JP2014105407A - オリゴエステル化セルロース繊維の製造方法、オリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents

オリゴエステル化セルロース繊維の製造方法、オリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物およびその成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】セルロース繊維と熱硬化性樹脂との混練による相溶性の問題点を解決し、得られた混練物から成形体にした際、高強度、高弾性率および優れた寸法安定性を有する複合材料にすることを実現する技術を提供する。
【解決手段】水分含有率2〜10質量%であるセルロース繊維と多塩基酸無水物と不飽和結合を有するモノエポキシ化合物とを、密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入して、混練しながらオリゴエステル化反応するオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法において、混練時の混合槽内の温度が70〜200℃で、加圧蓋の圧力が0.15〜0.70MPaの範囲内にある圧力でセルロース繊維に圧力を加えながら2〜120分間混練して、混練中にオリゴエステル化反応することを特徴とするオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車部材、航空機部材、船舶部材、精密機械部材、浴槽や太陽温水器等の成形加工品の開発に有用なオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法、オリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物およびその成形体に関する。
自動車部材、航空機部材、船舶部材、精密機械部材、浴槽や太陽温水器等のように高強度、高弾性率および優れた寸法安定性が要求される用途においては、熱硬化性樹脂に強化材としてガラス繊維または炭素繊維が混入された複合材料が用いられている。
しかしながら、強化材としてガラス繊維または炭素繊維が混入された複合材料は、使用後廃棄物として埋め立て処理されるが、その処理費用は処分場が少なくなっているために高騰してきている。そこで、複合材料を焼却処理して、その量を減らすことが考えられるが、残渣としてガラス繊維または炭素繊維が残り、廃棄物の問題は解消しない。この残渣を減らす目的のため、燃焼残渣の発生のない植物繊維をプラスチックに混入する方法が考えられる。また、植物繊維は、ガラス繊維または炭素繊維に比べて比重が小さいことから、複合材料の軽量化を実現することができ、繊維強化材として期待されている。
近年、植物繊維である木材繊維と熱可塑性プラスチックとを複合化させる研究が活発になっている。(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、強化材として木材繊維が用いられた複合材料は、成形加工品の寸法安定性が悪く、また浴槽や太陽温水器等に必要な物性試験(長時間の耐煮沸試験)には耐えられないものであった。これは、木材繊維(リグノセルロース繊維)が主としてセルロース、リグニンおよびヘミセルロースからなっており、その中のリグニンおよびヘミセルロースが熱可塑性物質であり、熱水によって一部溶出されるためであると考えられる。
一方、セルロースは全く熱可塑性を示さない。その理由は、セルロースの分子構造にあり、繰り返し単位であるグルコースあたり極性の高い水酸基が3つも存在しているため、セルロースは分子鎖間の水素結合が極めて強く、熱エネルギーを加えた場合にも分子運動が可能となることはない。これまで、セルロース繊維が有する強度および熱水に対する安定性の特徴を利用して、セルロース繊維を強化材として利用する研究が活発に行われてきた。それらの一つに、セルロース分子中の活性な水酸基を利用して、セルロース繊維誘導体に関する研究が報告されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2で得られた重合性二重結合を有するセルロース繊維誘導体は、熱可塑性の能力が小さいために、成形加工する場合、各種可塑剤を混入する必要があった。さらに、適切な可塑剤を混入しても、なおかつ、熱可塑性の能力が十分でないため、成形加工する場合には、熱圧成形する必要があった。
一方、セルロース繊維と熱可塑性樹脂との界面における親和性が良好であるため、外観も良く、強度特性の優れた成形体の製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂であるため、成形体の耐熱性および寸法安定性に大きな問題点を有していた。
また、セルロース繊維と熱硬化性樹脂とを主成分とした繊維強化プラスチック成形品が提案されている(例えば、特許文献4参照)。この提案の実施例で記載されているセルロース繊維は、織布(織物)または不織布(マット)である。織布または不織布に熱硬化性樹脂を塗布し、脱泡ローラで気泡を除去しながら熱硬化性樹脂を含浸させる方法が提示されている。しかしながら、短繊維および長繊維のセルロース繊維と熱硬化性樹脂との混練に関する具体例は何ら記載がない。
特開2010−149322号公報 特開平4−85347号公報 特開2011−116838号公報 WO2004/052967号公報(特願2004−558456号公報)
これまで、セルロース繊維に熱硬化性樹脂を混練すると、混練物はパサパサの状態でゲル化を起こすという問題点があった。その解決策として、セルロース繊維の水酸基に化学反応を行いセルロース繊維誘導体に変える方法が提案されている。しかしながら、セルロース繊維誘導体と熱硬化性樹脂との混練においても、混練物は、粘度が非常に高く、ダンゴ状となった。また、得られた混練物からは、熱圧成形で成形するしか、好ましい成形体を得ることができなかった。
本発明は、上記従来の実情に鑑みなされたものであって、セルロース繊維と熱硬化性樹脂との混練による問題点を解決し、得られた混練物から成形体にした際、高強度、高弾性率および優れた寸法安定性を有する複合材料にすることを実現する技術に関する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、セルロース繊維と多塩基酸無水物と不飽和結合を有するモノエポキシ化合物とをオリゴエステル化反応させて、オリゴエステル化セルロース繊維を製造する方法において、セルロース繊維に圧力を加えながら混練すると同時に、オリゴエステル化反応することを特徴とするものである。これにより、得られた全く新しいオリゴエステル化セルロース繊維は、熱硬化性樹脂と混練して得られる混練物は、相溶性が良く、粘度が低く、取扱いが良くて大変好ましいものであった。また、この混練物から得られた成形体は、優れた寸法安定性を有し、高強度および高弾性率を実現できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)水分含有率2〜10質量%であるセルロース繊維と多塩基酸無水物と不飽和結合を有するモノエポキシ化合物とを、密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入して、混練しながらオリゴエステル化反応するオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法において、混練時の混合槽内の温度が70〜200℃で、加圧蓋の圧力が0.15〜0.70MPaの範囲内にある圧力でセルロース繊維に圧力を加えながら2〜120分間混練して、混練中にオリゴエステル化反応することを特徴とするオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法。
(2)前記加圧蓋の圧力が0.26〜0.50MPaである前記(1)に記載のオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法。
(3)前記多塩基酸無水物が無水フタル酸である前記(1)または(2)に記載のオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法。
(4)前記不飽和結合を有するモノエポキシ化合物がメタクリル酸グリシジルである前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法。
(5)オリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物であって、
(A)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のオリゴエステル化セルロース繊維と、
(B)熱硬化性樹脂と
を含有してなり、前記(A)と(B)との質量比〔(A)/(B)〕が10/90〜90/10であるオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物。
(6)前記(5)に記載のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物において、繊維として織布を用いるオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物。
(7)前記(5)または(6)に記載のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物を硬化させるとともに成形させてなるオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂成形体。
本発明により得られた成形体は、優れた寸法安定性、高強度および高弾性率を有しているため、自動車部材、航空機部材、船舶部材、精密機械部材、浴槽や太陽温水器等の成形加工品の開発に有用なオリゴエステル化セルロース繊維が提供できる。また、オリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物およびその成形体を提供することができる。本発明の成形体は、成形体使用後の廃棄処理に伴う環境問題が解決できるのみでなく、成形体の軽量化を達成することができるものである。
以下、本発明のオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法、オリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物およびその成形体の実施の形態について、本発明の成形体の好適な製造手順に従って詳細に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
本発明のオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法は、水分含有率2〜10質量%であるセルロース繊維と多塩基酸無水物と不飽和結合を有するモノエポキシ化合物とを、密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入して、混練しながらオリゴエステル化反応するオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法において、混練時の混合槽内の温度が70〜200℃で、加圧蓋の圧力が0.15〜0.70MPaの範囲内にある圧力でセルロース繊維に圧力を加えながら2〜120分間混練して、混練中にオリゴエステル化反応することを特徴とするオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法である。
セルロースは、植物細胞の細胞壁および繊維が主成分であり、天然の植物質の1/3を占め、地球上で最も多く存在する炭水化物である。多数のβ―グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した天然高分子である。本発明で用いるセルロース繊維としては、植物細胞壁を原料とするセルロース集合体を乾式解繊機により解繊した繊維状セルロースであれば特に制限はない。セルロース集合体としては、例えば、木材(針葉樹、広葉樹)、コットンリンター、ケナフ、マニラ麻、サイザル麻、ジュート、稲わら、麦わら、竹、葦等の天然セルロースを主成分とするパルプ、紙、古紙が使用される。パルプは、機械的方法で得られたパルプ(砕木パルプ、リファイナー・グランド・パルプ、サーモメカニカルパルプ、セミケミカルパルプ等)、化学的方法で得られたパルプ(クラフトパルプ、亜硫酸パルプ等)等であっても良い。
特に、化学パルプを乾式解繊機で解繊したセルロース繊維であることが好ましい。化学処理を施して溶解させると、長い繊維状のセルロースとして再生することができる(再生セルロース繊維とも呼ばれる)。本発明で用いるセルロース繊維は、乾式解繊機により繊維一本一本まで解されてあれば、その後、繊維塊(例えば、綿状)となっても良い。解繊されたセルロース繊維の寸法は特に制限はないが、繊維長は0.05〜10mmが好ましく、0.1〜5mmがより好ましい。繊維径は5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。なお、解繊されたセルロース繊維の寸法においては、成形体の強度を高めるために、特にアスペクト比(長さ/直径)が重要となる。本発明における解繊されたセルロース繊維のアスペクト比は5〜1000が好ましく、10〜100がより好ましい。
本発明で用いるセルロース繊維は、水分含有率が2〜10質量%に乾燥されたセルロース繊維が用いられる。セルロース繊維の水分含有率がこの範囲にあると、セルロース繊維と酸無水物とのエステル化反応が速やかに進行し、高付加率のエステル化セルロース繊維が得られる。水分含有率が2質量%以下においては、エステル化反応はほとんど進まず、セルロース繊維に付加された酸無水物のエステル化による付加率(エステル含量)はゼロに近い値である。水分含有率3質量%のセルロース繊維を用いた場合、酸無水物のエステル化による付加率は飛躍的に上昇する。ここでの反応はセルロース繊維の非晶領域に水分子が入り込み、水素結合を切断することで反応が進行しやすくなったためと考えられる。さらに、水分含有率10質量%まで水分含有率を上げて、同様の反応を行ったが、付加率の増加はほとんどない。それ以上になると、低下の方向を示した。付加率が低下するのは、水分子が酸無水物の開環に使われ、酸無水物の反応性が低下したためと考えられる。水分含有率は3〜7質量%がより好ましい。なお、本発明における水分含有率とは、乾燥温度を120±2℃として、JIS P 8203に則った操作方法で求めた絶乾率を100質量%から除した数値をいう。
本発明で用いる多塩基酸無水物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水イタコン酸、無水ヘット酸、無水安息香酸等が挙げられる。これらの多塩基酸無水物の中では、工業生産に優れ、かつ得られる成形体の機械的性質がより優れることから、無水フタル酸がより好ましい。
本発明で用いる不飽和結合を有するモノエポキシ化合物としては、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド等が挙げられる。これらの不飽和結合を有するモノエポキシ化合物の中では、成形体の機械的性質をより向上させることができることから、メタクリル酸グリシジルがより好ましい。
本発明では、セルロース繊維と多塩基酸無水物とのエステル化反応により、高付加率のエステル化セルロース繊維が得られる。つまり、セルロース繊維中の活性な水酸基と多塩基酸無水物中の無水酸基とは、無溶媒下においても容易に付加エステル化反応を起こして、カルボキシル基が導入されたエステル化セルロース繊維が得られる。一般に、エステル化セルロース繊維は、半エステルである。これらの塩は水溶性であり、不安定である。しかしながら、ジエステルの形にすれば非常に安定なものが得られる。したがって、エステル化セルロース繊維中のカルボキシル基に、不飽和結合を有するモノエポキシ化合物中のエポキシ基を付加させることによりエポキシ化合物―付加エステル化セルロース繊維が得られる。得られたもののIRスペクトルでは1715〜1735cm−1にエステル結合の吸収が明確に見られる。さらに、3400cm−1に水酸基の強い吸収が認められる。これは、エポキシ基とカルボキシル基との開環エステル化反応によって生じた水酸基とセルロース繊維骨格中の未反応水酸基によるものと考えられる。
上記のエポキシ化合物―付加エステル化セルロース繊維に、さらに、酸無水物とエポキシ化合物を高温下で反応させると、酸無水物とエポキシ化合物が交互に付加する、いわゆる、交互付加エステル化反応が起こる。そして、セルロース繊維を骨格としたオリゴエステル化セルロース繊維が得られる。この場合、メタクリル酸グリシジルのような不飽和結合を有するモノエポキシ化合物を使用すると重合性二重結合を有するオリゴエステル鎖が生成する。このような重合性のオリゴエステル鎖を有するオリゴエステル化セルロース繊維は高温、高圧下ではセルロース成分の可塑化を伴って橋かけ反応が起こると考えられるので興味がある。そこで、セルロース繊維と多塩基酸無水物と不飽和結合を有するモノエポキシ化合物とを、一段で中間体を単離せずにオリゴエステル化反応を行った。生成物はアセトン可溶部と不溶部から成っている。不溶部はオリゴエステル化セルロース繊維であり、これらはIRスペクトルにおいて、1720cm−1にエステル結合の強い吸収を示す。一方、可溶部は粘ちゅう状態の液体であるが、これはセルロース繊維骨格に結合していない自由なオリゴエステルである(オリゴマー)。
本発明のオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法を説明する。先ず、用意したセルロース繊維を熱風乾燥器で乾燥して、水分含有率2〜10質量%に調製する。次に、所定量の半分のセルロース繊維を密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。一度、密閉式加圧型ニーダーを稼動して、混合槽内のセルロース繊維を圧縮して、セルロース繊維の嵩密度を高める。次に、残りの半分のセルロース繊維と所定量の多塩基酸無水物を密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、セルロース繊維と多塩基酸無水物の好適なエステル化反応条件(反応温度、反応時間、混練回転数)で、その上、加圧蓋でセルロース繊維に圧力を加えながら混練と同時にエステル化反応を行う。エステル化反応後、加圧蓋を徐々に開け、所定量の不飽和結合を有するモノエポキシ化合物を密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、エステル化セルロース繊維とモノエポキシ化合物の好適なオリゴエステル化反応条件(反応温度、反応時間、混練回転数)で、その上、加圧蓋でエステル化セルロース繊維に圧力を加えながら混練と同時にオリゴエステル化反応を行う。オリゴエステル化反応後、加圧蓋を徐々に開き、オリゴエステル化セルロース繊維を取り出す。なお、上記エステル化反応条件とオリゴエステル化反応条件が同じであれば、一工程で反応を行ってもかまわない。すなわち、セルロース繊維と多塩基酸無水物と不飽和結合を有するモノエポキシ化合物とを同時に密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、好適なオリゴエステル化反応条件(反応温度、反応時間、混練回転数)で、その上、加熱蓋でセルロース繊維に圧力を加えながら混練と同時にオリゴエステル化反応を行い、オリゴエステル化セルロース繊維を得ることができる。
本発明のオリゴエステル化セルロース繊維のセルロース繊維中に付加される酸無水物とモノエポキシ化合物の付加量は、酸無水物とモノエポキシ化合物の仕込み量によっても異なるが、一般にセルロース繊維に対して、3〜30質量%であることが好ましい。3質量%以下ではオリゴエステル化セルロース繊維と熱硬化性樹脂との相溶性が悪くなり、成形体が得られない。また、30質量%以上になると、酸無水物とモノエポキシ化合物とのオリゴエステル化反応で得られるオリゴマーの量が多くなり経済的でない。多塩基酸無水物に対して不飽和結合を有するモノエポキシ化合物の仕込み量は、酸無水物1モルに対してモノエポキシ化合物1〜2モルが適当である。さらには、酸無水物1モルに対してモノエポキシ化合物1.1〜1.3モルの範囲に入ることが好ましい。
ついで、密閉式加圧型ニーダーの混合槽内の反応温度は、多塩基酸無水物、または不飽和結合を有するモノエポキシ化合物の選択する薬剤の種類によって異なる。総体的には70〜200℃の範囲である。70℃以下ではエステル化反応およびオリゴエステル化反応が進みにくく、200℃以上ではセルロース繊維が熱分解を起こして好ましくない。また、セルロース繊維と多塩基酸無水物と不飽和結合を有するモノエポキシ化合物とを反応させる際の加熱時間は、用いられる反応系における残存酸価および残存エポキシ価が無視できる程度になる時間であればよい。総体的には、加熱時間は2〜120分間が好ましい。一方、密閉式加圧型ニーダーの混練回転数は10〜70min−1で良好であるが、セルロース繊維を短繊維化しない方が好ましく、そのためにも回転数は小さい方が好ましい。
上記のような条件のもとで、その上、加圧蓋の圧量が大気圧(0.10MPa)下で、セルロース繊維と多塩基酸無水物と不飽和結合を有するモノエポキシ化合物とを混練しながら、同時にオリゴエステル化反応を行うことによって、セルロース繊維を骨格としたオリゴエステル化セルロース繊維を得る。次に、得られたオリゴエステル化セルロース繊維と不飽和ポリエステル樹脂(熱硬化性樹脂)とを混練することによって混練物を得る。しかしながら、このようにして得られた混練物は、粘度が非常に高く、ダンゴ状であった。したがって、本発明で使用する注型用金型のキャビティーに充填することはできないもので、成形板を得ようとすれば、熱圧成形しか得られないものであった。
ところが、密閉式加圧型ニーダーの混合槽内にセルロース繊維を多量に投入して、一度、密閉式加圧型ニーダーを稼動して、混合槽内のセルロース繊維を圧縮し、セルロース繊維の嵩密度を高める。次に、さらに密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に所定量のセルロース繊維、所定量の多塩基酸無水物、所定量の不飽和結合を有するモノエポキシ化合物を投入して、加圧蓋でセルロース繊維に圧力を加えながらエステル化反応、またはオリゴエステル化反応を行うと思いがけない現象が見られた。加圧蓋の圧力が0.15〜0.70MPaの範囲内にある圧力でセルロース繊維に圧力を加えながら混練して、エステル化反応、またはオリゴエステル化反応を行うと、嵩密度が0.25g/cm以上のオリゴエステル化セルロース繊維が得られた(セルロース繊維の嵩密度:0.08g/cm)。得られたオリゴエステル化セルロース繊維は不飽和ポリエステル樹脂(熱硬化性樹脂)に対して非常に相溶性が良いことが分かった。混練物は粘度が低く、サラサラの液体であった。なかでも、加圧蓋の圧力が0.26〜0.50MPaの範囲内にある圧力でセルロース繊維に圧力を加えながら混練して、オリゴエステル化反応を行って得られたオリゴエステル化セルロース繊維は、嵩密度が0.31〜0.55g/cmと高い値を示した。また、不飽和ポリエステル樹脂(熱硬化性樹脂)と混練した混練物は、さらに粘度が低く、多量のセルロース繊維を含有する能力を有するものであった。加圧蓋の圧力が0.70MPa以上になると混練自体が難しくなるので好ましくない。
加圧蓋の圧力が0.15MPa(大気圧、0.10MPa含む)以下の条件で調製したオリゴエステル化セルロース繊維を強化材として用いた組成物は、粘度が非常に高く、ダンゴ状であった。これは、上記条件で調製したオリゴエステル化セルロース繊維は、セルロース繊維の表層部だけがオリゴエステル化処理されていて、セルロース繊維の内部は無処理の状態であると考えられる。つまり、不飽和ポリエステル樹脂中の分子量の小さい単量体(例えばスチレン等)だけがセルロース繊維内部の細孔内に吸着されてしまう。特に、無処理のセルロース繊維は、その分子構造中に複数の水酸基を有しているため、極性が強く、溶剤を取り込みやすい構造になっているのであろうと推察される。また、セルロース繊維内部の微小なすきまは、毛細管現象が起こりやすく、細い管の中をスチレン等の溶剤だけが上がって吸収されるためであると考えられる。そのため、不飽和ポリエステル樹脂自体、その組成バランスをくずし、ゲル状になってしまったものと考えられる。
一方、加圧蓋の圧力が0.15MPa以上の条件で調製したオリゴエステル化セルロース繊維を、不飽和ポリエステル樹脂(熱硬化性樹脂)の強化材として用いた組成物は、粘度が低く、サラサラとしていて、多量のセルロース繊維を含有することが可能である。これは、上記条件で調製したオリゴエステル化セルロース繊維は、セルロース繊維の表層部、および内部までオリゴエステル化処理されているため、不飽和ポリエステル樹脂中の分子量の小さい単量体(例えばスチレン等)は、セルロース繊維内部の細孔内に吸着されにくいためと推察される。また、セルロース繊維内部の微小なすきまには、セルロース繊維中の水酸基に、多塩基酸無水物と不飽和結合を有するモノエポキシ化合物からなるオリゴエステル鎖が結合状態で内在する。または、セルロース繊維と結合していないフリーなオリゴマーも内在しているために、毛細管現象が起こりにくく、溶剤の吸収が起こりにくいものと考えられる。
本発明のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物は、オリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂の製造に用いられる組成物であって、
(A)本発明で得られるオリゴエステル化セルロース繊維と、
(B)熱硬化性樹脂と
を含有してなり、前記(A)と(B)との質量比〔(A)/(B)〕が10/90〜90/10であるあることを特徴とする。すなわち、オリゴエステル化セルロース繊維と熱硬化性樹脂との質量比が10/90〜90/10であることが好ましく、優れた機械的性質を有する成形体が得られる。また、この範囲であると、熱硬化性樹脂中のオリゴエステル化セルロースの分散状態がより均一となり、成形体中に分散しているオリゴエステル化セルロース繊維の方向がランダムになり、成形体強度に異方性が生じにくくなる。さらに、オリゴエステル化セルロース繊維と熱硬化性樹脂がこの範囲にあると、本発明のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂でできた成形品を焼却した際に発生する燃焼熱量が少なくてすむ。質量比が60/40〜80/20がより好ましい。
本発明に用いる熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂等が用いられる。好ましくは不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂またはエポキシ樹脂が用いられる。これらの熱硬化性樹脂にはそれぞれの樹脂に対して一般的に用いられる硬化触媒や硬化剤が使用される。
本発明で用いる不飽和ポリエステル樹脂とは、不飽和ポリエステル樹脂、重合性単量体、低収縮材、および硬化剤等を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物を意味する。不飽和ポリエステル樹脂は、α、β―不飽和多塩基酸またはその無水物を必須成分として含む多塩基酸成分と多価アルコールを反応させて得られる。不飽和ポリエステル樹脂の合成原料であるα、β―不飽和多塩基酸またはその無水物としては、例えば、α、β―不飽和二塩基酸またはその無水物、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、これらの無水物等が挙げられる。これらは、2種以上併用してもよい。多塩基酸成分としては、不飽和基の濃度を調節すること、可擁性、耐熱性等の特性を付与するために、α、β―不飽和多塩基酸またはその無水物のほか、飽和多塩基酸またはその無水物を併用するのが好ましい。このとき、α、β―不飽和多塩基酸またはその無水物としては、多塩基酸成分のうち、40モル%以上とするのが好ましい。α、β―不飽和多塩基酸またはその無水物が40モル%より少なくなると得られる成形品の強度が漸次低下する傾向を示す。このことから、α、β―不飽和多塩基酸またはその無水物が、45〜80モル%であるのがより好ましく、50〜70モル%であることがさらに好ましい。
重合性単量体としては、例えば、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、ターシヤルブチルスチレン、臭化スチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のメタクリル酸またはアクリル酸のアルキルエステル、β―ヒドロキシメタクリル酸エチル、β―ヒドロキシアクリル酸エチル等のメタクリル酸またはアクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、ジアリルフタレート、アクリルアミド、マエニルマレイミド等が挙げられる。
不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体とを配合し、必要により重合禁止剤等を加えて不飽和ポリエステル樹脂組成物とされる。このときの不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との配合割合は、両者の合計量を100重量部とするとき、不飽和ポリエステル樹脂が25〜75重量部、重合性単量体が75〜25重量部とするのが好ましい。重合性単量体が25重量部未満であると不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が高すぎて他の成分と混合しにくくなり好ましくない。このことから、不飽和ポリエステル樹脂が40〜65重量部、重合性単量体が60〜35重量部とするのがより好ましい。重合禁止剤としては、P−ペンゾキノン、ナフトキノン、トルキノン、ハイドロキノン、モノーt−ブチルハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。重合禁止剤は、前記不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との総量に対して0.5重量%以下で使用されることが好ましい。
不飽和ポリエステル樹脂の硬化剤としては、ケトンパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、ハイドロパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、アルキルパーエステル類等が挙げられる。硬化剤の量は、材料の保存性、成形サイクルの面から前記不飽和ポリエステル樹脂および重合性単量体の総量に対して0.5〜5重量%が好ましく、より好ましくは1〜3重量%である。
本発明で用いるビニルエステル樹脂とは、ポリエポキシドとα、β―不飽和一塩基酸の当量反応物をビニル単量体で希釈して得られたものをいう。分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するものであり、例えば、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸と、必要に応じて多塩基酸とを付加反応させることにより得られる。用いうるポリエポキシドの例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のエピ・ビス型グリシジルエーテル、ノボラック型グリシジルエーテル、臭素化グリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等の含窒素ポリエポキシド、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のグリシジルエステル、グリコール型グリシジルエーテル等が挙げられる。用いる不飽和一塩基酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸等が挙げられる。また、上記において用い得るビニル系単量体の例としては、スチレン以外に、メチルメタクリレート、ビニルトルエン、α―メチルスチレン、クロルスチレン等が挙げられる。一般に、ビニルエステル樹脂が25〜65重量部、重合性単量体(例えば、スチレン)が75〜35重量部とするのが好ましい。ビニルエステル樹脂の硬化剤としては、不飽和ポリエステル樹脂で挙げたものと同様の硬化剤を用いることができる。
本発明で用いるエポキシ樹脂とは、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を反応性希釈剤で希釈して得られたものをいう。エポキシ樹脂の具体例としては、ポリオールから得られるグリシジルエーテル、活性水素を複数有するアミンより得られるグリシジルアミン、ポリカルボン酸より得られるグリシジルエステルや、分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるポリエポキシド等が挙げられる。
グリシジルエーテルの具体例としては、ビスフェノールAから得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFから得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。グリシジルアミンの具体例としては、ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンである。グリシジルエステルの具体例としては、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるポリエポキシドとしては、エポキシシクロヘキサン環を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
なお、エポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂組成物の粘度の適正化に効果のある1官能のエポキシ樹脂(反応性希釈剤)を配合する。反応希釈剤としては、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
エポキシ樹脂に用いられる硬化剤の具体例としては、例えば、ピペジリン、N、N―ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ジエチルアミン等のアミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−エチル―4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、ポリメルカプタン化合物、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等の酸無水物等が挙げられる。
本発明のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸カリウム、ナフテン酸カルシウム、オクテン酸コバルト等の硬化促進剤、内部離型剤、消泡剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料等が配合されていても良い。
一方、本発明のオリゴエステル化セルロース繊維に使用されるセルロース繊維としては、短繊維セルロースおよび長繊維セルロース、どちらも用いることができる。生産性が良好であれば、繊維長の長い方が成形品の機械的強度を高めるために好ましい。一般的には、短繊維セルロースが用いられ、直径1〜50μm、長さ0.02〜5mmであるものが、取扱い性に優れて好ましい。短繊維セルロースが、直径1μm未満または50μmを超えるか、長さ0.02mm未満または5mmを超えるものであると、大量生産が困難となり好ましくない。長繊維セルロースとしては、不織布、編物、織布いずれの形態でも使用可能である。なかでも、最大限の補強効果を得るためには、織布が最も好ましい。
本発明のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物において、繊維として織布を用いるオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物は、最大限の補強効果を得る。すなわち、オリゴエステル化セルロース繊維を紡糸した後、織布の形態にしたオリゴエステル化セルロース繊維を用いるのである。このようにして得られた織布状のオリゴエステル化セルロース繊維と熱硬化性樹脂とを含有したオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られる成形体は、優れた機械的強度を得ることができて大変好ましい。
本発明のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂成形体は、前述したオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物を成形することによって得られる成形体である。本発明のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂成形体は、前述したオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物が用いられているので、比強度、比弾性率が大きく、耐煮沸試験による寸法安定性等の物性に優れている。
本発明のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物を用いて、各種成形方法により成形体を製造することができる。成形方法としては、一般的な成形方法を用いることができ、特に制限されない。例えば、射出成形法、トランスファ成形法、またFRP低圧成形法としてコールドプレス法、レジンインジェクション法、引き抜き成形法、FRP中高圧成形法としてマッチドダイ法を挙げることができる。その他、塗料・化粧板関係の成形方法としては、フローコーター法、フィルム法、光硬化法を挙げることができるが、これらの方法に制限されることはない。また、成形体の形状も特に制限されない。
次に、実施例などに基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例等に制限されるものではない。なお、実施例に用いた混練および反応装置は、密閉式加圧型ニーダー[1バッチ容量500cc、(株)モリヤマ、MS式加圧型ニーダー(登録商標)D0.5−5、(加圧蓋に圧力計を設置した)]である。
(製造例1)
セルロース繊維〔数平均繊維長300μm、数平均繊維径20μm、嵩密度0.08g/cm、レッテンマイヤー(株)製、商品名:ARBOCEL(登録商標)BC200〕を熱風乾燥機で乾燥させ、水分含有率4.5質量%のセルロース繊維を得た。
(製造例2)
木材繊維〔数平均繊維長110μm、嵩密度0.12g/cm、レッテンマイヤー(株)製、商品名:LIGNOCEL(登録商標)150TR〕を熱風乾燥機で乾燥させ、水分含有率5.7質量%の木材繊維を得た。
(実施例1)
密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に、製造例1で得られたセルロース繊維の所定量の半分(140g)を投入する。その後、密閉式加圧型ニーダーを稼動して、混合槽内のセルロース繊維を圧縮して、セルロース繊維の嵩密度を高める。次に、残りの半分(140g)のセルロース繊維と無水マレイン酸12.97gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度120℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、加圧蓋でセルロース繊維に0.26MPaの圧力を加えながら混練を行い、同時にエステル化反応を行なった。次に、エステル化反応後、加圧蓋を徐々に開き、アリルグリシジルエーテル18.14gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度120℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、加圧蓋でエステル化セルロース繊維に0.26MPaの圧力を加えながら混練を行い、同時にオリゴエステル化反応を行ってオリゴエステル化セルロース繊維を得た。
重合性二重結合を有するオリゴエステル化セルロース繊維の数平均繊維長を走査電子顕微鏡で測定した。その結果、重合性二重結合を有するオリゴエステル化セルロース繊維の数平均繊維長は90μmであった。
強化繊維として上記で得られたオリゴエステル化セルロース繊維を、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂[昭和電工(株)製、商品名:リゴラック(登録商標)R1−105S]を用いた。オリゴエステル化セルロース繊維/不飽和ポリエステル樹脂(質量比)が35/65となるように混合し、均一な組成になるまで混練して、混練物を得た。この混練物は、相溶性が良く、粘度が低く、サラサラして大変好ましいものであった。得られた混練物に、当該混練物中に含まれる不飽和ポリエステル樹脂100質量部あたりスチレン5質量部、脱泡剤[ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名:BYK(登録商標)−A560]0.3質量部、硬化促進剤0.5質量部、MEKPO硬化剤[55質量%メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)、化薬アクゾ(株)製、商品名:カヤメック(登録商標)M]1.0質量部を添加し、均一な組成になるまで撹拌してオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物を得た。
得られたオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物を注型用金型のキャビティーに充填し、室温にて1日間静置して硬化させた後、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、板状の成形体を得た。得られた成形体を用い、JIS K 6911に定める試験片を得た。
(比較例1)
実施例1において、オリゴエステル化セルロース繊維を用いる代わりに製造例1で得られたセルロース繊維を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行い、混練物を得た。しかしながら、得られた混練物は、パサパサの状態でゲル化していた。そのため、成形体を得ることはできなかった。
(比較例2)
密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に、製造例1で得られたセルロース繊維90.00gと無水マレイン酸4.17gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度120℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、大気圧(0.10MPa)下で混練を行い、同時にエステル化反応を行なった。次に、エステル化反応後、加圧蓋を徐々に開き、アリルグリシジルエーテル5.83gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度120℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、大気圧(0.10MPa)下で混練を行い、同時にオリゴエステル化反応を行ってオリゴエステル化セルロース繊維を得た。
実施例1において、オリゴエステル化セルロース繊維を用いる代わりに上記で得られたオリゴエステル化セルロース繊維を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行い、混練物を得た。しかしながら、得られた混練物は、粘度が非常に大きく、ダンゴ状であった。その後、実施例1と同様な操作を行い、オリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物を得たが、注型用金型のキャビティーに充填することはできなかった。成形板を得るためには、熱圧成形する必要があった。
(比較例3)
密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に、製造例2で得られた木材繊維90.00gと無水マレイン酸4.17gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度120℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、大気圧(0.10MPa)下で混練を行い、同時にエステル化反応を行なった。次に、エステル化反応後、加圧蓋を徐々に開き、アリルグリシジルエーテル5.83gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度120℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、大気圧(0.10MPa)下で混練を行い、同時にオリゴエステル化反応を行ってオリゴエステル化木材繊維を得た。
実施例1において、オリゴエステル化セルロース繊維を用いる代わりに上記で得られたオリゴエステル化木材繊維を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行い、混練物を得た。得られた混練物は、粘度が大きい、粘ちゅう状態の液体であった。しかしながら、木材繊維は、セルロース繊維と異なり、熱可塑性のリグニンおよびヘミセルロースが存在しているため、混合物に流動性が見られるものと考えられる。さらに、実施例1と同様の操作を行い、オリゴエステル化木材繊維強化熱硬化性樹脂組成物を得た。
得られたオリゴエステル化木材繊維強化熱硬化性樹脂組成物を注型用金型のキャビティーに充填し、室温にて1日間静置して硬化させた後、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、板状の成形体を得た。得られた成形体を用い、JIS K 6911に定める試験片を得た。
(比較例4)
実施例1において、オリゴエステル化セルロース繊維を用いる代わりにガラス繊維[数平均繊維長90μm、日東紡(株)製、商品名:カットファイバー(登録商標)PF80E−401]を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行い、混練物を得た。得られた混練物は、粘ちゅう状態の液体であった。さらに、実施例1と同様の操作を行い、ガラス繊維強化熱硬化性樹脂組成物を得た。
得られたガラス繊維強化熱硬化性樹脂組成物を注型用金型のキャビティーに充填し、室温にて1日間静置して硬化させた後、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、板状の成形体を得た。得られた成形体を用い、JIS K 6911に定める試験片を得た。
(比較例5)
実施例1において、オリゴエステル化セルロース繊維を用いる代わりに炭素繊維[数平均繊維長90μm、(株)クレハ製、商品名:クレカチョップ(登録商標)M−1009S]を用いたことを除き、実施例1と同様の操作を行い、混練物を得た。得られた混練物は、粘ちゅう状態の液体であった。さらに、実施例1と同様の操作を行い、炭素繊維強化熱硬化性樹脂組成物を得た。
得られた炭素繊維強化熱硬化性樹脂組成物を注型用金型のキャビティーに充填し、室温にて1日間静置して硬化させた後、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、板状の成形体を得た。得られた成形体を用い、JIS K 6911に定める試験片を得た。
(比較例6)
実施例1において、オリゴエステル化セルロース繊維と不飽和ポリエステル樹脂との混練物を用いる代わりに不飽和ポリエステル樹脂を用いた。さらに、実施例1と同様の操作を行い、不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。
得られた不飽和ポリエステル樹脂組成物を注型用金型のキャビティーに充填し、室温にて1日間静置して硬化させた後、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、板状の成形体を得た。得られた成形体を用い、JIS K 6911に定める試験片を得た。
(試験例1)
実施例1および比較例3〜6それぞれ得られた試験片を用い、JIS K 6911にしたがって引張試験を行うことにより、引張強度および引張弾性率を測定した。また、実施例1および比較例3〜6それぞれ得られた試験片を用い、JIS K 6911にしたがって曲げ試験を行うことにより、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2014105407
表1に示された結果から、実施例1で得られた成形体は、比較例3〜6で得られた成形体と比べ、引張強度、および曲げ強度において優れていることが分かる。また、引張弾性率および曲げ弾性率においては、実施例1で得られたオリゴエステル化セルロース繊維は、比較例4、5で得られたガラス繊維、および炭素繊維に比べて、遜色のない、数値を示した。また、実施例1で得られた成形体は、強化繊維としてセルロース繊維を用いたものであり、ガラス繊維、および炭素繊維が用いられていないことから、当該成形体を製造するに際して人体への負荷が少なく、しかも当該成形体を破棄するに際して環境への負荷が少ないという優れた性質を有するものである。さらに、セルロース繊維は、ガラス繊維または炭素繊維に比べて比重が小さいことから、複合材料の軽量化を実現することができる。
一方、強化繊維として無処理のセルロース繊維(比較例1)、および大気圧(0.10MPa)下で得られたオリゴエステル化セルロース繊維(比較例2)を用いたものは、不飽和ポリエステル樹脂(熱硬化性樹脂)との相溶性が悪く、不飽和ポリエステル樹脂との混練物は、パサパサの状態でゲル化するか、または粘度が非常に大きく、ダンゴ状になり、好ましい成形体は得られなかった。
(実施例2)
密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に、製造例1で得られたセルロース繊維の所定量の半分(110g)を投入する。その後、密閉式加圧型ニーダーを稼動して、混合槽内のセルロース繊維を圧縮して、セルロース繊維の嵩密度を高める。次に、残りの半分(110g)のセルロース繊維と無水フタル酸10.83gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度150℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、加圧蓋でセルロース繊維に0.15MPaの圧力を加えながら混練を行い、同時にエステル化反応を行なった。次に、エステル化反応後、加圧蓋を徐々に開き、メタクリル酸グリシジル13.59gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度90℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、加圧蓋でエステル化セルロース繊維に0.15MPaの圧力を加えながら混練を行い、同時にオリゴエステル化反応を行ってオリゴエステル化セルロース繊維を得た。
重合性二重結合を有するオリゴエステル化セルロース繊維の数平均繊維長を走査電子顕微鏡で測定した。その結果、重合性二重結合を有するオリゴエステル化セルロース繊維の数平均繊維長は90μmであった。
強化繊維として上記で得られたオリゴエステル化セルロース繊維と、熱硬化性樹脂としてビニルエステル樹脂[粘度0.9〜2.3dPa・s/25℃、昭和電工(株)製、商品名:RIPOXY(登録商標)R―806]とを、オリゴエステル化セルロース繊維/ビニルエステル樹脂(質量比)が35/65となるように混合し、均一な組成になるまで混練して混練物を得た。この混練物は、相溶性が良く、粘度が低く、サラサラして大変好ましいものであった。次に、得られた混練物に、当該混練物中に含まれるビニルエステル樹脂100質量部あたり脱泡剤[ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名:BYK(登録商標)−A560]0.3質量部、硬化促進剤(ナフテン酸コバルト)0.5質量部、MEKPO硬化剤[55質量%メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)、化薬アクゾ(株)製、商品名:カヤメック(登録商標)M]1.5質量部を添加し、均一な組成になるまで撹拌してオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物を得た。
得られたオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物を注型用金型のキャビティーに充填し、室温にて1日間静置して硬化させた後、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、板状の成形体を得た。得られた成形体を用い、JIS K 6911に定める試験片を得た。
(実施例3)
密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に、製造例1で得られたセルロース繊維の所定量の半分(140g)を投入する。一度、密閉式加圧型ニーダーを稼動して、混合槽内のセルロース繊維を圧縮して、セルロース繊維の嵩密度を高める。次に、残りの半分(140g)のセルロース繊維と無水フタル酸13.81gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度150℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、加圧蓋でセルロース繊維に0.26MPaの圧力を加えながら混練と同時にエステル化反応を行なった。次に、エステル化反応後、加圧蓋を徐々に開き、メタクリル酸グリシジル17.30gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度90℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、加圧蓋でエステル化セルロース繊維に0.26MPaの圧力を加えながら混練と同時にオリゴエステル化反応を行ってオリゴエステル化セルロース繊維を得た。
実施例2において、オリゴエステル化セルロース繊維を用いる代わりに上記で得られたオリゴエステル化セルロース繊維を用いたことを除き、実施例2と同様の操作を行い、混練物を得た。得られた混練物は、相溶性が良く、粘度が小さく、サラサラして大変好ましいものであった。さらに、実施例2と同様の操作を行い、オリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物を得た。
得られたオリゴエステル化木材繊維強化熱硬化性樹脂組成物を注型用金型のキャビティーに充填し、室温にて1日間静置して硬化させた後、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、板状の成形体を得た。得られた成形体を用い、JIS K 6911に定める試験片を得た。
(実施例4)
密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に、製造例1で得られたセルロース繊維の所定量の半分(150g)を投入する。一度、密閉式加圧型ニーダーを稼動して、混合槽内のセルロース繊維を圧縮して、セルロース繊維の嵩密度を高める。次に、残りの半分(150g)のセルロース繊維と無水フタル酸14.79gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度150℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、加圧蓋でセルロース繊維に0.30MPaの圧力を加えながら混練と同時にエステル化反応を行なった。次に、エステル化反応後、加圧蓋を徐々に開き、メタクリル酸グリシジル18.51gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度90℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、加圧蓋でエステル化セルロース繊維に0.30MPaの圧力を加えながら混練と同時にオリゴエステル化反応を行ってオリゴエステル化セルロース繊維を得た。
実施例2において、オリゴエステル化セルロース繊維を用いる代わりに上記で得られたオリゴエステル化セルロース繊維を用いたことを除き、実施例2と同様の操作を行い、混練物を得た。得られた混練物は、相溶性が良く、粘度が低く、取扱いが良くて大変好ましいものであった。さらに、実施例2と同様の操作を行い、オリゴエステル化木材繊維強化熱硬化性樹脂組成物を得た。
得られたオリゴエステル化木材繊維強化熱硬化性樹脂組成物を注型用金型のキャビティーに充填し、室温にて1日間静置して硬化させた後、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、板状の成形体を得た。得られた成形体を用い、JIS K 6911に定める試験片を得た。
(実施例5)
密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に、製造例1で得られたセルロース繊維の所定量の半分(165g)を投入する。一度、密閉式加圧型ニーダーを稼動して、混合槽内のセルロース繊維を圧縮して、セルロース繊維の嵩密度を高める。次に、残りの半分(165g)のセルロース繊維と無水フタル酸16.28gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度150℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、加圧蓋でセルロース繊維に0.41MPaの圧力を加えながら混練と同時にエステル化反応を行なった。次に、エステル化反応後、加圧蓋を徐々に開き、メタクリル酸グリシジル20.38gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度90℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、加圧蓋でエステル化セルロース繊維に0.41MPaの圧力を加えながら混練と同時にオリゴエステル化反応を行ってオリゴエステル化セルロース繊維を得た。
実施例2において、オリゴエステル化セルロース繊維を用いる代わりに上記で得られたオリゴエステル化セルロース繊維を用いたことを除き、実施例2と同様の操作を行い、混合物を得た。得られた混合物は、相溶性が良く、粘度が小さく、サラサラして大変好ましいものであった。さらに、実施例2と同様の操作を行い、オリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物を得た。
得られたオリゴエステル化木材繊維強化熱硬化性樹脂組成物を注型用金型のキャビティーに充填し、室温にて1日間静置して硬化させた後、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、板状の成形体を得た。得られた成形体を用い、JIS K 6911に定める試験片を得た。
(実施例6)
密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に、製造例1で得られたセルロース繊維の所定量の半分(195g)を投入する。一度、密閉式加圧型ニーダーを稼動して、混合槽内のセルロース繊維を圧縮して、セルロース繊維の嵩密度を高める。次に、残りの半分(195g)のセルロース繊維と無水フタル酸19.24gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度150℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、加圧蓋でセルロース繊維に0.50MPaの圧力を加えながら混練と同時にエステル化反応を行なった。次に、エステル化反応後、加圧蓋を徐々に開き、メタクリル酸グリシジル24.09gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度90℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、加圧蓋でエステル化セルロース繊維に0.50MPaの圧力を加えながら混練と同時にオリゴエステル化反応を行ってオリゴエステル化セルロース繊維を得た。
実施例2において、オリゴエステル化セルロース繊維を用いる代わりに上記で得られたオリゴエステル化セルロース繊維を用いたことを除き、実施例2と同様の操作を行い、混練物を得た。得られた混練物は、相溶性が良く、粘度が小さく、サラサラして大変好ましいものであった。さらに、実施例2と同様の操作を行い、オリゴエステル化木材繊維強化熱硬化性樹脂組成物を得た。
得られたオリゴエステル化木材繊維強化熱硬化性樹脂組成物を注型用金型のキャビティーに充填し、室温にて1日間静置して硬化させた後、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、板状の成形体を得た。得られた成形体を用い、JIS K 6911に定める試験片を得た。
(比較例7)
密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に、製造例1で得られたセルロース繊維90.00gと無水フタル酸4.44gを投入する。その後、反応温度150℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、大気圧(0.10MPa)下で混練を行い、同時にエステル化反応を行なった。次に、エステル化反応後、加圧蓋を徐々に開き、メタクリル酸グリシジル5.56gを密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入する。その後、反応温度90℃、反応時間20分間、混練回転数50rpm−1の条件で、その上、大気圧(0.10MPa)下で混練を行い、同時にオリゴエステル化反応を行ってオリゴエステル化セルロース繊維を得た。
実施例2において、オリゴエステル化セルロース繊維を用いる代わりに上記で得られたオリゴエステル化セルロース繊維を用いたことを除き、実施例2と同様の操作を行い、混練物を得た。しかしながら、得られた混練物は、粘度が非常に大きく、ダンゴ状であった。その後、実施例2と同様な操作を行い、オリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物を得たが、注型用金型のキャビティーに充填することはできなかった。成形板を得ようとすれば、熱圧成形しか得られないものであった。
(試験例2)
実施例2〜6それぞれで得られた試験片を用い、JIS K 6911にしたがって引張試験を行うことにより、引張強度および引張弾性率を測定した。また、実施例2〜6それぞれで得られた試験片を用い、JIS K 6911にしたがって曲げ試験を行うことにより、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
Figure 2014105407
表2に示された結果から、実施例2〜6で得られたオリゴエステル化セルロース繊維とビニルエステル樹脂との混練物は、相溶性が良く、粘度が小さく、サラサラして大変好ましいものであった。一方、比較例7で得られたオリゴエステル化セルロース繊維とビニルエステル樹脂との混練物は、粘度が非常に大きく、ダンゴ状であった。すなわち、大気圧(0.10MPa)下で得られたオリゴエステル化セルロース繊維は、それを用いて成形体が得られなかった。一方、加圧蓋の圧力が0.15MPa以上の条件で得られたオリゴエステル化セルロース繊維は、それを用いて大変好ましい成形体が得られた。特に、加圧蓋の圧力が0.26〜0.50MPaの条件で得られたオリゴエステル化セルロース繊維は、それを用いて素晴らしい成形体を得ることができた。すなわち、実施例2〜6で得られた成形体は、いずれも高強度、高弾性率を有するものであった。
一般に、浴槽や太陽温水器などの用途に利用される成形加工品は、温水中での寸法安定性が強く要求される。試験方法としては、成形加工品を沸騰水中に500時間浸漬して、成形加工品の外観に大きな変形が生じないことが求められる。したがって、本発明で得られたオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂成形体の耐煮沸性について試験を行った。その結果を表3に示す。
Figure 2014105407
表3に示された結果から、オリゴエステル化セルロース繊維/不飽和ポリエステル樹脂(質量比)が35/65である樹脂組成物を用いて成形した成形体(実施例1)は、耐煮沸性試験500時間に合格する優れた耐煮沸性能を有することが分かる。また、本発明のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂成形体(実施例1)は、ガラス繊維を強化材とした成形体(比較例4)の物性(耐煮沸性能)に匹敵するものであった。さらに、表3には記載していないが、サンシャインウエザーメーター試験による耐候性能においても、本発明のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂成形体は、ガラス繊維強化熱硬化性樹脂成形体に匹敵する物性を有している。
本発明のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂成形体は、高強度、高弾性率を有し、また寸法安定性に優れているため、自動車部材、航空機部材、船舶部材、精密機械部材、浴槽や太陽温水器などに好適である。また、高強度、高弾性率、および寸法安定性に優れている特性を生かして、屋上防水FRPライニングおよび半導体工場床ライニング等の塗装材としても好適に用いられる。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、セルロース繊維と多塩基酸無水物と不飽和結合を有するモノエポキシ化合物とをオリゴエステル化反応させて、オリゴエステル化セルロース繊維を製造する方法において、セルロース繊維に圧力を加えながら混練すると同時に、オリゴエステル化反応することを特徴とするものである。これにより、得られた全く新しいオリゴエステル化セルロース繊維、熱硬化性樹脂と混練して得られる混練物は、相溶性が良く、粘度が低く、取扱いが良くて大変好ましいものであった。また、この混練物から得られた成形体は、優れた寸法安定性を有し、高強度および高弾性率を実現できることを見出し、本発明に至った。
上記のような条件のもとで、その上、加圧蓋の圧力が大気圧(0.10MPa)下で、セルロース繊維と多塩基酸無水物と不飽和結合を有するモノエポキシ化合物とを混練しながら、同時にオリゴエステル化反応を行うことによって、セルロース繊維を骨格としたオリゴエステル化セルロース繊維を得る。次に、得られたオリゴエステル化セルロース繊維と不飽和ポリエステル樹脂(熱硬化性樹脂)とを混練することによって混練物を得る。しかしながら、このようにして得られた混練物は、粘度が非常に高く、ダンゴ状であった。したがって、本発明で使用する注型用金型のキャビティーに充填することはできないもので、成形板を得ようとすれば、熱圧成形しか得られないものであった。
Figure 2014105407

Claims (7)

  1. 水分含有率2〜10質量%であるセルロース繊維と多塩基酸無水物と不飽和結合を有するモノエポキシ化合物とを、密閉式加圧型ニーダーの混合槽内に投入して、混練しながらオリゴエステル化反応するオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法において、混練時の混合槽内の温度が70〜200℃で、加圧蓋の圧力が0.15〜0.70MPaの範囲内にある圧力でセルロース繊維に圧力を加えながら2〜120分間混練して、混練中にオリゴエステル化反応することを特徴とするオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法。
  2. 前記加圧蓋の圧力が0.26〜0.50MPaである請求項1記載のオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法。
  3. 前記多塩基酸無水物が無水フタル酸である請求項1または2記載のオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法。
  4. 前記不飽和結合を有するモノエポキシ化合物がメタクリル酸グリシジルである請求項1〜3のいずれか1項に記載のオリゴエステル化セルロース繊維の製造方法。
  5. オリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物であって、
    (A)請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴエステル化セルロース繊維と、
    (B)熱硬化性樹脂と
    を含有してなり、前記(A)と(B)との質量比〔(A)/(B)〕が10/90〜90/10であるオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物。
  6. 請求項5記載のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物において、繊維として織布を用いるオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物。
  7. 請求項5または6記載のオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂組成物を硬化させるとともに成形させてなるオリゴエステル化セルロース繊維強化熱硬化性樹脂成形体。












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