以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<インク組成物>
一実施形態のインク組成物は、発光性ナノ結晶粒子と、溶剤と、を含有する。このインク組成物において、溶剤は、沸点が150℃以上であるアセテート化合物を含む。一実施形態のインク組成物は、例えば、フォトリソグラフィ方式、インクジェット方式等の方法によりカラーフィルタの画素部を形成するために用いられる、カラーフィルタ用インク組成物である。
上記構成を備えるインク組成物は、溶剤として、沸点が150℃以上であるアセテート化合物を含むため、発光性ナノ結晶粒子と溶剤との間の親和性に優れ、発光性ナノ結晶粒子が優れた発光特性を発揮し得る。例えば、本実施形態の発光性ナノ結晶粒子分散体(例えば表面に有機リガンドを有する発光性ナノ結晶粒子分散体)を本実施形態の溶剤で100倍希釈したときの発光強度は、700(arb.u)以上である。そのため、このインク組成物を用いることで、優れた光学特性を有する画素部が得られやすい。本実施形態の発光性ナノ結晶粒子分散体(例えば表面に有機リガンドを有する発光性ナノ結晶粒子分散体)を本実施形態の溶剤で100倍希釈したときの発光強度は、好ましくは700(arb.u)以上であり、より好ましくは1000(arb.u)以上である。発光強度は実施例に記載の方法により測定することができる。
ところで、従来のインク組成物を用いてインクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する場合、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子の凝集等によりインクジェットノズルからの吐出安定性が低下する場合がある。しかし、インクジェット法により吐出を安定的に行えない場合、形成された画素部において組成のばらつき等が生じることがあり、その結果、例えば、画素部において漏れ光(光源からの光が発光性ナノ結晶粒子に吸収されずに画素部から漏れ出る光)が生じることで画素部の色再現性が低下する等の不具合が生じる。そのため、インクジェット法によりカラーフィルタ画素部を形成する場合、インク組成物には優れた吐出安定性が求められる。一方、上記構成を備えるインク組成物では、発光性ナノ結晶粒子が良好に分散しやすく、また、連続吐出時に溶剤が揮発することにより生じる目詰まり等の不具合が抑制されることから、優れた吐出安定性が得られやすい。そのため、上記インク組成物によれば、インクジェット方式により画素部を形成する場合であっても、優れた光学特性が得られやすい。すなわち、上記インク組成物は、インクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する用途に好適に用いられる。
以下では、発光性ナノ結晶粒子と、溶剤と、光重合性成分(光重合性化合物を含む光重合性成分)及び熱硬化性成分(熱硬化性樹脂を含む熱硬化性成分)のうちの少なくとも一方と、光散乱性粒子と、高分子分散剤と、を含有する、インクジェット方式に用いられるカラーフィルタ用インク組成物(カラーフィルタ用インクジェットインク)を例に挙げて説明する。
(発光性ナノ結晶粒子)
発光性ナノ結晶粒子は、励起光を吸収して蛍光又は燐光を発光するナノサイズの結晶体であり、例えば、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。
発光性ナノ結晶粒子は、例えば、所定の波長の光を吸収することにより、吸収した波長とは異なる波長の光(蛍光又は燐光)を発することができる。発光性ナノ結晶粒子は、605〜665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(赤色光)を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子であってよく、500〜560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(緑色光)を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子であってよく、420〜480nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(青色光)を発する、青色発光性のナノ結晶粒子であってもよい。本実施形態では、インク組成物がこれらの発光性ナノ結晶粒子のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。また、発光性ナノ結晶粒子が吸収する光は、例えば、400nm以上500nm未満の範囲の波長の光(青色光)、又は、200nm〜400nmの範囲の波長の光(紫外光)であってよい。なお、発光性ナノ結晶粒子の発光ピーク波長は、例えば、紫外可視分光光度計を用いて測定される蛍光スペクトル又は燐光スペクトルにおいて確認することできる。
赤色発光性のナノ結晶粒子は、665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下又は630nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上又は605nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。これらの上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
緑色発光性のナノ結晶粒子は、560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下又は530nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上又は500nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
青色発光性のナノ結晶粒子は、480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下又は450nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上又は420nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子が発する光の波長(発光色)は、井戸型ポテンシャルモデルのシュレディンガー波動方程式の解によれば、発光性ナノ結晶粒子のサイズ(例えば粒子径)に依存するが、発光性ナノ結晶粒子が有するエネルギーギャップにも依存する。そのため、使用する発光性ナノ結晶粒子の構成材料及びサイズを変更することにより、発光色を選択することができる。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料を含む、発光性ナノ結晶粒子(発光性半導体ナノ結晶粒子)であってよい。発光性半導体ナノ結晶粒子としては、量子ドット(以下「QD」ともいう)、量子ロッド等が挙げられる。これらの中でも、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、量子ドットが好ましい。
発光性半導体ナノ結晶粒子は、第一の半導体材料を含むコアのみからなっていてよく、第一の半導体材料を含むコアと、第一の半導体材料とは異なる第二の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェルと、を有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアのみからなる構造(コア構造)であってよく、コアとシェルからなる構造(コア/シェル構造)であってもよい。また、発光性半導体ナノ結晶粒子は、第二の半導体材料を含むシェル(第一のシェル)の他に、第一及び第二の半導体材料とは異なる第三の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェル(第二のシェル)を更に有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアと第一のシェルと第二のシェルとからなる構造(コア/シェル/シェル構造)であってもよい。コア及びシェルのそれぞれは、2種以上の半導体材料を含む混晶(例えば、CdSe+CdS、CIS+ZnS等)であってよい。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料として、II−VI族半導体、III−V族半導体、I−III−VI族半導体、IV族半導体及びI−II−IV−VI族半導体からなる群より選択される少なくとも1種の半導体材料を含むことが好ましい。
具体的な半導体材料としては、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe;GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb;SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe;Si、Ge、SiC、SiGe、AgInSe2、CuGaSe2、CuInS2、CuGaS2、CuInSe2、AgInS2、AgGaSe2、AgGaS2、C、Si及びGeが挙げられる。発光性半導体ナノ結晶粒子は、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、InP、InAs、InSb、GaP、GaAs、GaSb、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、Si、C、Ge及びCu2ZnSnS4からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
赤色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がCdSであり内側のコア部がCdSeであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がCdSであり内側のコア部がZnSeであるナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、InPのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSとZnSeSとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、CdSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、ZnSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。
緑色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSとZnSeSとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。
青色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、ZnSeのナノ結晶粒子、ZnSのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSeであり内側のコア部がZnSであるナノ結晶粒子、CdSのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSとZnSeSとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。半導体ナノ結晶粒子は、同一の化学組成で、それ自体の平均粒子径を変えることにより、当該粒子から発光させるべき色を赤色にも緑色にも変えることができる。また、半導体ナノ結晶粒子は、それ自体として、人体等に対する悪影響が極力低いものを用いることが好ましい。カドミウム、セレン等を含有する半導体ナノ結晶粒子を発光性ナノ結晶粒子として用いる場合は、上記元素(カドミウム、セレン等)が極力含まれない半導体ナノ結晶粒子を選択して単独で用いるか、上記元素が極力少なくなるようにその他の発光性ナノ結晶粒子と組み合わせて用いることが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の形状は特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の形状は、例えば、球状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等であってもよい。しかしながら、発光性ナノ結晶粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性及び流動性をより高められる点で好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、所望の波長の発光が得られやすい観点、並びに、分散性及び保存安定性に優れる観点から、1nm以上であってよく、1.5nm以上であってもよく、2nm以上であってもよい。所望の発光波長が得られやすい観点から、40nm以下であってよく、30nm以下であってもよく、20nm以下であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
発光性ナノ結晶粒子は、分散安定性の観点から、その表面に有機リガンドを有することが好ましい。有機リガンドは、例えば、発光性ナノ結晶粒子の表面に配位結合されていてよい。換言すれば、発光性ナノ結晶粒子の表面は、有機リガンドによってパッシベーションされていてよい。また、インク組成物が後述する高分子分散剤を更に含有する場合には、発光性ナノ結晶粒子は、その表面に高分子分散剤を有していてもよい。本実施形態では、例えば、上述の有機リガンドを有する発光性ナノ結晶粒子から有機リガンドを除去し、有機リガンドと高分子分散剤とを交換することで発光性ナノ結晶粒子の表面に高分子分散剤を結合させてよい。ただし、インクジェットインクにした際の分散安定性の観点では、有機リガンドが配位したままの発光性ナノ結晶粒子に対して高分子分散剤が配合されることが好ましい。
有機リガンドとしては、樹脂及び溶剤との親和性を確保するための官能基(以下、単に「親和性基」ともいう。)と、発光性ナノ結晶への吸着性を確保するための官能基(以下、単に、「吸着基」ともいう。)と、を有する化合物であることが好ましい。親和性基としては、脂肪族炭化水素基が好ましい。当該脂肪族炭化水素基は、直鎖型であってもよく分岐構造を有していてもよい。また、脂肪族炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよく、不飽和結合を有していなくてもよい。吸着基としては、水素基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、アルコキシシリル等が挙げられる。有機リガンドとしては、例えば、TOP(トリオクチルホスフィン)、TOPO(トリオクチルホスフィンオキサイド)、オレイン酸、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、及びオクチルホスフィン酸(OPA)が挙げられる。
有機リガンドは、発光性ナノ結晶粒子(有機リガンドで修飾された発光性ナノ結晶粒子)と溶剤との間の親和性がより良好となる観点から、親和性基として、好ましくはエチレンオキシド鎖及び/又はプロピレンオキシド鎖を有する脂肪族炭化水素を有する。有機リガンドがエチレンオキシド鎖及び/又はプロピレンオキシド鎖を有する脂肪族炭化水素を有することで発光性ナノ結晶粒子と溶剤との間の親和性がより向上する原因(すなわち、溶剤中での発光性ナノ結晶粒子の発光強度がより向上する原因)は明らかではないが、溶剤であるアセテート化合物による有機リガンドの脱離又は置換(リガンド交換)が起こり難く、発光性ナノ結晶粒子が良好に分散した状態を維持しうることが原因の一つとして考えられる。また、有機リガンドがエチレンオキシド鎖及び/又はプロピレンオキシド鎖を有する脂肪族炭化水素を有する場合、エーテル結合を有するアセテート化合物との親和性がより良好となる傾向がある。
また、有機リガンドは、発光性ナノ結晶粒子(有機リガンドで修飾された発光性ナノ結晶粒子)と溶剤との間の親和性がより良好となる観点、及び、発光性ナノ結晶粒子の分散性が良好となり、より優れた吐出安定性が得られる観点から、下記式(2)で表される有機リガンドであってもよい。下記式(2)で表される有機リガンドは、特に、アセテート化合物が2以上のアセチル基を有する場合に、発光性ナノ結晶粒子と溶剤との間の親和性を向上させる傾向がある。
[式(2)中、pは0〜50の整数を示し、qは0〜50の整数を示す。]
式(2)で表される有機リガンドにおいて、p及びqのうち少なくとも一方が1以上であることが好ましく、p及びqの両方が1以上であることがより好ましい。
発光性ナノ結晶粒子としては、有機溶剤、光重合性化合物等の中にコロイド形態で分散しているものを用いることができる。有機溶剤中で分散状態にある発光性ナノ結晶粒子の表面は、上述の有機リガンドによってパッシベーションされていることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、インク組成物に含有される溶剤の他、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、トルエン、オクタン、クロロベンゼン、テトラリン、ジフェニルエーテル等を用いることができる。溶剤は、これらの混合物であってよい。
発光性ナノ結晶粒子としては、市販品を用いることができる。発光性ナノ結晶粒子の市販品としては、例えば、NN−ラボズ社の、インジウムリン/硫化亜鉛、D−ドット、CuInS/ZnS、アルドリッチ社の、InP/ZnS等が挙げられる。
発光性ナノ結晶粒子の含有量は、漏れ光の低減効果に優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、吐出安定性により優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよく、55質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。発光性ナノ結晶粒子が有機リガンドで修飾されている場合には、発光性ナノ結晶粒子及び該発光性ナノ結晶粒子を修飾する有機リガンドの合計量が上記範囲であってよい。なお、本明細書中、「インク組成物の不揮発分の質量」とは、インク組成物の全質量から溶剤の質量を除いた質量を指す。
(溶剤)
溶剤は、沸点が150℃以上のアセテート化合物(以下、「第1のアセテート化合物」ともいう。)を含む。第1のアセテート化合物は、例えば、下記式(1)で表される化合物(ただし、沸点が150℃以下の化合物は除く。)であり、1以上のアセトキシ基を有する化合物である。第1のアセテート化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、前述の有機リガンド、並びに、後述する光重合性成分、熱硬化性成分及び高分子分散剤は、溶剤には含まれない。
[式(1)中、Xは、分子量50以上の二価の有機基を示し、Yは、水素原子、メチル基、又はアセチル基を示す。]
式(1)中のXの分子量(式(1)で表される化合物1モルにおけるXの質量)は、40以上又は70以上であってもよく、200以下であってもよい。Xは、発光性ナノ結晶粒子と溶剤との間の親和性がより向上する観点から、好ましくは、アルキレン基、オキシアルキレン基又はこれらの基を組み合わせて構成される基であり、より好ましくは、式:−(R
1−O)n−(R
2)m−(式中、R
1及びR
2はアルキレン基を示し、n及びmは0以上の整数を示し、n+m≧1である。)で表される基(ただし、分子量は50以上)である。すなわち、第1のアセテート化合物は、好ましくは下記式(1A)で表される化合物であり、より好ましくは下記式(1B)で表される化合物である。
[式(1A)中、Xaは、分子量50以上の、アルキレン基、オキシアルキレン基又はこれらの基を組み合わせて構成される基であり、Yは、水素原子、メチル基又はアセチル基を示す。Xa中、アルキレン基及びオキシアルキレン基は1つであっても複数であってもよい。]
[式(1B)中、R
1及びR
2はアルキレン基を示し、Yは、水素原子、メチル基又はアセチル基を示し、n及びmは、それぞれ独立して、0以上の整数を示し、n+m≧1である。ただし、(R
1−O)n−(R
2)mの分子量は50以上である。]
式(1A)及び式(1B)において、アルキレン基及びオキシアルキレン基の炭素数は、2以上であってよく、10以下であってよい。式(1B)において、R1及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよい。R1及びR2が複数ある場合、複数のR1は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR2は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、nは3以下であってよく、mは5以下であってよい。
第1のアセテート化合物におけるアセチル基の数は、発光性ナノ結晶粒子との親和性がより向上する観点では、好ましくは1以上である。アセチル基の数は2以上であってもよい。すなわち、アセテート化合物は、上記式(1B)で表される化合物のうち、Yがアセチル基であることが好ましい。
第1のアセテート化合物におけるアセトキシ基の数は、発光性ナノ結晶粒子との親和性がより向上する観点では、好ましくは1以上である。アセトキシ基の数は2以上であってもよい。すなわち、アセテート化合物は、上記式(1B)で表される化合物のうち、Yがアセチル基であり、mが0である化合物が好ましい。
第1のアセテート化合物は、発光性ナノ結晶粒子との親和性がより向上する観点では、好ましくは分子内にエーテル結合を有する化合物であり、例えば、分子内に1以上のオキシアルキレン基を有する化合物である。このような観点から、アセテート化合物は、上記式(1B)で表される化合物のうち、nが2以上であるか、又は、n及びmが1以上である化合物が好ましい。一方、高沸点化の観点では、第1のアセテート化合物はエーテル結合を有しなくてもよい。
第1のアセテート化合物の具体例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のモノアセテート化合物、1,4−ブタンジオールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のジアセテート化合物、グリセリルトリアセテート等のトリアセテート化合物などが挙げられる。
第1のアセテート化合物の沸点は、インクジェットインクの連続吐出安定性の観点から、好ましくは180℃以上である。また、画素部の形成時には、インク組成物の硬化前にインク組成物から溶剤を除去する必要があるため、除去しやすい観点から、第1のアセテート化合物の沸点は、好ましくは300℃以下である。
溶剤中の第1のアセテート化合物の含有量は、発光性ナノ結晶粒子の発光特性により優れる観点及び吐出安定性がより向上する観点から、溶剤の全質量を基準として、50質量%以上であってよく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。第1のアセテート化合物の含有量は、溶剤の全質量を基準として、100質量%以下であってよい。
インク組成物中の第1のアセテート化合物の含有量は、発光性ナノ結晶粒子の発光特性により優れる観点及び吐出安定性がより向上する観点から、インク組成物の全質量を基準として、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよい。第1のアセテート化合物の含有量は、発光性ナノ結晶粒子の発光特性により優れる観点及び吐出安定性がより向上する観点から、インク組成物の全質量を基準として、90質量%以下であってよく、85質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。
溶剤は、沸点が150℃未満のアセテート化合物(以下、「第2のアセテート化合物」ともいう。)を更に含んでいてもよい。第2のアセテート化合物としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
溶剤中の第2のアセテート化合物の含有量は、発光性ナノ結晶粒子の発光特性により優れる観点及び吐出安定性がより向上する観点から、溶剤の全質量を基準として、50質量%以下であってよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。第2のアセテート化合物の含有量は、0質量%であってもよい。すなわち、インク組成物は第2のアセテート化合物を含んでいなくてもよい。
第1のアセテート化合物の含有量に対する第2のアセテート化合物の含有量の質量比(第2のアセテート化合物の含有量/第1のアセテート化合物の含有量)は、発光性ナノ結晶粒子の発光特性により優れる観点及び吐出安定性がより向上する観点から、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.25以下であり、更に好ましくは0.1以下である。
溶剤は第1及び第2のアセテート化合物以外の他の溶剤成分を含んでいてもよい。他の溶剤成分としては、例えば、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチルなどが挙げられる。他の溶剤の沸点は、インクジェットインクの連続吐出安定性の観点から、好ましくは180℃以上であり、溶剤を除去しやすい観点から、好ましくは300℃以下である。
インク組成物中の溶剤の含有量は、インク組成物を均一に調製する観点、及び、インク組成物の流動性等を高めて、ムラの少ない画素部を形成する観点から、インク組成物の全質量を基準として、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよい。上記効果は、熱硬化性樹脂を用いて光重合性化合物を用いない場合に顕著である。溶剤の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、90質量%以下であってよく、85質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。
(光重合性成分)
[光重合性化合物]
本実施形態の光重合性化合物は、光の照射によって重合する、光ラジカル重合性化合物又は光カチオン重合性化合物であり、光重合性のモノマー又はオリゴマーであってよい。これらは、光重合開始剤と共に用いられる。光ラジカル重合性化合物は光ラジカル重合開始剤と共に用いられ、光カチオン重合性化合物は光カチオン重合開始剤と共に用いられる。言い換えれば、インク組成物は、光重合性化合物及び光重合開始剤を含む光重合性成分を含有していてよく、光ラジカル重合性化合物及び光ラジカル重合開始剤を含む光ラジカル重合性成分を含有していてもよく、光カチオン重合性化合物及び光カチオン重合開始剤を含む光カチオン重合性成分を含有していてもよい。光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物とを併用してもよく、光ラジカル重合性と光カチオン重合性を具備した化合物を用いてもよく、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤とを併用してもよい。光重合性化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
光重合性化合物を用いる場合は、光重合性化合物中に無溶剤で光散乱性粒子及び発光性ナノ結晶粒子を分散させることが可能となるため、画素部を形成する際に溶剤を乾燥により除去する工程が不要となる観点から、溶剤を用いないことがある。一方、本実施形態では、敢えて溶剤として沸点が150℃以上のアセテート化合物を用いることにより、インクジェットに適した粘度を確保しつつ、発光性ナノ結晶粒子の含有量を高められることからインク塗膜(画素部)の発光特性を向上させることができる。
光ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリロイル基を一つ有する単官能(メタ)アクリレートであってよく、(メタ)アクリロイル基を複数有する多官能(メタ)アクリレートであってもよい。インクにした際の流動性に優れる観点、吐出安定性により優れる観点及びカラーフィルタ製造時における硬化収縮に起因する平滑性の低下を抑制し得る観点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて用いることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリロイル」との表現についても同様である。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、こはく酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、N−[2−(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N−[2−(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレート、5官能(メタ)アクリレート、6官能(メタ)アクリレート等であってよく、例えば、ジオール化合物の2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、トリオール化合物の2つ又は3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ又はトリ(メタ)アクリレート等であってよい。
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレ-ト、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
3官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
4官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
5官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
6官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトールの複数の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたポリ(メタ)アクリレートであってもよい。
(メタ)アクリレート化合物は、リン酸基を有する、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸(メタ)アクリレート等であってもよい。
光カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族系エポキシ化合物、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロへキサン、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等の脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。
エポキシ化合物として市販品を使用することも可能である。エポキシ化合物の市販品としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製の「セロキサイド2000」、「セロキサイド3000」及びセロキサイド4000」等を用いることができる。
カチオン重合性のオキセタン化合物としては、2―エチルヘキシルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ノルマルブチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ベンジルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシブチル−3−メチルオキセタン等が挙げられる。
オキセタン化合物として市販品を使用することも可能である。オキセタン化合物の市販品としては、例えば、東亜合成(株)製のアロンオキセタンシリーズ(「OXT−101」、「OXT−212」、「OXT−121」、「OXT−221」等);ダイセル化学工業(株)製の「セロキサイド2021」、「セロキサイド2021A」、「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2080」、「セロキサイド2081」、「セロキサイド2083」、「セロキサイド2085」、「エポリードGT300」、「エポリードGT301」、「エポリードGT302」、「エポリードGT400」、「エポリードGT401」及び「エポリードGT403」;ダウ・ケミカル日本(株)製の「サイラキュアUVR−6105」、「サイラキュアUVR−6107」、「サイラキュアUVR−6110」、「サイラキュアUVR−6128」、「ERL4289」及び「ERL4299」などを用いることができる。また、公知のオキセタン化合物(例えば、特開2009−40830等に記載のオキセタン化合物)を使用することもできる。
ビニルエーテル化合物としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルモノエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
また、本実施形態における光重合性化合物として、特開2013−182215号公報の段落0042〜0049に記載の光重合性化合物を用いることもできる。
本実施形態のインク組成物において、硬化可能成分を、光重合性化合物のみ又はそれを主成分として構成する場合には、上記したような光重合性化合物としては、重合性官能基を一分子中に2以上有する2官能以上の多官能の光重合性化合物を必須成分として用いることが、硬化物の耐久性(強度、耐熱性等)をより高めることができることからより好ましい。
光重合性化合物は、信頼性に優れるカラーフィルタ画素部が得られやすい観点から、アルカリ不溶性であってよい。本明細書中、光重合性化合物がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃における光重合性化合物の溶解量が、光重合性化合物の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。光重合性化合物の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
光重合性化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。光重合性化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、及び、より優れた光学特性(例えば漏れ光の低減効果)が得られる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、90質量%以下であってよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
光重合性化合物は、画素部(インク組成物の硬化物)の安定性に優れる(例えば、経時劣化を抑制でき、高温保存安定性及び湿熱保存安定性に優れる)観点から、架橋性基を有していてもよい。架橋性基は、熱又は活性エネルギー線(例えば、紫外線)により他の架橋性基と反応する官能基であり、例えば、エポキシ基、オキセタン基、ビニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、ビニルエーテル基等が挙げられる。
[光ラジカル重合開始剤]
光ラジカル重合開始剤としては、分子開裂型又は水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤が好適である。
分子開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシド等が好適に用いられる。これら以外の分子開裂型の光ラジカル重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンを併用してもよい。
水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等が挙げられる。分子開裂型の光ラジカル重合開始剤と水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤とを併用してもよい。
[光カチオン重合開始剤]
光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート等のポリアリールスルフォニウム塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、P−ノニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のポリアリールヨードニウム塩などを挙げることができる。
光カチオン重合開始剤として市販品を用いることもできる。市販品としては、サンアプロ社製の「CPI−100P」等のスルホニウム塩系光カチオン重合開始剤、BASF社製の「Lucirin TPO」等のアシルホスフィンオキサイド化合物、BASF社製の「Irgacure 907」、「Irgacure 819」、「Irgacure 379EG」「、Irgacure 184」及び「Irgacure PAG290」などが挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、インク組成物の硬化性の観点から、光重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上であってよく、0.5質量部以上であってもよく、1質量部以上であってもよい。光重合開始剤の含有量は、画素部(インク組成物の硬化物)の経時安定性の観点から、光重合性化合物100質量部に対して、40質量部以下であってよく、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。
(熱硬化性成分)
[熱硬化性樹脂]
本実施形態において、熱硬化性樹脂とは、硬化物中においてバインダーとして機能する、熱により架橋し硬化する樹脂である。熱硬化性樹脂は、硬化性基を有する。硬化性基としては、エポキシ基、オキセタン基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、メチロール基等が挙げられ、インク組成物の硬化物の耐熱性及び保存安定性に優れる観点、及び、遮光部(例えばブラックマトリックス)及び基材への密着性に優れる観点から、エポキシ基が好ましい。熱硬化性樹脂は、1種の硬化性基を有していてもよく、2種以上の硬化性基を有していてもよい。
なお、熱硬化性樹脂の中には、光ラジカル重合性を有する(光ラジカル重合開始剤と共に用いられた場合に光の照射によって重合する)樹脂、及び、光カチオン重合性を有する(光カチオン重合開始剤と共に用いられた場合に光の照射によって重合する)樹脂が含まれる。インク組成物が、光ラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂及び光ラジカル重合開始剤を含有する場合、その光ラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂は光ラジカル重合性化合物(光重合性化合物)に分類されるものとする。インク組成物が、光カチオン重合性を有する熱硬化性樹脂及び光カチオン重合開始剤を含有する場合、その光カチオン重合性を有する熱硬化性樹脂は光カチオン重合性化合物(光重合性化合物)に分類されるものとする。
熱硬化性樹脂は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、熱硬化性樹脂は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
熱硬化性樹脂としては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物が用いられ、通常、硬化剤と組み合わせて用いられる。熱硬化性樹脂を用いる場合、熱硬化反応を促進できる硬化触媒を更に添加してもよい。言い換えれば、インク組成物は、熱硬化性樹脂、並びに、必要に応じて用いられる硬化剤及び硬化触媒を含む熱硬化性成分を含有していてよい。また、これらに加えて、それ自体は重合反応性のない重合体を更に用いてもよい。
1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物として、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂(以下、「多官能エポキシ樹脂」ともいう。)を用いてよい。「エポキシ樹脂」には、モノマー性エポキシ樹脂及びポリマー性エポキシ樹脂の両方が含まれる。多官能性エポキシ樹脂が1分子中に有するエポキシ基の数は、好ましくは2〜50個であり、より好ましくは2〜20個である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等であってよい。エポキシ樹脂としては、カルボン酸により硬化しうる公知の多価エポキシ樹脂を挙げることができる。このようなエポキシ樹脂は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
エポキシ基を有する熱硬化性樹脂(多官能エポキシ樹脂を含む)としては、オキシラン環構造を有するモノマーの重合体、オキシラン環構造を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。具体的な多官能エポキシ樹脂としては、ポリグリシジルメタクリレート、メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ベンジルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、n−ブチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート等が挙げられる。また、本実施形態の熱硬化性樹脂として、特開2014−56248号公報の段落0044〜0066の記載の化合物を用いることもできる。
また、多官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを使用できる。
より具体的には、商品名「エピコート828」(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「YDF−175S」(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名「YDB−715」(東都化成社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON EXA1514」(DIC(株)製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、商品名「YDC−1312」(東都化成社製)などのハイドロキノン型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON EXA4032」、「HP−4770」、「HP−4700」、「HP−5000」(DIC(株)製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、商品名「エピコートYX4000H」(ジャパンエポキシレジン社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、商品名「エピコート157S70」(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、商品名「エピコート154」(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名「YDPN−638」(東都化成社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名「YDCN−701」(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON HP−7200」、「HP−7200H」(DIC(株)製)などのジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、商品名「エピコート1032H60」(ジャパンエポキシレジン社製)などのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、商品名「VG3101M80」(三井化学社製)などの3官能型エポキシ樹脂、商品名「エピコート1031S」(ジャパンエポキシレジン社製)などのテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、商品名「デナコールEX−411」(ナガセ化成工業社製)などの4官能型エポキシ樹脂、商品名「ST−3000」(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「エピコート190P」(ジャパンエポキシレジン社製)などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名「YH−434」(東都化成社製)などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、商品名「YDG−414」(東都化成社製)などのグリオキザール型エポキシ樹脂、商品名「エポリードGT−401」(ダイセル化学社製)などの脂環式多官能エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)などの複素環型エポキシ樹脂などを例示することができる。また、必要であれば、エポキシ反応性希釈剤として、商品名「ネオトートE」(東都化成社製)などを混合することができる。
また、多官能エポキシ樹脂としては、DIC(株)製の「ファインディックA−247S」、「ファインディックA−254」、「ファインディックA−253」、「ファインディックA−229−30A」、「ファインディックA−261」、「ファインディックA−249」、「ファインディックA−266」、「ファインディックA−241」「ファインディックM−8020」、「エピクロンN−740」、「エピクロンN−770」、「エピクロンN−865」(商品名)等を用いることができる。
熱硬化性樹脂として、比較的分子量が小さい多官能エポキシ樹脂を用いると、インク組成物(インクジェットインク)中にエポキシ基が補充されてエポキシの反応点濃度が高濃度となり、架橋密度を高めることができる。
多官能エポキシ樹脂の中でも、架橋密度を高める観点から、一分子中にエポキシ基を4個以上有するエポキシ樹脂(4官能以上の多官能エポキシ樹脂)を用いることが好ましい。特に、インクジェット方式における吐出ヘッドからの吐出安定性を向上させるために重量平均分子量が10000以下の熱硬化性樹脂を用いる場合には、画素部(インク組成物の硬化物)の強度及び硬度が低下し易いため、架橋密度を充分に高める観点から、4官能以上の多官能エポキシ樹脂をインク組成物(インクジェットインク)に配合することが好ましい。
熱硬化性樹脂は、信頼性に優れるカラーフィルタ画素部が得られやすい観点から、アルカリ不溶性であってよい。熱硬化性樹脂がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃における熱硬化性樹脂の溶解量が、熱硬化性樹脂の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。熱硬化性樹脂の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、750以上であってよく、1000以上であってもよく、2000以上であってもよい。インクジェットインクとしての適正な粘度とする観点から、500000以下であってよく、300000以下であってもよく、200000以下であってもよい。ただし、架橋後の分子量に関してはこの限りでない。なお、本明細書中、重量平均分子量とは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、Gel Permeation Chromatography)によって測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
熱硬化性樹脂の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、10質量%以上であってよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。熱硬化性樹脂の含有量は、インクジェットインクの粘度が高くなりすぎず、画素部の厚さが光変換機能に対して厚くなりすぎない観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、90質量%以下であってよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
[硬化剤及び硬化触媒]
熱硬化性樹脂を硬化させるために用いられる硬化剤及び硬化触媒としては、例えば、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、フェノールノボラック樹脂、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルベンジルアミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、トリフェニルホスフィン、3−フェニル−1,1−ジメチルウレア等が挙げられる。
本実施形態において、インク組成物は、光重合性成分(光重合性化合物を含む光重合性成分)及び熱硬化性成分(熱硬化性樹脂を含む熱硬化性成分)のうちの少なくとも一方を含有していればよく、光重合性成分及び熱硬化性成分の両方を含有していてもよい。インク組成物は、光重合性成分を含有する場合、熱硬化性成分を含有しなくてよい。また、インク組成物は、熱硬化性成分を含有する場合、光重合性成分を含有しなくてよい。発光性ナノ結晶粒子(例えば量子ドット)を含有するインク組成物の保存安定性、及び、画素部(インク組成物の硬化物)の耐久性(湿熱安定性等)の観点では、光重合性成分及び熱硬化性成分のうち、熱硬化性成分を用いることが好ましく、発光性ナノ結晶粒子(例えば量子ドット)を含有するインク組成物の保存安定性、及び量子ドットの加熱による劣化を受けにくい低温での硬化が可能となる観点では、光重合性成分として、光ラジカル重合性化合物を含む光重合性成分を用いることがより好ましく、硬化プロセスにおける酸素阻害を受けることなく画素部(インク組成物の硬化物)を形成できる観点では、光重合性成分として、光カチオン重合性化合物を含む光重合性成分を用いることが好ましい。
インク組成物が光重合性化合物及び熱硬化性樹脂を含む場合、光重合性化合物及び熱硬化性樹脂の含有量の合計は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、3質量%以上であってよく、5質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。また、光重合性化合物及び熱硬化性樹脂の含有量の合計は、インクジェットインクの粘度が高くなりすぎず、画素部の厚さが光変換機能に対して厚くなりすぎない観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、80質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
(光散乱性粒子)
光散乱性粒子は、例えば、光学的に不活性な無機微粒子である。光散乱性粒子は、カラーフィルタ画素部に照射された光源からの光を散乱させることができる。
光散乱性粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金等の単体金属;シリカ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物、次硝酸ビスマス等の金属塩などが挙げられる。光散乱性粒子は、漏れ光の低減効果に優れる観点から、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
光散乱性粒子の形状は、球状、フィラメント状、不定形状等であってよい。しかしながら、光散乱性粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性、流動性及び光散乱性をより高めることができ、より優れた吐出安定性を得ることができる点で好ましい。
インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、漏れ光の低減効果に優れる観点から、0.05μm以上であってよく、0.2μm以上であってもよく、0.3μm以上であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、吐出安定性により優れる観点から、1.0μm以下であってもよく、0.6μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、0.05〜1.0μm、0.05〜0.6μm、0.05〜0.4μm、0.2〜1.0μm、0.2〜0.6μm、0.2〜0.4μm、0.3〜1.0μm、0.3〜0.6μm、又は0.3〜0.4μmであってもよい。このような平均粒子径(体積平均径)が得られやすい観点から、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、50nm以上であってよく、1000nm以下であってよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。また、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、例えば透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により各粒子の粒子径を測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果に優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果に優れる観点及び吐出安定性により優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。本実施形態では、インク組成物が高分子分散剤を含むため、光散乱性粒子の含有量を上記範囲とした場合であっても光散乱性粒子を良好に分散させることができる。
発光性ナノ結晶粒子の含有量に対する光散乱性粒子の含有量の質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、漏れ光の低減効果に優れる観点から、0.1以上であってよく、0.2以上であってもよく、0.5以上であってもよい。質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、漏れ光の低減効果に優れ、インクジェット印刷時の連続吐出性により優れる観点から、5.0以下であってよく、2.0以下であってもよく、1.5以下であってもよい。なお、光散乱性粒子による漏れ光低減は、次のようなメカニズムによると考えられる。すなわち、光散乱性粒子が存在しない場合、バックライト光は画素部内をほぼ直進して通過するのみであり、発光性ナノ結晶粒子に吸収される機会が少ないと考えられる。一方、光散乱性粒子を発光性ナノ結晶粒子と同一の画素部内に存在させると、その画素部内でバックライト光が全方位に散乱され、それを発光性ナノ結晶粒子が受光することができるため、同一のバックライトを用いていても、画素部における光吸収量が増大すると考えられる。結果的に、このようなメカニズムで漏れ光を防ぐことが可能になったと考えられる。
(高分子分散剤)
本発明において、高分子分散剤は、750以上の重量平均分子量を有し、かつ、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を有する高分子化合物であり、光散乱性粒子を分散させる機能を有する。高分子分散剤は、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を介して光散乱性粒子に吸着し、高分子分散剤同士の静電反発及び/又は立体反発により、光散乱性粒子をインク組成物中に分散させる。高分子分散剤は、光散乱性粒子の表面と結合して光散乱性粒子に吸着していることが好ましいが、発光性ナノ結晶粒子の表面に結合して発光性ナノ粒子に吸着していてもよく、インク組成物中に遊離していてもよい。
ところで、従来のインク組成物を用いてインクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する場合に吐出安定性が低下する原因の一つとして、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子の凝集等が考えられる。そのため、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子を微細化すること、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子の含有量を減らすこと等により、吐出安定性を向上させることが考えられるが、この場合、漏れ光の低減効果が低下しやすく、吐出安定性と漏れ光の低減とを高次元で両立することは困難である。これに対し、高分子分散剤を更に含有するインク組成物によれば、優れた吐出安定性と漏れ光の低減とを高次元で両立することができる。このような効果が得られる理由は、明らかではないが、高分子分散剤によって、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子(特に、光散乱性粒子)の凝集が顕著に抑制されるためであると推察される。
光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基及び非イオン性官能基が挙げられる。酸性官能基は解離性のプロトンを有しており、アミン、水酸化物イオン等の塩基により中和されていてもよく、塩基性官能基は有機酸、無機酸等の酸により中和されていてもよい。
酸性官能基としては、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、硫酸基(−OSO3H)、ホスホン酸基(−PO(OH)3)、リン酸基(−OPO(OH)3)、ホスフィン酸基(−PO(OH)−)、メルカプト基(−SH)、が挙げられる。
塩基性官能基としては、一級、二級及び三級アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、並びに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ環基等が挙げられる。
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(−SO−)、スルホニル基(−SO2−)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基が挙げられる。
光散乱性粒子の分散安定性の観点、発光性ナノ結晶粒子が沈降するという副作用を起こしにくい観点、高分子分散剤の合成の容易性の観点、及び官能基の安定性の観点から、酸性官能基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基及びリン酸基が好ましく用いられ、塩基性官能基としては、アミノ基が好ましく用いられる。これらの中でも、カルボキシル基、ホスホン酸基及びアミノ基がより好ましく用いられ、最も好ましくはアミノ基が用いられる。
酸性官能基を有する高分子分散剤は酸価を有する。酸性官能基を有する高分子分散剤の酸価は、好ましくは1〜150mgKOH/gである。酸価が1mgKOH/g以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、酸価が150mgKOH/g以下であると、画素部(インク組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。
高分子分散剤の酸価は、高分子分散剤pgを、トルエンとエタノールとを体積比1:1で混合した混合溶液50mL及びフェノールフタレイン試液1mLに溶解させた試料液を準備し、0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液(水酸化カリウム7.0gを蒸留水5.0mLに溶解させ、95vol%エタノールを加えることで1000mLに調整したもの)にて試料液が淡紅色を呈するまで滴定を行う。そして次式により酸価を算出できる。
酸価=q×r×5.611/p
式中、qは滴定に要した0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液の滴定量(mL)を示し、rは滴定に要した0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液の力価を示し、pは高分子分散剤の質量(g)を示す。
塩基性官能基を有する高分子分散剤はアミン価を有する。塩基性官能基を有する高分子分散剤のアミン価は、好ましくは1〜200mgKOH/gである。アミン価が1mgKOH/g以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、アミン価が200mgKOH/g以下であると、画素部(インク組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。
高分子分散剤のアミン価は、高分子分散剤xgを、トルエンとエタノールとを体積比1:1で混合した混合溶液50ml及びブロモフェノールブルー試液1mlに溶解させた試料液を準備し、0.5mol/L塩酸にて試料液が緑色を呈するまで滴定を行う。そして、次式によりアミン価を算出できる。
アミン価=y/x×28.05
式中、yは滴定に要した0.5mol/L塩酸の滴定量(ml)を示し、xは高分子分散剤の質量(g)を示す。
高分子分散剤は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、高分子分散剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、高分子分散剤がグラフト共重合体である場合、くし形のグラフト共重合体であってよく、星形のグラフト共重合体であってもよい。高分子分散剤は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレア樹脂、アミノ樹脂、ポリエチレンイミン及びポリアリルアミン等のポリアミン、エポキシ樹脂、ポリイミドなどであってよい。
前記高分子分散剤として、市販品を使用することも可能であり、市販品としては、味の素ファインテクノ(株)製のアジスパーPBシリーズ、BYK社製のDISPERBYKシリーズ並びにBYK−シリーズ、BASF社製のEfkaシリーズ等を使用することができる。
市販品としては、例えば、ビックケミー社製の「DISPERBYK−130」、「DISPERBYK−161」、「DISPERBYK−162」、「DISPERBYK−163」、「DISPERBYK−164」、「DISPERBYK−166」、「DISPERBYK−167」、「DISPERBYK−168」、「DISPERBYK−170」、「DISPERBYK−171」、「DISPERBYK−174」、「DISPERBYK−180」、「DISPERBYK−182」、「DISPERBYK−183」、「DISPERBYK−184」、「DISPERBYK−185」、「DISPERBYK−2000」、「DISPERBYK−2001」、「DISPERBYK−2008」、「DISPERBYK−2009」、「DISPERBYK−2020」、「DISPERBYK−2022」、「DISPERBYK−2025」、「DISPERBYK−2050」、「DISPERBYK−2070」、「DISPERBYK−2096」、「DISPERBYK−2150」、「DISPERBYK−2155」、「DISPERBYK−2163」、「DISPERBYK−2164」、「BYK−LPN21116」及び「BYK−LPN6919」;BASF社製の「EFKA4010」、「EFKA4015」、「EFKA4046」、「EFKA4047」、「EFKA4061」、「EFKA4080」、「EFKA4300」、「EFKA4310」、「EFKA4320」、「EFKA4330」、「EFKA4340」、「EFKA4560」、「EFKA4585」、「EFKA5207」、「EFKA1501」、「EFKA1502」、「EFKA1503」及び「EFKA PX−4701」;ルーブリゾール社製の「ソルスパース3000」、「ソルスパース9000」、「ソルスパース13240」、「ソルスパース13650」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」、「ソルスパース20000」、「ソルスパース21000」、「ソルスパース24000」、「ソルスパース26000」、「ソルスパース27000」、「ソルスパース28000」、「ソルスパース32000」、「ソルスパース32500」、「ソルスパース32550」、「ソルスパース32600」、「ソルスパース33000」、「ソルスパース34750」、「ソルスパース35100」、「ソルスパース35200」、「ソルスパース36000」、「ソルスパース37500」、「ソルスパース38500」、「ソルスパース39000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース54000」、「ソルスパース71000」及び「ソルスパース76500」;味の素ファインテクノ(株)製の「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」、「アジスパーPB881」、「PN411」及び「PA111」;エボニック社製の「TEGO Dispers650」、「TEGO Dispers660C」、「TEGO Dispers662C」、「TEGO Dispers670」、「TEGO Dispers685」、「TEGO Dispers700」、「TEGO Dispers710」及び「TEGO Dispers760W」;楠本化成製の「ディスパロンDA―703―50」、「DA−705」及び「DA−725」などを用いることができる。
高分子分散剤としては、上記のような市販品以外にも、塩基性基を含有するカチオン性モノマー及び/又は酸性基を有するアニオン性モノマーと、疎水基を有するモノマーと、必要により他のモノマー(ノニオン性モノマー、親水基を有するモノマー等)とを共重合させて合成したものを用いることができる。カチオン性モノマー、アニオン性モノマー、疎水基を有するモノマー及び他のモノマーの詳細については、特開2004−250502号公報の段落0034〜0036に記載のモノマーを挙げることができる。
また、例えば、特開昭54−37082号公報、特開昭61−174939号公報などに記載のポリアルキレンイミンとポリエステル化合物を反応させた化合物、特開平9−169821号公報に記載のポリアリルアミンの側鎖のアミノ基をポリエステルで修飾した化合物、特開平9−171253号公報に記載のポリエステル型マクロモノマーを共重合成分とするグラフト重合体、特開昭60−166318号公報に記載のポリエステルポリオール付加ポリウレタン等が好適に挙げられる。
高分子分散剤の重量平均分子量は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、漏れ光の低減効果を向上させることができる観点から、750以上であってよく、1000以上であってもよく、2000以上であってもよく、3000以上であってもよい。高分子分散剤の重量平均分子量は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、漏れ光の低減効果を向上させることができ、また、インクジェットインクの粘度を吐出可能で安定吐出に適する粘度とする観点から、100000以下であってよく、50000以下であってもよく、30000以下であってもよい。
高分子分散剤の含有量は、光散乱性粒子の分散性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、0.5質量部以上であってよく、2質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよい。高分子分散の含有量は、画素部(インク組成物の硬化物)の湿熱安定性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、50質量部以下であってよく、30質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよい。
インク組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、発光性ナノ結晶粒子、溶剤、光重合性成分、熱硬化性成分、光散乱性粒子、高分子分散剤及び有機リガンド以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば増感剤等が挙げられる。
(増感剤)
増感剤としては、光重合性化合物及び熱硬化性樹脂と付加反応を起こさないアミン類を用いることができる。増感剤としては、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。増感剤の含有量は、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、0.001質量%以上であってよく、1質量%以下であってよい。
上述した本実施形態のインク組成物は、公知慣用のカラーフィルタの製造方法に用いるインクとして適用が可能であるが、比較的高額である発光性ナノ結晶粒子、溶剤等の材料を無駄に消費せずに、必要な箇所に必要な量を用いるだけでカラーフィルタ画素部(光変換層)を形成できる点で、フォトリソグラフィ方式用よりも、インクジェット方式用に適合するよう、適切に調製して用いることが好ましい。
インク組成物の粘度は、例えば、インクジェット印刷時の吐出安定性の観点から、2mPa・s以上であってよく、5mPa・s以上であってもよく、7mPa・s以上であってもよい。インク組成物の粘度は、20mPa・s以下であってよく、15mPa・s以下であってもよく、12mPa・s以下であってもよい。インク組成物の粘度が2mPa・s以上である場合、吐出ヘッドのインク吐出孔の先端におけるインク組成物のメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、粘度が20mPa・s以下である場合、インク吐出孔からインク組成物を円滑に吐出させることができる。インク組成物の粘度は、2〜20mPa・s、2〜15mPa・s、2〜12mPa・s、5〜20mPa・s、5〜15mPa・2〜20mPa・s、7〜15mPa・s、7〜12mPa・s、又は7〜12mPa・sであってもよい。インク組成物の粘度は、例えば、E型粘度計によって測定される。インク組成物の粘度は、例えば、光硬化成分、熱硬化性成分及び高分子分散剤の重量平均分子量、溶剤の含有量などを変更することで所望の範囲に調整することができる。
インク組成物の表面張力は、インクジェット方式に適した表面張力であることが好ましく、具体的には、20〜40mN/mの範囲であることが好ましく、25〜35mN/mであることがより好ましい。表面張力を該範囲とすることで飛行曲がりの発生を抑制することができる。なお、飛行曲がりとは、インク組成物をインク吐出孔から吐出させたとき、インク組成物の着弾位置が目標位置に対して30μm以上のずれを生じることをいう。表面張力が40mN/m以下である場合、インク吐出孔の先端におけるメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、表面張力が20mN/m以下である場合、飛行曲がりの発生を抑制できる。すなわち、着弾すべき画素部形成領域に正確に着弾されずにインク組成物の充填が不十分な画素部が生じたり、着弾すべき画素部形成領域に隣接する画素部形成領域(又は画素部)にインク組成物が着弾し、色再現性が低下したりすることがない。インク組成物の表面張力は、例えば、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤などを併用することで所望の範囲に調整することができる。
以上、カラーフィルタ用インク組成物の一実施形態について説明したが、上述した実施形態のインク組成物は、インクジェット方式の他に、例えば、フォトリソグラフィ方式で用いることもできる。この場合、インク組成物は、バインダーポリマーとしてアルカリ可溶性樹脂を含有する。
インク組成物をフォトグラフィー方式で用いる場合、まず、インク組成物を基材上に塗布し、インク組成物を乾燥させて塗布膜を形成する。このようにして得られる塗布膜は、アルカリ現像液に可溶性であり、アルカリ現像液で処理されることでパターニングされる。この際、アルカリ現像液は、現像液の廃液処理の容易さ等の観点から、水溶液であることが大半を占めるため、インク組成物の塗布膜は水溶液で処理されることとなる。一方、発光性ナノ結晶粒子(量子ドット等)を用いたインク組成物の場合、発光性ナノ結晶粒子が水に対して不安定であり、発光性(例えば蛍光性)が水分により損なわれる。このため本実施形態においては、アルカリ現像液(水溶液)で処理する必要のない、インクジェット方式が好ましい。
また、インク組成物の塗布膜に対してアルカリ現像液による処理を行わない場合でも、インク組成物がアルカリ可溶性である場合、インク組成物の塗布膜が大気中の水分を吸収しやすく、時間が経過するにつれて発光性ナノ結晶粒子(量子ドット等)の発光性(例えば蛍光性)が損なわれてゆく。この観点から、本実施形態においては、インク組成物の塗布膜はアルカリ不溶性であることが好ましい。すなわち、本実施形態のインク組成物は、アルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることが好ましい。このようなインク組成物は、光重合性化合物及び/又は熱硬化性樹脂として、アルカリ不溶性の光重合性化合物及び/又はアルカリ不溶性の熱硬化性樹脂を用いることにより得ることができる。インク組成物の塗布膜がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃におけるインク組成物の塗布膜の溶解量が、インク組成物の塗布膜の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。インク組成物の塗布膜の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。なお、インク組成物がアルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることは、インク組成物を基材上に塗布した後、80℃、3分の条件で乾燥して得られる厚さ1μmの塗布膜の、上記溶解量を測定することにより確認できる。
<インク組成物の製造方法>
次に、上述した実施形態のインク組成物の製造方法について説明する。インク組成物の製造方法は、少なくとも溶剤と発光性ナノ結晶粒子(例えば発光性ナノ結晶粒子の分散体)とを混合する工程を備えている。例えば、上述したインク組成物の構成成分を混合し、分散処理を行うことでインク組成物が得られる。
インク組成物の製造方法は、例えば、光散乱性粒子及び高分子分散剤を含有する、光散乱性粒子の分散体と、発光性ナノ結晶粒子を含有する、発光性ナノ結晶粒子の分散体と、を用意する第1の工程と、光散乱性粒子の分散体及び発光性ナノ結晶粒子の分散体を混合する第2の工程と、を備える。この方法では、光散乱性粒子の分散体が、溶剤、光重合性成分及び熱硬化性成分のうちの少なくとも一種を更に含有してよく、第2の工程において、溶剤、光重合性成分及び熱硬化性成分のうちの少なくとも一種(例えば溶剤及び熱硬化性成分を含む溶液)を更に混合してもよい。この方法によれば、光散乱性粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部における漏れ光を低減することができると共に、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。
光散乱性粒子の分散体を用意する工程では、光散乱性粒子と、高分子分散剤と、場合により、溶剤、光重合性成分及び熱硬化性成分のうちの少なくとも一種とを混合し、分散処理を行うことにより光散乱性粒子の分散体を調製してよい。混合及び分散処理は、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星撹拌機等の分散装置を用いて行ってよい。光散乱性粒子の分散性が良好となり、光散乱性粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整しやすい観点から、ビーズミル又はペイントコンディショナーを用いることが好ましい。
インク組成物の製造方法は、第2の工程の前に、発光性ナノ結晶粒子と、溶剤、光重合性成分及び熱硬化性成分のうちの少なくとも一種とを含有する、発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程を更に備えていてもよい。この場合、第2の工程では、光散乱性粒子の分散体と、発光性ナノ結晶粒子の分散体と、場合により、溶剤、光重合性成分及び熱硬化性成分のうちの少なくとも一種とを混合する。この方法によれば、発光性ナノ結晶粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部における漏れ光を低減することができると共に、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程では、光散乱性粒子の分散体を用意する工程と同様の分散装置を用いて、発光性ナノ結晶粒子と、溶剤、光重合性成分及び熱硬化性成分との混合及び分散処理を行ってよい。
本実施形態のインク組成物を、インクジェット方式用のインク組成物として用いる場合には、圧電素子を用いた機械的吐出機構による、ピエゾジェット方式のインクジェット記録装置に適用することが好ましい。ピエゾジェット方式では、吐出に当たり、インク組成物が瞬間的に高温に晒されることがなく、発光性ナノ結晶粒子の変質が起こり難く、カラーフィルタ画素部(光変換層)も期待した通りの発光特性がより容易に得られやすい。
<光変換層及びカラーフィルタ>
次に、上述した実施形態のインク組成物を用いた、光変換層及びカラーフィルタの詳細について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
図1は、一実施形態のカラーフィルタの模式断面図である。図1に示すように、カラーフィルタ100は、基材40と、基材40上に設けられた光変換層30と、を備える。光変換層30は、複数の画素部10と、遮光部20と、を備えている。
光変換層30は、画素部10として、第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとを有している。第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとは、この順に繰り返すように格子状に配列されている。遮光部20は、隣り合う画素部の間、すなわち、第1の画素部10aと第2の画素部10bとの間、第2の画素部10bと第3の画素部10cとの間、第3の画素部10cと第1の画素部10aとの間に設けられている。言い換えれば、これらの隣り合う画素部同士は、遮光部20によって離間されている。
第1の画素部10a及び第2の画素部10bは、それぞれ上述した実施形態のインク組成物の硬化物を含む。硬化物は、発光性ナノ結晶粒子と、光散乱性粒子と、硬化成分とを含有する。硬化成分は、光重合性化合物及び/又は熱硬化性樹脂の硬化物であり、具体的には、光重合性化合物の重合及び/又は熱硬化性樹脂の架橋によって得られる硬化物である。すなわち、第1の画素部10aは、第1の硬化成分13aと、第1の硬化成分13a中にそれぞれ分散された第1の発光性ナノ結晶粒子11a及び第1の光散乱性粒子12aとを含む。同様に、第2の画素部10bは、第2の硬化成分13bと、第2の硬化成分13b中にそれぞれ分散された第2の発光性ナノ結晶粒子11b及び第2の光散乱性粒子12bとを含む。第1の画素部10a及び第2の画素部10bにおいて、第1の硬化成分13aと第2の硬化成分13bとは同一でもあっても異なっていてもよく、第1の光散乱性粒子12aと第2の光散乱性粒子12bとは同一でもあっても異なっていてもよい。
第1の発光性ナノ結晶粒子11aは、420〜480nmの範囲の波長の光を吸収し605〜665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第1の画素部10aは、青色光を赤色光に変換するための赤色画素部と言い換えてよい。また、第2の発光性ナノ結晶粒子11bは、420〜480nmの範囲の波長の光を吸収し500〜560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第2の画素部10bは、青色光を緑色光に変換するための緑色画素部と言い換えてよい。
インク組成物の硬化物を含む画素部における発光性ナノ結晶粒子の含有量は、漏れ光の低減効果に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、画素部の信頼性に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよく、55質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
インク組成物の硬化物を含む画素部における光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果に優れる観点及び画素部の信頼性に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。
第3の画素部10cは、420〜480nmの範囲の波長の光に対し30%以上の透過率を有する。そのため、第3の画素部10cは、420〜480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に、青色画素部として機能する。第3の画素部10cは、例えば、上述の光重合性化合物、及び/又は、熱硬化性樹脂を含有する組成物の硬化物を含む。硬化物は、第3の硬化成分13cを含有する。第3の硬化成分13cは、光重合性化合物及び/又は熱硬化性樹脂の硬化物であり、具体的には、光重合性化合物の重合及び/又は熱硬化性樹脂の架橋によって得られる硬化物である。すなわち、第3の画素部10cは、第3の硬化成分13cを含む。第3の画素部10cが上述の硬化物を含む場合、光重合性化合物、及び/又は、熱硬化性樹脂を含有する組成物は、420〜480nmの範囲の波長の光に対する透過率が30%以上となる限りにおいて、上述のインク組成物に含有される成分のうち、光重合性化合物及び熱硬化性樹脂以外の成分を更に含有していてもよい。なお、第3の画素部10cの透過率は、顕微分光装置により測定することができる。
画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、1μm以上であってよく、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、30μm以下であってよく、20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよい。
遮光部20は、隣り合う画素部を離間して混色を防ぐ目的及び光源からの光漏れを防ぐ目的で設けられる、いわゆるブラックマトリックスである。遮光部20を構成する材料は、特に限定されず、クロム等の金属の他、バインダーポリマーにカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の硬化物等を用いることができる。ここで用いられるバインダーポリマーとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種又は2種以上混合したもの、感光性樹脂、O/Wエマルジョン型の樹脂組成物(例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの)などを用いることができる。遮光部20の厚さは、例えば、0.5μm以上であってよく、10μm以下であってよい。
基材40は、光透過性を有する透明基材であり、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の透明なガラス基板、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルム等の透明なフレキシブル基材などを用いることができる。これらの中でも、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスからなるガラス基板を用いることが好ましい。具体的には、コーニング社製の「7059ガラス」、「1737ガラス」、「イーグル200」及び「イーグルXG」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA−10G」及び「OA−11」が好適である。これらは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れる。
以上の光変換層30を備えるカラーフィルタ100は、420〜480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に好適に用いられる。
カラーフィルタ100は、例えば、基材40上に遮光部20をパターン状に形成した後、基材40上の遮光部20によって区画された画素部形成領域に、上述した実施形態のインク組成物(インクジェットインク)をインクジェット方式により選択的に付着させ、乾燥により溶剤を揮発させた後、活性エネルギー線の照射又は加熱によりインク組成物を硬化させる方法により製造することができる。
遮光部20を形成させる方法は、基材40の一面側の複数の画素部間の境界となる領域に、クロム等の金属薄膜、又は、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜を形成し、この薄膜をパターニングする方法等が挙げられる。金属薄膜は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により形成することができ、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜は、例えば、塗布、印刷等の方法により形成することができる。パターニングを行う方法としては、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。
インクジェット方式としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェット(登録商標)方式、或いは圧電素子を用いたピエゾジェット方式等が挙げられる。
溶剤を揮発させるための乾燥温度は、例えば、50℃で以上であってよく、150℃以下であってよい。乾燥時間は、例えば、3分以上であってよく、30分以下であってよい。
インク組成物の硬化を活性エネルギー線(例えば紫外線)の照射により行う場合、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等を用いてよい。照射する光の波長は、例えば、200nm以上であってよく、440nm以下であってよい。露光量は、例えば、10mJ/cm2以上であってよく、4000mJ/cm2以下であってよい。
インク組成物の硬化を加熱により行う場合、加熱温度は、例えば、110℃以上であってよく、250℃以下であってよい。加熱時間は、例えば、10分以上であってよく、120分以下であってよい。
以上、カラーフィルタ及び光変換層、並びにこれらの製造方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、光変換層は、第3の画素部10cに代えて、又は、第3の画素部10cに加えて、青色発光性のナノ結晶粒子を含有するインク組成物の硬化物を含む画素部(青色画素部)を備えていてもよい。また、光変換層は、赤、緑、青以外の他の色の光を発するナノ結晶粒子を含有するインク組成物の硬化物を含む画素部(例えば黄色画素部)を備えていてもよい。これらの場合、光変換層の各画素部に含有される発光性ナノ結晶粒子のそれぞれは、同一の波長域に吸収極大波長を有することが好ましい。
また、光変換層の画素部の少なくとも一部は、発光性ナノ結晶粒子以外の顔料を含有する組成物の硬化物を含むものであってもよい。
また、カラーフィルタは、遮光部のパターン上に、遮光部よりも幅の狭い撥インク性を持つ材料からなる撥インク層を備えていてもよい。また、撥インク層を設けるのではなく、画素部形成領域を含む領域に、濡れ性可変層としての光触媒含有層をベタ塗り状に形成した後、該光触媒含有層にフォトマスクを介して光を照射して露光を行い、画素部形成領域の親インク性を選択的に増大させてもよい。光触媒としては、酸化チタン等が挙げられる。
また、カラーフィルタは、基材と画素部との間に、ヒドロキシプロピルセルロース等を含むインク受容層を備えていてもよい。
また、カラーフィルタは、画素部上に保護層を備えていてもよい。この保護層は、カラーフィルタを平坦化するとともに、画素部に含有される成分、又は、画素部に含有される成分及び光触媒含有層に含有される成分の液晶層への溶出を防止するために設けられるものである。保護層を構成する材料は、公知のカラーフィルタ用保護層として使用されているものを使用できる。
また、カラーフィルタ及び光変換層の製造では、インクジェット方式ではなく、フォトリソグラフィ方式で画素部を形成してもよい。この場合、まず、基材にインク組成物を層状に塗工し、インク組成物層を形成する。次いで、インク組成物層をパターン状に露光した後、現像液を用いて現像する。このようにして、インク組成物の硬化物からなる画素部が形成される。現像液は、通常アルカリ性であるため、バインダーポリマーとして、アルカリ可溶性のポリマーが用いられる。ただし、材料の使用効率の観点では、インクジェット方式がフォトリソグラフィ方式よりも優れている。これはフォトリソグラフィ方式では、その原理上、材料のほぼ2/3以上を除去することとなり、材料が無駄になるからである。このため、本実施形態では、インクジェットインクを用い、インクジェット方式により画素部を形成することが好ましい。
また、本実施形態の光変換層の画素部には、上記した発光性ナノ結晶粒子に加えて、発光性ナノ結晶粒子の発光色と概ね同色の顔料を更に含有させてもよい。例えば、液晶表示素子の画素部として、青色光を吸収して発光する発光性ナノ結晶粒子を含有する画素部を採用する場合、光源からの光として青色光乃至は450nmにピークを持つ準白色光を用いるが、画素部における発光性ナノ結晶粒子の濃度が十分でない場合には、液晶表示素子を駆動させた際に光源からの光が光変換層を透過してしまう。この光源からの透過光(青色光、漏れ光)と、発光性ナノ結晶粒子が発する光とが混色してしまう。このような混色の発生による色再現性の低下を防止する観点から、光変換層の画素部に顔料を含有させてもよい。顔料を画素部に含有させるため、インク組成物に顔料を含有させてもよい。
また、本実施形態の光変換層中の赤色画素部(R)、緑色画素部(G)、及び青色画素部(B)のうち、1種又は2種を発光性ナノ結晶粒子を含有させずに色材を含有させた画素部としてもよい。ここで使用し得る色材としては、公知の色材を使用することができ、例えば、赤色画素部(R)に用いる色材としては、ジケトピロロピロール顔料及び/又はアニオン性赤色有機染料が挙げられる。緑色画素部(G)に用いる色材としては、ハロゲン化銅フタロシニアン顔料、フタロシアニン系緑色染料、フタロシアニン系青色染料とアゾ系黄色有機染料との混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。青色画素部(B)に用いる色材としては、ε型銅フタロシニアン顔料及び/又はカチオン性青色有機染料が挙げられる。これらの色材の使用量は、光変換層に含有させる場合には、透過率の低下を防止できる観点から、画素部(インク組成物の硬化物)の全質量を基準として、1〜5質量%であることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた材料は全て、アルゴンガスを導入して溶存酸素を窒素ガスに置換したものを用いた。酸化チタンについては、混合前に、1mmHgの減圧下、2時間、120℃で加熱し、アルゴンガス雰囲気下で放冷したものを用いた。実施例で用いた液状の材料は、混合前にあらかじめ、モレキュラーシーブス3Aで48時間以上脱水して用いた。
<溶剤の準備>
溶剤として、下記の溶剤1〜7を準備した。
溶剤1:1,4−ブタンジオールジアセテート(沸点:232℃)
溶剤2:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点:247℃)
溶剤3:プロピレングリコールジアセテート(沸点:190℃)
溶剤4:ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点:213℃)
溶剤5:1,4−ブタンジオールジアセテート(沸点:232℃)80質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点:146℃)20質量部との混合溶剤
溶剤6:トリプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点:215℃)
溶剤7:プロピレングリコールジメチルエーテル(沸点:96℃)
<InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子分散体(不揮発分30質量%)の準備>
[赤色発光ナノ結晶粒子コア(InPコア)の合成]
トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)5g、酢酸インジウム1.46g(5mmol)及びラウリン酸3.16g(15.8mmol)を反応フラスコに添加し混合物を得た。窒素環境下において混合物を160℃にて40分間加熱した後、真空下で250℃にて20分間加熱した。次いで、反応温度(混合物の温度)を窒素(N2)環境の下で300℃に昇温した。この温度で、1−オクタデセン(ODE)3gとトリス(トリメチルシリル)ホスフィン0.25g(1mmol)との混合物を反応フラスコに迅速に導入し、反応温度を260℃に維持した。5分後、ヒーターの除去により反応を停止させ、得られた反応溶液を室温に冷却した。次いで、トルエン8ml及びエタノール20mlをグローブボックス中の反応溶液に添加した。続いて遠心分離を行いInPナノ結晶粒子を沈殿させた後、上澄みの傾瀉によってInPナノ結晶粒子を得た。次いで、得られたInPナノ結晶粒子をヘキサンに分散させた。
[ラウリン酸インジウム前駆体溶液の調製]
1−オクタデセン(ODE)10g、酢酸インジウム146mg(0.5mmol)及びラウリン酸300mg(1.5mmol)を反応フラスコに添加し混合物を得た。真空下において混合物を140℃にて2時間加熱することで透明な溶液(ラウリン酸インジウム前駆体溶液)を得た。この前駆体溶液は、必要になるまで室温でグローブボックス中に維持した。なお、ラウリン酸インジウムは室温では溶解性が低く沈殿しやすいため、前駆体溶液を使用する際は、前駆体溶液(ODE混合物)中の沈殿したラウリン酸インジウムを約90℃に加熱して透明な溶液を形成した後、所望量を計量して用いた。
[赤色発光ナノ結晶粒子シェル(ZnSeS/ZnSシェル)の合成]
InPナノ結晶粒子(InPコア)のヘキサン溶液及びラウリン酸インジウム前駆体溶液を反応フラスコに添加し混合物を得た。InPコアのヘキサン溶液及び前駆体溶液の添加量は、InPコアが25mg、ラウリン酸インジウムが5gとなるように調整した。真空下、室温にて混合物を10分間静置した後、混合物の温度を230℃に上げ、その温度で2時間保持した。
次いで、反応温度(混合物の温度)を室温に下げ、オレイン酸0.7gを反応フラスコに添加し、温度を80℃に上げた。次いで、この反応混合物中に、ODE1mlに溶解したジエチル亜鉛14mg、ビス(トリメチルシリル)セレニド8mg及びヘキサメチルジシラチアン7mg(ZnSeS前駆体溶液)を滴下することによって、厚さが0.5モノレイヤーのZnSeSシェルを形成させた。
ZnSeS前駆体溶液の滴下後、反応温度を80℃で10分間保持した。次いで、温度を140℃に上げ、30分間保持した。次に、この反応混合物中にODE2mlに溶解したジエチル亜鉛69mg及びヘキサメチルジシラチアン66mg(ZnS前駆体溶液)を滴下することにより、厚さが2モノレイヤーのZnSシェルを形成させた。ZnS前駆体溶液の滴下の10分後に、ヒーターの除去により反応を停止させた。次いで、反応混合物を室温に冷却し、得られた白色沈殿物を遠心分離によって除去することにより、InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子が分散した透明なナノ結晶粒子溶液(ODE溶液)を得た。
[発光性ナノ結晶粒子用のリガンドの合成]
JEFAMINE M−1000(Huntsman社製)をフラスコに投入した後、窒素ガス環境にて攪拌しながら、そこにJEFAMINE M−1000と等モル量の無水コハク酸(Sigma−Aldrich社製)を添加した。フラスコの内温を80℃に昇温し、8時間攪拌することにより、淡い黄色の粘稠な油状物として下記式(2A)で表されるリガンドを得た。
[リガンド交換によるInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子分散体の作製]
上記で得られたリガンド30−50mgを上記で得られたナノ結晶粒子溶液1mlに添加した。次いで、90℃で3〜15時間加熱することによりリガンド交換を行った。エタノール6mlをリガンド交換後のナノ結晶粒子溶液1mlへ添加した。続いて、遠心分離を行いナノ結晶粒子を沈殿させた後、上澄みの傾瀉及び真空下での乾燥によってナノ結晶粒子(上記式(2A)で表されるリガンドで修飾されたInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子)を得た。得られたナノ結晶粒子を不揮発分が30質量%となるように溶剤1に分散させることにより、ナノ結晶粒子分散体1(不揮発分30質量%)を得た。また、溶剤1に代えて溶剤2〜7を用いたこと以外は、上記と同様にして、ナノ結晶粒子分散体2〜7を得た。
<光散乱性粒子分散体の準備>
アルゴンガスで満たした容器内で、酸化チタン(商品名:MPT141、石原産業(株)製、平均粒子径(体積平均径):100nm)を2.4gと、高分子分散剤(商品名:DISPERBYK−2164、BYK社製、「DISPERBYK」は登録商標)を0.4gと、を溶剤1に混合した後、得られた混合物にジルコニアビーズ(直径:1.25mm)を加え、ペイントコンディショナーを用いて2時間振とうさせることで混合物の分散処理し、ポリエステルメッシュフィルターにてジルコニアビーズを除去することで光散乱性粒子分散体1(不揮発分:44質量%)を得た。溶剤1に代えて溶剤2〜7を用いたこと以外は、上記と同様にして、光散乱性粒子分散体2〜7を得た。
<熱硬化性樹脂溶液の準備>
熱硬化性樹脂(エポキシ基を有するアクリル樹脂、商品名:ファインディックA−254、DIC(株)製、「ファインディック」は登録商標)を0.28gと、硬化剤(1−メチルシクロヘキサン−4,5−ジカルボン酸無水物、東京化成工業(株)製の試薬)を0.09gと、硬化触媒(ジメチルベンジルアミン、東京化成工業(株)製の試薬)を0.004gと、を溶剤1に溶解させて、熱硬化性樹脂溶液1(不揮発分:30質量%)を得た。溶剤1に代えて溶剤2〜7を用いたこと以外は、上記と同様にして、熱硬化性樹脂溶液2〜7を得た。
<実施例1>
(1)インク組成物(インクジェットインク)の調製
発光性ナノ結晶粒子分散体1を2.25gと、光散乱性粒子分散体1を0.75gと、熱硬化性樹脂溶液1を1.25gと、を混合した後、混合物を孔径5μmのフィルターでろ過することにより、インク組成物を得た。インク組成物中の光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径MV)は0.260μmであった。なお、本実施例において、上記インク組成物中の光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径MV)は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計(日機装(株)社製、商品名「ナノトラック」)を用いて測定した。
(2)吐出安定性評価
インクジェットプリンター(富士フイルムDimatix社製、商品名「DMP−2850」)を用いて、上記(1)で得られたインク組成物を10分間連続で吐出させた。なお、本インクジェットプリンターのインクを吐出するヘッド部には16個のノズルが形成されており、1ノズル当たり、吐出一回あたりのインク組成物の使用量は10pLとした。吐出安定性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:連続吐出可能(16個のノズル中、10ノズル以上で連続吐出可能)
B:連続吐出不可(16個のノズル中、連続吐出可能なノズル数が9ノズル以下)
C:吐出不可
(3)親和性評価
インク組成物の調製に用いた発光性ナノ結晶粒子(上記式(2A)で表されるリガンドで修飾されたInP/ZnSコアシェルナノ結晶粒子)及び溶剤(溶剤1)の親和性(QD親和性)を以下の手順で評価した。
溶剤1を5mlに対して、上記InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子分散体1を50μl添加することでQD親和性評価用試料を調整した。QD親和性は、試料のQD発光強度を分光蛍光光度計(日本分光(株)製FP8600)にて測定し、得られた発光強度に基づき評価した。測定セルは光路長10mmセルを用い、検出感度は「very low」を選択した。得られた発光強度の値はスペクトルのピークトップの数値とした。親和性評価の評価基準は以下のとおりである。結果を表1に示す。
A:発光強度が1000(arb.u)以上
B:発光強度が300(arb.u)以上700(arb.u)未満
C:発光強度が300(arb.u)未満
<実施例2〜5、及び、比較例1〜2>
溶剤1に代えて溶剤2〜7をそれぞれ用いたこと、すなわち、発光性ナノ結晶粒子分散体1、光散乱性粒子分散体1及び熱硬化性樹脂溶液1に代えて、発光性ナノ結晶粒子分散体2〜7、光散乱性粒子分散体2〜7及び熱硬化性樹脂溶液2〜7をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2〜5、及び、比較例1〜2のインク組成物を得た。各インク組成物中の光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径MV)は実施例2〜5がそれぞれ0.363μm、0.214μm、0.218μm及び0.322μmであった。得られたインク組成物を用いて、実施例1と同様にして、吐出安定性評価及び親和性評価を行った。結果を表1に示す。