以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<インク組成物>
一実施形態のインク組成物は、発光性ナノ結晶粒子と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、を含有し、エポキシ樹脂のエポキシ基量が、発光性ナノ結晶粒子1gあたり0.0040mol以下である。このインク組成物は、例えば、フォトリソグラフィ方式、インクジェット方式等の方法によりカラーフィルタの画素部を形成するために用いられる、カラーフィルタ用インク組成物である。
ところで、従来のインク組成物を用いてインクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する場合、優れた吐出安定性と優れた硬化性とを両立することが困難であった。そのため、インクジェット方式により優れた外部量子効率を有するカラーフィルタ画素部を得ることは一層困難であった。一方、実施形態のインク組成物によれば、インクジェット方式であっても、優れた外部量子効率を有するカラーフィルタ画素部を得ることができる。
実施形態のインク組成物は、公知慣用のカラーフィルタの製造方法に用いるインクとして適用が可能であるが、比較的高額である発光性ナノ結晶粒子、溶剤等の材料を無駄に消費せずに、必要な箇所に必要な量を用いるだけでカラーフィルタ画素部(光変換層)を形成できる点で、フォトリソグラフィ方式用よりも、インクジェット方式用に適合するよう、適切に調製して用いることが好ましい。すなわち、実施形態のインク組成物は、インクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する用途に好適に用いられる。
以下では、発光性ナノ結晶粒子と、光散乱性粒子と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、を含有する、インクジェット方式に用いられるカラーフィルタ用インク組成物(カラーフィルタ用インクジェットインク)を例に挙げて説明する。
[発光性ナノ結晶粒子]
発光性ナノ結晶粒子は、励起光を吸収して蛍光又は燐光を発光するナノサイズの結晶体であり、例えば、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。
発光性ナノ結晶粒子は、例えば、所定の波長の光を吸収することにより、吸収した波長とは異なる波長の光(蛍光又は燐光)を発することができる。発光性ナノ結晶粒子は、605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(赤色光)を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子(赤色発光性ナノ結晶粒子)であってよく、500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(緑色光)を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子(緑色発光性ナノ結晶粒子)であってよく、420~480nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(青色光)を発する、青色発光性のナノ結晶粒子(青色発光性ナノ結晶粒子)であってもよい。本実施形態では、インク組成物がこれらの発光性ナノ結晶粒子のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。また、発光性ナノ結晶粒子が吸収する光は、例えば、400nm以上500nm未満の範囲の波長の光(青色光)、又は、200nm~400nmの範囲の波長の光(紫外光)であってよい。なお、発光性ナノ結晶粒子の発光ピーク波長は、例えば、分光蛍光光度計を用いて測定される蛍光スペクトル又は燐光スペクトルにおいて確認することできる。
赤色発光性のナノ結晶粒子は、665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下又は630nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上又は605nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。これらの上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
緑色発光性のナノ結晶粒子は、560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下又は530nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上又は500nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
青色発光性のナノ結晶粒子は、480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下又は450nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上又は420nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子が発する光の波長(発光色)は、井戸型ポテンシャルモデルのシュレディンガー波動方程式の解によれば、発光性ナノ結晶粒子のサイズ(例えば粒子径)に依存するが、発光性ナノ結晶粒子が有するエネルギーギャップにも依存する。そのため、使用する発光性ナノ結晶粒子の構成材料及びサイズを変更することにより、発光色を選択することができる。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料を含む、発光性ナノ結晶粒子(発光性半導体ナノ結晶粒子)であってよい。発光性半導体ナノ結晶粒子としては、量子ドット、量子ロッド等が挙げられる。これらの中でも、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、量子ドットが好ましい。
発光性半導体ナノ結晶粒子は、第一の半導体材料を含むコアのみからなっていてよく、第一の半導体材料を含むコアと、第一の半導体材料とは異なる第二の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェルと、を有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアのみからなる構造(コア構造)であってよく、コアとシェルからなる構造(コア/シェル構造)であってもよい。また、発光性半導体ナノ結晶粒子は、第二の半導体材料を含むシェル(第一のシェル)の他に、第一及び第二の半導体材料とは異なる第三の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェル(第二のシェル)を更に有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアと第一のシェルと第二のシェルとからなる構造(コア/シェル/シェル構造)であってもよい。コア及びシェルのそれぞれは、2種以上の半導体材料を含む混晶(例えば、CdSe+CdS、CIS+ZnS等)であってよい。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料として、II-VI族半導体、III-V族半導体、I-III-VI族半導体、IV族半導体及びI-II-IV-VI族半導体からなる群より選択される少なくとも1種の半導体材料を含むことが好ましい。
具体的な半導体材料としては、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe;GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb;SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe;Si、Ge、SiC、SiGe、AgInSe2、CuGaSe2、CuInS2、CuGaS2、CuInSe2、AgInS2、AgGaSe2、AgGaS2、C、Si及びGeが挙げられる。発光性半導体ナノ結晶粒子は、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、InP、InAs、InSb、GaP、GaAs、GaSb、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、Si、C、Ge及びCu2ZnSnS4からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
赤色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がCdSであり内側のコア部がCdSeであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がCdSであり内側のコア部がZnSeであるナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、InPのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、CdSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、ZnSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。
緑色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。
青色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、ZnSeのナノ結晶粒子、ZnSのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSeであり内側のコア部がZnSであるナノ結晶粒子、CdSのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。半導体ナノ結晶粒子は、同一の化学組成で、それ自体の平均粒子径を変えることにより、当該粒子から発光させるべき色を赤色にも緑色にも変えることができる。また、半導体ナノ結晶粒子は、それ自体として、人体等に対する悪影響が極力低いものを用いることが好ましい。カドミウム、セレン等を含有する半導体ナノ結晶粒子を発光性ナノ結晶粒子として用いる場合は、上記元素(カドミウム、セレン等)が極力含まれない半導体ナノ結晶粒子を選択して単独で用いるか、上記元素が極力少なくなるようにその他の発光性ナノ結晶粒子と組み合わせて用いることが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の形状は特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の形状は、例えば、球状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等であってもよい。しかしながら、発光性ナノ結晶粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性及び流動性をより高められる点で好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、所望の波長の発光が得られやすい観点、並びに、分散性及び保存安定性に優れる観点から、1nm以上であってよく、1.5nm以上であってよく、2nm以上であってもよい。所望の発光波長が得られやすい観点から、40nm以下であってよく、30nm以下であってよく、20nm以下であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
発光性ナノ結晶粒子は、分散安定性の観点から、その表面に有機リガンドを有することが好ましい。有機リガンドは、例えば、発光性ナノ結晶粒子の表面に配位結合されていてよい。換言すれば、発光性ナノ結晶粒子の表面は、有機リガンドによってパッシベーションされていてよい。また、インク組成物が後述する高分子分散剤を更に含有する場合には、発光性ナノ結晶粒子は、その表面に高分子分散剤を有していてもよい。本実施形態では、例えば、上述の有機リガンドを有する発光性ナノ結晶粒子から有機リガンドを除去し、有機リガンドと高分子分散剤とを交換することで発光性ナノ結晶粒子の表面に高分子分散剤を結合させてよい。ただし、インクジェットインクにした際の分散安定性の観点では、有機リガンドが配位したままの発光性ナノ結晶粒子に対して高分子分散剤が配合されることが好ましい。
有機リガンドとしては、エポキシ樹脂及び有機溶剤等との親和性を確保するための官能基(以下、単に「親和性基」ともいう。)と、発光性ナノ結晶粒子と結合可能な官能基(発光性ナノ結晶粒子への吸着性を確保するための官能基)と、を有する化合物であることが好ましい。親和性基としては、置換又は無置換の脂肪族炭化水素基であってよい。当該脂肪族炭化水素基は、直鎖型であってもよく分岐構造を有していてもよい。また、脂肪族炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよく、不飽和結合を有していなくてもよい。置換の脂肪族炭化水素は、脂肪族炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子で置換された基であってもよい。置換の脂肪族炭化水素基は、例えば、(ポリ)オキシアルキレン基を含んでいてよい。ここで、「(ポリ)オキシアルキレン基」とは、オキシアルキレン基、及び、2以上のアルキレン基がエーテル結合で連結したポリオキシアルキレン基の少なくとも1種を意味する。発光性ナノ結晶粒子と結合可能な官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン基、ホスフィンオキサイド基、アルコキシシリル基が挙げられる。有機リガンドとしては、例えば、TOP(トリオクチルホスフィン)、TOPO(トリオクチルホスフィンオキサイド)、オレイン酸、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、及びオクチルホスフィン酸(OPA)が挙げられる。
有機リガンドは、好ましくは、ポリオキシアルキレン基を含む主鎖と、当該主鎖の少なくとも一方の末端に発光性ナノ結晶粒子と結合可能な1個以上の官能基とを有する。主鎖に含まれるポリオキシアルキレン基は、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基であってよい。主鎖は、ポリオキシアルキレン基以外に、例えば、置換又は無置換の炭化水素基を有している。官能基は、例えば、発光性ナノ結晶粒子に配位結合可能な基である。官能基は、例えば、上記の発光性ナノ結晶粒子と結合可能な官能基を含んでいてよい。ここで、主鎖とは、当該化合物を構成している分子鎖のうち最も長いものをいう。置換又は無置換の炭化水素基の炭素数は、例えば、1~10であってよい。置換の炭化水素基は、炭素原子の一部が、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等で置換されていてよい。
有機リガンドは、主鎖の一方の末端に発光性ナノ結晶粒子と結合可能な第1の官能基を1個以上有し、主鎖の他方の末端に第1の官能基と異なる第2の官能基を有していてよい。第1の官能基は、発光性ナノ結晶粒子と結合可能な官能基として上述した基と同じであってよい。第1の官能基の数は、1以上であってよく、2以上であってよく、2であってよい。第2の官能基は、発光性ナノ結晶粒子と結合可能な官能基として上述した基と同じであってよく、当該官能基とは異なるその他の基であってもよい。その他の基は、例えば、シクロアルキル基、アリール基であってよい。第2の官能基の数は、1以上であってよく、1であってよい。
一実施形態において、有機リガンドは、下記式(1-1)で表される有機リガンドであってもよい。
[式(1-1)中、pは0~50の整数を示し、qは0~50の整数を示す。]
式(1-1)で表される有機リガンドにおいて、p及びqのうち少なくとも一方が1以上であることが好ましく、p及びqの両方が1以上であることがより好ましい。
一実施形態において、第1の官能基がカルボキシル基であり、かつ第2の官能基がヒドロキシル基であり、有機リガンドが第1の官能基を2個以上有していてよい。すなわち、一実施形態において、有機リガンドは、主鎖の一方の末端にカルボキシル基を1個以上有し、主鎖の他方の末端にヒドロキシル基を有していてよく、主鎖の一方の末端カルボキシル基を2個以上有し、主鎖の他方の末端にヒドロキシル基を有していてよい。
有機リガンドは、例えば、下記式(1-2)で表される有機リガンドであってよい。
式(1-2)中、A1は、カルボキシル基を含む1価の基を示し、A2は、ヒドロキシル基を含む1価の基を示し、Rは、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、Lは、置換又は無置換のアルキレン基を示し、rは0以上の整数を示す。カルボキシル基を含む1価の基におけるカルボキシル基の数は、2個以上であってよく、2個以上4個以下であってよく、2個であってよい。Lで示されるアルキレン基の炭素数は、例えば、1~10であってよい。Lで示されるアルキレン基は、炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子で置換されていてもよい。rは、例えば、1~100の整数であってよく、10~20の整数であってもよい。
有機リガンドは、好ましくは下記式(1-2A)で表される有機リガンドである。
式(1-2A)中、rは上記と同義である。
有機リガンドは、インク組成物の外部量子収率、及び、インク組成物の硬化物の外部量子収率の耐熱性の観点から、式(1-2A)で表される有機リガンドが望ましい。
発光性ナノ結晶粒子としては、有機溶剤、光重合性化合物等の中にコロイド形態で分散しているものを用いることができる。有機溶剤中で分散状態にある発光性ナノ結晶粒子の表面は、上述の有機リガンドによってパッシベーションされていることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、トルエン、オクタン、クロロベンゼン、テトラリン、ジフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、又はそれらの混合物が挙げられる。
発光性ナノ結晶粒子としては、市販品を用いることができる。発光性ナノ結晶粒子の市販品としては、例えば、NN-ラボズ社の、インジウムリン/硫化亜鉛、D-ドット、CuInS/ZnS、アルドリッチ社の、InP/ZnS等が挙げられる。
発光性ナノ結晶粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、25質量%以上であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量が5質量%以上である場合、優れた発光強度が得られるため、このようなインク組成物はカラーフィルタ用途として好適に用いられる。同様の観点から、発光性ナノ結晶粒子の含有量は、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、50質量%以下であってよく、40質量%以下であってもよく、35質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、吐出安定性により優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、50質量%以下である。また、発光性ナノ結晶粒子の含有量が50質量%以下である場合、優れた発光強度が得られるため、このようなインク組成物はカラーフィルタ用途として好適に用いられる。同様の観点から、発光性ナノ結晶粒子の含有量は、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、40質量%以下であってもよく、35質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、5~50質量%、10~50質量%、15~40質量%、15~35質量%、20~35質量%又は20~30質量%であってよい。なお、本明細書中、「インク組成物の不揮発分の質量」とは、インク組成物が溶剤を含む場合、インク組成物の全質量から溶剤の質量を除いた質量を指し、インク組成物が溶剤を含まない場合、インク組成物の全質量を指す。
インク組成物は、発光性ナノ結晶粒子として、赤色発光性ナノ結晶粒子、緑色発光性ナノ結晶粒子及び青色発光性ナノ結晶粒子のうちの2種以上を含んでいてもよいが、好ましくはこれらの粒子のうちの1種のみを含む。発光性ナノ結晶粒子が赤色発光性ナノ結晶粒子を含む場合、緑色発光性ナノ結晶粒子の含有量及び青色発光性ナノ結晶粒子の含有量は、発光性ナノ結晶粒子の全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。発光性ナノ結晶粒子が緑色発光性ナノ結晶粒子を含む場合、赤色発光性ナノ結晶粒子の含有量及び青色発光性ナノ結晶粒子の含有量は、発光性ナノ結晶粒子の全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂は、一分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有し、好ましくは、一分子内に2個以上のエポキシ基を有する。エポキシ樹脂は、例えば、活性水素を2以上有する化合物とエピクロルヒドリンとの縮合物、オレフィンの酸化物等であってよい。上記縮合物は、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等であってよく、好ましくはグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。グリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック等のヒドロキシル基を2以上有する化合物とエピクロルヒドリンとの縮合物である。
エポキシ樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー((メタ)アクリルモノマー)をモノマー単位として含んでいなくてよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及びそれに対応する「メタクリロイル基」を意味する。
エポキシ樹脂は、例えば、下記式(2)で表される化合物であってよい。
式(2)中、Xは芳香環を有するn価の有機基を示し、nは2以上の整数を示す。Xは、ベンゼン環及びナフタレン環からなる群より選択される少なくとも1種を有していてよく、好ましくはベンゼン環を有する。これらの芳香環は、置換基を有していても有していなくてもよい。
式(2)で表されるエポキシ樹脂は、例えば、下記式(3)で表される化合物であってよい。
式(3)中、Y1は、芳香環を有する2価の有機基を示し、n1は、0以上の整数を示す。Y1は、ベンゼン環及びナフタレン環からなる群より選択される少なくとも1種を有していてよく、好ましくはベンゼン環を有する。これらの芳香環は、置換基を有していても有していなくてもよい。複数存在するY1は、互いに同一であってよく、異なっていてもよい。n1は、例えば、0~10の整数であってよい。
式(3)で表されるエポキシ樹脂は、好ましくは、下記式(3A)で表される化合物である。
式(3A)中、R1は、1価の炭化水素基を示し、Z1は、単結合、アルキレン基、アルキリデン基、シクロアルキレン基、ビシクロアルキレン基を示し、n1Aは、0以上の整数を示し、m1Aは、0~4の整数を示す。複数存在するR1、Z1及びm1Aは、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。R1は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アリール基であってよい。R1で示される炭化水素基の炭素数は、例えば1~10であってよい。Z1で示されるアルキレン基の炭素数は、例えば1~10であってよい。Z1で示されるアルキリデン基の炭素数は、例えば2~10であってよい。Z1で示されるシクロアルキレン基の炭素数は、例えば5~10であってよい。Z1で示されるビシクロアルキレン基の炭素数は、例えば8~14であってよい。
式(2)で表されるエポキシ樹脂は、例えば、下記式(4)で表される化合物であってもよい。
式(4)中、Y2は、芳香環を有する2価の有機基を示し、n2は、0以上の整数を示す。Y2は、ベンゼン環及びナフタレン環からなる群より選択される少なくとも1種を有していてよく、好ましくはベンゼン環を有する。これらの芳香環は、置換基を有していても有していなくてもよい。複数存在するY2は、互いに同一であってよく、異なっていてもよい。n2は、例えば、0~20の整数であってよい。
式(4)で表されるエポキシ樹脂は、好ましくは、下記式(4A)で表される化合物である。
式(4A)中、R2は、1価の炭化水素基を示し、Z2は、単結合、アルキレン基、アルキリデン基、シクロアルキレン基、ビシクロアルキレン基を示し、n2Aは、0以上の整数を示し、m2Aは、0~4の整数を示す。複数存在するR2、Z2及びm2Aは、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。R2は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アリール基であってよい。R2で示される炭化水素基の炭素数は、例えば1~10であってよい。Z2で示されるアルキレン基の炭素数は、例えば1~10であってよい。Z2で示されるアルキリデン基の炭素数は、例えば2~10であってよい。Z2で示されるシクロアルキレン基の炭素数は、例えば5~10であってよい。Z1で示されるビシクロアルキレン基の炭素数は、例えば8~14であってよい。
エポキシ樹脂としては、1種のエポキシ樹脂を単独で用いてよく、複数のエポキシ樹脂を組み合わせて用いてもよい。
インク組成物中に存在するエポキシ樹脂のエポキシ基量は、発光性ナノ結晶粒子1gあたり、0.0040mol以下であり、外部量子効率を更に向上させる観点から、好ましくは、0.0030mol以下、0.0020mol以下、又は0.0010mol以下である。インク組成物中に存在するエポキシ樹脂のエポキシ基量は、発光性ナノ結晶粒子1gあたり、例えば、0.00010mol以上、又は0.00030mol以上であってよい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq)は、外部量子効率を向上させる観点から、195以上、400以上、又は1000以上であってよく、硬化性が良好になり、膜強度が向上する観点から、4000以下であってよい。なお、エポキシ当量は、JIS K7236:2001に記載の方法に準じて測定することができる。
エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、「EPICLON 860」(商品名、DIC株式会社製)、「EPICLON 1050」(商品名、DIC株式会社製)、「EPICLON 3050」(商品名、DIC株式会社製)、「EPICLON 7050」(商品名、DIC株式会社製)、「EPICLON HM-091」(商品名、DIC株式会社製)等のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、「EPICLON 850-S」(商品名、DIC株式会社製)、「EPICLON EXA-850CRP」(商品名、DIC株式会社製)等のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、「EPICLON N-865」(商品名、DIC株式会社製)等の変性ノボラック型エポキシ樹脂、「EPICLON HP-4032D」(商品名、DIC株式会社製)等のナフタレン型エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂は、信頼性に優れるカラーフィルタ画素部が得られやすい観点から、アルカリ不溶性であってよい。本明細書中、エポキシ樹脂がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃におけるエポキシ樹脂の溶解量が、エポキシ樹脂の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。エポキシ樹脂の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
エポキシ樹脂の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。エポキシ樹脂の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、及び、より優れた光学特性(例えば外部量子効率)が得られる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、90質量%以下であってよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
エポキシ樹脂は、熱により架橋し硬化する熱硬化性樹脂として用いられてよく、光の照射によって重合する光重合性化合物(樹脂)として用いられてもよい。言い換えれば、インク組成物は、エポキシ樹脂を含む熱硬化性成分又は光重合性成分を含有していてよい。また、これらに加えて、それ自体は重合反応性のない重合体を更に用いてもよい。
エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂として用いられる場合、通常、硬化剤と組み合わせて用いられる。硬化剤としては、例えば、酸無水物、フェノール系化合物、アミン系化合物等が挙げられる。これらの硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化剤は、好ましくは、酸無水物及びフェノール系化合物、アミン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。また、エポキシ樹脂を熱硬化性樹脂として用いる場合、オニウム塩類、有機金属錯体、3級アミン、イミダゾール類等を用いて自己重合させてもよい。
酸無水物系硬化剤としては、4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(4M-HHPA)、3-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-3,6 エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、3,6 エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
フェノール系化合物(フェノール系硬化剤)としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン、ナフタレンジオール、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、カリックスアレーン、ノボラック型フェノール樹脂(例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ビスフェノールSノボラック樹脂、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、並びに、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物))、アラルキル型フェノール樹脂(例えば、ザイロック樹脂等のフェノールアラルキル樹脂及びナフトールアラルキル樹脂)、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミン等でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)などの多価フェノール化合物などが挙げられる。外部量子効率の向上効果に優れる観点から、フェノール系化合物は、ノボラック型フェノール樹脂を含むことが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂及びビスフェノールAノボラック樹脂が好ましく用いられる。
ノボラック型フェノール樹脂の具体例としては、DIC株式会社製の「フェノライトTD-2131」、「フェノライトTD-2090」(商品名)、日本化薬株式会社製の「GPH-65」、「GPH-103」(商品名)等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミン類、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環族ポリアミン類等、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂が挙げられる。
硬化剤は、インク組成物の硬化物の外部量子収率の耐熱性の観点からは、酸無水物系硬化剤が望ましく、インク組成物の硬化物の硬化性及びインク組成物の粘度安定性の観点からは、フェノール系硬化剤が望ましい。
硬化剤の含有量は、例えば、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、40質量%以下であってよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。
熱硬化の場合、インク組成物は、更に硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤は単独で用いてもよく、上記硬化剤と併用してもよい。硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化反応を促す種々の化合物を使用することができる。硬化促進剤としては、例えば、リン系化合物、第3級アミン化合物、イミダゾール化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。リン系化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィンが挙げられる。第3級アミン化合物としては、例えば1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが挙げられる。イミダゾール化合物としては、例えば1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールが挙げられる。
エポキシ樹脂は、光重合性化合物として用いられる場合、光重合開始剤と共に用いられる。光ラジカル重合性化合物は光ラジカル重合開始剤と共に用いられ、光カチオン重合性化合物は光カチオン重合開始剤と共に用いられる。言い換えれば、インク組成物は、光重合性化合物及び光重合開始剤を含む光重合性成分を含有していてよい。
光重合開始剤としては、光照射によってエポキシ基を開環重合させるための開始剤であれば特に限定はされず、例えばイオン性光酸発生型であってもよく、非イオン性光酸発生型であってもよい。
イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては特に制限されず、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩などのオニウム塩類、鉄―アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール-アルミニウム錯体などの有機金属錯体類が挙げられる。これらのイオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N-ヒドロキシイミドホスホナート等が挙げられる。これらの非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
光硬化の場合、光の感度向上及び光源の光の波長に感度を持たせるために、適宜、増感剤を添加することができる。これら増感剤は、上記光カチオン重合開始剤と併用して使用し、硬化性の調整を行うことができる。添加する増感剤としては、アントラセン系化合物、チオキサントン系化合物等を挙げることができる。
また、光硬化の場合、硬化させるための光源としては、使用する光重合開始剤や増感剤の吸収波長を発光する光源を使用すればよく、通常200~450nmの範囲の波長を含む光源、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、発光ダイオード等を使用できる。
光重合開始剤の含有量は、インク組成物の硬化性の観点から、光重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上であってよく、0.5質量部以上であってもよく、1質量部以上であってもよい。光重合開始剤の含有量は、画素部(インク組成物の硬化物)の経時安定性の観点から、光重合性化合物100質量部に対して、40質量部以下であってよく、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。
以上、本実施形態のインク組成物に含有される各成分について説明したが、本実施形態のインク組成物は、上記以外の成分(他の成分)を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、光散乱性粒子、高分子分散剤、溶剤等が挙げられる。
[光散乱性粒子]
光散乱性粒子は、例えば、光学的に不活性な無機微粒子である。光散乱性粒子は、カラーフィルタ画素部に照射された光源からの光を散乱させることができる。
光散乱性粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金等の単体金属;シリカ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物、次硝酸ビスマス等の金属塩などが挙げられる。光散乱性粒子は、吐出安定性に優れる観点及び外部量子効率の向上効果により優れる観点から、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛及びチタン酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
光散乱性粒子の形状は、球状、フィラメント状、不定形状等であってよい。しかしながら、光散乱性粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性、流動性及び光散乱性をより高めることができ、優れた吐出安定性を得ることができる点で好ましい。
光散乱性粒子は、表面の少なくとも一部がアルミナで覆われたものであってよい。光散乱性粒子の表面のうち、例えば、50面積%以上がアルミナで覆われていてよく、光散乱性粒子の表面のすべてがアルミナで覆われていてもよい。この場合、光散乱性粒子は、アルミナで表面処理された、光散乱性粒子と言い換えることもできる。
光散乱性粒子の表面の少なくとも一部をアルミナで覆う(アルミナにより表面処理する)方法としては、例えば、湿式処理法(光散乱性粒子スラリーにアルミニウム塩水溶液を添加し、溶液を中和することで光散乱性粒子の表面に吸着させる方法)が挙げられる。光散乱性粒子として、例えば、石原産業株式会社製の「MPT-141」、「CR-50」、「CR-50-2」、「CR-58」、「CR-58-2」、「CR-60」、「CR-60-2」、テイカ株式会社製の「JR405」、「JR603」、「JR605」、「JR701」、「JR806」等の市販品を使用することも可能である。光散乱性粒子の表面は、アルミナと、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及びステアリン酸、ポリシロキサン等の有機物等の他の成分とで覆われていてもよい。
インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、吐出安定性に優れる観点及び外部量子効率の向上効果により優れる観点から、0.05μm以上であってよく、0.2μm以上であってもよく、0.3μm以上であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、吐出安定性に優れる観点から、1.0μm以下であってもよく、0.6μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、0.05~1.0μm、0.05~0.6μm、0.05~0.4μm、0.2~1.0μm、0.2~0.6μm、0.2~0.4μm、0.3~1.0μm、0.3~0.6μm、又は0.3~0.4μmであってもよい。このような平均粒子径(体積平均径)が得られやすい観点から、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、50nm以上であってよく、1000nm以下であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。また、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、例えば透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により各粒子の粒子径を測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
光散乱性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、吐出安定性に優れる観点及び外部量子効率の向上効果により優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。本実施形態では、インク組成物が高分子分散剤を含むため、光散乱性粒子の含有量を上記範囲とした場合であっても光散乱性粒子を良好に分散させることができる。
発光性ナノ結晶粒子の含有量に対する光散乱性粒子の含有量の質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、外部量子効率の向上効果に優れる観点から、0.1以上であってよく、0.2以上であってもよく、0.5以上であってもよい。質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、外部量子効率の向上効果により優れ、インクジェット印刷時の連続吐出性(吐出安定性)に優れる観点から、5.0以下であってよく、2.0以下であってもよく、1.5以下であってもよい。なお、光散乱性粒子による外部量子効率の向上は、次のようなメカニズムによると考えられる。すなわち、光散乱性粒子が存在しない場合、バックライト光は画素部内をほぼ直進して通過するのみであり、発光性ナノ結晶粒子に吸収される機会が少ないと考えられる。一方、光散乱性粒子を発光性ナノ結晶粒子と同一の画素部内に存在させると、その画素部内でバックライト光が全方位に散乱され、それを発光性ナノ結晶粒子が受光することができるため、同一のバックライトを用いていても、画素部における光吸収量が増大すると考えられる。結果的に、このようなメカニズムで漏れ光(光源からの光が発光性ナノ結晶粒子に吸収されずに画素部から漏れ出る光)を防ぐことが可能になり、外部量子効率を向上させることができると考えられる。
[高分子分散剤]
本発明において、高分子分散剤は、750以上の重量平均分子量を有し、かつ、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を有する高分子化合物であり、光散乱性粒子を分散させる機能を有する。高分子分散剤は、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を介して光散乱性粒子に吸着し、高分子分散剤同士の静電反発及び/又は立体反発により、光散乱性粒子をインク組成物中に分散させる。高分子分散剤は、光散乱性粒子の表面と結合して光散乱性粒子に吸着していることが好ましいが、発光性ナノ結晶粒子の表面に結合して発光性ナノ粒子に吸着していてもよく、インク組成物中に遊離していてもよい。
ところで、従来のインク組成物を用いてインクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する場合に吐出安定性が低下する原因の一つとして、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子の凝集等が考えられる。そのため、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子を微細化すること、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子の含有量を減らすこと等により、吐出安定性を向上させることが考えられるが、この場合、外部量子効率の向上効果が低下しやすく、吐出安定性と外部量子効率の向上とを高次元で両立することは困難である。これに対し、高分子分散剤を更に含有するインク組成物によれば、優れた吐出安定性と外部量子効率の向上とを高次元で両立することができる。このような効果が得られる理由は、明らかではないが、高分子分散剤によって、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子(特に、光散乱性粒子)の凝集が顕著に抑制されるためであると推察される。
光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基及び非イオン性官能基が挙げられる。酸性官能基は解離性のプロトンを有しており、アミン、水酸化物イオン等の塩基により中和されていてもよく、塩基性官能基は有機酸、無機酸等の酸により中和されていてもよい。
酸性官能基としては、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、硫酸基(-OSO3H)、ホスホン酸基(-PO(OH)3)、リン酸基(-OPO(OH)3)、ホスフィン酸基(-PO(OH)-)、メルカプト基(-SH)、が挙げられる。
塩基性官能基としては、一級、二級及び三級アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、並びに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ環基等が挙げられる。
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO2-)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキサイド基、ホスフィンスルフィド基が挙げられる。
光散乱性粒子の分散安定性の観点、発光性ナノ結晶粒子が沈降するという副作用を起こしにくい観点、高分子分散剤の合成の容易性の観点、及び官能基の安定性の観点から、酸性官能基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基及びリン酸基が好ましく用いられ、塩基性官能基としては、アミノ基が好ましく用いられる。これらの中でも、カルボキシル基、ホスホン酸基及びアミノ基がより好ましく用いられ、最も好ましくはアミノ基が用いられる。
酸性官能基を有する高分子分散剤は酸価を有する。酸性官能基を有する高分子分散剤の酸価は、好ましくは1~150mgKOH/gである。酸価が1mgKOH/g以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、酸価が150mgKOH/g以下であると、画素部(インク組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。
高分子分散剤の酸価は、高分子分散剤pgを、トルエンとエタノールとを体積比1:1で混合した混合溶液50mL及びフェノールフタレイン試液1mLに溶解させた試料液を準備し、0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液(水酸化カリウム7.0gを蒸留水5.0mLに溶解させ、95vol%エタノールを加えることで1000mLに調整したもの)にて試料液が淡紅色を呈するまで滴定を行う。そして次式により酸価を算出できる。
酸価=q×r×5.611/p
式中、qは滴定に要した0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液の滴定量(mL)を示し、rは滴定に要した0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液の力価を示し、pは高分子分散剤の質量(g)を示す。
塩基性官能基を有する高分子分散剤はアミン価を有する。塩基性官能基を有する高分子分散剤のアミン価は、好ましくは1~200mgKOH/gである。アミン価が1mgKOH/g以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、アミン価が200mgKOH/g以下であると、画素部(インク組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。
高分子分散剤のアミン価は、高分子分散剤xgを、トルエンとエタノールとを体積比1:1で混合した混合溶液50ml及びブロモフェノールブルー試液1mlに溶解させた試料液を準備し、0.5mol/L塩酸にて試料液が緑色を呈するまで滴定を行う。そして、次式によりアミン価を算出できる。
アミン価=y/x×28.05
式中、yは滴定に要した0.5mol/L塩酸の滴定量(ml)を示し、xは高分子分散剤の質量(g)を示す。
高分子分散剤は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、高分子分散剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、高分子分散剤がグラフト共重合体である場合、くし形のグラフト共重合体であってよく、星形のグラフト共重合体であってもよい。高分子分散剤は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレア樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンイミン及びポリアリルアミン等のポリアミン、ポリイミドなどであってよい。
高分子分散剤として、市販品を使用することも可能であり、市販品としては、味の素ファインテクノ(株)製のアジスパーPBシリーズ、BYK社製のDISPERBYKシリーズ並びにBYK-シリーズ、BASF社製のEfkaシリーズ等を使用することができる。
市販品としては、例えば、ビックケミー社製の「DISPERBYK-130」、「DISPERBYK-161」、「DISPERBYK-162」、「DISPERBYK-163」、「DISPERBYK-164」、「DISPERBYK-166」、「DISPERBYK-167」、「DISPERBYK-168」、「DISPERBYK-170」、「DISPERBYK-171」、「DISPERBYK-174」、「DISPERBYK-180」、「DISPERBYK-182」、「DISPERBYK-183」、「DISPERBYK-184」、「DISPERBYK-185」、「DISPERBYK-2000」、「DISPERBYK-2001」、「DISPERBYK-2008」、「DISPERBYK-2009」、「DISPERBYK-2020」、「DISPERBYK-2022」、「DISPERBYK-2025」、「DISPERBYK-2050」、「DISPERBYK-2070」、「DISPERBYK-2096」、「DISPERBYK-2150」、「DISPERBYK-2155」、「DISPERBYK-2163」、「DISPERBYK-2164」、「BYK-LPN21116」及び「BYK-LPN6919」;BASF社製の「EFKA4010」、「EFKA4015」、「EFKA4046」、「EFKA4047」、「EFKA4061」、「EFKA4080」、「EFKA4300」、「EFKA4310」、「EFKA4320」、「EFKA4330」、「EFKA4340」、「EFKA4560」、「EFKA4585」、「EFKA5207」、「EFKA1501」、「EFKA1502」、「EFKA1503」及び「EFKA PX-4701」;ルーブリゾール社製の「ソルスパース3000」、「ソルスパース9000」、「ソルスパース13240」、「ソルスパース13650」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」、「ソルスパース20000」、「ソルスパース21000」、「ソルスパース24000」、「ソルスパース26000」、「ソルスパース27000」、「ソルスパース28000」、「ソルスパース32000」、「ソルスパース32500」、「ソルスパース32550」、「ソルスパース32600」、「ソルスパース33000」、「ソルスパース34750」、「ソルスパース35100」、「ソルスパース35200」、「ソルスパース36000」、「ソルスパース37500」、「ソルスパース38500」、「ソルスパース39000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース54000」、「ソルスパース71000」及び「ソルスパース76500」;味の素ファインテクノ(株)製の「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」、「アジスパーPB881」、「PN411」及び「PA111」;エボニック社製の「TEGO Dispers650」、「TEGO Dispers660C」、「TEGO Dispers662C」、「TEGO Dispers670」、「TEGO Dispers685」、「TEGO Dispers700」、「TEGO Dispers710」及び「TEGO Dispers760W」;楠本化成製の「ディスパロンDA―703―50」、「DA-705」及び「DA-725」などを用いることができる。
高分子分散剤としては、上記のような市販品以外にも、塩基性基を含有するカチオン性モノマー及び/又は酸性基を有するアニオン性モノマーと、疎水基を有するモノマーと、必要により他のモノマー(ノニオン性モノマー、親水基を有するモノマー等)とを共重合させて合成したものを用いることができる。カチオン性モノマー、アニオン性モノマー、疎水基を有するモノマー及び他のモノマーの詳細については、特開2004-250502号公報の段落0034~0036に記載のモノマーを挙げることができる。
また、例えば、特開昭54-37082号公報、特開昭61-174939号公報などに記載のポリアルキレンイミンとポリエステル化合物を反応させた化合物、特開平9-169821号公報に記載のポリアリルアミンの側鎖のアミノ基をポリエステルで修飾した化合物、特開平9-171253号公報に記載のポリエステル型マクロモノマーを共重合成分とするグラフト重合体、特開昭60-166318号公報に記載のポリエステルポリオール付加ポリウレタン等が好適に挙げられる。
高分子分散剤の重量平均分子量は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、外部量子効率の向上効果をより向上させることができる観点から、750以上であってよく、1000以上であってもよく、2000以上であってもよく、3000以上であってもよい。高分子分散剤の重量平均分子量は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、外部量子効率の向上効果をより向上させることができ、また、インクジェットインクの粘度を吐出可能で安定吐出に適する粘度とする観点から、100000以下であってよく、50000以下であってもよく、30000以下であってもよい。
高分子分散剤の含有量は、光散乱性粒子の分散性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、0.5質量部以上であってよく、2質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよい。高分子分散の含有量は、画素部(インク組成物の硬化物)の湿熱安定性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、50質量部以下であってよく、30質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよい。
[溶剤]
溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、1,4-ブタンジオールジアセテート、グリセリルトリアセテートなどが挙げられる。
溶剤の沸点は、インクジェットインクの連続吐出安定性の観点から、180℃以上であることが好ましい。また、画素部の形成時には、インク組成物の硬化前にインク組成物から溶剤を除去する必要があるため、溶剤を除去しやすい観点から、溶剤の沸点は300℃以下であることが好ましい。
本実施形態のインク組成物では光重合性化合物が分散媒としても機能するため、無溶剤で光散乱性粒子及び発光性ナノ結晶粒子を分散させることが可能である。この場合、画素部を形成する際に溶剤を乾燥により除去する工程が不要となる利点を有する。
インク組成物の40℃における粘度は、例えば、インクジェット印刷時の吐出安定性の観点から、2mPa・s以上であってよく、5mPa・s以上であってもよく、7mPa・s以上であってもよい。インク組成物の40℃における粘度は、20mPa・s以下であってよく、15mPa・s以下であってもよく、12mPa・s以下であってもよい。インク組成物の40℃における粘度は、例えば、2~20mPa・s、2~15mPa・s、2~12mPa・s、5~20mPa・s、5~15mPa・s、5~12mPa・s、7~20mPa・s、7~15mPa・s、又は7~12mPa・sであってもよい。本明細書中、インク組成物の粘度は、例えば、E型粘度計によって測定される粘度である。
インク組成物の23℃における粘度は、例えば、インクジェット印刷時の吐出安定性の観点から、5mPa・s以上であってよく、10mPa・s以上であってもよく、15mPa・s以上であってもよい。インク組成物の23℃における粘度は、40mPa・s以下であってよく、35mPa・s以下であってもよく、30mPa・s以下であってもよく、25mPa・s以下であってもよい。インク組成物の23℃における粘度は、例えば、5~40mPa・s、10~35mPa・s、10~30mPa・s、15~30mPa・s又は15~25mPa・sであってよい。
インク組成物の40℃における粘度が2mPa・s以上であるか、又は、インク組成物の23℃における粘度が5mPa・s以上である場合、吐出ヘッドのインク吐出孔の先端におけるインクジェットインクのメニスカス形状が安定するため、インクジェットインクの吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、インク組成物の40℃における粘度が20mPa・s以下であるか、又は、インク組成物の40℃における粘度が40mPa・s以下である場合、インク吐出孔からインクジェットインクを円滑に吐出させることができる。
インク組成物の表面張力は、インクジェット方式に適した表面張力であることが好ましく、具体的には、20~40mN/mの範囲であることが好ましく、25~35mN/mであることがより好ましい。表面張力を該範囲とすることで飛行曲がりの発生を抑制することができる。なお、飛行曲がりとは、インク組成物をインク吐出孔から吐出させたとき、インク組成物の着弾位置が目標位置に対して30μm以上のずれを生じることをいう。表面張力が40mN/m以下である場合、インク吐出孔の先端におけるメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、表面張力が20mN/m以上である場合、飛行曲がりの発生を抑制できる。すなわち、着弾すべき画素部形成領域に正確に着弾されずにインク組成物の充填が不十分な画素部が生じたり、着弾すべき画素部形成領域に隣接する画素部形成領域(又は画素部)にインク組成物が着弾し、色再現性が低下したりすることがない。
本実施形態のインク組成物を、インクジェット方式用のインク組成物として用いる場合には、圧電素子を用いた機械的吐出機構による、ピエゾジェット方式のインクジェット記録装置に適用することが好ましい。ピエゾジェット方式では、吐出に当たり、インク組成物が瞬間的に高温に晒されることがなく、発光性ナノ結晶粒子の変質が起こり難く、カラーフィルタ画素部(光変換層)も期待した通りの発光特性がより容易に得られやすい。
以上、カラーフィルタ用インク組成物の一実施形態について説明したが、上述した実施形態のインク組成物は、インクジェット方式の他に、例えば、フォトリソグラフィ方式で用いることもできる。
インク組成物をフォトグラフィー方式で用いる場合、まず、インク組成物を基材上に塗布し、インク組成物が溶剤を含有する場合には、さらにインク組成物を乾燥させて塗布膜を形成する。このようにして得られる塗布膜は、アルカリ現像液に可溶性であり、アルカリ現像液で処理されることでパターニングされる。この際、アルカリ現像液は、現像液の廃液処理の容易さ等の観点から、水溶液であることが大半を占めるため、インク組成物の塗布膜は水溶液で処理されることとなる。一方、発光性ナノ結晶粒子(量子ドット等)を用いたインク組成物の場合、発光性ナノ結晶粒子が水に対して不安定であり、発光性(例えば蛍光性)が水分により損なわれる。このため本実施形態においては、アルカリ現像液(水溶液)で処理する必要のない、インクジェット方式が好ましい。
インク組成物の塗布膜に対してアルカリ現像液による処理を行わない場合でも、インク組成物がアルカリ可溶性である場合、インク組成物の塗布膜が大気中の水分を吸収しやすく、時間が経過するにつれて発光性ナノ結晶粒子(量子ドット等)の発光性(例えば蛍光性)が損なわれてゆく。この観点から、本実施形態においては、インク組成物の塗布膜はアルカリ不溶性であることが好ましい。すなわち、本実施形態のインク組成物は、アルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることが好ましい。このようなインク組成物は、光重合性化合物として、アルカリ不溶性の光重合性化合物を用いることにより得ることができる。インク組成物の塗布膜がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃におけるインク組成物の塗布膜の溶解量が、インク組成物の塗布膜の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。インク組成物の塗布膜の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。なお、インク組成物がアルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることは、インク組成物を基材上に塗布した後、溶剤を含む場合80℃、3分の条件で乾燥して得られる厚さ1μmの塗布膜の、上記溶解量を測定することにより確認できる。
<インク組成物の製造方法>
次に、上述した実施形態のインク組成物の製造方法について説明する。インク組成物の製造方法は、少なくとも、発光性ナノ結晶粒子と、エポキシ樹脂と、を混合する工程を備える。例えば、上述したインク組成物の構成成分を混合し、分散処理を行うことでインク組成物が得られる。
以下では、インク組成物の製造方法の一例として、光散乱性粒子及び高分子分散剤を更に含有するインク組成物の製造方法を説明する。
インク組成物の製造方法は、例えば、光散乱性粒子及び高分子分散剤を含有する、光散乱性粒子の分散体を用意する第1の工程と、光散乱性粒子の分散体及び発光性ナノ結晶粒子を混合する第2の工程と、を備える。この方法では、光散乱性粒子の分散体がエポキシ樹脂を更に含有してよく、第2の工程において、エポキシ樹脂を更に混合してもよい。この方法によれば、光散乱性粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部における漏れ光を低減することができると共に、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。
光散乱性粒子の分散体を用意する工程では、光散乱性粒子と、高分子分散剤と、場合により、エポキシ樹脂とを混合し、分散処理を行うことにより光散乱性粒子の分散体を調製してよい。混合及び分散処理は、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星撹拌機、ジェットミル等の分散装置を用いて行ってよい。光散乱性粒子の分散性が良好となり、光散乱性粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整しやすい観点から、ビーズミル又はペイントコンディショナーを用いることが好ましい。発光性ナノ結晶粒子と光散乱性粒子とを混合する前に光散乱性粒子と高分子分散剤とを混合することにより、光散乱性粒子をより充分に分散させることができる。そのため、優れた吐出安定性及び優れた外部量子効率をより一層容易に得ることができる。
インク組成物の製造方法は、第2の工程の前に、発光性ナノ結晶粒子と、エポキシ樹脂とを含有する、発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程を更に備えていてもよい。この場合、第2の工程では、光散乱性粒子の分散体と、発光性ナノ結晶粒子の分散体と、を混合する。発光性ナノ結晶粒子分散体を用意する工程では、発光性ナノ結晶粒子と、光重合性化合物とを混合し、分散処理を行うことにより発光性ナノ結晶粒子分散体を調製してよい。発光性ナノ結晶粒子としては、その表面に有機リガンドを有する発光性ナノ結晶粒子を用いてよい。すなわち、発光性ナノ結晶粒子分散体は、有機リガンドを更に含んでいてもよい。混合及び分散処理は、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星撹拌機、ジェットミル等の分散装置を用いて行ってよい。発光性ナノ結晶粒子の分散性が良好となり、発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整しやすい観点から、ビーズミル、ペイントコンディショナー又はジェットミルを用いることが好ましい。
この方法によれば、発光性ナノ結晶粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部における漏れ光を低減することができると共に、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程では、光散乱性粒子の分散体を用意する工程と同様の分散装置を用いて、発光性ナノ結晶粒子と、エポキシ樹脂との混合及び分散処理を行ってよい。
この製造方法では、発光性ナノ結晶粒子、光散乱性粒子、光重合性化合物、光重合開始剤、有機リガンド及び高分子分散剤以外の他の成分(例えば、増感剤、溶剤等)を更に用いてもよい。この場合、他の成分は、発光性ナノ結晶粒子分散体に含有させてもよく、光散乱性粒子分散体に含有させてもよい。また、他の成分を、発光性ナノ結晶粒子分散体と光散乱性粒子分散体とを混合して得られる組成物に混合してもよい。
<光変換層及びカラーフィルタ>
次に、上述した実施形態のインク組成物を用いた、光変換層及びカラーフィルタの詳細について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
図1は、一実施形態のカラーフィルタの模式断面図である。図1に示すように、カラーフィルタ100は、基材40と、基材40上に設けられた光変換層30と、を備える。光変換層30は、複数の画素部10と、遮光部20と、を備えている。
光変換層30は、画素部10として、第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとを有している。第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとは、この順に繰り返すように格子状に配列されている。遮光部20は、隣り合う画素部の間、すなわち、第1の画素部10aと第2の画素部10bとの間、第2の画素部10bと第3の画素部10cとの間、第3の画素部10cと第1の画素部10aとの間に設けられている。言い換えれば、これらの隣り合う画素部同士は、遮光部20によって離間されている。
第1の画素部10a及び第2の画素部10bは、それぞれ上述した実施形態のインク組成物の硬化物を含む。硬化物は、発光性ナノ結晶粒子と、光散乱性粒子と、硬化成分とを含有する。硬化成分は、エポキシ樹脂の硬化物であり、具体的には、エポキシ樹脂の重合によって得られる硬化物である。すなわち、第1の画素部10aは、第1の硬化成分13aと、第1の硬化成分13a中にそれぞれ分散された第1の発光性ナノ結晶粒子11a及び第1の光散乱性粒子12aとを含む。同様に、第2の画素部10bは、第2の硬化成分13bと、第2の硬化成分13b中にそれぞれ分散された第2の発光性ナノ結晶粒子11b及び第2の光散乱性粒子12bとを含む。第1の画素部10a及び第2の画素部10bにおいて、第1の硬化成分13aと第2の硬化成分13bとは同一でもあっても異なっていてもよく、第1の光散乱性粒子12aと第2の光散乱性粒子12bとは同一でもあっても異なっていてもよい。
第1の発光性ナノ結晶粒子11aは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第1の画素部10aは、青色光を赤色光に変換するための赤色画素部と言い換えてよい。また、第2の発光性ナノ結晶粒子11bは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第2の画素部10bは、青色光を緑色光に変換するための緑色画素部と言い換えてよい。
インク組成物の硬化物を含む画素部における発光性ナノ結晶粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、好ましくは5質量%以上である。同様の観点から、発光性ナノ結晶粒子の含有量は、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、画素部の信頼性に優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、好ましくは50質量%以下である。同様の観点から、発光性ナノ結晶粒子の含有量は、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、40質量%以下であってもよく、35質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
インク組成物の硬化物を含む画素部における光散乱性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び画素部の信頼性に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。
第3の画素部10cは、420~480nmの範囲の波長の光に対し30%以上の透過率を有する。そのため、第3の画素部10cは、420~480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に、青色画素部として機能する。第3の画素部10cは、例えば、上述の光重合性化合物を含有する組成物の硬化物を含む。硬化物は、第3の硬化成分13cを含有する。第3の硬化成分13cは、エポキシ樹脂の硬化物であり、具体的には、エポキシ樹脂の重合によって得られる硬化物である。すなわち、第3の画素部10cは、第3の硬化成分13cを含む。第3の画素部10cが上述の硬化物を含む場合、エポキシ樹脂を含有する組成物は、420~480nmの範囲の波長の光に対する透過率が30%以上となる限りにおいて、上述のインク組成物に含有される成分のうち、エポキシ樹脂以外の成分を更に含有していてもよい。なお、第3の画素部10cの透過率は、顕微分光装置により測定することができる。
画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、1μm以上であってよく、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、30μm以下であってよく、20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよい。
遮光部20は、隣り合う画素部を離間して混色を防ぐ目的及び光源からの光漏れを防ぐ目的で設けられる、いわゆるブラックマトリックスである。遮光部20を構成する材料は、特に限定されず、クロム等の金属の他、バインダーポリマーにカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の硬化物等を用いることができる。ここで用いられるバインダーポリマーとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種又は2種以上混合したもの、感光性樹脂、O/Wエマルジョン型の樹脂組成物(例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの)などを用いることができる。遮光部20の厚さは、例えば、0.5μm以上であってよく、10μm以下であってよい。
基材40は、光透過性を有する透明基材であり、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の透明なガラス基板、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルム等の透明なフレキシブル基材などを用いることができる。これらの中でも、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスからなるガラス基板を用いることが好ましい。具体的には、コーニング社製の「7059ガラス」、「1737ガラス」、「イーグル200」及び「イーグルXG」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA-10G」及び「OA-11」が好適である。これらは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れる。
以上の光変換層30を備えるカラーフィルタ100は、420~480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に好適に用いられる。
カラーフィルタ100は、例えば、基材40上に遮光部20をパターン状に形成した後、基材40上の遮光部20によって区画された画素部形成領域に、上述した実施形態のインク組成物(インクジェットインク)をインクジェット方式により選択的に付着させ、活性エネルギー線の照射によりインク組成物を硬化させる方法により製造することができる。
遮光部20を形成させる方法は、基材40の一面側の複数の画素部間の境界となる領域に、クロム等の金属薄膜、又は、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜を形成し、この薄膜をパターニングする方法等が挙げられる。金属薄膜は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により形成することができ、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜は、例えば、塗布、印刷等の方法により形成することができる。パターニングを行う方法としては、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。
インクジェット方式としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェット(登録商標)方式、或いは圧電素子を用いたピエゾジェット方式等が挙げられる。
インク組成物の硬化を活性エネルギー線(例えば紫外線)の照射により行う場合、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等を用いてよい。照射する光の波長は、例えば、200nm以上であってよく、440nm以下であってよい。露光量は、例えば、10mJ/cm2以上であってよく、4000mJ/cm2以下であってよい。
溶剤を揮発させるための乾燥温度は、例えば、50℃で以上であってよく、150℃以下であってよい。乾燥時間は、例えば、3分以上であってよく、30分以下であってよい。
以上、カラーフィルタ及び光変換層、並びにこれらの製造方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、光変換層は、第3の画素部10cに代えて、又は、第3の画素部10cに加えて、青色発光性のナノ結晶粒子を含有するインク組成物の硬化物を含む画素部(青色画素部)を備えていてもよい。また、光変換層は、赤、緑、青以外の他の色の光を発するナノ結晶粒子を含有するインク組成物の硬化物を含む画素部(例えば黄色画素部)を備えていてもよい。これらの場合、光変換層の各画素部に含有される発光性ナノ結晶粒子のそれぞれは、同一の波長域に吸収極大波長を有することが好ましい。
また、光変換層の画素部の少なくとも一部は、発光性ナノ結晶粒子以外の顔料を含有する組成物の硬化物を含むものであってもよい。
また、カラーフィルタは、遮光部のパターン上に、遮光部よりも幅の狭い撥インク性を持つ材料からなる撥インク層を備えていてもよい。また、撥インク層を設けるのではなく、画素部形成領域を含む領域に、濡れ性可変層としての光触媒含有層をベタ塗り状に形成した後、該光触媒含有層にフォトマスクを介して光を照射して露光を行い、画素部形成領域の親インク性を選択的に増大させてもよい。光触媒としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
また、カラーフィルタは、基材と画素部との間に、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン等を含むインク受容層を備えていてもよい。
また、カラーフィルタは、画素部上に保護層を備えていてもよい。この保護層は、カラーフィルタを平坦化するとともに、画素部に含有される成分、又は、画素部に含有される成分及び光触媒含有層に含有される成分の液晶層への溶出を防止するために設けられるものである。保護層を構成する材料は、公知のカラーフィルタ用保護層として使用されているものを使用できる。
また、カラーフィルタ及び光変換層の製造では、インクジェット方式ではなく、フォトリソグラフィ方式で画素部を形成してもよい。この場合、まず、基材にインク組成物を層状に塗工し、インク組成物層を形成する。次いで、インク組成物層をパターン状に露光した後、現像液を用いて現像する。このようにして、インク組成物の硬化物からなる画素部が形成される。現像液は、通常アルカリ性であるため、インク組成物の材料としてはアルカリ可溶性の材料が用いられる。ただし、材料の使用効率の観点では、インクジェット方式がフォトリソグラフィ方式よりも優れている。これはフォトリソグラフィ方式では、その原理上、材料のほぼ2/3以上を除去することとなり、材料が無駄になるからである。このため、本実施形態では、インクジェットインクを用い、インクジェット方式により画素部を形成することが好ましい。
また、本実施形態の光変換層の画素部には、上記した発光性ナノ結晶粒子に加えて、発光性ナノ結晶粒子の発光色と概ね同色の顔料を更に含有させてもよい。例えば、液晶表示素子の画素部として、青色光を吸収して発光する発光性ナノ結晶粒子を含有する画素部を採用する場合、光源からの光として青色光乃至は450nmにピークを持つ準白色光を用いるが、画素部における発光性ナノ結晶粒子の濃度が充分でない場合には、液晶表示素子を駆動させた際に光源からの光が光変換層を透過してしまう。この光源からの透過光(青色光、漏れ光)と、発光性ナノ結晶粒子が発する光とが混色してしまう。このような混色の発生による色再現性の低下を防止する観点から、光変換層の画素部に顔料を含有させてもよい。顔料を画素部に含有させるため、インク組成物に顔料を含有させてもよい。
また、本実施形態の光変換層中の赤色画素部(R)、緑色画素部(G)、及び青色画素部(B)のうち、1種又は2種の画素部を、発光性ナノ結晶粒子を含有させずに色材を含有させた画素部としてもよい。ここで使用し得る色材としては、公知の色材を使用することができる。例えば、赤色画素部(R)に用いる色材としては、ジケトピロロピロール顔料及び/又はアニオン性赤色有機染料が挙げられる。緑色画素部(G)に用いる色材としては、ハロゲン化銅フタロシニアン顔料、フタロシアニン系緑色染料、フタロシアニン系青色染料とアゾ系黄色有機染料との混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。青色画素部(B)に用いる色材としては、ε型銅フタロシニアン顔料及び/又はカチオン性青色有機染料が挙げられる。これらの色材の使用量は、光変換層に含有させる場合には、透過率の低下を防止できる観点から、画素部(インク組成物の硬化物)の全質量を基準として、1~5質量%であることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた材料は全て、アルゴンガスを導入して溶存酸素をアルゴンガスに置換したものを用いた。酸化チタンについては、混合前に、1mmHgの減圧下、2時間、120℃で加熱し、アルゴンガス雰囲気下で放冷したものを用いた。実施例で用いた液状の材料は、混合前にあらかじめ、モレキュラーシーブス3Aで48時間以上脱水して用いた。
<赤色発光性のInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子分散体の準備>
[ラウリン酸インジウム溶液の調製]
1-オクタデセン(ODE)10g、酢酸インジウム146mg(0.5mmol)及びラウリン酸300mg(1.5mmol)を反応フラスコに添加し混合物を得た。真空下において混合物を140℃にて2時間加熱することで透明な溶液(ラウリン酸インジウム溶液)を得た。この溶液は、必要になるまで室温でグローブボックス中に維持した。なお、ラウリン酸インジウムは室温では溶解性が低く沈殿しやすいため、ラウリン酸インジウム溶液を使用する際は、該溶液(ODE混合物)中の沈殿したラウリン酸インジウムを約90℃に加熱して透明な溶液を形成した後、所望量を計量して用いた。
[赤色発光性ナノ結晶粒子のコア(InPコア)の作製]
トリオクチルホスフィンオキサイド(TOPO)5g、酢酸インジウム1.46g(5mmol)及びラウリン酸3.16g(15.8mmol)を反応フラスコに添加し混合物を得た。窒素(N2)環境下において混合物を160℃にて40分間加熱した後、真空下で250℃にて20分間加熱した。次いで、反応温度(混合物の温度)を窒素(N2)環境の下で300℃に昇温した。この温度で、1-オクタデセン(ODE)3gとトリス(トリメチルシリル)ホスフィン0.25g(1mmol)との混合物を反応フラスコに迅速に導入し、反応温度を260℃に維持した。5分後、ヒーターの除去により反応を停止させ、得られた反応溶液を室温に冷却した。次いで、トルエン8ml及びエタノール20mlをグローブボックス中の反応溶液に添加した。続いて遠心分離を行いInPナノ結晶粒子を沈殿させた後、上澄みの傾瀉によってInPナノ結晶粒子を得た。次いで、得られたInPナノ結晶粒子をヘキサンに分散させた。これにより、InPナノ結晶粒子を5質量%含有する分散液(ヘキサン分散液)を得た。
上記で得られたInPナノ結晶粒子のヘキサン分散液、及びラウリン酸インジウム溶液を反応フラスコに仕込み、混合物を得た。InPナノ結晶粒子のヘキサン分散液及びラウリン酸インジウム溶液の仕込量は、それぞれ、0.5g(InPナノ結晶粒子が25mg)、5g(ラウリン酸インジウムが178mg)となるように調整した。真空下、室温にて混合物を10分間静置した後、窒素ガスでフラスコ内を常圧に戻し、混合物の温度を230℃に上げ、その温度で2時間保持してヘキサンをフラスコ内部から除去した。次いで、フラスコ内温を250℃まで昇温し、1-オクタデセン(ODE)3g及びトリス(トリメチルシリル)ホスフィン0.03g(0.125mmol)の混合物を反応フラスコに迅速に導入し、反応温度を230℃に維持した。5分後、ヒーターの除去により反応を停止させ、得られた反応溶液を室温に冷却した。次いで、トルエン8ml、エタノール20mlをグローブボックス中の反応溶液に添加した。続いて遠心分離を行い、赤色発光性InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子のコアとなる、InPナノ結晶粒子(InPコア)を沈殿させた後、上澄みの傾瀉によって、InPナノ結晶粒子(InPコア)を得た。次いで、得られたInPナノ結晶粒子(InPコア)をヘキサンに分散させて、InPナノ結晶粒子(InPコア)を5質量%含有する分散液(ヘキサン分散液)を得た。
[赤色発光性ナノ結晶粒子のシェル(ZnSeS/ZnSシェル)の形成]
上記で得られたInPナノ結晶粒子(InPコア)のヘキサン分散液を反応フラスコに2.5g加えた後、室温にて、オレイン酸0.7gを反応フラスコに添加し、温度を80℃に上げて2時間保持した。次いで、この反応混合物中に、ODE1mlに溶解したジエチル亜鉛14mg、ビス(トリメチルシリル)セレニド8mg及びヘキサメチルジシラチアン7mg(ZnSeS前駆体溶液)を滴下し、200℃に昇温して10分保持することによって、厚さが0.5モノレイヤーのZnSeSシェルを形成させた。
次いで、温度を140℃に上げ、30分間保持した。次に、この反応混合物中に、ODE2mlにジエチル亜鉛69mg及びヘキサメチルジシラチアン66mgを溶解させて得られたZnS前駆体溶液を滴下し、温度を200℃に上げて30分保持することにより、厚さ2モノレイヤーのZnSシェルを形成させた。ZnS前駆体溶液の滴下の10分後に、ヒーターの除去により反応を停止させた。次いで、反応混合物を室温に冷却し、得られた白色沈殿物を遠心分離によって除去することにより、赤色発光性InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子が分散した透明なナノ結晶粒子分散液(InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子のODE分散液)を得た。
[InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子用の有機リガンドの合成]
(有機リガンドAの合成)
JEFAMINE M-1000(Huntsman社製)をフラスコに投入した後、窒素ガス環境にて攪拌しながら、そこにJEFAMINE M-1000と等モル量の無水コハク酸(Sigma-Aldrich社製)を添加した。フラスコの内温を80℃に昇温し、8時間攪拌することにより、淡い黄色の粘稠な油状物として下記式(A)で表されるリガンド(有機リガンドA)を得た。
(有機リガンドBの合成)
米国特許第7718577号明細書に開示されている方法を参考に合成を行った。室温の窒素雰囲気下でポリエチレングリコール(15g、20mmol)(MW=750)と水素化ナトリウム(800mg、20mmol)をフラスコ内で混合し、そこへ乾燥したTHF(200ml)を添加した。水素の放出が観察されなくなるまで上記混合物を攪拌し続けた(およそ20分間)。次にアリルブロミド(1.7ml、20mmol)をシリンジを使用しながら上記混合物へ滴下し、室温で3時間攪拌した。上記混合物を遠心分離し、上澄みを取り出し沈殿物を除去した。上澄みを0℃のt-ブチルメチルエーテル(800ml)へ滴下し、白色固形を沈殿させた。白色固形沈殿物にろ過と真空乾燥を行い、34gのポリエチレングリコールモノアリルエーテルを得た。
窒素雰囲気下で、40mlのガラスバイアルにメルカプトコハク酸1.5g、上記ポリエチレングリコールモノアリルエーテル8g、Ethyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phenylphosphinate0.1g、トルエン20mlを加えた。バイアルを断続的に振動させながらメタルハライドランプにて光を1分間照射した(およそ5000mJ/cm
2)。上記混合物へ等量のヘキサンを加えて4000rpmで5分間の条件で遠心分離を行い、上澄みを捨て沈殿物を真空環境にて室温で乾燥させ以下の式(B)で表されるリガンド(有機リガンドB)を得た。
[式中、rは12~20の整数を示す。]
[リガンド交換による赤色発光性InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子分散体の作製]
(有機リガンドAで修飾されたInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子の調製))
上記有機リガンドA30mgを上記で得られたInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子のODE分散液1mlに添加した。次いで、90℃で5時間加熱することによりリガンド交換を行った。エタノール6mlをリガンド交換後のナノ結晶粒子溶液1mlへ添加した。続いて、遠心分離を行いナノ結晶粒子を沈殿させた後、上澄みの傾瀉及び真空下での乾燥によってナノ結晶粒子(上記有機リガンドAで修飾されたInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子)を得た。有機リガンドAで修飾されたナノ結晶粒子全量に占める有機リガンドAの含有量は30質量%であった。得られたナノ結晶粒子を不揮発分が40.9質量%となるように1,4-BDDA(1,4-ブタンジオールジアセテート、株式会社ダイセル製)に分散させることにより、赤色発光性ナノ結晶粒子分散体1(1,4―BDDA分散体)を得た。
(有機リガンドBで修飾されたInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子の調製))
上記有機リガンドAに代えて上記有機リガンドBを用いたこと以外は、有機リガンドAの場合と同様にして、赤色発光性ナノ結晶粒子分散体2(1,4―BDDA分散体)を得た。
<緑色発光性のInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子分散体の準備>
[緑色発光性ナノ結晶粒子のコア(InPコア)の合成]
トリオクチルホスフィンオキサイド(TOPO)5g、酢酸インジウム1.46g(5mmol)及びラウリン酸3.16g(15.8mmol)を反応フラスコに添加し混合物を得た。窒素(N2)環境下において混合物を160℃にて40分間加熱した後、真空下で250℃にて20分間加熱した。次いで、反応温度(混合物の温度)を窒素(N2)環境の下で300℃に昇温した。この温度で、1-オクタデセン(ODE)3gとトリス(トリメチルシリル)ホスフィン0.25g(1mmol)との混合物を反応フラスコに迅速に導入し、反応温度を260℃に維持した。5分後、ヒーターの除去により反応を停止させ、得られた反応溶液を室温に冷却した。次いで、トルエン8ml及びエタノール20mlをグローブボックス中の反応溶液に添加した。続いて遠心分離を行いInPナノ結晶粒子(InPコア)を沈殿させた後、上澄みの傾瀉によってInPナノ結晶粒子(InPコア)を得た。次いで、得られたInPナノ結晶粒子(InPコア)をヘキサンに分散させて、InPナノ結晶粒子(InPコア)を5質量%含有する分散液(ヘキサン分散液)を得た。
[緑色発光性ナノ結晶粒子のシェル(ZnSeS/ZnSシェル)の合成]
上記で得られたInPナノ結晶粒子(InPコア)のヘキサン分散液を反応フラスコに2.5g加えた後、室温にて、オレイン酸0.7gを反応フラスコに添加し、温度を80℃に上げた。次いで、この反応混合物中に、ODE1mlに溶解したジエチル亜鉛14mg、ビス(トリメチルシリル)セレニド8mg及びヘキサメチルジシラチアン7mg(ZnSeS前駆体溶液)を滴下することによって、厚さが0.5モノレイヤーのZnSeSシェルを形成させた。
ZnSeS前駆体溶液の滴下後、反応温度を80℃で10分間保持した。次いで、温度を140℃に上げ、30分間保持した。次に、この反応混合物中に、ODE2mlにジエチル亜鉛69mg及びヘキサメチルジシラチアン66mgを溶解させて得られたZnS前駆体溶液を滴下することにより、厚さ2モノレイヤーのZnSシェルを形成させた。ZnS前駆体溶液の滴下の10分後に、ヒーターの除去により反応を停止させた。次いで、反応混合物を室温に冷却し、得られた白色沈殿物を遠心分離によって除去することにより、緑色発光性InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子が分散した透明なナノ結晶粒子分散液(ODE分散液)を得た。
[リガンド交換による緑色発光性InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子分散体の作製]
(有機リガンドAで修飾されたInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子の調製)
上記有機リガンドA30mgを上記で得られたナノ結晶粒子のODE分散液1mlに添加した。次いで、90℃で5時間加熱することによりリガンド交換を行った。エタノール6mlをリガンド交換後のナノ結晶粒子溶液1mlへ添加した。続いて、遠心分離を行いナノ結晶粒子を沈殿させた後、上澄みの傾瀉及び真空下での乾燥によってナノ結晶粒子(上記有機リガンドAで修飾されたInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子)を得た。有機リガンドAで修飾されたナノ結晶粒子全量に占める有機リガンドAの含有量は30質量%であった。得られたナノ結晶粒子を不揮発分が37.7質量%となるように1,4-BDDA(1,4-ブタンジオールジアセテート、株式会社ダイセル製)に分散させることにより、緑色発光性ナノ結晶粒子分散体1(1,4―BDDA分散体)を得た。
(有機リガンドBで修飾されたInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子の調製))
上記有機リガンドAに代えて上記有機リガンドBを用いたこと以外は、有機リガンドAを用いた場合と同様にして、緑色発光性ナノ結晶粒子分散体2(1,4―BDDA分散体)を得た。
<光散乱性粒子分散体の準備>
アルゴンガスで満たした容器内で、酸化チタン(商品名:CR-60-2、石原産業(株)製、平均粒子径(体積平均径):210nm)を33.0gと、高分子分散剤(商品名:アジスパーPB-821、味の素ファインテクノ株式会社製)を1.00gと、1,4-BDDAとを混合し、不揮発分44%の混合液を調製した。アルゴンガスで満たした容器内の混合液にジルコニアビーズ(直径:1.25mm)を加えた後、アルゴンガスで満たした密閉容器をペイントコンディショナーを用いて2時間振とうさせることで混合液の分散処理を行った。ポリエステルメッシュフィルターにてジルコニアビーズを除去することで光散乱性粒子分散体1を得た。
<エポキシ樹脂溶液の調製>
[エポキシ樹脂溶液1の調製]
エポキシ樹脂であるEPICLON HM-091(DIC株式会社製、エポキシ当量:2330)を0.933gと、硬化剤である4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(4M-HHPA、東京化成工業株式会社製)を0.0670gと、硬化触媒であるN,N-ジメチルベンジルアミン(東京化成工業株式会社製)を0.010gとを、不揮発分31.7質量%となるように、1,4-BDDA(1,4-ブタンジオールジアセテート、株式会社ダイセル製)(溶剤)に溶解させて、エポキシ樹脂溶液1を3.19g得た。
[エポキシ樹脂溶液2の調製]
エポキシ樹脂であるEPICLON 1050(DIC株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:475)を0.739gと、硬化剤である4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(4M-HHPA、東京化成工業株式会社製)を0.261gと、硬化触媒であるN,N-ジメチルベンジルアミン(東京化成工業株式会社製)を0.010gとを、不揮発分47.7質量%となるように、1,4-BDDA(1,4-ブタンジオールジアセテート、株式会社ダイセル製)(溶剤)に溶解させて、エポキシ樹脂溶液2を2.12g得た。
[エポキシ樹脂溶液3の調製]
エポキシ樹脂であるEPICLON N-865(DIC株式会社製、フェノール/変性ノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:209)を0.554gと、硬化剤である4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(4M-HHPA、東京化成工業株式会社製)を0.446gと、硬化触媒であるN,N-ジメチルベンジルアミン(東京化成工業株式会社製)を0.010gとを、不揮発分54.8質量%となるように、1,4-BDDA(1,4-ブタンジオールジアセテート、株式会社ダイセル製)(溶剤)に溶解させて、エポキシ樹脂溶液3を1.84g得た。
[エポキシ樹脂溶液4の調製]
エポキシ樹脂であるEPICLON HP-4032D(DIC株式会社製、エポキシ当量:142)を0.458gと、硬化剤である4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(4M-HHPA、東京化成工業株式会社製)を0.542gと、硬化触媒であるN,N-ジメチルベンジルアミン(東京化成工業株式会社製)を0.010gとを、不揮発分59.5質量%となるように、1,4-BDDA(1,4-ブタンジオールジアセテート、株式会社ダイセル製)(溶剤)に溶解させて、エポキシ樹脂溶液4を1.70g得た。
[エポキシ樹脂溶液5の調製]
エポキシ樹脂であるEPICLON HM-091(DIC株式会社製、エポキシ当量:2330)を0.957gと、硬化剤であるPHENOLITE TD-2131(DIC株式会社製、ノボラック樹脂)を0.0428gと、硬化触媒である2-エチル-4-メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)を0.010gとを、不揮発分30.5質量%となるように、1,4-BDDA(1,4-ブタンジオールジアセテート、株式会社ダイセル製)(溶剤)に溶解させて、エポキシ樹脂溶液5を3.31g得た。
[エポキシ樹脂溶液6の調製]
エポキシ樹脂であるEPICLON 1050(DIC株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:475)を0.820gと、硬化剤であるPHENOLITE TD-2131(DIC株式会社製、ノボラック樹脂)を0.180gと、硬化触媒である2-エチル-4-メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)を0.010gとを、不揮発分40.2質量%となるように、1,4-BDDA(1,4-ブタンジオールジアセテート、株式会社ダイセル製)(溶剤)に溶解させて、エポキシ樹脂溶液6を2.51g得た。
[エポキシ樹脂溶液7の調製]
エポキシ樹脂であるEPICLON N-865(DIC株式会社製、フェノール/変性ノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:209)を0.668gと、硬化剤であるPHENOLITE TD-2131(DIC株式会社製、ノボラック樹脂)を0.332gと、硬化触媒である2-エチル-4-メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)を0.010gとを、不揮発分40.2質量%となるように、1,4-BDDA(1,4-ブタンジオールジアセテート、株式会社ダイセル製)(溶剤)に溶解させて、エポキシ樹脂溶液7を2.51g得た。
[エポキシ樹脂溶液8の調製]
エポキシ樹脂であるEPICLON HP-4032D(DIC株式会社製、エポキシ当量:142)を0.577gと、硬化剤であるPHENOLITE TD-2131(DIC株式会社製、ノボラック樹脂)を0.423gと、硬化触媒である2-エチル-4-メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)を0.010gとを、不揮発分40.2質量%となるように、1,4-BDDA(1,4-ブタンジオールジアセテート、株式会社ダイセル製)(溶剤)に溶解させて、エポキシ樹脂溶液8を2.51g得た。
<赤色インク組成物(インクジェットインク)の調製>
[実施例1-1]
赤色発光性ナノ結晶粒子分散体1(不揮発分濃度40.9質量%)0.480gと、光散乱性粒子分散体1(不揮発分濃度40質量%)0.180gと、エポキシ樹脂溶液1(不揮発分濃度31.7質量%)0.341gとを、アルゴンガスで満たした容器内で均一に混合した後、グローブボックス内で、混合物を孔径5μmのフィルターでろ過した。さらに、アルゴンガスを得られた濾過物を入れた容器内に導入し、容器内をアルゴンガスで飽和させた。次いで、減圧してアルゴンガスを除去することにより、実施例1の赤色インク組成物(インクジェットインク)を得た。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、35質量%であり、発光性ナノ結晶粒子(QD)1gあたりのエポキシ基量(mol)は、表1に示すとおりであった。
[実施例1-2~1-4]
エポキシ樹脂溶液1に代えて、エポキシ樹脂溶液2~4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ実施例1-2~1-4の赤色インク組成物を得た。発光性ナノ結晶粒子(QD)1gあたりのエポキシ基量(mol)は、表1に示すとおりであった。
[実施例1-5]
赤色発光性ナノ結晶粒子分散体1に代えて、赤色発光性ナノ結晶粒子分散体2を用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして実施例1-5の赤色インク組成物を得た。発光性ナノ結晶粒子(QD)1gあたりのエポキシ基量(mol)は、表1に示すとおりであった。
[実施例1-6]
赤色発光性ナノ結晶粒子分散体1に代えて、赤色発光性ナノ結晶粒子分散体2を用いたこと以外は、実施例1-3と同様にして実施例1-6の赤色インク組成物を得た。発光性ナノ結晶粒子(QD)1gあたりのエポキシ基量(mol)は、表1に示すとおりであった。
[比較例1-1]
赤色発光性ナノ結晶粒子分散体1(不揮発分濃度40.9質量%)0.480gと、光散乱性粒子分散体1(不揮発分濃度40質量%)0.180gと、エポキシ樹脂溶液4(不揮発分濃度60.0質量%)0.182gとを、アルゴンガスで満たした容器内で均一に混合した後、グローブボックス内で、混合物を孔径5μmのフィルターでろ過した。さらに、アルゴンガスを得られた濾過物を入れた容器内に導入し、容器内をアルゴンガスで飽和させた。次いで、減圧してアルゴンガスを除去することにより、比較例1-1の赤色インク組成物(インクジェットインク)を得た。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、35質量%であり、発光性ナノ結晶粒子(QD)1gあたりのエポキシ基量(mol)は、表1に示すとおりであった。
<評価>
[評価用試料の作製]
各インク組成物を、ガラス基板上に、乾燥後の膜厚が5μmとなるように、スピンコーターにて大気中で塗布した。塗布膜を窒素雰囲気下、180℃で加熱して硬化させて、ガラス基板上にインク組成物の硬化物からなる層(光変換層)を形成した。これにより、光変換層を有する基材である、各評価用試料を作製した。
[外部量子効率(EQE)評価]
面発光光源としてシーシーエス株式会社社製の青色LED(ピーク発光波長:450nm)を用いた。測定装置は、大塚電子株式会社製の放射分光光度計(商品名「MCPD-9800」)に積分球を接続し、青色LEDの上側に積分球を設置した。青色LEDと積分球との間に、作製した評価用試料を挿入し、青色LEDを点灯させて観測されるスペクトル、各波長における照度を測定した。
上記の測定装置で測定されるスペクトル及び照度より、以下のようにして外部量子効率を求めた。結果を表1に示す。外部量子効率は、光変換層に入射した光(光子)のうち、どの程度の割合で蛍光として観測者側に放射されるかを示す値である。従って、この値が大きければ光変換層が発光特性に優れていることを示しており、重要な評価指標である。
Red EQE(%)=P1(Red)/E(Blue)×100
Green EQE(%)=P2(Green)/E(Blue)×100
ここで、E(Blue)及びP1(Red)、P2(Grenn)はそれぞれ以下を表す。
E(Blue):380~490nmの波長域における「照度×波長÷hc」の合計値を表す。
P1(Red):590~780nmの波長域における「照度×波長÷hc」の合計値を表す。
P2(Green):500~650nmの波長域における「照度×波長÷hc」の合計値を表す。
これらは観測した光子数に相当する値である。なお、hは、プランク定数、cは光速を表す。
上記評価用試料を作製した直後に測定したEQEを初期の外部量子効率(EQE
0)とし、EQE
0を測定した後、上記評価用試料を180℃で1時間加熱してから、測定した外部量子効率をEQE
hとする。EQE
0の値が優れている場合、優れた外部量子効率を有するカラーフィルタ画素部を形成し得るインク組成物であるといえる。インク組成物は、EQE
0に加えて、更にEQE
hに優れることが望ましい。エポキシ基量が0.0040mol/QD1g以下でEQE
0が向上する。エポキシ当量が195g/eq以上のエポキシ樹脂を用いることでEQE
0がさらに向上する。リガンドをAからBへ変更することでEQE
hが向上する。
<緑色インク組成物の調製及び評価>
[実施例2-1~2-4及び比較例2-1]
赤色発光性ナノ結晶粒子分散体1の代わりに、緑色発光性ナノ結晶粒子分散体1を用いたこと以外は、実施例1-1~1-4及び比較例1-1と同様にして、それぞれ実施例2-1~2-4及び比較例2-1を得た。発光性ナノ結晶粒子(QD)1gあたりのエポキシ基量(mol)は、表2に示すとおりであった。得られた緑色インク組成物の評価は実施例1-1と同様にして行った。結果を表2に示す。
[実施例2-5及び実施例2-6]
緑色発光性ナノ結晶粒子分散体1の代わりに、緑色発光性ナノ結晶粒子分散体2を用いたこと以外は、実施例2-2、実施例2-3と同様にして、それぞれ実施例2-5、実施例2-6を得た。発光性ナノ結晶粒子(QD)1gあたりのエポキシ基量(mol)は、表2に示すとおりであった。得られた緑色インク組成物の評価は実施例1-1と同様にして行った。結果を表2に示す。エポキシ基量が0.0040mol/QD1g以下でEQE0が向上する。エポキシ当量が195g/eq以上のエポキシ樹脂を用いることでEQE0がさらに向上する。リガンドをAからBへ変更することでEQEhが向上する。
<赤インク組成物の調製>
[実施例3-1]
赤色発光性ナノ結晶粒子分散体1(不揮発分濃度40.9質量%)0.480gと、光散乱性粒子分散体1(不揮発分濃度40質量%)0.180gと、エポキシ樹脂溶液5(不揮発分濃度30.5質量%)0.354gとを、アルゴンガスで満たした容器内で均一に混合した後、グローブボックス内で、混合物を孔径5μmのフィルターでろ過した。さらに、アルゴンガスを得られた濾過物を入れた容器内に導入し、容器内をアルゴンガスで飽和させた。次いで、減圧してアルゴンガスを除去することにより、実施例1の赤色インク組成物(インクジェットインク)を得た。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、35質量%であり、発光性ナノ結晶粒子(QD)1gあたりのエポキシ基量(mol)は、表3に示すとおりであった。
[実施例3-2~3-4及び比較例3-1]
エポキシ樹脂溶液5に代えて、エポキシ樹脂溶液6~8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ実施例1-2~1-4の赤色インク組成物を得た。発光性ナノ結晶粒子(QD)1gあたりのエポキシ基量(mol)は、表3に示すとおりであった。
[実施例3-5]
赤色発光性ナノ結晶粒子分散体1に代えて、赤色発光性ナノ結晶粒子分散体2を用いたこと以外は、実施例3-2と同様にして実施例3-5の赤色インク組成物を得た。発光性ナノ結晶粒子(QD)1gあたりのエポキシ基量(mol)は、表1に示すとおりであった。
[実施例3-6]
赤色発光性ナノ結晶粒子分散体1に代えて、赤色発光性ナノ結晶粒子分散体2を用いたこと以外は、実施例3-3と同様にして実施例3-6の赤色インク組成物を得た。発光性ナノ結晶粒子(QD)1gあたりのエポキシ基量(mol)は、表1に示すとおりであった。
<評価>
実施例3-1~3-6及び比較例3-1のインク組成物は、実施例1-1と同様にして、外部量子効率を評価した。結果を表3に示す。エポキシ基量が0.0040mol/QD1g以下でEQE0が向上する。エポキシ当量が195g/eq以上のエポキシ樹脂を用いることでEQE0がさらに向上する。リガンドをAからBへ変更することでEQEhが向上する。
<緑色インク組成物の調製及び評価>
[実施例4-1~4-4及び比較例4-1]
赤色発光性ナノ結晶粒子分散体1の代わりに、緑色発光性ナノ結晶粒子分散体1を用いたこと以外は、実施例3-1~3-4及び比較例3-1と同様にして、それぞれ実施例4-1~4-4及び比較例4-1を得た。発光性ナノ結晶粒子(QD)1gあたりのエポキシ基量(mol)は、表4に示すとおりであった。得られた緑色インク組成物の評価は実施例1-1と同様にして行った。結果を表4に示す。
[実施例4-5及び実施例4-6]
緑色発光性ナノ結晶粒子分散体1の代わりに、緑色発光性ナノ結晶粒子分散体2を用いたこと以外は、実施例4-2、実施例4-3と同様にして、それぞれ実施例4-5、実施例4-6を得た。発光性ナノ結晶粒子(QD)1gあたりのエポキシ基量(mol)は、表2に示すとおりであった。得られた緑色インク組成物の評価は実施例1-1と同様にして行った。エポキシ基量が0.0040mol/QD1g以下でEQE0が向上する。エポキシ当量が195g/eq以上のエポキシ樹脂を用いることでEQE0がさらに向上する。リガンドをAからBへ変更することでEQEhが向上する。
硬化剤をフェノール系化合物のTD-2131から酸無水物の4M-HHPAに変更することで、EQEhが向上する。