%の黒色のベタ画像中に白抜きの文字「G」を有する領域と画像濃度40%のハーフトーン画像の領域と、をプリントしたチャートである。評価結果を表1及び表2に示す。
(ゴースト評価)
1枚目に出力した画像(初期画像)、10出力後の画像(10枚出力後画像)について、目視にて、Gの文字状の濃度変化を確認して行った。評価基準は以下の通りである。なお、許容範囲はA及びBである。
A:濃度変化なし
B:濃度変化若干あり実使用上問題ない
C:濃度変化あり実使用に耐えない
(ハーフトーン画像濃度ムラ評価)
ハーフトーン画像濃度ムラの評価は、1枚目に出力した画像(初期画像)、10出力後の画像(10枚出力後画像)について、画像濃度40%のハーフトーン画像の領域におけるランダムな濃度変化を目視にて行った。評価基準は以下の通りである。なお、許容範囲はA及びBである。
A:濃度変化なし
B:濃度変化若干あり実使用上問題ない
C:濃度変化あり実使用に耐えない
-漏れ電流の評価-
直径0.1mmのピンホールを基材まで貫通させた感光体を、ドラムカートリッジに装着し、低温低湿(10℃、15%RH)環境下および高温高湿(28℃、85%RH)環境下で50%ハーフトーン画像を印刷し、感光体ピンホール部分の帯状の画像欠陥について、以下の基準で判定した。評価結果を表1及び表2に示す。なお、許容範囲はA~Cである。
A:直径1.0mm以下の色点
B:10mm以下の帯状の画像欠陥の発生
C:10mmより長く30mm以下の帯状の画像欠陥の発生
D:30mmより長く35mm以下の帯状の画像欠陥の発生
E:35mmより長い帯状の画像欠陥の発生
Figure 0007183658000014
Figure 0007183658000015
上記結果から、実施例の電子写真感光体は、比較例の電子写真感光体に比べて、繰り返し画像を形成したときの残留電位の上昇が抑制されることがわかった。また、ジアリルフタレート化合物と(メタ)アクリル単量体とを重合させた結着樹脂を下引層に用いた実施例13及び実施例14の電子写真感光体は、ジアリルフタレート化合物のみを重合させた結着樹脂を下引層に用いた実施例1の電子写真感光体に比べて、漏れ電流の発生が抑制されることもわかった。
1 下引層、2 電荷発生層、3 電荷輸送層、4 導電性基体、7A,7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑剤、40 転写装置、50 中間転写体、100 画像形成装置、120 画像形成装置、131 クリーニングブレード、132 繊維状部材(ロール状)、133 繊維状部材、300 プロセスカートリッジ

Claims (9)

  1. 導電性基体と、
    前記導電性基体上に設けられ、ジアリルフタレート化合物を重合した樹脂を含む結着樹脂及び電荷輸送性材料を含む下引層と、
    前記下引層上に設けられた感光層と、
    を備え
    前記電荷輸送性材料は、
    一般式(1)及び一般式(2)で表されるペリノン化合物の少なくとも1種を含む、電子写真感光体。
    Figure 0007183658000016

    (一般式(1)中、R 11 、R 12 、R 13 、R 14 、R 15 、R 16 、R 17 及びR 18 は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R 11 とR 12 、R 12 とR 13 及びR 13 とR 14 は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R 15 とR 16 、R 16 とR 17 及びR 17 とR 18 は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
    一般式(2)中、R 21 、R 22 、R 23 、R 24 、R 25 、R 26 、R 27 及びR 28 は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R 21 とR 22 、R 22 とR 23 及びR 23 とR 24 は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R 25 とR 26 、R 26 とR 27 及びR 27 とR 28 は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。)
  2. 前記ジアリルフタレート化合物は、ジアリルイソフタレート化合物を含む、請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記ジアリルフタレート化合物は、前記ジアリルフタレート化合物の単量体とプレポリマーとを含む、請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記単量体と前記プレポリマーの質量比は1/99以上99/1以下である、請求項3に記載の電子写真感光体。
  5. 前記一般式(1)においてR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18が、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はアリールオキシカルボニルアルキル基を表し、前記一般式(2)においてR21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28が、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はアリールオキシカルボニルアルキル基を表す、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  6. 前記結着樹脂は、前記ジアリルフタレート化合物と(メタ)アクリル単量体とを重合した樹脂を含む結着樹脂である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  7. 前記下引層の全固形分量に対する前記電荷輸送性材料の含有量は、40質量%以上80質量%以下である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  8. 請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
  9. 請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
    帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
    トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
    前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
    を備える画像形成装置。
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