JP2017165947A - 応力発光性樹脂組成物及び応力発光性樹脂組成物の応力発光強度増加方法 - Google Patents
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Abstract
Description
但し、応力発光材料は比較的高価な材料からなり、塗料等に使用する場合は組成物を広範囲に塗布する必要があるため、塗料の実用的なコストを踏まえると、応力発光材料の含有量を過剰に増やさないことが望まれている。
応力発光材料と、無機化合物と、合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物であって、
上記応力発光材料の平均粒子径が、上記無機化合物の平均粒子径より大きく、
上記無機化合物の屈折率が1.35〜1.90であることを特徴とする。
さらに、無機化合物が光を阻害する材料であると、取り出せる光の強度が減少して強い応力発光強度を得ることができないため、無機化合物の屈折率を1.35〜1.90の範囲内に定めている。無機化合物の屈折率が1.90以下であると応力発光材料から発せられた光が応力発光性樹脂組成物の外に出ることが阻害されずに大きな応力発光強度を得ることができる。また、屈折率が1.35未満である実用上使用可能な無機化合物は考えにくい。
ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウムは応力発光強度が高い物質であるため応力発光性樹脂組成物に使用する物質として適している。
これらの無機化合物は、屈折率が高くなく、応力発光材料に比べて安価であるため、これらの無機化合物は、コストの増大を抑えつつ、応力発光強度がより高い応力発光性樹脂組成物を提供するために適している。
無機化合物の平均粒子径が0.4μm〜1.5μmであると、応力発光材料と無機化合物の接触によって応力発光材料が受ける力が充分に大きくなるので、応力発光強度を充分に強くすることができる。
無機化合物の屈折率が上記範囲内であると、応力発光強度をより高くすることができる。
合成樹脂がこれらの樹脂からなると、応力発光強度に優れ、塗布に適した樹脂組成物となるので、応力発光性樹脂組成物を構造物に塗布することで構造物に加わっている負荷の程度の判定を容易に行うことができる。
硬化させた合成樹脂の鉛筆硬度が高いと、一般的に応力発光強度は高くなる傾向にあり、応力発光性樹脂組成物に無機化合物を配合した効果が表れにくい場合がある。一方、合成樹脂の鉛筆硬度が2H〜4H程度でありそれほど高くない場合には、応力発光性樹脂組成物に無機化合物を配合することによる応力発光強度の増加の効果が表れやすくなる。
また、応力発光性樹脂組成物を大型の構造物に塗布する用途を考えると、塗布後に加熱するような硬化方式であると実際には使用することが難しいので、常温硬化した場合の鉛筆硬度を考えることが好ましい。
この方法であると、高価な材料である応力発光材料の含有量を過剰に増やすことなく、応力発光性樹脂組成物の応力発光強度を高くすることができる。
応力発光材料と合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物に無機化合物を添加するといっても、応力発光材料と合成樹脂を先に混合して後に無機化合物を添加するという工程に限定されるわけではない。応力発光材料、合成樹脂及び無機化合物を混合した混合物としての応力発光性樹脂組成物を得ることができればよいので、応力発光材料、合成樹脂及び無機化合物を一度に混合して応力発光性樹脂組成物を調製してもよい。
本発明の応力発光性樹脂組成物は、
応力発光材料と、無機化合物と、合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物であって、
上記応力発光材料の平均粒子径が、上記無機化合物の平均粒子径より大きく、
上記無機化合物の屈折率が1.35〜1.90であることを特徴とする。
本発明の応力発光性樹脂組成物において好ましく使用することができる応力発光材料につき、以下に説明する。
この応力発光材料は、ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム系応力発光材料等の、アルミン酸ストロンチウムを母体とする応力発光材料であることが好ましい。
また、上記希土類元素の化合物としては、上記元素の炭酸塩、酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
上記シランカップリング剤は、トリアルコキシシランを含むことが好ましい。
また、上記トリアルコキシシランのアルコキシ基以外の置換基は、炭素数3以上の炭化水素基であることが好ましい。
上記のようなシランカップリング剤によると、アルコキシ基以外の置換基の構造により疎水性を高めることができるため、さらに耐水性に優れた応力発光材料として使用することができる。
シランカップリング剤がフルオロアルキル基を有すると、疎水性を高めることができるため、さらに耐水性に優れた応力発光材料として使用することができる。
3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランを用いると、特に耐水性に優れた応力発光材料として使用することができる。
このような表面処理層を有する応力発光材料も、充分な耐水性を有する応力発光材料になるため好ましい。
応力発光材料の製造方法は特に限定されるものではない。応力発光材料がユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム系応力発光材料である場合には、アルミナ又は水酸化アルミニウムとストロンチウム化合物とユーロピウム化合物を反応させることにより得ることができる。
ストロンチウム化合物の例としては、特に限定されないが、炭酸ストロンチウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、ハロゲン化ストロンチウム(塩化ストロンチウム等)、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、リン酸水素ストロンチウム等が挙げられる。
ユーロピウム化合物としては特に限定されず、例えば炭酸ユーロピウム、酸化ユーロピウム、塩化ユーロピウム、硫酸ユーロピウム、硝酸ユーロピウム、酢酸ユーロピウムなどが挙げられる。
本発明の応力発光性樹脂組成物において使用することができる無機化合物は、その屈折率が1.35〜1.90である無機化合物である。
屈折率がこの範囲であると、応力発光材料から発せられた光が応力発光性樹脂組成物の外に出ることが阻害されず、取り出せる光の強度を強くすることができる。また、無機化合物の屈折率が1.35〜1.80であることがより好ましい。
本明細書における無機化合物の屈折率は、波長589.3nmの光の屈折率として定める。
これらの無機化合物の屈折率は下記のとおりである。
フッ化マグネシウム:1.38
フッ化カルシウム:1.40
二酸化ケイ素(シリカ):1.46
硫酸バリウム:1.64
酸化アルミニウム(アルミナ):1.76
本発明の応力発光性樹脂組成物では、応力発光材料の平均粒子径が、無機化合物の平均粒子径より大きくなっている。本明細書において応力発光材料の平均粒子径及び無機化合物の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置MT3300EX(マイクロトラック・ベル製)を用いて測定することができる。
また、応力発光材料の平均粒子径と、無機化合物の平均粒子径との比が、応力発光材料/無機化合物=4.8/1〜1.3/1であることが好ましい。
無機化合物の平均粒子径の好ましい下限値は0.3μmであり、より好ましい下限値は0.4μmであり、さらに好ましい下限値は0.7μmである。無機化合物の平均粒子径の好ましい上限値は7.7μmであり、より好ましい上限値は5.4μmであり、さらに好ましい上限値は1.5μmである。
合成樹脂としては熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等各種のものを用いることができる。
例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、塩素化プロピレン樹脂及びこれらの変性物から選択される少なくとも一種が挙げられる。
これらの樹脂の中ではエポキシ樹脂又はウレタン樹脂を含むことが好ましい。また、合成樹脂は、主剤と硬化剤からなる2液硬化型樹脂が好ましい。
合成樹脂として2液硬化型エポキシ樹脂又は2液硬化型ウレタン樹脂を使用する場合、まず、応力発光材料及び無機化合物を主剤に分散させることにより、応力発光材料分散主剤を得ることが好ましい。この応力発光材料分散主剤に硬化剤を混合することにより、応力発光性樹脂組成物を調製し、これをエポキシ樹脂系塗料又はウレタン樹脂系塗料として構造物に塗布して使用すると、構造物に加わっている負荷の大きさと発光の輝度の対応関係が明確であり、構造物に加わっている負荷の程度の判定が容易である。
なお、本明細書における常温は25℃であり、25℃で7日間放置することにより硬化する樹脂であれば常温硬化性の樹脂であることとする。
また、合成樹脂自体は常温硬化性でなくても、硬化剤や硬化用触媒を配合することにより常温硬化性となる樹脂であってもよい。
また、合成樹脂を常温硬化させた場合の鉛筆硬度が2H〜4Hであることが好ましい。
応力発光性樹脂組成物中に含まれる応力発光材料と無機化合物との合計量は、合成樹脂100重量部に対して250重量部以上であることが好ましい。より好ましくは280重量部以上である。合成樹脂に対して応力発光材料と無機化合物とが合計量で所定量以上配合されていないと、大きな発光強度が得られにくい。
本発明の応力発光性樹脂組成物は、応力発光材料と、無機化合物と、合成樹脂とを含む他に、必要に応じて、分散剤、増粘剤、表面調整剤あるいはレベリング剤、硬化剤、架橋剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤を含む光安定剤、難燃剤、硬化用触媒、殺菌剤、及び、密着性付与剤、等の添加剤を含有することができる。
低分子分散剤としては、下記のものが挙げられる。
(1)ポリオキシアルキレン型
脂肪族アルコール(C4〜30)、[アルキル(C1〜30)]フェノール、脂肪族(C4〜30)アミンおよび脂肪族(C4〜30)アミドのAO(C2〜4)1〜30モル付加物。
脂肪族アルコールとしては、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、オクタノール、ドデカノール等;[アルキル(C1〜30)]フェノールとしては、フェノール、メチルフェノールおよびノニルフェノール等;脂肪族アミンとしては、ラウリルアミンおよびメチルステアリルアミン等;および脂肪族アミドとしては、ステアリン酸アミド等。
(2)多価アルコール型
C4〜30の脂肪酸(ラウリン酸、ステアリン酸等)と多価(2〜6またはそれ以上)アルコール(例えばグリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトールおよびソルビタン)のモノエステル化合物。
(3)カルボン酸塩型
C4〜30の脂肪酸(上記に同じ)のアルカリ金属(NaおよびK等)塩。
(4)硫酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(上記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物の硫酸エステルアルカリ金属(NaおよびK等)塩等。
(5)スルホン酸塩型
[アルキル(C1〜30)]フェノールのスルホン酸アルカリ金属(NaおよびK等)塩。
(6)リン酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(上記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物のモノまたはジリン酸エステルの塩[アルカリ金属(NaおよびK等)塩、4級アンモニウム塩等]。
(7)1〜3級アミン塩型
C4〜30の脂肪族アミン[1級(ラウリルアミン等)、2級(ジブチルアミン等)および3級アミン(ジメチルステアリルアミン等)]塩酸塩、トリエタノールアミンとC4〜30の脂肪酸(上記に同じ)のモノエステル、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩。
(8)4級アンモニウム塩型
C4〜30の4級アンモニウム(ブチルトリメチルアンモニウム、ジエチルラウリルメチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム等)の無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩等。
エポキシ樹脂類の硬化剤としては、酸無水物、ポリアミド樹脂、アミン付加物、ポリメルカプタン、イミダゾール類、及びイソシアネート類等が挙げられる。
本発明の応力発光性樹脂組成物は、応力発光材料と、無機化合物と、合成樹脂と、必要に応じてその他の材料を混合し、分散させることにより製造することができる。
例えば、原料を混合したものをコニカルブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリミキサー、三本ロールなどの混合機を用いることで応力発光性樹脂組成物を作製することができる。
合成樹脂として2液硬化型エポキシ樹脂又は2液硬化型ウレタン樹脂を使用する場合は、応力発光材料及び無機化合物を主剤に分散させることにより、応力発光材料分散主剤を得て、この応力発光材料分散主剤に硬化剤を混合させることが好ましい。
なお、その他の材料を加える手順は特に限定されない。
本発明の応力発光性樹脂組成物は、塗料として構造物に塗布することによって、構造物に加わっている負荷の程度を判定する用途に適している。
負荷の程度を判定する対象となる構造物の材質及び用途は特に限定されるものではないが、好適な材質として、通常の紙、合成紙、あるいはエポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の高分子素材、天然ゴムあるいは合成ゴム、ガラス、セラミックス、金属、木、人工繊維または天然繊維、コンクリート、あるいはこれらの組み合わせ、およびこれらの加工製品等が挙げられる。また、構造物の好適な用途として、ビル建物、高架橋、橋梁、道路、鉄道レール、支柱、塔、パイプライン及びトンネル等の大型構造物、床材、タイル、壁材、ブロック材、舗装材、木材、鉄鋼、コンクリート等の建材、歯車、カム等の動力伝達部材、自転車、自動車、電車、船、飛行機等に使用される外装用部品又は内蔵部品(エンジン部品、タイヤ、ベルト等)、軸受部品、軸受用保持器、および、光センサ付軸受、ネジ、ボルト、ナット、ワッシャ等の締結用部品等が挙げられる。
破壊強度に異方性がある材料としては、木材、人工繊維、天然繊維等が代表例として挙げられる。また、一部のセラミックスや金属も異方性を有する。なお、コンクリートは本来異方性がない材料であるが、施工時の硬化条件等により異方性が実質的に出ているため、異方性がある材料として扱うことが好ましい。
応力発光性樹脂組成物の発光の模様を観察することによって構造物に加わる負荷の方向に関する情報が得られるので、発光の模様から判定される負荷の方向が破壊強度の弱い方向である場合に、その発光の輝度に着目して構造物に加わっている負荷の重要性を判断することができる。仮に発光の輝度自体が大きかったとしても、発光の模様から負荷の方向が破壊強度の強い方向であると判断されたならば、さほどその負荷を気にする必要はないので、構造物の破壊防止のために過剰な措置をとる必要がなくなり、構造物の保守管理が容易になる。
また、時間経過毎に発光の模様を観察することも望ましい。時間経過毎に発光の模様を観察して、発光の模様が変化したことを確認することができれば、その模様の変化から、構造物に構造破壊が生じたかに関する情報を得ることができる。
応力発光性樹脂組成物の塗布方法は、塗料を通常塗布する方法により行うことができ、特に限定されるものではないが、スプレー塗布、刷毛による塗布、ロールコート法、グラビアコート法、バーコート法、スピンコート法、ディッピング法による塗布などを使用することができる。
応力発光性樹脂組成物の塗布後、樹脂を硬化させることが好ましく、常温硬化させることが好ましい。また、樹脂組成物の種類によっては熱硬化、紫外線硬化等の処理を行い、樹脂組成物を構造物の表面に定着させることが望ましい。
樹脂組成物の塗布厚みは1〜500μmとすることが望ましい。
塗布厚みが1μm未満であると応力発光材料の絶対量が少なく、発光の輝度が不足するため負荷測定が難しい場合がある。また、塗布厚みを500μmを超えて厚くしても発光の輝度がそれほど上がるわけではないため経済的でない。
発光の輝度の測定は、発光している構造体の写真撮影又は動画撮影を行い、写真または動画を画像解析ソフトにより解析することにより行うことができる。
具体的には、画像解析ソフト(例えば、ImageJ:アメリカ国立衛生研究所(NIH)製)を用いて、画像全体又は測定したい一部の領域の輝度を算出し、その部分のバックグラウンドの輝度を差し引いた値を応力発光の輝度とすることができる。
この場合、構造物が設置された場所で定期的に撮影(写真及び/又は動画)を行い、記録を取ることが望ましい。
負荷を加える条件は、構造物の材料に関するJISの規定等に従うことができる。
また、応力発光性樹脂組成物を、インク組成物、接合剤、表面被覆剤として使用した場合の活用例としては、金融機関、公共機関、クレジットカード会社、流通業界等で使用される、貼り合わせ用の接着剤に応力発光材料を含有させた圧着はがきシート等の郵送物;椅子、ベッド等の家具;床材、タイル、壁材、ブロック材、舗装材、木材・鉄鋼・コンクリート等の建材;車両に搭載されたカーナビゲーション装置;オーディオ装置及びエアコンディショナー等を操作するための操作装置;家電製品や携帯機器、電子計算機等の入力装置;デジタルカメラ、CCDカメラ、フィルム、写真、ビデオ等の画像記憶手段等が挙げられる。
応力発光材料と合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物に、平均粒子径及び屈折率が所定の範囲内に定められた無機化合物を添加すると、無機化合物を含まない応力発光性樹脂組成物と比べて、応力発光性樹脂組成物の応力発光強度を増加させることができる。
この方法であると、高価な材料である応力発光材料の含有量を過剰に増やすことなく、応力発光性樹脂組成物の応力発光強度を高くすることができる。
また、その他の材料として本発明の応力発光性樹脂組成物に含有させることができる材料及び好ましい配合量も同様にすることができる。
各成分の混合の順序は限定されるものではないが、具体的な方法の例としては、以下の(1)〜(4)の方法が挙げられる。また、その他の材料はどの段階で混合してもよい。
(1)応力発光材料、合成樹脂及び無機化合物を一度に混合して応力発光強度が増加(増強)された応力発光性樹脂組成物を調製する方法
(2)応力発光材料と合成樹脂を混合していったん応力発光性樹脂組成物を調製し、無機化合物を添加することで応力発光強度が増加(増強)された応力発光性樹脂組成物を調製する方法
(3)応力発光材料と無機化合物を混合した粉末(固体)に合成樹脂を混合して応力発光強度が増加(増強)された応力発光性樹脂組成物を調製する方法
(4)合成樹脂と無機化合物を混合して樹脂組成物を調製し、応力発光材料を混合して応力発光強度が増加(増強)された応力発光性樹脂組成物を調製する方法
炭酸ストロンチウム(堺化学工業製、SW−K、23.466g)、酸化ユーロピウム(信越化学製、0.311g)、酸化アルミニウム(岩谷化学製、RA−40、17.933g)、を秤量し、水(200mL)中に入れてスラリー化後、3mm径アルミナボール(ニッカトー製、SSA−999W、190g)を粉砕メディアとして使用し、遊星ボールミルを用いて分散・粉砕・混合することによりスラリー状の応力発光材料用原料組成物を得た。スラリーの粒度分布を、分散剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを使用し、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置マイクロトラックMT3300EXにより測定した。得られたスラリーは130℃にて蒸発乾燥し、得られた固形物を乳鉢で解砕して粉末状の応力発光材料用原料組成物を得た。次いで、その応力発光材料用原料組成物をアルミナ製坩堝に20g充填して、還元雰囲気(2%水素含有窒素)中で200℃/時で1200℃まで昇温し、そのまま4時間保持後、200℃/時で室温まで降温した。
こうして得られた焼成物を、遊星ボールミルを用いてアルコール溶媒中で粉砕して整粒し、濾過・乾燥して、応力発光材料を粉末として得た。
上記の方法により得た、SrAl2O4:Eu2+で表されるユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム系応力発光材料(平均粒子径1.9μm)22.5g、無機化合物として平均粒子径1.5μmの球状シリカ(堺化学工業製、Sciqas(登録商標)、屈折率:1.46)4.5g、2液硬化型エポキシ樹脂主剤6.0g(Devcon製、デブコンET主剤)及び希釈溶剤8.0g(関西ペイント製、セルバ1051ラッカーシンナー)を70mlのマヨネーズ瓶に秤量した。そして、1.0mm径ガラスビーズ50.0g(ユニオン製、ユニビーズ)を分散メディアとして添加し、ペイントシェーカー(RED DEVIL製)を用いて20分間分散することにより応力発光材料分散主剤を調製した。
調製した応力発光材料分散主剤20.0gに対して、硬化剤(Devcon製、デブコンET硬化剤)を1.5g混合した後、アルミニウム製の試験片(材質:A1050P、幅35mm、長さ150mm、厚さ0.8mm)に、エアスプレーにより塗装した。塗装に用いたエアスプレーは、アネスト岩田製のエアーブラシHP−TR1であった。
塗膜は、試験片中心部に17mm×17mmの面積になるように作製した。常温(25℃)にて7日間硬化させることにより、厚みが117μmの膜状の応力発光性樹脂組成物を作製した。
作製した応力発光性樹脂組成物においては、応力発光材料の配合量(22.5g)が合成樹脂100重量部(主剤と硬化剤の硬化後の不揮発分9.0g)に対して250重量部であり、無機化合物の配合量(4.5g)が合成樹脂100重量部(9.0g)に対して50重量部となっている。
暗室となっている評価室内で、試験片の塗膜に365nmの紫外線を1分間照射して励起させた後、照射を止めて3分間待機させる条件を前準備とした。次いで、万能材料試験機(ミネベア製、TGI−50kN)を用いて、チャック間距離を100mmとして、20mm/minの変形速度で試験片にひずみを加えた際の応力発光強度を、光電子増倍管(浜松ホトニクス製、H7827−011)を用いて計測することにより、応力発光特性の評価を行った。
ひずみの測定は塗膜が形成されている面とは逆側の面において塗膜形成部分と同じ位置にひずみゲージ(共和電業製、KFG−5−120−C1−23L3M3R)を貼り付けて引っ張り方向のひずみを測定した。
ひずみ量が2000μSTに達した際の応力発光強度につき、後述する比較例1の応力発光強度を100とした相対値で示した。
なお、実施例1で使用した合成樹脂(エポキシ樹脂)は、常温硬化させた場合の鉛筆硬度が4Hとなる樹脂であった。
無機化合物の種類、平均粒子径又は配合量を表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
比較例1は、無機化合物を使用しない他は実施例1と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
比較例2は、無機化合物を使用せず、応力発光材料の配合量が合成樹脂100重量部に対して300重量部となるようにした他は実施例1と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
比較例3は、無機化合物として屈折率が2.00であり、平均粒子径が0.6μmである酸化亜鉛を使用した他は実施例1と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
比較例4は、無機化合物として屈折率が1.46であるが、平均粒子径が17.8μmである二酸化ケイ素を使用した他は実施例1と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
各実施例及び比較例の上記結果をまとめて表1に示した。
応力発光材料としてのユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウムの配合量を18.0gとした他は実施例1と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
作製した応力発光性樹脂組成物においては、応力発光材料の配合量(18.0g)が合成樹脂100重量部(主剤と硬化剤の硬化後の不揮発分9.0g)に対して200重量部であり、無機化合物の配合量(4.5g)が合成樹脂100重量部(9.0g)に対して50重量部となっている。
無機化合物としての球状シリカの配合量を9.0gとした他は実施例6と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
比較例5は、無機化合物を使用しない他は実施例6と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
各実施例及び比較例の上記結果をまとめて表2に示した。
また、屈折率が2.00である酸化亜鉛は、配合しても応力発光強度の向上効果が見られなかった。
比較例2では応力発光材料の配合量が合成樹脂100重量部に対して300重量部であるが、応力発光材料の配合量が250重量部である実施例1〜5よりも応力発光材料を多く配合している。
実施例の結果と比較例2の結果を比較すると、実施例1〜3及び5では比較例2の応力発光強度より大きな応力発光強度が得られている。このことから、応力発光材料の配合量を少なくしても無機化合物を配合することでより高い応力発光強度が得られることがわかった。また、表2に示すように、応力発光材料の配合量が合成樹脂100重量部に対して200重量部と少ない場合であっても、無機化合物を配合することにより、高い応力発光強度を発揮させることができることがわかった。
Claims (10)
- 応力発光材料と、無機化合物と、合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物であって、
前記応力発光材料の平均粒子径が、前記無機化合物の平均粒子径より大きく、
前記無機化合物の屈折率が1.35〜1.90であることを特徴とする応力発光性樹脂組成物。 - 前記応力発光性樹脂組成物中に含まれる前記応力発光材料と前記無機化合物との合計量が、前記合成樹脂100重量部に対して250重量部以上であり、かつ、
前記応力発光材料と前記無機化合物との重量比が、応力発光材料/無機化合物=2/1〜9/1である請求項1に記載の応力発光性樹脂組成物。 - 前記応力発光材料が、ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウムである請求項1又は2に記載の応力発光性樹脂組成物。
- 前記無機化合物が、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、二酸化ケイ素、硫酸バリウム及び酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の応力発光性樹脂組成物。
- 前記無機化合物の平均粒子径が、0.4μm〜1.5μmである請求項1〜4のいずれかに記載の応力発光性樹脂組成物。
- 前記無機化合物の屈折率が、1.35〜1.80である請求項1〜5のいずれかに記載の応力発光性樹脂組成物。
- 前記合成樹脂が、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びこれらの変性物から選択される少なくとも一種である請求項1〜6のいずれかに記載の応力発光性樹脂組成物。
- 前記合成樹脂を常温硬化させた場合の鉛筆硬度が2H〜4Hである請求項1〜7のいずれかに記載の応力発光性樹脂組成物。
- 応力発光材料と合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物に、無機化合物を添加することによって、応力発光性樹脂組成物の応力発光強度を増加させる方法であって、前記応力発光材料としてその平均粒子径が前記無機化合物の平均粒子径より大きいものを使用し、前記無機化合物として屈折率が1.35〜1.90であるものを使用することを特徴とする、応力発光性樹脂組成物の応力発光強度増加方法。
- 前記応力発光材料、前記合成樹脂及び前記無機化合物を一度に混合して応力発光性樹脂組成物を調製する請求項9に記載の応力発光強度増加方法。
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