以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書において「インク組成物の硬化物」とは、インク組成物(インク組成物が溶剤成分を含む場合には、乾燥後のインク組成物)中の硬化性成分を硬化させて得られるものである。インク組成物の硬化物中には、有機溶剤が含まれなくてよい。本明細書において、「インク組成物の不揮発分」とは、インク組成物に含まれる有機溶剤以外の成分を意味する。「インク組成物の不揮発分」は、インク組成物の硬化物に含有させるべき成分と言い換えてもよい。
<インク組成物>
一実施形態のインク組成物は、発光性ナノ結晶粒子と、光散乱性粒子と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、変性シリコーン化合物と、を含有する。
上記インク組成物は、例えば、カラーフィルタ等が有する光変換層(光変換層の画素部)を形成するために用いられる、光変換層形成用(例えばカラーフィルタ画素部の形成用)のインク組成物である。このインク組成物は、一実施形態において、インクジェット方式に用いられる組成物(インクジェットインク)である。一実施形態のインク組成物は、高額である発光性ナノ結晶粒子、インクジェットヘッド等を無駄に消費せずに、画素部(光変換層)を形成できる点において、フォトリソグラフィ方式用に対して、インクジェット方式を低コストなプロセスに仕上げることに貢献できる。以下では、インクジェット方式で光変換層を形成するために用いられるインク組成物を例に挙げて、インク組成物の実施形態について説明する。
[発光性ナノ結晶粒子]
発光性ナノ結晶粒子は、励起光を吸収して蛍光又は燐光を発光するナノサイズの結晶体であり、例えば、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。
発光性ナノ結晶粒子は、例えば、所定の波長の光を吸収することにより、吸収した波長とは異なる波長の光(蛍光又は燐光)を発することができる。発光性ナノ結晶粒子は、605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(赤色光)を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子(赤色発光性ナノ結晶粒子)であってよく、500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(緑色光)を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子(緑色発光性ナノ結晶粒子)であってよく、420~480nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(青色光)を発する、青色発光性のナノ結晶粒子(青色発光性ナノ結晶粒子)であってもよい。本実施形態では、インク組成物がこれらの発光性ナノ結晶粒子のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。また、発光性ナノ結晶粒子が吸収する光は、例えば、400nm以上500nm未満の範囲(特に、420~480nmの範囲の波長の光)の波長の光(青色光)、又は、200nm~400nmの範囲の波長の光(紫外光)であってよい。なお、発光性ナノ結晶粒子の発光ピーク波長は、例えば、分光蛍光光度計を用いて測定される蛍光スペクトル又は燐光スペクトルにおいて確認することができる。
赤色発光性のナノ結晶粒子は、665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下又は630nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上又は605nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。これらの上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
緑色発光性のナノ結晶粒子は、560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下又は530nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上又は500nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
青色発光性のナノ結晶粒子は、480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下又は450nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上又は420nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子が発する光の波長(発光色)は、井戸型ポテンシャルモデルのシュレディンガー波動方程式の解によれば、発光性ナノ結晶粒子のサイズ(例えば粒子径)に依存するが、発光性ナノ結晶粒子が有するエネルギーギャップにも依存する。そのため、使用する発光性ナノ結晶粒子の構成材料及びサイズを変更することにより、発光色を選択することができる。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料を含む発光性ナノ結晶粒子(発光性半導体ナノ結晶粒子)であってよい。発光性半導体ナノ結晶粒子としては、量子ドット、量子ロッド等が挙げられる。これらの中でも、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、量子ドットが好ましい。
発光性半導体ナノ結晶粒子は、第一の半導体材料を含むコアのみからなっていてよく、第一の半導体材料を含むコアと、第一の半導体材料とは異なる第二の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェルと、を有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアのみからなる構造(コア構造)であってよく、コアとシェルからなる構造(コア/シェル構造)であってもよい。また、発光性半導体ナノ結晶粒子は、第二の半導体材料を含むシェル(第一のシェル)の他に、第一及び第二の半導体材料とは異なる第三の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェル(第二のシェル)を更に有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアと第一のシェルと第二のシェルとからなる構造(コア/シェル/シェル構造)であってもよい。コア及びシェルのそれぞれは、2種以上の半導体材料を含む混晶(例えば、CdSe+CdS、CIS+ZnS等)であってよい。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料として、II-VI族半導体、III-V族半導体、I-III-VI族半導体、IV族半導体及びI-II-IV-VI族半導体からなる群より選択される少なくとも1種の半導体材料を含むことが好ましい。
具体的な半導体材料としては、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe;GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb;SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe;Si、Ge、SiC、SiGe、AgInSe2、CuGaSe2、CuInS2、CuGaS2、CuInSe2、AgInS2、AgGaSe2、AgGaS2、C、Si及びGeが挙げられる。発光性半導体ナノ結晶粒子は、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、InP、InAs、InSb、GaP、GaAs、GaSb、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、Si、C、Ge及びCu2ZnSnS4からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
赤色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がCdSであり内側のコア部がCdSeであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がCdSであり内側のコア部がZnSeであるナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、InPのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、CdSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、ZnSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。
緑色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。
青色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、ZnSeのナノ結晶粒子、ZnSのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSeであり内側のコア部がZnSであるナノ結晶粒子、CdSのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、当該シェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。
半導体ナノ結晶粒子は、同一の化学組成で、それ自体の平均粒子径を変えることにより、当該粒子から発光させるべき色を赤色にも緑色にも変えることができる。また、半導体ナノ結晶粒子は、それ自体として、人体等に対する悪影響が極力低いものを用いることが好ましい。カドミウム、セレン等を含有する半導体ナノ結晶粒子を発光性ナノ結晶粒子として用いる場合は、上記元素(カドミウム、セレン等)が極力含まれない半導体ナノ結晶粒子を選択して単独で用いるか、上記元素が極力少なくなるようにその他の発光性ナノ結晶粒子と組み合わせて用いることが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の形状は特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の形状は、例えば、球状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等であってもよい。しかしながら、発光性ナノ結晶粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性及び流動性をより高められる点で好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、所望の波長の発光が得られやすい観点、並びに、分散性及び保存安定性に優れる観点から、1nm以上であってよく、1.5nm以上であってよく、2nm以上であってもよい。所望の発光波長が得られやすい観点から、40nm以下であってよく、30nm以下であってよく、20nm以下であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
発光性ナノ結晶粒子は、分散安定性の観点から、その表面に有機リガンドを有することが好ましい。有機リガンドは、例えば、発光性ナノ結晶粒子の表面に配位結合されていてよい。換言すれば、発光性ナノ結晶粒子の表面は、有機リガンドによってパッシベーションされていてよい。また、インク組成物が後述する高分子分散剤を更に含有する場合には、発光性ナノ結晶粒子は、その表面に高分子分散剤を有していてもよい。本実施形態では、例えば、上述の有機リガンドを有する発光性ナノ結晶粒子から有機リガンドを除去し、有機リガンドと高分子分散剤とを交換することで発光性ナノ結晶粒子の表面に高分子分散剤を結合させてよい。ただし、インクジェットインクにした際の分散安定性の観点では、有機リガンドが配位したままの発光性ナノ結晶粒子に対して高分子分散剤が配合されることが好ましい。
有機リガンドとしては、光重合性化合物との親和性を確保するための官能基(以下「親和性基」ともいう。)と、発光性ナノ結晶粒子と結合可能な官能基(発光性ナノ結晶粒子への吸着性を確保するための官能基。以下「結合性基」ともいう。)と、を有する化合物であることが好ましい。
親和性基は、例えば、脂肪族炭化水素基を有していてよい。当該脂肪族炭化水素基は、直鎖型であってもよく分岐構造を有していてもよい。脂肪族炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよく、不飽和結合を有していなくてもよい。
親和性基は、重合性化合物に対して高濃度の発光性ナノ結晶粒子を好適に分散させる観点から、好ましくは極性を有する基(極性基)を有し、より好ましくは、上記の脂肪族炭化水素基及び極性基を有している。ただし、ここでいう極性基には、下記結合性基として例示した基(カルボキシル基等)は含まれない。極性基は、好ましくは、エーテル基、エステル基、ケトン基、アミド基、ウレイド基、シアノ基、及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはエーテル基である。エーテル基を有する親和性基は、例えば、(ポリ)オキシアルキレン基であってよい。ここで、「(ポリ)オキシアルキレン基」とは、オキシアルキレン基、及び、2以上のアルキレン基がエーテル結合で連結したポリオキシアルキレン基の少なくとも1種を意味する。
結合性基は、例えば、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基及びアルコキシシリル基の少なくとも1種であってよく、発光性ナノ結晶粒子を失活させにくく、発光性ナノ結晶粒子の発光性が好適に発揮される観点、及び、インク組成物の保管中に光重合性化合物に対して不活性であり、光重合性化合物が安定に存在しやすい観点から、好ましくは酸素原子を有する官能基(酸素原子により発光性ナノ結晶粒子と結合することが可能な官能基)であり、より好ましくはカルボキシル基である。
有機リガンドは、好ましくは、極性基と結合性基とを有しており、より好ましくは、極性基(カルボキシル基以外の極性基)とカルボキシル基とを有している。
有機リガンドは、一実施形態において、下記式(1)で表される有機リガンドであってもよい。
式中、A
1及びA
2は、それぞれ独立に、上述した結合性基を含んでいてよい1価の基を示し、Rは、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、L
1及びL
2は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキレン基を示し、sは0以上の整数を示す。ただし、A
1及びA
2の少なくとも一方は上述した結合性基を含んでいる。A
1又はA
2が結合性基を含まない基である場合、当該A
1又はA
2は例えば水素原子であってよい。sが2以上の整数である場合、複数存在するRは、互いに同一でも異なっていてもよい。
L1及びL2における炭素数は、それぞれ独立に、例えば1~10であってよい。L1又はL2が置換のアルキレン基である場合、L1又はL2は、アルキレン基の一部が上述した極性基で置換された基であってよく、アルキレン基の炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された基であってよく、アルキレン基の炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子で置換された基であってよい。sは、例えば、100以下、50以下、20以下、又は10以下の整数であってよい。
式(1)で表される有機リガンドは、一実施形態において、下記式(1-1)で表される有機リガンドであってよい。
式中、L
3はアルキレン基を示し、L
2はアルキル基を示し、R及びsはそれぞれ式(1)におけるR及びsと同義である。L
1で表されるアルキレン基の炭素数は、例えば1~10であってよい。L
2で表されるアルキル基の炭素数は、例えば1~10であってよい。
式(1-1)で表される有機リガンドは、一実施形態において、下記式(1-1A)で表される有機リガンドであってよい。
式(1)で表される有機リガンドは、他の一実施形態において、下記式(1-2)で表される有機リガンドであってよい。
式中、pは0~50の整数を示し、qは0~50の整数を示す。p及びqのうち少なくとも一方が1以上であることが好ましく、p及びqの両方が1以上であることがより好ましい。
式(1)で表される有機リガンドは、他の一実施形態において、下記式(1-3)で表される有機リガンドであってよい。
式中、A
1、A
2、L
1、R及びsは、それぞれ式(1)におけるA
1、A
2、L
1、R及びsと同義である。
式(1-3)で表される有機リガンドは、一実施形態において、下記式(1-3A)で表される有機リガンドであってよい。
有機リガンドは、他の一実施形態において、例えば、TOP(トリオクチルホスフィン)、TOPO(トリオクチルホスフィンオキサイド)、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、グルコン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、N-ラウロイルサルコシン、N-オレイルサルコシン、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、フェニルホスホン酸、及びオクチルホスフィン酸(OPA)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
有機リガンドの含有量は、発光性ナノ結晶粒子の分散安定性の観点及び発光特性維持の観点から、発光性ナノ結晶粒子100質量部に対して、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上、35質量部以上又は40質量部以上であってよい。有機リガンドの含有量は、インク組成物の粘度を低く保ちやすい観点から、発光性ナノ結晶粒子100質量部に対して、50質量部以下、45質量部以下、40質量部以下又は30質量部以下であってよい。
発光性ナノ結晶粒子としては、有機溶剤、光重合性化合物等の中にコロイド形態で分散しているものを用いることができる。有機溶剤中で分散状態にある発光性ナノ結晶粒子の表面は、上述の有機リガンドによってパッシベーションされていることが好ましい。有機溶剤としては、インク組成物に含有される後述の有機溶剤が用いられる。
発光性ナノ結晶粒子としては、市販品を用いることができる。発光性ナノ結晶粒子の市販品としては、例えば、NN-ラボズ社の、インジウムリン/硫化亜鉛、D-ドット、CuInS/ZnS、アルドリッチ社の、InP/ZnS等が挙げられる。
発光性ナノ結晶粒子の含有量は、画素部の外部量子効率が向上する観点から、インク組成物の不揮発分の質量100質量部に対して、20質量部以上であり、同様の効果が更に得られやすくなる観点から、好ましくは23質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。本発明では、発光性ナノ結晶粒子の含有量を高めながらも優れたインクジェットプロセスへの適合性を発現できる点は特筆すべき事項である。一方、発光性ナノ結晶粒子の含有量は、吐出安定性及び画素部の外部量子効率がより向上する観点から、インク組成物の不揮発分の質量100質量部に対して、好ましくは、50質量部以下、45質量部以下、又は40質量部以下である。本明細書において、発光性ナノ結晶粒子の含有量は、発光性ナノ結晶粒子それ自体のみの含有量を意味し、発光性ナノ結晶粒子が有機リガンドを有する場合であっても、有機リガンドの含有量は含まない。
インク組成物は、発光性ナノ結晶粒子として、赤色発光性ナノ結晶粒子、緑色発光性ナノ結晶粒子及び青色発光性ナノ結晶粒子のうちの2種以上を含んでいてもよいが、好ましくはこれらの粒子のうちの1種のみを含む。インク組成物が赤色発光性ナノ結晶粒子を含む場合、緑色発光性ナノ結晶粒子の含有量及び青色発光性ナノ結晶粒子の含有量は、発光性ナノ結晶粒子の全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。インク組成物が緑色発光性ナノ結晶粒子を含む場合、赤色発光性ナノ結晶粒子の含有量及び青色発光性ナノ結晶粒子の含有量は、発光性ナノ結晶粒子の全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。
[光散乱性粒子]
インク組成物は、光散乱性粒子を更に含有してよい。光散乱性粒子は、例えば、光学的に不活性な無機微粒子である。インク組成物が光散乱性粒子を含有する場合、画素部に照射された光源からの光を散乱させることができるため、優れた光学特性(例えば外部量子効率)を得ることができる。
光散乱性粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金等の単体金属;シリカ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物、次硝酸ビスマス等の金属塩などが挙げられる。光散乱性粒子は、吐出安定性に優れる観点及び外部量子効率の向上効果により優れる観点から、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛及びチタン酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
光散乱性粒子の形状は、球状、フィラメント状、不定形状等であってよい。しかしながら、光散乱性粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性、流動性及び光散乱性をより高めることができ、優れた吐出安定性を得ることができる点で好ましい。
インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、吐出安定性に優れる観点及び外部量子効率の向上効果により優れる観点から、50nm以上であってよく、200nm以上であってもよく、300nm以上であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、吐出安定性に優れる観点から、1000nm以下であってもよく、600nm以下であってもよく、400nm以下であってもよい。このような平均粒子径(体積平均径)が得られやすい観点から、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、50nm以上であってよく、1000nm以下であってもよい。本明細書中、インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。また、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、例えば透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により各粒子の粒子径を測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
光散乱性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点から、インク組成物の不揮発性分の質量100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、又は3質量部以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、インクジェットプロセスへの適合性と光学特性及びその再現性の点で優れる観点から、インク組成物の不揮発性分の質量100質量部に対して、10質量部未満であり、当該効果が更に得られやすい観点から、9質量部以下、7質量部以下、又は5質量部以下であってもよい。
発光性ナノ結晶粒子の含有量に対する光散乱性粒子の含有量の質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、外部量子効率の向上効果に優れる観点から、好ましくは、0.05以上、0.07以上、0.1以上、0.13以上、又は0.15以上である。当該質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、インクジェットプロセスへの適合性と光学特性及びその再現性の点で更に優れる観点から、好ましくは、0.2以下、0.19以下、0.18以下、0.17以下、又は0.16以下である。
インク組成物における発光性ナノ結晶粒子と光散乱性粒子の合計量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点から、インク組成物の不揮発性分の質量100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。インク組成物における発光性ナノ結晶粒子と光散乱性粒子の合計量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点から、インク組成物の不揮発性分の質量100質量部に対して、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
[光重合性化合物]
光重合性化合物は、光の照射によって重合する化合物であり、例えば、光ラジカル重合性化合物又は光カチオン重合性化合物である。光重合性化合物は、光重合性のモノマー又はオリゴマーであってよい。これらは、光重合開始剤と共に用いられる。光ラジカル重合性化合物は光ラジカル重合開始剤と共に用いられ、光カチオン重合性化合物は光カチオン重合開始剤と共に用いられる。言い換えれば、インク組成物は、光重合性化合物及び光重合開始剤を含む光重合性成分を含有していてよく、光ラジカル重合性化合物及び光ラジカル重合開始剤を含む光ラジカル重合性成分を含有していてもよく、光カチオン重合性化合物及び光カチオン重合開始剤を含む光カチオン重合性成分を含有していてもよい。光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物とを併用してもよく、光ラジカル重合性と光カチオン重合性を具備した化合物を用いてもよく、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤とを併用してもよい。インク組成物は、光重合性化合物を1種含有してもよく、2種以上含有してもよく、好ましくは2種以上含有する。
光ラジカル重合性化合物としては、例えば、エチレン性不飽和基を有するモノマー(以下、「エチレン性不飽和モノマー」ともいう。)、イソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。ここで、エチレン性不飽和モノマーとは、エチレン性不飽和結合(炭素-炭素二重結合)を有するモノマーを意味する。エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基等のエチレン性不飽和基を有するモノマーが挙げられる。これらの基を有するモノマーは、「ビニルモノマー」と称される場合がある。
エチレン性不飽和モノマーにおけるエチレン性不飽和結合の数(例えばエチレン性不飽和基の数)は、例えば、1~3である。エチレン性不飽和モノマーは1種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。光重合性化合物は、優れた吐出安定性と優れた硬化性を両立することが容易となる観点、及び、外部量子効率がより向上する観点から、エチレン性不飽和基を1個有するモノマー(単官能モノマー)と、エチレン性不飽和基を2個以上有するモノマー(多官能モノマー)とを含んでいてよく、単官能モノマーと、エチレン性不飽和基を2個有するモノマー(二官能モノマー)及びエチレン性不飽和基を3個有するモノマー(三官能モノマー)からなる群より選択される少なくとも1種とを含んでいてよい。
エチレン性不飽和基は、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基、(メタ)アクリロイル基等であってよく、好ましくは(メタ)アクリロイル基である。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及びそれに対応する「メタクリロイル基」を意味する。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリルアミド」との表現についても同様である。
光重合性化合物は、エチレン性不飽和基として、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有する化合物の少なくとも1種を含み、より好ましくは(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種を含む、更に好ましくは(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含み、特に好ましくは炭素数8以上の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含む。光重合性化合物は、優れた吐出安定性と優れた硬化性を両立することが容易となる観点、及び、外部量子効率がより向上する観点から、好ましくは、(メタ)アクリレートを2種以上含み、より好ましくは、(メタ)アクリロイル基を1個有する(メタ)アクリレート(単官能(メタ)アクリレート)と、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレート(多官能(メタ)アクリレート)とを含み、更に好ましくは、単官能(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリロイル基を2個有する(メタ)アクリレート(二官能(メタ)アクリレート)及び(メタ)アクリロイル基を3個有する(メタ)アクリレート(三官能(メタ)アクリレート)からなる群より選択される少なくとも1種とを含む。
単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、4-アクリロイルモルホリン、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-tert-オクチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、N-ドデシルアクリルアミド等が挙げられる。これらの中でも、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート及びダイアセトンアクリルアミドが好ましく用いられる。
エチレン性不飽和基を2個有するモノマー(二官能モノマー)の具体例としては、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレ-ト、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2個の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2個の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2個の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2個の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2個の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、N,N‘-メチレンビスアクリルアミド、N,N‘-エチレンビスアクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートが好ましく用いられる。
エチレン性不飽和基を3個有するモノマー(三官能モノマー)の具体例としては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、グリセリントリ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
光カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族系エポキシ化合物、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロへキサン、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等の脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。
エポキシ化合物として市販品を使用することも可能である。エポキシ化合物の市販品としては、例えば、ダイセル化学工業株式会社製の「セロキサイド2000」、「セロキサイド3000」、「セロキサイド4000」等を用いることができる。
カチオン重合性のオキセタン化合物としては、2―エチルヘキシルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン等が挙げられる。
オキセタン化合物として市販品を使用することも可能である。オキセタン化合物の市販品としては、例えば、東亜合成株式会社製のアロンオキセタンシリーズ(「OXT-101」、「OXT-212」、「OXT-121」、「OXT-221」等);ダイセル化学工業株式会社製の「セロキサイド2021」、「セロキサイド2021A」、「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2080」、「セロキサイド2081」、「セロキサイド2083」、「セロキサイド2085」、「エポリードGT300」、「エポリードGT301」、「エポリードGT302」、「エポリードGT400」、「エポリードGT401」及び「エポリードGT403」;ダウ・ケミカル日本株式会社製の「サイラキュアUVR-6105」、「サイラキュアUVR-6107」、「サイラキュアUVR-6110」、「サイラキュアUVR-6128」、「ERL4289」及び「ERL4299」などを用いることができる。また、公知のオキセタン化合物(例えば、特開2009-40830等に記載のオキセタン化合物)を使用することもできる。
ビニルエーテル化合物としては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルモノエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
また、本実施形態における光重合性化合物として、特開2013-182215号公報の段落0042~0049に記載の光重合性化合物を用いることもできる。
光重合性化合物は、信頼性に優れる画素部(インク組成物の硬化物)が得られやすい観点から、アルカリ不溶性であってよい。本明細書中、光重合性化合物がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃における光重合性化合物の溶解量が、光重合性化合物の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。光重合性化合物の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
光重合性化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び耐磨耗性が向上する観点から、インク組成物の不揮発性分の質量100質量部に対して、10質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよい。光重合性化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、及び、より優れた光学特性(例えば外部量子効率)が得られる観点から、インク組成物の不揮発性分の質量100質量部に対して、60質量部以下であってよく、50質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、例えば光ラジカル重合開始剤又は光カチオン重合開始剤である。光ラジカル重合開始剤としては、分子開裂型又は水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤が好適である。
分子開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシド等が好適に用いられる。これら以外の分子開裂型の光ラジカル重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン及び2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンを併用してもよい。
水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド等が挙げられる。分子開裂型の光ラジカル重合開始剤と水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤とを併用してもよい。
光カチオン重合開始剤として市販品を用いることもできる。市販品としては、サンアプロ社製の「CPI-100P」等のスルホニウム塩系光カチオン重合開始剤、BASF社製の「Lucirin TPO」等のアシルフォスフィンオキサイド化合物、BASF社製の「Irgacure 907」、「Irgacure 819」、「Irgacure 379EG」「、Irgacure 184」及び「Irgacure PAG290」などが挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、インク組成物の硬化性の観点から、光重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上であってよく、0.5質量部以上であってもよく、1質量部以上であってもよく、3質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよい。光重合開始剤の含有量は、画素部(インク組成物の硬化物)の経時安定性の観点から、光重合性化合物100質量部に対して、40質量部以下であってよく、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよい。
[変性シリコーン化合物]
本発明における変性シリコーン化合物は、ジメチルポリシロキサン構造を有し、そのメチル基の一部を有機基で置換された構造を有する。ジメチルポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサンとも呼ばれる。メチル基を置換する有機基としては、置換又は無置換のアルキル基、アラルキル基、ポリエーテル基などが挙げられる。置換のアルキル基としては、エポキシ基、水酸基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基などで置換されたアルキル基が挙げられる。インク組成物は、変性シリコーン化合物の1種又は2種以上を含有する。
変性シリコーン化合物は、好ましくは、ポリエーテル変性シリコーン化合物、アラルキル変性シリコーン化合物、及びポリエーテル変性かつアラルキル変性シリコーン化合物(ポリエーテル基とアラルキル基の両方で変性された変性シリコーン化合物)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、下記式(I)で表される構造単位及び下記式(II)で表される構造単位を有する変性シリコーン化合物である。
式中、R1は、アラルキル基又はポリエーテル基である。上記アラルキル基の炭素数は、例えば、7以上であってよく、20以下であってよい。上記ポリエーテル基は、例えば、ポリオキシエチレン基及びポリオキシプロピレン基の一方又は両方を有していてよい。変性シリコーン化合物中に式(II)で表される構造単位が複数含まれる場合、複数のR1は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
変性シリコーン化合物は、式(I)で表される構造単位及び式(II)で表される構造単位に加えて、下記式(III)で表される構造単位を更に有していてもよい。
式中、R2は、アルキル基又はフェニル基である。アルキル基の炭素数は、例えば、2以上であってよく、18以下であってよい。変性シリコーン化合物中に式(III)で表される構造単位が複数含まれる場合、複数のR2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(I)で表される構造単位及び式(II)で表される構造単位(更には式(III)で表される構造単位)を有する変性シリコーン化合物において、各構造単位はランダムに配置されていてよい。当該変性シリコーン化合物の末端構造は、例えば両末端ともに、下記式(IV)で表される構造であってよい。
変性シリコーン化合物の25℃における粘度は、50mPa・s以上、100mPa・s以上、500mPa・s以上、又は1000mPa・s以上であってよく、10000mPa・s以下、5000mPa・s以下、又は3000mPa・s以下であってよい。変性シリコーン化合物の25℃における粘度は、E型粘度計により測定される。
変性シリコーン化合物の重量平均分子量Mwは、1000以上、2000以上、5000以上、又は10000以上であってよく、500000以下、100000以下、又は50000以下であってよい。変性シリコーン化合物の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、ポリスチレン換算で求められる重量平均分子量を意味する。
変性シリコーン化合物は、市販品を使用可能である。市販品の具体例を以下に示す。
・ビックケミー社製:BYK-300、302、306、307、310、315、320、322、323、325、330、331、333、337、340、344、347、348、370、375、377、355、356、357、390、UV3500、UV3510、UV3570等
・テゴケミー社製:Tegorad-2100、2200、2250、2500、2700、TegoGlide-410、432、450等
・信越シリコーン株式会社製:KP341、KF6001、KF6002、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-6191、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017等
・東レ・ダウコーニング(株)製:トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA,トーレシリコーンSH21PA,トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400等
・モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製:TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452等
変性シリコーン化合物の含有量は、インクジェットプロセスへの適合性と光学特性及びその再現性の点で更に優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量100質量部に対して、0.0001質量部以上であってよく、0.001質量部以上であってよく、0.005質量部以上であってよく、0.01質量部以上であってよい。変性シリコーン化合物の含有量は、高濃度の発光性ナノ結晶粒子を含有するインク組成物の粘度をインクジェットにより適した粘度及び表面張力とする観点から、インク組成物の不揮発分の質量100質量部に対して、5質量部以下、2質量部以下、1質量部以下、0.5質量部以下、0.1質量部以下、又は0.05質量部以下であってよい。特に、変性シリコーン化合物がメルカプト基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基等を有する場合、変性シリコーン化合物が光重合性化合物と反応したり、発光性ナノ結晶粒子と相互作用して増粘したりすることを抑制する観点から、変性シリコーン化合物の含有量が上記の上限値以下であることが好ましい。
[高分子分散剤]
インク組成物は、高分子分散剤を更に含有してよい。高分子分散剤は、750以上の重量平均分子量を有し、かつ、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を有する高分子化合物である。高分子分散剤は、光散乱性粒子を分散させる機能を有する。高分子分散剤は、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を介して光散乱性粒子に吸着し、高分子分散剤同士の静電反発及び/又は立体反発により、光散乱性粒子をインク組成物中に分散させる。インク組成物が高分子分散剤を含む場合、光散乱性粒子の含有量を比較的多くした場合(例えば60質量%程度とした場合)であっても光散乱性粒子を良好に分散させることができる。高分子分散剤は、光散乱性粒子の表面と結合して光散乱性粒子に吸着していることが好ましいが、発光性ナノ結晶粒子の表面に結合して発光性ナノ粒子に吸着していてもよく、インク組成物中に遊離していてもよい。
光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基及び非イオン性官能基が挙げられる。酸性官能基は解離性のプロトンを有しており、アミン、水酸化物イオン等の塩基により中和されていてもよく、塩基性官能基は有機酸、無機酸等の酸により中和されていてもよい。
酸性官能基としては、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、硫酸基(-OSO3H)、ホスホン酸基(-PO(OH)3)、リン酸基(-OPO(OH)3)、ホスフィン酸基(-PO(OH)-)、メルカプト基(-SH)、が挙げられる。
塩基性官能基としては、一級、二級及び三級アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、並びに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ環基等が挙げられる。
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO2-)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキサイド基、ホスフィンスルフィド基が挙げられる。
高分子分散剤は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、高分子分散剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、高分子分散剤がグラフト共重合体である場合、くし形のグラフト共重合体であってよく、星形のグラフト共重合体であってもよい。高分子分散剤は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレア樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンイミン及びポリアリルアミン等のポリアミン、ポリイミドなどであってよい。
高分子分散剤として、市販品を使用することも可能であり、市販品としては、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPBシリーズ、BYK社製のDISPERBYKシリーズ並びにBYK-シリーズ、BASF社製のEfkaシリーズ等を使用することができる。
[有機溶剤]
インク組成物は有機溶剤を更に含有してよい。有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、1,4-ブタンジオールジアセテート、グリセリルトリアセテート等が挙げられる。
有機溶剤の沸点は、インクジェットインクの連続吐出安定性の観点から、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは180℃以上である。また、画素部の形成時には、インク組成物の硬化前にインク組成物から溶剤を除去する必要があるため、有機溶剤を除去しやすい観点から、有機溶剤の沸点は好ましくは300℃以下である。
有機溶剤は、好ましくは、沸点が150℃以上のアセテート化合物を含む。この場合、発光性ナノ結晶粒子と溶剤との間の親和性が向上し、発光性ナノ結晶粒子が優れた発光特性を発揮し得る。沸点が150℃以上のアセテート化合物の具体例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のモノアセテート化合物、1,4-ブタンジオールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のジアセテート化合物、グリセリルトリアセテート等のトリアセテート化合物などが挙げられる。
本実施形態のインク組成物では光重合性化合物が分散媒としても機能するため、無溶剤で光散乱性粒子及び発光性ナノ結晶粒子を分散させることが可能である。この場合、画素部を形成する際に溶剤を乾燥により除去する工程が不要となる利点を有する。
インク組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述した成分以外の成分(例えば、熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤(硬化触媒)、重合禁止剤、連鎖移動剤、酸化防止剤等)を更に含有していてもよい。
以上説明したインク組成物のインクジェット印刷時のインク温度における粘度は、例えば、インクジェット印刷時の吐出安定性の観点から、2mPa・s以上であってよく、5mPa・s以上であってもよく、7mPa・s以上であってもよい。インク組成物のインクジェット印刷時のインク温度における粘度は、20mPa・s以下であってよく、15mPa・s以下であってもよく、12mPa・s以下であってもよい。本明細書中、インク組成物の粘度は、例えば、E型粘度計によって測定される粘度であり、25℃で測定されたものを言う。
インク組成物のインクジェット印刷時のインク温度における粘度が2mPa・s以上でである場合、吐出ヘッドのインク吐出孔の先端におけるインクジェットインクのメニスカス形状が安定するため、インクジェットインクの吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、インク組成物のインクジェット印刷時のインク温度における粘度が20mPa・s以下である場合、インク吐出孔からインクジェットインクを円滑に吐出させることができる。
インク組成物の表面張力は、インクジェット方式に適した表面張力であることが好ましく、具体的には、20~40mN/mの範囲であることが好ましく、25~35mN/mであることがより好ましい。表面張力を当該範囲とすることで吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易になると共に、飛行曲がりの発生を抑制することができる。なお、飛行曲がりとは、インク組成物をインク吐出孔から吐出させたとき、インク組成物の着弾位置が目標位置に対して30μm以上のずれを生じることをいう。表面張力が40mN/m以下である場合、インク吐出孔の先端におけるメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、表面張力が20mN/m以上である場合、インク吐出孔周辺部がインクジェットインクで汚染することが防げるため、飛行曲がりの発生を抑制できる。すなわち、着弾すべき画素部形成領域に正確に着弾されずにインク組成物の充填が不充分な画素部が生じたり、着弾すべき画素部形成領域に隣接する画素部形成領域(又は画素部)にインク組成物が着弾し、色再現性が低下したりすることがない。なお、本願明細書記載の表面張力は、23℃で測定された表面張力をいい、リング法(輪環法ともいう)で測定されたものをいう。
上記インク組成物によれば、優れた光学特性及びその再現性を有する光変換層が得られる。また、このインク組成物は、インクジェットプロセスへの高い適合性を有するため、使用するインクやインクジェット部材の廃棄量を減らすことができる。上記インク組成物により上述した効果が得られる理由は、明らかではないが、本発明者らは以下のように推察している。
インク組成物には、発光性ナノ結晶粒子に加えて光散乱性粒子が含まれるため、発光性ナノ結晶粒子と光散乱性粒子との間の相互作用が生じ得る。発光性ナノ結晶粒子と光散乱性粒子とが互いに相互作用した状態でインク組成物がインクジェット方式により印刷される際、インクジェット部材などに付着しやすくなると考えられる。また、インク組成物中とインクジェット部材への付着物中とにおいて、発光性ナノ結晶粒子と光散乱性粒子の比率が異なるため、吐出されるインク組成物の組成を変動させる要因となり得る。これにより、インクジェット方式により形成された光変換層において、光学特性の再現性が悪化し得ると考えられる。これに対し、本実施形態のインク組成物では、光散乱性粒子の含有量を少なくすると共に、変性シリコーン化合物を用いることによって、上述した発光性ナノ結晶粒子と光散乱性粒子との間の相互作用を抑制したり、これらの粒子とインクジェット部材との間の相互作用を抑制することができるため、上記の問題点を改善できると考えられる。
本実施形態のインク組成物をインクジェット方式用のインク組成物として用いる場合には、圧電素子を用いた機械的吐出機構による、ピエゾジェット方式のインクジェット記録装置に適用することが好ましい。ピエゾジェット方式では、吐出に当たり、インク組成物が瞬間的に高温に晒されることがない。そのため、発光性ナノ結晶粒子の変質が起こり難く、画素部(光変換層)において、期待した通りの発光特性がより容易に得られやすい。
以上、インクジェット用インク組成物の一実施形態について説明したが、上述した実施形態のインクジェット用インク組成物は、インクジェット方式の他に、例えば、フォトリソグラフィ方式で用いることもできる。この場合、インク組成物は、バインダーポリマーとしてアルカリ可溶性樹脂を含有する。
インク組成物をフォトリソグラフィ方式で用いる場合、まず、インク組成物を基材上に塗布し、さらにインク組成物を乾燥させて塗布膜を形成する。このようにして得られる塗布膜は、アルカリ現像液に可溶性であり、アルカリ現像液で処理されることでパターニングされる。この際、アルカリ現像液は、現像液の廃液処理の容易さ等の観点から、水溶液であることが大半を占めるため、インク組成物の塗布膜は水溶液で処理されることとなる。一方、発光性ナノ結晶粒子(量子ドット等)を用いたインク組成物の場合、発光性ナノ結晶粒子が水に対して不安定であり、発光性(例えば蛍光性)が水分により損なわれる。このため本実施形態においては、アルカリ現像液(水溶液)で処理する必要のない、インクジェット方式が好ましい。
また、インク組成物の塗布膜に対してアルカリ現像液による処理を行わない場合でも、インク組成物がアルカリ可溶性である場合、インク組成物の塗布膜が大気中の水分を吸収しやすくなるため、時間が経過するにつれて発光性ナノ結晶粒子(量子ドット等)の発光性(例えば蛍光性)が損なわれてゆく。この観点から、本実施形態においては、インク組成物の塗布膜はアルカリ不溶性であることが好ましい。すなわち、本実施形態のインク組成物は、アルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることが好ましい。このようなインク組成物は、光重合性化合物として、アルカリ不溶性の光重合性化合物を用いることにより得ることができる。インク組成物の塗布膜がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃におけるインク組成物の塗布膜の溶解量が、インク組成物の塗布膜の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。インク組成物の塗布膜の上記溶解量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。なお、インク組成物がアルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることは、インク組成物を基材上に塗布した後、80℃、3分の条件で乾燥して得られる厚さ1μmの塗布膜の、上記溶解量を測定することにより確認できる。
本発明の他の一実施形態は、上記インク組成物の硬化物(硬化膜)であり、このインク組成物の硬化物(硬化膜)が、アルカリ不溶性であるということもできる。これにより、信頼性に優れる画素部が得られやすくなる。インク組成物の硬化物がアルカリ不溶性であるとは、上記と同様に、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃におけるインク組成物の硬化物の溶解量が、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。インク組成物の硬化物の上記溶解量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
<インク組成物の製造方法>
上述した実施形態のインク組成物は、例えば、上述したインク組成物の構成成分(発光性ナノ結晶粒子(例えば有機リガンドを有する発光性ナノ結晶粒子)と、光重合性化合物と、その他の任意成分)を混合する工程を備える。インク組成物の製造方法は、上記構成成分の混合物の分散処理を行う工程を更に備えてよい。以下では、一例として、光散乱性粒子を含有するインク組成物の製造方法を説明する。
光散乱性粒子を含有するインク組成物の製造方法は、例えば、光散乱性粒子を含有する、光散乱性粒子の分散体を用意する第1の工程と、光散乱性粒子の分散体及び発光性ナノ結晶粒子を混合する第2の工程と、を備える。光散乱性粒子の分散体は、高分子分散剤を更に含んでいてよい。この方法では、光散乱性粒子の分散体が光重合性化合物及び/又は熱重合性樹脂を更に含有してよく、第2の工程において、光重合性化合物及び/又は熱重合性樹脂を更に混合してもよい。上記方法によれば、光散乱性粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部の光学特性(例えば外部量子効率)を向上させることができると共に、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。
光散乱性粒子の分散体を用意する工程では、光散乱性粒子と、場合により、高分子分散剤と、光重合性化合物及び/又は熱重合性樹脂とを混合し、分散処理を行うことにより光散乱性粒子の分散体を調製してよい。混合及び分散処理は、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星攪拌機、ジェットミル等の分散装置を用いて行ってよい。光散乱性粒子の分散性が良好となり、光散乱性粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整しやすい観点から、ビーズミル又はペイントコンディショナーを用いることが好ましい。発光性ナノ結晶粒子と光散乱性粒子とを混合する前に光散乱性粒子と高分子分散剤とを混合することにより、光散乱性粒子をより充分に分散させることができる。そのため、優れた吐出安定性及び優れた外部量子効率をより一層容易に得ることができる。
インク組成物の製造方法は、第2の工程の前に、発光性ナノ結晶粒子と、光重合性化合物及び/又は熱重合性樹脂と、を含有する、発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程を更に備えていてもよい。この場合、第2の工程では、光散乱性粒子の分散体と、発光性ナノ結晶粒子の分散体と、を混合する。発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程では、発光性ナノ結晶粒子と、光重合性化合物及び/又は熱重合性樹脂と、を混合し、分散処理を行うことにより発光性ナノ結晶粒子分散体を調製してよい。発光性ナノ結晶粒子としては、その表面に有機リガンドを有する発光性ナノ結晶粒子を用いてよい。すなわち、発光性ナノ結晶粒子分散体は、有機リガンドを更に含んでいてもよい。混合及び分散処理は、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星攪拌機、ジェットミル等の分散装置を用いて行ってよい。発光性ナノ結晶粒子の分散性が良好となり、発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整しやすい観点から、ビーズミル、ペイントコンディショナー又はジェットミルを用いることが好ましい。この方法によれば、発光性ナノ結晶粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部の光学特性(例えば外部量子効率)を向上させることができると共に、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。
この製造方法において、酸化防止剤、有機溶媒等の他の成分を用いる場合、これらの成分は、発光性ナノ結晶粒子分散体に含有させてもよく、光散乱性粒子分散体に含有させてもよく、発光性ナノ結晶粒子分散体と光散乱性粒子分散体とを混合して得られる組成物に混合してもよい。
<インク組成物セット>
一実施形態のインク組成物セットは、上述した実施形態のインク組成物を備える。インク組成物セットは、上述した実施形態のインク組成物(発光性インク組成物)に加えて、発光性ナノ結晶粒子を含有しないインク組成物(非発光性インク組成物)を備えていてよい。非発光性インク組成物は、例えば、硬化性のインク組成物である。非発光性インク組成物は、従来公知のインク組成物であってよく、発光性ナノ結晶粒子を含まないこと以外は、上述した実施形態のインク組成物(発光性インク組成物)と同様の組成であってもよい。
非発光性インク組成物は、発光性ナノ結晶粒子を含有しないため、非発光性インク組成物により形成される画素部(非発光性インク組成物の硬化物を含む画素部)に光を入射させた場合に画素部から出射する光は、入射光と略同一の波長を有する。したがって、非発光性インク組成物は、光源からの光と同色の画素部を形成するために好適に用いられる。例えば、光源からの光が420~480nmの範囲の波長を有する光(青色光)である場合、非発光性インク組成物により形成される画素部は青色画素部となり得る。
非発光性インク組成物は、好ましくは光散乱性粒子を含有する。非発光性インク組成物が光散乱性粒子を含有する場合、当該非発光性インク組成物により形成される画素部によれば、画素部に入射した光を散乱させることができ、これにより、画素部からの出射光の、視野角における光強度差を低減することができる。
<光変換層及びカラーフィルタ>
以下、上述した実施形態のインク組成物セットを用いて得られる光変換層及びカラーフィルタの詳細について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
図1は、一実施形態のカラーフィルタの模式断面図である。図1に示すように、カラーフィルタ100は、基材40と、基材40上に設けられた光変換層30と、を備える。光変換層30は、複数の画素部10と、遮光部20と、を備えている。
光変換層30は、画素部10として、第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとを有している。第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとは、この順に繰り返すように格子状に配列されている。遮光部20は、隣り合う画素部の間、すなわち、第1の画素部10aと第2の画素部10bとの間、第2の画素部10bと第3の画素部10cとの間、第3の画素部10cと第1の画素部10aとの間に設けられている。言い換えれば、これらの隣り合う画素部同士は、遮光部20によって離間されている。
第1の画素部10a及び第2の画素部10bは、それぞれ上述した実施形態のインク組成物の硬化物を含む発光性の画素部(発光性画素部)である。図1に示す硬化物は、発光性ナノ結晶粒子と、硬化成分と、光散乱性粒子と、を含有する。第1の画素部10aは、第1の硬化成分13aと、第1の硬化成分13a中にそれぞれ分散された第1の発光性ナノ結晶粒子11a及び第1の光散乱性粒子12aとを含む。同様に、第2の画素部10bは、第2の硬化成分13bと、第2の硬化成分13b中にそれぞれ分散された第2の発光性ナノ結晶粒子11b及び第2の光散乱性粒子12bとを含む。硬化成分は、光重合性化合物の重合によって得られる成分であり、光重合性化合物の重合体を含む。硬化成分には、上記重合体の他、インク組成物に含まれていた有機溶剤以外の成分(有機リガンド、高分子分散剤、未反応の重合性化合物等)が含まれていてよい。第1の画素部10a及び第2の画素部10bにおいて、第1の硬化成分13aと第2の硬化成分13bとは同一であっても異なっていてもよく、第1の光散乱性粒子12aと第2の光散乱性粒子12bとは同一であっても異なっていてもよい。
第1の発光性ナノ結晶粒子11aは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第1の画素部10aは、青色光を赤色光に変換するための赤色画素部と言い換えてよい。また、第2の発光性ナノ結晶粒子11bは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第2の画素部10bは、青色光を緑色光に変換するための緑色画素部と言い換えてよい。
発光性画素部における発光性ナノ結晶粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、好ましくは5質量%以上であり、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上又は30質量%以上であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、画素部の信頼性に優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、好ましくは80質量%以下であり、75質量%以下、70質量%以下又は60質量%以下であってもよい。
発光性画素部における光散乱性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、0.1質量%以上、1質量%以上又は3質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び画素部の信頼性に優れる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量部%以下、20質量部%以下又は15質量%以下であってもよい。
第3の画素部10cは、上述した非発光性インク組成物の硬化物を含む非発光性の画素部(非発光性画素部)である。硬化物は、発光性ナノ結晶粒子を含有せず、光散乱性粒子と、硬化成分とを含有する。すなわち、第3の画素部10cは、第3の硬化成分13cと、第3の硬化成分13c中に分散された第3の光散乱性粒子12cとを含む。第3の硬化成分13cは、例えば、重合性化合物の重合によって得られる成分であり、重合性化合物の重合体を含む。第3の光散乱性粒子12cは、第1の光散乱性粒子12a及び第2の光散乱性粒子12bと同一であっても異なっていてもよい。
第3の画素部10cは、例えば、420~480nmの範囲の波長の光に対し30%以上の透過率を有する。そのため、第3の画素部10cは、420~480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に、青色画素部として機能する。なお、第3の画素部10cの透過率は、顕微分光装置により測定することができる。
非発光性画素部における光散乱性粒子の含有量は、視野角における光強度差をより低減することができる観点から、非発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、1質量%以上であってよく、5質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、光反射をより低減することができる観点から、非発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、80質量%以下であってよく、75質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、1μm以上であってよく、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、30μm以下であってよく、20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよい。
遮光部20は、隣り合う画素部を離間して混色を防ぐ目的及び光源からの光の漏れを防ぐ目的で設けられる、いわゆるブラックマトリックスである。遮光部20を構成する材料は、特に限定されず、クロム等の金属の他、バインダーポリマーにカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の硬化物等を用いることができる。ここで用いられるバインダーポリマーとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種又は2種以上混合したもの、感光性樹脂、O/Wエマルジョン型の樹脂組成物(例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの)などを用いることができる。遮光部20の厚さは、例えば、0.5μm以上であってよく、10μm以下であってよい。
基材40は、光透過性を有する透明基材であり、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の透明なガラス基板、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルム等の透明なフレキシブル基材などを用いることができる。これらの中でも、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスからなるガラス基板を用いることが好ましい。具体的には、コーニング社製の「7059ガラス」、「1737ガラス」、「イーグル200」及び「イーグルXG」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA-10G」及び「OA-11」が好適である。これらは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れる。
以上の光変換層30を備えるカラーフィルタ100は、420~480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に好適に用いられる。
カラーフィルタ100は、例えば、基材40上に遮光部20をパターン状に形成した後、基材40上の遮光部20によって区画された画素部形成領域に画素部10を形成することにより製造できる。画素部10は、インク組成物(インクジェットインク)をインクジェット方式により基材40上の画素部形成領域に選択的に付着させる工程と、乾燥によりインク組成物から有機溶剤を除去する工程と、乾燥後のインク組成物に対して活性エネルギー線(例えば紫外線)を照射し、インク組成物を硬化させて発光性画素部を得る工程と、を備える方法により形成することができる。インク組成物として上述した発光性インク組成物を用いることで発光性画素部が得られ、非発光性インク組成物を用いることで非発光性画素部が得られる。
遮光部20を形成させる方法は、基材40の一面側の複数の画素部間の境界となる領域に、クロム等の金属薄膜、又は、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜を形成し、この薄膜をパターニングする方法等が挙げられる。金属薄膜は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により形成することができ、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜は、例えば、塗布、印刷等の方法により形成することができる。パターニングを行う方法としては、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。
インクジェット方式としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェット(登録商標)方式、或いは圧電素子を用いたピエゾジェット方式等が挙げられる。
インク組成物の乾燥では、有機溶剤の少なくとも一部が除去されればよく、有機溶剤の全てが除去されることが好ましい。インク組成物の乾燥方法は、減圧による乾燥(減圧乾燥)であることが好ましい。減圧乾燥は、通常、インク組成物の組成を制御する観点から、1.0~500Paの圧力下、20~30℃で3~30分間行う。
インク組成物の硬化は、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等を用いてよい。照射する光の波長は、例えば、200nm以上であってよく、440nm以下であってよい。露光量は、例えば、10mJ/cm2以上であってよく、4000mJ/cm2以下であってよい。
以上、カラーフィルタ及び光変換層、並びにこれらの製造方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、光変換層は、第3の画素部10cに代えて又は第3の画素部10cに加えて、青色発光性のナノ結晶粒子を含有する発光性インク組成物の硬化物を含む画素部(青色画素部)を備えていてもよい。また、光変換層は、赤、緑、青以外の他の色の光を発するナノ結晶粒子を含有する発光性インク組成物の硬化物を含む画素部(例えば黄色画素部)を備えていてもよい。これらの場合、光変換層の各画素部に含有される発光性ナノ結晶粒子のそれぞれは、同一の波長域に吸収極大波長を有することが好ましい。
また、光変換層の画素部の少なくとも一部は、発光性ナノ結晶粒子以外の顔料を含有する組成物の硬化物を含むものであってもよい。
また、カラーフィルタは、遮光部のパターン上に、遮光部よりも幅の狭い撥インク性を持つ材料からなる撥インク層を備えていてもよい。また、撥インク層を設けるのではなく、画素部形成領域を含む領域に、濡れ性可変層としての光触媒含有層をベタ塗り状に形成した後、当該光触媒含有層にフォトマスクを介して光を照射して露光を行い、画素部形成領域の親インク性を選択的に増大させてもよい。光触媒としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
また、カラーフィルタは、基材と画素部との間に、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン等を含むインク受容層を備えていてもよい。
また、カラーフィルタは、画素部上に保護層を備えていてもよい。この保護層は、カラーフィルタを平坦化すると共に、画素部に含有される成分、又は、画素部に含有される成分及び光触媒含有層に含有される成分の液晶層への溶出を防止するために設けられるものである。保護層を構成する材料は、公知のカラーフィルタ用保護層として使用されているものを使用できる。
また、カラーフィルタ及び光変換層の製造では、インクジェット方式ではなく、フォトリソグラフィ方式で画素部を形成してもよい。この場合、まず、基材にインク組成物を層状に塗工し、インク組成物層を形成する。次いで、インク組成物層をパターン状に露光した後、現像液を用いて現像する。このようにして、インク組成物の硬化物からなる画素部が形成される。現像液は、通常アルカリ性であるため、インク組成物の材料としてはアルカリ可溶性の材料が用いられる。ただし、材料の使用効率の観点では、インクジェット方式がフォトリソグラフィ方式よりも優れている。これはフォトリソグラフィ方式では、その原理上、材料のほぼ2/3以上を除去することとなり、材料が無駄になるからである。このため、本実施形態では、インクジェットインクを用い、インクジェット方式により画素部を形成することが好ましい。
また、本実施形態の光変換層の画素部には、上記した発光性ナノ結晶粒子に加えて、発光性ナノ結晶粒子の発光色と概ね同色の顔料を更に含有させてもよい。顔料を画素部に含有させるため、インク組成物に顔料を含有させてもよい。
また、本実施形態の光変換層中の赤色画素部(R)、緑色画素部(G)、及び青色画素部(B)のうち、1種又は2種の発光性画素部を、発光性ナノ結晶粒子を含有させずに色材を含有させた画素部としてもよい。ここで使用し得る色材としては、公知の色材を使用することができ、例えば、赤色画素部(R)に用いる色材としては、ジケトピロロピロール顔料及び/又はアニオン性赤色有機染料が挙げられる。緑色画素部(G)に用いる色材としては、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料、フタロシアニン系緑色染料、フタロシアニン系青色染料とアゾ系黄色有機染料との混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。青色画素部(B)に用いる色材としては、ε型銅フタロシアニン顔料及び/又はカチオン性青色有機染料が挙げられる。これらの色材の使用量は、光変換層に含有させる場合には、透過率の低下を防止できる観点から、画素部(インク組成物の硬化物)の全質量を基準として、1~5質量%であることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた材料は全て、窒素ガスを導入して溶存酸素を窒素ガスに置換したものを用いた。酸化チタンについては、混合前に、1mmHgの減圧下、4時間、175℃で加熱し、窒素ガス雰囲気下で放冷したものを用いた。実施例で用いた液状の材料は、混合前にあらかじめ、モレキュラーシーブス3Aで48時間以上脱水して用いた。
<光重合性化合物の用意>
以下に示す光重合性化合物を用意した。
・PhEM(フェノキシエチルメタクリレート、製品名:ライトエステルPO、共栄社化学株式会社製)
・LM(ラウリルメタクリレート、製品名:ライトエステルL、共栄社化学株式会社製)
・HDM(1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、製品名:ライトエステル1.6HX、共栄社化学株式会社製)
・TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート、製品名:ビスコート#295、大阪有機化学工業株式会社製)
<有機リガンド付きQD粒子(QD粉体)の用意>
[有機リガンド1の合成]
ポリエチレングリコール|average Mn350|(Sigma-Aldrich社製)をフラスコに投入した後、窒素ガス環境にて攪拌しながら、そこにポリエチレングリコール|average Mn350|と等モル量の無水コハク酸(Sigma-Aldrich社製)を添加した。フラスコの内温を80℃に昇温し、8時間攪拌することにより、淡い黄色の粘稠な油状物として下記式(A)で表される有機リガンド1を得た。
[リガンド交換によるQD粉体の作製]
Nanosys社製のInPナノ結晶分散体(InP QD in Heptane Red InP QD、QD粒子(発光性ナノ結晶粒子)濃度30%、有機リガンド:オレイン酸)に対して、2.0倍量のPGMEAと、QD粒子の量(有機リガンドの量は含まない)に対し40質量%相当分の有機リガンド1と、を添加し、80℃にて1時間攪拌することにより、リガンド交換を実施した。この溶液に対して、4倍量のヘプタンを添加することにより、QD粒子を凝集させ、遠心分離にて沈殿させた後、上澄みの傾瀉によってQD粒子を分離しした。得られたQD粒子を真空乾燥機にて乾燥させ、QD粉体1(QD粒子/有機リガンド=75質量%/25質量%)を得た。
<光散乱性粒子分散体の用意>
窒素ガスで満たした容器内で、酸化チタン(製品名:CR-60-2、石原産業株式会社製、平均粒子径(体積平均径):210nm)を5.23gと、高分子分散剤(アジスパーPB-821、味の素ファインテクノ株式会社製)を0.27gと、HDMを4.5gと、を混合した後、得られた混合物にジルコニアビーズ(直径:1.25mm)を加え、ペイントコンディショナーを用いて2時間振とうさせることで混合物を分散処理し、ポリエステルメッシュフィルターにてジルコニアビーズを除去することで光散乱性粒子分散体を得た。
<インク組成物の調製>
(インク組成物No.1)
QD粉体1を1.75gと、光散乱性粒子分散体を0.29gと、光重合開始剤(フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、IGM resin社製、製品名:Omnirad TPO)を0.15gと、光重合性化合物の混合物(PhEM:LM:HDM=47:21:32(質量比))を2.78gと、Irgafos 168(トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、BASF社製、0.03g)とを配合し、グローブボックス内で、混合物を孔径1μmのフィルターでろ過することにより、変性シリコーン化合物を含有しないインク組成物(インクジェットインク)No.1を得た。インク組成物No.1において、インク組成物の不揮発分の質量100質量部に対して、発光性ナノ結晶粒子の含有量(有機リガンドの量は含まない)は26質量部であり、光散乱性粒子の含有量は3質量部であった。
(インク組成物No.2~15)
表1に示す種類の変性シリコーン化合物を用い、発光性ナノ結晶粒子、光散乱性粒子及び変性シリコーン化合物の含有量(インク組成物の不揮発分の質量100質量部に対する含有量(質量部))を表1に示すとおりに変更した以外は、インク組成物No.1と同様にして、インク組成物No.2~15を調製した。なお、光重合性化合物の質量比(PhEM:LM:HDM)は、すべてのインク組成物で同様となるように適宜調整した。
<インクジェットプロセスへの適合性の評価>
ノズルプレートに対する撥液性に基づいて、インクジェットプロセスへの適合性を評価した。具体的には、リコー社製インクジェットヘッド(MH5421F)のノズルプレートに、上記で作製した各インク組成物を接液した。5分後にノズルプレートを垂直に傾けて、ノズルプレート上のインクを滑落させた。垂直に傾けた後のノズルプレート上に残っているインクの面積に応じて、以下の基準に従って、初期のノズルプレートに対する撥液性を評価した。
A(非常に良好):インクの面積が20%未満である
B(良好):インクの面積が20%以上50%未満である
C(不良):インクの面積が50%以上である
また、インクをノズルプレートに接液した状態で、40℃で1週間静置した後、上記と同様にプレートを垂直にしてインクを滑落させた。このときのノズルプレート上に残っているインクの面積に応じて、上記と同じ基準に従って、静置後のノズルプレートに対する撥液性を評価した。
<光学特性の評価>
ガラス基板上に、各インク組成物をスピンコーターにて大気中で塗布し、膜厚12μmの塗布膜を得た。塗布膜を窒素雰囲気下、主波長395nmのLEDランプを用いたUV照射装置で積算光量10000mJ/cm2になるようにUVを照射して硬化させ、ガラス基板上にインク組成物の硬化物からなる層(光変換層)を形成した。これにより、評価用試料(光変換フィルター)を得た。
続いて、面発光光源としてシーシーエス(株)社製の青色LED(ピーク発光波長:450nm)を用い、この光源上にガラス基板側を下側にして光変換フィルターを設置した。大塚電子(株)製の放射分光光度計(商品名「MCPD-9800」)に積分球を接続し、青色LED上に設置した光変換フィルター上に積分球を近接させた。この状態で青色LEDを点灯させ、観測される青色光(380~500nmの波長域)の強度Isを測定した。また、ガラス基板のみを設置した際の青色光の強度I0も測定した。光学濃度(OD)は、以下の式で表され、光変換フィルターが吸収する青色光の程度を表している。ODが大きいことは光変換フィルターが青色光をよく吸収する、すなわち漏れ光が少ないことを示す。
OD=-log(Is/I0)
測定された光学濃度(OD)の値に応じて、表1のNo.4のODを10としたときの相対値にて、以下の基準で光学特性を評価した。
A(非常に良好):ODが10以上である
B(良好):ODが7以上10未満である
C(不良):ODが7未満である
<光学特性の再現性の評価>
マイクロジェット社インクジェット印刷装置(DevicePrinter-NM1)に、コニカミノルタ社製インクジェットヘッド(KM1024i)を搭載し、上表に示した各インクを充填したのち、コーニング社製ガラス基板(イーグルXG)に、厚さ10μmとなるようにインクジェット印刷を行った。この印刷の再現性を評価するために、各インクそれぞれについて、5回印刷を実施した。続いて、主波長395nmのLEDランプを用いたUV照射装置で積算光量1500mJ/cm2になるようにUVを照射して硬化させて、ガラス基板上にインク組成物の硬化物からなる層(光変換層)を形成した。
上述したODの測定方法により、各インクの5回(5枚)の印刷物を用いて、光学特性のバラつきを以下の基準で評価した。
A(非常に良好):光学特性(OD)のバラつきが3%未満である
B(良好):光学特性(OD)のバラつきが3%以上10%未満である
C(不良):光学特性(OD)のバラつきが10%以上である
表1中、変性シリコーン化合物の種類は、以下のとおりである(粘度は25℃における粘度を表す)。
KF 351A:ポリエーテル変性、65mPa・s(信越化学工業(株))
BYK 307:ポリエーテル変性、1490mPa・s(ビックケミー・ジャパン(株))
BYK 378:ポリエーテル変性、528mPa・s(ビックケミー・ジャパン(株))
BYK UV3510:ポリエーテル変性、618mPa・s(ビックケミー・ジャパン(株))
SAG 005:ポリエーテル変性、203mPa・s(日信化学工業(株))
TEGO GLIDE 100:ポリエーテル変性、約1200mPa・s(エボニックジャパン)
TEGO GLIDE 410:ポリエーテル変性、約2000mPa・s(エボニックジャパン)
TEGO GLIDE 450:ポリエーテル変性、約250mPa・s(エボニックジャパン)