JP7156347B2 - 鋼製壁体と鉄筋コンクリート床版の接合構造 - Google Patents
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図23(a)~(d)はH形鋼3の場合の組合せ鋼矢板9であり、図23(e)はT形鋼4の場合の組合せ鋼矢板9である。また、継手付き鋼製部材7の形状は、(a)、(d)、(e)に示すような直線形、もしくは(b)、(c)に示すようなハット形がある。継手付き鋼製部材7はフランジ5の外面に定着されており、H形鋼3の場合は(a)~(c)に示すように片側のフランジ外面に定着される場合と、(d)に示すように両側のフランジ外面に定着される場合がある。その定着方法としては、取り付けが容易で経済的である隅肉溶接が一般的に用いられ、図23に示すものは、継手付き鋼製部材7が隅肉溶接部27を介してフランジに定着されている。
(i)鉄筋埋め込み方式(図25参照)
図25に示す鉄筋埋め込み方式は、打設前に継手付きH形鋼35のフランジ5に孔をあけ、その孔に鉄筋37を通して地山側のフランジ5にナット39で固定し、打設・掘削後にRC床版23の曲げ鉄筋19を、機械式継手41を介して定着する。
(ii)溶接方式
図26に示す溶接方式は、打設・掘削後に継手付きH形鋼35の掘削側のフランジ5に溶接でRC床版23の曲げ鉄筋19を定着する方法であり、溶接方法としてはスタッド溶接やマグ溶接が用いられる。また、溶接方式では、H形鋼3における地山側のフランジ5と掘削側のフランジ5をつなぐ補強部材43が取り付けられる。
(iii)溶接スリーブ方式
図27に示す溶接スリーブ方式は、打設前に継手付きH形鋼35のフランジ5に機械式継手41を溶接で取り付け、打設・掘削後にRC床版23の曲げ鉄筋19を前記の機械式継手41を介して定着する。
また、溶接スリーブ方式では、溶接方式と同様に、H形鋼3における地山側フランジ5と掘削側フランジ5をつなぐ補強部材43が取り付けられる。
また、溶接方式および溶接スリーブ方式を、継手付き鋼製部材7とH形鋼3からなる組合せ鋼矢板9によって形成される鋼製壁体31とRC床版23の接合部に適用すると、継手付き鋼製部材7が接合面に位置する場合、曲げ鉄筋19は継手付き鋼製部材7に定着される。前述したように、継手付き鋼製部材7はH形鋼3のフランジ5端部の隅肉溶接部27のみで定着されている。そのため、曲げ鉄筋19が継手付き鋼製部材7中央部(隅肉溶接部27と隅肉溶接部27の中間部)に定着されると、鋼製壁体31やRC床版23に作用する曲げモーメントによって曲げ鉄筋19に生じる軸力により、図28に示すように、継手付き鋼製部材7に曲げ変形が生じる。このため、接合部の耐力が弱く、定着されるRC床版23の曲げ鉄筋19に対して接合部の強度確保ができないという課題がある。
それ故、曲げ鉄筋19の定着位置は、後述する実施例で示すように継手付き鋼製部材7の隅肉溶接部27の位置の近傍に限られることになり、鉄筋の本数や接合位置が限定され、施工の自由度が小さく、施工誤差への対応ができないという課題がある。
前記継手付き鋼製部材の外面に、前記H形鋼のウェブを跨ぐようにベースプレートを配置し、該ベースプレートを前記フランジに前記ウェブを挟んで各1列以上のボルト列によってボルト接合し、前記鉄筋コンクリート床版の曲げ鉄筋を前記ボルト列の間において前記ベースプレートに定着したベースプレート鉄筋定着部を含むことを特徴とするものである。
前記継手付き鋼製部材の外面に、前記T形鋼のウェブを跨ぐようにベースプレートを配置し、該ベースプレートを前記フランジに前記ウェブを挟んで各1列以上のボルト列によってボルト接合し、前記鉄筋コンクリート床版の曲げ鉄筋を前記ボルト列の間において前記ベースプレートに定着したベースプレート鉄筋定着部を含むことを特徴とするものである。
これによって、鋼製壁体に定着可能なRC床版の曲げ鉄筋の太径化・密配筋に対応可能となる。また、鋼製壁体の打設時に施工誤差が生じた場合でも、鋼製壁体を打設しなおさずにRC床版を構築でき、施工効率が向上する。
継手付き鋼製部材7の外面(継手付き鋼製部材7のフランジ5に接していない面)に、H形鋼3のウェブ13を跨ぐようにベースプレート15を配置し、ベースプレート15をフランジ5にウェブ13を挟んで各1列以上(本例では各1列)のボルト列17によってボルト接合し、鉄筋コンクリート床版11の曲げ鉄筋19をボルト列17の間においてベースプレート15に定着したベースプレート鉄筋定着部21を含むことを特徴とするものである。
各構成を詳細に説明する。
H形鋼3は、図1に示すように、フランジ5とウェブ13を有し、RC床版23が接合されるフランジ5には、ボルト列17を構成するボルトが挿入されるボルト孔が設けられている。
継手付き鋼製部材7は、両端に継手部25を有するものであり、その形状は特に限定されない。例えば、図1に示すような平板状のものや、図23(b)、(c)及び後述の実施例で例示する図20、図21に示すような断面ハット形状のものが挙げられる。
継手付き鋼製部材7は、図1に示すように、隅肉溶接部27によってH形鋼3のフランジ5に接合されている。
なお、図1に示す例では、継手付き鋼製部材7はH形鋼3の片側のフランジ5に取り付つけられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、継手付き鋼製部材7をH形鋼3の両側のフランジ5に取り付ける態様も含む(図22参照)。もっとも、継手付き鋼製部材7を両側のフランジ5に取り付けた場合であっても、RC床版23は一方の側の継手付き鋼製部材7に接合される。
RC床版23は、内部に曲げ鉄筋19が配設されており、この曲げ鉄筋19は、ベースプレート15のボルト列17の間に溶接(スタッド溶接やマグ溶接)で定着されている。
ベースプレート15は、継手付き鋼製部材7の外面に、H形鋼3のウェブ13を跨ぐように配置されている。ベースプレート15には、ベースプレート15を継手付き鋼製部材7の外面に配置した状態で、ウェブ13を挟んで両側にボルト接合するためのボルト孔が設けられている。
ベースプレート15は、鋼板で形成されている。
最小のベースプレート15幅となるのは、図2に示すように、左右のボルト列17数が各1列で、ボルト列17間に定着される鉄筋の幅方向の本数が1本の場合であるので、この場合に必要最小限のベースプレート15幅を検討する。
一般に使用される最小ボルト径はM12であり、このボルトについてボルト締結作業に支障がでないようにするには、ボルトとウェブ13中心線のあき長さを50mm以上とすればよい。
このあき長さがあれば、ボルト列間に太径鉄筋(~D51)を定着することもできる。
また、ベースプレート15の端抜けを防止するには、ボルトとベースプレート15の縁端距離は20mm以上とすればよい。
このように考えれば、ベースプレート15の中心から幅方向の距離は70mmとなり、全幅は140mmとなる。
ベースプレート15の幅は、この最小幅を基準として、ボルト列数と定着する鉄筋の幅方向の鉄筋本数に応じて大きくすればよい。
そのため、施工誤差が生じた場合でも、RC床版23の曲げ鉄筋19を鋼製壁体に取り付ける位置は、図3に示すように、ベースプレート15の高さ方向の範囲内であれば調整可能であり、施工性に優れる。
このため、ベースプレート15に取り付けられる曲げ鉄筋19量に対してフランジ5の板厚が薄いと、前記曲げ変形が著しくなり、接合部の強度を確保できない。この対策としては、取り付ける曲げ鉄筋19量に応じてH形鋼3のフランジ5の板厚を厚くすればよい。
しかし、フランジ5の板厚を著しく厚くすると、鋼製壁体の鋼重が増えて不経済となったり、打設時の抵抗が大きくなったりする場合がある。そこで、このような場合には、図4、図5に示すように、フランジ5とウェブ13をつなぐ2枚で一対となる補剛部材29を取り付けるようにすればよい。このようにすれば、フランジ5の板厚を厚くすることなく、前述したフランジ5の変形を抑制できる。
補剛部材29をフランジ5に固定する位置は、ボルトからの荷重伝達を考慮してボルト孔中心から外側に「ボルト径×3.0以下」の範囲内とするのがよい。ただし、ボルト孔への影響を考慮して、「ボルト径×1.0以上」とすることが望ましい。
従来構造例2は、図7に示すように、基本構造は従来構造例1と同じで、定着する曲げ鉄筋19を2段にした例である。
このような、従来構造例1、2では、曲げ鉄筋19の定着位置が隅肉溶接部27の近傍に限定され、それ故に鉄筋の本数が限定され、また施工誤差に対する許容度が少ないという課題がある。
例えば、発明例1は、図8に示すように、H形鋼3のウェブ13に対応する位置にベースプレート15を介して曲げ鉄筋19を、幅方向に1本かつ1段定着した例である。
また、発明例2は、図9に示すように、図8の例の段数を2段にした態様である。
また、発明例3は、図10に示すように、図8の例の幅方向の曲げ鉄筋19の本数を2本とし、かつ2段にした態様である。
また、発明例4は、図11に示すように、図9の態様に三角形の板材からなる補剛部材29を水平方向に設置した態様である。
また、発明例5は、図12に示すように、図9の態様に矩形の板材からなる補剛部材29を垂直方向に設置した態様である。
図13に示す発明例6は、図6に示した従来構造1と図8に示した発明例1を複合化した態様である。
また、図14に示す発明例7は、図7に示した従来構造2と図9に示した発明例2を複合化した態様である。
また、図15に示す発明例8は、図6に示した従来構造1と図11に示した発明例4を複合化した態様である。
また、図16に示す発明例9は、図6に示した従来構造1と図12に示した発明例5を複合化した態様である。
図17に示す発明例10は、図8に示した発明例1のH形鋼3に代えてT形鋼4を用いたものである。
また、図18に示す発明例11は、図11に示した発明例4のH形鋼3に代えてT形鋼4を用いたものである。
また、図19に示す発明例12は、図12に示した発明例5のH形鋼3に代えてT形鋼4を用いたものである。
図20に示す発明例13は、図8に示した発明例1の直線形の継手付き鋼製部材7に代えてハット形のものを用いたものである。
図21に示す発明例14は、図20に示したハット形の継手付き鋼製部材7の取り付けの向きを変えたものである。
3 H形鋼
4 T形鋼
5 フランジ
7 継手付き鋼製部材
9 組合せ鋼矢板
13 ウェブ
15 ベースプレート
17 ボルト列
19 曲げ鉄筋
21 ベースプレート鉄筋定着部
23 RC床版
25 継手部
27 隅肉溶接部
29 補剛部材
<従来例>
31 鋼製壁体
33 接合構造
35 継手付きH形鋼
37 鉄筋
39 ナット
41 機械式継手
43 補強部材
Claims (5)
- H形鋼と該H形鋼の片側または両側のフランジ外面に取り付けられた継手付き鋼製部材とを有する組合せ鋼矢板を連結して形成される鋼製壁体と、該鋼製壁体の片側に配設され、内部に曲げ鉄筋を有する鉄筋コンクリート床版との接合構造であって、
前記継手付き鋼製部材の外面に、前記H形鋼のウェブを跨ぐようにベースプレートを配置し、該ベースプレートを前記ウェブを挟んで各1列以上のボルト列によって、前記H形鋼のフランジにボルト接合し、前記鉄筋コンクリート床版の曲げ鉄筋の端部を前記ボルト列の間において前記ベースプレートに溶接により定着したベースプレート鉄筋定着部を含み、前記継手付き鋼製部材は前記H形鋼のフランジと前記ベースプレートによって挟まれていることを特徴とする鋼製壁体と鉄筋コンクリート床版の接合構造。 - T形鋼と該T形鋼のフランジ外面に取り付けられた継手付き鋼製部材とを有する組合せ鋼矢板を連結して形成される鋼製壁体と、該鋼製壁体の片側に配設され、内部に曲げ鉄筋を有する鉄筋コンクリート床版との接合構造であって、
前記継手付き鋼製部材の外面に、前記T形鋼のウェブを跨ぐようにベースプレートを配置し、該ベースプレートを前記ウェブを挟んで各1列以上のボルト列によって、前記T形鋼のフランジにボルト接合し、前記鉄筋コンクリート床版の曲げ鉄筋の端部を前記ボルト列の間において前記ベースプレートに溶接により定着したベースプレート鉄筋定着部を含み、前記継手付き鋼製部材は前記T形鋼のフランジと前記ベースプレートによって挟まれていることを特徴とする鋼製壁体と鉄筋コンクリート床版の接合構造。 - 前記ベースプレートの板厚が、定着される鉄筋コンクリート床版の曲げ鉄筋径の1/3以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼製壁体と鉄筋コンクリート床版の接合構造。
- 前記ベースプレートの幅が140mm以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鋼製壁体と鉄筋コンクリート床版の接合構造。
- 前記ベースプレートが取り付けられているフランジにおける前記ボルト接合部近傍と前記ウェブとを繋ぐ補剛部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の鋼製壁体と鉄筋コンクリート床版の接合構造。
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