JP7179495B2 - 繊維状セルロース複合樹脂及びその製造方法 - Google Patents
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木材パルプ由来の繊維状セルロースの粉末及び樹脂の混練物であり、
前記繊維状セルロースは、平均繊維幅が1~15μm、アスペクト比が2~1000、繊維長0.2mm以下の割合が12%以上のマイクロ繊維セルロースで、かつヒドロキシル基の一部又は全部が下記構造式(1)又は構造式(2)に示す官能基で置換されている、
ことを特徴とする繊維状セルロース複合樹脂。
前記繊維状セルロースは、粉末状で、かつ水分率50%以下である、
請求項1に記載の繊維状セルロース複合樹脂。
木材パルプ由来の原料繊維を解繊してマイクロ繊維セルロースとし、このマイクロ繊維セルロースの粉末又は分散液、と樹脂とを混練して繊維状セルロース複合樹脂とするにあたり、
前記解繊は、マイクロ繊維セルロースの平均繊維幅が1~15μm、アスペクト比が2~1000、繊維長0.2mm以下の割合が12%以上となる範囲にとどめ、
ことを特徴とする繊維状セルロース複合樹脂の製造方法。
前記変性によって前記マイクロ繊維セルロースのヒドロキシル基の一部又は全部を下記構造式(1)又は構造式(2)に示す官能基で置換する、
請求項3に記載の繊維状セルロース複合樹脂の製造方法。
前記多塩基酸類として下記構造式(3)、構造式(4)及び構造式(5)の少なくともいずれか1つを示す多塩基酸類を使用する、
請求項3又は請求項4に記載の繊維状セルロース複合樹脂の製造方法。
マイクロ繊維セルロースは、原料繊維(パルプ繊維)を微細化(解繊)処理して得ることができる。原料となる繊維としては、植物由来の繊維、動物由来の繊維、微生物由来の繊維等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、植物繊維であるパルプ繊維を使用するのが好ましい。原料繊維がパルプ繊維であると、安価であり、また、サーマルリサイクルの問題を避けることができる。
微細化処理は、例えば、ビーター、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、単軸混練機、多軸混練機、ニーダーリファイナー等を使用して原料繊維を叩解することによって行うことができ、リファイナーを使用して行うことが好ましい。リファイナーとは、パルプ繊維を叩解する装置であり、公知のものを用いることができる。リファイナーとしては、パルプ繊維に対して効率的に剪断力を付与し、予備的な解繊を進めることができること等の点から、コニカルタイプやダブルディスクリファイナー(DDR)及びシングルディスクリファイナー(SDR)が好ましい。なお、解繊処理工程において、リファイナーを用いると、処理後の分離や洗浄が不要となる点からも好ましい。
微細化処理して得られたマイクロ繊維セルロースは、水系媒体中に分散して分散液とすることができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましいが、一部が水と相溶性を有する他の液体である水系媒体も好ましく使用することができる。他の液体としては、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
マイクロ繊維セルロースをエステル化するに際して使用する多塩基酸類としては、多塩基酸類、無水多塩基酸類が挙げられる。多塩基酸としては、シュウ酸類、フタル酸類、マロン酸類、コハク酸類、グルタル酸類、アジピン酸類、酒石酸類、グルタミン酸類、セバシン酸類、ヘキサフルオロケイ酸類等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。だだし、好適にはフタル酸類が好ましい。
マイクロ繊維セルロースと樹脂の溶解パラメータ(cal/cm3)1/2(SP値)の差、つまり、マイクロ繊維セルロースのSPMFC値、樹脂のSPPOL値とすると、SP値の差=SPMFC値-SPPOL値とすることができる。SP値の差は10~0.1が好ましく、8~0.5がより好ましく、5~1が特に好ましい。SP値の差が10を超えると、樹脂中でマイクロ繊維セルロースが分散せず、補強効果を得ることはできない。他方、SP値の差が0.1未満であるとマイクロ繊維セルロースが樹脂に溶解してしまい、フィラーとして機能せず、補強効果が得られない。この点、樹脂(溶媒)のSPPOL値とマイクロ繊維セルロース(溶質)のSPMFC値の差が小さい程、補強効果が大きい。なお、溶解パラメータ(cal/cm3)1/2(SP値)とは、溶媒-溶質間に作用する分子間力を表す尺度であり、SP値が近い溶媒と溶質であるほど、溶解度が増す。
マイクロ繊維セルロースには、セルロースナノファイバー、ミクロフィブリルセルロース、ミクロフィブリル状微細繊維、微少繊維セルロース、ミクロフィブリル化セルロース、スーパーミクロフィブリルセルロース等と称される各種微細繊維の中から1種又は2種以上を含ませることができ、また、これらの微細繊維が含まれていてもよい。また、これらの微細繊維を更に微細化した繊維をも含ませることもでき、また、含まれていてもよい。ただし、全原料繊維中におけるマイクロ繊維セルロースの割合が10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは60質量%以上となるようにする必要がある。
マイクロ繊維セルロース及び樹脂(混練物)は、必要により再度混練処理を行った後、所望の形状に成形する。なお、混練物には変性マイクロ繊維セルロースが分散しているが、成形加工性に優れている。
明細書中の用語は、特に断りのない限り、以下のとおりである。
固形分濃度0.01~0.1質量%のマイクロ繊維セルロースの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて5000倍、10000倍又は30000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
上記平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
数平均繊維径と繊維長0.2mm以下の割合は、バルメット社製の繊維分析計「FS5」によって測定する。
上記平均繊維長を平均繊維幅(径)で除した値である。
JIS-K0131(1996)の「X線回折分析通則」に準拠して、X線回折法により測定した値である。なお、マイクロ繊維セルロースは、非晶質部分と結晶質部分とを有し、結晶化度は、マイクロ繊維セルロース全体における結晶質部分の割合を意味することになる。
JIS-P8215(1998)に準拠して測定する。なお、パルプ粘度が高いほどマイクロ繊維セルロースの重合度が高いことを意味する。
JIS P8121-2:2012に準拠して測定した値である。
針葉樹晒しクラフトパルプ(固形分3質量%)スラリーをリファイナーで処理して、マイクロ繊維セルローススラリー(MFC)を得た。得られたマイクロ繊維セルロースの平均繊維幅をSEMで測定し、1μm以上であることを確認した。また、マイクロ繊維セルロースの繊維分析計「FS5」によって測定した数平均繊維長は0.16mm、繊維長0.2mm以下の割合は83%であった。
複合樹脂を曲げ試験片に成形し、この成形物について曲げ弾性率を調べた。曲げ弾性率は、JIS K7171:2008に準拠して測定した。表中には、評価結果を以下の基準で示した。
樹脂自体の曲げ弾性率を1として複合樹脂の曲げ弾性率(倍率)が1.5倍以上の場合 :○
樹脂自体の曲げ弾性率を1として複合樹脂の曲げ弾性率(倍率)が1.5倍未満の場合 :×
MFC、無水フタル酸又はフタル酸、及び樹脂の添加割合、無水フタル酸又はフタル酸の添加の有無、繊維状セルロースの繊維幅、繊維長0.2mm以下の割合等を、表1に示すように変化させて試験を行った。結果は、表1に示した。なお、比較例4においては、無水フタル酸又はフタル酸をMFC及び樹脂の混練後に添加し、さらに混練することとした。
Claims (5)
- 前記繊維状セルロースは、粉末状で、かつ水分率50%以下である、
請求項1に記載の繊維状セルロース複合樹脂。 - 木材パルプ由来の原料繊維を解繊してマイクロ繊維セルロースとし、このマイクロ繊維セルロースの粉末又は分散液、と樹脂とを混練して繊維状セルロース複合樹脂とするにあたり、
前記解繊は、マイクロ繊維セルロースの平均繊維幅が1~15μm、アスペクト比が2~1000、繊維長0.2mm以下の割合が12%以上となる範囲にとどめ、
前記混練に際して、前記マイクロ繊維セルロースを多塩基酸類で変性させる、
ことを特徴とする繊維状セルロース複合樹脂の製造方法。
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