特許文献1乃至4に記載された技術では、ロープ繰り出し装置が地上に設置され、ブレーキドラムとクレーンのウインチドラムとの間で、ロープに大きな張力が付与される。このため、ウインチドラムの巻き取り力によって、ロープ繰り出し装置がクレーン側に横滑りすることを防止するために、ロープ繰り出し装置が錘を備える必要がある。一般的に、ウインチドラムへのロープの巻き取りを安定して行うためには、ロープ繰り出し装置に5トンから10トン程度の錘が必要になる。このため、当該錘のために、ロープ繰り出し装置の輸送コスト、輸送時間や作業現場への設置時間が増加するという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ロープに張力を付与しながら当該ロープを作業機械のウインチドラムに繰り出すロープ繰り出し装置において、大きな錘を備えることなく作業中のロープ繰り出し装置の横滑りを防止することを目的とする。
本発明の一実施形態に係るロープ繰り出し装置は、機体と前記機体に起伏可能に支持された起伏部材とロープを巻き取り可能なウインチドラムとを有する作業機械の前記ウインチドラムに対して、張力を付与しながら前記ロープを繰り出すロープ繰り出し装置であって、地面に設置される支持台と、前記支持台に回転可能に支持され、円筒状の第1外周面を有し当該第1外周面上に前記ロープが巻かれた第1胴部を備え、前記ロープを繰り出すスプールドラムと、前記支持台に回転可能に支持され、円筒状の第2外周面を有し前記スプールドラムから繰り出された前記ロープに前記第2外周面上の特定の接触位置で接触する第2胴部を備え、前記接触位置における前記ロープとの接触によって前記ロープに張力を付与しながら前記ロープを前記ウインチドラムに繰り出す張力付与ドラムと、前記支持台に固定され、前記ウインチドラムの巻き取り力によって前記支持台が地面上を横滑りすることを前記作業機械の自重によって阻止するように前記作業機械に連結されることが可能な拘束部と、を備える。
本構成によれば、ロープ繰り出し装置のスプールドラムから繰り出されたロープに、張力付与ドラムが張力を付与することで、作業機械のウインチドラムにロープを安定して巻き取ることができる。また、ロープ繰り出し装置の拘束部が作業機械によって拘束されることで、ウインチドラムの巻き取り力によって支持台が地面上を横滑りすることを作業機械の自重によって阻止することができる。
上記の構成において、前記拘束部は、前記作業機械のうち前記機体に対して倒伏された前記起伏部材によって上方から押圧されることで前記起伏部材に拘束される被押圧面を有することが望ましい。
本構成によれば、作業機械の起伏部材を機体に対して倒伏させ、起伏部材によって拘束部の被押圧面を上方から押圧することで、起伏部材と地面とによってロープ繰り出し装置の拘束部を上下から挟むことができる。この結果、ウインチドラムの巻き取り力によって支持台が地面上を横滑りすることを起伏部材の自重によって阻止することができる。また、起伏可能な起伏部材の倒伏動作を利用して、ロープ繰り出し装置の拘束部を上方から押圧する作業を容易に実現することができる。
上記の構成において、前記拘束部は、前記張力付与ドラムを水平な方向において両側から挟むように前記支持台に固定された一対の壁部と前記張力付与ドラムの上方において前記一対の壁部を前記水平な方向において互いに接続する接続部とを有し、前記被押圧面は前記接続部の上面部に配置されており、前記張力付与ドラムは、前記第2胴部の回転に伴って、前記ロープを前記第2外周面から上方に向かって繰り出すように構成されていることが望ましい。
本構成によれば、ウインチドラムの巻き取り力によってロープ繰り出し装置が浮き上がるような力が支持台のうち張力付与ドラムの周辺部分に掛かった場合でも、起伏部材が張力付与ドラムの上方に配置された被押圧面を下方に向かって押圧するため、拘束部を介してロープ繰り出し装置の浮き上がりを抑止することができる。
上記の構成において、前記拘束部は、前記作業機械の前記機体に連結され前記機体に拘束される機体連結部を有するものでもよい。
本構成によれば、作業機械の機体とロープ繰り出し装置の機体連結部とを連結することで拘束部が機体に拘束され、ウインチドラムの巻き取り力によって支持台が地面上を横滑りすることを作業機械の自重によって阻止することができる。特に、作業機械の中でも安定性が要求され大きな自重を有する機体を利用して、繰り出し装置の横滑りを確実に抑止することができる。
上記の構成において、前記機体連結部は、前記機体のうち前記作業機械のバランスを保持するウエイトが前記機体に装着されるためのウエイト装着部に連結可能とされていることが望ましい。
本構成によれば、ウエイトを機体に装着するためのウエイト装着部を利用して、ロープ繰り出し装置を機体に連結することができる。
上記の構成において、前記機体連結部には、前記ウエイトに開口された孔部と前記ウエイト装着部に開口された孔部とに挿通されることで前記ウエイトと前記機体とを連結するための連結ピンが挿通可能な連結用孔部が開口されており、前記ウエイト装着部に開口された前記孔部と前記連結用孔部とに連結ピンが挿通されることで、前記機体連結部が前記機体の前記ウエイト装着部に連結可能とされていることが望ましい。
本構成によれば、ウエイトを機体のウエイト装着部に装着するための連結ピンを利用して、ロープ繰り出し装置を機体に連結することができる。
また、本発明の他の局面に係る作業機械のウインチドラムのロープ巻き取り方法は、機体と前記機体に起伏可能に支持された起伏部材とロープを巻き取り可能なウインチドラムとを有する作業機械の前記ウインチドラムにロープを巻き取るための、作業機械のウインチドラムのロープ巻き取り方法であって、上記に記載のロープ繰り出し装置を準備することと、前記作業機械によって前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部を拘束することと、前記ロープ繰り出し装置の前記スプールドラムから前記ロープを繰り出し、前記張力付与ドラムによって前記ロープに張力を付与しながら、前記張力付与ドラムから前記ロープを更に繰り出すことと、前記ウインチドラムの巻き取り力によって前記ロープ繰り出し装置の前記支持台が地面上を横滑りすることを、前記拘束部において前記作業機械の自重によって阻止しながら、前記張力付与ドラムから繰り出された前記ロープを、前記ウインチドラムに巻き取ることと、を備える。
本方法によれば、ロープ繰り出し装置のスプールドラムから繰り出されたロープに、張力付与ドラムが張力を付与することで、作業機械のウインチドラムにロープを安定して巻き取ることができる。また、ロープ繰り出し装置の拘束部を作業機械によって拘束することで、ウインチドラムの巻き取り力によって支持台が地面上を横滑りすることを作業機械の自重によって阻止することができる。
上記の方法において、前記起伏部材を前記機体に対して倒伏させ、前記起伏部材によって前記拘束部に配置された被押圧面を上方から押圧することで前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部を拘束することを更に備えることが望ましい。
本方法によれば、作業機械の起伏部材を機体に対して倒伏させ、起伏部材によって拘束部の被押圧面を上方から押圧することで、起伏部材と地面とによってロープ繰り出し装置の拘束部を上下から挟むことができる。この結果、ウインチドラムの巻き取り力によって支持台が地面上を横滑りすることを起伏部材の自重によって阻止することができる。また、起伏可能な起伏部材の倒伏動作を利用して、繰り出し装置の拘束部を上方から押圧する作業を容易に実現することができる。
上記の方法において、前記起伏部材として、当該起伏部材の先端部に配置され地面に当接することで前記起伏部材を支持可能な支持部材を有するものを用いることと、前記起伏部材を前記機体に対して倒伏させ、前記起伏部材の前記支持部材によって前記被押圧面を上方から押圧することで前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部を拘束することと、を更に備えることが望ましい。
本方法によれば、起伏部材を地面上で支持する支持部材を利用して、繰り出し装置の拘束部を上方から押圧し拘束部を拘束することができる。
上記の方法において、前記起伏部材として、当該起伏部材の長手方向に沿って複数の部材が互いに着脱可能に連結されるものを用いることと、前記複数の部材のうちの一部の部材を前記機体に起伏可能に装着し、当該装着された一部の部材を前記機体に対して倒伏させることと、前記一部の部材によって前記拘束部の前記被押圧面を上方から押圧することで前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部を拘束することと、を更に備えることが望ましい。
本方法によれば、起伏部材の一部の部材を機体に対して倒伏させ、当該一部の部材によって拘束部の被押圧面を上方から押圧することで拘束部を拘束し、ウインチドラムの巻き取り力によって支持台が地面上を横滑りすることを起伏部材の一部の部材の自重によって阻止することができる。このため、起伏部材全体を機体に装着することなく、起伏部材の一部の部材を機体に装着するだけで、ウインチドラムへのロープの巻き取り作業を行うことができる。
上記の方法において、前記起伏部材として、当該起伏部材の一部を構成し水平方向に延びる柱部材を有するものを用いることと、前記ロープ繰り出し装置として、前記柱部材が上方から嵌合可能な凹状の内周面が前記被押圧面として前記拘束部に形成されたものを用いることと、前記起伏部材を前記機体に対して倒伏させ、前記起伏部材の前記柱部材を前記凹状の内周面に嵌合させることで前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部を拘束することと、を更に備えることが望ましい。
本方法によれば、起伏部材の一部を構成する柱部材を利用して、ロープ繰り出し装置の拘束部を上方から押圧し拘束部を拘束することができる。
上記の方法において、前記ロープ繰り出し装置として、前記拘束部の前記被押圧面が前記張力付与ドラムの上方に配置されたものを用いることと、前記張力付与ドラムが前記ロープを前記第2胴部の前記第2外周面から上方に向かって繰り出すように、前記張力付与ドラムと前記ウインチドラムとの間における前記ロープの繰り出し経路を配設することと、前記ウインチドラムの巻き取り力によって前記ロープ繰り出し装置が上方に持ち上がることを、前記拘束部において前記起伏部材の自重によって更に阻止しながら、前記張力付与ドラムから繰り出された前記ロープを、前記ウインチドラムに巻き取ることと、を更に備えることが望ましい。
本方法によれば、ウインチドラムの巻き取り力によってロープ繰り出し装置が浮き上がるような力が支持台のうち張力付与ドラムの周辺部分に掛かった場合でも、起伏部材が張力付与ドラムの上方に配置された被押圧面を下方に向かって押圧するため、拘束部を介してロープ繰り出し装置の浮き上がりを抑止することができる。
上記の方法において、前記拘束部を前記作業機械の前記機体に連結することで前記拘束部を拘束することを更に備えるものでもよい。
本方法によれば、作業機械の機体とロープ繰り出し装置の機体連結部とを連結することで拘束部を拘束し、ウインチドラムの巻き取り力によって支持台が地面上を横滑りすることを作業機械の自重によって阻止することができる。特に、作業機械の中でも安定性が要求され大きな自重を有する機体を利用して、繰り出し装置の横滑りを確実に抑止することができる。
上記の方法において、前記作業機械として、当該作業機械のバランスを保持するウエイトを更に備え、前記機体に前記ウエイトが装着されることを許容するウエイト装着部を有するものを用いることと、前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部を前記ウエイト装着部に連結することと、を更に備えることが望ましい。
本方法によれば、ウエイトを機体に装着するためのウエイト装着部を利用して、ロープ繰り出し装置を機体に連結し拘束部を拘束することができる。
上記の方法において、前記作業機械として、前記ウエイトに開口された孔部と前記ウエイト装着部に開口された孔部とに所定の連結ピンを挿通することで、前記ウエイトと前記機体とが連結されるものを用いることと、前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部に開口された孔部と、前記機体の前記ウエイト装着部に開口された前記孔部とに連結ピンを挿通することで、前記作業機械と前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部とを連結することと、を更に備えることが望ましい。
本方法によれば、ウエイトを機体のウエイト装着部に装着するためのピンを利用して、ロープ繰り出し装置を機体に連結し拘束部を拘束することができる。
本発明によれば、ロープに張力を付与しながら当該ロープを作業機械のウインチドラムに繰り出すロープ繰り出し装置において、大きな錘を備えることなく作業中のロープ繰り出し装置の横滑りを防止することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るロープ繰り出し装置1が適用されるクレーン100(作業機械)の側面図である。なお、以後、各図には、必要に応じて「上」、「下」、「左」、「右」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本実施形態に係るロープ繰り出し装置1およびクレーン100を説明するために便宜上示すものであり、本発明に係る作業機械の移動方向やロープ繰り出し装置および作業機械の使用態様などを限定するものではない。
<作業機械について>
クレーン100は、クレーン本体に相当する上部旋回体10(機体)と、この上部旋回体10を旋回可能に支持し、地面上で走行可能な下部走行体11(機体)と、起伏部材としてのブーム13と、を備える。また、上部旋回体10の前端部には、キャブ12が備えられている。キャブ12は、クレーン100の運転席に相当する。キャブ12の近傍には、ブーム13を軸支する不図示の軸支部が備えられている。
図1に示されるブーム13は、いわゆるラチス型であり、下部ブーム13Aと、一または複数(図例では1個)の中間ブーム13Bと、上部ブーム13Cとから構成される。具体的には、下部ブーム13Aは、ブームフット13Sを有し、当該ブームフット13Sは上部旋回体10の前部に備えられた軸支部に起伏方向に回動可能となるように連結(支持)される。中間ブーム13Bは、下部ブーム13Aの先端側に着脱可能に継ぎ足される。上部ブーム13Cは中間ブーム13Bの先端側に着脱可能に継ぎ足される。すなわち、ブーム13は、当該ブーム13の長手方向に沿って複数の部材が互いに着脱可能に連結されることで構成される。
また、上部ブーム13Cの先端側には、第1シーブ131、第2シーブ132および第3シーブ133(図2)が備えられている。第1シーブ131、第2シーブ132および第3シーブ133には、後記のとおりブーム起伏用ロープ17または主巻ロープ19が掛けられる。
なお、本発明ではブームの具体的な構造は上記に限定されない。例えば、当該ブームの中間ブーム13Bの数は、上記とは異なるものでもよい。また、中間ブーム13Bが備えられず、下部ブーム13Aに上部ブーム13Cが直接連結されるものでもよい。また、ブーム13は、単一の部材からなるものでもよい。更に、第1シーブ131は、上部ブーム13Cに取り付けられていなくともよく、中間ブーム13B、下部ブーム13Aに取り付けられていてもよい。また、ブームの起伏に関しても、本発明は上記の態様に限定されるものではない。例えば、ガントリシーブ141を経た後、下部スプレッダおよび上部スプレッダを介して、上部スプレッダから上部ブームの先端にガイラインまたはガイリンクで接続され、下部スプレッダと上部スプレッダとの間を拡縮することでブームを起伏させる構成でもよい。
更に、クレーン100は、コンプレッションメンバ14およびテンションメンバ15を含むガントリと、ブーム起伏用ウインチ16と、ブーム起伏用ロープ17と、を備える。
ガントリは、上部旋回体10の後側部分に立設された支柱である。ガントリの先端部には、ガントリシーブ141が備えられている。
ブーム起伏用ロープ17は、ブーム起伏用ウインチ16から引き出され、ガントリのガントリシーブ141と上部ブーム13Cの先端側に配置された第1シーブ131との間で複数回掛け回される。なお、ガントリシーブ141および第1シーブ131に掛け回された後のブーム起伏用ロープ17の先端部は、ガントリの先端部に固定される。
ブーム起伏用ウインチ16は、上部旋回体10のうちガントリの基端部の近傍に配置される。ブーム起伏用ウインチ16は、ブーム起伏用ロープ17の巻き取りおよび繰り出しを行うことで、ブーム13をガントリに対して相対的に回動させながらブーム13を起伏させる。特に、ブーム起伏用ウインチ16は、ブーム起伏用ロープ17を巻き取ることでブーム13を上部旋回体10の軸支部回りに起立させ、ブーム起伏用ロープ17を繰り出すことでブーム13を前記軸支部回りに倒伏させる。
クレーン100は、更に、吊り荷(被吊り上げ体)の巻上げ及び巻下げを行うための主巻用ウインチ18(ウインチドラム)と、主巻ロープ19(ロープ)と、を備えている。本実施形態に係るクレーン100では、主巻用ウインチ18は、上部旋回体10のうちキャブ12の後側に備え付けられている。他の実施形態において、主巻用ウインチ18は、ブーム13の下部ブーム13Aに備え付けられてもよい。
主巻用ウインチ18は、主巻ロープ19による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。主巻用ウインチ18から引き出された主巻用ロープ19の先端部(ロープ先端部19A)には、吊荷用の不図示の主フックが備え付けられる。そして、主巻ロープ19は、第3シーブ133(図2)を経由して、ブーム13の先端部の第2シーブ132と主フックに設けられた不図示のシーブブロックのシーブとの間に掛け渡される。従って、主巻用ウインチ18が主巻ロープ19の巻き取りや繰り出しを行うと、第2シーブ132と主フックのシーブとの間の距離が変わって、ブーム13の先端部から垂下されたロープ先端部19Aに連結された主フックの巻上げ及び巻下げが行われる。なお、同様にして、クレーン100には不図示の補巻用ウインチが備えられ、補巻ロープによる吊り荷の巻上げ及び巻下げを行ってもよい。
<従来の作業機械のウインチドラムのロープ巻き取り方法について>
クレーン100の組立作業において、主巻用ウインチ18に代表されるウインチドラムに、ロープを巻き取る作業が発生する。また、主巻用ウインチ18のロープが損傷した場合には、主巻用ウインチ18からロープを引き出し、新たなロープを巻き取る必要がある。このような作業において、主巻用ウインチ18上に巻き込まれるロープに乱巻きが発生することを防止するためには、ロープに所定の張力を付与しながら、回転する主巻用ウインチ18にロープを繰り出す必要がある。図11は、従来のロープ繰り出し装置1Zからクレーン100の主巻用ウインチ18に主巻ロープ19が繰り出される様子を示す側面図である。ロープ繰り出し装置1Zは、スプールドラム部2と、アイドラシーブ部3と、ブレーキドラム部4と、を備える。
図11に示すように、ロープ繰り出し装置1Zが地上に設置され、ブレーキドラム部4が主巻ロープ19に負荷を掛けることで、主巻ロープ19にたとえば5~8トン程度の大きな張力が付与された状態で、主巻用ウインチ18が主巻ロープ19を巻き込んでいく。この際、主巻用ウインチ18の巻き取り動作に伴って、ロープ繰り出し装置1Zがクレーン100側(矢印DS方向)に横滑りすることを防止するために、ロープ繰り出し装置1Zがウエイト1W(錘、アンカー)を備える必要がある。一般的に、主巻用ウインチ18への主巻ロープ19の巻き取りを安定して行うためには、5トンから10トン程度のウエイト1Wが必要になる。このため、当ウエイト1Wの分だけ、ロープ繰り出し装置1Zの輸送コスト、輸送時間や作業現場への設置時間が増加するという問題があった。また、図11のように、ロープ繰り出し装置1Zがクレーン100から遠い位置に配置されると、主巻ロープ19が破線のように地面に垂れ下がりやすく、この場合、グリースなどの潤滑剤が塗布された主巻ロープ19に地上の砂や埃などが付着し、巻き込み時に主巻ロープ19が損傷しやすくなる。
<ロープ繰り出し装置について>
図2は、本実施形態に係るロープ繰り出し装置1からクレーン100の主巻用ウインチ18(ウインチドラム)に主巻ロープ19(ロープ)が繰り出される様子を示す側面図である。図3は、図2の一部を拡大した拡大側面図である。図4は、ロープ繰り出し装置1の平断面図である。図5は、ロープ繰り出し装置1の正断面図である。
ロープ繰り出し装置1は、クレーン100などの作業機械に対して、所定の張力を付与しながらロープを繰り出す機能を備えている。図2に示すように、ロープ繰り出し装置1は、地上Gにおいてクレーン100に対向して配置される。
ロープ繰り出し装置1は、スプールドラム部2と、アイドラシーブ部3と、ブレーキドラム部4と、台座1S(支持台)と、拘束部50と、を備える。台座1Sは、地面に設置され、スプールドラム部2、アイドラシーブ部3およびブレーキドラム部4を支持する板材からなる。
なお、図2に示すように、ロープ繰り出し装置1から主巻用ウインチ18に向かう、矢印DK方向を主巻ロープ19(ロープ)の繰り出し方向と定義する。また、主巻用ウインチ18が回転され主巻ロープ19が主巻用ウインチ18に巻き込まれる際には、図2に示すように上部ブーム13Cの第3シーブ133によって主巻ロープ19の角度が調整される。
スプールドラム部2は、台座1Sの前端部に配置されている。スプールドラム部2は、スプールドラム20と、一対のスプールドラム支持部2Sと、スプールドラム回転機2Mと、を備える(図4)。
スプールドラム20は、台座1Sに回転可能に支持されている。スプールドラム20は、円筒状の外周面(第1外周面)を有し当該外周面上に主巻ロープ19が巻かれたドラム胴部21(第1胴部)と、ドラム胴部21の両端部に配置された一対のフランジ22とを備える。スプールドラム20は、ドラム胴部21の円筒状の外周面の軸心が水平方向に沿って延びるように配置され、ドラム胴部21の軸心回りの回転に応じて主巻ロープ19を繰り出す。スプールドラム20は、ロープ繰り出し装置1のスプールドラム支持部2Sに対して着脱可能とされている。なお、スプールドラム20のドラム胴部21上に巻かれた主巻ロープ19は、軸方向(図4の左右方向)に沿って順に巻き込まれている。このため、スプールドラム20が回転されながら主巻ロープ19が繰り出されると、スプールドラム20上の主巻ロープ19の繰り出し位置が、軸方向に沿って往復移動する。
一対のスプールドラム支持部2Sは、スプールドラム20を回転可能に支持する。スプールドラム回転機2Mは、スプールドラム回転軸2Tを備える電動機である。スプールドラム回転機2Mは、スプールドラム20に主巻ロープ19を巻き込む作業時に、スプールドラム20を回転駆動させる。
アイドラシーブ部3は、前後方向においてスプールドラム20とブレーキドラム40との間に配置されている。アイドラシーブ部3は、スプールドラム20から繰り出された主巻ロープ19をガイドする機能を備えている。
アイドラシーブ部3は、第1シャフト31Tと、第2シャフト32Tと、第1アイドラシーブ31と、第2アイドラシーブ32と、フレーム3Sと、を備える。
第1アイドラシーブ31は、スプールドラム20から繰り出された主巻ロープ19が掛けられる第1周面31Hを備え、第1シャフト31Tに回転可能に支持されている。また、第2アイドラシーブ32は、鉛直方向において第1アイドラシーブ31に対してずれた位置に配置されている。第2アイドラシーブ32は、第1アイドラシーブ31の第1周面31Hを通過した主巻ロープ19が掛けられる第2周面32Hを備え、第2シャフト32Tに回転可能に支持されている。更に、本実施形態では、図2に示す状態から、第1アイドラシーブ31および第2アイドラシーブ32が、それぞれ第1シャフト31Tおよび第2シャフト32T上を軸方向(左右方向)にスライド移動可能とされている。
ブレーキドラム部4は、台座1Sの後端部に回転可能に支持されている。ブレーキドラム部4は、ブレーキドラム40(張力付与ドラム)と、一対のブレーキドラム支持部40Sと、ブレーキドラム回転機41と、を備える。
ブレーキドラム40は、スプールドラム20と主巻用ウインチ18との間に配置されている。換言すれば、ブレーキドラム40は、ロープ繰り出し装置1から主巻用ウインチ18に対する主巻ロープ19の繰り出し方向(図1、図2の矢印DK)においてスプールドラム20よりも下流側に配置されている。ブレーキドラム40は、スプールドラム20から繰り出された主巻ロープ19の一部を支持する円筒状の周面40H(第2外周面)と、周面40Hと主巻用ウインチ18との間で張架される主巻ロープ19に張力を付与する張力付与機構と、を備えている。
ブレーキドラム40は、スプールドラム20から繰り出されアイドラシーブ部3を経由した主巻ロープ19に対して周面40H上の特定位置で接触し、当該接触によって主巻ロープ19に張力を付与しながら周面40Hの回転に応じて主巻ロープ19を主巻用ウインチ18に向かって繰り出す。本実施形態では、張力付与機構は、ブレーキドラム回転機41内に配置されている公知のディスクブレーキからなる。すなわち、主巻用ウインチ18の巻き取り力に対抗して、ブレーキドラム40に所定のブレーキ力が付与されることで、両者の間に張架された主巻ロープ19に張力が付与される。ブレーキドラム40は、スプールドラム20の軸心と平行かつ水平方向に延びる軸心回りに回転され、主巻用ウインチ18に対して主巻ロープ19を繰り出す。なお、図2に示すように、ブレーキドラム40の周面40Hの外径は、軸方向の中央部から両外側に向けて連続的に拡大している。主巻ロープ19は、ブレーキドラム40の回転に伴って、周面40Hの軸方向の中央部に移動した後、ブレーキドラム40から引き出される。
拘束部50は、台座1Sに固定されている。本実施形態では、拘束部50は、門柱型形状を有している。拘束部50は、左右一対の側壁51(壁部)と、当該一対の側壁51の上端部同士を左右方向に沿って互いに接続する天壁52(接続壁)と、を有する。左右一対の側壁51は、ブレーキドラム40を水平な方向(左右方向)において両側から挟むように台座1Sに固定されている。天壁52は、ブレーキドラム40の上方において一対の側壁51を左右方向において互いに接続する。
拘束部50は、主巻用ウインチ18の巻き取り力によって台座1Sが地面上を横滑りすることをクレーン100の自重によって阻止するようにクレーン100によって拘束されることが可能とされている。本実施形態では、拘束部50が、左右一対の被押圧部50S(被押圧面)を有する。被押圧部50Sは、天壁52の上面部に配置されている。当該左右一対の被押圧部50Sは、クレーン100のうち上部旋回体10に対して倒伏されたブーム13によって上方から押圧されることでブーム13によって拘束されることが可能とされている。
図3および図5を参照して、本実施形態では、クレーン100が左右一対のブーム支持部135(支持部材)を更に備える。左右一対のブーム支持部135は、ブーム13の上部ブーム13Cの先端部に配置されている。詳しくは、左右一対のブーム支持部135は、ブーム13の倒伏姿勢(図2、図3)において、上部ブーム13Cを構成する左右のメインフレームの両側面から下方に向かって延びるように配置されている。図3に示すように、左右方向(ブーム13の回動軸と平行な方向)から見て、左右一対のブーム支持部135は、第2シーブ132の回転軸から下方に延びるように配置されている。左右一対のブーム支持部135は、ブーム13が地上に載置される際に、上記のメインフレームよりも先に地面に当接することでブーム13を支持可能とされている。
そして、本実施形態では、図3に示すように、ブーム13のうち左右一対のブーム支持部135が、拘束部50の左右一対の被押圧部50Sを上方から下方に押圧する。この結果、クレーン100のブーム13の自重が拘束部50を介してロープ繰り出し装置1に掛かり、ロープ繰り出し装置1(拘束部50)が拘束される。
図3を参照して、主巻ロープ19の先端がスプールドラム20から繰り出され、アイドラシーブ部3の第1アイドラシーブ31、第2アイドラシーブ32、ブレーキドラム部4のブレーキドラム40、ブーム13上の第2シーブ132および第3シーブ133を経由して、主巻用ウインチ18(図1)に固定される。そして、主巻用ウインチ18による主巻ロープ19の巻き取りが開始されると、スプールドラム20、第1アイドラシーブ31、第2アイドラシーブ32およびブレーキドラム40は図3の矢印で示される方向に回転する。
図4を参照して、本実施形態では、第1アイドラシーブ31および第2アイドラシーブ32は、軸方向に沿ってスライド移動可能とされている。したがって、スプールドラム20の回転に伴う、軸方向における主巻ロープ19の繰り出し位置P(図4)の変化に応じて、第1アイドラシーブ31および第2アイドラシーブ32の軸方向における位置が変化する。詳しくは、スプールドラム20と第1アイドラシーブ31との間の主巻ロープ19の張力と、第1アイドラシーブ31と第2アイドラシーブ32との間の主巻ロープ19の張力のバランスによって、第1アイドラシーブ31の軸方向における位置が決定される。同様に、第1アイドラシーブ31と第2アイドラシーブ32との間の主巻ロープ19の張力と、第2アイドラシーブ32とブレーキドラム40との間の主巻ロープ19の張力とのバランスによって、第2アイドラシーブ32の軸方向における位置が決定される。
この時、ロープ繰り出し装置1のブレーキドラム部4が主巻ロープ19に張力(ブレーキ力)を付与することで、主巻用ウインチ18とブレーキドラム40との間で主巻ロープ19が強く引っ張られる。このため、主巻用ウインチ18に主巻ロープ19が巻き込まれる際に、主巻ロープ19の乱巻きが抑止される。一方、主巻用ウインチ18による巻き取り力は、主巻ロープ19を介してロープ繰り出し装置1に掛かるため、ロープ繰り出し装置1には大きな引っ張り力が付与される。
このような場合であっても、本実施形態では、ブーム13の自重が左右一対のブーム支持部135からロープ繰り出し装置1の拘束部50の被押圧部50Sに付与される。このため、ブーム13と地面とによってロープ繰り出し装置1の拘束部50を上下から挟むことができる。この結果、台座1Sと地面との摩擦力およびブーム支持部135と拘束部50との摩擦力によって、ロープ繰り出し装置1の台座1Sが地面上を横滑りすることがブーム13の自重によって抑止される。
更に、本実施形態では、図3および図5に示すように、拘束部50の左右一対の被押圧部50Sは、ブレーキドラム部4のブレーキドラム40の上方(直上)の領域、より具体的には図3の側面視でブレーキドラム40を上方に投影させた領域に含まれるように配置されている。また、ブレーキドラム40は、主巻ロープ19を周面40Hから上方に向かって繰り出すように配置される(図3)。このため、主巻用ウインチ18が主巻ロープ19を巻き取る際に、第3シーブ133および第2シーブ132を介して、ロープ繰り出し装置1を上方に引き上げるような力がブレーキドラム40に付与される。しかしながら、前述のように、ブーム13の自重が、左右一対のブーム支持部135を介して拘束部50の左右一対の被押圧部50Sに下方に向かって付与されている。このため、ロープ繰り出し装置1の横滑りが抑止されるとともに、ロープ繰り出し装置1のブレーキドラム40側(拘束部50)が浮き上がることが抑止される。このように、ロープ繰り出し装置1から主巻ロープ19が繰り出される方向と反対の方向に向かって、クレーン100の自重がロープ繰り出し装置1の拘束部50に付与されることで、主巻用ウインチ18による主巻ロープ19の巻き取り作業(ロープ繰り出し装置1による主巻ロープ19の繰り出し作業)中において、ロープ繰り出し装置1の位置が安定して保持される。なお、当該構成および効果は、後記の他の実施形態にも適用することができる。
また、本実施形態では、図5に示すように、ブレーキドラム40から主巻ロープ19が繰り出される方向(上下方向)と直交する方向(左右方向)において、ブレーキドラム40を左右両側に一対の被押圧部50Sが拘束部50に配置されている。このため、ブレーキドラム40から主巻ロープ19が繰り出される位置が左右方向において変動した場合でも、ブーム13の自重が拘束部50に安定して付与され、ロープ繰り出し装置1の位置ずれが防止される。
また、本実施形態では、ブーム13のうち拘束部50に接触する機能を、左右一対のブーム支持部135が兼ね備えている。このため、ブーム13のメインフレームなどが拘束部50に接触する場合と比較して、ブーム13の部分的な損傷などが抑止される。
また、本実施形態では、図2に示すように、ロープ繰り出し装置1のブレーキドラム部4から主巻ロープ19が上方に向かって繰り出され、クレーン100の第2シーブ132、第3シーブ133を経由して、倒伏されたブーム13の上方を通って主巻用ウインチ18に巻き込まれる。この際、ブーム13の先端部の直下に、ロープ繰り出し装置1の繰り出し方向先端側部分が配置されている。このため、図11の破線に示すように、主巻ロープ19の一部が地面に接触する恐れがなく、主巻ロープ19に砂や埃が噛み込むことが抑止される。
次に、本発明の第2実施形態について、説明する。図6は、本実施形態に係るロープ繰り出し装置1からクレーン100の主巻用ウインチ18に主巻ロープ19が繰り出される様子を示す側面図である。図7は、本実施形態に係るロープ繰り出し装置1とクレーン100の第3シーブ133との連結箇所を示す透視斜視図である。なお、本実施形態では、先の第1実施形態と比較して、クレーン100のブーム13とロープ繰り出し装置1の拘束部50との連結構造において相違するため、当該相違点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態では、主巻用ウインチ18に対する主巻ロープ19の巻き取り作業に際して、ブーム13の一部を構成する下部ブーム13Aが、上部旋回体10に起伏可能に装着され、上部旋回体10に対して倒伏した姿勢とされる。下部ブーム13Aの先端部には、ブーム起伏用ロープ17の一端部が一時的に接続される。図7を参照して、下部ブーム13Aは、その先端部に配置されるブーム先端パイプ13A1(柱部材)を備える。ブーム先端パイプ13A1は、下部ブーム13Aの先端部であって下部ブーム13Aの倒伏姿勢において下部ブーム13Aの下面部に配置され、左右方向(下部ブーム13Aの回動軸と平行な方向、水平方向)に延びるパイプ部材である。ブーム先端パイプ13A1は、下部ブーム13Aの一部を構成する。
一方、ロープ繰り出し装置1の拘束部50は、天壁52の上面部に形成された被押圧部50Sを有する。被押圧部50Sは、ブーム先端パイプ13A1が上方から嵌合可能なように、上方に向かって凹状の内周面からなり、天壁52に左右方向に沿って延びるように配置されている。なお、本実施形態では、ブーム先端パイプ13A1の左右方向における長さが、被押圧部50Sの左右方向における長さよりも大きく設定されている。
このような構成によれば、図6に示すように、ブーム起伏用ウインチ16がブーム起伏用ロープ17を繰り出しながら下部ブーム13Aを倒伏させると、やがてブーム先端パイプ13A1が拘束部50の被押圧部50Sに上方から嵌合する。この結果、下部ブーム13Aの自重が被押圧部50Sに掛かることで、連結部50を介してロープ繰り出し装置1が拘束され、主巻用ウインチ18に対する主巻ロープ19の巻き込み作業中に、ロープ繰り出し装置1の台座1Sが地面上を横滑りすることが阻止される。この際、ブーム先端パイプ13A1が被押圧部50Sに嵌合すると、ブーム先端パイプ13A1の外周面が被押圧部50Sの内周面を前後方向において拘束するため、ロープ繰り出し装置1の横滑りが更に抑止される。なお、本実施形態では、先の第1実施形態のように、第2シーブ132および第3シーブ133が下部ブーム13Aに装着されていないため、補助クレーン150がシーブ151を吊り上げ、ロープ繰り出し装置1のブレーキドラム40と主巻用ウインチ18との間に介在することが望ましい。また、この場合も、シーブ151からロープ繰り出し装置1のブレーキドラム40に対して、上方に向かって主巻ロープ19の張力が付与される。しかしながら、下部ブーム13Aのブーム先端パイプ13A1が拘束部50の被押圧部50Sを下方に向かって押圧しているため、ロープ繰り出し装置1の拘束部50側が浮き上がることが抑止される。また、図11の破線に示すように、主巻ロープ19の一部が地面に接触する恐れがなく、主巻ロープ19に砂や埃が噛み込むことが抑止される。
次に、本発明の第3実施形態について、説明する。図8は、本実施形態に係るロープ繰り出し装置1からクレーン100の主巻用ウインチ18に主巻ロープ19が繰り出される様子を示す側面図である。図9は、本実施形態に係るロープ繰り出し装置1がクレーン100の下部走行体11に装着された様子を示す平面図である。図10は、本実施形態に係るロープ繰り出し装置1がクレーン100の下部走行体11に装着された様子を示す拡大側面図である。なお、本実施形態では、先の第1実施形態と比較して、クレーン100とロープ繰り出し装置1の拘束部50との連結構造において相違するため、当該相違点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する。
本実施形態では、ロープ繰り出し装置1の拘束部50が、クレーン100の下部走行体11に連結される。この際、本実施形態では、図8、図9に示すように、クレーン100に対するロープ繰り出し装置1のスプールドラム部2、アイドラシーブ部3およびブレーキドラム部4の配置が、先の第1実施形態と比較して逆になっている。すなわち、クレーン100に最も近い位置にスプールドラム部2が配置され、クレーン100から最も遠い位置にブレーキドラム部4が配置される。また、拘束部50は、台座1Sのうち最もクレーン100側の端部(スプールドラム部2よりもクレーン100側)に配置されている。拘束部50は、台座1Sから上方に立設された壁部からなる。拘束部50は、クレーン100の下部走行体11に向かって後方に突設された左右一対の繰り出し装置連結部50T(図9、図10)(機体連結部)を有する。当該繰り出し装置連結部50Tには、連結ピンP1が挿通可能な孔部が左右方向に沿って延びるように開口されている。
一方、図9を参照して、下部走行体11は、カーボディ110と、左右一対のクローラボディ111と、前後一対のカーボディウエイト115と、を備える。なお、図9では、前後一対のカーボディウエイト115のうち、後側のカーボディウエイト115のみが図示されている。
カーボディ110は、下部走行体11の本体部分であって、その中心において上部旋回体10(図8)を旋回可能に支持する。カーボディ110は、その前後の側面にそれぞれ配置された、左右一対のカーボディ連結部110S(ウエイト装着部)を有する。左右一対のクローラボディ111は、カーボディ110の左右側面に連結されており、それぞれクローラ112を周回可能に支持する。
カーボディウエイト115は、カーボディ110の左右一対のカーボディ連結部110Sに装着される。カーボディウエイト115は、左右一対のウエイト連結部115Sを有する。カーボディ110の左右一対のカーボディ110、カーボディウエイト115の左右一対のウエイト連結部115Sには、それぞれ、連結ピンP1が挿通可能な孔部が左右方向に沿って延びるように開口されている。図9に示すように、カーボディウエイト115が、カーボディ110の左右一対のカーボディ連結部110Sに対して、左右一対の連結ピンP1によって連結される。なお、カーボディ110の前側の左右一対のカーボディ連結部110Sにも、同様に、カーボディウエイト115が装着可能とされる。
そして、本実施形態では、図9に示すように、左右一対のカーボディ連結部110Sを利用して、ロープ繰り出し装置1がカーボディ110に連結可能とされる。すなわち、拘束部50の左右一対の繰り出し装置連結部50Tに開口された連結用孔部と、左右一対のカーボディ連結部110Sに開口された孔部とに、それぞれ連結ピンP1が挿通されることで、繰り出し装置連結部50Tがカーボディ110のカーボディ連結部110Sに連結される。
図8に示すように、本実施形態においても、補助クレーン150が吊り上げたシーブ151が、ロープ繰り出し装置1と主巻用ウインチ18との間に介在することが望ましい。ロープ繰り出し装置1では、スプールドラム部2から繰り出された主巻ロープ19が、アイドラシーブ部3を経由して前方のブレーキドラム部4に供給される。そして、ブレーキドラム部4において主巻ロープ19に張力が付与されながら、シーブ151を経由して主巻用ウインチ18に主巻ロープ19が巻き込まれる。
このような構成においても、ロープ繰り出し装置1の拘束部50がクレーン100のカーボディ110に連結されているため拘束部50が拘束され、主巻用ウインチ18の巻き取り力によってロープ繰り出し装置1の台座1Sが地面上を横滑りすることが防止される。また、図11の破線に示すように、主巻ロープ19の一部が地面に接触する恐れがなく、主巻ロープ19に砂や埃が噛み込むことが抑止される。更に、図8に示すように、キャブ12が下部走行体11の前方を向くように上部旋回体10の旋回角度が初期角度に設定された状態で、ロープ繰り出し装置1が下部走行体11に連結される。この結果、キャブ12とロープ繰り出し装置1とが近い位置に配置される。このため、キャブ12内で主巻用ウインチ18の巻き取り操作を行う作業者と、ロープ繰り出し装置1を操作し主巻ロープ19の繰り出し作業を行う作業者とが互いに近い位置に配置される。したがって、両作業者が意思疎通しやすく、互いの作業状態を把握しながら、効率的に作業を行うことが可能となる。
以上のような本発明の各実施形態における、ロープ繰り出し装置1の主巻用ウインチ18のロープ巻き取り方法は、機体と前記機体に起伏可能に支持された起伏部材とロープを巻き取り可能なウインチドラムとを有する作業機械の前記ウインチドラムにロープを巻き取るための、作業機械のウインチドラムのロープ巻き取り方法であって、
上記の各実施形態に記載のロープ繰り出し装置を準備することと、
前記作業機械によって前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部を拘束することと、
前記ロープ繰り出し装置の前記スプールドラムから前記ロープを繰り出し、前記張力付与ドラムによって前記ロープに張力を付与しながら、前記張力付与ドラムから前記ロープを更に繰り出すことと、
前記ウインチドラムの巻き取り力によって前記ロープ繰り出し装置の前記支持台が地面上を横滑りすることを、前記拘束部において前記作業機械の自重によって阻止しながら、前記張力付与ドラムから繰り出された前記ロープを、前記ウインチドラムに巻き取ることと、
を備える。
上記の方法において、前記起伏部材を前記機体に対して倒伏させ、前記起伏部材によって前記拘束部に配置された被押圧面を上方から押圧することで、前記作業機械と前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部を拘束することを更に備えることが望ましい。
また、上記の方法において、前記起伏部材として、当該起伏部材の先端部に配置され地面に当接することで前記起伏部材を支持可能な支持部材を有するものを用いることと、
前記起伏部材を前記機体に対して倒伏させ、前記起伏部材の前記支持部材によって前記被押圧面を上方から押圧することで前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部を拘束することと、
を更に備えることが望ましい。
また、上記の方法において、前記起伏部材として、当該起伏部材の長手方向に沿って複数の部材が互いに着脱可能に連結されるものを用いることと、
前記複数の部材のうちの一部の部材を前記機体に起伏可能に装着し、当該装着された一部の部材を前記機体に対して倒伏させることと、
前記一部の部材によって前記拘束部の前記被押圧面を上方から押圧することで前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部を拘束することと、
を更に備えることが望ましい。
また、上記の方法において、前記起伏部材として、当該起伏部材の一部を構成し水平方向に延びる柱部材を有するものを用いることと、
前記ロープ繰り出し装置として、前記柱部材が上方から嵌合可能な凹状の内周面が前記被押圧面として前記拘束部に形成されたものを用いることと、
前記起伏部材を前記機体に対して倒伏させ、前記起伏部材の前記柱部材を前記凹状の内周面に嵌合させることで前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部を拘束することと、
を更に備えることが望ましい。
また、上記の方法において、前記ロープ繰り出し装置として、前記拘束部の前記被押圧面が前記張力付与ドラムの上方に配置されたものを用いることと、
前記張力付与ドラムが前記ロープを前記第2胴部の前記第2外周面から上方に向かって繰り出すように、前記張力付与ドラムと前記ウインチドラムとの間における前記ロープの繰り出し経路を配設することと、
前記ウインチドラムの巻き取り力によって前記ロープ繰り出し装置が上方に持ち上がることを、前記拘束部において前記起伏部材の自重によって更に阻止しながら、前記張力付与ドラムから繰り出された前記ロープを、前記ウインチドラムに巻き取ることと、
を更に備えることが望ましい。
また、上記の方法において、前記拘束部を前記作業機械の前記機体に連結することで前記拘束部を拘束することを更に備えることが望ましい。
また、上記の方法において、前記作業機械として、当該作業機械のバランスを保持するウエイトを更に備え、前記機体に前記ウエイトが装着されることを許容するウエイト装着部を有するものを用いることと、
前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部を前記ウエイト装着部に連結することと、
を更に備えることが望ましい。
また、上記の方法において、前記作業機械として、前記ウエイトに開口された孔部と前記ウエイト装着部に開口された孔部とに所定の連結ピンを挿通することで、前記ウエイトと前記機体とが連結されるものを用いることと、
前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部に開口された孔部と、前記機体の前記ウエイト装着部に開口された前記孔部とに連結ピンを挿通することで、前記作業機械と前記ロープ繰り出し装置の前記拘束部とを連結することと、
を更に備えることが望ましい。
以上、本発明の各実施形態に係るロープ繰り出し装置1および作業機械のウインチドラムのロープ巻き取り方法について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明は、例えば以下のような変形実施形態を取ることができる。
(1)上記の実施形態では、ブーム13の先端部に配置された左右一対のブーム支持部135が、拘束部50の左右一対の被押圧部50Sを下方に押圧する態様にて説明したが、ブーム13の先端部の他の部材が拘束部50を下方に押圧する態様でもよい。また、ブーム13の一部と拘束部50とがボルトなどの締結部材によって互いに連結される態様でもよい。更に、ブーム13と拘束部50との連結箇所は、左右一対の箇所に限定されるものではなく、1箇所または3箇所以上において互いに連結されてもよい。
(2)上記の第2実施形態では、下部ブーム13Aの先端部が拘束部50を下方に押圧する態様にて説明したが、下部ブーム13Aと中間ブーム13Bとが互いに接続された状態で上部旋回体10に起伏可能に装着され、中間ブーム13Bの先端部が拘束部50を下方に押圧する態様でもよい。
(3)上記の第3実施形態では、カーボディウエイト115がカーボディ110に装着される左右一対のカーボディ連結部110Sを利用して、ロープ繰り出し装置1の繰り出し装置拘束部50Tがカーボディ110に連結される態様にて説明したが、その他の部分を介して、繰り出し装置拘束部50Tがカーボディ110に連結される態様でもよい。
(4)上記の実施形態では、図1に示すように、ブーム13の起伏をガントリ(14、15)で行う態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ブーム13の起伏をマストで行う大型のクレーンにおいては、ブーム起伏用ウインチ16によって当該マストを起伏させ、ガイラインまたはガイリンクによってマストに接続されたブームがマストの起伏に連動して起伏する態様でもよい。この場合、ブームの先端部には、図1に示すような第1シーブ131は備えられず、ガイラインまたはガイリンクがブームの先端部に直接接続される。更に、この場合、図11に示すように、ブーム起伏用ウインチ16は、下部ブーム13Aに取り付けられてもよい。なお、マストタイプの場合、マスト先端に油圧シリンダが備えられており、マストがクレーン前方に倒伏されることで、分解組立時に下部ブームを前記油圧シリンダによって吊り上げることが可能である。このため、この機能を利用して、前記油圧シリンダによって下部ブームを起伏させてもよい。