以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<インク組成物>
一実施形態のインク組成物は、発光性ナノ結晶粒子と、光重合性化合物と、光酸発生剤と、光増感化合物及びジオール化合物からなる群から選択される1種以上の化合物と、を含有し、好ましくは光散乱性粒子を更に含有し、より好ましくは高分子分散剤を更に含有する。ここで光重合性化合物は、脂環式エポキシ化合物と、オキセタン化合物と、を含み、脂環式エポキシ化合物及びオキセタン化合物の少なくとも一方が単官能である。一実施形態に係るインク組成物は、例えば、インクジェット方式によりカラーフィルタの画素部を形成するために用いられる、カラーフィルタ用インク組成物である。上記構成を備えるインク組成物は、光増感化合物及びジオール化合物のうちの少なくとも一種を含有するため、インクジェット方法において優れた吐出性が得られ、且つ塗膜を形成した際の硬化性にも優れる。このインク組成物は、インクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する用途に好適に用いられる。
以下では、発光性ナノ結晶粒子と、光酸発生剤と、光重合性化合物と、光増感化合物及びジオール化合物からなる群から選択される1種以上の化合物と、光散乱性粒子と、高分子分散剤と、を含有する、インクジェット方式に用いられるカラーフィルタ用インク組成物(カラーフィルタ用インクジェットインク)を例に挙げて説明する。
[発光性ナノ結晶粒子]
発光性ナノ結晶粒子は、励起光を吸収して蛍光又は燐光を発光するナノサイズの結晶体であり、例えば、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。
発光性ナノ結晶粒子は、例えば、所定の波長の光を吸収することにより、吸収した波長とは異なる波長の光(蛍光又は燐光)を発することができる。発光性ナノ結晶粒子は、605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(赤色光)を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子であってよく、500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(緑色光)を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子であってよく、420~480nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(青色光)を発する、青色発光性のナノ結晶粒子であってもよい。本実施形態では、インク組成物がこれらの発光性ナノ結晶粒子のうちの少なくとも一種を含むことが好ましい。また、発光性ナノ結晶粒子が吸収する光は、例えば、400nm以上500nm未満の範囲の波長の光(青色光)、又は、200nm~400nmの範囲の波長の光(紫外光)であってよい。なお、発光性ナノ結晶粒子の発光ピーク波長は、例えば、分光蛍光光度計を用いて測定される蛍光スペクトル又は燐光スペクトルにおいて確認することできる。
赤色発光性のナノ結晶粒子は、665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下又は630nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上又は605nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。これらの上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
緑色発光性のナノ結晶粒子は、560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下又は530nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上又は500nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
青色発光性のナノ結晶粒子は、480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下又は450nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上又は420nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子が発する光の波長(発光色)は、井戸型ポテンシャルモデルのシュレディンガー波動方程式の解によれば、発光性ナノ結晶粒子のサイズ(例えば粒子径)に依存するが、発光性ナノ結晶粒子が有するエネルギーギャップにも依存する。そのため、使用する発光性ナノ結晶粒子の構成材料及びサイズを変更することにより、発光色を選択することができる。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料を含む、発光性ナノ結晶粒子(発光性半導体ナノ結晶粒子)であってよい。発光性半導体ナノ結晶粒子としては、量子ドット(以下「QD」ともいう)、量子ロッド等が挙げられる。これらの中でも、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、量子ドットが好ましい。
発光性半導体ナノ結晶粒子は、第一の半導体材料を含むコアのみからなっていてよく、第一の半導体材料を含むコアと、第一の半導体材料とは異なる第二の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェルと、を有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアのみからなる構造(コア構造)であってよく、コアとシェルからなる構造(コア/シェル構造)であってもよい。また、発光性半導体ナノ結晶粒子は、第二の半導体材料を含むシェル(第一のシェル)の他に、第一及び第二の半導体材料とは異なる第三の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェル(第二のシェル)を更に有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアと第一のシェルと第二のシェルとからなる構造(コア/シェル/シェル構造)であってもよい。コア及びシェルのそれぞれは、2種以上の半導体材料を含む混晶(例えば、CdSe+CdS、CIS+ZnS等)であってよい。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料として、II-VI族半導体、III-V族半導体、I-III-VI族半導体、IV族半導体及びI-II-IV-VI族半導体からなる群より選択される少なくとも一種の半導体材料を含むことが好ましい。
具体的な半導体材料としては、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe;GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb;SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe;Si、Ge、SiC、SiGe、AgInSe2、CuGaSe2、CuInS2、CuGaS2、CuInSe2、AgInS2、AgGaSe2、AgGaS2、C、Si及びGeが挙げられる。発光性半導体ナノ結晶粒子は、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、InP、InAs、InSb、GaP、GaAs、GaSb、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、Si、C、Ge及びCu2ZnSnS4からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
赤色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がCdSであり内側のコア部がCdSeであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がCdSであり内側のコア部がZnSeであるナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、InPのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSとZnSeSとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、CdSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、ZnSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子などが挙げられる。
緑色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。
青色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、ZnSeのナノ結晶粒子、ZnSのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSeであり内側のコア部がZnSであるナノ結晶粒子、CdSのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。半導体ナノ結晶粒子は、同一の化学組成で、それ自体の平均粒子径を変えることにより、当該粒子から発光させるべき色を赤色にも緑色にも変えることができる。また、半導体ナノ結晶粒子は、それ自体として、人体等に対する悪影響が極力低いものを用いることが好ましい。カドミウム、セレン等を含有する半導体ナノ結晶粒子を発光性ナノ結晶粒子として用いる場合は、上記元素(カドミウム、セレン等)が極力含まれない半導体ナノ結晶粒子を選択して単独で用いるか、上記元素が極力少なくなるようにその他の発光性ナノ結晶粒子と組み合わせて用いることが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の形状は特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の形状は、例えば、球状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等であってもよい。しかしながら、発光性ナノ結晶粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性及び流動性をより高められる点で好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、所望の波長の発光が得られやすい観点、並びに、分散性及び保存安定性に優れる観点から、1nm以上であってよく、1.5nm以上であってよく、2nm以上であってもよい。所望の発光波長が得られやすい観点から、40nm以下であってよく、30nm以下であってよく、20nm以下であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
発光性ナノ結晶粒子は、分散安定性の観点から、その表面に有機リガンドを有することが好ましい。有機リガンドは、例えば、発光性ナノ結晶粒子の表面に配位結合されていてよい。換言すれば、発光性ナノ結晶粒子の表面は、有機リガンドによってパッシベーションされていてよい。また、インク組成物が後述する高分子分散剤を更に含有する場合には、発光性ナノ結晶粒子は、その表面に高分子分散剤を有していてもよい。本実施形態では、例えば、上述の有機リガンドを有する発光性ナノ結晶粒子から有機リガンドを除去し、有機リガンドと高分子分散剤とを交換することで発光性ナノ結晶粒子の表面に高分子分散剤を結合させてよい。ただし、インクジェットインクにした際の分散安定性の観点では、有機リガンドが配位したままの発光性ナノ結晶粒子に対して高分子分散剤が配合されることが好ましい。
有機リガンドとしては、樹脂および溶剤との親和性を確保するための官能基(以下、単に「親和性基」ともいう。)と、発光性ナノ結晶への吸着性を確保するための官能基(以下、単に、「吸着基」ともいう。)と、を有する化合物であることが好ましい。親和性基としては、脂肪族炭化水素基が好ましい。当該脂肪族炭化水素基は、直鎖型であってもよく、分岐構造を有していてもよい。また、脂肪族炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよく、不飽和結合を有していなくてもよい。吸着基としては、水素基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、アルコキシキシシリル等が挙げられる。有機リガンドとしては、例えば、TOP(トリオクチルフォスフィン)、TOPO(トリオクチルフォスフィンオキサイド)、オレイン酸、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、及びオクチルホスフィン酸(OPA)が挙げられる。
有機リガンドは、発光性ナノ結晶粒子の分散性及び発光強度がより一層優れたものになるという観点から、親和性基としてエチレンオキシド鎖及び/又はプロピレンオキシド鎖を有する脂肪族炭化水素を有することが好ましい。有機リガンドは、例えば、下記一般式(1)で表される有機リガンドであってもよい。
[式(1)中、pは0~50の整数を示し、qは0~50の整数を示す。]
上記一般式(1)で表される有機リガンドにおいて、p及びqのうち少なくとも一方が1以上であることが好ましく、p及びqの両方が1以上であることがより好ましい。
発光性ナノ結晶粒子としては、有機溶剤等の中にコロイド形態で分散しているものを用いることができる。有機溶剤中で分散状態にある発光性ナノ結晶粒子の表面は、上述の有機リガンドによってパッシベーションされていることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、トルエン、オクタン、クロロベンゼン、テトラリン、ジフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、又はそれらの混合物が挙げられる。
発光性ナノ結晶粒子としては、市販品を用いることができる。発光性ナノ結晶粒子の市販品としては、例えば、NN-ラボズ社の、インジウムリン/硫化亜鉛、D-ドット、CuInS/ZnS、アルドリッチ社の、InP/ZnS等が挙げられる。
発光性ナノ結晶粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れ、インク組成物の発光特性をより向上させる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、吐出安定性に優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよく、55質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。発光性ナノ結晶粒子が有機リガンドで修飾されている場合には、発光性ナノ結晶粒子及び該発光性ナノ結晶粒子を修飾する有機リガンドの合計量が上記範囲であってよい。なお、本明細書中、「インク組成物の不揮発分の質量」とは、インク組成物が溶剤を含む場合、インク組成物の全質量から溶剤の質量を除いた質量を指し、インク組成物が溶剤を含まない場合、インク組成物の全質量を指す。
[光重合性化合物]
本実施形態の光重合性化合物は、脂環式エポキシ化合物と、オキセタン化合物と、含み、好ましくは脂環式エポキシ化合物及びオキセタン化合物の2種からなる。脂環式エポキシ化合物及びオキセタン化合物の少なくとも一方は、単官能である。すなわち、本実施形態の光重合性化合物は、重合性基として脂環式エポキシ基を1つ有する脂環エポキシ化合物及び/又は重合性基としてオキセタン基を1つ有するオキセタン化合物を含む。インク組成物は、このような光重合性化合物を含むことにより、吐出性に優れたものとなる。
脂環式エポキシ化合物が単官能である場合、オキセタン化合物は、単官能であっても、二官能以上(オキセタン基を2つ以上有する)であってもよく、好ましくは単官能又は二官能である。オキセタン化合物が単官能である場合、脂環式エポキシ化合物は、単官能であっても、二官能以上であってもよく、好ましくは単官能又は二官能である。二官能以上の脂環式エポキシ化合物は、重合性基としてエポキシ基を2つ以上有しており、当該2つ以上のエポキシ基の少なくとも1つが脂環式エポキシ基であればよい。すなわち、例えば二官能の脂環式エポキシ化合物は、2つの脂環式エポキシ基を有していてよく、1つの脂環式エポキシ基と、1つの脂環式エポキシ基以外のエポキシ基とを有していてもよい。塗膜の硬化性をより向上させる観点から、光重合性化合物は、脂環式エポキシ化合物及びオキセタン化合物のいずれか一方が単官能であり、他方が二官能である組合せを含むことが好ましい。
単官能の脂環式エポキシ化合物としては、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロへキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、シクロヘキセンオキサイド、3-メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3-アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3-ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。これらの単官能の脂環式エポキシ化合物として、株式会社ダイセル製の「セロキサイド2000」、「サイクロマーM100」等の市販品を使用することが可能である。
二官能の脂環式エポキシ化合物としては、リモネンジエポキシド、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。これらの二官能エポキシ化合物として市販品を使用することも可能である。エポキシ化合物の市販品としては、例えば、株式会社ダイセル製の「セロキサイド2021P」、ダウ・ケミカル日本(株)製の「サイラキュアUVR-6105」、「サイラキュアUVR-6107」、「サイラキュアUVR-6110」、及び「サイラキュアUVR-6128」、ユニオンカーバイド社製の「ERL4299」等を用いることができる。
三官能以上の脂環式エポキシ化合物としては、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン等の化合物が挙げられる。これらの三官能以上の脂環式エポキシ化合物として、ダイセル化学工業株式会社製の「エポリードGT300」、「エポリードGT301」、及び「エポリードGT302」(以上、三官能)、「エポリードGT400」、「エポリードGT401」及び「エポリードGT403」(以上、四官能)、ユニオンカーバイド社製の「ERL4289」(三官能)等を用いることができる。
単官能のオキセタン化合物としては、2-エチルヘキシルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート等が挙げられる。これらの単官能のオキセタン化合物として、宇部興産株式会社の「OXMA」、東亜合成株式会社の「OXT-101」、「OXT-211」、「OXT-212」、「OXT-213」等の市販品を使用することが可能である。
二官能のオキセタン化合物としては、キシリレンビスオキセタン、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ビフェニル等が挙げられる。これらの二官能のオキセタン化合物としては、東亜合成株式会社製の「OXT-121」、「OXT-221」、等の市販品を使用することができる。
三官能以上のオキセタン化合物としては、1,3,3-トリス(4-(2-(3-オキセタニル)ブトキシフェニル)ブタン等の化合物が挙げられる。
また、公知の脂環式エポキシ化合物、及びオキセタン化合物(例えば、特開2009-40830等に記載の脂環式エポキシ化合物、及びオキセタン化合物など)を使用することもできる。
光重合性化合物は、ビニルエーテル、環状エーテル等のその他の光カチオン重合性化合物を含んでもよい。ビニルエーテル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、8-ヒドロキシオクチルビニルエーテル、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル等が挙げられる。環状エーテルとしては、フェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2-ブチレンオキサイド、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2-エポキシデカン、スチレンオキサイド等が挙げられる。
脂環式エポキシ化合物の含有量は、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってよく、30質量%以上であってもよい。脂環式エポキシ化合物の含有量は、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよい。
オキセタン化合物の含有量は、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってよく、30質量%以上であってもよい。オキセタン化合物の含有量は、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよい。
脂環式エポキシ化合物の含有量に対するオキセタン化合物の含有量の比(オキセタン化合物/脂環式エポキシ化合物)は、20/80以上であってよく、40/60以上であってよく、60/40以上であってもよい。当該比は、80/20以下であってよく、60/40以下であってよく、40/60以下であってもよい。
脂環式エポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計の含有量は、光重合性化合物全量を基準として、60質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。
光重合性化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすく、吐出性により優れる観点、及びインク組成物の硬化性により優れる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。光重合性化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすく、吐出性により優れる観点、及び、より優れた光学特性(漏れ光)が得られる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、90質量%以下であってよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
[光酸発生剤]
光酸発生剤(以下、「光カチオン重合開始剤」ともいう)としては、例えば、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート等のポリアリールスルフォニウム塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、P-ノニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のポリアリールヨードニウム塩などを挙げることができる。
光酸発生剤として市販品を用いることもできる。市販品としては、サンアプロ社製の「CPI-100P」、「CPI-101A」、「CPI-200K」、BASF社製の「Irgacure PAG103」、「Irgacure PAG121」、「Irgacure PAG203」等のスルホニウム塩系光酸発生剤、BASF社製の「Irgacure 270」、「Irgacure PAG290」等のスルホニウム塩系光カチオン重合開始剤、及び「Irgacure 250」等のヨードニウム塩系光カチオン重合開始剤などが挙げられる。
光酸発生剤の含有量は、インク組成物の硬化性の観点から、光重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上であってよく、0.5質量部以上であってもよく、1質量部以上であってもよい。光重合開始剤の含有量は、画素部(インク組成物の硬化物)の経時安定性の観点から、光重合性化合物100質量部に対して、40質量部以下であってよく、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。
[光増感化合物]
光増感化合物は、光増感剤として使用されているものを用いることができる。光増感剤は、発光性ナノ結晶粒子、光散乱性粒子等の紫外波長域における吸収波長帯よりも長波長側に吸収波長の極大値を有することが好ましい。このような光増感剤を使用することにより、発光性ナノ結晶粒子、光散乱性粒子等を含むインク組成物を用いて形成される塗膜中において、光重合性化合物を硬化させるための照射光をより効率よく吸収し、光酸発生剤の酸発生効率の向上に寄与することができる。
光増感化合物は、好ましくは380nm以上、より好ましくは400nm以上、更に好ましくは410nm以上の波長域に最大吸収波長を有する化合物である。光増感化合物は、例えば500nm以下の波長域に最大吸収波長を有する。最大吸収波長は、光増感化合物の紫外可視吸収スペクトルを測定したときに、吸光度が極大値となる波長を意味する。光増感化合物の紫外可視吸収スペクトルにおいて吸光度が極大値となる波長が複数存在する場合、それらの波長のうち少なくとも1つの波長が、上記の波長域に存在していればよい。
光増感化合物としては、例えば、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等が挙げられる。
[ジオール化合物]
ジオール化合物は、例えば脂肪族ジオール化合物であってよい。脂肪族ジオール化合物は、脂肪族炭化水素の2つの水素原子がそれぞれ水酸基で置換された化合物である。脂肪族ジオール化合物は、鎖状であっても環状であってもよく、好ましくは鎖状である。ジオール化合物は、好ましくは炭素原子数4以上のジオール化合物である。このようなジオール化合物を使用することにより、オキセタン化合物がカチオン重合する際に発生する分子内縮合を抑制することができ、インク組成物の硬化をより充分なものとすることができる。ジオール化合物を構成する炭素原子数は、より好ましくは炭素原子数4以上であり、また、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすく、吐出性により優れる観点から、好ましくは8以下であり、より好ましくは5以下である。
ジオール化合物としては、例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1-メチル-1,4-ブタンジオール等が挙げられる。
本実施形態に係るインク組成物は、光増感化合物及びジオール化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含む。光増感化合物と、ジオール化合物とは、それぞれ単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。インク組成物中における発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子の含有量を高め、インク組成物又はその硬化物の発光特性をより高める観点から、インク組成物は、好ましくは、光増感化合物及びジオール化合物のいずれか一方のみを含む。
光増感化合物の含有量は、インク組成物の吐出性及び塗膜の硬化性をより向上させる観点から、インク組成物全量を基準として、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは1質量%以上である。光増感化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすく、吐出性により優れる観点から、インク組成物全量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下である。
ジオール化合物の含有量は、インク組成物の吐出性及び塗膜の硬化性をより向上させる観点から、インク組成物全量を基準として、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは1質量%以上である。ジオール化合物の含有量は、塗膜の硬化性低下の観点から、インク組成物全量を基準として、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下である。
光増感化合物及びジオール化合物の合計の含有量は、インク組成物全量を基準として、好ましくは0.4質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは2質量%以上である。光増感化合物及びジオール化合物の合計の含有量が、0.4質量%以上であることにより、インク組成物の吐出性及び塗膜の硬化性をより向上させることができる。光増感化合物及びジオール化合物の合計の含有量は、インク組成物全量を基準として、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは6質量%以下である。
[光散乱性粒子]
光散乱性粒子は、例えば、光学的に不活性な無機微粒子である。光散乱性粒子は、カラーフィルタ画素部に照射された光源からの光を散乱させることができる。
光散乱性粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金等の単体金属;シリカ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物、次硝酸ビスマス等の金属塩などが挙げられる。光散乱性粒子は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、及びチタン酸バリウムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
光散乱性粒子の形状は、球状、フィラメント状、不定形状等であってよい。しかしながら、光散乱性粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性、流動性及び光散乱性をより高められる点で好ましい。
インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、漏れ光の低減効果により優れ、インク組成物の発光特性をより向上させる観点から、0.05μm以上であってよく、0.1μm以上であってもよく、0.2μm以上であってもよく、0.3μm以上であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、吐出安定性に優れる観点から、1.0μm以下であってもよく、0.6μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、0.05~1.0μm、0.05~0.6μm、0.05~0.4μm、0.1~1.0μm、0.1~0.6μm、0.1~0.4μm、0.2~1.0μm、0.2~0.6μm、0.2~0.4μm、0.3~1.0μm、0.3~0.6μm、又は0.3~0.4μmであってもよい。このような平均粒子径(体積平均径)が得られやすい観点から、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、50nm以上であってよく、1000nm以下であってよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。また、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、例えば透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により各粒子の粒子径を測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れ、インク組成物の発光特性をより向上させる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れ、インク組成物の発光特性をより向上させる観点及び吐出安定性に優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。本実施形態では、インク組成物が高分子分散剤を含むため、光散乱性粒子の含有量を上記範囲とした場合であっても光散乱性粒子を良好に分散させることができる。
発光性ナノ結晶粒子の含有量に対する光散乱性粒子の含有量の質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、漏れ光の低減効果により優れ、インク組成物の発光特性をより向上させる観点から、0.1以上であってよく、0.2以上であってもよく、0.5以上であってもよい。質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、漏れ光の低減効果により優れ、インク組成物の発光特性をより向上させ、インクジェット印刷時の連続吐出性にも優れる観点から、5.0以下であってよく、2.0以下であってもよく、1.5以下であってもよい。なお、光散乱性粒子による漏れ光低減は、次のようなメカニズムによると考えられる。すなわち、光散乱性粒子が存在しない場合、バックライト光は画素部内をほぼ直進して通過するのみであり、発光性ナノ結晶粒子に吸収される機会が少ないと考えられる。一方、光散乱性粒子を発光性ナノ結晶粒子と同一の画素部内に存在させると、その画素部内でバックライト光が全方位に散乱され、それを発光性ナノ結晶粒子が受光することができるため、同一のバックライトを用いていても、画素部における光吸収量が増大し、発光性ナノ結晶粒子の発光強度をより向上させると考えられる。結果的に、このようなメカニズムで漏れ光を防ぎ、インク組成物の発光特性をより向上させることが可能になると考えられる。
[高分子分散剤]
本発明において、高分子分散剤は、750以上の重量平均分子量を有し、かつ、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を有する高分子化合物であり、光散乱性粒子を分散させる機能を有する。高分子分散剤は、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を介して光散乱性粒子に吸着し、高分子分散剤同士の静電反発及び/又は立体反発により、光散乱性粒子をインク組成物中に分散させる。高分子分散剤は、光散乱性粒子の表面と結合して光散乱性粒子に吸着していることが好ましいが、発光性ナノ結晶粒子の表面に結合して発光性ナノ粒子に吸着していてもよく、インク組成物中に遊離していてもよい。
ところで、従来のインク組成物を用いてインクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する場合に吐出安定性が低下する原因の一つとして、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子の凝集等が考えられる。そのため、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子を微細化すること、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子の含有量を減らすこと等により、吐出安定性を向上させることが考えられるが、この場合、漏れ光の低減効果が低下しやすく、吐出安定性と漏れ光の低減とを高次元で両立することは困難である。これに対し、高分子分散剤を更に含有するインク組成物によれば、優れた吐出安定性と漏れ光の低減とを高次元で両立することができる。このような効果が得られる理由は、明らかではないが、高分子分散剤によって、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子(特に、光散乱性粒子)の凝集が顕著に抑制されるためであると推察される。
光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基及び非イオン性官能基が挙げられる。酸性官能基は解離性のプロトンを有しており、アミン、水酸化物イオン等の塩基により中和されていてもよく、塩基性官能基は有機酸、無機酸等の酸により中和されていてもよい。
酸性官能基としては、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、硫酸基(-OSO3H)、ホスホン酸基(-PO(OH)3)、リン酸基(-OPO(OH)3)、ホスフィン酸基(-PO(OH)-)、メルカプト基(-SH)、が挙げられる。
塩基性官能基としては、一級、二級及び三級アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、並びに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ環基等が挙げられる。
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO2-)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基が挙げられる。
光散乱性粒子の分散安定性の観点、発光性ナノ結晶粒子が沈降するという副作用を起こしにくい観点、高分子分散剤の合成の容易性の観点、及び官能基の安定性の観点から、酸性官能基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基及びリン酸基が好ましく用いられ、塩基性官能基としては、アミノ基が好ましく用いられる。これらの中でも、カルボキシル基、ホスホン酸基及びアミノ基がより好ましく用いられ、最も好ましくはアミノ基が用いられる。
酸性官能基を有する高分子分散剤は酸価を有する。酸性官能基を有する高分子分散剤の酸価は、好ましくは1~150mgKOH/gである。酸価が1mgKOH/g以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、酸価が150mgKOH/g以下であると、画素部(インク組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。
高分子分散剤の酸価は、以下のように測定することができる。高分子分散剤pg及びフェノールフタレイン試液1mLを、トルエンとエタノールとを体積比1:1で混合した混合溶液50mLに溶解させた試料液を準備し、0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液(水酸化カリウム7.0gを蒸留水5.0mlに溶解させ、95vol%エタノールを加えることで1000mlに調整したもの)にて試料液が淡紅色を呈するまで滴定を行い、次式により酸価を算出できる。
酸価=q×r×5.611/p
式中、qは滴定に要した0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)を示し、rは滴定に要した0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液の力価を示し、pは高分子分散剤の質量(g)を示す。
また、塩基性官能基を有する高分子分散剤はアミン価を有する。塩基性官能基を有する高分子分散剤のアミン価は、好ましくは1~200mgKOH/gである。アミン価が1mgKOH/g以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、アミン価が200mgKOH/g以下であると、画素部(インク組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。
高分子分散剤のアミン価は、以下のように測定することができる。高分子分散剤xg及びブロモフェノールブルー試液1mLを、トルエンとエタノールとを体積比1:1で混合した混合溶液50mLに溶解させた試料液を準備し、0.5mol/L塩酸にて試料液が緑色を呈するまで滴定を行い、次式によりアミン価を算出できる。
アミン価=y/x×28.05
式中、yは滴定に要した0.5mol/L塩酸の滴定量(mL)を示し、xは高分子分散剤の質量(g)を示す。
高分子分散剤は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、高分子分散剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、高分子分散剤がグラフト共重合体である場合、くし形のグラフト共重合体であってよく、星形のグラフト共重合体であってもよい。高分子分散剤は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレア樹脂、アミノ樹脂、ポリエチレンイミン及びポリアリルアミン等のポリアミン、エポキシ樹脂、ポリイミドなどであってよい。
前記高分子分散剤として、市販品を使用することも可能であり、市販品としては、味の素ファインテクノ株式会社のアジスパーPBシリーズ、BYK社製のDISPERBYKシリーズ並びにBYK-シリーズ、BASF社製のEfkaシリーズ等を使用することができる。
市販品としては、例えば、ビックケミー社製の「DISPERBYK-130」、「DISPERBYK-161」、「DISPERBYK-162」、「DISPERBYK-163」、「DISPERBYK-164」、「DISPERBYK-166」、「DISPERBYK-167」、「DISPERBYK-168」、「DISPERBYK-170」、「DISPERBYK-171」、「DISPERBYK-174」、「DISPERBYK-180」、「DISPERBYK-182」、「DISPERBYK-183」、「DISPERBYK-184」、「DISPERBYK-185」、「DISPERBYK-2000」、「DISPERBYK-2001」、「DISPERBYK-2008」、「DISPERBYK-2009」、「DISPERBYK-2020」、「DISPERBYK-2022」、「DISPERBYK-2025」、「DISPERBYK-2050」、「DISPERBYK-2070」、「DISPERBYK-2096」、「DISPERBYK-2150」、「DISPERBYK-2155」、「DISPERBYK-2163」、「DISPERBYK-2164」、「BYK-LPN21116」及び「BYK-LPN6919」;BASF社製の「EFKA4010」、「EFKA4015」、「EFKA4046」、「EFKA4047」、「EFKA4061」、「EFKA4080」、「EFKA4300」、「EFKA4310」、「EFKA4320」、「EFKA4330」、「EFKA4340」、「EFKA4560」、「EFKA4585」、「EFKA5207」、「EFKA1501」、「EFKA1502」、「EFKA1503」及び「EFKA PX-4701」;ルーブリゾール社製の「ソルスパース3000」、「ソルスパース9000」、「ソルスパース13240」、「ソルスパース13650」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」、「ソルスパース20000」、「ソルスパース21000」、「ソルスパース24000」、「ソルスパース26000」、「ソルスパース27000」、「ソルスパース28000」、「ソルスパース32000」、「ソルスパース32500」、「ソルスパース32550」、「ソルスパース32600」、「ソルスパース33000」、「ソルスパース34750」、「ソルスパース35100」、「ソルスパース35200」、「ソルスパース36000」、「ソルスパース37500」、「ソルスパース38500」、「ソルスパース39000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース54000」、「ソルスパース71000」及び「ソルスパース76500」;味の素ファインテクノ株式会社製の「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」、「アジスパーPB881」、「PN411」及び「PA111」;エボニック社製の「TEGO Dispers650」、「TEGO Dispers660C」、「TEGO Dispers662C」、「TEGO Dispers670」、「TEGO Dispers685」、「TEGO Dispers700」、「TEGO Dispers710」及び「TEGO Dispers760W」;楠本化成製の「ディスパロンDA―703―50」、「DA-705」及び「DA-725」などを用いることができる。
高分子分散剤としては、上記のような市販品以外にも、塩基性基を含有するカチオン性モノマー及び/又は酸性基を有するアニオン性モノマーと、疎水基を有するモノマーと、必要により他のモノマー(ノニオン性モノマー、親水基を有するモノマー等)とを共重合させて合成したものを用いることができる。カチオン性モノマー、アニオン性モノマー、疎水基を有するモノマー及び他のモノマーの詳細については、特開2004-250502号公報の段落0034~0036に記載のモノマーを挙げることができる。
また、例えば、特開昭54-37082号公報、特開昭61-174939号公報などに記載のポリアルキレンイミンとポリエステル化合物を反応させた化合物、特開平9-169821号公報に記載のポリアリルアミンの側鎖のアミノ基をポリエステルで修飾した化合物、特開平9-171253号公報に記載のポリエステル型マクロモノマーを共重合成分とするグラフト重合体、特開昭60-166318号公報に記載のポリエステルポリオール付加ポリウレタン等が好適に挙げられる。
高分子分散剤の重量平均分子量は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、漏れ光の低減効果を向上させることができる観点から、750以上であってよく、1000以上であってもよく、2000以上であってもよく、3000以上であってもよい。高分子分散剤の重量平均分子量は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、漏れ光の低減効果を向上させることができ、また、インクジェットインクの粘度を吐出可能で安定吐出に適する粘度とする観点から、100000以下であってよく、50000以下であってもよく、30000以下であってもよい。
高分子分散剤の含有量は、光散乱性粒子の分散性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、0.5質量部以上であってよく、2質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよい。高分子分散の含有量は、画素部(インク組成物の硬化物)の湿熱安定性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、50質量部以下であってよく、30質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよい。
インク組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、発光性ナノ結晶粒子、光重合性化合物、光酸発生剤、光増感化合物、ジオール化合物、光散乱性粒子、高分子分散剤、及び有機リガンド以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、界面活性剤、重合禁止剤等が挙げられる。
インク組成物がアルカリ可溶性である場合、インク組成物の塗布膜が大気中の水分を吸収しやすく、時間が経過するにつれて発光性ナノ結晶粒子(量子ドット等)の発光性(例えば蛍光性)が損なわれてゆく。この観点から、本実施形態においては、インク組成物の塗布膜はアルカリ不溶性であることが好ましい。すなわち、本実施形態のインク組成物は、アルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることが好ましい。このようなインク組成物は、光重合性化合物として、アルカリ不溶性の光重合性化合物を用いることにより得ることができる。インク組成物の塗布膜がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃におけるインク組成物の塗布膜の溶解量が、インク組成物の塗布膜の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。インク組成物の塗布膜の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。なお、インク組成物がアルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることは、インク組成物を基材上に塗布した後、得られる厚さ1μmの塗布膜の、上記溶解量を測定することにより確認できる。
本実施形態のインク組成物は、公知慣用のカラーフィルタの製造方法に用いるインクとして適用が可能であるが、比較的高額である発光性ナノ結晶粒子、溶剤等の材料を無駄に消費せずに、必要な箇所に必要な量を用いるだけでカラーフィルタ画素部(光変換層)を形成できる点で、インクジェット方式用に適合するよう、適切に調製して用いることが好ましい。
インク組成物の40℃における粘度は、例えば、インクジェット印刷時の吐出安定性の観点から、2mPa・s以上であってよく、5mPa・s以上であってもよく、7mPa・s以上であってもよい。インク組成物の40℃における粘度は、20mPa・s以下であってよく、15mPa・s以下であってもよく、12mPa・s以下であってもよい。インク組成物の40℃における粘度が2mPa・s以上である場合、吐出ヘッドのインク吐出孔の先端におけるインク組成物のメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、インク組成物の40℃における粘度が20mPa・s以下である場合、インク吐出孔からインク組成物を円滑に吐出させることができる。インク組成物の40℃における粘度は、2~20mPa・s、2~15mPa・s、2~12mPa・s、5~20mPa・s、5~15mPa・s、5~20mPa・s、7~20mPa・s、7~15mPa・s、又は7~12mPa・sであってもよい。インク組成物の粘度は、例えば、E型粘度計によって測定される。インク組成物の粘度は、例えば、光重合性化合物の種類、含有量などを変更することで所望の範囲に調整することができる。
インク組成物の表面張力は、インクジェット方式に適した表面張力であることが好ましく、具体的には、20~40mN/mの範囲であることが好ましく、25~35mN/mであることがより好ましい。表面張力を該範囲とすることで飛行曲がりの発生を抑制することができる。なお、飛行曲がりとは、インク組成物をインク吐出孔から吐出させたとき、インク組成物の着弾位置が目標位置に対して30μm以上のずれを生じることをいう。表面張力が40mN/m以下である場合、インク吐出孔の先端におけるメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、表面張力が20mN/m以上である場合、飛行曲がりの発生を抑制できる。すなわち、着弾すべき画素部形成領域に正確に着弾されずにインク組成物の充填が不十分な画素部が生じたり、着弾すべき画素部形成領域に隣接する画素部形成領域(又は画素部)にインク組成物が着弾し、色再現性が低下したりすることがない。インク組成物の表面張力は、例えば、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤などを併用することで所望の範囲に調整することができる。
<インク組成物の製造方法>
次に、上述した実施形態のインク組成物の製造方法について説明する。インク組成物は、例えば、上述したインク組成物の構成成分を混合し、分散処理を行うことで得られる。以下では、インク組成物の製造方法の一例として、発光性ナノ結晶粒子と、光重合性化合物と、光酸発生剤と、光増感化合物と、光散乱性粒子と、高分子分散剤とを含有する、インク組成物の製造方法を説明する。
インク組成物の製造方法は、例えば、光散乱性粒子及び高分子分散剤を含有する、光散乱性粒子の分散体を用意する第1の工程と、光散乱性粒子の分散体及び発光性ナノ結晶粒子を混合する第2の工程と、を備える。この方法では、光散乱性粒子の分散体が、光重合性化合物、光酸発生剤及び光増感化合物を更に含有してよく、第2の工程において、光重合性化合物、光酸発生剤及び光増感化合物を更に混合してもよい。第2の工程では、光重合性化合物、並びに、予め調整した、光酸発生剤及び光増感化合物を含有する溶液を混合してもよい。この方法によれば、光散乱性粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部における漏れ光を低減することができ、発光強度をより向上させると共に、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。
光散乱性粒子の分散体を用意する工程では、例えば、光散乱性粒子と、高分子分散剤と、光重合性化合物とを混合し、分散処理を行うことにより光散乱性粒子の分散体を調製してよい。混合及び分散処理は、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星撹拌機等の分散装置を用いて行ってよい。光散乱性粒子の分散性が良好となり、光散乱性粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整しやすい観点から、ビーズミル又はペイントコンディショナーを用いることが好ましい。
インク組成物の製造方法は、第2の工程の前に、発光性ナノ結晶粒子と、光重合性化合物とを含有する、発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程を更に備えていてもよい。この場合、第2の工程では、光散乱性粒子の分散体と、発光性ナノ結晶粒子の分散体と、を混合し、更に予め調整した、光酸発生剤及び光増感化合物を含有する溶液を混合する。この方法によれば、発光性ナノ結晶粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部における漏れ光を低減することができ、発光強度をより向上させると共に、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程では、光散乱性粒子の分散体を用意する工程と同様の分散装置を用いて、発光性ナノ結晶粒子と、光重合性化合物との混合及び分散処理を行ってよい。
本実施形態のインク組成物を、インクジェット方式用のインク組成物として用いる場合には、圧電素子を用いた機械的吐出機構による、ピエゾジェット方式のインクジェット記録装置に適用することが好ましい。ピエゾジェット方式では、吐出に当たり、インク組成物が瞬間的に高温に晒されることがなく、発光性ナノ結晶粒子の変質が起こり難く、カラーフィルタ画素部(光変換層)も期待した通りの発光特性がより容易に得られやすい。
<光変換層及びカラーフィルタ>
次に、上述した実施形態のインク組成物を用いた、光変換層及びカラーフィルタの詳細について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
図1は、一実施形態のカラーフィルタの模式断面図である。図1に示すように、カラーフィルタ100は、基材40と、基材40上に設けられた光変換層30と、を備える。光変換層30は、複数の画素部10と、遮光部20と、を備えている。
光変換層30は、画素部10として、第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとを有している。第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとは、この順に繰り返すように格子状に配列されている。遮光部20は、隣り合う画素部の間、すなわち、第1の画素部10aと第2の画素部10bとの間、第2の画素部10bと第3の画素部10cとの間、第3の画素部10cと第1の画素部10aとの間に設けられている。言い換えれば、これらの隣り合う画素部同士は、遮光部20によって離間されている。
第1の画素部10a及び第2の画素部10bは、それぞれ上述した実施形態のインク組成物の硬化物を含む。硬化物は、発光性ナノ結晶粒子と、光散乱性粒子と、硬化成分とを含有する。硬化成分は、光重合性化合物の硬化物であり、具体的には、光重合性化合物の架橋によって得られる硬化物である。すなわち、第1の画素部10aは、第1の硬化成分13aと、第1の硬化成分13a中にそれぞれ分散された第1の発光性ナノ結晶粒子11a及び第1の光散乱性粒子12aとを含む。同様に、第2の画素部10bは、第2の硬化成分13bと、第2の硬化成分13b中にそれぞれ分散された第2の発光性ナノ結晶粒子11b及び第2の光散乱性粒子12bとを含む。第1の画素部10a及び第2の画素部10bにおいて、第1の硬化成分13aと第2の硬化成分13bとは同一でもあっても異なっていてもよく、第1の光散乱性粒子12aと第2の光散乱性粒子12bとは同一でもあっても異なっていてもよい。
第1の発光性ナノ結晶粒子11aは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第1の画素部10aは、青色光を赤色光に変換するための赤色画素部と言い換えてよい。また、第2の発光性ナノ結晶粒子11bは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第2の画素部10bは、青色光を緑色光に変換するための緑色画素部と言い換えてよい。
インク組成物の硬化物を含む画素部における発光性ナノ結晶粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、画素部の信頼性に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよく、55質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
インク組成物の硬化物を含む画素部における光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果及び発光特性により優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果及び発光特性により優れる観点及び画素部の信頼性に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。
第3の画素部10cは、420~480nmの範囲の波長の光に対し30%以上の透過率を有する。そのため、第3の画素部10cは、420~480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に、青色画素部として機能する。第3の画素部10cは、例えば、上述の光重合性化合物を含有する組成物の硬化物を含む。硬化物は、第3の硬化成分13cを含有する。第3の硬化成分13cは、光重合性化合物の硬化物であり、具体的には、光重合性化合物の架橋によって得られる硬化物である。すなわち、第3の画素部10cは、第3の硬化成分13cを含む。第3の画素部10cが上述の硬化物を含む場合、光重合性化合物を含有する組成物は、420~480nmの範囲の波長の光に対する透過率が30%以上となる限りにおいて、上述のインク組成物に含有される成分のうち、光重合性化合物以外の成分を更に含有していてもよい。なお、第3の画素部10cの透過率は、顕微分光装置により測定することができる。
画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、1μm以上であってよく、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、30μm以下であってよく、20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよい。
遮光部20は、隣り合う画素部を離間して混色を防ぐ目的及び光源からの光漏れを防ぐ目的で設けられる、いわゆるブラックマトリックスである。遮光部20を構成する材料は、特に限定されず、クロム等の金属の他、バインダーポリマーにカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の硬化物等を用いることができる。ここで用いられるバインダーポリマーとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種又は2種以上混合したもの、感光性樹脂、O/Wエマルジョン型の樹脂組成物(例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの)などを用いることができる。遮光部20の厚さは、例えば、0.5μm以上であってよく、10μm以下であってよい。
基材40は、光透過性を有する透明基材であり、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の透明なガラス基板、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルム等の透明なフレキシブル基材などを用いることができる。これらの中でも、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスからなるガラス基板を用いることが好ましい。具体的には、コーニング社製の「7059ガラス」、「1737ガラス」、「イーグル200」及び「イーグルXG」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA-10G」及び「OA-11」が好適である。これらは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れる。
以上の光変換層30を備えるカラーフィルタ100は、420~480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に好適に用いられる。
カラーフィルタ100は、例えば、基材40上に遮光部20をパターン状に形成した後、基材40上の遮光部20によって区画された画素部形成領域に、上述した実施形態のインク組成物(インクジェットインク)をインクジェット方式により選択的に付着させ、活性エネルギー線の照射又は加熱によりインク組成物を硬化させる方法により製造することができる。
遮光部20を形成させる方法は、基材40の一面側の複数の画素部間の境界となる領域に、クロム等の金属薄膜、又は、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜を形成し、この薄膜をパターニングする方法等が挙げられる。金属薄膜は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により形成することができ、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜は、例えば、塗布、印刷等の方法により形成することができる。パターニングを行う方法としては、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。
インクジェット方式としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェット(登録商標)方式、或いは圧電素子を用いたピエゾジェット方式等が挙げられる。
インク組成物の硬化を活性エネルギー線(例えば紫外線)の照射により行う場合、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等を用いてよい。照射する光の波長は、例えば、200nm以上であってよく、440nm以下であってよい。露光量は、例えば、10mJ/cm2以上であってよく、4000mJ/cm2以下であってよい。
以上、カラーフィルタ及び光変換層、並びにこれらの製造方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、光変換層は、第3の画素部10cに代えて、又は、第3の画素部10cに加えて、青色発光性のナノ結晶粒子を含有するインク組成物の硬化物を含む画素部(青色画素部)を備えていてもよい。また、光変換層は、赤、緑、青以外の他の色の光を発するナノ結晶粒子を含有するインク組成物の硬化物を含む画素部(例えば黄色画素部)を備えていてもよい。
また、光変換層の画素部の少なくとも一部は、発光性ナノ結晶粒子以外の顔料を含有する組成物の硬化物を含むものであってもよい。
また、カラーフィルタは、遮光部のパターン上に、遮光部よりも幅の狭い撥インク性を持つ材料からなる撥インク層を備えていてもよい。また、撥インク層を設けるのではなく、画素部形成領域を含む領域に、濡れ性可変層としての光触媒含有層をベタ塗り状に形成した後、該光触媒含有層にフォトマスクを介して光を照射して露光を行い、画素部形成領域の親インク性を選択的に増大させてもよい。光触媒としては、酸化チタン等が挙げられる。
また、カラーフィルタは、基材と画素部との間に、ヒドロキシプロピルセルロース等を含むインク受容層を備えていてもよい。
また、カラーフィルタは、画素部上に保護層を備えていてもよい。この保護層は、カラーフィルタを平坦化するとともに、画素部に含有される成分、又は、画素部に含有される成分及び光触媒含有層に含有される成分の液晶層への溶出を防止するために設けられるものである。保護層を構成する材料は、公知のカラーフィルタ用保護層として使用されているものを使用できる。
また、カラーフィルタ及び光変換層の製造では、インクジェット方式ではなく、フォトリソグラフィ方式で画素部を形成してもよい。この場合、まず、基材にインク組成物を層状に塗工し、インク組成物層を形成する。次いで、インク組成物層をパターン状に露光した後、現像液を用いて現像する。このようにして、インク組成物の硬化物からなる画素部が形成される。現像液は、通常アルカリ性であるため、バインダーポリマーとして、アルカリ可溶性のポリマーが用いられる。ただし、材料の使用効率の観点では、インクジェット方式がフォトリソグラフィ方式よりも優れている。これはフォトリソグラフィ方式では、その原理上、材料のほぼ2/3以上を除去することとなり、材料が無駄になるからである。このため、本実施形態では、インクジェットインクを用い、インクジェット方式により画素部を形成することが好ましい。
また、本実施形態の光変換層の画素部には、上記した発光性ナノ結晶粒子に加えて、発光性ナノ結晶粒子の発光色と概ね同色の顔料を更に含有させてもよい。例えば、液晶表示素子の画素部として、青色光を吸収して発光する発光性ナノ結晶粒子を含有する画素部を採用する場合、光源からの光として青色光乃至は450nmにピークを持つ準白色光を用いるが、画素部における発光性ナノ結晶粒子の濃度が十分でない場合には、液晶表示素子を駆動させた際に光源からの光が光変換層を透過してしまう。この光源からの透過光(青色光、漏れ光)と、発光性ナノ結晶粒子が発する光とが混色してしまう。このような混色の発生による色再現性の低下を防止する観点から、光変換層の画素部に顔料を含有させてもよい。顔料を画素部に含有させるため、インク組成物に顔料を含有させてもよい。
また、本実施形態の光変換層中の赤色画素部(R)、緑色画素部(G)、及び青色画素部(B)のうち、一種又は二種を発光性ナノ結晶粒子を含有させずに色材を含有させた画素部としてもよい。ここで使用し得る色材としては、公知の色材を使用することができ、例えば、赤色画素部(R)に用いる色材としては、ジケトピロロピロール顔料及び/又はアニオン性赤色有機染料が挙げられる。緑色画素部(G)に用いる色材としては、ハロゲン化銅フタロシニアン顔料、フタロシアニン系緑色染料、フタロシアニン系青色染料とアゾ系黄色有機染料との混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。青色画素部(B)に用いる色材としては、ε型銅フタロシニアン顔料及び/又はカチオン性青色有機染料が挙げられる。これらの色材の使用量は、光変換層に含有させる場合には、透過率の低下を防止できる観点から、画素部(インク組成物の硬化物)の全質量を基準として、1~5質量%であることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた材料は全て、アルゴンガスを導入して溶存酸素を除去したものを用いた。酸化チタンについては、混合前に、1mmHgの減圧下、2時間、120℃で加熱し、アルゴンガス雰囲気下で放冷したものを用いた。実施例で用いた液状の材料は、混合前にあらかじめ、モレキュラーシーブス3Aで48時間以上脱水して用いた。
<InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子分散体1(不揮発分:47.5質量%)の準備>
[赤色発光ナノ結晶粒子コア(InPコア)の合成]
トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)5g、酢酸インジウム1.46g(5mmol)、およびラウリン酸3.16g(15.8mmol)を反応フラスコに添加し混合物を得た。窒素環境下において当該混合物を160℃にて40分間加熱した後、真空下で250℃にて20分間加熱した。次いで、反応温度(混合物の温度)を窒素(N2)環境の下で300℃に昇温した。この温度で、1-オクタデセン(ODE)3gとトリス(トリメチルシリル)ホスフィン0.25g(1mmol)との混合物を反応フラスコに迅速に導入し、反応温度を260℃に維持した。5分後、ヒーターの除去により反応を停止させ、得られた反応溶液を室温に冷却した。次いで、トルエン8mL、エタノール20mLをグローブボックス中の反応溶液に添加した。続いて遠心分離を行いInPナノ結晶粒子を沈殿させた後、上澄みの傾瀉によって、InPナノ結晶粒子を得た。次いで、得られたInPナノ結晶粒子をヘキサンに分散させて、InPナノ結晶粒子のヘキサン分散液(InPナノ結晶粒子含有量:5質量%)を得た。
[ラウリン酸インジウム溶液の調製]
1-オクタデセン(ODE)10g、酢酸インジウム146mg(0.5mmol)及びラウリン酸300mg(1.5mmol)を反応フラスコに添加し混合物を得た。真空下において混合物を140℃にて2時間加熱することで透明な溶液(ラウリン酸インジウム前駆体溶液)を得た。この前駆体溶液は、必要になるまで室温でグローブボックス中に維持した。なお、ラウリン酸インジウムは室温では溶解性が低く沈殿しやすいため、前駆体溶液を使用する際は、前駆体溶液(ODE混合物)中の沈殿したラウリン酸インジウムを約90℃に加熱して透明な溶液を形成した後、所望量を計量して用いた。
[赤色発光ナノ結晶粒子の成長]
InPナノ結晶粒子(InPコア)のヘキサン分散液、およびラウリン酸インジウム溶液を反応フラスコに仕込み、混合物を得た。InPコアのヘキサン分散液及びラウリン酸インジウム溶液の仕込み量は、それぞれ0.5g(InPコア含有量:25mg)、及び5gとした。真空下、室温にて混合物を10分間静置した後、窒素ガスでフラスコ内を常圧に戻し、混合物の温度を230℃に上げ、その温度で2時間保持してヘキサンをフラスコ内部から除去した。次いで、フラスコ内の温度を250℃まで昇温し、1-オクタデセン(ODE)3gとトリス(トリメチルシリル)ホスフィン0.03g(0.125mmol)の混合物を反応フラスコに迅速に導入し、反応温度を230℃に維持した。5分後、ヒーターの除去により反応を停止させ、得られた反応溶液を室温に冷却した。次いでトルエン8mL、エタノール20mLをグローブボックス中の反応溶液に添加した。続いて遠心分離を行いInPナノ結晶粒子を沈殿させた後、上澄みの傾瀉によって、InPナノ結晶粒子を得た。次いで、得られたInPナノ結晶粒子をヘキサンに分散させて、InPナノ結晶粒子の分散液(InPナノ結晶粒子含有量:5質量%)を得た。
[赤色発光ナノ結晶粒子シェル(ZnSeS/ZnSシェル)の合成]
次いで、上記で得られたヘキサン分散液2.5gを反応フラスコに仕込み、オレイン酸0.7gを反応フラスコに添加し、温度を80℃に上げ、2時間保持した。次いで、この反応混合物中に、ODE1mLに溶解したジエチル亜鉛14mg、ビス(トリメチルシリル)セレニド8mgおよびヘキサメチルジシラチアン7mg(ZnSeS前駆体溶液)を滴下し、200℃に昇温して10分保持することによって、厚さ0.5モノレイヤーのZnSeSシェルを形成させた。
次いで、温度を140℃に上げ、30分間保持した。次に、この反応混合物中にODE2mLに溶解したジエチル亜鉛69mgおよびヘキサメチルジシラチアン66mg(ZnS前駆体溶液)を滴下し温度を200℃に上げて30分保持することにより、厚さ2モノレイヤーのZnSシェルを形成させた。ZnS前駆体溶液の滴下の10分後に、ヒーターの除去により反応を停止させた。次いで、反応混合物を室温に冷却し、得られた白色沈殿物を遠心分離によって除去することにより、InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子が分散した透明なナノ結晶粒子分散液(ODE分散液)を得た。
[発光性ナノ結晶粒子用のリガンドの合成]
JEFAMINE M-1000(Huntsman社製)をフラスコに投入した後、窒素ガス環境にて攪拌しながら、そこにJEFAMINE M-1000と等モル量の無水コハク酸(Sigma-Aldrich社製)を添加した。フラスコの内温を80℃に昇温し、8時間攪拌することにより、淡い黄色の粘稠な油状物として下記式(1A)で表されるリガンドを得た。
[リガンド交換によるInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子分散体1の作製]
上記で得られたリガンド30mgを上記で得られたナノ結晶粒子のODE溶液1mLに添加した。次いで、90℃で5時間加熱することによりリガンド交換を行った。リガンド交換の進行に伴いナノ結晶粒子の凝集がみられた。リガンド交換終了後、上澄みの傾瀉を行い、ナノ結晶粒子にエタノール3mL加え、超音波処理して再分散させた。n-ヘキサン10mLをリガンド交換の後のナノ結晶粒子溶液3mLへ添加した。続いて、遠心分離を行いナノ結晶粒子を沈殿させた後、上澄みの傾瀉および真空下での乾燥によってナノ結晶粒子(上記式(1A)で表されるリガンドで修飾されたInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子)を得た。得られたナノ結晶粒子を光重合性化合物に分散させることにより、発光性ナノ結晶粒子分散体1(不揮発分:47.5質量%)を得た。
<光酸発生剤の準備>
光酸発生剤として、トリアリールスルホニウム・(Rf)nPF6-n塩の50%プロピレンカーボネート溶液(サンアプロ株式会社製、商品名「CPI-200K」)を準備した。
<光重合性化合物の準備>
光重合性化合物として、以下の材料を準備した。
(脂環式エポキシ化合物)
・単官能:1,2-エポキシ-4-ビニルシクロへキサン(株式会社ダイセル、商品名:セロキサイド2000)
・二官能:1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(巴工業株式会社、商品名:LDO)
(オキセタン化合物)
・単官能:(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート(宇部興産株式会社、商品名:ETERNACOLL OXMA)
・二官能:ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル(東亜合成株式会社、商品名:OXT-221)
<光増感化合物の準備>
光増感化合物として、9,10-ジブトキシアントラセン(川崎化成株式会社、商品名「UVS-1331」、極大吸収波長365nm、382nm、及び405nm、最大吸収波長382nm)を準備した。
<ジオール化合物の準備>
ジオール化合物として、1,4-ブタンジオール(東京化成工業株式会社製)を準備した。
<光散乱性粒子の準備>
光散乱性粒子として、酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名「CR-60-2」、平均粒子径(体積平均径):210nm)を準備した。
<高分子分散剤の準備>
高分子分散剤として、アジスパーPB-821(味の素ファインテクノ社製、商品名「アジスパー」登録商標)を準備した。
<光散乱性粒子分散体の調製>
アルゴンガスで満たした容器内で、酸化チタンを30.0g、高分子分散剤を0.9g、及びオキセタン化合物を49.5g混合した後、得られた混合物にジルコニアビーズ(直径:1.25mm)を加え、ペイントコンディショナーを用いて2時間振とうさせることで混合物の分散処理し、ポリエステルメッシュフィルターにてジルコニアビーズを除去することで光散乱性粒子分散体1を得た。
<実施例1>
(1)インク組成物(インクジェットインク)の調製
発光性ナノ結晶粒子分散体1を4.21g、光散乱性粒子分散体1を5.23g、光酸発生剤を0.47g、及び光増感剤を0.09g、混合した後、混合物を孔径5μmのフィルターでろ過することにより、インク組成物を得た。インク組成物中の光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径MV)は0.22μmであった。なお、本実施例において、上記インク組成物中の光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径MV)は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計(日機装株式会社製、商品名「ナノトラック」)を用いて測定した。
(2)評価
[インク組成物の吐出性]
インクジェットプリンター(富士フイルムDimatix社製、商品名「DMP-2850」)を用いて、インク組成物を吐出試験を実施した。吐出試験では、インク組成物を10分間連続で吐出させた(インクジェットプリンターのインクジェットヘッドの温度:40℃)。なお、本インクジェットプリンターのインクを吐出するヘッド部には16個のノズルが形成されており、1ノズル当たり、吐出一回あたりのインク組成物の使用量は10pLとした。吐出安定性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:連続吐出可能(16個のノズル中、10ノズル以上で連続吐出可能)
B:連続吐出不可(16個のノズル中、連続吐出可能なノズル数が9ノズル以下)
[塗膜の硬化性]
続いて、上記(1)で得られたインク組成物を用いて、以下の硬化性を評価した。すなわち、ガラス基板上に、スピンコーターにより、インク組成物の塗膜(膜厚6μm)を形成した。形成された塗膜に対して、UVを照射した。UVを照射した後の上記塗膜表面を綿棒でこすり、硬化性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:硬化(綿棒の先にインク組成物が付着しない)
B:未硬化(綿棒の先にインク組成物が付着する)
<実施例2~4、及び比較例1~7>
インク組成物の組成を表1に記載の組成になるよう変更した他は、実施例1と同様にして、実施例2~4、及び比較例1~7のインク組成物を得た。各インク組成物中の光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径MV)は、それぞれ、0.22μm(実施例2)、0.23μm(実施例3)、及び0.23μm(実施例4)、0.22μm(比較例1)、0.23μm(比較例2)、0.23μm(比較例3)、0.23μm(比較例4)、0.22μm(比較例5)、0.22μm(比較例6)、及び0.23μm(比較例7)であった。実施例2~4、及び比較例1~7で得られた各インク組成物を用いて、実施例1と同様にして、吐出性及び塗膜の硬化性の評価を行った。結果を表1に示す。