以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、互いに整合していなかったり、記載が適宜省略されていたりする。
1.システムの概略説明:
図1は、本実施形態にかかるシステム1の構成を簡易的に示している。システム1は、記録制御装置10およびプリンター20を含んでいる。システム1を、記録システム、画像処理システムあるいは印刷システム等と呼んでもよい。
記録制御装置10は、例えば、パーソナルコンピューター、スマートフォン、タブレット型端末、或いはそれらと同程度の処理能力を有する情報処理装置によって実現される。記録制御装置10は、制御部11、表示部13、操作受付部14、通信インターフェイス15等を備える。インターフェイスをIFと略して表記する。制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存されたプログラムに従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行する。制御部11は、例えば、記録制御プログラム12に従った処理を実行することにより、記録制御プログラム12と協働して、TP記録制御部12aや、補正値算出部12bや、補正記録制御部12c等の複数の機能を実現する。テストパターンを、TPと略して表記する。なお、プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成としてもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成としてもよい。
表示部13は、視覚的情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路とを含む構成であってもよい。操作受付部14は、ユーザーによる操作を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。むろん、タッチパネルは、表示部13の一機能として実現されるとしてもよい。表示部13および操作受付部14を含めて、記録制御装置10の操作パネルと呼ぶことができる。
表示部13や操作受付部14は、記録制御装置10の構成の一部であってもよいが、記録制御装置10に対して外付けされた周辺機器であってもよい。通信IF15は、記録制御装置10が公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で外部と通信を実行するための一つまたは複数のIFの総称である。制御部11は、通信IF15を介してプリンター20と通信する。
記録制御装置10によって制御される記録装置としてのプリンター20は、インクのドットを吐出して記録を行うインクジェットプリンターである。ドットを、液滴とも呼ぶ。インクジェットプリンターについての詳しい説明は省くが、プリンター20は、概略、搬送機構21や、記録ヘッド22等を備える。搬送機構21は、記録媒体を所定の搬送方向に沿って搬送する。記録ヘッド22は、図2に例示するように、ドットを吐出可能なノズル23を複数備え、搬送機構21が搬送する記録媒体30に対して各ノズル23からドットを吐出する。プリンター20は、ノズル23が備える不図示の駆動素子への駆動信号の印加を後述のドットデータに従って制御することで、ノズル23からドットを吐出させたり吐出させなかったりする。プリンター20は、例えば、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色インクや、これら各色以外のインクや液体を吐出して印刷を行う。本実施形態では、プリンター20は、CMYKインクを吐出する機種であるとして説明をする。
図2は、記録ヘッド22と記録媒体30との関係性を簡易的に示している。記録ヘッド22を、印刷ヘッド、印字ヘッド、液体吐出ヘッド等と呼んでもよい。記録媒体30は、代表的には紙であるが、液体の吐出による記録が可能な素材であれば紙以外の素材であってもよい。記録ヘッド22は、所定の方向D1に沿って往復移動可能なキャリッジ24に搭載されており、キャリッジ24とともに移動する。方向D1を、主走査方向D1とも呼ぶ。搬送機構21は、記録媒体30を方向D1と交差する方向D2に搬送する。方向D2は搬送方向D2である。ここでいう交差とは、基本的には直交であるが、方向D1,D2は、例えば製品としてのプリンター20における種々の誤差により、厳密には直交していないこともある。方向D2を副走査方向D2とも呼ぶ。
符号25は、記録ヘッド22におけるノズル23が開口するノズル面25を示している。図2では、ノズル面25におけるノズル23の配列の一例を示している。記録ヘッド22は、プリンター20が搭載したインクカートリッジやインクタンク等と呼ばれる不図示のインク保持手段からCMYK各色のインクの供給を受けてノズル23から吐出する構成において、インク色毎のノズル列26を備える。ノズル列26は、搬送方向D2におけるノズル23同士の間隔であるノズルピッチが一定とされた複数のノズル23により構成される。記録ヘッド22は、例えば、CMYKインクに対応して4つのノズル列26を備える。言うまでもなく、1色のインクに対応するノズル列26を構成する複数のノズル23の配列の態様は、図2のように1つの直線状である必要は無く、例えば、複数列に分かれていてもよい。
図2の例によれば、プリンター20は、搬送機構21による記録媒体30の所定搬送量の搬送と、キャリッジ24の移動に伴う記録ヘッド22によるインク吐出とを交互に繰り返すことで、記録媒体30への記録を実現する。主走査方向D1に沿ったキャリッジ24の往路移動または復路移動に伴う記録ヘッド22によるインク吐出を、走査やパスとも呼ぶ。図2の例によれば、プリンター20は、搬送方向D2に交差する主走査方向D1へ往復移動するキャリッジ24に搭載した記録ヘッド22が記録を行うシリアルプリンターである。
記録制御装置10は、さらに、測色装置40と通信可能に接続する。測色装置40とは、記録媒体30を測色するための機器の総称である。測色装置40は、例えば、専用の測色器であったり、対象を光学的に読み取って画像データを生成するスキャナーであったりする。測色装置40は、記録制御装置10の一部であってもよい。
記録制御装置10とプリンター20とは、図示しないネットワークを通じて接続するとしてもよい。プリンター20は、印刷機能に加え、スキャナーとしての機能やファクシミリ通信機能等の複数の機能を兼ね備えた複合機であってもよい。記録制御装置10は、独立した一つの情報処理装置によって実現されるだけでなく、ネットワークを介して互いに通信可能に接続した複数の情報処理装置によって実現されてもよい。
あるいは、記録制御装置10およびプリンター20は、それらが一体の装置であってもよい。つまり、記録制御装置10は、記録装置としてのプリンター20に含まれる構成の一部であり、以下に説明する記録制御装置10が実行する処理は、プリンター20が実行する処理と解してもよい。
2.補正値取得処理:
図3は、制御部11が記録制御プログラム12に従って実現する補正値取得処理を、フローチャートにより示している。補正値とは、プリンター20のノズル23毎の吐出特性のばらつきに起因するラスターラインの濃度ムラを抑制するための情報である。
ステップS100では、TP記録制御部12aは、プリンター20に、濃度が異なる複数の濃度領域を含んだTPを記録させる。TPを表現する画像データであるTPデータが所定のメモリー等に予め用意されている。TPデータは、各画素がCMYK毎のインク量を示す階調値(例えば、0~255の256階調)を有するビットマップデータである。TP記録制御部12aは、TPデータにハーフトーン処理を施す。ハーフトーン処理の具体的手法は特に問わず、ディザ法や誤差拡散法等を採用可能である。ハーフトーン処理により、画素毎にCMYKの各インクのドットの吐出(ドットオン)又は非吐出(ドットオフ)を規定したドットデータが生成される。
TP記録制御部12aは、生成したドットデータを、予め定められた記録方法に従って、プリンター20に転送すべき順に並べ替える。当該並べ替えの処理を、ラスタライズ処理とも呼ぶ。記録方法とは、後に図5を参照して説明するが、プリンター20が搬送機構21および記録ヘッド22の動き方に関して採用する記録方法である。ラスタライズ処理により、ドットデータが規定するインクのドットは、その画素位置およびインク色に応じて、いずれのノズル23によって、どのタイミングで吐出されるかが確定される。TP記録制御部12aは、ラスタライズ処理後のドットデータを、プリンター20へ送信する。これにより、プリンター20が、記録制御装置10から送信されたドットデータに基づくTPの記録媒体30への記録を実行する。
図4は、ステップS100において記録媒体30に記録されるTP50を例示している。TP50においては、複数の長尺状の濃度領域A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9,A10が、各濃度領域の短手方向に並んでいる。TP50に含まれる濃度領域A1~A10は、互いに濃度が異なっており、かつ同じ1色のインクで記録される。図4に示すTP50は、濃度領域A1~A10がいずれもKインクにより記録されるものとする。図4では、理解を容易とするために、濃度領域A1~A10それぞれの濃度を括弧書きで例示している。最も低濃度の濃度領域A1は濃度10%であり、濃度領域A1よりも高濃度である他の濃度領域A2~A10は、10%間隔で濃度が高くなっている。
濃度領域の濃度とは、領域内におけるドットオンの画素の比率、あるいは領域に対するインクによる被覆率を意味している。TP50を表現するTPデータにおいて、各濃度領域A1~A10は、それぞれの濃度に対応する階調値を有する画素の集合である。濃度範囲0%~100%は、階調範囲0~255に正規化することができる。従って、TP50を表現するTPデータにおいて濃度領域A1は、例えば、濃度10%に対応するKの階調値「26」を有する画素、つまり(C,M,Y,K)=(0,0,0,26)の画素が集合して形成されている。また、TP50を表現するTPデータにおいて濃度領域A10は、例えば、濃度100%に対応するKの階調値「255」を有する画素、つまり(C,M,Y,K)=(0,0,0,255)の画素が集合して形成されている。
TP記録制御部12aは、記録ヘッド22のKインクに対応するノズル列26の各ノズル23が濃度領域A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9,A10を記録する向きで、TP50をプリンター20に記録させる。プリンター20が図2で説明したようなシリアルプリンターであれば、TP記録制御部12aは、各濃度領域の短手方向が主走査方向D1に対応し、各濃度領域の長手方向が搬送方向D2に対応する向きで、TP50を記録媒体30に記録させる。
図4において、破線で示す領域は、ラスターラインRLを例示している。ラスターラインRLは画像の一部であって画素が主走査方向D1に対応して並ぶ領域である。ステップS100では、TP記録制御部12aは、搬送方向D2において異なるノズル23の位置毎に1つのラスターラインRLの記録をさせることで、ラスターラインRLの束であるTP50等の画像を記録させる。
図5は、制御部11がプリンター20に実行させる記録方法を説明するための図である。図5では、CMYKのうちいずれか1色のインクに対応するノズル列26と、制御部11がプリンター20に印刷させる画像IMの一部との対応関係を例示している。図5に示すノズル列26は、Kインクを吐出するノズル23からなるノズル列26である。画像IMは、例えば、TP50であったり、後述する入力画像であったりする。画像IMを構成する各矩形が、画像IMを構成する各画素である。図4にも同様に示したが、画素が主走査方向D1に対応して並ぶ1つの領域が、画像IMを構成する1つのラスターラインRLである。
図5では、一例として、1色のインクに対応するノズル列26は18個のノズル23で構成されている。図5では説明の便宜上、ノズル列26を構成するノズル23に対して、搬送方向D2の下流側から上流側に向けて順に、ノズル番号♯1,#2,#3…#18を付記している。図5では、記録ヘッド22のパスの度にノズル列26と画像IMとの搬送方向D2における相対的な位置関係が変化する様子を示している。むろん、ノズル列26が搬送方向D2の上流側へ移動するのではなく、記録媒体30が搬送方向D2の下流側へ搬送されることで、図5に示すような各ノズル23と画像IMとの位置関係が、記録媒体30上で実現される。図5の例によれば、制御部11は、プリンター20に、記録ヘッド22のパスと次のパスとの間に、ノズルピッチ×14の距離に相当する搬送量で、記録媒体30を搬送させる。
このような搬送によれば、1回目のパスでノズル番号♯15のノズル23により記録されるラスターラインRLは、2回目のパスでノズル番号♯1のノズル23により記録される。同様に、1回目のパスでノズル番号♯16のノズル23により記録されるラスターラインRLは、2回目のパスでノズル番号♯2のノズル23により記録され、1回目のパスでノズル番号♯17のノズル23により記録されるラスターラインRLは、2回目のパスでノズル番号♯3のノズル23により記録され、1回目のパスでノズル番号♯18のノズル23により記録されるラスターラインRLは、2回目のパスでノズル番号♯4のノズル23により記録される。同様に、2回目のパスでノズル番号♯15のノズル23により記録されるラスターラインRLは、3回目のパスでノズル番号♯1のノズル23により記録される。図5では、理解容易とするために、計2回のパス、つまり2つのノズル23により記録される各ラスターラインRLについてハッチングを施しており、1回のパス、つまり1つのノズル23により記録される各ラスターラインRLについてはハッチングを施していない。
ハッチングを施した各ラスターラインRLは、「第1ノズル」および「第2ノズル」の使用により記録される「特定ラスターライン」の具体例である。ハッチングを施していない各ラスターラインRLについては、特定ラスターラインと区別するために「通常ラスターライン」とも呼ぶ。また、特定ラスターラインについては、符号“SRL”を用いて説明する。制御部11は、ラスタライズ処理では、図5に例示するようなノズル23と画素との対応関係が実現されるように、ドットデータである画像IMを構成する各画素をノズル23に割り当てる。この場合、通常ラスターラインを構成する画素については、通常ラスターラインが対応する1つのノズル23に、通常ラスターラインを構成する全ての画素を割り当てればよい。一方、特定ラスターラインSRLについては、特定ラスターラインSRLが対応する複数のノズル23に、特定ラスターラインSRLを構成する画素を振り分ける必要がある。
図6は、特定ラスターラインSRLの記録に使用される先行ノズルの使用比率と後行ノズルの使用比率との関係性を規定した使用比率テーブル16を例示している。ノズルの使用比率とは、あるノズル23を使用して記録されるラスターラインRLを構成する全画素のうち、当該ノズル23にデータとして割り当てられる画素の比率を意味する。通常ラスターラインを記録する際の1つのノズル23の使用比率は100%である。なお、ラスターラインRLを構成する画素は、それぞれドットオンが規定されていたりドットオフが規定されていたりする。そのため、ラスターラインRLを記録する際の、あるノズル23の使用比率は、当該ノズル23が実際に吐出するドット数がラスターラインRLを構成する全画素数に占める比率と一致しないことはある。ただし、ノズル23の使用比率に比例して、そのノズル23が吐出するドット数は増加すると言える。
「先行ノズル」とは、特定ラスターラインSRLの記録に使用される2つのノズル23のうち、先に使用されるノズル23を意味し、「後行ノズル」とは、特定ラスターラインSRLの記録に使用される2つのノズル23のうち、後に使用されるノズル23を意味する。図5の例によれば、ある1つの特定ラスターラインSRLを共に記録する関係にあるノズル番号♯15のノズル23およびノズル番号♯1のノズル23に注目すると、ノズル番号♯15のノズル23が先行ノズル、ノズル番号♯1のノズル23が後行ノズルにそれぞれ該当する。
使用比率テーブル16の縦軸は、搬送方向D2におけるPOLラスター位置(#POL1~♯POLn)とされている。“POL”は、部分的オーバーラップの略であり、1つのラスターラインRLを複数のノズル23を使用して記録するいわゆるオーバーラップ印刷を意図した表現である。つまり、特定ラスターラインSRLは、画像の一部であって、オーバーラップ印刷されるラスターラインRLであるから、搬送方向D2における各特定ラスターラインSRLの位置を「POLラスター位置」と表現している。より正確には、POLラスター位置は、画像内で特定ラスターラインSRLが搬送方向D2に連続して並ぶ「POL領域」内における特定ラスターラインSRLの位置である。図5を参照すると、ハッチングを施した特定ラスターラインSRLが搬送方向D2に沿って4ライン連続する領域のそれぞれが、POL領域である。位置#POL1は、POL領域内で搬送方向D2の最も下流側の位置を意味し、位置#POLnは、POL領域内で搬送方向D2の最も上流側の位置を意味する。
使用比率テーブル16の横軸は、先行ノズルの使用比率および後行ノズルの使用比率を示している。図6では、先行ノズルの使用比率を白色の面積部分により示し、後行ノズルの使用比率をグレー色の面積部分により示している。使用比率テーブル16においては、いずれのPOLラスター位置に対しても、先行ノズルの使用比率と後行ノズルの使用比率との和は100%である。また、使用比率テーブル16においては、先行ノズルの使用比率は、位置#POL1で最も高く、位置#POLnで最も低い。言い換えると、使用比率テーブル16において、後行ノズルの使用比率は、位置#POL1で最も低く、位置#POLnで最も高い。つまり、POLラスター位置が、位置#POL1から位置#POLn側へ近づくほど、先行ノズルの使用比率が低下する(=後行ノズルの使用比率が上昇する)。図6では、先行ノズルの使用比率と後行ノズルの使用比率との大小関係は、POLラスター位置に応じて線形的に変化しているが、例えば、階段状に変化するとしてもよい。
制御部11は、ラスタライズ処理では、画像IMに含まれるラスターラインRLのうち特定ラスターラインSRLについては、使用比率テーブル16を参照することにより、POLラスター位置に応じて先行ノズルの使用比率および後行ノズルの使用比率を取得する。そして、特定ラスターラインSRLを構成する画素のうち、先行ノズルの使用比率に相当する数の画素を先行ノズルに割り当て、後行ノズルの使用比率に相当する残りの画素を後行ノズルに割り当てる。
例えば、先行ノズルおよび後行ノズルの1つの組み合わせであるノズル番号♯16のノズル23およびノズル番号♯2のノズル23により記録される1つの特定ラスターラインSRLを、処理対象の特定ラスターラインSRLとして想定する。制御部11は、使用比率テーブル16を参照したとき、処理対象の特定ラスターラインSRLのPOLラスター位置に応じて、先行ノズルの使用比率=60%、後行ノズルの使用比率=40%を取得したとする。この場合、制御部11は、処理対象の特定ラスターラインSRLを構成する全画素のうち60%の画素を、ノズル番号♯16のノズル23に割り当て、処理対象の特定ラスターラインSRLの全画素のうちの残りの40%の画素を、ノズル番号♯2のノズル23に割り当てる。
制御部11は、全ての特定ラスターラインSRLを処理対象とし、このような割り当てを実行する。また図5に示すように、画像IM内にはPOL領域が搬送方向D2に沿って所定間隔で繰り返し存在するが、制御部11は、POL領域のそれぞれに対して使用比率テーブル16を同様に適用し、特定ラスターラインSRL毎に先行ノズルの使用比率および後行ノズルの使用比率を取得する。紙面の都合上、図5では、1つのインク色に対応するノズル列26を構成するノズル数は18個としているが、むろん実製品としての記録ヘッド22においては、ノズル列26を構成するノズル数は、より多い。また、1つのPOL領域を構成する特定ラスターラインSRLの数、つまり1回のパスで記録される画像と次のパスで記録される画像との間で位置が重複するラスターラインの数も、図5に示すような4ラインより多くてもよい。
本実施形態において、「先行ノズル」および「後行ノズル」は、いずれか一方が特定ラスターラインSRLの記録に使用される「第1ノズル」に該当し、他方が、特定ラスターラインSRLの記録に使用される、第1ノズルよりも使用比率が低い「第2ノズル」に該当する。先行ノズルと後行ノズルとのどちらが第1ノズルに該当するのかは、先行ノズルと後行ノズルとで記録する特定ラスターラインSRLのPOLラスター位置によって決まる。図6の使用比率テーブル16を参照すると、位置#POL1と位置#POLnとの中間位置で、先行ノズルの使用比率と後行ノズルの使用比率とが、ほぼ50%対50%になる。従って、このような中間位置を境として位置#POL1側のPOLラスター位置の特定ラスターラインSRLを記録する先行ノズルおよび後行ノズルは、先行ノズルが第1ノズルに、後行ノズルが第2ノズルにそれぞれ該当する。逆に、前記中間位置を境として位置#POLn側のPOLラスター位置の特定ラスターラインSRLを記録する先行ノズルおよび後行ノズルは、先行ノズルが第2ノズルに、後行ノズルが第1ノズルにそれぞれ該当する。
図5の例を参照すると、特定ラスターラインSRLを記録するノズル番号♯15のノズル23およびノズル番号♯1のノズル23の組み合わせに関しては、ノズル番号♯15のノズル23が第1ノズル、ノズル番号♯1のノズル23が第2ノズルに該当する。同様に、特定ラスターラインSRLを記録するノズル番号♯16のノズル23およびノズル番号♯2のノズル23の組み合わせに関しては、ノズル番号♯16のノズル23が第1ノズル、ノズル番号♯2のノズル23が第2ノズルに該当する。一方、特定ラスターラインSRLを記録するノズル番号♯17のノズル23およびノズル番号♯3のノズル23の組み合わせに関しては、ノズル番号♯17のノズル23が第2ノズル、ノズル番号♯3のノズル23が第1ノズルに該当する。特定ラスターラインSRLを記録するノズル番号♯18のノズル23およびノズル番号♯4のノズル23の組み合わせに関しては、ノズル番号♯18のノズル23が第2ノズル、ノズル番号♯4のノズル23が第1ノズルに該当する。
図3を参照して説明を続ける。
ステップS110では、補正値算出部12bが、ステップS100で記録されたTPの読取値を取得する。この場合、記録媒体30に記録されたTPを測色装置40が測色し、測色結果である読取値を、補正値算出部12bが測色装置40から取得する。補正値算出部12bが取得する読取値が採用する表色系は、特に限定されない。補正値算出部12bは、例えば、国際照明委員会(CIE)で規定されたCIE L*a*b*色空間のL*,a*,b*成分で表される色彩値を読取値として取得したり、スキャナーである測色装置40からRGB(レッド、グリーン、ブルー)成分で表される画像データを読取値として取得したりする。
ステップS120では、補正値算出部12bが、ステップS110で取得された読取値に基づいて、ラスターラインRL毎のインク量を補正するための補正値を算出する。
図7は、ステップS120における補正値算出の処理を説明するための図である。図7では、ステップS110で取得された読取値に基づくグラフを実線で示している。図7では、横軸にTP50の濃度領域A1~A10の濃度を示し、縦軸に読取値としての明度を示している。読取値としての明度は、測色装置40から入力された明度L*である。あるいは、読取値としての明度は、測色装置40から入力された情報に基づいて制御部11が算出した値、例えばRGB成分を重み付け加算して得た値であってもよい。
図7のグラフにおいて、横軸方向に等間隔な10個の黒丸がTP50の濃度領域A1~A10それぞれの明度を示している。より詳細には、これら黒丸で示す濃度領域毎の各明度は、TP50に含まれる1つのラスターラインRLにおける濃度領域毎の、明度の平均値である。各黒丸を繋ぐ実線は、補正値算出部12bが、各黒丸が示す明度に基づく補間演算により生成した関数F1である。むろん、補間演算は、線形補間であってもよい。
図7において、1点鎖線で示す関数TGは、濃度ムラの補正基準となる関数である。関数TGは、例えば、ターゲットラスターラインにおける濃度領域A1~A10毎の各明度を、補間演算することで生成された曲線である。ターゲットラスターラインも、TP50に含まれるラスターラインRLの1つである。ターゲットラスターラインの決定方法は様々である。例えば、通常ラスターラインを記録するノズル23のうちの1つのノズル23が予めターゲットノズルとして定められており、補正値算出部12bは、このターゲットノズルにより記録されたラスターラインRLを、ターゲットラスターラインとする。あるいは、補正値算出部12bは、例えば、TP50に含まれるラスターラインRLのうち、濃度領域A1~A10のうちの特定の濃度領域についての読取値が、予め規定された基準の明度に最も近いラスターラインRLを、ターゲットラスターラインに決定する。あるいは、TP50の各濃度領域A1~A10の読取値として理想的な各値を規定した関数TGが予め、制御部11の所定のメモリーに記憶されているとしてもよい。
図7の例によれば、濃度70%に対応して関数F1が示す明度は明度v1であり、同じ濃度70%に対応して関数TGが示す明度は明度v2である。この場合、補正値算出部12bは、関数F1で明度v2を得るための濃度を、濃度70%にとっての補正後の濃度とする。濃度70%に相当する256階調範囲内の階調値が「k1」、濃度70%にとっての前記補正後の濃度に相当する256階調範囲内の階調値が「k1´」であるとすると、補正値算出部12bは、「k1´-k1」を、階調値k1に対する補正値とする。例えば、k1=170、k1´=165であれば、「-5」が、階調値k1に対する補正値となる。仮に、k1´>k1であれば、階調値k1に対する補正値はプラスの値となる。補正値算出部12bは、このような関数F1と関数TGとを用いて、階調値k1を含む全階調値0~255について補正値を算出する。
補正値算出部12bは、ステップS110で取得された読取値に基づいて、TPに含まれるラスターラインRLを順次対象とし、TPに含まれる各ラスターラインRLについて、256階調範囲の全階調値に対する補正値を算出する。TPに含まれる各ラスターラインRLには、当然、通常ラスターラインおよび特定ラスターラインSRLが含まれる。
ただし、TPに含まれる各ラスターラインRLのうちのいずれかをターゲットラスターラインとした場合は、ターゲットラスターラインに関しては、補正値は実質的に無いため、補正値=0とする。
ステップS130では、補正値算出部12bは、上述のようにしてステップS120で算出した補正値を、記録制御装置10における所定のメモリーに記憶させる。
言うまでもなく、制御部11は、K以外のCMYの各インク色に関しても、補正値を上述のように算出し記憶する。つまり、制御部11は、ステップS100では、KインクによるTPの記録だけではなく、CMYインクそれぞれによるTPの記録もプリンター20に実行させ、ステップS110以下を同じように実行する。
図8は、ステップS130の結果、記録制御装置10に記憶された補正値テーブル17を例示している。補正値テーブル17には、ステップS120で算出された補正値、つまり、CMYKのインク色毎かつラスター番号1~N毎の補正値が格納されている。図8における「補正値0~255」とは、0~255の各階調値に対する各補正値の存在をまとめた表現である。ラスター番号とは、上述の記録方法に従って記録される画像のラスターラインRL毎の番号であり、制御部11は、ラスター番号を用いて、ラスターラインRL毎の補正値を管理する。ラスター番号は、例えば、1ページ分の画像を構成する各ラスターラインRLに対して、搬送方向D2の下流側から上流側に向かって順に付与される。
3.記録制御処理:
第1実施形態:
図9は、任意に選択された入力画像の記録をプリンター20に実行させる記録制御処理を、フローチャートにより示している。記録制御処理も、制御部11が記録制御プログラム12に従って実現する。記録制御処理は、上述のように算出された補正値を用いた補正処理を伴う。記録制御処理は、記録制御方法による制御工程を含んでいる。また、記録制御処理は、特徴の1つとして、特定ラスターラインSRLに対する割当補正処理(ステップS240)を含む。以下に説明する実施形態を「第1実施形態」と呼ぶ。
ユーザーは、例えば、表示部13に表示されたユーザーインターフェイス画面を視認しつつ操作受付部14を操作することにより、入力画像を表現した画像データを任意に選択する。ユーザーインターフェイスを、UIと略す。ステップS200では、補正記録制御部12cは、ユーザーによって任意に選択された画像データを所定の入力元から取得する。
ステップS200で取得される画像データは、TPデータと同様に複数の画素を有するビットマップデータであり、例えば、画素毎にRGBの階調値(例えば、0~255の256階調)を有する。また、補正記録制御部12cは、取得した画像データがこのようなRGB表色系に対応していない場合、取得した画像データを当該表色系のデータへ変換する。さらに、補正記録制御部12cは、画像データに対して、プリンター20が採用する印刷解像度に合わせるための解像度変換処理等を適宜実施する。
ステップS210では、補正記録制御部12cは、ステップS200後の画像データを対象として色変換処理を実行する。つまり、画像データの表色系を、プリンター20が記録に用いるインクの表色系に変換する。上述したように画像データが各画素の色をRGBで階調表現する場合、画素毎にRGBの階調値をCMYK毎の階調値に変換する。色変換処理は、RGBからCMYKへの変換関係を規定した任意の色変換ルックアップテーブルを参照することにより実行可能である。
ステップS220では、補正記録制御部12cは、ステップS210で得られた色変換後の画像データ、つまり各画素がCMYK毎のインク量を示す階調値を有する画像データを、補正値テーブル17に格納された補正値を用いて補正する。
図10は、ステップS220における補正処理の詳細をフローチャートにより示している。
ステップS221では、補正記録制御部12cは、画像データを構成する複数の画素から補正対象の画素を1つ選択する。
ステップS222では、補正記録制御部12cは、ステップS221で選択した画素が有するCMYK毎の階調値から、補正対象のインク色の階調値を1つ選択する。
ステップS223では、補正記録制御部12cは、ステップS221で選択した画素が属するラスターラインRLのラスター番号に対応する補正値であって、ステップS222で選択したインク色に対応する補正値を、補正値テーブル17から読み出し、読み出した補正値により、ステップS222で選択したインク色の階調値を補正する。例えば、ステップS221で、ラスター番号=1のラスターラインRLに属する画素が選択され、ステップS222で、この画素が有するKインクの階調値、例えば階調値=50が選択されたと仮定する。この場合、ステップS223では、補正記録制御部12cは、ラスター番号=1およびKインクに対応する、階調値=50の補正のための補正値を補正値テーブル17から読み出す。
ステップS224では、補正記録制御部12cは、ステップS221で選択した画素が有する全インク色CMYKの階調値についてステップS223の補正を終えたか否かを判定し、補正を終えていないインク色がある場合には、ステップS222へ戻り、未補正のインク色にかかる階調値を新たに選択する。一方、全インク色CMYKの階調値についてステップS223の補正を終えた場合には、ステップS225へ進む。
ステップS225では、補正記録制御部12cは、画像データを構成する全画素について補正を終えたか否かを判定し、補正を終えていない画素がある場合には、ステップS221へ戻り、未補正の画素を新たに選択する。一方、全画素の補正を終えた場合には、ステップS220の補正処理を終える。
ステップS230では、補正記録制御部12cは、ステップS220による補正処理後の画像データに、ハーフトーン処理を施し、ドットデータを生成する。
ステップS240では、補正記録制御部12cは、ステップS230で生成したドットデータを構成するラスターラインRLのうち、特定ラスターラインSRLに対して、割当補正処理を実行する。ステップS230で生成したドットデータを構成するラスターラインRLのうち、通常ラスターラインは、割当補正処理の対象としない。
図11は、第1実施形態における割当補正処理を説明するための図である。
図11には、POLマスク18を例示している。POLマスク18は、特定ラスターラインSRLが搬送方向D2に連続するPOL領域に重畳して適用するためのマスクである。POLマスク18においては、適用対象の画像を構成する画素を先行ノズルと後行ノズルとのいずれに割り当てるかを規定する値がマトリクス状に格納されている。図11の例では、値「1」は割当先が先行ノズルであることを意味し、値「0」は割当先が後行ノズルであることを意味している。POLマスク18の横方向を向く各行が、POL領域を構成する各特定ラスターラインSRLに適用される。
つまり、POLマスク18は、図6に例示した使用比率テーブル16に基づく先行ノズルおよび後行ノズルへの画素の割り当てを具体的に実現するためのマスクである。上述の補正値取得処理のステップS100では、TPを表現するドットデータのうちPOL領域に対して、このようなPOLマスク18が適用されて特定ラスターラインSRLを構成する各画素が先行ノズルや後行ノズルへ割り当てられ、結果としてTPが記録媒体30へ記録されている。
図11では理解容易のために、POLマスク18の各行に対して、POLラスター位置(♯POL1~♯POLn(ただしn=4))と、先行ノズルの使用比率、つまり行内での値「1」の比率と、を併記している。図5に示したような、搬送方向D2に連続する4ラインの特定ラスターラインSRLによって1つのPOL領域を構成する例に合わせ、図11ではPOLマスク18の行数を4としている。このような図11では、POL領域の位置#POL1に対応する特定ラスターラインSRLに適用する先行ノズルの使用比率を80%と規定したPOLマスク18を示している。またPOLマスク18は、位置#POL2に対応する特定ラスターラインSRLに適用する先行ノズルの使用比率を60%、位置#POL3に対応する特定ラスターラインSRLに適用する先行ノズルの使用比率を40%、位置#POL4に対応する特定ラスターラインSRLに適用する先行ノズルの使用比率を20%、と規定している。
POLマスク18の行毎の後行ノズルの使用比率、つまり行内での値「0」の比率は、100%から先行ノズルの使用比率を差し引いた値である。図11の例によれば、位置#POL1に対応する特定ラスターラインSRLの記録に使用される先行ノズルおよび位置#POL2に対応する特定ラスターラインSRLの記録に使用される先行ノズルは、それぞれが第1ノズルに該当する。一方、位置#POL3に対応する特定ラスターラインSRLの記録に使用される先行ノズルおよび位置#POL4に対応する特定ラスターラインSRLの記録に使用される先行ノズルは、それぞれが第2ノズルに該当する。
補正記録制御部12cは、POLマスク18を、POLマスク18を適用するPOL領域の特定ラスターラインSRL毎の補正値に基づいて補正する。ここでは、ステップS230で生成されたCMYK毎のドットデータのうち、Kインクのドットオン、オフを規定したドットデータ内の、連続する4つのラスター番号i,i+1,i+2,i+3の各特定ラスターラインSRLにより構成されたPOL領域を、ステップS240の処理対象として想定する。ただし、i+3≦Nである。図11の例では、ラスター番号i,i+1,i+2,i+3に対応する各補正値は、「+5%」、「-10%」、「-5%」、「+3%」としている。ラスター番号に対応する補正値とは、補正値テーブル17に規定された補正値である。
なお、補正値テーブル17には、インク色毎かつラスター番号毎に「補正値0~255」が規定されている。そのため、補正記録制御部12cは、POLマスク18の補正に際しては、補正値テーブル17に規定された「補正値0~255」に基づいて、インク色およびラスター番号に対応する代表値としての補正値を決定し、この決定した補正値を用いればよい。補正記録制御部12cは、例えば、Kインクかつラスター番号iに対応する「補正値0~255」を補正値テーブル17から読み出し、この読み出した「補正値0~255」の平均値を、Kインクかつラスター番号iに対応する補正値に決定する。あるいは、補正記録制御部12cは、Kインクかつラスター番号iに対応する「補正値0~255」のうち、ステップS220の補正処理でラスター番号iのラスターラインRLの各画素のKインクの階調値へ実際に適用した補正値を抽出する。そして、このように抽出した補正値の平均値を、Kインクかつラスター番号iに対応する補正値に決定してもよい。
このようにして、補正記録制御部12cは、図11に例示したようなラスター番号i,i+1,i+2,i+3の各補正値を取得する。なお、補正値は、補正値取得処理の説明によれば、0~255の階調範囲の階調値によるインク量を補正するための値であるが、図11では説明の便宜上、パーセント表記に書き換えて示している。例えば、ラスター番号iに対応する補正値「+5%」は、ステップS220の補正処理において、ラスター番号iの特定ラスターラインSRLの各画素のKの階調値が、平均的におよそ階調値255の5%に相当する階調値分、増加したことを意味する。また、ラスター番号i+1に対応する補正値「-10%」は、ステップS220の補正処理において、ラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLの各画素のKの階調値が、平均的におよそ階調値255の10%に相当する階調値分、減少したことを意味する。
上述の例によれば、ラスター番号iは、POL領域における位置♯POL1に該当する。従って、補正記録制御部12cは、ラスター番号iの補正値により、POLマスク18の位置♯POL1に対応するノズルの使用比率を補正する。同様に、補正記録制御部12cは、ラスター番号i+1の補正値により、POLマスク18の位置♯POL2に対応するノズルの使用比率を補正し、ラスター番号i+2の補正値により、POLマスク18の位置♯POL3に対応するノズルの使用比率を補正し、ラスター番号i+3の補正値により、POLマスク18の位置♯POL4に対応するノズルの使用比率を補正する。図11では、補正後のPOLマスク18を、補正POLマスク19として示している。
このとき、補正記録制御部12cは、特定ラスターラインSRLであってインク量を増加させる補正対象の「第1ラスターライン」に対して「第1ノズル」が吐出するインク量を補正値に基づいて増加させるような「第1補正」を実行する。また、補正記録制御部12cは、特定ラスターラインSRLであってインク量を減少させる補正対象の「第2ラスターライン」に対して「第2ノズル」が吐出するインク量を補正値に基づいて減少させるような「第2補正」を実行する。
具体的には、ラスター番号iの補正値「+5%」は、インク量を増加させる補正値である。そのため、補正記録制御部12cは、POLマスク18の位置♯POL1に対応する先行ノズル(第1ノズル)の使用比率「80%」に5%を加算して「85%」とする。補正POLマスク19においては、理解容易のために、POLマスク18から値を変更した箇所にグレー色を付している。つまり、補正記録制御部12cは、POLマスク18の位置♯POL1の行内の値「0」の少なくとも一部を値「1」に変更することで、先行ノズル(第1ノズル)の使用比率を、80%から85%へ増加させる。このような位置♯POL1の行に対する変更は、第1補正の具体例に該当する。
ラスター番号i+1の補正値「-10%」は、インク量を減少させる補正値である。そのため、補正記録制御部12cは、POLマスク18の位置♯POL2に対応する後行ノズル(第2ノズル)の使用比率「40%」に-10%を加算して「30%」とする。後行ノズルの使用比率を「30%」にすることは、先行ノズルの使用比率を「70%」にすることに等しい。補正記録制御部12cは、POLマスク18の位置♯POL2の行内の値「0」の少なくとも一部を値「1」に変更することで、後行ノズル(第2ノズル)の使用比率を、40%から30%へ減少させる。このような位置♯POL2の行に対する変更は、第2補正の具体例に該当する。
ラスター番号i+2の補正値「-5%」は、インク量を減少させる補正値である。そのため、補正記録制御部12cは、POLマスク18の位置♯POL3に対応する先行ノズル(第2ノズル)の使用比率「40%」に-5%を加算して「35%」とする。補正記録制御部12cは、POLマスク18の位置♯POL3の行内の値「1」の少なくとも一部を値「0」に変更することで、先行ノズル(第2ノズル)の使用比率を、40%から35%へ減少させる。このような位置♯POL3の行に対する変更は、第2補正の具体例に該当する。
ラスター番号i+3の補正値「+3%」は、インク量を増加させる補正値である。そのため、補正記録制御部12cは、POLマスク18の位置♯POL4に対応する後行ノズル(第1ノズル)の使用比率「80%」に3%を加算して「83%」とする。後行ノズルの使用比率を「83%」にすることは、先行ノズルの使用比率を「17%」にすることに等しい。補正記録制御部12cは、POLマスク18の位置♯POL4の行内の値「1」の少なくとも一部を値「0」に変更することで、後行ノズル(第1ノズル)の使用比率を、80%から83%へ増加させる。このような位置♯POL4の行に対する変更は、第1補正の具体例に該当する。
補正記録制御部12cは、上述したラスター番号i,i+1,i+2,i+3の各特定ラスターラインSRLにより構成されたPOL領域に対して、補正POLマスク19を重畳して適用する。これにより、補正記録制御部12cは、各特定ラスターラインSRLを構成する各画素を、補正POLマスク19に規定された値「1」、「0」に従って、先行ノズルまたは後行ノズルに割り当てる。補正記録制御部12cは、このようなステップS240における割当補正処理を、ステップS230で生成されたCMYK毎のドットデータのそれぞれに含まれる各POL領域に対して、繰り返し実行する。POLマスク18が1つのマスクであったとしても、補正POLマスク19は、処理対象のPOL領域毎に異なる内容となる。
ステップS250では、補正記録制御部12cは、ステップS230により生成したドットデータに基づく記録をプリンター20に実行させる出力処理を行う。つまり、補正記録制御部12cは、ドットデータに前記記録方法に従ってラスタライズ処理を施し、ラスタライズ処理後のドットデータを、プリンター20へ送信する。補正記録制御部12cは、ドットデータのうち特定ラスターラインSRLを構成する各画素については、当然、ステップS240による先行ノズル、後行ノズルへの割り当てに従ってプリンター20へ送信する。この結果、プリンター20が、記録制御装置10から送信されたドットデータに基づいて、前記入力画像の記録媒体30への記録を実行する。
第1実施形態による効果を説明する。
ステップS220の補正処理により、ラスター番号iの特定ラスターラインSRLに対して、インク量を示す階調値を増加させる補正がなされたとする。このステップS220の補正処理により、ラスター番号iの特定ラスターラインSRLを記録するために先行ノズルおよび後行ノズルのそれぞれが吐出するドット数の合計は増加する。インク量の増減は、記録ヘッド22により吐出されるドット数の増減とも捉えることができる。ラスター番号iの特定ラスターラインSRLは、インク量を増加させる補正がなされ、「第1ラスターライン」に該当する。そのため、ステップS240の割当補正処理によれば、ラスター番号iの特定ラスターラインSRLを記録する先行ノズルおよび後行ノズルのうち、使用比率が予め高く設定されている方のノズル23(第1ノズル)の使用比率が、ラスター番号iの補正値に基づいて更に高くなる。この結果、ラスター番号iの特定ラスターラインSRLに対するステップS220の補正処理に起因する増加分のインク量は、その全てあるいは大部分が、第1ノズルがラスター番号iの特定ラスターラインSRLを記録するときに吐出するインク量(ドット数)の増加分となる。
また、ステップS220の補正処理により、ラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLに対して、インク量を示す階調値を減少させる補正がなされたとする。このステップS220の補正処理により、ラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLを記録するために先行ノズルおよび後行ノズルのそれぞれが吐出するドット数の合計は減少する。ラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLは、インク量を減少させる補正がなされ、「第2ラスターライン」に該当する。そのため、ステップS240の割当補正処理によれば、ラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLを記録する先行ノズルおよび後行ノズルのうち、使用比率が予め低く設定されている方のノズル23(第2ノズル)の使用比率が、ラスター番号i+1の補正値に基づいて更に低下する。この結果、ラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLに対するステップS220の補正処理に起因する減少分のインク量は、その全てあるいは大部分が、第2ノズルがラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLを記録するときに吐出するインク量(ドット数)の減少分となる。
入力画像を構成するラスターラインRLのうち、通常ラスターラインは、1つのノズル23によって1回のパスで記録される。そのため、通常ラスターラインを記録するために記録媒体30へ吐出される各ドットは、記録媒体30への着弾時の時間差が少なく、結果、ドット間の凹凸が少ない状態で記録媒体30へ定着しやすい。一方、入力画像を構成するラスターラインRLのうち、特定ラスターラインSRLは、先行ノズルおよび後行ノズルによって計2回のパスで記録される。そのため、先行ノズルによって吐出されるドットの記録媒体30への着弾と、後行ノズルによって吐出されるドットの記録媒体30への着弾とには時間差が生じ、結果、特定ラスターラインSRLを記録するための各ドットは、ドット間の凹凸が大きい状態で記録媒体30へ定着しやすい。このような通常ラスターラインと、特定ラスターラインSRLとを記録結果において比較すると、ドット間の凹凸が少ない通常ラスターラインの方が光沢感が高い。そのため、従来の入力画像の記録結果においては、通常ラスターラインで構成された領域と、特定ラスターラインSRLで構成された領域つまりPOL領域とで、光沢感に差が生じ、これが光沢ムラとして視認されることがあった。
このような課題に対し、第1実施形態によれば、ラスターラインRL毎の濃度ムラを補正するための補正値によりラスターラインRL毎にインク量を補正する構成において、併せて、特定ラスターラインSRLを記録するために第1ノズルが吐出するインク量と第2ノズルが吐出するインク量との差を、より大きくする。つまり、特定ラスターラインSRLの記録のために吐出されるドット数を、先行ノズルと後行ノズルとのいずれか一方に、従来よりも偏らせる。これにより、特定ラスターラインSRLに関して記録媒体30へのドット着弾の時間差に起因するドット間の凹凸をできるだけ抑制し、上述したような光沢ムラを抑制することができる。
なお、図11を用いて説明した例において、仮に、ラスター番号iの補正値が「+10%」であり、POLマスク18の位置♯POL1に対応する先行ノズル(第1ノズル)の使用比率が「95%」である場合は、95%に10%を加算すると100%を超えてしまう。このような場合は、第1ノズルの使用比率を100%(第2ノズルの使用比率を0%)に補正し、ラスター番号iの特定ラスターラインSRLを記録するためのインクは、ステップS220の補正処理によるインク量の増加分も含めて、全て第1ノズルにより記録することになる。また、図11を用いて説明した例において、仮に、ラスター番号i+3の補正値が「-10%」であり、POLマスク18の位置♯POL4に対応する先行ノズル(第2ノズル)の使用比率が「5%」である場合は、5%に-10%を加算すると0%を下回ってしまう。このような場合は、第2ノズルの使用比率を0%(第1ノズルの使用比率を100%)に補正し、ラスター番号i+3の特定ラスターラインSRLを記録するためのインクは、ステップS220の補正処理によるインク量の減少が反映された後の全てのインク量が、第1ノズルにより記録されることになる。
4.第2実施形態:
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、これまでの説明と相違する点を主に説明する。
図12は、第2実施形態における特定ラスターラインSRLに対する割当補正処理(ステップS240)を説明するための図である。第2実施形態では、ステップS240は、ステップS230のハーフトーン処理に含まれる処理として説明する。第2実施形態では、第1実施形態で説明したようにPOLマスクを補正するのではなく、ドットデータを直接補正する。
補正記録制御部12cは、ハーフトーン処理により生成したドットデータから、各パスに割り当てるパス用ドットデータを生成する。パス用ドットデータは、ノズル列26が有するノズル数に対応したライン数のラスターラインRLで構成される。
図12に示すドットデータKD1は、例えば、記録ヘッド22の1回目のパスに対応してKインクのノズル列26へ割り当てるためのパス用ドットデータである。また、ドットデータKD2は、記録ヘッド22の2回目のパスに対応してKインクのノズル列26へ割り当てるためのパス用ドットデータである。ドットデータKD1,KD2はいずれも、画素毎にKインクのドットオンまたはドットオフを規定している。ドットデータKD1,KD2を構成する各矩形が、ドットデータKD1,KD2を構成する各画素である。図12では、画素が横方向に並ぶ行が、ラスターラインRLである。図12では、ドットデータKD1,KD2それぞれの一部分を示している。
図12によれば、ドットデータKD1は、連続する4つのラスター番号i,i+1,i+2,i+3の各特定ラスターラインSRLと、ラスター番号iよりも小さいラスター番号の複数の通常ラスターラインとにより構成されている。ラスター番号iよりも1つ小さいラスター番号i-1のラスターラインRLは、通常ラスターラインである。ドットデータKD2は、連続する4つのラスター番号i,i+1,i+2,i+3の各特定ラスターラインSRLと、ラスター番号i+3よりも大きいラスター番号の複数の通常ラスターラインとにより構成されている。ラスター番号i+3よりも1つ大きいラスター番号i+4のラスターラインRLは、通常ラスターラインである。ドットデータKD1に含まれるラスター番号i,i+1,i+2,i+3の各特定ラスターラインSRLと、ドットデータKD2に含まれるラスター番号i,i+1,i+2,i+3の各特定ラスターラインSRLとは、それぞれがパス用ドットデータとして生成された時点では、全く同じデータである。つまり、ドットデータKD1,KD2は、1つのPOL領域を共有している。ドットデータKD2の図示しない下端側には、記録ヘッド22の3回目のパスに対応してKインクのノズル列26へ割り当てるためのパス用ドットデータと共有するPOL領域が含まれている。
図12では、ドットデータKD1を構成する各特定ラスターラインSRLに対応させて、ラスター番号とともに先行ノズルの使用比率を付記している。また、ドットデータKD2を構成する各特定ラスターラインSRLに対応させて、ラスター番号とともに後行ノズルの使用比率を付記している。このような先行ノズルの使用比率および後行ノズルの使用比率は、POL領域内における特定ラスターラインSRLの位置、つまりPOLラスター位置に応じて使用比率テーブル16によって定められた値である。ドットデータKD1,KD2に関して示すように、ラスター番号が共通する関係にある先行ノズルの使用比率と後行ノズルの使用比率との和は、100%である。
補正記録制御部12cは、ドットデータKD1に含まれる特定ラスターラインSRLを構成する各画素に対して、先行ノズルの使用比率に従って有効画素と無効画素とのいずれであるかを決定する。補正記録制御部12cは、例えば、ドットデータKD1に含まれるラスター番号iの特定ラスターラインSRLであれば、先行ノズルの使用比率は80%であるため、80%の画素を有効画素とし、残りの20%の画素を無効画素とする。同様に、ドットデータKD1に含まれるラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLであれば、先行ノズルの使用比率は60%であるため、60%の画素を有効画素とし、残りの40%の画素を無効画素とする。補正記録制御部12cは、ドットデータKD2についても同様に、特定ラスターラインSRLを構成する各画素に対して、後行ノズルの使用比率に従って有効画素と無効画素とのいずれであるかを決定する。補正記録制御部12cは、例えば、ドットデータKD2に含まれるラスター番号iの特定ラスターラインSRLであれば、後行ノズルの使用比率は20%であるため、20%の画素を有効画素とし、残りの80%の画素を無効画素とする。補正記録制御部12cは、ドットデータKD1において特定ラスターラインSRLを構成する画素の中で有効画素とした画素について、ドットデータKD2において無効画素とすればよい。
図12の例では、ドットデータKD1,KD2に含まれる画素のうちグレー色を付した画素が無効画素であり、白色の画素が有効画素である。有効画素とは、ハーフトーン処理によりドットオンまたはドットオフが規定された画素そのものである。一方、無効画素とは、ドットオンまたはドットオフのいずれが規定されているかにかかわらず、強制的にドットオフとする画素である。補正記録制御部12cは、無効画素と決定した画素については、仮にドットオンであればドットオフに置換する。図12において無効画素に記載した値「0」は、ドットオフであることを意味している。なお図12に示すように、通常ラスターラインを構成する画素は全て有効画素のままである。また、通常ラスターラインに対応して付記した「100%」は、通常ラスターラインを構成する全ての画素が有効画素の状態で1つのノズル23に割り当てられることを意味している。
このようなドットデータKD1,KD2は、第1実施形態においてハーフトーン処理後のドットデータのPOL領域に、図11に示したPOLマスク18を適用した場合の結果と、実質的に同じである。そこで、補正記録制御部12cは、ドットデータKD1,KD2を、特定ラスターラインSRL毎の補正値に基づいて補正する。図12では図11と同様に、ラスター番号i,i+1,i+2,i+3に対応する各補正値「+5%」、「-10%」、「-5%」、「+3%」を示している。
補正記録制御部12cは、ラスター番号iの補正値により、ドットデータKD1のラスター番号iの特定ラスターラインSRLまたはドットデータKD2のラスター番号iの特定ラスターラインSRLのいずれか一方を補正する。また、補正記録制御部12cは、ラスター番号i+1の補正値により、ドットデータKD1のラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLまたはドットデータKD2のラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLのいずれか一方を補正する。また、補正記録制御部12cは、ラスター番号i+2の補正値により、ドットデータKD1のラスター番号i+2の特定ラスターラインSRLまたはドットデータKD2のラスター番号i+2の特定ラスターラインSRLのいずれか一方を補正する。また、補正記録制御部12cは、ラスター番号i+3の補正値により、ドットデータKD1のラスター番号i+3の特定ラスターラインSRLまたはドットデータKD2のラスター番号i+3の特定ラスターラインSRLのいずれか一方を補正する。
このとき、補正記録制御部12cは、特定ラスターラインSRLであってインク量を増加させる補正対象の「第1ラスターライン」に対して「第1ノズル」が吐出するインク量を補正値に基づいて増加させるような「第1補正」を実行する。また、補正記録制御部12cは、特定ラスターラインSRLであってインク量を減少させる補正対象の「第2ラスターライン」に対して「第2ノズル」が吐出するインク量を補正値に基づいて減少させるような「第2補正」を実行する。
具体的には、ラスター番号iの補正値「+5%」は、インク量を増加させる補正値である。そのため、補正記録制御部12cは、ラスター番号iに対応する先行ノズル(第1ノズル)によって記録される特定ラスターラインSRL、つまりドットデータKD1のラスター番号iの特定ラスターラインSRLを補正する。ドットデータKD2のラスター番号iの特定ラスターラインSRLは補正しない。この場合、補正記録制御部12cは、ドットデータKD1のラスター番号iの特定ラスターラインSRL内の少なくとも一部の無効画素を元の有効画素に戻すことで、ドットデータKD1のラスター番号iの特定ラスターラインSRL内の有効画素の比率を、80%から85%へ増加させる。このようなドットデータKD1のラスター番号iの特定ラスターラインSRLに対する補正は、第1補正の具体例に該当する。
図12では、補正後のドットデータKD1を、補正ドットデータKD1´として示し、補正後のドットデータKD2を、補正ドットデータKD2´として示している。また、補正ドットデータKD1´,KD2´においては、理解容易のために、ドットデータKD1,KD2から補正された画素を、太枠で囲って示している。補正ドットデータKD1´,KD2´の各特定ラスターラインSRLに対応して、ラスター番号とともに付記した85%等の数値は、特定ラスターラインSRL内の有効画素の比率である。
ラスター番号i+1の補正値「-10%」は、インク量を減少させる補正値である。そのため、補正記録制御部12cは、ラスター番号i+1に対応する後行ノズル(第2ノズル)によって記録される特定ラスターラインSRL、つまりドットデータKD2のラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLを補正する。ドットデータKD1のラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLは補正しない。この場合、補正記録制御部12cは、ドットデータKD2のラスター番号i+1の特定ラスターラインSRL内の少なくとも一部の有効画素を無効画素にすることで、ドットデータKD2のラスター番号i+1の特定ラスターラインSRL内の有効画素の比率を、40%から30%へ減少させる。このようなドットデータKD2のラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLに対する補正は、第2補正の具体例に該当する。
ラスター番号i+2の補正値「-5%」は、インク量を減少させる補正値である。そのため、補正記録制御部12cは、ラスター番号i+2に対応する先行ノズル(第2ノズル)によって記録される特定ラスターラインSRL、つまりドットデータKD1のラスター番号i+2の特定ラスターラインSRLを補正する。ドットデータKD2のラスター番号i+2の特定ラスターラインSRLは補正しない。この場合、補正記録制御部12cは、ドットデータKD1のラスター番号i+2の特定ラスターラインSRL内の少なくとも一部の有効画素を無効画素にすることで、ドットデータKD1のラスター番号i+2の特定ラスターラインSRL内の有効画素の比率を、40%から35%へ減少させる。このようなドットデータKD1のラスター番号i+2の特定ラスターラインSRLに対する補正は、第2補正の具体例に該当する。
ラスター番号i+3の補正値「+3%」は、インク量を増加させる補正値である。そのため、補正記録制御部12cは、ラスター番号i+3に対応する後行ノズル(第1ノズル)によって記録される特定ラスターラインSRL、つまりドットデータKD2のラスター番号i+3の特定ラスターラインSRLを補正する。ドットデータKD1のラスター番号i+3の特定ラスターラインSRLは補正しない。この場合、補正記録制御部12cは、ドットデータKD2のラスター番号i+3の特定ラスターラインSRL内の少なくとも一部の無効画素を有効画素に戻すことで、ドットデータKD2のラスター番号i+3の特定ラスターラインSRL内の有効画素の比率を、80%から83%へ増加させる。このようなドットデータKD2のラスター番号i+3の特定ラスターラインSRLに対する補正は、第1補正の具体例に該当する。
補正記録制御部12cは、このようなパス用ドットデータ内の各POL領域への補正処理を、ハーフトーン処理で生成したCMYK毎のドットデータのそれぞれに基づいて繰り返し実行する。
ステップS250では、補正記録制御部12cは、ステップS230,S240を経て得たパス用ドットデータに基づく記録をプリンター20に実行させる出力処理を行う。補正記録制御部12cは、パス用ドットデータをパスの順に対応させてプリンター20へ送信すればよい。パス用ドットデータ内のPOL領域、つまり特定ラスターラインSRLに含まれる画素のうち、無効画素は、各パスでノズル23に対して割り当てられても必ずドットオフとなる。この結果、プリンター20が、記録制御装置10から送信されたドットデータに基づいて、前記入力画像の記録媒体30への記録を実行する。
第2実施形態による効果を説明する。
ステップS220の補正処理により、ラスター番号iの特定ラスターラインSRLに対して、インク量を示す階調値を増加させる補正がなされたとする。このステップS220の補正処理により、ラスター番号iの特定ラスターラインSRLを記録するために先行ノズルおよび後行ノズルのそれぞれが吐出するドット数の合計は増加する。ラスター番号iの特定ラスターラインSRLは、インク量を増加させる補正がなされ、「第1ラスターライン」に該当する。そのため、第2実施形態のステップS240によれば、ラスター番号iの特定ラスターラインSRLを記録する先行ノズルおよび後行ノズルのうち、使用比率が予め高く設定されている方のノズル23(第1ノズル)に関して、割り当てる有効画素数が、ラスター番号iの補正値に基づいて更に増える。この結果、ラスター番号iの特定ラスターラインSRLに対するステップS220の補正処理に起因する増加分のインク量は、その大部分が、第1ノズルがラスター番号iの特定ラスターラインSRLを記録するときに吐出するインク量(ドット数)の増加分となる。
また、ステップS220の補正処理により、ラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLに対して、インク量を示す階調値を減少させる補正がなされたとする。このステップS220の補正処理により、ラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLを記録するために先行ノズルおよび後行ノズルのそれぞれが吐出するドット数の合計は減少する。ラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLは、インク量を減少させる補正がなされ、「第2ラスターライン」に該当する。そのため、第2実施形態のステップS240によれば、ラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLを記録する先行ノズルおよび後行ノズルのうち、使用比率が予め低く設定されている方のノズル23(第2ノズル)に関して、割り当てる有効画素数が、ラスター番号i+1の補正値に基づいて更に減る。この結果、ラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLに対するステップS220の補正処理に起因する減少分のインク量は、その大部分が、第2ノズルがラスター番号i+1の特定ラスターラインSRLを記録するときに吐出するインク量(ドット数)の減少分となる。
このような第2実施形態によっても、ラスターラインRL毎の濃度ムラを補正するための補正値によりラスターラインRL毎にインク量を補正する構成において、併せて、特定ラスターラインSRLを記録するために第1ノズルが吐出するインク量と第2ノズルが吐出するインク量との差を、より大きくする。従って、第1実施形態と同様に、特定ラスターラインSRLに関して、記録媒体30へのドット着弾の時間差に起因するドット間の凹凸をできるだけ抑制し、上述したような光沢ムラを改善することができる。
5.まとめ:
このように本実施形態によれば、記録制御装置10は、ノズル23からインクを吐出して記録を行う記録装置としてのプリンター20を制御する。記録制御装置10は、ラスターラインRLのインク量をラスターラインRLに対応する補正値に基づいて補正した画像を、プリンター20に記録させる制御部11を備える。そして、制御部11は、前記画像を構成するラスターラインRLのうち第1ノズルおよび前記第1ノズルよりも使用比率が低い第2ノズルの使用により記録される特定ラスターラインSRLであって、前記補正値に基づきインク量を増加させる補正の対象の第1ラスターラインに対して、前記第1ノズルが吐出するインク量を前記補正値に基づいて増加させる第1補正を実行する。制御部11は、特定ラスターラインSRLであって、前記補正値に基づきインク量を減少させる補正の対象の第2ラスターラインに対して、前記第2ノズルが吐出するインク量を前記補正値に基づいて減少させる第2補正を実行する。
前記構成によれば、制御部11は、ラスターラインRLのインク量をラスターラインRLに対応する補正値に基づいて補正する。これにより、記録結果におけるラスターラインRLの濃度ムラを抑制することができる。さらに前記構成によれば、制御部11は、前記第1補正や前記第2補正を実行することにより、特定ラスターラインSRLを記録するために第1ノズルが吐出するインク量と第2ノズルが吐出するインク量との差を、より大きくする。これにより、記録結果における光沢ムラを抑制することができる。
また、本実施形態によれば、前記制御部11は、前記第1補正では、前記第1ノズルが吐出するインク量に加えて前記第2ノズルが吐出するインク量を前記補正値に基づいて増加させる場合、前記第1ノズルが吐出するインク量の増加率を前記第2ノズルが吐出するインク量の増加率よりも大きくし、前記第2補正では、前記第2ノズルが吐出するインク量に加えて前記第1ノズルが吐出するインク量を前記補正値に基づいて減少させる場合、前記第2ノズルが吐出するインク量の減少率を前記第1ノズルが吐出するインク量の減少率よりも大きくする。
つまり、第1実施形態では、ステップS220でインク量を増加させる補正の対象となった特定ラスターラインSRL(第1ラスターライン)については、この第1ラスターラインを記録するために第1ノズルおよび第2ノズルがそれぞれ吐出するドット数の合計が、ステップS220の補正がなされない場合と比較して増加する。ただし、この第1ラスターラインは、ステップS240による第1補正を経ることで、第1ノズルへ割り当てられる画素の比率が増え、第2ノズルへ割り当てられる画素の比率が減る。すなわち、第1ラスターラインの記録においては、第1ノズルが吐出するインク量、第2ノズルが吐出するインク量のいずれもが増加し得るが、第1補正を経たことで、第1ノズルが吐出するインク量の増加率は、第2ノズルが吐出するインク量の増加率を上回る。また、ステップS220でインク量を減少させる補正の対象となった特定ラスターラインSRL(第2ラスターライン)については、この第2ラスターラインを記録するために第1ノズルおよび第2ノズルがそれぞれ吐出するドット数の合計が、ステップS220の補正がなされない場合と比較して減少する。ただし、この第2ラスターラインは、ステップS240による第2補正を経ることで、第2ノズルへ割り当てられる画素の比率が減り、第1ノズルへ割り当てられる画素の比率が増える。すなわち、第2ラスターラインの記録においては、第1ノズルが吐出するインク量、第2ノズルが吐出するインク量のいずれもが減少し得るが、第2補正を経ることで、第2ノズルが吐出するインク量の減少率は、第1ノズルが吐出するインク量の減少率を上回る。
第2実施形態では、ステップS220でインク量を増加させる補正の対象となった特定ラスターラインSRL(第1ラスターライン)については、この第1ラスターラインを記録するために第1ノズルおよび第2ノズルがそれぞれ吐出するドット数の合計が、ステップS220の補正がなされない場合と比較して増加する。ただし、この第1ラスターラインは、ステップS240による第1補正を経ることで、第1ノズルへ割り当てられる有効画素が増える。すなわち、第1ラスターラインの記録においては、第1ノズルが吐出するインク量、第2ノズルが吐出するインク量のいずれもが増加し得るが、第1補正を経たことで、第1ノズルが吐出するインク量の増加率は、第2ノズルが吐出するインク量の増加率を上回る。また、ステップS220でインク量を減少させる補正の対象となった特定ラスターラインSRL(第2ラスターライン)については、この第2ラスターラインを記録するために第1ノズルおよび第2ノズルがそれぞれ吐出するドット数の合計が、ステップS220の補正がなされない場合と比較して減少する。ただし、この第2ラスターラインは、ステップS240による第2補正を経ることで、第2ノズルへ割り当てられる有効画素が減る。すなわち、第2ラスターラインの記録においては、第1ノズルが吐出するインク量、第2ノズルが吐出するインク量のいずれもが減少し得るが、第2補正を経ることで、第2ノズルが吐出するインク量の減少率は、第1ノズルが吐出するインク量の減少率を上回る。
また、第2実施形態によれば、先行ノズル、後行ノズルのそれぞれに特定ラスターラインSRL内の有効画素および無効画素が割り当てられる。そのため、先行ノズルの使用比率と後行ノズルの使用比率との和は100%を超える。ただし、無効画素は必ずドットオフとなることから、これを無視し、先行ノズルに割り当てられる有効画素の比率を先行ノズルの実質的な使用比率とみなし、後行ノズルに割り当てられる有効画素の比率を後行ノズルの実質的な使用比率とみなしてもよい。このような観点に基づいて、図12の例を参照すると、ステップS220でインク量を増加させる補正の対象となったラスター番号iの特定ラスターラインSRLに関しては、ステップS240によるドットデータ補正の結果、先行ノズルの使用比率「85%」と後行ノズルの使用比率「20%」との和が100%を超えている。また、同じくステップS220でインク量を増加させる補正の対象となったラスター番号i+3の特定ラスターラインSRLに関しては、ドットデータ補正の結果、先行ノズルの使用比率「20%」と後行ノズルの使用比率「83%」との和が100%を超えている。
つまり、第2実施形態では、第1ラスターラインに対しては、ステップS240で第1補正を施すことにより、先行ノズルの使用比率と後行ノズルの使用比率との和が100%を超える。先行ノズルおよび後行ノズルの使用比率の和が100%を超える場合、ステップS220の補正処理により増加した後のインク量を更に超えるインク量に相当する数のドットが、吐出される可能性がある。図12を参照すると、例えば、ラスター番号iの特定ラスターラインSRLが先行ノズルと後行ノズルとを使用して記録される際に、一部の画素については、先行ノズル、後行ノズルの両方からドットが吐出され得る。
このように第2実施形態によれば、制御部11は、前記第1補正では、第1ノズルの使用比率と第2ノズルの使用比率との和を100%よりも大きくする。これにより、記録媒体30に記録される第1ラスターラインは、太く、濃くなりやすい。記録媒体30に記録される第1ラスターラインが太く、濃くなりやすいことにより、例えば、パスとパスとの間に搬送機構21により搬送される記録媒体30の搬送量誤差により記録媒体30に生じ得る白筋等の画質劣化を改善することができる。
「第1ラスターラインに対する、第1ノズルが吐出するインク量を前記補正値に基づいて増加させる第1補正」や、「第2ラスターラインに対する、第2ノズルが吐出するインク量を前記補正値に基づいて減少させる第2補正」では、これまで第1実施形態や第2実施形態で説明したように、ノズルの使用比率の補正や、有効画素や無効画素の比率の補正に、図11,12に示したようなラスター番号毎の補正値を、そのまま適用した。ただし、第1補正や第2補正では、ラスター番号毎の補正値をそのまま適用するのではなく、ラスター番号毎の補正値に、例えば、所定の係数を掛ける等して何らかの変更を施し、そのような変更後の補正値を用いるとしてもよい。
6.その他の実施形態:
図6に示した使用比率テーブル16から判るように、POL領域内のPOLラスター位置によっては、先行ノズルの使用比率と後行ノズルの使用比率とが同じ50%となることが有り得る。使用比率が同率である先行ノズルおよび後行ノズルにより記録されたラスターラインRLの光沢感は、特に低くなる。このような事態を考慮し、制御部11は、画像を構成するラスターラインRLのうち使用比率が同じである2つのノズル23(第3ノズルおよび第4ノズル)の使用により記録される第2特定ラスターラインに対して、第3ノズルと第4ノズルとの一方のノズルが吐出するインク量と他方のノズルが吐出するインク量との差を前記補正値に基づき拡大させる第3補正を実行する。
第3ノズルおよび第4ノズルは、1つのラスターラインRLの記録に使用される関係にある先行ノズルおよび後行ノズルに該当する。ただし、第3ノズルおよび第4ノズルは、使用比率テーブル16によって予め規定されている互いの使用比率に差が無いため、予め規定されている互いの使用比率に差が有る第1ノズルおよび第2ノズルとは異なる表記としている。また、第3ノズルおよび第4ノズルの使用により記録されるラスターラインRLは、複数のノズル23の使用により記録される点では、特定ラスターラインSRLと同じである。ただし、第1ノズルおよび第2ノズルの使用により記録される特定ラスターラインSRLと区別するために、第3ノズルおよび第4ノズルの使用により記録されるラスターラインRLを、第2特定ラスターラインと呼ぶ。
第3補正について具体例を説明する。
第1実施形態のステップS240において、制御部11は、POLマスク18の行のうち、第2特定ラスターラインが対応するPOLラスター位置の行に補正を施す。この場合、第2特定ラスターラインのラスター番号に対応する補正値に基づいて、先行ノズルの使用比率つまり値「1」の比率と、後行ノズルの使用比率つまり値「0」の比率と、に差を生じさせる補正を施す。制御部11は、このような補正を施したPOLマスク、つまり補正POLマスク19を、入力画像のPOL領域に適用する。これにより、POL領域に含まれる第2特定ラスターラインを構成する画素のうち第3ノズルに割り当てられる画素数と第4ノズルに割り当てられる画素数とに差が生じ、結果、第2特定ラスターラインを記録するために第3ノズル、第4ノズルがそれぞれ吐出するインク量の差が拡大する。
第2実施形態のステップS240において、制御部11は、第2特定ラスターラインであって、ドットデータKD1とドットデータKD2とのうちいずれか一方の第2特定ラスターラインを対象として、補正を施す。この場合、対象の第2特定ラスターラインのラスター番号に対応する補正値に基づいて、対象の第2特定ラスターライン内の有効画素を増やすか無効画素を増やす。つまり、対象の第2特定ラスターラインのラスター番号に対応する補正値がインク量を増加させる補正値であれば、この補正値に基づいて、対象の第2特定ラスターライン内の有効画素を増やす。一方、対象の第2特定ラスターラインのラスター番号に対応する補正値がインク量を減少させる補正値であれば、この補正値に基づいて、対象の第2特定ラスターライン内の有効画素を減らす(無効画素を増やす)。これにより、POL領域に含まれる第2特定ラスターラインを構成する画素のうち第3ノズルに割り当てられる有効画素数と第4ノズルに割り当てられる有効画素数とに差が生じ、結果、第2特定ラスターラインを記録するために第3ノズル、第4ノズルがそれぞれ吐出するインク量の差が拡大する。
このような第3補正により、第2特定ラスターラインを含んだ入力画像の記録結果における光沢ムラを抑制することができる。
これまでは、図2,5に示したように、プリンター20はシリアルプリンターであることを前提に説明をした。ただし、プリンター20は、搬送方向D2に交差する主走査方向D1において長尺な記録ヘッドユニットにより記録を行う、いわゆるラインプリンターであってもよい。
図13は、制御部11がラインプリンターであるプリンター20に実行させる記録方法を説明するための図である。図13に関しては、図5と異なる点に注目して説明する。記録ヘッドユニットは、概略、図2に例示したような記録ヘッド22を90°回転させた上で、主走査方向D1に沿って複数繋げることにより形成されている。ラインプリンターにおいて、キャリッジは不要である。記録ヘッドユニットを構成する個々の記録ヘッドは、インク色毎のノズル列であって、ノズルピッチが主走査方向D1において一定とされたノズル列を有する。図13に示すノズル列261,262,263は、それぞれが異なる記録ヘッドに属するノズル列であり、かつ、いずれも同じ色のインク、例えばKインクを吐出する。
記録ヘッドユニットを構成する個々の記録ヘッドは、主走査方向D1において隣接する他の記録ヘッドとの間で、互いのノズル列の端部がオーバーラップするように配設されている。図13の例によれば、ノズル列261のノズル番号♯15~♯18の4つのノズル23と、ノズル列262のノズル番号♯1~♯4の4つのノズル23とが、主走査方向D1において同じ位置となるように、ノズル列261,262は、搬送方向D2においてずれて配設されている。同様に、ノズル列262のノズル番号♯15~♯18の4つのノズル23と、ノズル列263のノズル番号♯1~♯4の4つのノズル23とが、主走査方向D1において同じ位置となるように、ノズル列262,263は、搬送方向D2においてずれて配設されている。記録ヘッドユニットの長手方向、つまり主走査方向D1に沿って、このように端部がオーバーラップするノズル列同士の関係が繰り返されている。
これまでの実施形態を前提として、プリンター20がラインプリンターである場合の説明をする。ラインプリンターにおいては、シリアルプリンターによるパスは、記録ヘッドユニットを構成する記録ヘッドそれぞれによる記録に該当する。従って、図13に示したようなノズル列同士がオーバーラップする部分により、特定ラスターラインSRLが記録される。先行ノズルおよび後行ノズルは、1つの特定ラスターラインSRLを記録する関係の2つのノズル23であり、相対的に搬送方向D2の上流側に位置するノズル23が先行ノズルであり、相対的に搬送方向D2の下流側に位置するノズル23が後行ノズルである。プリンター20がシリアルプリンターである場合は、画像を構成する画素が主走査方向D1に対応して並ぶラインがラスターラインRLであるが、ラインプリンターである場合は、画素が搬送方向D2に対応して並ぶラインがラスターラインRLである。
むろん、プリンター20がラインプリンターである場合、図4に示すTP50は、各濃度領域A1~A10の短手方向が搬送方向D2に対応する向きで記録媒体30に記録される。また、POLラスター位置は、POL領域内での主走査方向D1におけるラスターラインRL毎の位置である。ラスター番号は、主走査方向D1におけるラスターラインRL毎の番号である。このようにプリンター20がラインプリンターであっても、本実施形態で説明したように、入力画像の記録媒体30に対する記録結果において濃度ムラおよび光沢ムラが抑制される。また、プリンター20がラインプリンターである場合は、第2実施形態による、第1ラスターラインが太く、濃くなりやすいという効果により、記録ヘッド間の組み付け誤差により生じ得る白筋等の画質劣化を改善することができる。
制御部11は、図9の記録制御処理において、プリンター20が用いる記録媒体30の種別に応じて、ステップS240の実行、不実行を分岐してもよい。制御部11は、例えば、表示部13に表示させたUI画面を通じて、ユーザーから、プリンター20が用いる記録媒体30の種別情報を取得する。あるいは、制御部11は、プリンター20に対して記録媒体30の種別を問い合わせ、問い合わせに対するプリンター20からの応答に基づき、記録媒体30の種別情報を取得する。そして、制御部11は、記録媒体30の種別情報が、例えば、光沢紙や写真専用紙等の、光沢感が重要視される記録に用いられ易い第1種別を示していれば、これまでに説明したステップS240を含む記録制御処理を実行する。一方、記録媒体30の種別情報が、例えば、普通紙や再生紙等の、光沢感が重要視されない記録に用いられ易い第2種別を示していれば、制御部11は、ステップS240を省いた記録制御処理を実行する。
記録制御処理においてステップS240を省くとは、第1実施形態であれば、POLマスク18を補正せず、POL領域に対しては単にPOLマスク18を適用するということである。また、第2実施形態であれば、ハーフトーン処理により生成したドットデータからパス毎または記録ヘッド毎に生成したパス用(または記録ヘッド用)ドットデータKD1,KD2を、補正せず単に各パス(または各記録ヘッド)に割り当てるということである。このような構成によれば、第1種別の記録媒体30へ入力画像を記録する場合に、本実施形態を適用することができる。