JP7167184B2 - 重合性組成物及びコンタクトレンズ - Google Patents
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Description
近年、自然光、オフィス機器の液晶ディスプレイ、スマートフォン等のモバイルのディスプレイ等からの発光に含まれるブルーライトの眼への影響が注目され、ブルーライトによる眼精疲労などの眼への影響が問題となっている。また、長期間に亘り、ブルーライトに曝露されることは、眼精疲労、ストレス、さらには加齢黄斑変性等を引き起こす要因になる場合がある。このため、紫外光のみならず、波長380nm~500nmのブルーライトの透過を抑制することが望まれている。
また、分子内に1個以上のトリチオカーボネート基を有する特定構造のブルーライト吸収化合物が提案され、380nm~500nmのブルーライト遮断性に優れ、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、染料などと併用して、種々の用途に適用しうることが開示されている(特開2018-168140号公報参照)。
眼科用材料として、低粘着性、低含水率でコンタクトレンズに好適な眼用レンズ材料が開示され、青視症矯正用として、コンタクトレンズに黄色染料を含有することが好ましいことが記載されている(特開平8-173522号公報参照)。
他方、特開平8-173522号公報に記載の如き黄色染料は、紫外線吸収剤よりも少量でブルーライト遮断性を得られるが、黄色染料を単独でブルーライトカットに充分な量で重合性組成物に含有させた場合、硬化物が着色してしまい、例えば、コンタクトレンズなどの光学系の用途には適さないという問題がある。
本発明の別の実施形態が解決しようとする課題は、少なくとも380nm~500nmの波長領域のブルーライトの遮断性が良好であり、且つ、着色が抑制されたコンタクトレンズを提供することである。
<1> 下記一般式(I)で表される紫外線吸収剤と、最大吸収波長が400nm以上450nm未満の着色剤と、重合性化合物と、を含有する重合性組成物。
<2> 上記着色剤は、油溶性染料を含む<1>に記載の重合性組成物。
<3> 上記油溶性染料は、分子内に、アミノ基、アゾ基及び含窒素複素環基から選ばれる少なくとも1つを有する含窒素油溶性染料である<2>に記載の重合性組成物。
<5> 上記重合性化合物は、分子内にカルボニル基とヒドロキシ基とを有する化合物を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の重合性組成物。
<6> 上記分子内にカルボニル基とヒドロキシ基とを有する化合物が2-ヒドロキシエチルメタクリレートである<5>に記載の重合性組成物。
<8> 重合性組成物の全量に対する上記紫外線吸収剤の含有量が0.05質量%~0.4質量%である<1>~<7>のいずれか1つに記載の重合性組成物。
<9> 重合性組成物の全量に対する上記着色剤の含有量が0.005質量%~0.02質量%である<1>~<8>のいずれか1つに記載の重合性組成物。
<10> さらに、熱重合開始剤を含有する<1>~<9>のいずれか1つに記載の重合性組成物。
<12> 波長400nm~440nmの範囲における光透過率が80%以下である<11>に記載のコンタクトレンズ。
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも380nm~500nmの波長領域のブルーライトの遮断性が良好であり、且つ、着色が抑制されたコンタクトレンズを提供することができる。
但し、本開示は、以下に記載の実施形態に何ら限定されるものではなく、目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の含有量又は配合量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計の含有率又は配合率を意味する。
「置換基」の表記は、特に断りのない限り、無置換のもの、置換基をさらに有するものを包含する意味で用いられ、例えば「アルキル基」と表記した場合、無置換のアルキル基と置換基をさらに有するアルキル基の双方を包含する意味で用いられる。その他の置換基についても同様である。
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、「ブルーライト」とは、380nm~500nmの波長域の光を指す。380nm~500nmの波長域の光を吸収し、遮蔽し得ることが目の健康を守る目的で有効であると考えられる。本開示においては、ブルーライトのなかでも、眼の健康にとって特に重要と考えられる400nm~440nmの波長域のブルーライト遮断性に着目して評価を行なっている。
また、本開示における「ブルーライトの遮断」とは、重合性組成物の硬化物を介することで、少なくとも380nm~500nmの波長領域のブルーライトを完全に遮断する場合のみならず、ブルーライトの少なくとも一部を遮断し、ブルーライトの透過率を減少させることを包含する。
本開示の重合性組成物は、下記一般式(I)で表される紫外線吸収剤と、最大吸収波長が400nm以上450nm未満の着色剤と、重合性化合物と、を含有する。
なお、以下、下記一般式(I)で表される紫外線吸収剤を、「特定紫外線吸収剤」と称することがある。また、最大吸収波長が400nm以上450nm未満の着色剤を、「特定着色剤」と称することがある。
本開示の重合性組成物が含む特定紫外線吸収剤は、下記一般式(I)で表されるδ-アミノペンタジエン酸エステル誘導体である。
特定紫外線吸収剤は、最大吸収波長を360nm~400nmの波長域に有することが好ましい。
本開示の重合性組成物によれば、特定紫外線吸収剤と特定着色剤とを併用することで、良好なブルーライト遮断性を得ることができると考えている。即ち、重合性組成物に含まれる特定紫外線吸収剤の吸収裾帯を利用して、特定紫外線吸収剤にブルーライト波長の短波側を主に吸収させて、遮断することができる。且つ、ブルーライト波長のより長波側については、以下に詳述する特定着色剤の主吸収帯によって、特定着色料に吸収させることにより遮断することができる。従って、本開示の重合性組成物はブルーライトを広い波長域でカットできると考えている。
特定紫外線吸収剤の最大吸収波長が360nmより大きいことで、より良好なブルーライト遮断性が得られ、且つ、400nmより小さいことで、重合性組成物の硬化物における着色の発生がより効果的に抑制される。
測定は室温(25℃)にて行い、測定条件として、空気をコントロールとして参照し、吸光度を測定して吸収スペクトルを得る。
所定の波長範囲の波長の吸光度を測定することで、最大吸収波長、透過率などを算出することができる。
脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアラルキル基から選ばれる基が好ましく挙げられる。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアラルキル基は、それぞれさらに置換基を有していてもよい。
ここで、アルキル基の炭素数とは、アルキル基を構成する炭素原子の数を意味し、アルキル基がさらに置換基を有する場合の置換基の炭素数は含まない。以下に示す他の官能基の炭素数も同様の意味で用いられる。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、t-ブチル、n-オクチル、エイコシル、2-クロロエチル、2-シアノエチル、2-エチルヘキシ、シクロヘキシル、シクロペンチル、及び4-n-ドデシルシクロヘキシルから選ばれる基が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2-シクロペンテン-1-イル、及び2-シクロヘキセン-1-イルから選ばれる基が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパルギル、及びトリメチルシリルエチニルから選ばれる基が挙げられる
また、アラルキル基のアリール部分は、例えば、フェニル、p-トリル、ナフチル、m-クロロフェニル、及びo-ヘキサデカノイルアミノフェニルから選ばれる基が挙げられる。
飽和複素環の例としては、ピロリジン環、モルホリン環、2-ボラ-1,3-ジオキソラン環及び1,3-チアゾリジン環から選ばれる環が挙げられる。不飽和複素環の例としては、イミダゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ピリジン環、ピリミジン環及びキノリン環から選ばれる環が挙げられる。
また、R12とR13とは同一の基であることも好ましい。
ここでハメット則はベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であり、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則により求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に記載がある。ハメット則については、例えば、J.A.Dean編「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw-Hill)、「化学の領域増刊」、122号、96~103頁、1979年(南江堂)等の成書があり、ハメット則について詳しく記載されている。本開示においてY11が示す電子吸引性基は、ハメットの置換基定数σp値により規定される。本開示における電子吸引性基は、上記の成書に記載の文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、置換基定数σp値が文献未知であっても、ハメット則に基づいて測定した場合に、当該置換基の置換基定数σp値が正の数値となる限り、本開示における電子吸引性基に包含されることはいうまでもない。
Y11が表す基は、好ましくは炭素数6~20、より好ましくは6~15のアリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、p-クロロベンゼンスルホニル基、及びナフタレンスルホニル基)、好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~5のアシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、及びプロピオニル基)、好ましくは炭素数7~20、より好ましくは炭素数7~15のアリールカルボニル基、ニトリル基、好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~9のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、及びベンジルオキシカルボニル基)、好ましくは炭素数7~20、より好ましくは炭素数7~15のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基、及びp-ニトロフェノキシカルボニル基)から選ばれる基が好適に挙げられる。なかでも、好ましくは炭素数6~15のアリールスルホニル基であり、最も好ましくはベンゼンスルホニル基である。
重合性組成物の硬化物からの特定紫外線吸収剤の溶出、及び特定紫外線吸収剤の凝集に起因するヘイズの発生がより効果的に抑制されるという観点から、上記例示化合物のなかでも、具体的には、(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-6)、(I-11)、(I-12)、(I-15)、(I-16)、(I-20)、(II-1)、(II-2)、(II-3)、及び(II-4)から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく挙げられ、より好ましくは(I-1)、(I-2)、(I-11)、(I-12)、及び(II-1)から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられ、特に好ましくは(I-2)が挙げられる。
重合開始剤の全量に対する特定紫外線吸収剤の含有量は、0.02質量%~0.5質量%であることが好ましく、0.05質量%~0.4質量%であることがより好ましい。
特定紫外線吸収剤の含有量が0.02質量%以上であることでブルーライト遮断性がより良好となり、0.5質量%以下であることで、重合性組成物の硬化物からの溶出又は凝集によるヘイズの発生がより効果的に抑制される。
本開示の重合性組成物は、最大吸収波長が400nm以上450nm未満の着色剤(特定着色剤)を含む。
本開示の重合性組成物の硬化物は、380nm~500nmのブルーライト遮断性が良好であり、ブルーライトの眼に対する影響を著しく低減できる。
他方、人間の眼は、波長550nmを最大として、450nm~700nm領域に視感度を有する。このため、特定着色剤として最大吸収波長が450nm未満の着色剤を選択することで、重合性組成物の硬化物が人の眼の視感度に与える影響を低減できる。
また、特定着色剤の最大吸収波長が400nm以上であることで、特定紫外線吸収剤の吸収曲線のスソ、即ち、最大吸収波長に比較して遮断性がやや低い長波長側に相当する波長領域におけるブルーライト遮断性をより向上させている。
なかでも、重合性組成物の硬化物からの着色剤の溶出及び経時後の着色剤の凝集に起因するヘイズ発生を効果的に抑制するという観点から、重合性組成物における他の成分、例えば、重合性化合物との相溶性が良好な着色剤を選択することが好ましい。特定着色剤としては、油溶性染料、分散染料、及び昇華染料が好ましく、なかでも、効果の観点から、油溶性染料がより好ましい。
本開示における油溶性染料は、イオン性基を含まない中性の構造を有し、分散染料及び昇華染料に比較して、共存する重合性化合物、有機溶剤等との相溶性がより良好な染料である。
本開示における油溶性染料とは、水に実質的に不溶な染料を意味する。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解できる染料の質量)が1g以下の染料を指す。本開示における油溶性染料の水への溶解度は、好ましくは0.5g以下であり、より好ましくは0.1g以下である。
含窒素油溶性染料の作用は明らかではないが、油溶性染料が分子内に窒素原子を有することで、共存する特定紫外線吸収剤及び重合性化合物の少なくともいずれかと、水素結合性の相互作用及び双極子―双極子の相互作用の少なくともいずれかを形成しやすくなるためと考えている。従って、特定着色料として含窒素油溶性染料を用いることで、重合性組成物、延いては、重合性組成物の硬化物中において特定着色剤が安定して存在することになり、所望されない溶出及び凝集を抑制しうると考えている。なお、上記作用は推定であり、本開示の重合性組成物は、この推定機構に何ら制限されない。
特定着色剤の具体例としては、ソルベントイエロー33、及びソルベントイエロー4が挙げられ、より好ましくは、ソルベントイエロー33が挙げられる。
なかでも、ブルーライト遮断性と着色抑制とのバランスが良好であるという観点から、特定着色剤の含有量は、重合性組成物の全量に対し、0.002質量%~0.03質量%であることが好ましく、0.005質量%~0.02質量%であることがより好ましく、0.01質量%~0.02質量%であることがさらに好ましい。
特定紫外線吸収剤及び特定着色剤の重合性組成物に対する好ましい含有量は、既述の通りである。
さらに、ブルーライト遮断性と着色抑制とのバランスが良好であるという観点から、集合性組成物における特定紫外線吸収剤と特定着色剤との含有比率は、質量比で100:1~1:1とすることができ、60:1~5:1であることが好ましく、40:1~5:1であることがより好ましい。
本開示の重合性組成物は、重合性化合物を含む。
重合性組成物が重合性化合物を含むことで、重合性組成物にエネルギーを付与して、硬化させて硬化物とすることができる。本開示の重合性組成物を用いて得られた硬化物はブルーライト遮断性を必要とする種々の用途に適用することができる。
従って、本開示の重合性組成物を後述のコンタクトレンズに適用する場合には、水分、特に生理食塩水と類似の組成を持つ水溶液に長時間接触させても効果が持続されるという観点から、分子内にカルボニル基とヒドロキシ基とを有する重合性化合物が好適である。
カルボニル基を有する重合性化合物としては、(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキレングリコール(メタ)アクリル酸等が挙げられ、より具体的には、メタクリル酸(MAA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エチレングリコールジメタクリレート(ED)、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(HPPA)、フェノキシエチルアクリレート(POEA)、フェノキシエチルメタクリレート(POEMA)、ベンジルアクリレート(BA)、ラウリルメタクリレート(LMA)等が挙げられる。なかでも、重合性化合物としては、分子内にカルボニル基とヒドロキシ基とを有する重合性化合物であるヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エチレングリコールジメタクリレート(ED)等が好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレートであることがより好ましい。
得られる硬化物の強度、柔軟性、汚れの付着しにくさなどを向上させるため、重合性化合物として、多官能(メタ)アクリレート(多官能重合性化合物の一態様)、環状又は分岐を有するアルキル基を含むアルキル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート(6FA)等のフッ素含有(メタ)アクリレート、シリコン含有(メタ)アクリレート、スチレンなどを含んでもよい。
重合性組成物の全量に対する重合性化合物の含有量は90質量%以上100質量%未満であることが好ましく、95質量%以上100質量%未満であることがより好ましく97質量%以上100質量%未満であることがさらに好ましい。
なかでも、好適な重合性化合物である2-ヒドロキシエチルメタクリレートの含有量が、重合性組成物に含まれる重合性化合物の全量に対し、90質量%以上であることが最も好ましい。
本開示の重合性組成物は、特定紫外線吸収剤、特定着色剤及び重合性化合物に加え、目的に応じてその他の成分を含むことができる。
その他の成分としては、特定紫外線吸収剤以外の他の紫外線吸収剤、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、架橋剤、可塑剤、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン等)などが挙げられる。
式中の各基の詳細については、特許第5236297号公報の記載を参照できる。
重合性組成物は、熱重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては、光重合開始剤及び熱重合開始剤が知られているが、本開示の重合性組成物は、紫外線吸収剤を含むために、重合の進行をより効率よく行なうという観点から、熱重合開始剤を含むことが好ましい。なお、光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始剤の含有量を上げたり、増感剤を併用したりすることが好ましい。
熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどが挙げられ、アゾビスイソブチロニトリルがより好ましい。
本開示の重合性組成物は、エネルギーを付与して重合させることで硬化物を形成しうる。従って、ブルーライト遮断性を必要とする種々の用途に好適に使用される。
例えば、コンタクトレンズの製造、ブルーライト遮断用の膜を形成しうる膜形成性組成物、ディスプレイ用フィルムの製造、眼鏡用レンズの製造などに好適に使用しうる。
本開示の重合性組成物を、ガラス板などの硬質部材に塗布し、加熱することで、硬質部材の表面にブルーライト遮断性に優れ、着色が抑制された硬化膜を形成することができる。硬質部材の表面にブルーライト遮断性に優れた硬化膜を有する積層体は、ブルーライト遮断性を必要とする種々の部材に応用することができる。
コンタクトレンズについては、後述する。
評価用膜(硬化物)は、以下のようにして得ることができる。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(テトロン(登録商標)フィルム、帝人(株))をホットプレート上に配置し、ホットプレートを120℃に加熱し、ホットプレートの表面温度を120℃に維持して、PETフィルム上に重合性組成物をスポイトで2滴滴下し(約0.4mL)、1分間加熱を継続して、重合させ、その後、120℃のオーブン中で2時間熱重合を継続させて評価用硬化膜を得る。
ブルーライト遮断性は、既述の特定紫外線吸収剤の最大吸収波長の測定方法に記載したものと同様の装置を用いて行なうことができる。
ヘイズは、ヘイズメーター(装置名:HGM-2DP、スガ試験機(株)製)にて測定することができる。
なお、本開示では、ヘイズは、重合性組成物により形成された硬化物(具体的には、硬化膜)を目視にて観察した場合の硬化物の濁りの程度で評価する。即ち、目視による硬化物の観察において、目視で透明なものをヘイズが良好とし、濁りの発生したもの、さらに、濁りの程度が増加したものをヘイズが低下したと評価する。
本開示のコンタクトレンズは、既述の本開示の重合性組成物の硬化物である。
本開示のコンタクトレンズは、下記方法で製造することができる。
まず、重合性組成物に、特定紫外線吸収剤、特定着色剤、及び所望により用いられる熱重合開始剤、その他の成分を十分に撹拌、混合して重合性組成物を得る。次に、得られた重合性組成物を成形型に注入し、加熱硬化させることで、コンタクトレンズを製造することができる。
本開示のコンタクトレンズは、波長400nm~440nmの範囲における光透過率が80%以下であることが好ましい。
また、コンタクトレンズのヘイズは、既述のように、重合性組成物の硬化物である疑似コンタクトレンズを目視にて観察することで評価している
コンタクトレンズは医療器具であり、市販される前に煮沸消毒による十分な殺菌処理が行なわれる。
本開示の重合性組成物を用いて得られたコンタクトレンズは、硬化物の形成に際して、重合性化合物と特定紫外線吸収剤、及び重合性化合物と特定着色剤が、互いに水素結合性の相互作用を形成し、硬化物中に、特定紫外線吸収剤及び特定着色剤が安定に固体化されて存在すると考えられる。
従って、本開示のコンタクトレンズは、ブルーライト遮断性に優れ、着色が抑制されるという本来の効果に加え、生理食塩水に長時間浸漬された場合の特定紫外線吸収剤及び特定着色剤の溶出、煮沸消毒された場合の特定紫外線吸収剤及び特定着色剤の凝集に起因するヘイズの低下が抑制されるという副次的な効果を奏する。
なお、特に断らない限り、以下の実施例における「%」及び「部」は質量基準である。
[重合性組成物の調整]
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(重合性化合物)100部に対し、下記成分を添加し、30分マグネチックスターラーで撹拌し、得られた混合物を0.45μmフィルター(アドバンテック社製、PTFE)でろ過して、重合性組成物を調製した。
・特定紫外線吸収剤〔例示化合物(I-2)〕0.02部
・ソルベントイエロー33(シグマアルドリッチ社製:特定着色剤)0.01部
・アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(富士フイルム和光純薬(株):熱重合開始剤)1部
PETフィルム(テトロン(登録商標)、帝人(株))をホットプレート上配置し、ホットプレートを120℃で加熱しながら、PETフィルム上に、上記で得た実施例1の重合性組成物を、スポイトで2滴(0.4mL)滴下し、重合性組成物を1分間熱重合させて、PETフィルム上に重合性組成物の硬化膜を有する積層体を得た。その後、得られた積層体を120℃オーブン中に配置して、2時間、重合性組成物の熱重合を継続させた。
得られた硬化膜(硬化物)を有する積層体を、生理食塩水に24時間浸漬させ、硬化膜(模擬コンタクトレンズ)を得た。
以下の硬化膜の評価は、いずれも、PETフィルム上に形成された硬化膜に対して実施した。PETフィルムは、目視にて透明であり、硬化膜の光学的な評価には影響を与えないことを確認した。
(1.ブルーライト遮断性)
得られた模擬コンタクトレンズについて、分光光度計((株)島津製作所社、UV3600)を用いて、透過スペクトルを測定し、以下の評価基準にて評価した。A及びBが実用上問題のないレベルである。
-評価基準-
A:波長400nmの光透過率が80%以下であり、且つ、440nmの光透過率が90%以下である。
B:波長400nmの光透過率が80%以下であること、及び、440nmの光透過率が90%以下であることのうち一方のみを満たす。
C:波長400nmの光透過率が80%を超え、且つ、440nmの光透過率が90%を超える。
得られた硬化膜1Bについて、目視で着色について、以下の評価基準にて評価した。A及びBが実用上問題のないレベルである。
-評価基準-
A: 着色がないか、着色があっても極めて僅かで、実用上好ましい。
B: 着色は認められるが、実用上問題ない。
C: 着色が著しく、実用上問題がある。
得られた硬化膜1Bについて、目視でヘイズについて、以下の評価基準にて評価した。A及びBが実用上問題のないレベルである。
-評価基準-
A: 白濁がないか、白濁があっても極めて僅かで、実用上好ましい。
B: 白濁は認められるが、実用上問題ない。
C: 白濁が著しく、実用上問題がある。
得られた硬化膜1Bについて、生理食塩水に浸漬させながら、100℃で1時間加熱し、目視でヘイズについて以下の評価基準にて評価した。A及びBが実用上問題のないレベルである。
-評価基準-
A: 白濁がないか、白濁があっても極めて僅かで、実用上好ましい。
B: 白濁は認められるが、実用上問題ない。
C: 白濁が著しく、実用上問題がある。
実施例1において、紫外線吸収剤(I-2)の種類及び含有量を下記表1及び表2に示す種類と量に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物を得た。
得られた重合性組成物を用いて硬化膜(疑似コンタクトレンズ)を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を、下記表1~表2に示す。なお、下記表において「-」は、当該成分を含まないことを意味する。
<紫外線吸収剤>
特定紫外線吸収剤は、既述の例示化合物の符号にて表記した。
比較紫外線吸収剤:チヌビン326、東京化成(株)
<着色剤>
・特定着色剤:SY33(ソルベントイエロー33、シグマアルドリッチ社製)
・特定着色剤:SY4(ソルベントイエロー4、シグマアルドリッチ社製)
・比較着色剤:SY14(ソルベントイエロー14、シグマアルドリッチ社製)
なお、表1~表2に記載された各着色剤の最大吸収波長は、カタログ値を記載している。
<重合開始剤>
・熱重合開始剤:AIBN(富士フイルム和光純薬(株)製)
図1により、実施例3の疑似コンタクトレンズの透過率曲線から、特定紫外線吸収剤と特定着色剤との併用により、それぞれ単独での使用に比較し、ブルーライト遮断性と、着色の抑制のバランスがより良好となることが、光透過率の測定結果からも裏付けられた。
本開示に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本開示中に参照により取り込まれる。
Claims (17)
- 下記一般式(I)で表される紫外線吸収剤と、最大吸収波長が400nm以上450nm未満の着色剤と、重合性化合物と、を含有し、
重合性組成物の全量に対する前記紫外線吸収剤の含有量が0.05質量%~0.4質量%であり、重合性組成物の全量に対する前記着色剤の含有量が0.005質量%~0.02質量%である、
重合性組成物。
一般式(I)中、R11は、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で隣接する酸素原子と結合する複素環基を表し、R12、R13、R14、R15及びR16は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で隣接する酸素原子と結合する複素環基を表し、Y11は電子吸引性基を表す。R12とR13、R13とR15、R15とY11、Y11とR11、R11とR14、R14とR16、及びR16とR12は、互いに結合して環を形成してもよい。 - 前記重合性組成物における前記紫外線吸収剤と前記着色剤との含有比率は質量比で60:1~5:1である、請求項1に記載の重合性組成物。
- 下記一般式(I)で表される紫外線吸収剤と、最大吸収波長が400nm以上450nm未満の着色剤と、重合性化合物と、を含有し、
前記紫外線吸収剤と前記着色剤との含有比率は質量比で60:1~5:1である、
重合性組成物。
一般式(I)中、R 11 は、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で隣接する酸素原子と結合する複素環基を表し、R 12 、R 13 、R 14 、R 15 及びR 16 は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で隣接する酸素原子と結合する複素環基を表し、Y 11 は電子吸引性基を表す。R 12 とR 13 、R 13 とR 15 、R 15 とY 11 、Y 11 とR 11 、R 11 とR 14 、R 14 とR 16 、及びR 16 とR 12 は、互いに結合して環を形成してもよい。 - 重合性組成物の全量に対する前記紫外線吸収剤の含有量が0.05質量%~0.4質量%である請求項3に記載の重合性組成物。
- 重合性組成物の全量に対する前記着色剤の含有量が0.005質量%~0.02質量%である請求項3又は請求項4に記載の重合性組成物。
- 前記重合性化合物は、分子内にカルボニル基を有する化合物を含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の重合性組成物。
- 前記重合性化合物は、分子内にカルボニル基とヒドロキシ基とを有する化合物を含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の重合性組成物。
- 前記分子内にカルボニル基とヒドロキシ基とを有する化合物が2-ヒドロキシエチルメタクリレートである請求項7に記載の重合性組成物。
- 下記一般式(I)で表される紫外線吸収剤と、最大吸収波長が400nm以上450nm未満の着色剤と、重合性化合物としての2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、を含有する重合性組成物。
一般式(I)中、R 11 は、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で隣接する酸素原子と結合する複素環基を表し、R 12 、R 13 、R 14 、R 15 及びR 16 は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は炭素原子で隣接する酸素原子と結合する複素環基を表し、Y 11 は電子吸引性基を表す。R 12 とR 13 、R 13 とR 15 、R 15 とY 11 、Y 11 とR 11 、R 11 とR 14 、R 14 とR 16 、及びR 16 とR 12 は、互いに結合して環を形成してもよい。 - 重合性組成物の全量に対する前記紫外線吸収剤の含有量が0.05質量%~0.4質量%である請求項9に記載の重合性組成物。
- 重合性組成物の全量に対する前記着色剤の含有量が0.005質量%~0.02質量%である請求項9又は請求項10に記載の重合性組成物。
- 前記着色剤は、油溶性染料を含む請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の重合性組成物。
- 前記油溶性染料は、分子内に、アミノ基、アゾ基及び含窒素複素環基から選ばれる少なくとも1つを有する含窒素油溶性染料である請求項12に記載の重合性組成物。
- 重合性組成物の全量に対する前記重合性化合物の含有量が90質量%以上100質量%未満である請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の重合性組成物。
- さらに、熱重合開始剤を含有する請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の重合性組成物。
- 請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の重合性組成物の硬化物であるコンタクトレンズ。
- 波長400nm~440nmの範囲における光透過率が80%以下である請求項16に記載のコンタクトレンズ。
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