JP3674150B2 - ポリオレフィン系樹脂組成物、複合材および製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、木質系材料を含有するポリオレフィン系樹脂組成物、複合材およびその製造方法に関し、さらに詳しくは押出成形、射出成形に好適に使用されるポリオレフィン系樹脂組成物、複合材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メラミン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂に、充填剤として木質系材料を配合し、外観や弾性を改善した複合材を得ることは広く行われている。
一方、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂に木質系材料を配合することも行われるが、この場合は樹脂組成物の熱流動性が低下して成形加工性が低下したり、場合によっては機械強度が低下することもある。
【0003】
このような問題点を解決するため、変性ポリオレフィン樹脂、有機過酸化物を配合することが行われている。
例えば、特公平1−22297号には、プロピレン系樹脂、植物性繊維、変性プロピレン系樹脂および有機過酸化物を特定量含有する複合樹脂組成物を加熱下に反応させて複合材を得ることが記載されている。
【0004】
しかし、上記樹脂複合材においても、樹脂成分と植物性繊維との界面接合性が不十分であり、このため機械強度に劣るという問題点がある。また予め変性ポリプロピレンを調製する必要があるため、工数がかかり、コスト高になる。
【0005】
また特公昭62−5186号、特公平5−60502号にも、ポリプロピレン系樹脂、木粉(または籾殻)、変性ポリプロピレン系樹脂、有機過酸化物および無機充填剤を配合した樹脂複合材を加熱下に反応させて複合材を得ることが記載されている。
しかし、これらの樹脂複合材においても、前記と同様の問題点がある。
【0006】
一方、木質系材料をオリゴエステル化した後、このオリゴエステル化物を配合することも行われている。例えば、特開平6−80832号には、多塩基酸無水物とモノエポキシ化合物とのエステル化および付加反応によりオリゴエステル化されたリグノセルロース系またはセルロース系物質、ポリオレフィンならびにラジカル重合開始剤を加熱混練し、ポリオレフィンの一部を変性してなるポリオレフィン複合材が記載されている。
【0007】
しかし、上記複合材においては、高価なエポキシ化合物を使用しているため、コスト高になるという問題点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、木質系材料を含有する樹脂組成物であって、成形加工性および機械強度に優れた複合材を低コストで製造できるポリオレフィン系樹脂組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、木質系材料を含有する樹脂組成物から得られる、成形加工性および機械強度に優れたポリオレフィン系樹脂複合材を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、上記のポリオレフィン系樹脂複合材を低コストで製造することができる製造方法を提案することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は次のポリオレフィン系樹脂組成物、複合材およびその製造方法である。
(1) (A)ポリオレフィン40〜80重量部、
(B)一塩基酸およびエポキシ化合物を含まない多塩基酸無水物でエステル化されたエステル化リグノセルロース系またはセルロース系物質であって、エステル化により導入された多塩基酸無水物の割合がリグノセルロース系またはセルロース系物質に対して1〜10重量%であるエステル化リグノセルロース系またはセルロース系物質60〜20重量部〔ただし、(A)成分と(B)成分の合計量は100重量部である。〕、ならびに
(C)(A)および(B)成分の合計量100重量部に対して有機過酸化物0.01〜0.5重量部
を含有するポリオレフィン系樹脂組成物。
(2) ポリオレフィン(A)が、230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR:ASTM D 1238)が0.1〜200g/10分のポリプロピレンである上記(1)記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
(3) (D)(A)および(B)成分の合計量100重量部に対して橋かけ剤0.1〜5重量部を含有する上記(1)または(2)記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
(4) (E)(A)および(B)成分の合計量100重量部に対して、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、アクリル酸、メタクリル酸、テトラヒドロフタル酸、グリシジルメタクリレートおよびヒドロキシメタクリレートから選ばれる変性用化合物で変性された変性ポリオレフィン1〜10重量部を含有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
(5) 上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物の反応物からなるポリオレフィン系樹脂複合材。
(6) 上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物を、150〜200℃で30秒〜30分間加熱混練して反応させることを特徴とするポリオレフィン系樹脂複合材の製造方法。
【0010】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の(A)成分として用いられるポリオレフィン(A)には、α−オレフィンの単独重合体および共重合体が制限なく使用できる。ポリオレフィン(A)の具体的なものとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等の単独重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の共重合体などがあげられる。これらの中ではポリプロピレン、プロピレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。ポリオレフィン(A)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を任意の混合比で混合して使用することもできる。
【0011】
上記ポリプロピレンおよびプロピレン・α−オレフィン共重合体としては、ASTM D 1238により230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜200g/10分、好ましくは0.5〜100g/10分、さらに好ましくは0.5〜50g/10分であるものが望ましい。
【0012】
本発明で使用されるエステル化リグノセルロース系またはセルロース系物質(B)は、リグノセルロース系またはセルロース系物質が多塩基酸無水物によりエステル化されたエステル化物である。エステル化により導入された多塩基酸無水物の割合は、リグノセルロース系またはセルロース系物質に対して1〜10重量%である。
【0013】
エステル化前のリグノセルロース系またはセルロース系物質としては、リグノセルロース、セルロースまたはこれらの誘導体を含む物質であって、従来から樹脂の充填剤として使用されているものが制限なく使用できる。エステル化前のリグノセルロース系またはセルロース系物質は、いわゆる木質系材料であり(以下、リグノセルロース系またはセルロース系物質を木質系材料と称する場合がある)、具体的なものとしては木粉、木質パルプなどがあげられる。これらのエステル化前の木質系材料の原木や樹種は特に制限されない。またエステル化前の木質系材料としては、木材工業における工業廃棄物としての木質材や未利用の木質材から得られる木質系材料を使用することもでき、資源の有効利用を図ることもできる。さらに尿素等で木酸(レプリン酸、酢酸、ギ酸等)を中和処理したものを使用することもできる。
【0014】
リグノセルロース系またはセルロース系物質のエステル化に用いられる多塩基酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水イタコン酸、無水アジピン酸などがあげられる。これらの中では、工業的に低廉な無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸等が好ましい。
このような多塩基酸無水物は1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0015】
エステル化木質系材料(B)は、公知の回分式加圧混練装置、または連続式混練装置により、木質系材料と多塩基酸無水物とを前記エステル化量となるように混合して加熱混練することにより製造することができる。具体的な製造方法としては次のような方法があげられる。
【0016】
1)木質系材料と多塩基酸無水物とを、溶媒を使用することなく60℃以上で反応させる方法。この場合、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩、酢酸塩、酸化物、水酸化物、ジメチルベンジルアミン、ピリジン、ジメチルアニリンなどの塩基性触媒の存在下に反応を行うことにより、エステル化を促進させることができる。
【0017】
2)木質系材料と多塩基酸無水物とを、上記のような塩基性触媒の存在下に非プロトン性極性溶媒中で反応させる方法。上記非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどがあげられる。
【0018】
これらのエステル化方法は、特公平3−37490号、同3−58881号、同4−36843号などに詳述されている方法を採用することができる。
(B)成分は1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0019】
本発明で用いられる有機過酸化物(C)としては、分子内に原子団−O−O−を有する有機物が制限なく使用でき、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ケトンペルオキシド等の有機ペルオキシド;アルキルペルエステル等の有機ペルエステル;ペルオキシジカーボネートなどがあげられる。
【0020】
有機過酸化物(C)の具体的なものとしては、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシフェニルアセテート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシsec−オクテート、t−ブチルペルオキシピバレート、クミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジエチルアセテートなどをあげることができる。これらの中では、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンが好ましい。
このような有機過酸化物(C)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0021】
(A)〜(C)成分の配合量は、ポリオレフィン(A)40〜80重量部、エステル化リグノセルロース系またはセルロース系物質(B)60〜20重量部〔ただし、(A)成分と(B)成分との合計量は100重量部である〕であり、(A)成分と(B)成分との合計量100重量部に対して有機過酸化物(C)0.01〜0.5重量部である。
【0022】
(A)〜(C)成分は、上記一般的な範囲にある量で配合することができるが、全ての成分が好ましい範囲にある量で配合するのが最も好ましい。しかし、ある成分が好ましい範囲にあり、かつ他の成分が一般的な範囲にある量で配合するものも好ましい。
【0023】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には、前記(A)〜(C)成分に加えて、さらに橋かけ剤(架橋助剤)(D)および/または変性ポリオレフィン(E)を配合することができる。
橋かけ剤(D)としては、ポリオレフィン(A)およびエステル化木質系材料(B)、さらに必要に応じて配合された後述の変性ポリオレフィン(E)の各成分同士または各成分間を架橋させることができる化合物が制限なく使用できる。
【0024】
ポリプロピレン(A)および変性ポリオレフィン(E)は、複合材を製造する際の加熱混練時に、有機過酸化物(C)により開裂反応での分子量が低下する。分子量の低下が大きいと溶融張力(メルトテンション)が低下し、押出成形性の低下を招く。
【0025】
橋かけ剤(D)を配合することにより、上記のような成形性の低下を防止することができる。すなわち、橋かけ剤(D)を配合すると、有機過酸化物(C)存在下に架橋反応が生じ、ポリオレフィン(A)等の分子量低下が防止され、かつエステル化木粉(B)とも架橋反応が生じ、これにより本発明の複合材の溶融張力(メルトテンション)を向上させることができる。
メルトテンションの向上は異形押出等の成形には重要な要素であり、ある程度の向上を必要とする。メルトテンションが向上する時はMFRが小さくなる。
【0026】
橋かけ剤(D)としては多官能性の化合物が使用でき、例えばジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジアリルフタレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアセテートなどがあげられる。これらは1種単独で使用することもできるし、2種以上を組合せて使用することもできる。
橋かけ剤(D)の配合量は、(A)および(B)成分の合計量100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部とするのが望ましい。
【0027】
前記変性ポリオレフィン(E)としては、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、アクリル酸、メタクリル酸、テトラヒドロフタル酸、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシメタクリレート等の変性用化合物で変性されたポリオレフィンがあげられる。変性前のポリオレフィンとしては、前記ポリオレフィン(A)と同様のものがあげられる。
変性前のポリオレフィンに対する導入された変性用化合物の量(変性量)は通常0.1〜20重量%である。20重量%以上のものも使用できるが、コスト高になる。
【0028】
変性ポリオレフィン(E)としては、(A)成分として使用しているポリオレフィンと同種の変性ポリオレフィンを組合せて使用するのが好ましい。すなわち、(A)成分のポリオレフィンがポリプロピレンの場合には、(E)成分の変性ポリオレフィンとしては変性ポリプロピレンを配合するのが好ましい。
【0029】
変性ポリオレフィン(E)の配合量は、(A)および(B)成分の合計量100重量部に対して通常10重量部以下である。10重量部以上配合することもできるが、コスト高になる。
本発明の組成物中に変性ポリオレフィン(E)を配合した場合には、ポリオレフィンと木粉との親和性をさらに向上させて、強度が向上する。
【0030】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、前記(A)〜(C)成分、ならびに必要により追加する(D)および/または(E)成分を前記配合量で配合した組成物である。本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には、無機系の充填剤、例えばタルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス繊維等、あるいは有機系の充填剤、例えばポリエステル、ポリアミド繊維等、その他に難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤等の各種添加剤や染料、顔料等の着色剤などの添加剤を添加することができる。
【0031】
本発明のポリオレフィン系樹脂複合材は前記ポリオレフィン系樹脂組成物の反応物であり、前記(A)〜(C)成分、および必要により添加される他の成分を、前記配合量で混合し、この混合物を150〜200℃、好ましくは160〜190℃で、30秒〜30分間、好ましくは1〜20分間加熱混練して反応させることにより製造することができる。
【0032】
各成分の混合方法は特に限定されず、ヘンシェルミキサーなどの混合機により混合することができ、均一化しておくのが好ましい。
加熱混練方法も前記条件で加熱混練できる方法であれば特に限定されず、例えばブレンダー、ニーダー、ミキシングロール、バンバリーミキサー、1軸もしくは2軸の押出機などにより行うことができる。
【0033】
好ましい製造方法としては、次の製造方法が例示できる。すなわち、各成分を室温でヘンシェルミキサーにより混合して均一化した後、得られた混合物を2軸押出機で混練ゾーンの設定温度を前記温度に設定して混練し、組成物を混練状態で反応させて複合材を得る。なお、温度が200℃以上ではエステル化木質系材料(B)の分解によるガスが発生するため、造粒温度が200℃を超えないように注意する必要がある。そのため、冷却コントロールの効く2軸押出機等を使用するのが好ましい。
【0034】
このようにして得られた本発明のポリオレフィン系樹脂複合材は、木質系材料を配合しているにもかかわらず熱流動性に優れ、このため成形加工性に優れており、押出成形、射出成形などの成形法により任意の形状に容易に成形することができる。また本発明の複合材は、ポリオレフィン(A)とエステル化木質系材料(B)との界面接合性が改善されているため、成形により得られた成形品は機械強度、例えば引張強度、曲げ強度、耐衝撃強度などに優れている。さらに本発明の複合材は、従来のようにエポキシ化合物を用いていないので、製造コストは低い。また本発明の複合材においては、(B)成分中に未反応の多塩基酸無水物が残留している場合でも、有機過酸化物(C)を配合しているので、このような多塩基酸無水物はポリオレフィン(A)、エステル化木質系材料(B)と反応し、複合材中に残留することはない。
【0035】
本発明の複合材において、ポリオレフィン(A)とエステル化木質系材料(B)との界面接合性が改善される理由は明確ではないが、エステル化木質系材料(B)とポリオレフィン(A)が架橋反応等を発生して、界面の親和性が向上するためであると推定される。
【0036】
本発明の複合材の利用分野は特に制限されず、従来から熱可塑性樹脂が用いられている多くの分野に使用することができるが、電気絶縁材料、工業用部品材料、建築用材料等の分野に好適に利用でき、中でも住宅部材、建築材料、家電製品の原料として特に好適に利用できる。
【0037】
具体的には、巾木、表面化粧板、ドア材、外壁材、洗面化粧台、カウンター材、基礎受け板、窓枠、壁材、廻り縁木、手すり、取っ手、構造材、土木角材、柱、床柱、飾り柱、耐震材、壁紙、建具天井材、下地材、畳、床、コンクリートパネル、足場材、遮蔽板、遮音板、家具の箱天井、扉、前板裏板、棚板、袖板、幕板、甲板、背板、座板、厨房部材、防水材、防かび材、防腐材、雨戸板、腰板、側板、バスユニット床パン、バス天井、バス壁、バス、桶、衛陶機器、便座、便蓋、ラジオテレビ受信機、キャビネット、ステレオキャビネット、アンプキャビネット、スピーカー、ピアノオルガンの親板、大屋根、巻き屋根、上下巻物板などの材料として好適に利用できる。
【0038】
【発明の効果】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン(A)、一塩基酸およびエポキシ化合物を含まない多塩基酸無水物でエステル化されたエステル化リグノセルロース系またはセルロース系物質(B)および有機過酸化物(C)を特定量含有しているので、木質系材料を含有しているにもかかわらず、加熱混練により成形加工性および機械強度に優れる複合材を低コストで製造することができる。
【0039】
本発明のポリオレフィン系樹脂複合材は、上記ポリオレフィン系樹脂組成物の反応物からなるため、成形加工性および機械強度に優れるポリオレフィン系樹脂および木質系材料の複合材を得ることができる。
【0040】
本発明のポリオレフィン系樹脂複合材の製造方法は、前記ポリオレフィン樹脂組成物を特定条件で加熱混練して反応させるので、成形加工性および機械強度に優れた木質系材料を含有するポリオレフィン系樹脂複合材を低コストで製造することができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施例について説明する。各例で使用した組成物および複合材の製造方法、成形品の成形方法、物性の測定方法は次の通りである。
【0042】
《ポリオレフィン系樹脂組成物および複合材の製造方法》
(A)〜(C)成分、ならびに他の成分を室温でヘンシェルミキサーにより混合し、均一化してポリプロピレン系樹脂組成物を得た。次に、下記条件で2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30、商標)により加熱混練してポリプロピレン系樹脂複合材を得た。
バレル設定温度:160℃
スクリュー回転数:110rpmで樹脂温度が押出機出口で180〜190℃となるように設定した。
押出量:6kg/1時間
【0043】
《物性評価のための成形品成形方法》
熱圧成形機〔(株)神藤金属工業所社製、70トンプレス成形機〕により、下記条件でプレスシート成形した。
加熱温度:180℃、予熱時間5分
プレス圧力:50kgf/cm2
加熱圧縮時間:5分
冷却時間:5分
冷却プレス圧力:50kgf/cm2
成形品板厚:2mm
【0044】
《物性評価のための測定方法》
MFR: ASTM D 1238準拠(190℃、2.16kg荷重)
引張強度:ASTM D 638
曲げ強度:ASTM D 638
曲げ弾性率:ASTM D 638
アイゾッド衝撃強度:ASTM D 256
【0045】
実施例1
ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、ASTM D 1238によるメルトフローレート=1.5g/10分、比重=0.91)2.5kg、無水マレイン酸エステル化木粉(無水マレイン酸エステル化量10重量%、以下MAエステル化木粉と略記する場合がある)2.5kg、および有機過酸化物(2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン)2.5gを室温でヘンシェルミキサーにより3分間攪拌して配合し、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。次にこの組成物を前記条件で2軸押出機から押出してポリプロピレン系樹脂複合材を得た。この時のダイ出口の樹脂温度は188℃であった。
上記複合材を真空乾燥機により110℃で10時間乾燥した後、前記成形条件で熱圧成形した。得られた成形品の物性を前記測定方法で測定した。結果を表1に示す。
【0046】
実施例2
実施例1と同様のポリプロピレン2.5kg、実施例1と同様の無水マレイン酸エステル化木粉2.5kg、実施例1と同様の有機過酸化物2.5g、および無水マレイン酸変性ポリプロピレン(無水マレイン酸量3重量%)250gを室温でヘンシェルミキサーにより3分間攪拌して配合し、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。その後は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂複合材を得た。なお、ダイ出口の樹脂温度は185℃であった。
得られた複合材から実施例1と同様にして成形品を成形し、物性を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
実施例3
実施例1と同様のポリプロピレン2.5kg、実施例1と同様の無水マレイン酸エステル化木粉2.5kg、実施例1と同様の有機過酸化物2.5g、無水マ無水マレイン酸変性ポリプロピレン(無水マレイン酸量3重量%)、および橋かけ剤(トリアリルイソシアヌレート(TAIC))50gを室温でヘンシェルミキサーにより3分間攪拌して配合し、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。その後は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂複合材を得た。なお、ダイ出口の樹脂温度は185℃であった。
得られた複合材から実施例1と同様にして成形品を成形し、物性を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
実施例4
実施例1と同様のポリプロピレン2.5kg、実施例1と同様の無水マレイン酸エステル化木粉2.5kg、実施例1と同様の有機過酸化物2.5g、および橋かけ剤(トリアリルイソシアヌレート)50gを室温でヘンシェルミキサーにより3分間攪拌して配合し、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。その後は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂複合材を得た。なお、ダイ出口の樹脂温度は186℃であった。
得られた複合材から実施例1と同様にして成形品を成形し、物性を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
実施例5
実施例2において、無水マレイン酸エステル化木粉の代わりに無水コハク酸エステル化木粉(無水コハク酸エステル化量10重量%、以下SAエステル化木粉と略記する場合がある)を用いた以外は実施例2と同様に行った。なおダイ出口の樹脂温度は185℃であった。結果を表2に示す。
【0050】
実施例6
橋かけ剤(トリアリルイソシアヌレート)の配合量を5gとした以外は実施例4と同様に行った。結果を表2に示す。
【0051】
実施例7
過酸化物の配合量を5gとした以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0052】
実施例8
ポリプロピレンの配合量を3.5kg、MAエステル化木粉の配合量を1.5kgに変更した以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0053】
比較例1
過酸化物を使用しなかった以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0054】
比較例2
過酸化物、および無水マレイン酸変性ポリプロピレンを使用しなかった以外は実施例3と同様に行った。結果を表3に示す。
【0055】
比較例3
過酸化物、および無水マレイン酸変性ポリプロピレンを使用しなかった以外は実施例5と同様に行った。結果を表3に示す。
【0056】
比較例4
MAエステル化木粉の代わりにSAエステル化木粉を使用し、過酸化物、および無水マレイン酸変性ポリプロピレンを使用しなかった以外は実施例3と同様に行った。結果を表4に示す。
【0057】
比較例5
MAエステル化木粉の代わりに、マレイン酸エステル化率10%かつアリルグリシジルエーテル付加率10%の木粉を使用し、過酸化物の配合量を5.0gに変更した以外は実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
表1〜表4の注
*1 MA:無水マレイン酸
*2 SA:無水コハク酸
*3 MA化PP:無水マレイン酸変性ポリプロピレン
*4 過酸化物:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン
*5 橋かけ剤:トリアリルイソシアヌレート
*6 押出性:
○;2軸押出機での造粒時における樹脂の押出状態がよい
△;2軸押出機での造粒時における樹脂の押出状態がやや劣る
×;2軸押出機での造粒時における樹脂は押出量が不良。
*7 ストランド外観:
良;途中でストランド切れの発生しない良好な場合
やや劣る;肌荒れが少々発生し、それに伴い多少のストランド切れも発生する。
不良;肌荒れの発生、ストランド切れの発生する場合
*8 MAエステル化木粉の代わりにMA+アリルグリシジル化木粉50重量部を使用
【0063】
表1〜表4の結果から、各実施例の樹脂複合材の押出性は比較例に比べて良好であることがわかる。またストランド外観も良好であり、ポリプロピレンと木粉との接合性に優れていることがわかる。そして成形品の物性も優れていることがわかる。
Claims (6)
- (A)ポリオレフィン40〜80重量部、
(B)一塩基酸およびエポキシ化合物を含まない多塩基酸無水物でエステル化されたエステル化リグノセルロース系またはセルロース系物質であって、エステル化により導入された多塩基酸無水物の割合がリグノセルロース系またはセルロース系物質に対して1〜10重量%であるエステル化リグノセルロース系またはセルロース系物質60〜20重量部〔ただし、(A)成分と(B)成分の合計量は100重量部である。〕、ならびに
(C)(A)および(B)成分の合計量100重量部に対して有機過酸化物0.01〜0.5重量部
を含有するポリオレフィン系樹脂組成物。 - ポリオレフィン(A)が、230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR:ASTM D 1238)が0.1〜200g/10分のポリプロピレンである請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- (D)(A)および(B)成分の合計量100重量部に対して橋かけ剤0.1〜5重量部を含有する請求項1または2記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- (E)(A)および(B)成分の合計量100重量部に対して、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、アクリル酸、メタクリル酸、テトラヒドロフタル酸、グリシジルメタクリレートおよびヒドロキシメタクリレートから選ばれる変性用化合物で変性された変性ポリオレフィン1〜10重量部を含有する請求項1ないし3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物の反応物からなるポリオレフィン系樹脂複合材。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物を、150〜200℃で30秒〜30分間加熱混練して反応させることを特徴とするポリオレフィン系樹脂複合材の製造方法。
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