JP2018012808A - 光エネルギー貯蔵酸化物及び樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
なかでも外部から印加された力(圧縮、変位、摩擦、衝撃など)の力学的刺激を受けて発光する材料を応力発光材料という。
しかしながら、特許文献1に記載されていたような既知の応力発光材料では、光エネルギーを貯蔵させた後、時間が経過すると応力に対する発光強度が急激に減少するため、夜間にわたって使用することを想定するとエネルギー貯蔵後の発光強度維持特性が不充分であるといえた。
さらに、応力発光材料上に感光シートとフィルタシートを積層させ、感光シート貼り付け後も励起が可能となる方法が提案されている(特許文献4参照)。この場合でも、トンネルなどの暗闇での使用では応力発光材料の励起を頻繁に行うことは非現実的であり、長期で光エネルギーを貯蔵できる性能をもつ応力発光材料が必要であった。
アルミン酸ストロンチウムにユーロピウムを賦活してなる光エネルギー貯蔵酸化物における共賦活剤としてはこれまで様々な元素の使用が検討されてきた。本発明者らは、マンガンイオン、プラセオジムイオン及びマグネシウムイオンに特有の効果として、発光強度維持特性の改良効果を見出しており、この効果は他の元素にはないマンガンイオン、プラセオジムイオン及びマグネシウムイオン固有の効果であり当業者が予想できるものではなかった。
マンガンイオン、プラセオジムイオン及びマグネシウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種を共賦活剤として使用することによって、光エネルギーを貯蔵させた後に長時間が経過した後であっても、刺激により高い発光強度を発揮させることができる。そのため、上述した橋梁における異常検出等の用途に好適に使用することができる。
マンガンイオン、プラセオジムイオン及びマグネシウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種の含有量が上記範囲内であると、発光強度維持特性の改良効果がより好適に発揮される。
マンガンイオン及びプラセオジムイオンは、発光強度維持特性の改良効果が特に高いために好ましい。
また、本発明の光エネルギー貯蔵酸化物は、マンガンイオン及びマグネシウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種を含有することが好ましい。
マンガンイオン及びマグネシウムイオンは、安価な原料であるために好ましい。
また、本発明の光エネルギー貯蔵酸化物は、マンガンイオンを含有することが好ましい。
力学的刺激、すなわち力学的エネルギーの印加による発光に加えて、又は、力学的刺激に代えて熱エネルギーや電気エネルギーの印加による発光が可能な光エネルギー貯蔵酸化物は、他の様々な用途に使用することができる。
例えば山岳地帯での土砂崩れや地熱上昇といった危険を感知するセンサに使用できる。土砂崩れによる力学的エネルギーの変化と地熱上昇をモニターするためには、通常は歪感知センサ(歪ゲージなど)と温度感知センサ(温度計)の2種以上が必要であるが、この光エネルギー貯蔵酸化物を使用すれば一つのセンサで土砂崩れや火山噴火の予兆となる振動や地熱上昇を同時にモニターできる。
また、この光エネルギー貯蔵酸化物は特定の温度以上で発光するため閾値の可視化温度センサとして使用できる。化学反応では、反応が暴走し発熱が起こり、爆発などの事故が発生することがある。周囲の人には異常な発熱が起きていることがわからず、逃げ遅れて大災害になることがある。そのため、異常な発熱が起こった際に可視化できる技術が必要であった。この光エネルギー貯蔵酸化物を反応漕に塗装しておけば、異常発熱の際に強い発光が起こり、周囲に危険を知らせることができる。
光エネルギー貯蔵酸化物と合成樹脂を混合して樹脂組成物とすると、塗料等の形で構造物等に塗布して使用することができる。
本発明の光エネルギー貯蔵酸化物は、アルミン酸ストロンチウムにユーロピウムを賦活してなる光エネルギー貯蔵酸化物であって、マンガンイオン、プラセオジムイオン及びマグネシウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種を含有していることを特徴とする。
光エネルギーの源になる光の波長は特に限定されるものではないが、紫外光(波長250〜380nm)又は青色領域の可視光(波長380〜450nm)を好ましく使用することができる。また、光エネルギーを放出する際の光の波長は可視光(波長380〜780nm)であることが好ましい。可視光であれば人(観察者)が目視により確認することができる。
アルミン酸ストロンチウムにユーロピウムを賦活してなる光エネルギー貯蔵酸化物による光エネルギーの貯蔵及び放出は以下のような機構で起こると推定されている。
まず、光エネルギーの貯蔵段階では、励起光の照射により、Eu2+の4f電子が光エネルギー照射に5d準位に励起され、5d準位の励起電子が伝導帯へ移動し、アニオン欠陥準位にトラップされ、ホールはカチオン欠陥準位にトラップされる。
一方、光エネルギーの放出段階では、エネルギーの印加により、アニオン欠陥準位にトラップされた励起電子が再度伝導帯へ移動し、カチオン欠陥準位にトラップされたホールは価電子帯へ移動し、発光中心で電子とホールが再結合することによって発光するものと考えられる。
この推定機構に基づくと、光エネルギー貯蔵酸化物が貯蔵した光エネルギーを放出させるための刺激としては、アニオン欠陥準位にトラップされた励起電子を再度伝導帯へ移動させるだけのエネルギーを加えることのできる刺激であればよい。
アルミン酸ストロンチウムは、一般的にSrxAlyOz(0<x、0<y、0<z)で表される化合物である。特に限定されないが、アルミン酸ストロンチウムの具体例としては、SrAl2O4、SrAl4O7、Sr4Al14O25、SrAl12O19、Sr3Al2O6等の種々の化合物が知られている。
母体となるアルミン酸ストロンチウムは、単斜晶のα−アルミン酸ストロンチウムであることが好ましい。単斜晶のα−アルミン酸ストロンチウムであると、自発分極性を有するために、歪みによる圧電効果に由来する応力発光を実現するのに好ましい。また、六方晶のアルミン酸ストロンチウムでは、応力発光を実現しにくい。
Euイオンの量が少なすぎると十分な発光強度を達成することができず、また多すぎても発光強度維持特性が低くなる。Euイオンの量は、アルミン酸ストロンチウム1モルあたりさらに好ましくは0.001〜0.01モルである。この濃度範囲であれば、励起から待機時間経過後の発光強度と発光強度維持特性を兼ね備えた光エネルギー貯蔵酸化物が得られやすくなる。
また、マンガンイオン源となる化合物としては、炭酸マンガン(MnCO3)、硝酸マンガン[Mn(NO3)2]、塩化マンガン(MnCl2)、酸化マンガン(MnO、MnO2、Mn3O4、Mn2O3、MnO3)、酢酸マンガン[Mn(CH3COO)2]等が挙げられる。
プラセオジムイオン源となる化合物としては、炭酸プラセオジム[Pr2(CO3)3]、硝酸プラセオジム[Pr(NO3)3]、塩化プラセオジム(PrCl3)、酸化プラセオジム(Pr2O3)、硫酸プラセオジム[Pr2(SO4)3]等が挙げられる。
マグネシウムイオン源となる化合物としては、炭酸マグネシウム(MgCO3)、硝酸マグネシウム[Mg(NO3)2]、塩化マグネシウム(MgCl2)、酸化マグネシウム(MgO)、酢酸マグネシウム[Mg(CH3COO)2]等が挙げられる。
上記光エネルギー貯蔵酸化物中に含まれるマンガンイオン、プラセオジムイオン及びマグネシウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種の含有量は特に限定されないが、アルミン酸ストロンチウム1モルあたり合計で0.001〜0.05モルであることが好ましく、0.001〜0.03モルであることがより好ましい。また、0.002〜0.01モルであることがさらに好ましい。
本発明の光エネルギー貯蔵酸化物は、共賦活剤としてナトリウム等のアルカリ金属を含有していないことが好ましい。ナトリウム等のアルカリ金属を含有した場合、初期の残光強度が高くなりやすく、発光強度維持特性が低下しやすい。
本発明の光エネルギー貯蔵酸化物は、バリウムをアルミン酸ストロンチウム1モルに対して0.4モル以上含有していないことが好ましい。バリウムを一定量以上含有すると、母体であるアルミン酸ストロンチウムの結晶構造の一部又は全部が六方晶となり、応力発光性が弱くなる傾向がある。
上記シランカップリング剤は、トリアルコキシシランを含むことが好ましい。
また、上記トリアルコキシシランのアルコキシ基以外の置換基は、炭素数3以上の炭化水素基であることが好ましい。
上記のようなシランカップリング剤によると、アルコキシ基以外の置換基の構造により疎水性を高めることができるため、さらに耐水性に優れた光エネルギー貯蔵酸化物として使用することができる。
シランカップリング剤がフルオロアルキル基を有すると、疎水性を高めることができるため、さらに耐水性に優れた光エネルギー貯蔵酸化物として使用することができる。
3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランを用いると、特に耐水性に優れた光エネルギー貯蔵酸化物として使用することができる。
このような表面処理層を有する光エネルギー貯蔵酸化物も、充分な耐水性を有する光エネルギー貯蔵酸化物になるため好ましい。
光エネルギー貯蔵酸化物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば以下のような方法が挙げられる。
母体となるアルミン酸ストロンチウムはアルミナとストロンチウム化合物を反応させることにより得ることができる。
ストロンチウム化合物の例としては、特に限定されないが、炭酸ストロンチウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、ハロゲン化ストロンチウム(塩化ストロンチウム等)、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、リン酸水素ストロンチウム等が挙げられる。
ユーロピウム源となるユーロピウム化合物としては特に限定されず、例えば炭酸ユーロピウム、酸化ユーロピウム、塩化ユーロピウム、硫酸ユーロピウム、硝酸ユーロピウム、酢酸ユーロピウムなどが挙げられる。
マンガンイオン源となる化合物としては特に限定されず、炭酸マンガン(MnCO3)、硝酸マンガン[Mn(NO3)2]、塩化マンガン(MnCl2)、酸化マンガン(MnO、MnO2、Mn3O4、Mn2O3、MnO3)、酢酸マンガン[Mn(CH3COO)2]等が挙げられる。
プラセオジムイオン源となる化合物としては、炭酸プラセオジム[Pr2(CO3)3]、硝酸プラセオジム[Pr(NO3)3]、塩化プラセオジム(PrCl3)、酸化プラセオジム(Pr2O3)、硫酸プラセオジム[Pr2(SO4)3]等が挙げられる。
マグネシウムイオン源となる化合物としては、炭酸マグネシウム(MgCO3)、硝酸マグネシウム[Mg(NO3)2]、塩化マグネシウム(MgCl2)、酸化マグネシウム(MgO)、酢酸マグネシウム[Mg(CH3COO)2]等が挙げられる。
本発明の光エネルギー貯蔵酸化物は、合成樹脂と混合して樹脂組成物として使用することが好ましい。本発明の光エネルギー貯蔵酸化物と合成樹脂とを含む樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物である。
合成樹脂としては熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等各種のものを用いることができる。
例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、塩素化プロピレン樹脂、マレイミド樹脂及びこれらの変性物から選択される少なくとも一種が挙げられる。
これらの樹脂の中ではエポキシ樹脂又はウレタン樹脂を含むことが好ましい。
合成樹脂としてエポキシ樹脂又はウレタン樹脂を使用して樹脂組成物を調製し、これをエポキシ樹脂系塗料又はウレタン樹脂系塗料として構造物に塗布して使用すると、光エネルギー貯蔵酸化物を応力発光材料として使用した応力発光塗料として使用することができる。
この応力発光塗料は構造物に加わっている負荷の大きさと発光の輝度の対応関係が明確であり、構造物に加わっている負荷の程度の判定が容易となるため好ましい。
なお、本明細書における常温は25℃であり、25℃で7日間放置することにより硬化する樹脂であれば常温硬化性の樹脂であることとする。
また、合成樹脂自体は常温硬化性でなくても、硬化剤や硬化用触媒を配合することにより常温硬化性となる樹脂であってもよい。
本発明の光エネルギー貯蔵酸化物を含む樹脂組成物は、光エネルギー貯蔵酸化物と、合成樹脂と、必要に応じてその他の材料を混合し、分散させることにより製造することができる。
例えば、原料を混合したものをコニカルブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリミキサー、三本ロールなどの混合機を用いることで樹脂組成物を製造することができる。
本発明の光エネルギー貯蔵酸化物を含む本発明の樹脂組成物は、塗料として構造物に塗布することによって、構造物に加わっている負荷の程度を判定する用途に適している。
負荷の程度を判定する対象となる構造物の材質及び用途は特に限定されるものではないが、好適な材質として、通常の紙、合成紙、あるいはエポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の高分子素材、天然ゴムあるいは合成ゴム、ガラス、セラミックス、金属、木、人工繊維または天然繊維、コンクリート、あるいはこれらの組み合わせ、およびこれらの加工製品等が挙げられる。また、構造物の好適な用途として、ビル建物、高架橋、橋梁、道路、鉄道レール、支柱、塔、パイプライン及びトンネル等の大型構造物、床材、タイル、壁材、ブロック材、舗装材、木材、鉄鋼、コンクリート等の建材、歯車、カム等の動力伝達部材、自転車、自動車、電車、船、飛行機等に使用される外装用部品又は内蔵部品(エンジン部品、タイヤ、ベルト等)、軸受部品、軸受用保持器、および、光センサ付軸受、ネジ、ボルト、ナット、ワッシャ等の締結用部品等が挙げられる。
破壊強度に異方性がある材料としては、木材、人工繊維、天然繊維等が代表例として挙げられる。また、一部のセラミックスや金属も異方性を有する。なお、コンクリートは本来異方性がない材料であるが、施工時の硬化条件等により異方性が実質的に出ているため、異方性がある材料として扱うことが好ましい。
樹脂組成物の発光の模様を観察することによって構造物に加わる負荷の方向に関する情報が得られるので、発光の模様から判定される負荷の方向が破壊強度の弱い方向である場合に、その発光の輝度に着目して構造物に加わっている負荷の重要性を判断することができる。仮に発光の輝度自体が大きかったとしても、発光の模様から負荷の方向が破壊強度の強い方向であると判断されたならば、さほどその負荷を気にする必要はないので、構造物の破壊防止のために過剰な措置をとる必要がなくなり、構造物の保守管理が容易になる。
また、時間経過毎に発光の模様を観察することも望ましい。時間経過毎に発光の模様を観察して、発光の模様が変化したことを確認することができれば、その模様の変化から、構造物に構造破壊が生じたかに関する情報を得ることができる。
本発明の光エネルギー貯蔵酸化物を含む樹脂組成物は、光エネルギーを貯蔵させた後の発光強度維持特性に優れるので、日の入りから翌朝の日の出までの一晩中にわたって発光の模様を観察することによって、構造物に構造破壊が生じているか、構造物に不具合が生じているかの判定を精度よく行うことができる。
樹脂組成物の塗布方法は、塗料を通常塗布する方法により行うことができ、特に限定されるものではないが、スプレー塗布、刷毛による塗布、ロールコート法、グラビアコート法、バーコート法、スピンコート法、ディッピング法による塗布などを使用することができる。
樹脂組成物の塗布後、樹脂を硬化させることが好ましく、常温硬化させることが好ましい。また、樹脂組成物の種類によっては熱硬化、紫外線硬化等の処理を行い、樹脂組成物を構造物の表面に定着させることが望ましい。
樹脂組成物の塗布厚みは1〜500μmとすることが望ましい。
塗布厚みが1μm未満であると光エネルギー貯蔵酸化物の絶対量が少なく、発光の輝度が不足するため負荷測定が難しい場合がある。また、塗布厚みを500μmを超えて厚くしても発光の輝度がそれほど上がるわけではないため経済的でない。
発光の輝度の測定は、発光している構造体の写真撮影又は動画撮影を行い、写真または動画を画像解析ソフトにより解析することにより行うことができる。
具体的には、画像解析ソフト(例えば、ImageJ:アメリカ国立衛生研究所(NIH)製)を用いて、画像全体又は測定したい一部の領域の輝度を算出し、その部分のバックグラウンドの輝度を差し引いた値を応力発光の輝度とすることができる。
この場合、構造物が設置された場所で定期的に撮影(写真及び/又は動画)を行い、記録を取ることが望ましい。
負荷を加える条件は、構造物の材料に関するJISの規定等に従うことができる。
また、樹脂組成物を、インク組成物、接合剤、表面被覆剤として使用した場合の活用例としては、金融機関、公共機関、クレジットカード会社、流通業界等で使用される、貼り合わせ用の接着剤に応力発光材料を含有させた圧着はがきシート等の郵送物;椅子、ベッド等の家具;床材、タイル、壁材、ブロック材、舗装材、木材・鉄鋼・コンクリート等の建材;車両に搭載されたカーナビゲーション装置;オーディオ装置及びエアコンディショナー等を操作するための操作装置;家電製品や携帯機器、電子計算機等の入力装置;デジタルカメラ、CCDカメラ、フィルム、写真、ビデオ等の画像記憶手段等が挙げられる。
炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製SW−K、28.11g)、酸化ユーロピウム(信越化学工業株式会社製、0.3586g)、炭酸マンガン(中央電気工業株式会社製、C2−SP、0.060g)、酸化アルミニウム(岩谷化学工業株式会社製、RA−40、19.9561g)、ホウ酸(U.S. Borax製、0.073g)を秤量し、水(90mL)中に仕込んだ。その後、3mm径アルミナボール(株式会社ニッカトー製、SSA−999W、190g)を粉砕メディアとして使用し、遊星ボールミルを用いて分散・粉砕・混合することによりスラリーを得た。得られたスラリーを130℃にて蒸発乾燥した。得られた固形物を乳鉢で解砕して粉末状の光エネルギー貯蔵酸化物用原料組成物を得た。次いで、その光エネルギー貯蔵酸化物用原料組成物をアルミナ製坩堝に40g充填して、還元雰囲気(2%水素含有窒素)中で200℃/時で1200℃まで昇温し、そのまま4時間保持後、200℃/時で室温まで降温した。
こうして得られた焼成物を、遊星ボールミルを用いてアルコール溶媒中で粉砕して整粒し、濾過・乾燥して光エネルギー貯蔵酸化物粉末を得た。
マンガンイオンの含有量は、アルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルである。
プラセオジムイオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを酸化プラセオジム(ニッキ株式会社製)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
マグネシウムイオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを炭酸マグネシウム(神島化学工業株式会社製 GP−30N)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
炭酸マンガンを含まないように組成を変更した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
ナトリウムイオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製 試薬)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
亜鉛イオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製 微細酸化亜鉛)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
銅イオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを塩化銅(和光純薬工業株式会社製 試薬特級)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
ツリウムイオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを酸化ツリウム(和光純薬工業株式会社製 試薬)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
ホルミウムイオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを酸化ホルミウム(信越化学工業株式会社製)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
ディスプロシウムイオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを酸化ディスプロシウム(信越化学工業株式会社製)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
すずイオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを塩化すず二水和物(和光純薬工業株式会社製 試薬)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
ネオジムイオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを酸化ネオジム(信越化学工業株式会社製)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
カルシウムイオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを炭酸カルシウム(堺化学工業株式会社製 CW−S)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
バリウムイオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを炭酸バリウム(堺化学工業株式会社製 BW−K)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
カリウムイオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを炭酸カリウム(和光純薬工業株式会社製 試薬)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
ケイ素イオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを酸化ケイ素(堺化学工業株式会社製 Sciqas(登録商標))に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
ガリウムイオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを酸化ガリウム(同和工業株式会社製)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
インジウムイオンの含有量がアルミン酸ストロンチウム1モルあたり0.0025モルとなるように、炭酸マンガンを酸化インジウム(和光純薬工業株式会社製 試薬)に変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
ユーロピウムイオン及びマンガンイオンの含有量が表3に示す量となるように、酸化ユーロピウム及び/又は炭酸マンガンの量を変えて組成を調整した以外は実施例1と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
ユーロピウムイオン及びバリウムイオンの含有量が表4に示す量となるように酸化ユーロピウム及び炭酸バリウムの量を変えて組成を調整した以外は比較例11と同じ方法で光エネルギー貯蔵酸化物を得た。
(力学的エネルギーの印加による発光特性の評価)
円形状ペレットを作製するために透明プラスチックセルに、光エネルギー貯蔵酸化物の粉末とエポキシ系樹脂を重量比で2:3となるように加えて手で混ぜ合わせ、加熱して硬化させた。硬化させてできた円形ペレットにUVランプ(AS ONE Handy UV Lamp SLUV−4)の365nmの光を1分間照射し、25℃の暗闇中で5分間放置後、卓上形精密万能試験機(島津製作所、AGS−X)によって1000Nの荷重をかけ、その際の発光を光電子増倍管モジュール(浜松ホトニクス製、H7827−011)で検出した。このときの光電子増倍管モジュールの電圧値をI5mimとした。
さらに上記の方法で作製した円形ペレットにUVランプ(AS ONE Handy UV Lamp SLUV−4)の365nmの光を1分間照射し、25℃の暗闇中で24時間放置後、同様に測定した光電子増倍管モジュールの電圧値をI24hとした。
発光強度の維持特性は、下記式(1)で表される。
発光強度維持率Ik(%)=(I24h/I5mim)×100 ・・・(1)
また、暗闇での放置後の発光強度が高く、かつ発光強度の維持特性が良いものが好ましいため、式(1)で計算した値にI24hを乗じた下記式(2)で示される値を光エネルギー貯蔵性能値ISTとした。
光エネルギー貯蔵性能値IST=I24h×(I24h/I5mim)×100 ・・・(2)
各実施例及び比較例における発光強度維持率評価結果を、表1及び表3並びに図1及び図3に示す。また、実施例における光エネルギー貯蔵性能評価結果を表2及び表3並びに図2及び図4に示す。
各実施例及び各比較例で得られた光エネルギー貯蔵酸化物につき、レーザー回折・散乱式粒度分析計(マイクロトラック・ベル製:型番 マイクロトラックMT3300EX)によって粒度分布を測定して、体積基準での50%積算粒径を算出した。
算出した50%積算粒径を平均粒子径として表1及び表3に示した。
図1より、共賦活剤としてマンガンイオン、プラセオジムイオン又はマグネシウムイオンを使用している実施例1〜3では、各比較例の共賦活剤を使用した場合と比較して発光強度維持率Ikに優れていることが分かる。
また、図2は、図1で発光強度維持率Ikに優れていることが示された実施例1〜3の光エネルギー貯蔵性能値ISTと共賦活剤のイオンの種類の関係を示している。図2より、共賦活剤としてマンガンイオン又はプラセオジムイオンを使用している実施例1、2では、光エネルギー貯蔵性能値ISTが特に優れていることが分かる。
図4は、共賦活剤としてマンガンイオンを使用した実施例1及び実施例4〜11における、光エネルギー貯蔵性能値ISTとマンガンイオン及びユーロピウムイオンの含有量との関係を示す図である。
共賦活剤としてマンガンイオンを使用した場合におけるマンガンイオン及びユーロピウムイオンの含有量については、アルミン酸ストロンチウム1モルあたり、(マンガンイオン、ユーロピウムイオン)=(0.0025モル、0.001モル)、(0.0025モル、0.01モル)、(0.005モル、0.01モル)、(0.01モル、0.01モル)といった組み合わせの場合に発光強度維持率Ik、及び、光エネルギー貯蔵性能値ISTが高くなることが分かる。
このことから、アルミン酸ストロンチウム1モルあたりのマンガンイオンの含有量が0.002〜0.01モル、かつ、ユーロピウムイオンの含有量が0.001〜0.01モルである場合に特に好ましい光エネルギー貯蔵酸化物となるといえる。
バリウムイオンは、表1の比較例2〜15で使用した共賦活剤のうち発光強度維持率Ikが最も高かったイオンである。
比較例16の発光強度維持率Ik及び光エネルギー貯蔵性能値ISTは実施例7と比べて大きく劣ることから、同じ賦活剤濃度において、共賦活剤としてマンガンイオン、プラセオジムイオン又はマグネシウムイオンを用いた場合に特に好ましい光エネルギー貯蔵酸化物となることが示された。
得られた粉末の熱エネルギーによる発光は次のような方法で測定した。実施例1の粉末を石英製の試料容器に入れ、顕微鏡用冷却加熱ステージ(LINKAM 10002L)の試料台に載せ、試料表面の温度を測定するためにKタイプの熱電対を試料表面に設置した。次いで上部のガラス窓の上からUVランプ(AS ONE Handy UV Lamp SLUV−4)の365nmの光を10分間照射し、25℃に保持しながら暗闇中で3時間放置後、25℃〜300℃まで10℃/分で昇温し、昇温中の発光を光電子増倍管モジュール(浜松ホトニクス製、H7827−011)で検出した。
図5は昇温中の試料表面の温度と光電子増倍管の電圧値を示す図である。
暗闇中で3時間放置した後であっても、80℃付近で発光しているのがわかる。
得られた粉末の初期の残光強度は次の方法で測定した。実施例1の粉末を用いて作製した円形状ペレットに200ルクスの蛍光灯の光を照射し、25℃の暗所で5分間保持したときの輝度を輝度計(トプコンテクノハウス製 BM−9A)にて測定した。このときの輝度が0.02cd/m2であった。同様の方法で比較例2、比較例9について測定したところ、それぞれ0.04cd/m2、0.1cd/m2であった。
Claims (9)
- アルミン酸ストロンチウムにユーロピウムを賦活してなる光エネルギー貯蔵酸化物であって、マンガンイオン、プラセオジムイオン及びマグネシウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種を含有していることを特徴とする光エネルギー貯蔵酸化物。
- マンガンイオン、プラセオジムイオン及びマグネシウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種の含有量が、アルミン酸ストロンチウム1モルあたり合計で0.001〜0.05モルである請求項1に記載の光エネルギー貯蔵酸化物。
- マンガンイオン及びプラセオジムイオンからなる群から選択された少なくとも1種を含有する請求項1又は2に記載の光エネルギー貯蔵酸化物。
- マンガンイオン及びマグネシウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種を含有する請求項1又は2に記載の光エネルギー貯蔵酸化物。
- マンガンイオンを含有する請求項1又は2に記載の光エネルギー貯蔵酸化物。
- 力学的エネルギーの印加により発光する請求項1〜5のいずれかに記載の光エネルギー貯蔵酸化物。
- 熱エネルギーの印加により発光する請求項1〜6のいずれかに記載の光エネルギー貯蔵酸化物。
- 電気エネルギーの印加により発光する請求項1〜7のいずれかに記載の光エネルギー貯蔵酸化物。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の光エネルギー貯蔵酸化物と、合成樹脂とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
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